JPWO2019203343A1 - コネクティングロッド用鋼材、機械部品及びコネクティングロッド - Google Patents

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Abstract

本発明の一実施形態に係る鋼は、化学成分が、単位質量%で、C:0.15〜0.30%、Si:0.40〜1.30%、Mn:0.50〜1.50%、P:0.035〜0.200%、S:0.010〜0.100%、Cr:0〜1.00%、Nb:0.010〜0.20%、Ti:0〜0.070%、Mo:0〜0.15%、N:0.0010〜0.0060%、V:0〜0.010%、Ca:0〜0.005%、Zr:0〜0.005%、Mg:0〜0.005%、Cu:0〜0.05%、Ni:0〜0.05%、Pb:0〜0.50%、Bi:0〜0.0050%、及びAl:0.010%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなる。

Description

本発明は、鋼、機械部品およびコネクティングロッドに関する。
本願は、2018年4月20日に、日本に出願された特願2018−081538号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
自動車エンジン用部品および足廻り用部品では、熱間鍛造で成形を行い、次いで焼入れ焼戻しといった熱処理を行うことで(以降、熱処理が行われる部品を調質鋼部品と称する)、または、熱処理を行うことなく(以降、熱処理が行われない部品を非調質鋼部品と称する)、適用する部品に必要な機械特性を得る。最近では、製造工程における経済効率性の観点から、熱処理を省略して製造された部品、すなわち、非調質鋼部品が多く普及している。
自動車エンジン用部品の一例としてコネクティングロッド(以降、コンロッドと称する)が挙げられる。この部品は、エンジン内でピストンの往復運動をクランクシャフトによる回転運動に変換する際に、動力を伝達する部品である。コンロッドは、クランクシャフトのピン部と称される偏芯部位をコンロッドのキャップ部とロッド部とで挟み込んで締結し、ピン部とコンロッドの締結部とが回転摺動する機構によって動力を伝達する。このキャップ部とロッド部との締結を効率化するために、近年、破断分離型コンロッドが多く採用されている。
破断分離型コンロッドとは、熱間鍛造等でキャップ部とロッド部とが一体となった形状に鋼材を成形した後、キャップ部とロッド部との境界に相当する部分に切欠きを入れて、破断分離する工法を採用したものである。この工法では、キャップ部及びロッド部の合わせ面において破断分離した破断面同士を嵌合させるので、合わせ面の機械加工が不要な上に、位置合わせのために施す加工も必要に応じて省略することができる。そのため、部品の加工工程を大幅に削減することができ、部品製造時の経済効率性を大幅に向上することができる。このような工法で製造される破断分離型コンロッドには、破断面の破壊形態が脆性的であり、破断分離による破断面近傍の変形量が小さいこと、すなわち破断分離性が良好であることが求められる。
破断分離型コンロッドに供する鋼材として、欧米で普及しているのは、DIN規格のC70S6であり、0.7質量%のCを含む。この高炭素非調質鋼コンロッドは、破断分離時の寸法変化を抑えるために、金属組織を延性及び靱性の低いパーライト組織としたものである。C70S6は、破断時の破断面近傍の塑性変形量が小さいので破断分離性に優れる。一方、現行の中炭素非調質鋼コンロッドのフェライト・パーライト組織に比べて組織が粗大であるので、降伏比(=0.2%耐力(MPa)/引張強度(MPa))が低く、高い座屈強度が要求される高強度コンロッドには適用できないという問題がある。
鋼材の降伏比を高めるためには、炭素量を低減し、フェライト分率を増加させることが必要である。しかしながら、フェライト分率を増加させると鋼材の延性が向上して、破断分離時に塑性変形量が大きくなり、クランクシャフトのピン部に締結されるコンロッド摺動部の形状変形が増大し、コンロッド摺動部の真円度が低下するといった部品性能上の問題が発生する。
高強度の破断分離型コンロッドに好適な鋼材としていくつかの鋼が提案されている。例えば、特許文献1および特許文献2には、鋼材にSiまたはPのような脆化元素を多量に添加し、材料自体の延性および靱性を低下させることによって破断分離性を改善する技術が記載されている。特許文献3〜5には、第二相粒子の析出強化を利用してフェライトの延性および靱性を低下させることによって鋼材の破断分離性を改善する技術が記載されている。さらに、特許文献6〜8には、Mn硫化物の形態を制御することによって鋼材の破断分離性を改善する技術が記載されている。
近年は高出力ディーゼルエンジンあるいはターボエンジンの普及によるエンジン出力増大に伴い、コンロッドの高強度化のニーズが高まっている。高強度化手段の一つとして、例えば特許文献1〜7に記載の技術では、Vを多量に添加し、微細なV炭化物による鋼の析出強化が利用されている。合金炭化物を生成する元素の中でもVは、熱間鍛造前の加熱(1250℃前後)で鋼材への固溶量が多く、析出強化の効果が大きい。しかしながら、鋼材においてVの固溶量には限界があり、Vの含有量の増大だけでは、より一層の高強度化は難しい。
上述の高強度化手段は、破断分離した部位の変形量を小さくすると同時に、破断面の凹凸を小さくするため、破断面同士を嵌合させた時に位置ずれを生じさせる。例えば、特許文献9には、Mn硫化物の形態を制御することによって破断面の嵌合性を改善する技術が記載されている。しかしながら、より一層の高強度化において、強度と破断面の嵌合性との両立は現行の工法では実現できなかった。
以上のように、近年のコンロッドの高強度化の要求に対応可能な、高い引張強度と、高い降伏比と、優れた破断分離性と、優れた破断面の嵌合性との全てを有する破断分離型コンロッドを製造可能な鋼は、現状では得られていないのが実情である。
日本国特許第3637375号公報 日本国特許第3756307号公報 日本国特許第3355132号公報 日本国特許第3988661号公報 日本国特許第5340290号公報 日本国特許第4314851号公報 日本国特許第3671688号公報 日本国特許第4268194号公報 国際公開第2016/143812号
本発明は上記の実情に鑑み、高い引張強度と、高い降伏比と、優れた破断分離性と、優れた破断面の嵌合性との全てを有する機械部品およびコネクティングロッド、ならびにこのような機械部品およびコネクティングロッドを製造可能な鋼を提供することを課題とする。
上述の課題を解決するために、本発明者らは高強度の破断分離型コネクティングロッドに好適な鋼について鋭意検討した。その結果得られた本発明の要旨は、次の通りである。
[1]本発明の一態様に係る鋼は、化学成分が、単位質量%で、
C:0.15〜0.30%、
Si:0.40〜1.30%、
Mn:0.50〜1.50%、
P:0.035〜0.200%、
S:0.010〜0.100%、
Cr:0〜1.00%、
Nb:0.010〜0.20%、
Ti:0〜0.070%、
Mo:0〜0.15%、
N:0.0010〜0.0060%、
V:0〜0.010%、
Ca:0〜0.005%、
Zr:0〜0.005%、
Mg:0〜0.005%、
Cu:0〜0.05%、
Ni:0〜0.05%、
Pb:0〜0.50%、
Bi:0〜0.0050%、及び
Al:0.010%以下
を含有し、残部がFe及び不純物からなる。
[2]上記[1]に記載の鋼は、前記化学成分が、単位質量%で、
Ti:0.005〜0.014%、及び
Mo:0.005〜0.15%
からなる群から選択される1種または2種を含有してもよい。
