JP2022149644A - 正浸透膜 - Google Patents

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航 岡太
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修二 田原
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Abstract

【課題】水透過性および塩阻止率のバランスに優れた正浸透膜を提供すること。【解決方法】芳香族構造と、プロトン酸構造と、エーテル構造(-O-)およびケトン構造(-CO-)から選ばれる構造とを含み、(I)プロトン酸基を有する構造単位の溶解度パラメータが24.0~26.0であり、(II)プロトン酸基の無い構造単位の溶解度パラメータが21.0~24.0である構造単位を有する樹脂(A)を含む、自立膜である正浸透膜。【選択図】なし

Description

本発明は、正浸透膜に関する。
半透膜は、液体混合物あるいは気体混合物から所定の成分を選択的に分離するために有用であり、たとえば高純度水の製造や、溶液中から特定の溶質を分離する際に好適に用いられる。
半透膜を利用した膜分離法である逆浸透法と正浸透法のうち、従来主流である逆浸透法においては逆浸透膜が高圧に曝される。したがって、逆浸透膜としては、高強度を得るために、多孔質支持体(たとえば不織布)、多孔質ポリマー層(たとえばポリスルホン層)、および実際に半透膜として機能する層(スキン層、分離層などともいう。)をこの順に積層してなる複合半透膜が主流である。
これに対して、正浸透法は、正浸透膜によって隔てられた溶質濃度の異なる水溶液間に生じる浸透圧を駆動力として、低塩濃度のフィード溶液側(たとえば淡水)から高塩濃度のドロー溶液側(たとえば海水)へと水が移動する。このため、逆浸透法のような浸透圧に打ち勝つための高圧付与や膜強度を必要とせず、省エネルギー性に優れる、浸透膜の構成をシンプルにできる、等の利点が期待できる。
しかしながら、正浸透法では透過流束が小さいことが問題とされており(たとえば特許文献1)、正浸透膜を用いて農業用水や浄水用途のように用水を大量に処理するにあたっては、低塩濃度側から高塩濃度側へのさらなる透過流束の改善が求められている。
一方、本発明者は、例えばポリエーテルケトン構造を有する半透膜を用いて、透過流速に優れた正浸透膜を開示している(例えば特許文献2)。また、特許文献2の実施例では、離型フィルムに前記のポリエーテルケトン構造を有する重合体を含むワニスを用い、キャスト法で自立膜を得ている。
特開2014-213262号公報 国際公開第2018/79733号
本発明者らの検討によれば、前記特許文献2に開示したようなフィード溶液からの水透過流束が大きい正浸透膜はドロー溶液からの塩の逆拡散量が大きくなる傾向にあった。また水透過流束当たりの塩の逆拡散量が必ずしも低いとはいえないレベルであることが分かってきた。本発明者らは、このような視点に立ち、高い水透過性と高い塩阻止率を両立できる正浸透膜を開発している。その正浸透膜に求められる性能は、今後もますます高めることが必要である。
上記課題に鑑み、本発明者らが検討した結果、使用する半透膜を塩水が透過する際の膜構造の変位の大小が、塩の逆拡散現象に影響する可能性があることが分かってきた。即ち構造の変位が少ない程、塩の逆拡散をさらに抑制できるであろうことが考えられた。一方、構造の変位の少ない剛直な構造では、水の透過が低下する懸念があるとも考えられた。
上記の視点を受けて本発明者らが検討した結果、特定の分子構造を有する樹脂を含む半透膜を用いて正浸透膜を製造することにより、前記の塩の逆拡散をより抑制できると共に、水の透過流束と塩の逆拡散とのバランスに優れた正浸透膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の[1]~[4]に関する。
[1] 芳香族構造と、
プロトン酸構造と、
エーテル構造(-O-)およびケトン構造(-CO-)から選ばれる構造とを含み、
(I)プロトン酸基を有する構造単位の溶解度パラメータが24.0~26.0であり、
(II)プロトン酸基の無い構造単位の溶解度パラメータが21.0~24.0
である構造単位を有する樹脂(A)を含む自立膜である正浸透膜。
[2] 前記樹脂(A)が、下式(1)で表される構造単位(1)および下式(2)で表される構造単位(2)を有し、R1~R5およびX1~X5の全ての置換基数を100モル%として、X1~X5およびR1~R5の置換基の76モル%以上が水素原子(-H)であり、且つ、R6~R10の全ての置換基数を100モル%として、R6~R10の置換基の76モル%以上が水素原子(-H)である、[1]に記載の正浸透膜。
Figure 2022149644000001
[式(1)および(2)において、
1~R10は、それぞれ独立して、H、Cl、F、CF3またはCm2m+1(mは1~10の整数を示す。)であり、
1~R10の少なくとも1つはCm2m+1(mは1~10の整数を示す。)であり、
1~R10は、それぞれ芳香環に2つ以上存在してもよく、1つの芳香環にCm2m+1が2つ以上存在する場合には、各Cm2m+1は互いに同一であっても異なっていてもよい。
1~X5は、それぞれ独立して、H、Cl、F、CF3またはプロトン酸基であり、
1~X5の少なくとも1つはプロトン酸基であり、
1~X5は、それぞれ芳香環に2つ以上存在してもよく、1つの芳香環にプロトン酸基が2つ以上存在する場合には、各プロトン酸基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
1~A6は、それぞれ独立して、直接結合、-CH2-、-C(CH32-、-C(CF32-、-O-または-CO-である。
i,j,kおよびlは、それぞれ独立して、0または1を示す。]
[3] 前記樹脂(A)が、プロトン酸基含有樹脂(A1)と、前記(A1)とプロトン酸基含有構造単位のモル分率が異なる樹脂(A2)とを含む[1]に記載の正浸透膜。
[4] 前記正浸透膜が、前記樹脂(A1)を含む層と、前記樹脂(A2)を含む層とを有する積層体である[3]に記載の正浸透膜。
本発明によれば、水透過性および塩阻止率のバランスに優れた正浸透膜、具体的には水透過性が高く、塩阻止率が高い正浸透膜を提供することができる。
図1は、実施例で正浸透膜の分離性能の評価に用いた装置の概略図である。
以下、本発明について具体的に説明する。
[正浸透膜]
本発明の正浸透膜は、半透膜と、その少なくとも一方の面に配置された多孔質基材とを備えることが好ましい態様である。ここで、前記半透膜は、芳香族構造と、プロトン酸基含有構造と、エーテル基およびケトン基から選ばれる構造とを含み、特定範囲の溶解度パラメータを有する樹脂(A)(以下、単に樹脂(A)と言うことがある。)を含むことを特徴とする。
前記の正浸透膜に用いられる前記半透膜は、自立膜として得られることが多いが、好ましくは自立膜かどうかに関わらず、その少なくとも一方の面に前記多孔質基材とを備える態様である。この様な正浸透膜は、高い水透過性および高い塩阻止率を実現することができる。
<半透膜>
前記半透膜は、プロトン酸基含有構造単位と、芳香族構造と、エーテル基およびケトン基から選ばれる構造とを有する樹脂(A)を含んでいる。また、前記樹脂(A)が含む構造単位の溶解度パラメータが、特定の範囲にあることを特徴とする。
上記の溶解度パラメータは、樹脂と溶媒の親和性を判定する指標として利用されるパラメータであり、数値が高ければ高いほど分子間の凝集エネルギーが高いことを示す。即ち、前記パラメータ値が高いパラメータの小さい緻密な構造を取り易い傾向があると考えることができる。
本発明に溶解度パラメータ値の範囲は、(I)プロトン酸基を有する構造単位においては24.0~26.0である。好ましい上限値は25.5であり、より好ましくは25.0である。
一方、(II)プロトン酸基の無い構造単位においては21.0~24.0である。好ましい上限値は23.5であり、より好ましくは23.0であり、さらに好ましくは22.5である。
また、上記の(I)のパラメータ値と、(II)のパラメータ値との差の絶対値は、1.0以上であることが好ましい。また、通常、プロトン酸基を有する構造の方が、分子間引力は強い傾向があるので、溶解度パラメータの値は大きくなる傾向がある。
本発明で用いる溶解度パラメータは、下記の式で算出される。
Figure 2022149644000002
上記式中、δtotは、溶解度パラメータ(分散力パラメータ、極性パラメータ、水素結合パラメータの総和:単位=[J1/2/cm3/2] =MPa1/2)を示し、Dは分散力を示し、Pは極性を示し、Hは水素結合の寄与分を示し、Ecohは凝集エネルギーを示し、Vは対象分子の占有体積を示す。
