JPWO2020194653A1 - 高周波焼入れが実施される鋼 - Google Patents
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Abstract
Description
fn1=80C2+55C+13Si+4.8Mn+30P+30S+1.5Cr (1)
fn2=C+(Si/10)+(Mn/5)−(5S/7)+(5Cr/22)+1.65V (2)
fn3=−2C−Si+2.33Mn+0.26Cr+V−1.5Cu−1.5Ni (3)
化学組成が、質量%で、
C:0.25〜0.50%、
Si:0.01〜0.30%未満、
Mn:0.60〜2.00%、
P:0.030%以下、
S:0.010超〜0.095%、
Cr:0.05〜1.00%、
N:0.0040〜0.0200%、
O:0.0024%以下、
Cu:0.05%以下、
Ni:0.05%以下、
V:0〜0.050%未満、
Al:0〜0.040%、
Nb:0〜0.020%、
Pb:0〜0.30%、
Ca:0〜0.0100%、
Mo:0〜0.20%、
B:0〜0.0030%、
Ti:0〜0.020%、及び、
残部がFe及び不純物、からなり、
式(1)で定義されるFN1が55.0以下であり、
式(2)で定義されるFN2が0.45〜0.70未満であり、
式(3)で定義されるFN3が1.00以上であり、
鋼中において、20.0質量%以上の酸素を含有する酸化物の個数に対する、20.0質量%以上の酸素及び10.0質量%以上のMnを含有するMn酸化物の個数の割合は、10.0%以下であり、
ミクロ組織において、
フェライトの面積率は10%以上であり、ベイナイト及びマルテンサイトの総面積率が5%以下であり、残部はパーライトであり、
パーライト領域の幅は200μm以下である。
FN1=80C2+55C+13Si+4.8Mn+30P+30S+1.5Cr (1)
FN2=C+(Si/10)+(Mn/5)−(5S/7)+(5Cr/22)+1.65V (2)
FN3=−2C−Si+2.33Mn+0.26Cr+V−1.5Cu−1.5Ni (3)
ここで、式(1)〜式(3)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
C、Si、Mn及びCrは、焼入れ性を高め、疲労強度を高める。しかしながら、C、Si、Mn及びCrと、P及びSとは、鋼の融点を低下する。鋼の融点が低下すれば、高周波焼入れの加熱時に溶融割れが発生しやすくなる。したがって、疲労強度を高めるためにC、Si、Mn及びCrは必須元素として含有するものの、溶融割れを考慮した場合、C、Si、Mn、P、S及びCrの総含有量を規制する方が好ましい。
FN1=80C2+55C+13Si+4.8Mn+30P+30S+1.5Cr (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
FN3=−2C−Si+2.33Mn+0.26Cr+V−1.5Cu−1.5Ni (3)
ここで、式(3)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
FN1及びFN3が上記要件を満たすことを前提として、鋼の熱間鍛造後の疲労強度及び被削性について、本発明者はさらに検討した。上述のとおり、疲労強度及び被削性は、熱間鍛造後の鋼の硬さと相関関係を有する。具体的には、鋼の硬さが高ければ、疲労強度が高まる。しかしながら、被削性は低下する。したがって、鋼の硬さを適切な範囲とすることにより、疲労強度及び被削性を両立することができる。
FN2=C+(Si/10)+(Mn/5)−(5S/7)+(5Cr/22)+1.65V (2)
ここで、式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
しかしながら、化学組成の各元素が上述の範囲内であって、FN1〜FN3が上述の範囲内であっても、依然として、ビッカース硬さが過剰に高くなる場合があった。この場合、被削性が低くなってしまう。そこで、本発明者は、鋼のビッカース硬さ(被削性)について、上述の化学組成だけでなく、ミクロ組織の観点から検討を行った。その結果、次の知見を得た。
化学組成の各元素が上述の範囲内であって、FN1〜FN3が上述の範囲内である鋼のビッカース硬さを抑えるためには、ミクロ組織において、フェライト面積率が10%以上であり、ベイナイト及びマルテンサイトの総面積率が5%以下であり、残部がパーライトである必要がある。
しかしながら、本発明者のさらなる調査の結果、化学組成の各元素が上述の範囲内であって、FN1〜FN3が上述の範囲内であって、さらに、ミクロ組織において、フェライト面積率が10%以上であり、低温変態相の面積率が5%以下であり、残部がパーライトであっても、依然としてビッカース硬さが高くなりすぎる場合があった。そこで、本発明者がさらに検討した結果、次の知見を得た。
(A)隣り合うフェライト粒の間に配置されている1つのパーライトブロック
(B)隣り合うフェライト粒の間に連続して配置されている複数のパーライトブロック
なお、パーライトブロックとは、パーライト中のフェライトの結晶方位が同じ領域を意味する。
