[第1実施形態]
[1−1.概略構成]
以下では、図1〜図9を参照しつつ、本実施形態のガス遮断器1の全体構成を説明する。図1は、ガス遮断器1が閉路状態である時の内部構造を示している。
ガス遮断器1は、第1の固定接触子部2(以降、「固定接触子部2」と総称する)、可動接触子部3、第2の固定接触子部4(以降、「固定接触子部4」と総称する)、密閉容器8を有する。密閉容器8を介し、口出し導体7aが固定接触子部2に、口出し導体7bが固定接触子部4に接続される。口出し導体7a、7bは、電力系統に接続される。ガス遮断器1は、変電所等の電力供給設備に設置される。
固定接触子部2、固定接触子部4は、導体金属により構成された円筒状の部材である。可動接触子部3は、固定接触子部2、固定接触子部4の内径と密着し摺動可能に配置された、導体金属により構成された円筒状の部材である。固定接触子部2、固定接触子部4は、密閉容器8内に離間して絶縁物(図中不示)にて固定される。
可動接触子部3は、円筒状の導体金属および絶縁ロッド37により構成された部材である。可動接触子部3が、ガス遮断器1の外部に配置された駆動装置9により駆動され、固定接触子部2と固定接触子部4との間を移動することにより、固定接触子部2と固定接触子部4が電気的に遮断または導通とされる。これにより口出し導体7a、7b間が、電気的に遮断または導通となる。
なお、本実施形態では固定接触子部2は固定され可動でないものとして説明するが、固定接触子部2は、可動接触子部3と相対的に可動であってもよい。これにより、開路時に、固定接触子部2と可動接触子部3との間の絶縁距離を迅速に増大させることができる。
ガス遮断器1が開路状態となるときに固定接触子部2と可動接触子部3との間にアークが発生する。このアークは、密閉容器8内に充填された消弧性ガスが高圧で吹き付けられることにより消弧される。
密閉容器8は、金属や碍子等からなる円筒状の密閉容器であり、内部に消弧性ガスが充填される。消弧性ガスとして、消弧性能及び絶縁性能に優れた六フッ化硫黄ガス(SF6ガス)が使用される。密閉容器8は、金属製の場合、接地電位に接続される。密閉容器8内の圧力は通常運転時において、いずれの部分でも単一の圧力、例えば消弧性ガスの充気圧力とされる。
消弧性ガスは、アークを消滅させるための電気絶縁性のガスである。現在、消弧性ガスとしてSF6ガスが使用される場合が多い。しかしSF6ガスは、地球温暖化効果が高い。従ってSF6ガスに代替して、他のガスが消弧性ガスとして使用されてもよい。SF6ガスに代替する消弧性ガスとしては、絶縁性、アーク冷却性(消弧性)、化学的安定性、環境適合性、入手性、コストなどが優れることが望ましい。図1から図3に示した本実施形態によれば、吹き付けガスは、断熱圧縮により昇圧されるため、SF6の代替となる消弧性ガスは、同じシリンダ容積および圧縮率で圧力が上がりやすい比熱比が大きいガスであることが望ましい。
駆動装置9は、ガス遮断器1の開閉時に、可動接触子部3を駆動するための装置である。駆動装置9は、ばね、油圧、高圧気体、電動機などにより構成された動力源を有する。駆動装置9により可動接触子部3が、固定接触子部2と固定接触子部4との間を移動させられ、固定接触子部2と固定接触子部4が電気的に遮断または導通とされる。
駆動装置9は、ガス遮断器1の開閉時に、外部から送信された指令信号に基づき動作する。駆動装置9には、大きな駆動エネルギーを安定的に蓄積すること、指令信号に対し極めて速い応答性を有すること、確実に動作することが求められる。駆動装置9は、消弧性ガス中に設けられなくてもよい。
本実施形態においてガイド部41は、アーク接触子(可動側)41aにより構成される。ガス遮断器1の開路状態時に、後述する圧縮室36にて昇圧された消弧性ガスが、後述する蓄圧流路38を通りアーク接触子(固定側)21とガイド部41であるアーク接触子(可動側)41aとの間のアーク空間へと放出される。圧縮室36内の圧力が十分に低下するまで、可動接触子部3のピストン33が逆行しないようにピストン33の位置が保持されることが望ましい。ピストン33が逆行した場合、圧縮室36の体積が拡大し、圧縮室36および蓄圧流路38内の消弧性ガスの圧力および密度が低下する。これによりアークへ吹付けられる消弧性ガスの圧力および密度も低下し、望ましくない。
固定接触子部2は、密閉容器8内に配置された円筒状の部材である。固定接触子部2は、アーク接触子(固定側)21、固定通電接触子22、絶縁ノズル23、排気筒24を有する。アーク接触子(固定側)21が請求項における第1のアーク接触子に相当する。これらの部材の詳細については後述する。密閉容器8を介し、口出し導体7aが固定接触子部2に接続される。固定接触子部2は、密閉容器8に固定され配置される。固定接触子部2は、ガス遮断器1の閉路状態時に、可動接触子部3を介し固定接触子部4と電気的に接続され、口出し導体7a、7b間の電流を導通する。一方、固定接触子部2は、ガス遮断器1の開路状態時に、可動接触子部3と電気的に非接続となり、口出し導体7a、7b間の電流を遮断する。
固定接触子部4は、密閉容器8内に配置された円筒状の部材である。固定接触子部4は、ガイド部41であるアーク接触子(可動側)41a、シリンダ42、サポート43を有する。アーク接触子(可動側)41aが請求項における第2のアーク接触子に相当する。なお、アーク接触子(可動側)41a自体は、可動しない。これらの部材の詳細については後述する。密閉容器8を介し、口出し導体7bが固定接触子部4に接続される。固定接触子部4は、密閉容器8に固定され配置される。
固定接触子部4は、ガス遮断器1の閉路状態時に、可動接触子部3を介し固定接触子部2と電気的に接続され、口出し導体7a、7b間の電流を導通する。一方、固定接触子部4は、ガス遮断器1の開路状態時に、固定接触子部2と可動接触子部3が電気的に非接続となるため、口出し導体7a、7b間の電流を遮断する。
可動接触子部3は、密閉容器8内に配置された円筒状の部材である。可動接触子部3は、トリガー電極31、可動通電接触子32、ピストン33、ピストン支え33a、絶縁ロッド37を有する。これらの部材の詳細については後述する。可動接触子部3は、固定接触子部2および固定接触子部4との間を往復移動可能なように配置される。
可動接触子部3は、ガス遮断器1の外部に配置された駆動装置9に機械的に接続される。ガス遮断器1の開閉時に、可動接触子部3が駆動装置9により駆動され、口出し導体7a、7bに流れる電流が遮断、導通される。可動接触子部3は、ガス遮断器1の閉路状態時に、固定接触子部2と固定接触子部4を電気的に接続し、口出し導体7a、7b間の電流を導通する。一方、可動接触子部3は、ガス遮断器1の開路状態時に、固定接触子部2と電気的に非接続となり、口出し導体7a、7b間の電流を遮断する。
また、可動接触子部3は、ピストン33によりシリンダ42に蓄積された消弧性ガスを圧縮し、絶縁ノズル23を介し噴出し、固定接触子部2と可動接触子部3との間に発生したアークを消弧することにより、アーク電流を遮断する。
固定接触子部2、可動接触子部3、固定接触子部4、密閉容器8は、同心円を描く円筒状の部材であり共通の中心軸を有し、同一軸上に配置される。なお、以下では、各部材の位置関係及び方向を説明するにあたり、固定接触子部2側の方向を開放端方向と、その反対側の固定接触子部4側の駆動装置方向を装置端方向と呼ぶ。
[1−2.詳細構成]
(固定接触子部2)
固定接触子部2は、アーク接触子(固定側)21、固定通電接触子22、絶縁ノズル23、排気筒24、を有する。アーク接触子(固定側)21が、請求項中の第1のアーク接触子に相当する。また、本文においてもアーク接触子(固定側)21を、第1のアーク接触子と呼ぶ場合がある。
(固定通電接触子22)
固定通電接触子22は、固定接触子部2の装置端方向の外周部端面に配置されたリング状の電極である。固定通電接触子22は、削り出し等により、内径側に膨出したリング状に形成された金属導体により構成される。固定通電接触子22を構成する金属は、電気導電性、軽量性、強度、加工性からアルミニウムが望ましいが、それ以外にも例えば銅であってもよい。
固定通電接触子22は、可動接触子部3の可動通電接触子32の外径と摺動可能な、一定のクリアランスを持つ内径を有する。固定通電接触子22は、円筒状の導体金属により構成された排気筒24の装置端方向の端部に配置される。排気筒24には、密閉容器8を介し、口出し導体7aが接続される。排気筒24は密閉容器8に絶縁部材を介して固定される。
ガス遮断器1の閉路状態時に、固定通電接触子22には、可動接触子部3の可動通電接触子32が挿入される。これにより固定通電接触子22は、可動通電接触子32と接触し、固定接触子部2と可動接触子部3を電気的に導通させる。固定通電接触子22は、通電時には定格電流を流す。
一方、遮断器1の開路状態時に、固定通電接触子22は、可動接触子部3の可動通電接触子32と物理的に離間し、固定接触子部2と可動接触子部3を電気的に遮断する。
(アーク接触子(固定側)21)
アーク接触子(固定側)21は、固定接触子部2の円筒の中心軸に沿い、固定接触子部2の装置端方向の端部に配置された円筒状の電極である。アーク接触子(固定側)21は、固定通電接触子22より小径の円筒状に形成された金属導体により構成される。アーク接触子(固定側)21の開放端方向の端部は、面取り加工され曲面状に成形されている。アーク接触子(固定側)21は、銅を10%から40%およびタングステンを90%から60%含有する金属等により構成される。
アーク接触子(固定側)21は、ガス遮断器1の閉路状態時に、可動接触子部3のトリガー電極31の外径部分と接触する。アーク接触子(固定側)21は、固定接触子部2の外周を構成する排気筒24の内壁面に設けられた支持部材により、固定接触子部2に一体固定される。アーク接触子(固定側)21は、消弧性ガス中に配置され、消弧性ガス中に発生したアークを点弧する。
アーク接触子(固定側)21は、固定されており、駆動装置9が駆動すべき可動部の重量に寄与しない。したがって、熱容量と表面積を大きく構成することができ、その結果、アーク接触子(固定側)21の耐久性を向上させることができる。
アーク接触子(固定側)21の耐久性、アーク接触子(可動側)41aの耐久性、トリガー電極31の耐久性は以下の関係であることが望ましい。
アーク接触子(固定側)21の耐久性≧アーク接触子(可動側)41aの耐久性>トリガー電極31の耐久性
アーク接触子21には高温となった消弧性ガス流が加速後に衝突するため、アーク接触子(固定側)21は、アーク接触子(可動側)41aに比べ摩耗しやすいためである。また、可動部であるトリガー電極31は、アーク接触子(固定側)21、アーク接触子(可動側)41aに比べ軽量化されることが望ましいと同時に、後述のとおり、高温のアークを点弧するのはアーク接触子(可動側)41aにアークを転流するまでの一定期間のみであり、摩耗の程度はアーク接触子(固定側)21およびアーク接触子(可動側)41aに比べると限定的だからである。
アーク接触子(固定側)21は、アーク接触子(可動側)41aと、アークが消弧された後に絶縁性が確保できる距離に離間して配置される。アーク接触子(固定側)21およびアーク接触子(可動側)41aは、固定され可動しないので大きなものにすることができる。このためアーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41a間の空間の電界は従来に比べて平等的な分布(電界集中の少ない分布)となり、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41a間の距離を、従来技術に比べ、短くすることができる。
