JPWO2020075788A1 - トリコデルマ・リーセイの変異株およびタンパク質の製造方法 - Google Patents

トリコデルマ・リーセイの変異株およびタンパク質の製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損または低下する変異を有するトリコデルマ・リーセイの変異株であり、好ましくは、さらに配列番号6、7、9、10のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドから選ばれる1つ以上のポリペプチドに下記に示す変異を有する変異株に関し、当該変異株を用いて培養液中の培養液の粘度を低く保ちながらタンパク質、特にセルラーゼを生産することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、培養液の粘度を低く保つことができ、タンパク質の製造能が向上するトリコデルマ・リーセイの変異株および当該変異株を用いたタンパク質の製造方法に関する。
トリコデルマ・リーセイは、高いタンパク質製造能を有していることが知られており、トリコデルマ・リーセイを用いたタンパク質の製造の検討が行われてきた。トリコデルマ・リーセイは、セルロース、ラクトース、セロビオースなどを誘導物質として、タンパク質の中でも特に糖化酵素に分類されるセルラーゼを製造する。セルラーゼ製造量を強化するため、古くよりセルラーゼ製造を制御する因子の過剰発現、欠損をはじめとする遺伝子の改変、培養条件の最適化などの検討が多々行われている。
一方で、トリコデルマ属菌は生育やタンパク質の製造に酸素を必須とする好気性糸状菌に属している。また、トリコデルマ属菌は液体培地で培養すると、増殖に伴い培養液の粘度が高まるという特徴を有している。培養液の粘度が高まると、酸素や栄養素の分布が不均一になるため、トリコデルマ属菌を培養する際には、培養液を撹拌したり、酸素供給量を増加させたりして培養中の溶存酸素飽和度の低下を防ぎ、一定以上に維持する必要がある。また、培養槽が大型化すると、酸素移動容量係数が低くなるため、培養中の溶存酸素飽和度を一定以上に保つためには、さらに撹拌数や酸素供給量を増やす必要がある。しかしながら、撹拌数を増やすと、菌体に大きなせん断ダメージを与えてしまうという課題があり、酸素供給量を増やすためにはより大きなエネルギーが必要になるという課題もある。
特許文献1から6では、それぞれトリコデルマ属菌のSfb3、Mpg1、Gas1、Seb1、Crz1およびTps1のタンパク質の破壊または生成を減少させることにより、変異前の親株と比較して深部培養における好気性発酵時の溶存酸素量を低い撹拌数で維持することが可能になると開示されている。また、特許文献7には、トリコデルマ属菌のBXL1遺伝子を破壊すると、培養液の溶存酸素飽和度の低下を抑制することができると記載されている。
特表2013−533751号公報 特表2014−513529号公報 特表2014−513530号公報 特表2014−513531号公報 特表2014−513532号公報 特表2014−513533号公報 国際公開第2017/170917号
上記のとおり、トリコデルマ・リーセイを用いてタンパク質の製造をするにあたり、培養液中の溶存酸素濃度の低下を抑制し、一定以上に保つことは非常に重要である。本発明者らは、トリコデルマ・リーセイを用いた液体培養によるタンパク質の製造の際に、培養液の粘度を低く保つことができれば、培養スケールを大型化した場合でも、攪拌に必要なエネルギーを低減することができると共に、培養液中の溶存酸素飽和度の低下を抑制することもできると考えた。
そこで本発明では、培養液の粘度が低下するトリコデルマ・リーセイの変異株の取得および当該トリコデルマ・リーセイの変異株を用いたタンパク質の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、培養液の粘度を低く保つことが可能となるトリコデルマ・リーセイの遺伝子を特定するために鋭意検討した結果、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドに変異を有するトリコデルマ・リーセイの変異株、好ましくはさらに配列番号6、7、9、10のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドから選ばれる1つ以上のポリペプチドに変異を有する変異株を培養することにより、培養液の粘度を低く保つことができるようになり、さらに培養液中の溶存酸素飽和度の低下を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(14)で構成される。
(1)配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損または低下する変異を有する、トリコデルマ・リーセイの変異株。
(2)前記変異が、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのN末端側より1791番目のアスパラギン酸残基のアスパラギン酸以外のアミノ酸残基への変異である、(1)に記載の変異株。
(3)さらに配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損または低下する変異を有する、(1)または(2)に記載の変異株。
(4)前記変異が、配列番号6で表されるアミノ酸配列のN末端側から137番目で翻訳が終了するストップコドン変異である、(3)に記載の変異株。
(5)さらに配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損または低下する変異を有する、(1)〜(4)のいずれかに記載の変異株。
(6)前記変異が、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのLeucine−rich repeats、ribonuclease inhibitor−like subfamilyドメインが欠損する変異である、(5)に記載の変異株。
(7)前記変異が、配列番号7で表されるアミノ酸配列のN末端側から297番目のアスパラギン酸残基でのフレームシフト変異である、(5)または(6)に記載の変異株。
(8)さらに配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのGAL4−like Zn2Cys6 binuclear cluster DNA−bindingドメインとfungal transcription factor regulatory middle homology regionドメインの間に位置するアミノ酸配列に変異を有する、(1)〜(7)のいずれかに記載の変異株。
(9)前記変異が、配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおけるN末端側より184番目のセリン残基のセリン以外のアミノ酸残基への変異である、(8)に記載の変異株。
(10)さらに配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損または低下する変異を有する、(1)〜(9)のいずれかに記載の変異株。
(11)前記変異が、配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのFatty acid hydroxylase superfamilyドメインが欠損する変異である、(10)に記載の変異株。
(12)前記変異が、配列番号10で表されるアミノ酸配列のN末端側から257番目のイソロイシン残基でのフレームシフト変異である、(10)または(11)に記載の変異株。
(13)(1)から(12)のいずれかに記載の変異株を培養する工程を含む、タンパク質の製造方法。
(14)(1)から(12)のいずれかに記載の変異株を培養する工程を含む、セルラーゼの製造方法。
本発明のトリコデルマ・リーセイの変異株は、変異導入前のトリコデルマ・リーセイ親株と比較して培養液の粘度を低く保つことが可能であり、培養液中の溶存酸素飽和度の低下も抑制することができる。さらに、タンパク質、特にセルラーゼの製造量も向上するという予想外の効果も得られる。
トリコデルマ・リーセイ QM9414−H株の培養液中の粘度(相対値)の経時的な推移 トリコデルマ・リーセイ QM9414−H株の培養液中の溶存酸素飽和度の経時的な推移 トリコデルマ・リーセイ QM9414−I株の培養液中の粘度(相対値)の経時的な推移 トリコデルマ・リーセイ QM9414−I株の培養液中の溶存酸素飽和度の経時的な推移 トリコデルマ・リーセイ QM9414−J株の培養液中の粘度(相対値)の経時的な推移 トリコデルマ・リーセイ QM9414−J株の培養液中の溶存酸素飽和度の経時的な推移
本発明は、もともとタンパク質の製造能に優れる微生物であるトリコデルマ・リーセイの親株に変異を導入することによって、培養液の粘度を低く保つことができることを特徴としている。本発明で用いるトリコデルマ・リーセイの親株は野生株に制限されず、タンパク質製造能が高まるように改良されたトリコデルマ・リーセイの変異株も親株として好ましく用いることができる。例えば、トリコデルマ・リーセイの変異株には、変異剤や紫外線照射などで変異処理を施し、タンパク質の製造性が向上した変異株を上記親株として利用することができる。上記親株として用いる変異株の具体例は、トリコデルマ・リーセイの先祖にあたるトリコデルマ・パラリーセイ(ATCC MYA−4777)、トリコデルマ・リーセイに由来する公知の変異株であるQM6a株(NBRC31326)、QM9123株(ATCC24449)、QM9414株(NBRC31329)、PC−3−7株(ATCC66589)、QM9123株(NBRC31327)、RutC−30株(ATCC56765)、CL−847株(Enzyme.Microbiol.Technol.10,341−346(1988))、MCG77株(Biotechnol.Bioeng.Symp.8, 89(1978))、MCG80株(Biotechnol.Bioeng.12,451−459(1982))及びこれらの派生株などが挙げられる。なお、QM6a株、QM9414株、QM9123株はNBRC(NITE Biological Resource Center)より、PC−3−7株、RutC−30株はATCC(American Type Culture Collection)より入手することができる。
本発明は、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損または低下する変異を有するトリコデルマ・リーセイの変異株であり、好ましくは、さらに配列番号6、7、9、10のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドから選ばれる1つ以上のポリペプチドに下記に示す変異を有する変異株である。これら変異株については、本明細書中では、本発明の変異株と記載する場合がある。また、前記変異導入前の株については、本明細書中では親株と記載する場合がある。そして本発明の変異株は、親株と比較して、培養液の粘度が低下し、培養液中の溶存酸素飽和度の低下も抑制される。これにより、通気撹拌に必要なエネルギーや、回転数を低減させることができる。また、撹拌の回転数を低く設定できるため、菌糸への剪断ダメージを低減させることもできる。特に、大きなスケールでの培養の際には、通気に必要なブロワや撹拌モーターの容量、撹拌エネルギーの削減につながるためさらに効果的である。
以下、本発明の変異株が有する各ポリペプチドの変異について、具体的に説明する。
配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、トリコデルマ・リーセイが有する全長4,373アミノ酸のポリペプチドであり、National Center for Biotechnology Informationでは、トリコデルマ・リーセイ QM6a株が持つDynein heavy chain(EGR51787)としても登録されている。Dyneinは、真核生物に見られるモータータンパク質の1種であり、ATPの加水分解により得られたエネルギーにより、マイクロチューブをはじめとする細胞骨格を構成する微小管上に沿って移動するタンパク質である。Dynein heavy chainは、Dyneinを構成する重鎖であり、ダイニンの主な骨格を形成し、ATPの加水分解により得られたエネルギーを運動に変換する機能を担うタンパク質である(D Eshel,Cytoplasmic dynein is required for normal nuclear segregation in yeast,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, Volume 90, 1993, Issue 23, P11172−11176)。配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子の具体例として、トリコデルマ・リーセイ QM6a株が有する配列番号3で表される塩基配列が挙げられる。
配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能を欠損または低下させる方法としては、Dynein heavy chainの全欠損、Dynein heavy chainの一部欠損させるような変異を導入する方法が挙げられ、具体的には配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子配列に対して、塩基の欠失、挿入、置換などによりフレームシフト変異やストップコドン変異を導入する方法が挙げられる。
