JPWO2020054126A1 - 標的細胞への物質の導入法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、植物細胞等に物質を送達するための新たな方法を提供することを課題とする。
本発明は、細胞透過性配列、サルコシン残基を含むリンカー、及び細胞内小胞からの脱出能を有するドメインを含むペプチド、該ペプチドからなる標的植物細胞又は微細藻類への目的の物質の導入剤、並びに細胞透過性配列、リンカー、及び細胞内小胞からの脱出能を有するドメインを含むペプチドを用いる標的植物細胞又は微細藻類に目的の物質を導入する方法等に関する。

Description

本発明は、細胞透過性配列、サルコシン残基を含むリンカー、及び細胞内小胞からの脱出能を有するドメインを含むペプチド、該ペプチドからなる標的植物細胞又は微細藻類への目的の物質の導入剤、並びに細胞透過性配列、リンカー、及び細胞内小胞からの脱出能を有するドメインを含むペプチドを用いる標的植物細胞又は微細藻類に目的の物質を導入する方法等に関する。
植物細胞中に所望の物質を導入できれば、植物バイオテクノロジーの分野における新たな応用が可能であるとともに、強力な基礎的研究ツールになり得る。本発明者らは、細胞透過性ペプチド(CPP)(タンパク質形質導入ドメイン(PTD)としても知られている)を含む特定のペプチドを利用した植物細胞への核酸、又はタンパク質の導入技術等を提案している(特許文献1〜3、非特許文献1〜2)。CPPの細胞透過性については、非特許文献3〜4に報告されている。
一方、Lonnらは、CPPの一種であるTat(Trans-Activator of Transcription Protein)に、6分子のポリエチレングリコール(PEG)を介してEED(−GWWG、-GFWFG)を連結すると、細胞毒性なしに高分子の細胞質への輸送を有意に改善できること等を報告している(非特許文献5)。しかし、非特許文献3では高分子を送達する標的細胞として動物細胞を用いており、植物細胞については検討されていない。植物細胞は、動物細胞とは異なり厚く強固な細胞壁を有していること、また植物細胞がタンパク質等の物質に対して分解活性を有すること等の理由から、物質を細胞内に送達することは困難と考えられる。
WO/2013/129698 WO/2015/133652 WO/2017/126604
Lakshmanan M. et al., Biomacromolecules, 2012, 14, pp. 10-16 Ng, K. K. et al., PLoS ONE, 2016, 11, e0154081 Chuah, J. et al., Engineering in Translational Medicine, 2014, pp 667-689. Chugh, A. et al., IUBMB Life, 2010, 62, pp. 183-193. Lonn, P. et al., Scientific Reports, 2016, 6, 32301
本発明は、植物細胞等に物質を送達するための新たな方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、細胞透過性配列、リンカー、及び細胞内小胞からの脱出能を有するドメインを含む融合ペプチドを構築した。また、本発明者は、驚くべきことに、このペプチドの存在下で導入すべき目的の物質を細胞の培養液や細胞間隙に添加するだけで、簡便に目的の物質が植物細胞等に導入され得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、以下の態様を包含する。
(1)細胞透過性配列、サルコシン残基を含むリンカー、及び細胞内小胞からの脱出能を有するドメインを含むペプチド。
(2)細胞透過性配列が、RRRQRRKKR(配列番号33)を含む、(1)に記載のペプチド。
(3)リンカーが、6個のサルコシン残基を含む、(1)又は(2)に記載のペプチド。
(4)細胞内小胞からの脱出能を有するドメインが、GWWG(配列番号73)又はGWFWG(配列番号74)のアミノ酸配列を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載のペプチド。
(5)目的の物質を植物細胞又は微細藻類に導入するための、(1)〜(4)のいずれかに記載のペプチド。
(6)(1)〜(4)のいずれかに記載のペプチドからなる、標的植物細胞又は微細藻類への目的の物質の導入剤。
(7)目的の物質がタンパク質、多糖及び核酸の少なくとも一つである、(5)に記載のペプチド又は(6)に記載の物質の導入剤。
(8)ポリカチオン配列を含む、又は細胞透過性配列とポリカチオン配列とを含むキャリアペプチドと併用される、(1)〜(4)のいずれかに記載のペプチド、又は(5)〜(7)のいずれかに記載の導入剤。
(9)目的の物質が導入された標的植物細胞又は微細藻類を生産する方法であって、
細胞透過性配列、リンカー、及び細胞内小胞からの脱出能を有するドメインを含むペプチドの存在下で、目的の物質を標的植物細胞又は微細藻類に接触させる工程
を含む、前記方法。
(10)形質転換された標的植物細胞又は微細藻類を生産する方法であって、
細胞透過性配列、リンカー、及び細胞内小胞からの脱出能を有するドメインを含むペプチドの存在下で、核酸分子を標的植物細胞又は微細藻類に接触させる工程
を含む、前記方法。
(11)ゲノム改変された標的植物細胞又は微細藻類を生産する方法であって、
細胞透過性配列、リンカー、及び細胞内小胞からの脱出能を有するドメインを含むペプチドの存在下で、ゲノム編集タンパク質を標的植物細胞又は微細藻類に接触させる工程
を含む、前記方法。
(12)ペプチドが、(1)〜(5)及び(7)のいずれかに記載のペプチドである、(9)〜(11)のいずれかに記載の方法。
(13)ペプチドを、50μM〜50mMの濃度で標的植物細胞又は微細藻類に接触させる、(9)〜(12)のいずれかに記載の方法。
(14)前期接触が、ポリカチオン配列を含む、又は細胞透過性配列とポリカチオン配列とを含むキャリアペプチドの存在下で行われる、(9)〜(13)のいずれかに記載の方法
(15)標的植物細胞又は微細藻類に導入すべき目的の物質、及び
(1)〜(5)及び(7)のいずれかに記載のペプチド
を含む、標的植物細胞又は微細藻類に目的の物質を導入するためのキット。
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2018-172266号の開示内容を包含する。
本発明により、物質を植物細胞等に送達するための新たな方法が提供される。本発明の方法は、ペプチドと目的の物質の混合又はコンジュゲーション等の事前処理を必要とせずに、単にペプチドの存在下で目的の物質と標的細胞を混合するだけで物質を標的細胞に導入し得るため、簡便かつ汎用性が高いものであり得る。
図1は、dTat(d(RRRQRRKKR))、dTat-EED4(d(RRRQRRKKR)-(Sar)6-GWWG、dTat-EED5(d(RRRQRRKKR)-(Sar)6-GFWFG)、及びRetro-Tat(57-49)(RRRQRRKKR)の、水中におけるCDスペクトルを示す。 図2は、(a)デキストラン単独、又は様々な濃度のdTat-EED4((b) 9 nM、(c) 90 nM、(d) 900 nM、(e) 9 μM、(f) 90 μM、(g) 225 μM、(h) 450 μM、(i) 675 μM、(j) 900 μM、(k、1) 2.3 mM、(m、n) 4.5 mM、(o、p) 6.8 mM、及び(q、r) 9 mM)とデキストランで1時間処理したタバコBY-2細胞を示す共焦点顕微鏡のイメージである。イメージは、10×の倍率で、0.5倍ズーム(a〜k、m、o、q)又は2.0倍ズーム(l、n、p、r)で得た。スケールバーは50μmを示す。 図3は、(a)デキストラン単独、又は様々な濃度のdTat-EED4((b) 90 μM、(c、d) 225 μM、(e、f) 450 μM、(g、h) 675 μM、(i、j) 900 μM、(k、l) 2.3 mM、(m、n) 4.5 mM、(o、p) 6.8 mM、及び (q、r) 9 mM)とデキストランで24時間処理したタバコBY-2細胞を示す共焦点顕微鏡のイメージである。イメージは、10×の倍率で、0.5倍ズーム(a〜c、e、g、i、k、m、o、q)又は2.0倍ズーム(d、f、h、j、l、n、p、r)で得た。スケールバーは50μmを示す。 図4は、(a、b)シトリン単独、又は様々な濃度((c) 9 nM、(d) 90 nM、(e) 900 nM、(f) 9 μM、(g,h) 90 μM、(i) 225 μM、(j) 675 μM、(k) 900 μM、(l) 2.3 mM、(m) 4.5 mM、(n,o) 6.8 mM)のdTat-EED4とシトリンで1時間処理したタバコBY-2細胞を示す共焦点顕微鏡のイメージである。イメージは、10×の倍率で、0.5倍ズーム(a、c〜g、i〜n)又は2.0倍ズーム(b、h)又は40×の倍率で、2.0倍ズーム(o)で得た。スケールバーは、b及びh(10μm)並びにo(5μm)以外、50μmを示す。 図5は、シトリン内在化の経時的試験を示す(a:処理直後、b:処理の2分11秒後、c:処理の5分12秒後、d:処理の12分30秒後)。 図6は、分光測光法による、エバンスブルー保持に基づいて推定した細胞死を示す。データは、平均値±標準偏差を示す(n=3)。 図7は、分光測光法によってモニターした、経時的な細胞増殖及び死滅を示す。データは、平均値±標準偏差を示す(n=3)。 図8は、デキストラン又はシトリン単独、及び4.4mM dTat-EED4ペプチドと組み合わせたデキストラン又はシトリンで処理したシロイヌナズナ表皮細胞を示す共焦点顕微鏡のイメージである。イメージは63×の倍率で得た。スケールバーは10μmを示す。 