[3]上記[1]または[2]に記載の鋼は、前記化学成分が、単位質量%で、
Ca:0.001〜0.005%、
Zr:0.001〜0.005%、及び
Mg:0.001〜0.005%
からなる群から選択される1種以上を含有してもよい。
[4]本発明の別の態様に係る機械部品は、化学成分が、単位質量%で、
C:0.15〜0.30%、
Si:0.40〜1.30%、
Mn:0.50〜1.50%、
P:0.035〜0.200%、
S:0.010〜0.100%、
Cr:0〜1.00%、
Nb:0.010〜0.20%、
Ti:0〜0.070%、
Mo:0〜0.15%、
N:0.0010〜0.0060%、
V:0〜0.010%、
Ca:0〜0.005%、
Zr:0〜0.005%、
Mg:0〜0.005%、
Cu:0〜0.05%、
Ni:0〜0.05%、
Pb:0〜0.50%、
Bi:0〜0.0050%、及び
Al:0.010%以下
を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
表面から1.0mm以上内部におけるミクロ組織がフェライト・パーライト組織であり、前記フェライト・パーライト組織の面積分率が95%以上である。
[5]上記[4]に記載の機械部品は、前記化学成分が、単位質量%で、
Ti:0.005〜0.014%、及び
Mo:0.005〜0.15%
からなる群から選択される1種または2種を含有してもよい。
[6]上記[4]または[5]に記載の機械部品は、前記化学成分が、単位質量%で、
Ca:0.001〜0.005%、
Zr:0.001〜0.005%、及び
Mg:0.001〜0.005%
からなる群から選択される1種以上を含有してもよい。
[7]上記[4]〜[6]のいずれか一項に記載の機械部品は、引張強度が900MPa以上であり、かつ降伏比が0.85以上であってもよい。
[8]本発明の別の態様に係るコネクティングロッドは、化学成分が、単位質量%で、
C:0.15〜0.30%、
Si:0.40〜1.30%、
Mn:0.50〜1.50%、
P:0.035〜0.200%、
S:0.010〜0.100%、
Cr:0〜1.00%、
Nb:0.010〜0.20%、
Ti:0〜0.070%、
Mo:0〜0.15%、
N:0.0010〜0.0060%、
V:0〜0.010%、
Ca:0〜0.005%、
Zr:0〜0.005%、
Mg:0〜0.005%、
Cu:0〜0.05%、
Ni:0〜0.05%、
Pb:0〜0.50%、
Bi:0〜0.0050%、及び
Al:0.010%以下
を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
ロッド部の表面から1.0mm以上内部におけるミクロ組織がフェライト・パーライト組織であり、前記フェライト・パーライト組織の面積分率が95%以上である。
[9]上記[8]に記載のコネクティングロッドは、前記化学成分が、単位質量%で、
Ti:0.005〜0.014%、及び
Mo:0.005〜0.15%
からなる群から選択される1種または2種を含有してもよい。
[10]上記[8]または[9]に記載のコネクティングロッドは、前記化学成分が、単位質量%で、
Ca:0.001〜0.005%、
Zr:0.001〜0.005%、及び
Mg:0.001〜0.005%
からなる群から選択される1種以上を含有してもよい。
[11]上記[8]〜[10]のいずれか一項に記載のコネクティングロッドは、前記ロッド部で、引張強度が900MPa以上であり、降伏比が0.85以上であってもよい。
本発明に係る上記態様によれば、高い引張強度、高い降伏比、優れた破断分離性及び優れた破断面の嵌合性の全てを有する鋼、機械部品およびコネクティングロッドを提供することができる。
本実施形態に係る機械部品の一例である破断分離型のコネクティングロッドを示す分解斜視図である。
本発明者らは、高い引張強度、高い降伏比、優れた破断分離性及び優れた破断面の嵌合性の全てを実現する鋼、機械部品およびコネクティングロッドについて鋭意検討した結果、以下の(a)〜(c)の知見を得た。
(a)本発明者らは、鋼中のNb含有量を調整することによって、フェライト・パーライト組織中の初析フェライトにNb炭化物を析出させるだけでなく、パーライトラメラ間のフェライトにもNb炭化物を析出させることができ、著しく鋼の延性を低下させ、破断分離性を向上できることを見出した。これは、Nb炭化物の析出量が増えるだけでなく、初析フェライト中よりパーライトラメラ間で析出させた方が、微細かつ多量にNb炭化物が析出するためであると推測される。
(b)本発明者らは、Nb炭化物等の合金炭化物をより微細かつ多量に析出させる手段について検討を重ねた。その結果、Nbに加えて微量のTiを鋼中に含有させることによって、より延性を低下させ、破断分離性をより向上できることを見出した。これは、微量のTiを鋼中に含有させることで、Ti炭化物がNb炭化物よりも先に析出し、Ti炭化物がNb炭化物の核となることで、単独でNb炭化物を析出させるよりも、より微細かつ多量にNb炭化物が析出するためと推測される。
(c)本発明者らは、Nbに加えてVを鋼中に含有させることによって、かえって延性が高くなり、破断分離性が低下することを見出した。これは、Vが窒化物を形成し、初析フェライトへの変態を促進させるため、パーライトラメラ間におけるNb炭化物の析出量が減少するためと推測される。
以下、本実施形態に係る鋼、機械部品およびコネクティングロッドについて説明する。なお、鋼とは、本実施形態における「鋼」とは、機械部品及びコネクティングロッドの素材となる、熱間鍛造に供される鋼(即ち熱間鍛造用鋼)を含むものであり、例えば、棒鋼である。
本実施形態に係る鋼は、化学成分が、単位質量%で、C:0.15〜0.30%、Si:0.40〜1.30%、Mn:0.50〜1.50%、P:0.035〜0.200%、S:0.010〜0.100%、Cr:0〜1.00%、Nb:0.010〜0.20%、Ti:0〜0.070%、Mo:0〜0.15%、N:0.0010〜0.0060%、V:0〜0.010%、Ca:0〜0.005%、Zr:0〜0.005%、Mg:0〜0.005%、Cu:0〜0.05%、Ni:0〜0.05%、Pb:0〜0.50%、Bi:0〜0.0050%、及びAl:0.010%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなる。
本実施形態に係る機械部品は、上記鋼を素材とするものであって、上記化学成分を有し、残部がFe及び不純物からなり、表面から1.0mm以上内部におけるミクロ組織がフェライト・パーライト組織であり、前記フェライト・パーライト組織の面積分率が95%以上である。
本実施形態に係る機械部品は、圧延方向と平行に採取した丸棒試験片(14A号)をJIS Z 2241:2011に準拠して測定した引張強度が900MPa以上であり、かつ降伏比(=0.2%耐力(MPa)/引張強度(MPa))が0.85以上であることが好ましい。
本実施形態に係るコネクティングロッドは、上記鋼を素材とするものであって、上記化学成分を有し、残部がFe及び不純物からなり、ロッド部の表面から1.0mm以上内部におけるミクロ組織がフェライト・パーライト組織であり、前記フェライト・パーライト組織の面積分率が95%以上である。
本実施形態に係るコネクティングロッドは、ロッド部から長手方向と平行に採取した丸棒試験片(14A号)をJIS Z 2241:2011に準拠して測定した引張強度が900MPa以上であり、降伏比(=0.2%耐力(MPa)/引張強度(MPa))が0.85以上であることが好ましい。
<化学成分>
