JPWO2019189547A1 - 正浸透膜およびその用途 - Google Patents

正浸透膜およびその用途 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2019189547A1
JPWO2019189547A1 JP2020509304A JP2020509304A JPWO2019189547A1 JP WO2019189547 A1 JPWO2019189547 A1 JP WO2019189547A1 JP 2020509304 A JP2020509304 A JP 2020509304A JP 2020509304 A JP2020509304 A JP 2020509304A JP WO2019189547 A1 JPWO2019189547 A1 JP WO2019189547A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin
forward osmosis
osmosis membrane
structural unit
membrane
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2020509304A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6944044B2 (ja
Inventor
田原 修二
田原  修二
丸子 展弘
展弘 丸子
ホキョン ショーン
ホキョン ショーン
シュラブ フンチョー
シュラブ フンチョー
ジュン ユン キム
ジュン ユン キム
スンギル リム
スンギル リム
バン ヒュイ トゥラン
バン ヒュイ トゥラン
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsui Chemicals Inc
Original Assignee
Mitsui Chemicals Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsui Chemicals Inc filed Critical Mitsui Chemicals Inc
Publication of JPWO2019189547A1 publication Critical patent/JPWO2019189547A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6944044B2 publication Critical patent/JP6944044B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D71/00Semi-permeable membranes for separation processes or apparatus characterised by the material; Manufacturing processes specially adapted therefor
    • B01D71/06Organic material
    • B01D71/52Polyethers
    • B01D71/522Aromatic polyethers
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D61/00Processes of separation using semi-permeable membranes, e.g. dialysis, osmosis or ultrafiltration; Apparatus, accessories or auxiliary operations specially adapted therefor
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D69/00Semi-permeable membranes for separation processes or apparatus characterised by their form, structure or properties; Manufacturing processes specially adapted therefor
    • B01D69/02Semi-permeable membranes for separation processes or apparatus characterised by their form, structure or properties; Manufacturing processes specially adapted therefor characterised by their properties
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D69/00Semi-permeable membranes for separation processes or apparatus characterised by their form, structure or properties; Manufacturing processes specially adapted therefor
    • B01D69/12Composite membranes; Ultra-thin membranes
    • B01D69/1213Laminated layers
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G65/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming an ether link in the main chain of the macromolecule
    • C08G65/34Macromolecular compounds obtained by reactions forming an ether link in the main chain of the macromolecule from hydroxy compounds or their metallic derivatives
    • C08G65/38Macromolecular compounds obtained by reactions forming an ether link in the main chain of the macromolecule from hydroxy compounds or their metallic derivatives derived from phenols
    • C08G65/40Macromolecular compounds obtained by reactions forming an ether link in the main chain of the macromolecule from hydroxy compounds or their metallic derivatives derived from phenols from phenols (I) and other compounds (II), e.g. OH-Ar-OH + X-Ar-X, where X is halogen atom, i.e. leaving group

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Water Supply & Treatment (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Separation Using Semi-Permeable Membranes (AREA)
  • Polyethers (AREA)

Abstract

半透膜と、その少なくとも一方の面に配置された多孔質基材とを備える正浸透膜であり、前記半透膜が、プロトン酸基含有構造単位を有する芳香族ポリエーテル樹脂(A)を含んでなり、前記樹脂(A)が、プロトン酸基含有芳香族ポリエーテル樹脂(A1)と、前記樹脂(A1)よりもプロトン酸基含有構造単位のモル分率が大きいプロトン酸基含有芳香族ポリエーテル樹脂(A2)とを少なくとも含む、正浸透膜。

