JPWO2020095660A1 - 三次元形状を有するガラス物品とその製造方法、化学強化ガラス物品およびその製造方法 - Google Patents

三次元形状を有するガラス物品とその製造方法、化学強化ガラス物品およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

平板以外の形状を有し、酸化物基準の質量%により表示して、SiO260〜70%、Al2O36〜18%、Li2O2〜8%、Na2O8〜20%、K2O0〜1%、MgO0〜3%、CaO1〜6%、Fe2O30.01〜0.2%を含むガラス組成を有するガラス物品を提供する。このガラス組成は、モールドプレス法を利用して三次元形状を付与すること、さらには化学強化処理によって高強度化すること、に適している。

Description

本発明は、リチウムを含むアルカリアルミノシリケートガラスを含み、三次元形状を有するガラス物品および化学強化ガラス物品に関するものである。なお、本明細書において、「三次元形状」は平板以外の形状を意味する。
近年、タッチパネルを搭載した携帯端末が広く普及しており、そのディスプレイを保護するために当該ディスプレイの表面にカバーガラスを備えることが一般的になっている。カバーガラスとしては、例えば厚さ0.3mm〜1mm程度の平板形状のアルカリアルミノシリケートガラスを化学強化したものが用いられている。
さらに最近では、曲面形状などの三次元形状を有するディスプレイの開発に応じて、三次元形状を有するカバーガラスが期待されている。また、携帯端末の内蔵アンテナの電波受発信を良好にするため、金属筐体に代えて三次元形状を有する化学強化ガラス筐体とすることで、携帯端末の内臓アンテナの電波受発信を良好にすることも期待されている。これらに対して、熱加工により平板形状から三次元形状に加工され、さらに化学強化された、カバーガラスが提案されている(特許文献1〜4)。
三次元形状としては、例えば特許文献1には「曲面形状、凹凸形状、波型形状、段付形状等」が開示されている。また特許文献2には、「皿形」として平板ガラスの周縁部を曲げてその主面に対して所定の角度立ち上げた、皿状、バット(トレイ)状あるいは箱状というべき形状(図1、図2)が例示されている。さらに特許文献4、5には全体を一様な曲面形状に成形したものが例示されている。
平板ガラスを三次元形状に成形する方法として、平板ガラスを加熱して曲げる自重形成法、真空形成法(サギングあるいはサクション法)などが知られている(例えば特許文献5、6)。
一様な曲面ではなく、局所的に曲げられた屈曲部を有する三次元形状のガラス物品(特許文献2の図1、2を参照)を形成する場合、特にその形状、厚み分布を精密に制御することが求められる場合には、モールドプレス法が最も適している(非特許文献1)。これは、元来、非球面レンズのプレス成形に広く用いられている手法であるが、平板ガラスをプリフォームとして実施することもできる。モールドプレス法は、他の熱加工法に比して、三次元形状のガラス物品の形状設計の自由度が高いこと、形状を精密に制御して形成できること、また型表面の状態によるが表面が滑らかな三次元形状のガラス物品を得られることなどの利点を有する。
特許文献1〜4に開示されたガラス組成物からなる平板ガラスをプリフォームとして用いて前記のモールドプレス法により三次元形状のガラス物品を得ることについては、以下の問題がある。
特許文献1にはアルカリアルミノボロシリケートガラス組成物を有するガラス物品が開示されている。しかし、特許文献1に開示されているガラス組成物は、軟化点等の特性温度が高いため、比較的低温の加工温度(例えば600℃前後)で平板ガラスをプリフォームとするモールドプレス法を適用することには適していない。
特許文献2〜5にも、前記加工温度で平板ガラスをプリフォームとするモールドプレス法を適用することに適したガラス組成は開示されていない。
なお、化学強化によるガラス物品の強度向上の程度はガラス物品の表面近傍のガラス組成に大きく影響されるため、熱加工によりガラス物品の表面近傍のガラス組成が変化することは通常ガラス物品の強度向上に不利に作用する。その点からも、高温での熱加工は好ましくない。
この問題に対して、平板ガラスに化学強化処理を施した後に熱加工を施す手法が考えられる。その場合、イオン交換によって導入されたイオンの拡散などに起因して応力緩和が生じ、ガラス物品の表面に付与した圧縮応力が減少することとなるため等温プレス法の適用が難しくなる。
特開2010−168233号公報 特表2015−527277号公報 特表2015−527970号公報 特表2017−506616号公報 国際公開第2016/125713号公報 特表2011−526874号公報
山根正之他編、「ガラス工学ハンドブック」、初版、株式会社朝倉書店、1999年7月5日、419〜422頁
本発明が解決しようとする課題は、モールドプレス法を利用して三次元形状を付与すること、さらに引き続き化学強化処理によって高強度化すること、に適したガラス組成を有し、三次元形状が付与されたガラス物品を提供することにある。また、本発明が解決しようとする課題は、このようなガラス組成を有し、三次元形状が付与され、化学強化処理によって高強度化されたガラス物品を提供することにある。
本発明は、
三次元形状、すなわち平板以外の形状、を有し、
酸化物基準の質量%により表示して、
