JPWO2020085189A1 - アルミニウム合金箔、蓄電デバイス用外装材、その製造方法、及び蓄電デバイス - Google Patents

アルミニウム合金箔、蓄電デバイス用外装材、その製造方法、及び蓄電デバイス Download PDF

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Abstract

電解液が付着した状態で通電が生じた場合の腐食が効果的に抑制された、蓄電デバイス用外装材に用いるためのアルミニウム合金箔を提供する。Mg含有量が0.20質量%以上5.50質量%以下である、蓄電デバイス用外装材に用いるためのアルミニウム合金箔。

Description

本開示は、アルミニウム合金箔、蓄電デバイス用外装材、その製造方法、及び蓄電デバイスに関する。
従来、様々なタイプの蓄電デバイスが開発されているが、あらゆる蓄電デバイスにおいて、電極や電解質等の蓄電デバイス素子を封止するために包装材料(外装材)が不可欠な部材になっている。従来、蓄電デバイス用外装材として金属製の外装材が多用されていた。
一方、近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パソコン、カメラ、携帯電話等の高性能化に伴い、蓄電デバイスには、多様な形状が要求されると共に、薄型化や軽量化が求められている。しかしながら、従来多用されていた金属製の蓄電デバイス用外装材では、形状の多様化に追従することが困難であり、しかも軽量化にも限界があるという欠点がある。
そこで、近年、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る蓄電デバイス用外装材として、基材/アルミニウム合金箔層/熱融着性樹脂層が順次積層されたフィルム状の外装材が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
このようなフィルム状の外装材においては、一般的に、冷間成形により凹部が形成され、当該凹部によって形成された空間に電極や電解液などの蓄電デバイス素子を配し、熱融着性樹脂層同士を熱融着させることにより、外装材の内部に蓄電デバイス素子が収容された蓄電デバイスが得られる。
特開2008−287971号公報
蓄電デバイス用外装材の成形工程や、蓄電デバイス用外装材に蓄電デバイス素子を収容してヒートシールする工程、さらには、ヒートシールした部分を折り曲げる工程などにおいて、外部端子と蓄電デバイス用外装材のアルミニウム合金箔とが異物を介して短絡、あるいはヒートシール時の圧力ムラで外部端子と蓄電デバイス用外装材のアルミニウム合金箔とが近接もしくは接触して短絡し、且つ最内層に位置する熱融着性樹脂層に微細なクラックやピンホールが発生すると、熱融着性樹脂層に浸透した電解液を介して蓄電デバイス用外装材のアルミニウム合金箔と外部端子との間で通電し、アルミニウム合金箔が腐食する可能性がある(特に、アルミニウム合金箔と負極端子とが電解液を介して短絡すると、アルミニウム合金箔が腐食しやすい)。アルミニウム合金箔が腐食すると、アルミニウム合金箔が膨張するなどの不具合が生じて、蓄電デバイスの性能の劣化に繋がる。
このような状況下、本開示は、電解液が付着した状態で通電が生じた場合の腐食が効果的に抑制された、蓄電デバイス用外装材に用いるためのアルミニウム合金箔を提供することを目的とする。また、本開示は、当該アルミニウム合金箔を用いた蓄電デバイス用外装材、当該蓄電デバイス用外装材の製造方法、及び蓄電デバイスを提供することを目的とする。
本開示の発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、アルミニウム合金箔の組成について検討を重ね、Mgの含有量を所定の範囲に設定することにより、電解液が付着した状態で通電が生じた場合の腐食が効果的に抑制されることを見出した。
本開示は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。即ち、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
Mg含有量が0.20質量%以上5.50質量%以下である、蓄電デバイス用外装材に用いるためのアルミニウム合金箔。
本開示によれば、電解液が付着した状態で通電が生じた場合の腐食が効果的に抑制された、蓄電デバイス用外装材に用いるためのアルミニウム合金箔を提供することができる。また、本開示によれば、当該アルミニウム合金箔を用いた蓄電デバイス用外装材、当該蓄電デバイス用外装材の製造方法、及び蓄電デバイスを提供することもできる。
本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。 本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。 本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。 本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。 実施例1の蓄電デバイス用外装材の折り曲げ交点表面について、耐腐食性評価後に観察したマイクロスコープ画像である。 実施例2の蓄電デバイス用外装材の折り曲げ交点表面について、耐腐食性評価後に観察したマイクロスコープ画像である。 比較例1の蓄電デバイス用外装材の折り曲げ交点表面について、耐腐食性評価後に観察したマイクロスコープ画像である。 比較例2の蓄電デバイス用外装材の折り曲げ交点表面について、耐腐食性評価後に観察したマイクロスコープ画像である。 実施例における耐腐食性の評価方法を説明するための模式図である。 シール強度の測定方法を説明するための模式図である。 シール強度の測定方法を説明するための模式図である。 シール強度の測定方法を説明するための模式図である。 剛体振り子測定による対数減衰率ΔEの測定方法を説明するための模式図である。 シール強度の測定方法を説明するための模式図である。 示差走査熱量測定における温度差T1及び温度差T2を模式的に示した図である。 アルミニウム合金箔の厚み方向の断面における、結晶粒と第二相粒子を示す模式図である。
本開示のアルミニウム合金箔は、Mg含有量が0.20質量%以上5.50質量%以下である、蓄電デバイス用外装材に用いるためのアルミニウム合金箔であることを特徴とする。本開示のアルミニウム合金箔によれば、当該構成を備えていることにより、電解液が付着した状態で通電が生じた場合の腐食が効果的に抑制される。従って、本開示のアルミニウム合金箔を用いた蓄電デバイス用外装材は、アルミニウム合金箔の腐食が効果的に抑制される。
以下、本開示のアルミニウム合金箔、蓄電デバイス用外装材、その製造方法、及び蓄電デバイスについて詳述する。なお、本明細書において、「〜」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2〜15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。
1.アルミニウム合金箔
本開示のアルミニウム合金箔は、Mg含有量が0.20質量%以上5.50質量%以下であり、蓄電デバイス用外装材に用いられるものであることを特徴としている。本開示のアルミニウム合金箔を用いることができる蓄電デバイス用外装材については、特に制限されず、本開示のアルミニウム合金箔は、少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層を備える蓄電デバイス用外装材のバリア層として、好適に使用することができる。本開示のアルミニウム合金箔を用いた蓄電デバイス用外装材の具体例については「2.蓄電デバイス用外装材」の欄で詳述する。
本開示のアルミニウム合金箔は、Mg(マグネシウム)の含有量が0.20質量%以上5.50質量%以下である。本開示のアルミニウム合金箔の主成分はAl(アルミニウム)であり、具体的には93.65質量%以上はアルミニウムにより構成されている。Mg含有量としては、好ましくは0.20質量%以上5.00質量%以下、より好ましくは0.20質量%以上4.00質量%以下、さらに好ましくは0.20質量%以上3.00質量%以下、さら好ましくは0.20質量%以上2.50質量%以下、特に好ましくは0.20質量%以上2.20質量%以下が挙げられる。
本開示のアルミニウム合金箔には、Mg及びAl以外の他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、例えば、Si(ケイ素)、Fe(鉄)、Cu(銅)、Mn(マンガン)、Cr(クロム)、Zn(亜鉛)、不可避不純物が挙げられる。他の成分は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
電解液が付着した状態で通電が生じた場合の腐食が効果的に抑制されたアルミニウム合金箔とする観点から、本開示のアルミニウム合金箔は、Si含有量が0.40質量%以下、Fe含有量が0.70質量%以下、Cu含有量が0.20質量%以下、Mn含有量が1.00質量%以下、Cr含有量が0.50質量%以下、Zn含有量が0.25質量%以下であり、その他の不可避不純物が、個々に0.05質量%以下かつ合計で0.15質量%以下であり、残部がAlであることが好ましい。このような組成を有するアルミニウム合金箔は、JIS H4000:2014の合金番号A5000系アルミニウムの組成を有するアルミニウム合金と同様の組成とし、公知のアルミニウム合金箔の製法と同様、例えば、溶融、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延、最終焼鈍の各工程を経て製造することができる。アルミニウム合金箔の製造条件については、例えば特開2005−163077号公報の記載などを参考にすることができる。また、アルミニウム合金箔に含まれる各化学成分の分析は、JIS H4160−1994に規定された分析試験によって行う。
本開示においては、図16の模式図に示すように、アルミニウム合金箔の厚み方向の断面において、光学顕微鏡の視野内の任意の100個の第二相粒子3bについて、個々の第二相粒子3bの厚み方向とは垂直方向の最左端と、厚み方向とは垂直方向の最右端とを結ぶ直線距離を径yとした場合に、当該径yが大きい順に上位20個の第二相粒子3bの径yの平均が、10.0μm以下であることが好ましい。これによって、厚みが例えば約85μm以下、さらには約50μm以下、さらには約40μm以下さらには、約35μm以下という非常に薄いアルミニウム合金箔であるにも拘わらず、当該アルミニウム合金箔を蓄電デバイス用外装材に積層し、成形した時にピンホールやクラックが生じ難く、蓄電デバイス用外装材に優れた成形性を備えさせることができる。さらに、本開示においては、アルミニウム合金箔における第二相粒子3bの径yの平均が10.0μm以下であることによって、アルミニウム合金箔の厚みが例えば約85μm以下、さらには約50μm以下、さらには約40μm以下さらには、約35μm以下であり、かつ、蓄電デバイス用外装材の総厚みについても、例えば後述の厚みにまで薄い場合にも、成形時にピンホールやクラックが生じ難く、優れた成形性を備えている。
また、より成形性を高める観点からは、当該径yの平均としては、1.0〜8.0μm程度であることがより好ましく、1.0〜6.0μm程度であることがさらに好ましい。なお、図16は模式図であるため、描画を省略し、第二相粒子3bを100個描いてない。
本開示において、アルミニウム合金箔に含まれる第二相粒子は、アルミニウム合金中に存在する金属間化合物粒子を指し、圧延によって分断された晶出相や均質化処理や焼鈍を行う際に析出する析出相粒子である。
アルミニウム合金箔の厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際、結晶粒は、通常、複数の結晶と接する境界線を描く。これに対して、第二相粒子は、通常、境界線が単一の結晶となる。また、結晶粒と第二相粒子とは、位相が異なる為、SEM画像上で色が異なるという特徴を有している。さらに、アルミニウム合金箔の厚み方向の断面を光学顕微鏡で観察した場合には、結晶粒と第二相粒子との位相の相違に起因して、第二相粒子のみが黒く見えるので、観察が容易になる。
アルミニウム合金箔における平均結晶粒径としては、より成形性を高める観点からは、好ましくは20.0μm以下、より好ましくは1.0〜15.0μm程度、さらに好ましくは1.0〜10.0μm程度が挙げられる。アルミニウム合金箔における平均結晶粒径が、20.0μm以下であり、かつ、第二相粒子3bの前記径yが上記の値であることにより、後述の蓄電デバイス用外装材の成形性をより一層高めることができる。
本開示において、アルミニウム合金箔における平均結晶粒径は、アルミニウム合金箔の厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、視野内に位置する100個のアルミニウム合金の結晶粒3aについて、図16の模式図に示されるように、個々の結晶粒の厚み方向とは垂直方向の最左端と、厚み方向とは垂直方向の最右端とを結ぶ直線距離を最大径xとした際、100個の結晶粒の当該最大径xの平均値を意味する。なお、図16は模式図であるため、描画を省略し、結晶粒3aを100個描いてない。
アルミニウム合金箔の厚みは、蓄電デバイス用外装材において、少なくとも水分の浸入を抑止するバリア層としての機能を発揮すればよく、下限については約9μm以上、上限については約200μm以下が挙げられる。蓄電デバイス用外装材の厚みを薄くする観点から、アルミニウム合金箔の厚みは、例えば、上限については、好ましくは約85μm以下、より好ましくは約50μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、特に好ましくは約35μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは約10μm以上、さらに好ましくは約20μm以上、より好ましくは約25μm以上が挙げられ、当該厚みの好ましい範囲としては、10〜85μm程度、10〜50μm程度、10〜40μm程度、10〜35μm程度、20〜85μm程度、20〜50μm程度、20〜40μm程度、20〜35μm程度、25〜85μm程度、25〜50μm程度、25〜40μm程度、25〜35μm程度が挙げられる。