Description

本発明は、正浸透膜およびその用途に関する。
半透膜は、液体混合物あるいは気体混合物から所定の成分を選択的に分離するために有用であり、たとえば高純度水の製造や、溶液中から特定の溶質を分離する際に好適に用いられる。
半透膜を利用した膜分離法である逆浸透法と正浸透法のうち、従来主流である逆浸透法においては逆浸透膜が高圧に曝される。したがって、逆浸透膜としては、高強度を得るために、多孔質支持体(たとえば不織布)、多孔質ポリマー層(たとえばポリスルホン層)、および実際に半透膜として機能する層(スキン層、分離層などともいう。)をこの順に積層してなる複合半透膜が主流である。
これに対して、正浸透法は、正浸透膜によって隔てられた溶質濃度の異なる水溶液間に生じる浸透圧を駆動力として、低塩濃度のフィード溶液側(たとえば淡水)から高塩濃度のドロー溶液側(たとえば海水)へと水が移動する。このため、逆浸透法のような浸透圧に打ち勝つための高圧付与や膜強度を必要とせず、省エネルギー性に優れる、浸透膜の構成をシンプルに出来る、等の利点が期待できる。
しかしながら、正浸透法では透過流束が小さいことが問題とされており(たとえば特許文献1)、正浸透膜を用いて農業用水や浄水用途のように用水を大量に処理するにあたっては、低塩濃度側から高塩濃度側へのさらなる透過流束の改善が求められている。
特開2014−213262号公報
本発明者らの検討によれば、フィード溶液からの水透過流束が大きい正浸透膜はドロー溶液からの塩の逆拡散量が大きくなる傾向にあった。また水透過流束当たりの塩の逆拡散量が必ずしも低いとは言えないレベルであることが分かってきた。したがって従来の正浸透膜には、高い水透過性と高い塩阻止率を両立させる視点で、さらなる改善の余地があると言えた。
本発明者らの検討によれば、プロトン酸基を有する構造単位(プロトン酸基含有構造単位)のモル分率が異なるプロトン酸基含有芳香族ポリエーテル樹脂を少なくとも2種含む半透膜を用いることによって、水透過性が高く、塩阻止率が高い正浸透膜を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の[1]〜[15]に関する。
[1]半透膜と、その少なくとも一方の面に配置された多孔質基材とを備える正浸透膜であり、前記半透膜が、プロトン酸基含有構造単位を有する芳香族ポリエーテル樹脂(A)を含んでなり、前記樹脂(A)が、プロトン酸基含有芳香族ポリエーテル樹脂(A1)と、前記樹脂(A1)よりもプロトン酸基含有構造単位のモル分率が大きいプロトン酸基含有芳香族ポリエーテル樹脂(A2)とを少なくとも含む、正浸透膜。
[2]前記半透膜が、前記樹脂(A1)および(A2)を少なくとも含む混合物から形成されている前記[1]に記載の正浸透膜。
[3]前記半透膜が、前記樹脂(A1)および(A2)のそれぞれに対応する少なくとも2つの相に分離した構造を有する前記[2]に記載の正浸透膜。
[4]前記半透膜において、前記樹脂(A)に由来するプロトン酸基の濃度が前記半透膜の厚さ方向において勾配を有する前記[1]に記載の正浸透膜。
[5]前記半透膜が、前記樹脂(A1)を含有する層(L1)と、前記樹脂(A2)を含有する層(L2)とを有する前記[4]に記載の正浸透膜。
[6]前記樹脂(A1)および(A2)が、それぞれ、下式(1)で表される構造単位(1)および下式(2)で表される構造単位(2)を有し、前記樹脂(A2)は、前記構造単位(1)および前記構造単位(2)の合計量に対する前記構造単位(1)のモル分率が、前記樹脂(A1)よりも大きい前記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の正浸透膜。
Figure 2019189547
[式(1)および(2)において、
1〜R10は、それぞれ独立して、H、Cl、F、CF3またはCm2m+1(mは1〜10の整数を示す。)であり、
1〜R10の少なくとも1つはCm2m+1(mは1〜10の整数を示す。)であり、
1〜R10は、それぞれ芳香環に2つ以上存在してもよく、1つの芳香環にCm2m+1が2つ以上存在する場合には、各Cm2m+1は互いに同一であっても異なっていてもよい。
1〜X5は、それぞれ独立して、H、Cl、F、CF3またはプロトン酸基であり、
1〜X5の少なくとも1つはプロトン酸基であり、
1〜X5は、それぞれ芳香環に2つ以上存在してもよく、1つの芳香環にプロトン酸基が2つ以上存在する場合には、各プロトン酸基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
1〜A6は、それぞれ独立して、直接結合、−CH2−、−C(CH32−、−C(CF32−、−O−または−CO−である。
i,j,kおよびlは、それぞれ独立して、0または1を示す。]
[7]前記樹脂(A)全体において、前記構造単位(1)および前記構造単位(2)の合計量に対する前記構造単位(1)のモル分率が、0.1〜0.9である前記[6]に記載の正浸透膜。
[8]前記樹脂(A1)および(A2)において、それぞれの、前記構造単位(1)および前記構造単位(2)の合計量に対する前記構造単位(1)のモル分率の差の絶対値が0.03〜0.6である前記[6]または[7]に記載の正浸透膜。
[9]前記芳香族ポリエーテル樹脂(A)の重量平均分子量が、70,000以上である前記[1]〜[8]のいずれか一項に記載の正浸透膜。
[10]前記半透膜の厚さが、3.0μm以下である前記[1]〜[9]のいずれか一項に記載の正浸透膜。
[11]前記半透膜と、その両面に配置された前記多孔質基材とを有する前記[1]〜[10]のいずれか一項に記載の正浸透膜。
[12]前記多孔質基材が、JIS L 1096記載のA法(フラジール形法)で測定される100〜400cm3/cm2/sの通気度、および50〜700μmの厚さを有する前記[1]〜[11]のいずれか一項に記載の正浸透膜。
[13]前記[1]〜[12]のいずれか一項に記載の正浸透膜およびスペーサーを備える正浸透膜エレメント。
[14]前記[13]に記載の正浸透膜エレメントを容器に収容してなる正浸透膜モジュール。
[15]前記[14]に記載の正浸透膜モジュール、および前記正浸透膜モジュールが備える前記正浸透膜の一方の面にフィード溶液を、もう一方の面に前記フィード溶液よりも溶質濃度が高いドロー溶液を流すための駆動ポンプを有し、前記フィード溶液に含まれる水を、前記正浸透膜を通して前記ドロー溶液へ移動させることのできるように構成されたシステム。
本発明によれば、水透過性および塩阻止率のバランスに優れた正浸透膜、具体的には水透過性が高く、塩阻止率が高い正浸透膜を提供することができる。
図1は、実施例で正浸透膜の分離性能の評価に用いた装置の概略図である。
以下、本発明について具体的に説明する。
[正浸透膜]
本発明の正浸透膜は、半透膜と、その少なくとも一方の面に配置された多孔質基材とを備える。ここで、前記半透膜は、プロトン酸基含有構造単位を有する芳香族ポリエーテル樹脂(A)を含んでなる。
本発明の正浸透膜は、前記半透膜と、その少なくとも一方の面に配置された前記多孔質基材とを備えており、高い水透過流束および高い塩阻止率を実現することができる。
<半透膜>
前記半透膜は、プロトン酸基含有構造単位を有する芳香族ポリエーテル樹脂(A)を含んでなり、前記樹脂(A)は、プロトン酸基含有芳香族ポリエーテル樹脂(A1)と、前記樹脂(A1)よりもプロトン酸基含有構造単位のモル分率が大きいプロトン酸基含有芳香族ポリエーテル樹脂(A2)とを少なくとも含む。以下、前記樹脂(A)、(A1)および(A2)を、それぞれ単に「樹脂(A)」、「樹脂(A1)」および「樹脂(A2)」ともいう。
本発明において、プロトン酸基とは、プロトンを放出しやすい官能基またはその水素原子がNaまたはKで置換されたものを意味し、その例としては、スルホン酸基(−SO3H)、カルボン酸基(−COOH)、ホスホン酸基(−PO32)、アルキルスルホン酸基(−(CH2nSO3H)、アルキルカルボン酸基(−(CH2nCOOH)、アルキルホスホン酸基(−(CH2nPO32)、ヒドロキシフェニル基(−C64OH)およびこれらの末端水素原子がNaまたはKで置換されたものが挙げられる。nは1〜10の整数である。
プロトン酸基含有構造単位のモル分率とは、以下の比:プロトン酸基含有構造単位数/前記芳香族ポリエーテル樹脂を構成する全構造単位数である。また、プロトン酸基含有構造単位としては、たとえば、後述する式(1)で表される構造単位(1)が挙げられる。
本発明では、このようにプロトン酸基含有構造単位のモル分率が異なる芳香族ポリエーテル樹脂を少なくとも2種用いているので、プロトン酸基含有構造単位のモル分率が大きい前記樹脂(A2)により水透過性が向上するとともに、プロトン酸基含有構造単位のモル分率が小さい前記樹脂(A1)により塩の逆拡散を阻止することができる。
特に、前記樹脂(A1)と前記樹脂(A2)とがいずれも芳香族ポリエーテル樹脂であるので、これらの分散が良好と考えられる。この為、緻密で多段階の疑似的な(A1)/(A2)単位の連続層を形成していると考えられるので、水透過特性と塩の逆拡散抑制の効果を効率的に発揮させられるのであろう。
一実施態様において、前記半透膜は、樹脂(A)に由来するプロトン酸基の濃度が、前記半透膜の厚さ方向において勾配を有することが好ましい。濃度勾配は、連続的に濃度が上昇する態様でもよく、階段状に濃度が上昇する態様であってもよい。その一例としては、たとえば、前記半透膜が、樹脂(A1)を含有する層(L1)と、樹脂(A2)を含有する層(L2)とを有する積層膜であることが挙げられる。層(L1)と層(L2)との厚さの比率(L1の厚さ:L2の厚さ)は、通常5:95〜80:20、好ましくは20:80〜60:40である。このような多層構造により、より高い水透過流束および塩阻止率が得られる。
この態様は、前記の(A1)/(A2)単位の構成の効果をより確実に発言させる観点で好ましい態様であると言えよう。
ここで樹脂(A)に由来するプロトン酸基の濃度勾配とは、樹脂(A)に含まれるプロトン酸基濃度が、半透膜の厚さ方向において変化することを指す。プロトン酸基がスルホン基やその末端水素原子がNaまたはKで置換された基であるときには、元素マッピングにより半透膜断面における硫黄原子の濃度分布を解析することにより、前記濃度勾配を確認できる。
