JPWO2020138496A1 - リグノセルロースファイバーの製造方法、リグノセルロースファイバーおよび複合材 - Google Patents

リグノセルロースファイバーの製造方法、リグノセルロースファイバーおよび複合材 Download PDF

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Abstract

本発明のリグノセルロースファイバーの製造方法は、竹に対し、150℃以上320℃以下の水蒸気で加熱処理を施した後に、第一解繊処理を施して、竹ウィスカーを得る工程と、前記竹ウィスカーに対し、アルカリ金属化合物と、次亜塩素酸塩および亜塩素酸塩のうちの少なくとも1つとを用いた部分解繊処理および酸化処理を施して、平均太さが0.05μm以上100μm以下であり、平均長さが50μm以上2000μm以下である第一リグノセルロースファイバーを得る工程と、を備えることを特徴とする方法である。

Description

本発明は、リグノセルロースファイバーの製造方法、リグノセルロースファイバーおよび複合材に関する。
近年、化石資源から再生可能な資源への転換が注目されており、特にバイオマス資源への注目度は高く、広く利用されてきている。
現在、日本は一次資源のほとんどを輸入に頼っているが、身近なところにも一次資源はあり、その代表的なものとして、間伐材、竹、および稲わら、麦わら等が挙げられる。
日本は世界でも有数の森林面積比率を有しているが、価格の安い海外のバイオマスに取って代わられたことに伴う国内生産の激減により、手入れが不十分な森林または竹林が増加した。特に、竹に関しては「放置竹林」、或いは、農地または住宅地への「侵入竹林」が拡大の一途をたどっている。しかしながら、竹を工業資源という観点からみると、竹は西日本を中心に広く分布しており、その賦存量は膨大であり、しかも成長が早いという特徴を持っている。また、竹は、材料の観点からも非常に優れており、プラスチックとの複合材料の研究が盛んに行われ、コンポジット特性の向上も多数報告されている。つまり、竹の工業資源としての利用は、竹林の問題に対する有効な解決策となると同時に石油、石炭および天然ガス等の化石資源の代替資源としても非常に有効である。
また、CO固定化の目的でバイオマス由来の繊維素材を基に高強度材料の開発が活発に行われている。その中でセルロース系ナノコンポジットの開発が急速に進んできている。その基本要素として、高強度、高弾性、および低熱膨張のナノ構造繊維に注目が集まっている。このナノ構造繊維の利用においては、いかにしてナノ構造を維持したまま、簡便にプラスチックと複合化し、その機能を十分に発揮させるかという点に技術開発が求められている。
従来の複合化技術では、バイオマスに対し予め化学処理を行ってセルロース成分を分離した後、(i)さらにバイオマスを化学薬品によって処理し、セルロース内の結合を弱めて解繊しやすくすること、(ii)グラインダー、ホモジナイザー、高圧剪断型分散装置等を用いて繊維をナノサイズまで機械的応力解繊をすること、(iii)ナノサイズの繊維径を維持しながら、表面改質を行い、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)等の汎用樹脂との親和性の向上を図るとともに、溶融成形時に繊維の再凝集を防ぎ、樹脂との結合力を高めるため分散剤や相溶化剤等を添加して、機械的せん断応力を加えること、という3段階の工程を必要とする。例えば、上記(i)のバイオマスを化学薬品によって処理する方法としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルラジカル(TEMPO)および次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を複数組み合わせて用いることで、ナノ繊維の表面にカルボキシル基を導入し、その電荷反発を利用して、分散性の高い繊維を得る技術が開発されている(非特許文献1参照)。
バイオマスの組織は、セルロース繊維のみではなく、ヘミセルロースおよびリグニン成分が複雑に交錯しあって、頑丈な組織構造を構築している。上記のナノサイズの繊維化技術は、バイオマスの組織構造をより簡便に崩壊させるために開発されてきた技術である。
また、先に、竹またはアブラヤシ由来の原料を過熱水蒸気で処理して、ヘミセルロースを優先的に分解し、組織外に排除する方法が開示されている(特許文献1参照)。ヘミセルロースを分解除去することで、バイオマスの組織構造は一気に弱体化し、リグノセルロース成分の解繊が容易になることが記載されている。
さらに、過熱水蒸気処理で得られたヘミセルロースを優先分解除去したバイオマスのリグノセルロース粉末に、熱可塑性樹脂等のプレポリマーを配合して、工業的製造に有利な一段階での溶融成形によってバイオマスリグノセルロース複合成形体を得る技術が開示されている(特許文献2参照)。
また、古紙を原料とする連続式固体状態せん断粉砕技術も開発され、バイオマスのナノ解繊前のセルロースから直接プラスチックと複合化する技術を開示している(非特許文献2参照)。但し、この方法はポリマーを固相状態でセルロースの解繊をおこなうため、まず低温で解繊を行い、その後、昇温して溶融成形するという2段階プロセスであり、工業的生産のためには、さらなるプロセス改善が望まれる。
一方で、パルプを原料として水に分散させた高圧状態でノズルより噴出させることで、強い剪断によりナノ解繊する技術が開示され、均一なナノ繊維を得る方法が開示されている(特許文献3参照)。
しかしながら、上記のような従来開示されてきたナノ解繊技術では、次のような問題がある。第一に、希薄濃度において触媒を用いた精密な反応処理が必要だったり、大きなエネルギーを必要とする高圧力下での機械剪断が必要だったりとスケールアップが困難であった。第二に、水に分散した状態では、ナノ化するに従い極端に粘度が増大するため低濃度で取り扱うことになり、その洗浄や分離濃縮が極めて困難になり、工業的使用に使えるような大量生産が困難であった。第三に、こうした処理によりセルロース繊維の径は、数百nm〜数nmと十分に小さくなっても、樹脂中で分散状態を維持することは困難であり、セルロースナノファイバーが有する潜在能力を発現するには至っていない。
これらを解決するためには、取り扱いが難しく、また凝集しやすくなるナノサイズまでには解繊せずに、一定以上のアスペクト比を維持したまま、樹脂と混練可能なマイクロサイズまでの解繊にとどめ、かつ表面の水酸基の一部をより反応性の高い官能基に変換して樹脂との接合力を高める必要がある。しかしながら、従来の木材パルプを原料とする方法では、高いアスペクト比を有するマイクロサイズのセルロースファイバーを選択的に得る方法がなかった。
特許第5656167号公報 特許第5660513号公報 特許第5690303号公報
バイオマクロモレキュールズ、第8巻、第8号、2485−2491頁(2007年) コンポジット:パートA、第83巻、47−55頁(2016年)
本発明は、高いアスペクト比を有するマイクロサイズ以下のセルロースファイバーを選択的に製造できるリグノセルロースファイバーの製造方法、並びに、リグノセルロースファイバーおよび複合材を提供することを目的とする。
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のようなリグノセルロースファイバーおよびその製造方法、並びに、複合材を提供するものである。
本発明の第一のリグノセルロースファイバーの製造方法は、竹に対し、150℃以上320℃以下の水蒸気で加熱処理を施した後に、第一解繊処理を施して、竹ウィスカーを得る工程と、前記竹ウィスカーに対し、アルカリ金属化合物と、次亜塩素酸塩および亜塩素酸塩のうちの少なくとも1つとを用いた部分解繊処理および酸化処理を施して、平均太さが0.05μm以上100μm以下であり、平均長さが50μm以上2000μm以下である第一リグノセルロースファイバーを得る工程と、を備えることを特徴とする方法である。
本発明の第二のリグノセルロースファイバーの製造方法は、竹に対し、150℃以上320℃以下の水蒸気で加熱処理を施した後に、第一解繊処理を施して、竹ウィスカーを得る工程と、前記竹ウィスカーに対し、アルカリ金属化合物と、次亜塩素酸塩および亜塩素酸塩のうちの少なくとも1つとを用いた部分解繊処理および酸化処理を施し、さらに、第二解繊処理を施して、平均太さが5nm以上500nm以下であり、平均長さが5μm以上500μm以下である第二リグノセルロースファイバーを得る工程と、を備えることを特徴とする方法である。
本発明のリグノセルロースファイバーの一つは、竹由来のリグノセルロースファイバーであって、ヘミセルロース含有量が、水分を除くファイバー全量基準で、1質量%以下であり、リグニン含有量が、水分を除くファイバー全量基準で、18質量%以下であり、平均太さが、0.05μm以上100μm以下であり、平均長さが、50μm以上2000μm以下であることを特徴とするものである。
本発明のリグノセルロースファイバーの一つは、竹由来のリグノセルロースファイバーであって、ヘミセルロース含有量が、水分を除くファイバー全量基準で、1質量%以下であり、リグニン含有量が、水分を除くファイバー全量基準で、18質量%以下であり、平均太さが、5nm以上500nm以下であり、平均長さが、5μm以上500μm以下であり、前記リグノセルロースファイバーが、FT−IR分光法で測定される赤外吸収スペクトルを透過率スペクトルとして観察する場合において、1010cm−1〜1050cm−1の範囲の吸収ピーク、1620cm−1〜1660cm−1、および2800cm−1〜3000cm−1の範囲の吸収ピークを有することを特徴とするものである。
本発明のリグノセルロースファイバーにおいては、前記リグニン含有量が、水分を除くファイバー全量基準で、10質量%以下であることが好ましい。
本発明の複合材は、前記リグノセルロースファイバーの製造方法で得られるリグノセルロースファイバー、或いは、前記リグノセルロースファイバーを含有することを特徴とするものである。
本発明によれば、高いアスペクト比を有するマイクロサイズ以下のセルロースファイバーを選択的に製造できるリグノセルロースファイバーの製造方法、並びに、リグノセルロースファイバーおよび複合材を提供できる。
実施例1で用いた竹微粉、実施例1で作製したリグノセルロースマイクロファイバー、およびセルロース試料について、TG−DTA(熱重量示差熱分析)を行った結果を示すグラフである。 実施例1で作製したリグノセルロースマイクロファイバーの走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1で作製したリグノセルロースナノファイバーの走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1で用いた竹微粉の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1で作製したリグノセルロースマイクロファイバーのフーリエ変換型赤外吸収スペクトル(透過率スペクトル)である。 実施例1で作製したリグノセルロースナノファイバーのフーリエ変換型赤外吸収スペクトル(透過率スペクトル)である。 従来のセルロースナノファイバーのフーリエ変換型赤外吸収スペクトル(透過率スペクトル)である。 図7とは異なる方法で作製された従来のセルロースナノファイバーのフーリエ変換型赤外吸収スペクトル(透過率スペクトル)である。 実施例2で作製したペレット状の複合樹脂組成物の破断面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例2で作製したペレット状の複合樹脂組成物の破断面の走査型電子顕微鏡写真であり、図9よりも拡大したものである。 セメントに対するリグノセルロースマイクロファイバーの添加量と硬化後のモルタルの圧縮強さとの関係を示すグラフである。 実施例12で用いた竹微粉の光学顕微鏡写真である。 実施例13で用いた竹微粉の光学顕微鏡写真である。 実施例14で用いた竹微粉の光学顕微鏡写真である。 実施例12で作製したリグノセルロースマイクロファイバーの走査型電子顕微鏡写真である。 実施例13で作製したリグノセルロースマイクロファイバーの走査型電子顕微鏡写真である。 実施例14で作製したリグノセルロースマイクロファイバーの走査型電子顕微鏡写真である。
[リグノセルロースファイバーの製造方法]