SiO2 60%以上、70%以下、
Al23 6%以上、18%以下、
Li2O 2%以上、8%以下、
Na2O 8%以上、20%以下、
2O 0%以上、1%以下、
MgO 0%以上、3%以下、
CaO 1%以上、6%以下、
Fe23 0.01%以上、0.2%以下
を含む、ガラス物品、を提供する。
また、本発明は、
溶融したガラス原料から、酸化物基準の質量%により表示して、上記各成分を上記の含有率で含むガラス組成を有する平板ガラスを成形することと、
前記平板ガラスをモールドプレス法により平板以外の形状を有するガラス物品へと成形することと、を具備する、ガラス物品の製造方法、を提供する。
また、本発明は、
平板以外の形状を有し、
表面に圧縮応力層を有し、
少なくとも前記圧縮応力層以外の部分が、酸化物基準の質量%により表示して、
上記各成分を上記の含有率で含む、化学強化されたガラス物品、を提供する。
また、本発明は、
溶融したガラス原料から、酸化物基準の質量%により表示して、上記各成分を上記の含有率で含むガラス組成を有する平板ガラスを成形することと、
前記平板ガラスをモールドプレス法により平板以外の形状を有するガラス物品へと成形することと、
前記ガラス物品を化学強化処理することと、を具備する、化学強化されたガラス物品の製造方法、を提供する。
また、本発明は、
本発明によるガラス物品を備えた携帯端末、を提供する。
また、本発明は、
本発明によるガラス物品を備えた車両搭載用表示装置、を提供する。
本発明によれば、モールドプレス法を利用して三次元形状を付与すること、さらに引き続き化学強化処理によって高強度化すること、に適したガラス組成を有し、三次元形状が付与されたガラス物品が提供される。また、本発明によれば、このようなガラス組成を有し、三次元形状が付与され、化学強化処理によって高強度化されたガラス物品が提供される。
本発明が特定するガラス組成は、比較的低温でのモールドプレス法による成形を可能とする。比較的低温でのモールドプレス法は、失透などによるガラス物品の透過率の減少、ガラス物品の表面の粗面化、成形に用いる型の損耗などのモールドプレス法に伴って生じ得る問題を抑制する上で有利である。また、本発明が特定するガラス組成は、成形後の化学強化処理を可能とし、三次元形状を有する高強度のガラス物品の実現に適している。なお、本発明においても、モールドプレス法による成形温度は、必要に応じ、より高温としてもよい。より高温での成形は、特定の形状、例えば側板部が底板部よりも厚い形状へと平板ガラスを成形する場合に適用することが好ましい。本発明が特定するガラス組成は、このような異厚のガラス物品への成形もより低温で実施できるという利点を提供できる。
三次元形状を有するガラス物品の形状の一例を示す平面図 図1のII−II断面図 図1のIII−III断面図 三次元形状を有するガラス物品の形状の別の一例を示す平面図 図4のV−V断面図 図4のVI−VI断面図 三次元形状を有するガラス物品の形状のまた別の一例を示す平面図 図7のVIII−VIII断面図 図7のIX−IX断面図 三次元形状を有するガラス物品の形状のさらに別の一例を示す平面図 実施例1〜3のガラス組成物の温度−粘度曲線を示す図 実施例1のガラス組成物からなる化学強化ガラス物品の深さ方向における圧縮応力分布を示す図 図12の一部分を拡大した図 実施例1のガラス組成物からなる化学強化ガラス物品の表面近傍におけるナトリウムイオンの深さ方向濃度分布を示す図
以下、適宜図面を参照しながら本発明を説明するが、以下の説明は本発明を特定の形態に限定するものではない。
[ガラス物品の三次元形状]
ガラス物品は、平板以外の形状、すなわち三次元形状を有する。三次元形状は、例えば、底板部と屈曲部と側板部とを備え、底板部の周縁に屈曲部を介して側板部が接続された形状である。
図1〜3に上記形状の一例を示す。ガラス物品10は、底板部1の全周縁に屈曲部3を介して側板部2が接続された形状を有する。底板部1は、平面視で、実質的に四角形、正確には隅角部が丸みを帯びた矩形である。また、底板部1は、平板であり、その主表面1fは平面である。側板部2は、屈曲部3から、底板部1の主表面1fから見て同一の高さにまで立ち上がっている。側板部2は、底板部1の底面である主表面1fから遠ざかる方向に延びている。側板部2および屈曲部3は、共にその表面が曲面であり(図2および3参照)、屈曲部3の表面は側板部2の表面よりも大きな曲率を有する。
図4〜6に上記形状の別の一例を示す。ガラス物品20の底板部1は、屈曲部3を介して側板部2が接続された周縁と、側板部2が接続されていない周縁とを有する。底板部1は、平面視で実質的に四角形、より具体的には矩形である。その矩形の相対する一対の対辺に相当する底板部1の周縁からは屈曲部3を介して側板部2が立ち上がり、底板部1の残りの対辺に相当する周縁では底板部1の端面が露出している。
図7〜9に上記形状のまた別の一例を示す。ガラス物品30においても、底板部1は、屈曲部3を介して側板部2が接続された周縁と、側板部2が接続されていない周縁とを有する。ただし、ガラス物品20とは異なり、ガラス物品30においては、底板部1の主表面の短辺ではなく長辺に相当する周縁から屈曲部3を介して側板部2が立ち上がっている。また、ガラス物品10、20とは異なり、ガラス物品30の底板部1は、その主表面1cが曲面の曲板である(図9参照)。