Dynein heavy chainの欠損とは、そのポリペプチドが全て無くなる、一部が無くなる、全てが異なるアミノ酸に変わる、一部が異なるアミノ酸に変わる、またはそれらの組み合わせのことを指す。さらに具体的には配列番号8で表されるアミノ酸配列において、上記に示したDynein heavy chainのアミノ酸配列と配列同一性が80%以下になることを指し、好ましくは50%以下であり、さらに好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、さらに好ましくは1%以下であり、最も好ましくは0%である。
Dynein heavy chainを構成するアミノ酸配列に変異を有するとは、アミノ酸の欠失、置換、または付加のいずれであってもよい。好ましくは、配列番号8で表されるアミノ酸配列のN末端側から1,791番目のアスパラギン酸残基の、アスパラギン酸残基以外のアミノ酸残基への変異であり、変異後のアミノ酸残基は特に限定されないが、アスパラギンへ変異していることがより好ましい。配列番号8で表されるアミノ酸配列のN末端側から1,791番目のアスパラギン酸残基がアスパラギン酸以外のアミノ酸残基に変異したアミノ酸配列をコードする塩基配列の具体例としては、配列番号3で表される塩基配列のうち、5,541番目の塩基であるグアニンがアデニンへの変異した配列が挙げられる。当該変異により、配列番号8で表されるアミノ酸配列のN末端側から1,791番目のアミノ酸残基がアスパラギン酸からアスパラギンへ変異する。
また、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの発現を低下させる、または発現を消失させる変異を導入することによっても、当該ポリペプチドの機能を低下させてもよく、具体的には配列番号8で表されるアミノ酸配列をコードする遺伝子のプロモーターやターミネーター領域の変異によるポリペプチドの発現量の低下または消失によるものであってもよい。一般的に、プロモーターとターミネーター領域は転写に関与する遺伝子の前後数百塩基の領域に相当する。
配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが変異した変異株にて当該ポリペプチドの機能が低下または欠損しているかどうかは、当該変異株培養液の親株培養液に対する培養液粘度低下で確認することができる。
配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、トリコデルマ・リーセイが有する全長861アミノ酸のポリペプチドであり、National Center for Biotechnology Informationでは、トリコデルマ・リーセイ QM6a株が持つN−terminal binuclear Zn cluster−containing/DNA binding domain−containing protein(EGR44896)としても登録されている。N−terminal binuclear Zn cluster−containing/DNA binding domain−containing proteinは、転写因子であるGAL4に内在するDNAへ結合するZn2Cys6モチーフからなる2つのヘリックスからなるモチーフを持つことから、DNAへ結合するタンパク質であり、転写因子の機能を有すると推定される。配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子の具体例として、トリコデルマ・リーセイ配列番号1で表される塩基配列が挙げられる。
配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能を低下または欠損させる方法としては、N−terminal binuclear Zn cluster−containing/DNA binding domain−containing proteinの全欠損、N−terminal binuclear Zn cluster−containing/DNA binding domain−containing proteinの一部欠損させるような変異を導入する方法が挙げられ、具体的には配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子配列に対して、塩基の欠失、挿入、置換などによりフレームシフト変異やストップコドン変異を導入する方法が挙げられる。
N−terminal binuclear Zn cluster−containing/DNA binding domain−containing proteinの欠損とは、そのポリペプチドが全て無くなる、一部が無くなる、全てが異なるアミノ酸に変わる、一部が異なるアミノ酸に変わる、またはそれらの組み合わせのことを指す。さらに具体的には配列番号2で表されるアミノ酸配列において、上記に示したN−terminal binuclear Zn cluster−containing/DNA binding domain−containing proteinのアミノ酸配列と配列同一性が80%以下になることを指し、好ましくは50%以下であり、さらに好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、さらに好ましくは1%以下であり、最も好ましくは0%である。
National Center for Biotechnology InformationのCDD Search Resultsによれば、N末端側から272〜307番目のアミノ酸残基はGAL4−like Zn2Cys6 binuclear cluster DNA−bindingドメイン、N末端側から388〜805番目のアミノ酸残基はfungal transcription factor regulatory middle homology regionであると開示されており、これらのいずれかのドメイン内に位置するアミノ酸配列に欠失、置換、または付加などの変異がおこることによって、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損または低下させることができる。具体例としては、配列番号1で表される塩基配列において、411番目のグアニンがアデニンへ置換したことにより、ストップコドンが挿入される変異が挙げられ、当該変異により、配列番号6で表されるアミノ酸配列のN末端側から137番目で翻訳は終了し、N−terminal binuclear Zn cluster−containing/DNA binding domain−containing proteinの機能を担うGAL4−like Zn2Cys6 binuclear cluster DNA−bindingドメインおよびfungal transcription factor regulatory middle homology regionを構成するアミノ酸配列が消失することから、本来のタンパク質としての機能は消失する。
また、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの発現を低下させる、または発現を消失させる変異を導入することによっても当該ポリペプチドの機能を低下させてもよく、具体的には配列番号6で表されるアミノ酸配列をコードする遺伝子のプロモーターやターミネーター領域の変異によるポリペプチドの発現量の低下または消失によるものであってもよい。一般的に、プロモーターとターミネーター領域は、転写に関与する遺伝子の前後数百塩基の領域に相当する。
配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが変異した変異株にて当該ポリペプチドの機能が低下または欠損しているかどうかは、当該変異株培養液の親株培養液に対する培養液粘度低下で確認することができる。
配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、トリコデルマ・リーセイが有する全長1,138アミノ酸のポリペプチドであり、National Center for Biotechnology Informationでは、トリコデルマ・リーセイ QM6a株が持つpredicted protein(EGR45926)としても登録されている。配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは機能未知のポリペプチドであるが、National Center for Biotechnology InformationのConserved Domain Architecture Retrieval Toolによれば、N末端側から468〜721番目のアミノ酸残基はLeucine−rich repeats(LRRS)、ribonuclease inhibitor(RI)−like subfamilyドメインと開示されている。この記載により、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、リボヌクレアーゼと複合体を形成し、RNAの安定化などに関与すると推定される。配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子の具体例として、トリコデルマ・リーセイ QM6a株が有する配列番号2で表される塩基配列が挙げられる。
配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能を低下または欠損させる方法としては、Leucine−rich repeats、ribonuclease inhibitor−like subfamilyドメインの全欠損、Leucine−rich repeats、ribonuclease inhibitor−like subfamilyドメインの一部欠損をさせるような変異を導入する方法が挙げられ、具体的には配列番号7表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子配列に対して、塩基の欠失、挿入、置換などによりフレームシフト変異やストップコドン変異を導入する方法が挙げられる。
Leucine−rich repeats、ribonuclease inhibitor−like subfamilyドメインの欠損とは、そのドメインが全て無くなる、一部が無くなる、全てが異なるアミノ酸に変わる、一部が異なるアミノ酸に変わる、またはそれらの組み合わせことを指す。さらに具体的には、配列番号7で表されるアミノ酸配列において、上記に示したLeucine−rich repeats、ribonuclease inhibitor−like subfamilyドメインのアミノ酸配列と配列同一性が80%以下になることを指し、好ましくは50%以下であり、さらに好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、さらに好ましくは1%以下であり、最も好ましくは0%である。
配列番号7で表されるアミノ酸配列に欠失、置換、または付加などの変異がおこることによって、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損または低下する具体例としては、配列番号2で表される塩基配列において、988番目にアデニンが1塩基挿入したことによるフレームシフト変異が挙げられる。当該変異により、配列番号7で表されるアミノ酸配列のN末端側から297番目のアミノ酸がアスパラギン酸からアルギニンへ置換し、以降フレームシフトの結果、Leucine−rich repeats、ribonuclease inhibitor−like subfamilyドメインを構成するアミノ酸配列は消失し、それにより、本来のタンパク質としての機能は欠損または低下する。
また、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの発現を低下させる、または発現を消失させる変異を導入することによっても当該ポリペプチドの機能を低下または欠損させてもよく、具体的には配列番号7で表されるアミノ酸配列をコードする遺伝子のプロモーターやターミネーター領域の変異によるポリペプチドの発現量の低下または消失によるものであってもよい。一般的に、プロモーターとターミネーター領域は、転写に関与する遺伝子の前後数百塩基の領域に相当する。
配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが変異した変異株にて当該ポリペプチドの機能が低下または欠損しているかどうかは、当該変異株培養液の親株培養液に対する培養液粘度低下で確認することができる。