ここで、正浸透膜の使用時には、前記半透膜において、プロトン酸基濃度が大きい側がフィード溶液側を向き、プロトン酸基濃度が小さい側がドロー溶液側を向くように、正浸透膜を配置することが好ましい。たとえば、前記半透膜において樹脂(A2)を含有する層(L2)がフィード溶液側を向き、樹脂(A1)を含有する層(L1)がドロー溶液側を向くように、正浸透膜を配置することが好ましい。このような態様であると、より高い水透過流束および塩阻止率が得られる。
一実施態様において、前記半透膜は、樹脂(A1)および樹脂(A2)を少なくとも含む混合物から形成されていることが好ましい。その一例として、前記半透膜は、樹脂(A1)および樹脂(A2)のそれぞれに対応する少なくとも2つの相に分離した構造を有する。この相分離構造により、より高い水透過流束および塩阻止率が得られる。前記混合物において、樹脂(A1)と樹脂(A2)との質量比率(A1:A2)は、通常10:90〜90:10、好ましくは30:70〜70:30である。
このような相分離構造は、電子顕微鏡(TEMまたはSEM)観察により確認することができる。相分離構造としては、海島構造、相互侵入構造等が考えられるが、ドロー溶液からの塩の逆拡散を阻止する観点から、相互侵入構造が更に好ましい。また、海島構造の場合は、プロトン酸基含有構造単位のモル分率が小さい樹脂(A1)が海相を形成し、前記モル分率が大きい樹脂(A2)が島相を形成することが好ましい。
本発明では、芳香族ポリエーテル樹脂(A)を原料として用いた半透膜が自立膜として製造可能であり、この半透膜と多孔質基材とを積層することによって、水透過性が高く、塩阻止率が高い正浸透膜を得ることができる。
前記半透膜は、実質的に芳香族ポリエーテル樹脂(A)のみからなるが、他の成分を本発明の効果を損なわない程度に少量(たとえば、1質量%以下、または0.1質量%以下)含んでいてもよい。
前記半透膜の厚さは、通常3.0μm以下、好ましくは0.01〜3.0μm、より好ましくは0.01〜1.5μmである。前記厚さがこの範囲内にある半透膜を用いた正浸透膜は、十分な膜強度を有し、かつ実用上十分大きな水の透過流束を示す。前記半透膜の厚さは、半透膜の製造条件、たとえばプレス成形時の温度や圧力、キャスト時のワニス濃度や塗布厚などにより制御することができる。
前記半透膜は、厚みのムラが出来るだけ少ないことが好ましい。前記半透膜には、水透過の際に圧力がかかる為、厚みのムラがあると、応力集中が起こる場合がある。この為、水分離膜として用いる場合、膜としての耐久性が低下する場合がある。
(芳香族ポリエーテル樹脂(A))
前記半透膜は、プロトン酸基含有構造単位を有する芳香族ポリエーテル樹脂(A)を含んでなる。樹脂(A)は、前述した樹脂(A1)および(A2)を少なくとも含む。
樹脂(A1)および(A2)は、それぞれ、下式(1)で表される構造単位(1)および下式(2)で表される構造単位(2)を有することが好ましい。ここで、構造単位(1)および構造単位(2)の合計量に対する構造単位(1)のモル分率について、樹脂(A2)の前記モル分率は、樹脂(A1)の前記モル分率よりも大きいことが好ましい。
ここで、これらの樹脂(A1)および(A2)における構造単位(1)は同一でも異なってもよく、また、樹脂(A1)および(A2)における構造単位(2)は同一でも異なってもよい。
Figure 2019189547
式(1)および(2)において、
i,j,kおよびlは、それぞれ独立して、0または1を示す。
1〜R10は、それぞれ独立して、H、Cl、F、CF3またはCm2m+1(mは1〜10の整数を示す。)であり、Cm2m+1としては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。
1〜R10の少なくとも1つはCm2m+1(mは1〜10の整数を示す。)である。具体的には、i,j,kおよびlならびにR1〜R10は、前記構造単位(1)および/または前記構造単位(2)が、Cm2m+1で表される基を少なくとも1つ有するように選択される。すなわち、i,j,kおよびlがすべて1の場合には、R1〜R10の少なくとも1つがCm2m+1であるが、たとえばi=0、j=1、k=0かつl=1の場合には、R1〜R3、R5〜R8およびR10の少なくとも1つがCm2m+1である。
1〜R10は、それぞれ芳香環に2つ以上存在してもよく、1つの芳香環にCm2m+1が2つ以上存在する場合には、各Cm2m+1は互いに同一であっても異なっていてもよい。
1〜X5は、それぞれ独立して、H、Cl、F、CF3またはプロトン酸基である。
1〜X5の少なくとも1つはプロトン酸基である。具体的には、iおよびjならびにX1〜X5は、前記構造単位(1)が、プロトン酸基を少なくとも1つ有するように選択される。すなわち、i=1かつj=1の場合にはX1〜X5の少なくとも1つがプロトン酸基であるが、j=0の場合にはX1〜X3の少なくとも1つがプロトン酸基であり、i=0かつj=1の場合にはX1〜X3およびX5の少なくとも1つがプロトン酸基である。
1〜X5は、それぞれ芳香環に2つ以上存在してもよく、1つの芳香環にプロトン酸基が2つ以上存在する場合には、各プロトン酸基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
1〜A6は、それぞれ独立して、直接結合、−CH2−、−C(CH32−、−C(CF32−、−O−または−CO−であり、A1〜A6の少なくとも1つは好ましくは−CO−である。
式(1)および(2)の両端の線は、隣り合う構造単位との結合を示す。
本発明において、プロトン酸基とは、プロトンを放出しやすい官能基またはその水素原子がNaまたはKで置換されたものを意味し、その例としては、スルホン酸基(−SO3H)、カルボン酸基(−COOH)、ホスホン酸基(−PO32)、アルキルスルホン酸基(−(CH2nSO3H)、アルキルカルボン酸基(−(CH2nCOOH)、アルキルホスホン酸基(−(CH2nPO32)、ヒドロキシフェニル基(−C64OH)およびこれらの末端水素原子がNaまたはKで置換されたものが挙げられる。nは1〜10の整数である。前記プロトン酸基としては、−Cn'2n'−SO3Y(n’は0〜10の整数であり、好ましくは0であり、YはH、NaまたはKである)が好ましい。
前記構造単位(1)の例としては、下式(1−1)または下式(1−2)で表される構造単位が挙げられ、これらの構造においてはA1が−CO−であることが好ましく、
Figure 2019189547
さらに具体的には下式(1−3)または下式(1−4)で表される構造単位が挙げられる。
Figure 2019189547
(式中、Zはそれぞれ独立に前記プロトン酸基であり、sはそれぞれ独立に0〜3の整数であり、tはそれぞれ独立に0〜4の整数であり、両末端の線は隣り合う構造単位との結合を示す。これら以外の記号の定義は前述したとおりである。)
また、構造単位(2)の例としては、下式(2−1)または下式(2−2)で表される構造単位が挙げられ、
Figure 2019189547
さらに具体的には、下式(2−3)または下式(2−4)で表される構造単位が挙げられる。
Figure 2019189547
(式中、tはそれぞれ独立に0〜4の整数であり、両末端の線は隣り合う構造単位との結合を示す。t以外の記号の定義は前述したとおりである。)
樹脂(A)全体において、前記構造単位(1)および前記構造単位(2)の合計量に対する前記構造単位(1)のモル分率は、水透過性の高い半透膜を形成できることから、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.25以上であり;また、塩阻止率が高く、かつゲル化しない半透膜を形成できることから、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.6以下である。
前記構造単位(1)および前記構造単位(2)の合計量に対する前記構造単位(1)のモル分率において、水透過性および塩阻止率のバランスの観点から、前記樹脂(A1)の前記モル分率と前記樹脂(A2)の前記モル分率との差の絶対値は、好ましくは0.03〜0.6、より好ましくは0.1〜0.4である。
なお、モル分率の差の上記規定において、樹脂(A)に含まれる芳香族ポリエーテル樹脂は2種に限定されない。樹脂(A)が構造単位(1)のモル分率が異なる3種以上の芳香族ポリエーテル樹脂を含む場合、構造単位(1)のモル分率の差の上記規定は、少なくとも1組の「2種の芳香族ポリエーテル樹脂」が満たせばよい。
芳香族ポリエーテル樹脂(A)は、さらに、後述する多官能化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。芳香族ポリエーテル樹脂(A)は、架橋体であってもよく、非架橋体であってもよい。
芳香族ポリエーテル樹脂(A)の、GPC(Gel Permeation Chromatography)法を用い、以下の条件(1)〜(6)により測定される重量平均分子量(Mw)は、好ましくは70,000以上、より好ましくは80,000以上、さらに好ましくは90,000以上である。分子量が上記範囲にあると、得られる半透膜は機械特性が高く、製膜時や使用時に破れ難い。また、前記重量平均分子量は、ゲル発生率の観点からは好ましくは180,000以下である。
(1) 測定温度:40℃
(2) 展開溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)
(3) 流量:1.0ml/分
(4) 注入量:500μl
(5) 検出器:UV検出器
(6) 分子量標準物質:標準ポリスチレン
前記重量平均分子量は、芳香族ポリエーテル樹脂(A)を製造する際に、原料モノマーのモル比や、末端封止剤の量を調整することにより制御することができる。
芳香族ポリエーテル樹脂(A)のプロトン酸基当量、すなわちプロトン酸基1モル当たりの芳香族ポリエーテル樹脂(A)の質量は、水やメタノールに溶解せず、膨潤が抑えられた、電解質の膜透過量が小さい半透膜が得られることから、好ましくは200g/mol以上である。また、水の透過流束が大きく経済性の高い半透膜が得られることから、好ましくは5000g/mol以下、より好ましくは1000g/mol以下である。
(芳香族ポリエーテル樹脂(A)の製造方法)
芳香族ポリエーテル樹脂(A)は、従来公知の方法(たとえば国際公開第2003/33566号に記載された方法)に従い、芳香環を有する単量体の縮合によって得ることができる。たとえば、下式(1a)および(2a)
