JPWO2019193918A1 - レーザービームを用いた加工のための光学装置、レーザービームを用いた加工方法、及びガラス物品の製造方法 - Google Patents

レーザービームを用いた加工のための光学装置、レーザービームを用いた加工方法、及びガラス物品の製造方法 Download PDF

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Abstract

光学装置(1a)は、第一レンズ群(21)と、アキシコンレンズ(10)と、第二レンズ群(22)と、を備える。レーザービームが第一レンズ群(21)に入射する。第一レンズ群(21)を透過したレーザービームがアキシコンレンズ(10)に入射する。アキシコンレンズ(10)を透過したレーザービームが第二レンズ群(22)に入射する。第一レンズ群(21)は、第一ベッセルビーム(A)を形成するとともに第一リングビーム(B)を形成し、かつ、第一リングビーム(B)のリング幅が最小となる焦点面(f)を形成する。第二レンズ群(22)は、リング幅が光軸に沿って略一定である第二リングビーム(C)を形成するとともに、第二ベッセルビーム(D)を形成する。

Description

本発明は、レーザービームを用いた加工のための光学装置、レーザービームを用いた加工方法、及びガラス物品の製造方法に関する。
従来、レーザービームを用いた加工方法が知られている。例えば、特許文献1には、波長λのレーザーパルスを照射して変質部を形成するガラスの加工方法が記載されている。この方法において、レーザーパルスのパルス幅が1ns〜200nsの範囲であり、波長λにおけるガラスの吸収係数が50cm-1以下である。加えて、この方法において、その変質部をエッチングすることによりガラスに孔が形成される。
特許文献2及び3には、レーザーパルスを用いた、孔付きガラスの製造方法が記載されている。その製造方法によれば、所定のレーザー加工用ガラスにレーザーパルスを照射して変質部を形成し、その変質部をエッチングして孔が形成される。
特許文献4には、透明材料を加工するためのシステムが記載されている。そのシステムは、レーザー源と、光学アセンブリとを備えている。レーザー源は、パルス状のレーザービームを放出する。光学アセンブリは、パルス状のレーザービームの光路に配置され、パルス状のレーザービームをレーザービームの焦線(focal line)に変化させる。レーザービームの焦線は、透明材料のバルクに配置され、透明材料において多光子吸収を引き起こす。多光子吸収により、レーザービームの焦線に沿って材料の変質が生じる。光学アセンブリはアキシコンを備えている。非特許文献1では、ベッセルビームの光軸方向における強度プロフィールに対するアキシコンの先端の曲率の影響が検討されている。
特開2008−156200号公報 国際公開第2016/129254号 国際公開第2016/129255号 国際公開第2016/010954号
Proceedings of SPIE, (米),2008, Vol.7141, 714126-1
特許文献1〜3には、アキシコンレンズを有する光学系は記載されていない。特許文献4にはアキシコンを有する光学系が記載されている。しかし、特許文献4に記載されていない、レーザービームを用いた加工のための新規な光学装置を案出する余地がある。そこで、本発明は、アキシコンレンズを備えた、レーザービームを用いた加工のための新規な光学装置を提供する。加えて、本発明は、アキシコンレンズを用いた、レーザービームによる新規な加工方法を提供する。さらに、本発明は、アキシコンレンズを用いた、新規なガラス物品の製造方法を提供する。
本発明は、
レーザービームが入射する第一レンズ群と、
前記第一レンズ群を透過した前記レーザービームが入射するアキシコンレンズと、
前記アキシコンレンズを透過した前記レーザービームが入射する第二レンズ群と、を備え、
前記第一レンズ群は、前記アキシコンレンズの後方に第一ベッセルビームを形成するとともに前記第一ベッセルビームの後方に第一リングビームを形成し、かつ、光軸に垂直な方向に前記第一リングビームのリング幅が最小となる焦点面を形成し、
前記第二レンズ群は、前記第一リングビームを入射させ、前記第二レンズ群の後方に前記光軸に垂直な方向におけるリング幅が前記光軸に沿って略一定である第二リングビームを形成するとともに、前記第二リングビームの後方に第二ベッセルビームを形成する、
レーザービームを用いた加工のための光学装置を提供する。
また、本発明は、
第一レンズ群にレーザービームを入射させることと、
前記第一レンズ群を透過した前記レーザービームをアキシコンレンズに入射させることと、
前記第一レンズ群によって、前記アキシコンレンズの後方に第一ベッセルビームを形成するとともに前記第一ベッセルビームの後方に第一リングビームを形成し、かつ、光軸に垂直な方向に前記第一リングビームのリング幅が最小となる焦点面を形成することと、
第二レンズ群に前記第一リングビームを入射させて、前記第二レンズ群の後方に前記光軸に垂直な方向におけるリング幅が前記光軸に沿って略一定である第二リングビームを形成するとともに、前記第二リングビームの後方に第二ベッセルビームを形成することと、を含む、
レーザービームを用いた加工方法を提供する。
さらに、本発明は、
第一レンズ群にレーザービームを入射させることと、
前記第一レンズ群を透過した前記レーザービームをアキシコンレンズに入射させることと、
前記第一レンズ群によって、前記アキシコンレンズの後方に第一ベッセルビームを形成するとともに前記第一ベッセルビームの後方に第一リングビームを形成し、かつ、光軸に垂直な方向に前記第一リングビームのリング幅が最小となる焦点面を形成することと、
第二レンズ群に前記第一リングビームを入射させて、前記第二レンズ群の後方に前記光軸に垂直な方向におけるリング幅が前記光軸に沿って略一定である第二リングビームを形成するとともに、前記第二リングビームの後方に第二ベッセルビームを形成することと、
前記第二ベッセルビームをガラスに照射して前記ガラスに変質部を形成することと、を含む、
ガラス物品の製造方法を提供する。
上記のレーザービームを用いた加工のための光学装置は、例えば、ガラスを加工するのに有利な新規の光学装置である。上記の加工方法は、例えば、ガラスを加工するのに有利な新規の方法である。上記の製造方法は、変質部を有するガラス物品を製造するのに有利な新規の方法である。
図1は、本発明に係る光学装置の一例を模式的に示す図である。 図2は、アキシコンレンズによる近似ベッセルビーム(quasi-Bessel Beam)の生成を模式的に示す図である。 図3は、アキシコンレンズに入射する異なるビーム径を有するレーザービームに対して、アキシコンレンズを透過したビームの光軸上の強度を示すグラフである。 図4は、異なる頂角を有するアキシコンレンズに対して、アキシコンレンズを透過したビームの光軸上の強度を示すグラフである。 図5は、異なる頂角を有するアキシコンレンズに対して、図4に示す、光軸上のビームの強度が最大となる光軸上の位置において、光軸に垂直な方向のビームの強度を示すグラフである。 図6Aは、アキシコンレンズの先鋭さが高いときのアキシコンレンズを透過した光線の強度分布を示す図である。 図6Bは、アキシコンレンズの先鋭さが低いときのアキシコンレンズを透過した光線の強度分布を示す図である。 図7は、実施例1に係る光学装置を模式的に示す図である。 図8は、実施例2に係る光学装置を模式的に示す図である。 図9は、比較例1に係る光学装置を模式的に示す図である。 図10は、実施例3に係る光学装置を模式的に示す図である。 図11は、実施例4に係る光学装置を模式的に示す図である。 図12Aは、実施例4に係る光学装置におけるアキシコンレンズの先端形状を示す図である。 図12Bは、実施例5に係るシミュレーションにおけるアキシコンレンズの先端形状を示す図である。 図13Aは、実施例3に係るシミュレーションにおいて光軸上の電界振幅の大きさを示すグラフである。 図13Bは、実施例3に係るシミュレーションにおいて光軸に垂直な方向の電界振幅の大きさを示すグラフである。 図14Aは、実施例4に係るシミュレーションにおいて光軸上の電界振幅の大きさを示すグラフである。 図14Bは、実施例4に係るシミュレーションにおいて光軸に垂直な方向の電界振幅の大きさを示すグラフである。 図15Aは、実施例5に係るシミュレーションにおいて光軸上の電界振幅の大きさを示すグラフである。 図15Bは、実施例5に係るシミュレーションにおいて光軸に垂直な方向の電界振幅の大きさを示すグラフである。 図16Aは、比較例2に係るシミュレーションにおいて光軸上の電界振幅の大きさを示すグラフである。 図16Bは、比較例2に係るシミュレーションにおいて光軸に垂直な方向の電界振幅の大きさを示すグラフである。 図17Aは、比較例3に係るシミュレーションにおいて光軸上の電界振幅の大きさを示すグラフである。 図17Bは、比較例3に係るシミュレーションにおいて光軸に垂直な方向の電界振幅の大きさを示すグラフである。 図18は、別の実施形態に係る光学装置を模式的に示す図である。 図19Aは、別の実施形態に係る光学装置の遮蔽体を光軸に沿って前方から見た図である。 図19Bは、別の実施形態に係る光学装置の別の遮蔽体を光軸に沿って前方から見た図である。 図19Cは、別の実施形態に係る光学装置のさらに別の遮蔽体を光軸に沿って前方から見た図である。 図19Dは、別の実施形態に係る光学装置のさらに別の遮蔽体を光軸に沿って前方から見た図である。 図20Aは、図19Aに示す遮蔽体の変形例を光軸に沿って前方から見た図である。 図20Bは、図19Bに示す遮蔽体の変形例を光軸に沿って前方から見た図である。 図20Cは、図19Dに示す遮蔽体の変形例を光軸に沿って前方から見た図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は、本発明の一例に関するものであり、本発明は以下の実施形態に限定されない。
本発明に係るレーザービームを用いた加工方法は、例えば、図1に示す光学装置1aを備えた加工装置を用いて実施される。光学装置1aは、第一レンズ群21と、アキシコンレンズ10と、第二レンズ群22とを備えている。第一レンズ群21には、レーザービームLBが入射する。アキシコンレンズ10には、第一レンズ群21を透過したレーザービームTBが入射する。第二レンズ群22には、アキシコンレンズ10を透過したレーザービームが入射する。第一レンズ群21は、アキシコンレンズ10の後方に第一ベッセルビームAを形成するとともに第一ベッセルビームAの後方に第一リングビームBを形成する。加えて、第一レンズ群21は、光軸zに垂直な方向に第一リングビームBのリング幅が最小となる焦点面fを形成する。第二レンズ群22には、第一リングビームBが入射し、第二レンズ群22の後方に光軸zに垂直な方向におけるリング幅が光軸zに沿って略一定である第二リングビームCを形成するとともに、第二リングビームCの後方に第二ベッセルビームDを形成する。本明細書において「後方」とは、基準に対してレーザービームの進行方向に離れた位置を意味し、「前方」とは、基準に対してレーザービームの進行方向とは逆方向に離れた位置を意味する。また、厳密な意味での「ベッセルビーム」は無限大の広がりとエネルギーを有するため、実現不可能である。一方、アキシコンレンズを用いれば限定された範囲で近似ベッセルビーム(quasi-Bessel beam)を実現できる。本明細書における「ベッセルビーム」は「近似ベッセルビーム」を意味する。
この光学装置1aを用いて、以下の工程を含む加工方法を実行できる。
(Ia)第一レンズ群21にレーザービームLBを入射させる。
(Ib)第一レンズ群21を透過したレーザービームTBをアキシコンレンズ10に入射させる。
(Ic)第一レンズ群21によって、アキシコンレンズ10の後方に第一ベッセルビームAを形成するとともに第一ベッセルビームAの後方に第一リングビームBを形成し、かつ、光軸zに垂直な方向に第一リングビームBのリング幅が最小となる焦点面fを形成する。