配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、トリコデルマ・リーセイが有する全長937アミノ酸のポリペプチドであり、National Center for Biotechnology Informationでは、トリコデルマ・リーセイ QM6a株が持つhypothetical protein(EGR48369)としても登録されている。配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、National Center for Biotechnology InformationのConserved Domain Architecture Retrieval Toolによれば、N末端側から76〜108番目のアミノ酸残基は、転写因子であるGAL4が持つDNAへ結合するZn2Cys6モチーフからなる2つのヘリックスからなるドメインと、N末端側から303〜681番目のアミノ酸残基は、fungal transcription factor regulatory middle homology regionドメインを有すると開示されている。この記載により、配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、少なくとも糸状菌の転写調節に関与していると推定される。配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子の具体例として、トリコデルマ・リーセイ QM6a株が有する配列番号4で表される塩基配列が挙げられる。
配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能を低下または欠損させる方法としては、GAL4−like Zn2Cys6 binuclear cluster DNA−bindingドメインおよび/またはfungal transcription factor regulatory middle homology regionドメインの全欠損、GAL4−like Zn2Cys6 binuclear cluster DNA−bindingドメインおよび/またはfungal transcription factor regulatory middle homology regionドメインの一部欠損、GAL4−like Zn2Cys6 binuclear cluster DNA−bindingドメインとfungal transcription factor regulatory middle homology regionドメインとの立体配置関係の変化、配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの全欠損させるような変異を導入する方法が挙げられる。
GAL4−like Zn2Cys6 binuclear cluster DNA−bindingドメインおよび/またはfungal transcription factor regulatory middle homology regionドメインの欠損とは、そのドメインが全て無くなる、一部がなくなる、全てが異なるアミノ酸に変わる、一部が異なるアミノ酸に変わる、またはそれらの組み合わせのことを指す。さらに具体的には、配列番号9で表されるアミノ酸配列において、上記に示したGAL4−like Zn2Cys6 binuclear cluster DNA−bindingドメインまたはfungal transcription factor regulatory middle homology regionドメインのアミノ酸配列と配列同一性が80%以下になることを指し、好ましくは50%以下であり、さらに好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、さらに好ましくは1%以下であり、最も好ましくは0%である。
GAL4−like Zn2Cys6 binuclear cluster DNA−bindingドメインとfungal transcription factor regulatory middle homology regionドメインとの立体配置関係の変化とは、GAL4−like Zn2Cys6 binuclear cluster DNA−bindingドメインとfungal transcription factor regulatory middle homology regionドメインとの間に位置するアミノ酸配列において、アミノ酸の欠失、置換、または付加が起こる変異によって行われる。GAL4−like Zn2Cys6 binuclear cluster DNA−bindingドメインやfungal transcription factor regulatory middle homology regionドメインは、タンパク質ドメインと呼ばれ、タンパク質ドメインはタンパク質の配列構造の一部を構成し、機能を持った存在である。ドメインが複数ある場合には、複数のドメインからなる立体構造がタンパク質の立体構造の一部を構成するため、ドメイン同士の立体配置が変化すると、タンパク質の立体構造が変化し、タンパク質の機能が低下する。
以上のように、ドメインのアミノ酸配列自体にアミノ酸の欠失、置換、または付加などの変異が起こらない場合でも、2つのドメインの間に位置するアミノ酸配列にアミノ酸の欠失、置換、または付加などの変異が起こることによって、タンパク質の機能が低下することが知られている。GAL4−like Zn2Cys6 binuclear cluster DNA−bindingドメインとfungal transcription factor regulatory middle homology regionドメインの間に位置するアミノ酸は、配列番号9に示すアミノ酸配列において、109〜302番目のアミノ酸配列の領域を指す。
GAL4−like Zn2Cys6 binuclear cluster DNA−bindingドメインとfungal transcription factor regulatory middle homology regionドメインの間に位置するアミノ酸配列に変異を有するとは、アミノ酸の欠失、置換または付加のいずれであってもよい。好ましくは、配列番号9で表されるアミノ酸配列のN末端側から184番目のセリン残基がセリン以外のアミノ酸残基に変異していることが好ましく、変異後ののアミノ酸残基は特に限定されないが、アスパラギンへ変異していることが好ましい。配列番号9で表されるアミノ酸配列のN末端側から184番目のセリン残基がセリン以外のアミノ酸残基に変異したアミノ酸配列をコードする塩基配列の具体例としては、配列番号4で表される塩基配列のうち、550番目の塩基であるアデニンがシトシンへの変異した配列が挙げられる。当該変異により、配列番号9で表されるアミノ酸配列のN末端側から184番目のアミノ酸残基がセリンからアルギニンへ変異する。
また、配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの発現を低下させる、または発現を消失させる変異を導入することによっても、当該ポリペプチドの機能を低下させてもよく、具体的には配列番号9で表されるアミノ酸配列をコードする遺伝子のプロモーターやターミネーター領域の変異によるポリペプチドの発現量の低下または消失によるものであってもよい。一般的に、プロモーターとターミネーター領域は転写に関与する遺伝子の前後数百塩基の領域に相当する。
配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが変異した変異株にて当該ポリペプチドの機能が欠損または低下しているかどうかは、当該変異株培養液の親株培養液に対する培養液粘度低下で確認することができる。
配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、トリコデルマ・リーセイが有する全長342アミノ酸のポリペプチドであり、National Center for Biotechnology Informationでは、トリコデルマ・リーセイ QM6a株が持つpredicted protein(EGR53142)としても登録されている。配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、National Center for Biotechnology InformationのConserved Domain Architecture Retrieval Toolによれば、N末端側から147〜264番目のアミノ酸残基はFatty acid hydroxylase superfamilyドメインを有すると開示されている。この記載により、配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、ゼアキサンチン合成などに関与するβ−carotene hydroxylase、C−5 sterol desaturase、C−4 sterol methyl oxidaseなどの機能を持つと推定される。配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子の具体例として、トリコデルマ・リーセイ QM6a株が有する配列番号5で表される塩基配列が挙げられる。
配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能を低下または欠損させる方法としては、Fatty acid hydroxylase superfamilyドメインの全欠損、Fatty acid hydroxylase superfamilyドメインの一部欠損、配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの全欠損させるような変異を導入する方法が挙げられ、具体的には、配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子配列に対して、塩基の欠失、挿入、置換などによりフレームシフト変異やストップコドン変異を導入する方法が挙げられる。
Fatty acid hydroxylase superfamilyドメインの欠損とは、そのドメインが全て無くなる、一部が無くなる、全てが異なるアミノ酸に変わる、一部が異なるアミノ酸に変わる、またはそれらの組み合わせのことを指す。さらに具体的には、配列番号10で表されるアミノ酸配列において、上記に示したF−boxドメインのアミノ酸配列と配列同一性が80%以下になることを指し、好ましくは50%以下であり、さらに好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、さらに好ましくは1%以下であり、最も好ましくは0%である。
Fatty acid hydroxylase superfamilyドメイン内に位置するアミノ酸配列に欠失、置換、または付加などの変異がおこることによって、配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損する具体例としては、配列番号5で表される塩基配列において、769番目にグアニンが1塩基挿入したことによるフレームシフト変異が挙げられる。当該変異により、配列番号10で表されるアミノ酸配列のN末端側から257番目のアミノ酸がイソロイシンからアスパラギン酸へ置換し、以降フレームシフトの結果、Fatty acid hydroxylase superfamilyドメインを構成するアミノ酸配列が短くなり、本来の機能は消失すると推測される。
その他、配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの発現量の低下させる、または発現を消失させる変異を導入することによっても当該ポリペプチドの機能を低下させてもよく、具体的には、配列番号10で表されるアミノ酸配列をコードする遺伝子のプロモーターやターミネーター領域の変異によるポリペプチドの発現量の低下または消失によるものであってもよい。一般的に、プロモーターとターミネーター領域は、転写に関与する遺伝子の前後数百塩基の領域に相当する。または欠損させることができる。
配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが変異した変異株にて当該ポリペプチドの機能が低下または欠損しているかどうかは、当該変異株培養液の親株培養液に対する培養液粘度低下で確認することができる。
上記遺伝子への変異導入は、当業者にとって公知の変異剤または紫外線照射などによる変異処理、選択マーカーを用いた相同組換えなどの遺伝子組換え、あるいはトランスポゾンによる変異など、既存の遺伝子変異方法を用いることができる。
本発明の変異株は、前述の通り配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損または低下する変異を有するトリコデルマ・リーセイの変異株であり、好ましくは、さらに配列番号6、7、9、10のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドから選ばれる1つ以上のポリペプチドに前述の変異を有する変異株であるが、これら変異の組み合わせとしては以下の組み合わせが挙げられる。
配列番号8および6で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが前記変異を有するトリコデルマ・リーセイの変異株。
配列番号8および7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが前記変異を有するトリコデルマ・リーセイの変異株。
配列番号8および9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが前記変異を有するトリコデルマ・リーセイの変異株。
配列番号8および10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが前記変異を有するトリコデルマ・リーセイの変異株。