以下、本実施形態に係る鋼、機械部品およびコネクティングロッドの化学成分について説明する。なお、以下の説明において、機械部品およびコネクティングロッドを総称して「非調質鋼部品」と言う場合がある。非調質鋼部品とは、本実施形態に係る鋼を熱間鍛造等することによって得られる熱間鍛造品である。また、以下の説明において、合金元素の含有量の単位「質量%」は「%」と記載する。以下に記載する数値限定範囲には、下限値および上限値がその範囲に含まれる。「超」、「未満」と示す数値には、その値が数値範囲に含まれない。また、以下の説明において、合金元素の作用効果として機械特性(引張強さ、降伏比、破断分離性、及び破断面の嵌合性など)を挙げることがあるが、これらは熱間鍛造後の鋼(即ち機械部品及びコンロッド)の機械特性を意味する。さらに以下の説明において、本実施形態に係る機械部品についての説明は、特に断りがない限り、本実施形態に係るコンロッドにも適用される。
C:0.15〜0.30%
Cは非調質鋼部品の強度を確保する効果を有する。所望の引張強度を得るためには、C含有量を0.15%以上にする必要がある。C含有量は、0.16%以上、0.17%以上、または0.18%以上が好ましい。
一方、Cを過剰に含有すると、延性が顕著に低くなり、破断面の凹凸が小さくなり、非調質鋼部品の破断面の嵌合性が低下する。そのため、C含有量は0.30%以下とする。C含有量は、0.29%以下、0.28%以下、または0.27%以下が好ましい。
Si:0.40〜1.30%
Siは、固溶強化によってフェライトを強化し、非調質鋼部品の延性を低下させることで、破断分離性を向上させる。この効果を得るためには、Si含有量は0.40%以上にする必要がある。Si含有量は、0.45%以上、0.50%以上、または0.55%以上が好ましい。
一方、Siを過剰に含有すると、延性が顕著に低くなり、破断面の凹凸が小さくなるため、非調質鋼部品の破断面の嵌合性が低下する。そのため、Si含有量は1.30%以下とする。Si含有量は、1.25%以下、1.20%以下、または1.15%以下が好ましい。
Mn:0.50〜1.50%
Mnは、セメンタイトに多く固溶してパーライトの成長速度を遅くする。パーライトの成長速度の遅延は、パーライトラメラ間でNb炭化物等の合金炭化物を多量に析出させ、非調質鋼部品の延性を顕著に低下させる効果がある。また、Mnは、Sと結合してMn硫化物を形成する。Mn硫化物はフェライト・パーライト変態前のオーステナイト組織の粗大化を抑制することで、非調質鋼部品の焼入れ性を低下させる。これらの効果を得るためには、Mn含有量を0.50%以上にする必要がある。Mn含有量は、0.55%以上、0.60%以上、または0.65%以上が好ましい。
一方、Mnを過剰に含有すると、固溶状態のMn量が増加し、かえって非調質鋼部品の焼入れ性が向上する。これによりパーライト組織ではなくベイナイト組織が生成し、Nb炭化物の析出量が減少するため、非調質鋼部品の延性が高くなり破断分離性が顕著に低下する。したがって、Mn含有量は1.50%以下とする。Mn含有量は、1.45%以下、1.40%以下、または1.35%以下が好ましい。
P:0.035〜0.200%
Pは、フェライト及びパーライトの延性を低下させるため、非調質鋼部品の破断分離性を向上させる。この効果を得るためには、P含有量を0.035%以上にする必要がある。P含有量は、0.040%以上、0.045%以上、0.050%以上、または0.055%以上が好ましい。一方、Pを過剰に含有すると、延性が顕著に低くなり、破断面の凹凸が小さくなるため、非調質鋼部品の破断面の嵌合性が低下する。そのため、P含有量は0.200%以下とする。P含有量は、0.180%以下、0.160%以下、または0.140%以下が好ましい。
S:0.010〜0.100%
Sは、Mnと結合してMn硫化物を形成する。Mn硫化物はフェライト・パーライト変態前のオーステナイト組織の粗大化を抑制することで、非調質鋼部品の焼入れ性を低下させる。これによりSには、非調質鋼部品の破断分離性を大幅に劣化させるベイナイト組織の生成を抑制する効果がある。この効果を得るために、S含有量を0.010%以上とする。S含有量は、0.015%以上、0.020%以上、または0.025%以上が好ましい。
一方、Sを過剰に含有すると、Mn硫化物が粗大となり、非調質鋼部品の破断分離性が顕著に低下するため、S含有量は0.100%以下とする。S含有量は、0.095%以下、0.090%以下、または0.085%以下が好ましい。
Cr:0〜1.00%
Crは、セメンタイトに多く固溶してパーライトの成長速度を遅くする。パーライトの成長速度の遅延は、パーライトラメラ間でNb炭化物等の合金炭化物を多量に析出させ、非調質鋼部品の延性を顕著に低下させる効果がある。この効果を確実に得るためには、Cr含有量を0.05%以上にすることが好ましい。Cr含有量は、0.06%以上、0.07%以上、または0.08%以上がより好ましい。ただし、Crが含まれない場合でも本実施形態に係る鋼及び非調質鋼部品はその課題を解決できるので、Cr含有量の下限値は0%である。
一方、Crを過剰に含有すると、パーライト組織ではなくベイナイト組織が生成し、Nb炭化物の析出量が減少するため、かえって非調質鋼部品の延性が高くなる。これにより、非調質鋼部品の破断分離性が顕著に低下するため、Cr含有量は1.00%以下とする。Cr含有量は、0.90%以下、0.80%以下、または0.70%以下が好ましい。
Nb:0.010〜0.20%
Nbは、鋼中に窒化物又は炭化物を形成する。熱間鍛造後の冷却時に形成するNb炭化物が初析フェライトおよび/またはパーライトラメラ間に多量に析出することで、延性を顕著に低下させ、非調質鋼部品の破断分離性を向上させる。この効果を確実に得るためには、Nb含有量を0.010%以上にする必要がある。Nb含有量は、0.02%以上、0.03%以上、または0.04%以上がより好ましい。
一方、Nbを過剰に含有すると、延性が著しく低くなるため、破断面の凹凸が小さくなり、非調質鋼部品の破断面の嵌合性が低下する。そのため、Nb含有量は0.20%以下とする。Nb含有量は、0.19%以下、0.18%以下、または0.17%以下が好ましい。
Ti:0〜0.070%
Tiは、窒化物又は炭化物を形成する。Ti炭化物はパーライト変態過程においてパーライトとオーステナイトとの界面でNb炭化物より先に析出し、核となることで、単独でNb炭化物が析出するより微細かつ多量にNb炭化物が析出する。これにより、単独でNb炭化物が析出するよりもより延性を低下させ、非調質鋼部品の破断分離性をより向上させることができる。この効果を確実に得るためには、Ti含有量は0.005%以上が好ましい。ただし、Tiが含まれない場合でも本実施形態に係る鋼及び非調質鋼部品はその課題を解決できるので、Tiの含有量の下限値は0%である。
一方、Tiを過剰に含有すると、延性が顕著に低くなり、破断面の凹凸が小さくなるため、非調質鋼部品の破断面の嵌合性が低下する。そのため、Ti含有量は0.070%以下とする。Ti含有量は、0.065%以下、0.060%以下、または0.055%以下が好ましい。Ti含有量は、0.014%以下がより好ましい。
Mo:0〜0.15%
Moは、MnやCrと同様に、セメンタイトに多く固溶してパーライトの成長速度を遅くする。パーライトの成長速度の遅延はパーライトラメラ間でNb炭化物等の合金炭化物を多量に析出させ、非調質鋼部品の延性を顕著に低下させる効果がある。この効果を確実に得るためには、Mo含有量は0.005%以上が好ましい。ただし、Moが含まれない場合でも本実施形態に係る鋼及び非調質鋼部品はその課題を解決できるので、Mo含有量の下限値は0%である。
一方、Moを過剰に含有すると、パーライト組織ではなくベイナイト組織が生成し、Nb炭化物の析出量が減少するため、かえって非調質鋼部品の延性が高くなる。これにより非調質鋼部品の破断分離性が顕著に低下するため、Mo含有量は0.15%以下とする。Mo含有量は、0.13%以下、0.11%以下、または0.09%以下が好ましい。