(Id)第二レンズ群22に第一リングビームBを入射させて、第二レンズ群22の後方に光軸zに垂直な方向におけるリング幅が光軸zに沿って略一定である第二リングビームCを形成するとともに、第二リングビームCの後方に第二ベッセルビームDを形成する。
例えば、所定のガラスに第二ベッセルビームDを照射することにより、ガラスに変質部を形成できる。本発明に係るガラス物品の製造方法は、上記の(Ia)〜(Id)の工程に加えて、下記の(IIa)の工程を含む。
(IIa)第二ベッセルビームDをガラスに照射してガラスに変質部を形成する。
数μm〜数百μmの直径を有する貫通孔又は有底孔が形成されたガラス基板は、ガラスインタポーザ等の様々な用途で使用しうる。このため、ガラス基板にこのような孔を形成する技術は産業上極めて重要である。なお、本明細書において「孔」は貫通孔及び有底孔を意味する。ガラスに孔を形成する方法として、以下の(i)〜(vi)の方法が考えられる。特に、下記の(iv)の方法は、特許文献1〜3にも記載されており、数百μmの厚みを有するガラス基板にも数十μmの直径を有する孔を形成でき、他の方法に比べて優位性を有する。
(i)ドリルなどの工具による穿孔
(ii)サンドブラスト
(iii)レーザービームを用いた加工
(iv)レーザービームを用いた加工とエッチングとを組み合わせた方法
(v)ドライエッチング
(vi)放電加工
ガラスに照射されたレーザービームはガラスに吸収され、発熱が起こる。これにより、レーザービームの光軸に沿ってガラスが融解する。ガラスにおいてレーザービームが照射される領域は、数μm以下のサイズの狭い領域になるので、この領域に対応したサイズの融解部がガラスに形成される。ガラスにレーザービームを照射したときには、プラズマの発生又はフィラメンテーションといった現象が発生する場合もある。しかし、この場合にも、結果的には、熱によってガラスが融解する。ガラスにレーザービームを照射した直後にガラスの融解部の周辺に熱が拡散することにより、融解部が凝固(ガラス化)する。このとき、融解部が凝固した部分では、体積の収縮が生じるので、その部分が周囲より空乏になる。場合によっては体積の収縮によって生じる応力によってその部分に微小亀裂が生じる。この微小亀裂は、引っ張り応力により、ガラスに照射されたレーザービームの進行方向に垂直な方向に発生する。この空乏な部分及び微小亀裂を有する部分がガラスの他の部分とは異質な変質部になると考えられる。このように部分的に変質部を有するガラスを、酸又はアルカリでエッチングすると、変質部におけるエッチングレートは、ガラスの他の部分におけるエッチングレートに比べて高い。なぜなら、変質部は、空乏な部分又は微小亀裂を有する部分であるからである。結果的に、変質部がより選択的にエッチングされ、貫通孔等の孔をガラスに形成できる。変質部が微小亀裂を有する部分である場合には、微小亀裂の開口から選択的にエッチングされ、亀裂の開口方向において大きな孔径を有する孔が形成される。これは、微小亀裂がレーザービームの進行方向に垂直な方向に生じる場合が多いからである。このため、ガラスに形成される孔を真円孔に近づけるためには、微小亀裂の大きさを小さくすることが望ましい。ガラスに照射されるレーザービームの径を小さくすることによって、微小亀裂の大きさを小さくできる。
例えば、一般的なガウシアンビームであるレーザービームを凸レンズで集光して数μmのスポット径に調節してガラスに照射することが考えられる。しかし、この場合には、ガラスの厚みが数百μm以上であると、焦点深度の観点から、ガラスにおけるレーザービームの広がりが影響して、変質部における亀裂の大きさが数十μm以上と大きい。その結果、この場合には、変質部をエッチングして形成された孔が楕円孔になりやすい。
一方、アキシコンレンズを備えた光学系を用いてレーザービームを集光すれば、ベッセルビームを形成できる。図2に示す通り、ガウシアンであるレーザービームがアキシコンレンズに入射すると、レーザービームの平面波が、光軸に沿って収束する円錐状の波面を有するビームとなって出射される。さらに、アキシコンレンズに近接した領域で、その円錐状の波面が重なる領域内(z=0〜zmax)にベッセルビームが形成される。ベッセルビームが形成された後方には、リング状のビームが形成される。ベッセルビームは、メインローブ及びサイドローブを有する。ベッセルビームは、メインローブにおいて光軸を中心に高い強度を示し、光軸から離れたサイドローブにおいて波状に変化する強度分布(サイドローブ)を示す。光軸方向においてベッセルビームが保たれる長さ(有効長さ)は、数mm〜数十mmでありうる。図2に示す通り、有効長さに相当する領域では、メインローブ及びサイドローブを有するベッセルビームが光軸に沿って連続的に存在する。なお、アキシコンレンズを透過後のビームの強度I(ρ,z)は、下記の式(1)で表され、ベッセルビームをなす同一強度の平面波で囲まれた錐の半頂角α0は、式(2)で表される。ρは光軸zからの半径方向の距離であり、Pはアキシコンレンズに入射したレーザーなどのガウシアンビームの全体のパワーであり、kは角波数であり、w0はガウシアンビームのビームウエストであり、zmax=w0cosα0/sinα0である。nはアキシコンレンズの屈折率であり、n0はアキシコンレンズの周囲の媒質の屈折率であり、τはアキシコンレンズの頂角である。
Figure 2019193918
Figure 2019193918
ベッセルビームのメインローブにおいて、光エネルギー密度が高い。このため、ベッセルビームが形成される領域にガラスの厚み方向の部分が含まれる又は重なるように、ベッセルビームのメインローブにガラスを配置すると、ベッセルビームが形成される領域に沿ってガラスに変質部が形成される。ベッセルビームが形成される領域では、その焦点深度が長いことにより、変換されたレーザービームのビーム径は、ガラスの厚み方向に数mmにわたって数μm以下でありうる。これにより、ガラスの厚みが数百μm以上であっても、変質部における亀裂の大きさが小さく、真円孔に近い孔をガラスに形成できる。アキシコンレンズの使用にはこのような利点がある。
図2に示す通り、ベッセルビームは、典型的には、アキシコンレンズの後方に隣接して形成される。このため、アキシコンレンズの後方に隣接して形成されるベッセルビームをガラスの変質部の形成に利用しようとすると、アキシコンレンズとガラスとの距離が近く、ガラスとアキシコンレンズとが接触するリスクが高い。このため、アキシコンレンズの後方に隣接して形成されるベッセルビームをガラスの変質部の形成に利用することは、実際の作業にいくつかの問題をもたらす。例えば、アキシコンレンズの先端とガラスとの不慮の接触又は衝突によりアキシコンレンズが破損すると、アキシコンレンズの光学特性が著しく劣化してしまう。その結果、ガラスの変質部を工業的に、安定的に形成することが難しい。そこで、アキシコンレンズなどの光学部品と、ベッセルビームが形成される領域との距離を長くすることが望ましい。本発明に係る加工装置及び加工方法によれば、アキシコンレンズ10から離れた領域に第二ベッセルビームが形成され、第二ベッセルビームを用いてガラスに変質部を形成できる。このため、アキシコンレンズとガラスとが接触するリスクが低い。
図1に示す通り、光学装置1aにおいて、例えば、第一レンズ群21、アキシコンレンズ10、及び第二レンズ群22がこの順番で光軸上に配置されている。例えば、第一レンズ群21は、略平行なビームである、レーザービームLBを収束させて収束ビームTBを形成する。アキシコンレンズ10は、第一レンズ群21の後方に配置されており、収束ビームTBが入射し、円錐状の波面を有するビームを出射させて、光軸上の所定の区間に第一ベッセルビームAを形成する。第二レンズ群22は、アキシコンレンズ10の後方に配置されている。加えて、第二レンズ群22は、リング状の第一リングビームBを発散させることなく、幅が略一定のリング状の第二リングビームCを形成する。光学装置1aにおいて、アキシコンレンズ10と第二レンズ群22との間で、第一ベッセルビームAが形成された領域の後方に、第一リングビームBが形成される。第一リングビームBは、アキシコンレンズ10と第二レンズ群22との間で、光軸zに垂直な方向において最小のリングの幅を示す焦点面fを有する。焦点面fは、アキシコンレンズ10と第二レンズ群22との間に形成される。第二リングビームCにおいて、光軸zに垂直な方向における幅bfが光軸zに沿って略一定である。光学装置1aにおいて、第二リングビームCが重なって、光軸上の所定の区間に第二ベッセルビームDが形成される。なお、レンズ群とは、本発明の作用効果を奏する限りにおいて、ビームや光線を、集光(凸レンズ作用)又は発散(凹レンズ作用)させる機能を有する光学要素であり、レンズ群は、一つのレンズ又は二以上のレンズからなる群でありうる。特に断りのない限り、レンズ群を構成するレンズは、光軸に対し軸対称なレンズであり、複数枚のレンズの組み合わせによりレンズ群が構成される場合には、それらのレンズの中心軸が一致するように配置される。
加工装置は、例えば、光学装置1aと、レーザービームLBを出射するためのレーザー発振器(図示省略)とを備えている。
ガラスと光(レーザー)との相互作用としては、一般的な光の吸収による発熱と、多光子吸収によるガラスの内部の分子結合の直接的な切断とが考えられる。前者は、通常の吸収率で議論できる。一方、後者の相互作用が生じる確率は低いので、後者の相互作用のためには、光子密度が高い状態、すなわち、高フルエンスの状態が必要である。例えば、図3に示す通り、アキシコンレンズに入射するレーザービームのビーム径が小さいほど、アキシコンレンズを透過したビームの光軸上の強度は高い。このため、ビーム径を小さくして、光子の空間密度を高めて高フルエンスの状態を実現することが考えられる。一方、図3に示す通り、アキシコンレンズに入射するレーザービームのビーム径が大きいほど、ベッセルビームが形成される領域の光軸方向における長さが長い。このため、アキシコンレンズを透過したビームの光軸上の強度とベッセルビームが形成される領域の光軸方向における長さとの両立を踏まえて、レーザービームのビーム径が決定される。なお、図3に示す通り、ベッセルビームが形成される領域の光軸方向における長さが長いと、エネルギーが光軸方向に分散する。このため、ベッセルビームが形成される領域において光軸上の強度を高く保つために、アキシコンレンズに入射するレーザービームのエネルギーを高めることが有効である。なお、図3において、rbはアキシコンレンズに入射するレーザービームの基準ビーム径を意味する。
高フルエンスの状態を実現するために、レーザービームのパルス幅を短くして光子の時間密度を高めることも望ましい。一方、光の吸収に伴う発熱によりガラスの内部で分子が活性化すると、多光子吸収がより発生しやすい状況になる。このため、ナノ秒のオーダーのパルス幅を有するレーザービームによっても多光子吸収を発生させることが可能である。
レーザー発振器により生成されるレーザービームLBは、例えば、下記の条件を満たす。これにより、ガラスに変質部を良好に形成できる。
波長:535nm以下(望ましくは、波長355nmを含む)
中心波長:300〜400nm(望ましくは355nm)
エネルギー:100μJ/パルス以上
パルス幅:1ナノ秒(ns)以上
ビーム径:0.5〜20mm(望ましくは、0.5〜10mm)
パルス数:1パルス
ビームモード:シングルモード
レーザービームLBのパルス幅は、望ましくは1〜200nsであり、より望ましくは1〜100nsであり、さらに望ましくは1〜50nsである。レーザービームLBのパルス幅が200nsより大きくなると、レーザーパルスの尖頭値が低下してしまい、ガラスの加工がうまくできない場合がある。レーザーパルスのビーム品質M2値は、例えば2以下であってもよい。M2値が2以下であるレーザーパルスを用いることによって、ガラスにおける微小な細孔又は微小な溝の形成が容易である。
上記(IIa)の工程では、レーザービームLBが、Nd:YAGレーザーの高調波、Nd:YVO4レーザーの高調波、又はNd:YLFレーザーの高調波であってもよい。高調波は、例えば、第2高調波、第3高調波又は第4高調波である。これらレーザーの第2高調波の波長は、532〜535nm近傍である。第3高調波の波長は、355〜357nm近傍である。第4高調波の波長は、266〜268nmの近傍である。これらのレーザーを用いることによって、ガラスを安価に加工できる。