まず、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という)に係るリグノセルロースファイバーの製造方法について説明する。
本実施形態に係る第一のリグノセルロースファイバーの製造方法は、竹に対し、150℃以上320℃以下の水蒸気で加熱処理を施した後に、第一解繊処理を施して、竹ウィスカーを得る工程(竹ウィスカー作製工程)と、前記竹ウィスカーに対し、アルカリ金属化合物と、次亜塩素酸塩および亜塩素酸塩のうちの少なくとも1つとを用いた部分解繊処理および酸化処理を施して、平均太さが0.05μm以上100μm以下であり、平均長さが50μm以上2000μm以下である第一リグノセルロースファイバーを得る工程(第一リグノセルロースファイバー作製工程)と、を備える方法である。
また、本実施形態に係る第二のリグノセルロースファイバーの製造方法は、前記第一リグノセルロースファイバー作製工程で得られる前記第一リグノセルロースファイバーに対し、第二解繊処理を施して、平均太さが5nm以上500nm以下であり、平均長さが5μm以上500μm以下である第二リグノセルロースファイバーを得る工程(第二リグノセルロースファイバー作製工程)を、さらに備える方法である。
(竹ウィスカー作製工程)
竹ウィスカー作製工程においては、まず、竹に対し、150℃以上320℃以下の水蒸気で加熱処理(以下、「過熱水蒸気処理」ともいう)を施す。
竹は、広義には、イネ目イネ科タケ亜科のうち、木本のように茎が木質化する種の総称である。日本に生育する竹は600種あるといわれており、そのうちの代表的なものとして、マダケ、モウソウチク(孟宗竹)、およびハチク等が挙げられる。本実施形態において用いる竹の種類は、特に限定されない。また、本実施形態において、竹とは、稈、枝、葉、および根からなる総体的なものを意味するが、とりわけ、セルロース繊維成分が豊富な維管束鞘を大量に含む稈部が好適である。
竹は、その主要な構成成分として、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンからなる。ヘミセルロースはセルロースとリグニン、或いはセルロース同士を結合させる接着剤の役割を担っている。
この竹に対して150℃以上320℃以下の過熱水蒸気処理を施すことで、ヘミセルロースを実質的に含有しないリグノセルロースファイバーが得られる。また、過熱水蒸気処理の温度は、200℃以上230℃以下であることがより好ましい。
ヘミセルロースを含有しないということは、例えば、バイオマスを示差熱熱重量測定装置で示差熱挙動の微分曲線を調べることで確認できる。この微分曲線において、150℃以上320℃以下の温度範囲のピークは、ヘミセルロースの分解に基づくものである。そのため、リグノセルロースファイバーがこの温度範囲に実質的にピークを有さないことは、リグノセルロースファイバーが実質的にヘミセルロースを含まないことを意味する。つまり、リグノセルロースファイバーにおけるヘミセルロース含有量が、水分を除くファイバー全量基準で、1質量%以下であることを意味する。一方で、この微分曲線において、300℃以上400℃以下の温度範囲のピークは、セルロースの分解に基づくものである。
リグノセルロースファイバーにおけるリグノとは、植物成分からリグニンを完全に取り除くことなく、セルロースをミクロフィブリル化したものであることを意味している。過熱水蒸気処理によりリグニンの一部が分解するが、リグニンを完全に取り除かないことにより、後述するように、残存するリグニン或いはリグニンの一部分解物が、次亜塩素酸塩もしくは亜塩素酸塩処理によるセルロースの酸化反応を促進していると推測される。
さらに、一部分解したリグニンがセルロースファイバーの表面を覆い、本来親水的なセルロースの表面がリグニンの疎水性によって、疎水的性質に変化し、ミクロフィブリルの再凝集を抑制することができ、さらに、疎水的なポリマーとの親和性を向上させることができる。
竹ウィスカー作製工程においては、次に、過熱水蒸気処理後の竹に、第一解繊処理を施して、竹ウィスカーを得る。
第一解繊処理としては、公知の解繊方法を適宜採用できる。第一解繊処理として、例えば、過熱水蒸気処理後の竹を、破砕または粉砕する方法を採用できる。
竹に過熱水蒸気処理を施して、ヘミセルロースを除去することにより、破砕および粉砕が容易となる。そのため、リグノセルロースファイバーを作成するために好適なミクロンサイズの針状繊維構造体を含有する微粉体(竹ウィスカー)を容易に作成することができる。
また、第一解繊処理を施した後の竹ウィスカーに、分級処理(篩分け)を施してもよい。この分級処理により、竹ウィスカーの平均太さ、平均長さ、および平均のアスペクト比等を調整できる。
竹ウィスカーにおいては、長さが1000μm以下である成分を30質量%以上含むことが好ましい。また、得られるリグノセルロースファイバーの平均長さを適切な範囲にするという観点から、長さが1000μm以下である成分を50質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことが特に好ましい。
竹ウィスカーの長さは、倍率を調整可能な顕微鏡観察で得られた1cm×1cm画像中の繊維について直接測定できる。長さが1000μm以下である成分の質量比率は、長さと質量が実質的に比例関係にあることに基づいて、長さの累積頻度%を測定して、これを質量%と置き換える方法により算出できる。なお、長さが1000μm以下である成分の質量比率の概略値は、篩い分け法により簡便に測定できる。
竹ウィスカーにおいては、平均のアスペクト比が5以上100以下であることが好ましく、10以上80以下であることがより好ましい。平均のアスペクト比が前記範囲内であれば、後工程で得られるリグノセルロースファイバーの平均のアスペクト比を適切な範囲にできる。
平均のアスペクト比は、長さの太さに対する比(長さ/太さ)として表わされる。アスペクト比が大きいということは、より細長い繊維状の形態であることを意味している。平均のアスペクト比は、1cm×1cm画像中の繊維について直接測定したアスペクト比の平均値を、試料の平均のアスペクト比として測定できる。
(第一リグノセルロースファイバー作製工程)
第一リグノセルロースファイバー作製工程においては、竹ウィスカーに対し、アルカリ金属化合物と、次亜塩素酸塩および亜塩素酸塩のうちの少なくとも1つとを用いた部分解繊処理および酸化処理を施す。これにより、第一リグノセルロースファイバーが得られる。
このような部分解繊処理および酸化処理により、竹ウィスカーの全体的または部分的なミクロフィブリル化を行うことができる。アルカリ金属化合物(例えば、アルカリ金属水酸化物)の作用は、アモルファス様セルロースの溶解と残存するリグニンの溶解である(参考文献:Tingju Lu,Effects of modifications of bamboo cellulose fibers on the improved mechanical properties of cellulose reinforced poly(lactic acid) Composites,Compos Part B 62 (2014) p.191〜197、および、畠山兵衛、「漂白過程におけるリグニンの挙動」、紙パ技協誌、20巻(1966)11号、p.586〜595参照)。これによりアスペクト比が小さく、樹脂複合化物の機械的強度の補強効果が低い粒子を溶解除去するとともに、過剰なリグニンを溶解除去する。次亜塩素酸塩または亜塩素酸塩の作用は、酸化作用であり、リグニンを可溶化して除去せしめる(上記参考文献参照)と同時に、セルロース表面のグルコースユニット上のメチロール基を酸化してカルボキシル基とする。通常、次亜塩素酸塩の作用によるセルロース上のメチロール基の酸化は、アルデヒド基までの酸化であり、カルボキシル基まで酸化するには、亜塩素酸塩を用いるか、前述したTEMPO等の酸化触媒の添加が必要である。しかしながら、本実施形態においては、一部分解したリグニンの共存が、酸化触媒なしに次亜塩素酸塩による温和な条件下でのカルボキシル基までの酸化を容易にしたものと推察される。セルロース表面に形成したカルボキシル基は、カルボキシルアニオンとなり、そのイオン反発作用により、セルロース分子間に乖離が生じ、ミクロフィブリル化が進行する。さらに、このイオン反発作用により、一度乖離したミクロフィブリル同士の再凝集が抑制される。なお、通常、カルボキシルアニオンは使用する次亜塩素酸塩または亜塩素酸塩の金属イオンとの塩として存在するが、塩酸や硫酸等の適当な酸を用いて洗浄することで、金属イオンを除去して容易にカルボキシル基とすることができる。
ここで、次亜塩素酸塩および亜塩素酸塩のうちの少なくとも1つを用いた酸化処理は、従来公知の技術を適宜使用できる。しかしながら、塩素またはナトリウム等を含有する処理廃液は、環境負荷を高める原因となるため、可能な限り限定的に使用するのが望ましい。本実施形態においては、あらかじめ、過熱水蒸気処理によりヘミセルロースを除去し、さらにリグニンの一部を分解しているため、上記したようにリグノセルロースの酸化反応、さらにそれに続くミクロフィブリル化がより穏やかな条件下で進行するという特徴を有する。
本実施形態においては、あらかじめヘミセルロースを除去し、一部分解したリグニンを含有するリグノセルロースである竹ウィスカーを原料とする。そして、竹ウィスカーを乾燥粉状態で、アルカリ金属化合物と、あらかじめ酸化剤(次亜塩素酸塩および亜塩素酸塩のうちの少なくとも1つ)を溶解した水溶液に添加する。このときに、他の酸化触媒の添加は一切行わない。その後、自発的な反応熱による発泡と昇温を交えて30℃以上90℃以下(好ましくは40℃以上70℃以下)の温度範囲で制御し、機械的撹拌を行う。温度の低下と発泡の減衰とともに酸化反応を終了する。このようにして、リグノセルロースの部分解繊とリグニン除去を達成でき、第一リグノセルロースファイバーを作製できる。なお、必要に応じて、混合水溶液にpH調整剤を加えたり、適度な機械的解繊を行ったりしてもよい。
上記した機械的撹拌や適度な機械的解繊とは、酸化反応の条件や処理量のスケールに応じて、従来公知の機械的な撹拌または解繊方法がいずれも利用可能である。機械的撹拌の方法としては、通常、水溶液の状態で処理する方法が採用できる。機械的撹拌に用いる装置としては、回転翼式撹拌装置、噴流式撹拌装置、および泡式撹拌装置が挙げられる。機械的解繊に用いる装置としては、高圧剪断型分散装置、ボールミル、ビーズミル、ディスクミルおよび石臼式剪断装置等が挙げられる。また、適宜超音波を照射することで撹拌効率を上げることが可能である。
ここで用いる酸化剤(次亜塩素酸塩および亜塩素酸塩のうちの少なくとも1つ)としては、ナトリウム塩がもっとも一般的であり好適に用いられる。これらの酸化剤は、予め水に溶解しておくことが好ましい。その際の酸化剤濃度は、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%程度が特に好ましい。
また、次亜塩素酸塩と亜塩素酸塩との使用量を調整することで、第一リグノセルロースファイバーにおけるカルボキシル基とメチロール基との比率を調整できる。セルロースは二級の水酸基と一級水酸基のメチロール基を有するが、本実施形態においては、亜塩素酸塩を用いなくてもリグニンが残存するセルロースを原料とすることで、メチロール基の一部をカルボキシル基まで酸化できる。ただし、通常の常圧での温和な条件では、カルボキシル基濃度を上げることは難しいが、亜塩素酸塩を併用することで、カルボキシル基の濃度を高くし、残存するメチロール基との比率を変更することが可能である。これにより、第一リグノセルロースファイバーを、複合化対象物質、相溶化剤、および分散剤等の表面処理に適した状態にできる。
また、次亜塩素酸塩を使用する場合には、同時にアルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属炭酸塩等のアルカリ金属化合物を添加することが好ましい。このアルカリとしては、水酸化ナトリウムまたは炭酸ナトリウム等が水溶液として用いられる。これらのアルカリ水溶液の濃度は、0.2質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%程度であることが特に好ましい。このアルカリにより、有害な遊離塩素や二酸化塩素の発生を防止するとともに、リグノセルロースの解繊が可能であり、上記した適度な機械的解繊を省略できる。すなわち、本実施形態では、積極的に脱リグニン、非結晶性セルロースの溶解除去、部分解繊のために、アルカリを添加している。そして、次亜塩素酸塩または亜塩素酸塩はアルカリによる部分解繊を助けるとともに酸化により繊維表面にカルボキシル基を生成せしめて凝集を防止する。このような方法により、上記した適度な機械的解繊を行うことなく、樹脂等との複合化により十分な補強効果を発揮できる。