図1〜9に示した形状は、皿状、バット(トレイ)状などといい得る形状である。また、図1〜3に示した形状から側板部2をさらに長く延ばせば、箱状といい得る形状になる。このように、ガラス物品は、皿状、バット状および箱状から選ばれる少なくとも1つに相当する形状を有していてもよい。ただし、ガラス物品の形状は図1〜9の例示に限らない。例えば、底板部1は、平面視において四角形に限らず、円形、楕円形その他であってもよい。側板部2は、平板であってもよく、また、底板部1の主表面と直交する方向に立ち上がっていてもよい。側板部2には、携帯端末にコネクターなどを接続するための切り欠き、孔などが設けられていてもよい。底板部1にも孔などが形成されていても構わない。ガラス物品は、その形状が底板部と屈曲部と側板部とを備えた形状に限られるものでもない。例えば、図10に示すガラス物品40は、断面視において、一定の曲率を有する側板部2が平板である底板部1の周縁と直接接続し、屈曲部とみなし得る部分を有していない。
ガラス物品は、典型的には、一対の主表面がともに平面である板状のガラス物品、すなわち平板ガラスを、モールドプレス法により変形させて付与しうる形状を有する。ガラス物品は、その主要部、具体的には質量基準で全体の過半を占める部分として、底板部1を有することが好ましく、底板部1は平板形状または曲面形状を有することが好ましい。好ましい底板部1の曲面形状は、最小曲率半径が5cm以上のなだらかな曲面である。平板または曲率が小さい曲板である底板部の形状は、例えば、携帯端末などのディスプレイの前面に配置される前面部、あるいは携帯端末のガラス筐体の底部などとしての使用に適している。
底板部1の厚みt1は、例えば0.3mm以上2mm以下、特に0.3mm以上1mm以下である。この厚みは、携帯端末用のカバーガラスまたはガラス筐体としての使用に適している。ただし、底板部1は、携帯端末用以外の表示装置に使用される場合には、適宜、それに適した厚みを有し得る。
側板部2の厚みt2も、例えば0.3mm以上2mm以下、特に0.5mm以上2mm以下であってよい。また、厚みt2は、底板部1の厚みt1と実質的に同一であってもよい。ガラス物品では、底板部1および側板部2のすべての領域にわたってその厚みが実質的に同一であってもよい。本明細書において、厚みが「実質的に同一」とは、厚みの差分が、0.1mm以下、さらには0.05mm以下であることを意味する。
ただし、これに限らず、厚みt2は、厚みt1と実質的に同一でなく、厚みt1より大きくてもよい。この場合、差分(t2−t1)は、例えば0.3mm以上、特に0.4〜1mmであってもよい。側板部2を底板部1より厚くすることにより、ガラス物品全体の重量増を抑制しながら、1)底板部1自体の重量および底板部1に加わる圧力、例えばディスプレイに指などから加わる圧力に抗する強度を保持することが容易になり、2)側板部2に切り欠き、孔などを設けても、側板部2の強度を保持することが容易になる、などの利点が得られる。このような効果を十分に得るために、厚みt2は、厚みt1の2倍以上であってもよい。
なお、側板部2の厚みt2は、局部的に、底板部1の厚みt1より厚くしてもよい。例えば1)の効果を得るためには、屈曲部3との接続部から延びて側板部2の端面に至る1または2以上の柱状の部分のみを局部的に厚くして側板部2に支持部を設けるとよい。また例えば2)の効果を得るためには、切り欠きを設ける部分を局部的に厚くするとよい。これらの場合は、局部的に厚くした部分の厚みt2pと厚みt1との差分(t2p−t1)を、差分(t2−t1)について述べた上述の範囲とすることが好ましい。
後述するように、モールドプレス法の条件を適切に選択すれば、厚みが実質的に同一である平板ガラスから側板部2の厚みが底板部1の厚みと実質的に同一であるガラス物品を製造することのみならず、上記平板ガラスから側板部2が底板部1よりも厚いガラス物品を成形することも可能である。
ガラス物品の表面は、モールドプレス法、さらに化学強化処理を適用した後にも高い平滑性を有し得る。表面の算術平均粗さRaは、例えば1nm以下、さらには0.8nm以下である。また、ガラス物品は、少なくとも底板部1において、モールドプレス法、さらに化学強化処理を適用した後にも高い光線透過率を有し得る。モールドプレス法および化学強化処理を適用する前のプリフォームである平板ガラスと比較した光線透過率の変化は、波長域400〜1200nmの平均透過率により表示して2%以内、さらには1%以内である。
[ガラス組成]
ガラス物品のガラス組成は、酸化リチウム(Li2O)を含むアルカリアルミノシリケートガラスである。以降において、ガラス組成の成分を示す%表示は、酸化物基準の質量%を意味する。また、本明細書において「実質的に含有しない」とは、当該成分の含有率が0.05%以下、好ましくは0.01%以下であることを意味する。ガラス物品の工業的量産では不純物の混入が避けがたい場合がある。「実質的に」は微量の不純物の不可避的混入を許容する趣旨である。
ガラス物品のガラス組成を構成する各成分(SiO2、Al23、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、Fe23)の含有率の好適な範囲は上述したとおりである。
ガラス物品は、着色剤、清澄剤などとして、例えば以下の成分をさらに含んでいてもよい。
TiO2 0%以上、1%以下、
SO3 0%以上、1%以下、
SnO 0%以上、1%以下、