上記溶解度パラメータは、例えば、計算する構造単位について、計算科学ソフト:HSPiP(Hansenの方法)を使用して決定できる。
本発明の樹脂(A)のより詳細な構造としては、プロトン酸基を有する構造単位、プロトン酸基の無い構造単位とも、その主鎖中に4個以上の芳香族環構造を有するような構造を繰り返し単位として有していることが好ましい。好ましくは4~10個、より好ましくは4~8個、さらに好ましくは4~6個、特に好ましくは4個の芳香族環構造を有する繰り返し構造単位である。
この様な樹脂(A)としては、例えば、下記式(1)のような構造式で表されるプロトン酸基を有する構造単位および下記式(2)のようなプロトン酸基の無い構造単位を持つプロトン酸基含有樹脂が好ましい例となる。
更に、前記式(1)のX1~X5およびR1~R5の全ての置換基数を100モル%として、X1~X5およびR1~R5の置換基の76モル%以上が水素原子(-H)であることが好ましい態様である。また、R6~R10の全ての置換基数を100モル%として、R6~R10の置換基の76モル%以上が水素原子(-H)であることが好ましい態様である。さらに、上記のR1~R10に関する規定の両方を満たすことが特に好ましい態様である。
前記の水素原子(-H)のより好ましい割合は、何れも80モル%以上、さらに好ましくは85モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
Figure 2022149644000003
式(1)および(2)において、
i,j,kおよびlは、それぞれ独立して、0または1を示す。
1~R10は、それぞれ独立して、H、Cl、F、CF3またはCm2m+1(mは1~10の整数を示す。)であり、Cm2m+1としては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。
1~R10の少なくとも1つはCm2m+1(mは1~10の整数を示す。)である。具体的には、i,j,kおよびlならびにR1~R10は、前記構造単位(1)および/または前記構造単位(2)が、Cm2m+1で表される基を少なくとも1つ有するように選択される。すなわち、i,j,kおよびlがすべて1の場合には、R1~R10の少なくとも1つがCm2m+1であるが、たとえばi=0、j=1、k=0かつl=1の場合には、R1~R3、R5~R8およびR10の少なくとも1つがCm2m+1である。
1~R10は、それぞれ芳香環に2つ以上存在してもよく、1つの芳香環にCm2m+1が2つ以上存在する場合には、各Cm2m+1は互いに同一であっても異なっていてもよい。
1~X5は、それぞれ独立して、H、Cl、F、CF3またはプロトン酸基であり、X1~X5の少なくとも1つはプロトン酸基である。具体的には、iおよびjならびにX1~X5は、前記構造単位(1)が、プロトン酸基を少なくとも1つ有するように選択される。すなわち、i=1かつj=1の場合にはX1~X5の少なくとも1つがプロトン酸基であるが、j=0の場合にはX1~X3の少なくとも1つがプロトン酸基であり、i=0かつj=1の場合にはX1~X3およびX5の少なくとも1つがプロトン酸基である。
1~X5は、それぞれ芳香環に2つ以上存在してもよく、1つの芳香環にプロトン酸基が2つ以上存在する場合には、各プロトン酸基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
1~A6は、それぞれ独立して、直接結合、-CH2-、-C(CH32-、-C(CF32-、-O-または-CO-であり、A1~A6の少なくとも1つは好ましくは-CO-である。
式(1)および(2)の両端の線は、隣り合う構造単位との結合を示す。
本発明において、プロトン酸基とは、プロトンを放出しやすい官能基またはその水素原子がNaまたはKで置換されたものを意味し、その例としては、スルホン酸基(-SO3H)、カルボン酸基(-COOH)、ホスホン酸基(-PO32)、アルキルスルホン酸基(-(CH2nSO3H)、アルキルカルボン酸基(-(CH2nCOOH)、アルキルホスホン酸基(-(CH2nPO32)、ヒドロキシフェニル基(-C64OH)およびこれらの末端水素原子がNaまたはKで置換されたものが挙げられる。nは1~10の整数である。前記プロトン酸基としては、-Cn'2n'-SO3Y(n'は0~10の整数であり、好ましくは0であり、YはH、NaまたはKである)が好ましい。
プロトン酸基含有構造単位のモル分率とは、以下の比:プロトン酸基含有構造単位数/前記樹脂を構成する全構造単位数である。
前記構造単位(1)の例としては、下式(1-1)または下式(1-2)で表される構造単位が挙げられ、これらの構造においてはA1が-CO-であることが好ましい。
Figure 2022149644000004
(式中、Zはそれぞれ独立に前記プロトン酸基であり、sはそれぞれ独立に0~3の整数であり、tはそれぞれ独立に0~4の整数であり、両末端の線は隣り合う構造単位との結合を示す。これら以外の記号の定義は前述したとおりである。)
また、構造単位(2)の例としては、下式(2-1)または下式(2-2)で表される構造単位が挙げられる。
Figure 2022149644000005
(式中、tはそれぞれ独立に0~4の整数であり、両末端の線は隣り合う構造単位との結合を示す。t以外の記号の定義は前述したとおりである。)
本発明においては、上記式の炭化水素基(Cm2m+1)の数が少なく、水素原子(-H)が多い態様が好ましいのは前記の通りである。
樹脂(A)全体において、前記構造単位(1)および前記構造単位(2)の合計量に対する前記構造単位(1)のモル分率は、水透過性の高い半透膜を形成できることから、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.25以上であり;また、塩阻止率が高く、かつゲル化しない半透膜を形成できることから、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.6以下である。
前記樹脂(A)の好ましい態様としては、プロトン酸基含有樹脂(A1)と、前記樹脂(A1)よりもプロトン酸基含有構造単位のモル分率が大きい樹脂(A2)とを少なくとも含む態様である(以下、前記樹脂(A)、(A1)および(A2)を、それぞれ単に「樹脂(A)」、「樹脂(A1)」および「樹脂(A2)」と称する場合がある。)。
水透過性および塩阻止率のバランスの観点から、前記樹脂(A1)が含有するプロトン酸基のモル分率と前記樹脂(A2)のプロトン酸基のモル分率との差の絶対値は、好ましくは0.03~0.6である。より好ましい下限値は、0.06であり、さらに好ましくは0.1であり、特に好ましくは0.15である。一方、より好ましい上限値は、0.5であり、さらに好ましくは0.45であり、特に好ましくは0.4である。
なお、モル分率の差の上記規定において、樹脂(A)に含まれる樹脂は2種に限定されない。樹脂(A)が構造単位(1)のモル分率が異なる3種以上の樹脂を含む場合、構造単位(1)のモル分率の差の上記規定は、少なくとも1組の「2種の樹脂」が満たせばよい。
前記の樹脂(A)は、水透過性に優れる。より好ましい態様として、プロトン酸基含有構造単位のモル分率が異なる樹脂を少なくとも2種、すなわち前記樹脂(A1)と樹脂(A2)とを用いると、プロトン酸基含有構造単位のモル分率が大きい前記樹脂(A2)により水透過性が向上するとともに、プロトン酸基含有構造単位のモル分率が小さい前記樹脂(A1)により塩の逆拡散を抑制できる傾向がある。
本発明の正浸透膜(半透膜)を用いれば、前記の塩の逆拡散を効果的に抑制させることができる。
本発明の正浸透膜(半透膜)で、上記の効果が発現する理由は定かではないが、本発明者らは以下のように推測した。
本発明は、塩の逆拡散の抑制を課題の一つとしている。塩の逆拡散は半透膜に存在する相対的に大きい隙間、あるいは欠陥において発生すると考えられる。水の浸透現象が起こる前であれば、そのような隙間や欠陥はほぼ存在しないであろう。しかしながら、水の浸透による圧力や水の透過により、前記のような欠陥が発生する場合があり、これによって、塩の逆拡散が増加するのではないかと考えられる。
本発明の正浸透膜では、使用する樹脂が、高い溶解度パラメータを有しており、樹脂の高分子鎖構造起因で比較的凝集し易い傾向があると考えられる。この為、水の浸透現象が起こっても、上記の様な隙間、欠陥が発生し難く、その結果、塩の逆拡散が抑制されていると考えることができる。
上記のような欠陥発生の抑制が、水の透過性の低下につながる可能性も考えられたが、結果として、本発明に用いる樹脂構造の水の透過性への影響は少なかった。本発明の正浸透膜が示す水の高い透過性を示す要因は、別の構造要因によると考えることができる。
