JPWO2020208789A1 - モータ駆動装置、電動送風機、電気掃除機及びハンドドライヤ - Google Patents

モータ駆動装置、電動送風機、電気掃除機及びハンドドライヤ Download PDF

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Abstract

永久磁石を有する単相モータ(12)に交流電圧を出力するインバータ(11)と、単相モータ(12)の動作状態を表す物理量を検出する検出部と、検出部で検出された物理量から、インバータ(11)が単相モータ(12)に出力する交流電圧の基本波に対して2n+1倍の周波数成分を含む電流を検出する制御部(25)と、を備え、nは自然数である。

Description

本発明は、単相モータを駆動するモータ駆動装置、電動送風機、電気掃除機及びハンドドライヤに関する。
従来、モータには、ブラシ付き直流モータ、誘導モータ、PM(Permanent Magnet)モータなど様々な種類があり、モータの相数にも単相、三相などの種類がある。これらの種々のモータの中で、単相PMモータは、ブラシ付き直流モータと比較して、機械構造であるブラシを用いないブラシレス構造のため、ブラシの摩耗が発生しない。この特徴により、単相PMモータは、高寿命且つ高信頼性を確保することができる。また、単相PMモータは、誘導モータと比較して、ロータに2次電流が流れないため高効率なモータである。
単相PMモータは、相数が異なる三相PMモータと比較しても次の利点がある。
(1)三相PMモータの場合には三相インバータが必要であるのに対し、単相PMモータでは単相インバータでよい。
(2)三相インバータとして一般的に用いられるフルブリッジインバータを用いると、6つのスイッチング素子が必要であるのに対し、単相PMモータの場合、フルブリッジインバータを用いたとしても4つのスイッチング素子で構成できる。
(3)(1)及び(2)の特徴により、単相PMモータは、三相PMモータと比較して、装置の小型化が可能である。
特許文献1には、単相PMモータの駆動方式に関する技術が開示されている。
特開2015−342号公報
特許文献1では、ロータの位置を検出する位置センサの信号に基づいて、センサ周期に同期したスイッチング制御を実現している。このような制御ではロータの位置情報は必要不可欠であり、位置情報取得には一般的にホール素子を用いた位置センサをモータ内部に取り付ける必要がある。しかしながら、位置センサを取り付けることには、位置センサの部品及び取り付け工程に伴うコストの増加、位置センサを備える基板とモータとを一体化することによる設計上の制約、位置センサ取り付け時の位置ズレによる制御への影響などの問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、単相モータを駆動する際に検出される物理量からロータの位置を推定可能なモータ駆動装置を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るモータ駆動装置は、永久磁石を有する単相モータに交流電圧を出力するインバータと、単相モータの動作状態を表す物理量を検出する検出部と、検出部で検出された物理量から、インバータが単相モータに出力する交流電圧の基本波に対して2n+1倍の周波数成分を含む電流を検出する制御部と、を備える。nは自然数である。
本発明に係るモータ駆動装置は、単相モータを駆動する際に検出される物理量からロータの位置を推定できる、という効果を奏する。
実施の形態1に係るモータ駆動装置を含むモータ駆動システムの構成例を示す図 図1に示されるインバータの回路構成の例を示す図 図1に示される制御部の機能部位のうちのPWM信号を生成する機能部位を示すブロック図 図3に示されるキャリア比較部の構成例を示すブロック図 図4に示されるキャリア比較部における要部の波形例を示すタイムチャート 図3に示されるキャリア比較部の他の構成例を示すブロック図 図6に示されるキャリア比較部における要部の波形例を示すタイムチャート 図1に示される制御部の機能部位のうち、図4に示されるキャリア比較部及び図6に示されるキャリア比較部に入力される進角位相を算出するための機能構成を示すブロック図 実施の形態1に係る制御部における進角位相の算出方法の一例を示す図 図4及び図6に示される電圧指令と進角位相との関係の説明に使用するタイムチャート 実施の形態1に係る単相モータである単相の埋め込み永久磁石同期電動機の構成例を示す図 実施の形態1に係るモータ駆動システムの単相モータにおけるインダクタンス値の変化を示す図 実施の形態1に係る単相モータに流れる電流を簡易的に周波数解析した結果を示す図 実施の形態1に係る検出電流信号処理部の構成例を示す図 実施の形態1に係る検出電流信号処理部の他の構成例を示す図 実施の形態1に係るモータ駆動装置における単相モータのロータの位置を推定する動作を示すフローチャート 実施の形態1に係るモータ駆動装置が備える制御部を実現するハードウェア構成の一例を示す図 実施の形態2に係るモータ駆動装置を備える電動送風機の構成例を示す図 実施の形態2に係る電動送風機を備える電気掃除機の構成例を示す図 実施の形態2に係る電動送風機を備えるハンドドライヤの構成例を示す図
以下に、本発明の実施の形態に係るモータ駆動装置、電動送風機、電気掃除機及びハンドドライヤを図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下では、電気的な接続と物理的な接続とを区別せずに、単に「接続」と称して説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るモータ駆動装置2を含むモータ駆動システム1の構成例を示す図である。図1に示すモータ駆動システム1は、単相モータ12と、モータ駆動装置2と、バッテリ10と、電圧センサ20と、スイッチ102と、を備える。
モータ駆動装置2は、単相モータ12に交流電力を供給して単相モータ12を駆動する。バッテリ10は、モータ駆動装置2に直流電力を供給する直流電源である。電圧センサ20は、単相モータ12の動作状態を表す物理量を検出する検出部である。具体的には、電圧センサ20は、バッテリ10からモータ駆動装置2に出力される直流電圧Vdcを検出する。