化学組成が、質量%で、
C:0.25〜0.50%、
Si:0.01〜0.30%未満、
Mn:0.60〜2.00%、
P:0.030%以下、
S:0.010超〜0.095%、
Cr:0.05〜1.00%、
N:0.0040〜0.0200%、
O:0.0024%以下、
Cu:0.05%以下、
Ni:0.05%以下、
V:0〜0.050%未満、
Al:0〜0.040%、
Nb:0〜0.020%、
Pb:0〜0.30%、
Ca:0〜0.0100%、
Mo:0〜0.20%、
B:0〜0.0030%、
Ti:0〜0.020%、及び、
残部がFe及び不純物、からなり、
式(1)で定義されるFN1が55.0以下であり、
式(2)で定義されるFN2が0.45〜0.70未満であり、
式(3)で定義されるFN3が1.00以上であり、
鋼中において、20.0質量%以上の酸素を含有する酸化物の個数に対する、20.0質量%以上の酸素及び10.0質量%以上のMnを含有するMn酸化物の個数の割合は、10.0%以下であり、
ミクロ組織において、
フェライトの面積率は10%以上であり、ベイナイト及びマルテンサイトの総面積率が5%以下であり、残部はパーライトであり、
パーライト領域の幅は200μm以下である。
FN1=80C2+55C+13Si+4.8Mn+30P+30S+1.5Cr (1)
FN2=C+(Si/10)+(Mn/5)−(5S/7)+(5Cr/22)+1.65V (2)
FN3=−2C−Si+2.33Mn+0.26Cr+V−1.5Cu−1.5Ni (3)
ここで、式(1)〜式(3)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
前記化学組成は、
V:0.010〜0.050%未満、
Al:0.005〜0.040%、
Nb:0.005〜0.020%、
Pb:0.10〜0.30%、
Ca:0.0010〜0.0100%、
Mo:0.05〜0.20%、
B:0.0005〜0.0030%、及び、
Ti:0.005〜0.020%、
からなる群から選択される1元素又は2元素以上を含有する。
本実施形態の鋼の化学組成は、次の元素を含有する。
炭素(C)は、高周波焼入れされた鋼部分の硬さ、及び、鋼の内部硬さを高める。C含有量が0.25%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、この効果が十分に得られない。一方、C含有量が0.50%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、高周波焼入れの加熱時に溶融割れが発生する。したがって、C含有量は0.25〜0.50%である。C含有量の好ましい下限は0.26%であり、さらに好ましくは0.27%であり、さらに好ましくは0.28%であり、さらに好ましくは0.30%である。C含有量の好ましい上限は0.49%であり、さらに好ましくは0.48%であり、さらに好ましくは0.47%である。
シリコン(Si)は、鋼を脱酸する。Siはさらに、フェライトを強化して鋼の内部硬さを高める。Si含有量が0.01%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、この効果が十分に得られない。一方、Siは粒界C濃度上昇元素である。そのため、Si含有量が0.30%以上であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、高周波焼入れにおいて加熱温度が1300℃を超えた場合、溶融割れの発生を促進する。したがって、Si含有量は0.01〜0.30%未満である。Si含有量の好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましくは0.03%であり、さらに好ましくは0.04%である。Si含有量の好ましい上限は0.29%であり、さらに好ましくは0.28%であり、さらに好ましくは0.25%であり、さらに好ましくは0.22%であり、さらに好ましくは0.20%である。
マンガン(Mn)は、粒界C濃度低下元素であり、Cと結合してCを固定する。そのため、Mnは、高周波焼入れにおいて加熱温度が1300℃を超えても、溶融割れを抑制できる。Mnはさらに、鋼を脱酸する。Mnはさらに、鋼の焼入れを高め、内部硬さを高める。Mn含有量が0.60%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、これらの効果が得られない。一方、Mn含有量が2.00%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、内部硬さが高くなりすぎて被削性が低下する。したがって、Mn含有量は0.60〜2.00%である。Mn含有量の好ましい下限は0.65%であり、さらに好ましくは0.70%であり、さらに好ましくは0.80%であり、さらに好ましくは0.85%である。Mn含有量の好ましい上限は1.80%であり、さらに好ましくは1.60%であり、さらに好ましくは1.50%であり、さらに好ましくは1.45%であり、さらに好ましくは1.40%である。