図9は、デキストラン単独、及び9 nM〜900 μMのdTat-EED4ペプチドと組み合わせたデキストランで24時間、48時間、又は72時間処理したミドリムシ細胞を示す共焦点顕微鏡のイメージである。イメージは10×の倍率で得た。スケールバーは50μmを示す。 図10は、ペプチド非存在条件(a)、900μMのdTat -EED4が存在する条件(b)、90μMのdTat- EED5が存在する条件(c)でそれぞれ、デキストランをタバコBY-2細胞に接触させ、1時間インキュベーションした後に観察した写真である。 図11は、ペプチド非存在条件(a)、90μMのdTat-EED4が存在する条件(b)、90μMのdTat-EED5が存在する条件(c)でそれぞれ、シトリンをタバコBY-2細胞に接触させ、1時間インキュベーションした後に観察した写真である。 図12は、コケ類の発芽胞子をdTat-EED4及びシトリンと混合し、インキュベーションした後の、共焦点レーザー走査顕微鏡による観察結果を示す。コントロールとして、同濃度のシトリンのみを混合した発芽胞子を用いた結果も示す(ペプチドなし)。 図13は、コナミドリムシ野生型細胞(cc125+)をdTat- EED5及びシトリンと混合した後の共焦点レーザー走査顕微鏡による観察結果を示す。コントロールとして、同濃度のシトリンのみを混合した発芽胞子を用いた結果も示す(ペプチドなし)。 図14は、ルシフェラーゼアッセイに基づく遺伝子導入効率の評価結果を示す。dTat-EED4の存在下又は非存在下において、BP100-(KH)9とpDNAの複合体(BP100-(KH)9/pDNA)、(KH)9とpDNAの複合体(KH)9/pDNA)、又はpDNA単独を、イネ(O. sativa)のカルス(A)、又はシロイヌナズナ(A. thaliana)のカルス(B)に導入した。
一態様において、本発明は、細胞透過性配列、サルコシン残基を含むリンカー、及び細胞内小胞からの脱出能を有するドメインを含むペプチドに関する。本発明のペプチドの構成について以下説明する。
1.ペプチド
本発明のペプチドは、植物細胞への物質の導入を促すペプチドであり得る。
本発明のペプチドは、細胞透過性配列、サルコシン残基を含むリンカー、及び細胞内小胞からの脱出能を有するドメインを含むことを特徴とする。本発明のペプチドに含まれる細胞透過性配列、サルコシン残基を含むリンカー、及び細胞内小胞からの脱出能を有するドメインについて以下説明する。
「細胞透過性配列」とは、細胞透過性ペプチド(CPP:Cell Penetrating Peptide)の配列を意味する。細胞透過性ペプチドとは、細胞膜を透過して細胞内に侵入し得るペプチドを意味する。細胞透過性ペプチドとしては、例えば、BP100(Appl Environ Microbiol 72 (5), 3302, 2006)、HIV Tat (Journal Biological Chemistry, 272, pp.16010-16017, 1997)、Tat2(Biochim Biophys Acta 1768 (3), 419, 2007)、Penetratin、pVEC、pAntp(Journal Biological Chemistry, 269, pp.10444-10450, 1994)、HSV-1 VP22(Cell, 88, pp.223-233, 1997)、MAP(Model amphiphilic peptide)(Biochimica Biophysica Acta, 1414, pp.127-139, 1998)、Transportan(FEBS Journal, 12, pp.67-77, 1998)、R7(Nature Medicine, 6, pp.1253-1257, 2000)、MPG(Nucleic Acid Research 25, pp.2730-2736, 1997)、及びPep-1(Nature Biotechnology, 19, pp.1173-1176, 2001)等が挙げられるが、これらに限定されない。
細胞透過性配列の具体例としては、例えば以下の配列:KKLFKKILKYL(配列番号1)、RKKRRQRRRRKKRRQRRR(配列番号2)、RKKRRQRRR(配列番号3)、PLSSIFSRIGDP(配列番号4)、PISSIFSRTGDP(配列番号5)、AISSILSKTGDP(配列番号6)、PILSIFSKIGDL(配列番号7)、PLSSIFSKIGDP(配列番号8)、PLSSIFSHIGDP(配列番号9)、PLSSIFSSIGDP(配列番号10)、RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号11)、DAATATRGRSAASRPTERPRAPARSASRPRRPVD(配列番号12)、AAVALLPAVLLALLAP(配列番号13)、AAVLLPVLLAAP(配列番号14)、VTVLALGALAGVGVG(配列番号15)、GALFLGWLGAAGSTMGA(配列番号16)、MGLGLHLLVLAAALQGA(配列番号17)、LGTYTQDFNKFHTFPQTAIGVGAP(配列番号18)、GWTLNSAGYLLKINLKALAALAKKIL(配列番号19)、及びKLALKLALKALKAALKLA(配列番号20)を挙げることができる。これらのペプチド配列に含まれる1個から数個のアミノ酸残基が置換、挿入、及び/又は欠失し、かつ細胞透過性を有するペプチド配列を好適に使用できる場合もある。本明細書において、「数個」とは、例えば10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、好ましくは5個以下又は4個以下、さらに好ましくは3個以下又2個以下を意味する。
上記の配列に加えて、使用可能な細胞透過性配列の例を以下の表1に示す。
Figure 2020054126
Figure 2020054126
表1に記載の参考文献の詳細は以下の通りである。
Figure 2020054126
Figure 2020054126
一実施形態において、細胞透過性配列は、配列番号1〜72で示されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列に含まれる1個から数個のアミノ酸残基が置換、挿入、及び/又は欠失し、かつ細胞透過性を有する配列を含む。
一実施形態において、細胞透過性配列は、Tatのアミノ酸配列(配列番号33)、又は該アミノ酸配列に含まれる1個から数個のアミノ酸残基が置換、挿入、及び/又は欠失し、かつ細胞透過性を有する配列を含む。
細胞透過性ペプチドとして、2種以上の細胞透過性ペプチドを組み合わせて用いてもよい。目的の特定の細胞に対して特異的な細胞透過性ペプチドを選択することもできる。
「サルコシン残基を含むリンカー」とは、
Figure 2020054126
で表されるサルコシン残基を含む、又はからなるリンカーを意味する。リンカー中に含まれるサルコシン残基の数(上記式中のnの値)は、限定しないが、例えば2〜20、3〜12、4〜8、5〜7又は6、又は6以上であってよい。サルコシン残基はPEGと比較しても高い親水性を示し、サルコシン残基を含むリンカーは、in vivo及びin vitroの両方において、水溶液中におけるペプチドの安定性に寄与する。さらに、サルコシン残基を含むリンカーの排除体積が小さいことから、細胞への効率的な取り込みが期待される。
「細胞内小胞からの脱出能を有するドメイン」とは、マクロピノサイトーシス等を介して物質が細胞膜を超えて細胞内に移行した後に、細胞内小胞(例えばエンドソーム)から脱出することを促すドメインを意味する。細胞内小胞からの脱出能を有するドメインとしては、Lonn, P. et al., Scientific Reports, 2016, 6, 32301に記載のものを使用することができる。例えば、細胞内小胞からの脱出能を有するドメインの例として、GWWG(配列番号73)、GWFWG(配列番号74)、GFWG(配列番号75)、GFWFG(配列番号76)、GWGGWG(配列番号77)、又はGWWWG(配列番号78)、好ましくはGWWG(配列番号73)を含む、又はからなるアミノ酸配列が挙げられる。
一実施形態において、本発明のペプチドは、細胞透過性配列、サルコシン残基を含むリンカー、及び細胞内小胞からの脱出能を有するドメインをN末端から順番に含む。本発明のペプチドは、例えば、固相法等の一般的なペプチドの合成方法に従って合成することもできるし、遺伝組換えを用いて生物工学的に作製することもできる。また、別に調製した細胞透過性配列と細胞内小胞からの脱出能を有するドメインを、例えば架橋反応によりリンカーを介して化学的に結合することもできる。本発明のペプチドを組み換えDNA技術により作製する場合、例えば、細胞透過性配列をコードするDNA断片を、細胞内小胞からの脱出能を有するドメインをコードするDNA断片の少なくとも一端に、適当なDNAアダプターとの連結反応により結合することができる。かかる遺伝子操作法は分子生物学の分野で当業者によく知られている。
本発明のペプチドは、細胞透過性配列、サルコシン残基を含むリンカー、及び細胞内小胞からの脱出能を有するドメインに加えて、任意の配列、例えばオルガネラ移行配列をさらに含むことができる。オルガネラ移行配列は、特定の細胞内オルガネラに対して親和性又は透過性を有するペプチドの配列を指す。オルガネラ移行配列を加えることで、植物細胞内の任意のオルガネラに、目的の物質を送達することが可能となる。オルガネラ移行配列の例として、例えば、核を標的とする核移行シグナル(nuclear localization signal、NLS)、及びペルオキシソーム標的シグナル(peroxisomal targeting signal、PTS)等が挙げられる。また、ミトコンドリア又は葉緑体に対して親和性又は透過性を有するペプチドの配列を用いることもできる。より具体的には、クラミドモナスフェレドキシン(Cf)及びクラミドモナスRubiscoアクチバーゼ(CRa)起源の葉緑体移行ペプチド、ミトコンドリアマトリックス標的シグナルペプチド(Biochemical and Biophysical Research Communications, 1996, 226, pp.561-565)、ミトコンドリア内膜標的シグナルペプチドであるSS01、SS02、SS31、及びSS20(The AAPS Journal, 2006, 8, pp.E277-E283)、50Sリボソームタンパク質L28、50Sリボソームタンパク質L24、50Sリボソームタンパク質L27、RuBisCoスモールチェーン、LHCII type 1等を挙げることができるがこれらに限定されない。