レーザー発振器は、例えば、コヒレント社製の高繰返し固体パルスUVレーザー:AVIA355−4500である。このレーザー発振器では、第3高調波Nd:YVO4レーザーであり、繰返し周波数が25kHzの時に6W程度の最大のレーザーパワーが得られる。第3高調波の波長は350〜360nmである。
レーザービームLBの波長は、350〜360nmの範囲であってもよい。一方、レーザービームの波長が535nmよりも大きくなると、照射スポットが大きくなり、微小な構造の作製が困難になる上、熱の影響で照射スポットの周囲が割れやすくなる。
第一レンズ群21は、例えば、凸レンズと同様の光学的機能を有し、凸レンズの作用を発揮する単一のレンズから構成されていてもよい。この場合、第一レンズ群21は、レーザービームLBのビーム径よりも十分に大きい有効径を有してもよい。レーザー発振器により生成されたレーザービームLBは、そのビーム径が数mm程度の略平行ビームである。レーザービームLBのビーム径が十分に小さい場合、第一レンズ群21のパワーを適切に選択することで、第一レンズ群21が単一のレンズから構成されたときであっても、収束ビームTBにおいて発生する収差を、問題のないレベルまで小さくできる。なお、第一レンズ群21が単一のレンズであれば、複数のレンズによってレンズ群を構成する場合に発生しうる問題を避けることができる。その問題は、以下のようなものである。光学系の収差を補正するために、通常、異なる屈折率を有する複数のレンズを組み合わせてレンズ群を構成することが考えられる。しかし、レンズ群に入射するレーザービームが主に紫外線領域の波長を有する場合、利用可能なレンズの材料が限定され、レンズ群の設計における自由度が減少し、収差の補正が難しい。特に、レンズ群のパワーの向上に有利な高い屈折率を有するガラス材料は、紫外線領域において非常に低い透過率を示すので、レンズ群に用いることが難しい。レンズ群を構成するレンズのいずれかの面は非球面形状であってもよい。一般に、非球面形状の面を有するレンズは、球面形状又は平面で構成されたレンズより高度な設計の自由度を有し、収差の補正に有効である。また、レンズ又はレンズ群のパワーとは、光線を曲げることのできる程度を表し、レンズ又はレンズ群の有効焦点距離の逆数で表される。
第一レンズ群21は、先述のように、適正に収差補正された複数のレンズによって構成されていてもよい。レーザービームLBが大きな広がり角を有する発散ビーム又は収束ビームである場合には、光軸から離れた斜めの光線がレンズ群に入射するので収差が発生しやすい。そのような場合は、先述のように、有効径が十分に大きいレンズで第一レンズ群21を構成すること、又は、レンズの材料の屈折率や形状を考慮して複数のレンズで第一レンズ群21を構成することによって収差を低減することが望ましい。
アキシコンレンズ10は、円錐面を含み、その円錐面は、例えば、110〜160°の頂角を有する。図4に示す通り、アキシコンレンズの頂角τが大きいほど、光軸上で所定の強度が保たれる範囲の長さが長くなる。一方、図5に示す通り、アキシコンレンズの頂角τが小さいほど、アキシコンレンズを透過した光線の交差角度α0が大きくなり、メインローブの直径を1μm以下に小さくすることも可能である。アキシコンレンズ10の頂角が上記の範囲であれば、アキシコンレンズを透過後のレーザービームにおいて光軸上で所定の強度が保たれる範囲の長さと、ベッセルビームにおけるメインローブの径を所望の値に調節できる。本明細書において、ビーム径とは、光軸に垂直な平面において、ビームの最大強度の1/e2倍(13.5%)の強度の等強度線によって囲まれた領域の直径を意味する。
第二レンズ群22は、第一リングビームBを発散させることなく収束させて第二リングビームCを形成できる限り、特定のレンズに限定されない。第二レンズ群22は、例えば1つの凸レンズと同様の光学的機能を有し、凸レンズの作用を発揮できる単一のレンズから構成されてもよい。第二レンズ群22は、第一リングビームBを発散させないので、光学装置1aの光軸方向の全長を短くしやすい。図1に示す通り、第二レンズ群22には、光軸から離れた斜めの光線が入射するので、収差が発生しやすい。このため、場合によっては、第二レンズ群22は適正に収差が補正された低収差レンズであってもよく、第二レンズ群22は複数のレンズによって構成されていることも望ましい。例えば、第二レンズ群22としては、例えば同一形状の2つの平凸レンズ(光軸に対して軸対称であり、凸面とその凸面と反対方向を向いている平面を含むレンズ)を用いてもよい。この場合、第二レンズ群22において、2つの平凸レンズの中心軸が一致しており、かつ、凸面同士が対向している。これにより、第二レンズ群22を透過した光線に発生する収差を比較的容易に低減できる。第二レンズ群22を構成するレンズのいずれかの面は非球面形状であってもよい。一般に、非球面形状の面を有するレンズは、球面形状又は平面で構成されたレンズより高度な設計の自由度を有し、収差の補正に有効である。
本発明に係る加工方法は、望ましくは、下記の(Ie)の工程をさらに含む。
(Ie)光軸zに垂直な方向において第一リングビームB又は第二リングビームCの内側に存在する光線及び光軸zに垂直な方向において第一リングビームB又は第二リングビームCの外側に存在する光線の少なくとも一方を、アキシコンレンズ10と第二レンズ群22との間、又は、第二レンズ群22と第二ベッセルビームDとの間で遮蔽する。
本発明に係る方法は、より望ましくは、下記の(If)の工程をさらに含む。
(If)光軸zに垂直な方向において第一リングビームB又は第二リングビームCの内側に存在する光線を、アキシコンレンズ10と第二レンズ群22との間、又は、第二レンズ群22と第二ベッセルビームDとの間で遮蔽する。
本発明に係る加工方法は、例えば、下記の(Ig)の工程をさらに含んでいてもよい。
(Ig)光軸zに垂直な方向において第一リングビームB又は第二リングビームCの内側に存在する光線及び光軸zに垂直な方向において第一リングビームB又は第二リングビームCの外側に存在する光線を、アキシコンレンズ10と第二レンズ群22との間、又は、第二レンズ群22と第二ベッセルビームDとの間で遮蔽する。
光学装置1aは、例えば、遮蔽体25を備える。遮蔽体25は、アキシコンレンズ10と第二レンズ群22との間、又は、第二レンズ群22と第二ベッセルビームDとの間に配置される。遮蔽体25は、第一遮光部及び第二遮光部の少なくとも一方を有する。第一遮光部によって、第一リングビームB又は第二リングビームCの内側に存在する光線が遮蔽される。第二遮光部によって、光軸zに垂直な方向において第一リングビームB又は第二リングビームCの外側に存在する光線が遮蔽される。遮蔽体25は、望ましくは、第一遮光部を有し、第一リングビームB又は第二リングビームCの内側に存在する光線を遮蔽する。さらに、遮蔽体25は、第一遮光部及び第二遮光部を有していてもよい。この場合、遮蔽体25は、第一リングビームB又は第二リングビームCの内側に存在する光線及び第一リングビームB又は第二リングビームCの外側に存在する光線を遮蔽する。遮蔽体25は、例えば、板状の部材である。遮蔽体25は、望ましくは円板状の部材である。この場合、例えば、遮蔽体25の中心が光軸に略一致するように配置される。遮蔽体25はその中央に貫通孔を有していてもよい。遮蔽体25は、第一リングビームB又は第二リングビームCの内側及び外側に存在する光線を遮蔽するのに適した材料から形成されていてもよい。
アキシコンレンズ10は、望ましくは、その円錐面に先鋭な先端を有する。一方、アキシコンレンズの先端の加工の精密さには限界があり、アキシコンレンズの先端を完全に先鋭にすることは容易なことではない。アキシコンレンズの作製に用いられる機械又は工具は、有限の大きさを有するとともに所定の公差を有するので、極端に言えば、アキシコンレンズの先端と先端に近い部位が、理想的な錐形状から外れ、球面、平面、又は球面と平面が組み合わさった面になる可能性がある。
アキシコンレンズ10の先端が完全に先鋭でないと、第一ベッセルビームA及び第一リングビームBの形状が理想的な形状からずれる。図6Aに示す通り、アキシコンレンズの先端が先鋭であると、アキシコンレンズを透過した光線において明確なメインローブが認められる。一方、図6Bに示す通り、アキシコンレンズの先端が、先鋭でなく、球面状になっていたり、欠損などの欠陥を含む場合には、メインローブが不明確になる。これは、欠陥を含んだ先端部分によって不規則な屈折光が生じ、このような光線が不規則な干渉を起こすためである。アキシコンレンズの先端の形状の影響を受けた光の一部は、第一リングビームBの比較的内側に存在するので、第一リングビームBの内側に存在する光線を、第一リングビームBを収束させる前に遮蔽すれば、アキシコンレンズ10の先端が先鋭でないことによる影響が、第二ベッセルビームDに現れるのを防止できる。その結果、第二ベッセルビームDを適切に形成できる。
上記の(IIa)の工程で使用されるガラス(以下、レーザー加工用ガラスともいう)は、例えば、レーザービームLBの中心波長λcにおいて1〜50cm-1の吸収係数を有し、望ましくは中心波長λcにおいて3〜40cm-1の吸収係数を有する。このガラスは、望ましくは、300〜400nmの範囲の特定の波長において、1〜50cm-1の吸収係数を有し、より望ましくはこの特定の波長において、3〜40cm-1の吸収係数を有する。このようなガラスは、公知のガラスから選択できる。例えば、特許文献2又は3に記載されたガラスを(IIa)の工程で使用されるガラスとして選択できる。ガラスの吸収係数αは、厚さt(cm)のガラス基板の透過率及び反射率を測定することによって算出できる。厚さt(cm)のガラス基板について、所定の波長(波長535nm以下)における透過率T(%)と入射角12°における反射率R(%)とを分光光度計(例えば、日本分光株式会社製 紫外可視近赤分光光度計V−670)を用いて測定する。得られた測定値から以下の式(3)を用いて吸収係数αを算出できる。
α=(1/t)*ln{(100−R)/T} (3)
(IIa)の工程で使用されるガラスは、例えば板ガラスである。この場合、ガラスの厚みは、例えば2mm以下であり、0.1〜1.5mmでありうる。
上記の(IIa)の工程では、1度のレーザーパルス照射でガラスに変質部を形成することが可能である。例えば、上記の(IIa)の工程において、照射位置が重ならないようにレーザーパルスを照射することによって、ガラスに変質部を形成できる。ただし、照射位置が重なるようにレーザーパルスを照射してもよい。
上記の(IIa)の工程では、例えば、上記の光学装置1aを用いてガラスの内部に第二ベッセルビームが形成されるようにレーザーパルスが集光される。例えば、ガラス板に貫通孔を形成する場合には、通常、ガラス板の厚さ方向の中央付近に第二ベッセルビームが形成されるようにレーザーパルスを集光する。なお、ガラス板の上面側(レーザーパルスの入射側)のみを加工する場合には、例えば、ガラス板の上面側に第二ベッセルビームが形成されるように、光学系とガラスとの間隔を調整してもよい。逆に、ガラス板の下面側(レーザーパルスの入射側とは反対側)のみを加工する場合には、例えば、ガラス板の下面側に第二ベッセルビームが形成されるように、光学系とガラスとの間隔を調整してもよい。ただし、変質部が形成できる限り、レーザーパルスは、ガラスの外部に第二ベッセルビームが形成されるように集光されてもよい。
本発明に係るガラス物品の製造方法は、下記の(IIb)の工程をさらに含む。
(IIb)エッチングにより変質部の少なくとも一部を除去してガラスに孔を形成する。