燐(P)は不可避に含有される不純物である。つまり、P含有量は0%超である。P含有量が0.030%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、熱間鍛造性が低下する。さらに、高周波焼入れの加熱時において、溶融割れが発生しやすくなる。したがって、P含有量は0.030%以下である。P含有量の好ましい上限は0.025%であり、さらに好ましくは0.020%であり、さらに好ましくは0.018%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。ただし、脱燐処理は時間とコストが掛かるため、工業生産性を考慮すれば、P含有量の好ましい下限は0.003%である。
硫黄(S)は硫化物系介在物を生成し、鋼の被削性を高める。S含有量が0.010%以下であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、この効果が得られない。一方、S含有量が0.095%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、高周波焼入れの加熱時において溶融割れが発生しやすくなる。したがって、S含有量は0.010超〜0.095%である。なお、Si、Cu、Ni、Mn、Cr、及びV含有量が適正に制御されない場合、S含有量が0.035%を超えれば、溶融割れが発生しやすくなる。しかしながら、本実施形態では、後述のとおり、FN3を1.00以上とすることにより、粒界C濃度上昇元素(Si、Cu、Ni)及び粒界C濃度低下元素(Mn、Cr、V)の含有量を適正に制御する。そのため、S含有量が0.095%以下であれば、溶融割れの発生を抑制できる。S含有量の好ましい下限は0.015%であり、さらに好ましくは0.018%であり、さらに好ましくは0.020%である。S含有量の好ましい上限は0.070%であり、さらに好ましくは0.066%であり、さらに好ましくは0.060%である。
クロム(Cr)は、粒界C濃度低下元素であり、Cと結合してCを固定する。そのため、Crは、高周波焼入れにおいて加熱温度が1300℃を超えても、溶融割れの発生を抑制する。Crはさらに、鋼の焼入れ性及び内部硬さを高める。Cr含有量が0.05%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、これらの効果が十分に得られない。一方、Cr含有量が1.00%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、内部硬さが高くなりすぎて鋼の被削性が低下する。したがって、Cr含有量は0.05〜1.00%である。Cr含有量の好ましい下限は0.06%であり、さらに好ましくは0.07%であり、さらに好ましくは0.08%であり、さらに好ましくは0.10%である。Cr含有量の好ましい上限は0.95%であり、さらに好ましくは0.90%であり、さらに好ましくは0.80%であり、さらに好ましくは0.70%であり、さらに好ましくは0.66%であり、さらに好ましくは0.50%であり、さらに好ましくは0.40%である。
窒素(N)は、本実施形態の非調質鋼を熱間鍛造した後の冷却過程において、窒化物及び炭窒化物を形成して組織を微細化し、鋼を強化する。N含有量が0.0040%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、これらの効果が十分に得られない。一方、N含有量が0.0200%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、熱間鍛造性が低下する。したがって、N含有量は0.0040〜0.0200%である。N含有量の好ましい下限は0.0045%であり、さらに好ましくは0.0050%であり、さらに好ましくは0.0053%である。N含有量の好ましい上限は0.0150%であり、さらに好ましくは0.0120%であり、さらに好ましくは0.0100%であり、さらに好ましくは0.0090%であり、さらに好ましくは0.0080%である。
酸素(O)は不可避に含有される不純物である。つまり、O含有量は0%超である。Oは鋼中で酸化物を形成し、特に、粒界C濃度低下元素であるMnと結合してMn酸化物を形成する。この場合、γ粒界のC濃度の低下に寄与する固溶Mnが低下する。O含有量が0.0024%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、固溶Mnが過剰に低減して、高周波焼入れにおいて加熱温度が1300℃を超えた場合、溶融割れが発生する。O含有量が0.0024%を超えればさらに、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粗大な酸化物により疲労強度を低下させる。したがって、O含有量は0.0024%以下である。O含有量の好ましい上限は0.0022%であり、さらに好ましくは0.0020%であり、さらに好ましくは0.0018%であり、さらに好ましくは0.0017%である。O含有量はなるべく低い方が好ましい。ただし、脱酸処理は時間とコストが掛かるため、工業生産性を考慮すれば、O含有量の好ましい下限は0.0003%である。
