JPWO2019239992A1 - 冷凍食品および食品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

冷凍食品の一例である冷凍寿司(300)は、HF波またはVHF波の高周波電界による誘電加熱処理によって解凍されて、可食状態となる。冷凍寿司(300)は、解凍時に上方に位置するネタ部(上層部)(301)と、解凍時に下方に位置するするシャリ部(下層部)(302)とで構成されている。この冷凍寿司(300)において、上層のネタ部(301)の単位体積当たりの水分量は、下層のシャリ部(302)の単位体積当たりの水分量よりも多くなっている。

Description

本発明は、HF波またはVHF波の高周波電界による誘電加熱処理によって解凍される冷凍食品、および、HF波またはVHF波の高周波電界による誘電加熱処理を利用して製造される食品の製造方法に関する。
一般的に、寿司は、ネタの温度がシャリの温度より若干低い方が、食味を向上させることができると言われている。冷凍された寿司を解凍して食する場合において、電子レンジのマイクロ波加熱による解凍では、ネタのほうがシャリより温度が高くなり、場合によってはネタが過加熱により焼けてしまうことがある。また、自然解凍では、ネタとシャリが同じ温度となるとともに、解凍時間がかかることによる品質劣化により、食味が低下してしまう可能性がある。
こうした問題を解決するために、シャリをお湯で解凍する方法、マイクロ波遮蔽フィルムでネタの加熱を防ぐ方法、ネタを水で囲みネタの加熱を抑える方法など考案されている(特許文献1から4など参照)。
特開2016−84151号公報 特開2002−223711号公報 特開2004−136975号公報 特開平10−56995号公報
特許文献1に記載のシャリをお湯で解凍する方法では、お湯を入れるための特別な容器が別途必要となり、解凍時にお湯を準備するなどの手間がかかってしまう。さらに、ネタはシャリからの熱伝導によって解凍されるため、解凍に時間がかかる。そのため、ネタからドリップが発生するなどの品質劣化が起こる恐れがある。
また、特許文献2および特許文献3に記載のマイクロ波遮蔽フィルムでネタの加熱を防ぐ方法では、特別な容器が必要となるとともに、マイクロ波遮蔽フィルムでネタを包む必要があり、食品製造工程に無駄な手間が増えてしまう。
また、特許文献4に記載のネタを水で囲みネタの加熱を抑える方法においても、別途特別な容器が必要であり、多数の寿司を続けて解凍する場合には、一度使用した容器は温度が下がるまで使用することはできず、複数の容器が必要となってしまう。
また、特許文献1から4に開示された技術は、何れも冷凍寿司の解凍に特化したものである。これらの方法では、上層と下層に温度差を生じさせることが望ましい別の食品に対応することができない。
そこで、本発明では、特別な容器やシートを使用せずに手間なく、かつ、最適な温度で高品位な食品に仕上げることのできる冷凍食品および食品の製造方法を提供する。
本発明の一局面にかかる冷凍食品は、HF波またはVHF波の高周波電界による誘電加熱処理によって解凍されるものである。この冷凍食品は、解凍時に上方に位置する上層部と、解凍時に下方に位置する下層部とで構成されており、前記上層部の単位体積当たりの水分量は、前記下層部の単位体積当たりの水分量よりも多くなっている。
上記の本発明の一局面にかかる冷凍食品において、前記下層部の単位体積当たりの水分量は、前記上層部の単位体積当たりの水分量の65%以上95%以下となっていてもよい。
上記の本発明の一局面にかかる冷凍食品は、冷凍された寿司であってもよい。
また、本発明のもう一つの局面にかかる食品の製造方法は、食品を調理する調理工程と、調理された前記食品を冷凍処理する冷凍工程であって、冷凍処理開始から120分以内に前記食品の温度を−20℃に到達させる冷凍工程と、冷凍処理された前記食品を、HF波またはVHF波の高周波電界による誘電加熱処理によって解凍する解凍工程であって、解凍後の前記食品の温度を+5℃以上+60℃以下の範囲内に制御する解凍工程とを含む。
上記の本発明のもう一つの局面にかかる食品の製造方法において、前記食品は、単位体積当たりの水分量が異なっている上層部と下層部とで構成されており、前記上層部の単位体積当たりの水分量は、前記下層部の単位体積当たりの水分量よりも多くなっていてもよい。
また、上記の本発明のもう一つの局面にかかる食品の製造方法では、前記食品における前記下層部の単位体積当たりの水分量は、前記上層部の単位体積当たりの水分量の65%以上95%以下となっていてもよい。
上記の本発明のもう一つの局面にかかる食品の製造方法において、前記解凍工程では、誘電加熱装置を用いて誘電加熱処理が行われてもよい。そして、前記誘電加熱装置は、対向して配置されている少なくとも2つの電極と、前記電極に、HF波またはVHF波による高周波電界を供給する高周波電源とを備えていてもよい。
上記の本発明のもう一つの局面にかかる食品の製造方法において、前記誘電加熱装置は、前記電極の位置を変更する位置変更機構をさらに備えていてもよい。
以上のように、本発明の一局面にかかる冷凍食品によれば、HF波またはVHF波の高周波電界による誘電加熱処理によって、特別な容器やシートを使用せずに手間なく、かつ、最適な温度で高品位な食品を得ることができる。また、本発明のもう一つの局面にかかる食品の製造方法によれば、特別な容器やシートを使用せずに手間なく、かつ、最適な温度で高品位な食品に仕上げることができる。
第1の実施形態にかかる高周波加熱装置の外観構成を示す模式図である。 図1に示す高周波加熱装置の内部構成を示す模式図である。 図1に示す高周波加熱装置内の回路構成を示す図である。 電極間距離に対する解凍物(被加熱物)の高さの比と、解凍物の各部分におけるエネルギー比率との関係を示すグラフである。 (a)および(b)は、被加熱物Aの高さHと電極間距離Dとの関係を示す模式図である。 被解凍物Aの高さHが様々に異なる場合の電極間電圧の比率を示すグラフである。 被解凍物Aの高さHが様々に異なる場合の電極間電圧の比率を示すグラフである。 種々の被解凍物Aにおいて電極間距離Dを変更して解凍処理を行ったときの評価結果を示す表である。 高周波加熱装置の加熱室内に被解凍物Aを載置したときに形成される各空間を示す模式図である。 図9に示す各空間を電気等価回路としてコンデンサで示した模式図である。 図9に示す高周波加熱装置に高周波電圧を印加したときに、電極面積/被解凍物底面積(n)に対する全電流/解凍物電流の変化を示すグラフである。 図9に示す高周波加熱装置に高周波電圧を印加したときに、電極面積/被解凍物底面積(n)に対する全電流/解凍物電流の変化を示すグラフである。 電極面積の異なる高周波加熱装置において各食材の解凍処理を行ったときの配線損失比を示す表である。 電極面積の異なる高周波加熱装置において各食材の解凍処理を行ったときの全電流/解凍物電流を示す表である。 第2の実施形態にかかる高周波加熱装置の内部構成を示す模式図である。 第2の実施形態にかかる高周波加熱装置内の回路構成を示す図である。 第3の実施形態にかかる冷凍食品(冷凍寿司)を示す模式図である。 上層部の水分量が下層部の水分量よりも多い場合のVHF波またはHF波の電界での解凍による温度上昇を示す図である。 上層部の水分量が下層部の水分量よりも少ない場合のVHF波またはHF波の電界での解凍による温度上昇を示す図である。 寿司パックを構成する各種寿司の食材に含まれる水分量(水分割合%)を示す図である。 第3の実施形態にかかる冷凍食品の他の例を示す模式図である。 第4の実施形態にかかる食品の製造方法の各工程を示す模式図である。 急速凍結時と緩慢凍結時における温度変化(凍結曲線)を示す図である。 第5の実施形態にかかる冷凍寿司パックの一例を示す側面模式図である。 第5の実施形態にかかる冷凍寿司パックのもう一つの例を示す側面模式図である。 第5の実施形態にかかる冷凍寿司パックにおける寿司の配置の例を示す上面模式図である。 第5の実施形態にかかる冷凍寿司パックにおける寿司の配置の例を示す上面模式図である。 第5および第6の実施形態にかかる冷凍寿司パックにおける寿司の配置の例を示す上面模式図である。 第5および第6の実施形態にかかる冷凍寿司パックにおける寿司の配置の例を示す上面模式図である。 第5および第6の実施形態にかかる冷凍寿司パックにおける寿司の配置の例を示す上面模式図である。 第5の実施形態にかかる冷凍寿司パックにおける寿司の配置の例を示す上面模式図である。 冷凍寿司パックを構成する各寿司のネタに含まれる総水分量(g)と、解凍時間と解凍電力の積(時間×W)との関係を示す図である。 第5の実施形態の変形例にかかる冷凍寿司パックを示す側面模式図である。 第5の実施形態の変形例にかかる冷凍寿司パックを示す側面模式図である。 第5の実施形態の変形例にかかる冷凍寿司パックを示す側面模式図である。 解凍時に被加熱物の高さの違いに起因して発生する温度ムラについて説明するための模式図である。 第6の実施形態にかかる冷凍寿司パックの一例を示す側面模式図である。 図37に示す冷凍寿司パックを示す上面模式図である。 第6の実施形態にかかる冷凍寿司パックにおける寿司の配置の例を示す上面模式図である。 第6の実施形態にかかる冷凍寿司パックにおける寿司の配置の例を示す模式図である。 解凍時に被加熱物の内部で発生する温度ムラについて説明するための模式図である。 第6の実施形態にかかる冷凍寿司パックにおける寿司の配置の例を示す上面模式図である。 第6の実施形態にかかる冷凍寿司パックにおける寿司の配置の例を示す上面模式図である。 第6の実施形態にかかる冷凍寿司パックにおける寿司の配置の例を示す上面模式図である。 電極間距離Dの電極を用いて高さdの被加熱物を解凍する様子を示す模式図である。 図45に示す構成の電気等価回路を示す回路図である。 寿司の最大高さ(cm)とエネルギー比率との関係を示すグラフである。 寿司の最大高さ(dmax)と最小高さ(dmin)との関係を表す模式図である。 寿司の高さ(cm)とエネルギー比率との関係を示すグラフである。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
〔第1の実施形態〕
(高周波加熱装置の概略構成)
本実施形態では、本発明の誘電加熱装置の一例として、高周波加熱装置100を例に挙げて説明する。高周波加熱装置100は、コンビニエンスストアなどの小売店舗、レストランなどの厨房、家庭のキッチンなど、大型機械の入らない小規模空間での使用に適している。
先ず、本実施の形態にかかる高周波加熱装置100の概略構成について、図1および図2を用いて説明する。図1には、高周波加熱装置100の外観を示す。図2には、高周波加熱装置100の内部構成を示す。
図1に示すように、高周波加熱装置100は、主として、本体部101と、本体部101に接続された読取部4とで構成される。本実施形態では、読取部4は、高周波加熱装置100を用いて加熱(または解凍)される被加熱物(被解凍物)Aの種類、大きさなどを判別する判別部としての機能を有している。読取部4は、例えば、バーコード読み取り装置などで実現される。被加熱物Aは、例えば、コンビニエンスストア、スーパーマーケットなどで販売される商品(冷凍食品、冷蔵食品)である。被加熱物Aには、読取部4で読み取り可能なバーコードBが付されている。
本実施形態の高周波加熱装置100は、被加熱物Aに高周波電界を印加して、被加熱物の解凍処理、加熱処理などを行う。高周波加熱装置100は、加熱室(解凍室)9を備えている。加熱室9は、金属製の筐体で形成されている。
図2に示すように、加熱室9の内部には、上部電極1a、下部電極1b、可動部(位置変更機構)8、天面プレート10、底面プレート11、輻射熱センサ21などが備えられている。上部電極1a及び下部電極1bは、高周波加熱装置100の電極板を構成する。上部電極1aと下部電極1bは、互いに平行になるように配置されている。上部電極1a、下部電極1b、天面プレート10、および底面プレート11は、何れも平板状である。天面プレート10は、上部電極1aの下部に配置されている。底面プレート11は、下部電極1bの上部に配置されている。
上部電極1aは、天面プレート10の上面に接着されて固定されている。また、上部電極1aは、可動部8と連結されている。上部電極1aは、可動部8によって加熱室9内の上方に支持されている。
可動部8は、ギア及びモータなどの部品を備えている。これらの部品は、配線によって制御回路6と接続されており、上部電極1aと天面プレート10を上下方向に移動させることができる。これにより、加熱処理時に、被加熱物Aの大きさに合せて上部電極1aの位置を変えることができる。すなわち、上部電極1aと下部電極1bとの間隔を変更することができる。このように、可動部8は、電極板(本実施形態では、上部電極1a)の位置(高さ)を変更する位置変更機構(高さ変更機構ともいう)として機能する。
上部電極1aおよび下部電極1bは、配線を介して電圧印加部20(具体的には、整合回路3)に接続されている。これにより、上部電極1aと下部電極1bとの間に高周波電界が与えられる。
底面プレート11は、加熱室9の側壁に固定されている。そして、底面プレート11の下面に下部電極1bが接着されて固定されている。このように、本実施形態では、底面プレート11および下部電極1bの位置は、加熱室9内で固定されている。
高周波加熱装置100を用いて被加熱物Aの加熱又は解凍を行う場合には、底面プレート11上に被加熱物Aを載せる。そして、上部電極1aと下部電極1bとの間に高周波電界を与え、被加熱物Aの誘電損失による誘電加熱解凍を行う。
なお、本実施形態では、上部電極1aと接続されている可動部8が上部電極1aを上下に動かすことによって、上部電極1aの高さを変更することができる。そのため、底面プレート11上に載置される被加熱物Aの大きさに応じて、上部電極1aと下部電極1bとの間隔を変更することができる。
被加熱物Aの大きさが比較的小さい場合には、被加熱物Aと上部電極1aとが近接するように、上部電極1aを下方に位置させることができ、被加熱物Aを効率的に加熱することができる。一方、被加熱物Aの大きさが比較的大きい場合には、被加熱物Aと上部電極1aとが接触しないように、上部電極1aを上方に位置させることができる。これにより、比較的大きな被加熱物Aも効率的に加熱することができる。