配列番号8、6および7およびで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが前記変異を有するトリコデルマ・リーセイの変異株。
配列番号8、6および9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが前記変異を有するトリコデルマ・リーセイの変異株。
配列番号8、6および10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが前記変異を有するトリコデルマ・リーセイの変異株。
配列番号8、7および9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが前記変異を有するトリコデルマ・リーセイの変異株。
配列番号8、7および10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが前記変異を有するトリコデルマ・リーセイの変異株。
配列番号8、9および10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが前記変異を有するトリコデルマ・リーセイの変異株。
配列番号8、6、7および9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが前記変異を有するトリコデルマ・リーセイの変異株。
配列番号8、6、7および10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが前記変異を有するトリコデルマ・リーセイの変異株。
配列番号8、6、9および10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが前記変異を有するトリコデルマ・リーセイの変異株。
配列番号8、7、9および10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが前記変異を有するトリコデルマ・リーセイの変異株。
配列番号6〜10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの全てが前記変異を有するトリコデルマ・リーセイの変異株。
前述の組み合わせの変異株は、当業者にとって公知の変異剤または紫外線照射などによる変異処理、選択マーカーを用いた相同組換えなどの遺伝子組換え、あるいはトランスポゾンによる変異など、既存の遺伝子変異方法によって取得できるが、好ましくは、親株となるトリコデルマ・リーセイの胞子に対して、ニトロソグアニジン(NTG)、エチルメタンスルホン酸(EMS)、紫外線などを用いて遺伝子変異処理を行い、得られた変異株の遺伝子を解析して、上記の変異を有する変異株をスクリーニングすることで取得できる。
本発明の変異株は、当該変異導入前の親株と比較して、培養液の粘度が低下し、培養液中の溶存酸素飽和度の低下も抑制することができる。これにより、通期撹拌に必要なエネルギーや、回転数を低減させることができる。また、撹拌の回転数を低く設定できるため、菌糸への剪断ダメージを低減させることもできる。特に、大きなスケールでの培養の際には、通気に必要なブロワや撹拌モーターの容量、撹拌エネルギーの削減に繋がるため、更に効果的である。更には、本発明の変異株は、当該変異導入前と親株と比較して、タンパク質の製造能が向上するため、本発明の変異株の培養液は、同一の培養条件にて得られた当該変異導入前の親株の培養液と比較して、タンパク質濃度が増加する。また、タンパク質が酵素の場合には、酵素の比活性が増加する。ここで、タンパク質濃度の増加率や酵素の比活性の増加率は、増加していれば特に限定されないが、20%以上であることが好ましい。
本発明において、培養液の粘度は以下の条件で測定した値を用い、粘度の比較は以下の条件で測定した値のうち最大値同士を比較する。まず、評価対象とするトリコデルマ・リーセイの変異株と親株の胞子を前培養培地1mLあたり1.0×10胞子となるよう前培養培地(具体的な培地組成の一例は、実施例中の表1のとおり。)へ接種し、振盪培養機にて28℃、120rpmの条件にて菌体量が11g/L前後になるまで培養を行う。次に、100g/L(w/v)になるようArbocel B800(レッテンマイヤー社製)を添加した表2で示した本培養培地に対し、10%(v/v)になるよう前培養培地を接種させ、5Lジャーファーメンターを用い、深部培養を行う。培養液の粘度の測定は、デジタル回転粘度計を用いる。デジタル回転粘度計は、予め0点校正を行う。培養開始から、17、24、41、48、65、72、89、111時間後、または、培養開始から、24、48、71、89、113、137時間後の採取直後の培養液をそれぞれ指定の容器に16mL採取し、培養液にスピンドルを浸して0.3rpmの回転数にて回転させ、この時のスピンドルに働く粘性抵抗であるトルクを室温条件下にて測定することにより、培養液の粘度を測定する。粘度の単位は、センチポアズ(cP)とする。1ポアズは、流体内に1cmにつき1cm/秒の速度勾配があるとき、その速度勾配の方向に垂直な面において速度の方向1cmにつき1ダインの力の大きさの応力が生ずる粘度と定義される。デジタル回転粘度計には、DV2T(BROOKFIELD社)、スピンドルには、UL ADAPTOR(BROOKFIELD社)などを用いることができる。
本発明のトリコデルマ・リーセイの変異株は、当該変異導入前の親株を同様の条件で培養した場合と比較すると、培養液の粘度が低くなり、培養中の粘度の最大値が、好ましくは80%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは60%以上、最も好ましくは、50%以上低くなる。また、絶対値では、本発明の変異株の培養中の粘度の最大値が、親株と比べて、好ましくは100cP以上、より好ましくは200cP以上、より好ましくは400cP以上、より好ましくは500cP以上、さらに好ましくは600cP以上、さらに好ましくは700cP以上、さらに好ましくは800cP以上、さらに好ましくは900cP以上、特に好ましくは1,000cP以上低くなる。
培養液中の溶存酸素飽和度は、培養液中の酸素利用速度を測定することによって算出することができる。本発明における酸素利用速度(mM/L/hr)は、培養開始後24時間後の単位時間当たりの培養液1L当たりの酸素消費速度のことを指す。具体的な算出方法は、培養条件を一定に保って培養を行い、培養開始後24時間時点で酸素の供給を止め、溶存酸素(mg/L)の値(DO値)を10秒間ごとにプロットし、その曲線の中で対数的に減少している3点以上のプロットについて、その傾き(A)(単位;DO/sec)を求める。酸素利用速度の算出には式は以下に示す式1を用いる。
酸素利用速度(mM/L/hr)=(−A)×(1/32)×60×60・・・(式1)。
DO値の測定には市販のDO計を使用することができる。使用するDO計には特に制限はなく、DO値を正確に測定できるものであれば良い。例として、密閉型DO電極(エイブル株式会社製)や溶存酸素センサー(メトラー・トレド株式会社製)などが挙げられる。DO計は予め0点校正とスパン校正を行っておく。0点校正は亜硫酸ソーダ2%溶液を使用して行う。スパン校正は実際に培養する条件において菌体が存在しない状態で通気、攪拌を行い、溶存酸素が飽和になるまで待ち、その後計器の指示値が安定していることを確認し、その温度での飽和溶存酸素に合わせて校正を行う。また、培養槽を加圧してDO測定を行う際は、圧補正を行う必要がある。さらに、培養槽が大きい場合は静水圧補正を行う必要がある。補正を行う際には、以下に示す式2を用いて算出する。
D=DO(1+α+β)・・・(式2)
D:補正した飽和溶存酸素
DO:1気圧、純水中での飽和溶存酸素
α:ゲージ圧(kg/cm
β:静水圧(DO計取り付け位置の液深(m)/10)。
溶存酸素飽和度は、菌を含まない培地を用いてpHや温度を培養条件に設定し、空気を通気した際の溶存酸素の飽和状態を100%とした場合の、飽和溶存酸素に対する培養期間中の溶存酸素の割合を溶存酸素飽和度として算出する。溶存酸素(mg/L)は、水中に溶解している酸素の濃度を表す。飽和溶存酸素とは、実際に培養を行なう培養条件において、菌体が存在しない状態で通気、攪拌を行い、溶存酸素が一定になった状態での溶存酸素のことを指す。また、溶存酸素飽和度を算出する際は、培養期間中に通気条件など培養条件を変化させることはしないこととする。酸素要求性 が低下すると、溶存酸素飽和度は増加する。溶存酸素飽和度は以下の式3に従って算出する。
溶存酸素飽和度(%)=(培養中の溶存酸素)/(培養開始前の飽和溶存酸素)×100・・・(式3)。
溶存酸素飽和度を比較する場合には、最小値同士を比較する。
酸素利用速度や、溶存酸素飽和度を比較する場合には、培地、酸素供給量、撹拌速度、温度、培養容量、植菌量などの培養条件を揃えて測定した結果を用いる。測定の際の植菌量は本培養液に対し、10%(v/v)程度が好ましい。
本発明の変異株と、親株の溶存酸素を同様の条件で培養すると、変異株は、親株に比べて溶存酸素飽和度の最小値が高くなり、好ましくは5%以上、さらに好ましくは6%以上、さらに好ましくは7%以上、さらに好ましくは8%以上、さらに好ましくは9%以上、さらに好ましくは10%以上、さらに好ましくは11%以上、さらに好ましくは12%以上、さらに好ましくは13%以上、さらに好ましくは14%以上、特に好ましくは15%以上高くなる。
本発明の変異株は、当該変異導入前の親株と比較して、増殖能が低下しないことが好ましい。増殖能の差は菌体量を測定することで比較することができる。菌体量は、乾燥菌体重量として測定する。培養液10mLを定性ろ紙(グレード4、GEヘルスケア社)を用いて吸引ろ過し、残渣をろ紙ごと一緒に100℃にて乾燥させる。そして、重量を測定し、ろ過前後のろ紙の重量差を乾燥菌体重量とする。
本発明の変異株は、前述の変異以外にも、タンパク質製造量の向上および/または培養液の粘度が低下し培養液中の溶存酸素飽和度の低下が抑制される変異を有していてもよい。具体的には、配列番号11、13、15、17、19、22、24のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの変異が挙げられる。
配列番号11で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、トリコデルマ・リーセイが有するポリペプチドであり、National Center for Biotechnology Informationでは、トリコデルマ・リーセイ QM6a株が持つpredicted proteinのEGR50654として登録されている。配列番号11で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは機能未知のポリペプチドであるが、National Center for Biotechnology InformationのCenserved Domain Architecture Retrieval Toolによれば、N末端側から95〜277番目のアミノ酸残基はMiddle domain of eukaryotic initiation factor 4Gドメイン(以降MIF4Gドメインと記載する。)、N末端側から380番目〜485番目のアミノ酸残基はMA−3ドメインを有すると開示されている。MIF4GおよびMA−3の両ドメインは、DNAまたはRNAに結合する機能を有することが知られている(Biochem.44,12265−12272(2005)、Mol.Cell.Biol.1,147−156(2007))。これらの記載により配列番号11で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、少なくともDNAおよび/またはRNAに結合する機能を有すると推定される。
配列番号11で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子の具体例として、配列番号12で表される塩基配列が挙げられる。EGR50654の機能が低下または欠損する遺伝子変異とは、EGR50654が有するMIF4Gドメインおよび/またはMA−3ドメインの全欠損、MIF4Gドメインおよび/またはMA−3ドメインの一部欠損、MIF4GドメインとMA−3ドメインとの立体配置関係の変化する遺伝子変異が挙げられる。さらに、配列番号11で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの発現量の低下や消失させる変異を導入することによっても当該ポリペプチドの機能を低下または欠損させることができる。配列番号11で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損する具体例としては、配列番号12で表される塩基配列において、1,039番目から1,044番目のいずれかの塩基が欠失する変異が挙げられる。
配列番号11で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が低下または欠損することにより、配列番号11で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が低下または欠損しないトリコデルマ・リーセイと比較し、タンパク質の生産性が向上する。