また、アルミニウム合金箔の溶解や腐食の防止などのために、アルミニウム合金箔の少なくとも片面に耐腐食性皮膜を備えていることが好ましい。アルミニウム合金箔は、耐腐食性皮膜を両面に備えていてもよい。ここで、耐腐食性皮膜とは、例えば、ベーマイト処理などの熱水変成処理、化成処理、陽極酸化処理、ニッケルやクロムなどのメッキ処理、コーティング剤を塗工する腐食防止処理をアルミニウム合金箔の表面に行い、アルミニウム合金箔に耐腐食性(例えば耐酸性、耐アルカリ性など)を備えさせる薄膜をいう。耐腐食性皮膜は、具体的には、アルミニウム合金箔の耐酸性を向上させる皮膜(耐酸性皮膜)、アルミニウム合金箔の耐アルカリ性を向上させる皮膜(耐アルカリ性皮膜)などを意味している。耐腐食性皮膜を形成する処理としては、1種類を行ってもよいし、2種類以上を組み合わせて行ってもよい。また、1層だけではなく多層化することもできる。さらに、これらの処理のうち、熱水変成処理及び陽極酸化処理は、処理剤によって金属箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れる金属化合物を形成させる処理である。なお、これらの処理は、化成処理の定義に包含される場合もある。また、アルミニウム合金箔が耐腐食性皮膜を備えている場合、耐腐食性皮膜を含めてアルミニウム合金箔とする。
耐腐食性皮膜は、蓄電デバイス用外装材の成形時において、アルミニウム合金箔と基材層との間のデラミネーション防止、電解質と水分とによる反応で生成するフッ化水素により、アルミニウム合金箔表面の溶解、腐食、アルミニウム合金箔表面に存在する酸化アルミニウムが溶解、腐食することを防止し、かつ、アルミニウム合金箔表面の接着性(濡れ性)を向上させ、ヒートシール時の基材層とアルミニウム合金箔とのデラミネーション防止、成形時の基材層とアルミニウム合金箔とのデラミネーション防止の効果を示す。
化成処理によって形成される耐腐食性皮膜としては、種々のものが知られており、主には、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物、及び希土類酸化物のうち少なくとも1種を含む耐腐食性皮膜などが挙げられる。リン酸塩、クロム酸塩を用いた化成処理としては、例えば、クロム酸クロメート処理、リン酸クロメート処理、リン酸−クロム酸塩処理、クロム酸塩処理などが挙げられ、これらの処理に用いるクロム化合物としては、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなどが挙げられる。また、これらの処理に用いるリン化合物としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などが挙げられる。また、クロメート処理としてはエッチングクロメート処理、電解クロメート処理、塗布型クロメート処理などが挙げられ、塗布型クロメート処理が好ましい。この塗布型クロメート処理は、バリア層(例えばアルミニウム合金箔)の少なくとも内層側の面を、まず、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法等の周知の処理方法で脱脂処理を行い、その後、脱脂処理面にリン酸Cr(クロム)塩、リン酸Ti(チタン)塩、リン酸Zr(ジルコニウム)塩、リン酸Zn(亜鉛)塩などのリン酸金属塩及びこれらの金属塩の混合体を主成分とする処理液、または、リン酸非金属塩及びこれらの非金属塩の混合体を主成分とする処理液、あるいは、これらと合成樹脂などとの混合物からなる処理液をロールコート法、グラビア印刷法、浸漬法等の周知の塗工法で塗工し、乾燥する処理である。処理液は例えば、水、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤など各種溶媒を用いることができ、水が好ましい。また、このとき用いる樹脂成分としては、フェノール系樹脂やアクリル系樹脂などの高分子などが挙げられ、下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理などが挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。アクリル系樹脂は、ポリアクリル酸、アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸マレイン酸共重合体、アクリル酸スチレン共重合体、またはこれらのナトリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等の誘導体であることが好ましい。特にポリアクリル酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩、又はアミン塩等のポリアクリル酸の誘導体が好ましい。本開示において、ポリアクリル酸とは、アクリル酸の重合体を意味している。また、アクリル系樹脂は、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体であることも好ましく、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体のアンモニウム塩、ナトリウム塩、又はアミン塩であることも好ましい。アクリル系樹脂は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
Figure 2020085189
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Figure 2020085189
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一般式(1)〜(4)中、Xは、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基またはベンジル基を示す。また、R1及びR2は、それぞれ同一または異なって、ヒドロキシ基、アルキル基、またはヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)〜(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1及びR2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基が1個置換された炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)〜(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。一般式(1)〜(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシ基またはヒドロキシアルキル基であることが好ましい。一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、500〜100万程度であることが好ましく、1000〜2万程度であることがより好ましい。アミノ化フェノール重合体は、例えば、フェノール化合物又はナフトール化合物とホルムアルデヒドとを重縮合して上記一般式(I)又は一般式(III)で表される繰返し単位からなる重合体を製造し、次いでホルムアルデヒド及びアミン(R12NH)を用いて官能基(−CH2NR12)を上記で得られた重合体に導入することにより、製造される。アミノ化フェノール重合体は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
耐腐食性皮膜の他の例としては、希土類元素酸化物ゾル、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するコーティング剤を塗工するコーティングタイプの腐食防止処理によって形成される薄膜が挙げられる。コーティング剤には、さらにリン酸またはリン酸塩、ポリマーを架橋させる架橋剤を含んでもよい。希土類元素酸化物ゾルには、液体分散媒中に希土類元素酸化物の微粒子(例えば、平均粒径100nm以下の粒子)が分散されている。希土類元素酸化物としては、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ネオジウム、酸化ランタン等が挙げられ、密着性をより向上させる観点から酸化セリウムが好ましい。耐腐食性皮膜に含まれる希土類元素酸化物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。希土類元素酸化物ゾルの液体分散媒としては、例えば、水、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤など各種溶媒を用いることができ、水が好ましい。カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフト重合させた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノ化フェノールなどが好ましい。また、アニオン性ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸またはその塩、あるいは(メタ)アクリル酸またはその塩を主成分とする共重合体であることが好ましい。また、架橋剤が、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、オキサゾリン基のいずれかの官能基を有する化合物とシランカップリング剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、前記リン酸またはリン酸塩が、縮合リン酸または縮合リン酸塩であることが好ましい。
耐腐食性皮膜の一例としては、リン酸中に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズなどの金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをバリア層の表面に塗布し、150℃以上で焼付け処理を行うことにより形成したものが挙げられる。
耐腐食性皮膜は、必要に応じて、さらにカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの少なくとも一方を積層した積層構造としてもよい。カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマーとしては、上述したものが挙げられる。
なお、耐腐食性皮膜の組成の分析は、例えば、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて行うことができる。
化成処理においてアルミニウム合金箔の表面に形成させる耐腐食性皮膜の量については、特に制限されないが、例えば、塗布型クロメート処理を行う場合であれば、アルミニウム合金箔の表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で例えば0.5〜50mg程度、好ましくは1.0〜40mg程度、リン化合物がリン換算で例えば0.5〜50mg程度、好ましくは1.0〜40mg程度、及びアミノ化フェノール重合体が例えば1.0〜200mg程度、好ましくは5.0〜150mg程度の割合で含有されていることが望ましい。
耐腐食性皮膜の厚みとしては、特に制限されないが、皮膜の凝集力や、バリア層や熱融着性樹脂層との密着力の観点から、好ましくは1nm〜20μm程度、より好ましくは1nm〜100nm程度、さらに好ましくは1nm〜50nm程度が挙げられる。なお、耐腐食性皮膜の厚みは、透過電子顕微鏡による観察、または、透過電子顕微鏡による観察と、エネルギー分散型X線分光法もしくは電子線エネルギー損失分光法との組み合わせによって測定することができる。飛行時間型2次イオン質量分析法を用いた耐腐食性皮膜の組成の分析により、例えば、CeとPとOからなる2次イオン(例えば、Ce2PO4 +、CePO4 -などの少なくとも1種)や、例えば、CrとPとOからなる2次イオン(例えば、CrPO2 +、CrPO4 -などの少なくとも1種)に由来するピークが検出される。
化成処理は、耐腐食性皮膜の形成に使用される化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などによって、アルミニウム合金箔の表面に塗布した後に、アルミニウム合金箔の温度が70〜200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、アルミニウム合金箔に化成処理を施す前に、予めアルミニウム合金箔を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法などによる脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、アルミニウム合金箔の表面の化成処理をより効率的に行うことが可能となる。また、脱脂処理にフッ素含有化合物を無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることで、金属箔の脱脂効果だけでなく不動態である金属のフッ化物を形成させることが可能であり、このような場合には脱脂処理だけを行ってもよい。
2.蓄電デバイス用外装材
本開示の蓄電デバイス用外装材10は、例えば図1から図4に示すように、少なくとも、基材層1、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4をこの順に備える積層体から構成されている。蓄電デバイス用外装材10において、基材層1が最外層側になり、熱融着性樹脂層4は最内層になる。蓄電デバイス用外装材10と蓄電デバイス素子を用いて蓄電デバイスを組み立てる際に、蓄電デバイス用外装材10の熱融着性樹脂層4同士を対向させた状態で、周縁部を熱融着させることによって形成された空間に、蓄電デバイス素子が収容される。
本開示の蓄電デバイス用外装材のバリア層3は、本開示のアルミニウム合金箔を含んでいる。すなわち、本開示の蓄電デバイス用外装材のバリア層3は、本開示のアルミニウム合金箔により構成することができる。本開示のアルミニウム合金箔を用いた本開示の蓄電デバイス用外装材は、アルミニウム合金箔の腐食が効果的に抑制される。
蓄電デバイス用外装材10は、例えば図2から図4に示すように、基材層1とバリア層3との間に、これらの層間の接着性を高めることなどを目的として、必要に応じて接着剤層2を有していてもよい。また、例えば図3及び図4に示すように、バリア層3と熱融着性樹脂層4との間に、これらの層間の接着性を高めることなどを目的として、必要に応じて接着層5を有していてもよい。また、図4に示すように、基材層1の外側(熱融着性樹脂層4側とは反対側)には、必要に応じて表面被覆層6などが設けられていてもよい。