輻射熱センサ21は、加熱室9内の側壁に配置されている。具体的には、底面プレート11上の被加熱物Aが載置される場所の近傍であって、上部電極1aおよび下部電極1bの設置領域の外側に配置されている。輻射熱センサ21は、被加熱物Aの表面温度を検出する。輻射熱センサ21は、電圧印加部20内の制御回路6と接続されている。制御回路6には、輻射熱センサ21の検知結果が送信される。本実施形態では、輻射熱センサ21によって、被加熱物Aの加熱状態(解凍状態)を識別することができる。
また、図2に示すように、高周波加熱装置100は、加熱室9の外側に、電圧印加部20、制御回路(制御部)6、読取部4、操作部(入力部)7、およびメモリ5などを備えている。電圧印加部20は、上部電極1aと下部電極1bとの間に高周波電圧を印加する。電圧印加部20は、主な構成部材として、高周波電源2、および整合回路3などを有している。電圧印加部20の詳しい構成については、後述する。
制御回路6は、高周波加熱装置100内の各構成部品と接続され、これらの制御を行う。例えば、制御回路6は、可動部8と接続されており、可動部8の動作を制御する。
また、制御回路6は、可動部8の他に、高周波電源2および整合回路3と配線を介して接続されている。制御回路6は、高周波電源2の出力および整合回路3のインピーダンスを制御することで、被加熱物Aを効率的に加熱することができる。
また、制御回路6は、読取部4およびメモリ(記憶部)5とも配線を介して接続されている。制御回路6は、読取部4によって読み取られた被加熱物Aの情報を、メモリ5に格納されているデータと照合し、被加熱物Aに対する最適な制御条件を設定することで、被加熱物Aを効率的に加熱することができる。
メモリ5は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む。メモリ5は、高周波加熱装置100の動作プログラムや設定データを記憶する。また、メモリ5は、制御回路6に接続されており、制御回路6による演算結果を一時記憶する。また、本実施形態では、メモリ5は、被加熱物Aの種類と、それぞれに最適な制御条件のデータを格納する。
メモリ5には、読取部4で得られる被加熱物Aの識別情報に基づいて決定される制御情報として、例えば、電極間距離および可変コンデンサ3a・3bの容量などが記憶されている。なお、メモリ5には、これら以外の制御情報が記憶されていてもよい。他の制御情報としては、例えば、高周波電源2の出力電力、高周波電源2の駆動時間(加熱時間)などが挙げられる。
電圧印加部20およびメモリ5は、本体部101内に配置されている。一方、読取部4は、本体部101の外側に設けられている。読取部4は、配線を介して本体部101(具体的には、制御回路6)と接続されている。
読取部4は、被加熱物Aがどのようなものであるか(例えば、被加熱物Aの種類、大きさ、重量、水分量など)を識別することのできる手段である。読取部4は、例えば、バーコード読み取り装置、RFタグ読み取り装置、または画像認識装置などで実現される。
操作部7は、例えば、本体部101の前面側に配置されている(図1参照)。操作部7には、被加熱物Aの種類、大きさ、重量、水分量、加熱時間(解凍時間)、および加熱時の出力電力などを入力することのできる操作ボタンが設けられている。このような操作部7が設けられていることで、読取部4によって被加熱物AのバーコードBを読み取る方法以外に、ユーザが手動で被加熱物Aの種類、加熱時間(解凍時間)、および加熱時の出力電力などを設定することができる。
以上のように、本実施形態にかかる高周波加熱装置100は、被加熱物Aの種類、大きさなどを読み取る読取部4と、被加熱物Aと被加熱物Aを加熱するときの制御情報とを対応付けて記憶しているメモリ5と、読取部4によって判別された被加熱物Aに対応する制御情報に基づいて、加熱時間および出力電力などを変更する制御回路6とを備えている。
また、本実施形態にかかる高周波加熱装置100は、上記以外の構成として、被加熱物Aの重量を測定する重量センサを備えていてもよい。重量センサは、電圧印加部20内の制御回路6と接続されており、制御回路6には、重量センサによる被加熱物Aの重量に関する情報が送信される。この構成によれば、制御回路6は、読取部4および操作部7から送信される被加熱物Aの種類などに関する情報に加えて、重量センサから送信される重量情報も考慮して、加熱時間(解凍時間)および出力電力(出力ワット数)などを変更することができる。
なお、本実施形態では、加熱室9内に、対向して配置されている2つの電極(すなわち、上部電極1aおよび下部電極1b)が配置されている構成を例に挙げて説明した。しかし、本発明の別の態様では、対向して配置されている2つの電極は、加熱室の外側にそれぞれ配置されていてもよい。また、2つの電極(例えば、上部電極および下部電極)の何れか一方は、金属で構成される加熱室の筐体の一部であってもよい。
(電圧印加部の構成)
続いて、加熱室9内の各電極に対して電圧を印加する電圧印加部20の構成について、図2および図3を参照しながら説明する。図3は、各電極1aおよび1bと高周波電源2との間の回路構成を示す回路図である。
電圧印加部20は、上部電極1aと下部電極1bとの間に高周波電圧を印加する。電圧印加部20は、主な構成部材として、高周波電源2、整合回路3などを有している。
高周波電源2は、HFからVHFまでの帯域の周波数の電圧信号を発信する。ここで、HF帯域とは、3MHz以上30MHz以下の範囲内の周波数帯域のことをいう。また、VHF帯域とは、30MHz以上300MHz以下の範囲内の周波数帯域のことをいう。高周波電源2から発信された電圧信号は、増幅器(図示せず)で所望の電力まで増幅される。増幅された電圧信号は、整合回路3へ送信される。
図3に示すように、整合回路3は、可変コンデンサ(可変リアクタンス素子)3aおよび3b、並びにコイル3cなどを備えている。これにより、整合回路3は、上部電極1aと下部電極1bとで構成されるコンデンサのリアクタンスを相殺する。また、整合回路3は、可変コンデンサ3a・3bの値を調整することにより、整合回路3への入力インピーダンスと増幅器への出力インピーダンスとを一致させることができる。これにより、被加熱物Aに効率良く高周波電界を印加することができる。
整合回路3の可変コンデンサ3bと上部電極1aとの間には、コイル12が配置されている。コイル12は、整合回路3とともに、高周波加熱装置100の回路内のインピーダンス整合を取るためのインダクタとして機能する。
整合回路3においてインピーダンスマッチングが施された電圧信号は、上部電極1aと下部電極1bとで形成されるコンデンサへ供給される。これにより、上部電極1aと下部電極1bとの間には高周波電界が生じる。そして、上部電極1aと下部電極1bとの間に載置された被加熱物Aは、誘電加熱される。
(上部電極1aと下部電極1bとの間隔の制御について)
続いて、上部電極1aと下部電極1bとの間隔制御について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態にかかる高周波加熱装置100は、家庭やコンビニエンスストアなどの小売店舗での食品の解凍処理に適したものである。高周波加熱装置100は、家庭や小売店舗で使用する場合に想定される被加熱物Aの大きさ、数量、形状などを考慮して、上部電極1aと下部電極1bとの電極間距離Dが、3.0cm以上27cm以下の範囲内となるように設定されている。これにより、ユーザが高周波加熱装置100を手軽かつ安全に使用することができる。
ここで、被加熱物Aの高さHと、電極間距離Dとの関係について説明する。図4には、電極間距離Dに対する被解凍物(被加熱物)Aの高さHの比と、解凍物の各部分におけるエネルギー比率との関係を示す。
図5(a)に示すように、被解凍物Aの高さHが電極間距離Dに比べて小さい(すなわち、被解凍物Aと上部電極1aとの間のギャップ(空間)が大きい)と、被解凍物A中の高さの異なる部分に加わるエネルギーの差が小さくなる(図4に示す破線の枠部分参照)。一方、図5(b)に示すように、被解凍物Aの高さHが電極間距離Dに比べて大きい(すなわち、被解凍物Aと上部電極1aとの間のギャップ(空間)が小さい)と、被解凍物A中の高さの異なる部分に加わるエネルギーの差が大きくなる(図4に示す一点鎖線の枠部分参照)。
例えば、電極間距離Dに対する被解凍物(被加熱物)Aの高さHの比が0.8以下(すなわち、被加熱物Aの高さHが電極間距離Dの80%以内)であると、被解凍物Aの各部分におけるエネルギー比率を0.4以内とすることができる(図4参照)。すなわち、被解凍物Aの加熱ムラを比較的小さく抑えることができる。
しかし、被解凍物Aと上部電極1aとの間のギャップ(空間)が大きくなり過ぎると、電極間電圧をより大きくしなければ、より長時間の加熱が必要となる。図6には、高さH(電極間距離Dに対する比率)の異なる被解凍物Aを、電極間距離Dの80%の高さを有する被解凍物Aと同等の時間で解凍する場合に電極間に加えられる電圧の比を示す。図6では、電極間距離Dの80%の高さを有する被解凍物Aを解凍するときに印加される電極間電圧を1(基準)とする。また、図7には、電極間距離Dを20cmとした場合における高さH=2〜16cmの被解凍物Aを、高さH=16cmの被解凍物Aと同等時間で解凍する場合に電極間に印加される電圧の比を示す。ここで、電極間電圧の比率が2.2程度を超えると、放電可能性の上昇、整合回路の昇圧設計の必要性、およびそれに伴う装置本体の大幅なサイズ拡張につながる可能性がある。そのため、電極間電圧の比率は2.2以下とすることが望ましい。
以上を踏まえ、家庭やコンビニエンスストアなどの小売店舗などにおいて解凍される可能性のより高い被解凍物Aとして、刺身用切り身、寿司、塊肉、ケーキ類を、手軽に解凍することのできる電極間距離Dについて検討を行った。その結果を、図8に示す。図8における評価基準は、以下の通りである。
◎: 最適。品質よく、時間も一番早い。
○: よい品質で安定した解凍が可能。時間も早い。
△: 解凍は可能だが、熱効率が悪く、少々時間もかかる。
▲: なんとか解凍可能だが、結果が不安定。非常に熱効率が悪く、時間も大きくかかる。
図6を参照すると、電極間電圧の比率を2.2以内とするためには、被解凍物Aの高さHを電極間距離Dの15%以上とすることが望ましい。このとき、被解凍物Aとして握りずしを想定する。ここで、握りずしの平均高さを4cmとすると、電極間距離Dの15%以上という条件を満たす電極間距離Dは、27cm以下となる。これにより、高周波加熱装置100を用いて握りずしを解凍するときに、被解凍物A(握りずし)の加熱ムラを抑えることができる。
電極間電圧の比率をより小さくするためには、被解凍物Aの高さHを電極間距離Dの20%以上とすることがより望ましい。すなわち、電極間距離Dは、20cm以下であるとより好ましい。
また、高さHのより低い魚の切り身(高さ3.5cm)の解凍により適合させるためには、電極間距離Dを23cm以内とすることが好ましく、17cm以内とすることがさらに好ましい(図8参照)。
また、高さHのさらに低い刺身用のマグロ柵(高さ2cm)の解凍により適合させるためには、電極間距離Dを13cm以内とすることが好ましく、10cm以内とすることがさらに好ましい(図8参照)。
なお、被解凍物と各電極との間隔が0.5cm未満となると、電極と被解凍物とが近接し過ぎて放電しやすくなる。また、実際の被解凍物は厳密に直方体ではない場合が多く、マグロの柵などは解凍中に死後硬直などで変形することもある。この変形により、被解凍物が電極に接触する可能性も生じる。そこで、被解凍物の包装材や絶縁物、およびクリアランス分として、上下両電極間に0.5cmずつ、合計で1.0cmの空間を確保することが望ましい。
上記のような各電極とのクリアランスなどを考慮し、高さHが低いマグロ柵などの刺身用の切り身(高さ2cm)を基準にすると、電極間距離Dの下限値は3.0cmとなる。電極間距離Dが3.0cm以上であることで、高さHの低い被解凍物に好適な電極とのクリアランスを確保することができる。
また、マグロ柵よりも高さの高い被解凍物の場合には、例えば、電極間距離Dの下限値を以下のように設定することができる。寿司パックなどの高さ約4cmの被解凍物の場合には、電極間距離Dを5cm以上とする。塊肉などの高さ約6cmの被解凍物の場合には、電極間距離Dを7.5cm以上とする。ケーキ類などの高さ約8cmの被解凍物の場合には、電極間距離Dを10cm以上とする。
なお、寿司やケーキ類(例えば、モンブラン、ショートケーキ)などのように、多くの冷凍食材には、多少の高低差がある。被解凍物に高低差があることで発生する解凍時の加熱温度ムラを防ぐためには、被解凍物の最大高さの80%以内となるよう、電極間距離Dを設定することが好ましい。
上述したように、上部電極1aは可動部8と接続されており、制御回路6からの指令にしたがって上下方向に移動可能である。すなわち、電極間距離Dを変更することが可能である。そのため、被解凍物Aの高さに合わせて、電極間距離Dを最適な値に変更することができる。
被解凍物Aの高さは、例えば、加熱室9内に高さ検知センサを設置することによって測定することができる。またあるいは、被加熱物AのバーコードBに、被加熱物Aの高さに関する情報を含めてもよい。この場合には、読取部4が被加熱物AのバーコードBを読み取ることで、被加熱物Aの高さに関する情報を取得することができる。制御回路6は、高さ検知センサまたは読取部4を介して得られた被加熱物Aの高さに関する情報に基づいて、上部電極1aを上下方向に動かし、例えば、上述した被解凍物Aの種類および高さHに応じて、電極間距離Dを約3.0cm以上約27cm以下の範囲内の最適な距離に設定することができる。ここで、約3.0cmとは、3.0cmを中央値として、3.0cm±1.0cm程度までの範囲内を意味する。また、約27cmとは、27cmを中央値として、27cm±1.0cm程度までの範囲内を意味する。
これにより、多種類の被解凍物に対して、より加熱ムラを生じにくくすることができる。また、電極間距離Dを約3.0cm以上約27cm以下の範囲内とすることで、高周波加熱装置100の小型化も実現できる。
(上部電極1aおよび下部電極1bの面積について)
続いて、板状の上部電極1aおよび下部電極1bの表面(被解凍物Aとの対向面)の面積について説明する。ここでは、上部電極1aおよび下部電極1bが同じ形状かつ同じ面積の板状電極で構成されている例を挙げて説明する。但し、本発明の別の態様では、上部電極1aおよび下部電極1bの少なくとも何れか一方の電極が複数に分割されていてもよい。この場合には、電極の面積とは、複数に分割された板状電極の各表面(被解凍物との対向面)の面積を合計した面積のことを意味する。