単相モータ12は、不図示の電動送風機を回転させる回転電機として利用される。単相モータ12及び当該電動送風機は、電気掃除機及びハンドドライヤといった装置に搭載される。
なお、本実施の形態では、電圧センサ20が直流電圧Vdcを検出しているが、電圧センサ20の検出対象は、バッテリ10から出力される直流電圧Vdcに限定されない。電圧センサ20の検出対象は、モータ駆動装置2の出力電圧であるインバータ出力電圧でもよい。「インバータ出力電圧」は後述する「モータ印加電圧」と同義である。
モータ駆動装置2は、インバータ11と、制御部25と、駆動信号生成部32とを備える。インバータ11は、単相モータ12に接続され、単相モータ12に交流電圧を出力する。なお、バッテリ10とインバータ11の間には不図示のコンデンサを電圧安定のために挿入してもよい。制御部25は、インバータ11が出力する交流電圧を制御する。
また、モータ駆動装置2は、単相モータ12に流れる電流、すなわちモータ電流を検出するための電流検出部22を備える。電流検出部22は、単相モータ12の動作状態を表す物理量を検出する検出部である。具体的には、電流検出部22は、単相モータ12に流れる電流の電流値を検出する。電流検出部22については、単相モータ12に流れる電流が検出できればどこに配置してもよい。モータ駆動装置2では、電流検出部22を、単相モータ12の配線に直列に配置してもよいし、インバータ11のスイッチング素子に対して直列に配置してもよいし、インバータ11の電源線またはグランド線に配置してもよい。また、電流検出部22における電流の検出方法について、抵抗値が既知な抵抗器を挿入し電圧値を検出することでオームの法則より電流値を算出する方法、トランスによる検出方法、ホール効果を用いた検出方法などが挙げられるが、どの方法を用いても電流が検出できればよい。本実施の形態では、単相モータ12の配線に直列にトランスの電流センサを挿入する方法を記載する。なお、モータ駆動装置2は、電流検出部22が電流を検出しているが、電流を電圧に変換したものを用いて、後述するような制御を行ってもよい。また、インバータ11は、単相インバータを想定しているが、単相モータ12を駆動できるものであればよい。
制御部25には、電圧センサ20により検出された直流電圧Vdc、電流検出部22により検出された電流I、保護信号及びスイッチ102から出力された指令値が入力される。指令値は、トルクに起因する有効電流指令値Ip、回転速度指令値ωなどが挙げられる。制御部25は、直流電圧Vdcと、電流Iと、指令値とに基づいて、PWM(Pulse Width Modulation)信号Q1,Q2,Q3,Q4を生成する。すなわち、制御部25は、電流検出部22および電圧センサ20で検出された物理量に応じてインバータ11から単相モータ12に出力される交流電圧を制御するとも言える。制御部25は、電流検出部22および電圧センサ20で検出された物理量を用いて単相モータ12においてロータ12aの回転方向における位置を推定することができる。制御部25は、物理量すなわち推定されるロータ12aの位置に応じてインバータ11から単相モータ12に出力される交流電圧を制御する。電流検出部22および電圧センサ20で検出された物理量は、単相モータ12においてロータ12aの回転方向における位置を表すものである。
スイッチ102は、例えば、物理スイッチであり、電気掃除機などに用いられる手元の強運転、弱運転の切り替えスイッチなどである。スイッチ102の形状は、押しボタン式、トグル式など様々な種類が存在するが、使用者の要求を制御部25に伝えられる形状であればどれでもよい。また、スイッチ102は、物理スイッチに限らず、使用時間、状態に合わせて指令値を自動で切り替える構成の場合には、ソフトウェア上の処理であっても構わない。
駆動信号生成部32は、制御部25から出力されたPWM信号Q1,Q2,Q3,Q4に基づいて、インバータ11のスイッチング素子を駆動するための駆動信号S1,S2,S3,S4を生成する。駆動信号生成部32は、制御部25から出力されたPWM信号Q1,Q2,Q3,Q4を、インバータ11を駆動するための駆動信号S1,S2,S3,S4に変換して、インバータ11に出力する。なお、駆動信号生成部32については、インバータ11に内蔵される構造であってもよいし、制御部25と一体になっている構造であってもよいし、図1では一例として示している。
単相モータ12の一例は、ブラシレスモータである。単相モータ12がブラシレスモータである場合、単相モータ12のロータ12aには、図示しない複数個の永久磁石が周方向に配列される。すなわち、単相モータ12は、永久磁石を有する。これらの複数個の永久磁石は、着磁方向が周方向に交互に反転するように配置され、ロータ12aの複数個の磁極を形成する。単相モータ12のステータ12bには図示しない巻線が巻かれている。当該巻線には交流電流が流れる。単相モータ12の巻線に流れる電流を適宜「モータ電流」と呼ぶ。本実施の形態では、ロータ12aの磁極数は4極を想定するが、ロータ12aの磁極数は4極以外でもよい。
図2は、図1に示されるインバータ11の回路構成の例を示す図である。インバータ11は、ブリッジ接続された複数のスイッチング素子51,52,53,54を有する。スイッチング素子51,52は第1レグ5Aを構成する。第1レグ5Aにおいて、スイッチング素子51とスイッチング素子52とは直列に接続される。スイッチング素子53,54は第2レグ5Bを構成する。第2レグ5Bにおいて、スイッチング素子53とスイッチング素子54とは直列に接続される。
スイッチング素子51,53は、高電位側に位置し、スイッチング素子52,54は、低電位側に位置する。インバータ回路では、一般的に、高電位側は「上アーム」と称され、低電位側は「下アーム」と称される。以下の説明において、第1レグ5Aのスイッチング素子51を「上アーム第1素子」と呼び、第2レグ5Bのスイッチング素子53を「上アーム第2素子」と呼ぶ場合がある。また、第1レグ5Aのスイッチング素子52を「下アーム第1素子」と呼び、第2レグ5Bのスイッチング素子54を「下アーム第2素子」と呼ぶ場合がある。