竹ウィスカーと酸化剤の量的な比率は、1:0.5〜2.5(質量比)、より好ましくは、1:1.0〜2.0(質量比)である。
本実施形態における部分解繊処理および酸化処理は、例えば、下記(i)〜(iii)のような方法で行うことができる。
(i)次亜塩素酸塩およびアルカリ金属化合物の混合水溶液を用いて、部分解繊処理および酸化処理を行う。
(ii)次亜塩素酸塩およびアルカリ金属化合物の混合水溶液を用いて、部分解繊処理および酸化処理を行い、その後、亜塩素酸塩の水溶液を用いて、酸化処理を行う。
(iii)アルカリ金属化合物の高濃度水溶液を用いて、部分解繊処理を行い、その後、次亜塩素酸塩およびアルカリ金属化合物の混合水溶液を用いて、部分解繊処理および酸化処理を行う。
上記(i)〜(iii)のような方法を使い分けることにより、下記(a)および(b)のような作用が得られる。
(a)リグノセルロースファイバーの表面のメチロール基とカルボキシル基の割合を制御することができ、複合化対象物質との相溶性(分散性)を確保できる。
(b)部分解繊度を制御することにより、複合化対象物質との界面接着性を制御できる。例えば、部分解繊度を大きくすることで、複合化対象物質との接触面積を大きくでき、界面接合力を大きくできる。
また、上記(i)〜(iii)のような方法の中でも、バランスが良いという観点からは、上記(i)の方法が好ましい。また、カルボキシル基の割合を高めるという観点からは、上記(ii)の方法が好ましい。さらに、部分解繊度を高めるという観点からは、上記(iii)の方法が好ましい。
第一リグノセルロースファイバーにおいては、平均太さが0.05μm以上100μm以下であり、平均長さが50μm以上2000μm以下である。この第一リグノセルロースファイバーは、平均太さが100μm以下と、マイクロサイズなので、本明細書では、リグノセルロースマイクロファイバーとも称する。
第一リグノセルロースファイバーの平均太さは、0.1μm以上100μm以下であることが好ましく、1μm以上50μm以下であることがより好ましい。
第一リグノセルロースファイバーの平均長さは、100μm以上1000μm以下であることが好ましい。
第一リグノセルロースファイバーの長さおよび太さは、倍率を調整可能な顕微鏡観察で得られた1cm×1cm画像中の繊維について直接測定できる。
なお、第一リグノセルロースファイバーの長さおよび太さは、上記のようにして作成したリグノセルロースファイバー水分散液を用いて、以下の方法で確認することもできる。すなわち、この水分散液を、液体窒素を用いて瞬間的に凍結し、これを高減圧下に蒸発させることによって、乾燥した第一リグノセルロースファイバーを再凝集なしに得ることができる。次に、スパッター等を用いて、第一リグノセルロースファイバー表面を、金、白金、オスミウムまたは炭素で被覆した後、走査型電子顕微鏡で観察し、繊維の長さおよび太さを測定することができる。また、乾燥した第一リグノセルロースファイバーをそのまま直にダイヤモンド結晶面等に押し付け、反射法による測定を行うか、もしくは、臭化カリウム結晶と共粉砕し、さらに加圧によりディスクを作成して透過法による赤外線吸光分析により、第一リグノセルロースファイバーの化学構造を確認することができる。
また、例えば、第一リグノセルロースファイバーの平均長さは、竹ウィスカーの平均長さを変更することにより調整できる。
第一リグノセルロースファイバーにおいては、平均のアスペクト比(長さ/太さ)は基本的に大きい方が望ましいが、あまりに大きいと複合材中に均一に分散することが困難となるため、5以上200以下であることが好ましく、10以上100以下であることがより好ましい。平均のアスペクト比が前記範囲内であれば、リグノセルロースファイバーを補強材として用いた場合に、高い補強効果を達成できる。
第一リグノセルロースファイバーは、上記の通り、竹由来のリグノセルロースファイバーである。
第一リグノセルロースファイバーのヘミセルロース含有量は、水分を除くファイバー全量基準で、1質量%以下である。上記の過熱水蒸気処理により、ファイバー中からヘミセルロースが除かれるためである。
第一リグノセルロースファイバーのリグニン含有量は、水分を除くファイバー全量基準で、18質量%以下である。上記のアルカリによる溶解および酸化処理により、ファイバー中からリグニンが除かれるためである。また、第一リグノセルロースファイバーの白色化や、臭気の低減という観点からは、第一リグノセルロースファイバーのリグニン含有量は、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。一方、リグニンはファイバーの再凝集を抑制することができ、さらに、疎水的なポリマーとの親和性を向上させることができるため、用途に応じて必要量のリグニンを残すこともできる。なお、リグニン含有量は、次のようにして測定できる。リグニン含有量は、例えば、示差熱熱重量測定装置により不活性ガス雰囲気の中での重量減少率曲線を調べることで確認できる。測定するバイオマスと純粋なセルロースの重量減少率曲線を比較して、500℃以上の残存量の差から、リグニンの量を算出することができる。その他、Van Soest法等の既存の分析方法を用いて測定できる。
また、例えば、第一リグノセルロースファイバーのリグニン含有量は、部分解繊処理および酸化処理の条件を変更することにより調整できる。
第一リグノセルロースファイバーは、FT−IR分光法で測定される赤外吸収スペクトルを透過率スペクトルとして観察する場合において、1010cm−1〜1050cm−1の範囲の吸収ピーク、1620cm−1〜1660cm−1、および2800〜3000cm−1の範囲の吸収ピークを有することが好ましい。1010cm−1〜1050cm−1の範囲の吸収ピークは、メチロール基を含む水酸基に由来するピークである。また、1620cm−1〜1660cm−1の範囲の吸収ピークは、カルボキシルアニオンにおけるカルボキシル基に由来するピークである。また、2800〜3000cm−1の範囲の吸収ピークは、メチロール基に由来するピークである。つまり、第一リグノセルロースファイバーは、メチロール基およびカルボキシル基を有するものである。
また、各官能基の量は対応する波数における赤外線の吸収量に比例することが知られている。このため、吸収スペクトルにおける各吸収ピークについてベースラインからピーク最低部までの高さを比較することによりメチロール基とカルボキシル基の量を比較することができる。
第一リグノセルロースファイバーについては、1010cm−1〜1050cm−1の範囲の吸収ピーク(P1)と、1620cm−1〜1660cm−1の範囲の吸収ピーク(P2)とのピーク高さの比(P1/P2)は、1/9以上8/2以下であることが好ましく、3/7以上7/3以下であることがより好ましい。
なお、赤外吸収スペクトルは、フーリエ変換型赤外吸収スペクトル(FT−IR)分析装置を用いて、分析できる。
(第二リグノセルロースファイバー作製工程)
本実施形態に係る第二のリグノセルロースファイバーの製造方法は、前記第一リグノセルロースファイバー作製工程で得られる前記第一リグノセルロースファイバーに対し、以下説明する第二リグノセルロースファイバー作製工程を、さらに備える方法である。
第二リグノセルロースファイバー作製工程においては、第一リグノセルロースファイバーに対し、第二解繊処理を施す。これにより、第二リグノセルロースファイバーが得られる。
第二解繊処理としては、公知の解繊方法を適宜採用できる。第二解繊処理に用いる装置としては、例えば、高圧剪断型分散装置、ピンミル、ハンマーミル、パルペライザー、アトライター、ジェットミル、カッターミル、ボールミル、ビーズミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、エッジミル、ワンダークラッシャー、ホモジナイザー、超音波分散装置、および石臼式せん断装置等が挙げられる。また、第二解繊処理は、第一リグノセルロースファイバーを含有する水溶液に対して処理を行う湿式解繊処理であることが好ましい。
第二リグノセルロースファイバーにおいては、平均太さが5nm以上500nm以下であり、平均長さが5μm以上500μm以下であることが必要である。この第二リグノセルロースファイバーは、平均太さが500nm以下と、ナノサイズなので、本明細書では、リグノセルロースナノファイバーとも称する。
第二リグノセルロースファイバーの平均太さは、10nm以上200nm以下であることが好ましい。
第二リグノセルロースファイバーの平均長さは、10μm以上100μm以下であることが好ましい。
第二リグノセルロースファイバーの長さおよび太さは、倍率を調整可能な顕微鏡観察で得られた1cm×1cm画像中の繊維について直接測定できる。
第二リグノセルロースファイバーにおいては、平均のアスペクト比(長さ/太さ)が50以上500以下であることが好ましく、100以上500以下であることがより好ましい。平均のアスペクト比が前記範囲内であれば、リグノセルロースファイバーを補強材として用いた場合に、高い補強効果を達成できる。
第二リグノセルロースファイバーは、上記の通り、竹由来のリグノセルロースファイバーである。
第二リグノセルロースファイバーのヘミセルロース含有量は、水分を除くファイバー全量基準で、1質量%以下である。上記の過熱水蒸気処理により、ファイバー中からヘミセルロースが除かれるためである。
第二リグノセルロースファイバーのリグニン含有量は、水分を除くファイバー全量基準で、18質量%以下である。原料である竹ウィスカーに対する上記のアルカリや次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩による溶解および酸化処理により、ファイバー中からリグニンが除かれるためである。また、第一リグノセルロースファイバーと同様に白色化して、臭気を低減するという観点からは、第二リグノセルロースファイバーのリグニン含有量は、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
第二リグノセルロースファイバーは、FT−IR分光法で測定される赤外吸収スペクトルを透過率スペクトルとして観察する場合において、1010cm−1〜1050cm−1の範囲の吸収ピーク、1620cm−1〜1660cm−1、および2800cm−1〜3000cm−1の範囲の吸収ピークを有することが必要である。
また、1010cm−1〜1050cm−1の範囲の吸収ピーク(P1)と、1620cm−1〜1660cm−1の範囲の吸収ピーク(P2)とのピーク高さの比(P1/P2)は、2/3以上5/1以下であることが好ましく、2/3以上3/1以下であることがより好ましい。
以上のように、本実施形態に係るリグノセルロースファイバーの製造方法によれば、高いアスペクト比を有するリグノセルロースファイバー(マイクロサイズ以下のセルロースファイバー、並びに、ナノサイズ以下のセルロースファイバー)を選択的に製造できる。また、前述の竹ウィスカー作製工程、第一リグノセルロースファイバー作製工程、および第二リグノセルロースファイバー作製工程は、いずれも、工程に必要なエネルギーが、従来のセルロースナノファイバーの製造方法に必要なエネルギーよりも格段に少ない。そのため、本実施形態に係るリグノセルロースファイバーの製造方法によれば、リグノセルロースナノファイバーを低コストで作製できる。
[複合材]
次に、本実施形態に係る複合材について説明する。
本実施形態に係る複合材は、前述の本実施形態に係るリグノセルロースファイバーの製造方法で得られるリグノセルロースファイバー、或いは、前述の第一リグノセルロースファイバーおよび第二リグノセルロースファイバーの少なくとも一つを含有することを特徴とするものである。
すなわち、本実施形態に係る複合材は、前述のリグノセルロースファイバーと、複合化対象物質と、を含有するものである。