樹脂(A)は、さらに、後述する多官能化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。樹脂(A)は、架橋体であってもよく、非架橋体であってもよい。
樹脂(A)の、GPC(Gel Permeation Chromatography)法を用いた以下の条件(1)~(6)により測定される重量平均分子量(Mw)は、好ましくは70,000以上、より好ましくは80,000以上、さらに好ましくは90,000以上である。分子量が上記範囲にあると、得られる半透膜は機械特性が高く、製膜時や使用時に破れ難い。また、前記重量平均分子量は、ゲル発生率の観点からは好ましくは180,000以下である。
(1) 測定温度:40℃
(2) 展開溶媒:N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)
(3) 流量:1.0ml/分
(4) 注入量:500μl
(5) 検出器:UV検出器
(6) 分子量標準物質:標準ポリスチレン
前記重量平均分子量は、樹脂(A)を製造する際に、原料モノマーのモル比や、末端封止剤の量を調整することにより制御することができる。
樹脂(A)のプロトン酸基当量、すなわちプロトン酸基1モル当たりの樹脂(A)の質量は、水やメタノールに溶解せず、膨潤が抑えられた、電解質の膜透過量が小さい半透膜が得られることから、好ましくは200g/mol以上である。また、水の透過性が高く経済性の高い半透膜が得られることから、好ましくは5000g/mol以下、より好ましくは1000g/mol以下である。
特に、前記樹脂(A1)と前記樹脂(A2)とが、いずれも前記式(1)の構造、または前記式(1)の構造と前記式(2)の構造を有していれば、これらの樹脂の分散が良好と考えられる。この為、緻密で多段階の疑似的な(A1)/(A2)単位の連続層を形成していると考えられるので、水透過特性と塩の逆拡散抑制の効果を効率的に発揮させられるのであろう。
一実施態様において、前記半透膜は、樹脂(A)に由来するプロトン酸基の濃度が、前記半透膜の厚さ方向において勾配を有することが好ましい。濃度勾配は、連続的に濃度が上昇する態様でもよく、階段状に濃度が上昇する態様であってもよい。その一例としては、たとえば、前記半透膜が、樹脂(A1)を含有する層(L1)と、樹脂(A2)を含有する層(L2)とを有する積層膜であることが挙げられる。層(L1)と層(L2)との厚さの比率(L1の厚さ:L2の厚さ)は、通常5:95~80:20、好ましくは20:80~60:40である。このような多層構造により、より高い水透過性および塩阻止率が得られる。
この態様は、前記の(A1)/(A2)単位の構成の効果をより確実に発言させる観点で好ましい態様であると言えよう。
ここで樹脂(A)に由来するプロトン酸基の濃度勾配とは、樹脂(A)に含まれるプロトン酸基濃度が、半透膜の厚さ方向において変化することを指す。プロトン酸基がスルホン基やその末端水素原子がNaまたはKで置換された基であるときには、元素マッピングにより半透膜断面における硫黄原子の濃度分布を解析することにより、前記濃度勾配を確認できる。
ここで、正浸透膜の使用時には、前記半透膜において、プロトン酸基濃度が大きい側がフィード溶液側を向き、プロトン酸基濃度が小さい側がドロー溶液側を向くように、正浸透膜を配置することが好ましい。たとえば、前記半透膜において樹脂(A2)を含有する層(L2)がフィード溶液側を向き、樹脂(A1)を含有する層(L1)がドロー溶液側を向くように、正浸透膜を配置することが好ましい。このような態様であると、より高い水透過性および塩阻止率が得られる。
一実施態様において、前記半透膜は、樹脂(A1)および樹脂(A2)を少なくとも含む混合物から形成されていることが好ましい。その一例として、前記半透膜は、樹脂(A1)および樹脂(A2)のそれぞれに対応する少なくとも2つの相に分離した構造を有する。この相分離構造により、より高い水透過性および塩阻止率が得られる。前記混合物において、樹脂(A1)と樹脂(A2)との質量比率(A1:A2)は、通常10:90~90:10、好ましくは30:70~70:30である。
このような相分離構造は、電子顕微鏡(TEMまたはSEM)観察により確認することができる。相分離構造としては、海島構造、相互侵入構造等が考えられるが、ドロー溶液からの塩の逆拡散を阻止する観点から、相互侵入構造が更に好ましい。また、海島構造の場合は、プロトン酸基含有構造単位のモル分率が小さい樹脂(A1)が海相を形成し、前記モル分率が大きい樹脂(A2)が島相を形成することが好ましい。
本発明では、樹脂(A)を原料として用いた半透膜が自立膜として製造可能であり、この半透膜と多孔質基材とを積層することによって、水透過性が高く、塩阻止率が高い正浸透膜を得ることができる。
前記半透膜は、実質的に樹脂(A)のみからなるが、他の成分を本発明の効果を損なわない程度に少量(たとえば、1質量%以下、または0.1質量%以下)含んでいてもよい。
前記半透膜の厚さは、通常3.0μm以下、好ましくは0.01~3.0μm、より好ましくは0.01~1.5μmである。前記厚さがこの範囲内にある半透膜を用いた正浸透膜は、十分な膜強度を有し、かつ実用上十分に高い水の透過性を示す。前記半透膜の厚さは、半透膜の製造条件、たとえばプレス成形時の温度や圧力、キャスト時のワニス濃度や塗布厚などにより制御することができる。
ここで、これらの樹脂(A1)および(A2)における構造単位(1)は同一でも異なってもよく、また、樹脂(A1)および(A2)における構造単位(2)は同一でも異なってもよい。
(樹脂(A)の製造方法)
樹脂(A)は、従来公知の方法(たとえば国際公開第2003/33566号に記載された方法)に従い、芳香環を有する単量体の縮合によって得ることができる。たとえば、下式(1a)および(2a)
Figure 2022149644000006
で表されるハロゲン置換基を有する単量体と、下式(1b)および(2b):
Figure 2022149644000007
で表される水酸基を有する単量体との縮合重合によって、前記樹脂を得ることができる。
式中、Yはハロゲン原子であり、他の各符号の意味は、上記式(1)および(2)の中で使用された同じ符号の意味と同一である。前記ハロゲン原子としては、好ましくはフッ素および塩素が挙げられる。
縮合にはK2CO3等の塩基性触媒を用いることが好ましい。
上記式(1a)で表される単量体(ただし、X1~X2の少なくとも1つがプロトン酸基であるもの。)としては、たとえば5,5'-カルボニルビス(2-フルオロベンゼンスルホン酸ナトリウム)、5,5'-カルボニルビス(2-クロロベンゼンスルホン酸ナトリウム)等のプロトン酸基含有芳香族ジハライド化合物が挙げられる。
上記式(2a)で表される単量体としては、たとえば、
4,4'-ジフルオロベンゾフェノン、3,3'-ジフルオロベンゾフェノン、4,4'-ジクロロベンゾフェノン、3,3'-ジクロロベンゾフェノン、4,4'-ジフルオロビフェニル、4,4'-ジフルオロジフェニルメタン、4,4'-ジクロロジフェニルメタン、4,4'-ジフルオロジフェニルエーテル等の芳香族ジハライド化合物;および
3,3'-ジメチル-4,4'-ジフルオロベンゾフェノン、3,3'-ジエチル-4,4'-ジフルオロベンゾフェノン、3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ジフルオロベンゾフェノン、3,3'-ジメチル-4,4'-ジクロロベンゾフェノン、3,3',4,4'-テトラメチル-5,5'-ジクロロベンゾフェノン等のアルキル基含有芳香族ジハライド化合物
が挙げられる。
上記式(2b)で表される単量体(または、上記式(1b)で表される単量体(ただし、X3~X5がすべて水素原子であるもの。))としては、たとえば、
4,4'-ジヒドロキシビフェニル、4,4'-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、α,α'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジメチルベンゼン、α,α'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、α,α'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジイソプロピルベンゼン、1,4-ビス(4-ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン、3,3'-ジフルオロ-4,4'-ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジヒドロキシ化合物;および