CeO2 0%以上、1%以下、
As23 0%以上、1%以下、
Sb23 0%以上、1%以下
ただし、As23とSb23は、実質的に含まないことが望ましい。その他の任意成分については後述する。
以下、各成分の好ましい含有率についてより詳しく説明する。
(SiO2
SiO2は、含有率が低すぎるとガラスの耐水性などの化学的耐久性および耐熱性が低下する。他方、SiO2の含有率が高すぎると、高温でのガラス組成物の粘性が高くなり、溶解および成形が困難になる。したがって、SiO2の含有率は60〜70%の範囲であり、好ましくは60〜68%、さらに好ましくは62〜66%、最も好ましくは64〜66%である。
(Al23
Al23は、耐水性などの化学的耐久性を向上させ、さらにガラス中のアルカリ金属イオンの移動を容易にすることにより化学強化後の表面圧縮応力を高め、かつ、応力層深さを深くするための成分である。その割合が6%未満では、その効果が不十分である。一方、18%を越えるとガラス融液の粘性が高くなり、溶融や成形が困難となるとともに、膨張係数が小さくなりすぎる。このため、Al23の含有率は6〜18%の範囲であり、好ましくは10〜18%、さらに好ましくは14〜17%である。
(Li2O)
Li2Oは、イオン交換を行うための成分であるとともに、溶解性を高める成分である。その割合が2%未満では、イオン交換後の表面圧縮応力が十分得られず、また溶解性も悪い。一方、8%を越えるとイオン交換後の耐水性が悪化するとともに、液相温度が上がり、成形が困難となる。このため、Li2Oの含有率は2〜8%の範囲であり、好ましくは2〜6.1%、より好ましくは2.6〜6%、さらに好ましくは3〜5%である。
(Na2O)
Na2Oは溶解性を高める成分である。その割合が8%未満では、その効果が不十分である。一方、20%を越えるとイオン交換後の耐水性が悪化する。このため、Na2Oの含有率は8〜20%の範囲であり、好ましくは10〜16%、さらに好ましくは10〜14%、最も好ましくは11〜13%である。
(K2O)
2Oは、溶解性を高める成分であるが、イオン交換後の表面圧縮応力が低下する場合があるため必須成分ではない。このため、K2Oの含有率は0〜2%の範囲であり、好ましくは0〜1%、さらに好ましくは0〜0.5%、最も好ましくは0.3〜0.5%である。
(MgO)
MgOは、溶解性を高める成分であるが、3%を越えると液相温度が上がり、成形が困難となる。このためMgOの含有率は0〜3%の範囲であり、好ましくは0〜2%、さらに好ましくは0.5〜2%、最も好ましくは0.5〜1.5%である。
(CaO)
CaOは、溶解性を高める成分であるとともに、イオン交換速度を調整するための必須成分である。その割合が1%未満ではその効果が十分でない。一方、6%を越えると液相温度が上がり、成形が困難となる。このため、CaOの含有率は1〜6%の範囲であり、好ましくは1〜4%、最も好ましくは2〜4%である。
(Fe23
通常Feは、Fe2+またはFe3+の状態でガラス中に存在し、着色剤として作用する。Fe3+はガラスの紫外線吸収性能を高める成分であり、Fe2+は熱線吸収性能を高める成分である。ガラス物品をディスプレイのカバーガラスとして用いる場合、着色が目立たないことが求められるため、Feの含有率は少ない方が好ましい。しかし、Feは工業原料により不可避的に混入することが多い。したがって、ディスプレイのカバーガラスとする場合は、Fe23に換算した酸化鉄の含有率は0.2%以下であり、好ましくは0.15%以下、さらに好ましくは0.1%以下、さらに好ましくは0.05%以下であることが好適であるが、完全に排除されていなくてもよく、0.01%以上であってもよい。
一方、ガラス筐体として三次元形状を有する化学強化ガラス物品を用いる場合には、着色することを目的としてFe23に換算した酸化鉄の含有率を0.1%以上とし、さらに好ましくは0.5%以上とすることが好適なことがある。
(その他の成分)
SrOやBaOは、溶解性を高める成分であるとともに液相温度を下げるのに有効な成分である。しかし、ガラスの密度が大きくなるとともに、原料費用の増加を招く。SrOとBaOの含有率は、それぞれ0〜1%の範囲であり、好ましくは0〜0.5%、さらに好ましくは0〜0.1%である。ガラス物品は、SrOやBaOを実質的に含有しないことが最も好ましい。
23は、ガラス組成物の粘性を下げ、溶解性を改善する成分である。しかし、B23の含有率が高すぎると、ガラス組成物が分相しやすくなり、ガラス組成物の耐水性が低下する。また、B23とアルカリ金属酸化物とが形成する化合物が揮発してガラス溶解室の耐火物を損傷するおそれが生じる。さらに、B23の含有は化学強化における圧縮応力層の深さを浅くしてしまう。したがって、B23の含有率は0.5%以下、好ましくは0.1%以下であることが適切である。ガラス物品は、B23を実質的に含有しないことが最も好ましい。また、P25についても、その揮発性などが問題になるため、P25の含有率は0.5%以下、好ましくは0.1%以下が適切である。
