JPWO2019189532A1 - 耐摩耗性部品 - Google Patents

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Abstract

本発明の一態様は、母材表面にCr−Ni系合金の被覆層を有する耐摩耗性部品であって、前記被覆層の最表面から深さ0.2mmの表層領域の組成が質量%で、40.0%超65.0%以下のCrと、0%以上35.0%以下のFeと、0%以上2.0%未満のMnと、次の(1)〜(3)の何れかと、を含み、(1)1.1%超4.0%以下のC(2)0.7%以上3.0%以下のB(3)0.5%以上2.5%以下のCと、0%超20%以下のNb残部がNiおよび不可避的不純物からなり、前記Niは15%以上であり、前記表層領域に、塊状Cr炭化物、塊状Cr硼化物、Nb系炭化物の少なくとも何れか一種を有する耐摩耗性部品を提供する。

Description

本開示は、耐摩耗性部品に関するものである。
例えば、土砂などを含む高粘度流体の輸送で用いられるスクリューポンプや、岩石やコンクリート廃材などを破砕するジョークラッシャーや、金型、ドリル等、部品自らが摺動する用途や、或いは、部品の相手材が移動することにより部品が摩耗するような、耐摩耗性が要求される部品(以下、耐摩耗性部品)には、母材となる合金の表面に耐摩耗性を付与するために被覆層を形成して、その耐摩耗性を確保している。
前記被覆層において、特に過酷な条件で用いられる部品には、例えば、特開2005−314721号公報では、高温腐食、高温摩耗および結露腐食に曝される水冷式鉄鋼製管構造体の鉄鋼基材表面にNiを60質量%以上含有する接合皮膜と、Crを22〜60質量%、Niを35質量%以上それぞれ含有する合金を被覆させた耐食・耐摩耗皮膜を有する水冷式鉄鋼製管構造体の発明がある。
特開2005−314721号公報
上述した特開2005−314721号公報に開示される水冷式鉄鋼製管構造体は、母材(特開2005−314721号公報では「鉄鋼基材」として記される)上に、接合皮膜、耐食・耐摩耗皮膜を順番に積層し、更に、酸化防止・耐摩耗皮膜を積層することが可能なものである。積層構造とすると皮膜形成を複数回実施する必要がある。また、水冷式鉄鋼製管構造体用の部材に限定した合金の構成となっているため、例えば、部材自身が摺動するような用途への適用は想定されていない。
本開示の一態様は、部品自らが摺動する用途や、或いは、部品の相手材が移動することにより部品が摩耗するような用途に用いられ、耐摩耗性と耐食性が要求される耐摩耗性部品として好適な耐摩耗性部品を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 母材表面にCr−Ni系合金の被覆層を有する耐摩耗性部品であって、
前記被覆層の最表面から深さ0.2mmの表層領域の組成が質量%で、
40.0%超65.0%以下のCrと、
0%以上35.0%以下のFeと、
0%以上2.0%未満のMnと、
次の(1)〜(3)の何れかと、を含み、
(1)1.1%超4.0%以下のC
(2)0.7%以上3.0%以下のB
(3)0.5%以上2.5%以下のC、0%超20%以下のNb
残部がNiおよび不可避的不純物からなり、前記Niは15%以上であり、
前記表層領域に、塊状Cr炭化物、塊状Cr硼化物、Nb系炭化物の少なくとも何れか一種を有する耐摩耗性部品。
<2> 質量%で、
46.0%超65.0%以下のCrと、
0%以上30.0%以下のFeと、
0%以上2.0%未満のMnと、
1.1%超4.0%以下のCと、を含み、
残部がNiおよび不可避的不純物からなる、<1>に記載の耐摩耗性部品。
<3> 質量%で、
45.0%以上65.0%以下のCrと、
0%以上35.0%以下のFeと、
0%以上2.0%未満のMnと、
0.7%以上3.0%以下のBと、を含み、
残部がNiおよび不可避的不純物からなる、<1>に記載の耐摩耗性部品。
<4> 質量%で、
40.0%超65.0%以下のCrと、
0%以上30.0%以下のFeと、
0.5%以上2.5%以下のCと
0%超20%以下のNbと、を含み、
残部がNiおよび不可避的不純物からなる、<1>に記載の耐摩耗性部品。
<5> 質量%で、
0%以上1.0%以下のSi、
0%以上0.05%以下のAl、
0%以上0.3%以下のSn、
0%以上5.0%以下のCu、
の少なくとも一種類以上を含む<1>乃至<4>の何れかに記載の耐摩耗性部品。
<6> 前記被覆層の厚さ方向の断面を見たとき、前記表層領域にある前記塊状Cr炭化物は、その内側に直径が5μm以上の円を描くことができる大きさを有する<1>、<2>、<5>の何れかに記載の耐摩耗部品。
<7> 前記被覆層の厚さ方向の断面を見たとき、前記表層領域中に見られる前記塊状Cr炭化物の視野面積率が、0.25mm中に5〜45%である<1>、<2>、<5>、<6>の何れかに記載の耐摩耗性部品。
<8> 前記被覆層の厚さ方向の断面を見たとき、前記表層領域にある前記塊状Cr硼化物は、その内側に直径が3μm以上の円を描くことができる大きさを有する<1>、<3>、<5>の何れかに記載の耐摩耗部品。
<9> 前記被覆層の厚さ方向の断面を見たとき、前記表層領域中に見られる前記塊状Cr硼化物の視野面積率が、0.25mm中に5〜35%である<1>、<3>、<5>、<8>の何れかに記載の耐摩耗性部品。
<10> 前記被覆層の表層領域は、炭化物を含み、母相がフェライト相および/またはオーステナイト相である<1>、<4>、<5>の何れかに記載の耐摩耗性部品。
<11> 前記被覆層の厚さ方向の断面を見たとき、前記表層領域中にNb系炭化物を有し、前記Nb系炭化物は、塊状、棒状、点状、羽毛状および樹枝状の少なくとも一種の形態を有し、前記Nb系炭化物の視野面積率が、0.25mm中に5〜30%である<1>、<4>、<5>、<10>の何れかに記載の耐摩耗性部品。
本開示の一態様によれば、耐摩耗性と耐食性とに優れた耐摩耗性部品が提供される。この耐摩耗性部品は、摺動部品、或いは、部品の相手材が移動することにより部品が摩耗するような部品への適用が好適である。また、高い耐食性も兼ね備えているため、耐摩耗性と供に耐食性が求められるような部品へ適用することが可能である。
実施例のNo.11の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.12の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.13の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.14の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.15の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.16の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.17の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.18の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.19の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.20の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.21の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.22の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.51、52、53の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.54、55、56の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.57、58、59の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