以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、図面には、発明の理解を容易にするため、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載することがある。X軸およびY軸は水平方向に平行であり、Z軸は鉛直方向に平行である。ただし、図面の記載は、本発明の光学素子の使用状態を限定するものではない。
まず、図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態に係る光学システム300を説明する。図1は、本実施形態に係る光学システム300を示す模式的断面図である。図1に示すように、光学システム300は、光学素子100と、刺激付与部200とを備える。光学素子100は、第1基板1と、第2基板2と、液晶層3と、複数の液晶構造体5とを含む。なお、光学素子100は、単数の液晶構造体5を含んでいてもよい。
第1基板1と第2基板2とは互いに略平行に配置される。第1基板1及び第2基板2の各々は、配向膜(不図示)を含み、透明である。「透明」は、半透明であってもよい。
液晶層3は液晶(以下、「第1液晶FL」と記載する。)を含む。第1液晶FLは複数の液晶分子を含む。液晶層3は光を透過する。液晶層3は、第1基板1と第2基板2との間に配置される。
複数の液晶構造体5の各々は液晶(以下、「第2液晶SL」と記載する。)を含む。第2液晶SLは複数の液晶分子を含む。複数の液晶構造体5の各々は、液晶構造体5の姿勢に依存して光を反射する。又は、複数の液晶構造体5の各々は、液晶構造体5の姿勢に依存して光を吸収する。更に、複数の液晶構造体5の各々は、液晶構造体5の姿勢に依存して光を透過する。
複数の液晶構造体5は液晶層3中に配置される。具体的には、複数の液晶構造体5は、液晶層3中で第1基板1に沿って配置されている。複数の液晶構造体5は液晶層3中で浮遊している。液晶構造体5は、液晶層3の配向変形を最小化するため垂直方向Dvにおける液晶層3の中央に配置されるように、弾性的駆動力を受けている。従って、液晶層3において液晶構造体5の垂直方向Dvにおける位置は、弾性的駆動力と重力との釣り合いで定まる。そこで、液晶構造体5の密度は、液晶構造体5が重力により第2基板2の表面に沈降しない程度の値を有する。例えば、液晶構造体5の密度は液晶層3の密度より小さい。ただし、弾性的駆動力と重力との釣り合いがとれて、液晶構造体5が液晶層3中で浮遊する限りにおいては、液晶構造体5の密度は液晶層3の密度より大きくてもよい。垂直方向Dvは、第1基板1に対して略垂直な方向を示す。実施形態1では、複数の液晶構造体5は間隔をあけて配置されている。
なお、複数の液晶構造体5は、液晶層3中において、互いに接触しつつ又は互いに重なりつつ、第1基板1に沿って配置されていてもよい。この場合は、第1基板1に沿って配置された複数の液晶構造体5を「1つの液晶構造体」と捉えることもできる。
また、複数の液晶構造体5は、液晶層3中において、垂直方向Dvに沿って配置されていてもよい。この場合は、垂直方向Dvに沿って配置された複数の液晶構造体5を「1つの液晶構造体」と捉えることもできる。
垂直方向Dvに沿って配置された複数の液晶構造体5を「1つの液晶構造体」と捉える場合、後述する第2条件(図3(b))における第1表面領域B1は、垂直方向Dvに沿って配置された複数の液晶構造体5のうちの第1基板1に最も近い液晶構造体5の第1表面領域B1を示す。また、第2条件における第2表面領域B2は、垂直方向Dvに沿って配置された複数の液晶構造体5のうちの第2基板2に最も近い液晶構造体5の第2表面領域B2を示す。
なお、垂直方向Dvに沿って配置された複数の液晶構造体5は、垂直方向Dvに沿って積層された複数の液晶構造体5であってもよいし、垂直方向Dvに沿って連なって配置された複数の液晶構造体5であってもよい。
また、複数の液晶構造体5は、液晶層3中において、互いに接触しつつ又は互いに重なりつつ第1基板1に沿って配置され、かつ、垂直方向Dvに沿って配置されていてもよい。この場合は、第1基板1に沿って配置され、かつ、垂直方向Dvに沿って配置された複数の液晶構造体5を「1つの液晶構造体」と捉えることもできる。
刺激付与部200は、液晶層3に刺激を付与する。従って、光学素子100の外部から液晶層3に対して刺激が付与される。液晶層3に対する刺激に応答して、第1液晶FLの配向が変化する。従って、液晶層3に対する刺激に基づく第1液晶FLの配向の変化に応じて、複数の液晶構造体5の各々は、第2液晶SLの配向を維持したまま姿勢を変更する。その結果、光学素子100の光学的特性が変化する。光学的特性とは、光を反射する特性、光を吸収する特性、又は光の位相を変化させる特性のことである。
以上、図1を参照して説明したように、本実施形態によれば、液晶構造体5の内部で第2液晶SL自体の配向を変化させるのではなく、液晶構造体5の周囲の第1液晶FLの配向を変化させて、液晶構造体5の姿勢を変更している。従って、液晶構造体の内部で液晶自体の配向を変化させる場合と比較して、本実施形態に係る光学素子100では、外部からの比較的小さな刺激によって光学的特性を制御可能である。
刺激は、例えば、電気的刺激(例えば、電圧)、機械的刺激(例えば、応力)、又は化学的刺激(例えば、化学反応)である。
例えば、刺激付与部200は、液晶層3に電気的刺激を付与する(例えば、電圧の印加)。液晶層3は電気的刺激に応答し、第1液晶FLの配向が変化する。例えば、刺激付与部200は、液晶層3に機械的刺激を付与する(例えば、応力の印加)。液晶層3は機械的刺激に応答し、第1液晶FLの配向が変化する。例えば、刺激付与部200は、液晶層3に化学的刺激を付与する(例えば、化学反応の誘起)。液晶層3は化学的刺激に応答し、第1液晶FLの配向が変化する。
本実施形態では、「刺激」は「電圧(以下、「駆動電圧」と記載する。)」である。従って、刺激付与部200は電源である。そして、刺激付与部200は、液晶層3に電気的刺激としての駆動電圧を印加する。つまり、刺激付与部200は、第1基板1との第2基板2との間に駆動電圧を印加する。
駆動電圧は、所定周波数を有する交流電圧である。液晶層3に対する駆動電圧の印加に応答して、複数の液晶構造体5の各々は、第2液晶SLの配向を維持したまま、第1液晶FLの配向の変化に応じて姿勢を変更する。その結果、光学素子100の光学的特性が変化する。
「刺激」が「駆動電圧」である場合、光学素子100は、第1電極51と、第2電極52とをさらに含む。第1電極51は、第1基板1に形成される。第1電極51は、例えば、面状電極である。第2電極52は、第2基板2に形成される。第2電極52は、例えば、面状電極である。第1電極51及び第2電極52の各々は、本実施形態では、透明電極材料により形成される。透明電極材料は、例えば、ITO(インジウム・スズ酸化物:Indium Tin Oxide)である。「透明」は、無色透明であってもよいし、有色透明であってもよいし、半透明であってもよい。そして、刺激付与部200は、第1電極51及び第2電極52を介して、第1基板1との第2基板2との間の液晶層3に駆動電圧を印加する。
図2は、光学素子100を示す模式的断面図である。なお、図2では、図面を簡略にするために、1つの液晶構造体5を図示している。図2に示すように、液晶層3は、第1領域A1と、第2領域A2とを含む。第1領域A1は、第1基板1に対向し、第1基板1に隣接している。第1領域A1は、第1基板1に対して略平行である。第2領域A2は、第2基板2に対向し、第2基板2に隣接している。第2領域A2は、第2基板2に対して略平行である。第1領域A1と第2領域A2とは、液晶構造体5を介して対向し、互いに略平行である。
第1領域A1と第2領域A2とは、第1液晶FLの配向を定める。つまり、第1領域A1での複数の液晶分子の各々の配向と、第2領域A2での複数の液晶分子の各々の配向とで、第1液晶FLの配向が定まる。
液晶構造体5は、第1表面領域B1と、第2表面領域B2とを有する。第1表面領域B1と第2表面領域B2とは対向している。第1表面領域B1と第2表面領域B2とは、第2液晶SLの配向を定める。つまり、第1表面領域B1での複数の液晶分子の各々の配向と、第2表面領域B2での複数の液晶分子の各々の配向とで、第2液晶SLの配向が定まる。
図2の例では、液晶構造体5の姿勢ベクトルPVは、第1基板1に対して略垂直である。姿勢ベクトルPVは、液晶構造体5の方位を示すベクトルである。姿勢ベクトルPVは、第1表面領域B1に対して略垂直であり、液晶構造体5の外部を向いている。
次に、図3(a)及び図3(b)を参照して、本実施形態に係る光学素子100に対する条件を説明する。図3(a)は、光学素子100の第1条件を示す図である。なお、図3(a)では、図面を簡略にするために、液晶構造体5を省略している。図3(b)は、光学素子100の第2条件を示す図である。なお、図3(b)では、図面を簡略にするために、液晶構造体5だけを図示している。
図3(a)及び図3(b)に示すように、光学素子100では、第1条件と第2条件とのうちの少なくとも1つの条件が満足される。つまり、光学素子100では、第1条件だけが満足されるか、第2条件だけが満足されるか、又は、第1条件と第2条件との双方が満足される。
以下、液晶層3の第1液晶FLを構成する各液晶分子を「液晶分子LC1」と記載する場合がある。特に、第1領域A1に存在する液晶分子LC1を「液晶分子LCA」と記載する場合がある。第2領域A2に存在する液晶分子LC1を「液晶分子LCB」と記載する場合がある。
また、液晶構造体5の第2液晶SLを構成する各液晶分子を「液晶分子LC2」と記載する場合がある。特に、第1表面領域B1に存在する液晶分子LC2を「液晶分子LCC」と記載する場合がある。第2表面領域B2に存在する液晶分子LC2を「液晶分子LCD」と記載する場合がある。
図3(a)に示すように、第1条件は、液晶層3に刺激が付与されていない時に、第1領域A1での液晶分子LCAの配向と第2領域A2での液晶分子LCBの配向とが異なることである。本実施形態では、「液晶層3に刺激が付与されていない時」は、「液晶層3に駆動電圧が印加されていない時」に相当する。また、「液晶層3に刺激が付与されている時」は、「液晶層3に駆動電圧が印加されている時」に相当する。
具体的には、第1条件は、液晶層3に刺激が付与されていない時に、XY平面に正射影された液晶分子LCAの配向と、XY平面に正射影された液晶分子LCBの配向とが異なることである。
又は、第1条件は、液晶層3に刺激が付与されていない時に、ZX平面に正射影された液晶分子LCAの配向と、ZX平面に正射影された液晶分子LCBの配向とが異なることである。
又は、第1条件は、液晶層3に刺激が付与されていない時に、XY平面に正射影された液晶分子LCAの配向とXY平面に正射影された液晶分子LCBの配向とが異なり、かつ、ZX平面に正射影された液晶分子LCAの配向とZX平面に正射影された液晶分子LCBの配向とが異なることである。
なお、XY平面は、第1基板1に略平行な面を示す。ZX平面は、第1基板1に略垂直な面を示す。
図3(b)に示すように、第2条件は、液晶層3に刺激が付与されていない時に、第1表面領域B1での液晶分子LCCの配向と第2表面領域B2での液晶分子LCDの配向とが異なることである。
具体的には、第2条件は、液晶層3に刺激が付与されていない時に、XY平面に正射影された液晶分子LCCの配向と、XY平面に正射影された液晶分子LCDの配向とが異なることである。
又は、第2条件は、液晶層3に刺激が付与されていない時に、ZX平面に正射影された液晶分子LCCの配向と、ZX平面に正射影された液晶分子LCDの配向とが異なることである。
又は、第2条件は、液晶層3に刺激が付与されていない時に、XY平面に正射影された液晶分子LCCの配向とXY平面に正射影された液晶分子LCDの配向とが異なり、かつ、ZX平面に正射影された液晶分子LCCの配向とZX平面に正射影された液晶分子LCDの配向とが異なることである。