3,3'-ジメチル-4,4'-ジヒドロキシビフェニル、3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ジヒドロキシビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジヒドロキシジフェニルメタン、3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ジヒドロキシジフェニルメタン(別名:ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン)、3,3',5,5'-テトラエチル-4,4'-ジヒドロキシジフェニルメタン、3,3'-ジメチル-4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-エチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、α,α'-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、α,α'-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、α,α'-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジイソプロピルベンゼン、α,α'-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジイソプロピルベンゼン等のアルキル基含有芳香族ジヒドロキシ化合物
が挙げられる。
樹脂(A)の溶剤溶解性が損なわれない範囲で、前記単量体と共に多官能化合物を共重合してもよい。多官能化合物を共重合することにより、樹脂(A)は微架橋構造を取ることができる。多官能化合物としては、1分子中に3個以上の水酸基を有するもの、たとえば、(2,4-ジヒドロキシフェニル)(4-ヒドロキシフェニル)メタノン、4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]-1,3-ベンゼンジオール、4-[(2,3,5-トリメチル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール、4-[(4-ヒドロキシフェニル)メチル]-1,2,3-ベンゼントリオール、(4-ヒドロキシフェニル)(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタノン、4-[(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-1,2,3-ベンゼントリオール、4-[(2,3,5-トリメチル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-1,2,3-ベンゼントリオール、4,4'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビス[ベンゼン-1,2-ジオール]、5,5'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビス[ベンゼン-1,2,3-トリオール]、α,α,α'-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン、フロログルシン、ピロガロール等が挙げられる。
これらの共重合量は、樹脂(A)の溶剤溶解性の低下、前記樹脂の製膜時の流動性の低下、半透膜の伸び率の低下を防止する観点から、好ましくは0~8mol%/全OH当量(すなわち、上記式(1b)の単量体、式(2b)の単量体および多官能単量体が有するOH基の全量(100mol%)のうち、0~8mol%が多官能単量体由来のOH基である。)、さらに好ましくは0~5mol%/全OH当量である。
《引張弾性率、引張破断強度および伸び率》
前記半透膜の引張弾性率は、好ましくは0.8~2.0GPa、更に好ましくは1.2~1.6GPaである。前記半透膜の引張破断強度は、好ましくは40MPa以上であり、その上限はたとえば100MPaである。また、前記半透膜の伸び率は、好ましくは40%以上であり、その上限はたとえば200%である。これらの引張弾性率、引張破断強度および伸び率は、下記の条件で測定した場合のものである。
長さ×幅×厚さ=100mm×10mm×5μmの試験片を作製し、引張試験機を用いて速度50mm/分で引っ張り、試験片が切断(破断)したときの強度(引張荷重値を試験片の断面積で除した値)、および伸び率を求める。
伸び率は次の式によって算出する。
伸び率(%)=100×(L-L0)/L0
(L0:試験前の試験片長さ L:破断時の試験片長さ)
また、引張弾性率は、破断時の加重を試験片の断面積および破断時の歪量、すなわち(L-L0)/L0で除した値とする。
前記引張破断強度および前記伸び率は、たとえば、樹脂(A)の分子量を高めることによって大きくすることができる。
《溶解性および質量減少率》
前記半透膜のジメチルスルホキシド(以下「DMSO」ともいう。)および水に対する溶解性は、各々以下の質量減少率によって評価することができる。前記質量減少率は、好ましくは2質量%未満、より好ましくは1.0質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。
半透膜を、窒素雰囲気下、150℃で4時間静置して乾燥させた後、秤量する。半透膜を、DMSOまたは水に浸し、25℃で24時間静置する。半透膜を、DMSOまたは水から取り出し、窒素雰囲気下、150℃で4時間静置して乾燥させた後、秤量する。半透膜の浸漬前後の質量に基づき、下記式から質量減少率を算出する。
質量減少率=(半透膜の浸漬前の質量-半透膜の浸漬後の質量)/半透膜の浸漬前の質量×100
前記溶解量は、たとえば前記樹脂(A)を架橋することにより小さくでき、したがって前記プロトン酸基当量が小さくても前記溶解量を上記の範囲とすることができる。
(半透膜の製造方法)
本発明では、前記半透膜はプレス成型、押出成形等の公知の成形方法を用いて得ることができる。その中でも薄膜を製造し易い観点から、前記樹脂を含むワニスをキャストして膜を得る方法は好ましい。具体的には、前記ワニスを基材となるフィルムに塗布し、溶剤を揮発除去することにより半透膜を得ることができる。さらに、半透膜を前記フィルムから剥離して自立膜とすることもできる。
(樹脂(A)のワニス)
樹脂(A)は、その分子構造が基本的には直鎖状であり、前記多官能化合物に由来する架橋構造を有していてもその量は僅かであることから、溶剤溶解性に優れる。したがって、樹脂(A)を溶剤に溶解したワニスの形態とすることができる。
ワニスを形成する所謂溶剤として用いられる有機化合物(S)の例としては、特に制限はなく、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、塩化メチル、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類、ジクロロエチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどの脂肪酸エステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノールなどのセロソルブ類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、炭酸ジメチルなどの非プロトン性極性溶剤類が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を混合して使用できる。中でも、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、t-ブチルアルコールなど)、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどは、水溶性のため好ましく、更にこれらと水との混合溶剤も好ましい。ワニス中の樹脂濃度は、ワニスの使用方法により選択できるが、好ましくは1質量%以上80質量%以下である。
(フィルム)
本発明のキャスト法に用いられるフィルム(所謂離型フィルム)は、離型性に優れたフィルムであることが好ましい。
上記のようなフィルムの材質は、具体的にはガラス板、PETフィルム、PBTフィルムなどのポリエステルフィルムなどが代表例である。その他、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ4メチル-1-ペンテンフィルム(商品名:TPX(登録商標))等のポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム等のハロゲン含有フィルム、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルなどのポリ(メタ)アクリレート系フィルム、各種ナイロンフィルム等のポリアミドフィルム、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル等の極性基を含むオレフィン系フィルム、ポリビニルアルコールなどのヒドロオキシ基を含むフィルム等も例示できる。