.60、61の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.81の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.82の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.83の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.84の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.85の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.86の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.87の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.88の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.89の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.90の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.91の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.92の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 実施例のNo.93の被覆層の組織の一例を示す電子顕微鏡写真である。 本開示の耐摩耗性部品の適用事例であるスクリューポンプ、射出成型金型および破砕機械の模式図である 実施例No.11〜22および比較例No.31〜36の耐食性および耐土砂摩耗性の評価結果を示す図である。 実施例No.51〜61および比較例No.31〜36の耐食性および耐土砂摩耗性の評価結果を示す図である。 実施例No.81〜93および比較例No.31〜36の耐食性および耐土砂摩耗性の評価結果を示す図である。
本明細書中において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本開示において段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示の耐摩耗性部品は、母材表面にCr−Ni系合金の被覆層を有する耐摩耗性部品であって、前記被覆層の最表面から深さ0.2mmの表層領域の組成が質量%で、
40.0%超65.0%以下のCrと、
0%以上35.0%以下のFeと、
0%以上2.0%未満のMnと、
次の(1)〜(3)の何れかと、を含み、
(1)1.1%超4.0%以下のC
(2)0.7%以上3.0%以下のB
(3)0.5%以上2.5%以下のCと、0%超20%以下のNb
残部がNiおよび不可避的不純物からなり、前記Niは15%以上であり、
前記表層領域に、塊状Cr炭化物、塊状Cr硼化物、Nb系炭化物の少なくとも何れか一種を有する耐摩耗性部品である。
本開示の耐摩耗性部品では、母材表面にCr−Ni系合金の被覆層を有し、その被覆層の表層領域を、塊状Cr炭化物、塊状Cr硼化物、Nb系炭化物の少なくとも何れか一種を有する金属組織としたことが重要な特徴の一つである。
この塊状Cr炭化物、塊状Cr硼化物、Nb系炭化物の少なくとも何れか一種を有する金属組織とすることにより、耐摩耗性と耐食性とを兼ね備えた耐摩耗性部品とすることができる。
本開示でいう「被覆層」とは、金属粉末材料等の肉盛等により、母材表面に形成された金属層を言う。なお、本開示の場合、前記金属層中には金属粉末の溶融・凝固によって晶出した炭化物または硼化物を少なくとも含むものである。また、被覆層の表層領域とは、被覆層の最表面から深さ0.2mmの領域である。
〔表層領域の化学組成〕
本開示の表層領域の組成は、質量%で、
40.0%超65.0%以下のCrと、
0%以上35.0%以下のFeと、
0%以上2.0%未満のMnと、
次の(1)〜(3)の何れかと、を含み、
(1)1.1%超4.0%のC
(2)0.7%以上3.0%以下のB
(3)0.5%以上2.5%以下のCと、0%超20%以下のNb
残部がNiおよび不可避的不純物からなり、前記Niは15%以上のものである。
Cr:40.0%超65.0%以下
Crは、耐食性及び耐摩耗性の向上に関わる炭化物の形成に寄与する。Crの含有率は40.0%超であり、耐食性と材料コストとの観点から、各成分のうちでCr成分が最大含有率であることが好ましい。これは、本開示の合金がNiよりも安価なCrを最大成分とすることで、例えば高価なNiを最大成分とするNi基合金よりも材料コストを低減できる利点がある。Crが40.0%以下になると、母相中への塊状Cr炭化物の出現量が減少し、耐摩耗性が不十分になる。一方、Crが65.0%超になると合金の融点が高くなり、肉盛用原料製造時において、溶解によるインゴット製造やアトマイズによる粉体化に要するエネルギーが増加して製造性が悪化し、製造コストが増大する。また、肉盛材料が高融点になり、肉盛施工に要する入熱量を多くする必要が生じ、母材による肉盛材の希釈や、母材の熱変形といった悪影響が大きくなってしまう。そのため、Crは65.0%以下とする。
また、Crは、後述するCと共に、耐摩耗性の向上に関わる炭化物の形成にも寄与する成分となる。つまり、上記した「(1)1.1%超4.0%以下のC」を含む場合、CrはCと共にCr炭化物を構成する。この形態において、Crの作用効果をより確実に発揮させるには、Crの含有率は46.0%超であることが好ましく、50.0%以上が更に好ましく、55.0%以上とすることがより好ましい。
また、Crは、後述するBと共に、耐摩耗性の向上に関わる硼化物の形成にも寄与する成分となる。つまり、上記した「(2)0.7%以上3.0%以下のB」を含む場合、良好な耐食性を得るために重要な成分である。Crの含有率が少ないと、合金組織中への硼化物の出現量が減少し、耐摩耗性が不十分になる傾向がある。このCrの作用効果をより確実に発揮させるには、Crを45.0%以上とすることが好ましく、より好ましくは50.0%以上、さらに好ましくは55.0%以上とすることが好ましい。
また、Crは、Cと共に、耐摩耗性の向上に関わる炭化物の形成にも寄与する成分となるが、上記した「(3)0.5%以上2.5%以下のCと、0%超20%以下のNb」を含む場合、CrはCと共にCr炭化物を構成する。Crの作用効果をより確実に発揮させるには、Crの含有率は40.0%超であり、更に43.0%以上とすることが好ましい。更に好ましくは50.0%以上、より好ましくは55.0%以上とすることが好ましい。
Fe:0%以上35.0%以下
Feは、Crなどと共に炭化物の形成に寄与する。炭化物の中にFeが固溶することで炭化物中のCr固溶量が減少し、炭化物周囲の母相中のCr濃度の低下が抑えられる。母相中のCr濃度低下は耐食性の低下を招くため、Fe添加することで耐食性が改善される。一方、Feが多過ぎると初晶でフェライトが晶出し、母相中における腐食電位差が大きくなることで局部腐食が発生し易くなる。よって本開示の合金に含まれるFeの含有量は35.0%以下とする。なお、Feを添加して上記の効果を得る場合は、少なくとも0.1%は添加すると良い。
また、Feは、上記した「(1)1.1%超4.0%以下のC」を含む場合、0%以上30.0%以下であることが好ましい。ここで、Feは上記したとおり、Crなどと共に炭化物の形成に寄与する。炭化物の中にFeが固溶することで炭化物中のCr固溶量が減少し、炭化物周囲の母相中のCr濃度の低下が抑えられる。また、母相中のCr濃度低下は耐食性の低下を招くため、Fe添加することで耐食性が改善される。一方、Feが多過ぎると初晶でフェライトが晶出し、母相中における腐食電位差が大きくなることで局部腐食が発生し易くなる。よって上記した形態の場合、Feの含有量は30.0%以下とすることが好ましい。材料の性能を損なわない限り0.1%以上の範囲で含有量を低く抑えることがさらに好ましい。耐摩耗性を考慮すると、Feの含有率の上限は15%以下、より好ましくは8%以下とすることが好ましい。