Figure 2019189547
で表されるハロゲン置換基を有する単量体と、下式(1b)および(2b):
Figure 2019189547
で表される水酸基を有する単量体との縮合重合によって、前記樹脂を得ることができる。
式中、Yはハロゲン原子であり、他の各符号の意味は、上記式(1)および(2)の中で使用された同じ符号の意味と同一である。前記ハロゲン原子としては、好ましくはフッ素および塩素が挙げられる。
縮合にはK2CO3等の塩基性触媒を用いることが好ましい。
上記式(1a)で表される単量体(ただし、X1〜X2の少なくとも1つがプロトン酸基であるもの。)としては、たとえば5,5'−カルボニルビス(2−フルオロベンゼンスルホン酸ナトリウム)、5,5'−カルボニルビス(2−クロロベンゼンスルホン酸ナトリウム)等のプロトン酸基含有芳香族ジハライド化合物が挙げられる。
上記式(2a)で表される単量体としては、たとえば、
4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、3,3'−ジフルオロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、3,3'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−ジフルオロビフェニル、4,4'−ジフルオロジフェニルメタン、4,4'−ジクロロジフェニルメタン、4,4'−ジフルオロジフェニルエーテル等の芳香族ジハライド化合物;および
3,3'−ジメチル−4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、3,3'−ジエチル−4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジクロロベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラメチル−5,5'−ジクロロベンゾフェノン等のアルキル基含有芳香族ジハライド化合物
が挙げられる。
上記式(2b)で表される単量体(または、上記式(1b)で表される単量体(ただし、X3〜X5がすべて水素原子であるもの。))としては、たとえば、
4,4'−ジヒドロキシビフェニル、4,4'−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、α,α'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジメチルベンゼン、α,α'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン、3,3'−ジフルオロ−4,4'−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジヒドロキシ化合物;および
3,3'−ジメチル−4,4'−ジヒドロキシビフェニル、3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ジヒドロキシビフェニル、3,3'−ジメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルメタン、3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルメタン(別名:ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン)、3,3',5,5'−テトラエチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルメタン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、α,α'−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α'−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α'−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α'−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン等のアルキル基含有芳香族ジヒドロキシ化合物
が挙げられる。
芳香族ポリエーテル樹脂(A)の溶剤溶解性が損なわれない範囲で、前記単量体と共に多官能化合物を共重合してもよい。多官能化合物を共重合することにより、芳香族ポリエーテル樹脂(A)は微架橋構造を取ることができる。多官能化合物としては、1分子中に3個以上の水酸基を有するもの、たとえば、(2,4−ジヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタノン、4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]−1,3−ベンゼンジオール、4−[(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,3−ベンゼンジオール、4−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、(4−ヒドロキシフェニル)(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタノン、4−[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4−[(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4,4'−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス[ベンゼン−1,2−ジオール]、5,5'−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス[ベンゼン−1,2,3−トリオール]、α,α,α'−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン、フロログルシン、ピロガロール等が挙げられる。
これらの共重合量は、芳香族ポリエーテル樹脂(A)の溶剤溶解性の低下、前記樹脂の製膜時の流動性の低下、半透膜の伸び率の低下を防止する観点から、好ましくは0〜8mol%/全OH当量(すなわち、上記式(1b)の単量体、式(2b)の単量体および多官能単量体が有するOH基の全量(100mol%)のうち、0〜8mol%が多官能単量体由来のOH基である。)、さらに好ましくは0〜5mol%/全OH当量である。
(芳香族ポリエーテル樹脂(A)のワニス)
芳香族ポリエーテル樹脂(A)は、その分子構造が基本的には直鎖状であり、前記多官能化合物に由来する架橋構造を有していてもその量は僅かであることから、溶剤溶解性に優れる。したがって、樹脂(A)を溶剤に溶解したワニスの形態とすることができる。
溶剤の例としては、特に制限はなく、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、塩化メチル、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類、ジクロロエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどの脂肪酸エステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノールなどのセロソルブ類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、炭酸ジメチルなどの非プロトン性極性溶剤類が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を混合して使用できる。中でも、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、t−ブチルアルコールなど)、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどは、水溶性のため好ましく、更にこれらと水との混合溶剤も好ましい。ワニス中の樹脂濃度は、ワニスの使用方法により選択できるが、好ましくは1質量%以上80質量%以下である。
《引張弾性率、引張破断強度および伸び率》
前記半透膜の引張弾性率は、好ましくは0.8〜2.0GPa、更に好ましくは1.2〜1.6GPaである。前記半透膜の引張破断強度は、好ましくは40MPa以上であり、その上限はたとえば100MPaである。また、前記半透膜の伸び率は、好ましくは40%以上であり、その上限はたとえば200%である。これらの引張弾性率、引張破断強度および伸び率は、下記の条件で測定した場合のものである。
長さ×幅×厚さ=100mm×10mm×5μmの試験片を作製し、引張試験機を用いて速度50mm/分で引っ張り、試験片が切断(破断)したときの強度(引張荷重値を試験片の断面積で除した値)、および伸び率を求める。
伸び率は次の式によって算出する。
伸び率(%)=100×(L−L0)/L0
(L0:試験前の試験片長さ L:破断時の試験片長さ)
また、引張弾性率は、破断時の加重を試験片の断面積および破断時の歪量、すなわち(L−L0)/L0で除した値とする。
前記引張破断強度および前記伸び率は、たとえば、芳香族ポリエーテル樹脂(A)の分子量を高めることによって大きくすることができる。
《溶解性および質量減少率》
前記半透膜のジメチルスルホキシド(以下「DMSO」ともいう。)および水に対する溶解性は、各々以下の質量減少率によって評価することができる。前記質量減少率は、好ましくは2質量%未満、より好ましくは1.0質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。
半透膜を、窒素雰囲気下、150℃で4時間静置して乾燥させた後、秤量する。半透膜を、DMSOまたは水に浸し、25℃で24時間静置する。半透膜を、DMSOまたは水から取り出し、窒素雰囲気下、150℃で4時間静置して乾燥させた後、秤量する。半透膜の浸漬前後の質量に基づき、下記式から質量減少率を算出する。