一般的に、電極の面積が小さいと、電極サイズを大きく超えるサイズの被解凍物を解凍することが困難となる。一方、電極の面積を広くとると、電流量が増加するため配線損失が大きくなるため、加熱室内に備えられるファンなどの冷却機構の能力もより高いものが必要になる。しかし、冷却用の排熱ファンを大型化すると、装置のサイズの大型化を招き、高周波加熱装置を、店舗の厨房や家庭で使用する寸法に落とし込むことが困難となる。
加熱室9内の寸法および電極の寸法と、被解凍物Aの寸法との関係について、図9、図10などを参照しながら以下に説明する。図9には、加熱室9内の下部電極1b上に被解凍物Aを載置したときに形成される各空間を模式的に示す。
図9に示すように、下部電極1b上に被解凍物Aを載置すると、上部電極1aと下部電極1bとの間には、被解凍物Aが存在しない空間Bが形成される。高電圧が加わる上部電極1aおよび下部電極1bは、金属製の筺体(すなわち、アース内)に配置される。そして、上部電極1aの上方には、空間Cの領域が形成される。
各電極に高周波電圧が印加されると、空間A+被解凍物A、空間B、および空間Cは、コンデンサを形成する。空間B、および空間Cには、被解凍物Aにエネルギーを与えることに寄与しない高周波電流が流れる。空間Cの高さD2を小さくすると、空間Cに流れる高周波電流が増加する。また、上部電極1aと筺体間の電界強度が大きくなり、放電の要因となりうる。一方、空間Cの高さD2を大きくすると、高周波電流は減少するが、使用されない無駄な空間が増え、装置全体が大型化する。
図10は、空間Bおよび空間Cの高さが等しく(すなわち、D1=D2=D)、電極面積を被解凍物Aの底面積のn倍としたときに、各空間を電気等価回路としてコンデンサで表したときの図である。
ここで、各空間の静電容量Ca,Cb,Ccは、以下の通りとなる。
Ca=2.5ε・S/D
Cb=ε・(n−1)・S/D
Cc=ε・n・S/D
各コンデンサに加わる電圧を1として、全電流/解凍物電流を表すと、以下の通りとなる。ここで、全電流とは、回路内に流れる全電流値であり、解凍物電流とは、空間A+被解凍物Aに流れる電流値である。
{(2n−1)/2.5+1}
上記の式において、nの値を変化させ、電極面積/被解凍物底面積(n)に対する全電流/解凍物電流をグラフ化すると、図11および図12のようになる。図11は、n=1〜8までを示し、図12は、n=1〜28までを示す。
家庭や外食店舗の厨房で調理されることが見込まれる種々の食材の解凍処理の需要と、排熱量および必要な排熱ファンサイズを考慮した装置設計を検討すると、配線損失比は15以内に抑えることが望ましい。
ここで、比較的高い解凍需要が見込まれる食材として、例えば、冷凍ケーキ、刺身用切り身(例えば、マグロ柵)、塊肉、寿司パック(小)、寿司パック(大)を挙げて、これらの解凍処理を行う場合の配線損失を算定した。算定に当たっては、これらの各食材の底面積をそれぞれ、約50cm、100cm、150cm、200cm、300cmと想定した。その結果を、図13に示す。
電極面積を300cm以上1200cm以下とすることで、小売店舗などにおいて寿司などの冷凍食材を手軽かつ簡便に解凍できる小型解凍機を作ることができる。また、図13に示す結果を参照すれば、電極面積を600cm以下とすることで、食材ごとの細かい設定を必要とせずに、比較的幅広い種類の食材(すなわち、マグロ柵および塊肉などの素材、寿司パックなどの調理済食材)において配線損失比を良好な数値に維持することができることがわかる。なお、ケーキに関しては、電極面積が600cmの場合の配線損失比が比較的高い。このような、比較的面積の小さな食材の解凍処理を行う場合には、複数個(例えば、2個)を同時に解凍することで、配線損失比を低く抑えることができる。
また、図14には、同じ食材(すなわち、冷凍ケーキ、刺身用切り身(例えば、マグロ柵)、塊肉、寿司パック(小)、寿司パック(大))について、解凍処理を行う場合の全電流/解凍物電流(全電流と被加熱物電流との電流比)を算定した結果を示す。図13と同様に、冷凍ケーキ、刺身用切り身(例えば、マグロ柵)、塊肉、寿司パック(小)、および寿司パック(大)の底面積は、それぞれ約50cm、100cm、150cm、200cm、300cmと想定した。
高周波加熱装置100において解凍処理を行う場合の全電流/解凍物電流は、5.5以下とすることが好ましい。これにより、配線損失が増加することを抑えることができる。また、図14を参照すれば、配線損失の増大化を抑え、かつ、より多種類の食材の解凍処理に対応できるように、高周波加熱装置100の電極面積を、300cm以上600cm以下とすることが好ましい。
(第1の実施形態のまとめ)
以上、本発明の一実施態様について説明したが、ここで、本発明の前提となる従来技術およびその課題について説明する。
従来、家庭や店舗内キッチンやコンビニエンスストア等の比較的小規模な施設において冷凍食品の解凍を行う解凍機としては、電子レンジが幅広く普及している。電子レンジは、2.45GHzの電磁波により、水分子の振動子にエネルギーを与え、温度を上げるマイクロ波加熱器である。
また、電子レンジ以外に、内部加熱による解凍方法として、半導体素子を用いたアンプからの発信によるマイクロ波加熱という方法もある。また、これ以外の解凍方法として、雰囲気など外部からの伝熱により、被加熱物の温度を上げる方法がある。具体的には、冷蔵庫内、室温、流水などに冷凍食品を放置する。
また、惣菜や弁当の製造工場、外食チェーンのセントラルキッチン等のより大規模な施設では、HF波またはVHF波による産業用の解凍機が使用される。このような産業用の解凍機では、冷凍シラスのブロックや、数キロ単位の塊肉などの大量の食材を解凍している。
HF波またはVHF波を使う理由として、マイクロ波と比べたときの以下の3つの利点が挙げられる。
a)水と氷の損失係数の差が少なく、融けた水がより強く加熱される熱暴走が起きにくい。
b)周波数が低いと電力半減深度が深く、解凍物の奥までエネルギーが深く浸透する。
c)解凍物が解け、氷が水になるにつれ、高周波電圧が加わらなくなり(すなわち、加熱されにくくなり)、熱暴走を起こさずに、−5℃から−1℃の半解凍状態にしやすい。
昨今、食品流通を取り巻く技術、インフラ、社会などの状況には、目覚ましい進歩と変化が見られる。
例えば、技術面では、洋上や港湾での魚の活け締め、CAS(セルアライブシステム)やプロトン凍結など鮮度を維持する高度な凍結技術など、鮮度維持技術が大きく発達している。また、物流などのインフラ面では、クール便のような低温輸送サービスや冷凍設備が充実し、凍結食材および冷蔵食材を維持して配送する環境が整っている。このようなインフラ面の充実により、産地直送やお取り寄せなど、高付加価値商品を鮮度よく直接個人に届けるサービス産業が急成長している。
また、食を取り巻く社会の変化として、世界全体の食生活や食への関心には、以下の大きな変化が生まれている。
a)経済発展と、上述の鮮度保持技術の向上およびインフラ面の充実とにより、世界全体で肉および魚の消費量も価格も上がった。かつて生食を気味悪がられた寿司、刺身なども、洗練された高級食として不動の地位を築いた。
b)技術の向上とインフラの充実に加え、流通の合理化および効率化が進み、食材鮮度の要求基準が高まった。かつては有効な謳い文句であった「産地直送」、「朝採り」はもはや当たり前で、朝採りの鮮魚が、昼には回転すしなどの外食レストランで消費者に提供される。
c)鮮度を売りにする一方で、フードロスが経営面および倫理面での課題となり、賞味期限を延ばす種々の工夫が発達した。例えば、スモーク等の保存加工技術、保存料や酸化防止剤など食品添加物による食品保存技術、缶詰および真空パックなどに代表される容器包装技術などが挙げられる。
d)冷凍食品の品質が向上し、便利な上においしくなった。電子レンジなどの加熱調理器で、簡単にできたてが味わえ、大きな市場を形成している。
e)価値観の変化と安全性への懸念から、無添加食材および有機食材などといった自然派食材への支持が高まった。食品添加物に代わり高度な冷凍技術や包装技術で長期保存を可能にし、鮮度や食味をも同時に維持する工夫が、中食産業および外食産業に求められている。
以上のように、食品流通を取り巻く様々な状況は大きな変化を遂げている。それに伴って、冷凍食品の加工技術も種々の改良がなされている。これに対して、現在の解凍技術では、過加熱、食感の悪化等の問題点が発生している。特に、家庭や店舗内のキッチンなどの比較的小規模な施設において行われる短時間での常温または適温への解凍技術には不十分な点が多い。例えば、寿司、生菓子、生クリームを載せたケーキ等のように、数℃から20℃程度の常温帯で食される食品を、良好な品質を維持しつつ、電子レンジなどの既存の解凍技術で手軽に解凍することは困難である。例えば、以下のような課題がある。
電子レンジのマイクロ波は、損失係数の違い等から、水と比較して氷に吸収されにくい。そのため解凍時のデメリットとして、以下のようなものが挙げられる。
1)時間がかかる。これは、マイクロ波反射によるマグネトロン損傷を防ぐため、いわゆる「解凍モード」では出力を落として加熱するためである。
2)解凍ムラが生じやすい。例えば、塊肉の場合、表面層から2cm程度が強く加熱される一方、塊の内部には電磁波が浸透しないため、解凍物内外で大きな温度差が生じる。
3)局部加熱が起きやすい。上述の通り、解凍物表面が強く加熱され、水になった途端、急激にマイクロ波を吸収しはじめ、熱暴走と呼ばれる現象を起こす。
また、室温に放置による解凍では、放置すれば雰囲気に応じた均一な温度になる。しかしながら、以下のようなデメリットもある。
1)食材の量と形状にもよるが、解凍に数時間以上を要する場合がある。店舗厨房では、使用前日の晩から解凍することが多い。
2)長時間の解凍は、酸化による食味劣化、ドリップに伴う旨味流出(最大氷結晶生成帯の通過時間が長いため食品の細胞膜が傷つく)など、食品の変性を招来する。
3)長時間の解凍は、解凍物表面において、食中毒の原因菌やカビの繁殖リスクがあり、特に生食に対し衛生上のリスクが高まる。
また、流水による解凍では、比較的短時間で解凍できるものの、以下の2つのデメリットがある。
1)室温などの条件により所要時間が違うため、時間管理や頻繁な状態確認に人手が取られる。
2)流水解凍に適した条件(すなわち、大容量のシンクなどの占有空間、真空パックなどの包装形態、水道設備工事など)が必要となる。これに加え、塊肉など厚みのある食材には、解凍にある程度の時間を要する。
HF波またはVHF波を利用した解凍機は、上述したように、マイクロ波を用いた電子レンジと比較して解凍に関する優位性を有している。そのため、大きな施設での産業用の解凍機として広く普及している。但し、HF波またはVHF波は、電力半減深度が深いため、数kg単位の比較的大きなサイズの食材の解凍に向いており、一般消費者が購入する最終加工食品の解凍には不向きである。また、現状のHF波またはVHF波を用いた解凍機は、主として、単一の素材で構成される食材を解凍対象物としており、被加熱物が様々な物質で構成されていると誘電損失の高い食材がより強く加熱される。そのため、異なる食材が少量ずつ盛られた弁当などの加工食品を解凍すると、加熱ムラが発生する。
このように、従来のHF波またはVHF波を用いた解凍機は、必要量を少量解凍する店舗厨房などのような小規模の施設における解凍には向いておらず、小型化もされていない。それゆえ、家庭やコンビニエンスストアなどの店舗内キッチンにおいて、HF波またはVHF波を用いた解凍機は、電子レンジのように普及はしていない。
例えば、また、HF波またはVHF波の高周波電界による誘電加熱方式を用いる高周波加熱装置では、解凍(加熱)する対象物によって、最適な出力、整合回路のリアクタンス成分、駆動時間がそれぞれ違っており、それぞれを総合的に制御することが求められる。しかし、特許文献1に開示された食品加熱調理装置(電子レンジ)は、駆動時間のみを制御している。この方法を本実施形態のような高周波加熱装置に適用すると、高品位な解凍ができず、過加熱や加熱不足、加熱ムラが発生してしまう恐れがある。
また、特許文献(特開2004−349116号公報)には、HF波またはVHF波を用いた誘電加熱装置において、高さや形状が様々な不定形状の被加熱物を均一に加熱し、解凍する方法が提案されている。この方法では、被加熱物の比誘電率と同等以上の比誘電率を持つ介在体で被加熱物を覆い、空隙を埋めることで、局所的に集中加熱することを防止している。しかし、店舗厨房やコンビニエンスストアなどでの使用のように、頻繁かつ繰り返し使用される場合には、被加熱物の出し入れが困難で、作業時にひっかかり被加熱物や介在体に傷をつけるなど、操作性、寿命、メンテナンスに問題を生じる。
上述のように、寿司および生菓子などの最終加工食品を、添加物の使用を抑えつつ、いつでも手軽に食べたいという近年の社会的要請の高まりは強く、そのための冷凍保存技術は大幅に進化している。これに対して、解凍技術は、冷凍・冷蔵技術の進歩と比較して遅れを取っており、満足な技術が普及していないのが現状である。特に、消費者の口に入る直前の家庭のキッチンや店舗の調理場などのような小規模の施設において、必要人数分だけを高品位に、かつ比較的短時間で適温に解凍できる、汎用性の高い解凍機は未だに存在しない。
そこで、本発明の一態様では、上記課題に鑑み、電子レンジのように使いやすい解凍機(高周波加熱装置)を提供する。
本発明の一態様にかかる高周波加熱装置100は、上部電極1aと、下部電極1bと、上部電極1aと下部電極1bとの間に高周波電圧を印加する電圧印加部20(高周波電源2および整合回路3)と、上部電極1aと連結されている可動部8とを備えている。可動部8が備えられていることで、上部電極1aと下部電極1bとの間隔が変更可能になっている。
そして、本実施形態にかかる高周波加熱装置100は、2つの電極(上部電極1aおよび下部電極1b)の電極間距離Dが、3.0cm以上27cm以下の範囲内となっている。また、平板状の板状の上部電極1aおよび下部電極1bの面積は、それぞれ600cm以下となっている。これにより、装置を、家庭や店舗などの小規模な施設内での使用に適したサイズとすることができ、汎用性の高い高周波加熱装置を得ることができる。
例えば、本実施形態にかかる高周波加熱装置100は、コンビニエンスストア、店舗厨房、家庭のキッチンなど、大型機械の入らない小規模空間でも使用することができる。また、高周波加熱装置100は、電子レンジ並の大きさおよび重量とすることができるため、一人でも輸送、移動、設置等が可能となる。また、特許文献(特開2004−349116号公報)に記載の装置のように、物理条件の細かな設定が不要であるため、耐久性や利便性を落とすことなく、手軽且つ便利に装置を使用することができる。