また、Feは、上記した「(2)0.7%以上3.0%以下のB」を含む場合、Feは、良好な機械的特性を確保することができるため、必要に応じて35.0%を上限として含有することができる。本開示は肉盛等による被覆層を有するものであるから、肉盛される母材の含有成分が熱拡散する。前記母材はFe基の合金工具鋼であることが多いため、Feは母材側から拡散することが想定される。このとき、熱拡散することを想定したうえで、更に母材の材質に応じて肉盛用原料製造時にFe無添加にすると、例えば、母材が合金工具鋼であった場合は、被覆層と母材との拡散層(接合部分付近)にはFeを含み、表層領域にはFeの含有が無い濃度勾配を生じる。前記を想定してFeの範囲は無添加(0%)を含んで35.0%以下とする。なお、Fe成分を積極添加する場合の含有率は0.1質量%以上が好ましい。一方、Fe含有率が過剰になると、800℃近傍の温度域で脆性の金属間化合物のσ相が生成し易くなり、Cr−Ni系合金の延性・靱性が著しく低下する(いわゆるσ相脆化)。よって本開示の合金に含まれるFeの含有量は35.0%以下とすることが好ましい。耐摩耗性を考慮すると、Feの含有率は20%以下、より好ましくは15%以下、更に好ましくは8%以下とすることが好ましい。
また、Feは、上記した「(3)0.5%以上2.5%以下のCと、0%超20%以下のNb」を含む場合、Feは耐食性を改善する元素であり、Fe添加によりフェライト相が晶出し、オーステナイト相との二相を形成し、硬く靭性のある高強度な母相(基地)を形成することができる。一方、Feの添加量を増やすと脆化相であるシグマ相が生成し、機械的特性を損なうことがある。よって本形態の場合、Feの含有量は30.0%以下とすることが好ましい。また、Feを多く添加することで高強度化の傾向にはあるが、一方、Cr量が減り、耐食性または耐摩耗性を悪化させる要因となる。耐摩耗性および耐食性が一定の特性を得るためには、20%以下の範囲であることが好ましい。より好ましくは16%以下である。また、本合金を安価な鉄鋼材の肉盛り肉盛材として使用する場合、基材となる鉄鋼材からのFeの混入があるため、Feは0%であってもかまわない。
Mn:0%以上2.0%未満
Mnは、特に原料を混合、溶解する工程における脱硫・脱酸素の役割を担って機械的特性の向上および耐炭酸ガス腐食性の向上に寄与する成分である。ただし、Mnに代わる脱酸元素を添加する場合は、Mnは無添加(0%)で良い。Mnを含有する場合、Mnの含有率は、2.0%未満とする。Mn含有率が2.0%以上になると、硫化物(例えばMnS)の粗大粒子を形成して耐食性や機械的特性の低下要因になる。Mnの作用効果をより確実に発揮させるには、Mnの下限を0.05%とすることが好ましい。
上記した「(1)1.1%超4.0%以下のC」を含む形態において、Cは、1.1%超4.0%以下である。
Cは、母相中に固溶したり炭化物として晶出または析出したりすることによって被覆層を硬化させる効果がある。高い耐摩耗性を得るには、Cを1.1%超として耐摩耗性を確保する大きさを持った塊状Cr炭化物を形成させる。Cが1.1%以下となると、肉盛したときに優れた耐摩耗性を実現する大きさの塊状Cr炭化物が得られない。一方、Cが4.0%を越えると、Cr炭化物も増加して耐摩耗性が向上する傾向にはあるが、母相中のCrが消費されて耐食性を低下させる場合があるため、耐摩耗性と耐食性とのバランスを考慮してCの上限は4.0%以下とする。前述のCの作用効果をより確実に発揮させるには、Cを1.5%以上とすることが好ましく、また3.5%以下とすることが好ましい。
上記した「(2)0.7%以上3.0%以下のB」を含む形態の場合、Bは、0.7%以上3.0%以下である。
Bは、母相中に固溶したり硼化物として晶出または析出したりすることによって被覆層を硬化させる効果がある。高い耐摩耗性を得るには、Bを0.7%以上として耐摩耗性を確保する大きさを持った塊状Cr硼化物を形成させる。Bが0.7%未満となると、肉盛したときに優れた耐摩耗性を実現する大きさの塊状Cr硼化物が得られない。一方、Bが3.0%以上になると、Cr硼化物も増加して耐摩耗性が向上する傾向にはあるが、母相中のCrが消費されて耐食性を低下させる場合があるため、耐摩耗性と耐食性とのバランスを考慮してBの上限は3.0%以下とする。前述のBの作用効果をより確実に発揮させるには、Bを1.0%以上とすることがより好ましく、また2.5%以下とすることがより好ましい。
上記した「(3)0.5%以上2.5%以下のCと、0%超20%以下のNb」を含む形態の場合、Cは、0.5%以上2.5%以下、Nbは、0%超20%以下である。
ここで、Cは、本開示のCr−Ni系合金において、炭化物として晶出または析出したり、炭化物以外の母相中に固溶したりすることによって、合金を硬化させる作用効果がある。耐摩耗性の改善効果を得るにはCの含有率を0.5%以上として、Nbを主成分とするNb系炭化物を形成することが好ましい。また、C含有率が大きくなると硬質なNb系炭化物粒子が増加して耐摩耗性が向上する傾向にはあるが、前述の比率以上にC量が増えると母相中のCrが消費されて硬さは増加するが、耐食性を悪化させる要因となる。耐摩耗性と耐食性とのバランスを考慮してCは2.5%以下とした。前述のCの作用効果をより確実に発揮させるには、Cの下限を0.8%とすることが好ましく、上限を1.5%とすることが好ましい。
また、Nbは、本開示のCr−Ni系合金において、Nb系炭化物として晶出または析出したり、炭化物以外の母相中に固溶したりすることによって、オーステナイト相を生成する作用効果がある。耐摩耗性の改善効果を得るにはNbの含有率を0%超として、Nbを主成分とするNb系炭化物を形成することが好ましい。また、Nb含有率が大きくなると硬質なNb系炭化物粒子が増加して耐摩耗性が向上する傾向にはあるが、Nb量が増えるとオーステナイト相を形成するNiと結合し、靭性を向上させるが、NbはNiに比べて高価であり、コストパフォーマンスを悪化させることがある。また、Nbを増加させることで、母相を形成するCrやNiおよびFeを減少させるため、硬さや耐摩耗性は増加するが、機械的特性や耐食性を悪化させる要因となる。耐摩耗性と耐食性、機械的特性とのバランスを考慮してNbは20%以下としたが、好ましいNbの上限は16%である。また、耐摩耗特性を発揮するには下限を4%とすることが好ましい。また、前述のNb系炭化物の作用効果をより確実に発揮させるには、Nbの下限を6.4%とすることがさらに好ましく、上限を12%とすることが好ましい。また、NbとCの比率は質量%でNb:Cが概ね8:1となるように添加することが望ましい。
残部はNi及び不可避的不純物:
以上、説明した元素以外はNiと不可避的不純物である。このうち、Niは被覆層の主要元素の1つであり、その多くは炭化物以外の母相中に固溶し、炭化物にはほとんど固溶しない。母相中にNiが固溶することで、母相を構成するオーステナイト相を安定化するとともに、初晶でのフェライト生成を抑制し、耐食性を向上させる効果がある。この作用効果を十分に発揮させるには、Niの含有率が前述のFeの含有率を超える範囲が好ましい。また、Niの含有率は15%以上が好ましい。更に好ましくは20%以上であり、25%以上がより好ましく、更に好ましくは30%以上である。一方、過度にNiが多くなると前述のCrの作用効果が損なわれるおそれがあることから、Niの含有率の上限はCrの含有率未満とすることが好ましい。
なお、残部には前述のNiの他、製造上不可避的に含有される不純物も含まれる。これらの不純物のうち、特に制限すべき不純物は以下の通りである。
不純物であるP、Sは粒界に偏析しやすく、耐食性を招くことから、Pは0.02%以下、Sは0.005%未満に限定する。Sについては、0.003%以下が好ましく、0.002%以下がさらに好ましい。これ以外にも、O、Nなども、Crと結合して酸化物系、窒化物系の介在物を形成して清浄度を低下させ、耐食性や疲労強度を劣化させることから、できるだけ低く抑えることが好ましい。このため、好ましいOは0.002%以下、Nは0.04%以下がよい。また、Nbに少量のTaが不純物として混入する場合があるが、Taは0.2%以下の範囲であれば影響は少なく、特別に低く制限する必要はなく、混入しても差し支えない。
