JPWO2020129282A1 - Ni基超耐熱合金 - Google Patents
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Abstract
Description
これまでにMar−M246より安価で713C以上のクリープ破断強度を有する合金が開発されているが、Mar−M246が適用されている高効率ターボチャージャーは排気ガスの温度が高温であるため、前述の開発材料ではクリープ破断強度が不足し、代替材料として十分であるとはいえない。Mar−M246の代替材料としては、1000℃、180MPaの条件下でのクリープ破断寿命が最低でも50時間以上必要であると考えられる。
例えば、前述の特許文献1に示されるNi基超耐熱合金は、Ta、Coを含まず、低価格であるが、1000℃、180MPaの条件下でのクリープ破断寿命は35時間に満たない。また、前述の特許文献2に示される超耐熱合金は、Ta、Wを含まないことで低価格かつ低比重を達成しているが、1000℃、180MPaの条件化でのクリープ破断寿命は25時間に満たない。以上のように、高温のクリープ破断強度にはCo、W、Taといった希少な元素が重要な役割を果たしていると推定されることから、Mar−M246より低コストかつ代替可能なクリープ破断強度を有する材料を開発することは難しく、このような材料が開発されているとはいえない。
本発明の目的は、Mar−M246より低コスト化が可能な組成を有し、かつMar−M246を代替可能なクリープ破断強度を有する合金を提供することである。
すなわち、本発明は、質量%で、C:0.02〜0.5%、Cr:7〜12%、Co:4〜14%、Al:3.0〜6.5%、Mo:0.5〜4%、W:7〜14%、Ti:1.0〜5.0%、Ta:0〜0.7%、Mg:0〜0.02%、B:0.001〜0.05%、Zr:0〜0.1%、残部はNi及び不可避的不純物からなるNi基超耐熱合金である。
前記Taは無添加であることが好ましく、前記Mgの含有量は0.001〜0.02%であることが好ましく、また、前記Tiの含有量は1.0〜3.5%が好ましい。
本発明のNi基超耐熱合金において、各化学組成範囲を規定した理由は以下のとおりである。なお、特に記載のない限り質量%として記す。
Taは炭化物やγ’相に固溶することでクリープ破断強度の向上に寄与する元素である。しかし、Taは本発明を構成する元素の中で特に希少な元素であり、Ta量が増えるほど材料コストも増加する。また、本発明ではTaを無添加としても他の元素の添加量の調整によって、クリープ破断強度を高いレベルに維持することができる。そのため、Taについては上限を0.7%までの範囲で許容できる。好ましいTaの許容量は0.5%以下であり、更に好ましくは実質的にTaを含まない(0%)ことである。なお、「実質的にTaを含まない(0%)」とは、不可避的不純物レベルまたはそれ未満であることをいう。即ち、Taについては無添加とするのが好ましい。
<C:0.02〜0.5%>
Cは合金元素と結合することで炭化物を形成する。粒界に析出した炭化物は高温での粒界すべりを抑制することで高温強度を高めるため、0.02%以上が必要となる。しかし、C量が多すぎると、粗大な炭化物が多量に晶出することで延性、耐食性を損なう可能性があるため、0.5%を上限とする。前述したCの効果をより確実に得るための好ましい下限は0.1%である。Cの特に好ましい上限は0.3%であり、更に好ましい上限は0.2%である。
Crは高温加熱中に合金の表面に密着性の高い酸化皮膜を形成し、耐酸化性を高めるため、7%以上が必要になる。しかし、Cr量が多すぎると組織が不安定となり、硬くてもろいσ相などの有害相を形成し、クリープ破断強度と延性の低下を招くため、12%を上限とする。前述したCrの効果をより確実に得るための好ましい下限は7.5%であり、好ましい上限は10%である。
<Co:4〜14%>
Coはγ相中に固溶することでクリープ破断強度の向上に寄与するため、4%以上が必要になる。しかし、Co量が多すぎると組織は不安定となり、有害なσ相を形成する。さらに、Coは希少な元素のひとつであり、添加量が増えるほど材料コストが増加するため、14%を上限とする。前述したCoの効果をより確実に得るための好ましい下限は4.5%であり、好ましい上限は11%であり、更に好ましくは10.5%である。