また、高周波加熱装置100の構成によれば、被加熱物の加熱時における全電流と被加熱物電流との電流比を5.5以下とすることができ、配線損失を抑えることができる。
また、可動部8によって上部電極1aを移動させて、被加熱物の高さに合わせて電極間距離Dを上記の範囲内の最適な値に設定することができる。これにより、過加熱や加熱不足、加熱ムラなどの発生を抑え、高品位な解凍を実現することができる。
また、高周波加熱装置100は、被加熱物Aの種類、大きさなどを読み取る読取部4と、被加熱物Aと被加熱物Aを加熱するときの制御情報とを対応付けて記憶しているメモリ5と、読取部4によって判別された被加熱物Aに対応する制御情報に基づいて、加熱時間および出力電力などを変更する制御回路6とを備えている。
この構成によれば、より多くの食品の種類および食材ごとに、適した加熱設定を行うことができる。例えば弁当類だけで数十種に及ぶコンビニエンスストアなどで、各商品を正確に識別し、それに適した加熱プログラムを選択することができる。また、被加熱物の重量、形状、サイズ等が予め決められた規格品であれば、手入力を行うことなく、バーコードを読み取ることで最適な解凍条件を設定することができる。
また、被加熱物の種類を判別することで、その被加熱物の特性に合った最適な仕上り温度に加熱(解凍)することができる。例えば、被加熱物が加熱用の生肉の場合には、半解凍から0℃前後の仕上がり温度とすることができる。また、被加熱物が冷凍寿司の場合には、20℃程度の仕上がり温度とすることができる。また、被加熱物が生クリームを含むケーキの場合には、5℃程度の仕上がり温度とすることができる。さらに、加熱室9内に輻射熱センサ21が備えられていることで、加熱前の被加熱物の状態に合わせた加熱プログラムを組むことができる。例えば、加熱前の被加熱物の温度が高ければ、加熱時間を短くすればよい。
また、高周波加熱装置100が重量センサを備えている場合には、重量センサから送信される重量情報も考慮して、加熱時間(解凍時間)および出力電力(出力ワット数)などを変更することができる。
このように、高周波加熱装置100は、読取部4および操作部7などを用いて被加熱物の種類などを特定したり、輻射熱センサ21および重量センサなどの各種センサを用いて被加熱物の状態を把握したりすることができる。そのため、制御回路6は、被加熱物の種類や状態に応じて解凍処理の細かな制御が可能になる。そして、被加熱物の仕上がり具合を最適な状態にすることができる。また、輻射熱センサ21および重量センサなどの各種センサを備えることで、制御の一部または全部を自動化することができる。
また、本発明の一態様にかかる高周波加熱装置100によれば、需要の予測がつかない小規模外食店において、注文に応じて冷凍された食品をその都度時短解凍することができる。そのため、フードロスや機会ロスを低減させることができる。また、時短で高品位な解凍ができることで、放置解凍と比べて解凍中の食中毒原因菌の増殖を抑えることができる。したがって、食の安全に寄与することができる。
〔第2の実施形態〕
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。図15には、第2の実施形態にかかる高周波加熱装置200の内部構成を示す。
高周波加熱装置200は、加熱室(解凍室)9を備えている。また、図15に示すように、高周波加熱装置200は、加熱室9の外側に、電圧印加部20、制御回路(制御部)6、読取部4、操作部(入力部)7、およびメモリ5などを備えている。図15と図1とを比較すればわかるように、高周波加熱装置200には、可動部8が設けられていない点が、第1の実施形態にかかる高周波加熱装置100とは異なっている。また、整合回路203内の構成が第1の実施形態とは異なっている。それ以外の構成については、高周波加熱装置100と同様の構成が適用できる。そのため、各構成部材の詳しい説明については省略する。
図16は、各電極1aおよび1bと高周波電源2との間の回路構成を示す回路図である。電圧印加部20は、加熱室9内の各電極に対して電圧を印加する。
電圧印加部20は、上部電極1aと下部電極1bとの間に高周波電圧を印加する。電圧印加部20は、主な構成部材として、高周波電源2、整合回路203などを有している。高周波電源2については、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。
整合回路203は、可変コンデンサ(可変リアクタンス素子)3aおよび3b、並びに可変コイル(可変リアクタンス素子)203cなどを備えている。可変コンデンサ3aおよび3bについては、第1の実施形態と同様の構成が適用できる。
可変コイル203cは、切り換え可能に接続された複数のコイルを有している。これにより、可変コイル203cは、複数のインダクタンス値に切り変えられることができる。
この構成により、整合回路203は、上部電極1aと下部電極1bとで構成されるコンデンサのリアクタンスを相殺する。また、整合回路203は、可変コンデンサ3a・3bおよび可変コイル203cの値を調整することにより、整合回路203への入力インピーダンスと増幅器への出力インピーダンスとを一致させることができる。これにより、被加熱物(被解凍物)Aに効率良く高周波電界を印加することができる。
第1の実施形態と同様に、整合回路203の可変コンデンサ3bと上部電極1aとの間には、コイル12が配置されている。
(可変コンデンサ3a・3bの容量の制御について)
本実施形態にかかる高周波加熱装置200のメモリ5は、被加熱物Aを加熱するときの制御情報として、整合回路203内の可変リアクタンス素子(可変コンデンサ3aおよび3b)の容量を記憶している。そして、制御回路6は、メモリ5に記憶された可変リアクタンス素子(可変コンデンサ3aおよび3b)の容量に関する制御情報に基づいて、整合回路203内の可変コンデンサ3aおよび3bの容量を制御する。
高周波加熱装置200は、整合回路203の可変リアクタンス素子(可変コンデンサ3a・3bおよび可変コイル203c)を調整することにより、被加熱物に効率良く高周波電界を印加することができ、温度ムラの少ない高品質な食品を、高効率で解凍することができる。
(上部電極1aと下部電極1bとの電極間距離について)
続いて、上部電極1aと下部電極1bとの電極間距離について説明する。本実施形態にかかる高周波加熱装置200は、家庭やコンビニエンスストアなどの小売店舗での食品の解凍処理に適したものである。高周波加熱装置200は、家庭や小売店舗で使用する場合に想定される被加熱物Aの大きさ、数量、形状などを考慮して、上部電極1aと下部電極1bとの電極間距離Dが、3.0cm以上27cm以下の範囲内となるように設定されている。これにより、高周波加熱装置200の小型化が実現できる。
なお、本実施形態にかかる高周波加熱装置200には、可動部8が設けられていない。そのため、上部電極1aと下部電極1bとの電極間距離Dは、3.0cm以上27cm以下の範囲内の何れかの距離に設定する。このとき、高周波加熱装置200の用途を考慮して、より使用頻度の高い食材の高さHを基準にして、電極間距離Dを設定することが好ましい。
例えば、電極間距離Dに対する被解凍物(被加熱物)Aの高さHの比が0.8以下(すなわち、被加熱物Aの高さHが電極間距離Dの80%以内)となるように、電極間距離Dを設定することが好ましい。これにより、被解凍物Aの各部分におけるエネルギー比率を0.4以内とすることができる(図4参照)。すなわち、被解凍物Aの加熱ムラを比較的小さく抑えることができる。
なお、本実施形態にかかる高周波加熱装置200は、HF波またはVHF波の高周波電界による誘電加熱処理によって冷凍寿司セットを解凍する解凍処理システムの誘電加熱装置として利用することもできる。この場合、高周波加熱装置200は、冷凍寿司セットを解凍する旨の指示を受信する受信部としての通信インターフェイス230を備えている(図15参照)。
この解凍処理システムは、主な構成要素として、高周波加熱装置200と、サーバ240とを含む。高周波加熱装置200は、インターネットやルータなどを介してサーバ240に接続可能となっている。
高周波加熱装置200内の通信インターフェイス230は、アンテナやコネクタによって実現される。サーバ240から送信される各種信号、各種データ、および各種指令などを受信する。この解凍処理システムでは、例えば、サーバ240と通信可能な情報端末を有しているユーザが所定の操作を行うことによって、寿司パックを注文すると、その注文情報がサーバ240へ送信される。そして、サーバ240は、寿司製造業者の冷凍庫などに保管されている様々な冷凍寿司パックの中から該当する冷凍寿司パックを選び出す。選び出された冷凍寿司パックは、高周波加熱装置200を用いて解凍され、ユーザへ提供される。
上記の説明では、受信部が、高周波加熱装置200の内部に設けられている例を挙げているが、本発明の別の態様では、受信部は、高周波加熱装置200とは別の受信装置として実現することもできる。また、高周波加熱装置200の代わりに高周波加熱装置100を用いて同様の解凍処理システムを構成することもできる。
上記の解凍処理システムを利用すると、店舗またはインターネット上で購入者が寿司パックを注文すると、販売側の人(例えば、店員)が冷凍された寿司セットを、誘電加熱装置(例えば、高周波加熱装置200)によって解凍し、解凍した冷凍寿司セットを購入者へ提供することができる。このような寿司セットの提供および販売システムも本発明の一例である。
冷凍された寿司は、電子レンジでは上手く解凍することが困難であるため、小売店舗で寿司を販売する場合、冷蔵で保存する必要があり、比較的消費期限が短く、売れ残ったものは廃棄せざるを得なかった。
そこで、小売店舗での食品の解凍処理に適した誘電加熱装置を提供することにより、冷凍保存が可能となり、必要な時に、必要な分だけ、高品位に解凍することができる。そのため、消費期限の切れた寿司を無駄に廃棄することが無くなり、例えば、コンビニエンスストアでも容易に寿司を販売することが可能となる。
〔第3の実施形態〕
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、上述の高周波加熱装置100または200を用いて解凍されるのに適した冷凍食品について説明する。本実施形態で説明する冷凍食品(具体的には、冷凍寿司300)は、本発明の一態様にかかる冷凍食品である。
図17には、本実施形態にかかる冷凍寿司300の外観を示す。冷凍寿司300は、HF波またはVHF波の高周波電界による誘電加熱処理によって解凍されて、可食状態となる。HF波またはVHF波の高周波電界による誘電加熱処理は、上述の高周波加熱装置100または200を用いて行うことができる。
冷凍寿司300は、上方に位置するネタ部(上層部)301と、下方に位置するシャリ部(下層部)302とで構成されている。高周波加熱装置100などを用いて解凍処理される際に、ネタ部301は上方側に位置し、シャリ部302は下方側に位置する。シャリ部302は、底面プレート11上に載置されて解凍処理が行われる。
冷凍寿司300は、上層のネタ部301の水分量が、下層のシャリ部302の水分量よりも多くなっている。ここでの水分量は、単位体積当たりの水分量(重量)を意味する。
解凍処理において使用される誘電加熱装置によるVHF波またはHF波の電界での解凍において、水分量の少ないものの方が水分量の多いものよりも加熱されやすいという特性を有している。これについて、図18および図19を用いて説明する。
図18は、上層部の水分量が下層部の水分量よりも多い被加熱物の場合のVHF波またはHF波の電界での解凍処理による温度上昇を示す図である。図18に示すように、水分量の多い上層部の方が下層部よりも温度上昇が緩やかになるという特性を有する。
図19は、上層部の水分量が下層部よりも少ない被加熱物の場合のVHF波またはHF波の電界での解凍処理による温度上昇を示す図である。図19に示すように、水分量の少ない上層部のほうが下層部よりも温度上昇が速くなるという特性を有する。
このように、VHF波あるいはHF波の電界での誘電加熱による解凍処理では、水分量が少ない方が加熱されやすいという特性を有しているため、水分量の異なる上層部と下層部で、意図的に温度差を生じさせることができる。
一般的に寿司は、シャリの方がネタに比べて温かい方が美味しく感じると言われており、意図的に上下層の温度差を作り出すことにより、より美味しく感じる寿司を提供することができる。
図20には、主な寿司用食材の水分量を重量%で示している。図20に示すように、シャリは約60%程度の水分量となっている。上下層間の理想的な温度差を作り出すためには、シャリよりも水分量の多いネタを選定することで、より美味しく感じることのできる寿司パックを提供することができる。
図20に示す例では、マグロ(トロ)、サーモン(トロ)、イクラ、しめさばについてはシャリの水分量である60%よりも少ない水分量となっており、他のネタと同じシャリを使用すると、上下層間の理想的な温度差を作り出すことができない。そのようなネタを使用して複数個の寿司の盛り合わせからなる冷凍寿司パック300aを製造する場合には、ネタよりも水分量が少なくなるように、使用するシャリの水分量を調整することでこれら水分量の少ないネタにも対応することができる。またあるいは、冷凍寿司パック300aのネタを選定する際に、水分量が60%以下のネタを選ばないという対応も可能である。
なお、本実施形態では、冷凍食品の一例として冷凍寿司300を例に挙げて説明したが、上層部と下層部とで構成される他の冷凍食品にも適用可能である。図21には、冷凍食品の他の例として、冷凍ちらし寿司300b、冷凍海鮮丼300c、冷凍ムースケーキ300d、冷凍チーズケーキ300eを示す。これらの各食品は、上層部301(ネタ、ムース、チーズなど)と、上層部よりも水分量の少ない下層部302(酢飯、ごはん、スポンジなど)とで構成されている。
以上のように、本実施形態にかかる冷凍食品は、上層部301と、上層部よりも水分量の少ない下層部302とで構成されている。これにより、高周波加熱装置100などで誘電加熱処理を行ったときに、相対的に下層部302の昇温を速くし、上層部301の過加熱を防止することができ、上層と下層の間に意図的に温度差を作り出すことができる。