オルガネラ移行配列の具体例としては、例えば以下の配列:PKKKRKV(配列番号79)、SKL(配列番号80)、MAMAMRSTFAARVGAKPAVRGARPASRMSCMA(配列番号81)、MQVTMKSSAVSGQRVGGARVATRSVRRAQLQV(配列番号82)、MATMVAGISLRGPVMSSHRTFSVTKRASLPQSKLSSELSFVTSQLSGLKISSTHFISSSAPLSVPFKPSLQPVA(配列番号83)、MAALQSSFAGLSTSFFGQRFSPPLSLPPLVKSTEGPCLIQA(配列番号84)、MAVSFSLVGAFKGLSLASSSSFLKGDFGAAFPVAPKFSVSFPLKSPLTIES(配列番号85)、MASSVLSSAAVATRSNVAQANMVAPFTGLKSAASFPVSRKQNLDITSIASNGGRVQC(配列番号86)、MAASTMALSSPAFAGKAVKLSPAASEVLGSGRVTMRKTV(配列番号87)、及びMLSLRQSIRFFK(配列番号88)を挙げることができる。これらのペプチド配列に含まれる1個から数個のアミノ酸残基が置換、挿入、及び/又は欠失したペプチド配列を好適に使用できる場合もある。これらのうちの1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
本発明のペプチドは、目的の物質を植物細胞又は微細藻類(本明細書では、「植物細胞」と「微細藻類」をあわせて単に「標的細胞」とも記載する)に導入するための機能を有し得る。したがって、一態様において、本発明は、本発明のペプチドからなる、標的細胞への目的の物質の導入剤に関する。また、本発明は上記物質の導入剤を含む、目的の物質を標的細胞に導入するための組成物に関する。本組成物は、上記導入剤に加えて、例えば、水又は油等の媒体、緩衝剤、及び/又は塩等を含んでよい。
一実施形態において、本発明のペプチド又は物質の導入剤は、ポリカチオン配列を含む、又は細胞透過性配列とポリカチオン配列とを含むキャリアペプチドと併用される。一実施形態において、本発明は、発明のペプチド又は物質の導入剤と上記キャリアペプチドの組み合わせ、又は上記キャリアペプチドと組み合わせて使用するための発明のペプチド又は物質の導入剤に関する。
キャリアペプチドは、ポリカチオン配列を含むか、又は細胞透過性配列とポリカチオン配列とを含む。細胞透過性配列を含む場合、その配列の詳細、例えば具体的な配列については、本明細書において記載した通りである。
ポリカチオン配列は、リシン(K)、アルギニン(R)及びヒスチジン(H)から選ばれる少なくとも3個のアミノ酸残基を含み、かつ生理学的条件下で核酸と安定した結合を形成するペプチド配列である。正に荷電したアミノ酸残基(カチオン性アミノ酸残基)のリシン、アルギニン及びヒスチジンのほかに、ポリカチオン成分は、その全体的な性質が十分にカチオン性を保持して生理学的条件下で核酸と安定した結合を形成するという条件で、中性アミノ酸を含むこともできる。これは核酸を添加する簡単な実験で検査できる。例えば、アガロースゲル電気泳動において核酸バンドの遅延を起こすのに十分なほど安定しているペプチド−核酸複合体を形成するペプチドが適している。この核酸バンドの遅延は、ペプチド−核酸複合体がアガロースゲル電気泳動の間保持されることを示すものである。
ポリカチオン配列は少なくとも3個のリシン、アルギニン又はヒスチジンを含むが、上限は限定しない。ポリカチオン配列は最高450個のアミノ酸残基を含むことができ、それでもなお機能することが知られている(Proc Natl Acad Sci USA 87, 3410-3414, 1990)。しかしながら、ポリカチオン配列の長さは5〜100個のアミノ酸残基であることが好ましく、より好ましくは5〜50個、さらに好ましくは7〜20個のアミノ酸残基である。ポリカチオン配列中のカチオン性アミノ酸残基の割合は、好ましくは40モル%以上であり、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上である。ポリカチオン性アミノ酸残基のみからなるポリカチオン配列が最も好ましく使用される。
ポリカチオン配列は、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上、さらに好ましくは7個以上で、好ましくは30個以下、より好ましくは25個以下、さらに好ましくは20個以下のリシン、アルギニン及び/又はヒスチジン残基を含む。さらに、ポリカチオン配列は、一連の3個以上の連続したリシン、アルギニン及び/又はヒスチジン残基を有することが好ましく、一連の5個以上の連続したリシン、アルギニン及び/又はヒスチジン残基を有することがさらに好ましく、一連の7個以上の連続したリシン、アルギニン及び/又はヒスチジン残基を有することが特に好ましい。カチオン性アミノ酸残基のうち、アルギニンの割合が高いと細胞内への導入が早くなる傾向があり、ヒスチジン及びリシンの割合が高いと細胞内への導入が遅くなる傾向がある。細胞内への導入速度は、ポリカチオン配列を適宜選択することによって制御することができる。ポリカチオン配列の好ましい例として、KH又はRHの繰り返し配列、例えば、KH又はRHの3〜20の繰り返し配列、より好ましくはKH又はRHの5〜15の繰り返し配列、さらに好ましくは7〜12の繰り返し配列が挙げられる。アルギニン(R)の連続配列、例えば、Rの3〜20の連続配列、好ましくはRの5〜15の連続配列、さらに好ましくはRの7〜12の連続配列、リシン(K)の連続配列、例えば、Kの3〜20の連続配列、好ましくはKの5〜15の連続配列、さらに好ましくはKの7〜12の連続配列、ヒスチジン(H)の連続配列、例えば、Hの3〜20の連続配列、好ましくはHの5〜15の連続配列、さらに好ましくはHの7〜12の連続配列も例として挙げられる。
ポリカチオン配列の具体例としては、例えば次の配列を挙げることができる。RRRRRR(配列番号89)、KHKHKHKHKHKHKHKHKH(配列番号90)。
キャリアペプチドは、細胞透過性配列とポリカチオン配列の線状融合体に相当する構成成分を含む。この融合体においては、ポリカチオン配列が細胞透過性配列のN末端及び/又はC末端に結合されることが好適である。細胞透過性配列に対して上記のポリカチオン配列を1個又は2個以上、好ましくは1個から数個、より好ましくは1個から3個程度結合することができ、特に好ましくは細胞透過性配列に対してポリカチオン配列を1個結合することができる。結合は通常のペプチド結合反応に従い化学的に行ってもよく、あるいはリガーゼのような酵素を用いて生物学的に行うこともできる。例えば、固相法などの一般的なペプチドの合成方法に従って行うこともできる。ポリカチオン配列に対して細胞透過性配列を結合するにあたり、両者の間に適宜のオリゴペプチドリンカーなどを介在させることもできる。例えば、1個から数個のアミノ酸からなるリンカーを介在させることができるが、該リンカーを構成するアミノ酸残基は適宜選択することができる。細胞透過性ペプチドはN末端でその特性を示すので、細胞透過性配列はポリカチオン配列のN末側に結合することが好ましい。キャリアペプチドは組み換えDNA技術により得ることもできる。例えば、ポリカチオン配列をコードするDNA断片を、細胞透過性配列をコードするDNA断片の一端又は両端に、適当なDNAアダプターとの連結反応により、又はin vitro突然変異誘発により結合する。かかる遺伝子操作法は分子生物学の分野で当業者によく知られている。
一実施形態において、キャリアペプチドは核酸と複合体を形成している。複合体の形成は、例えばキャリアペプチドと核酸とを溶液中で混合することにより実施できるが、その場合、キャリアペプチドの濃度は、通常10μg/mL〜10mg/mL、好ましくは100μg/mL〜1mg/mLであり、核酸溶液の濃度は、通常1μg/mL〜10mg/mL、好ましくは10μg/mL〜1mg/mLとすることができる。キャリアペプチド又は当該複合体を本発明のペプチド又は物質の導入剤と併用することで、核酸の導入効率を高めることが可能となる。
本発明のペプチド又は物質の導入剤により導入される目的の物質、及び標的細胞について以下説明する。
2.植物細胞又は微細藻類に導入される目的の物質
本発明者は、マクロピノサイトーシス阻害剤(具体的には、アミロライド(amiloride;Commisso, C. et al. Nature 497, 633-637 (2013))、サイトカラシンD(cytochalasin D; Nakase, I. et al. Mol. Ther. 10, 1011-1022 (2004))の存在下では、本発明のペプチドによる標的細胞への物質の導入が、明確に阻害されることを確認している。したがって、理論により限定されるものではないが、本発明のペプチドはマクロピノサイトーシスによる細胞への外液の取り込みを促すことによって、目的の物質の導入を促し得ると考えられる。
本明細書において、「植物細胞又は微細藻類に導入すべき目的の物質」(以下、単に「目的の物質」とも記載する)の種類及び性質は、特に限定されない。目的の物質は、例えばタンパク質、多糖、核酸、化合物、又はそれらの混合物であってよい。