N:0.0010〜0.0060%
Nは、Nbおよび/またはTiと結合して窒化物を形成する。これらの窒化物はフェライト・パーライト変態前のオーステナイト組織の粗大化を抑制して非調質鋼部品の焼入れ性を低下させる。これによりNには、非調質鋼部品の破断分離性を大幅に劣化させるベイナイト組織の生成を抑制する効果がある。この効果を得るために、N含有量を0.0010%以上とする。N含有量は、0.0015%以上、0.0020%以上、または0.0025%以上が好ましい。
一方、Nを過剰に含有すると、窒化物が増大し、熱間鍛造後の冷却時に生成するNb炭化物等の合金炭化物の析出量が減少するため、かえって非調質鋼部品の延性が高くなる。これにより非調質鋼部品の破断分離性が顕著に低下するため、N含有量は0.0060%以下とする。N含有量は、0.0055%以下、0.0050%以下、または0.0045%以下が好ましい。
V:0〜0.010%
Vは、鋼中に窒化物を形成し、初析フェライトへの変態を促進させるため、パーライトラメラ間におけるNb炭化物の析出量を減少させる。これにより、かえって延性が高くなり、非調質鋼部品の破断分離性が低下する。そのため、V含有量は0.010%以下とする。V含有量は、0.008%以下、0.006%以下、または0.004%以下が好ましい。V含有量は少ないほど好ましく、0%であってもよい。
本実施形態に係る鋼及び非調質鋼部品は、上述の元素に加えてさらに、Ca、Zr及びMgからなる群から選択される1種以上を含んでも良い。ただし、Ca、Zr及びMgが含まれない場合でも本実施形態に係る鋼及び非調質鋼部品はその課題を解決できるので、Ca、Zr及びMgそれぞれの含有量の下限は0%である。
Ca:0〜0.005%
Zr:0〜0.005%
Mg:0〜0.005%
Ca、ZrおよびMgはいずれも鋼中に酸化物を形成し、Mn硫化物の晶出核となりMn硫化物を均一に微細分散させる効果がある。非調質鋼部品を破断分離させる際には、圧延方向に伸長したMn硫化物に沿ってき裂が伝播する。そのため、Mn硫化物が大きいほど破断面の凹凸が大きくなる一方で、延性が高くなり、破断分離性が低くなる。Mn硫化物を微細分散することにより、き裂進展方向にき裂が伝播しやすくなり、非調質鋼部品の破断分離性がより向上する。この効果を確実に得るためには、Ca、ZrおよびMgのいずれか1種以上の含有量は0.001%以上が好ましい。一方、いずれか1種でもその含有量が0.005%を超えると、鋼の熱間加工性が劣化し、熱間圧延が困難となる。そのため、Ca、ZrおよびMgの含有量は、0.005%以下とする。
本実施形態に係る鋼及び非調質鋼部品は、上述の元素に加えてさらに、Cu、Ni、PbおよびBiからなる群から選択される1種以上を含んでも良い。ただし、Cu、Ni、Pb及びBiが含まれない場合でも本実施形態に係る鋼及び非調質鋼部品はその課題を解決できるので、Cu、Ni、Pb及びBiそれぞれの含有量の下限は0%である。
Cu:0〜0.05%
Ni:0〜0.05%
Pb:0〜0.50%
Bi:0〜0.0050%
Cu、NiおよびPbは、鋼中に単独で存在することにより、フェライト及びパーライトの延性及び靭性を低下させる。延性及び靱性の低下は、非調質鋼部品の破断時の破断面近傍の塑性変形量を小さくし、破断分離性を向上させる効果がある。したがって、Cu、NiおよびPbの含有量はそれぞれ0.01%以上、より好ましくは0.02%以上としてもよい。しかしながら、これらの元素の含有量が過剰であると、熱間加工性が劣化し、熱間圧延が困難となることから、Cu及びNiの含有量はそれぞれ0.05%以下、Pbの含有量は0.50%以下とする。
また、Biは鋼中に固溶状態として存在することにより、フェライト及びパーライトの延性及び靱性を低下させる。延性及び靱性の低下は、非調質鋼部品の破断時の破断面近傍の塑性変形量を小さくし、破断分離性を向上させる効果がある。したがって、Biの含有量を0.0001%以上としてもよい。しかしながら、Biの含有量が過剰であると、熱間加工性が劣化し、熱間圧延が困難となることから、Biの含有量は0.0050%とする。
Al:0.010%以下
本実施形態に係る鋼及び非調質鋼部品は、Alが0.010%以下で含まれていてもよい。しかし、Al含有量が0.010%を超えると、被削性が劣化し、高精度が要求される自動車エンジン用部品に適用することができない。Al含有量は低い方が好ましいが、Al低減に要するコスト低減の観点から、0.001%以上としてもよい。Alが含まれない場合でも本実施形態に係る鋼及び非調質鋼部品はその課題を解決できるので、Al含有量の下限は0%としてもよい。
本実施形態に係る鋼及び非調質鋼部品の化学成分の残部は鉄(Fe)及び不純物である。不純物とは、非調質鋼を工業的に製造する際に、鉱石もしくはスクラップ等のような原料、又は製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本実施形態に係る鋼及び非調質鋼部品に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
なお、本実施形態に係る鋼及び非調質鋼部品に含有され得る不純物として、BやOなどが挙げられる。B含有量はとくに規定しないが、本実施形態に係る鋼および非調質鋼部品に含まれ得るBは3ppm以下であるため、B含有量の上限を3ppmとしてもよい。Bが含まれない場合でも本実施形態に係る鋼及び非調質鋼部品はその課題を解決できるので、B含有量の下限は0%としてもよい。また、Oが不純物として含まれる場合、例えば、その含有量は0.0030%以下である。
上述した鋼及び非調質鋼部品の化学成分は、ICP−AES(Inductively Coupled Plasma−Atomic Emission Spectrometry)を用いて測定すればよい。なお、CおよびSは燃焼−赤外線吸収法を用い、Nは不活性ガス融解−熱伝導度法を用いて測定すればよい。
<非調質鋼部品のミクロ組織>
フェライト・パーライト組織
フェライト・パーライト組織とは、フェライト・パーライトを主体とする組織であり、初析フェライトとパーライトとからなる組織である。ここで、フェライト・パーライト主体の組織とは、非調質鋼部品のミクロ組織において、フェライト・パーライトの面積分率が95%以上、換言すると初析フェライトおよびパーライト以外の残部組織が5%以下であることを意味する。なお、本実施形態に係る非調質鋼部品のフェライト・パーライト組織では、パーライトの面積分率と初析フェライトの面積分率とが同程度であるか、またはパーライトの面積分率が初析フェライトの面積分率より少ない。
フェライト・パーライト組織では、初析フェライトおよびパーライトの成長時に、初析フェライトおよび/またはパーライトとオーステナイトとの界面で、Nb炭化物等の合金炭化物が析出する相界面析出が起こりうる。つまり、熱間鍛造後の冷却過程で、オーステナイトから初析フェライトおよび/またはパーライトへの変態と、Nb炭化物等の合金炭化物の析出とが同時に起こりうる。一方、ベイナイト組織およびマルテンサイト組織では、オーステナイトから変態した後、Nb炭化物等の合金炭化物を析出させるために、これらの合金炭化物が析出する温度に再加熱する必要がある。したがって、非調質鋼部品においてNb炭化物等の合金炭化物を多量に析出させるために、非調質鋼部品の表面から1.0mm以上内部におけるミクロ組織はフェライト・パーライト組織とする。フェライト・パーライト組織の面積分率は、95%以上であり、好ましくは、96%以上、97%以上、または100%である。