Si:0%以上1.0%以下
Siは、本開示のCr−Ni系合金の随意成分の1つであり、脱酸素の役割を担って機械的特性の向上に寄与する成分である。Siを含有する場合には、Siの含有率は、0.1%以上1.0%以下が好ましい。Si含有率が0.1%未満であると、Siに基づく作用効果が不十分になりやすい。また、Siが1%超になると、酸化物(例えばSiO2)の粗大粒子を形成して機械的特性の低下要因になる。
Al:0%以上0.05%以下
Alも、本開示のCr−Ni系合金の随意成分の1つであり、MnおよびSiと組み合わせることで脱酸素作用の向上に寄与する成分である。Alを含有する場合には、Alの含有率は、0.005%以上0.05%以下が好ましい。Al含有率が0.005%未満になると、Alによる作用効果が十分に得られない場合がある。また、Al含有率が0.05%超になると、酸化物や窒化物(例えば、Al2O3やAlN)の粗大粒子を形成して機械的特性の低下要因になる。
Sn:0%以上0.3%以下
Snは、本開示のCr−Ni系合金において不動態皮膜強化の役割を担い、耐食性・耐摩耗性の向上に寄与する随意成分である。具体的には、塩化物イオンや酸性の腐食環境に対する耐性の向上が期待できる。Snを含有する場合には、Snの含有率は、0.02%以上0.3%以下が好ましい。Sn含有率が0.02%未満になると、Snに基づく作用効果が十分に得られない。また、Sn含有率が0.3%超になると、Sn成分の粒界偏析を生じさせて合金の延性・靱性の低下要因になる。
Cu:0%以上5.0%以下
Cuは、本開示のCr−Ni系合金において耐食性の向上に寄与する随意成分である。Cuを含有する場合、その含有率は、0.1%以上5.0%以下が好ましい。Cu含有率が0.1%未満になると、Cuに基づく作用効果が十分に得られない。また、Cu含有率が5.0%超になると、Cu析出物を生成し易くなり、合金の延性・靭性の低下要因になる。
〔塊状Cr炭化物〕
本開示の重要な特徴の一つは、母材表面に形成したCr−Ni系合金の被覆層の表層領域を、塊状Cr炭化物を有する金属組織としたことにある。以下に本開示について図面を用いて説明する。
本開示の被覆層の金属組織について説明する。図1〜12は本開示の実施形態である耐摩耗性部品の被覆層断面を500倍(左図)及び2000倍(右図)で観察したときの電子顕微鏡写真(反射電子像)である。白色に見える場所はCr−Ni系合金の母相(基地(マトリックス)とも呼ばれる)であり、灰色や黒色に見える場所はCr炭化物である。写真は何れも肉盛溶接を行ったCr−Ni系合金の断面であり、金属組織は凝固組織であって、Cr炭化物は晶出したものである。
2000倍の顕微鏡写真には、塊状、網状、葉脈状のCr炭化物を見ることができる。このうち、炭化物中に直径が5μmの丸を付した、外形が略多角形の形状を有するものが典型的な塊状Cr炭化物である。なお、炭化物の組成は、例えば、エネルギー分散型エックス線分析装置で定量分析することにより確認できる。Cr炭化物とは、前記定量分析結果において質量%でCrが最も多く含まれたものを言う。
前述した塊状Cr炭化物は、耐摩耗性を高める重要な役割を担う。耐摩耗性をより確実に得るには塊状Cr炭化物の大きさは大きいほうが良く、例えば、7μm以上の円が炭化物中に描けるような大きさが好ましく、更に好ましくは10μm以上の円が炭化物中に描ける大きさが良い。
また、例えば、図3に矢印で示す部分は、その周囲と色調が異なり、黒色に見える部分である。これは、黒色の部分とその周囲(灰色)の部分とが炭化物形態が異なっていることを示している。矢印で示す部分はM型のCr炭化物、その周囲はM23型のCr炭化物であると考えている。
また、前記塊状Cr炭化物は、被覆層の最表面から深さ0.2mm以内の領域(表層領域)に分散していることが必要である。これは、表層領域が最も耐摩耗性が要求されるためである。
また、表層領域に見られる前記塊状Cr炭化物(炭化物中に直径が5μmの丸を付せる塊状炭化物)の視野面積率が、0.25mm中に15〜45%であることが好ましい。表層領域とは、耐摩耗性が最も必要な領域である。この表層領域に塊状Cr炭化物の視野面積率が15%未満であると、耐摩耗性が大きく低下する傾向にあり、また45%より多くなり過ぎても耐摩耗性向上効果は飽和する傾向にある。そのため、表層領域に見られる塊状Cr炭化物の視野面積率を15〜45%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、表層領域に見られる塊状Cr炭化物の視野面積率を20〜30%の範囲とするのが良い。なお、観察する視野面積は広ければ広いほど好ましいが、0.25mmを超えて観察しても観察結果に大きな差は無く、0.25mmの範囲で塊状Cr炭化物を観察することで十分である。なお、観察する視野については、ある程度の範囲を観察するのが良く、例えば、0.25mmの範囲を一ヶ所観察することで十分である。ただし、被覆層の最表面から深さ0.2mmまでの表層領域を一ヶ所だけで観察するには幅方向に1.25mm以上の範囲を視野に収める必要があり、低倍率で観察を余儀なくされ、塊状Cr炭化物の判別が難しくなる懸念がある。このような場合は、観察領域の面積の合計が0.25mm以上になるように複数個所の観察を高倍率で行い、各観察領域における塊状Cr炭化物の視野面積率を平均して求めてもよい。
ところで、耐摩耗性部品はその全体がCr−Ni系合金であっても良いが、耐食性や耐摩耗性以外に要求される機械的特性などの観点から、部品全体は別の金属材料で製造し、耐食性や耐摩耗性が必要な部分にのみCr−Ni系合金の被覆層を形成すればよい。例えば、金型に使用する場合は、母材をJISで規定される熱間金型用鋼としたり、スクリューポンプでは合金工具鋼や各種ステンレス鋼としたりするなど、それぞれの用途に好適な金属材料を選定すれば良い。
母材とCr−Ni系合金が異種合金である場合、肉盛時の入熱に伴ってCr−Ni系合金と母材が溶融して混じり合い、Cr−Ni系合金が母材によって希釈される。そうすると、母材の材質に応じてCr−Ni系合金の組成が母材側と表面側とで変化することになる。このとき、母材中のC成分がCr−Ni合金よりも少なければ、Cr−Ni系合金に含まれるC成分が減少するため、前述の塊状Cr炭化物の大きさや量も減少し、耐摩耗性に効果がある塊状Cr炭化物を十分に得ることができない場合がある。このような場合、肉盛を複数回重ねて繰り返し、多層(積層構造)の肉盛による被覆層とすれば、後から施工した部分であるほど、母材による希釈の影響が軽減し、表面近傍に十分な大きさや量の塊状Cr炭化物を得ることができる。換言すると、母材側の塊状Cr炭化物よりも最表面領域の塊状Cr炭化物を大きくするようにして、最表面領域の塊状Cr炭化物が耐摩耗性向上に寄与する大きさを確保するようにすれば良い。被覆層の厚さは用途に応じて変化するが、被覆層と母材との境界から被覆層の最表面までの距離がおおよそ5〜15mmであれば十分である。なお、本開示で言う「Cr−Ni系合金」とは、含有する元素のうち、Crが最も多く、Niでバランスする合金を言う。
前述したように、本開示の被覆層は、母材を構成する成分の影響を受ける場合があるため、被覆層の表層領域の組成が重要となる。これを確認する方法としては、対象物に電子線を照射して発生する特性X線を分析する方法であり、EDX(エネルギー分散型エックス線分析装置)やWDX(波長分散型エックス線分析装置)などの方法がある。但し、EDXの場合、本開示の塊状Cr炭化物を構成するC(炭素)の定量分析ができないという欠点がある。Cを含めた成分を正確に分析するには、C(炭素)のような軽元素も定量分析可能なWDXによる分析とする。