配列番号13で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、トリコデルマ・リーセイが有するポリペプチドであり、National Center for Biotechnology Informationでは、トリコデルマ・リーセイ QM6a株が持つpredicted proteinのEGR44419として登録されている。配列番号13で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは機能未知のポリペプチドであるが、National Center for Biotechnology InformationのCenserved Domain Architecture Retrieval Toolによれば、N末端側から26番目〜499番目のアミノ酸残基は「Sugar(and other) Transporterドメインを有すると開示されている。この記載により配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、少なくとも菌体の内側と外側の間における糖の輸送に関与していると推定される。
配列番号13で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子の具体例として、配列番号14で表される塩基配列が挙げられる。EGR44419の機能が低下または欠損する遺伝子変異とは、EGR44419が有するSugar(and other) Transporterドメインの全欠損、Sugar(and other) Transporterドメインの一部欠損、Sugar(and other) Transporterドメインの立体配置関係の変化する遺伝子変異が挙げられる。さらに、配列番号13で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの発現量の低下や消失させる変異を導入することによっても当該ポリペプチドの機能を低下または欠損させることができる。配列番号13で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損する具体例としては、配列番号14で表される塩基配列において、1,415番目に11塩基が挿入する変異が挙げられる。
配列番号13で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が低下または欠損することにより、配列番号13で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が低下または欠損しないトリコデルマ・リーセイと比較し、タンパク質の生産性およびβ−グルコシダーゼの比活性が向上する。
配列番号15で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、トリコデルマ・リーセイが有するポリペプチドであり、National Center for Biotechnology Informationでは、トリコデルマ・リーセイ QM6a株が持つbeta−adaptin large subunitのEGR48910として登録されている。配列番号15で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、真核生物に広く保存されているクラスリンと結合する細胞内外や菌体内外の輸送に関与する小胞を構成するアダプタープロテインを構成するタンパク質のひとつである(Proc.Nati.Acad.Sci.USA.101,14108−14113(2004))。
配列番号15で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子の具体例として、配列番号16で表される塩基配列が挙げられる。EGR48910の遺伝子変異とは、配列番号16で表される塩基配列において、1,080番目の塩基であるシトシンがアデニンへの変異が挙げられる。
配列番号15で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド内に変異を有することにより、配列番号15で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド内に変異を有さないトリコデルマ・リーセイと比較し、液体培養時の培養液の粘性が低下する。
配列番号17で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、トリコデルマ・リーセイが有するポリペプチドであり、National Center for Biotechnology Informationでは、トリコデルマ・リーセイ QM6a株が持つpredicted proteinのEGR45828として登録されている。配列番号17で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは機能未知のポリペプチドであるが、National Center for Biotechnology InformationのCenserved Domain Architecture Retrieval Toolによれば、N末端側から86番目〜186番目のアミノ酸残基はheat shock factor(HSF)−type DNA−bindingドメインと開示されている。HSF−type DNA−bindingドメインは、ヒートショックプロテインの発現を制御する転写因子であるHSFをコードする遺伝子の上流域に結合する機能を有することが知られている(Cell,65(3),363−366(1991))。
配列番号17で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子の具体例として、配列番号18で表される塩基配列が挙げられる。EGR45828の機能が低下または欠損する遺伝子変異とは、EGR45828が有するHSF−type DNA−bindingドメインの全欠損、HSF−type DNA−bindingドメインの一部欠損、HSF−type DNA−bindingドメインの立体配置関係の変化する遺伝子変異が挙げられる。さらに、配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの発現量の低下や消失させる変異を導入することによっても当該ポリペプチドの機能を低下させることができる。配列番号17で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損する具体例としては、配列番号18で表される塩基配列において、85番目にグアニン1塩基が挿入するフレームシフトを引き起こす変異が挙げられる。
配列番号17で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が低下または欠損することにより、配列番号17で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が低下または欠損しないトリコデルマ・リーセイと比較し、タンパク質の生産性が向上する。
配列番号19で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、トリコデルマ・リーセイが有するポリペプチドであり、National Center for Biotechnology Informationでは、トリコデルマ・リーセイ QM6a株が持つpredicted protein(EGR47155)としても登録されている。配列番号19で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは機能未知のポリペプチドであるが、National Center for Biotechnology InformationのCenserved Domain Architecture Retrieval Toolによれば、N末端側から362番目〜553番目のアミノ酸残基はTLDドメインと開示されている。TLDドメインは機能未知である。配列番号11で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子の具体例として、配列番号20で表される塩基配列が挙げられる。EGR47155の機能が低下または欠損する遺伝子変異とは、EGR47155が有するTLDドメインの全欠損、TLDドメインの一部欠損、TLDドメインの立体配置関係の変化する遺伝子変異が挙げられる。さらに、配列番号19で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの発現量の低下や消失させる変異を導入することによっても当該ポリペプチドの機能を低下または欠損させることができる。配列番号19で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損する具体例としては、配列番号20で表される塩基配列において、6番目に配列番号21で表される46塩基が挿入するフレームシフト変異が挙げられる。
配列番号19で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が低下または欠損することにより、配列番号19で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が低下または欠損しないトリコデルマ・リーセイと比較し、タンパク質の生産性が向上する。
配列番号22で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、トリコデルマ・リーセイが有するポリペプチドであり、National Center for Biotechnology Informationでは、トリコデルマ・リーセイ QM6a株が持つpredicted protein(EGR48056)としても登録されている。配列番号22で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは機能未知のポリペプチドであるが、National Center for Biotechnology InformationのCenserved Domain Architecture Retrieval Toolによれば、N末端側から130番目〜172番目のアミノ酸残基はF−boxドメインと開示されている。F−boxドメインは、細胞周期を制御するタンパク質内に見られるドメインであることが知られている(Proc.Natl.Acad.Sci.,95,2417−2422(1998))。配列番号22で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子の具体例として、配列番号23で表される塩基配列が挙げられる。EGR48056の機能が低下または欠損する遺伝子変異とは、EGR48056が有するF−boxドメインの全欠損、F−boxドメインの一部欠損、F−boxドメインの立体配置関係の変化する遺伝子変異が挙げられる。さらに、配列番号22で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの発現量の低下や消失させる変異を導入することによっても当該ポリペプチドの機能を低下または欠損させることができる。配列番号22で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損する具体例としては、配列番号23で表される塩基配列において、499番目のシトシンが一塩基欠損するフレームシフト変異が挙げられる。配列番号22で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が低下または欠損することにより、配列番号22で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が低下または欠損しないトリコデルマ・リーセイと比較し、タンパク質の生産性が向上する。
配列番号24で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、トリコデルマ・リーセイが有するポリペプチドであり、National Center for Biotechnology Informationでは、トリコデルマ・リーセイ QM6a株が持つglycosyltransferase family 41,partial(EGR46476)としても登録されている。glycosyltransferase family 41は、2量体の複合体で構成されているタンパク質(The EMBO Journal,27,2080−2788(2008))であり、翻訳直後の新生タンパク質がゴルジ複合体を通過する過程において、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)をアミノ酸残基であるセリンまたはスレオニン残基に転移させる機能(Biochemistry,Fourth edition,11,280−281(1995))を有している。配列番号24で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子の具体例として、配列番号25で表される塩基配列が挙げられる。