なお、本実施形態に係る鋼は、Ac点以上の温度域まで加熱されて熱間鍛造され、冷却されることで非調質鋼部品に加工されるため、加熱される前の金属組織は特に規定しない。熱間鍛造前の鋼の組織は、熱間鍛造後の機械部品の特性に何ら影響を及ぼさないからである。
ミクロ組織に含まれるフェライト・パーライト組織以外の残部組織の面積分率は、0〜5%とする。残部組織としては例えばベイナイト組織が含まれ得るが、ベイナイト組織が生成すると非調質鋼部品の降伏比が低下する。そのため、残部組織は極力少ないことが好ましく、4%以下、または3%以下が好ましい。より好ましくは、残部組織は0%である。
ミクロ組織の面積分率は、以下の方法により測定する。
非調質鋼部品から10mm角のサイズの試験片を切り出す。試験片は、表面から1.0mmより深い位置から切り出す。なお、機械部品の場合は、任意の位置から、コネクティングロッドの場合はロッド部から、試験片を切り出す。切り出した試験片を樹脂埋めし、鏡面研磨仕上げした後、ナイタール腐食液(3%硝酸アルコール)で研磨面をエッチングする。そして、エッチングにより腐食した面を観察面として任意の10箇所を特定し、観察倍率を400倍とし光学顕微鏡で観察する。光学顕微鏡写真におけるフェライト及びパーライトを通常の手段により特定し、これらが写真に占める面積分率を通常の画像解析により測定する。そして、10か所におけるフェライト及びパーライトの合計面積率の平均値を、非調質機械部品のミクロ組織におけるフェライト・パーライト組織の面積分率とする。なお、上記手段によって得られたフェライト・パーライト組織の面積分率は、その体積分率と実質的に同一である。
本実施形態に係る非調質鋼部品は、Nb炭化物等の合金炭化物が初析フェライト析出しているだけでなく、パーライトラメラ間にも析出している。これにより、非調質鋼部品の延性を低下させ、破断分離性を向上することができる。
Nb炭化物等の合金炭化物の存在位置は、以下の方法により観察できる。
非調質鋼部品の表面から1.0mm以上深い位置から、厚さ0.5mmの円板を採取する。エメリー紙を用いて円板の両面を研削研磨し、円板の厚さを50μmとする。その後、円板から直径3mmのサンプルを採取する。サンプルを10%過塩素酸−氷酢酸溶液中に浸漬して、電解研磨を実施して、薄膜試料を作製する。透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)と高感度カメラとで構成された装置を用いて、得られた薄膜試料を観察する。具体的には、薄膜試料に対して菊池図形を解析して、薄膜試料の結晶方位を特定し、特定した結晶方位に基づいて薄膜試料を傾斜させて、(001)面を観察できるように、薄膜試料を調整する。観察倍率は40000倍とし、加速電圧は200kVとする。
<非調質鋼部品の機械特性>
引張強度が900MPa以上、かつ降伏比が0.85以上
引張強度が900MPa以上であれば、コネクティングロッドとして使用された場合でも十分な強度を確保することができる。また、降伏比が0.85以上であれば、破断分離時の二次き裂が短くなり、二次き裂の先端で塑性変形が生じにくく、非調質鋼部品の破断分離性及び破断面の嵌合性が向上する。よって、本実施形態に係る非調質鋼部品の引張強度は、例えば、900MPa以上、1250MPa以下であり、好ましくは925MPa以上、より好ましくは950MPa以上である。また、本実施形態に係る非調質鋼部品の降伏比は、例えば、0.85以上であり、好ましくは0.87以上であり、より好ましくは0.90以上である。なお、本実施形態における降伏比は、単位MPaの0.2%耐力を単位MPaの引張強度で除した値(降伏比=0.2%耐力(MPa)/引張強度(MPa))である。
本実施形態に係る非調質鋼部品は、0.2%耐力が800MPa以上であってもよい。0.2%耐力が800MPa以上であれば、破断分離時の二次き裂が短くなり、二次き裂の先端で塑性変形が生じにくくなり、非調質鋼部品の破断分離性及び破断面の嵌合性がより向上する。
非調質鋼部品の引張強度、0.2%耐力及び降伏比は以下の方法で測定する。機械部品の場合は、試験片の長手方向が圧延方向と一致するように、またコネクティングロッドの場合は、試験片の長手方向がロッド部の長手方向と一致するように、JIS Z 2241:2011に記載のJIS14A号試験片を切り出す。試験片は、機械部品またはコネクティングロッドの表面から深さ1.0mm以上内部から切り出す。また、コネクティングロッドの場合はロッド部から切り出す。切り出した試験片を用いて、JIS Z 2241:2011に準拠して引張強度及び0.2%耐力を測定する。測定温度は25℃とし、ひずみ速度は5mm/minとする。得られた0.2%耐力(MPa)を引張強度(MPa)で除することで、降伏比を得る。
なお、熱間鍛造前の鋼の機械特性は特に限定されない。金属組織と同様に、例えばAc点以上の温度に加熱して行われる熱間鍛造より前の鋼の機械特性は、熱間鍛造後の鋼部品機械部品の機械特性に実質的に影響しないからである。熱間鍛造後の鋼部品機械部品の機械特性は、化学成分及び熱間鍛造条件に応じて定まることとなる。即ち、本実施形態に係る鋼の作用効果は、熱間鍛造に供した後に優れた機械特性を発揮しうるという点にある。
ただし、本実施形態に係る鋼は、熱間鍛造用途に用いた場合に優れた効果を発揮するものの、その用途は熱間鍛造に限定されない。例えば、本実施形態に係る鋼を冷間加工することによって、高い強度、高い降伏比、優れた破断分離性、及び、優れた破断面の嵌合性を有する機械部品を製造することも可能である。この場合、本実施形態に係る鋼の組織を、非調質鋼部品機械部品と同様に、表面から1.0mm以上内部の組織がフェライト・パーライト組織であり、フェライト・パーライト組織の面積分率が95%以上であるものとすることは有益である。さらに本実施形態に係る鋼は、例えば、直径20〜80mmの棒鋼であるが、用途が限定されないので、その形状も任意である。
<鋼及び非調質鋼部品の製法>
本実施形態に係る鋼は、上記の化学成分を有する鋼片を連続鋳造により鋳造し、必要に応じて、均熱拡散処理、分塊圧延工程を経て圧延素材とする。次に、圧延素材を1150〜1250℃に加熱した後、熱間圧延してから冷却することで、鋼を得る。熱間圧延はAr点以上の温度で熱間圧延を終了し、熱間圧延後の冷却条件は特に限定する必要はなく、放冷でも水冷でもよい。熱間圧延後は焼入れ焼戻し等の調質熱処理を行う必要はない。
本実施形態に係る非調質鋼部品は、鋼をAc点以上の温度に加熱し、熱間鍛造を行って所望の部品形状に加工し、その後、冷却することにより製造する。熱間鍛造後の冷却条件は、フェライト・パーライト組織が得られる条件であれば特に限定する必要はなく、放冷でも水冷でもよい。例えば、加熱温度の温度範囲は1220℃〜1280℃とし、加熱時間は5min〜15minとする。また、熱間鍛造後に更に切削等の後加工を行って部品形状を調整してもよい。熱間鍛造後は焼入れ焼戻し等の調質熱処理を行う必要はない。
本実施形態に係る鋼及び機械部品の用途は特に限定されないが、破断分離して用いられる機械部品、例えば破断分離型のコネクティングロッドに適用された場合に、特に好適な効果を奏する。
図1は、本実施形態に係る破断分離型のコネクティングロッド(以下、破断分離型コンロッドと言う場合がある)の一例を示す分解斜視図である。この例の破断分離型コンロッド1は、図1に示すように上下に分割されたロッド付半円弧状のアッパ側半割体2と、半円弧状のロア側半割体3とから構成されている。アッパ側半割体2の半円弧部2Aの両端側にはそれぞれロア側半割体3に固定するためのねじ溝を有するねじ孔5が形成され、ロア側半割体3の半円弧部3Aの両端側にはそれぞれアッパ側半割体2に固定するための挿通孔6が形成されている。