本開示の場合、例えば、EPMA(電子線マイクロアナライザ)に設けられたWDXを用いた定量分析において、組成が上記した値の分析結果が得られるようにする。前記の範囲外となると、耐摩耗性が低下したり、耐食性が低下したりする。なお、WDXを用いて分析するときは、加速電圧を15keVとし、被覆層の表面側からある程度の範囲をもって分析するのが好ましく、例えば0.25mm程度であれば十分である。また、例えば最表層の形状が、WDX分析が可能な平坦でない場合は、0.2mm以内の範囲で最表層を平坦に加工して定量分析を行うと良い。
〔塊状Cr硼化物〕
本開示の重要な特徴の一つは、母材表面に形成したCr−Ni系合金の被覆層の表層領域を、塊状Cr硼化物を有する金属組織としたことにある。以下に本開示について図面を用いて説明する。
本開示の被覆層の金属組織について説明する。図13〜16は本開示の実施形態である耐摩耗性部品の被覆層の表層領域の断面を500倍(上段)及び2000倍(下段)で観察したときの電子顕微鏡写真(反射電子像)である。白色や灰色に見える場所はCr−Ni系合金の母相であり、暗灰色や黒色に見える場所はCr硼化物である。金属組織は凝固組織であって、Cr硼化物は晶出したものである。
2000倍の顕微鏡写真には、大きさの異なるCr硼化物を見ることができる。このうち、硼化物中に直径が3μmの丸を付した、外形が概ね直線状の細長い形状を有するものが典型的な塊状Cr硼化物である。このように、本発明における塊状Cr硼化物は、その断面観察において、内側に直径が3μm以上の円を描くことができる大きさであることが好ましい。この塊状Cr硼化物は発明者らの調査によれば、前記の顕微鏡写真における直線状の細長い形状を断面とする、板状の構造体であることを確認している。なお、硼化物の組成は、例えば、エネルギー分散型エックス線分析装置(EDX)で定量分析することにより確認できる。Cr硼化物とは、前記EDXによる定量分析結果においてBが検出され且つ、Bを除いた金属元素の中でCrが最も多く含まれたものを言う。
前述した塊状Cr硼化物は、耐摩耗性を高める重要な役割を担う。耐摩耗性をより確実に得るには塊状Cr硼化物の大きさは大きいほうが良く、例えば、5μm以上の円が炭化物中に描けるような大きさが好ましく、更に好ましくは10μm以上の円が炭化物中に描ける大きさが良い。
また、塊状Cr硼化物は、被覆層の最表面から深さ0.2mm以内の領域(表層領域)に分散していることが必要である。これは、表層領域が最も耐摩耗性が要求されるためである。
また、表層領域に見られる塊状Cr硼化物(硼化物中に直径が3μmの丸を付せる塊状Cr硼化物)の視野面積率が、0.25mm中に5〜35%であることが好ましい。表層領域は、耐摩耗性が最も必要な領域である。この表層領域における塊状Cr硼化物の視野面積率が5%未満であると、耐摩耗性が大きく低下する傾向にあり、また35%より多くなり過ぎても耐摩耗性向上効果は飽和する傾向にある。そのため、表層領域に見られる塊状Cr硼化物の視野面積率を5〜35%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、表層領域に見られる塊状Cr硼化物の視野面積率を20〜30%の範囲とするのが良い。なお、観察する視野面積は広ければ広いほど好ましいが、0.25mmを超えて観察しても観察結果に大きな差は無く、0.25mmの範囲で塊状Cr硼化物を観察することで十分である。なお、観察する視野については、ある程度の範囲を観察するのが良く、例えば、0.25mmの範囲を一ヶ所観察することで十分である。ただし、被覆層の最表面から深さ0.2mmまでの表層領域を一ヶ所だけで観察するには幅方向に1.25mm以上の範囲を視野に収める必要があり、低倍率で観察を余儀なくされ、塊状Cr硼化物の判別が難しくなる懸念がある。このような場合は、観察領域の面積の合計が0.25mm以上になるように複数個所の観察を高倍率で行い、各観察領域における塊状Cr硼化物の視野面積率を平均して求めてもよい。
ところで、耐摩耗性部品はその全体がCr−Ni系合金であっても良いが、耐食性や耐摩耗性以外に要求される機械的特性などの観点から、部品の母材は別の金属材料で製造し、耐食性や耐摩耗性が必要な部分にのみCr−Ni系合金の被覆層を形成すればよい。例えば、金型に使用する場合は、母材をJISで規定される熱間金型用鋼としたり、スクリューポンプでは合金工具鋼や各種ステンレス鋼としたりするなど、それぞれの用途に好適な金属材料を選定すれば良い。
母材とCr−Ni系合金が異種合金である場合、肉盛時の入熱に伴ってCr−Ni系合金と母材が溶融して混じり合い、Cr−Ni系合金が母材によって希釈される。そうすると、母材の材質に応じてCr−Ni系合金の組成が母材側と表面側とで変化することになる。このとき、母材中のB成分がCr−Ni合金よりも少なければ、Cr−Ni系合金に含まれるB成分が減少するため、前述の塊状Cr硼化物の大きさや量も減少し、耐摩耗性に効果がある塊状Cr硼化物を十分に得ることができない場合がある。このような場合、肉盛を複数回重ねて繰り返し、多層(積層構造)の肉盛による被覆層とすれば、後から施工した部分であるほど、母材による希釈の影響が軽減し、表面近傍に十分な大きさや量の塊状Cr硼化物を得ることができる。換言すると、母材側の塊状Cr硼化物よりも最表面側の表層領域の塊状Cr硼化物を大きく、また量を多くすることで、耐摩耗性向上に寄与する塊状Cr硼化物を確保するようにすれば良い。被覆層の厚さは用途に応じて変化するが、被覆層と母材との境界から被覆層の最表面までの距離がおおよそ5〜15mmであれば十分である。なお、本発明で言う「Cr−Ni系合金」とは、含有する元素のうち、Crが最も多く、Niでバランスする合金を言う。
前述したように、本開示の被覆層は、母材を構成する成分の影響を受ける場合があるため、被覆層の表層領域の組成が重要となる。これを確認する方法としては、対象物に電子線を照射して発生する特性X線を分析する方法があり、EDX(エネルギー分散型エックス線分析装置)やWDX(波長分散型エックス線分析装置)などの方法がある。但し、EDXの場合、本発明の塊状Cr硼化物を構成するB(硼素)の定量分析ができないという欠点がある。Bを含めた成分を正確に分析するには、B(硼素)のような軽元素も定量分析可能なWDXによる分析とする。
本開示の場合、例えば、EPMA(電子線マイクロアナライザ)に設けられたWDXを用いた定量分析において、組成が上記した値の分析結果が得られるようにする。なお、残部はNiおよび不可避的不純物である。前記の範囲外となると、耐摩耗性が低下したり、耐食性が低下したりする。なお、WDXを用いて分析するときは、加速電圧を15keVとし、被覆層の表面側からある程度の範囲をもって分析するのが好ましく、例えば0.25mm程度であれば十分である。また、例えば最表面の形状が、WDX分析が可能な平坦でない場合は、0.2mm以内の範囲で最表面を平坦に加工して定量分析を行うと良い。
〔Nb系炭化物〕
本開示の重要な特徴の一つは、母材表面にCr−Ni系合金の被覆層を有する耐摩耗性部品であって、その被覆層の表層領域の組成を特定するものであり、さらに、被覆層の表層領域を、Nb系炭化物を有する金属組織とするものである。以下に本開示の実施形態について図面を用いて説明する。
本開示の被覆層の金属組織について説明する。図17〜28は本発明の実施形態である耐摩耗性部品(本発明例)の被覆層の表層領域の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて500倍(左側)及び2000倍(右側)で観察したときの画像(反射電子像)である。暗灰色および明灰色に見える場所はCr−Ni系合金の基地(マトリックス)であり、暗灰色はフェライト相および明灰色はオーステナイト相を示している。白色に見える相はNb系炭化物である。また図18、図19、図22および図26において明灰色のオーステナイト相内に見える樹木状あるいは塊状の黒い部位はCr系炭化物である。写真は何れも肉盛溶接を行ったCr−Ni系合金の断面であり、金属組織は凝固組織であって、Nb系炭化物およびCr系炭化物は晶出したものである。