Alはγ’(Ni3Al)相を形成することで結晶粒内を析出強化するため、3.0%以上が必要になる。ただし、Al量が多すぎると粗大なγ/γ’共晶が結晶粒界に発生する。粗大なγ/γ’共晶は高温のクリープ破断強度への寄与が小さく、さらに共晶に溶質元素が奪われ粒内のγ’相分率が下がるので、共晶は発生しないほうが好ましいと考えられる。したがって、本発明においては共晶が発生しすぎないようにするため、Alは6.5%を上限とする。前述したAlの効果をより確実に得るための好ましい下限は4.0%であり、更に好ましくは4.5%である。特に好ましいAlの上限は6.0%であり、更に好ましくは5.8%である。
<Ti:1.0〜5.0%>
Tiはγ’(Ni3Al)相に固溶することでγ’相を強化する。また、γ’相の固溶温度を上昇させるので高温域におけるγ’量を増やすことに貢献するため、1.0%以上が必要となる。ただし、Ti量が多すぎるとγ’相の固溶温度が上昇し、粗大なγ/γ’共晶が結晶粒界に発生するため、5.0%を上限とする。前述したTiの効果をより確実に得るための好ましい下限は1.4%であり、特に好ましくは1.5%である。Tiの好ましい上限は4.0%であり、他の元素とバランスを考慮するとTiの上限は3.5が好ましく、更に好ましくは3.0%であり、より好ましくは2.7%である。
Moはγ相中に固溶することでクリープ破断強度の向上に寄与するため、0.5%以上が必要になる。しかし、Mo量が多すぎると耐酸化性に悪影響を及ぼすため、4%を上限とする。前述したMoの効果をより確実に得るための好ましい下限は1.0%であり、好ましい上限は3.5%である。
<W:7〜14%>
Wはγ相、γ’相、炭化物に固溶することでクリープ破断強度の向上へ寄与する。特に高温のクリープ破断強度には、拡散係数の小さいWの寄与が大きいため、7%以上が必要になる。しかし、W量が多すぎると組織が不安定となり、硬くてもろいσ相などの有害相を形成し、クリープ破断強度と延性の低下を招く。さらに、Wは比重が高いのでW量が増えるほど密度が高くなり、回転体として不利になるため、Wは14%を上限とする。前述したWの効果をより確実に得るための特に好ましい下限は7.5%であり、更に好ましくは9%である。Wの好ましい上限は13%であり、更に好ましくは12.5%である。
Mgは選択元素であり、必要に応じて添加することができる。Mgは合金の溶解時に脆化相形成元素であるSと化合物を形成する脱硫剤として添加する。適量のMg添加はSの粒界偏析を抑制して熱間加工性を改善する効果がある。この効果を確実に得るため、Mgは0.001%以上が必要になる。しかし、過度のMgを添加するとMgの低融点相が析出し粒界強度が低下するため0.02%を上限とする。前述したMgの効果をより確実に得るための好ましい下限は0.0005%であり、更に好ましくは0.002%であり、好ましい上限は0.01%である。
<B:0.001〜0.05%>
Bは母相であるγ相を構成するNiと原子半径が大きく異なるため粒界に偏析し、粒界すべりを抑制するため高温強度に有益と考えられる。この効果を確実に得るため、Bは0.001%以上が必要となる。ただし、多量の添加は耐酸化性を劣化させるため0.05%を上限とする。
Zrは選択元素であり、必要に応じて添加することができる。Zrは母相であるγ相を構成するNiと原子半径が大きく異なるため粒界に偏析し、粒界に炭化物を形成することで粒界を強化し高温強度に有益と考えられる。ただし、多量の添加は耐酸化性を劣化させるため0.1%を上限とする。前述したZrの効果をより確実に得るために、Zrを含有する場合の好ましい下限は0.01%とすると良い。
<残部:Ni及び不可避的不純物>
残部は実質的にNiであるが、製造上不可避的に混入する不純物は含まれる。なお、従来合金に積極的に添加されるTaは積極的に添加する必要がなく、また、Nbは本発明においては不純物元素である。
本発明例、従来例として表1に示す合金10kgを真空炉内で溶解し、同炉内に設置した鋳鉄製のφ80mm鋳型へと鋳造して、それぞれの合金のインゴットを作製した。これらの合金は、ターボチャージャーの構成部品であるタービンホイールに用いられることを想定したものである。