また、絶縁ノズル23とアーク接触子(固定側)21、およびトリガー電極31とアーク接触子(可動側)41aの位置関係で決まる流路断面積の大きさにより、アークに吹き付ける消弧性ガスの流量や流速を規定することができる。アーク接触子(固定側)21と絶縁ノズル23の間の流路断面積が、トリガー電極31とアーク接触子(可動側)41aとの間の流路断面積より大きい方が、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間で発生する高温のガスを速やかに排気しやすく望ましい。
ガス遮断器1の閉路状態時に、アーク接触子(固定側)21に、可動接触子部3のトリガー電極31が挿入される。これによりアーク接触子(固定側)21は、可動接触子部3のトリガー電極31と接触し、固定接触子部2と可動接触子部3を電気的に導通させる。ガス遮断器1の閉路状態時に、アーク接触子(固定側)21は、口出し導体7a、7bを電気的に導通させるための電流回路の一部を構成する導体となる。
一方、ガス遮断器1の開路状態時に、アーク接触子(固定側)21は、可動接触子部3のトリガー電極31と離間し、固定接触子部2と可動接触子部3との間に発生するアークを点弧する。アーク接触子(固定側)21は、トリガー電極31に対向して配置された電極であり、ガス遮断器1が開路状態となる時に、アークと接する。
可動通電接触子32が固定通電接触子22から離間した後に、トリガー電極31が、アーク接触子(固定側)21から離間する。これにより遮断すべき電流は、トリガー電極31およびアーク接触子(固定側)21側へ転流し、アークが固定通電接触子22と可動通電接触子32の間に発生しない。
アーク接触子(固定側)21およびトリガー電極31は、固定通電接触子22と可動通電接触子32よりも時間的に後に開離するため、アークは必ずアーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の間に点弧するように構成されている。これにより固定通電接触子22と可動通電接触子32のアークによる劣化が軽減される。
ガス遮断器1が開路状態となる時には、可動接触子部3は、駆動装置9により駆動され、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間を開放端方向から装置端方向へと移動する。これにより、トリガー電極31も、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間を開放端方向から装置端方向へと移動する。トリガー電極31が、アーク接触子(固定側)21から離間する前に、固定通電接触子22と可動通電接触子32が離間する。これにより固定通電接触子22と可動通電接触子32の間にアークが発生しない。
トリガー電極31が、アーク接触子(固定側)21から離間を開始した時点から、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなる時点までの間、アークはトリガー電極31とアーク接触子(固定側)21の間に発生する。
アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が概ね等しくなると、アークはトリガー電極31からアーク接触子(可動側)41aに転移する。アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が概ね等しくなった時点から、アークが消弧される時点までの間、アークはアーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21の間に発生する。このときアーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21は、対向して配置された1対の電極を構成し、アークを点弧する。
トリガー電極31が、アーク接触子(固定側)21から離間を開始した時点から、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなるまでの時間を「電流遮断時の前半」と呼ぶ場合がある。
アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなった時点から、アークが消弧されるまでの時間を、「電流遮断時の後半」と呼ぶ場合がある。
トリガー電極31は、さらに装置端方向に、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの離間距離より大きくなる方向に移動する。トリガー電極31は、アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21の間に発生したアークから離間することとなり、トリガー電極31の劣化が軽減される。
トリガー電極31は、さらに装置端方向に移動する。この時、ピストン33とシリンダ42により構成される圧縮室36にて昇圧された消弧性ガスが、蓄圧流路38、絶縁ノズル23を介し噴出され、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間のアークが、消弧される。
(絶縁ノズル23)
絶縁ノズル23は、圧縮室36にて昇圧された消弧性ガスの流速バランスを規定するスロート部を有する円筒状の整流部材である。絶縁ノズル23は、アクリル、ポリカーボネイト、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂、またはこれらを組合せた絶縁物により構成される。上記の樹脂材料には、BN、Al2O3、ZnO、TiO2、CaF、CeO2のうちの少なくとも一つが、充填されていてもよい。
絶縁ノズル23の、消弧性ガスをアーク放電へ導く面には、BaTiO3、PbO3、ZrO3、TiO2、ZrO2、SiO2、MgO、AlN、Si3N4、SiC、Al2O3のうち少なくとも一つのセラミック材が、コーティングされていてもよい。または、絶縁ノズル23は、アクリル、ポリカーボネイト、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、PTFEに代替し、BaTiO3、PbO3、ZrO3、TiO2、ZrO2、SiO2、MgO、AlN、Si3N4、SiC、Al2O3のうちの少なくとも一つのセラミック材により構成されていてもよい。
絶縁ノズル23は、固定接触子部2に一体固定され、絶縁ノズル23の円筒を構成する軸が、アーク接触子(固定側)21の円筒軸上に来るように配置される。絶縁ノズル23の装置端方向の端部は、後述するシリンダ42の内壁52に接合される。これにより絶縁ノズル23は、シリンダ42の内壁52に支持される。
アーク接触子(固定側)21からアーク接触子(可動側)41a間までの距離と、アーク接触子(固定側)21から絶縁ノズル23と内壁52との接合箇所までの距離が、略同等となる位置において、絶縁ノズル23はシリンダ42を構成する内壁52に接合される。内壁52は、導電材料により構成されており可動通電接触子32と同電位であり、固定通電接触子22と可動通電接触子32の間の電位勾配が急峻となることを避ける。
絶縁ノズル23は、ガス遮断器1の閉路状態時にトリガー電極31を包囲するように配置される。絶縁ノズル23の内側に、開口面積S2を有する開口部62が形成されている。開口部62の内径の開口面積S2は、トリガー電極31が摺動可能であり、かつトリガー電極31が挿入された場合、消弧性ガスの気密が確保される面積である。開口部62が請求項における第2の開口部に、開口面積S2が請求項における第2の開口面積に相当する。
ガス遮断器1の閉路状態時および電流遮断時の前半に、絶縁ノズル23の開口部62は、トリガー電極31が挿入されて閉塞され、消弧性ガスの気密が確保される。電流遮断時の後半に、絶縁ノズル23の開口部62は、トリガー電極31が離間することにより開放される。ガス遮断器1の閉路状態時および電流遮断時の前半に、絶縁ノズル23と、トリガー電極31は、消弧性ガスの気密が確保される程度に密着することが望ましい。しかしながら、トリガー電極31は、絶縁ノズル23内を摺動する。また、トリガー電極31と、絶縁ノズル23が過度に近接することにより、いわゆるトリプルジャンクションの発生する可能性が高まる。このため、絶縁ノズル23と、トリガー電極31間は、消弧性ガスの所定の気密が確保される程度の空隙を有していてもよい。
絶縁ノズル23により、圧縮室36で昇圧された消弧性ガスは、アーク空間へ誘導される。また、絶縁ノズル23により、消弧性ガスがアーク空間に集中されると共に消弧性ガスの流速が高速化される。絶縁ノズル23は、開放端方向から装置端方向にかけ内径が小さくなる円錐状の空間を形成するように構成されていてもよい。
ガス遮断器1が開路状態となる時に、可動接触子部3のピストン33と固定接触子部4のシリンダ42により構成される圧縮室36内の消弧性ガスが昇圧される。アーク接触子(可動側)41aの外周とシリンダ42の内壁52の内周は、昇圧された消弧性ガスの流路となる蓄圧流路38を構成している。
電流遮断時の後半に、ピストン33とシリンダ42により昇圧された圧縮室36内の消弧性ガスが、蓄圧流路38を介し、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aとの間のアーク空間に吹き付けられる。
このとき絶縁ノズル23により、昇圧された消弧性ガスが、アーク空間に集中される。これにより、アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21との間のアークが効率的に消弧され、アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21は、電気的に遮断される。
アーク放電により発生した熱エネルギーは、消弧性ガスにより除去される。消弧性ガスは、アーク放電による熱エネルギーを含み高温、高圧力になる。高温、高圧力となった消弧性ガスは、排気筒24の排気口24a、24bから排出され、これらの熱エネルギーを電極領域から排除する。
アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aとの間のアーク空間に吹き付けられ高温となった消弧性ガスは、固定接触子部2の排気筒24を通り、冷却されて絶縁性を回復し、密閉容器8内に排気される。
絶縁ノズル23は、昇圧された消弧性ガスをアーク空間へ集中的に導く。絶縁ノズル23は、消弧性ガスを加速し、熱エネルギーの排気性を高める。絶縁ノズル23は、消弧性ガスの流量と流速を適切に制御する。絶縁ノズル23は、アークにより高温化された消弧性ガスの排気流路を規定し、固定通電接触子22と可動通電接触子32の間での絶縁破壊を抑制する。さらに、絶縁ノズル23は、アークの広がりを抑制しアークの最大径を規定する。
これにより、アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21との間に発生したアークに消弧性ガスが効率的に吹き付けられ、また熱エネルギーが効率的に除去され、アークが消弧される。その結果、アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21は、電気的に遮断される。
従来技術において、絶縁ノズル23は可動通電接触子32と共に可動接触子部3に設けられる場合が多かった。しかしながら、可動接触子部3は可動するため軽量化することが望ましい。従って絶縁ノズル23は、可動しない固定接触子部2に設けられることが望ましい。なお、絶縁ノズル23は、可動接触子部3に設けられていてもよい。