各図右側2000倍の顕微鏡写真において、Nb系炭化物はマトリックス中に共晶状、例えば棒状、点状、羽毛状、樹枝状など、または塊状で見える。なお、各炭化物の組成は、例えば、エネルギー分散型エックス線分析装置で定量分析することにより確認できる。Nb系炭化物とは、前記定量分析結果においてCが検出され、且つ、Cを除いた金属元素の中で質量%でNbが最も多く含まれたものをいう。また、同様にCr系炭化物とは、前記定量分析結果でCが検出され、且つ、Cを除いた金属元素の中でCrが最も多く含まれたものをいう。
前述したNb系炭化物は、耐摩耗性を高める重要な役割を担う。耐摩耗性をより確実に得るにはNb系炭化物は塊状、共晶組織もしくは、棒状、点状、羽毛状、樹枝状に広がる組織がネットワーク上に合金中に分散していることが好ましく、指針としては、合金中の炭化物の面積が広くなることも耐摩耗性を高める要因である。
ところで、組織中に硬質粒子(Nb系炭化物)を分散させることで摩耗を抑止させる場合、硬質粒子自体の強度が低ければ摩耗の抑止効果は小さくなるため、硬質粒子はある程度大きなサイズの塊状であることが望ましいと思われる。しかし、詳細は後述するが、例えば図19に示す本発明合金No.83では、共晶状のNb系炭化物が大部分であって塊状のNb系炭化物が見られないものの、耐土砂摩耗性は他の本発明合金と比べても良好な特性が得られている。これは、本開示の合金では母相を構成する二相組織のうち硬質なフェライト相中にNb系炭化物が存在するため、フェライト相がNb系炭化物の強度を補うこととなり、図19右側の図中に破線で示した共晶状の領域が仮想的な硬質粒子として作用し、耐摩耗性の向上に寄与していると考えられる。
また、前述したが例えば図18右側の図中に矢印で示す黒色に見える部分は、M23型のCr系炭化物である。Cr系炭化物もマトリックスに比べて硬度が高く、Nb系炭化物と同様に、耐摩耗性に有効性に働く。
定量的には、表層領域に見られる前記Nb系炭化物の視野面積率が、0.25mm中に5〜30%であることが好ましい。表層領域とは、耐摩耗性が最も必要な領域である。この表層領域にNb系炭化物の視野面積率が5%未満であると、耐摩耗性が大きく低下する傾向にあり、また30%より多くなり過ぎると、合金中のNbおよびC量が多くなり、Cr量を減じることになり、耐食性が低下する傾向にある。そのため、表層領域に見られるNb系炭化物の視野面積率を5〜30%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、表層領域に見られるNb系炭化物の視野面積率を5〜20%の範囲とするのが良い。なお、観察する視野面積は広ければ広いほど好ましいが、0.25mmを超えて観察しても観察結果に大きな差は無く、0.25mmの範囲でNb系炭化物を観察することで十分である。なお、観察する視野については、ある程度の範囲を観察するのが良く、例えば、0.25mmの範囲を一ヶ所観察することで十分である。ただし、被覆層の最表面から深さ0.2mmまでの表層領域を一ヶ所だけで観察するには幅方向に1.25mm以上の範囲を視野に収める必要があり、低倍率で観察を余儀なくされ、Nb系炭化物の判別が難しくなる懸念がある。このような場合は、観察領域の面積の合計が0.25mm以上になるように複数個所の観察を高倍率で行い、各観察領域におけるNb系炭化物の視野面積率を加重平均して求めてもよい。
ところで、耐摩耗性部品はその全体がCr−Ni系合金であっても良いが、耐食性や耐摩耗性以外に要求される機械的特性などの観点から、部品全体は別の金属材料で製造し、耐食性や耐摩耗性が必要な部分にのみCr−Ni系合金の被覆層を形成すればよい。例えば、金型に使用する場合は、母材をJISで規定される熱間金型用鋼としたり、スクリューポンプでは合金工具鋼や各種ステンレス鋼としたりするなど、それぞれの用途に好適な金属材料を選定すれば良い。
母材と被覆層(以下、「Cr−Ni系合金」とも記す)が異種合金である場合、肉盛時の入熱に伴ってCr−Ni系合金と母材が溶融して混じり合い、Cr−Ni系合金が母材によって希釈される。そうすると、母材の材質に応じて被覆層の組成が母材側と表面側とで変化することになる。このとき、母材中のC成分がCr−Ni系合金よりも少なければ、Cr−Ni系合金に含まれるC成分が減少するため、前述のNb系炭化物の大きさや量も減少し、耐摩耗性に効果があるNb系炭化物を十分に得ることができない場合がある。このような場合、肉盛を複数回重ねて繰り返し、多層(積層構造)の肉盛による被覆層とすれば、後から施工した部分であるほど、母材による希釈の影響が軽減し、表面近傍に十分な大きさや量のNb系炭化物を得ることができる。換言すると、母材側のNb系炭化物よりも表層領域のNb系炭化物の面積率を大きくするようにして、表層領域のNb系炭化物が耐摩耗性向上に寄与する面積率を確保するようにすれば良い。被覆層の厚さは用途に応じて変化するが、被覆層と母材との境界から被覆層の最表面までの距離がおおよそ5〜15mmであれば十分である。なお、本発明で言う「Cr−Ni系合金」とは、含有する元素のうち、Crが最も多く、Ni、NbとCを含有し、必要に応じFeを含む合金を言う。更に、Si,Mn,Al,Sn及びCuについても本発明で規定する範囲内を含むものも「Cr−Ni系合金」の範疇である。
前述したように、本開示の被覆層は、母材を構成する成分の影響を受ける場合があるため、被覆層の表層領域の組成が重要となる。これを確認する方法としては、対象物に電子線を照射して発生する特性X線を分析する方法であり、EDX(エネルギー分散型エックス線分析装置)やWDX(波長分散型エックス線分析装置)などの方法がある。但し、EDXの場合、本発明のNb系炭化物を構成するC(炭素)の定量分析ができないという欠点がある。Cを含めた成分を正確に分析するには、C(炭素)のような軽元素も定量分析可能なWDXによる分析とする。
本開示の場合、例えば、EPMA(電子線マイクロアナライザ)に設けられたWDXを用いた定量分析において、組成が上記した値の分析結果が得られるようにする。前記の範囲外となると、耐摩耗性が低下したり、耐食性が低下したりする。なお、WDXを用いて分析するときは、加速電圧を15kVとし、被覆層の表面側からある程度の範囲をもって分析するのが好ましく、例えば0.25mm程度であれば十分である。また、例えば最表層の形状が、WDX分析が可能な平坦でない場合は、深さ0.2mm以内の範囲で最表層を平坦に加工して定量分析を行うと良い。
〔肉盛原料、肉盛合金およびその製法〕
次に、本開示の表層領域(被覆層)を構成する原料、肉盛合金およびその製法について述べる。各成分の作用効果は前述したとおりであるため、それぞれの作用効果についての説明は割愛する。
本開示で規定する表層領域の組成とするには、基本的に前述した元素とその範囲とすれば良い。但し、母材に含まれる成分によって各元素が希釈される場合があるため、その希釈分を勘案して原料の組成を決定すると良い。例えばある成分Xが、被覆層の肉盛に用いる合金中にx質量%、母材中にy質量%含まれており、肉盛施工後の被覆層中に母材が混入する割合(希釈率)がP%のとき、高さ方向にn層の肉盛を重ねて繰り返したときの最表層における成分Xnの量は次の式1で求めることができる。
Xn=x・{1−(P/100)}+y・(P/100)…(式1)
よって、被覆層を形成する母材の組成や、肉盛施工時の希釈率、肉盛の積層数など予め想定して、肉盛後の被覆層の表層領域における各成分の量を算出し、それが本開示で規定した組成の範囲内となるようにすればよい。また、式1からわかるように、肉盛の層数nを増やすことで母材による希釈の影響を急速に減少させ、被覆層の組成が肉盛に用いる合金の組成とほぼ同じになるようにすることもできる。
本開示の表層領域(被覆層)を作製する肉盛用の合金粉末は、例えば、水アトマイズ法やガスアトマイズ法によって得ることができる。この水アトマイズやガスアトマイズによって得られる合金粉末のうち、肉盛用粉末用途では、より高清浄で均質組成・球形状粒子が得られるガスアトマイズ法を用いることが好ましい。例えばPTA(Plasma transfer arc)肉盛溶接向けとして例えば、63μm以上250μm以下の粒径範囲を抽出して用いることがある。また、粉末冶金成形体向けに用いる場合には、成形体の寸法精度や空隙残留防止などの観点から例えば1μmから50μmの粒径範囲で分級、選別して用いることがある。