また、上層部と下層部との2層構造を有する冷凍食品において、下層部の単位体積当たりの水分量は、上層部の単位体積当たりの水分量の65%以上95%以下となっていることが好ましい。ここでの水分量は、重量比による割合で算出される。
上層部および下層部の水分量を上記のように調整することで、上層部と下層部との温度差を最適な値にすることができる。
〔第4の実施形態〕
続いて、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、本発明の一態様にかかる食品の製造方法について説明する。図22には、本実施形態にかかる食品の製造方法の各工程を示す。
図22に示すように、本実施形態にかかる食品の製造方法は、主として、調理工程と、冷凍工程と、解凍工程という3つの工程で実施される。以下、各工程について説明する。
調理工程は、食品を調理する工程である。この調理工程においては、弁当や寿司パックなどの加工食品に使用されるそれぞれの食材を従来の調理工程と同様の過程で調理し、加工食品を製造する。従来の調理工程についてはここでは説明を省略する。
冷凍工程は、調理工程で調理された加工食品を冷凍処理する。冷凍工程では、冷凍処理開始から120分以内に加工食品の温度が−20℃に到達するように加工食品を急速冷凍する。急速冷凍の方法としては、エアーブラスト方式(空気凍結)、リキッド方式(液体凍結)、コンタクト方式(接触式凍結)、液化ガス方式などの従来公知の方法を適用することができる。
図23に示すように、冷凍時の温度低下の過程には、最大氷結晶生成温度帯と呼ばれる温度が下がりにくくなる温度帯が存在し、冷凍処理時にこの温度帯を通過する時間が長いと、食品の品質が劣化することが知られている。
そこで、冷凍処理開始から120分以内に−20℃に到達するように食品を冷凍することで、食品の品質劣化を防止することができる。特に、白米や小麦粉を使用した食品の場合は、時間をかけて冷凍させるとでんぷんの老化現象が発生し、著しく食味や食感を低下させてしまう。そのため、白米や小麦粉などのでんぷんを多く含有する食品を冷凍する場合には、例えば、20℃程度の常温から−20℃にまで急速冷凍することがより好ましい。
解凍工程は、冷凍処理された加工食品を、HF波またはVHF波の高周波電界による誘電加熱処理によって解凍する。この解凍工程は、例えば、上述の第1または第2の実施形態で説明した高周波加熱装置100または200などを使用して実施することができる。具体的には、加工食品(被解凍物)を上部電極1aと下部電極1bとの間に挟み、電極間にHF波またはVHF波の高周波電界をかけることで加工食品を誘電加熱する。そして、解凍工程では、解凍後の加工食品の温度を+5℃以上+60℃以下の範囲内に制御する。
冷凍工程時と同じように、解凍工程時の温度上昇の過程には、最大氷結晶生成温度帯と呼ばれる温度が上がりにくくなる温度帯が存在し、解凍時にこの温度帯を通過する時間が長いと、食品の品質が劣化することが知られている。
そこで、上述の高周波加熱装置によって冷凍された加工食品を急速に解凍することで、食品の品質劣化を防止することができる。特に、白米や小麦粉を使用した食品の場合は、時間をかけて解凍してしまうとでんぷんの老化現象が発生し、著しく食味や食感を低下させてしまう。そのため、白米や小麦粉などのでんぷんを多く含有する食品を冷凍する場合には、急速解凍することが好ましい。
急速解凍方法としては、マイクロ波による電子レンジ加熱が一般的だが、この方法だと過加熱や加熱ムラの恐れがあり、冷凍された食品を高品位に解凍することができない。一方、上述の高周波加熱装置によるVHF波あるいはHF波の電界での解凍では、過加熱や加熱ムラが抑えられ、より高品位の解凍を行うことができる。
以上のように、食品を急速冷凍した後に、VHF波あるいはHF波の電界で誘電加熱解凍し、仕上がり温度を+5℃から+60℃の間とすることで、過加熱による変質を抑制しつつ、特別な容器やシートを使用することなく、良好な食味や食感を有する食品を得ることができる。
なお、本実施形態にかかる製造方法で製造される食品としては、例えば、上述の第3の実施形態で説明した冷凍食品(例えば、冷凍寿司300、冷凍寿司パック300a、冷凍ちらし寿司300b、冷凍海鮮丼300c、冷凍ムースケーキ300d、冷凍チーズケーキ300e)を上記の解凍工程で解凍処理した食品が挙げられる。
すなわち、本実施形態にかかる製造方法で製造される食品は、単位体積当たりの水分量が異なっている上層部301と下層部302とで構成されており、上層部301の単位体積当たりの水分量が、下層部302の単位体積当たりの水分量よりも多いものが好ましい。このような食品を上述の製造方法で製造することで、特に、解凍工程における食品の過加熱や加熱ムラを抑え、良好な食味や食感を有する食品を得ることができる。
また、本実施形態にかかる製造方法で製造される食品は、下層部302の単位体積当たりの水分量が、上層部301の単位体積当たりの水分量の65%以上95%以下となっていることが好ましい。これにより、解凍工程における食品の過加熱や加熱ムラをより確実に抑えることができる。
ここで、上記の解凍工程で使用される誘電加熱装置の一例を説明する。上述したように、解凍工程は、本発明にかかる誘電加熱装置の一例である高周波加熱装置100または200などを使用して実施することができる。
高周波加熱装置100および200は、対向して配置されている少なくとも2つの電極(すなわち、上部電極1aおよび下部電極1b)、これらの電極に、HF波またはVHF波による高周波電界を供給する高周波電源2、および整合回路3などを備えている。
この構成により、冷凍された加工食品に効率良く高周波電界を印加することができ、温度ムラの少ない高品質な食品を、高効率で解凍することができる。
また、解凍工程で使用される誘電加熱装置は、電極の位置を変更する位置変更機構をさらに備えていてもよい。位置変更機構は、例えば、高周波加熱装置100に備えられている可動部8などである。
可動部8を備えていることで、誘電加熱時に、加工食品(被加熱物)の大きさに合せて上部電極1aの位置を変えることができる。加工食品と上部電極1aとの距離を適切に設定することで、冷凍された加工食品に効率良くエネルギーを与えることができ、解凍時間を短縮化することが可能となる。
〔第5の実施形態〕
続いて、本発明の第5の実施形態について説明する。第5の実施形態では、本発明の一態様にかかる冷凍寿司セットについて説明する。ここで、冷凍寿司セットの一例として、複数個の寿司で構成される冷凍寿司パック(寿司の盛り合わせ)を例に挙げて説明する。この冷凍寿司パックは、HF波またはVHF波の高周波電界による誘電加熱処理によって解凍されるのに適している。本実施形態にかかる冷凍寿司パックを、HF波またはVHF波の高周波電界による誘電加熱処理によって解凍することで、良好な食感および品質を維持することができる。
図24には、本実施形態の一例の冷凍寿司パック400を示す。冷凍寿司パック400は、主として、容器430と、複数個の寿司410および420とで構成されている。容器430は、トレイ431と上蓋432とを有している。個々の寿司410および420は、シャリ部412または422と、シャリ部の上に配置されるネタ部411または421とを有している。
シャリ部412または422は、酢飯で構成される。しかし、他の例では、シャリ部は白米、雑穀米等の米飯であってもよい。ネタ部411または421は、例えば、魚介類で構成される。しかし、ネタ部は、魚介類に限定されることはなく、野菜類、きのこ類、藻類、肉類等の食材であっても構わない。また、魚介類の天ぷら、たまご焼き、しめサバ、カルビ、ハンバーグ等の加工食材であっても構わない。
複数個の寿司410および420は、容器430のトレイ431上に並べて配置されている。複数個の寿司410および420は、単位体積当たりの水分量(重量)が、例えば、60%(重量%)の基準値を境界として、ネタ部がこの基準値未満の水分量を有する第1のグループと、ネタ部がこの基準値以上の水分量を有する第2のグループとに分類される。
本実施形態では、第1のグループに分類される寿司(すなわち、相対的に水分割合の少ないネタを有する寿司)を、第1の寿司410とする。このような第1の寿司410のネタ(第1のネタ)としては、マグロ(トロ)、イクラ、サーモン(トロ)などが挙げられる(図20参照)。また、第1群の寿司410のネタは、しめさば等の加工食材であっても構わない。
また、第2のグループに分類される寿司(すなわち、相対的に水分割合の大きいネタを有する寿司)を、第2の寿司420とする。このような第2の寿司420のネタ(第2のネタ)としては、マグロ(赤身)、サーモン、えび(ゆで)、鯛、ホタテ(生)などが挙げられる(図20参照)。また、第2群の寿司420のネタは、卵焼きやイカのてんぷらのような加工食材であってもよい。イカのてんぷらの水分は、約69%である。
なお、第1のグループおよび第2のグループへの寿司の分類は、ネタの種類には限定されず、ネタに含まれる水分量で決められる。つまり、同じ種類のネタであっても、その部位などによって水分量が異なる場合には、異なるグループに分類される。
また、本実施形態では、水分量の基準値として、シャリ部の通常の水分量である60%を採用しているが、基準値はこれに限定されない。水分量の基準値は、55%(重量%)以上65%(重量%)以下の範囲内の何れかの値とすることができる。
図24に示す例では、一つの冷凍寿司パック400の中に、3個(3貫)の第1の寿司410と、2個(2貫)の第2の寿司420とが含まれている。このように、冷凍寿司パック400においては、第1のグループに分類される第1の寿司410の個数を、第2のグループに分類される第2の寿司420の個数よりも多くすることが好ましい。これにより、第1のグループに分類される第1の寿司410の総重量(例えば、グラム数)を、第2のグループに分類される第2の寿司420の総重量よりも大きくすることができる。
この冷凍寿司パック400を、HF波またはVHF波の高周波電界による誘電加熱処理によって加熱(解凍)すると、水分割合の小さい第1の寿司410の方が温まりやすく、第2の寿司420と比較してより早く解凍される。そこで、水分割合の小さい第1の寿司410で構成される第1のグループの総重量を、水分割合の大きい第2の寿司420で構成される第2のグループの総重量よりも大きくすることで、水分量の異なる各寿司の温まり方の差を小さくことができる。したがって、解凍処理時の加熱ムラの発生を抑えることができる。また、水分割合の小さい第1の寿司410の個数をより多くすることで、冷凍寿司パック400内の温度が上がりやすくなり、その結果、冷凍寿司パック400をより短時間で解凍することができる。
冷凍寿司パック400の解凍処理を行う場合には、上述の第4の実施形態で説明した食品の製造方法の解凍工程に準じた解凍方法を採用することが好ましい。この解凍方法では、上述の第1および第2の実施形態で説明した高周波加熱装置100または200を用いることが好ましい。
また、冷凍寿司パック400を製造する場合には、上述の第4の実施形態で説明した食品の製造方法の調理工程および冷凍工程に準じた方法を採用することが好ましい。特に冷凍工程では、冷凍処理開始から120分以内に寿司パックの温度が−20℃に到達するように寿司パックを急速冷凍することが好ましい。
これにより、冷凍寿司パック400を、無添加で長期間保存することが可能となる。また、寿司パックを販売する販売店にとっては、在庫を多く確保することができ、機会ロス、フードロスを軽減することがでる。また、寿司パックごとに解凍することができるため、調理方法を簡便にすることができる。また、調理工程で万一寿司パックに外部寄生虫が付着したとしても、この外部寄生虫も一緒に冷凍することで、外部寄生虫の増殖を抑え、外部寄生虫由来の疾病の発生を抑制することができる。
続いて、本実施形態にかかる寿司パックの他の例について説明する。図25には、本実施形態の一例の冷凍寿司パック400aを示す。冷凍寿司パック400aは、主として、容器430と、複数個の寿司410および420とで構成されている。容器430は、トレイ431と上蓋432とを有している。個々の寿司410および420は、シャリ部412または422と、シャリ部の上に配置されるネタ部411または421とを有している。
冷凍寿司パック400と同様に、冷凍寿司パック400aに含まれる複数個の寿司は、水分割合の小さい第1の寿司410で構成される第1のグループと、水分割合の大きい第2の寿司420で構成される第2のグループとに分類される。そして、第1の寿司410で構成される第1のグループの総重量は、第2の寿司420で構成される第2のグループの総重量よりも大きくなっている。
これを実現するために、冷凍寿司パック400aでは、第1のグループに属する第1の寿司410の1個当たりのネタ部411の量は、第2のグループに属する第2の寿司420の1個当たりのネタ部421の量よりも大きくなっている。ここでのネタ部の量とは、例えば、ネタの質量(グラム数)を意味する。しかし、他の例では、ネタ部の量は、ネタの体積(cm)で決定してもよい。またあるいは、第1のグループに属する第1の寿司410の1個当たりのネタ部411の高さは、第2のグループに属する第2の寿司420の1個当たりのネタ部421の高さよりも大きくしてもよい。
上述したように、誘電加熱処理を行う場合、水分割合の大きい第2の寿司420と比較して、水分割合の小さい第1の寿司410はより温まりやすい。そこで、第1の寿司410と第2の寿司420との間で、ネタ部の量に差をつけることで、寿司それぞれにかかる解凍時間を均一化し、オペレーションの簡略化、焼けムラ防止による品質の向上を目指すことができる。これにより、水分割合が異なることで解凍時間に差の出る複数種類の寿司で一つの寿司パックを構成した場合の解凍時の加熱ムラをより小さくすることができる。
図25では、一つの冷凍寿司パック400aの中に、2個(2貫)の第1の寿司410と、2個(2貫)の第2の寿司とが含まれている例を示している。しかし、各寿司410および420の個数は、これに限定されない。第1の寿司410の個数と、第2の寿司420の個数とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。但し、第1のグループに属する第1の寿司410の総重量は、第2のグループに属する第2の寿司420の総重量よりも大きくなっている。
続いて、冷凍寿司パック400および400aにおける各寿司410および420の配置の仕方について、図面を参照しながら説明する。