絶縁ノズル23は、固定接触子部2、可動接触子部3のどちらに設置されても良いが、可動接触子部3は可動であるため振動する。このため絶縁ノズル23が固定接触子部2に設置された場合、可動接触子部3に設置された場合に比べ、振動による電気的性能の悪化が抑制される。
また、絶縁性の低い高温となった消弧性ガスが固定通電接触子22へ流れ込むことを抑制するため、絶縁ノズル23は、固定接触子部2に設置されることが望ましい。
シリンダ42の内壁52は、絶縁ノズル23を支持する。絶縁ノズル23がシリンダ42の内壁52に支持されることにより、絶縁ノズル23とトリガー電極31との離間距離が経年的に維持される。
絶縁ノズル23は、装置端方向から開放端方向にかけ軸に並行な消弧性ガスの流れを作るだけでなく、アークを横切る方向に消弧性ガスの流れを作る。この流れによりアークは効率的に冷却される。アークに吹き付けられ高温となった消弧性ガスは絶縁性が低いため、固定通電接触子22、可動通電接触子32に接触せず排気されることが望ましい。
(排気筒24)
排気筒24は、削り出された導体金属により構成された円筒状の部材である。排気筒24の装置端方向の端部には、円筒の軸を揃え、アーク接触子(固定側)21および固定通電接触子22が配置される。排気筒24は、高温となった消弧性ガスを排出する排気口24a、24bを有する。排気筒24は、アーク接触子(固定側)21および固定通電接触子22と一体に成形されていてもよい。
排気筒24には、密閉容器8を介し、口出し導体7aが接続される。排気筒24は、消弧性ガスの流路となっており、アークに吹き付けられ高温になった消弧性ガスを、アーク接触子(固定側)21およびトリガー電極31の間のアーク空間から密閉容器8へ導く。
ガス遮断器1が開路状態となる時に、可動接触子部3のピストン33と固定接触子部4のシリンダ42により構成される圧縮室36内の消弧性ガスが昇圧され、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aとの間のアーク空間に吹き付けられる。アークに吹き付けられ高温になった消弧性ガスは、アーク空間を通り排気筒24の排気口24a、24bから密閉容器8内へ排出される。
(固定接触子部4)
固定接触子部4は、アーク接触子(可動側)41a、シリンダ42、サポート43を有する。本実施形態においてガイド部41は、アーク接触子(可動側)41aにより構成される。アーク接触子(可動側)41aが、請求項中の第2のアーク接触子およびガイド部に相当する。また、本文においてもアーク接触子(可動側)41aを、第2のアーク接触子またはガイド部と呼ぶ場合がある。
(アーク接触子(可動側)41a)
ガイド部41としてのアーク接触子(可動側)41aは、固定接触子部4の円筒の中心軸に沿い、固定接触子部4の開放端方向の端部に配置された円筒状の電極である。アーク接触子(可動側)41aは、アーク接触子(固定側)21と略同径の円筒状に形成された金属導体により構成される。アーク接触子(可動側)41aの開放端方向の端部は、面取り加工され曲面状に成形されている。アーク接触子(可動側)41aは、銅を10%から40%およびタングステンを90%から60%含有する金属等により構成される。
アーク接触子(可動側)41aの外周とシリンダ42の内壁52の内周は、昇圧された消弧性ガスの流路となる蓄圧流路38を構成している。電流遮断時の後半に、ピストン33とシリンダ42により昇圧された圧縮室36内の消弧性ガスが、蓄圧流路38を介し、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aとの間のアーク空間に吹き付けられる。
アーク接触子(可動側)41aは、トリガー電極31を包囲するように配置される。アーク接触子(可動側)41aの内側に、開口面積S3を有する開口部63が形成されている。開口部63の内径の開口面積S3は、トリガー電極31が摺動可能であり、かつトリガー電極31が挿入された場合、消弧性ガスの気密が確保される面積である。開口部63が請求項における第3の開口部に、開口面積S3が請求項における第3の開口面積に相当する。
ガス遮断器1の閉路状態時および電流遮断時の前半に、アーク接触子(可動側)41aの開口部63は、トリガー電極31が挿入されて閉塞され、消弧性ガスの気密が確保される。電流遮断時の後半に、アーク接触子(可動側)41aの開口部63は、トリガー電極31が離間することにより開放される。
開口部63が開放されることにより、アーク空間へ誘導された消弧性ガスは、アーク接触子(可動側)41aの内部を通り装置端方向に排気される。アーク接触子(可動側)41aは、消弧性ガスをガイドし、装置端方向に誘導する。アーク接触子(可動側)41aが、請求項中の第2のアーク接触子およびガイド部に相当する。
アーク接触子(可動側)41aは、固定接触子部4の外周を構成するサポート43を介し、絶縁支持部材により固定される。アーク接触子(可動側)41aは、サポート43に固定され可動しない。このためアーク接触子(可動側)41aは、駆動装置9が駆動する可動部重量には含まれない。したがって、駆動装置9の駆動力を上げることなく熱容量と表面積を向上することができ、アーク接触子(可動側)41aの耐久性を向上させることができる。
アーク接触子(可動側)41aは、アーク接触子(固定側)21と、アークが消弧された後に絶縁性が確保できる距離に離間して配置される。アーク接触子(可動側)41aおよびアーク接触子(固定側)21は、固定され可動しないため駆動装置9の駆動力を増大させることなく、表面積を大きくすることができる。このため、アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21との間の電界分布をより平等電界に近づけることができ、アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21間の距離を、従来技術に比べ、短くすることができる。
また、絶縁ノズル23とアーク接触子(固定側)21、およびトリガー電極31とアーク接触子(可動側)41aの位置関係で決まる流路断面積の大きさにより、アークに吹き付ける消弧性ガスの流量や流速を規定することができる。アーク接触子(固定側)21と絶縁ノズル23の間の流路断面積が、トリガー電極31とアーク接触子(可動側)41aとの間の流路断面積より大きい方が、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間で発生する高温のガスを速やかに排気しやすく望ましい。
ガイド部41の外側と絶縁ノズル23との間に開口面積S1を有する開口部61が形成されている。開口部61が請求項における第1の開口部に、開口面積S1が請求項における第1の開口面積に相当する。電流遮断時の後半に、開口部61からアーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間のアーク空間へ消弧性ガスが噴出する。
開口部62の開口面積S2と開口部63の開口面積S3との和は、開口部61の開口面積S1未満である。
S1>S2+S3 ・・・・・(式1)
このように消弧性ガスの上流である開口部61の開口面積S1を、下流である開口部62の開口面積S2と開口部63の開口面積S3の和より大きく構成することにより、消弧性ガスは、よどみなくアーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間のアーク空間へ誘導される。これにより、消弧性ガスの圧力損失を軽減させ、消弧性ガスのガス密度を高めることができる。開口部62、開口部63は、アークに近接するため、高温となり溶融、溶発、昇華等により変形し、開口面積S2、開口面積S3が拡大する場合がある。開口部62、開口部63が、高温となり変形した場合であっても、上記(式1)を満たす、開口部61の開口面積S1、開口部62の開口面積S2、開口部63の開口面積S3が選択されることが望ましい。
消弧性ガスは、絶縁ノズル23の内側に形成された開口部62、アーク接触子(可動側)41aの内側に形成された開口部63を通り、低圧の消弧性ガスが充填された広い空間に放出される。これにより、消弧性ガスは、高速化される。
固定接触子部4と可動接触子部3は、摺動接点などを介して常に同電位かつ導通状態となるように構成される。ガス遮断器1の閉路状態時には、可動接触子部3のトリガー電極31がアーク接触子(固定側)21に挿入されるため、可動接触子部3を介し、固定接触子部2と固定接触子部4は、電気的に導通される。ガス遮断器1の閉路状態時に、アーク接触子(可動側)41aは、口出し導体7a、7bを電気的に導通させるための電気回路の一部を構成する導体となる。
一方、ガス遮断器1の開路状態時には、可動接触子部3のトリガー電極31が固定接触子部2のアーク接触子(固定側)21と離間するため、アーク接触子(可動側)41aは、アーク接触子(固定側)21と電気的に遮断される。
しかしながら、ガス遮断器1が開路状態となる時には、可動接触子部3のトリガー電極31と固定接触子部2のアーク接触子(固定側)21は機械的に離間しているが、発生したアークにより電気的に導通状態となっている。従って、アークが存在する状態では、アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21は、電気的に導通状態である。
ガス遮断器1が開路状態となる時には、可動接触子部3は、駆動装置9により駆動され、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間を開放端方向から装置端方向へと移動する。これにより、トリガー電極31も、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間を開放端方向から装置端方向へと移動する。
トリガー電極31が、アーク接触子(固定側)21から離間する前に、固定通電接触子22と可動通電接触子32が離間する。これによりアークが固定通電接触子22と可動通電接触子32の間に発生せず、トリガー電極31とアーク接触子(固定側)21の間に発生する。
トリガー電極31が、アーク接触子(固定側)21から離間を開始した時点から、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなる時点までの間、アークはトリガー電極31とアーク接触子(固定側)21の間に発生する。
アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなると、アークはトリガー電極31からアーク接触子(可動側)41aに転移する。
アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなった時点から、アークが消弧される時点までの間、アークはアーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21の間に発生する。このときアーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21は、対向して配置された1対の電極を構成し、アークを負担する。
トリガー電極31は、さらに装置端方向に、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの離間距離より大きくなる方向に移動する。トリガー電極31は、アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21の間に発生したアークから離間することとなり、トリガー電極31の劣化が軽減される。