銅(Cu)は不可避に含有される不純物である。つまり、Cu含有量は0%超である。Cuは粒界C濃度上昇元素であり、高周波焼入れ時における溶融割れの発生を促進する。Cu含有量が0.05%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、溶融割れが促進される。したがって、Cu含有量は0.05%以下である。Cu含有量の好ましい上限は0.04%であり、さらに好ましくは0.03%であり、さらに好ましくは0.02%である。Cu含有量はなるべく低い方が好ましい。ただし、工業生産性を考慮すれば、Cu含有量の好ましい下限は0.01%である。
ニッケル(Ni)は不可避に含有される不純物である。つまり、Ni含有量は0%超である。Niは粒界C濃度上昇元素であり、高周波焼入れ時における溶融割れの発生を促進する。Ni含有量が0.05%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、溶融割れが促進される。したがって、Ni含有量は0.05%以下である。Ni含有量の好ましい上限は0.04%であり、さらに好ましくは0.03%であり、さらに好ましくは0.02%である。Ni含有量はなるべく低い方が好ましい。ただし、工業生産性を考慮すれば、Ni含有量の好ましい下限は0.01%である。
本実施形態の鋼の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、V、Al、Nb、Pb、Ca、Mo、B、及び、Tiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
バナジウム(V)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、V含有量は0%であってもよい。含有される場合、Vは、鋼を熱間鍛造した後の冷却過程において、V炭窒化物としてフェライト中に析出する。V炭窒化物はフェライトの硬さを高め、その結果、内部硬さが高まる。さらに、VはCと結合してCを固定することにより、粒界のC濃度を低下する。しかしながら、V含有量が0.050%以上であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、フェライトの硬さが高くなり、被削性が低下する。したがって、V含有量は0〜0.050%未満である。V含有量の好ましい下限は0%超であり、上記効果をさらに有効に得るためのV含有量の好ましい下限は0.010%である。V含有量の好ましい上限は0.045%であり、さらに好ましくは0.040%であり、さらに好ましくは0.035%である。なお、本明細書において、V含有量が0.003%以下の場合、Vは不純物(積極添加ではない)と解釈する。
アルミニウム(Al)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Al含有量は0%であってもよい。含有される場合、Alは鋼を脱酸する。Al含有量が少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Al含有量が0.040%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粗大な酸化物が生成して、疲労強度が低下する。したがって、Al含有量は0〜0.040%である。Al含有量の好ましい下限は0%超であり、上記効果をさらに有効に得るためのAl含有量の好ましい下限は0.005%である。Al含有量の好ましい上限は0.030%である。本明細書において、Al含有量は全Alの含有量を意味する。
ニオブ(Nb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Nb含有量は0%であってもよい。含有される場合、Nbは、鋼を熱間鍛造した後の冷却過程において、炭窒化物を形成して、オーステナイト粒の粗大化を抑制する。そのため、熱間鍛造後の鋼材の靭性が高まる。しかしながら、Nb含有量が0.020%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が飽和する。さらに、製造コストが嵩む。したがって、Nb含有量は0〜0.020%である。Nb含有量の好ましい下限は0%超であり、上記効果をさらに有効に得るためのNb含有量の好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.008%である。Nb含有量の好ましい上限は0.015%である。
鉛(Pb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Pb含有量は0%であってもよい。含有される場合、Pbは鋼の被削性を高める。Pbが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Pb含有量が0.30%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼の熱間鍛造性が低下する。したがって、Pb含有量は0〜0.30%である。Pb含有量の好ましい下限は0%超であり、上記効果をさらに有効に得るためのPb含有量の好ましい下限は0.10%であり、さらに好ましくは0.15%である。Pb含有量の好ましい上限は0.27%である。