蓄電デバイス用外装材10を構成する積層体の厚みとしては、特に制限されないが、上限については、コスト削減、エネルギー密度向上等の観点からは、例えば300μm以下、好ましくは約180μm以下、約155μm以下、約120μm以下が挙げられ、下限については、蓄電デバイス素子を保護するという蓄電デバイス用外装材の機能を維持する観点からは、好ましくは約35μm以上、約45μm以上、約60μm以上が挙げられ、好ましい範囲については、例えば、35〜180μm程度、35〜155μm程度、35〜120μm程度、45〜180μm程度、45〜155μm程度、45〜120μm程度、60〜180μm程度、60〜155μm程度、60〜120μm程度が挙げられる。
なお、蓄電デバイス用外装材において、後述のバリア層3については、通常、その製造過程におけるMD(Machine Direction)とTD(Transverse Direction)を判別することができる。例えば、バリア層3がアルミニウム合金箔により構成されている場合、アルミニウム合金箔の圧延方向(RD:Rolling Direction)には、アルミニウム合金箔の表面に、いわゆる圧延痕と呼ばれる線状の筋が形成されている。圧延痕は、圧延方向に沿って伸びているため、アルミニウム合金箔の表面を観察することによって、アルミニウム合金箔の圧延方向を把握することができる。また、積層体の製造過程においては、通常、積層体のMDと、アルミニウム合金箔のRDとが一致するため、積層体のアルミニウム合金箔の表面を観察し、アルミニウム合金箔の圧延方向(RD)を特定することにより、積層体のMDを特定することができる。また、積層体のTDは、積層体のMDとは垂直方向であるため、積層体のTDについても特定することができる。
本開示の蓄電デバイス用外装材10においては、熱融着性樹脂層4同士を対向させた状態で、幅7mmの金属板を用いて、試験サンプルの両側から積層方向に、温度190℃、面圧2.0MPa、時間3秒間の条件で加熱・加圧して、熱融着性樹脂層4同士を熱融着させ(図10,11参照)、次に、図12に示されるように、T字剥離となるようにして、引張試験機を用い、温度25℃の環境で、引張速度300mm/分、剥離角180°、チャック間距離50mmの条件で、引張強度測定開始から1.5秒間の間、当該熱融着した界面を剥離させて測定される引張強度(シール強度)の最大値が、110N/15mm以上であることが好ましく、120N/15mm以上であることがより好ましい。なお、当該引張強度の上限は、例えば、200N/15mm以下程度であり、好ましい範囲としては、110〜200N/15mm、120〜200N/15mmが挙げられる。なお、このような引張強度に設定するためには、例えば、熱融着性樹脂層を構成する樹脂の種類、組成、分子量などを調整する。
さらに、本開示の蓄電デバイス用外装材10においては、熱融着性樹脂層4同士を対向させた状態で、幅7mmの金属板を用いて、試験サンプルの両側から積層方向に、温度190℃、面圧2.0MPa、時間3秒間の条件で加熱・加圧して、熱融着性樹脂層4同士を熱融着させ(図10,11参照)、次に、図12に示されるように、T字剥離となるようにして、引張試験機を用い、温度140℃の環境で、引張速度300mm/分、剥離角180°、チャック間距離50mmの条件で、引張強度測定開始から1.5秒間の間、当該熱融着した界面を剥離させて測定される引張強度(シール強度)の最大値が、3.0N/15mm以上であることが好ましく、4.0N/15mm以上であることがより好ましい。なお、当該引張強度の上限は、例えば、5.0N/15mm以下程度であり、好ましい範囲としては、3.0〜5.0N/15mm、4.0〜5.0N/15mmが挙げられる。前記の通り、蓄電デバイス内部のセパレータの耐熱温度は、一般的に120〜140℃付近とされているため、本開示の蓄電デバイス用外装材において、140℃という高温環境での前記引張強度(シール強度)の最大値が上記の値を充足することが好ましい。なお、このような引張強度に設定するためには、例えば、熱融着性樹脂層を構成する樹脂の種類、組成、分子量などを調整する。
後述の実施例に示すように、各温度における上記引張試験は、恒温槽内で行い、所定の温度(25℃又は140℃)となった恒温槽内で、試験サンプルをチャックに取り付け、2分間保持してから測定を開始する。
電解液接触後のシール強度
また、本開示の蓄電デバイス用外装材10は、85℃の環境において、電解液(6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1の溶液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートを容積比1:1:1で混合して得られた溶液)である)に蓄電デバイス用外装材を72時間接触させた後、前記熱融着性樹脂層の表面に電解液が付着した状態で、熱融着性樹脂層同士を温度190℃、面圧2.0MPa、時間3秒間の条件で熱融着させ、当該熱融着させた界面を剥離する際のシール強度が、電解液に接触させなかった場合のシール強度の60%以上(シール強度の保持率が60%以上)であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、100%であることがさらに好ましい。
(シール強度の保持率の測定方法)
以下の方法により測定される電解液接触前のシール強度を基準(100%)として、電解液に接触させた後におけるシール強度の保持率(%)を算出する。
<電解液接触前のシール強度の測定>
下記の<電解液接触後のシール強度の測定>において、試験サンプルに電解液を注入しないこと以外は、同様にして引張強度(シール強度)を測定する。熱融着した部分が完全に剥離されるまでの最大引張強度を、電解液接触前のシール強度とする。
<電解液接触後のシール強度の測定>
図14の模式図に示すように、蓄電デバイス用外装材を、幅(x方向)100mm×長さ(z方向)200mmの長方形に裁断して試験サンプルとする(図14a)。試験サンプルを、z方向の中心で折り返して、熱融着性樹脂層側が重なるようにする(図14b)。次に、折り返した試験サンプルのx方向の両端をヒートシールにて封止(温度190℃、面圧2.0MPa、時間3秒間)し、開口部Eを1箇所備える袋状に成形する(図14c)。次に、袋状に成形された試験サンプルの開口部Eから電解液(6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1の溶液である溶液)を6g注入し(図14d)、開口部Eの端部をヒートシールにて封止(温度190℃、面圧2.0MPa、時間3秒間)する(図14e)。次に、袋状の試験サンプルの折り返した部分を下にして、温度85℃の環境で所定の保管時間(電解液に接触させる時間であり、72時間など)静置する。次に、試験サンプルの端部を切断して(図14e)、電解液を排出する。次に、熱融着性樹脂層の表面に電解液が付着した状態で、試験サンプルの上下面を金属板(7mm幅)で挟み、温度190℃、面圧1.0MPa、時間3秒間の条件で熱融着性樹脂層同士を熱融着させる(図14f)。次に、幅(x方向)15mmでのシール強度が測定できるように、試験サンプルを両刃型サンプルカッターで幅15mmに切りとる(図14f、g)。次に、T字剥離となるようにして、引張試験機を用い、温度25℃の環境で、引張速度300mm/分、剥離角180°、チャック間距離50mmの条件で熱融着した界面を剥離させて、引張強度(シール強度)を測定する(図12)。熱融着した部分が完全に剥離されるまでの最大引張強度を、電解液接触後のシール強度とする。
蓄電デバイス用外装材を形成する各層
[基材層1]
本開示において、基材層1は、蓄電デバイス用外装材の基材としての機能を発揮させることなどを目的として設けられる層である。基材層1は、蓄電デバイス用外装材の外層側に位置する。
基材層1を形成する素材については、基材としての機能、すなわち少なくとも絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されない。基材層1は、例えば樹脂を用いて形成することができ、樹脂には後述の添加剤が含まれていてもよい。
基材層1が樹脂により形成されている場合、基材層1は、例えば、樹脂により形成された樹脂フィルムであってもよいし、樹脂を塗布して形成したものであってもよい。樹脂フィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムとしては、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムが挙げられ、二軸延伸フィルムが好ましい。二軸延伸フィルムを形成する延伸方法としては、例えば、逐次二軸延伸法、インフレーション法、同時二軸延伸法等が挙げられる。樹脂を塗布する方法としては、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、押出コーティング法などがあげられる。
基材層1を形成する樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール樹脂などの樹脂や、これらの樹脂の変性物が挙げられる。また、基材層1を形成する樹脂は、これらの樹脂の共重合物であってもよいし、共重合物の変性物であってもよい。さらに、これらの樹脂の混合物であってもよい。
基材層1を形成する樹脂としては、これらの中でも、好ましくはポリエステル、ポリアミドが挙げられる。
ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等が挙げられる。また、共重合ポリエステルとしては、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル−ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、ポリアミドとしては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン66との共重合体等の脂肪族ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸−テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)等の芳香族を含むポリアミド;ポリアミドPACM6(ポリビス(4‐アミノシクロヘキシル)メタンアジパミド)等の脂環式ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート等のイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体等のポリアミドが挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
基材層1は、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、及びポリオレフィンフィルムのうち少なくとも1つを含むことが好ましく、延伸ポリエステルフィルム、及び延伸ポリアミドフィルム、及び延伸ポリオレフィンフィルムのうち少なくとも1つを含むことが好ましく、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルムのうち少なくとも1つを含むことがさらに好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムのうち少なくとも1つを含むことがさらに好ましい。
基材層1は、単層であってもよいし、2層以上により構成されていてもよい。基材層1が2層以上により構成されている場合、基材層1は、樹脂フィルムを接着剤などで積層させた積層体であってもよいし、樹脂を共押出しして2層以上とした樹脂フィルムの積層体であってもよい。また、樹脂を共押出しして2層以上とした樹脂フィルムの積層体を、未延伸のまま基材層1としてもよいし、一軸延伸または二軸延伸して基材層1としてもよい。
基材層1において、2層以上の樹脂フィルムの積層体の具体例としては、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとの積層体、2層以上のナイロンフィルムの積層体、2層以上のポリエステルフィルムの積層体などが挙げられ、好ましくは、延伸ナイロンフィルムと延伸ポリエステルフィルムとの積層体、2層以上の延伸ナイロンフィルムの積層体、2層以上の延伸ポリエステルフィルムの積層体が好ましい。例えば、基材層1が2層の樹脂フィルムの積層体である場合、ポリエステル樹脂フィルムとポリエステル樹脂フィルムの積層体、ポリアミド樹脂フィルムとポリアミド樹脂フィルムの積層体、またはポリエステル樹脂フィルムとポリアミド樹脂フィルムの積層体が好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムとポリエチレンテレフタレートフィルムの積層体、ナイロンフィルムとナイロンフィルムの積層体、またはポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの積層体がより好ましい。また、ポリエステル樹脂は、例えば電解液が表面に付着した際に変色し難いことなどから、基材層1が2層以上の樹脂フィルムの積層体である場合、ポリエステル樹脂フィルムが基材層1の最外層に位置することが好ましい。
基材層1が、2層以上の樹脂フィルムの積層体である場合、2層以上の樹脂フィルムは、接着剤を介して積層させてもよい。好ましい接着剤については、後述の接着剤層2で例示する接着剤と同様のものが挙げられる。なお、2層以上の樹脂フィルムを積層させる方法としては、特に制限されず、公知方法が採用でき、例えばドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、押出ラミネート法、サーマルラミネート法などが挙げられ、好ましくはドライラミネート法が挙げられる。ドライラミネート法により積層させる場合には、接着剤としてポリウレタン接着剤を用いることが好ましい。このとき、接着剤の厚みとしては、例えば2〜5μm程度が挙げられる。また、樹脂フィルムにアンカーコート層を形成し積層させても良い。アンカーコート層は、後述の接着剤層2で例示する接着剤と同様のものがあげられる。このとき、アンカーコート層の厚みとしては、例えば0.01〜1.0μm程度が挙げられる。
また、基材層1の表面及び内部の少なくとも一方には、滑剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、耐電防止剤等の添加剤が存在していてもよい。添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