(IIb)の工程において、典型的には、ウェットエッチングにより変質部の少なくとも一部が除去される。エッチング液において、典型的には、ガラスに対するエッチングレートよりも変質部に対するエッチングレートが大きい。エッチング液は、例えば、フッ酸(フッ化水素(HF)の水溶液)である。また、エッチング液は、硫酸(H2SO4)もしくはその水溶液、硝酸(HNO3)もしくはその水溶液、又は塩酸(塩化水素(HCl)の水溶液)であってもよい。エッチング液は、これらの中の1種の酸でもよく、2種以上の酸の混合物であってもよい。エッチング液がフッ酸である場合、変質部のエッチングが進みやすく、短時間に孔を形成できる。エッチング液が硫酸である場合、変質部以外のガラスがエッチングされにくく、テーパ角の小さいストレートな孔を形成できる。
(IIb)の工程において、板ガラスの片側のみからのエッチングを可能にするために、板ガラスの一方の主面に表面保護皮膜剤を塗布してもよい。このような表面保護皮膜剤としては、シリテクト−II(Trylaner International社製)等の市販品を使用できる。
エッチング時間あるいはエッチング液の温度は、変質部の形状あるいは目的とする加工形状に応じて選択される。なお、エッチング時のエッチング液の温度を高くすることによって、エッチング速度を高めることができる。また、エッチング条件によって、孔の直径を制御することが可能である。
エッチング時間は板ガラスの厚みにもよるので、特に限定されないが、30〜180分程度が好ましい。エッチング液の温度は、例えば、5〜45℃程度であり、15〜40℃程度であり得る。(IIb)の工程の期間中に、エッチング液の温度は、エッチングレートの調整のために変更可能である。必要に応じて、エッチング液に超音波を印加しながら、エッチングを行ってもよい。これにより、エッチングレートを大きくすることができるとともに、液の撹拌効果を期待できる。
レーザー加工用ガラスとしては、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、又はチタン含有シリケートガラスが好適である。さらに、これらのガラスのうち、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)を実質的に含んでいない無アルカリガラス又はアルカリ成分を微量だけ含んでいる低アルカリガラス等のガラスをレーザー加工用ガラスとして好適に使用できる。
上記の吸収係数をさらに効果的に高めるために、ガラスが、着色成分として、Bi、W、Mo、Ce、Co、Fe、Mn、Cr、V及びCuから選ばれる金属の酸化物を少なくとも1種含んでいてもよい。
ホウケイ酸ガラスとしては、コーニング社の#7059ガラス(組成は、質量%で表して、SiO2 49%、Al23 10%、B23 15%、RO(アルカリ土類金属酸化物)25%)又はパイレックス(登録商標)(ガラスコード7740)等が挙げられる。
アルミノシリケートガラスの第一の例は、以下のような組成を有してもよい。
質量%で表して、
SiO2 50〜70%、
Al23 14〜28%、
Na2O 1〜5%、
MgO 1〜13%、及び
ZnO 0〜14%、
を含むガラス組成物。
アルミノシリケートガラスの第二の例は、以下のような組成を有してもよい。
質量%で表して、
SiO2 56〜70%、
Al23 7〜17%、
23 0〜9%、
Li2O 4〜8%、
MgO 1〜11%、
ZnO 4〜12%、
TiO2 0〜2%、
Li2O+MgO+ZnO 14〜23%、
CaO+BaO 0〜3%、
を含むガラス組成物。
アルミノシリケートガラスの第三の例は、以下のような組成を有してもよい。
質量%で表して、
SiO2 58〜66%、
Al23 13〜19%、
Li2O 3〜4.5%、
Na2O 6〜13%、
2O 0〜5%、
2O 10〜18%(ただし、R2O=Li2O+Na2O+K2O)、
MgO 0〜3.5%、
CaO 1〜7%、
SrO 0〜2%、
BaO 0〜2%、
RO 2〜10%(ただし、RO=MgO+CaO+SrO+BaO)、
TiO2 0〜2%、
CeO2 0〜2%、
Fe23 0〜2%、
MnO 0〜1%(ただし、TiO2+CeO2+Fe23+MnO=0.01〜3%)、
SO3 0.05〜0.5%、
を含むガラス組成物。
アルミノシリケートガラスの第四の例は、以下のような組成を有してもよい。
質量%で表して、
SiO2 60〜70%、
Al23 5〜20%、
Li2O+Na2O+K2O 5〜25%、
Li2O 0〜1%、
Na2O 3〜18%、
2O 0〜9%、
MgO+CaO+SrO+BaO 5〜20%、
MgO 0〜10%、
CaO 1〜15%、
SrO 0〜4.5%、
BaO 0〜1%、
TiO2 0〜1%、
ZrO2 0〜1%、
を含むガラス組成物。
アルミノシリケートガラスの第五の例は、以下のような組成を有してもよい。
質量%で示して、
SiO2 59〜68%、
Al23 9.5〜15%、
Li2O 0〜1%、
Na2O 3〜18%、
2O 0〜3.5%、
MgO 0〜15%、
CaO 1〜15%、
SrO 0〜4.5%、
BaO 0〜1%、
TiO2 0〜2%、
ZrO2 1〜10%、
を含むガラス組成物。
ソーダライムガラスは、例えば板ガラスに広く用いられるガラス組成物である。
チタン含有シリケートガラスの第一の例は、以下のような組成を有してもよい。
モル%で表示して、
TiO2 5〜25%を含み、
SiO2+B23 50〜79%、
Al23+TiO2 5〜25%、
Li2O+Na2O+K2O+Rb2O+Cs2O+MgO+CaO+SrO+BaO 5〜20%、
であるガラス組成物。
また、上記のチタン含有シリケートガラスの第一の例において、
SiO2 60〜65%、
TiO2 12.5〜15%、
Na2O 12.5〜15%、を含み、
SiO2+B23 70〜75%、
であることが好ましい。
さらに、上記のチタン含有シリケートガラスの第一の例において、
(Al23+TiO2)/(Li2O+Na2O+K2O+Rb2O+Cs2O+MgO+CaO+SrO+BaO)≦0.9、
であることがより好ましい。
また、チタン含有シリケートガラスの第二の例は、以下のような組成を有してもよい。モル%で表示して、
23 10〜50%、
TiO2 25〜40%、を含み、
SiO2+B23 20〜50%、
Li2O+Na2O+K2O+Rb2O+Cs2O+MgO+CaO+SrO+BaO 10〜40%、
であるガラス組成物。
低アルカリガラスの第一の例は、以下のような組成を有してもよい。
モル%で表示して、
SiO2 45〜68%、
23 2〜20%、
Al23 3〜20%、
TiO2 0.1〜5.0%(但し5.0%は除く)、
ZnO 0〜9%、を含み、
Li2O+Na2O+K2O 0〜2.0%(但し2.0%は除く)であるガラス組成物。
また、上記の低アルカリガラスの第一の例において、着色成分として、
CeO2 0〜3%、
Fe23 0〜1%、
を含むことが好ましい。さらに実質的にアルカリ金属酸化物を含まない無アルカリガラスがより好ましい。
低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第一の例は、必須成分としてTiO2を含む。低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第一の例におけるTiO2の含有量は、0.1モル%以上5.0モル%未満であり、レーザー照射によって得られる孔内壁面の平滑性に優れる点から、望ましくは0.2〜4.0モル%であり、より望ましくは0.5〜3.5モル%であり、さらに望ましくは1.0〜3.5モル%である。特定の組成を有する低アルカリガラス又は無アルカリガラスにTiO2を適度に含ませることは、比較的弱いレーザー等のエネルギー照射によっても変質部を形成することを可能とし、さらにその変質部は後工程において超音波照射しながらエッチングを行うときにより容易に除去されうるという作用をもたらす。また、TiO2は結合エネルギーが紫外光のエネルギーと略一致しており、紫外光を吸収する。TiO2を適度に含ませることにより、電荷移動吸収として、他の着色剤との相互作用を利用して着色をコントロールすることも可能である。従ってTiO2の含有量の調整により、所定の光に対する吸収を適度なものにすることができる。ガラスが適切な吸収係数を有することによって、エッチングによって孔が形成される変質部の形成が容易になるため、これらの観点からも、適度にTiO2を含ませることが好ましい。
また、低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第一の例はZnOを任意成分として含んでいてもよい。この場合、ZnOの含有量は、望ましくは0〜9.0モル%であり、より望ましくは1.0〜8.0モル%であり、さらに望ましくは1.5〜5.0モル%であり、特に望ましくは1.5〜3.5モル%である。ZnOは、TiO2と同様に紫外光の領域に吸収を示す成分であり、レーザー加工用ガラスにZnOが含まれていればガラスに対して有効な作用をもたらす。
低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第一の例は、着色成分としてCeO2を含有していてもよい。特にCeO2をTiO2と併用することによって、変質部をより容易に形成できる。低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第一の例におけるCeO2の含有量は、望ましくは0〜3.0モル%であり、より望ましくは0.05〜2.5モル%であり、さらに望ましくは0.1〜2.0モル%であり、特に望ましくは0.2〜0.9モル%である。
Fe23もレーザー加工用ガラスにおける着色成分として有効であり、レーザー加工用ガラスはFe23を含有していてもよい。特に、TiO2とFe23とを併用すること、又は、TiO2と、CeO2と、Fe23とを併用することにより、変質部の形成が容易になる。低アルカリガラス又は無アルカリガラスにおけるFe23の含有量は、望ましくは0〜1.0モル%であり、より望ましくは0.008〜0.7モル%であり、さらに望ましくは0.01〜0.4モル%であり、特に望ましくは0.02〜0.3モル%である。
低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第一の例において、以上に挙げた成分に限られるものではないが、適度な着色成分の含有によりガラスの所定波長(波長535nm以下)の吸収係数が1〜50cm-1、好ましくは3〜40cm-1になるようにしてもよい。
また、低アルカリガラスの第二の例は、以下のような組成を有してもよい。
モル%で表示して、
SiO2 45〜70%、
23 2〜20%、
Al23 3〜20%、
CuO 0.1〜2.0%、
TiO2 0〜15.0%、
ZnO 0〜9.0%、
Li2O+Na2O+K2O 0〜2.0%(但し2.0%は除く)であるガラス組成物。
さらに実質的にアルカリ金属酸化物を含まない無アルカリガラスがより好ましい。
低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第二の例は、低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第一の例と同様にTiO2を含んでいてもよい。低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第二の例におけるTiO2の含有量は、0〜15.0モル%であり、レーザー照射によって得られる孔内壁面の平滑性に優れる点から、望ましくは0〜10.0モル%であり、より望ましくは1〜10.0モル%であり、さらに望ましくは1.0〜9.0モル%であり、特に望ましくは1.0〜5.0モル%である。
また、低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第二の例はZnOを含んでいてもよい。低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第二の例におけるZnOの含有量は0〜9.0モル%であり、望ましくは1.0〜9.0モル%であり、より望ましくは1.0〜7.0モル%である。ZnOは、TiO2と同様に紫外光の領域に吸収を示す成分であるので、ZnOが含まれていればレーザー加工用ガラスに対して有効な作用をもたらす。