図26には、ネタ部の水分割合が異なる第1の寿司410と第2の寿司420とが、トレイ431上に各2貫ずつ合計4貫整列して入った長方形の冷凍寿司パック400aを示す。図26に示す例では、水分割合の小さい第1の寿司410と、水分割合の大きい第2の寿司420とが交互に並んでいる。
このように、水分割合が異なる寿司同士が隣り合って並ぶことにより、解凍で温まった水分割合の小さなネタ部を有する第1の寿司410熱が、隣接する温度の上がりにくい水分割合の大きなネタ部を有する第2の寿司420に熱を与え、仕上がり温度を均一にすることができる。
図27には、各4貫ずつ合計8貫の第1の寿司410と第2の寿司420とが、略正方形のトレイ431上に3列に整列して入った冷凍寿司パック400aを示す。
図28には、各4貫ずつ合計8貫の第1の寿司410と第2の寿司420とが、トレイ431上に2列に整列して入った長方形の冷凍寿司パック400aを示す。図28に示す例では、水分割合の小さい第1の寿司410と水分割合の大きい第2の寿司420とが交互に並んでいる。1列目は、トレイ431の左側から、第2の寿司420、第1の寿司410の順で交互に並び、2列目は、トレイ431の左側から、第1の寿司410、第2の寿司420の順で交互に並んでいる。図28に示す例では、どの寿司も少なくとも2つの側面で、水分割合が異なる寿司と接している。
すなわち、冷凍寿司パック400aを構成している寿司には、単位体積当たりの水分量が少ない第1のネタと、単位体積当たりの水分量が多い第2のネタとが含まれる。そして、例えば、図28に示すように、冷凍寿司パック400aの水平面方向における前後および左右の方向をそれぞれ規定すると、第1のネタを有する第1の寿司410に、第2のネタを有する第2の寿司420を隣接させて配置するとともに、第1の寿司410に対して前、後、左、右の4つの隣接する位置のうち少なくとも2つの位置に前記第2の寿司を配置している。
このように、水分割合が異なる寿司同士が隣り合って並ぶことにより、解凍で温まった水分割合の小さなネタ部を有する第1の寿司410熱が、隣接する温度の上がりにくい水分割合の大きなネタ部を有する第2の寿司420に熱を与え、仕上がり温度を均一にすることができる。また、各ネタの水分量に着目して寿司の構成および配置を工夫することで、ネタの種類に依存することなく、寿司パックの構成を決定することができ、消費者の食欲求を満たすこととなる。
図29には、各4貫ずつ合計8貫の第1の寿司410と第2の寿司420とが、長方形のトレイ431上に2列に整列して入った冷凍寿司パック400aを示す。図29に示す例では、水分割合の大きいネタ部を有する第2の寿司420をトレイ431の端部側に配置し、水分割合の小さいネタ部を有する第1の寿司410をトレイ431の中央部に配置している。
このように、水分割合が小さく、より温まりやすい第1の寿司410をトレイ431の中央部に配置することで、第1の寿司410の熱を、隣接する第2の寿司420へ伝えることができる。これにより、解凍機の出力を効率よく解凍熱に変換することができる。
図30には、4貫の第1の寿司410と12貫の第2の寿司420の合計16貫の寿司が入った冷凍寿司パック400aを示す。図30に示す例では、水分割合の大きいネタ部を有する第2の寿司420を長方形状のトレイ431の4つの端部に配置し、水分割合の小さいネタ部を有する第1の寿司410をトレイ431の中央部に配置している。
図31には、4貫の第1の寿司410と8貫の第2の寿司420の合計12貫の寿司が入った冷凍寿司パック400aを示す。図31に示す例では、水分割合の大きいネタ部を有する第2の寿司420を円形状のトレイ431の外周側(すなわち、端部側)に配置し、水分割合の小さいネタ部を有する第1の寿司410をトレイ431の中央部に配置している。
(実施例)
以下の実施例では、ネタの水分量が50%である第1の寿司410と、ネタの水分量が80%である第2の寿司420とで構成される冷凍寿司パック400において、各グループの寿司の個数割合を種々に変更して、誘電加熱処理を行い、加熱終了時の仕上がり具合を評価した。冷凍寿司パック400に含まれる寿司の総数は、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、および20個とした。
結果を、以下の表1から表3に示す。各表に示す評価結果の判断基準は、以下の通りである。
〇:最適で、品質が良く、解凍時間も早くできる。
△:解凍は可能だが、熱効率が悪く、少々時間もかかる。その他の工夫(配置など)が必要になる。
×:なんとか解凍可能だが、結果が不安定。
なお、以下の表では、全て同じグループに属する寿司のみで構成された冷凍寿司パックについての実験結果も示す。これらの結果も、全て良好(〇)であった。
Figure 2019239992
Figure 2019239992
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以上の結果より、第1のグループに分類される第1の寿司410の個数は、冷凍寿司パック400に含まれる寿司の全ての個数の25%以上75%以下の範囲の個数となっていると、解凍終了時の仕上がり具合が良好であることがわかった。
(冷凍寿司パックの解凍方法)
続いて、本実施形態にかかる冷凍寿司パック400の解凍方法について説明する。なお、この解凍方法は、冷凍寿司パック400以外の冷凍寿司パック400a、400b、400cなどにも適用できる。
冷凍寿司パック400の解凍は、上述の第4の実施形態で説明した食品の製造方法の解凍工程に準じた方法で行うことができる。冷凍寿司パック400を解凍するときには、冷凍寿司パック400を、HF波またはVHF波の高周波電界による誘電加熱処理によって解凍する。この解凍方法は、例えば、上述の第1または第2の実施形態で説明した高周波加熱装置100または200などを解凍機として使用して実施することができる。具体的には、冷凍寿司パック400(被解凍物)を上部電極1aと下部電極1bとの間に挟み、電極間にHF波またはVHF波の高周波電界をかけることで冷凍寿司パック400を誘電加熱する。
冷凍寿司パック400の解凍処理を行う場合には、できるだけ短時間で解凍が完了する急速解凍方法を選択することが好ましい。
急速解凍方法としては、マイクロ波による電子レンジ加熱が一般的だが、この方法だと過加熱や加熱ムラの恐れがあり、冷凍された食品を高品位に解凍することができない。一方、上述の高周波加熱装置によるVHF波あるいはHF波の電界での解凍では、過加熱、加熱ムラ、およびドリップなどが抑えられ、より高品位の解凍を行うことができる。
ここで、冷凍寿司パック400の解凍処理に使用される誘電加熱装置の一例を説明する。上述したように、解凍処理は、本発明にかかる誘電加熱装置の一例である高周波加熱装置100または200などを使用して実施することができる。
高周波加熱装置100および200は、対向して配置されている少なくとも2つの電極(すなわち、上部電極1aおよび下部電極1b)、これらの電極にHF波またはVHF波による高周波電界を供給する高周波電源2、および整合回路3などを備えている。
この構成により、冷凍寿司パック400に効率良く高周波電界を印加することができ、温度ムラの少ない高品質な寿司を、短時間で得ることができる。
また、解凍処理に使用される誘電加熱装置は、電極の位置を変更する位置変更機構をさらに備えていてもよい。位置変更機構は、例えば、高周波加熱装置100に備えられている可動部8などである。
可動部8を備えていることで、誘電加熱時に、冷凍寿司パック400の大きさに合せて上部電極1aの位置を変えることができる。加工食品と上部電極1aとの距離を適切に設定することで、冷凍された加工食品に効率良くエネルギーを与えることができ、解凍時間を短縮化することが可能となる。
なお、冷凍寿司パック400に含まれる複数個の寿司のネタの総水分量は、寿司パックを所望とする状態に解凍するために要する解凍時間と解凍機の出力電力(出力ワット数)との積に比例している。そこで、解凍処理時の解凍時間および解凍機の出力電力は、冷凍寿司パック400に含まれる寿司のネタの総水分量に基づいて決定することが好ましい。
図32には、寿司パックを構成する各寿司のネタに含まれる総水分量(g)と、その寿司パックを解凍処理するときに要する解凍時間(分)と、解凍電力(W)と、解凍時間と解凍電力の積(時間×W)とを示す。この図に示されるように、解凍時間と解凍出力の積は、寿司パック内に含まれるネタの総水分量に概ね比例している。
そこで、解凍に利用される解凍機(例えば、高周波加熱装置100または200)の仕様(例えば、設定されている解凍時間(分)および解凍電力(W))にしたがって、図32に示すグラフを参照して、冷凍寿司パック400に含まれる複数個の寿司の構成(例えば、各寿司のネタに含まれる総水分量(g))を決めることが好ましい。
一例として、解凍機の設定ボタンに「100W、5分」のような値がプリセットされている場合には、図32のグラフを参照して、寿司パック400を構成する各寿司のネタに含まれる総水分量(g)が約50gとなるように、ネタの水分量を調整するのがよい。解凍機の設定ボタンを利用して簡易な操作を行うことで、解凍終了後の寿司の仕上がりを良好な状態とすることができる。
また別の方法として、冷凍寿司パック400中のネタの総水分量と解凍出力から、解凍時間の目安を決定することもできる。この場合には、ネタに適した解凍時間を設定することで、ネタの過加熱、解凍不足を減らすことが可能となる。
(他の変形例)
以下には、冷凍寿司パック400を構成する寿司の他の例について説明する。
冷凍寿司パック400を構成する寿司410および420は、ネタ部411および421、並びにシャリ部412および422以外に、食材として海苔が含まれていてもよい。また、上述した第1の寿司410および第2の寿司420は、シャリ部の上にネタ部が配置されている構成であったが、シャリ部とネタ部の配置位置はこれに限定はされない。
例えば、シャリ部とネタ部と海苔とで構成される寿司の場合には、巻きずしなどのように、シャリ部の内部にネタ部が位置し、シャリ部の外側に海苔が配置されていてもよい。またあるいは、シャリ部の内部に、ネタ部と海苔が配置されている構成であってもよい。
また、消費者のニーズに合わせて、シャリ部とネタ部との配合割合を適宜変更しすることも可能である。また、本実施形態にかかる冷凍寿司パックは、汁物と組み合わせて一つの冷凍食品としてもよい。この場合、例えば、冷凍寿司パックを上方に配置し、下方に汁物を配置する。例えば、高周波加熱装置100または200のように、解凍時に使用される解凍機の電極は、上部電極と下部電極とで構成されている。
図33から図35には、複数の容器を上下に重ねて構成される冷凍寿司パックの例を示す。
図33に示す冷凍寿司パック400dは、2つの容器430aおよび430bを上下に重ねて構成されている。各容器430aおよび430bの中には、複数個の寿司410および420が配置されている。冷凍寿司パック400と同様に、冷凍寿司パック400dに含まれる複数個の寿司は、水分割合の小さい第1の寿司410で構成される第1のグループと、水分割合の大きい第2の寿司420で構成される第2のグループとに分類される。
図33に示す例では、上方の容器430a内には、トレイの左側から、第2の寿司420、第1の寿司410の順で各寿司が交互に並んでいる。下方の容器430b内には、トレイの左側から、第1の寿司410、第2の寿司420の順で各寿司が交互に並んでいる。
このように、水分割合が異なる寿司同士が縦方向に並べられていることにより、熱の加わりが上下で同等になり、仕上がり温度を均一にしやすくなる。これにより、ネタの種類に依存することなく、寿司パックの構成を決定することができ、消費者の嗜好を満たしやすくなる。
図34に示す冷凍寿司パック400eは、2つの容器430aおよび430bを上下に重ねて構成されている。容器430aおよび430bの中には、複数個の寿司410および420が配置されている。冷凍寿司パック400と同様に、冷凍寿司パック400eに含まれる複数個の寿司は、水分割合の小さい第1の寿司410で構成される第1のグループと、水分割合の大きい第2の寿司420で構成される第2のグループとに分類される。
より具体的には、上方の容器430a内には、水分割合の小さい第1の寿司410が並んで配置されている。下方の容器430b内には、水分割合の大きい第2の寿司420が並んで配置されている。
このように、水分割合が異なる各寿司をそれぞれ配置している2個の容器430aおよび430bが縦方向に重ねて配置されていることにより、熱の加わりが上下で同等になり、仕上がり温度を均一にしやすくなる。これにより、ネタの種類に依存することなく、寿司パックの構成を決定することができ、消費者の嗜好を満たしやすくなる。
図35に示す冷凍寿司パック400fは、3つの容器430a、430b、および430cを上下に重ねて構成されている。各容器430a、430b、および430cの中には、複数個の寿司410および420が配置されている。冷凍寿司パック400と同様に、冷凍寿司パック400fに含まれる複数個の寿司は、水分割合の小さい第1の寿司410で構成される第1のグループと、水分割合の大きい第2の寿司420で構成される第2のグループとに分類される。
より具体的には、最上段の容器430aおよび最下段の容器430c内には、水分割合の大きい第2の寿司420が並んで配置されている。中段の容器430b内には、水分割合の小さい第1の寿司410が並んで配置されている。
このように、水分割合が異なる各寿司をそれぞれ配置している3個の容器430a、430b、および430cが、上述の順で縦方向に重ねて配置されていることにより、熱の加わりが上下で同等になり、仕上がり温度を均一にしやすくなる。これにより、ネタの種類に依存することなく、寿司パックの構成を決定することができ、消費者の嗜好を満たしやすくなる。
(第5の実施形態のまとめ)
本実施形態にかかる冷凍寿司パック400は、水分割合の異なる2種類以上の寿司(すなわち、寿司410および420)で構成されている。複数個の寿司410および420は、単位体積当たりの水分量(重量)が、55%(重量%)以上65%以下の間にある基準値を境界として、ネタ部がこの基準値未満の水分量を有する第1のグループと、ネタ部がこの基準値以上の水分量を有する第2のグループとに分類される。そして、第1のグループに分類される第1の寿司410の総重量(例えば、グラム数)は、第2のグループに分類される第2の寿司420の総重量よりも大きくなっている。