スイッチング素子51とスイッチング素子52との接続点6Aと、スイッチング素子53とスイッチング素子54との接続点6Bとは、ブリッジ回路における交流端を構成する。接続点6Aと接続点6Bとの間には、単相モータ12と、単相モータ12に流れる電流を検出するための電流検出部22とが接続される。前述のように、電流検出部22は単相モータ12に流れる電流が検出できればどこに挿入してもよく、電流検出部22における電流の検出方法も限定されない。
複数のスイッチング素子51,52,53,54のそれぞれには、金属酸化膜半導体電界効果型トランジスタであるMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)が使用される。MOSFETは、FET(Field−Effect Transistor)の一例である。
スイッチング素子51には、スイッチング素子51のドレインとソースとの間に並列接続されるボディダイオード51aが形成される。スイッチング素子52には、スイッチング素子52のドレインとソースとの間に並列接続されるボディダイオード52aが形成される。スイッチング素子53には、スイッチング素子53のドレインとソースとの間に並列接続されるボディダイオード53aが形成される。スイッチング素子54には、スイッチング素子54のドレインとソースとの間に並列接続されるボディダイオード54aが形成される。複数のボディダイオード51a,52a,53a,54aのそれぞれは、MOSFETの内部に形成される寄生ダイオードであり、還流ダイオードとして使用される。なお、別途還流ダイオードを接続してもよく、MOSFETに代えてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いてもよい。
複数のスイッチング素子51,52,53,54は、シリコン系材料により形成されたMOSFETに限定されず、炭化珪素、窒化ガリウム系材料、またはダイヤモンドといったワイドバンドギャップ半導体により形成されたMOSFETでもよい。複数のスイッチング素子51,52,53,54のうちの少なくとも1つがワイドバンドギャップ半導体で形成されてもよい。
一般的に、ワイドバンドギャップ半導体は、シリコン半導体に比べて耐電圧及び耐熱性が高い。そのため、複数のスイッチング素子51,52,53,54にワイドバンドギャップ半導体を用いることにより、スイッチング素子の耐電圧性及び許容電流密度が高くなり、スイッチング素子を組み込んだ半導体モジュールを小型化できる。また、ワイドバンドギャップ半導体は、耐熱性も高いため、半導体モジュールで発生した熱を放熱するための放熱部の小型化が可能であり、また、半導体モジュールで発生した熱を放熱する放熱構造の簡素化が可能である。
図3は、図1に示される制御部25の機能部位のうちのPWM信号Q1,Q2,Q3,Q4を生成する機能部位を示すブロック図である。
図3において、キャリア比較部38には、後述する電圧指令Vrefを生成するときに用いられる進角制御された進角位相θと基準位相θとが入力される。基準位相θは、ロータ12aの基準位置からの角度であるロータ機械角θを電気角に換算した位相であり、位置センサレス駆動の場合には推定した位相となる。ここで、「進角位相」とは、電圧指令Vrefの「進み角」である「進角」を位相で表したものである。また、ここでいう「進み角」とは、ステータ12bの巻線に印加されるモータ印加電圧と、ステータ12bの巻線に誘起されるモータ誘起電圧との間の位相差である。なお、モータ印加電圧がモータ誘起電圧よりも進んでいるときに「進み角」は正の値をとる。
また、キャリア比較部38には、進角位相θと基準位相θとに加え、キャリア生成部33で生成されたキャリアと、直流電圧Vdcと、電圧指令Vrefの振幅値である電圧振幅指令Vとが入力される。キャリア比較部38は、キャリア、進角位相θ、基準位相θ、直流電圧Vdc及び電圧振幅指令Vに基づいて、PWM信号Q1,Q2,Q3,Q4を生成する。
図4は、図3に示されるキャリア比較部38の構成例を示すブロック図である。図4には、キャリア比較部38の一例であるキャリア比較部38A及びキャリア生成部33の詳細構成が示されている。図4において、キャリア生成部33には、キャリアの周波数であるキャリア周波数f[Hz]が設定される。キャリア周波数f[Hz]の矢印の先には、キャリア波形の一例として、“0”と“1”との間を上下する三角波キャリアが示される。インバータ11のPWM制御には、同期PWM制御と非同期PWM制御とがある。同期PWM制御の場合、進角位相θにキャリアを同期させる必要がある。一方、非同期PWM制御の場合、進角位相θにキャリアを同期させる必要はない。
キャリア比較部38Aは、図4に示されるように、絶対値演算部38a、除算部38b、乗算部38c、乗算部38d、乗算部38f、加算部38e、比較部38g、比較部38h、出力反転部38i及び出力反転部38jを有する。
絶対値演算部38aは、電圧振幅指令Vの絶対値|V|を演算する。除算部38bは、絶対値|V|を、電圧センサ20で検出された直流電圧Vdcによって除算する。図4に示す構成では、除算部38bの出力が変調率となる。バッテリ10の出力電圧であるバッテリ電圧は、電流を流し続けることにより変動する。そのため、キャリア比較部38Aでは、絶対値|V|を直流電圧Vdcで除算することによって、変調率の値を調整し、バッテリ電圧の低下によってモータ印加電圧が低下しないようにできる。
乗算部38cは、基準位相θに進角位相θを加えた“θ+θ”の正弦値を演算する。乗算部38cは、“θ+θ”の正弦値を、除算部38bの出力である変調率に乗算する。乗算部38dは、乗算部38cの出力である電圧指令Vrefに“1/2”を乗算する。加算部38eは、乗算部38dの出力に“1/2”を加算する。乗算部38fは、加算部38eの出力に“−1”を乗算する。加算部38eの出力は、複数のスイッチング素子51,52,53,54のうち、上アームの2つのスイッチング素子51,53を駆動するための正側電圧指令Vref1として比較部38gに入力される。乗算部38fの出力は、下アームの2つのスイッチング素子52,54を駆動するための負側電圧指令Vref2として比較部38hに入力される。