複合化対象物質は、有機物でもよく、無機物でもよい。有機物としては、樹脂、ゴムおよびアスファルト、等が挙げられる。無機物としては、金属(ニッケル粒子、コバルト粒子、鉄粒子、銀粒子、金粒子、ルテニウム粒子、パラジウム粒子および白金粒子等)、金属酸化物(セラミックス、シリカゲル、アルミナゲル、酸化鉄粒子、および磁性粒子(フェライト、希土類磁石等))、炭素材料(コークス類、黒鉛、グラフェン、活性炭等の無定形炭素およびカーボンブラック等)、粘土類、珪藻土、石膏、ゼオライト、およびコンクリート等が挙げられる。また、複合化対象として他の繊維またはウィスカー、微粒子と組み合わせて使用することが可能である。他の繊維としては本明細書記載のセルロースファイバー以外のセルロースファイバー(セルロースナノファイバーを含む)や天然繊維を含む全てのファイバーまたはウィスカーまたはフィラーとして各種微粒子と組み合わせることが可能である。好適な繊維としては、セルロースファイバー、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、アルミナファイバー、ガラスファイバー、アラミドファイバー、ボロンファイバー、炭化ケイ素ファイバー、金属ファイバー、およびポリオレフィンファイバー等が挙げられる。好適なフィラーとしては、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、カーボンブラック、磁性粒子(フェライト、および希土類磁石等)、ニッケル、コバルト、銀、白金、タングステン、鉛、スズ、ハンダ等の金属が挙げられる。
本実施形態においては、複合化対象物質として樹脂を用いた場合(複合樹脂組成物)、並びに、複合化対象物質としてコンクリートを用いた場合を例に挙げて説明する。
(複合樹脂組成物)
本実施形態に係る複合樹脂組成物は、前述のリグノセルロースファイバーと、樹脂とを含有するものである。
樹脂としては、公知の樹脂を用いることができる。樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、2液型反応硬化性樹脂、1液型反応硬化性樹脂、エマルジョン型樹脂、および発泡性樹脂等が挙げられる。
本実施形態において、リグノセルロースファイバーと樹脂とを混練して強度を上げるには、リグノセルロースファイバーと樹脂の結合力を上げることが好ましい。そして、この結合力を上げるためには、リグノセルロースファイバーにおいて、結合力の強いカルボキシル基を増やすことが好ましい。そのためには、前述の本実施形態に係るリグノセルロースファイバーの製造方法において、表面積当たりのカルボキシル基の数を増やす次亜塩素酸塩または亜塩素酸塩の使用と、表面積そのものを増やすアルカリ金属化合物による部分解繊とを組み合わせることが好ましい。
なお、前述のリグノセルロースファイバーは、竹由来のリグノセルロースファイバーである。そして、竹のマイクロサイズの繊維は、表面が解繊されても繊維そのものが太く、剛直構造を有しているため、カルボキシル基がそれほど多くなくても凝集しにくい傾向がある。そのため、一般的なセルロースナノファイバーを比較して、前述のリグノセルロースファイバーは分散性が優れる傾向にある。
本実施形態においては、リグノセルロースファイバーとのマトリックスを形成できる樹脂を用いることが好ましい。このような樹脂としては、親水性、疎水性に関わらず、その前駆体であるモノマー、或いはオリゴマーのようなプレポリマーが200℃以下で液体であるか、溶融成形性を有する樹脂であれば、特に制限なく用いることができる。ただし、このような樹脂としては、セルロースが有する極性官能基との親和性があること、または相溶化剤、分散剤の疎水性部位との相溶性、もしくは親和性があることが好ましい。好適に用いられる樹脂としては、ポリオレフィン類(高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、およびポリプロピレン(PP)等)、ポリスチレン類(アタックチックポリスチレン、およびシンジオタクチックポリスチレン等)、ポリアクリル類、ポリメタクリル酸エステル類(ポリメタクリル酸メチル、およびポリメタクリル酸ブチル等)、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリシロキサン類、ポリシラザン類、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート類、ポリアセタール類(ポリオキシメチレン等)、ポリウレタン類、アミノ樹脂(ポリユリア、ポリメラニンおよびポリベンゾグアナミン等)、ポリエステル類(ポリエチレンテレフタレート等)、不飽和ポリエステル類、ポリエーテル類、エポキシ類、フェノール類、ポリビニルエステル類、ポリビニルカルボン酸類、ポリエステル類、フッ素樹脂、シアノアクリレート樹脂および生分解性プラスチック等が挙げられる。生分解性樹脂としては、リンゴ酸、コハク酸等のポリマー、ポリグリコール類(ポリ乳酸等)、脂肪族ポリエステル類(ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクトンおよびポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)等)、芳香族変性脂肪族ポリエステル(PBAT)、ポリビニルアルコール(PVA)およびデンプンを主成分とするプラスチック類、およびこれらの共重合物または混合物等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、ポリオレフィン類が、利用範囲と頻度が大きく、本実施形態に係る複合樹脂組成物による繊維強化の効果発現が顕著であるため、特に好ましい。これらの樹脂は、単独で使用されることが多いが、ブレンドして用いることも可能である。
本実施形態において、相溶化剤とは、セルロースの親水性表面とポリオレフィン等の汎用ポリマーの疎水性表面とを接着させる接着剤的な役割を持つ化合物である。この相溶化剤により、リグノセルロースファイバーと樹脂の接合力を高めて補強効果を高くすることができる。
相溶化剤としては、(i)汎用ポリマーが無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、および無水クエン酸等によりグラフト変性されたポリマー類、(ii)ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、および(ビニルアセテート−エチレン)共重合体等の疎水性基と親水性基を双方分子内に有するポリマー類、(iii)ポリアクリル酸のような親水性ポリマー鎖をブロック或いはグラフト成分をセグメントして有するポリマー類、および(iv)(ビニルアルコール−エチレン)共重合体およびポリビニルアルコールのような水酸基を分子内に有するポリマー類等が挙げられる。
この相溶化剤としてのポリマー類の融点は、リグノセルロースのミクロフィブリル化をより低温の溶融状態で実施できるという観点から、共存するマトリックスポリマーの融点より低いことが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることが特に好ましい。ただし、最終的な複合樹脂組成物の熱的性質および機械強度を低下させる可能性があるため、これらの相溶化剤としてのポリマー類の添加量は、リグノセルロースファイバーに対する質量比で、0.1倍以上3倍以下であることが好ましく、0.2倍以上2倍以下であることがより好ましく、0.5倍以上1倍以下であることが特に好ましい。
本実施形態に係る複合樹脂組成物において、リグノセルロースファイバーの配合量は、複合樹脂組成物100質量%に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。また、相溶化剤の配合量は、複合樹脂組成物100質量%に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。さらに、樹脂の配合量は、複合樹脂組成物100質量%に対して、60質量%以上98質量%以下であることが好ましい。
リグノセルロースファイバーの組成比を大きくすると、繊維強化の効果がより高くなるが、それに伴って、相溶化剤の添加量も増大するため、しだいに繊維強化の効果が低下する方向に転じる場合がある。さらに、リグノセルロースファイバーの組成比を大きくするに伴い、再凝集の可能性が高まるため、複合樹脂組成物の透明性が損なわれ、繊維強化の効果が低下する可能性も高くなる。
本実施形態において、ミクロフィブリル化したリグノセルロースファイバーは、マトリックスポリマーを含めた疎水性環境中での均一分散性を高めるために、分散剤を添加することも好ましい。分散剤としては、一般的に界面活性剤とされている物質が挙げられる。界面活性剤としては、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、および非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいが、ブレンドして用いることも可能である。好適に用いられる分散剤としては、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、および塩化ベンザルコニウム等の陽イオン系界面活性剤が用いられる。
本実施形態においては、リグノセルロースファイバーの表面に、無機物または有機物の皮膜または粒子を、全体または部分的に付着または形成させてもよい。無機物としては、金属および金属酸化物等が挙げられる。有機物としては、樹脂、長鎖アルコール類、長鎖カルボン酸化合物、長鎖アミン化合物、有機ケイ素化合物、有機フッ化物、多環芳香族化合物、金属錯体、およびリグニン等が挙げられる。このようにして、樹脂、ゴム、および溶媒等の有機物、或いは、モルタル、粘土、石膏、ゼオライト、およびセラミックス等の無機物に対する分散性を改善したり、導電性、導熱性、磁気的性質(常磁性、および強磁性等)、または選択的吸着性を賦与したりすることが可能となる。
また、近年セルロースナノファイバーと樹脂を複合化することで、ファイバーが樹脂の結晶核のような役目を果たし、樹脂の結晶構造が変化することで、樹脂の機械物性が向上することが報告されている(参考文献:矢野浩之著、「ナノセルロースフォーラム」講演資料、2014年1月20日発行、p37参照)。しかしながら、これまでのナノサイズのセルロースではファイバーに挟まれた領域の樹脂を規則的に結晶させるためには、10質量%ものセルロースナノファイバーを添加する必要がある。これにより伸びが小さくなり靱性が不足したり、分散性を確保するための処理時間が長くなることで生産性が低下したり、また高価なセルロースナノファイバーによりコストアップするなど、工業的な生産において課題となっている。これに対し、本実施形態に係るリグノセルロースマイクロファイバーではマイクロサイズであるため、比較的分散が容易であることと、混練時に部分解繊して生成したナノサイズのファイバーが樹脂中に分散することで、より少ない添加量で樹脂の結晶構造を変えて、機械的な強度を向上できる。また、樹脂の重合時に例えば金属化合物がその構造に影響を与える触媒効果が明らかになっており、例えばメタロセン触媒による樹脂物性の飛躍的な改善が既に工業化されている。本実施形態に係るリグノセルロースファイバーでは、表面官能基に容易に金属化合物を結合させることができるため、複合化においてより高い機械物性の向上効果を示すと考えられる。
本実施形態においては、リグノセルロースファイバーに表面処理を施してもよい。具体的には、セルロースの表面官能基(水酸基、メチロール基、カルボキシル基)に対し、適宜、エステル化(メチル化等)、アセチル化、アルコキシル化、シリル化、エポキシ化、オキセタン化、ビニル化、エーテル化、アミド化、イミド化、フッ素化、ハロゲン化、スルホン化および金属塩化等の表面修飾を加えてもよい。
本実施形態において、リグノセルロースファイバー水分散液と相溶化剤、および樹脂との混合物を溶融混練して成形する際に、混練機を使用する。混練機としては、この水分散液中のファイバーが再凝集しないように、効率的に相溶化剤および樹脂と微細に均一混合し、かつせん断応力を付加する装置が望ましい。このような装置としては、二軸混練押出機が好適に用いられる。さらに、混練に用いるスクリュー構造がとりわけ重要であり、単純な搬送圧縮機能のフルフライト構造のスクリューエレメントでは、十分な微細均一混合が達成されない場合が多い。混練および逆行による繰り返し混練を可能とするスクリューエレメントとして、ニーディングディスク、テュースミキシングエレメント、スクリューミキシングエレメント、およびシーリングディスクエレメント等がより好適に用いられる。これらのスクリューエレメントは、各プロセスに応じて、押出機のシリンダー内の区分けされた各ゾーンに適切に配置されていることが好ましい。好適に用いられる配置としては、ホッパーサイド(ここで、水分散液および相溶化剤の添加)、搬送、圧縮、混練、逆行、シーリング、搬送(ここで、樹脂添加)、ニーディング、シーリング、搬送(ここで、揮発成分減圧除去)、圧縮、およびダイス押出である。このような、スクリュー配置を実施するには、十分なシリンダー長さ/スクリュー直径比(L/D)であることが好ましく、好適にはL/Dの値が20〜60程度であるものが用いられる。