トリガー電極31は、さらに装置端方向に移動する。このとき、圧縮室36にて昇圧された消弧性ガスが、蓄圧流路38、絶縁ノズル23を介し噴出され、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間のアークが、消弧される。
駆動装置9によりトリガー電極31が装置端方向に移動することにより、トリガー電極31から、アーク接触子(可動側)41aにアークが転移する。アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21は、アークにより電気的に導通となるが、アークが消弧性ガスにより消弧されることにより開路状態となる。
また、ガス遮断器1が開路状態となる時に、アークによる、固定通電接触子22と可動通電接触子32の劣化を軽減することが望ましい。固定通電接触子22と可動通電接触子32は離間するが、固定通電接触子22と可動通電接触子32間にアークが発生することを防止するため、アーク接触子(固定側)21、トリガー電極31、アーク接触子(可動側)41aでアークを負担する。このため、固定通電接触子22と可動通電接触子32が離間するまでの時間、トリガー電極31とアーク接触子(固定側)21は十分に高い導電率を保ち接触し、電気的に良導通状態を保つ。
ガス遮断器1が開路状態となる時に、可動接触子部3のピストン33と固定接触子部4のシリンダ42により構成される圧縮室36内の消弧性ガスが昇圧される。
圧縮室36内の消弧性ガスの昇圧が完了もしくは一定程度進んだ後に、アーク接触子(可動側)41aとトリガー電極31は離間し、ピストン33とシリンダ42により昇圧された圧縮室36内の消弧性ガスが、蓄圧流路38を介し、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aとの間のアーク空間に吹き付けられる。
これにより、アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21との間のアークが消弧され、アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21は、電気的に遮断される。
(シリンダ42)
シリンダ42は、金属導体により構成された、一端に有底部を他端に開口部を有する筒形状の部材である。シリンダ42は、内部に円筒状の内壁52を有し、ドーナツ状の空間を形成する。シリンダ42は、外周部分を構成する外壁51を有する。内壁52、外壁51は、アーク接触子(可動側)41aと同心円を描くように構成される。シリンダ42は、外壁51および内壁52により仕切られたドーナツ状の空間を形成する。
シリンダ42の外壁51は、可動接触子部3のピストン33の外径と摺動可能な内径を有する。さらに、シリンダ42の内壁52は、ピストン33のドーナツ状の穴径と摺動可能な外径を有する。
シリンダ42の内壁52の開放端方向の端部は、絶縁ノズル23の装置端方向の端部に接合されている。シリンダ42の内壁52は、絶縁ノズル23を支持する。シリンダ42の内壁52と絶縁ノズル23との接合部分の気密は確保されている。
絶縁ノズル23と内壁52の接合部分、およびシリンダ42の内壁52は、アークに吹付けるために圧縮された消弧性ガスの圧力低下を軽減するために薄く形成されることが望ましい。絶縁ノズル23と内壁52の接合部分、およびシリンダ42の内壁52は、15mm以下程度に形成されることが望ましい。
仮に絶縁ノズル23と内壁52の接合部分、およびシリンダ42の内壁52が厚く形成された場合、高温となった高圧の消弧性ガスによる絶縁ノズル23の変形は軽減される。しかしながら圧縮室36で昇圧された消弧性ガスの圧力は、蓄圧流路38に流入するとき低下してしまう。したがって絶縁ノズル23と内壁52の接合部分、およびシリンダ42の内壁52は、薄く形成されることが望ましい。
アーク接触子(固定側)21からアーク接触子(可動側)41a間までの距離と、アーク接触子(固定側)21から絶縁ノズル23と内壁52との接合箇所までの距離が、略同等となる位置において、絶縁ノズル23はシリンダ42を構成する内壁52に接合される。内壁52は、可動通電接触子32と同電位であり、固定通電接触子22と可動通電接触子32の間の電位勾配が急峻となることを避ける。
シリンダ42は、有底部が装置端方向に、開口部が開放端方向になるように固定接触子部4に配置される。シリンダ42は、消弧性ガス中に配置される。シリンダ42は、有底部に可動接触子部3のピストン33を支えるピストン支え33aが挿通される挿通穴42aを有する。
シリンダ42にピストン33が挿入され、消弧性ガスを昇圧するための圧縮室36が形成される。シリンダ42とピストン33は、ガス遮断器1が開路状態となる時に、圧縮室36内の消弧性ガスを圧縮する。シリンダ42とピストン33は、圧縮室36の気密を確保する。これにより圧縮室36内の消弧性ガスは、昇圧される。
シリンダ42の内壁52には貫通孔42bが設けられている。貫通孔42bは、圧縮室36と蓄圧流路38を導通させる。貫通孔42bは、開口面積S5を有する。蓄圧流路38は、開口面積S4である最狭流路径を有する。開口面積S4が請求項における第4の開口面積に、開口面積S5が請求項における第5の開口面積に相当する。蓄圧流路38は、装置端方向から開放端方向にかけ、開口面積が小さくなるように形成されていてもよい。
電流遮断時の後半にトリガー電極31による絶縁ノズル23の密閉が解放され、圧縮室36で昇圧された消弧性ガスは、貫通孔42b、蓄圧流路38、ガイド部41の外側と絶縁ノズル23との間の開口部61を介しアーク空間へ誘導される。開口部61からアーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間のアーク空間へ消弧性ガスが噴出する。
貫通孔42bの開口面積S5は、第4の開口面積S4以上である。蓄圧流路38の最狭流路径である開口面積S4は、ガイド部41の外側と絶縁ノズル23との間の開口部61の開口面積S1以上である。
S5≧S4≧S1 ・・・・・(式2)
このように構成することにより、圧縮室36の貫通孔42b、蓄圧流路38、開口部61へ向かうにつれて流路断面積が小さくなり、消弧性ガスは、よどみなくアーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間のアーク空間へ誘導される。これにより、消弧性ガスの圧力損失を軽減させ、消弧性ガスのガス密度を高めることができる。
ガス遮断器1が開路状態となる時に、シリンダ42は、ピストン33と協調して圧縮室36内の消弧性ガスを圧縮する。圧縮室36内の消弧性ガスの昇圧が完了もしくは一定程度進んだ後に、絶縁ノズル23とトリガー電極31は離間し、ピストン33とシリンダ42により昇圧された圧縮室36内の消弧性ガスが、蓄圧流路38を介し、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31またはアーク接触子(可動側)41aとの間のアーク空間に吹き付けられる。このとき、高温のガスはアーク接触子(固定側)21の内側空間またはアーク接触子(固定側)21と絶縁ノズル23がつくる空間を通り開放端方向に排出される。
さらにトリガー電極31の駆動が進むとアーク接触子(可動側)41aとトリガー電極31は離隔し、ピストン33とシリンダ42により昇圧された圧縮室36内の消弧性ガスが、蓄圧流路38を介し、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aとの間のアーク空間に吹き付けられる。このとき、高温のガスはアーク接触子(固定側)21の内側空間またはアーク接触子(固定側)21と絶縁ノズル23がつくる空間およびアーク接触子(可動側)41aの内側空間を通り排出される。
これにより、アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21との間のアークが消弧され、アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21は、電気的に遮断される。
(サポート43)
サポート43は、一端面が有底の円筒形状の導体であり、有底の端面が装置端方向に配置される。サポート43には、密閉容器8を介し、口出し導体7bが接続される。サポート43は密閉容器8に絶縁部材により固定される。サポート43は、アーク接触子(可動側)41a、シリンダ42を支持する。
(可動接触子部3)
可動接触子部3は、トリガー電極31、可動通電接触子32、ピストン33、絶縁ロッド37を有する。従来技術では、可動接触子部がノズル、シリンダ、アーク電極を有しており、大がかりなものとなっていたが、本実施形態により大幅な軽量化を実現することができる。トリガー電極31とピストン33は、一体化して同時に動作する必要性は必ずしもないが、一体化した場合、構造を簡単にすることができる。なお、トリガー電極31をピストン33より早く動かす構造とした方が、遮断性能上有利な場合がある。
(可動通電接触子32)
可動通電接触子32は、可動接触子部3の円筒の中心軸に沿い、可動接触子部3の開放端方向の端部に配置された円筒状の電極である。可動通電接触子32は、円筒状の金属導体により構成される。可動通電接触子32の開放端方向の端部は、面取り加工され曲面状に成形されている。可動通電接触子32は、導電性が高く軽量であるアルミニウムにより構成されることが望ましいが、銅により構成されるものであってもよい。可動通電接触子32は、可動するため軽量に構成されることが望ましい。
可動通電接触子32は、固定接触子部2の固定通電接触子22の内径部分と接触、摺動可能な外径を有する。可動通電接触子32は、ピストン33の開放端方向の面に配置される。
ガス遮断器1の閉路状態時に、可動通電接触子32は、固定接触子部2の固定通電接触子22に挿入される。これにより可動通電接触子32は、固定通電接触子22と接触し、可動接触子部3と固定接触子部2を電気的に導通させる。可動通電接触子32は、通電時には定格電流を流す能力を有する。
一方、ガス遮断器1の開路状態時に、可動通電接触子32は、固定接触子部2の固定通電接触子22と機械的に離間し、可動接触子部3と固定接触子部2を電気的に遮断する。
可動通電接触子32は、導体により構成されたピストン33と一体に形成されている。ピストン33は、ガス遮断器1の閉路状態時、開路状態時とも、固定接触子部4のシリンダ42に挿入され、可動接触子部3と固定接触子部4を電気的に導通させる。ピストン33は、固定接触子部4のシリンダ42内を摺動するが、ガス遮断器1の閉路状態、開路状態にかかわらず、可動接触子部3と固定接触子部4は電気的に導通となる。
(トリガー電極31)
トリガー電極31は、可動接触子部3の円筒の中心軸に沿い、可動接触子部3の開放端方向の端部に配置された棒状の電極である。トリガー電極31は、削り出し等により円柱状に形成された中実の金属導体により構成される。トリガー電極31の開放端方向の端部は、面取り加工され曲面状に成形されている。トリガー電極31の少なくとも先端は、銅を10%から40%およびタングステンを90%から60%含有する金属等により構成される。
トリガー電極31は、固定接触子部2のアーク接触子(固定側)21の内径と接触、摺動可能な外径を有する。トリガー電極31は、アーク接触子(可動側)41aの内側に配置される。