さらに、低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第二の例は、CuOを含む。低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第二の例におけるCuOの含有量は、望ましくは0.1〜2.0モル%であり、より望ましくは0.15〜1.9モル%であり、さらに望ましくは0.18〜1.8モル%であり、特に望ましくは0.2〜1.6モル%である。低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第二の例がCuOを含有していることにより、ガラスに着色が生じ、所定のレーザーの波長における吸収係数を適切な範囲に調節でき、照射レーザーのエネルギーを適切に吸収させることができる。その結果、孔形成の基礎となる変質部を容易に形成できる。
低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第二の例において、以上に挙げた成分に限られるものではないが、適度な着色成分の含有によりガラスの所定波長(波長535nm以下)の吸収係数が1〜50cm-1、望ましくは3〜40cm-1になるようにしてもよい。
低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第一の例及び第二の例はMgOを任意成分として含んでいてもよい。MgOはアルカリ土類金属酸化物の中でも、熱膨張係数の増大を抑制し、かつ、歪点を過大には低下させないという特徴を有し、溶解性も向上させる。低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第一の例及び第二の例におけるMgOの含有量は、望ましくは15.0モル%以下であり、より望ましくは12.0モル%以下であり、さらに望ましくは10.0モル%以下であり、特に望ましくは9.5モル%以下である。また、低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第一の例及び第二の例におけるMgOの含有量は、望ましくは2.0モル%以上であり、より望ましくは3.0モル%以上であり、さらに望ましくは4.0モル%以上であり、特に望ましくは4.5モル%以上である。
低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第一の例及び第二の例はCaOを任意成分として含んでいてもよい。CaOは、MgOと同様に、熱膨張係数の増大を抑制し、かつ、歪点を過大には低下させないという特徴を有し、溶解性も向上させる。低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第一の例及び第二の例におけるCaOの含有量は、望ましくは15.0モル%以下であり、より望ましくは12.0モル%以下であり、さらに望ましくは10.0モル%以下であり、特に望ましくは9.3モル%以下である。また、低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第一の例及び第二の例におけるCaOの含有量は、望ましくは1.0モル%以上であり、より望ましくは2.0モル%以上であり、さらに望ましくは3.0モル%以上であり、特に望ましくは3.5モル%以上である。
低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第一の例及び第二の例はSrOを任意成分として含んでいてもよい。SrOはMgO及びCaOと同様に、熱膨張係数の増大を抑制し、かつ、歪点を過大には低下させないという特徴を有し、溶解性も向上させるので、失透特性と耐酸性の改善のためにはレーザー加工用ガラスに含有させてもよい。低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第一の例及び第二の例におけるSrOの含有量は、望ましくは15.0モル%以下であり、より望ましくは12.0モル%以下であり、さらに望ましくは10.0モル%以下であり、特に望ましくは9.3モル%以下である。また、低アルカリガラス又は無アルカリガラスの上記の第一の例及び第二の例におけるSrOの含有量は、望ましくは1.0モル%以上であり、より望ましくは2.0モル%以上であり、さらに望ましくは3.0モル%以上であり、特に望ましくは3.5モル%以上である。
本明細書において、ある成分を「実質的に含有しない」とは、ガラスにおける当該成分の含有量が、0.1モル%未満、望ましくは0.05モル%未満、より望ましくは0.01モル%以下であることを意味する。なお、本明細書において、数値範囲(各成分の含有量、各成分から算出される値及び各物性等)の上限値及び下限値は適宜組み合わせ可能である。
レーザー加工用ガラスの熱膨張係数は、望ましくは100×10-7/℃以下であり、より望ましくは70×10-7/℃以下であり、さらに望ましくは60×10-7/℃以下であり、特に望ましくは50×10-7/℃以下である。また、レーザー加工用ガラスの熱膨張係数の下限は特に限定されないが、例えば10×10-7/℃以上であり、20×10-7/℃以上であってもよい。
レーザー加工用ガラスの熱膨張係数は、例えば以下のように測定する。まず、直径5mm、高さ18mmの円柱形状のガラス試料を作製する。これを25℃からガラス試料の降伏点まで加温し、各温度におけるガラス試料の伸びを測定することにより、熱膨張係数を算出する。50〜350℃の範囲の熱膨張係数の平均値を計算し、平均熱膨張係数を決定できる。
上記の(IIa)の工程では、いわゆる感光性ガラスを用いる必要はなく、加工できるガラスの範囲が広い。すなわち、上記の(IIa)の工程では、金又は銀を実質的に含まないガラスを加工できる。
特に剛性の高いガラスは、レーザー照射した際に、ガラスの上面と下面のどちらにおいても割れを発生しづらく、上記の(IIa)の工程において好適に加工できる。このため、レーザー加工用ガラスのヤング率は、望ましくは80GPa以上である。
以上に挙げたガラスについては、市販されている場合もあり、それらを購入して入手することができる。またそうでない場合であっても、公知の成形方法(例えば、オーバーフロー法、フロート法、スリットドロー法、キャスティング法等)で所望のガラスを作製することができ、さらに切断や研磨等の後加工によって目的の形状のガラス組成物を得ることができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されない。
<実施例1>
図7に示す実施例1に係る光学装置1bにおいて、波長355nm、ビーム径が5mmの平行光のレーザービームを入射させたときの光線追跡シミュレーションを行った。光学装置1bは、第一レンズ群21a、アキシコンレンズ10a、及び第二レンズ群22aを有する。第一レンズ群21a、アキシコンレンズ10a、及び第二レンズ群22aは、それらの中心軸がビームの光軸に一致し、かつ、ビームの進行方向にこの順番で配置されている。第一レンズ群21aは、厚さがゼロで、無収差の理想レンズL(21a−1)からなり、その有効焦点距離EFL(21a−1)は32.54mmである。アキシコンレンズ10aは、頂角τが160°である円錐面と、その円錐面と反対方向を向いている平面とを含み、アキシコンレンズ10aの中心厚みCT(10a)は2.0mmとし、アキシコンレンズ10aの媒質の屈折率は1.476である。アキシコンレンズ10aは、その平面にビームが入射するように向けられて配置されている。レンズL(21a−1)からなる第一レンズ群21aと、アキシコンレンズ10aとの間隔d(11)は2.0mmである。第二レンズ群22aは、厚さがゼロで、無収差の理想レンズL(22a−1)からなり、その有効焦点距離EFL(22a−1)は7.81mmである。アキシコンレンズ10aと、レンズL(22a−1)との距離d(12)は35.9mmである。光学装置1bにおいて、平行なレーザービームが第一レンズ群21aを透過して収束光となり、この収束光が、アキシコンレンズ10aに入射し、円錐状の波面を有するビームが出射する。光学装置1bは、アキシコンレンズ10aの後方に、円錐状の波面が重なる範囲において第一ベッセルビームを形成する。さらに、ビームは、第一ベッセルビームの後方において、第一リングビームとなって発散しつつ、第二レンズ群22aに至る前に、リングの幅が最小となる焦点面を形成する。第一リングビームが、第二レンズ群22aに入射し、光軸に垂直な方向における幅が光軸に沿って略一定であって、光軸に向かって収束する第二リングビームが出射する。第二レンズ群22aの後方において、レンズL(22a−1)からなる第二レンズ群22aからd(13)=10mmだけ離れた光軸上の点を略始点とした一定の区間に、第二ベッセルビームが形成される。第二ベッセルビームが形成される領域は、第二リングビーム(の波面)が重なる領域内である。レンズL(22a−1)からなる第二レンズ群22aと、上記ベッセルビームが形成された領域の光軸方向の略始点との距離d(13)は、加工に供されるガラス等の表面を光学装置1bによる最終的なビームの出射面に近接できる最短の距離であり、ワーキングディスタンスWD(1)に相当する。光学装置1bの光軸上の全長(レンズL(21a−1)からレンズL(22a−1)までの光軸上の距離)にワーキングディスタンスWD(1)を加えた長さは、49.9mmとなる。第二ベッセルビームが形成される領域に、その厚み方向の部分が含まれる又は重なるように板状のガラスを配置することによって、ガラス内部に変質部を形成することが可能となる。
<実施例2>
図8に示す実施例2に係る光学装置1cにおいて、波長355nm、ビーム径が2.5mmの平行光のレーザービームを入射させたときの光線追跡シミュレーションを行った。光学装置1cは、第一レンズ群21b、アキシコンレンズ10b、及び第二レンズ群22bを有する。第一レンズ群21b、アキシコンレンズ10b、及び第二レンズ群22bは、それらの中心軸がビームの光軸に一致し、かつ、ビームの進行方向にこの順番で配置されている。第一レンズ群21bは、レンズL(21b−1)、レンズL(21b−2)、及びレンズL(21b−3)から構成されており、これらのレンズはビームの進行方向にこの順番で配置されている。レンズL(21b−1)の中心厚みCT(21b−1)は1.0mmであり、レンズL(21b−1)の媒質の屈折率は1.476であり、レンズL(21b−1)は球面形状からなる凹面とその凹面と反対方向を向いている平面とを含む。レンズL(21b−1)は、その凹面にビームが入射し、かつ、その平面からビームが出射するような向きで配置されている。レンズL(21b−1)の凹面の球面の曲率半径は、−5.00mmである。レンズL(21b−2)の中心厚みCT(21b−2)は4.0mmであり、レンズL(21b−2)の媒質の屈折率は1.476であり、レンズL(21b−2)は球面形状からなる凸面とその凸面と反対方向を向いている平面とを含む。レンズL(21b−2)は、その平面にレンズL(21b−1)からのビームが入射し、かつ、その凸面からビームが出射するような向きで配置されている。レンズL(21b−1)とレンズL(21b−2)との間隔d(21)は38.00mmである。レンズL(21b−2)の凸面の球面の曲率半径は−24.33mmである。レンズL(21b−3)の中心厚みCT(21b−3)は4.0mmであり、レンズL(21b−3)の媒質の屈折率は1.476であり、レンズL(21b−3)は、球面形状からなる凸面とその凸面と反対方向を向いている平面とを含む。レンズL(21b−3)は、その凸面にレンズ(21b−2)からのビームが入射し、かつ、その平面からビームが出射するような向きで配置されている。レンズL(21b−2)とレンズL(21b−3)との間隔d(22)は0mmである。レンズL(21b−2)とレンズL(21b−3)とは、それらの凸面同士が対向し、かつ、凸面の頂点が接触するように配置されている。レンズL(21b−3)の凸面の球面の曲率半径は24.33mmである。レンズL(21b−2)とレンズL(21b−3)とは同一の形状である。図8に示す通り、第一レンズ群21bは、ビームエクスパンダのように、レーザービームのビーム径を拡大し、かつ、ビームを収束させる機能を有する。