ガラス物品は、熱加工の条件や化学強化に影響しない範囲で、その他の成分、例えば着色剤や清澄剤に起因する成分を含むことができる。例えば透過率の高いカバーガラスとして用いる場合には、TiO2、SO3、SnO、CeO2、As23、Sb23の含有率をそれぞれ1%以下、好ましくは0.5%以下とすることが好適であり、さらにこれらの成分の含有率の合計が1%以下であり、好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下、さらに好ましくは0.1%以下とすることが好適である。ただし、As23とSb23は環境に悪影響があるため、実質的に含有しないことが好ましい。その他の成分も、それぞれ実質的に含有しないことが好ましい。
ガラス物品は、さらに、ZrO2、PbO、La23、Y23、MoO3、WO3、Nb25、CoO、Cr23をそれぞれ0.5%以下、好ましくは0.1%以下の範囲で含んでいてもよい。ガラス物品は、Au、Ag、Pt、Rh、Osなどの貴金属元素、Cl、Fなどのハロゲン元素を各元素について0.5%以下の範囲で含んでいてもよい。ただし、ZrO2からCr23までに列記した成分、貴金属元素およびハロゲン元素も、それぞれ実質的に含有しないことが好ましい。例えば、ZrO2は溶融窯の耐熱レンガを侵食する原因になる。上記に列記したTiO2からFまでの成分の含有率の合計は1%以下、さらには0.5%以下、特に0.1%以下が好適である。
[ガラス組成物の特性]
以下、ガラス物品を構成するガラス組成物の好ましい特性について説明する。
上記で組成を説明したガラス組成物は、比較的低温で行われるモールドプレス法によって三次元形状を形成することに適した特性、具体的には屈伏点、ガラス転移点および熱膨張係数を有し得る。これらの特性は以下のとおりである。
(屈伏点At)
モールドプレス法の加工温度の条件から、屈伏点の上限は580℃であり、好ましくは560℃であることが好適である。一方屈伏点の下限は420℃であり、好ましくは450℃、さらに好ましくは500℃であることが好適である。
(ガラス転移温度Tg
モールドプレス法の離型温度の条件から、ガラス転移温度の上限は530℃、好ましくは500℃であることが好適である。一方ガラス転移温度の下限は330℃であり、好ましくは400℃、さらに好ましくは430℃であることが好適である。
(熱膨張係数α)
モールドプレス法においては、ガラス組成物の熱膨張係数が大きすぎると、所望のガラスの形状を得るための型形状の設計が困難になる場合がある。そのため、熱膨張係数α(単位:10-7/℃)は、50℃から350℃の平均値として80〜120であり、好ましくは80〜100であることが好適である。
ガラス組成物は、プリフォームとなる平板ガラスを製造することに適した溶融点、作業点、液相温度を有することが好ましい。平板ガラスの製造方法はフロート法、ダウンドロー法など種々の方法があるが、大面積の平板ガラスを生産性良く製造する方法であるフロート法が好ましい。
フロート法で平板ガラスを得る場合には、ガラス組成物の溶融点T2、作業点T4、液相温度TLが以下のようであることが望ましい。
(溶融点T2
溶融点が低いとガラス原料を溶融するために必要なエネルギー量を抑制することができ、ガラス原料がより容易に溶解してガラス融液の脱泡および清澄が促進される。溶融点は1580℃以下、好ましくは1550℃以下、さらに好ましくは1500℃以下である。なお、溶融点T2は、ガラスの粘度が102dPa・sとなる温度であり、この粘度に基づいてT2と表示されることがある。以下においても、Tと共に表記する数値は、当該温度におけるガラスの粘度に対応している。
(作業点T4
フロート法によって平板ガラスを製造する場合には、溶融ガラスを溶融窯からフロートバスに流入させる際に、溶融ガラスの粘度ηが104dPa・s程度になるように溶融ガラスの温度を調整する。溶融ガラスの粘度が104 dPa・sとなる温度(作業点)は低い方が好ましく、例えばディスプレイのカバーガラスなど向けにガラスを薄く成形するためには、作業点は1300℃以下であり、好ましくは1200℃以下、さらに好ましくは1100℃以下であることが好適である。作業点の下限は特に限定されないが、例えば800℃が挙げられる。
(液相温度(失透温度)TL
フロート法により平板ガラスを製造する場合、溶融ガラスが平板形状に成形される際の失透を避ける必要がある。すなわち、形成温度(作業点)において溶融ガラスが失透しないこと、言い換えれば作業点と液相温度の差が大きいことが好ましい。作業点と液相温度の差(T4−TL)は10℃以上、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは100℃以上であることが好適である。
[ガラス物品の製造方法]
(平板ガラスの成形)
ガラス物品は、ガラス原料を溶融して平板ガラスを成形し、その平板ガラスをモールドプレス法により平板以外の形状へと成形し、さらに必要に応じて化学強化処理することにより、得ることができる。平板ガラスの成形は、フロート法、ダウンドロー法その他公知の方法により実施することができる。上述したとおり、フロート法は平板ガラスの好ましい製法である。フロート法を始めとする平板ガラスの成形方法は、当業者に周知であるため、ここでは説明を省略する。
(モールドプレス法)
モールドプレス法では成形型を用いて平板ガラスがプレス成形される。この場合、成形型と平板ガラスとを所定の温度まで加熱し、その温度(加工温度)で所望の形状になるようにプレスする、等温プレス法を用いることが好ましい。プレス成形後は、所定の温度まで冷却して型からガラス物品を外して精密アニールを行う。