比較部38gは、正側電圧指令Vref1と、キャリアの振幅とを比較する。比較部38gの出力を反転した出力反転部38iの出力は、スイッチング素子51へのPWM信号Q1となり、比較部38gの出力は、スイッチング素子52へのPWM信号Q2となる。同様に、比較部38hは、負側電圧指令Vref2と、キャリアの振幅とを比較する。比較部38hの出力を反転した出力反転部38jの出力は、スイッチング素子53へのPWM信号Q3となり、比較部38hの出力は、スイッチング素子54へのPWM信号Q4となる。出力反転部38iにより、スイッチング素子51とスイッチング素子52とが同時にオンされることはない。出力反転部38jにより、スイッチング素子53とスイッチング素子54とが同時にオンされることはない。
図5は、図4に示されるキャリア比較部38Aにおける要部の波形例を示すタイムチャートである。図5には、加算部38eから出力される正側電圧指令Vref1の波形と、乗算部38fから出力される負側電圧指令Vref2の波形と、PWM信号Q1,Q2,Q3,Q4の波形と、インバータ出力電圧の波形とが示されている。
PWM信号Q1は、正側電圧指令Vref1がキャリアよりも大きいときに“ロー(Low)”となり、正側電圧指令Vref1がキャリアよりも小さいときに“ハイ(High)”となる。PWM信号Q2は、PWM信号Q1の反転信号である。PWM信号Q3は、負側電圧指令Vref2がキャリアよりも大きいときに“ロー(Low)”となり、負側電圧指令Vref2がキャリアよりも小さいときに“ハイ(High)”となる。PWM信号Q4は、PWM信号Q3の反転信号である。このように、図4に示される回路は、“ローアクティブ(Low Active)”で構成されているが、それぞれの信号が逆の値となる“ハイアクティブ(High Active)”で構成されていてもよい。
インバータ出力電圧の波形は、図5に示されるように、PWM信号Q1とPWM信号Q4との差電圧による電圧パルスと、PWM信号Q3とPWM信号Q2との差電圧による電圧パルスとが表れる。これらの電圧パルスが、モータ印加電圧として、インバータ11から単相モータ12に印加される。
キャリア比較部38AがPWM信号Q1,Q2,Q3,Q4を生成する際に使用する変調方式としては、バイポーラ変調と、ユニポーラ変調とが知られている。バイポーラ変調は、電圧指令Vrefの1周期ごとに正または負の電位で変化する電圧パルスを出力する変調方式である。ユニポーラ変調は、電圧指令Vrefの1周期ごとに3つの電位で変化する電圧パルス、すなわち正の電位と負の電位と零の電位とに変化する電圧パルスを出力する変調方式である。図5に示される波形は、ユニポーラ変調によるものである。本実施の形態のモータ駆動装置2においては、何れの変調方式を用いてもよい。なお、モータ電流波形をより正弦波に制御する必要がある用途では、バイポーラ変調よりも、高調波含有率が少ないユニポーラ変調を採用することが好ましい。
また、図5に示される波形は、電圧指令Vrefの半周期T/2の区間において、第1レグ5Aを構成するスイッチング素子51,52と、第2レグ5Bを構成するスイッチング素子53,54の4つのスイッチング素子をスイッチング動作させる方式によって得られる。この方式は、正側電圧指令Vref1と負側電圧指令Vref2の双方でスイッチング動作させることから、「両側PWM」と呼ばれる。これに対し、電圧指令Vrefの1周期Tのうちの一方の半周期では、スイッチング素子51,52のスイッチング動作を休止させ、電圧指令Vrefの1周期Tのうちの他方の半周期では、スイッチング素子53,54のスイッチング動作を休止させる方式もある。この方式は、「片側PWM」と呼ばれる。以下、「片側PWM」について説明する。
図6は、図3に示されるキャリア比較部38の他の構成例を示すブロック図である。図6には、上述した「片側PWM」によるPWM信号の生成回路の一例が示され、具体的には、キャリア比較部38の一例であるキャリア比較部38B及びキャリア生成部33の詳細構成が示されている。なお、図6に示されるキャリア生成部33の構成は、図4に示されるものと同一または同等である。また、図6に示されるキャリア比較部38Bの構成において、図4に示されるキャリア比較部38Aと同一または同等の構成部には同一の符号を付して示している。
キャリア比較部38Bは、図6に示されるように、絶対値演算部38a、除算部38b、乗算部38c、乗算部38k、加算部38m、加算部38n、比較部38g、比較部38h、出力反転部38i及び出力反転部38jを有する。
絶対値演算部38aは、電圧振幅指令Vの絶対値|V|を演算する。除算部38bは、絶対値|V|を、電圧センサ20で検出された直流電圧Vdcによって除算する。図6の構成でも、除算部38bの出力が変調率となる。
乗算部38cは、基準位相θに進角位相θを加えた“θ+θ”の正弦値を演算する。乗算部38cは、“θ+θ”の正弦値を、除算部38bの出力である変調率に乗算する。乗算部38kは、乗算部38cの出力である電圧指令Vrefに“−1”を乗算する。加算部38mは、乗算部38cの出力である電圧指令Vrefに“1”を加算する。加算部38nは、乗算部38kの出力、即ち電圧指令Vrefの反転出力に“1”を加算する。加算部38mの出力は、複数のスイッチング素子51,52,53,54のうち、上アームの2つのスイッチング素子51,53を駆動するための第1電圧指令Vref3として比較部38gに入力される。加算部38nの出力は、下アームの2つのスイッチング素子52,54を駆動するための第2電圧指令Vref4として比較部38hに入力される。
比較部38gは、第1電圧指令Vref3と、キャリアの振幅とを比較する。比較部38gの出力を反転した出力反転部38iの出力は、スイッチング素子51へのPWM信号Q1となり、比較部38gの出力は、スイッチング素子52へのPWM信号Q2となる。同様に、比較部38hは、第2電圧指令Vref4と、キャリアの振幅とを比較する。比較部38hの出力を反転した出力反転部38jの出力は、スイッチング素子53へのPWM信号Q3となり、比較部38hの出力は、スイッチング素子54へのPWM信号Q4となる。出力反転部38iにより、スイッチング素子51とスイッチング素子52とが同時にオンされることはない。出力反転部38jにより、スイッチング素子53とスイッチング素子54とが同時にオンされることはない。