光学素子100が第1条件を満足する場合、液晶層3の第1領域A1と第2領域A2との間に存在する複数の液晶分子LC1は、第1領域A1での液晶分子LCAの配向と第2領域A2での液晶分子LCBの配向とに応じて線形に配向変形している。また、光学素子100が第2条件を満足する場合、第1表面領域B1での液晶分子LCCの配向と第2表面領域B2での液晶分子LCDの配向とが異なる。
従って、光学素子100が第1条件と第2条件とのうちの少なくとも1つの条件を満足すると、液晶層3に刺激が付与されていない時でも、第1領域A1と第1表面領域B1との間、及び/又は、第2領域A2と第2表面領域B2との間において、垂直方向Dvにおける複数の液晶分子LC1の配向が異なる。従って、液晶構造体5の周囲の液晶分子LC1に配向変形が誘起される。そして、液晶構造体5の周囲の液晶分子LC1の配向変形が最小になるように、つまり、液晶構造体5の周囲の第1液晶FLの弾性エネルギーが最小になるように、液晶構造体5の姿勢が一意に定まる。つまり、液晶層3に刺激が付与されていない初期状態において、液晶構造体5の姿勢が一意に定まる。
従って、液晶層3に刺激を付与して液晶構造体5の姿勢を変更した後に、液晶層3に対する刺激の付与を解除すると、第1液晶FLの配向変形に起因する弾性的復元力が液晶構造体5に作用して、液晶構造体5の姿勢は、液晶層3に刺激を付与する前の姿勢に戻る。
また、光学素子100が第1条件と第2条件とのうちの少なくとも1つの条件を満足しているため、液晶層3に刺激が付与されている時には、液晶構造体5の周囲の液晶分子LC1に対して更なる配向変形が誘起される。従って、液晶層3に刺激が付与されている時においても、液晶構造体5の姿勢が一意に定まる。
その結果、液晶層3に対する刺激の付与を解除して液晶構造体5の姿勢を変更した後に、液晶層3に再び同じ刺激を付与すると、液晶構造体5の姿勢は、液晶層3に対する刺激の付与を解除する前の姿勢に戻る。
以上、本実施形態では、液晶層3に刺激が付与されていない時と付与されている時との間で、液晶構造体5の可逆的な姿勢の制御が可能である。つまり、液晶構造体5の姿勢ベクトルPVの可逆的な制御が可能である。従って、光学素子100の光学的特性の再現性を向上できる。
また、液晶層3に刺激が付与されている時では、液晶層3に刺激が付与されていない時よりも、液晶構造体5の周囲の第1液晶FLの弾性エネルギーが大きい。従って、液晶層3に対する刺激を解除すると、液晶構造体5の周囲の液晶分子LC1の弾性エネルギーが最小になるように、第1液晶FLの配向変形に起因する弾性的復元力によって、液晶構造体5の姿勢が変更される。その結果、液晶構造体5の応答速度を向上できる。
なお、光学素子100が第1条件を満足しない場合、第1領域A1での液晶分子LCAの配向と第2領域A2での液晶分子LCBの配向とが揃っている。従って、第1領域A1と第2領域A2との間に存在する複数の液晶分子LC1の配向は、液晶構造体5が存在しない領域において揃っており一様である。例えば、複数の液晶分子LC1の配向が一方向に揃っている。
また、光学素子100が第2条件を満足しない場合、第1表面領域B1での液晶分子LCCの配向と第2表面領域B2での液晶分子LCDの配向とが揃っている。従って、第1表面領域B1と第2表面領域B2との間に存在する複数の液晶分子LC2の配向は、一様である。例えば、複数の液晶分子LC2の配向が一方向に揃っている。又は、例えば、複数の液晶分子LC2が螺旋状であると、螺旋の1周期又は半周期の整数倍になるように、複数の液晶分子LC2が配向している。
なお、光学素子100が第2条件を満足する場合、液晶構造体5の第1表面領域B1と第2表面領域B2との間に存在する複数の液晶分子LC2は、第1表面領域B1での液晶分子LCCの配向と第2表面領域B2での液晶分子LCDの配向とに応じて配向変形している。
次に、図3(a)〜図13を参照して、本発明の実施形態1〜実施形態4に係る光学システム300を説明する。実施形態1〜実施形態4では、液晶層3に付与する「刺激」の一例として、液晶層3に印加する「駆動電圧」を説明する。従って、実施形態1〜実施形態4の説明において、「液晶層3に駆動電圧が印加されていない時」は、「液晶層3に刺激が付与されていない時」と読み替えることができる。また、「液晶層3に駆動電圧が印加されている時」は、「液晶層3に刺激が付与されている時」と読み替えることができる。
(実施形態1)
図3(a)及び図4〜図8(b)を参照して、本発明の実施形態1に係る光学システム300の光学素子100を説明する。実施形態1では、液晶層3の第1液晶FLAがねじれネマティック液晶であり、液晶構造体5の第2液晶SLAがコレステリック液晶である点で、実施形態1は、図1〜図3(b)を参照して説明した本実施形態と主に異なる。以下、実施形態1が本実施形態と異なる点を主に説明する。
まず、図4を参照して、実施形態1に係る光学システム300において、液晶層3に駆動電圧が印加されていない時の光学素子100を説明する。図4は、実施形態1に係る光学素子100を示す模式的断面図である。図4では、光学素子100の液晶層3に駆動電圧が印加されていない。なお、図4では、図面を簡略にするために、1つの液晶構造体5を図示している。
図4に示すように、液晶層3は第1液晶FLAを含む。第1液晶FLAは複数の液晶分子LC1を含む。図3(a)及び図4に示すように、実施形態1に係る光学素子100は第1条件を満足する。つまり、実施形態1では、XY平面に正射影された液晶分子LCAの配向と、XY平面に正射影された液晶分子LCBの配向とが異なる。具体的には、液晶層3に駆動電圧が印加されていない時に、第1液晶FLAの配向変形が、第1基板1と第2基板2との間で、ねじれ変形を示している。つまり、第1液晶FLAはねじれ配向を有している。従って、実施形態1によれば、光学素子100に第1条件を満足させることが容易である。また、第1液晶FLAはプラナー配向を有している。
特に、実施形態1では、第1液晶FLAは、ねじれネマティック液晶である。ねじれネマティック液晶は、正の誘電異方性を有する。従って、駆動電圧が印加されると、第1液晶FLAの配向は、液晶分子LC1が平臥状態から起立状態に向かうように変化する。
図4の例では、液晶層3の第1領域A1では、XY平面に平行な面内で、液晶分子LCAのダイレクターがX軸に対して「+45度」だけ傾斜している。一方、液晶層3の第2領域A2では、XY平面に平行な面内で、液晶分子LCBのダイレクターがX軸に対して「−45度」だけ傾斜している。従って、光学素子100は第1条件を満足する。なお、第1液晶FLのねじれ角は、90度に限定されず、任意の値をとり得る。
なお、第1液晶FLAはプレチルトを有する。従って、第1領域A1の液晶分子LCAは第1基板1に対するチルト角を有し、第2領域A2の液晶分子LCBは第2基板2に対するチルト角を有する。
液晶構造体5は、実施形態1では、略円板状である。例えば、液晶構造体5の直径は、ナノメートルのオーダー又はマイクロメートルのオーダーである。ただし、液晶構造体5の形状は、円板状に限定されず、任意の形状をとり得る。例えば、液晶構造体5の最大長は、ナノメートルのオーダー又はマイクロメートルのオーダーである。
液晶層3に駆動電圧が印加されていない時は、第1表面領域B1は第1基板1に略平行であり、第2表面領域B2は第2基板2に略平行である。また、第1表面領域B1は第1基板1に対向し、第2表面領域B2は第2基板2に対向している。さらに、液晶層3に駆動電圧が印加されていない時は、第1表面領域B1は、液晶構造体5のうち第1基板1に最も近い領域であり、第2表面領域B2は、液晶構造体5のうち第2基板2に最も近い領域である。
液晶構造体5は第2液晶SLAを含む。第2液晶SLは、複数の螺旋構造体7を有する。複数の螺旋構造体7の各々は選択反射性を有する。選択反射性とは、螺旋構造体7の構造と光学的性質とに応じた帯域の波長を有する光であって、螺旋構造体7の螺旋の旋回方向に整合する偏光状態を有する光を反射し、螺旋構造体7の螺旋の旋回方向と相反する偏光状態を有する光を透過する性質のことである。従って、実施形態1によれば、液晶構造体5を光反射体として機能させることができる。その結果、駆動電圧を制御して液晶構造体5の姿勢を変更することで、光の反射と透過とを切り替えたり、光を連続的に偏向したりすることができる。
複数の螺旋構造体7の各々は複数の液晶分子LC2を含む。複数の螺旋構造体7の各々において、複数の液晶分子LC2は、螺旋状に旋回している。複数の螺旋構造体7の螺旋軸AX1は、一定方向に揃っている。実施形態1では、第2液晶SLAはコレステリック液晶である。姿勢ベクトルPVは螺旋軸AX1に略平行である。なお、実施形態1では、螺旋軸AX1は、第1表面領域B1及び第2表面領域B2に対して略直交している。
なお、図4の例では、半周期の螺旋構造体7を図示しているが、螺旋構造体7の周期は、半周期に限定されず、1周期でもよい。また、螺旋構造体7は、半周期分の構造を繰り返して半周期の2倍以上の長さを有していてもよいし、1周期分の構造を繰り返して1周期の2倍以上の長さを有していてもよい。
ここで、光学素子100に第2条件を満足させる場合は、例えば、螺旋構造体7は、半周期に満たない部分又は1周期に満たない部分を有する。
なお、図3(b)及び図4に示すように、実施形態1では、光学素子100は、第2条件を満足しない。図4の例では、液晶構造体5の第1表面領域B1では、XY平面に平行な面内で、液晶分子LCCのダイレクターがX軸に対して略平行である。加えて、液晶構造体5の第2表面領域B2では、XY平面に平行な面内で、液晶分子LCDのダイレクターがX軸に対して略平行である。従って、光学素子100は第2条件を満足していない。
図4に示すように、液晶層3に駆動電圧が印加されていない時は、液晶構造体5は、第1液晶FLAの配向に応じて第1姿勢をとる。つまり、第1姿勢は、液晶層3に駆動電圧が印加されていない時の液晶構造体5の姿勢を示す。実施形態1では、液晶構造体5が第1姿勢をとっているとき、液晶構造体5の姿勢ベクトルPVは垂直方向Dvに対して略平行であり、液晶構造体5の回転角θは、略ゼロ度である。回転角θは、垂直方向Dvに対する姿勢ベクトルPVの傾斜角を示す。
液晶構造体5は反射面RFを有する。反射面RFでは、複数の液晶分子LC2の配向が揃っている。反射面RFは光を反射する。第1姿勢をとった液晶構造体5の反射面RFは平行方向Dpに略平行である。平行方向Dpは、第1基板1に対して略平行な方向を示す。実施形態1では、平行方向DpはX軸に平行である。また、姿勢ベクトルPVは、反射面RFに対して略垂直である。
例えば、第1姿勢をとった液晶構造体5に光L1が入射する。光L1は直線偏光を有する。従って、液晶構造体5は、光L1のうち、螺旋構造体7の螺旋の旋回方向(例えば右回り)に整合する偏光状態を有する光L2(例えば右円偏光)を反射面RFによって反射する。一方、液晶構造体5は、螺旋構造体7の螺旋の旋回方向(例えば右回り)と相反する偏光状態を有する光L3(例えば左円偏光)を透過する。図4の例では、液晶構造体5は、垂直方向Dvに略平行に光L2を反射している。
次に、図5を参照して、液晶構造体5の中間姿勢を説明する。図5は、光学素子100を示す模式的断面図である。図5では、光学素子100の液晶層3に第1電圧値V1を有する駆動電圧が刺激付与部200によって印加されている。従って、第1液晶FLAの配向が初期配向から変化する。つまり、第1液晶FLAが、初期配向変形から更に配向変形する。初期配向は、液晶層3に駆動電圧が印加されていない時の第1液晶FLAの配向を示す。初期配向変形は、液晶層3に駆動電圧が印加されていない時の第1液晶FLAの垂直方向Dvに沿った配向変形を示す。なお、第1電圧値V1は、駆動電圧の実効値又は最大値によって表される。
液晶層3に第1電圧値V1を有する駆動電圧が印加されている時は、液晶構造体5は、第1液晶FLAの配向の変化に応じて中間姿勢をとる。つまり、中間姿勢は、液晶層3に第1電圧値V1を有する駆動電圧が印加されている時の液晶構造体5の姿勢を示す。中間姿勢は第1姿勢と異なる。具体的には、液晶構造体5は、第1液晶FLAの初期配向変形からの更なる配向変形に応じて中間姿勢をとる。