等温プレス法においては、型は平板ガラスを加工するための温度まで加熱されるので、高温における強度および平板ガラスとの反応性が低いことが求められる。一般に、超硬合金の表面を精密に加工し、さらにDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜などの離型膜を表面にコーティングした型を用いて所望の製品形状に近い形状を有するプリフォームを比較的低い加工温度で成形することが好ましい。超硬合金としては、タングステンカーバイドを例示できる。超硬合金を加工した型を用いれば、成形後の表面研磨も不要となる。一方、溶融軟化状態のガラスを加工する場合には加工温度が高いため炭素系素材を型材料に用いることが行われるが、表面の加工精度が超硬合金に劣ることや離型膜の劣化による表面の粗面化によりプレス後に研磨が必要になりやすい。炭素系素材は、超硬合金と比較して、強度が弱く耐久性にも劣る。
平板ガラスをプリフォームとして前記のモールドプレス法により三次元形状を有するガラス物品を製造する場合には、屈伏点を超える温度まで型と平板ガラスを加熱し、型を用いて平板ガラスをプレスしながら変形に要する所定時間(例えば2〜6分間、一例としては5分間)保持し、その後にガラス転移点前後の温度まで冷却することが好ましい。超硬合金にDLC膜を被覆した型を用いる場合、DLC膜の損耗を抑えるためには650℃以下、好ましくは630℃以下の加工温度でプレス加工することが好適である。この条件は、厚みが均一である平板ガラスから、側板部2の厚みt2が底板部1の厚みt1と実質的に同一であるガラス物品を成形する方法に適している。一方、特に熱加工による形状変化が大きい場合には、加工温度が低すぎるとガラスの粘度ηが大きくなって変形に要する時間(保持時間)が長くなるので、適切な加工温度は550℃以上、好ましくは580℃以上、さらに好ましくは600℃以上である。側板部の厚みt2が底板部の厚みt1よりも大きいガラス物品を成形する場合には、加工温度を例えば680〜720℃、さらには700〜715℃とすることが好ましい。なお、冷却時間が長くなりすぎないよう、加工温度と離型温度の差は150℃以下、好ましくは130℃以下、さらに好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下とすることが好適である。
モールドプレス法によれば、成形型の平板ガラスに接する部分にマークや模様を刻印しておくことにより、ガラス物品を成形しながらその表面にそのマークなどを転写することも可能である。
(化学強化処理)
化学強化は、ガラス物品の表面に含まれるアルカリ金属イオンをより半径の大きい一価のアルカリ金属イオンで置換するイオン交換により、ガラス物品の表面に圧縮応力層を形成する技術である。化学強化は、リチウムイオン(Li+)をナトリウムイオン(Na+)で置換することにより、あるいはナトリウムイオンをカリウムイオン(K+)で置換することにより、実施されることが多い。
イオン交換は、ガラス物品の表面に導入するアルカリ金属イオンを含む溶融塩にガラス物品を接触させることにより実施できる。イオン交換は2段階で実施してもよい。例えばLi+とのイオン交換によりガラス物品の表面に導入したNa+をさらにK+により置換してもよい。イオン交換のための溶融塩としては硝酸カリウムを例示できる。硝酸カリウムと硝酸ナトリウムとの混合溶融塩も好ましい溶融塩である。
ガラス物品と接触させる溶融塩の温度は、好ましくは360〜450℃である。ガラス物品と溶融塩との接触時間は、好ましくは2〜6時間である。なお、この接触時間は、イオン交換1回あたりの時間である。
[化学強化されたガラス物品]
上述のガラス組成を有するガラス物品では、イオン交換の影響を受けた表面を除き、その内部ではイオン交換前のガラス組成が維持される。当該表面では、イオン交換の影響を受けた部分を含むように圧縮応力層が発生する。したがって、化学強化されたガラス物品では、少なくとも圧縮応力層以外の内部において化学強化前のガラス組成が維持される。ガラス物品の全体が上述の組成を有していても構わない。
化学強化されたガラス物品における表面圧縮応力CSは、400MPa以上、好ましくは600MPa以上、さらに好ましくは800MPa以上である。また、圧縮応力層の厚みDOC(Depth of Compression)は、60μm以上、好ましくは80μm以上、さらに好ましくは100μm以上である。DOCは、ガラス内部の応力が圧縮から引張へと変化する深さ、すなわち応力が0MPaとなる深さである。イオン交換深さDOL(Depth of Layer)は、好ましくは5〜12μmである。DOLは、複屈折性を確認できる深さであって、ガラス表面応力計(例えば折原製作所製FSM−6000)を用いて測定できる。
以下、実施例により本発明についてさらに具体的に説明するが、以下の実施例も本発明を制限する趣旨で提示するものではない。
[実施例1]
(ガラスの作製)
表2の例1に示すガラス組成となるように、通常のガラス原料であるケイ砂、スポジュメン、アルミナ、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ドロマイト、石灰石、酸化鉄などを用いてガラス原料バッチを調合した。このバッチを白金ルツボで1550℃に加熱して溶融し、そのまま4時間保持した後に、溶融ガラスを鉄板上に流し出した。鉄板上に流し出した溶融ガラスは、100数秒で固化し、固化後直ちに600℃に設定した電気炉に入れた。30分後、電気炉の電源を切り、室温まで放冷して徐冷することによりガラスを得た。