図7は、図6に示されるキャリア比較部38Bにおける要部の波形例を示すタイムチャートである。図7には、加算部38mから出力される第1電圧指令Vref3の波形と、加算部38nから出力される第2電圧指令Vref4の波形と、PWM信号Q1,Q2,Q3,Q4の波形と、モータ印加電圧の波形とが示されている。なお、図7では、便宜的に、キャリアのピーク値よりも振幅値が大きくなる第1電圧指令Vref3の波形部分と、キャリアのピーク値よりも振幅値が大きくなる第2電圧指令Vref4の波形部分は、フラットな直線で表されている。
PWM信号Q1は、第1電圧指令Vref3がキャリアよりも大きいときに“ロー(Low)”となり、第1電圧指令Vref3がキャリアよりも小さいときに“ハイ(High)”となる。PWM信号Q2は、PWM信号Q1の反転信号である。PWM信号Q3は、第2電圧指令Vref4がキャリアよりも大きいときに“ロー(Low)”となり、第2電圧指令Vref4がキャリアよりも小さいときに“ハイ(High)”となる。PWM信号Q4は、PWM信号Q3の反転信号である。このように、図6に示される回路は、“ローアクティブ(Low Active)”で構成されているが、それぞれの信号が逆の値となる“ハイアクティブ(High Active)”で構成されていてもよい。
インバータ出力電圧の波形は、図7に示されるように、PWM信号Q1とPWM信号Q4との差電圧による電圧パルスと、PWM信号Q3とPWM信号Q2との差電圧による電圧パルスとが表れる。これらの電圧パルスが、モータ印加電圧として、インバータ11から単相モータ12に印加される。
図7に示される波形では、電圧指令Vrefの1周期Tのうちの一方の半周期では、スイッチング素子51,52のスイッチング動作が休止し、電圧指令Vrefの1周期Tのうちの他方の半周期では、スイッチング素子53,54のスイッチング動作が休止している。
また、図7に示されるように、インバータ出力電圧の波形は、電圧指令Vrefの1周期ごとに3つの電位で変化するユニポーラ変調となる。前述の通り、ユニポーラ変調に代えてバイポーラ変調を用いてもよいが、モータ電流波形をより正弦波に制御する必要がある用途では、ユニポーラ変調を採用することが好ましい。
つぎに、本実施の形態における進角制御について、図8から図10の図面を参照して説明する。図8は、図1に示される制御部25の機能部位のうち、図4に示されるキャリア比較部38A及び図6に示されるキャリア比較部38Bに入力される進角位相θを算出するための機能構成を示すブロック図である。図9は、実施の形態1に係る制御部25における進角位相θの算出方法の一例を示す図である。図10は、図4及び図6に示される電圧指令Vrefと進角位相θとの関係の説明に使用するタイムチャートである。
進角位相θの算出機能は、図8に示されるように、検出電流信号処理部41と、位置推定部42と、回転速度算出部43と、進角位相算出部44とによって実現できる。検出電流信号処理部41は、電流検出部22で検出された電流Iに対してノイズを除去する信号処理を行う。位置推定部42は、検出電流信号処理部41でノイズが除去された電流Iから、単相モータ12のロータ12aの位置を推定する。検出電流信号処理部41および位置推定部42の詳細な構成及び動作については後述する。回転速度算出部43は、位置推定部42で推定された単相モータ12のロータ12aの推定位置に基づいて、単相モータ12の回転速度ωを算出する。また、回転速度算出部43は、ロータ12aの基準位置からの角度であるロータ機械角θを電気角に換算した基準位相θを算出する。図10の例では、推定位置が立ち下がるエッジの部分がロータ12aの基準位置とされている。進角位相算出部44は、回転速度算出部43で算出された回転速度ω及び基準位相θに基づいて、進角位相θを算出する。
図9では、横軸には回転速度Nが示され、縦軸には進角位相θが示されている。図9に示されるように、進角位相θは、回転速度Nの増加に対して進角位相θが増加する関数を用いて決定することができる。図9の例では、1次の線形関数により進角位相θを決定しているが、1次の線形関数に限定されない。回転速度Nの増加に応じて進角位相θが同じ、または大きくなる関係であれば、1次の線形関数以外の関数を用いてもよい。
図10の上段部には、位置推定部42で推定された単相モータ12のロータ12aの推定位置と、図1に示すロータ12aの基準位置からの角度であるロータ機械角θと、ロータ機械角θを電気角に換算した位相である基準位相θとが示されている。また、図10の中段部には、「例1」及び「例2」として、2つの電圧指令Vrefの波形例が示されている。また、図10の最下段部には、ロータ12aが時計方向に回転したときのロータ機械角θが0°,45°,90°,135°及び180°である状態が示されている。単相モータ12のロータ12aには4つの磁石が設けられ、ロータ12aの外周には4つのティース12b1が設けられている。位置推定部42は、ロータ12aが時計方向に回転した場合、ロータ機械角θに応じたロータ12aの位置を推定する。回転速度算出部43は、位置推定部42で推定された単相モータ12のロータ12aの推定位置に基づいて、電気角に換算した基準位相θを算出する。
図10の中段部において、「例1」として示される電圧指令Vrefは、進角位相θ=0の場合の電圧指令である。進角位相θ=0の場合、基準位相θと同相の電圧指令Vrefが出力される。なお、このときの電圧指令Vrefの振幅は、前述した電圧振幅指令Vに基づいて決定される。
また、図10の中段部において、「例2」として示される電圧指令Vrefは、進角位相θ=π/4の場合の電圧指令である。進角位相θ=π/4の場合、基準位相θから進角位相θの成分であるπ/4進めた電圧指令Vrefが出力される。
上記に示した進角制御に限らず、単相モータ12の制御には、ロータ12aの正確な位置情報が必要となる。モータ駆動システム1は、位置センサを搭載している場合には、位置センサから出力される位置センサ信号に基づいて基準位相θを算出することが可能であるが、位置センサを搭載しない位置センサレス制御においては、ロータ12aの位置を検出する別の手段が必要となる。