実施形態1では、液晶構造体5が中間姿勢をとっているとき、液晶構造体5の姿勢ベクトルPVは垂直方向Dvに対して傾斜しており、液晶構造体5の回転角θは、鋭角である。図5の例では、液晶構造体5は、第1姿勢から中間姿勢まで回転角θだけ反時計回りに回転している。液晶構造体5の第1姿勢から中間姿勢への変化にともなって、反射面RFが平行方向Dpに対して回転角θだけ傾斜する。
その結果、液晶構造体5は、回転角θに応じた方向に向けて、反射面RFによって光L2を反射する。つまり、液晶構造体5は、姿勢ベクトルPVの向きに応じた方向に向けて、反射面RFによって光L2を反射する。従って、中間姿勢をとったときの液晶構造体5による光L2の反射方向は、第1姿勢をとったときの液晶構造体5による光L2の反射方向と異なる。つまり、実施形態1では、液晶構造体5の姿勢を制御することで、光を偏向できる。なお、液晶構造体5は光L3を透過する。
次に、図6を参照して、液晶構造体5の第2姿勢を説明する。図6は、光学素子100を示す模式的断面図である。図6では、光学素子100の液晶層3に第2電圧値V2を有する駆動電圧が刺激付与部200によって印加されている。第2電圧値V2は、第1電圧値V1(図4)よりも大きい。
従って、第1液晶FLAの配向が、第1電圧値V1を有する駆動電圧の印加時の配向から更に変化する。つまり、第1液晶FLAが、第1電圧値V1を有する駆動電圧の印加時の配向変形から更に配向変形する。なお、第2電圧値V2は、交流電圧の実効値又は最大値によって表される。
液晶層3に第2電圧値V2を有する駆動電圧が印加されている時は、液晶構造体5は、第1液晶FLAの配向の変化に応じて第2姿勢をとる。つまり、第2姿勢は、液晶層3に第2電圧値V2を有する駆動電圧が印加されている時の液晶構造体5の姿勢を示す。具体的には、液晶構造体5は、第1電圧値V1を有する駆動電圧の印加時の第1液晶FLAの配向変形からの更なる配向変形に応じて第2姿勢をとる。第2姿勢は第1姿勢及び中間姿勢の各々と異なる。なお、液晶構造体5の中間姿勢(図5)は、第1姿勢と第2姿勢との間の姿勢を示している。
実施形態1では、液晶構造体5が第2姿勢をとっているとき、液晶構造体5の姿勢ベクトルPVは垂直方向Dvに対して略垂直であり、液晶構造体5の回転角θは、略90度である。図6の例では、液晶構造体5は、第1姿勢から中間姿勢を経由して第2姿勢まで回転角θだけ反時計回りに回転している。液晶構造体5の第1姿勢から第2姿勢への変化にともなって、反射面RFが垂直方向Dvに対して略平行になる。
その結果、液晶構造体5は光L1を透過する。つまり、液晶構造体5は、光L2及び光L3を透過する。光L2は、直線偏光である光L1に含まれる一方の円偏光成分(例えば、右円偏光)である。光L3は、光L1に含まれる他方の円偏光成分(例えば、左円偏光)である。
以上、図4及び図6を参照して説明したように、実施形態1によれば、液晶層3に対して駆動電圧を「印加しないこと」と「印加すること」とを切り替えることで、液晶構造体5の姿勢を第1姿勢と第2姿勢との間で切り替えることができる。従って、液晶層3に対して駆動電圧を「印加しないこと」と「印加すること」とを切り替えることで、光学素子100が光L2を反射する状態と、光学素子100が光L2を透過する状態とを容易に切り替えることができる。
すなわち、液晶層3に対して刺激を「付与しないこと」と「付与すること」とを切り替えることで、光学素子100が光L2を反射する状態と、光学素子100が光L2を透過する状態とを容易に切り替えることができる。
また、図4〜図6を参照して説明したように、実施形態1によれば、液晶層3に対する駆動電圧の電圧値を制御することで、液晶構造体5の姿勢を電圧値に応じて連続的に変更できる。従って、駆動電圧の電圧値を制御することで、光L2の反射方向を連続的に変更できる。
すなわち、液晶構造体5は、液晶層3に付与される刺激の大きさに応じて姿勢を変更し、姿勢の変更に応じて光の反射方向を変更する。つまり、液晶層3に対する刺激の大きさを制御することで、液晶構造体5の姿勢を刺激の大きさに応じて連続的に変更できる。従って、刺激の大きさを制御することで、光L2の反射方向を連続的に変更できる。
さらに、実施形態1では、光学素子100が第1条件を満足している。従って、図4に示すように、液晶層3に駆動電圧が印加されていない時でも、第1領域A1と第1表面領域B1との間、及び、第2領域A2と第2表面領域B2との間において、垂直方向Dvにおける複数の液晶分子LC1の配向が異なる。従って、液晶構造体5の周囲の液晶分子LC1に配向変形が誘起される。そして、液晶構造体5の周囲の液晶分子LC1の配向変形が最小になるように、液晶構造体5の姿勢が一意に定まる。つまり、液晶層3に駆動電圧が印加されていない初期状態において、液晶構造体5の姿勢が一意に定まる。
従って、液晶層3に駆動電圧を印加して液晶構造体5の姿勢を変更した後に、液晶層3に対する駆動電圧の印加を解除すると、第1液晶FLの配向変形に起因する弾性的復元力が液晶構造体5に作用して、液晶構造体5の姿勢は、液晶層3に駆動電圧を印加する前の姿勢に戻る。
また、図6に示すように、光学素子100が第1条件を満足しているため、液晶層3に駆動電圧が印加されている時には、液晶構造体5の周囲の液晶分子LC1に対して更なる配向変形が誘起される。従って、液晶層3に駆動電圧が印加されている時においても、液晶構造体5の姿勢が一意に定まる。
その結果、液晶層3に対する駆動電圧の印加を解除して液晶構造体5の姿勢を変更した後に、液晶層3に再び同じ駆動電圧を印加すると、液晶構造体5の姿勢は、液晶層3に対する駆動電圧の印加を解除する前の姿勢に戻る。
以上、実施形態1では、液晶層3に駆動電圧が印加されていない時と印加されている時との間で、液晶構造体5の可逆的な姿勢の制御が可能である。つまり、液晶構造体5の姿勢ベクトルPVの可逆的な制御が可能である。従って、光学素子100の反射特性の再現性を向上できる。
また、液晶層3に駆動電圧が印加されている時では、液晶層3に駆動電圧が印加されていない時よりも、液晶構造体5の周囲の第1液晶FLの弾性エネルギーが大きい。従って、液晶層3に対する駆動電圧の印加を解除すると、液晶構造体5の周囲の液晶分子LC1の弾性エネルギーが最小になるように、第1液晶FLの配向変形に起因する弾性的復元力によって、液晶構造体5の姿勢が第2姿勢から第1姿勢に変更される。その結果、液晶構造体5の応答速度を向上できる。
なお、液晶構造体5の第2液晶SLAは、光を反射する限りにおいては、コレステリック液晶に限定されない。第2液晶SLAが、コレステリック液晶以外のカイラル液晶であってもよい。コレステリック液晶以外のカイラル液晶は、例えば、カイラルスメクチックC相、ツイストグレインバウンダリー相、又はコレステリックブルー相である。また、コレステリック液晶は、例えば、ヘリコイダルコレステリック相であってもよい。
次に、液晶構造体5の作製方法の一例を説明する。工程S1において、ガラス基板SB1と、クロムマスク基板SB2とを用意する。クロムマスク基板SB2は、ガラス基板の一対の主面のうちの一方の主面に、クロムマスクを形成した基板である。クロムマスクには、複数の微細孔が配列されている。微細孔の直径は、例えば、数マイクロメートルである。
工程S2において、ガラス基板SB1の一対の主面のうちの一方の主面に高分子膜PL1を形成し、クロムマスク基板SB2のクロムマスク側に高分子膜PL2を形成する。高分子膜PL1及び高分子膜PL2は、ラビングによって液晶の配向が可能であり、かつ、溶媒(例えば水)によって容易に剥がすことが可能である。溶媒は、液晶構造体5を侵食しない。
例えば、ガラス基板SB1の一方の主面と、クロムマスク基板SB2のクロムマスク側とに対して、ICP(Intrinsically Conducting Polymers)をスピンコートして、高分子膜PL1及び高分子膜PL2を形成する。ICPは、例えば、PEDOT/PSS、である。PEDOT/PSSは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)とからなる複合物である。
工程S3において、高分子膜PL1の形成されたガラス基板SB1と、高分子膜PL2の形成されたクロムマスク基板SB2とを、所定時間(例えば1分)、所定温度(例えば80℃)で加熱する。
工程S4において、ガラス基板SB1の高分子膜PL1と、クロムマスク基板SB2の高分子膜PL2とに対して、ラビング処理を実行する。
工程S5において、ラビング処理後の高分子膜PL1と高分子膜PL2とが互いに対向するように、ガラス基板SB1とクロムマスク基板SB2とでサンドイッチセルを構成して、光重合性液晶を充填する。
工程S6において、光重合性液晶を充填したサンドイッチセルに対して、クロムマスク基板SB2側から垂直に紫外光を照射する。従って、紫外光は、クロムマスクの複数の微細孔を通して、光重合性液晶に照射される。その結果、光重合性液晶のうち紫外光が照射された部分だけが重合し、複数の液晶構造体5が形成される。
工程S7において、光重合性液晶からガラス基板SB1及びクロムマスク基板SB2を剥離する。そして、光重合性液晶を水に浸して遠心分離により未重合の液晶を取り除き、水を蒸発させて乾燥させる。その結果、複数の液晶構造体5が取り出される。複数の液晶構造体5は、ホストとしての第1液晶FLAと混合される。
次に、図7(a)〜図8(b)を参照して、比較例に係る光学素子500を説明する。図7(a)は、比較例に係る光学素子500を示す模式的断面図である。図7(b)は、比較例に係る光学素子500の別の状態を示す模式的断面図である。
図7(a)及び図7(b)に示すように、光学素子500は、第1基板81と、第2基板82と、液晶層83と、液晶構造体85と、第1電極61と、第2電極62とを含む。液晶層83は液晶(以下、「第1液晶FC」と記載する。)を含む。第1液晶FCは複数の液晶分子LC10を含む。液晶構造体85は液晶(以下、「第2液晶SC」と記載する。)を含む。第2液晶SCは複数の液晶分子LC20を含む。第1電極61及び第2電極62は、面状電極であり、透明電極材料により形成される。透明電極材料は、例えば、ITOである。
図7(a)及び図7(b)では、液晶層83には、駆動電圧が印加されていない。比較例に係る光学素子500は第1条件及び第2条件を満足しない。
具体的には、比較例では、液晶層83において、XY平面に正射影された液晶分子LCAの配向と、XY平面に正射影された液晶分子LCBの配向とが揃っている。従って、光学素子500は第1条件を満足しない。具体的には、液晶層3に駆動電圧が印加されていない時に、液晶層83の第1液晶FCは、プラナー配向、かつ、1軸配向を有している。1軸配向とは、複数の液晶分子の配向が一方向に揃っている配向のことである。具体的には、第1液晶FCは、ねじれを有しないネマティック液晶である。
液晶構造体85の構成は、実施形態1に係る液晶構造体5の構成と同様である。従って、光学素子500は第2条件を満足しない。第2液晶SCはコレステリック液晶である。第2条件を満足せず、第1表面領域B1の液晶分子LCCの配向と第2表面領域B2の液晶分子LCDの配向とが揃っている場合、第1表面領域B1の配向と第2表面領域B2の配向とが、液晶層83の第1液晶FCの配向方向と揃うように、液晶構造体85の姿勢が定まる。しかしながら、配向軸AX2の回りに液晶構造体85が回転しても第1液晶FCの配向変形は誘起されないため、液晶構造体85に対する弾性的復元力が作用しない。
従って、液晶構造体85は、配向軸AX2の回りに回転可能である。その結果、液晶層83に駆動電圧が印加されていない時において、液晶構造体85の姿勢が安定し難い。配向軸AX2は、液晶層83の第1液晶FCの配向方向に略平行な軸を示す。
図8(a)は、比較例に係る光学素子500を示す模式的断面図である。図8(b)は、比較例に係る光学素子500の別の状態を示す模式的断面図である。図8(a)及び図8(b)では、液晶層83に第1電圧値V1を有する駆動電圧が印加されている。