カルシウム(Ca)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ca含有量は0%であってもよい。含有される場合、Caは、被削性を高める。Caが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Ca含有量が0.0100%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粗大酸化物を形成し、鋼の疲労強度が低下する。したがって、Ca含有量は0〜0.0100%である。Ca含有量の好ましい下限は0%超であり、上記効果をさらに有効に得るためのCa含有量の好ましい下限は0.0010%であり、さらに好ましくは0.0015%である。Ca含有量の好ましい上限は0.0085%である。
モリブデン(Mo)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Mo含有量は0%であってもよい。含有される場合、Moは鋼の疲労強度を高める。Moが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Mo含有量が0.20%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、熱間鍛造性が低下する。したがって、Mo含有量は0〜0.20%である。Mo含有量の好ましい下限は0%超であり、上記効果をさらに有効に得るためのMo含有量の好ましい下限は0.05%である。Mo含有量の好ましい上限は0.17%である。
ボロン(B)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、B含有量は0%であってもよい。含有される場合、Bは鋼に固溶して鋼の焼入れ性を高める。その結果、高周波焼入れ後の鋼材の面疲労強度を高める。Bが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、B含有量が高すぎれば、上記効果が飽和する。したがって、B含有量は0〜0.0030%である。B含有量の好ましい下限は0%超であり、上記効果をさらに有効に得るためのB含有量の好ましい下限は0.0005%であり、さらに好ましくは0.0007%である。B含有量の好ましい上限は0.0028%であり、さらに好ましくは0.0026%である。
チタン(Ti)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ti含有量は0%であってもよい。含有される場合、Tiは窒化物又は炭化物を形成して、高周波焼入れ時の結晶粒の粗大化を抑制する。その結果、高周波焼入れ後の鋼材の面疲労強度が高まる。Tiはさらに、Nと結合することにより、BがNと結合するのを抑制し、固溶B量を確保する。Tiが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Ti含有量が0.020%を超えれば、粗大なTi窒化物、Ti炭化物が生成して、鋼の冷間加工性が低下する。したがって、Ti含有量は0〜0.020%である。Ti含有量の好ましい下限は0%超であり、上記効果をさらに有効に得るためのTi含有量の下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。Ti含有量の好ましい上限は0.018%であり、さらに好ましくは0.016%である。上述のとおり、Bが含有される場合、Tiも含有される方が好ましい。
上記化学組成ではさらに、式(1)で定義されたFN1が55.0以下である。
FN1=80C2+55C+13Si+4.8Mn+30P+30S+1.5Cr (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
上記化学組成ではさらに、式(2)で定義されたFN2が0.45〜0.70未満である。
FN2=C+(Si/10)+(Mn/5)−(5S/7)+(5Cr/22)+1.65V (2)
ここで、式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
上記化学組成ではさらに、式(3)で定義されたFN3が1.00以上である。
FN3=−2C−Si+2.33Mn+0.26Cr+V−1.5Cu−1.5Ni (3)
ここで、式(3)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本実施形態による鋼ではさらに、鋼中において、20.0質量%以上の酸素を含有する酸化物の個数に対する、20.0質量%以上の酸素及び10.0質量%以上のMnを含有するMn酸化物の個数の割合(Mn酸化物個数比NR=Mn酸化物の個数/酸化物の個数×100)が、10.0%以下である。
本実施形態の鋼ではさらに、ミクロ組織において、フェライト面積率が10%以上であり、ベイナイト及びマルテンサイトの総面積率が5%以下であり、残部がパーライトである。