上記、シリンダー内のスクリューエレメントの配置デザインに対応して、樹脂添加および揮発成分減圧除去のための開放口が少なくとも2か所設置されていることが望ましい。一般的な二軸押出機はベント口が設置可能であるため、このベント口を、上記開放口となるように設置することによって、本実施形態における溶融混練が好適に実施可能である。
二軸混練押出機での処理温度としては、リグノセルロースファイバー水分散液と相溶化剤を混合するゾーンでは、相溶化剤が溶融する温度よりもわずかに高い温度で実施することが、せん断応力を効果的に発生できるため、好ましい。つづく樹脂添加後のゾーンでは、樹脂が十分に溶融し、リグノセルロースファイバー水分散液と相溶化剤混合物を微細に均一混合するために、十分に加熱することが好ましい。なお、用いる樹脂の通常の溶融成形温度を採用することで、十分に加熱できる。ただし、250℃を超える温度では、セルロースの熱分解が開始するため、250℃を超えないように温度を制御することが好ましい。なお、リグノセルロースファイバーにおけるメチロール基がカルボキシル基に酸化されることで、リグノセルロースファイバーの耐熱性を高めることができる。また、リグノセルロースファイバーは一般的な樹脂よりも軟化または分解する温度が高いため、樹脂と複合化することで樹脂単独よりも高温時の機械物性を向上させることができる。
本実施形態においては、リグノセルロースファイバーを樹脂と複合化する際に、混練機による分散方法の他に、次のような方法を採用できる。例えば、樹脂モノマー、オリゴマー、溶媒、および樹脂を加熱溶解した状態、または樹脂を溶媒に溶かした状態等のように液体状にした場合において、リグノセルロースファイバー水分散液またはリグノセルロースファイバーの乾燥粉体と混合することができる。混合方法としては、公知の混合方法を適宜採用できる。混合装置としては、高圧剪断型分散装置、ビーズミル、およびホモジナイザー等が挙げられる。また、混合の際に、超音波照射を、適宜組み合わせてもよい。こうした方法により、硬化前の液体状のモノマー、プレポリマー、またはエマルジョンに分散させることで、硬化前に常温で液体状態での取り扱いが求められる含浸用樹脂、塗料、インクやコーティング、プライマー、充填剤、および接着剤等に適用可能である。
樹脂への配合にあたっては、以下の添加剤を適宜添加してもよい。添加剤としては、界面活性剤、天然たんぱく質(ゼラチン、ニカワ、タンニン、およびカゼイン等)、多糖類(でんぷん類、およびアルギン酸等)、無機化合物(タルク、ゼオライト、セラミックス、金属酸化物、および金属粉末等)、可塑剤、消泡剤、香料、蛍光剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、流動調整剤、レベリング剤、導熱剤、導電剤、紫外線吸収剤、紫外線分散剤、消臭剤、防かび剤、難燃化剤、カーボンブラック、グラフェン類、コークス類、リグニン類および無定形炭素等が挙げられる。
本実施形態においては、リグノセルロースファイバーを樹脂と複合化する際に、他の繊維またはウィスカーと組み合わせて使用することが可能である。他の繊維としては、本明細書記載のセルロースファイバー以外のセルロースファイバー(セルロースナノファイバーを含む)や天然繊維を含む全てのファイバーまたはウィスカーと組み合わせることが可能である。好適な他の繊維としては、セルロースファイバー、カーボンファイバー、ガラスファイバー、アラミドファイバー、ボロンファイバー、炭化ケイ素ファイバー、金属ファイバー、およびポリオレフィンファイバー等が挙げられる。ファイバーは、必ずしも長繊維を表していない。例えば、ファイバーは、ミルドファイバーやチョップドファイバーのように短い繊維長であってもよい。ファイバーのアスペクト比が5以上あれば、本実施形態のリグノセルロースファイバーと組み合わせることで機械強度をそれぞれ単独で用いた場合よりも大きく向上させることができるほか、アスペクト比に関わらず導電性や導熱性、電磁波吸収、電磁バリア、特定物質の吸着または透過のような機能を発現または向上させることができる。また、組み合わせるファイバーの様態についての制約はない。カーボンファイバーやガラスファイバー等は、一方向または複数方向に編み上げたプリプレグとの組み合わせや不織布のようなマットとの組み合わせが好適に用いられる。さらに、チョップドファイバーやミルドファイバーとの組み合わせでは射出成形や3Dプリンターによる成形にも適用可能である。また、いずれの方法で成形した複合化樹脂シートもプレス成形に適用可能である。
本実施形態においては、リグノセルロースファイバーとして、前述の第一リグノセルロースファイバーおよび第二リグノセルロースファイバーの少なくとも一つを用いればよい。ただし、複合樹脂組成物を作製する際にも、上記のように、リグノセルロースをミクロフィブリル化できることから、第一リグノセルロースファイバー(リグノセルロースマイクロファイバー)を用いることが好ましい。
また、一般にセルロースファイバーは樹脂との複合化に際して、混練時にせん断をかけることで、より細かく解繊されて樹脂中に分散できる。本実施形態における第一リグノセルロースファイバーにおいては、部分解繊されている上、竹ウィスカーからリグニンの大部分が抜けて繊維同士の接合力が低下しているとともにカルボキシル基が生成して再凝集を妨げるため、混練時に容易に解繊されることで、混練時間を短縮でき、また、混練におけるエネルギー消費を抑制できる。このように、マイクロサイズのリグノセルロースファイバーを、部分的ではあるが容易にナノサイズまで解繊できるので、より低コストの製造方法を実現できる。
さらに、リグノセルロースファイバーがマイクロサイズであることで、ナノサイズに比べて見かけ上の比表面積が小さくなり、凝集しにくくなる。これにより、(i)補強効果を向上させるための分散がしやすくなること、(ii)粉じん化しにくい等で取り扱いが容易になり、製造コストおよび輸送コストが下がること、(iii)製造時に容易に濾過洗浄ができることで、製造コストを下げることができること、および(iv)必要以上に解繊しないため、必要エネルギーが小さくなり(サイズが小さくなると対数的に必要エネルギーが増加する)、生産性が上がるため(解繊に必要な時間が短縮できる)、製造コストが下がること、が期待できる。
本実施形態に係る複合樹脂組成物は、建築資材、土木資材、弱電用配線部品、家電製品部品、自動車内外装部品、輸送用機械の構造材、ロボット構造材および梱包資材等の幅広い分野への応用が期待される。このような応用展開において、上記二軸押出機で得られた本実施形態に係る複合樹脂組成物のペレットを原料として、射出成形、異形押出成形、および圧縮成形等の方法によって所望の複雑な形状の成形品を得ることができる。最終的に成形された各種部品および部材は、リグノセルロースファイバーの繊維強化機能により、樹脂単独で成形された部品および部材に比べて有意な物性向上が発現する。
(コンクリート)
本実施形態に係るコンクリートは、前述のリグノセルロースファイバーと、セメントと、骨材とを含有するものである。
本実施形態によれば、ひび割れや欠け、または火災時の爆発的な破壊を抑制しつつ、セルロース混合による強度低下を引き起こすことなく、適度な硬化遅延効果を併せ持つコンクリートを提供できる。
セメントとしては、セメント類の他に、常温から100℃以下で硬化する材料を用いてもよい。セメント類としては、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、およびアルミナセメント等が挙げられる。また、常温から100℃以下で硬化する材料としては、石膏、石灰、漆喰、ゼオライト、および粘土等が挙げられる。
骨材としては、天然骨材(砂、および砂利等)、人工骨材(高炉スラグ骨材、およびフライアッシュ等)、および再生骨材等が挙げられる。
また、本実施形態に係るコンクリートは、コンクリートに通常用いられる成分を含有してもよい。これらの成分としては、流動性を高めるための減水剤、界面活性剤、硬化遅延剤、添加剤(pH調整剤等)、および、機械物性改善のための水溶性またはエマルジョン状の樹脂等が挙げられる。
本実施形態に係るコンクリートにおいて、リグノセルロースファイバーの配合量は、コンクリート100質量%に対して、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。
本実施形態においては、リグノセルロースファイバーとして、前述の第一リグノセルロースファイバーおよび第二リグノセルロースファイバーの少なくとも一つを用いればよい。ただし、第一リグノセルロースファイバー(リグノセルロースマイクロファイバー)は、十分高いアスペクト比を有しながらマイクロサイズの適度な直径と長さを有している。そのため、繊維の一本がより多くのセメント粒子または混和する砂礫と接触し、絡むことで粒子同士の接合強度を上げることが期待できる。
また、こうしたマイクロサイズのセルロースファイバーは、ナノサイズのセルロースファイバーに比べて比表面積は非常に小さい。このため、ナノサイズのセルロースファイバーでは避けられなかった機械強度の低下を回避しながら、硬化不良を引き起こすことなく硬化遅延効果を発揮することができる。
また、第一リグノセルロースファイバーの繊維長は、セメント等の混練対象に対して十分小さい。そのため、取り扱いを簡便に行えるように、セルロース粉末を予め水溶性バインダーを用いてペレットや顆粒として混練することもできる。また、第一リグノセルロースファイバーを水に分散した状態(水分散液)でセメントと混和することで、容易に均一な分散状態を得ることができる。
[実施形態の変形]
本発明は前述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれる。
例えば、前述の実施形態においては、第一リグノセルロースファイバーを作製し、これに第二解繊処理を施して、第二リグノセルロースファイバーを作製したが、この方法に限定されない。例えば、第一リグノセルロースファイバーに第二解繊処理をしないで、竹ウィスカーに部分解繊処理および酸化処理を施した後に、混練と同時に第二解繊処理を施して、直接、樹脂中に第二リグノセルロースファイバーを作製してもよい。
前述の実施形態においては、二軸混練押出機を用いて、複合樹脂組成物を作製したが、この方法に限定されない。例えば、混練機を用いないで、複合樹脂組成物を成形してもよい。この場合の成形方法としては、キャスト法、インモールド法(RIM成形、およびRTM成形等)、およびフィルム化法等が挙げられる。
前述の実施形態においては、複合樹脂組成物のペレットを原料として、成形品を作製したが、この方法に限定されない。例えば、複合樹脂組成物のペレットは、分散しやすい親水性ポリマーなどにセルロースファイバーを高濃度に分散させた高濃度ペレットであってもよい。この高濃度ペレットは、使用先で使用する樹脂と、この高濃度ペレットを再度混練することで、高度な技術を必要とせずに、セルロースファイバーの高い分散状態を得ることが可能となる。
前述の実施形態においては、複合材として、複合樹脂組成物およびコンクリートを例に挙げたが、これらに限定されない。例えば、本実施形態に係る複合材は、触媒や吸着剤であってもよい。
通常、触媒や吸着剤として用いられる金属、金属酸化物、有機金属化合物、有機物質、硫酸および硝酸等のイオン性物質は、単独で用いられることもある。しかしながら、反応性や吸着能力を高めるため、反応場や吸着場に固定するため、触媒や吸着剤の回収のため、またその使用量を小さくするために、使用する環境で安定かつ質量あたりの表面積すなわち比表面積が大きな担体を用いて、その表面に物理的または化学的に付着させることで、有用な触媒または吸着剤を製造できる。
上記の目的のためには特に比表面積が大きな物質が好適に用いられるため、比較的温和な条件で使用する場合は活性炭や多孔質炭素、多孔質樹脂が多く用いられている。しかしながら、活性炭や多孔質炭素は表面の官能基が少なく、触媒物質または吸着剤物質の単位面積あたりの担持量を増やすには、いわゆる賦活処理を行う必要があった。また、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体のような多孔質樹脂では一定以上に比表面積を高くすることは困難であり、触媒や吸着剤としての性能には限界があった。