タンパク質の例として、構造タンパク質、分泌タンパク質、酵素、抗体、標識タンパク質、調節タンパク質、及び選択マーカータンパク質(例えばカナマイシン耐性を生ずるNPT(neomycin phosphotransferase)II、アンピシリン耐性を生ずるβラクタマーゼ等)、等のいずれであってもよい。具体的には、例えばBSA(Bovine serum albumin)、ADH(alcohol dehydrogenase)、改変YFPであるCitrine、NPT II等が挙げられる。目的タンパク質の好ましい例として、ゲノム編集タンパク質が挙げられる。本明細書において、「ゲノム編集」又は「ゲノム改変」とは、ゲノム上の標的部位を特異的に切断及び編集、例えば野生型のゲノム遺伝子に対して、特定の遺伝子をノックイン又はノックアウト等することを指す。ゲノム編集タンパク質の例として、TALEN(Transcription activator-like effector nuclease)、Cas9(CRISPR associated protein 9)、及びZFN(zinc finger nuclease)、好ましくはTALEN及びCas9が挙げられる。2以上の目的タンパク質を同時に標的植物細胞に導入することもでき、例えば選択マーカータンパク質と他の目的のタンパク質を同時に導入することで、選択マーカーに基づいてタンパク質が導入された細胞を選択することが可能となり得る。ゲノム編集タンパク質がCas9である場合、ゲノムを編集又は改変するためには、ガイドRNAを導入する必要がある。ガイドRNAは、Cas9と共に細胞内に送達されてもよいが、他の手法により細胞内に導入されてもよい。そのような手法として、ガイドRNA、又はガイドRNAを含むプラスミド等のベクターのトランスフェクション等が挙げられる。
多糖の例として、デンプン、グリコーゲン、アガロース、ペクチン、デキストラン等の水溶性多糖、並びにセルロース及びキチン等の水不溶性多糖が挙げられ、好ましくは水溶性多糖である。
核酸の例として、DNA又はRNA(例えば、ゲノム編集の場合には上記ガイドRNA)が挙げられ、核酸は線状であってもよいし環状であってもよい。また一本鎖であっても二本鎖であってもよい。核酸は、あらゆるタイプ及び大きさの核酸分子、例えばcDNA、プラスミド、ゲノムDNA及びこれらの誘導体を含む核酸が包含されるものとする。また、これに加えてかかる核酸に対しては、化学的修飾を施すことも可能である。好適な修飾を行った核酸の例としては、例えばチオエートやジチオエートを挙げることができる。この点に関して、別の好適な核酸誘導体については、例えば、Uhlmann & Peymann, Chemical Reviews, 90(4), 543-584, 1990において言及されている。さらに、ヌクレオチド塩基に化学的修飾を行った核酸も用いることが可能である。核酸を細胞に導入することで、細胞の形質転換を行うことができる。
3.標的植物細胞又は微細藻類
本発明において標的植物細胞の種類は特に制限されず、単子葉植物及び双子葉植物を含む被子植物、裸子植物、コケ植物、シダ植物、草本植物及び木本植物等いずれの植物細胞にも本発明を適用できる。植物の具体例としては、例えば、ナス科[ナス(Solanum melongena L.)、トマト(Solanum lycopersicum)、ピーマン(Capsicum annuum L. var. angulosum Mill.)、トウガラシ(Capsicum annuum L.)、タバコ(Nicotiana tabacum L.)等]、イネ科[イネ(Oryza sativa)、コムギ(Triticum aestivum L.)、オオムギ(Hordeum vulgare L.)、ペレニアルライグラス(Lolium perenne L.)、イタリアンライグラス(Lolium multiflorum Lam.)、メドウフェスク(Festuca pratensis Huds.)、トールフェスク(Festuca arundinacea Schreb.)、オーチャードグラス(Dactylis glomerata L.)、チモシー(Phleum pratense L.)等]、アブラナ科[シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、アブラナ(Brassica campestris L.)、キャベツ(Brassica oleracea L. var. capitata L.)、ダイコン(Raphanus sativus L.)、ナタネ(Brassica campestris L., B. napus L.)等]、マメ科[ダイズ(Glycine max)、アズキ(Vigna angularis Willd.)、インゲン(Phaseolus vulgaris L.)、ソラマメ(Vicia faba L.)等]、ウリ科[キュウリ(Cucumis sativus L.)、メロン(Cucumis melo L.)、スイカ(Citrullus vulgaris Schrad.)、カボチャ(C. moschata Duch., C. maxima Duch.)等]、ヒルガオ科[サツマイモ(Ipomoea batatas)等]、ユリ科[ネギ(Allium fistulosum L.)、タマネギ(Allium cepa L.)、ニラ(Allium tuberosum Rottl.)、ニンニク(Allium sativum L.)、アスパラガス(Asparagus officinalis L.)等]、シソ科[シソ(Perilla frutescens Britt. var. crispa)等]、キク科[キク(Chrysanthemum morifolium)、シュンギク(Chrysanthemum coronarium L.)、レタス(Lactuca sativa L. var. capitata L.)、ハクサイ(Brassica pekinensis Rupr.)等]、バラ科[バラ(Rose hybrida Hort.)、イチゴ(Fragaria x ananassa Duch.)等]、ミカン科[ミカン(Citras unshiu)、サンショウ(Zanthoxylum piperitum DC.)等]、フトモモ科[ユーカリ(Eucalyptus globulus Labill)等]、ヤナギ科[ポプラ(Populas nigra L. var. italica Koehne)等]、アカザ科[ホウレンソウ(Spinacia oleracea L.)、テンサイ(Beta vulgaris L.)等]、リンドウ科[リンドウ(Gentiana scabra Bunge var. buergeri Maxim.)等]、ナデシコ科[カーネーション(Dianthus caryophyllus L.)等]、ゼニゴケ科[ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)等]の植物が挙げられる。一実施形態において、シロイヌナズナ等のアブラナ科植物、タバコ等のナス科植物が使用される。
植物細胞としては、任意の組織に由来する植物細胞を使用でき特に制限されないが、例えば、胚、カルス、花粉、葉、葯、根、根端、花、種子、さや、茎及び組織培養物等に由来する植物細胞を使用できる。
本発明において、標的細胞は微細藻類であってもよい。微細藻類としては、シアノバクテリア、光合成細菌、珪藻、黄緑藻、渦鞭毛藻、ユーグレナ類等、及びクラミドモナス科の藻類が挙げられる。一実施形態において、微細藻類は、ユーグレナ類、例えばミドリムシ属、例えばE. glacilisである。一実施形態において、クラミドモナス科の藻類は、クラミドモナス属藻類、例えばコナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)である。
4.標的植物細胞又は微細藻類に目的の物質を導入するためのキット
一態様において、本発明は、標的植物細胞又は微細藻類に導入すべき目的の物質、及び本明細書に記載のペプチド又は物質の導入剤を含む、標的植物細胞又は微細藻類に目的の物質を導入するためのキットに関する。本態様において、ペプチド、標的細胞に導入すべき目的の物質、及び標的細胞の構成については上記の通りであるからここでは記載を省略する。本発明のキットは、上記目的の物質、及びペプチド又は物質の導入剤に加えて、取り扱い説明書、本明細書に記載のキャリアペプチド、細胞導入のための試薬、及び器具等を含んでもよい。
5.標的植物細胞又は微細藻類に目的の物質を導入する方法、又は標的植物細胞又は微細藻類を形質転換する方法
一態様において、本発明は、細胞透過性配列、リンカー、及び細胞内小胞からの脱出能を有するドメインを含むペプチドの存在下で、目的の物質を標的植物細胞又は微細藻類に接触させる工程を含む、目的の物質が導入された標的植物細胞又は微細藻類を生産する方法、又は標的植物細胞又は微細藻類に目的の物質を導入する方法に関する。前記ペプチドは、目的の物質と同時に、標的植物細胞又は微細藻類に添加してもよいし、異なるタイミングで(例えば、目的の物質を添加する前に)添加してもよい。
本態様において、物質の導入剤、目的の物質、標的植物細胞、及び微細藻類については上記の通りであるからここでは記載を省略する。
本態様において、ペプチドに含まれる細胞透過性配列及び細胞内小胞からの脱出能を有するドメインは、上記「1.ペプチド」において記載した通りである。本態様において、ペプチドに含まれるリンカーは、限定しないが、化学リンカー、例えばジスルフィドリンカー、マレイミドリンカー、及びPEGリンカー(2〜20、3〜12、又は4〜8個のPEGを含むリンカー)、サルコシン残基を含むリンカー等、並びにペプチドリンカー、例えばグリシンとセリンから構成されるリンカー(GGSリンカー及びGSリンカー)が挙げられる。リンカーは、サルコシン残基を含むリンカー等の窒素原子を含むリンカーであってよい。本態様におけるペプチドは、例えば上記「1.ペプチド」において記載したペプチドであってよい。