質量減少率=(半透膜の浸漬前の質量−半透膜の浸漬後の質量)/半透膜の浸漬前の質量×100
前記溶解量は、たとえば前記プロトン酸基含有芳香族ポリエーテル樹脂を架橋することにより小さくでき、したがって前記プロトン酸基当量が小さくても前記溶解量を上記の範囲とすることができる。
(半透膜の製造方法)
前記半透膜は、プロトン酸基含有構造単位を有する芳香族ポリエーテル樹脂(A)から、自立膜として製造することができる。
前記半透膜は、芳香族ポリエーテル樹脂(A)をプレス成形や押し出し成形することにより、容易に製造できる。また、芳香族ポリエーテル樹脂(A)の膜に、延伸処理などを施してもよい。
前記半透膜は、前述のワニスからキャスト法により製造することもできる。すなわち、前記ワニスを支持体上に塗布し、溶剤を揮発除去することにより半透膜を得ることができる。さらに、半透膜を支持体から剥離して自立膜としてもよい。
前記半透膜中にキャスト時の有機溶剤などが残存している場合には、前記半透膜は機械強度が低下し破損しやすくなる恐れがある。そのため、キャスト法により製造された前記半透膜には、十分な乾燥、および/または水、硫酸水溶液、塩酸などでの洗浄を施すことが好ましい。
なお、前記半透膜の製造に用いる前記芳香族ポリエーテル樹脂(A)が有する前記プロトン酸基が、プロトンを放出し易い官能基において水素原子がNaまたはKで置換されたものである場合に、該芳香族ポリエーテル樹脂(A)の膜を形成し、次いでこの膜を塩酸、硫酸水溶液などと接触させることにより前記プロトン酸基が有するNaまたはKを水素原子に置換してもよい。
上述したプロトン酸基の濃度が、前記半透膜の厚さ方向において勾配を有する半透膜、具体的には積層膜は、たとえば、樹脂(A1)を含有する層(L1)を形成し、続いて前記層(L1)上に樹脂(A2)を含有する層(L2)を形成することにより得ることができ、また、樹脂(A2)を含有する層(L2)を形成し、続いて前記層(L2)上に樹脂(A1)を含有する層(L1)を形成することにより得ることもできる。各層は、たとえば、プレス成形、押し出し成形、キャスト法により得ることができる。
また、上述した樹脂(A1)および(A2)を少なくとも含む混合物から形成された半透膜は、たとえば、樹脂(A1)と樹脂(A2)とを少なくとも含む混合樹脂をプレス成形または押し出し成形して得ることができ、また、樹脂(A1)と樹脂(A2)とを少なくとも含むワニスを塗布、乾燥することにより得ることもできる。ここで、前記混合樹脂またはワニスの撹拌速度により、相分離構造の大きさを調整することができる。
<多孔質基材>
前記多孔質基材の通気度は、100〜400cm3/cm2/sであることが好ましい。この通気度はJIS L 1096に記載のA法(フラジール形法)に基づき、以下のように測定される。
20cm×20cmの試験片を試験機に取り付け、傾斜形気圧計が125Paの圧力になるように吸い込みファン及び空気孔を調整し、垂直形気圧計の示す圧力を測定する。測定した圧力と空気孔の種類から試験機に附属の換算表によって試験片を通過する空気量を求める。
また、前記多孔質基材の厚さは、通常50〜700μm、好ましくは80〜600μm、更に好ましくは100〜500μmである。
正浸透膜は、このように高い通気度を有しかつ薄い多孔質基材が好ましく用いられるため、正浸透膜を使用する際に多孔質基材の内部に生じる濃度分極が抑制され、かつ水が正浸透膜を透過する時の流体抵抗を小さくでき、結果として正浸透膜における水の透過流束を大きくすることができる、と考えられる。前記多孔質基材の通気度および厚さは、常法により制御することができる。
多孔質基材を構成する好ましい材質としては、合成樹脂および天然繊維を挙げることができる。
合成樹脂としては、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が挙げられ、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の具体例としては、オレフィン系重合体、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、(メタ)アクリル系樹脂を挙げることができる。これらの中でも、オレフィン系重合体及びポリエステル樹脂が好ましく、オレフィン系重合体が特に好ましい。
オレフィン系重合体としては、具体的には、α−オレフィンの単独重合体もしくは共重合体、またはα−オレフィンと他のモノマーとの共重合体である。α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜8のα−オレフィンが挙げられる。オレフィン系重合体には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、4−メチル−1−ペンテン・1−デセン共重合体などのポリオレフィン樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのα−オレフィンと他のモノマーとの共重合体が含まれる。
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。ポリアミド樹脂としては、たとえば、ナイロン6、ナイロン66が挙げられる。
天然繊維としては、綿、麻などの植物繊維、絹、羊毛などの動物繊維が挙げられる。中でも、綿および絹が好ましい。
前記多孔質基材としては、織布、不織布、編布などの布質基材、発泡シートなどが挙げられ、中でも布質基材が好ましく、織布および不織布がさらに好ましく、不織布が特に好ましい。
不織布としては、スパンボンド法による長繊維不織布、メルトブローン法による短繊維不織布、フラッシュ紡糸不織布などの長繊維不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、ケミカルボンド不織布などを挙げることができるが、スパンボンド不織布及びメルトブローン不織布が好ましい。中でもスパンボンド不織布が好ましく、ポリエチレンテレフタレートまたはポリプロピレンのスパンボンド不織布が特に好ましい。
前記不織布は、構成する繊維を異なった樹脂による複合繊維とし、繊維外表面側に異なった樹脂を配した芯鞘型またはサイドバイサイド型複合繊維であってもよい。複合繊維の例としてポリエチレン/ポリプロピレンの芯鞘型またはサイドバイサイド型複合繊維が挙げられる。
前記不織布は、積層不織布であってもよい。積層不織布の例としては、スパンボンド不織布およびメルトブローン不織布を含む積層不織布が挙げられ、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とが積層されたもの(SM)、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とスパンボンド不織布とがこの順序で積層されたもの(SMS)などが挙げられる。
このような積層不織布を得るには、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とを積層し、両者を一体化して形成させる。一体化する方法の例としては、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布を重ね合わせて加熱加圧する方法、ホットメルト接着剤、溶剤系接着剤等の接着剤によって両者を接着する方法、スパンボンド不織布の上にメルトブローン法により繊維を堆積させて熱融着する方法が挙げられる。
前記不織布は、不織布の間に微小孔を有する多孔性フィルムを挟んだ形態の積層不織布であってもよい。このような形態の積層不織布として、たとえば、ポリプロピレン(PP)不織布と多孔性PPフィルムとPP不織布(SFS)とがこの順序で積層されたもの、PP不織布と多孔性PPフィルムとレーヨンPP不織布(SFR)とがこの順序で積層されたものなどを挙げることができる。
前記不織布の目付(積層不織布の場合には積層不織布としての目付)は、好ましくは10〜80g/m2程度、より好ましくは20〜40g/m2程度である。
本発明の正浸透膜は、前記半透膜の両面に前記多孔質基材を備えていてもよい。この態様であれば、正浸透膜の強度がさらに向上する。
本発明の正浸透膜は、前記半透膜の両面または片面に前記多孔質基材以外の層を、半透膜/多孔質基材以外の層/多孔質基材の順序となるように含んでも良いが、良好な透過流束を得る面から多孔質基材以外の層を含まない方が好ましい。多孔質基材以外の層としてポリアミド層を含んでもよいが、その厚さは100μm以下が好ましい。
<正浸透膜の製造方法>
前記正浸透膜は、たとえば前記半透膜を自立膜として製造し、前記半透膜をその両面から2つの前記多孔質基材で挟むことによって製造することができる。
前記正浸透膜は、具体的には以下の手順で製造することができる。たとえば、PET等からなる基材上に乾燥後の厚みが目的の厚さとなるよう芳香族ポリエーテル樹脂(A)の希薄溶液を塗布し、乾燥後、形成された膜を自立膜として剥がす。該自立膜を不織布等の2つの多孔質基材で挟み、正浸透膜を製造することができる。該正浸透膜の面積が大きい場合には、半透膜と多孔質基材との間隔を維持するために、両者を透過流束に影響を与えない程度に、接着剤を用いて接着してもよい。
また前記正浸透膜は、前記半透膜を自立膜として製造し、これを前記多孔質基材上に積層することによっても製造することができる。この際に両者を、接着剤を用いて貼り合わせてもよい。
前記製造方法によれば、上述した半透膜をまず自立膜として製造し、これを多孔質基材(不織布等)上に積層したり、2枚の多孔質基材(不織布等)で挟んだりして正浸透膜を製造するため、半透膜の厚さが制御され、かつ高い水透過性および高い塩阻止率を示す正浸透膜を、簡便に製造することができる。
[正浸透膜の用途]
本発明の正浸透膜エレメントは、上述した本発明の正浸透膜およびスペーサーを備えている。換言すると、本発明の正浸透膜エレメントは、正浸透膜およびスペーサーを備える従来の正浸透膜エレメントにおいて、正浸透膜として本発明の正浸透膜が使用されたものである。スペーサーとしては、正浸透膜エレメントに使用される従来公知のスペーサーを使用することができる。
本発明の正浸透膜モジュールは、本発明の正浸透膜エレメントを容器に収容してなる。換言すると、本発明の正浸透膜モジュールは、正浸透膜エレメントを容器に収容してなる従来の正浸透膜エレメントにおいて、正浸透膜エレメントとして本発明の正浸透膜エレメントが使用されたものである。容器としては、正浸透膜モジュールに使用される従来公知の容器を使用することができる。