図8(a)及び図8(b)に示すように、液晶層83に第1電圧値V1を有する駆動電圧が印加されている時は、液晶構造体85は、第1液晶FCの配向の変化に応じた姿勢をとる。この場合、配向軸AX2の回りに液晶構造体85が回転しても第1液晶FCの配向変形は誘起されないため、液晶構造体85に対する弾性的復元力が作用しない。従って、液晶構造体85は、配向軸AX2の回りに回転可能である。その結果、液晶層83に駆動電圧が印加されている時においても、液晶構造体85の姿勢が安定し難い。
以上、図7(a)〜図8(b)を参照して説明したように、比較例に係る光学素子500では、駆動電圧が印加されていない時でも印加されている時でも、液晶構造体85の姿勢が安定し難い。つまり、液晶構造体85の姿勢ベクトルPVの向きが安定し難い。従って、比較例に係る光学素子500では、液晶構造体85の可逆的な制御が困難である。
これに対して、図4〜図6を参照して説明したように、実施形態1によれば、液晶構造体85の可逆的な制御が可能である。
(実施形態2)
図3(a)、図9、及び図10を参照して、本発明の実施形態2に係る光学システム300を説明する。実施形態2に係る液晶層3の第1液晶FLBがハイブリッド配向を有する点で、実施形態2は、実施形態1と主に異なる。以下、実施形態2が実施形態1と異なる点を主に説明する。
まず、図9を参照して、実施形態2に係る光学システム300の光学素子100を説明する。図9は、実施形態2に係る光学素子100を示す模式的断面図である。図9では、光学素子100の液晶層3に駆動電圧が印加されていない。
図9に示すように、液晶層3は第1液晶FLBを含む。第1液晶FLBは複数の液晶分子LC3を含む。図3(a)及び図9に示すように、実施形態2に係る光学素子100は第1条件を満足する。つまり、実施形態1では、ZX平面に正射影された液晶分子LCAの配向と、ZX平面に正射影された液晶分子LCBの配向とが異なる。
具体的には、液晶層3に駆動電圧が印加されていない時に、第1液晶FLBの配向変形が、第1基板1と第2基板2との間で、広がり・曲がり変形を示している。つまり、第1液晶FLBはハイブリッド配向を有している。従って、実施形態2によれば、光学素子100に第1条件を満足させることが容易である。特に、実施形態2では、第1液晶FLBは、ハイブリッド配向を有するネマティック液晶である。
図9の例では、液晶層3の第1領域A1では、液晶分子LCAはプレチルトを有し、液晶分子LCAのチルト角は、例えば、第1基板1に対して略1度である。また、液晶層3の第2領域A2では、液晶分子LCBはプレチルトを有し、液晶分子LCBのチルト角は、例えば、略89度である。すなわち、第1領域A1の液晶分子LCAのチルト角と第2領域A2の液晶分子LCBのチルト角とは異なる。なお、液晶分子LCAのチルト角と液晶分子LCBのチルト角とが異なる限りにおいては、チルト角は、1度及び89度に限定されず、任意の値をとり得る。
図9に示すように、液晶層3に駆動電圧が印加されていない時は、液晶構造体5は、第1液晶FLBの配向に応じて第1姿勢をとる。つまり、第1姿勢は、液晶層3に駆動電圧が印加されていない時の液晶構造体5の姿勢を示す。実施形態2では、液晶構造体5が第1姿勢をとっているとき、液晶構造体5の姿勢ベクトルPVは垂直方向Dvに対して傾斜しており、液晶構造体5の回転角θは、鋭角である。
従って、液晶構造体5は、回転角θに応じた方向に向けて、反射面RFによって光L2を反射する。つまり、液晶構造体5は、姿勢ベクトルPVの向きに応じた方向に向けて、反射面RFによって光L2を反射する。なお、液晶構造体5は光L3を透過する。
なお、実施形態2では、液晶層3の第1液晶FLBはハイブリッド配向を有するため、光学素子100は第1条件を満足する。従って、液晶構造体5の第1表面領域B1の液晶分子LCCの配向及び第2表面領域B2の液晶分子LCDの配向は任意であってよい。
次に、図10を参照して、液晶構造体5の第2姿勢を説明する。図10は、光学素子100を示す模式的断面図である。図10では、光学素子100の液晶層3に第3電圧値V3を有する駆動電圧が刺激付与部200によって印加されている。なお、第3電圧値V3は、交流電圧の実効値又は最大値によって表される。
図10に示すように、液晶層3に駆動電圧が印加されている時は、液晶構造体5は、第1液晶FLBの配向の変化に応じて第2姿勢をとる。つまり、第2姿勢は、液晶層3に駆動電圧が印加されている時の液晶構造体5の姿勢を示す。第2姿勢は第1姿勢と異なる。具体的には、液晶構造体5は、第1液晶FLBの初期配向変形からの更なる配向変形に応じて第2姿勢をとる。
実施形態2では、液晶構造体5が第2姿勢をとっているとき、液晶構造体5の姿勢ベクトルPVは垂直方向Dvに対して略平行であり、液晶構造体5の回転角θは、略ゼロ度である。従って、液晶構造体5は、光L1のうち、螺旋構造体7の螺旋の旋回方向(例えば右回り)に整合する偏光状態を有する光L2(例えば右円偏光)を反射面RFによって反射する。一方、液晶構造体5は、螺旋構造体7の螺旋の旋回方向(例えば右回り)と相反する偏光状態を有する光L3(例えば左円偏光)を透過する。図10の例では、液晶構造体5は、垂直方向Dvに略平行に光L2を反射している。
以上、図9及び図10を参照して説明したように、実施形態2によれば、液晶層3に対して駆動電圧を「印加しないこと」と「印加すること」とを切り替えることで、液晶構造体5の姿勢を第1姿勢と第2姿勢との間で切り替えることができる。従って、液晶層3に対して駆動電圧を「印加しないこと」と「印加すること」とを切り替えることで、光L2の反射方向を容易に切り替えることができる。
また、実施形態2によれば、実施形態1と同様に、液晶層3に対する駆動電圧の電圧値を制御することで、液晶構造体5の姿勢を電圧値に応じて連続的に変更できる。従って、駆動電圧の電圧値を制御することで、光L2の反射方向を連続的に変更できる。
さらに、実施形態2によれば、実施形態1と同様の原理によって、液晶層3に駆動電圧が印加されていない時と印加されている時との間で、液晶構造体5の可逆的な姿勢の制御が可能である。つまり、液晶構造体5の姿勢ベクトルPVの可逆的な制御が可能である。また、実施形態2では、実施形態1と同様の原理によって、液晶構造体5の応答速度を向上できる。
(実施形態3)
図3(a)、図11、及び図12を参照して、本発明の実施形態3に係る光学システム300を説明する。実施形態3に係る液晶層3の第1液晶FLCがプレチルトありの垂直ねじれ配向を有する点で、実施形態3は、実施形態1と主に異なる。以下、実施形態3が実施形態1と異なる点を主に説明する。
まず、図11を参照して、実施形態3に係る光学システム300の光学素子100を説明する。図11は、実施形態3に係る光学素子100を示す模式的断面図である。図13では、光学素子100の液晶層3に駆動電圧が印加されていない。
図11に示すように、液晶層3は第1液晶FLCを含む。第1液晶FLCは複数の液晶分子LC4を含む。図3(a)及び図11に示すように、実施形態3に係る光学素子100は第1条件を満足する。つまり、実施形態1では、XY平面に正射影された液晶分子LCAの配向と、XY平面に正射影された液晶分子LCBの配向とが異なる。具体的には、液晶層3に駆動電圧が印加されていない時に、第1液晶FLCの配向が、第1基板1と第2基板2との間で、プレチルトありの垂直ねじれ配向を示している。従って、実施形態3によれば、光学素子100に第1条件を満足させることが容易である。
特に、実施形態3では、第1液晶FLCは、プレチルトありの垂直ねじれ配向を有するネマティック液晶である。プレチルトありの垂直ねじれ配向を有するネマティック液晶は、負の誘電異方性を有する。従って、駆動電圧が印加されると、第1液晶FLCの配向は、液晶分子LC4が起立状態から平臥状態に向かうように変化する。また、プレチルトありの垂直ねじれ配向において、第1基板1に対する液晶分子LCAのチルト角及び第2基板2に対する液晶分子LCBのチルト角の各々は、例えば、45度より大きく、90度よりも小さい。
図11の例では、液晶層3の第1領域A1では、XY平面に平行な面内で、液晶分子LCAのダイレクターがX軸に対して「+45度」だけ傾斜している。一方、液晶層3の第2領域A2では、XY平面に平行な面内で、液晶分子LCBのダイレクターがX軸に対して「−45度」だけ傾斜している。従って、光学素子100は第1条件を満足する。
また、第1領域A1の液晶分子LCAの第1基板1に対するチルト角は、例えば、85度であり、第2領域A2の液晶分子LCBの第2基板2に対するチルト角は、例えば、85度である。ただし、チルト角は、85度に限定されず、任意の値をとり得る。
図11に示すように、液晶層3に駆動電圧が印加されていない時は、液晶構造体5は、第1液晶FLCの配向に応じて第1姿勢をとる。つまり、第1姿勢は、液晶層3に駆動電圧が印加されていない時の液晶構造体5の姿勢を示す。実施形態3では、液晶構造体5が第1姿勢をとっているとき、液晶構造体5の姿勢ベクトルPVは垂直方向Dvに対して略垂直であり、液晶構造体5の回転角θは、略90度である。従って、反射面RFが垂直方向Dvに対して略平行になる。その結果、液晶構造体5は、光L1を透過する。つまり、液晶構造体5は、光L2及び光L3を透過する。
なお、実施形態3では、第1表面領域B1及び第2表面領域B2の各々は、液晶層3に駆動電圧が印加されていない時に、液晶構造体5のうち、プレチルトを有する液晶分子LCA又は液晶分子LCBの配向方向に沿った領域を示す。第1表面領域B1及び第2表面領域B2は対向する。
次に、図12を参照して、液晶構造体5の第2姿勢を説明する。図12は、光学素子100を示す模式的断面図である。図12では、光学素子100の液晶層3に第4電圧値V4を有する駆動電圧が刺激付与部200によって印加されている。なお、第4電圧値V4は、交流電圧の実効値又は最大値によって表される。
図12に示すように、液晶層3に駆動電圧が印加されている時は、液晶構造体5は、第1液晶FLCの配向の変化に応じて第2姿勢をとる。つまり、第2姿勢は、液晶層3に駆動電圧が印加されている時の液晶構造体5の姿勢を示す。第2姿勢は第1姿勢と異なる。具体的には、液晶構造体5は、第1液晶FLCの初期配向変形からの更なる配向変形に応じて第2姿勢をとる。
実施形態3では、液晶構造体5が第2姿勢をとっているとき、液晶構造体5の姿勢ベクトルPVは垂直方向Dvに対して略平行であり、液晶構造体5の回転角θは、略ゼロ度である。従って、液晶構造体5は、光L1のうち、螺旋構造体7の螺旋の旋回方向(例えば右回り)に整合する偏光状態を有する光L2(例えば右円偏光)を反射面RFによって反射する。一方、液晶構造体5は、螺旋構造体7の螺旋の旋回方向(例えば右回り)と相反する偏光状態を有する光L3(例えば左円偏光)を透過する。図12の例では、液晶構造体5は、垂直方向Dvに略平行に光L2を反射している。
以上、図11及び図12を参照して説明したように、実施形態3によれば、液晶層3に対して駆動電圧を「印加しないこと」と「印加すること」とを切り替えることで、液晶構造体5の姿勢を第1姿勢と第2姿勢との間で切り替えることができる。従って、液晶層3に対して駆動電圧を「印加しないこと」と「印加すること」とを切り替えることで、光学素子100が光L2を透過する状態と、光学素子100が光L2を反射する状態とを容易に切り替えることができる。
また、実施形態3によれば、実施形態1と同様に、液晶層3に対する駆動電圧の電圧値を制御することで、液晶構造体5の姿勢を電圧値に応じて連続的に変更できる。従って、駆動電圧の電圧値を制御することで、光L2の反射方向を連続的に変更できる。
さらに、実施形態3によれば、実施形態1と同様の原理によって、液晶層3に駆動電圧が印加されていない時と印加されている時との間で、液晶構造体5の可逆的な姿勢の制御が可能である。つまり、液晶構造体5の姿勢ベクトルPVの可逆的な制御が可能である。また、実施形態3では、実施形態1と同様の原理によって、液晶構造体5の応答速度を向上できる。
ここで、図4、図6、図11、及び図12を参照して説明したように、実施形態1又は実施形態3によれば、液晶構造体5が第1姿勢及び第2姿勢のうちの一方の姿勢をとった場合、液晶構造体5は、光L2を反射する。液晶構造体5が第1姿勢及び第2姿勢のうちの他方の姿勢をとった場合、液晶構造体5は、光L2を透過する。