ロータ12aの位置推定については、様々な手段が検討されている。例えば、リラクタンストルクを用いることで高効率駆動が可能な3相の埋め込み永久磁石同期電動機(IPMSM:Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)では、その構造から回転角に応じて巻線のインダクタンス成分が変化する。3相のIPMSMでは、印加する電圧指令に高周波を重畳し、巻線に流れる高周波の電流からインダクタンス値を測定し、位置を推定することができる。しかしながら、この方法では高周波を重畳するため、高周波音、トルクリプルなどが発生する問題があった。
しかしながら、IPMSMの構造を3相から単相に変更することで、この問題を解決することができる。図11は、実施の形態1に係る単相モータ12である単相の埋め込み永久磁石同期電動機の構成例を示す図である。単相構造のIPMSMは、ロータ12aの回転角に対して巻線の端子間のインダクタンス値が変化する構造となっている。そのため、モータ駆動装置2は、このインダクタンス値の変化から、上述した位置推定と同様に電流から単相モータ12のロータ12aの位置を推定することが可能である。
3相のIPMSMでは、回転座標上からモータの回転速度、電流などを制御する方式が一般的である。しかしながら、回転座標上では3相IPMSMの突極比による巻線のインダクタンス値の変化が観測されない。そのため、3相IPMSMを用いる場合は、前述したような、回転角速度よりも速い高周波を重畳する方式によって位置を推定する。これに対して、単相のIPMSMでは、回転座標上においても巻線のインダクタンス値の変化が観測される。すなわち、インバータ11が接続される単相モータ12の端子間において、単相モータ12の回転角に応じて単相モータ12の端子間インダクタンス値が増減する。そのため、高周波を印加せずに、単相モータ12を回転させている基本波の電流から位置を推定することが可能となっている。なお、図11では2極のロータ12aを図示しているが、極数を限定する意味ではない。
本実施の形態では、単相モータ12として、図11に示したような単相のIPMSMを想定している。単相モータ12では、ロータ12aの突極性により、回転角度に対して磁束が均一に分布されない。そのため、単相モータ12では、コイルのインダクタンス成分が図12に示すように回転角に応じて変化する。図12は、実施の形態1に係るモータ駆動システム1の単相モータ12におけるインダクタンス値の変化を示す図である。インダクタンス値の変化については、以下の式(1)の通りである。
L(θ)=Lampsin2θ+Lbias …(1)
式(1)において、Lampはインダクタンス値の振幅であり、Lbiasはインダクタンス値のオフセットであり、θは基準位相である。Lbiasは、図12に示すように、突極無しの場合のインダクタンス値に相当する。
単相モータ12の巻線に流れる電流は下記の通りである。まず、インバータ11から単相モータ12に印加される電圧Vは、以下の式(2)の通りである。
Figure 2020208789
式(2)において、Vはインバータ印加電圧であり、Rは単相モータ12の巻線の抵抗であり、Iは単相モータ12の巻線に流れる電流であり、eは誘起電圧である。式(2)を以下のように変形する。
Figure 2020208789
Figure 2020208789
Figure 2020208789
ここで、dt×R<<1より、dt×R≒0とすると、式(5)は以下の通りとなる。
Figure 2020208789
=Vampsin(θ+θ) …(7)
=eampsinθ …(8)
ここで、Vampはインバータ印加電圧交流振幅であり、eampは誘起電圧交流振幅であり、θは進角位相であり、単相モータ12の回転数が一定であれば進角位相θは定数である。式(6)のV−eは、以下の式(9)のように表すことができる。
Figure 2020208789
単相モータ12の回転数を一定とし、Vampcosθ、Vampsinθ及びeampを、それぞれVampcosθ=A、Vampsinθ=B及びeamp=Cのように定数で表すと、式(9)は式(10)のように表すことができる。ただし、βは式(11)の通りとする。
Figure 2020208789
Figure 2020208789
従って、電流Iは式(12)のように表すことができる。
Figure 2020208789
また、式(1)より、式(12)は式(13)のように表すことができる。
Figure 2020208789
式(13)より、電流Iの分母は、ロータ12aの位置と同期して値が変化することが確認できる。基準位相θの周波数を基準すなわち基本波1fとした場合、電流Iは分子に基本波1f成分、分母に2f成分が含まれることになる。式(13)の第一項を簡易的に周波数解析した結果を図13に示す。図13は、実施の形態1に係る単相モータ12に流れる電流Iを簡易的に周波数解析した結果を示す図である。図13では、基本波1f成分sinxを#1のスペクトルで示し、2f成分sin2xを#2のスペクトルで示し、2f成分の波形にオフセットをもたせて除算した1/(sin2x+offset)を#3のスペクトルで示している。sinx/(sin2x+offset)を#4のスペクトルで示し、これを式(13)の第一項と仮定している。図13で示すように、電流Iに含まれる周波数成分は、#4のスペクトルより基本波の奇数倍(2n+1)を含むことが容易に理解できる。この(2n+1)f成分は、インダクタンスLの位相成分を含んでいる。そのため、位置推定部42は、電流Iに含まれる(2n+1)fの信号に対してフーリエ変換による信号処理を行って位相を検出することで、ロータ12aの位置を推定することができる。なお、nは自然数とする。
図13に示す通り、基本波1f成分に対して(2n+1)fの奇数倍の高調波は、次数が低いスペクトルのパワーが大きいため、精度よく位相を検出する際には3次の周波数成分を用いるのがよい。しかしながら、信号処理の方法、電流検出回路の構成によっては必ずしも3次の周波数成分を精度よく検出できるとは限らない。そのため、5次、7次といった奇数倍の高調波のどの成分を用いるかについては限定しない。