上記の中では、乾燥条件を高温にし易いことやコストなどを考慮すると、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムが好ましく、特に好ましくはポリエステルフィルムである。
また、その表面形状はできるだけ平滑であることが好ましい。また、表面に離型層を有するフィルムであることが好ましい。前記の離型層の原料としては、例えばシリコーン系の離型剤など公知の材料を用いることが可能である。
前記半透膜中にキャスト時の有機溶剤などが残存している場合には、前記半透膜は機械強度が低下し破損しやすくなる恐れがある。そのため、キャスト法により製造された前記半透膜には、十分な乾燥、および/または水、硫酸水溶液、塩酸などでの洗浄を施すことが好ましい。
なお、前記半透膜の製造に用いる前記樹脂(A)が有する前記プロトン酸基が、プロトンを放出し易い官能基において水素原子がNaまたはKで置換されたものである場合に、該樹脂(A)の膜を形成し、次いでこの膜を塩酸、硫酸水溶液などと接触させることにより前記プロトン酸基が有するNaまたはKを水素原子に置換してもよい。
上述したプロトン酸基の濃度が、前記半透膜の厚さ方向において勾配を有する半透膜、具体的には積層膜は、たとえば、樹脂(A1)を含有する層(L1)を形成し、続いて前記層(L1)上に樹脂(A2)を含有する層(L2)を形成することにより得ることができ、また、樹脂(A2)を含有する層(L2)を形成し、続いて前記層(L2)上に樹脂(A1)を含有する層(L1)を形成することにより得ることもできる。
上記のL2層を形成する際に用いるワニスに含まれる有機化合物(S)は、勿論、L1層が不溶、難溶な化合物であることが望ましい。
前記の積層工程において、その任意の工程(例えば、第1の膜を形成する工程、第2の膜を形成して積層構造とする工程等)で、UV等の光線照射、プラズマ処理などを行うことができる。特には樹脂(A2)を含む層に前記光線照射を行うことが好ましい。
また、上述した樹脂(A1)および(A2)を少なくとも含む混合物から形成された半透膜は、例えば、前記混合樹脂またはワニスの撹拌速度により、前記の相分離構造の分散径を調整することができる。
<多孔質基材>
本発明の半透膜は、多孔質基材やメッシュ材などの層と併用することが、ハンドリングなどの観点で好ましい。
前記多孔質基材の通気度は、100~400cm3/cm2/sであることが好ましい。この通気度はJIS L 1096に記載のA法(フラジール形法)に基づき、以下のように測定される。
20cm×20cmの試験片を試験機に取り付け、傾斜形気圧計が125Paの圧力になるように吸い込みファン及び空気孔を調整し、垂直形気圧計の示す圧力を測定する。測定した圧力と空気孔の種類から試験機に附属の換算表によって試験片を通過する空気量を求める。
また、前記多孔質基材の厚さは、通常50~700μm、好ましくは80~600μm、更に好ましくは100~500μmである。
正浸透膜は、このように高い通気度を有しかつ薄い多孔質基材が好ましく用いられるため、正浸透膜を使用する際に多孔質基材の内部に生じる濃度分極が抑制され、かつ水が正浸透膜を透過する時の流体抵抗を小さくでき、結果として正浸透膜における水の透過性を高くすることができる、と考えられる。前記多孔質基材の通気度および厚さは、常法により制御することができる。
多孔質基材を構成する好ましい材質としては、合成樹脂および天然繊維を挙げることができる。
合成樹脂としては、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が挙げられ、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の具体例としては、オレフィン系重合体、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、(メタ)アクリル系樹脂を挙げることができる。これらの中でも、オレフィン系重合体及びポリエステル樹脂が好ましく、オレフィン系重合体が特に好ましい。
オレフィン系重合体としては、具体的には、α-オレフィンの単独重合体もしくは共重合体、またはα-オレフィンと他のモノマーとの共重合体である。α-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの炭素数2~8のα-オレフィンが挙げられる。オレフィン系重合体には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、4-メチル-1-ペンテン・1-デセン共重合体などのポリオレフィン樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのα-オレフィンと他のモノマーとの共重合体が含まれる。
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。ポリアミド樹脂としては、たとえば、ナイロン6、ナイロン66が挙げられる。
天然繊維としては、綿、麻などの植物繊維、絹、羊毛などの動物繊維が挙げられる。中でも、綿および絹が好ましい。
前記多孔質基材としては、織布、不織布、編布などの布質基材、発泡シートなどが挙げられ、中でも布質基材が好ましく、織布および不織布がさらに好ましく、不織布が特に好ましい。
不織布としては、スパンボンド法による長繊維不織布、メルトブローン法による短繊維不織布、フラッシュ紡糸不織布などの長繊維不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、ケミカルボンド不織布などを挙げることができるが、スパンボンド不織布及びメルトブローン不織布が好ましい。中でもスパンボンド不織布が好ましく、ポリエチレンテレフタレートまたはポリプロピレンのスパンボンド不織布が特に好ましい。
前記不織布は、構成する繊維を異なった樹脂による複合繊維とし、繊維外表面側に異なった樹脂を配した芯鞘型またはサイドバイサイド型複合繊維であってもよい。複合繊維の例としてポリエチレン/ポリプロピレンの芯鞘型またはサイドバイサイド型複合繊維が挙げられる。
前記不織布は、積層不織布であってもよい。積層不織布の例としては、スパンボンド不織布およびメルトブローン不織布を含む積層不織布が挙げられ、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とが積層されたもの(SM)、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とスパンボンド不織布とがこの順序で積層されたもの(SMS)などが挙げられる。
このような積層不織布を得るには、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とを積層し、両者を一体化して形成させる。一体化する方法の例としては、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布を重ね合わせて加熱加圧する方法、ホットメルト接着剤、溶剤系接着剤等の接着剤によって両者を接着する方法、スパンボンド不織布の上にメルトブローン法により繊維を堆積させて熱融着する方法が挙げられる。
前記不織布は、不織布の間に微小孔を有する多孔性フィルムを挟んだ形態の積層不織布であってもよい。このような形態の積層不織布として、たとえば、ポリプロピレン(PP)不織布と多孔性PPフィルムとPP不織布(SFS)とがこの順序で積層されたもの、PP不織布と多孔性PPフィルムとレーヨンPP不織布(SFR)とがこの順序で積層されたものなどを挙げることができる。
前記不織布の目付(積層不織布の場合には積層不織布としての目付)は、好ましくは10~80g/m2程度、より好ましくは20~40g/m2程度である。
本発明の正浸透膜は、前記半透膜の両面に前記多孔質基材を備えていてもよい。この態様であれば、正浸透膜の強度がさらに向上する。
本発明の正浸透膜は、前記半透膜の両面または片面に前記多孔質基材以外の層を、半透膜/多孔質基材以外の層/多孔質基材の順序となるように含んでも良いが、良好な透過性を得る面から多孔質基材以外の層を含まない方が好ましい。多孔質基材以外の層としてポリアミド層を含んでもよいが、その厚さは100μm以下が好ましい。
<正浸透膜の製造方法>
前記正浸透膜は、たとえば前記半透膜を自立膜として製造し、前記半透膜をその両面から2つの前記多孔質基材で挟むことによって製造することができる。