本開示において、蓄電デバイス用外装材の成形性を高める観点からは、基材層1の表面には、滑剤が存在していることが好ましい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤の具体例としては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、脂肪酸エステルアミド、芳香族ビスアミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族ビスアミドの具体例としては、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
基材層1の表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、好ましくは約3mg/m2以上、より好ましくは4〜15mg/m2程度、さらに好ましくは5〜14mg/m2程度が挙げられる。
基材層1の表面に存在する滑剤は、基材層1を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、基材層1の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
基材層1の厚みについては、基材としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、3〜50μm程度、好ましくは10〜35μm程度が挙げられる。基材層1が、2層以上の樹脂フィルムの積層体である場合、各層を構成している樹脂フィルムの厚みとしては、それぞれ、好ましくは2〜25μm程度が挙げられる。
[接着剤層2]
本開示の蓄電デバイス用外装材において、接着剤層2は、基材層1とバリア層3との接着性を高めることを目的として、必要に応じて、これらの間に設けられる層である。
接着剤層2は、基材層1とバリア層3とを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層2の形成に使用される接着剤は限定されないが、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。また、2液硬化型接着剤(2液性接着剤)であってもよく、1液硬化型接着剤(1液性接着剤)であってもよく、硬化反応を伴わない樹脂でもよい。また、接着剤層2は単層であってもよいし、多層であってもよい。
接着剤に含まれる接着成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等のポリエステル;ポリエーテル;ポリウレタン;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド;ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリ酢酸ビニル;セルロース;(メタ)アクリル樹脂;ポリイミド;ポリカーボネート;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの接着成分の中でも、好ましくはポリウレタン接着剤が挙げられる。また、これらの接着成分となる樹脂は適切な硬化剤を併用して接着強度を高めることができる。前記硬化剤は、接着成分の持つ官能基に応じて、ポリイソシアネート、多官能エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有ポリマー、ポリアミン樹脂、酸無水物などから適切なものを選択する。
ポリウレタン接着剤としては、例えば、ポリオール化合物を含有する主剤と、イソシアネート化合物を含有する硬化剤とを含むポリウレタン接着剤が挙げられる。好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオール等のポリオールを主剤として、芳香族系又は脂肪族系のポリイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタン接着剤が挙げられる。また、ポリオール化合物としては、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオールを用いることが好ましい。接着剤層2がポリウレタン接着剤により形成されていることで蓄電デバイス用外装材に優れた電解液耐性が付与され、側面に電解液が付着しても基材層1が剥がれることが抑制される。
また、接着剤層2は、接着性を阻害しない限り他成分の添加が許容され、着色剤や熱可塑性エラストマー、粘着付与剤、フィラーなどを含有してもよい。接着剤層2が着色剤を含んでいることにより、蓄電デバイス用外装材を着色することができる。着色剤としては、顔料、染料などの公知のものが使用できる。また、着色剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
顔料の種類は、接着剤層2の接着性を損なわない範囲であれば、特に限定されない。有機顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、ジオキサジン系、インジゴチオインジゴ系、ペリノン−ペリレン系、イソインドレニン系、ベンズイミダゾロン系等の顔料が挙げられ、無機顔料としては、カーボンブラック系、酸化チタン系、カドミウム系、鉛系、酸化クロム系、鉄系等の顔料が挙げられ、その他に、マイカ(雲母)の微粉末、魚鱗箔等が挙げられる。
着色剤の中でも、例えば蓄電デバイス用外装材の外観を黒色とするためには、カーボンブラックが好ましい。
顔料の平均粒子径としては、特に制限されず、例えば、0.05〜5μm程度、好ましくは0.08〜2μm程度が挙げられる。なお、顔料の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定されたメジアン径とする。
接着剤層2における顔料の含有量としては、蓄電デバイス用外装材が着色されれば特に制限されず、例えば5〜60質量%程度、好ましくは10〜40質量%が挙げられる。
接着剤層2の厚みは、基材層1とバリア層3とを接着できれば、特に制限されないが、下限については、例えば、約1μm以上、約2μm以上が挙げられ、上限については、約10μm以下、約5μm以下が挙げられ、好ましい範囲については、1〜10μm程度、1〜5μm程度、2〜10μm程度、2〜5μm程度が挙げられる。
[着色層]
着色層は、基材層1とバリア層3との間に必要に応じて設けられる層である(図示を省略する)。接着剤層2を有する場合には、基材層1と接着剤層2との間、接着剤層2とバリア層3との間に着色層を設けてもよい。また、基材層1の外側に着色層を設けてもよい。着色層を設けることにより、蓄電デバイス用外装材を着色することができる。
着色層は、例えば、着色剤を含むインキを基材層1の表面、接着剤層2の表面、またはバリア層3の表面に塗布することにより形成することができる。着色剤としては、顔料、染料などの公知のものが使用できる。また、着色剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
着色層に含まれる着色剤の具体例としては、[接着剤層2]の欄で例示したものと同じものが例示される。
[バリア層3]
蓄電デバイス用外装材において、バリア層3は、少なくとも水分の浸入を抑止する層である。
本開示の蓄電デバイス用外装材のバリア層3は、本開示のアルミニウム合金箔を含んでいる。すなわち、本開示の蓄電デバイス用外装材のバリア層3は、本開示のアルミニウム合金箔により構成することができる。本開示のアルミニウム合金箔の詳細は、「1.アルミニウム合金箔」の欄に記載の通りである。
[熱融着性樹脂層4]
本開示の蓄電デバイス用外装材において、熱融着性樹脂層4は、最内層に該当し、蓄電デバイスの組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱融着して蓄電デバイス素子を密封する機能を発揮する層(シーラント層)である。
熱融着性樹脂層4を構成している樹脂については、熱融着可能であることを限度として特に制限されないが、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン骨格を含む樹脂が好ましい。熱融着性樹脂層4を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能である。また、熱融着性樹脂層4を構成している樹脂を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出されることが好ましい。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。熱融着性樹脂層4が無水マレイン酸変性ポリオレフィンより構成された層である場合、赤外分光法にて測定すると、無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;プロピレン−αオレフィン共重合体;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレンが好ましい。共重合体である場合のポリオレフィン樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、ポリオレフィンは、環状ポリオレフィンであってもよい。環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。
酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンを酸成分でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。酸変性されるポリオレフィンとしては、前記のポリオレフィンや、前記のポリオレフィンにアクリル酸若しくはメタクリル酸等の極性分子を共重合させた共重合体、又は、架橋ポリオレフィン等の重合体等も使用できる。また、酸変性に使用される酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸またはその無水物が挙げられる。
酸変性ポリオレフィンは、酸変性環状ポリオレフィンであってもよい。酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、酸成分に代えて共重合することにより、または環状ポリオレフィンに対して酸成分をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、酸変性に使用される酸成分としては、前記のポリオレフィンの変性に使用される酸成分と同様である。
好ましい酸変性ポリオレフィンとしては、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリオレフィン、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
熱融着性樹脂層4は、1種の樹脂単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。さらに、熱融着性樹脂層4は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂によって2層以上で形成されていてもよい。
また、熱融着性樹脂層4は、必要に応じて滑剤などを含んでいてもよい。熱融着性樹脂層4が滑剤を含む場合、蓄電デバイス用外装材の成形性を高め得る。滑剤としては、特に制限されず、公知の滑剤を用いることができる。滑剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。滑剤の具体例としては、基材層1で例示したものが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
熱融着性樹脂層4の表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、電子包装用材料の成形性を高める観点からは、好ましくは10〜50mg/m2程度、さらに好ましくは15〜40mg/m2程度が挙げられる。
熱融着性樹脂層4の表面に存在する滑剤は、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、熱融着性樹脂層4の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
また、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、熱融着性樹脂層同士が熱融着して蓄電デバイス素子を密封する機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば約100μm以下、好ましくは約85μm以下、より好ましくは15〜85μm程度が挙げられる。なお、例えば、後述の接着層5の厚みが10μm以上である場合には、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、好ましくは約85μm以下、より好ましくは15〜45μm程度が挙げられ、例えば後述の接着層5の厚みが10μm未満である場合や接着層5が設けられていない場合には、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、好ましくは約20μm以上、より好ましくは35〜85μm程度が挙げられる。
高温環境で熱融着性樹脂層に電解液が接触し、熱融着性樹脂層に電解液が付着した状態で熱融着性樹脂層同士が熱融着された場合にも、熱融着によって、より一層高いシール強度を発揮する観点から、下記の方法により、温度差T1と温度差T2を測定した場合に、温度差T2を温度差T1で除して得られる値(比T2/T1)が、例えば0.55以上、さらには0.60以上であることがより好ましい。下記の温度差T1,T2の測定内容から理解されるとおり、当該比T2/T1が、上限値である1.0に近い程、熱融着性樹脂層が電解液に接触する前後における融解ピークの開始点(補外融解開始温度)と終了点(補外融解終了温度)の幅の変化が小さいことを意味している(図15の模式図を参照)。すなわち、T2の値は、通常、T1の値以下である。融解ピークの補外融解開始温度と補外融解終了温度の幅の変化が大きくなる要因としては、熱融着性樹脂層を構成している樹脂に含まれる低分子量の樹脂が、電解液に接触することにより電解液中に溶出し、電解液に接触した後の熱融着性樹脂層の融解ピークの補外融解開始温度と補外融解終了温度の幅が、電解液に接触する前に比して、小さくなることが挙げられる。融解ピークの補外融解開始温度と補外融解終了温度の幅の変化を小さくするための方法の一つとして、熱融着性樹脂層を構成している樹脂に含まれる低分子量の樹脂の割合を調整する方法が挙げられる。