トリガー電極31は、ピストン33とともに、絶縁ロッド37に接続され、この絶縁ロッド37が駆動装置9により駆動されることにより固定接触子部2と固定接触子部4の間を往復移動する。トリガー電極31は、アーク接触子(固定側)21に対して相対的に可動する。トリガー電極31は、消弧性ガス中に配置されており、消弧性ガス中に発生するアーク放電を負担する。
ガス遮断器1の閉路状態時に、トリガー電極31は、固定接触子部2のアーク接触子(固定側)21に挿入される。これによりトリガー電極31は、固定接触子部2のアーク接触子(固定側)21および固定接触子部4のアーク接触子(可動側)41aと接触し、固定接触子部2、可動接触子部3、固定接触子部4を電気的に導通させる。ガス遮断器1の閉路状態時に、トリガー電極31は、口出し導体7a、7bを電気的に導通させる電流回路の一部を構成する。
ガス遮断器1の閉路状態時および電流遮断時の前半に、トリガー電極31は、絶縁ノズル23の開口部62を閉塞し、消弧性ガスの気密を確保する。また、ガス遮断器1の閉路状態時および電流遮断時の前半に、トリガー電極31は、ガイド部であるアーク接触子(可動側)41aの開口部63を閉塞し、消弧性ガスの気密を確保する。
一方、ガス遮断器1が開路状態となる時に、トリガー電極31は、固定接触子部2のアーク接触子(固定側)21と離間する。これによりトリガー電極31は、可動接触子部3と固定接触子部2との間に発生するアークを負担する。
可動通電接触子32が固定通電接触子22から離間した後に、トリガー電極31が、アーク接触子(固定側)21から離間する。これにより遮断すべき電流は、トリガー電極31およびアーク接触子(固定側)21側へ転流し、アークが固定通電接触子22と可動通電接触子32の間に発生しない。トリガー電極31は、アーク接触子(固定側)21に対向して配置された1対の電極を構成し、ガス遮断器1が開路状態となる時に、アークと接する電極の一方の電極となる。
ガス遮断器1の開路状態時に発生するアークは、トリガー電極31およびアーク接触子(固定側)21間に集中する。可動通電接触子32と固定通電接触子22の間のアークの発生が避けられ、可動通電接触子32と固定通電接触子22の劣化が軽減される。
ガス遮断器1が開路状態となる時には、可動接触子部3は、駆動装置9により駆動され、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間を開放端方向から装置端方向へと移動する。これにより、トリガー電極31も、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間を開放端方向から装置端方向へと移動する。トリガー電極31が、アーク接触子(固定側)21から離間する前に、固定通電接触子22と可動通電接触子32が離間する。これによりアークが固定通電接触子22と可動通電接触子32の間に発生することを避ける。
トリガー電極31が、アーク接触子(固定側)21から離間を開始した時点から、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなる時点までの間、アークはトリガー電極31とアーク接触子(固定側)21の間に発生する。
アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなると、アークはトリガー電極31からアーク接触子(可動側)41aに転移する。アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなった時点から、アークが消弧される時点までの間、アークはアーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21の間に発生する。このときアーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21は、対向して配置された1対の電極を構成し、アークを負担する。
トリガー電極31は、さらに装置端方向に、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの離間距離より大きくなる方向に移動する。トリガー電極31は、アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21の間に発生したアークから離間することとなり、トリガー電極31の劣化が軽減される。
トリガー電極31は、さらに装置端方向に移動する。電流遮断時の後半に、絶縁ノズル23の開口部62は、トリガー電極31が離間することにより開放される。また、電流遮断時の後半に、アーク接触子(可動側)41aの開口部63は、トリガー電極31が離間することにより開放される。開口部62、開口部63が開放されることにより、圧縮室36で昇圧された消弧性ガスは、アーク空間へ誘導される。ピストン33とシリンダ42により構成された圧縮室36にて昇圧された消弧性ガスが、蓄圧流路38、絶縁ノズル23を介し噴出され、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間のアークが、消弧される。
これにより、アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21との間のアークが消弧され、アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21は、電気的に遮断される。アークが消弧された後は、トリガー電極31にアーク電流は流れない。
アーク接触子(固定側)21およびアーク接触子(可動側)41aに対するトリガー電極31の移動は、トリガー電極31およびピストン33に固定支持された絶縁ロッド37によって引き起こされる。絶縁ロッド37は、駆動装置9により駆動される。絶縁ロッド37は、絶縁材料により構成される。絶縁ロッド37は、トリガー電極31、アーク接触子(固定側)21、アーク接触子(可動側)41aの中心軸上に配置される。
(ピストン33)
ピストン33は、可動接触子部3の開放端方向の端面に配置されたドーナツ形状の板である。ピストン33は、開放端方向の面に可動通電接触子32を有する。ピストン33は、削り出し等により、ドーナツ形状の板に形成された金属導体により構成される。
ピストン33は、固定接触子部4のシリンダ42の外壁51の内径と摺動可能な外径を有する。ピストン33は、固定接触子部4のシリンダ42の内壁52と摺動可能なドーナツ状の穴径を有する。
ピストン33は、装置端方向の面に接続された、複数のピストン支え33aを有する。ピストン支え33aは、ロッド状に形成された金属導体により構成された部材である。ピストン支え33aは、シリンダ42の挿通穴42aを介し、ピストン33をトリガー電極31に固定する。ピストン33は、ピストン支え33a、トリガー電極31を介し絶縁ロッド37に接続される。
ピストン33は、固定接触子部4のシリンダ42と摺動可能に挿入され配置される。ピストン33とシリンダ42により、消弧性ガスを昇圧するための圧縮室36が形成される。ピストン33は、消弧性ガス中に配置される。
ピストン33は、絶縁ロッド37を介して接続された駆動装置9により往復移動される。駆動装置9による往復移動は、ガス遮断器1を閉路状態とする時および開路状態とする時に行われる。
ガス遮断器1が開路状態となる時に、ピストン33は、シリンダ42と協調して圧縮室36内の消弧性ガスを圧縮する。その結果、圧縮室36内の消弧性ガスは、昇圧される。
蓄圧流路38と圧縮室36は、シリンダ42に設けられた貫通孔42bにより連通している。ピストン33とシリンダ42により圧縮室36内の消弧性ガスが昇圧されている段階では、蓄圧流路38の圧力のリークは防がれている。従って、圧縮室36内と蓄圧流路38には、同圧に昇圧された消弧性ガスが充填される。
また、ピストン33とシリンダ42により構成された圧縮室36および蓄圧流路38は、圧縮室36内の消弧性ガスが昇圧されている段階では、絶縁ノズル23の開口部62、およびアーク接触子(可動側)41aの開口部63がトリガー電極31により閉塞されているので、消弧性ガスの気密が確保され、アークと隔離されている。アークによる熱の影響を受けにくいため、圧縮室36および蓄圧流路38内の昇圧された消弧性ガスは、低温である。低温の消弧性ガスがアーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21との間のアークに吹き付けられるので、効率よくアークの消弧が行われる。
圧縮室36内の消弧性ガスの昇圧が完了した、もしくは一定程度進んだ電流遮断時の後半に、絶縁ノズル23の開口部62およびアーク接触子(可動側)41aの開口部63は、トリガー電極31が離間することにより開放される。これによりピストン33とシリンダ42により昇圧された圧縮室36内の消弧性ガスが、蓄圧流路38を介し、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aとの間のアーク空間に吹き付けられる。
その結果、アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21との間のアークが消弧され、アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21は、電気的に遮断される。
アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31間またはアーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41a間に発生したアークによる熱およびアークにより高温化された消弧性ガスは、排気口24a、24b、44を通り、密閉容器8内へ速やかに排気される。
(絶縁ロッド37)
絶縁ロッド37は、絶縁材料により構成された棒状の部材である。絶縁ロッド37の開放端方向には、トリガー電極31およびピストン33が固定される。絶縁ロッド37の装置端方向は、駆動装置9に接続される。
絶縁ロッド37は、トリガー電極31、アーク接触子(固定側)21、アーク接触子(可動側)41aの中心軸上に配置される。トリガー電極31は絶縁ロッド37の開放端方向の端部に立設している。絶縁ロッド37は、ガス遮断器1を閉路状態にする時および開路状態にする時に、駆動装置9に往復移動させられる。
以上が、ガス遮断器1の構成である。
[1−3.作用]
次に、本実施形態のガス遮断器1の作用を、図1〜8に基づき説明する。
[A.ガス遮断器1が閉路状態の場合]
最初に、本実施形態のガス遮断器1が閉路状態である場合について説明する。ガス遮断器1は、閉路状態の場合、口出し導体7a、7bに流れる電流を導通する。
ガス遮断器1が閉路状態である場合、固定接触子部2と固定接触子部4は、可動接触子部3を介し電気的に接続され、口出し導体7a、7b間の電流を導通する。具体的には、固定接触子部2の固定通電接触子22には、可動接触子部3の可動通電接触子32が挿入される。これにより固定通電接触子22は、可動通電接触子32と接触し、固定接触子部2と可動接触子部3は電気的に導通状態とされる。
また、固定接触子部2のアーク接触子(固定側)21には、可動接触子部3のトリガー電極31が挿入される。これによりアーク接触子(固定側)21は、トリガー電極31と接触し、固定接触子部2と可動接触子部3は電気的に導通状態とされる。
さらに、固定接触子部4のシリンダ42には、可動接触子部3のピストン33が挿入される。ピストン33と可動通電接触子32は、一体に形成され電気的に導通している。これにより可動通電接触子32は、シリンダ42と電気的に導通となり、固定接触子部4と可動接触子部3は電気的に導通状態とされる。