目的の物質を標的細胞に接触させる工程は、当技術分野で公知の方法により実施でき、目的の物質を標的細胞内に導入できる限り限定されない。本工程には、1又は2種以上の目的物質をあらかじめ所定の溶媒(例えば、水、水と親水性有機溶媒との混合溶媒等)に溶解した溶液を用いてもよい。
本工程の条件は、目的の物質、ペプチド、及び標的細胞の種類、並びに細胞への毒性等を考慮して定めることができる。条件には、温度、圧力、時間、並びにペプチド及び目的物質の温度等が含まれる。例えば、本明細書に記載のペプチドの存在下で、目的の物質の溶液を標的細胞に接触させ、例えば常温(20℃〜35℃、22℃〜30℃、24℃〜28℃又は約26℃の温度)で、インキュベートすることにより実施できる。インキュベーション時間は、例えば1分以上、2分以上、5分以上、10分以上、20分以上、又は30分以上であってよく、48時間以下、24時間以下、12時間以下、6時間以下、又は2時間以下であってよく、例えば1分〜48時間、5分〜12時間又は10分〜2時間であってよい。本工程におけるペプチド又は物質の導入剤の濃度は、例えば0.1μM以上、1μM以上、又は10μM以上であってよく、100mM以下、10mM以下、又は1mM以下であってよく、例えば0.1μM〜100mM、1μM〜10mM、又は10μM〜1mMであってよい。本工程における目的の物質の濃度は、例えば1μg/ml以上、10μg/ml以上、50μg/ml以上、75μg/ml以上であってよく、10mg/ml以下、1mg/ml以下、200μg/ml以下、又は125μg/ml以下であってよく、例えば1μg/ml〜10mg/ml、50μg/ml〜200μg/ml、又は約100μg/mlであってよい。接触は、大気圧下で行ってもよいし、減圧下、加圧下、又はこれらを組み合わせた圧力条件下のいずれで行ってもよい。
目的物質の接触工程の前に、あらかじめ、本発明に係るペプチドを標的細胞等に接触させる前処理工程を実施してもよい。前記キャリアぺプチドと複合化した目的物質を、標的細胞等に導入する態様では、前処理工程を実施した後に、前記接触工程を実施するのが好ましい。前処理工程についても、接触工程と同様の観点で、条件を調整することができる。対象がカルスの態様では、本発明に係るペプチドをカルスに接触させ(例えばペプチドを含む液中にカルスを浸漬し)、減圧した後、加圧することにより、前処理工程を実施するのが好ましい。
接触工程は、培養細胞等の細胞に対して行うこともできるし、例えば植物の胚、カルス、花粉、葉、葯、根、根端、花、種子、さや、茎等の植物組織、及び組織培養物に対して直接行うこともできる。
本発明の物質導入方法は、比較的短時間で物質の導入を行うために特に優れている。また、本発明の方法は、ペプチドと目的の物質の混合又はコンジュゲーション等の事前処理を必要とせずに、単にペプチドの存在下で目的の物質と標的細胞を混合するだけで物質を標的細胞に導入し得るため、簡便かつ汎用性が高いものであり得る。
一態様において、本発明は、本明細書に記載のペプチドの存在下で、目的の核酸分子を標的植物細胞又は微細藻類に接触させる工程を含む、形質転換された標的植物細胞又は微細藻類を生産する方法、又は標的植物細胞又は微細藻類を形質転換する方法に関する。本方法において、目的の物質として核酸分子を用いる以外の構成は、上記目的の物質を導入する方法と同様である。
本発明の形質転換方法は、上記工程により得られた形質転換された植物細胞から、さらに形質転換体を得る工程を含んでもよい。形質転換体は従前公知の方法により得ることができ、例えば形質転換を行った組織又は細胞を必要に応じて脱分化させてカルスを得た後、再分化させて植物体を得ることができる。
目的の物質がTALEN、Cas9、及びZFN等のゲノム編集タンパク質である場合、本発明の物質の導入方法は、ゲノム編集方法として用いることができる。すなわち、一実施形態において、本発明は、ゲノム改変細胞を生産する方法、又は標的細胞のゲノムを編集若しくは改変する方法に関し、本方法は、本明細書に記載のペプチドの存在下で、ゲノム編集タンパク質を標的植物細胞又は微細藻類に接触させる工程を含む。ペプチド、ゲノム編集タンパク質、及び標的細胞、並びに接触工程の構成については上記の通りである。
一実施形態において、本発明の方法における接触は、本明細書に記載のキャリアペプチド又はキャリアペプチドと核酸の複合体の存在下で行われる。キャリアペプチドの詳細については、「1.ペプチド」において記載した通りである。接触をキャリアペプチド又は複合体の存在下で行うことで、核酸の導入効率を高めることが可能となる。
接触をキャリアペプチドの存在下で行う場合、その濃度は限定しないが、例えば0.1μM以上、1μM以上、又は10μM以上であってよく、100mM以下、10mM以下、又は1mM以下であってよく、例えば0.1μM〜100mM、1μM〜10mM、又は10μM〜1mMであってよい。
一実施形態において、本発明は、上記の方法により得られたゲノム改変植物細胞から、ゲノム改変植物を作出する工程を含む、ゲノム改変植物を生産する方法に関する。ゲノム改変植物細胞からゲノム改変植物を作出する工程は当業者には公知であり、例えばゲノム改変を行った組織又は細胞を必要に応じて脱分化させてカルスを得た後、再分化させて植物体を得ることができる。本方法により、任意の遺伝子を改変した植物を得ることができるため、本方法は品種改良等に役立てることができる。
(材料と方法)
材料
dTat-EED4[d(RRRQRRKKR:配列番号33)-(Sar)6-GWWG(配列番号73)、2360.69Da((Sar)6は6個のサルコシン残基からなるリンカーを指す。以下、同様である)]、dTat-EED5 [d(RRRQRRKKR)-(Sar)6-GFWFG, 2468.83 Da], dTat [d(RRRQRRKKR), 1339.62 Da], EED4 [(Sar)6-GWWG, 1039.09 Da] 及びEED5 [(Sar)6-GFWFG, 1147.23 Da]は、それぞれ理研脳科学総合研究センターにより合成された。Retro-Tat(57-49)[RRRQRRKKR(配列番号33)、1339.62Da]は、Eurofins Genomics LLCにより合成された。シトリン(27 kDa)は、過去の報告に従って合成及び精製した(Ng, K. K. et al., PLoS ONE, 2016, 11, e0154081)。Dextran-Texas Red(70 kDa)はInvitrogen(Carlsbad, CA)から購入し、Evans BlueはSigma-Aldrich(St. Louis, MO)から購入した。
植物細胞培養及び増殖条件1
タバコ(Nicotiana tabacum)BY-2 細胞懸濁培養物は、理研バイオリソース研究センターから入手した。細胞は、26℃の暗室において改変Linsmaier and Skoog培地中で130 rpmで維持し、過去の報告に従って(Nagata, T. et al., International Review of Cytology, 1992, 132, pp. 1-30)、1週間間隔で継代培養した。
本実施例においてモデル植物系として利用されるArabidopsis thalianaは、以前に用いたものと同一の条件で増殖させた(Lakshmanan M. et al., Biomacromolecules, 2012, 14, pp. 10-16)。ミドリムシ細胞は、26℃、100 rpmでCM培地(pH 3.5)で維持し、以前に記載の通りに一週間間隔で継代培養した(Cramer M. et al., Arch. Mikrobiol., 1952, 17, pp. 384-402)。
円二色性(CD)分光
水中のペプチド(10 μM)のCDスペクトルをJasco J-820 CD spectropolarimeterを用いて測定した。バックグラウンドスキャンは水によって得た。測定は、経路長0.1 cmの石英キュベットを用いて行った。各スペクトルは、1 nm分解能で190 nm〜240 nmの10回のスキャンの平均であり、1 nmのバンド幅で200 nm min-1で得た。
ペプチド導入法1
タバコBY-2細胞へのタンパク質内在化は、96ウェルマイクロプレートを用いて行った。対数的に増殖している細胞(継代培養3日後)を培地により0.5のOD600まで希釈し、80 μlを各wellに添加した。その後、細胞を、100 μg/mlのデキストラン又はシトリンの存在下で、9 nM〜9 mMのdTat-EED4ペプチドにより処理した。培地を最終容量100μlまで各wellに添加し、その後、分析前に26℃で1時間インキュベーションした。シロイヌナズナ(A. thaliana)の葉を用いた実験では、4.4 mMのdTat-EED4ペプチド、100 μg/mlのデキストラン又はシトリン、及びMilli-Q水を含む導入溶液を、最終容量100μlで調製した。その後、過去の報告に従って葉に前記溶液を浸潤させ、分析前に26℃で1時間インキュベーションした(Lakshmanan M. et al.、上掲)。ミドリムシへのタンパク質内在化は、96-wellマイクロプレートを用いて行った。細胞は、0.22のOD730まで培養し、80μlを各ウェルに添加した。細胞を100 μg/mlのデキストラン存在下で、9 nM〜900 μMのdTat-EED4ペプチドにより処理した。培地を最終容量100μlまで各wellに添加し、その後、分析前に26℃で100rpmにて24時間、48時間、又は72時間インキュベーションした。
共焦点レーザー走査顕微鏡観察条件1
タバコBY-2細胞及びミドリムシ細胞へのデキストラン又はシトリンの内在化は、共焦点顕微鏡(LSM 700, Carl Zeiss, Oberkochen, Germany)及びZen 2011 operating softwareを用いて、488 nm(シトリン)及び555 nm(デキストラン)の励起波長において、記載された様々な拡大率でマイクロプレートから直接可視化した。15分間の間、1m秒間隔で140フレーム取得することにより、経時的に画像取得を行った。葉のサンプルは、過去の報告に従って調製し、観察した(Lakshmanan M. et al.、上掲)。