従来例として示されるNo.11合金はターボチャージャーの代表的な材料として知られているAlloy713Cである。Alloy713Cは比較的希少な元素であるCoやW、特に希少な元素であるTaを含んでいないため、ターボチャージャー用の材料としては安価である。一方、Mar−M246はCo、Wの含有量が多い上、Taも1.5%含有していることから、ターボチャージャー用の材料としては高価である。本発明例の合金は、従来合金No.12のMar−M246と比較してTaを含んでいない、もしくは含有量が低いことからMar−M246より低コスト化が可能な組成を有する合金である。
表2で示す試験結果として、従来例のNo.11合金(Alloy713C)は表1に示される合金の中で1000℃/180MPaにおけるラプチャー寿命が最も短かった。No.11合金のラプチャー寿命が短かったのは、No.11合金はCo、W、Taを含んでいないために、表1に示される他の合金に比べ粒内強度が弱く、粒界に晶出するMC炭化物もTa、Wを含まないので高温での粒界強度も弱いためである。
また、同じ従来例のNo.12合金(Mar−M246)は表1に示される合金の中で1000℃/180MPaにおけるラプチャー寿命が最も長かった。このことは、Mar−M246はCo、W、Taの固溶強化によって粒内強度が強く、さらに粒界にもTa、Wを含んだMC炭化物が十分に晶出しているので高温での粒界強度も強いためである。
本発明例の合金は、No.12合金(Mar−M246)に対してラプチャー寿命がやや下回るものの、高効率なターボチャージャー材料としてMar−M246を代替可能な最低条件であると考えられる1000℃/180MPaのラプチャー寿命50時間を上回っており、ほとんどが60時間以上となっている。なかには、70時間以上が得られている合金があることが分かる。これは、本発明例の合金はTaを含有していないが、粒界に晶出するMC炭化物にはTaの不在を補うようにWが多く固溶するので、高温での粒界強度はMar−M246に比べて十分に高い。さらに、本発明例の合金はTiを多く含むことから、γ’相にTiが多く固溶するので、高温での粒内強度もMar−M246に比べて十分に高く、Mar−M246を代替可能なものである。以上の効果によって、本発明例の合金は1000℃/180MPaのラプチャー寿命が50時間を上回ったと考えられる。
また、伸びと絞りにおいても、本発明合金は、2.5%以上の伸びを示し、No.12合金と同等以上の伸びが得られた。また、絞りもNo.12の合金と同等以上が得られた。なかには伸びと絞りが共に4.0%以上が得られた合金があり、No.12合金のMar−M246を代替可能なものである。
すなわち、本発明は、質量%で、C:0.02〜0.5%、Cr:7〜12%、Co:4〜14%、Al:3.0〜6.5%、Mo:0.5〜4%、W:7〜14%、Ti:1.0〜3.0%、Mg:0〜0.02%、B:0.001〜0.05%、Zr:0〜0.1%、残部はNi及び不可避的不純物からなり、Taは無添加であるNi基超耐熱合金である。
前記Mgの含有量は0.001〜0.02%であることが好ましい。
また、1000℃/180MPaのラプチャー寿命が50時間超である請求項1または2に記載のNi基超耐熱合金。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.02〜0.5%、Cr:7〜12%、Co:4〜14%、Al:3.0〜6.5%、Mo:0.5〜4%、W:7〜14%、Ti:1.0〜5.0%、Ta:0〜0.7%、Mg:0〜0.02%、B:0.001〜0.05%、Zr:0〜0.1%、残部はNi及び不可避的不純物からなることを特徴とするNi基超耐熱合金。
- 前記Taは無添加である請求項1に記載のNi基超耐熱合金。
- 前記Mgの含有量が0.001〜0.02%である請求項1または2に記載のNi基超耐熱合金。
- 前記Tiの含有量が1.0〜3.5%である請求項1乃至3の何れかに記載のNi基超耐熱合金。
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