アキシコンレンズ10bは、頂角τが140°である円錐面と、その円錐面と反対方向を向いている平面とを含み、アキシコンレンズ10bの中心厚みCT(10b)は5.0mmであり、アキシコンレンズ10bの媒質の屈折率は1.476である。アキシコンレンズ10bは、その平面に第一レンズ群21bからのビームが入射し、かつ、その円錐面からビームが出射するような向きで配置されている。第一レンズ群21bのレンズ(21b−3)と、アキシコンレンズ10bとの間隔d(23)は2.0mmである。
第二レンズ群22bは、レンズL(22b−1)及びレンズL(22b−2)から構成され、これらのレンズがビームの進行方向にこの順番で配置されている。レンズL(22b−1)の中心厚みCT(22b−1)は5.0mmであり、レンズL(22b−1)の媒質の屈折率は1.476であり、レンズL(22b−1)は、球面形状からなる凸面とその凸面と反対方向を向いている平面とを含む。レンズL(22b−1)は、その平面にアキシコンレンズ10bからのビームが入射し、かつ、その凸面からビームが出射するような向きで配置されている。アキシコンレンズ10bとレンズL(22b−1)との間隔d(24)は36.96mmである。レンズL(22b−1)の凸面の球面の曲率半径は−14.25mmである。レンズL(22b−2)の中心厚みCT(22b−2)は5.0mmであり、レンズL(22b−2)の媒質の屈折率は1.476であり、レンズL(22b−2)は、凸面とその凸面と反対方向を向いている平面とを含む。レンズL(22b−2)は、その凸面にレンズL(22b−1)からのビームが入射し、かつ、その平面からビームが出射するような向きで配置されている。レンズL(22b−1)とレンズL(22b−2)との間隔d(25)は0mmである。レンズL(22b−1)とレンズL(22b−2)とは、それらの凸面同士が対向し、かつ、凸面の頂点が接触するように配置されている。レンズL(22b−2)の凸面の球面の曲率半径は14.25mmである。レンズL(22b−1)とレンズL(22b−2)とは同一の形状である。光学装置1cにおいて、平行なレーザービームが第一レンズ群21bを透過して、そのレーザービームのビーム径が拡大されて、かつ、収束光となり、その収束光が、アキシコンレンズ10bに入射し、円錐状の波面を有するビームが出射する。光学装置1cは、アキシコンレンズ10bの後方に、円錐状の波面が重なる範囲において第一ベッセルビームを形成する。さらに、ビームは、第一ベッセルビームの後方において、第一リングビームとなって発散しつつ、第二レンズ群22bに至る前に、リングの幅が最小になる焦点面を形成する。第一リングビームは、第二レンズ群22bに入射し、光軸に垂直な方向における幅が光軸に沿って略一定であって、光軸に向かって収束する第二リングビームが出射する。第二レンズ群22bの後方において、レンズL(22b−2)からd(26)=18mmだけ離れた光軸上の点を略始点とした一定の区間に、第二ベッセルビームが形成される。第二ベッセルビームが形成される領域は、第二リングビーム(の波面)が重なる領域内であった。d(26)はワーキングディスタンスWD(2)に相当し、光学装置1cの光軸上の全長と、ワーキングディスタンスWD(2)を加えた長さは、118.96mmとなる。第二ベッセルビームが形成される領域に、その厚み方向の部分が含まれる又は重なるように板状のガラスを配置することによって、ガラス内部に変質部を形成することが可能である。
<比較例1>
図9に示す比較例1に係る光学装置100において、ワーキングディスタンスが実施例1と同等になるように、各光学要素のパラメータを検討しつつ、波長355nm、ビーム径が5.0mmの平行光のレーザービームを入射させたときの光線追跡のシミュレーションを行った。光学装置100は、アキシコンレンズ110、第一レンズ群121、及び第二レンズ群122を有し、アキシコンレンズ110、第一レンズ群121、及び第二レンズ群122は、それらの中心軸がビームの光軸に一致し、かつ、ビームの進行方向にこの順番で光軸に沿って配置されている。アキシコンレンズ110は、頂角τが160°である円錐面と、その円錐面と反対方向を向いている平面とを含み、アキシコンレンズ110の中心厚みCT(110)は2.0mmであり、アキシコンレンズ110の媒質の屈折率は1.476である。アキシコンレンズ110は、その平面にビームが入射し、かつ、その円錐面からビームが出射するような向きで配置されている。第一レンズ群121は、厚さがゼロで、無収差の理想レンズL(121−1)からなり、その有効焦点距離EFL(121−1)は35.68mmである。アキシコンレンズ110と、レンズL(121−1)からなる第一レンズ群121との間隔d(121)は、47.48mmである。第二レンズ群122は、厚さがゼロで、無収差の理想レンズL(122−1)からなり、その有効焦点距離EFL(122−1)は10.00mmである。レンズL(121−1)からなる第一レンズ群121と、レンズL(122−1)からなる第二レンズ群122との間隔d(122)は、有効焦点距離EFL(121−1)と有効焦点距離EFL(122−1)との和の45.68mmである。光学装置100において、平行なレーザービームがアキシコンレンズ110に入射し、円錐状の波面を有するビームが出射する。光学装置100は、アキシコンレンズ110の後方に円錐状の波面が重なる範囲において、第一ベッセルビームを形成する。さらに、ビームは、第一ベッセルビームの後方において、第一リングビームとなって発散する。第一リングビームは第一レンズ群121に入射し、第二リングビームが出射する。さらに、第二リングビームにおいて、第一レンズ群121の後方にリングの幅が最小となる焦点面が形成される。第二リングビームは、第二レンズ群122に入射し、光軸に垂直な方向における幅が光軸に沿って略一定であって、光軸に向かって収束する第三リングビームが出射する。第二レンズ群122の後方において、レンズL(122−1)からd(123)=10mmだけ離れた光軸上の点を略始点とした一定の区間に、第二ベッセルビームが形成される。第二ベッセルビームが形成される領域は、第三リングビーム(の波面)が重なる領域内である。第二レンズ群122と、上記のベッセルビームが形成された領域の光軸方向の略始点との距離d(123)は、ワーキングディスタンスWD(21)に相当する。光学装置100の光軸上の全長(アキシコンレンズ110から第二レンズ群122までの光軸上の距離)にワーキングディスタンスWD(21)を加えた長さは、105.16mmとなる。第二ベッセルビームが形成される領域に、その厚み方向の部分が含まれる又は重なるように板状のガラスを配置することによって、ガラス内部に変質部を形成することが可能である。なお、比較例1において、レーザービームが透過する最終の光学系である第2レンズ群122との配置上の関係から、アキシコンレンズ110の後方に配置されているレンズ群について、第一レンズ群121と称した。
<実施例3>
図10に示す実施例3に係る光学装置1dに波長355nmのガウシアンレーザービームを入射させたときの電界振幅をシミュレーションした。ビーム中心での最大強度の1/e2倍(13.5%)の強度となる直径は2.5mmとした。このシミュレーションには、米国のSynopsys社製の電磁波伝搬解析ソフト(BeamPROP”Version 6.0.3)を用いた。光学装置1dは、第一レンズ群21c、アキシコンレンズ10c、及び第二レンズ群22cを有し、第一レンズ群21c、アキシコンレンズ10c、及び第二レンズ群22cが、それらの中心軸がビームの光軸に一致し、かつ、ビームの進行方向にこの順番で配置されている。光学装置1d及び後述の光学装置1eによるビームのふるまいは、以下の点において、実施例1に係る光学装置1bによるビームのふるまいと同様であった。第一レンズ群21cによって収束光が形成され、その収束光が、アキシコンレンズ10cに入射して、その後方に第一ベッセルビーム、第一リングビーム、及び焦点面を形成し、第一リングビームが、第二レンズ群22cに入射し、その後方に第二リングビーム及び第二ベッセルビームを形成する。
第一レンズ群21cは、レンズL(21c−1)からなる。レンズL(21c−1)の中心厚みCT(21c−1)は3.33mmであり、レンズL(21c−1)の媒質の屈折率は1.476であり、レンズL(21c−1)は互いに反対方向を向いている球面形状からなる2つの凸面を含む。レンズL(21c−1)のいずれの凸面においても、その凸面の球面の曲率半径の絶対値は31.57mmである。レンズL(21c−1)は、一方の凸面からビームが入射されるように配置されている。シミュレーション上の原点と、レンズL(21c−1)との間隔d(31)は0.69mmである。アキシコンレンズ10cは、頂角τが140°である円錐面と、その円錐面と反対方向を向いている平面とを含み、アキシコンレンズ10cの中心厚みCT(10c)は4.18mmであり、アキシコンレンズ10cの媒質の屈折率は1.476である。アキシコンレンズ10cは、その平面にレンズL(21c−1)からのビームが入射し、かつ、その円錐面からビームが出射するような向きで配置されている。レンズL(21c−1)とアキシコンレンズ10cとの間隔d(32)は7.42mmである。シミュレーション上の原点からアキシコンレンズ10cの先端までの距離z1は15.62mmである。
第二レンズ群22cは、レンズL(22c−1)及びレンズL(22c−2)から構成され、これらのレンズがビームの進行方向にこの順番で配置されている。レンズL(22c−1)の中心厚みCT(22c−1)は3.60mmであり、レンズL(22c−1)の媒質の屈折率は1.476であり、レンズL(22c−1)は、球面形状である凸面とその凸面と反対方向を向いている平面とを含む。レンズL(22c−1)は、その平面にアキシコンレンズ10cからのビームが入射し、かつ、その凸面からビームが出射するような向きで配置されている。アキシコンレンズ10cとレンズL(22c−1)との間隔d(33)は26.38mmである。レンズL(22c−1)の凸面の球面の曲率半径は−13.75mmである。レンズL(22c−2)の中心厚みCT(22c−2)は3.60mmであり、レンズL(22c−2)の媒質の屈折率は1.476であり、レンズL(22c−2)は、球面形状である凸面とその凸面と反対方向を向いている平面とを含む。レンズL(22c−2)は、その凸面にレンズL(22c−1)からのビームが入射し、かつ、その平面からビームが出射するような向きで配置されている。レンズL(22c−1)とレンズL(22c−2)との間隔d(34)は0mmである。レンズL(22c−1)とレンズL(22c−2)とは、それらの凸面同士が対向し、かつ、凸面の頂点が接触するように配置されている。レンズL(22c−2)の凸面の球面の曲率半径は13.75mmである。レンズL(22c−1)とレンズL(22c−2)とは同一の形状である。原点から、第二レンズ群22cのレンズL(22c−2)の出射面までの距離z2は、49.20mmである。第二レンズ群22cの後方のベッセルビームが形成される領域及びその領域の近傍の光軸上の電界振幅のシミュレーション結果を図13Aに示す。加えて、その領域及びその領域の近傍における光軸と垂直な方向の電界振幅のシミュレーション結果を図13Bに示す。電界振幅の二乗値が光強度に対応する。
<実施例4>