PTA肉盛溶接装置では通常、肉盛用の合金粉末を、溶接トーチ先端の施工部までの管路内を流動させて搬送するため、合金粉末がスムーズに移動する必要がある。この場合、ガスアトマイズで得られる合金粉末は球状であり、流動性が良好となるので好ましい。
ガスアトマイズ粉末を用いて所望の基材上に肉盛溶接工程を行うことにより、基材上に被覆層が形成された肉盛溶接材を得ることができる。なお、得られた肉盛溶接材はそのまま各種機器を構成する耐摩耗性部品として利用してよいが、他の部材への接続など考慮して被覆層の表面を平坦にするなど、寸法、形状を整形する整形工程をさらに実施して耐摩耗性部品としてもよい。整形する手段としては例えばフライス盤などによる切削加工や砥石による研磨などがある。
また、前記の合金粉末を粉末冶金法によって棒状に焼結したものを溶接棒として使用することもできる。
前述のアトマイズ工程を行うことで得られた、あるいは更に分級工程を経て得られた合金粉末は、粉末成形工程を行うことで所望の成形体を得ることができる。粉末成形方法に特段の限定は無いが、例えば金属粉末射出成形法であれば、合金粉末にバインダーとしてプラスチックやワックスを混錬して流動性、成形性を与えたものを射出成形機で型に充填して成形する粉末成形工程と、得られた成形体中に残存するバインダーを除去する脱脂工程を行うことができる。脱脂工程は例えば成形体を溶媒に浸漬したり、所定の雰囲気で加熱したりすることが行われる。
次に、成形体に対して合金の固相線温度未満の温度で焼結熱処理を施して粉末焼結体を形成する焼結工程を行う。焼結熱処理方法に特段の限定はなく、従前の方法を利用できる。なお、前述の脱脂工程を加熱によって行う場合、この焼結工程において焼結温度に到達するよりも前の時点での温度や雰囲気を調整することによって、脱脂工程と焼結工程を一括して行うこともできる。粉末焼結体の緻密化の観点から、合金の固相線温度未満かつ500気圧以上3000気圧以下の条件での熱間等方圧加圧(HIP)処理を含むことがより好ましい。
粉末成形体として棒状のものを形成すれば、これを例えばアーク溶接機の電極棒として適用し、所望の基材上への肉盛溶接に利用することができる。
本開示の耐摩耗性部品は耐食性と耐摩耗性とを兼ね備えているため、例えば、自動車用部材(例えば、燃料噴射装置部材、ローラーチェーン部材、ターボチャージャー部材、エンジン排気系統部材、ベアリング部材)や、鉄道関連部材(例えば、ベアリング部材、パンタグラフ部材)や、転がり軸受およびすべり軸受部材(例えばリニア軸受部材、風車軸受部材、水車軸受部材、換気扇軸受部材、ミキシング・ドラム軸受部材、コンプレッサー軸受部材、エレベータ軸受部材、エスカレータ軸受部材、惑星探査機軸受部材)や、建設機器部材(例えば、無限軌道部材、ミキシング・ドラム部材)や、船舶および潜水艦用部材(例えば、スクリュー部材)や、環境機器部材(例えば、ゴミ焼却炉部材、破砕機械)や、自転車、二輪自動車および水上バイク用部材(例えば、ローラーチェーン部材、スプロケット部材)や、機械加工装置部材(例えば、金型、圧延ロール、切削工具部材)や、油井用機器部材(例えば、回転機械(圧縮機、ポンプ)の部材(軸、軸受))や、海水環境機器部材(例えば、海水淡水化プラント機器部材、アンビリカルケーブル)や、化学プラント機器部材(例えば、液化天然ガス気化装置部材)や、発電機器関連部材(例えば、石炭ガス化装置部材、耐熱配管部材、燃料電池用セパレータ部材、燃料改質機器部材)などへ適用することができる。前述の用途のうち、特に油井用機器部材や機械加工装置、環境機器部材への適用が好ましい。
図30(a)は、本発明の耐摩耗性部品の一例であり、土砂など含む原油のような流体の搬送で用いられるスクリューポンプの断面模式図である。スクリューポンプにおいては、例えば搬送される流体と接触するスクリュー表面やケーシング表面のほか、図示しないが吸入口や吐出口に接続された配管内表面などに耐摩耗性を向上させるための被覆層が形成される。この部分に、本発明で規定する被覆層を有する耐摩耗性部品を好適に利用できる。前記被覆層は、肉盛溶接材の形態で製造することができる。
図30(b)は、本発明の耐摩耗性部品の一例であり、射出成形金型の断面模式図である。射出成形金型においては、例えば、上型と下型との間に設けた空間に充填される、溶融したプラスチックや、金属粉末とバインダーの混合物などと接触する金型基材表面に耐摩耗性を向上させるための被覆層が形成される。この部分に、本発明で規定する被覆層を有する耐摩耗性部品を好適に利用できる。前記被覆層は、肉盛溶接材の形態で製造することができる。
図30(c)は、本発明の耐摩耗性部品の一例であり、岩石やコンクリート廃材などを揺動する歯板間で圧砕する、ジョークラッシャーと呼ばれる破砕機械の断面模式図である。破砕機械においては、例えば岩石などの被破砕物に接する固定歯板、可動歯板表面に耐摩耗性を向上させるための被覆層が形成される。この部分に、本発明で規定する被覆層を有する耐摩耗性部品を好適に利用できる。前記被覆層は、肉盛溶接材の形態で製造することができる。
以下、実施例および比較例により本開示をさらに具体的に説明する。なお、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、塊状Cr炭化物を有する金属組織とした実施例について説明する。
本実施例では、表1に示す組成の合金粉末を、PTA肉盛溶接装置でSUS304母材上に肉盛施工した被覆層を想定して、その耐食性、耐摩耗性を評価することとした。そこで、混合した原料を高周波溶解法(溶解温度1500℃以上、減圧Ar雰囲気中)により溶解した後、溶湯を鋳造して、被覆層を模擬したCr−Ni系合金の鋳造成形体を作製した。このとき、肉盛材料では肉盛施工時の冷却速度が速いことから、使用する鋳型は直径約20mmの細長い円柱形状を選択し、鋳造成形体の組織が肉盛溶接ビードに近い急冷組織となるようにした。
Figure 2019189532
ところで、PTA肉盛溶接では肉盛時の入熱に伴って、肉盛したCr−Ni系合金には溶融した母材が混入し、Cr−Ni系合金の成分が母材によって希釈される。このとき、母材中のC成分が元のCr−Ni系合金よりも少なければ、肉盛後のCr−Ni系合金に含まれるC成分が減少し、耐摩耗性に効果がある塊状Cr炭化物を十分に得ることができない場合がある。このような場合、肉盛を複数回重ねて繰り返し、多層(積層構造)の肉盛による被覆層とすれば、後から施工した部分であるほど、母材による希釈の影響が軽減し、被覆層の最表面近傍に十分な大きさや量の塊状Cr炭化物を得ることができる。一方、被覆層を形成する部品のサイズや形状などによっては、被覆層を十分に厚くすることができない場合もある。そこで、先に表1で示した合金粉末の組成に加えて、母材による希釈を想定した組成での鋳造成形体を作製、評価した。なお、被覆層の組成は母材の材質や希釈の程度によっても当然変化する。そこで、前述した表1の合金粉末を出発材料とせず、最終的に被覆層の最表面近傍に現れることを想定した組成での鋳造成型体も作製、評価した。
表2は、円柱形状の鋳造成形体の円筒面を四方から平坦に研削、研磨して、鋳造成形体と中心軸を共有する、一辺が約10mmの四角柱形状の試験片を作製し、表面の組成をEPMAに設けられたWDXを用いて分析した結果を示す。ここでNo.11、No.14およびNo.16は、それぞれNo.1〜3の肉盛材料を複数回重ねて肉盛したことを想定した組成であり、いずれも元の組成と同じである。No.12およびNo.13は、どちらもNo.1の肉盛材料がSUS304母材で希釈されたときの組成であるが、No.12は肉盛後のCr−Ni系合金中にSUS304母材が約10%混入したと想定したときの組成である。また、No13はNo.12よりも肉盛施工時の入熱量が大きく、SUS304母材が約20%混入したと想定したときの組成である。またNo.15は、No.2の肉盛材料を肉盛した後のCr−Ni系合金中にSUS304母材が約10%混入したと想定したときの組成である。No.17およびNo.18はNo.16とほぼ同じ組成でCを0.5%ずつ増減したと想定した組成である。No.19〜No.21はNo.16と似た組成で、かつCを1.5〜2.5%の範囲で変えた組成である。No.22はCが2.4%でFeを25%に増やした組成である。