モータ駆動装置2は、複数の奇数倍のスペクトルのそれぞれに対して位相検出を行い、平均化を行うことで位相検出の精度を高めることも可能である。例えば、3次、5次、7次の高調波から位相を検出し、平均化を行う。このとき、モータ駆動装置2は、前述したように次数の低いスペクトルのパワーが大きいため、次数の低いスペクトルの検出結果を強く反映させるために、平均化に対して次数ごとに重み付けをしてもよい。
インダクタンス成分を含む回路に流れる電流は、印加した電圧に対して位相が遅れることは自明である。前述した奇数倍の高調波から位相を検出した際に、この電流の遅れ分を補正する必要がある。単相モータ12の巻線回路をRL回路と仮定し、あらかじめ巻線のパラメータを保持しておくことで、電流の遅れを時定数τとして以下の式(14)より算出する。
τ=Lbias/R …(14)
モータ電流の基本波の奇数倍(2n+1)の周波数成分を抽出して位置を推定するため、モータ電流を検出する際にはこの基本波の奇数倍(2n+1)の周波数成分を検出する必要がある。この電流を検出する手段は、前述したように、電流センサなどの検出器を用いる方法、シャント抵抗による電圧降下から電流を算出する方式など様々な方式が考えられる。これらの電流検出では、ノイズ成分を除去するためにローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter)の使用が一般的である。ただし、前述のように、位置推定には電流の基本波に対する奇数倍の高調波を使用する必要があるため、この奇数倍の高調波を取り除かないようなLPFの設計が必須である。
図14は、実施の形態1に係る検出電流信号処理部41の構成例を示す図である。また、図15は、実施の形態1に係る検出電流信号処理部41の他の構成例を示す図である。モータの回転速度ωに比例して巻線の電流の基本波周波数は変化するため、同様に奇数倍の高調波もモータの回転速度に比例して変化する。そのため、検出電流信号処理部41は、図14に示すように、カットオフ周波数の異なるLPFを複数用意し、現在のモータの回転速度に対応して検出する電流信号をセレクタ回路411にて選択する。または、検出電流信号処理部41は、図15に示すように、あらかじめモータの最大回転速度fmaxの3倍のカットオフ周波数をもつLPFを1つ使用してもよい。検出電流信号処理部41は、何れの方法においても、巻線に流れる電流の基本波及び奇数倍の高調波のうち少なくとも3次の高調波成分が検出できればよい。
図16は、実施の形態1に係るモータ駆動装置2における単相モータ12のロータ12aの位置を推定する動作を示すフローチャートである。モータ駆動装置2において、電流検出部22は、電流Iを検出する(ステップST1)。制御部25において、検出電流信号処理部41は、電流検出部22で検出された電流Iから、LPFにてノイズを除去する(ステップST2)。位置推定部42は、検出電流信号処理部41でノイズが除去された電流Iから、基本波1fに対して3次の高調波成分を含む電流を取得する(ステップST3)。位置推定部42は、3次の高調波成分を含む電流に対してフーリエ変換を行い、3次成分の位相を抽出する(ステップST4)。位置推定部42は、抽出した位相から単相モータ12のロータ12aの位置を推定する(ステップST5)。回転速度算出部43以降の動作は前述の通りである。
なお、検出電流信号処理部41で使用するフィルタとしてLPFについて記述したが、これに限定されない。検出電流信号処理部41では、バンドパスフィルタなど、電流の基本波及び奇数倍の高調波を検出することができれば、フィルタの形態は問わない。また、検出電流信号処理部41では、フィルタについて、回路上にアナログ回路として構成してもよいし、マイコン内部のデジタル回路として構成してもよい。
また、位相を推定するのに電流値を用いる場合について説明したが、これに限定されない。電流と電圧とはZをインピーダンスとするとV=ZIのように比例関係にあるため、モータ駆動装置2は、モータに印加される電圧を直接検出し、基本波の奇数次倍の周波数位相を検出して位置を推定してもよい。前述のように、電圧センサ20の検出対象は、モータ駆動装置2の出力電圧であるインバータ出力電圧であってもよい。すなわち、制御部25は、単相モータ12に出力される交流電圧から、インバータ11が単相モータ12に出力する交流電圧の基本波に対して2n+1倍の周波数成分を含む電圧を検出し、2n+1倍の周波数成分から位相を算出し、単相モータ12のロータ12aの位置を推定する。
上記の単相のIPMSM構造による突極比をもつインダクタンス成分を利用した位置推定方法は、位置センサを用いないで位置推定が可能で、誘起電圧を利用する方式と異なり、モータが低速時にもその効果を発揮できることが大きなメリットである。
つづいて、モータ駆動装置2が備える制御部25のハードウェア構成について説明する。図17は、実施の形態1に係るモータ駆動装置2が備える制御部25を実現するハードウェア構成の一例を示す図である。制御部25は、プロセッサ201及びメモリ202により実現される。
プロセッサ201は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)、またはシステムLSI(Large Scale Integration)である。メモリ202は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)といった不揮発性または揮発性の半導体メモリを例示できる。また、メモリ202は、これらに限定されず、磁気ディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)でもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、モータ駆動装置2において、制御部25は、電流検出部22で検出された電流Iから、インバータ11が単相モータ12に出力する交流電圧の基本波に対して2n+1倍の周波数成分を含む電流を検出し、検出した2n+1倍の電流の周波数成分から位相を算出し、単相モータ12のロータ12aの位置を推定する。これにより、単相モータ12において位置センサ搭載によるコスト増加、制御性の悪化などを抑制しながら、効果的に単相モータ12の回転数制御を実現できる。
実施の形態2.