アッパ側半割体2の半円弧部2Aとロア側半割体3の半円弧部3Aとを円環状に合わせて相互の両端側の挿通孔6とねじ孔5に結合ボルト7を挿通し、螺合することで円環状のビッグエンド部8が構成されている。アッパ側半割体2のロッド部2Bの上端側には円環状のスモールエンド部9が形成されている。
図1に示す構造の破断分離型コンロッド1は、自動車エンジン等の内燃機関のピストンの往復運動を回転運動に変換するために内燃機関に組み込まれ、スモールエンド部9が図示略のピストンに接続され、ビッグエンド部8が内燃機関のコネクティングロッドジャーナル(図示略)に接続される。
本実施形態に係る破断分離型コンロッド1は上述された化学成分、組織を備える鋼から形成され、アッパ側半割体2の半円弧部2Aとロア側半割体3の半円弧部3Aとは、元々1つの円環状部品であった部分を脆性破断して形成される。一例として、熱間鍛造品の一部に切欠きを設けてその切欠きを起点として脆性的に破断分離して、アッパ側半割体2の半円弧部2Aの突き合わせ面2aとロア側半割体3の半円弧部3Aの突き合わせ面3aとを形成する。これらの突き合わせ面2a、3aは元々1つの部材を破断分離して形成しているので、良好な位置合わせ精度で突き合わせが可能となる。
この構造の破断分離型コンロッド1は突き合わせ面の新たな加工や位置決めピンが不要となり、大幅な製造工程の簡略化がなされる。
破断分離型コンロッド1は、一例として、質量%で、C:0.15〜0.30%、Si:0.40〜1.30%、Mn:0.50〜1.50%、P:0.035〜0.200%、S:0.010〜0.100%、Cr:0〜1.00%、Nb:0.010〜0.20%、Ti:0〜0.070%、Mo:0〜0.15%、N:0.0010〜0.0060%、V:0〜0.010%、Ca:0〜0.005%、Zr:0〜0.005%、Mg:0〜0.005%、Cu:0〜0.05%、Ni:0〜0.05%、Pb:0〜0.50%、Bi:0〜0.0050%およびAl:0.010%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなる。この化学組成を有する鋼を熱間鍛造して冷却し、非調質鋼部品とすることで、上述の特性を有する破断分離型のコンロッドが得られる。
本発明を実施例によって以下に詳述する。なお、これら実施例は本発明の技術的意義、効果を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
表1Aおよび表1Bに示す組成を有する転炉溶製鋼を連続鋳造により製造し、必要に応じて、均熱拡散処理、分塊圧延工程を経て162mm角の圧延素材とした。次に、圧延素材を1200℃に加熱した後、熱間圧延によって、直径が56mmの棒鋼を得た。表1Bの下線が付された値は、本発明の範囲外の値であることを示す。また、表1Aおよび表1Bの記号「−」は、その記号に係る元素が添加されていないことを示す。
得られた棒鋼について、破断分離性及び破断面の嵌合性、機械特性、ミクロ組織を調べるため、コンロッド相当の試験片を熱間鍛造により作製した。具体的には、直径56mmの棒鋼を1250℃に加熱し5分間保持した後、1200℃で、棒鋼の長手方向に対して垂直方向に熱間鍛造した。棒鋼の長手方向に垂直な方向から見たときに、棒鋼側面が円形から樽型になるように変形させて、鍛造方向の厚さが20mmである鍛造材を得た。熱間鍛造後の鍛造材を自然放冷(放冷)によって室温まで冷却した。
冷却後の鍛造材から、切削加工により、JIS Z 2241:2011に記載のJIS14A号試験片を作製した。JIS14A号試験片は、鍛造材の幅方向端面から30mmの位置、且つ厚さ方向10.0mm深さの位置から、鍛造材の長手方向に沿って採取した。該試験片を用いて、JIS Z 2241:2011に準拠して、25℃で5mm/minの速度にて引張試験を実施した。得られた結果から、引張強度、0.2%耐力、降伏比、全伸びおよび絞りを得た。
破断分離性及び破断面の嵌合性の指標として、引張試験によって得られた全伸びおよび絞りを採用した。破断分離性及び破断面の嵌合性は、以下の基準に基づいて評価した。
破断分離性及び破断面の嵌合性が良好(Good):全伸びが1.0〜5.0%、かつ絞りが2.0〜8.0%
破断分離性は良好(Good)であるが、破断面の嵌合性が不良(Bad)(延性が顕著に低く、破断面の凹凸が小さいため):全伸びが1.0%未満、および/または絞りが2.0%未満
破断分離性及び破断面の嵌合性が不良(Bad)(破断分離時の破断面近傍の塑性変形量が大きいため):全伸びが5.0%超、および/または絞りが8.0%超
引張強度が900MPa以上の場合および降伏比(=0.2%耐力(MPa)/引張強度(MPa))が、小数点以下第3位で四捨五入して0.85以上となる場合、本発明で所望される引張強度および降伏比を有しているとして合格と判定した。一方、引張強度が900MPa未満の場合および/または降伏比が、小数点以下第3位で四捨五入して0.85未満となる場合、不合格と判定した。
また、鍛造材の幅方向端面から30mmの位置、且つ厚さ方向10.0mm深さの位置から、10mm角サンプルを2個切り出し、ミクロ組織を観察した。切り出したサンプルを樹脂埋めし、観察面を鏡面研磨仕上げした後、ナイタール腐食液(3%硝酸アルコール)で観察面をエッチングした。その後、エッチングされた観察面を400倍の光学顕微鏡で観察し、任意の10視野の写真画像を得た。フェライト、パーライト、およびベイナイトの各相は、相ごとにコントラストが異なるため、組織観察では、コントラストに基づいて各相を特定し、その面積分率を求めた。ここでは、フェライト・パーライト以外の残部組織をベイナイトと定義する。ベイナイトにはマルテンサイトを含むが、区別が困難であるため、本明細書では総称してベイナイトという。したがって、各視野において、フェライト及びパーライト以外の領域を、ベイナイトと特定した。そして、得られたフェライトおよびパーライトの合計面積率の平均値をミクロ組織におけるフェライト・パーライト組織の面積分率とした。100%からフェライト・パーライト組織の面積分率を差し引くことで、フェライト・パーライト組織以外の残部組織、すなわちベイナイトの面積分率を得た。表2Aおよび表2B中、ミクロ組織の欄に「F/P」と記載した例は、ミクロ組織が実質的にフェライトおよびパーライトのみからなる、すなわちフェライトおよびパーライトの合計面積率が100%の組織であったことを示す。「F/P/B」と記載した例は、ミクロ組織がフェライト、パーライト、並びに、フェライトおよびパーライト以外の残部組織(ベイナイト)からなる組織であったことを示す。
Nb炭化物等の合金炭化物の存在位置は、以下の方法により観察した。非調質鋼部品の表面から深さ10mm位置から、厚さ0.5mmの円板を採取した。エメリー紙を用いて円板の両面を研削研磨し、円板の厚さを50μmとした。その後、円板から直径3mmのサンプルを採取した。サンプルを10%過塩素酸−氷酢酸溶液中に浸漬して、電解研磨を実施して、薄膜試料を作製した。透過型電子顕微鏡と高感度カメラとで構成された装置を用いて、得られた薄膜試料を観察した。具体的には、薄膜試料に対して菊池図形を解析して、薄膜試料の結晶方位を特定し、特定した結晶方位に基づいて薄膜試料を傾斜させて、(001)面を観察できるように、薄膜試料を調整した。観察倍率は40000倍とし、加速電圧は200kVとした。
Figure 2019203343
Figure 2019203343
Figure 2019203343