このように、水分割合が少なく加熱されやすい第1の寿司410のネタの量を、水分割合が多い加熱されやすい第2の寿司420のネタの量よりも多くすることにより、寿司全体が温まるまでの時間を延ばし、各ネタの温度上昇を均一にすることができる。
また、本実施形態にかかる冷凍寿司パック400では、個々の寿司間での熱の伝搬による影響を考慮して、各寿司の配置を工夫している。これにより、例えば、第1の寿司410で発生した熱を、隣接する第2の寿司420へ伝えることができるため、解凍機の出力を効率よく解凍熱に変換することができる。そのため、例えば、特許文献(特開平10−56995号公報)の方法のように、寿司容器の上部に水が入った容器を使用することなく、寿司のネタの量を調節するのみで、最適な温度の寿司を提供することができる。
すなわち、本実施形態にかかる冷凍寿司パック400によれば、容器の変更、オペレーションの追加無しに、誘電加熱解凍によって解凍処理を行ったときに良好な食感および品質が維持された寿司を得ることができる。
また、本実施形態にかかる冷凍寿司パック400によれば、解凍機側の複雑な機構や制御を要することなく、解凍時の温度ムラの低減を図ることができる。また、冷凍寿司パック400の構成によって、解凍時の温度をある程度コントロールすることができるため、解凍時間の統一化が可能となり、解凍機のオペレーションの簡略化、制御シーケンスの簡略化が可能となる。
各ネタの水分量に着目して寿司の構成および配置を工夫することで、ネタの種類に依存することなく、寿司パックの構成を決定することができる。そのため、多種多様なネタを用いた寿司パックの構成が可能となり、消費者の食欲求を満たすことができる。また、シャリ、ネタの温度を調節することができるため、食感をもコントロールすることができ、消費者の嗜好に合わせて食感の選択肢を増やすことができる。
〔第6の実施形態〕
続いて、本発明の第6の実施形態について説明する。第6の実施形態では、本発明の一態様にかかる冷凍寿司セットについて説明する。ここで、冷凍寿司セットの一例として、複数個の寿司で構成される冷凍寿司パック(寿司の盛り合わせ)を例に挙げて説明する。この冷凍寿司パックは、HF波またはVHF波の高周波電界による誘電加熱処理によって解凍される。
本実施形態では、冷凍寿司パックを構成する各寿司の背の高さに着目し、各寿司の高さに基づいて容器内での寿司の配置を適切に調節する。また、各寿司間の背の高さの比率に基づいて、各寿司間の水分量の比率、質量密度の比率を調整する。これにより、本実施形態にかかる冷凍寿司パックは、誘電加熱による解凍処理によって良好な食感および品質を有する寿司パックとなる。
(被加熱物の背の高さと温度ムラについて)
本実施形態にかかる冷凍寿司パックの構成を説明するにあたって、先ずその前提となる被加熱物(すなわち、寿司)の高さの違いに起因して発生する温度ムラについて説明する。
図36に示すように、距離Lで平行に配置される平板状の電極(1aおよび1b)間に高さd1、d2(d1>d2)の誘電率がほぼ同じ被加熱物Aを配置し、平板状の電極間に電圧Vを印加した場合、双方の被加熱物Aに加わる電圧はV1、V2となる。このとき、双方の被加熱物A内の電解強度は電圧/高さであるから、それぞれ(V1/d1)、(V2/d2)であり、(V1/d1)>(V2/d2)の関係が成り立つ。誘電加熱では、電界強度の大きい方が加熱されやすいため、高さd1の被加熱物Aの方が加熱されやすい傾向になる。すなわち、高さd1、d2の被加熱物間に温度ムラが生じやすくなる。
被加熱物Aが寿司の場合についても同様に、平行な平板状の上部電極1aおよび下部電極1b間で誘電加熱をする際に寿司の高さが高い方が早く加熱される。すなわち、高さの異なる寿司を同時に誘電加熱で解凍すると、背の高い寿司の方が早く昇温し、各寿司間の温度ムラとなる。
(冷凍寿司パック500の構成)
図37には、本実施形態の一例の冷凍寿司パック500を示す。冷凍寿司パック500は、主として、容器530と、複数個の寿司510および520とで構成されている。容器530は、トレイ531と上蓋532とを有している。個々の寿司510および520は、シャリ部512または522と、シャリ部の上に配置されるネタ部511または521とを有している。
シャリ部512または522は、酢飯で構成される。しかし、他の例では、シャリ部は白米、雑穀米等の米飯であってもよい。ネタ部511または521は、例えば、魚介類で構成される。しかし、ネタ部は、魚介類に限定されることはなく、野菜類、きのこ類、藻類、肉類等の食材であっても構わない。また、魚介類の天ぷら、たまご焼き、しめサバ、カルビ、ハンバーグ等の加工食材であっても構わない。
複数個の寿司510および520は、容器530のトレイ531上に並べて配置されている。複数個の寿司510および520は、所定の基準値を境界として、背の高さがこの所定の基準値よりも高い第1のグループと、背の高さがこの所定の基準値以下の第2のグループとに分類される。このように、本実施形態にかかる冷凍寿司パック500を構成する複数個の寿司510および520は、高さの異なる少なくとも2種類のもので構成されている。
なお、各寿司の背の高さは、容器530のトレイ531の表面から寿司の上部表面までの垂直方向の距離によって算出される。また、各寿司の高さは、シャリ部の高さとネタ部の高さとを合計した高さである。よって、シャリ部が同じ高さの場合であっても、ネタ部の高さの違いによって、寿司には高低差ができる。また、同じネタを有する寿司であっても、各ネタの大きさの違いによって、寿司間に高低差ができる場合もある。
本実施形態では、第1のグループに分類される寿司(すなわち、相対的に背の高い寿司)を、第1の寿司510とする。また、第2のグループに分類される寿司(すなわち、相対的に背の低い寿司)を、第2の寿司520とする。
なお、第1のグループおよび第2のグループへの寿司の分類は、所定の基準値を境界として行われる。所定の基準値は、任意の選定基準に基づいて決定することができる。例えば、冷凍寿司パック500を構成する全ての寿司の高さの平均値を所定の基準値とすることができる。またあるいは、解凍処理時に用いられる解凍機の2つの平板電極(例えば、上部電極1aおよび下部電極1b)間の距離に対する割合(例えば、電極間距離Dの50%から70%の任意の値、より具体的には、電極間距離Dの60%)を、所定の基準値とすることもできる。またあるいは、所定の基準値は、最も背の高い寿司の高さdmaxの約80%(75%から85%の間の何れかの値)の高さとすることもできる。
本実施形態にかかる冷凍寿司パック500では、高さの違う各寿司510および520を、その高低差に応じて、各寿司の配置を決める。背の高さの高い群(すなわち、第1のグループ)同士、および、背の高さの低い群(すなわち、第2のグループ)同士を固めて配置すると、高さの高い群の寿司間、あるいは高さの低い群の寿司間での熱伝導は起こらない。そのため、冷凍寿司パック内の寿司全体としては、温度ムラが生じる。
本実施形態にかかる冷凍寿司パック500では、図38に示すように、上面から見て、高さの高い第1の寿司510と低い第2の寿司520とを交互に配置している。各寿司の長辺の面で高さの違う寿司と隣接するので、各寿司間の温度均等化に寄与する熱伝導が促進され、解凍時の温度ムラが軽減される。
なお、第1の寿司510と第2の寿司520とを交互に配置する例には、図28に示す冷凍寿司パック500aのような配置も含まれる。図28に示す例では、第1の寿司510と第2の寿司520とを千鳥状に配置する。このような配置では、各寿司の長辺の面に加え、短辺の面でも高さの違う寿司と隣接するので、温度差のある寿司同士の接触面積をより大きくすることができる。そのため、各寿司間の温度均等化に寄与する熱伝導がさらに促進され、温度ムラが軽減される。また、寿司全体の配置として、全体的な見栄えが良くなる。
また、第1の寿司510と第2の寿司520とを交互に配置する例には、図39に示す冷凍寿司パック500bのような配置も含まれる。図39に示す例では、冷凍寿司パック500bを上面から見て、トレイ531の形状に対して各寿司を斜めに配置し、かつ、第1の寿司510と第2の寿司520とを交互に配置する。各寿司を斜めに配置すると、高級な盛り合わせ寿司のイメージを彷彿させる効果がある。かつ、各寿司の長辺の面で高さの違う寿司と隣接するので、各寿司間の温度均等化に寄与する熱伝導が促進され、温度ムラが軽減される。
また、第1の寿司510と第2の寿司520とを交互に配置する例には、図40に示す冷凍寿司パック500cのような配置も含まれる。図40に示す例では、2つの容器530aおよび530bを上下に2段に重ねて配置している。各容器530aおよび530bのトレイ531aおよび531b上に配置される各寿司の配列は、図28に示すような千鳥状の配置である。2つのトレイ531aおよび531bのうち何れか一方を180度回転させると図40の右側の図のようになる。これらを左側の図のように2段重ねにすると、背の高い第1の寿司510と背の低い第2の寿司520とが上下に重なり、重なる寿司2貫分の合計高さはいずれの場所においても同じなる。そのため、解凍時の各寿司間の温度ムラが軽減される。
(被加熱物内の温度ムラについて)
続いて、誘電加熱時に被加熱物の内部において発生し得る温度ムラについて、図41を参照しながら説明する。距離Lで平行に配置される平板電極間に高さdの被加熱物Aを配置し、平板電極間に電圧Vを印加した場合、被加熱物Aに加わる電圧はV”、被加熱物Aが無く空気のみの領域における高さdの位置の電圧はV’であり、V”<V’となる。このとき、被加熱物上面の角部付近では、電極間電圧による垂直方向の電界に加え、水平方向の電位差(V’−V”)による水平方向の電界が生じるため、電界が集中することになり、被加熱物の他の部分より加熱されやすい結果となる。すなわち、被加熱物内に置いて温度ムラが生じやすくなる。
冷凍寿司パック内の複数個の寿司を一つの塊と見た場合、塊の両端部分が加熱されやすいため、複数個の寿司を並べている場合には、両端に配置された寿司が加熱されやすくなる。また、図37に示すような配置の場合、右端には、高さの高い第1の寿司510が配置されており、加熱されやすい場所に、加熱されやすい寿司を配置していることになる。よって、右端の寿司は、他の寿司と比べて温度上昇が促進され、寿司全体としての温度ムラを助長することとなる。
(冷凍寿司パック550の構成)
このような温度ムラの発生を軽減させることを意図して、高低差の異なる各寿司の配置を行う例について、以下に説明する。上述したように、高さの高い寿司を寿司全体の端部に配置すると、極めて加熱されやすくなり、寿司パック内の寿司全体としての温度ムラも発生しやすくなる。
そこで、第1のグループに分類される第1の寿司510は、トレイ531上の中央部に配置することが好ましい。また、第2のグループに分類される第2の寿司520は、トレイ531上の外周部(端部)に配置することが好ましい。
このような配置の例としては、例えば、図29に示す冷凍寿司パック550のような配置が挙げられる。この配置例では、直方体形状を有する第2の寿司520の長辺側の側面が端部に位置するように、各寿司が配置されている。これにより、トレイ531の端部側に位置する第2の寿司520の側面の面積が、同じくトレイ531の端部側に位置する第1の寿司510の側面の面積よりも大きくなる。すなわち、寿司セット全体としてみたときに、加熱されにくい第2の寿司520によって、より多くの端部が構成されている。
冷凍寿司パック550と比較して寿司の個数が多く、高さの低い第2の寿司520の割合が多い場合には、図30に示す冷凍寿司パック550aのような配置も可能である。このように、高さの低い第2の寿司520を加熱されやすい外周部に配置することで、寿司全体としての温度ムラを軽減できる。
なお、第2の寿司520の割合が少ない場合には、図42に示す冷凍寿司パック550aのように、第2の寿司520を、トレイ531上の角部(具体的には、四隅)に配置するのがよい。冷凍寿司パックを解凍する場合、容器の外周部が加熱されやすいが、その中でも特にトレイの四隅の電界強度が大きく、加熱されやすい傾向となる。したがって、数少ない第2の寿司520を四隅に配置することで、寿司全体としての温度ムラが軽減できる。
また、第2の寿司520をトレイ531上の角部に配置する例には、図43および図44に示す冷凍寿司パック550bおよび550cのような配置も含まれる。図43に示す例では、上面から見て、トレイ531の形状に対して各寿司を斜めに配置し、かつ、高さの低い第2の寿司520を、図中、右上及び左下に配置する。図44に示す冷凍寿司パック550cは、第1の寿司510の個数と第2の寿司520の個数とが同じ場合に、トレイ531の形状に対して各寿司を斜めに配置する例である。各寿司を斜めに配置すると、高級な盛り合わせ寿司のイメージを彷彿させる効果がある。また、高さが低く加熱されにくい寿司を加熱されやすい領域に配置しているので、寿司全体としての温度ムラが軽減される。
なお、各寿司を密着させて配置した場合、寿司の配置を工夫しても、外周部に該当しない部分(例えば、図43において、背の高い第1の寿司510の6貫の塊の中央部に位置する寿司)は加熱されにくく、寿司全体としての温度ムラの要因となる。そこで、各寿司間に間隔を持たせて配置することで、電界集中が各寿司一つ一つの外周に生じるようにすることができる。これにより、寿司全体としての温度ムラが軽減される。
(寿司の高さの調整方法について)
続いて、冷凍寿司パック500および550を構成する複数個の寿司の高さの調整方法について説明する。本実施形態にかかる冷凍寿司パック500および550では、寿司パックを構成する複数個の寿司うち、高さの最も低い寿司の高さdminが、高さの最も高い寿司の高さdmaxの60%以上となっていることが好ましい(図48参照)。
この寿司の高さの規定に関して、本願発明者らによって行われた検証実験について説明する。
発明者らの検証実験では、高さ5cmの容器530内に、高さの最も高い寿司として軍艦巻き(dmax=4cm)を含み、高さの最も低い寿司としてイカの握り(dmin=2.5cm)を含む、合計9貫の寿司510および520で構成される冷凍寿司パック500を、電極間距離D=5cmの解凍機を用いて誘電加熱処理を行った。その結果、すべての寿司が加熱ムラ無く解凍できることが確認できた。
このとき、軍艦巻きの高さ(dmax=4cm)に対して、イカの握りの高さ(dmin=2.5cm)は、約60%(62.5%)となる。