図11に示す実施例4に係る光学装置1eに波長355nmのガウシアンレーザービームを入射させたときの電界振幅をシミュレーションした。実施例4におけるシミュレーションの条件は、特に説明する場合を除き、実施例3のシミュレーションの条件と同一であった。また、図11において、光学エレメント及び距離を示す符号には、アキシコンレンズ10d及び遮蔽体25を除き、図10に示す実施例3に係る光学装置1dの符号と同一のものを用いるものとする。光学装置1eにおいて、アキシコンレンズ10dの先端は、図12Aに示す球面状である。図12Aにおいて、α=20°、W=0.2mm、及びR=0.2924mmとした。加えて、図11に示す通り、第二レンズ群22cのレンズL(22c−1)の入射側平面に、厚みが十分に薄い板状の遮蔽体25を接触させて配置する。遮蔽体25は、8.8mmの直径及び10μmの厚みを有する円板であり、遮蔽体25の軸線は光軸上に位置しており、遮蔽体25は半径方向において第一リングビームの内側を通過する光を遮蔽する。遮蔽体25の複素屈折率は、3.136+3.3121iとした。この複素屈折率は、シミュレーションによる光線追跡において、遮蔽体25に入射する光線があった場合に遮蔽体25によって充分に遮蔽されるように定めたものである。光学装置1eにおいて、第二レンズ群22cの後方のベッセルビームが形成される領域及びその近傍の光軸上の電界振幅のシミュレーション結果を図14Aに示す。加えて、その領域及びその近傍における光軸と垂直な方向の電界振幅のシミュレーション結果を図14Bに示す。
<実施例5>
アキシコンレンズ10dの先端の形状を図12Bに示すアキシコンレンズ10eの形状に変更した以外は、実施例4と同様にしてシミュレーションを行った。図12Bにおいて、α=20°、W=0.2mm、及びR=0.1462mmとした。この場合に、第二レンズ群22cの後方のベッセルビームが形成される領域及びその領域の近傍の光軸上の電界振幅のシミュレーション結果を図15Aに示す。加えて、その領域及びその近傍における光軸と垂直な方向の電界振幅のシミュレーション結果を図15Bに示す。
<比較例2>
遮蔽体25を配置しなかったこと以外は、実施例4と同一の条件でシミュレーションを行った。この場合に、第二レンズ群22cの後方のベッセルビームが形成される領域及びその近傍の光軸上の電界振幅のシミュレーション結果を図16Aに示す。加えて、その領域及びその近傍における光軸と垂直な方向の電界振幅のシミュレーション結果を図16Bに示す。
<比較例3>
遮蔽体25を配置しなかったこと以外は、実施例5と同一の条件でシミュレーションを行った。この場合に、第二レンズ群22cの後方のベッセルビームが形成される領域及びその近傍の光軸上の電界振幅のシミュレーション結果を図17Aに示す。加えて、その領域及びその近傍における光軸と垂直な方向の電界振幅のシミュレーション結果を図17Bに示す。
(その他の実施形態)
図18は、実施例3をさらに発展させた、その他の実施形態に係る光学装置1fを示す。光学装置1fに係る光学系は、各レンズ群とアキシコンレンズの仕様及び配置の点で実施例3に係る光学系1dと同一であるが、光軸上にいずれも板状の遮蔽体26a、26b、26c、及び26dをさらに備えるものである。遮蔽体26a、26b、26c、及び26dは、リングビームの光路以外の部分を略遮蔽するように配置されている。光学装置1fによるビームや光線のふるまいを考察するにあたり、入射するビーム径をここでは5mmと仮定した。これは、強度がピーク強度の1/e2倍に対応するビーム径(2.5mm)よりさらに外側にも広がるビーム径を考慮するためである。遮蔽体26aは、アキシコンレンズの先端から17.3mm離れた位置に配置されている。この位置は、第1リングビームの幅が最も小さくなる焦点面の光軸上の位置に相当する。図19Aに示す通り、遮蔽体26aは、透過部27a及び遮光部28aを有する。透過部27aは、第一リングビームが透過可能なリング状の部位であり、遮光部28aは、半径方向において透過部27aの内側の透過部27aと同心の円状の部位である第一遮光部28a1と、半径方向において透過部27aの外側の透過部27aと同心のリング状の部位を含む部位である第二遮光部28a2とを含む。第一遮光部28a1は、半径方向において第一リングビームの内側を通過する光線を遮蔽し、第二遮光部28a2は、半径方向において第一リングビームの外側を通過する光線を遮蔽する。遮蔽体26aが配置される位置(焦点面)における第1リングビームの直径は6.3mmである。透過部27aの内径は、例えば、6.0mmであり、透過部27aの外径は、例えば、6.6mmである。ここで、透過部とは、その部位において、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上の透過率を示す部位をいう。また、遮光部とは、その部位において、10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは0.5%以下の透過率を示す部位をいう。遮光の効果を最大とするためには、透過部の幅をリングビームの幅と一致させればよい。しかしながら、両者を完全に一致させる設計とすれば、製作時の誤差によってリングビームの一部が遮光されてしまう可能性が大きい。そこで、透過部の幅は誤差を見越して、ある程度余裕を持たせた大きさとするのが好ましい。
遮蔽体26bは、アキシコンレンズの先端から23.0mm離れた位置に配置されている。図19Bに示す通り、遮蔽体26bは、透過部27b及び遮光部28bを有する。透過部27bは、第一リングビームが透過可能な部位であり、遮光部28bは、半径方向において透過部27bの内側の透過部27bと同心の円状の部位である第一遮光部28b1を含む。第一遮光部28b1は、半径方向において第一リングビームの内側を通過する光線を遮蔽する。遮蔽体26bが配置される位置における第一リングビームは、内径が8.38mmであり、外径が9.34mmである。透過部27bの内径は、例えば、8.0mmであり、透過部27bの外径は特に制限されない。光軸より遠く離れた位置を通過する光線等は、例えば光学系を一体化するための筐体等により遮蔽されるように構成されてもよい。
遮蔽体26cは、第2レンズ群22cのレンズL(22c−1)の入射面に配置されている。遮蔽体26cは、透過部27c及び遮光部28cを有する。透過部27cは、第一リングビームが透過可能なリング状の部位であり、遮光部28cは、半径方向において透過部27cの内側の透過部27cと同心の円状の部位である第一遮光部28c1と、半径方向において透過部27cの外側の透過部27cと同心のリング状の部位である第二遮光部28c2とを含む。第一遮光部28c1は、半径方向において第一リングビームの内側を通過する光線を遮蔽し、第二遮光部28c2は、半径方向において第一リングビームの外側を通過する光線を遮蔽する。遮蔽体26cが配置される位置における第一リングビームは、内径が9.61mmであり、外径が11.2mmである。透過部27cの内径は、例えば、9.4mmであり、透過部27cの外径は、例えば、11.6mmである。
遮蔽体26dは、レンズL(22c−2)の出射面から5.0mm離れた位置に配置されている。遮蔽体26dは、透過部27d及び遮光部28dを有する。透過部27dは、第二リングビームが透過可能なリング状の部位であり、遮光部28dは、半径方向において透過部27dの内側の透過部27dと同心の円状の部位である第一遮光部28d1と、半径方向において透過部27dの外側の透過部27dと同心のリング状の部位を含む部位である第二遮光部28d2とを含む。第一遮光部28d1は、半径方向において第二リングビームの内側を通過する光線を遮蔽し、第二遮光部28d2は、半径方向において第二リングビームの外側を通過する光線を遮蔽する。遮蔽体26dが配置される位置における第二リングビームは、内径が7.56mmであり、外径が9.69mmである。透過部27dの内径は、例えば7.3mmであり、透過部27dの外径は、例えば10.0mmである。第二リングビームが生じた領域に、遮蔽体26dを設けることによって、実質的なワーキングディスタンスが短くなるが、光学系の組み立てや調整が容易になる。
遮蔽体26a、26b、26c、及び26dとして、波長355nmの光に対して高い透過率を示す石英ガラス等の基板上に、透過部となることが予定されている部位を除いて、金属薄膜などの遮蔽性の層を形成したものを用いることができる。さらに、遮蔽体26a、26b、及び26dは、それぞれ、図20A、図20B、及び図20Cに示すように、薄い遮蔽性の板を細い支持体29a、29b、及び29d等で一体化したものでもよい。この場合は、例え僅かであったとしても、基板による吸収や屈折の作用を排除することができる。遮蔽体26cは、レンズL(22c−1)の面上に直接形成してもよい。さらに、遮蔽体26a、26b、26c、及び26dのいずれか一つ以上のものを選択して光学系が構成されてもよい。さらに、遮蔽体26a、26c、及び26dは、それぞれ独立に第二遮光部を含まないものであってもよい。ここで、第二遮光部を含まないとは、その該当部分が透過部と同等程度に光を透過させることを意味する。すなわち、第二遮光部を含まない遮蔽体とは、外形に制限のない透過部と、第一遮光部と、を含むものである。
実施例1と比較例1とを比較する。実施例1と比較例1は、ビーム径が同じレーザービームと同じアキシコンレンズを用いたことに留意する。実施例1において、10mmのワーキングディスタンスWD(1)を得るために必要な光学装置の全長(第一レンズ群21aから第二レンズ群22aまでの距離)は39.9mmであり、一方、比較例1において、同じ10mmのワーキングディスタンスWD(21)を得るために必要な光学装置の全長(アキシコンレンズ110から第二レンズ群122までの距離)は95.16mmである。図9から明らかであるように、比較例1に係る光学装置100においては、アキシコンレンズ110と第一レンズ群121との中間部分でのリングビームの直径が、基本的に増大している。その後方に続く第一レンズ群121と第二レンズ群122の中間部分では、リングビームの径は、ほぼ一定である。両レンズ群の中間にリングビームの焦点を形成するためには、両レンズ群の間隔を長くする必要があり、その間隔は、両レンズ群の焦点距離の和に等しくなる。一方、実施例1に係る光学装置1bにおいては、アキシコンレンズ10aと第二レンズ群22aとの中間部分でのリングビームの直径が基本的に増大していて、この部分の長さは比較例1の「リングビーム増大領域」と大差がない。ところが「リングビームの直径がほぼ一定となる領域」は存在しない。その結果として、実施例1に係る光学装置1bの全長は比較例1に係る光学装置100よりも、はるかに短くなる。
実施例1に係る光学装置1b及び比較例1に係る光学装置100のそれぞれは、2つのレンズ群を有している。実施例1に係る光学装置1bにおいて、第一レンズ群21aに入射するビームのビーム径は比較的小さい。一方、比較例1に係る光学装置100において、第一レンズ群121には、アキシコンレンズを透過後のリングビームを透過させる必要がある。このため、必然的に、第一レンズ群121に入射するビームの最大径が大きく、かつ、そのビームが光軸に対して傾く。このため、第一レンズ群121には、第一レンズ群21aに要求される収差を補正する性能に比べて高いレベルの収差を補正する性能が要求される。例えば、実施例1に係る光学装置1bにおいて、第一レンズ群21aには、レーザー光源から出射したビーム径の小さい略平行光が入射するので、収差の発生を抑制することのできる性能を実現しやすい。一方、比較例1に係る光学装置100の第一レンズ群121には、開口数(NA)の大きいビームが入射する。このため、第一レンズ群121が単一のレンズから構成される場合、球面収差等の収差の補正が困難であると考えられる。
実施例2に係る光学装置1cにおいて、アキシコンレンズ10bに入射するビームのビーム径が比較的大きい。このため、実施例2に係る光学装置1cの全長(100.96mm)は、実施例1に係る光学装置1bの全長よりも長い。代わりに、実施例2に係る光学装置1cにおいて、実施例1に係る光学装置1bに比べてより長いワーキングディスタンス(WD(2)=18mm)を実現できる。図3にも示す通り、アキシコンレンズに入射するレーザービームを大きくすることにより、光軸方向においてベッセルビームが保たれる長さを長くできるということが示されている。