(溶融点T2、作業点T4
ガラスの高温粘性測定は白金球引き上げ式自動粘度測定装置を用いて測定し、ガラス融液の粘度(η、単位はdPa・s)が102dPa・sになる温度として溶融点T2を求めた。同じく、ガラス融液の粘度が104dPa・sになる温度として作業点T4を求めた。結果を表2に示す。
(液相温度TL
得られたガラスをメノウ製乳鉢で粉砕し、目の開きが2380μmの篩を通過し、1000μmの篩に留まったガラス粒を篩い分け、そのガラス粒をエタノール中で超音波洗浄し、乾燥させて液相温度測定用試料とした。この試料の25gを秤量して幅12mm、長さ200mmの白金ボートに移し、温度勾配炉中に2時間保持して取り出した後、ガラス中に生成した結晶(失透)を光学顕微鏡で観察し、結晶が観測された最高温度を液相温度(失透温度)TLとした。結果を表2に示す。
(密度ρ)
得られたガラスを5×40×30mmの大きさに切断し、各面を鏡面研磨して板状サンプルを作製してその重量からガラスの密度ρを計算した。結果を表2に示す。
(熱膨張係数α)
直径5mm、長さ15mmの円柱状の試料を作製し、熱膨張計(熱機械分析装置 TMA4110SA、ブルカー・エイエックスエス株式会社製)を用いてガラス転移温度、屈伏点および50〜350℃の平均線膨張係数αを求めた。結果を表2に示す。
(軟化点T7.6、sag点T10、徐冷点T13、歪点T14.5および温度−粘度曲線)
得られたガラスを試料として、非特許文献4に開示されているようなファイバーエロンゲーション法(試料寸法:直径10mm×長さ200mmの丸棒形状)やビームベンディング法(試料寸法:3mm×3mm×55mmの角棒試料)により軟化点T7.6(η=4.5×107dPa・s)、sag点T10(η=1010dPa・s)、徐冷点T13(η=1013dPa・s)、歪点T14.5(η=1014.5dPa・s)を測定した。結果を表5に示す。また溶融点、作業点とこれらの値からフルチャーの式を用いて作成した温度−粘度曲線を図11に示す。
(熱加工)
得られたガラスから寸法50mm×100mm×0.9mmのガラス板を作製し、両面を鏡面研磨して平板ガラス試料とした。平板ガラス試料をモールドプレス法により熱加工して、図1〜3と同様の三次元形状を有するガラス試料を得た。超硬合金性の金型にDLC膜を被覆した金型を用い、側板部と底板部との厚みが実質的に同一である深さ約5mmの皿状形状を形成した。具体的には、金型とガラスを赤外線ヒーターで加熱し、温度を測定しながら加工温度(610〜670℃までの所定の温度)まで昇温し、加圧して5分間保持した。その後離型温度(500℃)まで冷却して型から外し、冷却しながら200℃までアニールして室温まで放置した。また、上記と同様にして、側板部が底板部よりも厚い深さ約5mmの皿状形状を形成した。この試料の底板部および側板部の厚みはそれぞれ0.6mm、1.3mmであった。このとき、試料の成形は、加工温度を710℃、保持時間を12分間として実施した。得られた三次元形状を有する各ガラス試料の底板部の波長域400〜1200nmの平均透過率と、底板部の底面に相当する主表面の算術平均粗さRaとを測定した。結果を表1に示す。得られた三次元形状を有するガラス試料には失透などによる透過率の減少は認められず、ディスプレイの前面部として使用しうる程度に、底板部の平坦性および表面の滑らかさは保たれていた。
なお、平均透過率は、分光光度計(Hitachi U-4100 Spectrophotometer)を使用し、波長域400〜1200nmの範囲で5nmごとに測定した透過率の平均値を求めることにより定めた。算術平均粗さRaは、触針計(Tencor Alpha-Step 500)を使用し、針径5μm、針圧10mg、針走査速度50μm/秒として、各試料について2回測定を実施し、その平均値を求めることにより定めた。
(化学強化処理)
得られた三次元形状を有するガラス試料に二段階の化学強化処理を施して三次元形状を有する化学強化ガラス試料を得た。一回目の化学強化処理は、硝酸ナトリウム(NaNO3)と硝酸カリウム(KNO3)を重量比で6:4含む混塩を用い、420℃に保持した溶融塩浴に試料を5時間浸漬して行った。続けて二回目の化学強化処理として370℃に保持した硝酸カリウム溶融塩浴に試料を3時間浸漬した。試料を取り出して室温まで冷却し、洗浄乾燥した。
(応力分布測定)
熱加工による化学強化の影響を確認するため、670℃で熱加工して得られた化学強化試料の圧縮応力分布を測定した。応力分布測定装置(折原製作所製、FSM−6000およびSLP−1000)を用いて表面圧縮応力CS(単位:MPa)、圧縮応力層厚みDOC(単位:μm)の測定および表面から深さ方向の圧縮応力分布を測定した。CSは980MPa、DOCは120μmであった。得られた応力分布曲線を図12に示す。比較対象として熱加工を施していない平板ガラスを同じ条件で化学強化したもの(Ref.品)の測定結果を合わせて表示している。図12のスケールでは曲線が重複していることが認められた。部分的に拡大したものを図13に示す。差異がわずかであることが認められた。
(表面Naイオン分布)