本発明のシステムは、本発明の正浸透膜モジュール、および前記正浸透膜モジュールが備える本発明の正浸透膜の一方の面にフィード溶液(FS)を、もう一方の面に前記フィード溶液よりも塩等の溶質濃度が高いドロー溶液(DS)を流すための駆動ポンプを有し、前記フィード溶液に含まれる水を、前記正浸透膜を通して前記ドロー溶液へ移動させることのできるように構成されている。
このような装置であれば、FS側からDS側に圧力をかけることもできる。本発明の態様においては、FS側からDS側に圧力をかけると好ましい場合があり、例えば、FS側からDS側に好ましくは15kPa以下、より好ましく12kPa以下、さらに好ましくは10kPa以下の圧力をかけると好ましい場合がある。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
本実施例で用いた略称の内容を示す。
(1)溶媒
DMSO :ジメチルスルホキシド
DMF :N,N−ジメチルホルムアミド
(2)芳香族ポリエーテルの構成成分
DFBP :4,4'−ジフルオロベンゾフェノン
DSDFBP:
5,5'−カルボニルビス(2−フルオロベンゼンスルホン酸ナトリウム)
TMBPF :
3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルメタン
各種試験の試験方法は次に示すとおりである。
樹脂の評価−重量平均分子量(Mw)
GPC(Gel Permeation Chromatography)法を用い、以下の条件により重量平均分子量(Mw)を求めた。
(1) 測定温度:40℃
(2) 展開溶媒:DMF
(3) 流量:1.0ml/分
(4) 注入量:500μl
(5) 検出器:UV検出器
(6) 分子量標準物質:標準ポリスチレン
より詳細には、前記GPC測定に使用した高速液体クロマトグラフ(HPLC)は、以下の装置を常法により組み合わせて使用する。
HPLC : 島津製作所製RID-10A-LC-10AT型システム
カラムオーブン:島津製作所製 CTO-10A型装置
UV検出器 :日本分光株式会社(JASCO)製 875-UV型装置
ガードカラム :日東電工社製 MD-G型カラム
GPCカラム :日東電工製 KD805M型カラム2本、同KD8025型カラム1本、同802型カラム1本を直列に連結して使用した。
半透膜の評価−厚さ
日本分光社製分光光度計(エリプソメトリ)を用い、半透膜の厚さを測定した。具体的には、屈折率nの膜に光がある角度(θ)で入射すると,膜の表面からの反射光Aと裏面からの反射光Bが干渉して、波打った干渉スペクトルが生じる。ある波長範囲(λ1〜λ2)内における干渉スペクトルのピーク(山または谷)の数(Δm)を数えることで(1)式から厚さ(d)を算出した。
Figure 2019189547
(単量体合成例1)
特開2014−533号公報の[0061]段落(合成例1)に記載の方法で、下式で表されるDSDFBPの白色結晶を得た。収量は155.2g(0.386mol、収率70%)であった。
Figure 2019189547
(樹脂合成例1)
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた5つ口反応器に、単量体合成例1で得られたDSDFBP64.2g(0.152mol)、DFBP49.8g(0.228mol)、TMBPF97.4g(0.380mol)および炭酸カリウム65.7g(0.475mol)を秤取した。これにDMSO845.4gとトルエン281.8gを加え、窒素雰囲気下で撹拌し、130℃で12時間加熱し、生成する水を系外に除去した後、トルエンを留去した。
引き続き、160℃で12時間反応を行い、粘稠なポリマー溶液を得た。得られた溶液にトルエン570gを加えて希釈した後、メタノール2400gに排出し、析出したポリマー粉を濾過、洗浄後、150℃で4時間乾燥してポリエーテルケトン粉168.7g(収率86%)(樹脂1)を得た。
樹脂1は、前記構造単位(1)として
Figure 2019189547
で表される構造を、前記構造単位(2)として
Figure 2019189547
で表される構造を有している。ここで、前記構造単位(1):前記構造単位(2)=40mol:60molである。また、Mw=126,000であった。
(樹脂合成例2)
樹脂の原料および溶剤を、DSDFBP40.1g(0.095mol)、DFBP62.2g(0.284mol)、TMBPF97.4g(0.380mol)および炭酸カリウム65.7g(0.475mol)、ならびにDMSO798.4gおよびトルエン266.2gとした他は樹脂合成例1と同様にしてポリマー粉156.5g(収率85%)(樹脂2)を得た。ここで、前記構造単位(1):前記構造単位(2)=25mol:75molである。また、Mw=123,000であった。
[製造例1]
樹脂合成例1で製造した樹脂1と樹脂合成例2で製造した樹脂2とをそれぞれDMFに溶解させて、樹脂濃度5質量%のワニスをそれぞれ調製した。樹脂1および樹脂2の質量比率(樹脂1:樹脂2)が3:7となるようにそれぞれのワニスをビーカ内に計量し、マグネチックスターラで混合後、離型シート上にキャストした。該シートを150℃で10分乾燥後、該シート上に形成された膜を剥離し、樹脂1および樹脂2の質量比率が3:7、厚さ0.6μmの自立膜である半透膜1を得た。
以下の例において、ワニスはすべて樹脂濃度5質量%で調製した。
[製造例2]
樹脂1と樹脂2を質量比率(樹脂1:樹脂2)が7:3の割合で混合したこと以外は製造例1と同様にして樹脂の膜を得て、これを離型シートから剥離して自立膜とし厚さ0.6μmの半透膜2を得た。
[製造例3]
樹脂合成例1で製造した樹脂1をDMFに溶解させてワニスを調製し、樹脂合成例2で製造した樹脂2をDMFに溶解させてワニスを調製した。樹脂1のワニスを離型シート上にキャストし、150℃で10分乾燥し、厚さ0.4μmの膜を形成した後、樹脂2のワニスをその上にさらにキャストし、150℃で10分乾燥し、トータルで厚さ0.6μmの積層膜を得た。これを離型シートから剥離して自立膜とし半透膜12を得た。後述する評価において、前記積層膜は、DS側に樹脂2の膜(0.2μm)が向き、FS側に樹脂1の膜(0.4μm)が向くように配置した。
[製造例4]
樹脂合成例1で製造した樹脂1をDMFに溶解させてワニスを調製し、このワニスを離型シート上にキャストし、150℃で10分乾燥して樹脂1の膜を得た。これを離型シートから剥離して自立膜とし厚さ0.6μmの半透膜c1を得た。
[製造例5]
樹脂合成例2で製造した樹脂2をDMFに溶解させてワニスを調製し、このワニスを離型シート上にキャストし、150℃で10分乾燥して樹脂2の膜を得た。これを離型シートから剥離して自立膜とし厚さ0.6μmの半透膜c2を得た。
[正浸透膜の製造例(実施例および参考例)]
次に、JIS L 1096記載のA法(フラジール形法)で測定される通気度が300cm3/cm2/s、厚さが290μm、目付が25g/m2、材質がポリプロピレンである不織布(シンテックス(登録商標) PS−105 三井化学(株)製)を2枚準備し、これらの不織布で各製造例で得た前記半透膜を挟み、これらを一体化させて、正浸透膜を得た。得られた正浸透膜を用いて、以下の評価を行った。
正浸透膜の分離性能の評価に用いた装置10の概略図を図1に示す。
装置10は、フィード溶液タンク1、流路2、ポンプ3、ドロー溶液タンク11、流路12、ポンプ13および評価用セル21を備えている。フィード溶液タンク1は天秤4上に設置され、ドロー溶液タンク11は電気伝導度計15を備えている。評価開始時において、フィード溶液タンク1には、フィード溶液FS(Feed Solution)として、50μS/cm以下の電気伝導度を持つMilli−Q水が500g蓄えられ、ドロー溶液タンク11には、ドロー溶液DS(Draw Solution)として、0.2、0.4、0.6または0.8mol/LのNaCl水溶液が800g蓄えられている。フィード溶液タンク1中のフィード溶液は、ポンプ3の使用により0.6L/分の速度で流路2を流れ、ドロー溶液タンク11中のドロー溶液は、ポンプ13の使用により0.6L/分の速度で流路12を流れる。FSからDSへの加圧力を約0kPaまたは約1kPaとする。流路2を流れるフィード溶液と流路12を流れるドロー溶液とは、評価用セル21の内部で有効膜面積0.0042m2の正浸透膜22を介して接触しており、正浸透膜22を介してフィード溶液の水はドロー溶液へ透過し、ドロー溶液中の塩(NaCl)の一部はフィード溶液へ拡散する。
水透過流束(Jw)
天秤4により1分毎にフィード溶液の重量減少量を測定し、単位時間、正浸透膜の単位面積当たりの重量減少量を水透過流束Jw(L/(m2・h))とした。循環開始後30〜60分間の平均値を各表に示す。
塩逆拡散量(Js)
電気伝導度計15により1分毎にドロー溶液の電気伝導度の変化を測定し、これをドロー溶液のモル濃度の変化に換算した。これより単位時間、正浸透膜の単位面積当たりの塩の逆拡散量Js(g/(m2・h))を算出した。JsおよびJwの循環開始後30〜60分間の平均値から算出されるJs/Jwを各表に示す。
Figure 2019189547
表1の結果から、半透膜1および2では、半透膜c1およびc2よりも、Js/Jwが小さく、したがって水透過流束および塩阻止率のバランスに優れていた。
Figure 2019189547
表2の結果から、半透膜12では、半透膜c1と同程度の水透過流束Jwを維持しつつ、半透膜c1と比べて塩逆拡散量Jsが小さく、よってJs/Jwが小さかった。
また、膜によって傾向に差があるが、FSからDSへ加圧する条件では、加圧なし条件に比して、塩の逆拡散の数値が同等以下になっていることが分かる。これは加圧によるフィード液から透過した水が、塩の逆拡散を低減させる効果を示したものと考えられる。あるいは、前記の(A1)/(A2)層が、好適な構造に微変化した可能性もあると考えられる。
1 フィード溶液タンク
2、12 流路
3、13 ポンプ
4、14 天秤
10 評価装置
11 ドロー溶液タンク
15 電気伝導度計
21 評価用セル
22 正浸透膜
DS ドロー溶液
FS フィード溶液