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表1Aにおいて、鋼No.A〜dの本発明例は、いずれも化学成分が本発明の規定範囲内とされたものである。これら本発明例A〜dは、Nb炭化物等の合金炭化物が、初析フェライトだけでなくパーライトラメラ間にも微細かつ多量に観察された。このため、表2Aに示すように、引張強度が900MPa以上となり、降伏比が0.85以上となった。また、0.2%耐力も800MPa以上となった。更に、全伸びが1.0%以上、5.0%以下、かつ絞りが2.0%以上、8.0%以下となり、破断分離性が良好であり、破断面の嵌合性も良好だった。本発明例A〜dを非調質鋼部品とした場合には、高い引張強度及び降伏比を有し、更には、破断分離性及び破断面の嵌合性に優れた非調質鋼部品が得られる。
これに対して、表1B及び表2Bに示すように、比較例AAは、Cの含有量が少ないため、パーライトラメラ間のNb炭化物の析出量が少なくなり、延性が高くなった。これにより破断分離性及び破断面の嵌合性は不良となった。
比較例AB、AD、AH、AMおよびANは、それぞれC、Si、P、NbおよびTiの含有量が多いため、延性が顕著に低く破断分離性は良好なものの、破断面の嵌合性は不良となった。
比較例ACおよびAGは、それぞれSiおよびPの含有量が少ないため、延性が高く、破断分離性及び破断面の嵌合性は不良となった。
比較例AEは、Mn含有量が少ないため、パーライトの成長速度が速く、Nb炭化物等の合金炭化物がパーライトラメラ間で析出しなかった。これにより延性が高く、破断分離性及び破断面の嵌合性は不良となった。
比較例AF、AKおよびAOは、それぞれMn、CrおよびMoの含有量が多いため、また比較例AIおよびAPは、それぞれSおよびNの含有量が少ないため、フェライト・パーライト組織の他にベイナイト組織が生成し、パーライトラメラ間のNb炭化物の析出量が少なく、延性が高くなった。これにより破断分離性及び破断面の嵌合性は不良となった。
比較例AJは、Sの含有量が多いため、Mn硫化物が粗大となり、延性が高く、破断分離性及び破断面の嵌合性は不良となった。
比較例ALは、Nb含有量が少ないため、また比較例AQおよびARは、それぞれNおよびVの含有量が多いため、パーライトラメラ間のNb炭化物の析出量が少なく、延性が高くなった。これにより破断分離性及び破断面の嵌合性が不良となった。
1…破断分離型コンロッド(非調質鋼部品)、2…アッパ側半割体、2A…半円弧部、2B…ロッド部、2a…突き合わせ面、3…ロア側半割体、3A…半円弧部、3a…突き合わせ面、5…ねじ孔、6…挿通孔、7…結合ボルト、8…ビッグエンド部、9…スモールエンド部。
本発明に係る上記一態様によれば、高い引張強度、高い降伏比、優れた破断分離性及び優れた破断面の嵌合性の全てを有する鋼、機械部品およびコネクティングロッドを提供することができる。
本発明は、コネクティングロッド用鋼材、機械部品およびコネクティングロッドに関する。
本願は、2018年4月20日に、日本に出願された特願2018−081538号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
本発明は上記の実情に鑑み、高い引張強度と、高い降伏比と、優れた破断分離性と、優れた破断面の嵌合性との全てを有する機械部品およびコネクティングロッド、ならびにこのような機械部品およびコネクティングロッドを製造可能なコネクティングロッド用鋼材を提供することを課題とする。
上述の課題を解決するために、本発明者らは高強度の破断分離型コネクティングロッドに好適なコネクティングロッド用鋼材について鋭意検討した。その結果得られた本発明の要旨は、次の通りである。
[1]本発明の一態様に係るコネクティングロッド用鋼材は、化学成分が、単位質量%で、
C:0.15〜0.30%、
Si:0.40〜1.30%、
Mn:0.50〜1.50%、
P:0.035〜0.200%、
S:0.010〜0.100%、
Cr:0〜1.00%、
Nb:0.010〜0.20%、
Ti:0〜0.070%、
Mo:0〜0.15%、
N:0.0010〜0.0051%、
V:0〜0.010%、
Ca:0〜0.005%、
Zr:0〜0.005%、
Mg:0〜0.005%、
Cu:0〜0.05%、
Ni:0〜0.05%、
Pb:0〜0.50%、
Bi:0〜0.0050%、及び
Al:0.010%以下
を含有し、残部がFe及び不純物からなる。
[2]上記[1]に記載のコネクティングロッド用鋼材は、前記化学成分が、単位質量%で、
Ti:0.005〜0.014%、及び
Mo:0.005〜0.15%
からなる群から選択される1種または2種を含有してもよい。
[3]上記[1]または[2]に記載のコネクティングロッド用鋼材は、前記化学成分が、単位質量%で、
Ca:0.001〜0.005%、
Zr:0.001〜0.005%、及び
Mg:0.001〜0.005%
からなる群から選択される1種以上を含有してもよい。
[4]本発明の別の態様に係る機械部品は、化学成分が、単位質量%で、
C:0.15〜0.30%、
Si:0.40〜1.30%、
Mn:0.50〜1.50%、
P:0.035〜0.200%、
S:0.010〜0.100%、
Cr:0〜1.00%、
Nb:0.010〜0.20%、
Ti:0〜0.070%、
Mo:0〜0.15%、
N:0.0010〜0.0051%、
V:0〜0.010%、
Ca:0〜0.005%、
Zr:0〜0.005%、
Mg:0〜0.005%、
Cu:0〜0.05%、
Ni:0〜0.05%、
Pb:0〜0.50%、
Bi:0〜0.0050%、及び
Al:0.010%以下
を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
表面から1.0mm以上内部におけるミクロ組織がフェライト・パーライト組織であり、前記フェライト・パーライト組織の面積分率が95%以上である。
[5]上記[4]に記載の機械部品は、前記化学成分が、単位質量%で、
Ti:0.005〜0.014%、及び
Mo:0.005〜0.15%
からなる群から選択される1種または2種を含有してもよい。
[6]上記[4]または[5]に記載の機械部品は、前記化学成分が、単位質量%で、
Ca:0.001〜0.005%、
Zr:0.001〜0.005%、及び
Mg:0.001〜0.005%
からなる群から選択される1種以上を含有してもよい。
[7]上記[4]〜[6]のいずれか一項に記載の機械部品は、引張強度が900MPa以上であり、伏比が0.85以上であってもよい。
[8]本発明の別の態様に係るコネクティングロッドは、化学成分が、単位質量%で、
C:0.15〜0.30%、
Si:0.40〜1.30%、
Mn:0.50〜1.50%、
P:0.035〜0.200%、
S:0.010〜0.100%、
Cr:0〜1.00%、
Nb:0.010〜0.20%、
Ti:0〜0.070%、
Mo:0〜0.15%、
N:0.0010〜0.0051%、
V:0〜0.010%、
Ca:0〜0.005%、
Zr:0〜0.005%、
Mg:0〜0.005%、
Cu:0〜0.05%、
Ni:0〜0.05%、
Pb:0〜0.50%、
Bi:0〜0.0050%、及び
Al:0.010%以下
を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
ロッド部の表面から1.0mm以上内部におけるミクロ組織がフェライト・パーライト組織であり、前記フェライト・パーライト組織の面積分率が95%以上である。
[9]上記[8]に記載のコネクティングロッドは、前記化学成分が、単位質量%で、
Ti:0.005〜0.014%、及び
Mo:0.005〜0.15%
からなる群から選択される1種または2種を含有してもよい。
[10]上記[8]または[9]に記載のコネクティングロッドは、前記化学成分が、単位質量%で、
Ca:0.001〜0.005%、
Zr:0.001〜0.005%、及び
Mg:0.001〜0.005%