前記正浸透膜は、具体的には以下の手順で製造することができる。たとえば、PET等からなる基材上に乾燥後の厚みが目的の厚さとなるよう樹脂(A)の希薄溶液を塗布し、乾燥後、形成された膜を自立膜として剥がす。この塗布から自立膜とするまでの工程において、前記の光線照射工程やプラズマ処理工程を設けるのが本発明の好ましい態様の一つとなる。この中で、乾燥工程の後、自立膜として剥離する工程の前に前記の光線照射を行うことも好ましい。
本発明は、該自立膜に、不織布等の1つまたは2つの多孔質基材でその片側あるいは両側に設置し、正浸透膜を製造する方法である。また、本発明の光線照射工程は、前記の成膜工程以外に、この多孔質膜と前記半透膜とを用いて正浸透膜とする工程の中に設けてもよい。
該正浸透膜の面積が大きい場合には、半透膜と多孔質基材との間隔を維持するために、両者を透過性に影響を与えない程度に、接着剤を用いて接着してもよい。
また前記正浸透膜は、前記半透膜を自立膜として製造し、これを前記多孔質基材上に積層することによっても製造することができる。この際に両者を、接着剤を用いて貼り合わせてもよい。
前記製造方法によれば、上述した半透膜をまず自立膜として製造し、これを多孔質基材(不織布等)上に積層したり、2枚の多孔質基材(不織布等)で挟んだりして正浸透膜を製造するため、半透膜の厚さが制御され、かつ高い水透過性および高い塩阻止率を示す正浸透膜を、簡便に製造することができる。
[正浸透膜の用途]
本発明の正浸透膜エレメントは、上述した本発明の正浸透膜およびスペーサーを備えている。換言すると、本発明の正浸透膜エレメントは、正浸透膜およびスペーサーを備える従来の正浸透膜エレメントにおいて、正浸透膜として本発明の正浸透膜が使用されたものである。スペーサーとしては、正浸透膜エレメントに使用される従来公知のスペーサーを使用することができる。
本発明の正浸透膜モジュールは、本発明の正浸透膜エレメントを容器に収容してなる。換言すると、本発明の正浸透膜モジュールは、正浸透膜エレメントを容器に収容してなる従来の正浸透膜エレメントにおいて、正浸透膜エレメントとして本発明の正浸透膜エレメントが使用されたものである。容器としては、正浸透膜モジュールに使用される従来公知の容器を使用することができる。
本発明のシステムは、本発明の正浸透膜モジュール、および前記正浸透膜モジュールが備える本発明の正浸透膜の一方の面にフィード溶液(FS)を、もう一方の面に前記フィード溶液よりも塩等の溶質濃度が高いドロー溶液(DS)を流すための駆動ポンプを有し、前記フィード溶液に含まれる水を、前記正浸透膜を通して前記ドロー溶液へ移動させることのできるように構成されている。
このような装置であれば、FS側からDS側に圧力をかけることもできる。本発明の態様においては、FS側からDS側に圧力をかけると好ましい場合があり、例えば、FS側からDS側に好ましくは15kPa以下、より好ましく12kPa以下、さらに好ましくは10kPa以下の圧力をかけると好ましい場合がある。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
本実施例および比較例で用いた略称の内容を示す。
(1)溶媒
DMSO :ジメチルスルホキシド
NMP :N-メチル-2-ピロリドン
DMF :N,N-ジメチルホルムアミド
(2)芳香族ポリエーテルの構成成分
DFBP :4,4'-ジフルオロベンゾフェノン
DSDFBP:5,5'-カルボニルビス(2-フルオロベンゼンスルホン酸ナトリウム)
BPA :4,4'-(2, 2-プロパンジイル)ジフェノール
TMBPF :3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ジヒドロキシジフェニルメタン
各種測定方法
(溶解度パラメータの計算方法)
樹脂の溶解度パラメータは下記式にて算出した。
Figure 2022149644000008
上記式中、δtotは、溶解度パラメータ(分散力パラメータ、極性パラメータ、水素結合パラメータの総和:単位=[J1/2/cm3/2] =MPa1/2)を示し、Dは分散力を示し、Pは極性を示し、Hは水素結合の寄与分を示し、Ecohは凝集エネルギーを示し、Vは対象分子の占有体積を示す。
計算科学ソフト:HSPiP(Hansenの方法)を使用し、後述する構造(U1)、(U2)、(UC1)、(UC2)より、実施例の樹脂と比較例の樹脂の溶解度パラメーター値(SP値)を計算した。計算結果を表2に示す。
(膜厚の測定方法)
ニコン社製デジマイクロMH-15M型装置(接触式の膜厚測定装置:最小読み取り値:0.01μm)を用い、下記の方法で測定した。結果を表3に示す。
基材上にワニスを塗布し、乾燥させて得た段階、即ち「基材/塗工膜」の積層体の段階で、一部を厚さ測定用のサンプルとして切り出し。その厚さを上記装置を用いて測定した(厚A(μm))。次いで、測定箇所の膜を基材から剥離した後、当該箇所の基材の厚さを測定した(厚B(μm))。
上記の結果から、「膜厚=厚A-厚B」式で値を算出する。測定は5か所以上行い、その平均値を膜厚として決定した。2層以上の積層構造の半透膜の場合は、層を形成する毎に上記の操作を繰り返した(測定箇所5か所以上の平均値)。それぞれの測定値の差から、各層の膜厚を決定した。
(正浸透膜の評価方法)
図1に示したような装置10を用い、下記の方法で正浸透膜の性能を評価した。該装置10は、フィード溶液タンク1、流路2、ポンプ3、ドロー溶液タンク11、流路12、ポンプ13および評価用セル21を備えている。フィード溶液タンク1は天秤4上に設置され、ドロー溶液タンク11は電気伝導度計15を備えている。評価開始時において、フィード溶液タンク1には、フィード溶液FS(Feed Solution)として、50μS/cm以下の電気伝導度を持つMilli-Q水が500g蓄えられ、ドロー溶液タンク11には、ドロー溶液DS(Draw Solution)として、0.6Mの硫酸アンモニウム水溶液が800g蓄えられている。フィード溶液タンク1中のフィード溶液は、ポンプ3の使用により0.6L/分の速度で流路2を流れ、ドロー溶液タンク11中のドロー溶液は、ポンプ13の使用により0.6L/分の速度で流路12を流れる。流路2を流れるフィード溶液と流路12を流れるドロー溶液とは、評価用セル21の内部で有効膜面積0.0042m2の正浸透膜22を介して接触しており、正浸透膜22を介してフィード溶液の一部はドロー溶液へと移動し、ドロー溶液中の塩(NaCl)の一部はフィード溶液へと移動(逆流)する。
<水透過流束(Jw)>
天秤4により1分毎にフィード溶液の重量減少量を測定し、単位時間、正浸透膜の単位面積当たりの重量減少量を水透過流束(L/(m2・h))とした。結果を表3に示す。
<塩逆拡散透過係数(SRSF)>
電気伝導度計15により1分毎にドロー溶液の電気伝導度の変化を測定し、これをドロー溶液の重量の変化に換算し、単位時間、正浸透膜の単位面積当たりの重量の変化を塩透過量(g/(m2・h))とした。更に、この数値を前記透過流束(Jw)により割ることによって、SRSF値(g/L)を算出した。結果を表3に示す。
(樹脂合成例1)
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた5つ口反応器に、合成例1で得られたDSDFBP40.2g(0.095mol)、DFBP62.2g(0.285mol)、BPA 86.8g(0.380mol)および炭酸カリウム65.7g(0.475mol)を秤取した。これにDMSO756.2gとトルエン302.1gを加え、窒素雰囲気下で撹拌し、130℃で12時間加熱し、生成する水を系外に除去した後、トルエンを留去した。
引き続き、160℃で12時間反応を行い、粘稠なポリマー溶液を得た。得られた溶液にトルエン570gを加えて希釈した後、メタノール2400gに排出し、析出したポリマー粉を濾過、洗浄後、150℃で4時間乾燥してポリエーテルケトン粉160.6g(樹脂1)を得た。樹脂(1)は、前記構造単位(1)として、
Figure 2022149644000009
で表される構造(U1)を、前記構造単位(2)として、
Figure 2022149644000010
で表される構造(U2)を有している。
前記構造(U1)の含有率は25モル%であった(但し、前記構造(U1)と前記構造(U2)との合計を100モル%とする。以下同様。)。
(樹脂合成例2)
樹脂の原料および溶媒を、DSDFBP48.1g(0.114mol)、DFBP58.0g(0.265mol)、BPA 86.8g(0.380mol)および炭酸カリウム65.7g(0.475mol)、ならびにDMSO756.2gとトルエン302.1gとした他は実施例1と同様にしてポリマー粉160.2g(樹脂2)を得た。前記構造(U1)の含有率は30モル%であった。