(実施形態4)
図3(b)〜図6及び図13を参照して、本発明の実施形態4に係る光学システム300を説明する。実施形態4に係る液晶構造体5Aに二色性色素21が添加されている点で、実施形態4は、実施形態1と主に異なる。以下、実施形態4が実施形態1と異なる点を主に説明する。
図13は、実施形態4に係る光学素子100の液晶構造体5Aを示す模式的断面図である。図4及び図13に示すように、実施形態4に係る光学素子100は、実施形態1に係る光学素子100の液晶構造体5に代えて、液晶構造体5Aを含む。液晶構造体5Aの形状は、液晶構造体5の形状と同様である。
図13に示すように、液晶構造体5Aは、液晶SLB(以下、「第2液晶SLB」と記載する。)と、二色性色素21とを含む。第2液晶SLBの配向は、プラナー配向、かつ、1軸配向を示す。実施形態4では、第2液晶SLBはネマティック液晶である。第2液晶SLBは複数の液晶分子LC5を含む。
二色性色素21とは、分子の長軸方向における吸光度と、分子の短軸方向における吸光度とが異なる色素をいう。具体的には、二色性色素21は複数の二色性色素分子21aを含む。二色性色素分子21aの長軸方向における吸光度と、二色性色素分子21aの短軸方向における吸光度とが異なる。実施形態4では、二色性色素分子21aの長軸方向における吸光度が、二色性色素分子21aの短軸方向における吸光度よりも大きい。二色性色素21は、例えば、DCM、又は、BTBPである。DCMは、[2−[2−[4−(Dimethylamino)phenyl]ethenyl]−6−methyl−4H−pyran−4−ylidene]propanedinitrile、である。BTBPは、N,N’−bis(2,5−di−tert−butylphenyl)−3,4,9,10−perylenedicarboimide、である。ただし、二色性色素21の種類は、特に限定されない。例えば、二色性色素21は、Aleksandr V. Ivashchenko 著、「Dichroic Dyes for Liquid Crystal Displays」(CRC Press、1994)、に記載された二色性色素であってもよい。
二色性色素21は、第2液晶SLBの配向方向ALに沿って配向している。具体的には、複数の二色性色素分子21aが複数の液晶分子LC5の間に添加されている。その結果、複数の二色性色素分子21aが、複数の液晶分子LC5の配向方向ALに沿って配置される。実施形態4では、複数の二色性色素分子21aの各々の長軸が、第2液晶SLBの配向方向ALに略平行である。
図4及び図13に示すように、液晶層3に駆動電圧が印加されていない時は、液晶構造体5Aは、第1液晶FLAの配向に応じて第1姿勢をとる。液晶構造体5Aが第1姿勢をとっているとき、液晶構造体5Aの姿勢ベクトルPVは垂直方向Dvに対して略平行であり、液晶構造体5Aの回転角θは、略ゼロ度である。従って、二色性色素分子21aの長軸が、垂直方向Dvに対して略垂直である。その結果、垂直方向Dvに略平行な光L1が液晶構造体5Aに入射すると、二色性色素21は光L1を吸収する。
一方、図6及び図13に示すように、液晶層3に第2電圧値V2を有する駆動電圧が印加されている時は、液晶構造体5Aは、第1液晶FLAの配向の変化に応じて第2姿勢をとる。液晶構造体5Aが第2姿勢をとっているとき、液晶構造体5Aの姿勢ベクトルPVは垂直方向Dvに対して略垂直であり、液晶構造体5Aの回転角θは、略90度である。従って、二色性色素分子21aの長軸が、垂直方向Dvに対して略平行である。その結果、垂直方向Dvに略平行な光L1が液晶構造体5Aに入射すると、二色性色素21は光L1を透過する。
なお、図5及び図13に示すように、液晶層3に第1電圧値V1を有する駆動電圧が印加されている時は、液晶構造体5Aは、第1液晶FLAの配向の変化に応じて中間姿勢をとる。液晶構造体5Aが中間姿勢をとっているとき、液晶構造体5Aの姿勢ベクトルPVは垂直方向Dvに対して傾斜しており、液晶構造体5Aの回転角θは、鋭角である。従って、二色性色素分子21aの長軸が、平行方向Dpに対して傾斜している。その結果、垂直方向Dvに略平行な光L1が液晶構造体5Aに入射すると、二色性色素21は、二色性色素分子21aの長軸の傾斜に応じた吸収率で光L1を吸収する。平行方向Dpに対する二色性色素分子21aの長軸の傾斜が大きい程、二色性色素分子21aによる光の吸収率は小さくなる。
以上、図4、図6、及び図13を参照して説明したように、実施形態4によれば、液晶層3に対して駆動電圧を「印加しないこと」と「印加すること」とを切り替えることで、液晶構造体5Aの姿勢を第1姿勢と第2姿勢との間で切り替えることができる。従って、液晶層3に対して駆動電圧を「印加しないこと」と「印加すること」とを切り替えることで、光学素子100が光L1を吸収する状態と、光学素子100が光L1を透過する状態とを容易に切り替えることができる。
すなわち、液晶層3に対して刺激を「付与しないこと」と「付与すること」とを切り替えることで、光学素子100が光L1を吸収する状態と、光学素子100が光L1を透過する状態とを容易に切り替えることができる。
また、図4〜図6及び図13を参照して説明したように、実施形態4によれば、液晶層3に対する駆動電圧の電圧値を制御することで、液晶構造体5の姿勢を電圧値に応じて連続的に変更できる。従って、駆動電圧の電圧値を制御することで、光L1の吸収率を連続的に変更できる。
すなわち、液晶構造体5は、液晶層3に付与される刺激の大きさに応じて姿勢を変更し、姿勢の変更に応じて光の吸収率を変更する。つまり、液晶層3に対する刺激の大きさを制御することで、液晶構造体5の姿勢を刺激の大きさに応じて連続的に変更できる。従って、刺激の大きさを制御することで、光L1の吸収率を連続的に変更できる。
また、実施形態4によれば、実施形態1と同様に、液晶構造体5Aの可逆的な姿勢の制御が可能であり、液晶構造体5Aの応答速度を向上できる。
なお、図9及び図10を参照して説明した実施形態2に係る光学素子100は、実施形態2の変形例として、液晶構造体5に代えて、実施形態4に係る液晶構造体5Aを備えていてもよい。この場合、第1姿勢をとった液晶構造体5Aの光L1の吸収率は、第2姿勢をとった液晶構造体5Aの光の吸収率よりも小さい。
また、図11及び図12を参照して説明した実施形態3に係る光学素子100は、実施形態3の変形例として、液晶構造体5に代えて、実施形態4に係る液晶構造体5Aを備えていてもよい。この場合、第1姿勢をとった液晶構造体5Aは光を透過し、第2姿勢をとった液晶構造体5Aは光を吸収する。
実施形態2の変形例及び実施形態3の変形例でも、光の吸収率を容易に制御できる。また、液晶構造体5Aは、実施形態1に係る液晶構造体5の作製方法と同様にして作製できる。
ここで、図4、図6、及び図13を参照して説明した実施形態4、又は、図11〜図13を参照して説明した実施形態3の変形例では、液晶構造体5Aが第1姿勢及び第2姿勢のうちの一方の姿勢をとった場合、液晶構造体5Aは、光L1を吸収する。液晶構造体5Aが第1姿勢及び第2姿勢のうちの他方の姿勢をとった場合、液晶構造体5Aは、光L1を透過する。
(実施形態5)
図14及び図15を参照して、本発明の実施形態5に係る光学システム300Aを説明する。実施形態5に係る光学システム300Aの光学素子100Aが液晶構造体5の姿勢を2軸周りに制御する点で、実施形態5は、図1〜図3(b)を参照して説明した本実施形態と主に異なる。以下、実施形態5が本実施形態と異なる点を主に説明する。
図14は、実施形態5に係る光学素子100Aを示す斜視図である。図14に示すように、光学素子100Aは、図1に示す第1電極51及び第2電極52に代えて、電極パターンEL1を含む。図14では、電極パターンEL1はドットハッチングによって示される。電極パターンEL1は、液晶層3の複数箇所に対して刺激としての駆動電圧を個別に印加する。そして、電極パターンEL1による液晶層3に対する駆動電圧の印加に応じて、液晶構造体5は、第1軸線AS1及び/又は第2軸線AS2の周りの回転によって姿勢を変更する。従って、実施形態5によれば、光を反射する液晶構造体5を含む光学素子100Aを光の偏向素子として機能させる場合、液晶構造体5の姿勢による光の偏向方向(つまり、反射光の出射方向)の制御の自由度が向上する。
具体的には、電極パターンEL1は、複数の第1電極51Aと、複数の第2電極52Aとを含む。図14では、第1電極51A及び第2電極52Aはドットハッチングによって示される。図14の例では、複数の第1電極51Aの数は、2以上であれば、特に限定されない。また、図14の例では、複数の第2電極52Aの数は、2以上であれば、特に限定されない。第1電極51A及び第2電極52Aは、実施形態5では、透明電極材料により形成される。透明電極材料は、例えば、ITOである。
複数の第1電極51Aは、第1基板1に形成される。実施形態5では、複数の第1電極51Aは、第1基板1の一対の主面のうち、液晶構造体5の位置する側の主面に形成される。複数の第1電極51Aは、互いに間隔をあけて、第1方向D1に沿って延びている。
複数の第2電極52Aは、第2基板2に形成される。実施形態5では、複数の第2電極52Aは、第2基板2の一対の主面のうち、液晶構造体5の位置する側の主面に形成される。複数の第2電極52Aは、互いに間隔をあけて、第2方向D2に沿って延びている。第2方向D2は第1方向D1に交差する。実施形態5では、第2方向D2は第1方向D1に略直交する。第1方向D1及び第2方向D2は垂直方向Dvに略直交する。
複数の第2電極52Aは、複数の第1電極51Aに対して立体交差する。実施形態5では、複数の第2電極52Aは、複数の第1電極51Aに対して、互いに垂直方向Dvに離隔しつつ略直交している。
液晶構造体5は、第1電極51Aに対して垂直方向Dvに離隔しつつ、互いに隣り合う第1電極51Aに跨って配置される。従って、液晶構造体5の一部は、互いに隣り合う第1電極51Aのうちの一方の第1電極511と垂直方向Dvに対向する。さらに、液晶構造体5の他の一部は、他方の第1電極512と垂直方向Dvに対向する。
液晶構造体5は、第2電極52Aに対して垂直方向Dvに離隔しつつ、互いに隣り合う第2電極52Aに跨って配置される。従って、液晶構造体5の一部は、互いに隣り合う第2電極52Aのうちの一方の第2電極521と垂直方向Dvに対向する。さらに、液晶構造体5の他の一部は、他方の第2電極522と垂直方向Dvに対向する。
図15は、実施形態5に係る光学システム300Aを示す平面図である。図15に示すように、光学システム300Aは、図1の刺激付与部200に代えて、刺激付与部200Aを備える。刺激付与部200Aは、第1駆動部71と、第2駆動部72とを含む。実施形態5では、液晶層3の駆動方式として、単純マトリックス方式を採用する。
第1駆動部71は、複数の第1電極51Aを選択的に駆動する。つまり、第1駆動部71は、複数の第1電極51Aに選択的に第1駆動信号を供給する。例えば、第1駆動部71は、線順次走査を実行して、第1電極51Aを一本ずつ順次駆動する。つまり、第1駆動部71は、線順次走査を実行して、複数の第1電極51Aに対して、一本ずつ順番に第1駆動信号を供給する。例えば、第1駆動部71は、2本以上の第1電極51Aを同時に駆動してもよい。つまり、第1駆動部71は、2本以上の第1電極51Aに同時に第1駆動信号を供給してもよい。第1駆動部71は、例えば、第1駆動信号を生成するドライバー回路である。
第2駆動部72は、複数の第2電極52Aを選択的に駆動する。つまり、第2駆動部72は、複数の第2電極52Aに選択的に第2駆動信号を供給する。例えば、第2駆動部72は、複数の第1電極51Aの各々の駆動に応じて、1本以上の第2電極52Aを駆動する。つまり、第2駆動部72は、複数の第1電極51Aの各々の駆動に応じて、1本以上の第2電極52Aに第2駆動信号を供給する。第2駆動部72は、例えば、第2駆動信号を生成するドライバー回路である。