同様に、セルロースも触媒担体や吸着剤の担体として使われてきた。セルロース表面の多くの水酸基や、それをエステル化のように反応、修飾することで得られる官能基を利用して、触媒や吸着物質の担体として用いられており、例えば液体クロマトグラフのカラム等で使用されている。しかしながら、従来のセルロースは繊維長が長く、繊維径も大きいことで十分な比表面積が得られないことや、逆にナノサイズのファイバーではそれ自身の高い比表面積を保持しながら支持担体に強固に接着することが困難であるため、強い撹拌を伴う反応では使用できない等の制限があった。また濾過が困難であるため、均一系の反応触媒や吸着剤としての適用は困難だった。これに対して本実施形態に係るリグノセルロースマイクロファイバーを用いることで、マイクロサイズの構造と表面の部分解繊による高い比表面積を有しながら、竹繊維が有する高い剛性により支持体に強く接着することが可能となり、またマイクロサイズであるため、反応後に触媒や吸着剤を回収することも容易となった。
また、ナノファイバーにおいては金属や金属酸化物、金属錯体等の有機金属化合物(以下、単に金属類とも称する)の担持方法はセルロースファイバー表面または表面の官能基と結合させるしかないが、マイクロサイズのファイバーではその内部に予め金属類を含浸させて必要な処理を行うことで、そのファイバー内部にも金属類や金属化合物の粒子を形成できる。こうした構造では一般に金属類を回収することが困難だが、セルロースは強酸や強アルカリ、腐食性の高いフッ酸等を用いなくても希薄濃度の酸水溶液や酵素等を用いることで温和な条件で容易に分解して可溶化できることが知られている。また、300℃以上の比較的低温で分解することもできる。このため、反応や吸着後にセルロースファイバーごと回収してセルロースを分解することで担持した金属化合物や吸着した金属等を効率よく回収することができる。
本実施形態において、リグノセルロースファイバーを担体とする触媒としては、セルロースが変質または分解するような強酸、強塩基、強酸化剤が存在せず、分解温度以下の温度で行う反応であれば特に制限はないが、燃料電池用触媒や各種カップリング触媒、樹脂等の重合触媒、低温水素化触媒、水素製造用触媒に適用することができる。
本実施形態において、リグノセルロースファイバーを担体とする吸着剤としては、セルロースファイバーに結合させる官能基や金属類により、吸着対象としてガスや有機物、細菌類、ウイルス、金属類、放射性物質等の様々な物質を対象とすることができる。特にセルロース自体は親水性が高いため、水が共存する系において好適に使用することができる。例えば、セルロース表面にカチオン交換能力を持たせることで、海水中に含まれる有用金属を回収したり、排水中に含まれる有害金属を回収したり、放射性有害物質を効率よく回収したりすることができる。また、セルロースの生体に対する無毒性を利用して、ナノリスクを気にすることなく、生体内に存在する有害成分やウイルス等に結合する成分を担持したセルロースマイクロファイバーを経口摂取することで、ヒトや動物の体内から有害成分やウイルス等を効率よく吸着排出することができる。
また、本実施形態に係る複合材は、センサーであってもよい。本実施形態に係るリグノセルロースマイクロファイバーは、適当な金属または金属化合物或いは生理活性物質と組み合わせることで、センサーとしても使用できる。
組み合わせの形態は、前述のように予めファイバー内部に金属類のナノ粒子を形成させても良いし、また外側に担持させても良い、またその両方を組み合わせることもできる。
例えば、銅や銀等のナノ粒子を予めリグノセルロースマイクロファイバー(LCMF)中に生成した上で、LCMFの表面官能基をスルホン化して導イオン性を賦与し、さらに、ナノサイズの金属類粒子を付着することで、その複合材はマイクロサイズの3次元的なネットワークを形成できる。そのため、圧力、光、磁気、電界、音、臭気、または温度等のような物理的刺激や、湿度、ガス、または水素イオン濃度、金属イオン等の濃度、抗体、ウイルス、各種生理活性物質等のような化学的または生理学的な刺激に対する鋭敏なセンサーを形成できる。
本実施形態に係る複合材を、3Dプリンターを用いて成形する場合を例に挙げて、より詳細に説明する。
例えば、3Dプリンターのインクになる樹脂(アクリル系樹脂が多い)に、リグノセルロースマイクロファイバー(LCMF)を混合することで、複合材が得られる。また、セラミックス原料(粘土および陶土等のセラミックス前躯体混合物)に、LCMFを混合することで、複合材が得られる。これらの複合材を、3Dプリンターを用いて、成形することで、成形物が得られる。
このような場合においては、以下の作用および効果が達せられる。
(i)樹脂の機械強度が上がることで造形の自由度が上がり、より複雑な成形が従来の樹脂でも可能となる。
(ii)複合材の後加工が容易となり、より複雑な形状を実現できるとともに作業性の改善や、生産性向上が見込める。
(iii)セルロースの着色が容易であるため、複合材の呈色性が向上する。
(iv)インクになる樹脂として、アクリル系樹脂等の耐熱性が劣る樹脂を用いている場合には、複合材の耐熱性を向上できる。
(v)親水性のセルロースと複合化することで、接着剤の適用範囲が広がり、接着強度の向上が期待できる。
(vi)LCMFを予め樹脂や粘土に混合することで溶液またはスラリーの粘度が上がり、比重の大きな粒子や顔料等の添加物の沈降を緩和できる。また、吹き付けるまでの間、および、吹き付けてから硬化するまでの間の沈降分離や溶液やスラリーのたれを防止することで、樹脂または粘土等成形物の不均質化を緩和して成形物の組成をより均一化できるとともに造形の精度を向上させることができる。
さらに、LCMFは、セルロースナノファイバー(CNF)と比較して、以下のような点で有利である。
(vi)CNFは、混練工程を経ない熱可塑性樹脂以外の樹脂(例えば熱硬化樹脂や光硬化性樹脂、硬化剤添加や経時硬化による反応性硬化樹脂)では良好な分散性を実現できないため強度を上げにくい。これに対し、LCMFは、良好な分散性を実現でき、強度を上げやすい。
(vii)通常用いられるセラミックス原料の粒度がかなり大きいため、CNFのサイズでは十分な補強効果を得ることができない。これに対し、LCMFのサイズでは、十分な補強効果が得られる。
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
[実施例1]
過熱水蒸気処理と粉砕、分級処理により製造されたヘミセルロースを実質的に含有しない竹微粉(平均太さ30μm、平均長さ250μm)は、株式会社バンブーテクノ(福岡県八女市)より入手した(竹ウィスカー作製工程)。
竹微粉70gを500mLのガラス容器に投入し、次に、次亜塩素酸ナトリウム(5質量%)と水酸化ナトリウム(0.5質量%)の混合水溶液(pH13以上)(以下、混合液)300gを加え撹拌した。直ちに液の温度が上昇し発泡が始まった。混合液の温度を40〜70℃の範囲に保つと、反応の進行とともに、溶液の色は淡黄色から褐色に変化した。3時間後、発泡がおさまり、液のpHが中性へと変化したことを確認後、撹拌を停止した。反応後、アスピレーターを用いて吸引濾過および洗浄を行って、ろ紙上のゲル状固体と褐色の溶液を分離した。上記操作を、ろ紙上の固体の色が乳白色から淡黄色になるまで、7度繰り返し、固形分濃度8〜12質量%の半透明ゲル状乳白色固体を得た。次に、半透明ゲル状乳白色固体200gを分取して500mLのガラス容器に投入し、水分濃度が93〜97質量%になるよう、水を加えて粘度を調節した。このゲル状水分散液を撹拌しながら、5%塩酸を滴下して、pHが2以下になるまで添加した。常温で30分以上放置してpHが2以下で安定していることを確認後、吸引濾過し、濾液のpHが6.5〜7の間になるまで水洗浄を行って、リグノセルロースマイクロファイバー水分散液を得た(第一リグノセルロースファイバー作製工程)。
また、上記の5%塩酸を滴下したゲル状水分散液を濾過洗浄した後に適当な粘度調整を行った後、高圧剪断型分散装置を用いて、適度な機械的剪断を行うことによりミクロフィブリル化を完成させ、リグノセルロースナノファイバー水分散液を得た(第二リグノセルロースファイバー作製工程)。
上記で作製したリグノセルロースマイクロファイバーのヘミセルロース含有量およびリグニン含有量を測定するために、実施例1で用いた竹微粉、実施例1で作製したリグノセルロースマイクロファイバー、およびセルロース試料(結晶化セルロース、旭化成社製の「セオラス ST−100」)について、TG−DTA(熱重量示差熱分析)を行った。
得られた結果を図1に示す。まず、図1に示す示差熱挙動の微分曲線を確認したところ、リグノセルロースマイクロファイバーの微分曲線において、150℃以上320℃以下の温度範囲のピーク(ヘミセルロースの分解に基づくもの)がないことが分かった。このことから、リグノセルロースマイクロファイバーにおけるヘミセルロース含有量が、水分を除くファイバー全量基準で、1質量%以下であることが分かった。また、同様に、竹微粉およびセルロース試料でも、ヘミセルロース含有量が水分を除くファイバー全量基準で、1質量%以下であることが分かった。そして、竹微粉、リグノセルロースマイクロファイバーおよびセルロース試料の重量減少のグラフから、リグノセルロースマイクロファイバーにおけるリグニン含有量を推定できる。
結果、得られたリグノセルロースマイクロファイバーにおいて、それぞれ水分を除くファイバー全量基準で、ヘミセルロース含有量は1質量%以下であり、リグニン含有量は約7質量%であった。
上記で作製したリグノセルロースマイクロファイバーの形状は、凍結乾燥後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、観察した。観察されたSEM画像を図2に示す。
また、上記で作製したリグノセルロースナノファイバーの形状は、凍結乾燥後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、観察した。観察されたSEM画像を図3に示す。図3に示すSEM画像においては、セルロースナノファイバーの他に、リグニン成分に基づく膜構造の共存も確認された。ここで観察されたセルロースナノファイバーにおいて、平均太さは90nmであり、平均長さは40μmであった。
さらに、実施例1で用いた竹微粉の形状は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、観察した。観察されたSEM画像を図4に示す。
上記で作製したリグノセルロースマイクロファイバーおよびリグノセルロースナノファイバーの化学構造は、凍結乾燥後、フーリエ変換型赤外吸収スペクトル(FT−IR)分析装置を用いて、分析した。観察された赤外吸収スペクトル(透過率スペクトル)を図5および図6に示す。図5および図6に示す赤外吸収スペクトルにおいては、メチロール基に由来するピーク(1010cm−1〜1050cm−1の範囲の吸収ピーク、および2800〜3000cm−1の範囲の吸収ピーク)の他に、1640cm−1にカルボキシルアニオンに由来するカルボキシルル基の伸縮振動吸収ピークが新たなピークとして明確に観測された。
なお、従来のセルロースナノファイバーA(機械解繊(水中カウンターコリジョン法)により作製したセルロースナノファイバー)と、従来のセルロースナノファイバーB(TEMPO酸化および機械解繊により作製したセルロースナノファイバー)についても、フーリエ変換型赤外吸収スペクトル(FT−IR)分析装置を用いて、分析した。観察された赤外吸収スペクトル(透過率スペクトル)を図7および図8に示す。図7に示す赤外吸収スペクトルにおいては、カルボキシル基に由来するピークは非常に小さいが、メチロール基に由来するピークが明確に観測され、一方で、図8に示す赤外吸収スペクトルにおいてはメチロール基に由来するピークは非常に小さいが、カルボキシル基に由来するピークが明確に観測された。
[実施例2]