(温度差T1の測定)
JIS K7121:2012の規定に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)を用いて、上記の各蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層に用いた樹脂について、DSC曲線を得る。得られたDSC曲線から、熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T1を測定する。
(温度差T2の測定)
温度85℃の環境で、熱融着性樹脂層に用いた樹脂を、6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1の溶液である電解液中で72時間静置した後、十分に乾燥させる。次に、JIS K7121:2012の規定に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)を用いて、乾燥後のポリプロピレンについて、DSC曲線を得る。次に、得られたDSC曲線から、乾燥後の熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T2を測定する。
融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度の測定にあたり、示差走査熱量分析計としては、市販品を用いることができる。また、DSC曲線としては、試験サンプルを−50℃で10分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温(1回目)し、200℃で10分間保持した後、降温速度−10℃/分で−50℃まで降温し、−50℃で10分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温(2回目)し、200℃で10分間保持し、2回目に200℃まで昇温する際のDSC曲線を用いる。また、温度差T1及び温度差T2を測定する際、それぞれのDSC曲線において、120〜160℃の範囲に現れる融解ピークのうち、熱エネルギーの入力の差が最大となる融解ピークについて解析を行う。ピークが重なって2個以上存在していた場合にも、熱エネルギーの入力の差が最大となる融解ピークについてのみ解析を行う。
また、補外融解開始温度は、融解ピーク温度の開始点を意味し、低温(65〜75℃)側のベースラインを高温側に延長した直線と、熱エネルギーの入力の差が最大となる融解ピークの低温側の曲線に、勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度とする。補外融解終了温度は、融解ピーク温度の終了点を意味し、高温(170℃)側のベースラインを低温側に延長した直線と、熱エネルギーの入力の差が最大となる融解ピークの高温側の曲線に、勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度とする。
本開示の蓄電デバイス用外装材において、高温環境で熱融着性樹脂層に電解液が接触し、熱融着性樹脂層に電解液が付着した状態で熱融着性樹脂層同士が熱融着された場合にも、熱融着によって、より一層高いシール強度を発揮する観点から、温度差T2を温度差T1で除して得られる値(比T2/T1)としては、例えば0.55以上、好ましくは0.60以上、より好ましくは0.70以上、さらに好ましくは0.75以上が挙げられ、好ましい範囲としては、0.55〜1.0程度、0.60〜1.0程度0.70〜1.0程度、0.75〜1.0程度が挙げられる。また、上限は、例えば1.0である。なお、このような比T2/T1に設定するためには、例えば、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂の種類、組成、分子量などを調整する。
また、高温環境で熱融着性樹脂層に電解液が接触し、熱融着性樹脂層に電解液が付着した状態で熱融着性樹脂層同士が熱融着された場合にも、熱融着によって、より一層高いシール強度を発揮する観点から、温度差T2と温度差T1の差の絶対値|T2−T1|としては、例えば約15℃以下、好ましくは約10℃以下、より好ましくは約8℃以下、さらに好ましくは約7.5℃以下が挙げられ、好ましい範囲としては、0〜15℃程度、0〜10℃程度、0〜8℃程度、0〜7.5℃程度、1〜15℃程度、1〜10℃程度、1〜8℃程度、1〜7.5℃程度、2〜15℃程度、2〜10℃程度、2〜8℃程度、2〜7.5℃程度、5〜15℃程度、5〜10℃程度、5〜8℃程度、5〜7.5℃程度が挙げられる。なお、当該差の絶対値|T2−T1|の下限値は、例えば、0℃、1℃、2℃、5℃などである。なお、当該差の絶対値|T2−T1|に設定するためには、例えば、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂の種類、組成、分子量などを調整する。
また、温度差T1としては、好ましくは29〜38℃程度、より好ましくは32〜36℃程度が挙げられる。温度差T2としては、好ましくは17〜30℃程度、より好ましくは26〜29℃程度が挙げられる。なお、このような温度差T1,T2に設定するためには、例えば、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂の種類、組成、分子量などを調整する。
[接着層5]
本開示の蓄電デバイス用外装材において、接着層5は、バリア層3(又は耐腐食性皮膜)と熱融着性樹脂層4を強固に接着させるために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
接着層5は、バリア層3と熱融着性樹脂層4とを接着可能である樹脂によって形成される。接着層5の形成に使用される樹脂としては、例えば接着剤層2で例示した接着剤と同様のものが使用できる。なお、接着層5の形成に使用される樹脂としては、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましく、前述の熱融着性樹脂層4で例示したポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンが挙げられる。接着層5を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。また、接着層5を構成している樹脂を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出されることが好ましい。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
バリア層3と熱融着性樹脂層4とを強固に接着する観点から、接着層5は、酸変性ポリオレフィンを含むことが好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリオレフィン、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。
さらに、蓄電デバイス用外装材の厚みを薄くしつつ、成形後の形状安定性に優れた蓄電デバイス用外装材とする観点からは、接着層5は、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、好ましくは、前記のものが例示できる。
また、接着層5は、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましく、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが特に好ましい。また、接着層5は、ポリウレタン、ポリエステル、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリウレタン及びエポキシ樹脂を含むことがより好ましい。ポリエステルとしては、例えばアミドエステル樹脂が好ましい。アミドエステル樹脂は、一般的にカルボキシル基とオキサゾリン基の反応で生成する。接着層5は、これらの樹脂のうち少なくとも1種と前記酸変性ポリオレフィンを含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。なお、接着層5に、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、エポキシ樹脂などの硬化剤の未反応物が残存している場合、未反応物の存在は、例えば、赤外分光法、ラマン分光法、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)などから選択される方法で確認することが可能である。
また、バリア層3と接着層5との密着性をより高める観点から、接着層5は、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC−O−C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。複素環を有する硬化剤としては、例えば、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C=N結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、イソシアネート基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C−O−C結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤、ポリウレタンなどが挙げられる。接着層5がこれらの硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることは、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)、赤外分光法(IR)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)、X線光電子分光法(XPS)などの方法で確認することができる。
イソシアネート基を有する化合物としては、特に制限されないが、バリア層3と接着層5との密着性を効果的に高める観点からは、好ましくは多官能イソシアネート化合物が挙げられる。多官能イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例としては、ペンタンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。また、アダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体などが挙げられる。
接着層5における、イソシアネート基を有する化合物の含有量としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層3と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
オキサゾリン基を有する化合物は、オキサゾリン骨格を備える化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン基を有する化合物の具体例としては、ポリスチレン主鎖を有するもの、アクリル主鎖を有するものなどが挙げられる。また、市販品としては、例えば、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
接着層5における、オキサゾリン基を有する化合物の割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層3と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
エポキシ基を有する化合物としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、分子内に存在するエポキシ基によって架橋構造を形成することが可能な樹脂であれば、特に制限されず、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは50〜2000程度、より好ましくは100〜1000程度、さらに好ましくは200〜800程度が挙げられる。なお、本開示において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
エポキシ樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル誘導体、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層5における、エポキシ樹脂の割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層3と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
ポリウレタンとしては、特に制限されず、公知のポリウレタンを使用することができる。接着層5は、例えば、2液硬化型ポリウレタンの硬化物であってもよい。
接着層5における、ポリウレタンの割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、電解液などのバリア層の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気における、バリア層3と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
なお、接着層5が、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、前記酸変性ポリオレフィンとを含む樹脂組成物の硬化物である場合、酸変性ポリオレフィンが主剤として機能し、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物は、それぞれ、硬化剤として機能する。