細胞増殖及び生存率の経時分析
(90 μM又は900 μMのdTat-EED4ペプチドで処理した)シトリン内在化BY-2細胞の増殖を、10日間の間、特定の時点においてSpectraMax(登録商標)M2 スペクトロフォトメータ(Molecular Devices, Sunnydale, CA)を用いて、細胞の600 nmの光学的濃度を測定することによってモニターした。細胞の生存率を、蒸留水中の0.15 mg/mlのEvans blue(1:1)とともに細胞をインキュベーションし、その後、1% SDSを含む水メタノール50%液中で結合した染料を溶解させ、600nmでのスペクトロフォトメトリックな定量を行うことにより決定した。詳細は、Iriti, M. et al., 2006, 44, pp. 893-900に記載の方法に従った。
細胞生存性分析方法1
BY-2 細胞を、様々な濃度のdTat-EED4ペプチドとともに26℃で1時間又は24時間インキュベーションし、細胞生存率を上記の通り評価した。
(結果)
ペプチドのCDスペクトルの解析
本発明のペプチド(dTat- EED4及び dTat -EED5)について、円偏光二色性(CD)スペクトルを測定して、二次構造を分析した。比較参照として、Retor-Tat(57-49)及びdTatについても同様に測定した。Retro-TatのCDスペクトルは、195nmに極小値がある、典型的な構造化されていないペプチドのCDスペクトルである。結果を図1に示す。図1に示す結果から、dTat-EED4及び dTat-EED5のCDスペクトルはいずれも、Retro-TatのCDスペクトルと鏡像関係になっていて、明確な二次構造が認められないことが理解できる。dTatのCDスペクトルは、dTat-EED4及び dTat -EED5と比較して、低い程度ではあるが、構造化が認められる。以下の実施例に示す通り、dTat -EED4及び dTat- EED5はいずれも、dTatのみのドメインでは達成し得ない、優れた物質導入性を示すが、このCDスペクトル分析の結果は、本発明のペプチドが示す物質導入性には、二次構造化を要しないことが理解できる。
dTat- EED4ペプチドによるタバコBY-2細胞へのデキストランの導入
上記導入法1に記載した通りに、dTat-EED4ペプチドについて、70kDaデキストランのタバコBY-2細胞への送達を試み、促進性能を評価した。デキストランの存在下で、細胞を、9 nMから9 mMの広い濃度範囲のdTat-EED4で処理した。上記観察条件1に従って、共焦点レーザー顕微鏡分析を行ったところ、900μM以上、例えば2.2 mM以上の濃度のdTat-EED4の存在下での1時間の短いインキュベーション中に、細胞がデキストランを内在化できたことを示した(図2)。一方、低濃度(90μM〜900μM、例えば220〜880 μM)のdTat-EED4は、24時間のインキュベーションによって、デキストランの細胞内取り込みを可能にした(図3)。
dTat-EED4ペプチドによるタバコBY-2細胞へのシトリンの導入
上記導入法1に記載した通りに、27 kDaのシトリンの送達を試みた。dTat-EED4により媒介されるシトリンの細胞内在化は、デキストランと比較してより効果的であり、より低濃度のペプチド(88 μM)しか必要なかった(図4)。明確な蛍光シグナルは、ペプチドの非存在下では細胞の周囲に確認されたが(図4b)、88 μM以上の濃度のdTat-EED4の存在下では大部分の細胞のサイトゾル中に明瞭に観測され(図4h)、また核中でも検出された(図4o)。さらに、経時的な実験により、シトリンの内在化が、遅くともペプチド添加後5〜10分以内に生じることが示された(図5)。
dTat-EED4ペプチド存在下でのBY-2細胞生存率
上記細胞生存性分析方法1に従って、有効ペプチド濃度でのBY-2細胞生存率及び(デキストラン及びシトリンの内在化を可能にする)インキュベーション時間を評価した。未処理又は無効な処理(デキストラン/シトリン内在化なし; 9 μM、1時間)をした細胞を、比較分析中に含めた。細胞生存率を有効処理条件でペプチドに曝露することによって試験した。その結果、約33〜68%の細胞が処理後に死滅したのに対し、未処理及び無効な処理をした細胞の生存率は同等であった(約25%の死滅細胞)(図6)。細胞生存率に加えて、シトリン内在化細胞の増殖能を10日間モニターした。dTat-EED4の代表的濃度2種(いずれも有効濃度。90及び900 μM)を選択し、未処理細胞並びにシトリン単独で処理した細胞を比較のために含めた。シトリンの存在下で90 μMのdTat-EED4で処理した細胞の増殖率及び生存率は、未処理及びシトリン単独のコントロールと同等であり、より高いペプチド濃度(900 μM)と比較して、細胞の増殖を阻害せずより高い細胞生存率を維持したことが理解できる(図7)。
dTat-EED4ペプチドによるシロイヌナズナ細胞への物質の導入
続いて、上記導入法1に記載の通りに、dTat-EED4の機能を高等植物のモデル生物であるシロイヌナズナの葉を用いて試験した。dTat-EED4非存在下では、デキストランは処理した細胞間隙にのみ観察された。対照的に、dTat-EED4は、サイトゾルや及び液胞区画を均一に満たすデキストランの細胞内在化を可能にした。一方、シトリンはペプチドなしでは内在化されず、dTat-EED4が存在する場合に明確なサイトゾルへの内在化が観察された(図8)。
dTat-EED4ペプチドによるミドリムシ細胞への物質の導入
上記導入法1に記載の通りに、dTat-EED4ペプチドを、ミドリムシ(E. glacilis)細胞へのデキストランの細胞内送達にも用いた。その結果、24hのインキュベーション後に、90 μM及び900 μMのdTat-EED4で処理した細胞において、デキストランの内在化が観察された。さらに48時間までインキュベーションした場合、900 nM及び9 μMのより低い濃度においてもデキストラン内在化細胞が観察された(図9)。
dTat- EED5ペプチドによるタバコBY-2細胞へのデキストランの導入
dTat-EED4をdTat-EED5に替えた以外は、上記「dTat- EED4ペプチドによるタバコBY-2細胞へのデキストランの導入」と同様にして、種々濃度のdTat-EED5が存在する条件下で、TR-Dex70を、タバコBY-2細胞内に導入することを試み、共焦点レーザー走査顕微鏡で観察した。その結果、dTat-EED5はdTat-EED4と比較してより低濃度、例えば90 μMの濃度でも、1時間程度の短時間のインキュベーションによって、細胞内にデキストランが導入された(データ示さず)。
dTat- EED5ペプチドによるタバコBY-2細胞へのシトリンの導入
デキストランに替えて、27kDaの蛍光タンパク質シトリンを用いた以外は同様にして、dTat- EED5ペプチドのタバコBY-2細胞内への導入挙動を観察した。その結果、dTat- EED5 についても、同様に低濃度(90 μM)の条件下で、シトリンがタバコBY-2細胞内に導入された。上記で観察した共焦点レーザー走査顕微鏡写真の例を図10及び11に示す。なお、写真中のスケールバーは50μmである。
図10(a)は、ペプチド非存在条件、(b)は、900μMのdTat -EED4が存在する条件、(c)は、90μMのdTat- EED5が存在する条件でそれぞれ、デキストランをタバコBY-2細胞に接触させ、1時間インキュベーションした後に観察した写真であり、図11(a)は、ペプチド非存在条件、(b)は、90μMのdTat-EED4が存在する条件、(c)は、90μMのdTat-EED5が存在する条件でそれぞれ、シトリンをタバコBY-2細胞に接触させ、1時間インキュベーションした後に観察した写真である。なお、図10及び11において、(b)、(c)は縮尺が異なるものを2つずつ示している。これらの写真から、所定の濃度のdTat-EED4又はdTat-EED5が存在することにより、なんらペプチドが存在しない条件下ではみられなかった、TR-Dex70又はシトリン由来の蛍光が細胞内から検出されていること、よってデキストラン又はシトリンが細胞内に導入されたことが理解できる。
dTat-EED4ペプチドとdTat-EED5ペプチドの存在下でのBY-2細胞生存率の比較
細胞生存性分析方法1と同様にして、種々の濃度のdTat- EED4及びdTat- EED5が存在する条件下で、BY-2細胞の生存率を求めた。上記した通り、dTat- EED4のデキストラン及びシトリンに対する1時間のインキュベーションでのBY-2細胞への導入有効濃度は、それぞれ900μM及び90μMであり、またdTat-EED5の同条件の導入有効濃度は、それぞれ90μM及び90μMである。dTat-EED4 及びdTat-EED5がそれぞれ導入有効濃度存在する条件下で、1時間インキュベーションした後のBY-2細胞の細胞生存率は、dTat-EED4のほうが高かった(データ示さず)。この結果から、BY-2細胞への物質導入には、dTat- EED4のほうが適していると言える。
この様に、本発明では、導入物質及び細胞種に応じて、各ペプチドの有効濃度・インキュベーション条件を決定し、その有効濃度・インキュベーション条件における細胞生存率を求め、その求められた細胞生存率に応じてペプチドを選択することにより、細胞生存率を顕著に低めることなく、物質導入を達成できる。
dTat-EED4又はdTat-EED5ペプチドによるコケ類への物質の導入