ここで、検証実験時の寿司の単位領域当たりのエネルギー比率を求める。図45に示すように、検証実験時の電極間距離をD、被加熱物A(すなわち、寿司)の高さをdとする。また、この構成の電気等価回路として、図46に示すように空間領域の静電容量をC1とし、寿司部分の静電容量をC2とする。
まず、電極間電圧を1とした場合に、高さdの被加熱物Aに加わる電圧をV(d)とすると、V(d)は以下の式で表される。
V(d)=C1/(C1+C2)
={ε・S/(D−d)}/〔ε・S・{1/(D−d)+ε/d}〕
=d/{d+ε・(D−d)}
S:寿司を上面から見た面積
ε:比誘電率(氷:4)
これより、被加熱物A内部の電界強度E(d)は、以下の式(A)で表される。
E(d)=V(d)/d
=1/{d+ε・(D−d)}・・・(A)
電界強度E(d)内部の単位領域当たりのエネルギーは、一般に次式で表される。
P(d)=K・ε・tanδ・f・E(d)2
K:定数0.556×10−10
tanδ:誘電正接
f:周波数
寿司内部のエネルギーを求めるにあたっては、ε、tanδ、fは一定とすると、
P(d)=K’・E(d)・・・(B)
と表すことができる。
次に、式(A)、式(B)を用いて、電極間距離Dにおける、高さd1の寿司への単位領域当たりのエネルギーに対する、高さd2の寿司の単位領域当たりのエネルギーの比率を次式のように定義する。
%P(D,d1,d2)=P(d2)/P(d1)・100
=〔{d1+ε・(D−d1)}
/{d2+ε・(D−d2)}〕・100
・・・・(C)
式(C)に電極間距離D=5cm、背の最も高い寿司の高さd1=dmax=4cm、背の最も低い寿司の高さd2=dmin=2.4cm(4cmの60%)を代入すると、エネルギーの比率は、以下に示すように、約40%となる。
%P(5,4,2.4)=39.1
つまり、寿司内部の単位領域当たりのエネルギー比率が40%以上であれば、加熱ムラを回避した冷凍寿司パックの解凍が実現できる。
図47は、式(C)にD=5cm、d1=dmax=0.5〜4cm、d2=dmin=0.6・dmax(dmaxの60%)を代入し、グラフで表したものである。
例えば、図48に示すような高さの異なる寿司で構成される冷凍寿司パック500(容器の図示は省略)において、電極間距離D=5cmに対し、最大寿司高さdmaxが4cm以下(例えば、3cm)であり、最小寿司高さdminが最大寿司高さdmaxの60%以上(例えば、、3cmの60%で1.8cm)であれば、寿司内部の単位領域当たりのエネルギー率は40%以上となる。これにより、解凍時の加熱ムラを回避した冷凍寿司パックが実現できる。
なお、容器530のトレイ531の形状や上蓋532とネタ部との空間距離を考慮すると、実用上、寿司の高さは電極間距離の80%未満となり得る。すなわち、電極間距離Dを5cmとすると、冷凍寿司パック500の容器530のとりうる最大高さは5cmとなる。このような容器530内に配置される各寿司のうち、最も高さの高い寿司の高さは、通常、4cm以下である。
仮に、最大寿司高さが4cmを超える条件で、最小寿司高さを最大寿司高さの60%として式(C)に当てはめると、寿司内部の単位領域当たりのエネルギー比率は40%以下になる。しかしながら、容器のトレイの形状や上蓋とネタ部との空間距離を考慮すると、実用上、寿司の高さは4cm以下、つまり、電極間距離Dの80%未満になる。この場合には、エネルギー比率が40%を下回ることは無いため、実用上は、各寿司間の高低差は60%を下限値と考えればよい。
以上の通り、寿司パックを構成する複数個の寿司うち、高さの最も低い寿司の高さdminが、高さの最も高い寿司の高さdmaxの60%以上となっていることで、寿司の高低差に起因する加熱ムラを回避することができる。そのため、本実施形態にかかる冷凍寿司パック500および550などにおいて、寿司パックを構成する高さの異なる各寿司の配置の自由度が大きくなる。また、dmin≧0.6・dmaxの条件を満たしつつ、本実施形態において説明した各寿司の種々の配置例を適用することで、解凍時の加熱ムラをより一層軽減することができる。
(寿司の高さと水分割合との関係について)
続いて、冷凍寿司パック500および550を構成する各寿司の高さと、各寿司の水分割合との関係について説明する。
上述したように、冷凍寿司パックを構成する各寿司の解凍時の加熱しやすさは、寿司の高さ以外に寿司に含まれる水分量にも影響される。すなわち、各寿司の高低差が大きい場合であっても、各寿司の水分割合の差が小さければ、理論上、解凍時の加熱ムラは生じにくくなる。
そこで、例えば、高さの高い寿司のシャリの水分割合を多めにし、高さの低い寿司のシャリの水分割合を少なめにする。すなわち、第1のグループに分類される第1の寿司510のネタ部511の単位体積当たりの水分量を、第2のグループに分類される第2の寿司520のネタ部521の単位体積当たりの水分量よりも多くすることが好ましい。またあるいは、ネタの種類による水分割合も考慮して、シャリの水分割合を変えてもよい。このようにすることで、冷凍寿司パックの解凍時の加熱ムラを小さくすることができる。
ここで、冷凍寿司パック500を構成する複数個の寿司のそれぞれの高さをdとし、複数個の寿司のそれぞれの水分割合(単位体積当たりの水分量)をBとする。このとき、各寿司において、高さdに対する水分割合Bの比率をC(すなわち、B/d)とすると、比率Cの最小値Cminは、前記比率Cの最大値Cmaxの60%以上となっていることが好ましい。
ここで、高さの高い寿司の高さをdH、水分割合をBHとし、高さの低い寿司の高さをdLとし、水分割合をBLとすると、加熱ムラを回避した冷凍寿司パックの解凍が実現するためには、以下の式(D)を満たすことが好ましい。
[{P(dL)/BL}/{P(dH)/BH}]・100
=%P(D,dH,dL)・(BH/BL)≧40 ・・・(D)
しかしながら、良好に解凍できる冷凍寿司パックを作る際、実際に式(D)を参照するのは煩雑である。そこで、図49の実線で示す%P(D,dH,dL)の代わりに、破線で示す%P’のように、寿司高さと寿司内部のエネルギー比率を、原点通過する比例直線で近似する。これにより、以下のような式(E)に簡略化される。
%P’・(BH/BL)=(dL/dH)・(BH/BL)・100 ・・・(E)
各寿司の水分割合BLとBHが同等条件では、
BH/BL=1
かつ
(dL/dH)・100≧60
である。よって、以下の式(F)が導き出される。
%P’・(BH/BL)=(dL/dH)・(BH/BL)・100
=(dL/BL)/(dH/BH)・100≧60 ・・・(F)
ここで、
(dL/BL)=Cmin、(dH/BH)=Cmax
と置き換えると、以下の式(G)が得られる。
Cmin/Cmax≧60 ・・・(G)
この式(G)を満たすように、寿司高さ、および水分割合を調整することで、寿司の高低差に起因する加熱ムラ回避の観点において、配置の自由度が大きくなる。
(寿司の高さと質量密度との関係について)
続いて、冷凍寿司パック500および550を構成する各寿司の高さと、各寿司の質量密度との関係について説明する。
上述したように、冷凍寿司パックを構成する各寿司の解凍時の加熱しやすさは、寿司の高さ以外に寿司に含まれる水分量にも影響される。しかし、各寿司の実際の水分割合を測定することは困難な場合がある。そこで、水分割合と相関のある質量密度で各寿司の解凍時の加熱しやすさの指標とすることも可能である。
ここで、冷凍寿司パック500を構成する複数個の寿司のそれぞれの高さをdとし、複数個の寿司のそれぞれの質量密度(単位体積当たりの質量(g/cm))をGとする。このとき、各寿司において、高さdに対する質量密度Gの比率をH(すなわち、G/d)とすると、比率Hの最小値Hminは、比率Hの最大値Hmaxの60%以上となっていることが好ましい。
具体的には、高さの高い寿司の高さをdH、質量密度をGHとし、高さの低い寿司の高さをdL、質量密度をGLとすると、加熱ムラを回避した冷凍寿司パックの解凍が実現するためには、以下の式(H)を満たすことが好ましい。
%P’・(GH/GL)=(dL/dH)・(GH/GL)・100
=(dL/GL)/(dH/GH)・100≧60 ・・・(H)
ここで、
(dL/GL)=Hmin、(dH/GH)=Hmax
と置き換えると、以下の式(I)が得られる。
Hmin/Hmax≧60 ・・・(I)
この式(I)を満たすように、寿司高さ、および質量密度(g/cm)を調整することで、寿司の高低差に起因する加熱ムラ回避の観点において、配置の自由度が大きくなる。
(冷凍寿司パックの解凍方法)
続いて、本実施形態にかかる冷凍寿司パック500の解凍方法について説明する。なお、この解凍方法は、冷凍寿司パック500以外の冷凍寿司パック500a、550などにも適用できる。
冷凍寿司パック500の解凍は、第5の実施形態にかかる冷凍寿司パック400と同様に、上述の第4の実施形態で説明した食品の製造方法の解凍工程に準じた方法で行うことができる。冷凍寿司パック500を解凍するときには、冷凍寿司パック500を、HF波またはVHF波の高周波電界による誘電加熱処理によって解凍する。この解凍方法は、例えば、上述の第1または第2の実施形態で説明した高周波加熱装置100または200などを解凍機として使用して実施することができる。具体的には、冷凍寿司パック500(被解凍物)を上部電極1aと下部電極1bとの間に挟み、電極間にHF波またはVHF波の高周波電界をかけることで冷凍寿司パック500を誘電加熱する。
冷凍寿司パック400の解凍処理を行う場合には、できるだけ短時間で解凍が完了する急速解凍方法を選択することが好ましい。急速解凍方法としては、マイクロ波による電子レンジ加熱が一般的だが、この方法だと過加熱や加熱ムラの恐れがあり、冷凍された食品を高品位に解凍することができない。一方、上述の高周波加熱装置によるVHF波あるいはHF波の電界での解凍では、過加熱、加熱ムラ、およびドリップなどが抑えられ、より高品位の解凍を行うことができる。
ここで、冷凍寿司パック500の解凍処理に使用される誘電加熱装置の一例を説明する。上述したように、解凍処理は、本発明にかかる誘電加熱装置の一例である高周波加熱装置100または200などを使用して実施することができる。
高周波加熱装置100および200は、対向して配置されている少なくとも2つの電極(すなわち、上部電極1aおよび下部電極1b)、これらの電極に、HF波またはVHF波による高周波電界を供給する高周波電源2、および整合回路3などを備えている。
この構成により、冷凍寿司パック500に効率良く高周波電界を印加することができ、温度ムラの少ない高品質な寿司を、短時間で得ることができる。
また、解凍処理に使用される誘電加熱装置は、電極の位置を変更する位置変更機構をさらに備えていてもよい。位置変更機構は、例えば、高周波加熱装置100に備えられている可動部8などである。
可動部8を備えていることで、誘電加熱時に、冷凍寿司パック500の大きさに合せて上部電極1aの位置を変えることができる。加工食品と上部電極1aとの距離を適切に設定することで、冷凍された加工食品に効率良くエネルギーを与えることができ、解凍時間を短縮化することが可能となる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した異なる実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。
1a :上部電極(電極板)
1b :下部電極(電極板)
2 :高周波電源
3 :整合回路
3a :可変コンデンサ(可変リアクタンス素子)
3b :可変コンデンサ(可変リアクタンス素子)
4 :読取部(判別部)
5 :メモリ(記憶部)
6 :制御回路(制御部)
7 :操作部(入力部)
8 :可動部(位置変更機構)
100 :高周波加熱装置(誘電加熱装置)
200 :高周波加熱装置(誘電加熱装置)
300 :冷凍寿司(冷凍食品)
301 :ネタ部(上層部)
302 :シャリ部(下層部)
400 :冷凍寿司パック(冷凍寿司セット)
410 :第1の寿司
411 :ネタ部
412 :シャリ部
420 :第2の寿司
421 :ネタ部
422 :シャリ部
430 :容器
431 :トレイ
500 :冷凍寿司パック(冷凍寿司セット)
510 :第1の寿司
511 :ネタ部
512 :シャリ部
520 :第2の寿司
521 :ネタ部
522 :シャリ部
530 :容器
531 :トレイ

Claims (8)

  1. HF波またはVHF波の高周波電界による誘電加熱処理によって解凍される冷凍食品であって、
    解凍時に上方に位置する上層部と、
    解凍時に下方に位置する下層部と
    で構成され、
    前記上層部の単位体積当たりの水分量は、前記下層部の単位体積当たりの水分量よりも多くなっている、冷凍食品。
  2. 前記下層部の単位体積当たりの水分量は、前記上層部の単位体積当たりの水分量の65%以上95%以下となっている、請求項1に記載の冷凍食品。
  3. 冷凍された寿司である、
    請求項1または2に記載の冷凍食品。
  4. 食品を調理する調理工程と、
    調理された前記食品を冷凍処理する冷凍工程であって、冷凍処理開始から120分以内に前記食品の温度を−20℃に到達させる冷凍工程と、
    冷凍処理された前記食品を、HF波またはVHF波の高周波電界による誘電加熱処理によって解凍する解凍工程であって、解凍後の前記食品の温度を+5℃以上+60℃以下の範囲内に制御する解凍工程と
    を含む、食品の製造方法。
  5. 前記食品は、単位体積当たりの水分量が異なっている上層部と下層部とで構成されており、
    前記上層部の単位体積当たりの水分量は、前記下層部の単位体積当たりの水分量よりも多い、請求項4に記載の食品の製造方法。
  6. 前記食品において、
    前記下層部の単位体積当たりの水分量は、前記上層部の単位体積当たりの水分量の65%以上95%以下となっている、請求項5に記載の食品の製造方法。
  7. 前記解凍工程では、誘電加熱装置を用いて誘電加熱処理が行われ、
    前記誘電加熱装置は、
    対向して配置されている少なくとも2つの電極と、
    前記電極に、HF波またはVHF波による高周波電界を供給する高周波電源と
    を備えている、請求項4から6の何れか1項に記載の食品の製造方法。
  8. 前記誘電加熱装置は、前記電極の位置を変更する位置変更機構をさらに備えている、請求項7に記載の食品の製造方法。
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