この結果、固定接触子部2と固定接触子部4は、可動接触子部3を介し電気的に接続され、口出し導体7a、7b間が電気的に導通状態となる。
この状態において、トリガー電極31またはアーク接触子(可動側)41aと、アーク接触子(固定側)21との間の空間に、アークは発生していない。また、消弧性ガスは、密閉容器8内における各部で均一の圧力となっている。従って、可動接触子部3のピストン33および固定接触子部4のシリンダ42により形成される圧縮室36内の消弧性ガスは昇圧されていない。また、蓄圧流路38内の消弧性ガスも昇圧されていない。
絶縁ノズル23の開口部62、およびアーク接触子(可動側)41aの開口部63は、トリガー電極31により閉塞され、消弧性ガスの気密が確保されている。
ガス遮断器1が閉路状態である時、密閉容器8内の消弧性ガスの圧力は均一である。従って、消弧性ガスによるガス流は、発生しない。
[B.ガス遮断器1が開路状態となる場合]
次に、本実施形態のガス遮断器1が開路状態となる場合について説明する。ガス遮断器1は、開路状態となり、口出し導体7a、7bに流れる電流を遮断する。
ガス遮断器1を開路状態とする遮断動作は、事故電流もしくは負荷電流の遮断、あるいは送電回路の切り替えなどの際に、ガス遮断器1を導通状態から遮断状態に切り替える場合に行われる。
ガス遮断器1を閉路状態から開路状態とする場合、駆動装置9を駆動させる。駆動装置9により、可動接触子部3が、軸に沿い固定接触子部4内を装置端方向に移動させられる。これにより、固定通電接触子22から可動通電接触子32が開離するとともに、アーク接触子(固定側)21からトリガー電極31が開離する。
ガス遮断器1が開路状態となる時には、可動接触子部3は、駆動装置9により駆動され、固定接触子部2と固定接触子部4の間を開放端方向から装置端方向へと移動する。これに伴い、可動通電接触子32が、固定通電接触子22から離間し、開放端方向から装置端方向へと移動する。
さらに、トリガー電極31も、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間を開放端方向から装置端方向へと移動する。可動通電接触子32が固定通電接触子22から離間した後に、トリガー電極31が、アーク接触子(固定側)21から離間する。これにより遮断すべき電流は、トリガー電極31およびアーク接触子(固定側)21側へ転流し、アークは固定通電接触子22と可動通電接触子32の間に発生しない。
トリガー電極31が、アーク接触子(固定側)21から離間を開始した時点から、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなる時点までの間、アークはトリガー電極31とアーク接触子(固定側)21の間に発生する。
アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなると、アークはトリガー電極31からアーク接触子(可動側)41aに転移する。アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの離間距離と、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が等しくなった時点から、アークが消弧される時点までの間、アークはアーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21の間に発生する。このときアーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21は、対向して配置された1対の電極を構成し、アークを負担する。
トリガー電極31は、さらに装置端方向に、アーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の離間距離が、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの離間距離より大きくなる方向に移動する。トリガー電極31は、アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21の間に発生したアークから離間することとなり、トリガー電極31の劣化が軽減される。
ガス遮断器1が開路状態となる時に、可動接触子部3が駆動装置9により駆動されるため、ピストン33も、開放端方向から装置端方向へと移動する。ピストン33は、シリンダ42と協調して圧縮室36内の消弧性ガスを圧縮する。その結果、圧縮室36内の消弧性ガスは、昇圧される。
トリガー電極31は、駆動装置9に駆動され、さらに装置端方向に移動する。電流遮断時の後半に、絶縁ノズル23の開口部62は、トリガー電極31が絶縁ノズル23から離間することにより開放される。また、電流遮断時の後半に、アーク接触子(可動側)41aの開口部63は、トリガー電極31が離間することにより開放される。開口部62、開口部63が開放されることにより、圧縮室36で昇圧された消弧性ガスは、アーク空間へ誘導される。
圧縮室36を構成するシリンダ42の内壁52には貫通孔42bが設けられている。貫通孔42bは、圧縮室36と蓄圧流路38を導通させる。貫通孔42bは、開口面積S5を有する。蓄圧流路38は、一定の開口面積S4を有する。蓄圧流路38の開口面積S4はS5からS1に向けて徐々に小さくなるような開口面積を有してもよい。
電流遮断時の後半にトリガー電極31による絶縁ノズル23の密閉が解放され、圧縮室36で昇圧された消弧性ガスは、貫通孔42b、蓄圧流路38、ガイド部41の外側と絶縁ノズル23との間の開口部61を介しアーク空間へ誘導される。
貫通孔42bの開口面積S5は、前記第4の開口面積S4以上である。ガイド部41の外側と絶縁ノズル23との間に開口面積S1を有する開口部61が形成されている。蓄圧流路38の最狭流路径である開口面積S4は、ガイド部41の外側と絶縁ノズル23との間の開口部61の開口面積S1以上である。
S5≧S4≧S1 ・・・・・(式2)
このように構成することにより、圧縮室36の貫通孔42b、蓄圧流路38、開口部61へ向かうにつれて流路断面積が小さくなり、消弧性ガスは、よどみなくアーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間のアーク空間へ誘導される。これにより、消弧性ガスの圧力損失を軽減させ、消弧性ガスのガス密度を高めることができる。
絶縁ノズル23の内側に、開口面積S2を有する開口部62が形成されている。アーク接触子(可動側)41aの内側に、開口面積S3を有する開口部63が形成されている。開口部62の開口面積S2と開口部63の開口面積S3との和は、開口部61の開口面積S1未満である。
S1>S2+S3 ・・・・・(式1)
このように消弧性ガスの上流である開口部61の開口面積S1を、下流である開口部62の開口面積S1と開口部63の開口面積S3より大きく構成することにより、消弧性ガスは、よどみなくアーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間のアーク空間へ誘導される。これにより、消弧性ガスの圧力損失を軽減させ、消弧性ガスのガス密度を高めることができる。開口部61からアーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間のアーク空間に、消弧性ガスが高速で噴出し、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間のアークが、消弧される。
アーク空間を通った消弧性ガスは、絶縁ノズル23の内側に形成された開口部62、アーク接触子(可動側)41aの内側に形成された開口部63を通り、低圧の消弧性ガスが充填された広い空間に放出される。これにより、消弧性ガスは、高速化される。
アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21との間のアークが消弧されることにより、アーク接触子(可動側)41aとアーク接触子(固定側)21は、電気的に遮断される。
一般に、消弧性ガスの圧力P、密度ρ、温度Tの間には、以下の関係が成り立つ。Rは各ガス種に固有のガス定数である。
P=ρRT ・・・・・(式3)
ガス遮断器を低コスト化するためには、より低い駆動操作力で高い消弧性能を実現することが望ましい。しかしながら、従来のパッファ形ガス遮断器および熱パッファ形ガス遮断器ではアークからの排熱ガスがパッファ室に流入するため、消弧性ガスの十分なガス密度を得るためには昇圧したガスが高温にならざるを得なかった。
従来のパッファ形ガス遮断器および熱パッファ形ガス遮断器では、熱ガスのエネルギーを利用して吹付けガスを昇圧しており、吹付けガスは必然的に高温となり密度の低下を招いていたためである。消弧性ガスの密度を上げるためには、大きな駆動力が必要であり、その結果、駆動装置は大掛かりなものとなる。
これを解決するために別の従来技術では、アークからの排熱ガスを取り込まずに、比較的低い圧力の場合でも、蓄圧室内に密度の高い消弧性ガスを生成することができる。しかし、蓄圧室に生成された高密度の消弧性ガスは、流路断面積の増減によって加速された後、高速でアークに吹付けられる。そのため、蓄圧室において高密度であった消弧性ガスの内部エネルギーの一部は、運動エネルギーに変換され、アークの冷却に寄与する消弧性ガスのガス密度は、蓄圧室内に比べて低下してしまう。
本実施形態によれば、ガス遮断器1の閉路状態時および電流遮断時の前半に、トリガー電極31により、絶縁ノズル23の開口部62およびガイド部41であるアーク接触子(可動側)41aの開口部63が閉塞され、消弧性ガスの気密を確保する。このため高温となった消弧性ガスが、圧縮室36および蓄圧流路38に入り込むことが防止される。その結果、圧縮室36において低温で消弧性ガスが圧縮され、アークに吹付ける消弧性ガスの圧力および密度を適切に確保することができる。さらに本実施形態によれば、S2+S3が流路全体最狭流路部として構成される。そのためS2+S3がいわゆるラバルノズルのスロート部に相当し、S2とS3の上流は密度が高いまま維持され、高密度のガスをアークに吹き付けることができる。
絶縁ノズル23の装置端方向の端部は、シリンダ42の内壁52に接合されている。絶縁ノズル23は、シリンダ42の内壁52に支持されている。
アーク接触子(固定側)21からアーク接触子(可動側)41a間までの距離と、アーク接触子(固定側)21から絶縁ノズル23と内壁52との接合箇所までの距離が、略同等となる位置において、絶縁ノズル23はシリンダ42を構成する内壁52に接合される。内壁52は、導電材料により構成されており可動通電接触子32と同電位であり、固定通電接触子22と可動通電接触子32の間の電位勾配が急峻となることを避ける。
これにより、絶縁ノズル23とシリンダ42の内壁52との接合部分におけるトリプルジャンクション(三重点)における絶縁破壊発生の可能性が軽減される。
アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aとの間のアーク空間に吹き付けられる消弧性ガスは、ピストン33とシリンダ42により昇圧されている。また、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aとの間のアーク空間は高温になっている。絶縁ノズル23は高圧となった高温の消弧性ガスの流速を高速化してアーク空間へ誘導する。
このため、絶縁ノズル23が変形する可能性がある。高圧となった高温の消弧性ガスにより、絶縁ノズル23の内径が拡張してしまう可能性があった。絶縁ノズル23の内径が拡張してしまうと、消弧性ガスを高速でアーク空間へ誘導することができなくなり、遮断を確実に行うことができなくなる可能性がある。