コケ類(Marchantia polymorpha)の胞子嚢からの胞子を150μLのミリQ水中で4日間インキュベーションし、4日齢の発芽胞子に対して、dTat-EED4ペプチドを用いてシトリンタンパク質を導入することを試みた。具体的には、発芽胞子をdTat-EED4(4mg/mL)及びシトリン(0.2mg/mL)と混合し、22℃で1時間インキュベーションした。コントロールとして、同濃度のシトリンのみを混合した発芽胞子を用いた。共焦点レーザー走査顕微鏡SP8Xシステム(Leica Microsystems製)を用いて時間分解法(time-gating method;0.5〜12.0 ns)により、シトリンの蛍光を観察した。励起及び発光のために、それぞれ510nmレーザー及び546 - 566 nm波長を用いた。
結果を図12に示す。スケールバーは10μmを示す。なお、参照のため、dTat-EED4ペプチド非存在条件で、同様に調製された試料の観察結果も示す。図12に示す結果から、コケ類の胞子中にシトリンが導入されたことが理解できる。
dTat-EED5ペプチドによるコナミドリムシへの物質の導入
コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)野生型細胞(cc125+)をTAP液体培地にて23℃で一定の光照射条件で培養した。これに対して、dTat-EED4ペプチド又はdTat-EED5ペプチドを用いてシトリンタンパク質を導入することを試みた。具体的には、コナミドリムシの培養細胞を900μMのdTat- EED5及び100μg/mLのシトリンと混合し、3時間インキュベーションした。コントロールとして、同濃度のシトリンのみを混合したコナミドリムシ培養細胞を用いた。上記と同様にして、共焦点レーザー走査顕微鏡にて、シトリンの蛍光を観察した。
結果を図13に示す。スケールバーは10μmを示す。なお、参照のため、dTat-EED5ペプチド非存在条件で、同様に調製された試料の観察結果も示す。図13に示す結果から、コナミドリムシ細胞中にシトリンが導入されたことが理解できる。
<核酸の導入及び他の送達媒体との併用>
(材料と方法)
ペプチド
上記と同様にして、dTat-EED4を得た。また、以下の実施例で用いたBP100-(KH)9 (配列: KKLFKKILKYL-KHKHKHKHKHKHKHKHKH、配列番号91)、及び(KH)9(配列: KHKHKHKHKHKHKHKHKH、配列番号90)はそれぞれ理研脳科学総合研究センターにより合成されたものを入手した。また、以下の実施例で用いたプラスミドは、カリフラワーモザイクウィルス35Sプロモータ及びアグロバクテリウムツメファシエンス(Agrobactrium tumefaciens)由来のDNAとともに、オプロフォルスルシフェラーゼ(Nluc)又は緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子をコードした(以下、それぞれ「p35S-Nluc-tNOS」及び「p35S-GFP-tNOS」と表記する。)。以下に記載のない実験方法の詳細は、Miyamoto, T., Tsuchiya, K., and Numata, K. (2019) Block copolymer/plasmid DNA micelles postmodified with functional peptides via thiol-maleimide conjugation for efficient gene delivery into plants. Biomacromolecules 20, 653〜661;Midorikawa, K., Kodama, Y., and Numata, K. (2019) Vacuum/compression infiltration-mediated permeation pathway of a peptide-pdna complex as a non-viral carrier for gene delivery in planta. Sci. Rep. 9, 271.;及びFujii, Y., and Kodama, Y. (2015) In planta comparative analysis of improved green fluorescent proteins with reference to fluorescence intensity and bimolecular fluorescence complementation ability. Plant Biotechnol. 32, 81〜87に記載されている。
導入対象カルスの調製
導入対象カルスをそれぞれ以下の通りに準備した。
イネ(Oryza sativa ;Nipponbare)の種子を、20 rpmで回転させながら、エタノール/水(70% v/v)中に1分間、その後、漂白剤/水(50% v/v)に30分間浸漬して、殺菌した。種子を10回殺菌水で洗浄し、ペトリ皿上で、カルス誘導培地(N6D;ラクトース(30 g/L)、カザミノ酸(0.3 g/L)、l-プロリン(2.8 g/L)、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D, 2 mg/L)、CHO basal salt mix (N6、 4.0 g/L)、及びphytagel (4 g/L)からなる。)とともに、30℃でインキュベーションした。連続的光照射下で5〜6日間、植物バイオインキュベータ(TOMY CLE-303 cultivation chamber, Tokyo, Japan)中で培養した後、得られたカルスを以下の実施例で用いた。
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana (Cal-0))の種子を、20 rpmで回転させながら、エタノール/水(70% v/v)中に1分間、その後、漂白剤/水(20% v/v)に30分間浸漬して、殺菌した。その後、種子を殺菌水で10回洗浄した。種子を、少なくとも3日間、4℃で冷却した後、半強度Murashig 及びSkoog培地(MS塩(2.2 g/L)、MES (0.5 g/L, KOHでpH 5.7に調整)、スクロース(10 g/L)、及びphytagel(3 g/L)を含む。)上で、暗条件下、22℃で成長させて、苗を得た。発芽から10日の苗を切開して胚軸を取りだし、当該胚軸をカルス誘導培地(CIM; Gamborg's B5 塩、グルコース(20 g/L)、ミオイノシトール (10 mg/L)、チアミン(2 mg/L)、ニコチン酸(0.1 mg/L)、ピリドキシン (0.1 mg/L)、MES (0.5 g/L、KOHによってpH 5.7に調整)、2,4-D (0.5 μg/mL)、キネチン (0.05 μg/L)、ビオチン(1 μg/L)、及びphytagel (6 g/L)からなる。)で培養した。暗室で20〜22日間、25℃で培養したところ、カルスを得た。このカルスを以下の実施例で用いた。
ペプチド/pDNA複合体の調製
ペプチドBP100-(KH)9又は(KH)9を含む粉末をミリQ水に溶解し、各ペプチドの濃度が1.0 mg/mLの溶液を調製した。Cy3-標識化pDNAを市販のキット(「Label IT Nucleic Acid Labeling Kit 」(Mirus Bio, LLC, Madison, WI, U.S.A))を用いて得た。BP100-(KH)9の水溶液(1 mg/mL、1 μL)を、Cy3-標識化pDNA(1 mg/mL)と、GFP-コードpDNA(p35S-GFP-tNOS、1 mg/mL)及びルシフェラーゼ-コードpDNA(p35S-Nluc-tNOS、1 mg/mL)のいずれかとを含むミリQ水(2.5 μL)と混合し、N/P比が0.5の複合体を調製した。ここで、N/P比は、アニオン性pDNAのリン(P)に対するカチオン性ペプチドの窒素(N)のモル比として定義される。(KH)9/pDNA複合体は、N/P比 0.5で、(KH)9水溶液(1 mg/mL、1 μL)とpDNA(p35S-Nluc-tNOS)水溶液(1.0 mg/mL、2.5 μL)とを混合することで調製した。それぞれの複合体を含む試料液を、25 ℃で30分間インキュベーションした後に、以下の実施例に用いた。
ペプチド/pDNA 複合体のカルスへの導入分布挙動の共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)観察
遺伝子導入後のカルスの共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)観察
上記通りに調製したイネのカルス(O. sativa ;カルス誘導から5〜6日経過後のカルス、50 mg)又はシロイヌナズナのカルス(A. thaliana ;カルス誘導から20〜22日経過後のカルス、50 mg)を、1.5 mLのミクロチューブ中で、dTat-EED4の水溶液(100 μM、96 μL) に浸漬した。浸漬したカルスをスパチュラで細片とし、1分間、−0.08 MPaの条件下で脱気し、その後、1分間、0.08 MPaで加圧した。25℃で10分間インキュベーションした後、BP100-(KH)9/Cy3-pDNA複合体のサンプル液(N/P 0.5、3.5 μL)をカルスの浸漬液に添加した。Cy3-pDNA の最終濃度を25 μg/mLとした。1分間、−0.08 MPaの条件下で脱気することにより、複合体をカルス中に浸透させ、続いて、1分間、0.08 MPaで加圧し、引き続き、25℃で3時間インキュベーションした。浸透後のカルスを、Hoechst 33258(Thermo Fisher Scientific. Waltham, MA, U.S.A.)の水溶液(20 μg/mL)に、15 分間浸漬した後、ミリQ水で3回洗浄した。これらの処理後のカルスを、共焦点レーザー走査顕微鏡(「CLSM, Leica Microsystems」 Wetzlar, Germany)を用いた蛍光画像の観察に用いた(Hoechst、励起(405 nm)、発光(430〜515 nm); Cy3、励起(514 nm)、発光(545〜615 nm))。