(樹脂合成例3)
樹脂の原料および溶媒を、DSDFBP64.2g(0.152mol)、DFBP49.8g(0.228mol)、BPA 86.8g(0.380mol)および炭酸カリウム65.7g(0.475mol)、ならびにDMSO756.2gとトルエン302.1gとした他は樹脂合成例1と同様にしてポリマー粉159.8g(樹脂3)を得た。前記構造(U1)の含有率は40モル%であった。
(樹脂合成例4)
樹脂の原料および溶媒を、DSDFBP96.3g(0.228mol)、DFBP33.2g(0.152mol)、BPA 86.8g(0.380mol)および炭酸カリウム65.7g(0.475mol)、ならびにDMSO756.2gとトルエン302.1gとした他は樹脂合成例1と同様にしてポリマー粉160.1g(樹脂4)を得た。前記構造(U1)の含有率は60モル%であった。
(参考樹脂合成例N5)
樹脂の原料および溶媒を、DSDFBP80.2g(0.190mol)、DFBP41.5g(0.190mol)、TMBPF97.4g(0.380mol)および炭酸カリウム65.7g(0.475mol)、ならびにDMSO876.4gおよびトルエン292.1gとした他は樹脂合成例1と同様にしてポリマー粉174.6g(樹脂N5)を得た。樹脂N5は、前記構造単位(1)として、
Figure 2022149644000011
で表される構造(UC1)を、前記構造単位(2)として、
Figure 2022149644000012
で表される構造(UC2)を有している。前記構造(UC1)の含有率は50モル%であった(但し、前記構造(UC1)と前記構造(UC2)との合計を100モル%とする。以下同様。)。
(参考樹脂合成例N6)
樹脂の原料および溶媒を、DSDFBP96.3g(0.228mol)、DFBP33.2g(0.152mol)、TMBPF97.4g(0.380mol)および炭酸カリウム65.7g(0.475mol)、ならびにDMSO907.5gおよびトルエン302.5gとした他は樹脂合成例1と同様にしてポリマー粉173.6g(樹脂N6)を得た。前記構造(UC1)の含有率は60モル%であった。
(比較樹脂合成例1)
樹脂の原料および溶媒を、DSDFBP40.1g(0.095mol)、DFBP62.2g(0.285mol)、TMBPF97.4g(0.380mol)および炭酸カリウム65.7g(0.475mol)、ならびにDMSO783.4gとトルエン261.1gとした他は樹脂合成例1と同様にしてポリマー粉171.6g(樹脂C1)を得た。前記構造(UC1)の含有率は25モル%であった。
(比較樹脂合成例2)
樹脂の原料および溶媒を、DSDFBP48.1g(0.114mol)、DFBP58.0g(0.265mol)、TMBPF97.4g(0.380mol)および炭酸カリウム65.7g(0.475mol)、ならびにDMSO814.4gおよびトルエン271.5gとした他は実施例1と同様にしてポリマー粉175.2g(樹脂C2)を得た。前記構造(UC1)の含有率は30モル%であった。
(比較樹脂合成例3)
樹脂の原料および溶媒を、DSDFBP64.2g(0.152mol)、DFBP49.8g(0.228mol)、TMBPF97.4g(0.380mol)および炭酸カリウム65.7g(0.475mol)、ならびにDMSO845.4gおよびトルエン281.8gとした他は樹脂合成例1と同様にしてポリマー粉168.7g(樹脂C3)を得た。前記構造(UC1)の含有率は40モル%であった。
上記で合成した各樹脂のスルホン酸基を含む構造単位(スルホン酸ユニット)含有量を下記表1に示す。また、上記で合成した各樹脂の溶解度パラメータを下記表2に示す。
Figure 2022149644000013
Figure 2022149644000014
[実施例1]
樹脂合成例1で製造した樹脂1をDMFとトルエンとの混合溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを離型PET基材(表面平滑フィルム)上にキャストし、110℃で3分乾燥し、これをPET基材から剥離して自立膜とし膜1を得た。
[実施例2]
樹脂合成例2で製造した樹脂2をDMFとトルエンとの混合溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを前記離型PET基材上にキャストし、110℃で3分乾燥し、これをPET基材から剥離して自立膜とし膜2を得た。
[実施例3]
樹脂合成例3で製造した樹脂3をDMFとトルエンとの混合溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを前記離型PET基材上にキャストし、110℃で3分乾燥し、これをPET基材から剥離して自立膜とし膜3を得た。
[正浸透膜の作成]
JIS L 1096記載のA法(フラジール形法)で測定される通気度が300m3/cm2/s、厚さが290μm、材質がポリプロピレンである不織布(三井化学(株)製「シンテックス(登録商標)PS-105」)を2枚準備し、これらの不織布で前記膜1~3を挟み、これらを一体化させて、実施例1~3の正浸透膜を得た。評価結果を表3に示す。
[実施例4]
樹脂合成例1で製造した樹脂1をDMFおよびトルエンとの混合溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを前記離型PET基材上にキャストし、110℃で3分乾燥して樹脂1の膜を得た。その後、参考樹脂合成例5で製造した樹脂N5をメチルセロソルブの溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを上記樹脂1の膜上にキャストし、160℃で3分乾燥して二層膜を得て、これをPET基材から剥離して自立膜とし膜4を得た。
[実施例5]
樹脂合成例1で製造した樹脂1をDMFおよびトルエンとの混合溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを前記離型PET基材上にキャストし、110℃で3分乾燥して膜を得た。その後、参考樹脂合成例6で製造した樹脂N6をメチルセロソルブの溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを上記樹脂1の膜上にキャストし、160℃で3分乾燥して二層膜を得て、この後、これをPET基材から剥離して自立膜とし膜5を得た。
[実施例6]
樹脂合成例1で製造した樹脂1をDMFおよびトルエンとの混合溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを前記離型PET基材上にキャストし、110℃で3分乾燥して膜を得た。その後、参考樹脂合成例4で製造した樹脂4をメチルセロソルブの溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを上記樹脂1の膜上にキャストし、160℃で10分乾燥して二層膜を得た後、これをPET基材から剥離して自立膜とし膜6を得た。
[実施例7]
樹脂合成例2で製造した樹脂2をDMFおよびトルエンとの混合溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを前記離型PET基材上にキャストし、110℃で3分乾燥して樹脂2の膜を得た。その後、参考樹脂合成例5で製造した樹脂N5をメチルセロソルブの溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを上記樹脂2の膜上にキャストし、160℃で3分乾燥して二層膜を得た後、これをPET基材から剥離して自立膜とし膜7を得た。
[実施例8]
樹脂合成例2で製造した樹脂2をDMFおよびトルエンとの混合溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを前記離型PET基材上にキャストし、110℃で3分乾燥して膜を得た。その後、参考樹脂合成例6で製造した樹脂N6をメチルセロソルブの溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを上記樹脂3の膜上にキャストし、160℃で3分乾燥して二層膜を得た後、これをPET基材から剥離して自立膜とし膜8を得た。
[実施例9]
樹脂合成例3で製造した樹脂3をDMFおよびトルエンとの混合溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを前記離型PET基材上にキャストし、110℃で3分乾燥して膜を得た。その後、参考樹脂合成例5で製造した樹脂N5をメチルセロソルブの溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを上記樹脂3の膜上にキャストし、160℃で10分乾燥して二層膜を得た後、これをPET基材から剥離して自立膜とし膜9を得た。