ガス遮断器は、消弧性ガスを昇圧し、この昇圧された消弧性ガスをアークへ噴出することにより、アークを消弧する。従って、アークへの噴出時に昇圧された消弧性ガスの圧力が低下し噴出速度が遅くなることは望ましくない。昇圧された消弧性ガスの圧力低下は、消弧性ガスの流速を下げ、確実なアークの消弧を行いにくくするためである。
しかしながら、本実施形態にかかるガス遮断器1は、アーク接触子(固定側)21からアーク接触子(可動側)41a間までの距離と、アーク接触子(固定側)21から絶縁ノズル23と内壁52との接合箇所までの距離が、略同等となる位置において、絶縁ノズル23がシリンダ42を構成する内壁52に接合される。内壁52は、導電材料により構成されており可動通電接触子32と同電位であり、固定通電接触子22と可動通電接触子32の間の電位勾配が急峻となることを避ける。
これにより絶縁ノズル23の変形が軽減される。したがって絶縁ノズル23の開口部62の開口面積S2が適切に維持される。絶縁ノズル23の変形が軽減され、開口部62の開口面積S2が適切に維持されることにより、消弧性ガスの気密の劣化を防ぐことができ、高温となった消弧性ガスが、圧縮室36および蓄圧流路38に入り込むことが防止される。その結果、圧縮室36において低温で消弧性ガスが圧縮され、アークに吹付ける消弧性ガスの圧力および密度を適切に確保することができる。
アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aとの間のアーク空間に発生したアークは、高温である。アークに吹き付けられ高温になった消弧性ガスは、排気筒24の排気口24a、24b、44から密閉容器8内に排出される。
口出し導体7a、7bから供給された交流電流の電流零点では、アーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41a間のアークが小さくなり、消弧性ガスが吹き付けられることにより消弧に至る。その結果、ガス遮断器1は、開路状態となり、口出し導体7a、7bに流れる電流が遮断される。
以上が、ガス遮断器1の作用である。
[1−4.効果]
(1)本実施形態によれば、ガス遮断器1は、電力系統に接続される第1の口出し導体7aに電気的に接続された第1のアーク接触子21と、第2の口出し導体7b側に設けられた円筒状のガイド部41と、第1のアーク接触子21とガイド部41の間を移動可能に配置され、電流遮断時の前半には移動に伴って第1のアーク接触子21との間に発生するアークが点弧されるトリガー電極31と、円筒状に形成された外壁51および内壁52を有し、ガイド部41側に設けられたシリンダ42と、外壁51と内壁52の間を前記トリガー電極31と連動して摺動するピストン33と、により構成された消弧性ガスを昇圧する圧縮室36と、第1のアーク接触子21に点弧したアークに、圧縮室36により昇圧された消弧性ガスを導く絶縁ノズル23と、を有し、絶縁ノズル23は、シリンダ42の内壁52と一体に構成されるので、絶縁ノズル23の変形およびアークに吹付けるために圧縮された消弧性ガスの漏えいを軽減し、アークに吹付ける消弧性ガスの圧力および密度を適切に確保し、電気絶縁性能をより確実に維持することができるガス遮断器1を提供することができる。
絶縁ノズル23がシリンダ42の内壁52と一体に構成されない場合、高温となった高圧の消弧性ガスが吹き付けられ絶縁ノズル23が外周方向に変形する。これにより消弧性ガスが漏えいし、消弧性ガスの圧力が低下することになる。その結果、ガス遮断器1の遮断性能、電気絶縁性能が低下することになる。
しかしながら、本実施形態によれば、ガス遮断器1の絶縁ノズル23は、シリンダ42の内壁52と一体に構成されるので、高温となった高圧の消弧性ガスが吹き付けられても、絶縁ノズル23の変形が抑制される。これにより消弧性ガスの漏えいが軽減される。その結果、消弧性ガスの圧力低下が抑止され、ガス遮断器1の遮断性能、電気絶縁性能がより確実に維持される。
(2)本実施形態によれば、ガス遮断器1の閉路状態時および電流遮断時の前半に、トリガー電極31により、絶縁ノズル23の開口部62およびアーク接触子(可動側)41aの開口部63が閉塞され、消弧性ガスの気密が確保され、高温となった消弧性ガスが、圧縮室36および蓄圧流路38に入り込むことが防止される。その結果、圧縮室36において低温で消弧性ガスが圧縮され、アークに吹付ける消弧性ガスの圧力および密度を適切に確保することができるガス遮断器1を提供することができる。
また、ガス遮断器1の遮断に大きな駆動力が必要とされず、小型の駆動装置9により実現できるガス遮断器1を提供することができる。さらに、単純な構造で優れた遮断性能と耐久性とを兼ね備えたガス遮断器1を実現することができる。
(3)消弧性ガスの上流である開口部61の開口面積S1は、下流である開口部62の開口面積S2と開口部63の開口面積S3の和より大きく構成されているので、消弧性ガスは、よどみなくアーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間のアーク空間へ誘導される。これにより、アークに吹付ける消弧性ガスの圧力および密度が適切に確保されたガス遮断器1を提供することができる。
消弧性ガスが流れる流路の中で、開口部62の開口面積S2と開口部63の開口面積S3の和が小さく、いわゆる流路全体に対するスロート部となる。このため、スロート部より下流では消弧性ガスの流れは音速を超え、ガス密度は低くなるが、スロート部の上流では、消弧性ガスのガス密度は高いまま維持される。したがって、開口部61、開口部62、開口部63で囲まれた領域では、消弧性ガスは高密度となり、いわゆる流れが淀む、よどみ点部が形成される。
このよどみ点部は、アークの発生部に形成されるため、高圧かつ高密度の消弧性ガスをアークに吹付けることが可能となる。従来のガス遮断器に比べ、吹付ける消弧性ガスの温度を低くすることができるとともに、密度を高くすることが可能となる。低い消弧性ガスの圧力で高い、消弧性能を達成することができる。その結果、大きな駆動力が必要とされず、小型の駆動装置9により実現できるガス遮断器1を提供することができる。
従来技術におけるガス遮断器では、圧縮された消弧性ガスが流路断面積の狭いスロート部を超えてからアークに吹き付けられる。このため、消弧性ガスのガス密度が最も高くなる部分は、アークが生じる領域の外側となっていた。このため吹付ガスの密度が最も高くなるよどみ点は、アークが生じる領域外に形成されていた。
しかしながら、本実施形態によれば、絶縁ノズル23の内径に形成された開口部62の開口面積S2とガイド部41の内径に形成された開口部63の開口面積S3はトリガー電極31の大きさに依存するが、ガイド部41の外側と絶縁ノズル23との間の開口部61の開口面積S1はトリガー電極31の大きさに依存せず、独立に選択することができる。したがって、開口部61の開口面積S1は、開口部62の開口面積S2と開口部63の開口面積S3の和より大きく構成されることができる。
このため、開口部61、開口部62、開口部63で囲まれた領域をよどみ点にすることができ、消弧性ガスの密度を高密度とすることが可能となる。したがって、遮断に必要な消弧性ガスの密度をより低い圧力で実現することができ、小型の駆動装置9によりガス遮断器1を実現することができる。
(4)本実施形態によれば、シリンダ42の内壁52に設けられた貫通孔42bの開口面積S5は、蓄圧流路38の最狭流路径である開口面積S4以上である。蓄圧流路38の最狭流路径である開口面積S4は、ガイド部41の外側と絶縁ノズル23との間の開口部61の開口面積S1以上である。このように構成することにより、圧縮室36の貫通孔42b、蓄圧流路38、開口部61の順に流路断面積が小さくなり、消弧性ガスは、よどみなくアーク接触子(固定側)21とアーク接触子(可動側)41aの間のアーク空間へ誘導される。これにより、消弧性ガスの圧力損失を軽減させ、消弧性ガスのガス密度を高めることができる。
(5)本実施形態によれば、ガイド部41は、電流遮断時の後半にトリガー電極31からアークが点弧される第2のアーク接触子41aであるので、電流遮断時の後半にトリガー電極31がアーク接触子(可動側)41aに近づいたとき、アークはアーク接触子(可動側)41aに転流する。トリガー電極31はアークによる熱などにより損耗しやすいが、アークがトリガー電極31からアーク接触子(可動側)41aに転流するため、トリガー電極31にアークが点弧している時間を短くすることができる。このため、アークによるトリガー電極31の損耗を抑制することができ、トリガー電極31の寿命を延ばすことが可能である。
また、アーク接触子(可動側)41aは駆動装置9に駆動されず可動部重量には影響しないため、重量増大を懸念せず太く構成することが可能である。このため大電流アークに対する耐久性を著しく向上させることができる。
(6)本実施形態によれば、ガイド部41は、消弧性ガスを整流して駆動装置方向へ導く、絶縁材料により構成された整流部であるので、軽量な部材によりガイド部41を構成することができる。
(7)本実施形態によれば、絶縁ノズル23は、絶縁材料により構成され、導電材料により構成されたシリンダ42の内壁52に支持される。内壁52は、導電材料により構成されており可動通電接触子32と同電位であり、固定通電接触子22と可動通電接触子32の間の電位勾配が急峻となることを避けることができる。これにより、絶縁ノズル23とシリンダ42の内壁52との接合部分におけるトリプルジャンクション(三重点)での絶縁破壊発生の可能性が軽減される。
その結果、絶縁ノズル23とシリンダ42の内壁52との接合部分で、絶縁破壊が発生する可能性を軽減することができ、ガス遮断器1の遮断性能、電気絶縁性能をより確実に維持することができる。
仮に、ガイド部41としてのアーク接触子(可動側)41aが導電材料で構成され、絶縁ノズル23とシリンダ42の内壁52が絶縁材料により構成された場合、トリガー電極31およびアーク接触子(可動側)41a周辺の電界強度が強くなることを防ぐために、絶縁ノズル23とアーク接触子(可動側)41aとの距離を大きくとることが必要とされ、ガス遮断器1が大型化する可能性がある。
本実施例によれば、絶縁ノズル23は絶縁材料、シリンダ42の内壁52は導電材料により構成されているので、固定接触子部2と固定接触子部4の電気的絶縁を保ちつつ、トリガー電極31よびガイド部41としてのアーク接触子(可動側)41a周辺の電界強度を緩和することができ、ガス遮断器1の大型化を防ぐことができる。
また、仮にガイド部41が絶縁材料で構成されるとき、トリガー電極31とガイド部周辺の電界強度が強くなり、機器のコンパクト化を妨げる恐れがある。本実施形態によれば、絶縁ノズル23は絶縁材料、シリンダ42の内壁52は導電材料により構成されているので、固定接触子部2と固定接触子部4の電気的絶縁を保ちつつ、トリガー電極31よびガイド部周辺の電界強度を緩和することができ、ガス遮断器1の大型化を防ぐことができる。
また、本実施形態によれば、ピストン33との摺動面となるシリンダ42の内壁52は金属材料により構成され、絶縁材料により構成された場合に比べ、より薄肉で高い機械的強度を実現することができ、ガス遮断器1の大型化を防ぐことができる。
[2.第2実施形態]
[2−1.構成および作用]