実施例3〜5と、比較例2及び3とを比較する。実施例3において、アキシコンレンズ10cの円錐面の先端は先鋭であり、一方、比較例2及び3において、アキシコンレンズの先端は丸みを帯び先鋭ではなかった。図13Aと、図16A及び図17Aとを比較すると、比較例2及び3における光軸上の電界振幅の分布は、実施例3における光軸上の電界振幅の分布に比べて光軸に沿って不規則に変化している。光の強度は電界振幅の二乗値に対応するので、電界振幅の状態は光強度の状態とみなすことができる。このため、比較例2及び3において、光軸上の光強度が不規則に変化すると理解される。比較例2及び3においてアキシコンレンズの先端が先鋭でないことが、光軸上の電界振幅の不規則な変化、ひいては光軸上の光強度の不規則な変化に影響していると考えられる。比較例2及び3のように光学装置においてアキシコンレンズの先端が先鋭でないと、その光学装置を透過したビームを板ガラス等の加工対象に照射して加工対象の内部に変質部を形成するプロセスにより得られる製品の品質が安定しにくいと考えられる。なぜなら、そのような光学装置によって加工対象に照射されたレーザービームにおいて光軸上のレーザービームの光強度がばらつき、均一な変質部の形成に不利な影響がもたらされると考えられるからである。
実施例4及び5において、比較例2及び3と同様に、アキシコンレンズの先端が丸みを帯び先鋭ではなかった。しかし、実施例4及び5において遮蔽体25が配置されている。実施例4及び5において、図14A及び図15Aに示す通り、比較例2及び3で見られたような光軸上の電界振幅の不規則な変化は、ほとんど見られなかった。特に、電界振幅が最大となる、原点からの距離zが79mm±1mmの範囲において、比較例2及び3で見られたような光軸上の電界振幅の不規則な変化が見られなかった。その他の実施形態における特徴は、板状の遮蔽体26a、26b、26c、及び26dから選択される一又は複数の遮蔽体が光軸上に配置されていることである。これによって、光軸上の電界振幅の不規則な変化をもたらす光線をカットする性能をさらに効果的に得られることが示唆される。遮蔽体26a、26c、及び26dは、先述のようにリングビームが透過可能なリング状の部位である透過部と、半径方向において透過部の内側の透過部と同心の円状の部位である第一遮光部と、透過部の外側の透過部と同心のリング状の部位を含む部位からなる第二遮光部を含む。遮蔽体26bは、透過部と、半径方向において透過部の内側の透過部と同心の円状の部位である第一遮光部を含む。また、遮蔽体26a、26c、及び26dは、第二遮光部を含まないものであってもよい。その場合の遮蔽体による作用効果は次のように考えられる。先述のように、先端の先鋭度が劣化したアキシコンレンズから出射される一部の光が、リングビームの外側に存在した等の場合であって、第二遮光部に該当する部位をそれらの光が通過して、第二レンズ群のさらに後方まで到達したときを考える。そのような光は、第一及び第二リングビームの外側を進むため、第二ベッセルビームが形成される領域に到達する蓋然性が低く、第二ベッセルビームを形成するうえでその影響が小さいと考えられるからである。遮蔽体26bは第二遮光部をそもそも有しない。対照的に、リングビームの内側を通過する光が存在する場合には、比較例2及び3で示したように、透過部の内側を第一遮光部によって遮蔽しなければ、第二ベッセルビームの形成するうえで、軸上の電界振幅の不規則な変化をはじめとした影響が大きくなる。また、遮蔽体に第二遮光部がない場合に、光軸より離れた光路をとる光は、光学系を一体化もしくは支持するための筐体等の内部の面に到達する場合も多く、吸収等によりその光の強度が減衰する蓋然性が高い。従って、その他の実施形態に係る遮蔽体においては、遮光部のうち、リングビームの内側を通過する光を遮蔽するための第一遮光部を形成することが望ましく、リングビームの外側を通過する光を遮蔽するための第二遮光部を形成することがより望ましい形態であるということができる。
比較例2及び3では、アキシコンレンズの先端が先鋭ではなかったことにより、リングビームの形成に寄与しない光線が光軸に近い領域を進み、光軸上の電界振幅の不規則な変化に影響を与えたと考えられる。アキシコンレンズの先端は円錐形状なので、先述のように、精度良く研磨するためには高度の技術が必要である。従って、たとえば先端にわずかな丸みが残る製品を不良品として除外すると、歩留りが低下して製造コストが高くなる。また、先端にはレーザービームのエネルギーが集中するので、使用中に温度差などによる応力集中が起こり、クラック及び欠けが発生することも考えられる。さらに、不用意な衝突による破損の可能性もある。アキシコンレンズの先端に丸み、クラック、欠けなどの欠陥があると、その部分を通過する光線の方向は、アキシコンレンズの先端が完全な円錐形状の場合とは異なるので、リングビーム又はベッセルビームの形成に寄与しない不規則な光が生じる。ベッセルビームの形成された領域にこのような不規則な光の一部が到達すると、ランダムな干渉等が発生して、形成されたベッセルビームの分布に乱れが生じてしまう。このため、実施例4及び5のように、リングビームの形成に寄与しない光線の伝搬を遮蔽することにより、第二ベッセルビームが形成される領域における電界振幅の不規則な変化を防止できると考えられる。なお、本発明における実施例ではアキシコンレンズの平面が前方、円錐面が後方になるように配置している。そのため、第一ベッセルビームは空気中に形成される。アキシコンレンズを逆向きにして用いることも可能であるが、その場合は第一ベッセルビームがレンズの中に形成されるので、ガラス材料と光エネルギーが相互作用を起こして劣化などの原因となることが懸念される。
実施例1〜5又はその他の実施形態に係る光学装置のいずれかを用いて、第二ベッセルビームを上記のガラスに照射すれば、微小亀裂が小さい変質部を形成できると考えられる。

Claims (16)

  1. レーザービームが入射する第一レンズ群と、
    前記第一レンズ群を透過した前記レーザービームが入射するアキシコンレンズと、
    前記アキシコンレンズを透過した前記レーザービームが入射する第二レンズ群と、を備え、
    前記第一レンズ群は、前記アキシコンレンズの後方に第一ベッセルビームを形成するとともに前記第一ベッセルビームの後方に第一リングビームを形成し、かつ、光軸に垂直な方向に前記第一リングビームのリング幅が最小となる焦点面を形成し、
    前記第二レンズ群は、前記第一リングビームを入射させ、前記第二レンズ群の後方に前記光軸に垂直な方向におけるリング幅が前記光軸に沿って略一定である第二リングビームを形成するとともに、前記第二リングビームの後方に第二ベッセルビームを形成する、
    レーザービームを用いた加工のための光学装置。
  2. 前記第一レンズ群、前記アキシコンレンズ、及び前記第二レンズ群がこの順番で前記光軸上に配置されており、前記焦点面は、前記アキシコンレンズと前記第二レンズ群との間に形成される、請求項1に記載の光学装置。
  3. 前記アキシコンレンズと前記第二レンズ群との間、又は、前記第二レンズ群と前記第二ベッセルビームとの間に配置され、前記光軸に垂直な方向において前記第一リングビーム又は前記第二リングビームの内側に存在する光線を遮蔽する第一遮光部及び前記光軸に垂直な方向において前記第一リングビーム又は前記第二リングビームの外側に存在する光線を遮蔽する第二遮光部の少なくとも一方を有する、遮蔽体をさらに備えた、請求項1又は2に記載の光学装置。
  4. 前記遮蔽体は、前記第一遮光部を有する、請求項3に記載の光学装置。
  5. 前記遮蔽体は、前記第一遮光部及び前記第二遮光部を有する、請求項3又は4に記載の光学装置。
  6. 第一レンズ群にレーザービームを入射させることと、
    前記第一レンズ群を透過した前記レーザービームをアキシコンレンズに入射させることと、
    前記第一レンズ群によって、前記アキシコンレンズの後方に第一ベッセルビームを形成するとともに前記第一ベッセルビームの後方に第一リングビームを形成し、かつ、光軸に垂直な方向に前記第一リングビームのリング幅が最小となる焦点面を形成することと、
    第二レンズ群に前記第一リングビームを入射させて、前記第二レンズ群の後方に前記光軸に垂直な方向におけるリング幅が前記光軸に沿って略一定である第二リングビームを形成するとともに、前記第二リングビームの後方に第二ベッセルビームを形成することと、を含む、
    レーザービームを用いた加工方法。
  7. 前記第一レンズ群、前記アキシコンレンズ、及び前記第二レンズ群がこの順番で前記光軸上に配置されており、前記焦点面は、前記アキシコンレンズと前記第二レンズ群との間に形成される、請求項6に記載の方法。
  8. 前記光軸に垂直な方向において前記第一リングビーム又は前記第二リングビームの内側に存在する光線及び前記光軸に垂直な方向において前記第一リングビーム又は前記第二リングビームの外側に存在する光線の少なくとも一方を、前記アキシコンレンズと前記第二レンズ群との間、又は、前記第二レンズ群と前記第二ベッセルビームとの間で遮蔽することをさらに含む、請求項6又は7に記載の方法。
  9. 前記光軸に垂直な方向において前記第一リングビーム又は前記第二リングビームの内側に存在する光線を、前記アキシコンレンズと前記第二レンズ群との間、又は、前記第二レンズ群と前記第二ベッセルビームとの間で遮蔽することを含む、請求項8に記載の方法。
  10. 前記光軸に垂直な方向において前記第一リングビーム又は前記第二リングビームの内側に存在する光線及び前記光軸に垂直な方向において前記第一リングビーム又は前記第二リングビームの外側に存在する光線を、前記アキシコンレンズと前記第二レンズ群との間、又は、前記第二レンズ群と前記第二ベッセルビームとの間で遮蔽することを含む、請求項8又は9に記載の方法。
  11. 第一レンズ群にレーザービームを入射させることと、
    前記第一レンズ群を透過した前記レーザービームをアキシコンレンズに入射させることと、
    前記第一レンズ群によって、前記アキシコンレンズの後方に第一ベッセルビームを形成するとともに前記第一ベッセルビームの後方に第一リングビームを形成し、かつ、光軸に垂直な方向に前記第一リングビームのリング幅が最小となる焦点面を形成することと、
    第二レンズ群に前記第一リングビームを入射させて、前記第二レンズ群の後方に前記光軸に垂直な方向におけるリング幅が前記光軸に沿って略一定である第二リングビームを形成するとともに、前記第二リングビームの後方に第二ベッセルビームを形成することと、
    前記第二ベッセルビームをガラスに照射して前記ガラスに変質部を形成することと、を含む、
    ガラス物品の製造方法。
  12. 前記第一レンズ群、前記アキシコンレンズ、及び前記第二レンズ群がこの順番で光軸上に配置されており、前記焦点面は、アキシコンレンズと第二レンズ群との間に形成される、請求項11に記載の方法。
  13. 前記光軸に垂直な方向において前記第一リングビーム又は前記第二リングビームの内側に存在する光線及び前記光軸に垂直な方向において前記第一リングビーム又は前記第二リングビームの外側に存在する光線の少なくとも一方を、前記アキシコンレンズと前記第二レンズ群との間、又は、前記第二レンズ群と前記第二ベッセルビームとの間で遮蔽することをさらに含む、請求項11又は12に記載の方法。
  14. 前記光軸に垂直な方向において前記第一リングビーム又は前記第二リングビームの内側に存在する光線を、前記アキシコンレンズと前記第二レンズ群との間、又は、前記第二レンズ群と前記第二ベッセルビームとの間で遮蔽することを含む、請求項13に記載の方法。
  15. 前記光軸に垂直な方向において前記第一リングビーム又は前記第二リングビームの内側に存在する光線及び前記光軸に垂直な方向において前記第一リングビーム又は前記第二リングビームの外側に存在する光線を、前記アキシコンレンズと前記第二レンズ群との間、又は、前記第二レンズ群と前記第二ベッセルビームとの間で遮蔽することをさらに含む、請求項13又は14に記載の方法。
  16. エッチングにより前記変質部の少なくとも一部を除去して前記ガラスに孔を形成することをさらに含む、請求項11〜15のいずれか1項に記載の方法。
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