EGR46476の機能が低下または欠損する遺伝子変異とは、EGR46476が有するglycosyltransferase family 41,partialの全欠損、glycosyltransferase family 41,partialの一部欠損、glycosyltransferase family 41,partialの立体配置関係の変化する遺伝子変異が挙げられる。さらに、配列番号24で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの発現量の低下や消失させる変異を導入することによっても当該ポリペプチドの機能を低下または欠損させることができる。配列番号24で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損する具体例としては、配列番号25で表される塩基配列において、6,261番目のシトシンがアデニンへ変異することによりストップコドンが挿入する変異が挙げられる。配列番号24で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が低下または欠損することにより、配列番号24で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が低下または欠損しないトリコデルマ・リーセイと比較し、タンパク質の生産性が向上する。
また、本発明は前記変異株を培養する工程を含むタンパク質の製造方法に関する。
本発明でトリコデルマ・リーセイを培養する培養方法は特に限定されず、例えば遠沈管、フラスコ、ジャーファーメンター、タンクなどを用いた液体培養や、プレートなどを用いた固体培養などで培養することができる。トリコデルマ・リーセイは、好気的条件で培養することが好ましく、これらの培養方法の中でも、特にジャーファーメンターや、タンク内に通気や撹拌を行いながら培養する深部培養が好ましい。
本発明の方法では、菌体外に分泌されるタンパク質と効率的に製造することができる。製造されるタンパク質は特に制限はないが、好ましくは酵素であり、より好ましくはセルラーゼ、アミラーゼ、インベルターゼ、キチナーゼ、ペクチナーゼ等の糖化酵素であり、さらに好ましくはセルラーゼである。
本発明で製造されるセルラーゼには、様々な加水分解酵素が含まれており、キシラン、セルロース、ヘミセルロースに対する分解活性を持つ酵素などが含まれている。具体例としては、セルロース鎖の加水分解によりセロビオースを製造するセロビオハイドラーゼ(EC 3.2.1.91)、セルロース鎖の中央部分から加水分解するエンドグルカナーゼ(EC 3.2.1.4)、セロオリゴ糖およびセロビオースを加水分解するβ−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.21)、ヘミセルロースや特にキシランに作用することを特徴とするキシラナーゼ(EC 3.2.1.8)、キシロオリゴ糖を加水分解するβ−キシロシダーゼ(EC 3.2.1.37)などが挙げられる。
前述の通り、本発明の変異株のタンパク質製造能の向上を確認するためのセルラーゼのタンパク質濃度および比活性の向上の確認は、これらの加水分解酵素の比活性のいずれかが向上していることにより確認する。
セルラーゼのタンパク質濃度は以下の通り測定を行う。本発明の方法でトリコデルマ・リーセイを培養することにより得られた培養液を15,000×gで10分間遠心分離し、上清をセルラーゼ溶液とする。Quick Start Bradford プロテインアッセイ(Bio−Rad社製)250μLに希釈したセルラーゼ溶液を5μL添加し、室温で15分間静置後の595nmで用いる吸光度を測定する。牛血清アルブミン溶液を標準液とし、検量線に基づいて糖化酵素溶液に含まれるタンパク質濃度を算出する。
β−グルコシダーゼ比活性は、以下の方法で測定する。まず、1mMのp−ニトロフェニル−β−グルコピラノシド(シグマアルドリッチジャパン社製)を含有する50mM酢酸バッファー90μLに酵素希釈液10μLを添加して30℃で10分間反応させる。次に2M炭酸ナトリウム10μLを加えてよく混合して反応を停止し、405nmの吸光度の増加を測定する。最後に1分間あたり1μmolのp−ニトロフェノールを遊離する活性を1Uとして比活性を算出する。
β−キシロシダーゼ比活性は以下の方法で測定する。まず、1mMのp−ニトロフェニル−β−キシロピラノシド(シグマアルドリッチジャパン社製)を含有する50mM酢酸バッファー90μLに酵素希釈液10μLを添加し30℃で30分間反応させる。次に、2M炭酸ナトリウム10μLを加えてよく混合して反応を停止し、405nmの吸光度の増加を測定する。最後に1分間あたり1μmolのp−ニトロフェノールを遊離する活性を1Uとして比活性を算出する。
セロビオハイドロラーゼ比活性は、以下の方法で測定する。まず、1mMのp−ニトロフェニル−β−ラクトピラノシド(シグマアルドリッチジャパン社製)を含有する50mM酢酸バッファー90μLに酵素希釈液10μLを添加し30℃で60分間反応させる。次にその後、2M炭酸ナトリウム10μLを加えてよく混合して反応を停止し、405nmの吸光度の増加を測定する。最後に、1分間あたり1μmolのp−ニトロフェノールを遊離する活性を1Uとして比活性を算出する。
本発明のトリコデルマ・リーセイの変異株の培養方法は特に限定されず、例えば遠沈管、フラスコ、ジャーファーメンター、タンクなどを用いた液体培養や、プレートなどを用いた固体培養などで培養することができる。トリコデルマ・リーセイの変異株である場合は、好気的条件で培養することが好ましく、これらの培養方法の中でも、特にジャーファーメンターや、タンク内に通気や撹拌を行いながら培養する深部培養が好ましい。通気量は、0.1〜2.0vvm程度が好ましく、0.3〜1.5vvmがより好ましく、0.5〜1.0vvmが特に好ましい。培養温度は、25〜35℃程度が好ましく、25〜31℃がより好ましい。培養におけるpHの条件は、pH3.0〜7.0が好ましく、pH4.0〜6.0がより好ましい。培養時間は、タンパク質が生産される条件で、回収可能な量のタンパク質が蓄積されるまで行える時間であれば特に制限はないが、通常、24〜288時間、好ましくは24〜240時間、より好ましくは36〜240時間、さらに好ましくは36〜192時間である。
培養工程の培地組成は、トリコデルマ・リーセイがタンパク質を製造できるような培地組成となっていれば特に制限はなく、トリコデルマ・リーセイの周知の培地組成を採用することができる。窒素源としては、例えば、ポリペプトン、肉汁、CSL、大豆かすなどを用いることができる。また、培地には、タンパク質を製造させるための誘導物質を添加してもよい。
本発明によりセルラーゼを製造する場合には、培地にラクトース、セルロースおよびキシランからなる群から選択される少なくとも1種類または2種類以上の誘導剤を含む培地で培養することができる。また、セルロースやキシランは、セルロースやキシランを含むバイオマスを誘導物質として添加してもよい。セルロールやキシランを含有するバイオマスの具体例としては、種子植物、シダ植物、コケ植物、藻類、水草などの植物の他、廃建材なども用いることができる。種子植物は、裸子植物と被子植物に分類されるが、どちらも好ましく用いることができる。被子植物はさらに単子葉植物と双子葉植物に分類され、単子葉植物の具体例としては、バガス、スイッチグラス、ネピアグラス、エリアンサス、コーンストーバー、コーンコブ、稲わら、麦わらなどが挙げられ、双子葉植物の具体例としてはビートパルプ、ユーカリ、ナラ、シラカバなどが挙げられる。
また、セルロースやキシランを含むバイオマスは、前処理されたものを用いてもよい。前処理方法は特に限定されないが、例えば、酸処理、硫酸処理、希硫酸処理、アルカリ処理、水熱処理、亜臨界処理、微粉砕処理、蒸煮処理、など公知の手法を用いることができる。このような前処理をされたセルロールやキシランを含むバイオマスとして、パルプを用いてもよい。
トリコデルマ・リーセイの変異株を培養した培養液に含まれるタンパク質を回収する方法は特に限定されないが、トリコデルマ・リーセイの菌体を培養液から除去し、タンパク質を回収することができる。菌体の除去方法としては、遠心分離法、膜分離法、フィルタープレス法などが例として挙げられる。
また、トリコデルマ・リーセイの変異株を培養した培養液から菌体を除去せずに、タンパク質の溶解液として利用する場合には、培養液中でトリコデルマ・リーセイの変異株が生育できないように処理することが好ましい。菌体が生育できないように処理する方法としては、熱処理、薬剤処理、酸・アルカリ処理、UV処理などが挙げられる。
タンパク質がセルラーゼのような酵素の場合には、上記のように菌体を除去又は生育していないように処理した培養液を、そのまま酵素液として利用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
<参考例1>タンパク質濃度測定条件
使用するタンパク質濃度測定試薬:Quick Start Bradfordプロテインアッセイ、Bio−Rad製
測定条件
測定温度:室温
タンパク質濃度測定試薬:250μL
糸状菌の培養液:5μL
反応時間:5分
吸光度:595nm
標準品:BSA。
<参考例2>溶存酸素飽和度の算出
溶存酸素飽和度は、菌を含まない培地を用いてpHや温度を培養条件に設定し、空気を通気した際の溶存酸素の飽和状態を100%とした場合の、飽和溶存酸素に対する培養期間中の溶存酸素の割合を溶存酸素飽和度として算出した。DO計は密閉型溶存酸素電極SDOC−12F−L120(エイブル株式会社製)を使用した。
<参考例3>培養液の粘度の測定
採取した培養液の粘度を測定するため、培養開始39、48、62、72、86、96、111時間経過後の培養液をデジタル回転粘度計 DV2Tとスピンドル LV−1(BROOKFIELD社製)を使用し、回転数を0.3rpmに設定した際の粘度(cP)を求めた。
<参考例4>菌体量の測定
培養液中に含まれる菌体量を測定するため、培養液をろ紙で吸引ろ過し、吸引ろ過前後のろ紙の乾燥菌体重量の差を菌体量とした。
<参考例5>セルラーゼの比活性の測定条件
(β−グルコシダーゼ比活性の測定条件)
基質:p−ニトロフェニル−β−グルコピラノシド(シグマアルドリッチジャパン社製)
反応液:1mMのp−ニトロフェニル−β−グルコピラノシドを含有する50mM酢酸バッファー90μL
酵素希釈液:10μL
反応温度:30℃
反応時間:10分間
反応停止剤:2M炭酸ナトリウム10μL
吸収度:405nm。
(β−キシロシダーゼ比活性の測定条件)
基質:p−ニトロフェニル−β−キシロピラノシド(シグマアルドリッチジャパン社製)
反応液:1mMのp−ニトロフェニル−β−キシロピラノシドを含有する50mM酢酸バッファー90μL
酵素希釈液:10μL
反応温度:30℃
反応時間:10分間
反応停止剤:2M炭酸ナトリウム10μL
吸収度:405nm。
(セロビオハイドロラーゼ比活性の測定条件)
基質:p−ニトロフェニル−β−ラクトピラノシド(シグマアルドリッチジャパン社製)
反応液:1mMのp−ニトロフェニル−β−ラクトピラノシドを含有する50mM酢酸バッファー90μL
酵素希釈液:10μL
反応温度:30℃
反応時間:10分間
反応停止剤:2M炭酸ナトリウム10μL
吸収度:405nm。
<実施例1>配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを欠損させたトリコデルマ・リーセイの変異株の作製
(変異株の作製方法)
配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損したトリコデルマ・リーセイの変異株は、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする配列番号1で表される遺伝子を選択マーカーとしてアセトアミド、選択マーカー遺伝子としてアセトアミドを分解することができるアセトアミダーゼ(遺伝子(amdS)と置き換えることで破壊する。配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能を欠損させるため、配列番号26で表される遺伝子配列からなるDNA断片を作製し、当該DNA断片をトリコデルマ・リーセイ QM9414株に形質転換して配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損したトリコデルマ・リーセイの変異株を作製する。この方法により、配列番号1で表される塩基配列が欠損したトリコデルマ・リーセイの変異株が得られる。amdSを含むDNA配列の上流および下流に、上記の配列番号1で表される塩基配列からなるDNA断片を導入するために、トリコデルマ・リーセイ QM9414株の遺伝子配列と相同的な部分を付加するように変異導入用プラスミドを作製する。
具体的には、トリコデルマ・リーセイ QM9414株から定法に従って抽出したゲノムDNAと配列番号27および28で表されるオリゴDNAを用いてPCRをし、得られた増幅断片を制限酵素AflIIとKpnIで処理したDNA断片を上流DNA断片とする。また、配列番号29および30で表されるオリゴDNAを用いてPCRをし、得られた増幅断片を制限酵素MluIとSpeIで処理したDNA断片を下流DNA断片とする。そして、上流及び下流DNA断片をAflIIとKpnI、MluIとSpeIの制限酵素をそれぞれ用いてamdSが挿入されたプラスミドへ導入し、変異導入用プラスミドを構築する。そして、変異導入用プラスミドを制限酵素AflIIとSpeIで処理し、配列番号26で示す得られたDNA断片でトリコデルマ・リーセイ QM9414株を形質転換する。分子生物学的手法は、Molecular cloning,laboratory manual,1st,2nd,3rd(1989)の記載通りに行う。また、形質転換は、標準的な手法であるプロトプラスト−PEG法を用い、具体的にはGene,61,165−176(1987)の記載通りに行う。