本実施形態のガス遮断器1は、第1実施形態に加え、シリンダ42が、逆止弁42eを有することを特徴とする。その他の構成は第1実施形態と同じである。図10を参照しつつ、本実施形態のガス遮断器1の構成および作用を説明する。逆止弁42eは、圧縮室36内の消弧性ガスの圧力が、所定の値以上となった場合に、圧縮室36と蓄圧流路38の間を閉路とする。
電流遮断状態において、消弧性ガスはピストン33とシリンダ42により構成された圧縮室36にて圧縮される。消弧性ガスが圧縮されることにより、圧縮室36の内部に昇圧を妨げる力、つまりピストン33を開放端方向へと逆行させる力が発生する。
仮に、このピストン33を開放端方向へと逆行させる力が、駆動装置によるピストン33を牽引する力よりも大きくなった場合、ピストン33は逆行し消弧性ガスの圧縮は、行われないこととなる。
この場合、ピストン33はトリガー電極31に機械的に接続されているためトリガー電極31も逆行する。これによりトリガー電極31は、絶縁ノズル23の開口部62から離間することを妨げられ、開口部62はトリガー電極31により閉塞された状態を維持する。また、トリガー電極31は、ガイド部41の開口部63から離間することを妨げられ、開口部63はトリガー電極31により閉塞された状態を維持する。その結果、アークを消弧するのに十分な量の消弧性ガスが、ガイド部41の外側と絶縁ノズル23との間に形成された開口部61から噴出することが妨げられる。消弧性ガスの噴出が不十分である場合、アークは十分に消弧されず不都合である。
本実施形態によれば、圧縮室36内の消弧性ガスの圧力が、所定の値未満である場合、逆止弁42eは開状態となり、消弧性ガスは、ピストン33とシリンダ42により構成された圧縮室36にて圧縮される。圧縮室36内の消弧性ガスの圧力が、所定の値以上となった場合、つまりピストン33を開放端方向へと逆行させる力が、駆動装置によるピストン33を牽引する力よりも大きくなった場合、ピストン33は逆行を始める。
ピストン33が逆行を始めたことにより、逆止弁42eは閉状態になる。逆止弁42eが閉状態になった状態でピストン33が逆行すると、圧縮室36内の消弧性ガスの圧力は急激に低下する。したがって、ピストン33を開放端方向へと逆行させる力も急激に弱くなる。これにより、ピストン33を開放端方向へと逆行させる力が、駆動装置によるピストン33を牽引する力よりも小さくなり、ピストン33は再び圧縮室36内の消弧性ガスの圧縮を開始する。
その結果、トリガー電極31は、絶縁ノズル23の開口部62から離間するとともに、ガイド部41の開口部63から離間する。開口部62および開口部63は解放され消弧性ガスの排気路となる。その結果、アークを消弧するのに十分な量の消弧性ガスが、ガイド部41の外側と絶縁ノズル23との間に形成された開口部61から噴出し、アークは十分に消弧される。
[2−2.効果]
本実施形態によれば、シリンダ42は、圧縮室36内の消弧性ガスの圧力が、所定の値以上となった場合に、圧縮室36と圧縮室36により昇圧された消弧性ガスをアークへ導く蓄圧流路38との間を閉路とする逆止弁42eを有するので、ピストン33が逆行することにより圧縮室36内で適切に消弧性ガスが圧縮されないことを防止することができる。これによりアークに吹付ける消弧性ガスの圧力および密度を適切に確保し、電気絶縁性能をより確実に維持することができるガス遮断器1を提供することができる。
[3.第3実施形態]
[3−1.構成および作用]
本実施形態のガス遮断器1は、第1実施形態または第2実施形態に加え、ピストン支え33aが小径に形成された小径部33bを有することを特徴とする。その他の構成は第1実施形態または第2実施形態と同じである。図11、12を参照しつつ、本実施形態のガス遮断器1の構成および作用を説明する。
ピストン33は、サポート43に設けられた挿通穴42aに挿通された柱状のピストン支え33aにより駆動され、ピストン支え33aは、柱状に形成されたピストン33側の一部に小径に形成された小径部33bを有し、ピストン支え33aが駆動されることにより電流遮断時の後半に形成される、小径部33bと挿通穴42aとの間の空隙部71から、消弧性ガスが流出される。
電流遮断状態において、消弧性ガスはピストン33とシリンダ42により構成された圧縮室36にて圧縮される。消弧性ガスが圧縮されることにより、圧縮室36の内部に昇圧を妨げる力、つまりピストン33を開放端方向へと逆行させる力が発生する。
仮に、このピストン33を開放端方向へと逆行させる力が、駆動装置によるピストン33を牽引する力よりも大きくなった場合、ピストン33は逆行し消弧性ガスの圧縮は、行われないこととなる。
この場合、ピストン33はトリガー電極31に機械的に接続されているためトリガー電極31も逆行する。これによりトリガー電極31は、絶縁ノズル23の開口部62から離間することを妨げられ、開口部62はトリガー電極31により閉塞された状態を維持する。また、トリガー電極31は、ガイド部41の開口部63から離間することを妨げられ、開口部63はトリガー電極31により閉塞された状態を維持する。その結果、アークを消弧するのに十分な量の消弧性ガスが、ガイド部41の外側と絶縁ノズル23との間に形成された開口部61から噴出することが妨げられる。消弧性ガスの噴出が不十分である場合、アークは十分に消弧されず不都合である。
本実施形態によれば、ピストン33に接続された柱状のピストン支え33aのピストン33側の一部に、小径に形成された小径部33bが設けられている。小径部33bとサポート43に設けられた挿通穴42aとの間の空隙部71から、消弧性ガスを噴出して圧縮室36内の過剰な圧力が逃がされ、ピストン33の逆行が防止される。
図11に示すように、電流遮断時の前半では、ピストン支え33aによりサポート43に設けられた挿通穴42aは塞がれ、消弧性ガスは圧縮室36および蓄圧流路38から漏出しない。この状態で、消弧性ガスは、ピストン33とシリンダ42により構成された圧縮室36にて圧縮される。
図12に示すように、電流遮断時の後半では、ピストン支え33aの小径部33bが挿通穴42a差し掛かり空隙部71が形成される。空隙部71から過剰に圧縮された消弧性ガス1の一部が圧縮室36および蓄圧流路38の外部へ流出する。これにより圧縮室36および蓄圧流路38内の過剰な圧力上昇が防止され、ピストン33の逆行が防止される。
ピストン33の逆行が防止され、ピストン33は圧縮室36内の消弧性ガスの圧縮を行う。その結果、トリガー電極31は、絶縁ノズル23の開口部62から離間するとともに、ガイド部41の開口部63から離間する。開口部62および開口部63は解放され消弧性ガスの排気路となる。その結果、アークを消弧するのに十分な量の消弧性ガスが、ガイド部41の外側と絶縁ノズル23との間に形成された開口部61から噴出し、アークは十分に消弧される。
[3−2.効果]
本実施形態によれば、ピストン33は、サポート43に設けられた挿通穴42aに挿通された柱状のピストン支え33aにより駆動され、ピストン支え33aは、柱状に形成されたピストン33側の一部に小径に形成された小径部33bを有し、ピストン支え33aが駆動されることにより電流遮断時の後半に形成される、小径部33bと挿通穴42aとの間の空隙部71から、消弧性ガスが流出されるので、ピストン33が逆行することにより圧縮室36内で適切に消弧性ガスが圧縮されないことを防止することができる。これによりアークに吹付ける消弧性ガスの圧力および密度を適切に確保し、電気絶縁性能をより確実に維持することができるガス遮断器1を提供することができる。
[4.他の実施形態]
変形例を含めた実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。以下は、その一例である。
上記実施形態では、ガイド部41としてアーク接触子(可動側)41aは、導電材料により構成され、電流遮断時の後半にトリガー電極31からアークが転流されるものとした。しかしながら、ガイド部41は、絶縁材料により構成された整流部41bであってもよい。
整流部41bは、アクリル、ポリカーボネイト、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂、またはこれらを組合せた絶縁物により構成される。上記の樹脂材料には、BN、Al2O3、ZnO、TiO2、CaF、CeO2のうちの少なくとも一つが、充填されていてもよい。
整流部41bの、消弧性ガスをアーク放電へ導く面には、BaTiO3、PbO3、ZrO3、TiO2、ZrO2、SiO2、MgO、AlN、Si3N4、SiC、Al2O3のうち少なくとも一つのセラミック材が、コーティングされていてもよい。または、ガイド部41は、アクリル、ポリカーボネイト、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、PTFEに代替し、BaTiO3、PbO3、ZrO3、TiO2、ZrO2、SiO2、MgO、AlN、Si3N4、SiC、Al2O3のうちの少なくとも一つのセラミック材により構成されていてもよい。
整流部41bは、絶縁材料により構成されているので、アークはトリガー電極31からガイド部41に転流しない。電流遮断時の後半においてもアークはアーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の間に発生したままとなる。
ガス遮断器1の閉路状態時および電流遮断時の前半に、整流部41bの開口部63は、トリガー電極31が挿入されて閉塞され、消弧性ガスの気密が確保されている。また、ガス遮断器1の閉路状態時および電流遮断時の前半に、トリガー電極31は、絶縁ノズル23の開口部62は、トリガー電極31が挿入されて閉塞され、消弧性ガスの気密が確保されている。
ガス遮断器1の電流遮断時にトリガー電極31は、駆動装置9に駆動され、装置端方向に移動する。電流遮断時の後半に、整流部41bの開口部63は、トリガー電極31が離間することにより開放される。また、電流遮断時の後半に、絶縁ノズル23の開口部62は、トリガー電極31が絶縁ノズル23から離間することにより開放される。開口部62、開口部63が開放されることにより、圧縮室36で昇圧された消弧性ガスは、アーク空間へ誘導される。
開口部61からアーク接触子(固定側)21とトリガー電極31の間のアーク空間に、消弧性ガスが高速で噴出し、アークが、消弧される。
開口部63が開放されることにより、アーク空間へ誘導された消弧性ガスは、整流部41bの内部を通り装置端方向に排気される。整流部41bは、消弧性ガスを誘導するガイド部となる。
消弧性ガスは、絶縁ノズル23の内側に形成された開口部62、整流部41bの内側に形成された開口部63を通り、低圧の消弧性ガスが充填された広い空間に放出される。これにより、消弧性ガスは、高速化される。
ガス遮断器1の閉路状態時および電流遮断時の前半に、トリガー電極31により、絶縁ノズル23の開口部62および整流部41bの開口部63が閉塞され、消弧性ガスの気密が確保される。このため高温となった消弧性ガスが、圧縮室36および蓄圧流路38に入り込むことが防止される。その結果、圧縮室36において低温で消弧性ガスが圧縮され、アークに吹付ける消弧性ガスの圧力および密度を適切に確保することができる。
(2)上記実施形態では、固定接触子部2および固定接触子部4は、密閉容器8に固定されるものとしたが、固定接触子部2および固定接触子部4は、可動するものであってもよい。ガス遮断器1が開路状態となるときに、例えば、固定接触子部2が開放端方向に可動するようにしてもよい。また、固定接触子部4が装置端方向に可動するようにしてもよい。固定接触子部2または4が、あるいは固定接触子部2および4が可動することにより、より迅速に口出し導体7a、7b間の電力を遮断することができる。