[実施例10]
樹脂合成例3で製造した樹脂3をDMFおよびトルエンとの混合溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスをPET基材上にキャストし、110℃で3分乾燥して膜を得た。その後、参考樹脂合成例6で製造した樹脂N6をDMFおよびメチルセロソルブとの溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを樹脂3の膜上にキャストし、160℃で10分乾燥して二層膜を得た後、これをPET基材から剥離して自立膜とし膜10を得た。
[正浸透膜の作成]
材質がポリエステルである不織布(廣瀬製紙(株)製「05TH-20」)を2枚準備し、これらの不織布で前記膜4~10を挟み、これらを一体化させて、実施例4~10の正浸透膜を得た。評価結果を表3に示す。
[比較例1]
比較樹脂合成例1で製造した樹脂C1をDMFおよびトルエンとの溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを前記離型PET基材上にキャストし、110℃で3分乾燥し、これをPET基材から剥離して自立膜とし膜C1を得た。
[比較例2]
比較樹脂合成例2で製造した樹脂C2をDMFおよびトルエンとの溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを前記離型PET基材上にキャストし、110℃で3分乾燥し、これをPET基材から剥離して自立膜とし膜C2を得た。
[比較例3]
比較樹脂合成例3で製造した樹脂C3をDMFおよびトルエンとの溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを前記離型PET基材上にキャストし、110℃で3分乾燥し、これをPET基材から剥離して自立膜とし膜C3を得た。
[比較例4]
比較樹脂合成例1で製造した樹脂C1をDMFおよびトルエンとの混合溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを前記離型PET基材上にキャストし、110℃で3分乾燥して樹脂C1の膜を得た。その後、参考樹脂合成例5で製造した樹脂N5をメチルセロソルブの溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを樹脂C1の膜上にキャストし、160℃で3分乾燥して二層膜を得た後、これをPET基材から剥離して自立膜とし膜C4を得た。
[比較例5]
比較樹脂合成例1で製造した樹脂C1をDMFおよびトルエンとの混合溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを前記離型PET基材上にキャストし、110℃で3分乾燥して樹脂C1の膜を得た。その後、参考樹脂合成例6で製造した樹脂N6をメチルセロソルブの溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを樹脂1の膜上にキャストし、160℃で3分乾燥して二層膜を得た後、これをPET基材から剥離して自立膜とし膜C5を得た。
[比較例6]
比較樹脂合成例2で製造した樹脂C2をDMFおよびトルエンとの混合溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを前記離型PET基材上にキャストし、110℃で3分乾燥して樹脂C2の膜を得た。その後、参考樹脂合成例5で製造した樹脂N5をメチルセロソルブの溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを樹脂C2の膜上にキャストし、160℃で3分乾燥して二層膜を得た後、これをPET基材から剥離して自立膜とし膜C6を得た。
[比較例7]
比較樹脂合成例2で製造した樹脂C2をDMFおよびトルエンとの混合溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを前記離型PET基材上にキャストし、110℃で3分乾燥して樹脂C2の膜を得た。その後、参考樹脂合成例6で製造した樹脂N6をメチルセロソルブの溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを樹脂C2の膜上にキャストし、160℃で3分乾燥して二層膜を得た後、これをPET基材から剥離して自立膜とし膜C7を得た。
[比較例8]
比較樹脂合成例3で製造した樹脂C3をDMFおよびトルエンとの混合溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを前記離型PET基材上にキャストし、110℃で3分乾燥して樹脂C3の膜を得た。その後、参考樹脂合成例5で製造した樹脂N5をメチルセロソルブの溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを樹脂C3の膜上にキャストし、160℃で3分乾燥して二層膜を得た後、これをPET基材から剥離して自立膜とし膜C8を得た。
[比較例9]
比較樹脂合成例3で製造した樹脂C3をDMFおよびトルエンとの混合溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを前記離型PET基材上にキャストし、110℃で3分乾燥して樹脂C3の膜を得た。その後、参考樹脂合成例6で製造した樹脂N6をメチルセロソルブの溶媒に溶解させてワニスを調製し、このワニスを樹脂C3の膜上にキャストし、160℃で3分乾燥して二層膜を得た後、これをPET基材から剥離して自立膜とし膜C9を得た。
[正浸透膜の作成]
材質がポリエステルである不織布(廣瀬製紙(株)製「05TH-20」)を2枚準備し、これらの不織布で前記膜C4~C9を挟み、これらを一体化させて、比較例1~9の正浸透膜を得た。評価結果を表3に示す。
Figure 2022149644000015
1 フィード溶液タンク
2、12 流路
3、13 ポンプ
4、14 天秤
10 評価装置
11 ドロー溶液タンク
15 電気伝導度計
21 評価用セル
22 正浸透膜
DS ドロー溶液
FS フィード溶液

Claims (4)

  1. 芳香族構造と、
    プロトン酸構造と、
    エーテル構造(-O-)およびケトン構造(-CO-)から選ばれる構造とを含み、
    (I)プロトン酸基を有する構造単位の溶解度パラメータが24.0~26.0であり、
    (II)プロトン酸基の無い構造単位の溶解度パラメータが21.0~24.0
    である構造単位を有する樹脂(A)を含む、自立膜である正浸透膜。
  2. 前記樹脂(A)が、下式(1)で表される構造単位(1)および下式(2)で表される構造単位(2)を有し、R1~R5およびX1~X5の全ての置換基数を100モル%として、X1~X5およびR1~R5の置換基の76モル%以上が水素原子(-H)であり、且つ、R6~R10の全ての置換基数を100モル%として、R6~R10の置換基の76モル%以上が水素原子(-H)である、請求項1に記載の正浸透膜。
    Figure 2022149644000016
    [式(1)および(2)において、
    1~R10は、それぞれ独立して、H、Cl、F、CF3またはCm2m+1(mは1~10の整数を示す。)であり、
    1~R10の少なくとも1つはCm2m+1(mは1~10の整数を示す。)であり、
    1~R10は、それぞれ芳香環に2つ以上存在してもよく、1つの芳香環にCm2m+1が2つ以上存在する場合には、各Cm2m+1は互いに同一であっても異なっていてもよい。
    1~X5は、それぞれ独立して、H、Cl、F、CF3またはプロトン酸基であり、
    1~X5の少なくとも1つはプロトン酸基であり、
    1~X5は、それぞれ芳香環に2つ以上存在してもよく、1つの芳香環にプロトン酸基が2つ以上存在する場合には、各プロトン酸基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
    1~A6は、それぞれ独立して、直接結合、-CH2-、-C(CH32-、-C(CF32-、-O-または-CO-である。
    i,j,kおよびlは、それぞれ独立して、0または1を示す。]
  3. 前記樹脂(A)が、プロトン酸基含有樹脂(A1)と、前記(A1)とプロトン酸基含有構造単位のモル分率が異なる樹脂(A2)とを含む、請求項1に記載の正浸透膜。
  4. 前記正浸透膜が、前記樹脂(A1)を含む層と、前記樹脂(A2)を含む層とを有する積層体である、請求項3に記載の正浸透膜。
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