実施例1で作製したリグノセルロースマイクロファイバー(LCMF)水分散液50g(固体成分5g)に対し、無水マレイン変性ポリエチレン(MAPE:型番SCONA TSPE1112 GALL、BYK社製)5gを混合し、この混合物を、二軸混練押出機の供給口から投入した。なお、この二軸混練押出機は、LCMFの再凝集を防ぐような特殊なTMEというスクリューエレメントゾーンを備えている。この二軸混練押出機の第一混練部において、温度100℃、スクリュー回転速度30rpmで1時間かけて、MAPEを溶融しながらLCMFの繊維構造を維持した状態で混練を行った。さらに、第二混練部において、スクリュー回転速度15rpm、シリンダー温度を150℃とし、第一ベント口から直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE:型番1001KW、エクソンモービル社製)を156.6g投入し、LCMF/MAPEとLLDPEとの溶融混練を行った。第二混練部の下流部の第二ベント口から水分を水蒸気として減圧(50KPa)下に脱気し、最後にダイスより複合樹脂組成物をストランド状に押出成形した。さらにこのストランドは、ペレタイザを用いて切断し、ペレット状の複合樹脂組成物とした。
得られた複合樹脂組成物の形状は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、観察した。観察されたSEM画像を図9および図10に示す。図10のSEM画像は、図9のSEM画像よりも拡大率が大きい。図9のSEM画像では、複合樹脂組成物中におけるリグノセルロースマイクロファイバーが観察できる。また、図10のSEM画像では、複合樹脂組成物の混練の際におけるせん断による解繊で、一部にナノファイバーが生成していることが分かった。
実施例2で作製したペレット状の複合樹脂組成物を井元製作所製のIMC−180C 熱ブレス装置を用いて、圧縮成形を行った。成形条件は、溶融時間1.5分、プレス時間1.5分、プレス圧力20MPaで行った。熱プレス後、3分間の冷却を行い、この成形体からダンベル状に切り出し、引張試験片とした。引張試験は、JIS K−7162に従い、井元製作所製のIMC−18E0型引張圧縮試験機を用いて、得られた応力−歪曲線より、引張強度、引張弾性率、および伸び率を算出した。
その結果、引張強度は11.43MPaであり、引張弾性率は0.11GPaであり、伸び率は150%以上であった。これらの物性値は、後述する比較例1の樹脂単独の物性値よりも十分有意に高い値であり、リグノセルロースマイクロファイバー混合による繊維強化機能が発現している。
[比較例1]
実施例2で使用したLCMF水分散液およびMAPEを用いず、LLDPEのみを用いて、実施例2と同様の二軸混練押出機を用いて溶融混練を行い、ストランド状の成形体を作製した。このストランドを、実施例2と同様の方法で引張試験片を作製し、同様に引張試験を行った結果、引張強度は10.4MPaであり、引張弾性率は0.07GPaであり、伸び率は150%以上であった。
[実施例3]
実施例1で作製したリグノセルロースマイクロファイバー(LCMF)水分散液を、乾燥させて、リグノセルロースマイクロファイバーの乾燥粉末を得た。
その後、この乾燥粉末10gと、純水490gとを混合し、リグノセルロースマイクロファイバーを水になじませて、再分散したLCMF水分散液を得た。
再分散したLCMF水分散液に対し、高圧分散機(美粒社製)を用いて、分散処理を行った。分散条件は、圧力30MPa、ノズル径0.4mm、配管の内径0.3mm〜1mm、流量100〜500mL/minで行った。この分散処理を3回繰り返し、リグノセルロースナノファイバー水分散液を得た。
このことから、リグノセルロースマイクロファイバーを中間体として用いた場合でも、リグノセルロースナノファイバー水分散液を作製できることが分かった。
[実施例4]
実施例1で使用した株式会社バンブーテクノより入手した竹微粉10gを500mLのガラス容器に投入し、次に、水酸化ナトリウム(5質量%)水溶液(pH14)(以下、水溶液)100gを加え撹拌した。水溶液の温度を40〜70℃の範囲に保つと、反応の進行とともに、溶液の色は無色から褐色に変化した。6時間後、液のpHは変化していなかったが、撹拌を停止した。反応後、アスピレーターを用いて吸引濾過および洗浄を行って、ろ紙上のゲル状固体と褐色の溶液を分離した。上記操作を、水溶液量を調整しながら4度繰り返し、ろ紙上の黄褐色のゲル状の水分散液を得た。次に、次亜塩素酸ナトリウム(5質量%)と水酸化ナトリウム(0.5質量%)の混合水溶液(pH13以上)(以下、混合液)50gを加え撹拌した。水溶液の温度を40〜70℃の範囲に保ち、反応の進行とともに、溶液の色は淡黄色から褐色に変化した。5時間後、ゲル状固体の色が淡黄色になったことを確認した後、撹拌を停止した。反応後、アスピレーターを用いて吸引濾過および洗浄を行い、ろ紙上のゲル状固体と褐色の溶液を分離した。以上により、固形分濃度8〜12質量%の半透明ゲル状淡黄色固体(LCMF水分散液)を得た。
[実施例5]
実施例1で使用した株式会社バンブーテクノより入手した竹微粉10gを500mLのガラス容器に投入し、次に、亜塩素酸ナトリウム(5質量%)と水酸化ナトリウム(0.5質量%)の混合水溶液(pH13以上)(以下、混合液)100gを加え撹拌した。混合液の温度を40〜70℃の範囲に保つと、発泡が始まり反応の進行とともに、溶液の色は無色から褐色に変化した。2時間後発泡が収まり、6時間後、液のpHは変化していなかったが、撹拌を停止した。反応後、アスピレーターを用いて吸引濾過および洗浄を行い、ろ紙上のゲル状固体と褐色の溶液を分離した。上記操作を、ろ紙上の固体の色が淡黄色になるまで、混合液量を調整しながら3度繰り返し、固形分濃度10〜15質量%の半透明ゲル状淡黄色固体(LCMF水分散液)を得た。
[実施例6]
実施例1で使用した株式会社バンブーテクノより入手した竹微粉10gを500mLのガラス容器に投入し、次に、次亜塩素酸ナトリウム(2.5質量%)と亜塩素酸ナトリウム(2.5質量%)と水酸化ナトリウム(0.5質量%)の混合水溶液(pH13以上)(以下、混合液)100gを加え撹拌した。混合液の温度を40〜70℃の範囲に保つと、発泡が始まり反応の進行とともに、溶液の色は淡黄色から褐色に変化した。5時間後、発泡が収まり液のpHが低下したことを確認した後、撹拌を停止した。反応後、アスピレーターを用いて吸引濾過および洗浄を行って、ろ紙上のゲル状固体と褐色の溶液を分離した。上記操作を、ろ紙上の固体の色が淡褐色になるまで、混合液量を調整しながら4度繰り返し、固形分濃度8〜12質量%の半透明ゲル状淡褐色固体(LCMF水分散液)を得た。
[実施例7]
実施例1で使用した株式会社バンブーテクノより入手した竹微粉10gを500mLのガラス容器に投入し、次に、次亜塩素酸ナトリウム(5質量%)と水酸化ナトリウム(0.5質量%)の混合水溶液(pH13以上)(以下、混合液)100gを加え撹拌した。混合液の温度を40〜70℃の範囲に保つと、発泡が始まり反応の進行とともに、溶液の色は淡黄色から褐色に変化した。4時間後、発泡が収まり液のpHが低下したことを確認した後、撹拌を停止した。反応後、アスピレーターを用いて吸引濾過および洗浄を行って、ろ紙上のゲル状固体と褐色の溶液を分離した。上記操作を、ろ紙上の固体の色が乳白色になるまで、混合液量を調整しながら4度繰り返し、固形分濃度8〜12質量%の半透明ゲル状乳白色固体(前駆体)を得た。
さらに、亜塩素酸ナトリウム濃度が2質量%の水溶液100gに市販の炭酸水素ナトリウムを添加してpHを8〜9に調整してから、上記の半透明ゲル状乳白色固体(前駆体)25gを投入して撹拌した。混合液の温度を40〜70℃の範囲に保ち、2時間後に撹拌を停止した。反応後、アスピレーターを用いて吸引濾過および洗浄を行い、ろ紙上のゲル状固体と褐色の溶液を分離して、固形分濃度8〜12質量%の半透明ゲル状乳白色固体(LCMF水分散液)を得た。
[実施例8、並びに、比較例2および3]
(実施例8)
まず、実施例1で作製したリグノセルロースマイクロファイバー(LCMF)水分散液の水を除去して、LCMF粉末を得た。
次に、500mLの容器に、リポキシ樹脂(昭和電工社製の「リポキシ R−804B」、ビニルエステル樹脂)47.5gを投入し、LCMF粉末2.5gを加え、磁石式自動撹拌機を用いて4時間撹拌した。その後、硬化剤(川口薬品社製の「メポックス55」、メチルエチルケトンパーオキサイド、55%)0.9gを添加してよく混合した。金型に予め離型剤を塗布し、撹拌した樹脂をこの金型(硬化後の厚さ3mmになるような隙間を有する)に流し込む。次いで、常温で一晩(10時間以上)放置して、複合樹脂組成物の成形体を作製した。
(比較例2)
500mLの容器に、リポキシ樹脂(昭和電工社製の「リポキシ R−804B」、ビニルエステル樹脂)40gを投入し、硬化剤(川口薬品社製の「メポックス55」、メチルエチルケトンパーオキサイド、55%)0.4gを添加して、磁石式自動撹拌機を用いて1時間撹拌した。金型に予め離型剤を塗布し、撹拌した樹脂をこの金型(硬化後の厚さ3mmになるような隙間を有する)に流し込む。次いで、常温で一晩(10時間以上)放置して、樹脂組成物の成形体を作製した。
(比較例3)
500mLの容器に、リポキシ樹脂(昭和電工社製の「リポキシ R−804B」、ビニルエステル樹脂)47.5gを投入し、ノニオン系分散剤1.5gを加え、磁石式自動撹拌機を用いて4時間撹拌した。その後、結晶化セルロース(旭化成社製の「セオラス ST−100」)を加えて、磁石式自動撹拌機を用いて4時間撹拌した。次に、硬化剤(川口薬品社製の「メポックス55」、メチルエチルケトンパーオキサイド、55%)0.9gを添加してよく混合した。金型に予め離型剤を塗布し、撹拌した樹脂をこの金型(硬化後の厚さ3mmになるような隙間を有する)に流し込む。次いで、常温で一晩(10時間以上)放置して、複合樹脂組成物の成形体を作製した。
(複合化の評価)
実施例8、並びに、比較例2および3で得られた成形体について、三点曲げ試験を行い、LCMFの複合化による効果を確認した。
三点曲げ試験は、JIS K7055の記載に準拠した方法で行った。具体的には、成形体を幅10mmの大きさに裁断したものを試験片として、JIS K7055の記載に準拠した試験機を用いて、三点曲げ試験を行った。そして、曲げ弾性率と、曲げ応力(最大点)とを測定した。得られた結果を表1に示す。なお、表1には、樹脂組成物への添加物を示す。また、添加物がない樹脂組成物である比較例2の値を基準として、曲げ弾性率および曲げ応力の複合化による変化比を算出し、表1に示す。
Figure 2020138496
表1に示す結果から、LCMFの複合化により、成形体の曲げ弾性率を1.17倍に向上できることが分かった。また、成形体の曲げ応力の値は、樹脂の硬化の度合いを示すことから、実施例8の複合樹脂組成物の成形体は、樹脂の硬化の度合いが、比較例2の樹脂組成物の成形体と比較して低いと推察される。そこで、実施例8における樹脂の硬化の度合いを、比較例2と同じ度合いにしたと仮定すれば、LCMFの複合化により、成形体の曲げ弾性率を、1.3倍程度向上できると推察される。
[実施例9〜11、並びに、比較例4]
(実施例9)
まず、実施例1で作製したリグノセルロースマイクロファイバー(LCMF)水分散液に水を加え、固形分濃度が3質量%のLCMF水分散液を得た。
次に、得られたLCMF水分散液75g、水(水道水)152.3g、セメント(普通ポルトランドセメント)450g、および砂(標準砂)1350gを容器に投入し、混練して、生コンクリートを作製した。
なお、得られた生コンクリート中のセメント100質量部に対するLCMF(固形分)の添加量(質量部)を表2に示す。
(実施例10、実施例11および比較例4)
表2に示す配合組成に従い各材料を配合した以外は実施例9と同様にして、生コンクリートを作製した。
なお、得られた生コンクリート中のセメント100質量部に対するLCMF(固形分)の添加量(質量部)を表2に示す。
Figure 2020138496
(複合化の評価)
実施例9〜11、並びに、比較例4で得られた生コンクリートについて、圧縮強さ試験を行い、LCMFの複合化による効果を確認した。
圧縮強さ試験は、JIS R 5201:2015のセメントの物理試験方法に準拠した方法で行った。具体的には、成形用型(両端枠間の距離160mm、両端枠の高さ40mm、仕切枠の高さ40mm、仕切枠間の距離40mm)に、生コンクリートを充填し、養生し、材齢が3日、7日および28日のときに、圧縮強さ試験を行った。
材齢28日までのLCMFの添加量と圧縮強さとの関係を、それぞれ図11に示す。LCMFの添加量の増加にともない圧縮強さが低下している傾向が確認され、LCMF分散液によるセメントの硬化遅延効果が得られることが確認できた。特に、LCMFの添加量が1.5質量部の場合は、練り混ぜ1日後では十分硬化しておらず、脱型が困難であった。このように、LCMFの添加量が高い場合には、セメントの硬化遅延効果が高い。一方で、材齢の進行にともない、圧縮強さの差は小さくなり、28日後では圧縮強さはほぼ同等となり、LCMF添加による強度低下は無視できる結果となった。また、圧縮強さ試験後の試験体を観察したところ、LCMF分散液の添加による硬化不良を疑うような差異は見られなかった。