dTat-EED4の溶液に替えて、Milli-Q 水(96μL)を用いた以外は同様にしてイネ及びシロイヌナズナのカルスをそれぞれ処理して、比較例用カルス試料をそれぞれ調製して同様に観察した。
導入遺伝子発現の共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)観察
上記通りに調製したイネのカルス(O. sativa ;カルス誘導から5〜6日経過後のカルス、50 mg)及びシロイヌナズナのカルス(A. thaliana ;カルス誘導から20〜22日経過後のカルス、50 mg)それぞれに対して、BP100-(KH)9/pDNA (p35S-GFP-tNOS)複合体(N/P= 0.5、[pDNA] = 25 μg/mL) を、dTat-EED4 の96 μM溶液の存在下で導入した。その後、イネのカルスについては、1/2 MS培地プレート上で、30℃、連続光照射下、バイオインキュベータ中で培養した。一方、シロイヌナズナのカルスは、1/2 MS培地プレート上で、25℃、暗室中で培養した。16時間後、導入したそれぞれのカルス中のGFPの発現をCLSM 観察した(GFP、励起(488 nm)、発光(500〜580 nm))。
カルスへの遺伝子導入効率の評価
ルシフェラーゼコードDNA(p35S-Nluc-tNOS)をカルスに導入し、カルス中でのルシフェラーゼの発現をルシフェラーゼアッセイによって定量化し、その定量値を導入効率として評価した。具体的には以下の通りである。
上記通りに調製したイネのカルス(O. sativa ;カルス誘導から5〜6日経過後のカルス、50 mg)及びシロイヌナズナのカルス(A. thaliana ;カルス誘導から20〜22日経過後のカルス、50 mg)それぞれに対して、pDNA(p35S-Nluc-tNOS)とBP100-(KH)9又は(KH)9との複合体(いずれの複合体もN/P= 0.5、[pDNA] = 25 μg/mLである。)を、dTat-EED4 の96 μM溶液の存在下で導入した。また、上記カルスそれぞれに対して、同様にして、ペプチドと複合化していないpDNA (p35S-Nluc-tNOS、25 μg/mL)を、dTat-EED4の存在下で導入した。
その後、イネのカルスについては、1/2 MS培地プレート上で、30℃、連続光照射下、バイオインキュベータ中で培養した。一方、シロイヌナズナのカルスは、1/2 MS培地プレート上で、25℃、暗室中で培養した。16時間後、導入したそれぞれのカルス50mgを、ウミシイタケルシフェラーゼアッセイ溶解緩衝液100μL(Renilla Luciferase Assay Lysis Buffer; Promega, Madison, WI)中でホモジナイズ処理し、25 ℃で4時間インキュベーションして、溶解を完了した。溶解物を13,000 rpm で1分間遠心分離し、上清 (50 μL)を、2つの試薬(「Nano-GloTMLuciferase Assay Substrate 」(Promega) 及び「Nano-GloTM Luciferase Assay Buffer」 (Promega))の混合液50μLに添加した。混合後直ちに、混合物中の核発現レベルを、照度計(GloTM Max 20/20、Promega)を用いて、発光強度を相対的光単位(RLU)で測定することにより評価した。
なお、上記溶解物から得られた上清を、ミリQ水で希釈し、ブラッドフォード試薬(APRO SCIENCE, Tokushima, Japan)と混合して、595nmにおける吸光度からタンパク質を定量し、RLUをこのタンパク質の定量値で割ることにより、RLU/mg値を得た。バックグラウンド補正は、導入処理されたカルスの各RLU/mgから、導入処理していないカルスのRLU/mgの平均値を引くことで行った。4つの試料から得られた補正後のRLU/mg値から平均値を求め、この値を、導入効率の定量的評価に用いた。
また、dTat-EED4溶液に替えて、ミリQ水を用いた以外は同様に遺伝子導入を試みたカルスをそれぞれ調製し、同様に遺伝子効率を評価した。
(結果)
「遺伝子導入後のカルスの共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)観察」で記載した通り観察を行ったところ、dTat-EED4が存在しない比較例用のイネカルス試料のCLSM画像には、Cy3-pDNAの会合が認められたが、dTat-EED4が存在する実施例用のイネカルス試料のCLSM画像では、Cy3-pDNAの核との共局在化(colocalization)が認められた(データ示さず)。シロイヌナズナのカルス試料についても同様の現象が観察された。これらのことは、dTat-EED4が、複合体の細胞内導入、及びそれに続くpDNAの核への移行を促進することを示す。
「導入遺伝子発現の共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)観察」で記載した通り観察を行ったところ、イネ及びシロイヌナズナのカルス中における遺伝子発現を、CLSM観察によって視覚的に確認した。具体的には、双方のカルスからGFPの蛍光を検出した(データ示さず)。これらの結果は、dTat-EED4の存在下で、BP100-(KH)9による遺伝子導入が成功したことを示す。
「カルスへの遺伝子導入効率の評価」の結果を図14に示す。図14に示す結果から、dTat-EED4が、いずれのカルスに対しても、元々導入能のあるBP100-(KH)9/pDNA複合体の導入効率を、有意に改善したことが理解できる。さらに、dTat-EED4が、それ自体では導入能がない(KH)9/pDNA複合体の導入効率も促進することも理解できる。
さらに、複合化されていないpDNAについても、dTat-EED4が存在することにより、導入効率が改善された。pDNAのように、流体学的に大きな分子は、細胞壁を通過して、細胞膜まで到達し得ないとされているので、この結果は、特に予想外である。この結果が得られた作用にはついては明らかではないが、dTat-EED4が静電的な相互作用により、アニオン性のpDNAを凝縮したことによるものと考えられる。このことは、dTat-EED4の存在下では、pDNAの流体力学径は、BP100-(KH)9/pDNA複合体と同程度になることが動的散乱光法(DLS)で確認され、またpDNAのゼータ電位は負であるのに、dTat-EED4の存在下では正になることと整合する(データ示さず)。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。

Claims (15)

  1. 細胞透過性配列、サルコシン残基を含むリンカー、及び細胞内小胞からの脱出能を有するドメインを含むペプチド。
  2. 細胞透過性配列が、RRRQRRKKR(配列番号33)を含む、請求項1に記載のペプチド。
  3. リンカーが、6個のサルコシン残基を含む、請求項1又は2に記載のペプチド。
  4. 細胞内小胞からの脱出能を有するドメインが、GWWG(配列番号73)又はGWFWG(配列番号74)のアミノ酸配列を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド。
  5. 目的の物質を植物細胞又は微細藻類に導入するための、請求項1〜4のいずれか一項に記載のペプチド。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のペプチドからなる、標的植物細胞又は微細藻類への目的の物質の導入剤。
  7. 目的の物質がタンパク質、多糖及び核酸の少なくとも一つである、請求項5に記載のペプチド又は請求項6に記載の物質の導入剤。
  8. ポリカチオン配列を含む、又は細胞透過性配列とポリカチオン配列とを含むキャリアペプチドと併用される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のペプチド、又は請求項5〜7のいずれか一項に記載の導入剤。
  9. 目的の物質が導入された標的植物細胞又は微細藻類を生産する方法であって、
    細胞透過性配列、リンカー、及び細胞内小胞からの脱出能を有するドメインを含むペプチドの存在下で、目的の物質を標的植物細胞又は微細藻類に接触させる工程
    を含む、前記方法。
  10. 形質転換された標的植物細胞又は微細藻類を生産する方法であって、
    細胞透過性配列、リンカー、及び細胞内小胞からの脱出能を有するドメインを含むペプチドの存在下で、核酸分子を標的植物細胞又は微細藻類に接触させる工程
    を含む、前記方法。
  11. ゲノム改変された標的植物細胞又は微細藻類を生産する方法であって、
    細胞透過性配列、リンカー、及び細胞内小胞からの脱出能を有するドメインを含むペプチドの存在下で、ゲノム編集タンパク質を標的植物細胞又は微細藻類に接触させる工程
    を含む、前記方法。
  12. ペプチドが、請求項1〜5及び7のいずれか一項に記載のペプチドである、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. ペプチドを、50μM〜50mMの濃度で標的植物細胞又は微細藻類に接触させる、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前期接触が、ポリカチオン配列を含む、又は細胞透過性配列とポリカチオン配列とを含むキャリアペプチドの存在下で行われる、請求項9〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 標的植物細胞又は微細藻類に導入すべき目的の物質、及び
    請求項1〜5及び7のいずれか一項に記載のペプチド
    を含む、標的植物細胞又は微細藻類に目的の物質を導入するためのキット。
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