Claims (15)

  1. 半透膜と、
    その少なくとも一方の面に配置された多孔質基材と
    を備える正浸透膜であり、
    前記半透膜が、プロトン酸基含有構造単位を有する芳香族ポリエーテル樹脂(A)を含んでなり、前記樹脂(A)が、プロトン酸基含有芳香族ポリエーテル樹脂(A1)と、前記樹脂(A1)よりもプロトン酸基含有構造単位のモル分率が大きいプロトン酸基含有芳香族ポリエーテル樹脂(A2)とを少なくとも含む、正浸透膜。
  2. 前記半透膜が、前記樹脂(A1)および(A2)を少なくとも含む混合物から形成されている請求項1に記載の正浸透膜。
  3. 前記半透膜が、前記樹脂(A1)および(A2)のそれぞれに対応する少なくとも2つの相に分離した構造を有する請求項2に記載の正浸透膜。
  4. 前記半透膜において、前記樹脂(A)に由来するプロトン酸基の濃度が前記半透膜の厚さ方向において勾配を有する請求項1に記載の正浸透膜。
  5. 前記半透膜が、前記樹脂(A1)を含有する層(L1)と、前記樹脂(A2)を含有する層(L2)とを有する請求項4に記載の正浸透膜。
  6. 前記樹脂(A1)および(A2)が、それぞれ、下式(1)で表される構造単位(1)および下式(2)で表される構造単位(2)を有し、前記樹脂(A2)は、前記構造単位(1)および前記構造単位(2)の合計量に対する前記構造単位(1)のモル分率が、前記樹脂(A1)よりも大きい請求項1〜5のいずれか一項に記載の正浸透膜。
    Figure 2019189547
    [式(1)および(2)において、
    1〜R10は、それぞれ独立して、H、Cl、F、CF3またはCm2m+1(mは1〜10の整数を示す。)であり、
    1〜R10の少なくとも1つはCm2m+1(mは1〜10の整数を示す。)であり、
    1〜R10は、それぞれ芳香環に2つ以上存在してもよく、1つの芳香環にCm2m+1が2つ以上存在する場合には、各Cm2m+1は互いに同一であっても異なっていてもよい。
    1〜X5は、それぞれ独立して、H、Cl、F、CF3またはプロトン酸基であり、
    1〜X5の少なくとも1つはプロトン酸基であり、
    1〜X5は、それぞれ芳香環に2つ以上存在してもよく、1つの芳香環にプロトン酸基が2つ以上存在する場合には、各プロトン酸基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
    1〜A6は、それぞれ独立して、直接結合、−CH2−、−C(CH32−、−C(CF32−、−O−または−CO−である。
    i,j,kおよびlは、それぞれ独立して、0または1を示す。]
  7. 前記樹脂(A)全体において、前記構造単位(1)および前記構造単位(2)の合計量に対する前記構造単位(1)のモル分率が、0.1〜0.9である請求項6に記載の正浸透膜。
  8. 前記樹脂(A1)および(A2)において、それぞれの、前記構造単位(1)および前記構造単位(2)の合計量に対する前記構造単位(1)のモル分率の差の絶対値が0.03〜0.6である請求項6または7に記載の正浸透膜。
  9. 前記芳香族ポリエーテル樹脂(A)の重量平均分子量が、70,000以上である請求項1〜8のいずれか一項に記載の正浸透膜。
  10. 前記半透膜の厚さが、3.0μm以下である請求項1〜9のいずれか一項に記載の正浸透膜。
  11. 前記半透膜と、その両面に配置された前記多孔質基材とを有する請求項1〜10のいずれか一項に記載の正浸透膜。
  12. 前記多孔質基材が、JIS L 1096記載のA法(フラジール形法)で測定される100〜400cm3/cm2/sの通気度、および50〜700μmの厚さを有する請求項1〜11のいずれか一項に記載の正浸透膜。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項に記載の正浸透膜およびスペーサーを備える正浸透膜エレメント。
  14. 請求項13に記載の正浸透膜エレメントを容器に収容してなる正浸透膜モジュール。
  15. 請求項14に記載の正浸透膜モジュール、および前記正浸透膜モジュールが備える前記正浸透膜の一方の面にフィード溶液を、もう一方の面に前記フィード溶液よりも溶質濃度が高いドロー溶液を流すための駆動ポンプを有し、前記フィード溶液に含まれる水を、前記正浸透膜を通して前記ドロー溶液へ移動させることのできるように構成されたシステム。
JP2020509304A 2018-03-29 2019-03-28 正浸透膜およびその用途 Active JP6944044B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018064671 2018-03-29
JP2018064671 2018-03-29
PCT/JP2019/013521 WO2019189547A1 (ja) 2018-03-29 2019-03-28 正浸透膜およびその用途