スパッタエッチング機能を備えたX線マイクロアナライザーを用いて表面から深さ方向のNa濃度分布を評価した。試料は応力分布測定に用いたものである。結果を図14に示す。深さ方向の応力分布(図12)にほとんど差がみられなかったように、Naイオンの深さ方向の濃度分布にもほとんど差異が認められないことを確認した。
圧縮応力分布およびNaイオン濃度分布の評価結果から、670℃で熱加工したことが化学強化処理に及ぼす影響は軽微であったことが確認できた。
[実施例2〜23]
表2〜4の例2〜例23のガラス組成について、例1と同様にガラス試料を作製し、密度ρ、熱膨張係数α、屈伏点At、ガラス転移点Tg、溶融点T2、作業点T4、液相温度TLを測定した結果を表2〜4に示す。
例2、例3については軟化点T7.6なども測定した。結果を表5に示す。また、温度−粘度曲線を図11に示す。図11において、符号11、12、13は、それぞれ実施例1、2、3のガラス組成物の測定結果を示す。曲線11〜13はモールドプレス法への適用に適した温度−粘度曲線であった。
以下、ガラス組成(質量%表示)と各種測定結果を表に示す。
Figure 2020095660
Figure 2020095660
Figure 2020095660
Figure 2020095660
Figure 2020095660
本発明によるガラス物品は、種々の用途、例えばスマートフォンやスマートウォッチに代表される携帯端末のカバーガラス、携帯端末の本体を収容するガラス筐体などとして利用できる。本発明によるガラス物品は、例えば車両搭載用表示装置やデジタルサイネージ機器、などとしても利用できる。ガラス物品は、無色透明に限らず、特にガラス筐体として使用する場合には着色成分を加えて着色してもよい。

Claims (12)

  1. 平板以外の形状を有し、
    酸化物基準の質量%により表示して、
    SiO2 60%以上、70%以下、
    Al23 6%以上、18%以下、
    Li2O 2%以上、8%以下、
    Na2O 8%以上、20%以下、
    2O 0%以上、1%以下、
    MgO 0%以上、3%以下、
    CaO 1%以上、6%以下、
    Fe23 0.01%以上、0.2%以下
    を含むガラス組成を有する、ガラス物品。
  2. 底板部と、側板部と、屈曲部とを備え、
    前記底板部の周縁に前記屈曲部を介して前記側板部が接続された形状を有する、請求項1に記載のガラス物品。
  3. 前記形状が、皿状、バット状および箱状から選ばれる少なくとも1つに相当する、請求項2に記載のガラス物品。
  4. 前記側板部が前記底板部よりも厚い、請求項2または3に記載のガラス物品。
  5. 前記底板部の厚みが0.3mm以上2mm以下である、請求項2〜4のいずれか1項に記載のガラス物品。
  6. 前記ガラス組成におけるLi2Oの含有率が2%以上6.1%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス物品。
  7. 溶融したガラス原料から、酸化物基準の質量%により表示して、
    SiO2 60%以上、70%以下、
    Al23 6%以上、18%以下、
    Li2O 2%以上、8%以下、
    Na2O 8%以上、20%以下、
    2O 0%以上、1%以下、
    MgO 0%以上、3%以下、
    CaO 1%以上、6%以下、
    Fe23 0.01%以上、0.2%以下
    を含むガラス組成を有する平板ガラスを成形することと、
    前記平板ガラスをモールドプレス法により平板以外の形状を有するガラス物品へと成形することと、を具備する、ガラス物品の製造方法。
  8. 平板以外の形状を有し、
    表面に圧縮応力層を有し、
    少なくとも前記圧縮応力層以外の部分が、酸化物基準の質量%により表示して、
    SiO2 60%以上、70%以下、
    Al23 6%以上、18%以下、
    Li2O 2%以上、8%以下、
    Na2O 8%以上、20%以下、
    2O 0%以上、1%以下、
    MgO 0%以上、3%以下、
    CaO 1%以上、6%以下、
    Fe23 0.01%以上、0.2%以下
    を含むガラス組成を有する、化学強化されたガラス物品。
  9. 表面圧縮応力が400MPa以上であり、前記圧縮応力層の厚みが60μm以上である、請求項8に記載の化学強化されたガラス物品。
  10. 溶融したガラス原料から、酸化物基準の質量%により表示して、
    SiO2 60%以上、70%以下、
    Al23 6%以上、18%以下、
    Li2O 2%以上、8%以下、
    Na2O 8%以上、20%以下、
    2O 0%以上、1%以下、
    MgO 0%以上、3%以下、
    CaO 1%以上、6%以下、
    Fe23 0.01%以上、0.2%以下
    を含むガラス組成を有する平板ガラスを成形することと、
    前記平板ガラスをモールドプレス法により平板以外の形状を有するガラス物品へと成形することと、
    前記ガラス物品を化学強化処理することと、を具備する、化学強化されたガラス物品の製造方法。
  11. 請求項1〜6、8または9に記載のガラス物品を備えた携帯端末。
  12. 請求項1〜6、8または9に記載のガラス物品を備えた車両搭載用表示装置。
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