<実施例2>配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを欠損させたトリコデルマ・リーセイの変異株の作製
(変異株の作製方法)
配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損したトリコデルマ・リーセイの変異株は、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする配列番号2で表される遺伝子を選択マーカーとしてアセトアミド、選択マーカー遺伝子としてアセトアミドを分解することができるアセトアミダーゼ遺伝子(amdS)と置き換えることで破壊する。配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能を欠損させるため、配列番号31で表される遺伝子配列からなるDNA断片を作製し、当該DNA断片をトリコデルマ・リーセイ QM9414株に形質転換して配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損したトリコデルマ・リーセイの変異株を作製する。この方法により、配列番号2で表される塩基配列が欠損したトリコデルマ・リーセイの変異株が得られる。amdSを含むDNA配列の上流および下流に、上記の配列番号2で表される塩基配列からなるDNA断片を導入するために、トリコデルマ・リーセイ QM9414株の遺伝子配列と相同的な部分を付加するように変異導入用プラスミドを作製する。
具体的には、トリコデルマ・リーセイ QM9414株から定法に従って抽出したゲノムDNAと配列番号32および33で表されるオリゴDNAを用いてPCRをし、得られた増幅断片を制限酵素AflIIとNotIで処理したDNA断片を上流DNA断片とする。また、配列番号34および35で表されるオリゴDNAを用いてPCRをし、得られた増幅断片を制限酵素SwaIとAscIで処理したDNA断片を下流DNA断片とする。そして、上流及び下流DNA断片をAflIIとNotI、SwaIとAscIの制限酵素をそれぞれ用いてamdSが挿入されたプラスミドへ導入し、変異導入用プラスミドを構築する。そして、変異導入用プラスミドを制限酵素AflIIとAscIで処理し、配列番号31で示す得られたDNA断片でトリコデルマ・リーセイ QM9414株を形質転換する。分子生物学的手法は、Molecular cloning,laboratory manual,1st,2nd,3rd(1989)の記載通りに行う。また、形質転換は、標準的な手法であるプロトプラスト−PEG法を用い、具体的にはGene,61,165−176(1987)の記載通りに行う。
<実施例3>配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを欠損させたトリコデルマ・リーセイの変異株の作製
(変異株の作製方法)
配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損したトリコデルマ・リーセイの変異株は、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする配列番号3で表される遺伝子を選択マーカーとしてアセトアミド、選択マーカー遺伝子としてアセトアミドを分解することができるアセトアミダーゼ遺伝子(amdS)と置き換えることで破壊する。配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能を欠損させるため、配列番号36で表される遺伝子配列からなるDNA断片を作製し、当該DNA断片をトリコデルマ・リーセイ QM9414株に形質転換して配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損したトリコデルマ・リーセイの変異株を作製する。この方法により、配列番号3で表される塩基配列が欠損したトリコデルマ・リーセイの変異株が得られる。amdSを含むDNA配列の上流および下流に、上記の配列番号3で表される塩基配列からなるDNA断片を導入するために、トリコデルマ・リーセイ QM9414株の遺伝子配列と相同的な部分を付加するように変異導入用プラスミドを作製する。
具体的には、トリコデルマ・リーセイ QM9414株から定法に従って抽出したゲノムDNAと配列番号37および38で表されるオリゴDNAを用いてPCRをし、得られた増幅断片を制限酵素AflIIとNotIで処理したDNA断片を上流DNA断片とする。また、配列番号39および40で表されるオリゴDNAを用いてPCRをし、得られた増幅断片を制限酵素MluIとSpeIで処理したDNA断片を下流DNA断片とする。そして、上流及び下流DNA断片をAflIIとNotI、MluIとSpeIの制限酵素をそれぞれ用いてamdSが挿入されたプラスミドへ導入し、変異導入用プラスミドを構築する。そして、変異導入用プラスミドを制限酵素AflIIとSpeIで処理し、配列番号36で示す得られたDNA断片でトリコデルマ・リーセイ QM9414株を形質転換する。分子生物学的手法は、Molecular cloning,laboratory manual,1st,2nd,3rd(1989)の記載通りに行う。また、形質転換は、標準的な手法であるプロトプラスト−PEG法を用い、具体的にはGene,61,165−176(1987)の記載通りに行う。
(変異株の作製・評価)
前述の方法に従って、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが欠損したトリコデルマ・リーセイの変異株QM9414−J株を取得した。
<実施例4>配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを欠損させたトリコデルマ・リーセイの変異株の作製
(変異株の作製方法)
配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損したトリコデルマ・リーセイの変異株は、配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする配列番号4で表される遺伝子を選択マーカーとしてアセトアミド、選択マーカー遺伝子としてアセトアミドを分解することができるアセトアミダーゼ遺伝子(amdS)と置き換えることで破壊する。配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能を欠損させるため、配列番号41で表される遺伝子配列からなるDNA断片を作製し、当該DNA断片をトリコデルマ・リーセイ QM9414株に形質転換して配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損したトリコデルマ・リーセイの変異株を作製する。この方法により、配列番号4で表される塩基配列が欠損したトリコデルマ・リーセイの変異株が得られる。amdSを含むDNA配列の上流および下流に、上記の配列番号4で表される塩基配列からなるDNA断片を導入するために、トリコデルマ・リーセイ QM9414株の遺伝子配列と相同的な部分を付加するように変異導入用プラスミドを作製する。
具体的には、トリコデルマ・リーセイ QM9414株から定法に従って抽出したゲノムDNAと配列番号42および43で表されるオリゴDNAを用いてPCRをし、得られた増幅断片を制限酵素AflIIとNotIで処理したDNA断片を上流DNA断片とする。また、配列番号44および45で表されるオリゴDNAを用いてPCRをし、得られた増幅断片を制限酵素MluIとSpeIで処理したDNA断片を下流DNA断片とする。そして、上流及び下流DNA断片をAflIIとNotI、MluIとSpeIの制限酵素をそれぞれ用いてamdSが挿入されたプラスミドへ導入し、変異導入用プラスミドを構築する。そして、変異導入用プラスミドを制限酵素AflIIとSpeIで処理し、配列番号41で示す得られたDNA断片でトリコデルマ・リーセイ QM9414株を形質転換する。分子生物学的手法は、Molecular cloning,laboratory manual,1st,2nd,3rd(1989)の記載通りに行う。また、形質転換は、標準的な手法であるプロトプラスト−PEG法を用い、具体的にはGene,61,165−176(1987)の記載通りに行う。
<実施例5>配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを欠損させたトリコデルマ・リーセイの変異株の作製
(変異株の作製方法)
配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損したトリコデルマ・リーセイの変異株は、配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする配列番号5で表される遺伝子を選択マーカーとしてアセトアミド、選択マーカー遺伝子としてアセトアミドを分解することができるアセトアミダーゼ遺伝子(amdS)と置き換えることで破壊する。配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能を欠損させるため、配列番号46で表される遺伝子配列からなるDNA断片を作製し、当該DNA断片をトリコデルマ・リーセイ QM9414株に形質転換して配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損したトリコデルマ・リーセイの変異株を作製する。この方法により、配列番号5で表される塩基配列が欠損したトリコデルマ・リーセイの変異株が得られる。amdSを含むDNA配列の上流および下流に、上記の配列番号5で表される塩基配列からなるDNA断片を導入するために、トリコデルマ・リーセイ QM9414株の遺伝子配列と相同的な部分を付加するように変異導入用プラスミドを作製する。
具体的には、トリコデルマ・リーセイ QM9414株から定法に従って抽出したゲノムDNAと配列番号47および48で表されるオリゴDNAを用いてPCRをし、得られた増幅断片を制限酵素AflIIとNotIで処理したDNA断片を上流DNA断片とする。また、配列番号49および50で表されるオリゴDNAを用いてPCRをし、得られた増幅断片を制限酵素SalIとSphIで処理したDNA断片を下流DNA断片とする。そして、上流及び下流DNA断片をAflIIとNotI、SalIとSphIの制限酵素をそれぞれ用いてamdSが挿入されたプラスミドへ導入し、変異導入用プラスミドを構築する。そして、変異導入用プラスミドを制限酵素AflIIとSphIで処理し、配列番号46で示す得られたDNA断片でトリコデルマ・リーセイ QM9414株を形質転換する。分子生物学的手法は、Molecular cloning,laboratory manual,1st,2nd,3rd(1989)の記載通りに行う。また、形質転換は、標準的な手法であるプロトプラスト−PEG法を用い、具体的にはGene,61,165−176(1987)の記載通りに行う。
<実施例6>トリコデルマ・リーセイの変異株の培養試験
(前培養)
実施例1〜5で作製したトリコデルマ・リーセイの変異株の胞子を1.0×10/mLになるように生理食塩水で希釈し、その希釈胞子溶液2.5mLを表1に示した1Lバッフル付フラスコへ入れた250mLの前培養培地へ接種させ、振盪培養機にて28℃、120rpmの条件にて72時間培養を行う。コントロールとして、トリコデルマ・リーセイ QM9414株を用い、以下同様の実験操作を行う。
Figure 2020075788
(本培養)
Arbocel B800(レッテンマイヤー社)を表2で示した本培養培地に添加し、5Lジャーファーメンター(バイオット社製)を用い、深部培養検討を行う。
トリコデルマ・リーセイ QM9414株および実施例1〜5で作製したトリコデルマ・リーセイの変異株の前培養液250mLをArbocel B800が添加された本培養培地2.5Lに接種する。
培養条件は、本培養培地に前培養培地を接種後、28℃、700rpm、通気量100mL/minの培養条件にて、pH5.0に制御しながら深部培養を行う。
Figure 2020075788
(培養液の採取)
培養開始から、培養終了時の120時間経過後まで経時的に培養液をそれぞれ20mL採取する。採取した培養液の1部は、15,000×g、4℃の条件下で10分間遠心分離を行い、上清を得る。その上清を0.22μmのフィルターでろ過し、そのろ液をセルラーゼ溶液として、以下の実験に用いる。
(タンパク質濃度の測定)
参考例1で記載した手法を用い、培養開始120時間経過後に採取した培養液におけるセルラーゼのタンパク質濃度を測定する。その結果、実施例1〜5で作製したトリコデルマ・リーセイの変異株の培養液におけるタンパク質濃度は、トリコデルマ・リーセイ QM9414株の培養液におけるタンパク質濃度と比較して高くなる。特に、実施例3にて取得した配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを欠損させたQM9414−J株は、トリコデルマ・リーセイ QM9414株と比較して相対値でタンパク質濃度は1.3倍高かった。
(培養液中の溶存酸素飽和度の測定)
参考例2で記載した手法を用い、実施例1〜5で作製したトリコデルマ・リーセイの変異株の培養液中の経時的な溶存酸素飽和度を測定する。その結果、実施例1〜5で作製したトリコデルマ・リーセイの変異株の培養液中の溶存酸素飽和度は、トリコデルマ・リーセイ QM9414株よりも高くなる。