接着層5の厚さは、上限については、好ましくは、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約5μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは、約0.1μm以上、約0.5μm以上が挙げられ、当該厚さの範囲としては、好ましくは、0.1〜50μm程度、0.1〜40μm程度、0.1〜30μm程度、0.1〜20μm程度、0.1〜5μm程度、0.5〜50μm程度、0.5〜40μm程度、0.5〜30μm程度、0.5〜20μm程度、0.5〜5μm程度が挙げられる。より具体的には、接着剤層2で例示した接着剤や、酸変性ポリオレフィンと硬化剤との硬化物である場合は、好ましくは1〜10μm程度、より好ましくは1〜5μm程度が挙げられる。また、熱融着性樹脂層4で例示した樹脂を用いる場合であれば、好ましくは2〜50μm程度、より好ましくは10〜40μm程度が挙げられる。なお、接着層5が接着剤層2で例示した接着剤や、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である場合、例えば、当該樹脂組成物を塗布し、加熱等により硬化させることにより、接着層5を形成することができる。また、熱融着性樹脂層4で例示した樹脂を用いる場合、例えば、熱融着性樹脂層4と接着層5との押出成形により形成することができる。
本開示の蓄電デバイス用外装材において、接着層5は、剛体振り子測定における120℃での対数減衰率ΔEが例えば0.50以下、0.40以下、0.30以下、0.26以下、0.22以下、さらには0.20以下であることが好ましい。本開示においては、120℃における当該対数減衰率ΔEが例えば0.50以下、0.40以下、0.30以下、0.22以下、0.26以下、さらには0.20以下であることにより、蓄電デバイス用外装材によって蓄電デバイス素子を封止する際、熱融着性樹脂層同士を熱融着させた時の接着層の潰れが効果的に抑制され、高温環境における高いシール強度が発揮される。
剛体振り子測定における120℃での対数減衰率は、120℃という高温環境における樹脂の硬度を表す指標であり、対数減衰率が小さくなるほど樹脂の硬度が高いことを意味している。剛体振り子測定においては、樹脂の温度を低温から高温へ上昇させた時の振り子の減衰率を測定する。剛体振り子測定では、一般に、エッジ部を測定対象物の表面に接触させ、左右方向へ振り子運動させて、測定対象物に振動を付与する。本開示の蓄電デバイス用外装材においては、120℃という高温環境における対数減衰率が例えば0.50以下、0.40以下、0.30以下、0.26以下、0.22以下、さらには0.20以下という硬い接着層5をアルミニウム合金箔と熱融着性樹脂層4との間に配置していることにより、蓄電デバイス用外装材の熱融着時の接着層5の潰れ(薄肉化)が抑制され、さらに、高温環境において高いシール強度を発揮することができる。
なお、対数減衰率ΔEは、以下の式によって算出される。
ΔE=[ln(A1/A2)+ln(A2/A3)+・・・ln(An/An+1)]/n
A:振幅
n:波数
本開示の蓄電デバイス用外装材において、熱融着性樹脂層4同士を熱融着させた際の接着層5の潰れを効果的に抑制し、さらに、高温環境において高いシール強度を発揮する観点から、120℃における当該対数減衰率ΔEとしては、例えば0.10〜0.50程度、0.10〜0.40程度、0.10〜0.30程度、好ましくは0.10〜0.26程度、0.10〜0.22程度、好ましくは0.10〜0.20程度、より好ましくは0.10〜0.16程度が挙げられる。なお、当該対数減衰率ΔEに設定するためには、例えば、接着層5を構成する樹脂の種類、組成、分子量などを調整する。
対数減衰率ΔEの測定においては、市販の剛体振り子型物性試験器を用い、接着層5に押し当てるエッジ部として円筒型のシリンダエッジ、初期の振幅を0.3degree、30℃から200℃の温度範囲で昇温速度3℃/分の条件で接着層5に対して剛体振り子物性試験を行う。そして、120℃における対数減衰率に基づき、接着層5の発揮する潰れの抑制及び高温環境の熱融着によるシール強度の向上効果の基準を定めた。なお、対数減衰率ΔEを測定する接着層については、蓄電デバイス用外装材を15%塩酸に浸漬して、基材層及びアルミニウム合金箔を溶解させ、接着層と熱融着性樹脂層のみとなったサンプルを十分に乾燥させて測定対象とする。
また、蓄電デバイスから蓄電デバイス用外装材を取得して、接着層5の対数減衰率ΔEを測定することもできる。蓄電デバイスから蓄電デバイス用外装材を取得して、接着層5の対数減衰率ΔEを測定する場合、成形によって蓄電デバイス用外装材が引き伸ばされていない天面部からサンプルを切り出して測定対象とする。
また、本開示の蓄電デバイス用外装材においては、蓄電デバイス用外装材を構成している積層体の熱融着性樹脂層を対向させ、温度190℃、面圧0.5MPa、時間3秒間の条件で積層方向に加熱加圧した後において、接着層の厚さの残存割合が70%以上であることが好ましく、80%以上であることが好ましく、好ましい範囲としては70〜95%、80〜95%が挙げられる。なお、当該厚さの残存割合の上限は、例えば95%程度である。当該厚さの残存割合は、以下の方法により測定された値である。当該厚さの残存割合に設定するためには、例えば、接着層5を構成する樹脂の種類、組成、分子量などを調整する。
<接着層の厚さの残存割合の測定>
蓄電デバイス用外装材を長さ150mm×幅60mmに裁断して、試験サンプルを作製する。次に、試験サンプルの熱融着性樹脂層同士を対向させる。次に、その状態で、幅7mmの金属板を用いて、試験サンプルの両側から積層方向に、温度190℃、面圧0.5MPa、時間3秒間の条件で加熱・加圧して、熱融着性樹脂層同士を熱融着させる。次に、試験サンプルの熱融着させた部分を、ミクロトームを用いて積層方向に裁断して、露出した断面について、接着層の厚さを測定する。熱融着させる前の試験サンプルについても、同様にして、ミクロトームを用いて積層方向に裁断して、露出した断面について、接着層の厚さを測定する。熱融着前の接着層の厚さに対する、熱融着後の接着層の厚さの割合を算出して、接着層の厚さの残存割合(%)を測定する。なお、接着層の厚さは、蓄電デバイス用外装材の端部付近であって、厚さが一定になっている箇所について測定する。
また、蓄電デバイスから蓄電デバイス用外装材を取得して、接着層5の厚さの残存割合を測定することもできる。蓄電デバイスから蓄電デバイス用外装材を取得して、接着層5の厚さの残存割合を測定する場合、成形によって蓄電デバイス用外装材が引き伸ばされていない天面部からサンプルを切り出して測定対象とする。
接着層5の対数減衰率ΔEは、例えば、接着層5を構成している樹脂のメルトマスフローレート(MFR)、分子量、融点、軟化点、分子量分布、結晶化度などにより調整可能である。
[表面被覆層6]
本開示の蓄電デバイス用外装材は、意匠性、耐電解液性、耐傷性、成形性などの向上の少なくとも一つを目的として、必要に応じて、基材層1の上(基材層1のバリア層3とは反対側)に、表面被覆層6を備えていてもよい。表面被覆層6は、蓄電デバイス用外装材を用いて蓄電デバイスを組み立てた時に、蓄電デバイス用外装材の最外層側に位置する層である。
表面被覆層6は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂により形成することができる。
表面被覆層6を形成する樹脂が硬化型の樹脂である場合、当該樹脂は、1液硬化型及び2液硬化型のいずれであってもよいが、好ましくは2液硬化型である。2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ポリウレタン、2液硬化型ポリエステル、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも2液硬化型ポリウレタンが好ましい。
2液硬化型ポリウレタンとしては、例えば、ポリオール化合物を含有する主剤と、イソシアネート化合物を含有する硬化剤とを含むポリウレタンが挙げられる。好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオール等のポリオールを主剤として、芳香族系又は脂肪族系のポリイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタンが挙げられる。また、ポリオール化合物としては、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオールを用いることが好ましい。表面被覆層6がポリウレタンにより形成されていることで蓄電デバイス用外装材に優れた電解液耐性が付与される。
表面被覆層6は、表面被覆層6の表面及び内部の少なくとも一方には、該表面被覆層6やその表面に備えさせるべき機能性等に応じて、必要に応じて、前述した滑剤や、アンチブロッキング剤、艶消し剤、難燃剤、酸化防止剤、粘着付与剤、耐電防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、平均粒子径が0.5nm〜5μm程度の微粒子が挙げられる。添加剤の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定されたメジアン径とする。
添加剤は、無機物及び有機物のいずれであってもよい。また、添加剤の形状についても、特に制限されず、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、鱗片状などが挙げられる。
添加剤の具体例としては、タルク、シリカ、グラファイト、カオリン、モンモリロナイト、マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、高融点ナイロン、アクリレート樹脂、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケルなどが挙げられる。添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の中でも、分散安定性やコストなどの観点から、好ましくはシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、添加剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理などの各種表面処理を施してもよい。
表面被覆層6を形成する方法としては、特に制限されず、例えば、表面被覆層6を形成する樹脂を塗布する方法が挙げられる。表面被覆層6に添加剤を配合する場合には、添加剤を混合した樹脂を塗布すればよい。
表面被覆層6の厚みとしては、表面被覆層6としての上記の機能を発揮すれば特に制限されず、例えば0.5〜10μm程度、好ましくは1〜5μm程度が挙げられる。
3.蓄電デバイス用外装材の製造方法
蓄電デバイス用外装材の製造方法については、本開示の蓄電デバイス用外装材が備える各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されず、少なくとも、基材層1、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4がこの順となるように積層する工程を備える方法が挙げられる。前記の通り、バリア層3としては、本開示のアルミニウム合金箔を用いることができる。
本開示の蓄電デバイス用外装材の製造方法の一例としては、以下の通りである。まず、基材層1、接着剤層2、バリア層3が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層1上又は必要に応じて表面が化成処理されたバリア層3に接着剤層2の形成に使用される接着剤を、グラビアコート法、ロールコート法などの塗布方法で塗布、乾燥した後に、当該バリア層3又は基材層1を積層させて接着剤層2を硬化させるドライラミネート法によって行うことができる。
次いで、積層体Aのバリア層3上に、熱融着性樹脂層4を積層させる。バリア層3上に熱融着性樹脂層4を直接積層させる場合には、積層体Aのバリア層3上に、熱融着性樹脂層4をサーマルラミネート法、押出ラミネート法などの方法により積層すればよい。また、バリア層3と熱融着性樹脂層4の間に接着層5を設ける場合には、例えば、(1)積層体Aのバリア層3上に、接着層5及び熱融着性樹脂層4を押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネート法、タンデムラミネート法)、(2)別途、接着層5と熱融着性樹脂層4が積層した積層体を形成し、これを積層体Aのバリア層3上にサーマルラミネート法により積層する方法や、積層体Aのバリア層3上に接着層5が積層した積層体を形成し、これを熱融着性樹脂層4とサーマルラミネート法により積層する方法、(3)積層体Aのバリア層3と、予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4との間に、溶融させた接着層5を流し込みながら、接着層5を介して積層体Aと熱融着性樹脂層4を貼り合せる方法(サンドイッチラミネート法)、(4)積層体Aのバリア層3上に、接着層5を形成させるための接着剤を溶液コーティングし、乾燥させる方法や、さらには焼き付ける方法などにより積層させ、この接着層5上に予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4を積層する方法などが挙げられる。
表面被覆層6を設ける場合には、基材層1のバリア層3とは反対側の表面に、表面被覆層6を積層する。表面被覆層6は、例えば表面被覆層6を形成する上記の樹脂を基材層1の表面に塗布することにより形成することができる。なお、基材層1の表面にバリア層3を積層する工程と、基材層1の表面に表面被覆層6を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層1の表面に表面被覆層6を形成した後、基材層1の表面被覆層6とは反対側の表面にバリア層3を形成してもよい。
上記のようにして、必要に応じて設けられる表面被覆層6/基材層1/必要に応じて設けられる接着剤層2/バリア層3/必要に応じて設けられる接着層5/熱融着性樹脂層4をこの順に備える積層体が形成されるが、必要に応じて設けられる接着剤層2及び接着層5の接着性を強固にするために、さらに、加熱処理に供してもよい。
蓄電デバイス用外装材において、積層体を構成する各層には、必要に応じて、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施すことにより加工適性を向上させてもよい。例えば、基材層1のバリア層3とは反対側の表面にコロナ処理を施すことにより、基材層1表面へのインクの印刷適性を向上させることができる。
4.蓄電デバイス用外装材の用途
本開示の蓄電デバイス用外装材は、正極、負極、電解質等の蓄電デバイス素子を密封して収容するための包装体に使用される。すなわち、本開示の蓄電デバイス用外装材によって形成された包装体中に、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子を収容して、蓄電デバイスとすることができる。