フェライトは軟質な相である。そのため、フェライトは、鋼の硬さを下げ、被削性を高める。フェライト面積率が10%未満であれば、鋼の硬さが過剰に上昇して、被削性が低下する。したがって、本実施形態の鋼のミクロ組織において、フェライト面積率は10%以上である。フェライト面積率の好ましい下限は15%であり、さらに好ましくは20%であり、さらに好ましくは25%であり、さらに好ましくは30%である。フェライト面積率の上限は特に限定されないが、本実施形態の化学組成の場合、フェライト面積率の上限はたとえば70%である。
本明細書において、ベイナイト及びマルテンサイトを「低温変態相」と称する。低温変態相は、フェライトよりも硬い。そのため、低温変態相の面積率が高ければ、鋼の硬さが過剰に高くなり、被削性が低下する。上述の化学組成を有する鋼のミクロ組織において、ベイナイト及びマルテンサイトの総面積率(つまり、低温変態相の面積率)が5%を超えれば、フェライト面積率が10%以上であっても、鋼の硬さが過剰に高くなり、被削性が低下する。したがって、本実施形態の鋼のミクロ組織において、ベイナイト及びマルテンサイトの総面積率は5%以下である。ベイナイト及びマルテンサイトの総面積率の好ましい上限は4%であり、さらに好ましくは3%であり、さらに好ましくは2%であり、最も好ましくは0%である。つまり、本実施形態の鋼のミクロ組織は、好ましくは、ベイナイト及びマルテンサイトを含有しない。
本実施形態の鋼のミクロ組織の残部はパーライトである。つまり、本実施形態の鋼のミクロ組織において、フェライト面積率は10%以上であり、ベイナイト及びマルテンサイトの総面積率は5%以下であり、残部はパーライトである。なお、ここでいう「ミクロ組織」には、介在物及び析出物は除かれる。
各相(フェライト、低温変態相、パーライト)の面積率は次の方法で求めることができる。鋼のR/2位置を中心としてサンプルを採取する。ここで、R/2位置とは、鋼の長手方向(軸方向)に垂直な断面において、中心と表面との間の距離(つまり半径R)の中央位置を意味する。採取されたサンプルのうち、鋼の長手方向(軸方向)に垂直な面を観察面とする。観察面を研磨した後、サンプルの観察面を3%硝酸アルコール(ナイタール腐食液)を用いてエッチングする。エッチングされた観察面を、100倍の光学顕微鏡にて観察して、任意の5視野の写真画像を生成する。各視野のサイズは800μm×600μmとする。
本実施形態の鋼のミクロ組織において、次の(A)又は(B)を満たす1又は複数のパーライトブロックを、「パーライト領域」と定義する。
(A)他のパーライトブロックと接触していない1つのパーライトブロック
(B)複数のパーライトブロックであって、各パーライトブロックが少なくとも1つの他のパーライトブロックと接触しており、その結果、連続してつながっている複数のパーライトブロック
(A)線分上において、隣り合うフェライト粒の間に配置されている1つのパーライトブロック
(B)線分上において、隣り合うフェライト粒の間に連続して配置されている複数のパーライトブロック
なお、パーライトブロックとは、パーライト中のフェライトの結晶方位が同じ領域を意味する。
パーライト領域の幅は、線分法により求めことができる。具体的には、次の方法で測定できる。上述の各相(フェライト、低温変態相、パーライト)の面積率の求め方で生成した5視野の写真画像を用いる。図2は、写真画像の一例を示す図である。図2を参照して、図中の白色の領域100はフェライトであり、ラメラが形成されている領域がパーライトブロックである。図中のパーライトブロックのうち、パーライトブロック102、103、104は他のパーライトブロックと接触しておらず、独立したパーライトブロックである。これらのパーライトブロックは上記(A)に相当するパーライト領域である。一方、パーライトブロック101Aとパーライトブロック101Bとは互いに隣合って接触している。この場合、パーライトブロック101Aと101Bとは、上記(B)に相当するパーライト領域101である。同様に、パーライトブロック105A及び105Bは、パーライト領域105を構成し、パーライトブロック106A及び106Bは、パーライト領域106を構成し、パーライトブロック107A及び107Bは、パーライト領域107を構成する。
線分でのパーライト領域の幅=線分と重複するパーライト領域の重複長さの合計/各線分と重複するパーライト領域の個数
本実施形態の鋼の形状は特に限定されない。鋼は、長手方向を有する形状であり、長手方向に垂直な断面が円形状であり、たとえば、鋼片又は棒鋼である。
本実施形態の鋼の熱間鍛造を模擬した熱処理後のビッカース硬さは、次の方法により求めることができる。鋼に対して、熱間鍛造を模擬する熱処理を実施する。具体的には、鋼を1100℃に加熱して30分保持する。その後、鋼を大気中で放冷する。熱処理後の鋼の長手方向に対して垂直な断面のR/2位置を中心としたR/2部(10mm×10mm)において、JISZ2244(2009)に準拠して、3点のビッカース硬さを測定する。このとき、試験力を9.8Nとする。求めた3点のビッカース硬さの平均値を、その鋼のビッカース硬さと定義する。