実施形態5では、刺激付与部200Aによる「刺激」は「第1駆動信号及び第2駆動信号」である。「第1駆動信号及び第2駆動信号」は「駆動電圧」の一例である。なお、図14及び図15は、複数の第1電極51A及び複数の第2電極52Aに、第1駆動信号及び第2駆動信号が供給されていない時の液晶構造体5の状態を示している。つまり、図14及び図15は、液晶層3に外部から刺激が付与されていない時の液晶構造体5の状態を示している。
複数の液晶構造体5の各々は、複数の第1電極51Aと複数の第2電極52Aとの複数の交差位置のうち、互いに隣り合う4つの交差位置Qa、Qb、Qc、Qdにそれぞれ対応して位置している4つの部分Ua、Ub、Uc、Udを有する。図15では、理解を容易にするために、部分Ua、Ub、Uc、Udを破線で示しているが、実際には破線は存在しない。
そして、図14に示すように、液晶層3を構成する第1液晶FLのうちの第1液晶FLaが、液晶構造体5の部分Uaに対応して位置している。第1液晶FLaは、複数の液晶分子LC1aを含む。第1液晶FLのうちの第1液晶FLbが、液晶構造体5の部分Ubに対応して位置している。第1液晶FLbは、複数の液晶分子LC1bを含む。第1液晶FLのうちの第1液晶FLcが、液晶構造体5の部分Ucに対応して位置している。第1液晶FLcは、複数の液晶分子LC1cを含む。第1液晶FLのうちの第1液晶FLdが、液晶構造体5の部分Udに対応して位置している。第1液晶FLdは、複数の液晶分子LC1dを含む。
従って、図14及び図15に示すように、実施形態5によれば、複数の第1電極51Aに対して選択的に第1駆動信号を供給するとともに、複数の第2電極52Aに対して選択的に第2駆動信号を供給することによって、液晶構造体5の部分Uaに対応する第1液晶FLa、部分Ub対応する第1液晶FLb、部分Ucに対応する第1液晶FLc、及び、部分Udに対応する第1液晶FLdを、個別に駆動して、液晶分子LC1aの配向、液晶分子LC1bの配向、液晶分子LC1cの配向、及び、液晶分子LC1dの配向を、個別に制御できる。
その結果、第1液晶FLa〜第1液晶FLdから、液晶構造体5の部分Ua〜部分Udに作用する力を、部分Ua〜部分Udごとに個別に制御できる。よって、液晶構造体5を第1軸線AS1及び/又は第2軸線AS2の周りに回転させて、第1軸線AS1及び/又は第2軸線AS2の周りにおいて液晶構造体5の姿勢を変更できる。
そして、光を反射する液晶構造体5を含む光学素子100Aを光の偏向素子として機能させる場合、第1軸線AS1及び/又は第2軸線AS2の周りにおいて液晶構造体5の姿勢を変更できると、光の偏向方向(つまり、反射光の出射方向)の制御の自由度が向上する。
ここで、第1軸線AS1は、第1電極51A及び第1方向D1に略平行である。第2軸線AS2は、第2電極52A及び第2方向D2に略平行である。第1軸線AS1は、第2軸線AS2に交差する。実施形態5では、第1軸線AS1は、第2軸線AS2に略直交する。なお、図14では、図面の簡略化のために、多数の液晶分子LC1のうちのいくつかの液晶分子LC1を図示している。
特に、実施形態5では、図15に示すように、液晶構造体5の部分Uaは、交差位置Qaに位置する。交差位置Qaは、第1電極511と第2電極521とが立体交差している位置を示す。従って、部分Uaは、交差位置Qaにおいて、第1電極511と第2電極521との間に位置する。液晶構造体5の部分Ubは、交差位置Qbに位置する。交差位置Qbは、第1電極511と第2電極522とが立体交差している位置を示す。従って、部分Ubは、交差位置Qbにおいて、第1電極511と第2電極522との間に位置する。
液晶構造体5の部分Ucは、交差位置Qcに位置する。交差位置Qcは、第1電極512と第2電極522とが立体交差している位置を示す。従って、部分Ucは、交差位置Qcにおいて、第1電極512と第2電極522との間に位置する。液晶構造体5の部分Udは、交差位置Qdに位置する。交差位置Qdは、第1電極512と第2電極521とが立体交差している位置を示す。従って、部分Udは、交差位置Qdにおいて、第1電極512と第2電極521との間に位置する。
(実施形態5の変形例)
図14及び図16を参照して、本発明の実施形態5の変形例に係る光学システム300Bを説明する。実施形態5の変形例に係る光学システム300Bの光学素子100Bによる液晶層3の駆動方式がアクティブマトリックス方式である点で、変形例は、図14及び図15を参照して説明した実施形態5と主に異なる。以下、変形例が実施形態5と異なる点を主に説明する。なお、変形例と実施形態5との共通部分については、変形例の説明において、図14を適宜参照する。
図16は、実施形態5の変形例に係る光学システム300Bを示す平面図である。図16に示すように、光学システム300Bの光学素子100Bは、図15に示す電極パターンEL1に代えて、電極パターンEL2を含む。電極パターンEL2は、実施形態5の電極パターンEL1と同様に、液晶層3(図14)の複数箇所に対して刺激としての駆動電圧を個別に印加する。そして、電極パターンEL2による液晶層3に対する駆動電圧の印加に応じて、液晶構造体5は、第1軸線AS1及び/又は第2軸線AS2の周りの回転によって姿勢を変更する。
具体的には、電極パターンEL2は、複数の第1電極51B、複数の第2電極52B、及びコモン電極CMを含む。図16の例では、複数の第1電極51Bの数は、2以上であれば、特に限定されない。また、図16の例では、複数の第2電極52Bの数は、2以上であれば、特に限定されない。
複数の第1電極51B及び複数の第2電極52Bは、第2基板2(図14)に形成される。変形例では、複数の第1電極51B及び複数の第2電極52Bは、第2基板2の一対の主面のうち、液晶構造体5の位置する側の主面に形成される。複数の第1電極51Aは、互いに間隔をあけて、第1方向D1に沿って延びている。複数の第2電極52Bは、互いに間隔をあけて、第2方向D2に沿って延びている。
第2基板2(図14)において、複数の第2電極52Bは、複数の第1電極51Bに対して立体交差する。変形例では、第2基板2において、複数の第2電極52Bは、複数の第1電極51Bに対して、互いに離隔しつつ略直交している。
また、光学素子100Bは、複数の薄膜トランジスタT(TFT:Thin Film Transistor)と、複数の画素電極Pとをさらに含む。光学素子100Bは、複数のキャパシターCPをさらに含むことが好ましい。複数の薄膜トランジスタTは、それぞれ、複数の第1電極51Bと複数の第2電極52Bとの複数の交差位置に対応して配置される。複数の画素電極Pは、それぞれ、複数の薄膜トランジスタTに対応して配置される。画素電極Pは、変形例では、透明電極材料により形成される。透明電極材料は、例えば、ITOである。複数のキャパシターCPは、それぞれ、複数の画素電極Pに対応して配置される。
薄膜トランジスタTのゲート電極は、対応する第1電極51Bに接続され、薄膜トランジスタTのソース電極は、対応する第2電極52Bに接続され、薄膜トランジスタTのドレイン電極は、対応する画素電極Pに接続される。画素電極Pには、対応するキャパシターCPが接続される。キャパシターCPは電荷を保持する。薄膜トランジスタT、画素電極P、及び、キャパシターCPは、第1電極51B及び第2電極52Bと同様に、第2基板2(図14)に形成される。
コモン電極CMは、面状電極であり、第1基板1(図14)に形成される。コモン電極CMは、液晶層3(図14)を介して、第2基板2に形成される複数の画素電極Pと対向している。コモン電極CMにはコモン信号が供給される。コモン電極CMは、変形例では、透明電極材料により形成される。透明電極材料は、例えば、ITOである。
第1駆動部71は、複数の第1電極51Bを選択的に駆動する。つまり、第1駆動部71は、複数の第1電極51Bに選択的に第1駆動信号を供給して、第1駆動信号が供給された薄膜トランジスタTをオンにする。例えば、第1駆動部71は、線順次走査を実行して、複数の第1電極51Bに対して、一本ずつ順番に第1駆動信号を供給する。例えば、第1駆動部71は、2本以上の第1電極51Bに同時に第1駆動信号を供給してもよい。
第2駆動部72は、複数の第2電極52Bを選択的に駆動する。つまり、第2駆動部72は、複数の第2電極52Bに選択的に第2駆動信号を供給する。例えば、第2駆動部72は、複数の第1電極51Bの各々の駆動に応じて、1本以上の第2電極52Bに第2駆動信号を供給する。その結果、第2駆動信号が、オンしている薄膜トランジスタTに接続されている画素電極Pに供給される。つまり、画素電極Pに電圧が印加される。画素電極Pに印加される電圧が、画素電極Pとコモン電極CMとの間に位置する第1液晶FLを駆動する駆動電圧である。キャパシターCPは、画素電極Pに印加される電圧に基づく電荷を保持する補助容量である。
変形例では、刺激付与部200Aによる「刺激」は「第1駆動信号及び第2駆動信号」である。「第1駆動信号及び第2駆動信号」は「駆動電圧」の一例である。なお、図16は、複数の第1電極51B及び複数の第2電極52Bに、第1駆動信号及び第2駆動信号が供給されていない時の液晶構造体5の状態を示している。つまり、図16は、液晶層3に外部から刺激が付与されていない時の液晶構造体5の状態を示している。
複数の液晶構造体5の各々は、複数の第1電極51Bと複数の第2電極52Bとの複数の交差位置のうち、互いに隣り合う4つの交差位置Qa、Qb、Qc、Qdにそれぞれ対応して位置している4つの部分Ua、Ub、Uc、Udを有する。図16では、理解を容易にするために、部分Ua、Ub、Uc、Udを破線で示しているが、実際には破線は存在しない。
そして、図16に示すように、変形例によれば、複数の第1電極51Bに対して選択的に第1駆動信号を供給するとともに、複数の第2電極52Bに対して選択的に第2駆動信号を供給することによって、液晶構造体5の部分Uaに対応する第1液晶FLa(図14)、部分Ub対応する第1液晶FLb(図14)、部分Ucに対応する第1液晶FLc(図14)、及び、部分Udに対応する第1液晶FLd(図14)を、個別に駆動して、液晶分子LC1aの配向、液晶分子LC1bの配向、液晶分子LC1cの配向、及び、液晶分子LC1dの配向を、個別に制御できる。
その結果、第1液晶FLa〜第1液晶FLdから、液晶構造体5の部分Ua〜部分Udに作用する力を、部分Ua〜部分Udごとに個別に制御できる。よって、液晶構造体5を第1軸線AS1及び/又は第2軸線AS2の周りに回転させて(図14)、第1軸線AS1及び/又は第2軸線AS2の周りにおいて液晶構造体5の姿勢を変更できる。
そして、光を反射する液晶構造体5を含む光学素子100Bを光の偏向素子として機能させる場合、第1軸線AS1及び/又は第2軸線AS2の周りにおいて液晶構造体5の姿勢を変更できると、光の偏向方向(つまり、反射光の出射方向)の制御の自由度が向上する。
特に、変形例では、図16に示すように、液晶構造体5の部分Uaは、画素電極Paに対して垂直方向Dv(図14)に対向する。画素電極Paは、交差位置Qaに対応して、交差位置Qaに近接している。交差位置Qaは、第1電極511と第2電極521とが立体交差している位置を示す。部分Uaは、画素電極Paとコモン電極CMとの間に位置する。
液晶構造体5の部分Ubは、画素電極Pbに対して垂直方向Dv(図14)に対向する。画素電極Pbは、交差位置Qbに対応して、交差位置Qbに近接している。交差位置Qbは、第1電極512と第2電極521とが立体交差している位置を示す。部分Ubは、画素電極Pbとコモン電極CMとの間に位置する。
液晶構造体5の部分Ucは、画素電極Pcに対して垂直方向Dv(図14)に対向する。画素電極Pcは、交差位置Qcに対応して、交差位置Qcに近接している。交差位置Qcは、第1電極512と第2電極522とが立体交差している位置を示す。部分Ucは、画素電極Pcとコモン電極CMとの間に位置する。
液晶構造体5の部分Udは、画素電極Pdに対して垂直方向Dv(図14)に対向する。画素電極Pdは、交差位置Qdに対応して、交差位置Qdに近接している。交差位置Qdは、第1電極511と第2電極522とが立体交差している位置を示す。部分Udは、画素電極Pdとコモン電極CMとの間に位置する。