からなる群から選択される1種以上を含有してもよい。
[11]上記[8]〜[10]のいずれか一項に記載のコネクティングロッドは、前記ロッド部で、引張強度が900MPa以上であり、降伏比が0.85以上であってもよい。
本発明に係る上記態様によれば、高い引張強度、高い降伏比、優れた破断分離性及び優れた破断面の嵌合性の全てを有するコネクティングロッド用鋼材、機械部品およびコネクティングロッドを提供することができる。
本発明者らは、高い引張強度、高い降伏比、優れた破断分離性及び優れた破断面の嵌合性の全てを実現するコネクティングロッド用鋼材、機械部品およびコネクティングロッドについて鋭意検討した結果、以下の(a)〜(c)の知見を得た。
以下、本実施形態に係るコネクティングロッド用鋼材(以下、単に鋼と記載する場合がある)、機械部品およびコネクティングロッドについて説明する。なお、本実施形態における「コネクティングロッド用鋼材」とは、機械部品及びコネクティングロッドの素材となる、熱間鍛造に供される鋼(即ち熱間鍛造用鋼)を含むものであり、例えば、棒鋼である。
本実施形態に係る鋼は、化学成分が、単位質量%で、C:0.15〜0.30%、Si:0.40〜1.30%、Mn:0.50〜1.50%、P:0.035〜0.200%、S:0.010〜0.100%、Cr:0〜1.00%、Nb:0.010〜0.20%、Ti:0〜0.070%、Mo:0〜0.15%、N:0.0010〜0.0051%、V:0〜0.010%、Ca:0〜0.005%、Zr:0〜0.005%、Mg:0〜0.005%、Cu:0〜0.05%、Ni:0〜0.05%、Pb:0〜0.50%、Bi:0〜0.0050%、及びAl:0.010%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなる。
Figure 2019203343
Figure 2019203343
本発明に係る上記一態様によれば、高い引張強度、高い降伏比、優れた破断分離性及び優れた破断面の嵌合性の全てを有するコネクティングロッド用鋼材、機械部品およびコネクティングロッドを提供することができる。

Claims (11)

  1. 化学成分が、単位質量%で、
    C:0.15〜0.30%、
    Si:0.40〜1.30%、
    Mn:0.50〜1.50%、
    P:0.035〜0.200%、
    S:0.010〜0.100%、
    Cr:0〜1.00%、
    Nb:0.010〜0.20%、
    Ti:0〜0.070%、
    Mo:0〜0.15%、
    N:0.0010〜0.0060%、
    V:0〜0.010%、
    Ca:0〜0.005%、
    Zr:0〜0.005%、
    Mg:0〜0.005%、
    Cu:0〜0.05%、
    Ni:0〜0.05%、
    Pb:0〜0.50%、
    Bi:0〜0.0050%、及び
    Al:0.010%以下
    を含有し、残部がFe及び不純物からなることを特徴とする鋼。
  2. 前記化学成分が、単位質量%で、
    Ti:0.005〜0.014%、及び
    Mo:0.005〜0.15%
    からなる群から選択される1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の鋼。
  3. 前記化学成分が、単位質量%で、
    Ca:0.001〜0.005%、
    Zr:0.001〜0.005%、及び
    Mg:0.001〜0.005%
    からなる群から選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鋼。
  4. 化学成分が、単位質量%で、
    C:0.15〜0.30%、
    Si:0.40〜1.30%、
    Mn:0.50〜1.50%、
    P:0.035〜0.200%、
    S:0.010〜0.100%、
    Cr:0〜1.00%、
    Nb:0.010〜0.20%、
    Ti:0〜0.070%、
    Mo:0〜0.15%、
    N:0.0010〜0.0060%、
    V:0〜0.010%、
    Ca:0〜0.005%、
    Zr:0〜0.005%、
    Mg:0〜0.005%、
    Cu:0〜0.05%、
    Ni:0〜0.05%、
    Pb:0〜0.50%、
    Bi:0〜0.0050%、及び
    Al:0.010%以下
    を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
    表面から1.0mm以上内部におけるミクロ組織がフェライト・パーライト組織であり、前記フェライト・パーライト組織の面積分率が95%以上であることを特徴とする機械部品。
  5. 前記化学成分が、単位質量%で、
    Ti:0.005〜0.014%、及び
    Mo:0.005〜0.15%
    からなる群から選択される1種または2種を含有することを特徴とする請求項4に記載の機械部品。
  6. 前記化学成分が、単位質量%で、
    Ca:0.001〜0.005%、
    Zr:0.001〜0.005%、及び
    Mg:0.001〜0.005%
    からなる群から選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の機械部品。
  7. 引張強度が900MPa以上であり、かつ降伏比が0.85以上であることを特徴とする請求項4〜6の何れか一項に記載の機械部品。
  8. 化学成分が、単位質量%で、
    C:0.15〜0.30%、
    Si:0.40〜1.30%、
    Mn:0.50〜1.50%、
    P:0.035〜0.200%、
    S:0.010〜0.100%、
    Cr:0〜1.00%、
    Nb:0.010〜0.20%、
    Ti:0〜0.070%、
    Mo:0〜0.15%、
    N:0.0010〜0.0060%、
    V:0〜0.010%、
    Ca:0〜0.005%、
    Zr:0〜0.005%、
    Mg:0〜0.005%、
    Cu:0〜0.05%、
    Ni:0〜0.05%、
    Pb:0〜0.50%、
    Bi:0〜0.0050%、及び
    Al:0.010%以下
    を含有し、残部がFe及び不純物からなるコネクティングロッドであって、
    ロッド部の表面から1.0mm以上内部におけるミクロ組織がフェライト・パーライト組織であり、前記フェライト・パーライト組織の面積分率が95%以上であることを特徴とするコネクティングロッド。
  9. 前記化学成分が、単位質量%で、
    Ti:0.005〜0.014%、及び
    Mo:0.005〜0.15%
    からなる群から選択される1種または2種を含有することを特徴とする請求項8に記載のコネクティングロッド。
  10. 前記化学成分が、単位質量%で、
    Ca:0.001〜0.005%、
    Zr:0.001〜0.005%、及び
    Mg:0.001〜0.005%
    からなる群から選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項8または請求項9に記載のコネクティングロッド。
  11. 前記ロッド部で、引張強度が900MPa以上であり、降伏比が0.85以上であることを特徴とする請求項8〜10の何れか一項に記載のコネクティングロッド。
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