また、QM9414と実施例3にて取得したQM9414−J株の培養液中の溶存酸素の経時的変化を図6に示す。QM9414株とQM9414−J株の培養液中の溶存酸素濃度は、それぞれ培養開始から80時間前後、60時間前後で最小値となり、QM9414−J株の最小溶存酸素濃度は、親株のQM9414の最小溶存酸素濃度よりも20%程度高くなった。
(培養液の粘度の測定)
参考例3で記載した手法を用い、実施例1〜5で作製したトリコデルマ・リーセイの変異株の培養液中の経時的な粘度を測定する。その結果、実施例1〜5で作製したトリコデルマ・リーセイの変異株の最大粘度は、トリコデルマ・リーセイ QM9414株よりも低くなる。
また、トリコデルマ・リーセイ QM9414株の値を1とした場合の、実施例3にて取得したQM9414−J株の粘度の相対値を図5に示す。その結果、QM9414−J株の培養期間中の培養液の粘度は、QM9414株よりも低くなった。QM9414株とQM9414−J株の培養液における粘度は、培養開始から71時間経過前後で最大となった。QM9414−J株の最大粘度は、親株のQM9414株の最大粘度の40%程度まで低下した。
(菌体量の測定)
参考例4で記載した手法を用い、実施例6(前培養)の培養直後の菌体量を測定する。その結果、配列番号6〜10のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損したトリコデルマ・リーセイの変異株とトリコデルマ・リーセイ QM9414株間で菌体量の差は確認できない。特に、実施例3にて取得した配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを欠損させたQM9414−J株は、トリコデルマ・リーセイ QM9414株と比較して、菌体量の差を確認することはできなかった。
(酵素活性の測定)
参考例5の条件で、培養途中に採取した培養液におけるセルラーゼの比活性として、β−グルコシダーゼ、β−キシロシダーゼ、セロビオハイドラーゼの比活性をそれぞれ測定する。比活性は、405nmの吸光度の増加を測定し、1分間あたり1μmolの基質を遊離する活性を1Uとして算出する。その結果、配列番号6〜10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損したトリコデルマ・リーセイの変異株の培養液における上記3種類の比活性は、トリコデルマ・リーセイ QM9414株の培養液における比活性と比較して高くなる。特に、トリコデルマ・リーセイ QM9414株と比較して、実施例3にて取得したQM9414−J株は相対値でβ−グルコシダーゼ比活性は1.2倍、β−キシロシダーゼ比活性は1.2倍、セロビオハイドロラーゼ比活性は1.1倍高かった。
<実施例7>配列番号6〜8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドに変異を有するトリコデルマ・リーセイの変異株の作製
トリコデルマ・リーセイQM9414株の継代株であるQM9414−G株に対し、遺伝子変異処理を行って変異株であるQM9141−H株を取得した。遺伝子変異処理は、QM9414−G株の胞子を、表1に示す前培養培地1mLあたり1.0x10胞子になるよう接種し、前培養培地15mLを半日培養した後に遠心分離を行い、胞子を回収した。そして、回収した胞子をトリスーマレイン酸バッファー(pH6.0)にて10mLの胞子溶液になるよう懸濁し、そこへトリスーマレイン酸バッファー(pH6.0)で1.0g/Lになるよう溶解させたNTG溶液を0.5mL添加し、28℃、100分間、遺伝子変異処理を行った。遺伝子変異処理した胞子は、遠心分離にて回収した後に、トリスーマレイン酸バッファー(pH6.0)で3回洗浄し、最終的にトリスーマレイン酸バッファー(pH6.0)10mLにて懸濁したものを遺伝子変異処理胞子とした。
その遺伝子変異処理胞子を、結晶セルロースを添加して調製した寒天培地へ添加し、コロニー周囲に生じるセルラーゼによる結晶セルロース分解領域であるハロの大きさを指標とし、ハロの大きかったQM9414−H株を選抜した。
QM9414−G株とQM9414−H株の遺伝子解析の結果、QM9414−G株では配列番号6〜10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子が保持されていたが、QM9414−H株では以下の(1)〜(3)に記す3箇所の変異を確認することができた。
(1)配列番号1で表される塩基配列の411番目のグアニンがアデニンへ変異していた。当該変異は、配列番号6で表されるアミノ酸配列の137番目にストップコドンを挿入させる変異である。
(2)配列番号2で表される塩基配列の988番目にアデニンが1塩基挿入されていた。当該変異は、配列番号7で表されるアミノ酸配列の297番目からフレームシフトを挿入させる変異である。
(3)配列番号3で表される塩基配列の5,541番目のグアニンがアデニンに変異していた。当該変異は、配列番号8で表されるアミノ酸配列の1,791番目のアスパラギン酸をアスパラギンへ置換する変異である。
<実施例8>トリコデルマ・リーセイの変異株の培養試験
実施例7で取得したQM9414−H株について、実施例6と同様の方法で培養を行い、参考例2と参考例3の条件で、培養液中の最大粘度(cP)および培養液中の最小溶存酸素飽和度(%)を測定した。コントロールには、QM9414−G株を用いた。QM9414−G株の値を1とした場合の、QM9414−H株の粘度の相対値を図1に示す。また、培養期間中の、QM9414−G株と、QM9414−H株の溶存酸素の経時的変化を図2に示す。
これらの結果、QM9414−H株の培養期間中の培養液の粘度は、QM9414−G株よりも低くなった。QM9414−H株とQM9414−G株の培養液における粘度は、培養開始からそれぞれ24時間経過時前後、41時間経過時前後で最大となった。QM9414−H株の最大粘度は、親株のQM9414−G株の最大粘度の40%程度まで低下した。
培養液中の溶存酸素濃度も、QM9414−H株では、QM9414−G株に比べて高くなった。QM9414−H株とQM9414−G株の培養液中の溶存酸素濃度は、ともに培養開始後36時間経過時前後で最小値となり、QM9414−H株の36経過時の溶存酸素濃度は、親株のQM9414−G株と比べて25%程度高くなった。
<実施例9>配列番号9、10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド内に変異を有するトリコデルマ・リーセイの変異株の作製
トリコデルマ・リーセイQM9414株の継代株であって実施例7で取得したQM9414−H株に対し、遺伝子変異処理を行って変異株であるQM9141−I株を取得した。遺伝子変異処理は、QM9414−H株の胞子を、表1に示す前培養培地1mLあたり1.0x10胞子になるよう接種し、前培養培地15mLを半日培養した後に遠心分離を行い、胞子を回収した。そして、回収した胞子をトリスーマレイン酸バッファー(pH6.0)にて10mLの胞子溶液になるよう懸濁し、そこへトリスーマレイン酸バッファー(pH6.0)で1.0g/Lになるよう溶解させたNTG溶液を0.5mL添加し、28℃、100分間、遺伝子変異処理を行った。遺伝子変異処理した胞子は、遠心分離にて回収した後に、トリスーマレイン酸バッファー(pH6.0)で3回洗浄し、最終的にトリスーマレイン酸バッファー(pH6.0)10mLにて懸濁したものを遺伝子変異処理胞子とした。 その遺伝子変異処理胞子を、結晶セルロースを添加して調製した寒天培地へ添加し、コロニー周囲に生じるセルラーゼによる結晶セルロース分解領域であるハロの大きさを指標とし、ハロの大きかったQM9414−I株を選抜した。
QM9414−H株とQM9414−I株の遺伝子解析の結果、QM9414−H株では配列番号9および10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子が保持されていたが、QM9414−I株では以下に記す2箇所の変異を確認することができた。
(1)配列番号4で表される塩基配列の550番目のアデニンがシトシンに変異していた。当該変異は、配列番号9で表されるアミノ酸配列の184番目のセリンをアルギニンへ置換する変異である。
(2)配列番号5で表される塩基配列の769番目にグアニンが1塩基挿入されていた。当該変異は、配列番号10で表されるアミノ酸配列の257番目にからフレームシフトを挿入させる変異である。
<実施例10>トリコデルマ・リーセイの変異株の培養試験
実施例9で取得したQM9414−I株について、実施例6と同様の方法で培養を行い、参考例1、参考例2、参考例3、参考例5の条件で、培養液における培養液中の最大粘度、培養液中の最小溶存酸素飽和度、タンパク質濃度、セルラーゼの比活性をそれぞれ測定した。コントロールには、QM9414−H株を用いた。QM9414−H株の値を1とした場合の、QM9414−I株の粘度の相対値を図3に示す。また、培養期間中の、QM9414−H株と、QM9414−I株の溶存酸素の経時的変化を図4に示す。
これらの結果、QM9414−I株の培養液中の粘度は、QM9414−H株よりも低くなった。QM9414−I株とQM9414−H株の培養液における粘度は、培養開始から24時間経過時前後で最大となった。QM9414−I株の24時間経過時の粘度は、親株であるQM9414−H株の75%程度まで低下した。
培養液中の溶存酸素濃度も、QM9414−I株では、QM9414−H株に比べて高くなった。QM9414−H株と、QM9414−I株の培養液中の溶存酸素濃度は、ともに36時間経過時前後で最小値となり、QM9414−I株の36時間経過時の溶存酸素濃度は、親株のQM9414−H株と比べて37%程度高くなった。
また、QM9414−H株と比較して、QM9414−I株は、タンパク質濃度は1.11倍、β−グルコシダーゼ比活性は1.07倍、β−キシロシダーゼ比活性は1.40倍、セロビオハイドロラーゼ比活性は1.03倍高くなった。

Claims (14)

  1. 配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損または低下する変異を有する、トリコデルマ・リーセイの変異株。
  2. 前記変異が、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのN末端側より1791番目のアスパラギン酸残基のアスパラギン酸以外のアミノ酸残基への変異である、請求項1に記載の変異株。
  3. さらに配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損または低下する変異を有する、請求項1または2に記載の変異株。
  4. 前記変異が、配列番号6で表されるアミノ酸配列のN末端側から137番目で翻訳が終了するストップコドン変異である、請求項3に記載の変異株。
  5. さらに配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損または低下する変異を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の変異株。
  6. 前記変異が、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのLeucine−rich repeats、ribonuclease inhibitor−like subfamilyドメインが欠損する変異である、請求項5に記載の変異株。
  7. 前記変異が、配列番号7で表されるアミノ酸配列のN末端側から297番目のアスパラギン酸残基でのフレームシフト変異である、請求項5または6に記載の変異株。
  8. さらに配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのGAL4−like Zn2Cys6 binuclear cluster DNA−bindingドメインとfungal transcription factor regulatory middle homology regionドメインの間に位置するアミノ酸配列に変異を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の変異株。
  9. 前記変異が、配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおけるN末端側より184番目のセリン残基のセリン以外のアミノ酸残基への変異である、請求項8に記載の変異株。
  10. さらに配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能が欠損または低下する変異を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の変異株。
  11. 前記変異が、配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのFatty acid hydroxylase superfamilyドメインが欠損する変異である、請求項10に記載の変異株。
  12. 前記変異が、配列番号10で表されるアミノ酸配列のN末端側から257番目のイソロイシン残基でのフレームシフト変異である、請求項10または11に記載の変異株。
  13. 請求項1から12のいずれかに記載の変異株を培養する工程を含む、タンパク質の製造方法。
  14. 請求項1から12のいずれかに記載の変異株を培養する工程を含む、セルラーゼの製造方法。
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