液晶構造体5は、互いに隣り合う4つの画素電極Pa、Pb、Pc、Pdに対して垂直方向Dv(図14)に離隔しつつ、4つの画素電極Pa、Pb、Pc、Pdに跨って配置されている。
ここで、図15及び図16に示す実施形態5及び変形例では、複数の液晶構造体5が略同一の姿勢をとるように、第1駆動部71は複数の第1電極51Aに選択的に第1駆動信号を供給するとともに、第2駆動部72は複数の第2電極52Aに選択的に第2駆動信号を供給する。従って、複数の液晶構造体5が反射する光の出射方向(光の偏向方向)が略同一である。なお、複数の液晶構造体5が異なる姿勢をとるように、第1駆動部71が複数の第1電極51Aに選択的に第1駆動信号を供給するとともに、第2駆動部72が複数の第2電極52Aに選択的に第2駆動信号を供給してもよい。
なお、実施形態5及び変形例では、図14に示すように、液晶層3のうち第1基板1に隣接する第1領域A1(図2の第1領域A1に相当)における複数の液晶分子LCA(図3(a)の液晶分子LCAに相当)の配向は揃っている。また、液晶層3のうち第2基板2に隣接する第2領域A2(図2の第2領域A2に相当)における複数の液晶分子LCB(図3(a)の液晶分子LCBに相当)の配向は揃っている。
なお、実施形態5及び変形例でも、図1〜図3(b)を参照して説明した本実施形態と同様に、第1条件と第2条件とのうちの少なくとも1つの条件が満足される。図14の例では、第1条件は満足されないが、第2条件が満足されている。また、図14では、理解を容易にするために、第1領域A1及び第2領域A2を二点鎖線で示しているが、実際には二点鎖線は存在しない。また、図面を見易くするために、図16では、液晶構造体5及びコモン電極CMを二点鎖線で示している。
(実施形態6)
図17及び図18を参照して、本発明の実施形態6に係る光学システム300Cを説明する。実施形態6に係る光学システム300Cの光学素子100Cが、第1領域A1及び第2領域A2の液晶分子LCA、LCBの配向を制御することで各位置における液晶構造体5の姿勢を制御する点で、実施形態6は、図14及び図15を参照して説明した実施形態5と主に異なる。以下、実施形態6が実施形態5と異なる点を主に説明する。
図17は、実施形態6に係る光学素子100Cを示す斜視図である。図17に示すように、光学素子100Cは、互いに離隔している複数の液晶構造体5を備える。図17の例では、垂直方向Dvにおける複数の液晶構造体5の位置は略同じである。図17の例では、第1電極51Aと第2電極52Aとのうち、いずれかの電極の数が2以上であれば、第1電極51Aの数及び第2電極52Aの数は、特に限定されない。
液晶層3の第1領域A1(図2の第1領域A1に相当)での複数の液晶分子LCAの配向は相違している。また、液晶層3の第2領域A2(図2の第2領域A2に相当)での複数の液晶分子LCBの配向は相違している。そして、刺激付与部200A(後述の図18)によって刺激(実施形態6では駆動電圧)が液晶層3に付与された時に、第1領域A1での複数の液晶分子LCAの配向の相違と、第2領域A2での複数の液晶分子LCAの配向の相違とに応じて、複数の液晶構造体5の姿勢が個別に変化する。従って、実施形態6によれば、液晶層3内の各位置において、液晶構造体5ごとに液晶構造体5の姿勢を制御できる。
具体的には、液晶層3の第1領域A1は、複数の第1部分J1を有する。つまり、第1領域A1は、複数の第1部分J1に区分けされている。液晶層3の第2領域A2は、複数の第2部分J2を有する。第1部分J1と第2部分J2との間に液晶構造体5が位置している。つまり、第2領域A2は、複数の第2部分J2に区分けされている。
なお、図17では、理解を容易にするために、第1領域A1及び第2領域A2を二点鎖線で示しているが、実際には二点鎖線は存在しない。また、理解を容易にするために、互いに隣り合う第1部分J1の境界を二点鎖線で示しているが、実際には二点鎖線は存在しない。同様に、互いに隣り合う第2部分J2の境界を二点鎖線で示しているが、実際には二点鎖線は存在しない。
垂直方向Dvに沿って並んでいる第1部分J1と液晶構造体5と第2部分J2とに関し、第1条件と第2条件とのうちの少なくとも1つの条件が満足される。つまり、第1部分J1と、第1部分J1に対向する第2部分J2と、第1部分J1と第2部分J2との間に位置する液晶構造体5とに関し、第1条件と第2条件とのうちの少なくとも1つの条件が満足される。
第1条件は、図3(a)を参照して説明した第1条件と同様である。ただし、実施形態6では、第1条件は、「液晶層3に刺激が付与されていない時に、互いに対向する第1部分J1と第2部分J2とにおいて、第1部分J1での液晶分子LCAの配向と第2部分J2での液晶分子LCBの配向とが異なること」である。「液晶層3に刺激が付与されていない時」は、「液晶層3に駆動電圧が印加されていない時」、「複数の第1電極51A及び複数の第2電極52Aに第1駆動信号及び第2駆動信号が供給されていない時」、又は、「複数の第1電極51A及び複数の第2電極52Aが駆動されていない時」に相当する。
第2条件は、図3(b)を参照して説明した第2条件と同様である。なお、図17の例では、第1条件は満足されていないが、第2条件が満足されている。
複数の第1部分J1のうち互いに隣り合う第1部分J1と第1部分J1とで、液晶分子LCAの配向は異なる。図17の例では、互いに隣り合う第1部分J1aと第1部分J1bと第1部分J1cと第1部分J1dとで、液晶分子LCAの配向は異なる。また、第1部分J1a内においては、液晶分子LCAの配向は揃っている。同様に、第1部分J1b内においては、液晶分子LCAの配向は揃っており、第1部分J1c内においては、液晶分子LCAの配向は揃っており、第1部分J1d内においては、液晶分子LCAの配向は揃っている。ただし、互いに隣り合う第1部分J1と第1部分J1との間で、液晶分子LCAの配向が徐々に変化していてもよい。この場合、互いに隣り合う第1部分J1と第1部分J1との境界が明確でなくてもよい。
加えて、複数の第2部分J2のうち互いに隣り合う第2部分J2と第2部分J2とで、液晶分子LCBの配向は異なる。図17の例では、互いに隣り合う第2部分J2aと第2部分J2bと第2部分J2cと第2部分J2dとで、液晶分子LCBの配向は異なる。また、第2部分J2a内においては、液晶分子LCBの配向は揃っている。同様に、第2部分J2b内においては、液晶分子LCBの配向は揃っており、第2部分J2c内においては、液晶分子LCBの配向は揃っており、第2部分J2d内においては、液晶分子LCBの配向は揃っている。ただし、互いに隣り合う第2部分J2と第2部分J2との間で、液晶分子LCBの配向が徐々に変化していてもよい。この場合、互いに隣り合う第2部分J2と第2部分J2との境界が明確でなくてもよい。
従って、実施形態6によれば、液晶層3に駆動電圧を印加した時に、複数の液晶構造体5の各々は、対向している第1部分J1での液晶分子LCAの配向と、対向している第2部分J2での液晶分子LCBの配向とに応じた姿勢をとる。その結果、複数の液晶構造体5は、第1部分J1での液晶分子LCAの配向及び第2部分J2での液晶分子LCBの配向に応じて、例えば互いに異なる方向に向けて光を反射できる。つまり、液晶層3内の各位置において、液晶構造体5ごとに液晶構造体5の姿勢を制御できる。
図18は、実施形態6に係る光学システム300Cを示す平面図である。図18に示すように、複数の液晶構造体5は、それぞれ、複数の第1電極51Aと複数の第2電極52Aとの複数の交差位置に対応して配置される。図18の例では、複数の液晶構造体5a、5b、5c、5dは、複数の第1電極51Aと複数の第2電極52Aとの複数の交差位置のうち、互いに隣り合う4つの交差位置Qa、Qb、Qc、Qdにそれぞれ対応して位置している。
そして、図17に示すように、液晶層3を構成する第1液晶FLのうちの第1液晶FLaが、液晶構造体5aに対応して位置している。第1液晶FLaは、複数の液晶分子LC1aを含む。第1液晶FLのうちの第1液晶FLbが、液晶構造体5bに対応して位置している。第1液晶FLbは、複数の液晶分子LC1bを含む。第1液晶FLのうちの第1液晶FLcが、液晶構造体5cに対応して位置している。第1液晶FLcは、複数の液晶分子LC1cを含む。第1液晶FLのうちの第1液晶FLdが、液晶構造体5dに対応して位置している。第1液晶FLdは、複数の液晶分子LC1dを含む。
従って、図17及び図18に示すように、実施形態6によれば、複数の第1電極51Aに対して選択的に第1駆動信号を供給するとともに、複数の第2電極52Aに対して選択的に第2駆動信号を供給することによって、第1部分J1aと第2部分J2aとの間の第1液晶FLa、第1部分J1bと第2部分J2bとの間の第1液晶FLb、第1部分J1cと第2部分J2cとの間の第1液晶FLc、及び、第1部分J1dと第2部分J2dとの間の第1液晶FLdを、個別に駆動して、液晶分子LC1aの配向、液晶分子LC1bの配向、液晶分子LC1cの配向、及び、液晶分子LC1dの配向を、個別に制御できる。
その結果、第1液晶FLa〜第1液晶FLdから、液晶構造体5a〜液晶構造体5dに作用する力を、液晶構造体5a〜液晶構造体5dごとに個別に制御できる。よって、液晶構造体5a〜液晶構造体5dを個別に回転させて、液晶構造体5a〜液晶構造体5dの姿勢を個別に変更できる。液晶構造体5a〜液晶構造体5dの姿勢を個別に変更できると、液晶構造体5a〜液晶構造体5dごとに、液晶構造体5a〜液晶構造体5dによる光の反射方向を制御できる。
特に、実施形態6では、図18に示すように、液晶構造体5aは、交差位置Qaに位置する。従って、図17に示す第1部分J1a及び第2部分J2aも交差位置Qaに位置する。液晶構造体5bは、交差位置Qbに位置する。従って、図17に示す第1部分J1b及び第2部分J2bも交差位置Qbに位置する。液晶構造体5cは、交差位置Qcに位置する。従って、図17に示す第1部分J1c及び第2部分J2cも交差位置Qcに位置する。液晶構造体5dは、交差位置Qdに位置する。従って、図17に示す第1部分J1d及び第2部分J2dも交差位置Qdに位置する。
なお、図17及び図18は、複数の第1電極51A及び複数の第2電極52Aに、第1駆動信号及び第2駆動信号が供給されていない時の液晶構造体5の状態を示している。つまり、図17及び図18は、液晶層3に外部から刺激が付与されていない時の液晶構造体5の状態を示している。なお、図17では、図面の簡略化のために、多数の液晶分子LC1のうちのいくつかの液晶分子LC1を図示している。また、液晶層3の第1領域A1の複数の第1部分J1及び第2領域A2の複数の第2部分J2の形成方法としては、つまり、複数の第1部分J1の液晶分子LCA及び複数の第2部分J2の液晶分子LCBのパターニング方法としては、例えば、光配向法、ナノインプリント法、又は、μラビング法を使用できる。
(実施形態6の変形例)
図17及び図19を参照して、本発明の実施形態6の変形例に係る光学システム300Dを説明する。実施形態6の変形例に係る光学システム300Dの光学素子100Dによる液晶層3の駆動方式がアクティブマトリックス方式である点で、変形例は、図17及び図18を参照して説明した実施形態6と主に異なる。以下、実施形態6の変形例が、実施形態6と異なる点を主に説明する。また、実施形態6の変形例におけるアクティブマトリックス方式を実現する構成は、図19を参照して説明した実施形態5の変形例におけるアクティブマトリックス方式を実現する構成と同様である。従って、アクティブマトリックス方式の説明は適宜省略する。なお、変形例と実施形態6との共通部分については、変形例の説明において、図17を適宜参照する。
図19は、実施形態6の変形例に係る光学システム300Dを示す平面図である。図19に示すように、光学システム300Dの光学素子100Dは、図17に示す電極パターンEL1に代えて、電極パターンEL2を含む。そして、液晶層3の第1領域A1(図17)での複数の液晶分子LCAの配向は相違している。また、液晶層3の第2領域A2(図17)での複数の液晶分子LCBの配向は相違している。そして、刺激付与部200Aによって刺激(変形例では駆動電圧)が液晶層3に付与された時に、第1領域A1での複数の液晶分子LCAの配向の相違と、第2領域A2での複数の液晶分子LCAの配向の相違とに応じて、複数の液晶構造体5の姿勢が個別に変化する。