[実施例12〜14]
(実施例12)
過熱水蒸気処理と粉砕、分級処理により製造されたヘミセルロースを実質的に含有しない竹微粉(平均太さ42μm、平均長さ492μm)は、株式会社バンブーテクノ(福岡県八女市)より入手した(竹ウィスカー作製工程)。
竹微粉10gを500mLのガラス容器に投入し、次に、次亜塩素酸ナトリウム(5質量%)と水酸化ナトリウム(0.5質量%)の混合水溶液(pH13以上)(以下、混合液)250gを加え撹拌した。直ちに液の温度が上昇し発泡が始まった。混合液の温度を40〜70℃の範囲に保つと、反応の進行とともに、溶液の色は淡黄色から褐色に変化した。3時間後、発泡が収まり、液のpHが中性へと変化したことを確認後、撹拌を停止した。反応後、アスピレーターを用いて吸引濾過および洗浄を行って、ろ紙上のゲル状固体と褐色の溶液を分離した。上記操作を、ろ紙上の固体の色が乳白色から淡黄色になるまで、3度繰り返し、固形分濃度8〜12質量%の半透明ゲル状乳白色固体を得た。
次に、得られたゲル状乳白色固体を500mLのガラス容器に投入し、メタノール95質量%、エタノール質量5%の混合アルコール溶液70gと分散剤少量を加えて、よく撹拌を行い均質化した後、吸引濾過し、ゲル状乳白色固体(LCMF水分散液)を得た。これを3度繰り返して溶媒置換を行った。溶媒置換後のゲル状乳白色固体を直径5cmの平皿に全量移し、ホットプレート上で80〜90℃として10時間加熱し、乾燥固体(LCMF)を得た。乾燥固体は脆いため、手で砕いて繊維状の乾燥微粉とした上で、カッターミル(サン社製の「SFM−80」)を用いて分散処理を行った。
(実施例13)
過熱水蒸気処理と粉砕により製造されたヘミセルロースを実質的に含有しない竹微粉(分級前粗粉)を、株式会社バンブーテクノ(福岡県八女市)より入手した。そして、この竹微粉を、目開き1.1〜1.3mmの篩いにより粗大粉を分離し、さらに目開き0.8〜0.9mmの篩いにより微細粉を分離して、長繊維が多い竹微粉(平均太さ124μm、平均長さ1130μm)を得た。
竹微粉として、得られた長繊維が多い竹微粉を用いた以外は、実施例12と同様にして、ゲル状乳白色固体(LCMF水分散液)および乾燥固体(LCMF)を得た。
(実施例14)
過熱水蒸気処理と粉砕により製造されたヘミセルロースを実質的に含有しない竹微粉(平均太さ42μm、平均長さ492μm)を、株式会社バンブーテクノ(福岡県八女市)より入手した。そして、この竹微粉を、目開き63μmmの篩いを用いて粒状粉を分離して、繊維比率が高い竹微粉(平均太さ22μm、平均長さ244μm)を得た。
竹微粉として、得られた繊維比率が高い竹微粉を用いた以外は、実施例12と同様にして、ゲル状乳白色固体(LCMF水分散液)および乾燥固体(LCMF)を得た。
(竹微粉の分級処理による作用の確認)
実施例12で用いた竹微粉、実施例13で用いた長繊維が多い竹微粉、および、実施例14で用いた繊維比率が高い竹微粉の形状を、光学顕微鏡にて、観察した。得られた光学顕微鏡写真を、それぞれ図12〜図14に示す。また、各竹微粉の平均太さおよび平均長さを測定した。得られた結果を表3に示す。
また、実施例12〜14で得られたLCMFの形状は、走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテクノロジーズ社製の「SU3800」)を用いて、観察した。観察されたSEM画像を、図15〜図17に示す。また、各LCMFの平均太さおよび平均長さを測定した。得られた結果を表3に示す。なお、撮像条件は、加速電圧5kV、低真空モード(50Pa)、オスミウムコート(2〜3nm)である。
Figure 2020138496
表3に示すように、実施例12と実施例13とを比較すると、原料である竹微粉の平均長さが大きい実施例13の方が、リグノセルロースマイクロファイバーの平均長さが大きい。この結果から、原料である竹微粉の平均長さを予め調整することで、収率を損なうことなく、任意の平均長さのリグノセルロースマイクロファイバーを得ることができることが分かった。なお、実施例12および実施例13では、竹微粉として、短い粒状粉を含むものを用いている。そして、全体の平均長さの半分近くを占める短い粒状粉が解繊されることで、大きく平均長さが減少したものと推察する。一方で、実施例14では、粒状粉を分離して、繊維比率が高い竹微粉を用いている。この場合、解繊により、繊維の平均長さはあまり変化はないが、平均太さは小さくなることが分かった。この結果から、原料である竹微粉として、繊維比率が高い竹微粉を用いれば、得られるリグノセルロースマイクロファイバーの平均長さを調整できることが分かった。
[実施例15〜17]
実施例15〜17では、実施例1で得られるリグノセルロースマイクロファイバーについて、次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウムによる処理を段階的に行うことで、リグニン含有量が異なるリグノセルロースファイバーを得られることを示す。
実施例1で使用した株式会社バンブーテクノより入手した竹微粉30gを500mLのガラス容器に投入し、次に、次亜塩素酸ナトリウム(5質量%)と水酸化ナトリウム(0.5質量%)の混合水溶液(pH13以上)(以下、混合液)400gを加え撹拌した。直ちに液の温度が上昇し発泡が始まった。混合液の温度を40〜70℃の範囲に保つと、反応の進行とともに、溶液の色は淡黄色から褐色に変化した。4時間後、発泡が収まり、液のpHが中性へと変化したことを確認後、撹拌を停止した。反応後、アスピレーターを用いて吸引濾過を行い、ろ紙上の黄褐色ケーキと褐色の溶液を分離した。この黄褐色ケーキを10g分離してサンプルAとした。
次に、残りの黄褐色ケーキを500mLのガラス容器に投入し、116gの混合液を加えて撹拌した。混合液の温度を40〜70℃の範囲に保つと、反応の進行とともに、溶液の色は黄色から褐色に変化した。4時間後、液のpHが中性へと変化したことを確認後、撹拌を停止した。反応後、アスピレーターを用いて吸引濾過を行い、ろ紙上の淡褐色ケーキと褐色の溶液を分離した。この淡褐色ケーキを10g分離してサンプルBとした。
次に、残りの淡褐色ケーキを500mLのガラス容器に投入し、100gの混合液を加えて撹拌した。混合液の温度を40〜70℃の範囲に保つと、反応の進行とともに、溶液の色は黄色から褐色に変化した。4時間後、液のpHが中性へと変化したことを確認後、撹拌を停止した。反応後、アスピレーターを用いて吸引濾過を行い、ろ紙上のゲル状淡黄色固体と褐色の溶液を分離した。このゲル状淡黄色固体を10g分離してサンプルCとした。
次に、残りのゲル状淡黄色固体を500mLのガラス容器に投入し、5gの混合液を加えて撹拌した。混合液の温度を40〜70℃の範囲に保つと、反応の進行とともに、溶液の色は淡黄色からほぼ無色に変化した。30分放置した後、アスピレーターを用いて吸引濾過を行い、ろ紙上の半透明ゲル状乳白色固体とわずかに黄色を呈している溶液を分離した。得られた半透明ゲル状乳白色固体から10g分離してサンプルDとした。
得られたサンプルA〜サンプルDは、それぞれ500mLのガラス容器に投入して、水を100mL加えてよく撹拌した後、アスピレーターを用いて吸引濾過を行い、さらに水をろ紙上のゲル状固体に加えてろ液が無色となり、pHが8以下になるまで洗浄した。
洗浄した各サンプルは100mLのガラス容器に投入してから、メタノール95質量%、エタノール質量5%の混合アルコール溶液60gと分散剤少量を加えて、よく撹拌を行い均質化した後、吸引濾過し、それぞれ、ゲル状乳白色固体(LCMF水分散液)を得た。これを3度繰り返して溶媒置換を行った。溶媒置換後のゲル状乳白色固体を直径5cmの平皿に全量移し、ホットプレート上で80−90℃として10時間加熱し、乾燥固体(LCMF)を得た。乾燥固体は脆いため、手で砕いて長さが10mm程度の塊に砕いた上で、カッターミル(サン社製の「SFM−80」)を用いて均質化および粉砕処理を行った。
サンプルBから得られたものが、実施例15の乾燥固体(LCMF)である。
サンプルCから得られたものが、実施例16の乾燥固体(LCMF)である。
サンプルDから得られたものが、実施例17の乾燥固体(LCMF)である。なお、実施例17の乾燥固体(LCMF)は、実施例1で得られたLCMFと実質的に同様のものである。
上記で作製したLCMFのヘミセルロース含有量およびリグニン含有量を測定するために、実施例1と同様の方法で、実施例15〜17で用いた竹微粉、実施例15〜17で作製したLCMFについて、TG−DTA(熱重量示差熱分析)を行った。
その結果、実施例15〜17で作製したLCMFにおけるヘミセルロース含有量は、水分を除くファイバー全量基準で、1質量%以下であることが分かった。また、実施例15〜17で作製したLCMFにおけるリグニン含有量は、水分を除くファイバー全量基準で、下記表4に示す通りであることが分かった。このことから、次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウム混合液の質量等を変更することにより、LCMFにおけるリグニン含有量を調整できることが分かった。
Figure 2020138496

Claims (6)

  1. 竹に対し、150℃以上320℃以下の水蒸気で加熱処理を施した後に、第一解繊処理を施して、竹ウィスカーを得る工程と、
    前記竹ウィスカーに対し、アルカリ金属化合物と、次亜塩素酸塩および亜塩素酸塩のうちの少なくとも1つとを用いた部分解繊処理および酸化処理を施して、平均太さが0.05μm以上100μm以下であり、平均長さが50μm以上2000μm以下である第一リグノセルロースファイバーを得る工程と、を備えることを特徴とするリグノセルロースファイバーの製造方法。
  2. 竹に対し、150℃以上320℃以下の水蒸気で加熱処理を施した後に、第一解繊処理を施して、竹ウィスカーを得る工程と、
    前記竹ウィスカーに対し、アルカリ金属化合物と、次亜塩素酸塩および亜塩素酸塩のうちの少なくとも1つとを用いた部分解繊処理および酸化処理を施し、さらに、第二解繊処理を施して、平均太さが5nm以上500nm以下であり、平均長さが5μm以上500μm以下である第二リグノセルロースファイバーを得る工程と、を備えることを特徴とするリグノセルロースファイバーの製造方法。
  3. 竹由来のリグノセルロースファイバーであって、
    ヘミセルロース含有量が、水分を除くファイバー全量基準で、1質量%以下であり、
    リグニン含有量が、水分を除くファイバー全量基準で、18質量%以下であり、
    平均太さが、0.05μm以上100μm以下であり、
    平均長さが、50μm以上2000μm以下である
    ことを特徴とするリグノセルロースファイバー。
  4. 竹由来のリグノセルロースファイバーであって、
    ヘミセルロース含有量が、水分を除くファイバー全量基準で、1質量%以下であり、
    リグニン含有量が、水分を除くファイバー全量基準で、18質量%以下であり、
    平均太さが、5nm以上500nm以下であり、
    平均長さが、5μm以上500μm以下であり、
    前記リグノセルロースファイバーが、FT−IR分光法で測定される赤外吸収スペクトルを透過率スペクトルとして観察する場合において、1010cm−1〜1050cm−1の範囲の吸収ピーク、1620cm−1〜1660cm−1、および2800cm−1〜3000cm−1の範囲の吸収ピークを有する
    ことを特徴とするリグノセルロースファイバー。
  5. 請求項3または請求項4に記載のリグノセルロースファイバーにおいて、
    前記リグニン含有量が、水分を除くファイバー全量基準で、10質量%以下である
    ことを特徴とするリグノセルロースファイバー。
  6. 請求項1または請求項2に記載のリグノセルロースファイバーの製造方法で得られるリグノセルロースファイバー、或いは、請求項3または請求項4に記載のリグノセルロースファイバーを含有する
    ことを特徴とする複合材。
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