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子を、本開示の蓄電デバイス用外装材で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、蓄電デバイス素子の周縁にフランジ部(熱融着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部の熱融着性樹脂層同士をヒートシールして密封させることによって、蓄電デバイス用外装材を使用した蓄電デバイスが提供される。なお、本開示の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に蓄電デバイス素子を収容する場合、本開示の蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂部分が内側(蓄電デバイス素子と接する面)になるようにして、包装体を形成する。
本開示の蓄電デバイス用外装材は、電池(コンデンサー、キャパシター等を含む)などの蓄電デバイスに好適に使用することができる。また、本開示の蓄電デバイス用外装材は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本開示の蓄電デバイス用外装材が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、全固体電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本開示の蓄電デバイス用外装材の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
以下に実施例及び比較例を示して本開示を詳細に説明する。但し本開示は実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
<アルミニウム合金箔の製造>
Mn0.10質量%、Mg2.20質量%、Fe0.40質量%、Cu0.10質量%、Si0.00質量%、Cr0.00質量%、Zn0.00質量%、Al残部からなるアルミニウム合金を用い、公知のアルミニウム合金の製法と同様、溶融、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延、最終焼鈍の各工程を経て、厚みが40μmのアルミニウム合金箔を得た。得られたアルミニウム合金箔は、表1の実施例1に記載の組成を有している。なお、アルミニウム合金箔の製造条件については、例えば特開2005−163077号公報の記載などを参考にすることができる。
<蓄電デバイス用外装材の製造>
基材層としてポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/接着剤層(2液硬化型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)、厚さ3μm)/二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm)が順に積層された積層フィルムを用意した。次に、基材層の二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm)の上に、両面に耐腐食性皮膜(耐酸性皮膜)を形成した前記のアルミニウム合金箔(表1の組成を有し、厚さ40μm)からなるバリア層をドライラミネート法により積層させた。具体的には、両面に耐腐食性皮膜(耐酸性皮膜(クロメート処理によって形成された皮膜であり、クロム量が30mg/m2))を形成したアルミニウム合金箔の一方面に、2液硬化型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)を塗布し、アルミニウム合金箔上に接着剤層(硬化後の厚み3μm)を形成した。次いで、アルミニウム合金箔上の接着剤層と二軸延伸ナイロンフィルムを積層した後、エージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/バリア層の積層体を作製した。次に、得られた積層体のバリア層の上に、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(厚さ40μm)と、熱融着性樹脂層としてのポリプロピレン(厚さ40μm)とを共押出しすることにより、バリア層上に接着層/熱融着性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層体をエージングし、加熱することにより、ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/接着剤層(3μm)/二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(40μm)/接着層(40μm)/熱融着性樹脂層(40μm)がこの順に積層された蓄電デバイス用外装材を得た。
実施例1及び実施例2において、接着層に用いた無水マレイン酸変性ポリプロピレンは、それぞれ、異なるものであり、表3に記載の120℃における対数減衰率ΔE(剛体振り子型物性試験器を用いて測定された値)を有していた。また、実施例1,2において、熱融着性樹脂層は、それぞれ、ポリプロピレン中の低分子量成分の量を調整することにより、後述の方法により測定される、熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の開始点(補外融解開始温度)と終了点(補外融解終了温度)との温度差T2を、温度差T1で除して得られる値(T2/T1)が調整されている。
蓄電デバイス用外装材の両面には、それぞれ、滑剤としてエルカ酸アミドを存在させて、滑剤層を形成した。以下の実施例及び比較例においても同じである。
[実施例2]
アルミニウム合金箔の組成をMn0.17質量%、Mg0.20質量%、Fe0.09質量%、Cu0.00質量%、Si0.00質量%、Cr0.00質量%、Zn0.00質量%、Al残部とした以外は、実施例1と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
[比較例1]
アルミニウム合金箔の組成をMn0.00質量%、Mg0.00質量%、Fe1.20質量%、Cu0.05質量%、Si0.00質量%、Cr0.00質量%、Zn0.00質量%、Al残部とした以外は、実施例1と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
[比較例2]
アルミニウム合金箔の組成をMn0.16質量%、Mg0.10質量%、Fe0.09質量%、Cu0.00質量%、Si0.00質量%、Cr0.00質量%、Zn0.00質量%、Al残部とした以外は、実施例1と同様にして、蓄電デバイス用外装材を得た。
Figure 2020085189
<耐腐食性の評価>
実施例1、実施例2及び比較例1、2で使用した蓄電デバイス用外装材を、長さ50mm×幅20mmの長方形に裁断した。次に、外装材の4つの端面のうち一方の短辺を除く3つの端面を幅10mmのポリエチレンフィルムを長方形内面5mmが重なるように各辺に熱溶着し取付け各端面を被覆した後、長さ方向下部から10mmの位置で折り返し、さらに幅方向中央で2つの長辺端面のポリエチレンフィルムが重なる方向に半分に折り返し、さらに3MPaの圧力でプレスし試験サンプルとした。なお、試験サンプルにおける耐腐食性の評価は、外装材の幅方向の折れ線及び長さ方向の折れ線で形成された十字部分で行い、試験サンプルの電解液に浸漬されない端部については、作用極に接続するためにアルミニウム合金箔を露出させた。次に、図9の模式図に示すように、試験サンプル外装材を作用極、金属リチウムLi(直径15mm×厚み0.35mm)を対極にセットし、電解液X(1mol/lのLiPF6と、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びジメチルカーボネート(容量比1:1:1)の混合液とからなる)に浸漬させた。この状態で、20℃の環境下、電圧0.1Vで24時間印加して、総電荷(C)を測定した。結果を表2に示す。さらに、得られた試験サンプルの露出部Mの外観をデジタルマイクロスコープで観察した(倍率200倍)。得られた画像をそれぞれ図5(実施例1)、図6(実施例2)、及び図7(比較例1)、図8(比較例2)に示す。
Figure 2020085189
実施例1及び実施例2のアルミニウム合金箔は、Mg含有量が2.20質量%及び0.20質量%であり、表2に示されるように、耐腐食性評価における総電荷が−6.6×103C及び−9.2×103Cと小さく、電解液が付着した状態で通電が生じた場合の腐食が効果的に抑制されていることが分かる。実施例1及び実施例2の耐腐食性評価後の外装材の折り曲げ交点表面についてのマイクロスコープ像(図5及び6)に腐食部分が非常に小さいことからも、実施例1及び実施例2の外装材は、電解液が付着した状態で通電が生じた場合の腐食が効果的に抑制されていることが分かる。一方、比較例1及び比較例2の外装材は、表2に示されるように、耐腐食性評価における総電荷が−2.1×104C及び−1.8×104Cと大きく、電解液が付着した状態で通電が生じた場合の腐食の抑制効果に劣ることが分かる。比較例1及び比較例2の耐腐食性評価後の外装材の折り曲げ交点表面についてのマイクロスコープ像(図7及び8)に腐食が観察されることからも、比較例1及び比較例2の外装材は、腐食の抑制効果に劣ることが分かる。
<接着層の対数減衰率ΔEの測定>
上記で得られた実施例1及び実施例2の蓄電デバイス用外装材を、幅(TD:Transverse Direction)15mm×長さ(MD:Machine Direction)150mmの長方形に裁断して試験サンプル(蓄電デバイス用外装材10)とした。なお、蓄電デバイス用外装材のMDが、アルミニウム合金箔の圧延方向(RD)に対応し、蓄電デバイス用外装材のTDが、アルミニウム合金箔のTDに対応しており、アルミニウム合金箔の圧延方向(RD)は圧延目により判別できる。アルミニウム合金箔の圧延目により蓄電デバイス用外装材のMDが特定できない場合は、次の方法により特定することができる。蓄電デバイス用外装材のMDの確認方法として、蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層の断面を電子顕微鏡で観察し海島構造を確認し、熱融着性樹脂層の厚み方向と垂直な方向の島の形状の径の平均が最大であった断面と平行な方向をMDと判断することができる。具体的には、熱融着性樹脂層の長さ方向の断面と、当該長さ方向の断面と平行な方向から10度ずつ角度を変更し、長さ方向の断面と垂直な方向までの各断面(合計10の断面)について、それぞれ、電子顕微鏡写真で観察して海島構造を確認する。次に、各断面において、それぞれ、個々の島の形状を観察する。個々の島の形状について、熱融着性樹脂層の厚み方向とは垂直方向の最左端と、当該垂直方向の最右端とを結ぶ直線距離を径yとする。各断面において、島の形状の当該径yが大きい順に上位20個の径yの平均を算出する。島の形状の当該径yの平均が最も大きかった断面と平行な方向をMDと判断する。剛体振り子測定による対数減衰率ΔEの測定方法を説明するための模式図を図13に示す。剛体振り子型物性試験器(型番:RPT−3000W 株式会社エー・アンド・デイ社製)を用い、振り子30のフレームにはFRB−100、エッジ部の円筒型シリンダエッジ30aにはRBP−060、冷熱ブロック31にはCHB−100、また、振動変位検出器32、錘33を使用し、初期の振幅を0.3degreeとした。冷熱ブロック31上に試験サンプルの測定面(接着層)を上方に向けて載置し、測定面上に振り子30付き円筒型シリンダエッジ30aの軸線方向が試験サンプルのMDの方向に直交するように設置した。また、測定中の試験サンプルの浮きや反りを防ぐために、試験サンプルの測定結果に影響のない箇所にテープを貼りつけて冷熱ブロック31上に固定した。円筒型シリンダエッジ30aを、接着層の表面に接触させた。次に、冷熱ブロック31を用いて昇温速度3℃/分にて30℃から200℃の温度範囲で接着層の対数減衰率ΔEの測定を行った。試験サンプル(蓄電デバイス用外装材10)の接着層の表面温度が120℃となった状態での対数減衰率ΔEを採用した。(一度測定した試験サンプルは使用せず、新たに裁断したものを用いて3回(N=3)測定した平均値を用いた。)接着層については、上記で得られた実施例1及び実施例2の蓄電デバイス用外装材を15%塩酸に浸漬して、基材層及びアルミニウム合金箔を溶解させ、接着層と熱融着性樹脂層のみとなった試験サンプルを十分に乾燥させて対数減衰率ΔEの測定を行った。120℃における対数減衰率ΔEをそれぞれ表3に示す。(なお、対数減衰率ΔEは、以下の式によって算出される。)
ΔE=[ln(A1/A2)+ln(A2/A3)+...+ln(An/An+1)]/n
A:振幅
n:波数
<接着層の厚さの残存割合の測定>
上記で得られた実施例1及び実施例2の蓄電デバイス用外装材を長さ150mm×幅60mmに裁断して、試験サンプル(蓄電デバイス用外装材10)を作製した。次に、同じ蓄電デバイス用外装材から作製した同じサイズの試験サンプルの熱融着性樹脂層同士を対向させた。次に、その状態で、幅7mmの金属板を用いて、試験サンプルの両側から積層方向に、温度190℃、表3に記載の面圧(0.5MPa)、時間3秒間の条件で加熱・加圧して、熱融着性樹脂層同士を熱融着させた。次に、試験サンプルの熱融着させた部分を、ミクロトームを用いて積層方向に裁断して、露出した断面について、接着層の厚さを測定した。熱融着させる前の試験サンプルについても、同様にして、ミクロトームを用いて積層方向に裁断して、露出した断面について、接着層の厚さを測定した。熱融着前の接着層の厚さに対する、熱融着後の接着層の厚さの割合を算出して、接着層の厚さの残存割合(%)をそれぞれ測定した。結果を表3に示す。
<25℃環境又は140℃環境でのシール強度の測定>