本実施形態の鋼の溶融割れの評価方法は、次の方法で実施することができる。幅10mm、厚さ3mm、長さ10mmの試験片を鋼の長手方向に対して垂直な断面のR/2位置(棒鋼の長手方向に垂直な断面における、棒鋼の中心軸と外表面とを結ぶ直線(半径R)の中央位置)から作成する。試験片の1/2幅及び1/2厚さ(試験片の幅及び厚さの中央)が、前記断面のR/2位置に位置し、試験片の長さ方向は棒鋼の長手方向に一致するようにする。試験片に対して、高周波焼入れの模擬試験を実施する。具体的には、試験片を100℃/秒の昇温速度で1380℃まで加熱し、試験片を1380℃で10秒間保持し、保持後、試験片を水冷する。水冷後の試験片の長手方向に対して垂直な断面(観察面)を機械研磨し、ピクラール試薬にて腐食する。腐食された観察面を400倍の光学顕微鏡で観察し、溶融割れの有無を目視で確認する。観察面は、250μm×400μmとする。観察面において溶融割れが確認されなかった場合、溶融割れが抑制されていると判断する。
本実施形態の鋼の製造方法の一例は次のとおりである。なお、本実施形態の鋼の製造方法はこれに限定されない。しかしながら、下記に説明する製造方法は、本実施形態の鋼の製造方法の好適な例である。
精錬工程では、上述の化学組成を有する溶鋼を製造する。具体的には、転炉を用いて溶銑に酸素を吹き付けて精錬し、Si及びMnが添加されていない溶鋼を製造する(一次精錬)。一次精錬後の溶鋼に対して、二次精錬を実施して、溶鋼を脱酸する。このとき、二次精錬において、溶鋼に対してSiをMn源よりも先に添加して脱酸する。そして、Siを添加した後、溶鋼に対して、Mn源を添加する。Mn源は、Fe−Mn合金及び/又は純メタリックマンガンである。Mn源中のMn含有量はat%で60〜100%であり、かつ、Mn源中の酸素(O)含有量は1.0at%以下である。
鋳造工程では、溶鋼を用いて、周知の鋳造方法により鋳片(スラブ又はブルーム)又は鋼塊(インゴット)を製造する。鋳造方法はたとえば、連続鋳造法や造塊法である。
熱間加工工程では、上記鋳造工程で製造された鋳片又は鋼塊に対して、熱間加工を実施して、本実施形態の鋼を製造する。本実施形態の鋼はたとえば、上述のとおり、棒鋼である。
熱間圧延工程での仕上げ圧延工程前の加熱温度は、900〜1200℃未満である。仕上げ圧延工程での加熱温度が1200℃以上である場合、鋼中のオーステナイト粒が粗大化する。この場合、フェライトの生成サイトが減少する。その結果、鋼中のフェライト面積率が低下し、10%未満になる。オーステナイト粒が粗大化すればさらに、パーライトブロックが粗大化する。この場合、パーライト領域の幅が200μmを超える。一方、加熱温度が900℃未満であれば、圧延工程での圧延荷重が大きくなりすぎる。したがって、仕上げ圧延工程での加熱温度は900〜1200℃未満である。なお、加熱炉の抽出口に配置された測温計により測定された素材又はビレットの温度を、加熱温度(℃)と定義する。なお、粗圧延工程での加熱温度は、1000〜1300℃である。
仕上げ圧延工程において、圧延完了後の冷却速度は5.0℃/秒以下とする。冷却速度が5℃/秒を超えれば、低温変態相(ベイナイト及びマルテンサイト)が過剰に生成して、ミクロ組織中の低温変態相の面積率が5%を超える。したがって、圧延完了後の冷却速度は5.0℃/秒以下である。なお、冷却速度の下限は0.5℃/秒である。冷却速度の好ましい上限は4.5℃/秒であり、さらに好ましくは4.0℃/秒であり、さらに好ましくは3.5℃/秒であり、さらに好ましくは3.0℃/秒である。
本実施形態の鋼を用いた機械構造用部品の製造方法の一例は次のとおりである。機械構造用部品の製造方法は、熱間鍛造工程と、切削加工工程と、高周波焼入れ工程とを含む。熱間鍛造工程では、上述の鋼を熱間鍛造して、機械構造用部品(例えばクランクシャフト)の粗形状の中間品を製造する。製造された中間品を大気中で放冷する。熱間鍛造工程での加熱温度は900〜1200℃未満であり、冷却速度は5.0℃/秒以下である。切削加工工程では、熱間鍛造工程後の中間品を機械加工により所定の形状に切削する。高周波焼入工程では、切削加工工程後の中間品に対して、周知の高周波焼入れを実施する。以上の工程により、機械構造用部品が製造される。
[鋼の製造]
70トン転炉での一次精錬及び二次精錬を実施して、表1及び表2に示す化学組成の溶鋼を製造した。
各試験番号の鋼の長手方向に対して垂直な断面のR/2位置(棒鋼の長手方向に垂直な断面における、棒鋼の中心軸と外表面とを結ぶ直線(半径R)の中央位置)から、幅10mm、厚さ3mm、長さ10mmの試験片を機械加工により作製した。試験片の長さ方向は、棒鋼の長手方向と平行であった。また、試験片の長手方向に平行な中心軸が、R/2位置と一致した。
各試験番号の鋼に対して、熱間鍛造後の冷却を模擬する熱処理を実施した。具体的には、棒鋼を1100℃に加熱して30分保持した。その後、棒鋼を大気中で放冷した。熱処理後の棒鋼の長手方向に対して垂直な断面のR/2位置を中心としたR/2部(10mm×10mm)において、JISZ2244(2009)に準拠して、3点のビッカース硬さを測定した。このときの試験力を9.8Nとした。求めた3点の硬さの平均値を、「Hv硬さ」と定義した。