具体的には、複数の液晶構造体5は、それぞれ、複数の第1電極51Bと複数の第2電極52Bとの複数の交差位置に対応して配置される。図19の例では、複数の液晶構造体5a、5b、5c、5dは、複数の第1電極51Bと複数の第2電極52Bとの複数の交差位置のうち、互いに隣り合う4つの交差位置Qa、Qb、Qc、Qdにそれぞれ対応して位置している。
そして、変形例によれば、複数の第1電極51Bに対して選択的に第1駆動信号を供給するとともに、複数の第2電極52Bに対して選択的に第2駆動信号を供給することによって、図17に示す第1部分J1aと第2部分J2aとの間の第1液晶FLa、図17に示す第1部分J1bと第2部分J2bとの間の第1液晶FLb、図17に示す第1部分J1cと第2部分J2cとの間の第1液晶FLc、及び、図17に示す第1部分J1dと第2部分J2dとの間の第1液晶FLdを、個別に駆動して、液晶分子LC1aの配向、液晶分子LC1bの配向、液晶分子LC1cの配向、及び、液晶分子LC1dの配向を、個別に制御できる。
その結果、第1液晶FLa〜第1液晶FLdから、液晶構造体5a〜液晶構造体5dに作用する力を、液晶構造体5a〜液晶構造体5dごとに個別に制御できる。よって、液晶構造体5a〜液晶構造体5dを個別に回転させて、液晶構造体5a〜液晶構造体5dの姿勢を個別に変更できる。液晶構造体5a〜液晶構造体5dの姿勢を個別に変更できると、液晶構造体5a〜液晶構造体5dごとに、液晶構造体5a〜液晶構造体5dによる光の反射方向を制御できる。
特に、変形例では、図19に示すように、液晶構造体5aは、画素電極Paに対して垂直方向Dv(図17)に対向する。従って、図17に示す第1部分J1aと第2部分J2aと液晶構造体5aと図19に示す画素電極Paとは、垂直方向Dvに沿って並んでいる。
液晶構造体5bは、画素電極Pbに対して垂直方向Dv(図17)に対向する。従って、図17に示す第1部分J1bと第2部分J2bと液晶構造体5bと図19に示す画素電極Pbとは、垂直方向Dvに沿って並んでいる。
液晶構造体5cは、画素電極Pcに対して垂直方向Dv(図17)に対向する。従って、図17に示す第1部分J1cと第2部分J2cと液晶構造体5cと図19に示す画素電極Pcとは、垂直方向Dvに沿って並んでいる。
液晶構造体5dは、画素電極Pdに対して垂直方向Dv(図17)に対向する。従って、図17に示す第1部分J1dと第2部分J2dと液晶構造体5dと図19に示す画素電極Pdとは、垂直方向Dvに沿って並んでいる。
なお、図19では、図面を見易くするために、液晶構造体5及びコモン電極CMを二点鎖線で示している。
また、図19は、複数の第1電極51B及び複数の第2電極52Bに、第1駆動信号及び第2駆動信号が供給されていない時の液晶構造体5の状態を示している。つまり、図19は、液晶層3に外部から刺激が付与されていない時の液晶構造体5の状態を示している。また、図19の例では、第1電極51Bと第2電極52Bとのうち、いずれかの電極の数が2以上であれば、第1電極51Bの数及び第2電極52Bの数は、特に限定されない。
ここで、図14〜図19を参照して説明した実施形態5(変形例を含む。)及び実施形態6(変形例を含む。)において、実施形態1〜実施形態4の液晶層3を採用することができ、実施形態1〜実施形態3の液晶構造体5を採用することができ、実施形態4の液晶構造体5Aを採用することができる。また、実施形態5(変形例を含む。)及び実施形態6(変形例を含む。)において、液晶層3の駆動方式(単純マトリックス方式、アクティブマトリックス方式)を実現する構成は一例であって、特に限定されない。
次に、本発明が実施例に基づき具体的に説明されるが、本発明は以下の実施例によって限定されない。
本発明の実施例では、図4を参照して説明した実施形態1に係る光学素子100を作製した。液晶構造体5の作製には、光重合性液晶(Merck、RMM141C)を93.2wt%、キラル剤(Merck、CD−X)を4.0wt%、光重合開始剤(東京化成工業、2−Benzyl−2−(dimethylamino)−4´−morpholinobutyrophenone)を2.8wt%混合した試料を用いた。水平配向剤(JSR、AL1254)を塗布しアンチパラレルラビングを施したサンドイッチセルに試料を封入した。試料がコレステリック相を呈する室温下で、波長800nm、パルス幅100fs、繰り返し周波数80MHzのチタンサファイアレーザーを用いた2光子励起直接レーザー描画法により液晶構造体5を作製した。具体的には、油浸対物レンズ(63x、NA=1.4)を介してセル深さ中央部に焦点を合わせた後、レーザー照射強度を4.5MW/cm2、照射時間を9μs/μmとして、直径15μmの円形領域をラスター走査し、厚み3μmの略円板状の液晶構造体5を作製した。
また、セルを分解して液晶構造体5をネマティック液晶(Merck、5CB)と混合し、セル厚15μmの90度TN(Twisted Nematic)セルに封入した。その結果、光学素子100が作製された。
そして、27°Cに設定した温調ステージ上で、光学素子100の液晶層3に周波数10kHzの矩形波交流電圧を印加したときの液晶構造体5の応答を偏光顕微鏡下で対物レンズ(×100、NA=0.90)を介して観察を行った。
一方、比較例として、図7(a)を参照して説明した光学素子500を作製した。光学素子500の作製方法は、光学素子100の作製方法と同様であった。ただし、光学素子500では、ネマティック液晶はねじれ配向を有していなかった。
まず、本実施例に係る光学素子100に、直線偏光の光を入射した。入射光は、第1基板1に対して略垂直であった。液晶構造体5のコレステリック液晶の旋回方向は右回りであった。そして、0Vから4Vまでの駆動電圧を液晶層3に印加しながら、第1基板1に対して略垂直な方向から、光学素子100からの反射光を反射偏光顕微鏡で観察した。反射光の観察によって、液晶層3に駆動電圧を印加していない時には、液晶構造体5が第1基板1及び第2基板2に対して略平行な状態で静止していることを確認できた。
また、各駆動電圧における反射光の観察結果を解析して、液晶構造体5の回転角θを算出した。具体的には、駆動電圧が徐々に増加すると液晶構造体5の回転角θが徐々に大きくなって、反射光の偏向が大きくなる。加えて、第1基板1に対して略垂直な方向から反射光を観察している。その結果、反射光の観察形状は、円形から楕円形に変化する。そこで、反射光の観察形状の楕円率に基づいて、液晶構造体5の回転角θを算出した。
図20は、本実施例に係る光学素子100の駆動電圧と液晶構造体5の回転角θとの関係を示すグラフである。図20において、横軸は駆動電圧(ボルト)を示し、縦軸は回転角θ(度)を示す。黒色の四角形は実測値を示し、曲線は理論値を示した。図20に示すように、駆動電圧の増加に伴って液晶構造体5の回転角θが大きくなった。また、液晶層3に駆動電圧を印加した状態から、駆動電圧を0Vにすると、液晶構造体5の回転角θが約ゼロ度になった。従って、液晶構造体5の姿勢を可逆的に制御できることを確認できた。
なお、光学素子100においては、液晶構造体5の直径がセル厚と同等であり、液晶構造体5の厚み3μmを考慮すれば、最大の回転角度は略60度である。従って、図20では、液晶構造体5の回転角θが90度に到達していない。しかしながら、後述する図21の説明で明らかなように、液晶構造体5の回転角θは、約ゼロ度から約90度まで変化する。なお、反射偏光顕微鏡の反射光の検出限界が存在し、対物レンズの開口数と液晶層3中の全反射とに基づくと、検出限界は略20度であった。
次に、光学素子100からの透過光のスペクトルを計測し、入射光のうち波長が532nmの光の透過率を算出した。透過光は、第2基板2に対して略垂直な方向から計測した。透過光の測定スポット径は10μmであった。
図21は、本実施例に係る光学素子100の波長532nmにおける光透過率と駆動電圧との関係を示すグラフである。図21において、横軸は駆動電圧(ボルト)を示し、縦軸は光の透過率(%)を示す。図21に示すように、駆動電圧の増加に伴って光の透過率が増加した。換言すれば、駆動電圧の増加に伴って光の反射率が減少した。更に換言すれば、駆動電圧の増加に伴って、液晶構造体5の回転角θが増加した。
具体的には、0Vから約0.6Vまでの駆動電圧では、光の透過率は約50%であった。光の透過率が約50%であることは、直線偏光である入射光のうち、液晶構造体5のコレステリック液晶の旋回方向と逆方向の左円偏光だけが透過光として検出されたことを示した。換言すれば、光の透過率が約50%であることは、コレステリック液晶の旋回方向と同じ方向の右円偏光が透過することなく反射されたことを示した。更に換言すれば、右円偏光が約100%反射され、液晶構造体5の回転角θが約ゼロ度であると推定できた。
また、1.0V以上の駆動電圧では、光の透過率は約90%であった。従って、波長532nmの入射光の大部分が透過したことを確認できた。換言すれば、液晶構造体5のコレステリック液晶の旋回方向と逆方向の左円偏光だけでなく、コレステリック液晶の旋回方向と同方向の右円偏光の大部分が、透過したことを確認できた。更に換言すれば、波長532nmの入射光の右円偏光の大部分が透過しているため、液晶構造体5の回転角θが十分大きく、液晶構造体5の反射波長帯域が532nmから外れていることが推定できた。
次に、本実施例に係る光学素子100からの反射光の強度と、比較例に係る光学素子500からの反射光の強度とを測定した。具体的には、反射光の光路に波長532nm(半値幅10nm)のバンドパスフィルターを挿入し、スポット径200μmの反射光を光電子増倍管を用いて測定した。反射光は、4Vの駆動電圧を液晶層3及び液晶層83に印加した時と印加していない時とで測定された。
図22(a)は、比較例に係る光学素子500の反射光強度を示すグラフである。図22(b)は、本実施例に係る光学素子100の反射光強度を示すグラフである。図22(a)及び図22(b)において、横軸は時間(秒)を示し、左側縦軸は反射光の強度(任意単位)を示し、右縦軸は駆動電圧(ボルト)を示す。
図22(a)に示すように、比較例に係る光学素子500に4Vの駆動電圧を印加した状態から、ゼロ秒において駆動電圧を0Vに切り替えた。反射光の強度は、ゼロ秒から12秒が経過しても、安定しなかった。つまり、比較例では、反射光の強度が安定し難いことが確認できた。反射光の強度が安定し難いことは、図7(a)〜図8(b)を参照して説明したように、比較例では、液晶構造体85が配向軸AX2の回りに回転可能であり、液晶構造体85の姿勢が一意に定まらないことを示した。
図22(b)に示すように、本実施例に係る光学素子100に4Vの駆動電圧を印加した状態から、ゼロ秒において駆動電圧を0Vに切り替えた。反射光の強度は、ゼロ秒から約2秒が経過すると安定した。つまり、本実施例では、反射光の強度が安定し易いことが確認できた。反射光の強度が安定し易いことは、図4及び図6を参照して説明したように、本実施例では、液晶構造体5の姿勢が一意に定まることを示した。
図22(a)及び図22(b)を比較すると、本実施例に係る光学素子100の応答時間が、比較例に係る光学素子500の応答時間よりも速いことが確認できた。具体的には、対物レンズの検出限界(略20度)が存在するためタイムラグはあるが、比較例に係る光学素子500は約2秒で応答を開始し、本実施例に係る光学素子100は約1秒で応答を開始した。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、または、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
また、図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。