実施の形態2では、実施の形態1で説明したモータ駆動装置2の適用例について説明する。
図18は、実施の形態2に係るモータ駆動装置2を備える電動送風機64の構成例を示す図である。電動送風機64は、実施の形態1で説明したモータ駆動装置2を備え、モータ駆動装置2が駆動する単相モータ12に対してプロペラ69が装着されている。電動送風機64は、モータ駆動装置2が単相モータ12を回転させることで、風を送り出すまたは吸引する構造となっている。
図19は、実施の形態2に係る電動送風機64を備える電気掃除機61の構成例を示す図である。電気掃除機61は、図1に示されるバッテリ10に相当するバッテリ67と、図1に示されるモータ駆動装置2と、図1に示される単相モータ12により駆動される電動送風機64とを備える。また、電気掃除機61は、集塵室65と、センサ68と、吸込口体63と、延長管62と、操作部66とを備える。
電気掃除機61を使用する使用者は、操作部66を持ち、電気掃除機61を操作する。電気掃除機61のモータ駆動装置2は、バッテリ67を電源として電動送風機64を駆動する。電動送風機64が駆動されることにより、吸込口体63からごみの吸込みが行われる。吸込まれたごみは、延長管62を介して集塵室65へ集められる。
電気掃除機61は、単相モータ12の回転速度が0[rpm]から10万[rpm]を超えて変動する製品である。このような単相モータ12が高速回転する製品を駆動する際には、高いキャリア周波数が必要となる。そのため、従来の電流検出方式では、A/D変換タイミングを調整することが難しく、スイッチング時間も短くなり検出がより困難となる。そのため、前述した実施の形態1に係る制御手法が好適である。
単相モータ12に電圧指令に基づく電圧を出力する際、制御部25は、電圧指令の周期のうちの一方の半周期では、上アーム第1素子と下アーム第1素子とのスイッチング動作を休止させ、電圧指令の周期のうちの他方の半周期では、上アーム第2素子と下アーム第2素子とのスイッチング動作を休止させる。これにより、スイッチング損失の増加が抑制され、効率のよい電気掃除機61を実現することができる。
また、実施の形態に係る電気掃除機61は、インバータ11のスイッチング素子51,52,53,54をワイドバンドギャップ半導体により形成することで、放熱部品の簡素化により小型化及び軽量化することができる。
図20は、実施の形態2に係る電動送風機64を備えるハンドドライヤ90の構成例を示す図である。ハンドドライヤ90は、ケーシング91と、手検知センサ92と、水受け部93と、ドレン容器94と、カバー96と、センサ97と、吸気口98と、電動送風機64と、を備える。ここで、センサ97は、ジャイロセンサ及び人感センサの何れかである。ハンドドライヤ90では、水受け部93の上部にある手挿入部99に手が挿入されることにより、電動送風機64による送風で水が吹き飛ばされ、吹き飛ばされた水は、水受け部93で集められた後、ドレン容器94に溜められる。
ハンドドライヤ90は、図19に示す電気掃除機61と同様に、モータ回転数が0[rpm]から10万[rpm]を超えて変動する製品である。このため、ハンドドライヤ90においても、前述した実施の形態に係る制御手法が好適であり、電気掃除機61と同様な効果を得ることができる。
以上の説明の通り、本実施の形態では、電気掃除機61及びハンドドライヤ90にモータ駆動装置2を適用した構成例を説明したが、モータ駆動装置2は、モータが搭載された電気機器に適用することができる。モータが搭載された電気機器は、焼却炉、粉砕機、乾燥機、集塵機、印刷機械、クリーニング機械、製菓機械、製茶機械、木工機械、プラスチック押出機、ダンボール機械、包装機械、熱風発生機、OA機器、電動送風機などである。電動送風機は、物体輸送用、吸塵用、または一般送排風用の送風手段である。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
1 モータ駆動システム、2 モータ駆動装置、5A 第1レグ、5B 第2レグ、6A,6B 接続点、10,67 バッテリ、11 インバータ、12 単相モータ、12a ロータ、12b ステータ、12b1 ティース、20 電圧センサ、22 電流検出部、25 制御部、32 駆動信号生成部、33 キャリア生成部、38,38A,38B キャリア比較部、38a 絶対値演算部、38b 除算部、38c,38d,38f,38k 乗算部、38e,38m,38n 加算部、38g,38h 比較部、38i,38j 出力反転部、41 検出電流信号処理部、42 位置推定部、43 回転速度算出部、44 進角位相算出部、51,52,53,54 スイッチング素子、51a,52a,53a,54a ボディダイオード、61 電気掃除機、62 延長管、63 吸込口体、64 電動送風機、65 集塵室、66 操作部、68,97 センサ、90 ハンドドライヤ、91 ケーシング、92 手検知センサ、93 水受け部、94 ドレン容器、96 カバー、98 吸気口、99 手挿入部、102 スイッチ。

Claims (9)

  1. 永久磁石を有する単相モータに交流電圧を出力するインバータと、
    前記単相モータの動作状態を表す物理量を検出する検出部と、
    前記検出部で検出された前記物理量から、前記インバータが前記単相モータに出力する前記交流電圧の基本波に対して2n+1倍の周波数成分を含む電流を検出する制御部と、
    を備え、nは自然数であるモータ駆動装置。
  2. 前記インバータが接続される前記単相モータの端子間において、前期単相モータの回転角に応じて前記単相モータの端子間インダクタンス値が増減する、
    請求項1に記載のモータ駆動装置。
  3. 前記物理量は前記単相モータに流れる電流であり、
    前記制御部は、前記2n+1倍の周波数成分を含む電流から位相を算出し、前記単相モータのロータの位置を推定する、
    請求項1または2に記載のモータ駆動装置。
  4. 前記物理量は前記インバータから前記単相モータに出力される前記交流電圧であり、
    前記制御部は、前記交流電圧から、前記インバータが前記単相モータに出力する前記交流電圧の基本波に対して2n+1倍の周波数成分を含む電圧を検出し、前記2n+1倍の周波数成分から位相を算出し、前記単相モータのロータの位置を推定する、
    請求項1または2に記載のモータ駆動装置。
  5. 前記インバータが有する複数のスイッチング素子のうちの少なくとも1つはワイドバンドギャップ半導体で形成されている請求項1から4のいずれか1つに記載のモータ駆動装置。
  6. 前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム、またはダイヤモンドである請求項5に記載のモータ駆動装置。
  7. 請求項1から6のいずれか1つに記載のモータ駆動装置を備える電動送風機。
  8. 請求項7に記載の電動送風機を備える電気掃除機。
  9. 請求項7に記載の電動送風機を備えるハンドドライヤ。
JP2021513124A 2019-04-11 2019-04-11 モータ駆動装置、電動送風機、電気掃除機及びハンドドライヤ Active JP7170848B2 (ja)

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