各試験番号の鋼のMn酸化物個数比NRを次の方法で測定した。各試験番号の棒鋼のR/2位置(棒鋼の長手方向に垂直な断面における、棒鋼の中心軸と外表面とを結ぶ直線(半径R)の中央位置)を中心とした、10mm×15mmの矩形状の観察面を含むサンプルを採取した。採取されたサンプルの観察面を鏡面研磨した。エネルギー分散型X線分析装置(EDX)を備えた走査型電子顕微鏡を用いて鏡面研磨された観察面を二次電子像にて観察し、コントラストに基づいて、観察視野内の色の異なる部分を介在物と認定した。そして、認定された各介在物の成分を、介在物の中心点においてビーム径10μmで点分析した。そして、観察面内の酸化物、及び、Mn酸化物を特定した。具体的には、観察面内の介在物のうち、酸素を質量%で20.0%以上含有するものを、「酸化物」と特定した。また、酸化物のうち、Mnを質量%で10.0%以上含有するものを、「Mn酸化物」と特定した。総面積4.8×106μm2の観察面で、特定された酸化物の総個数の、Mn酸化物の総個数に対する比(=Mn酸化物の個数/酸化物の個数×100)を、Mn酸化物個数比NR(%)と定義した。得られたMn酸化物個数比NRを、表3及び表4中の「NR」欄に示す。
各試験番号の鋼のミクロ組織における、フェライト面積率、低温変態相面積率(ベイナイト及びマルテンサイトの総面積率)、及び、パーライト面積率を次の方法で求めた。各試験番号の鋼のR/2位置を中心としてサンプルを採取した。採取されたサンプルのうち、鋼の長手方向(軸方向)に垂直な面を観察面とした。観察面を研磨した後、サンプルの観察面をナイタール腐食液を用いてエッチングした。エッチングされた観察面を、100倍の光学顕微鏡にて観察して、任意の5視野の写真画像を生成した。各視野のサイズは800μm×600μmであった。
さらに、各試験番号の鋼のパーライト領域の幅を、上述の線分法により求めた。具体的には、上述のミクロ組織観察試験で作成した5視野の写真画像を用いた。各写真画像において、長辺において100μmピッチで線分R1〜R7を配置し、短辺において100μmピッチで線分C1〜C5を配置した。そして、線分R1〜R7及びC1〜C5の各々において、線分と重複したパーライト領域の平均幅を求めた。具体的には、各線分において、パーライト領域の幅を次式により求めた。
線分でのパーライト領域の幅=線分と重複するパーライト領域の重複長さの合計/各線分と重複するパーライト領域の総個数
試験結果を表3及び表4に示す。試験番号1〜36では、化学組成が適切であり、FN1〜FN3も適切であった。さらに、製造条件が適切であったため、Mn酸化物個数比NRが10.0%以下であった。そのため、溶融割れは観察されなかった。さらに、ミクロ組織において、フェライトの面積率は10%以上であり、ベイナイト及びマルテンサイトの総面積率が5%以下であり、残部はパーライトであり、パーライト領域の幅は200μm以下であった。そのため、ビッカース硬さHvが150〜240の範囲内であり、十分な疲労強度及び被削性が得られることが予想できた。
2 クランクシャフトのエッジ部
10 溶融割れ
Claims (2)
- 化学組成が、質量%で、
C:0.25〜0.50%、
Si:0.01〜0.30%未満、
Mn:0.60〜2.00%、
P:0.030%以下、
S:0.010超〜0.095%、
Cr:0.05〜1.00%、
N:0.0040〜0.0200%、
O:0.0024%以下、
Cu:0.05%以下、
Ni:0.05%以下、
V:0〜0.050%未満、
Al:0〜0.040%、
Nb:0〜0.020%、
Pb:0〜0.30%、
Ca:0〜0.0100%、
Mo:0〜0.20%、
B:0〜0.0030%、
Ti:0〜0.020%、及び、
残部がFe及び不純物、からなり、
式(1)で定義されるFN1が55.0以下であり、
式(2)で定義されるFN2が0.45〜0.70未満であり、
式(3)で定義されるFN3が1.00以上であり、
鋼中において、20.0質量%以上の酸素を含有する酸化物の個数に対する、20.0質量%以上の酸素及び10.0質量%以上のMnを含有するMn酸化物の個数の割合は、10.0%以下であり、
ミクロ組織において、
フェライトの面積率は10%以上であり、ベイナイト及びマルテンサイトの総面積率が5%以下であり、残部はパーライトであり、
パーライト領域の幅は200μm以下である、
鋼。
FN1=80C2+55C+13Si+4.8Mn+30P+30S+1.5Cr (1)
FN2=C+(Si/10)+(Mn/5)−(5S/7)+(5Cr/22)+1.65V (2)
FN3=−2C−Si+2.33Mn+0.26Cr+V−1.5Cu−1.5Ni (3)
ここで、式(1)〜式(3)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。 - 請求項1に記載の鋼であって、
前記化学組成は、
V:0.010〜0.050%未満、
Al:0.005〜0.040%、
Nb:0.005〜0.020%、
Pb:0.10〜0.30%、
Ca:0.0010〜0.0100%、
Mo:0.05〜0.20%、
B:0.0005〜0.0030%、及び、
Ti:0.005〜0.020%、
からなる群から選択される1元素又は2元素以上を含有する、
鋼。
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