上記で得られた実施例1及び実施例2の蓄電デバイス用外装材を幅60mm×長さ150mmの長方形に裁断して試験サンプル(蓄電デバイス用外装材10)とした。次に、図10に示すように、試験サンプルを長さ方向の中心Pで折り返し、熱融着性樹脂層同士を対向させた。次に、幅7mmの金属板20を用いて、面圧1.0MPa、時間1秒間、190℃の条件で、試験サンプルの長さ方向に7mm(金属板の幅)、全幅方向(すなわち60mm)において、熱融着性樹脂層同士を熱融着させた。次に、両刃型サンプルカッターを用いて、図11に示すように、試験サンプルを幅15mmとなるように切りとった。図11において、熱融着された領域をSで示す。次に、図12に示されるように、T字剥離となるようにして、引張試験機を用い、温度25℃の環境又は温度140℃の環境で、引張速度300mm/分、剥離角180°、チャック間距離50mmの条件で、当該熱融着した界面を剥離させて、引張強度測定開始から1.5秒間の剥離強度(N/15mm)の最大値を、それぞれ、25℃環境でのシール強度、140℃環境でのシール強度とした。各温度における引張試験は、恒温槽内で行い、所定の温度となった恒温槽内で、試験サンプルをチャックに取り付け、2分間保持してから測定を開始した。なお、各シール強度は、それぞれ、同様にして3つの試験サンプルを作製して測定された平均値(n=3)である。結果を表3に示す。
Figure 2020085189
表3に示される結果から、実施例1及び実施例2の蓄電デバイス用外装材は、アルミニウム合金箔と、熱融着性樹脂層との間に位置している接着層の剛体振り子測定における120℃での対数減衰率ΔEが、0.50以下であり、熱融着性樹脂層同士を熱融着させた際の接着層の潰れが効果的に抑制され、高温環境において高いシール強度を発揮することが分かる。さらに、実施例1の蓄電デバイス用外装材は、当該対数減衰率ΔEが0.20以下であり、熱融着性樹脂層同士を熱融着させた際の接着層の潰れがより効果的に抑制され、高温環境においてより高いシール強度を発揮することが分かる。
<融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度の測定>
以下の方法により、上記の実施例1及び実施例2の蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層に用いたポリプロピレンについて、融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度を測定し、補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T1,T2を測定し、得られた温度差T1,T2の値から、これらの比(T2/T1)及び差の絶対値|T2−T1|を算出した。結果を表4に示す。
(温度差T1の測定)
JIS K7121:2012の規定に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)を用いて、上記の実施例1及び実施例2の蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層に用いたポリプロピレンについて、DSC曲線を得た。得られたDSC曲線から、熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T1を測定した。
(温度差T2の測定)
温度85℃の環境で、熱融着性樹脂層に用いたポリプロピレンを、6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1の溶液である電解液中で72時間静置した後、十分に乾燥させた。次に、JIS K7121:2012の規定に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)を用いて、乾燥後のポリプロピレンについて、DSC曲線を得た。次に、得られたDSC曲線から、乾燥後の熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T2を測定した。
融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度の測定にあたり、示差走査熱量分析計としては、TAインスツルメント社製Q200を用いた。また、DSC曲線としては、試験サンプルを−50℃で10分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温(1回目)し、200℃で10分間保持した後、降温速度−10℃分で−50℃まで降温し、−50℃で10分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温(2回目)し、200℃で10分間保持し、2回目に200℃まで昇温する際のDSC曲線を用いた。また、温度差T1及び温度差T2を測定する際、それぞれのDSC曲線において、120〜160℃の範囲に現れる融解ピークのうち、熱エネルギーの入力の差が最大となる融解ピークについて解析を行った。ピークが重なって2個以上存在していた場合にも、熱エネルギーの入力の差が最大となる融解ピークについてのみ解析を行った。
また、補外融解開始温度は、融解ピーク温度の開始点を意味し、低温(65〜75℃)側のベースラインを高温側に延長した直線と、熱エネルギーの入力の差が最大となる融解ピークの低温側の曲線に、勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度とした。補外融解終了温度は、融解ピーク温度の終了点を意味し、高温(170℃)側のベースラインを低温側に延長した直線と、熱エネルギーの入力の差が最大となる融解ピークの高温側の曲線に、勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度とした。
<電解液接触前のシール強度の測定>
下記の<電解液接触後のシール強度の測定>において、試験サンプルに電解液を注入しないこと以外は、同様にして引張強度(シール強度)を測定した。熱融着した部分が完全に剥離されるまでの最大引張強度を、電解液接触前のシール強度とする。なお、表5において、電解液接触前のシール強度を、85℃での電解液の接触時間が0hでのシール強度として記載している。
<電解液接触後のシール強度の測定>
図14の模式図に示すように、上記で得られた実施例1及び実施例2の蓄電デバイス用外装材を、幅(x方向)100mm×長さ(z方向)200mmの長方形に裁断して試験サンプル(蓄電デバイス用外装材10)とした(図14a)。試験サンプル(蓄電デバイス用外装材10)を、z方向の中心で折り返して、熱融着性樹脂層側が重なるようにした(図14b)。次に、折り返した試験サンプルのx方向の両端をヒートシールにて封止(温度190℃、面圧2.0MPa、時間3秒間)し、開口部Eを1箇所備える袋状に成形した(図14c)。次に、袋状に成形された試験サンプルの開口部Eから電解液(6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1である溶液)を6g注入し(図14d)、開口部Eの端部をヒートシールにて封止(温度190℃、面圧2.0MPa、時間3秒間)した(図14e)。次に、袋状の試験サンプルの折り返した部分を下にして、温度85℃の環境で所定の保管時間(電解液に接触させる時間であり、0時間、24時間、72時間)静置した。次に、試験サンプルの端部を切断して(図14e)、電解液を排出した。次に、熱融着性樹脂層の表面に電解液が付着した状態で、試験サンプルの上下面を金属板20(7mm幅)で挟み、温度190℃、面圧1.0MPa、時間3秒間の条件で熱融着性樹脂層同士を熱融着させた(図14f)。次に、幅(x方向)15mmでのシール強度が測定できるように、試験サンプルを両刃型サンプルカッターで幅15mmに切りとった(図14f、g)。次に、T字剥離となるようにして、引張試験機(島津製作所製、AGS−xplus(商品名))を用い、温度25℃の環境で、引張速度300mm/分、剥離角180°、チャック間距離50mmの条件で熱融着した界面を剥離させて、引張強度(シール強度)を測定した(図12)。熱融着した部分が完全に剥離されるまで(剥離されるまでの距離は、金属板の幅である7mm)の最大引張強度を、電解液接触後のシール強度とした。
電解液接触前のシール強度を基準(100%)として、電解液に接触させた後におけるシール強度の保持率(%)を表5に示した。
Figure 2020085189
Figure 2020085189
表4に示される結果から、実施例1及び実施例2の蓄電デバイス用外装材は、温度差T2を温度差T1で除して得られる値が、0.55以上であり、高温環境で熱融着性樹脂層に電解液が接触し、熱融着性樹脂層に電解液が付着した状態で熱融着性樹脂層同士が熱融着された場合にも、熱融着によって高いシール強度を発揮することが分かる。さらに、実施例1の蓄電デバイス用外装材は、温度差T2を温度差T1で除して得られる値が、0.60以上であり、高温環境で熱融着性樹脂層に電解液が接触し、熱融着性樹脂層に電解液が付着した状態で熱融着性樹脂層同士が熱融着された場合にも、熱融着によって、より高いシール強度を発揮することが分かる。
以上の通り、本開示は、以下の態様の発明を提供する。
項1. Mg含有量が0.20質量%以上5.50質量%以下である、蓄電デバイス用外装材に用いるためのアルミニウム合金箔。
項2. Si含有量が0.40質量%以下、Fe含有量が0.70質量%以下、Cu含有量が0.20質量%以下、Mn含有量が1.00質量%以下、Cr含有量が0.50質量%以下、Zn含有量が0.25質量%以下であり、その他の不可避不純物が、個々に0.05質量%以下かつ合計で0.15質量%以下であり、残部がAlである、項1に記載のアルミニウム合金箔。
項3. 厚みが200μm以下である、項1又は2に記載のアルミニウム合金箔。
項4. 少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記バリア層が、項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金箔を含む、蓄電デバイス用外装材。
項5. 下記の方法により、温度差T1と温度差T2を測定し、前記温度差T2を前記温度差T1で除して得られる値が、0.55以上である、項4に記載の蓄電デバイス用外装材。
(温度差T1の測定)
示差走査熱量測定により、前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T1を測定する。
(温度差T2の測定)
温度85℃の環境において、前記熱融着性樹脂層を、6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1の溶液である電解液中で72時間静置した後、乾燥させる。示差走査熱量測定により、乾燥後の前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T2を測定する。
項6. 前記アルミニウム合金箔と前記熱融着性樹脂層との間に、接着層を備えており、
前記接着層は、剛体振り子測定における120℃での対数減衰率ΔEが0.50以下である、項4又は5に記載の蓄電デバイス用外装材。
項7. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子が、項4〜6のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に収容されている、蓄電デバイス。
項8. 少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層がこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、
前記バリア層として、項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金箔を用いる、蓄電デバイス用外装材の製造方法。
1 基材層
2 接着剤層
3 バリア層
4 熱融着性樹脂層
5 接着層
6 表面被覆層
10 蓄電デバイス用外装材

Claims (8)

  1. Mg含有量が0.20質量%以上5.50質量%以下である、蓄電デバイス用外装材に用いるためのアルミニウム合金箔。
  2. Si含有量が0.40質量%以下、Fe含有量が0.70質量%以下、Cu含有量が0.20質量%以下、Mn含有量が1.00質量%以下、Cr含有量が0.50質量%以下、Zn含有量が0.25質量%以下であり、その他の不可避不純物が、個々に0.05質量%以下かつ合計で0.15質量%以下であり、残部がAlである、請求項1に記載のアルミニウム合金箔。
  3. 厚みが200μm以下である、請求項1又は2に記載のアルミニウム合金箔。
  4. 少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
    前記バリア層が、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金箔を含む、蓄電デバイス用外装材。
  5. 下記の方法により、温度差T1と温度差T2を測定し、前記温度差T2を前記温度差T1で除して得られる値が、0.55以上である、請求項4に記載の蓄電デバイス用外装材。
    (温度差T1の測定)
    示差走査熱量測定により、前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T1を測定する。
    (温度差T2の測定)
    温度85℃の環境において、前記熱融着性樹脂層を、6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1の溶液である電解液中で72時間静置した後、乾燥させる。示差走査熱量測定により、乾燥後の前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T2を測定する。
  6. 前記アルミニウム合金箔と前記熱融着性樹脂層との間に、接着層を備えており、
    前記接着層は、剛体振り子測定における120℃での対数減衰率ΔEが0.50以下である、請求項4又は5に記載の蓄電デバイス用外装材。
  7. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子が、請求項4〜6のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に収容されている、蓄電デバイス。
  8. 少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層がこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、
    前記バリア層として、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金箔を用いる、蓄電デバイス用外装材の製造方法。
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