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2019189547A1 true JPWO2019189547A1 (ja) 2021-03-25
JP6944044B2 JP6944044B2 (ja) 2021-10-06

Family

ID=68062131

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020509304A Active JP6944044B2 (ja) 2018-03-29 2019-03-28 正浸透膜およびその用途

Country Status (3)

Country Link
JP (1) JP6944044B2 (ja)
TW (1) TW201941819A (ja)
WO (1) WO2019189547A1 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7508254B2 (ja) 2020-03-31 2024-07-01 三井化学株式会社 正浸透膜の製造方法
JP7508253B2 (ja) 2020-03-31 2024-07-01 三井化学株式会社 正浸透膜の製造方法

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003335835A (ja) * 2002-05-22 2003-11-28 Mitsui Chemicals Inc スルホン酸基含有樹脂ワニスおよびスルホン酸基含有架橋樹脂
JP2013031836A (ja) * 2011-07-04 2013-02-14 Toyobo Co Ltd ナノろ過用の分離膜
JP2014000533A (ja) * 2012-06-19 2014-01-09 Mitsui Chemicals Inc 微多孔性支持膜用樹脂組成物およびそれを用いた微多孔性支持膜、並びに複合半透膜
WO2016056547A1 (ja) * 2014-10-07 2016-04-14 東洋紡株式会社 分離膜および分離膜エレメントおよび分離膜モジュール
WO2018079733A1 (ja) * 2016-10-27 2018-05-03 三井化学株式会社 正浸透膜およびその用途

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003335835A (ja) * 2002-05-22 2003-11-28 Mitsui Chemicals Inc スルホン酸基含有樹脂ワニスおよびスルホン酸基含有架橋樹脂
JP2013031836A (ja) * 2011-07-04 2013-02-14 Toyobo Co Ltd ナノろ過用の分離膜
JP2014000533A (ja) * 2012-06-19 2014-01-09 Mitsui Chemicals Inc 微多孔性支持膜用樹脂組成物およびそれを用いた微多孔性支持膜、並びに複合半透膜
WO2016056547A1 (ja) * 2014-10-07 2016-04-14 東洋紡株式会社 分離膜および分離膜エレメントおよび分離膜モジュール
WO2018079733A1 (ja) * 2016-10-27 2018-05-03 三井化学株式会社 正浸透膜およびその用途

Also Published As

Publication number Publication date
TW201941819A (zh) 2019-11-01
JP6944044B2 (ja) 2021-10-06
WO2019189547A1 (ja) 2019-10-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6722296B2 (ja) 正浸透膜およびその用途
JP6944044B2 (ja) 正浸透膜およびその用途
TWI569974B (zh) 經親水性改質之氟化薄膜(iv)
JP6018790B2 (ja) 分離膜、この製造方法および分離膜を含む水処理装置
KR101745515B1 (ko) 친수성으로 개질된 불화 막 (ⅰ)
US20160001237A1 (en) Asymmetrically porous membranes made of cross-linked thermoplastic silicone elastomer
EP3075762B1 (en) Hydrophilically modified fluorinated membrane
US11389771B2 (en) Asymmetric composite membrane and a method of preparation thereof
JPWO2019189548A1 (ja) 溶質濃度が低下した溶液の製造方法
JP2021159850A (ja) 正浸透膜の製造方法
JP2021159852A (ja) 正浸透膜の製造方法
US20130327701A1 (en) Separation membrane and water treatment device including a separation membrane
KR101780380B1 (ko) 친수성으로 개질된 플루오르화 막 (ii)
JPWO2020032019A1 (ja) 正浸透膜およびその用途
JP2022149644A (ja) 正浸透膜
JP2021159851A (ja) 正浸透膜の製造方法
JP2022149645A (ja) 正浸透膜の製造方法
JP2021123648A (ja) イオン交換膜
JP7576399B2 (ja) イオン交換膜
JP2006073495A (ja) ポリアクリロニトリル多孔質膜にリン酸基含有不飽和単量体(組成物)を含浸させ、(共)重合してなる固体高分子電解質複合膜及びその用途
US20220251300A1 (en) Bio-based polysulfones and uses thereof
KR102182178B1 (ko) 수처리 분리막의 제조 방법 및 이에 의하여 제조된 수처리 분리막
JP2020037056A (ja) 中空糸膜束、中空糸膜モジュール及びカートリッジ

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200924

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210810

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210909

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6944044

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250