また、金属組織についても、前記の組成分析と同じ四角柱形状の試験片を用いて、試験片表面を走査型電子顕微鏡とEDXとを用いて塊状Cr炭化物の有無、大きさを観察し、0.25mm中に見られた塊状Cr炭化物の総面積が観察した領域の面積に占める割合を視野面積率として求めた。また、塊状Cr炭化物サイズについては、観察した領域内に複数存在する塊状Cr炭化物の内側に描くことができた円の直径のうち最長の値を用いた。それぞれの結果を表3に示す。なお、No.11から22の顕微鏡写真は、図1から12に示すものである。
Figure 2019189532
Figure 2019189532
次に耐摩耗性試験を行った。耐摩耗性評価用の試験片は、前記の組成分析と同様に、円柱形状の鋳造成形体から一辺が約10mmの四角柱形状の試験片を作製し、研磨した面を試験面とした。
なお、耐摩耗性試験としては、最も過酷な試験の一つである耐土砂摩耗性評価とした。原油採掘向けの機器は、これと接触する原油中の砂礫などによる摩耗を受ける。そこで、耐摩耗性評価として土砂摩耗試験を実施した。試験方法は原則としてASTM規格G65に準拠したが、鋳造成形体から作製した試験片単体では規定幅25mmを満足しないため、前記の試験片を3個並列に並べて固定して試験を実施した。各組成の試験片は試験前重量を測定した後、回転するゴムディスクを試験片に所定の荷重で押し当てた状態で、両者の接触面間に試験用の珪砂を10分間連続供給した。その後、試験片重量を測定して試験前後の質量変化を求め、試験に伴うゴムディスクの損耗による直径の変化を加味した摩耗体積AVL(単位:mm)を算出した。
摩耗体積の測定結果は「AVL<180」をAグレード、「180≦AVL<360」をBグレード、「360≦AVL」をCグレードとそれぞれ評価した。耐土砂摩耗性評価の結果は表5に記した。
また、耐食性の評価も行った。
耐食性評価用の試験片は、前記の耐摩耗性評価用試験片と同様に、円柱形状の鋳造成形体から一辺が約10mmの四角柱形状の試験片を作製して表面を研磨して評価した。
なお、耐食性試験については、本発明の適用分野として想定している原油採掘向けの機器は、原油中に含まれる硫化水素や、無機塩化物が分解して発生した塩酸などの影響によって強い酸腐食環境に曝される。そこで、耐食性評価として沸騰硫酸浸漬試験を実施した。試験方法はJIS規格G0591:ステンレス鋼の硫酸腐食試験方法に準拠し、試験溶液にはpH1の硫酸を濃度5質量%になるよう純水で希釈したものを用いた。各組成の試験片は試験前重量を測定した後、沸騰状態の試験溶液中に6時間浸漬した。その後、試験片質量を測定して試験前後の質量変化を求め、これを試験前の試験片表面積および試験時間で除した値を腐食速度m(単位:g/(m・h))として算出した。
腐食速度の測定結果は「m<3×10」をAグレード、「3×10≦m<10」をBグレード、「10≦m」をCグレードとそれぞれ評価した。耐食性評価の結果は表5に記した。
なお、本発明の被覆層における耐食性および耐土砂摩耗性の水準比較のため、表4に示した公知の表面改質用肉盛材4種(Co基合金2種、Ni基合金2種)相当組成の粉末と、発明者らが従来検討したC、B、Nbを含まないCr基合金2種類(50Cr、63Cr)の粉末を使い、SUS304母材にPTA肉盛溶接装置で施工、形成した溶接ビードを切断、研磨して試験片を作製し、沸騰硫酸浸漬試験および土砂摩耗試験を実施した。比較例に用いた合金粉末の組成を表4に示す。また、耐摩耗性試験および耐食性試験の結果は表5に記した。
Figure 2019189532
Figure 2019189532
図31は本発明の被覆層を模擬した各試験片および比較例の肉盛材における腐食速度mおよび摩耗体積AVLの試験結果を示す。各プロットの横に記した丸付き数字は、表2で示した各組成のNo.に対応している。また比較例は表4のNoを丸付き数字で付した。
まず本発明の耐摩耗性部品の耐摩耗性については、全ての組成でAグレードと判定され、いずれも良好な耐摩耗性であった。同じ合金粉末で、母材による希釈の度合いが異なると想定した同士で比較すると、No.11〜13では希釈の影響がほとんど無いNo.11の摩耗体積が最も少なく、逆に希釈の度合いが最も大きいNo.13の摩耗体積が最も多い。No.11〜13のSEM観察像を図1〜3に示すが、図1のNo.11では外寸が概ね100μmを超える大きさで、暗灰色で表示された塊状のCr炭化物が分布している。次に図2のNo.12では、100μmを超える大きさのCr炭化物が見られるが、その量はNo.11と比べて少ない。さらに図3のNo.13では、Cr炭化物の大きさは概ね50μm前後とさらに小さく、また、炭化物の周縁部には不規則な樹枝状の部分が多く見られた。
同様にC成分が多いNo.14、15を比較すると、希釈の影響がほとんど無いNo.14の摩耗体積のほうが少ない。No.14,15のSEM観察像を図4,5に示すが、図4のNo.14では40μm前後の大きさで、暗灰色もしくは黒色で表示された塊状のCr炭化物が分布している。一方、図5のNo.15では同様にCr炭化物が分布しているが、その大きさは20μm前後のものが多く、No.14と比べるとCr炭化物の量が少ない。
次に、No.16〜18のSEM観察像を図6〜8に示すが、概ね外寸が10〜30μmの大きさで大部分が黒色の塊状Cr炭化物が見られた。表3に示したように、Cが多いほど塊状Cr炭化物の視野面積率が大きくなる傾向にあり、Cが最も少ないNo.17で6.6%、Cが最も多いNo18で25.9%であったが、いずれも耐食性と耐土砂摩耗性の両方でAグレードを達成している。また、Crが60%前後でC量を変えたNo.19〜21のSEM観察像を図9〜11に示す。それぞれ炭化物の大きさや形態、色調が異なるが、塊状のCr炭化物が見られた。
次に、No22のSEM観察像を図12に示す。組織中には直線的に並んだ塊状の部分とそこから樹枝状に伸びたCr炭化物が見られた。
一方、比較した肉盛材料No.31〜36では、耐食性と耐土砂摩耗性の両方でAグレードを達成した材料は無く、これに対して本発明の合金が耐食性と耐土砂摩耗性の両立を実現していることがわかる。
以上の結果から、本発明のNo.11〜22のいずれにおいても耐摩耗性は良好な傾向にあり、十分な大きさでより多くの塊状のCr炭化物が組織中に存在するほど土砂による摩耗を抑制する効果が強く得られたと考えられる。
次に、Cr硼化物を有する金属組織とした実施例について説明する。
本実施例では、合金粉末を肉盛施工した被覆層における耐食性、耐摩耗性を評価することを想定し、所定の原料を混合して高周波溶解法(溶解温度1500℃以上、減圧Ar雰囲気中)により溶解した後、溶湯を鋳造して、被覆層の表層領域を模擬したCr−Ni系合金の鋳造成形体を作製した。このとき、肉盛材料では肉盛施工時の冷却速度が速いことから、使用する鋳型は直径約20mmの細長い円柱形状を選択し、鋳造成形体の組織が肉盛溶接ビードに近い急冷組織となるようにした。
表6は、円柱形状の鋳造成形体の円筒面を四方から平坦に研削、研磨して、鋳造成形体と中心軸を共有する、一辺が約10mmの四角柱形状の試験片を作製し、表面の組成をEPMAに設けられたWDXを用いて分析した結果を示す。
また、金属組織についても、前記の組成分析と同じ四角柱形状の試験片を用いて、試験片表面を走査型電子顕微鏡とEDXとを用いて塊状Cr硼化物の有無、大きさを観察し、0.25mm中に見られた塊状Cr硼化物の総面積が観察した領域の面積に占める割合を視野面積率として求めた。結果を表7に示す。各合金の断面組織の顕微鏡写真は、図13から16に示すものである。この実施例のNo.51〜61は、断面組織に塊状Cr硼化物が観察され、そのCr硼化物は、その内側に直径が3μmの円を描くことができる大きさであった。
Figure 2019189532
Figure 2019189532
次に耐摩耗性試験を行った。耐摩耗性評価用の試験片は、前記の組成分析と同様に、円柱形状の鋳造成形体から一辺が約10mmの四角柱形状の試験片を作製し、研磨した面を試験面とした。
なお、耐摩耗性試験としては、最も過酷な試験の一つである耐土砂摩耗性評価とした。原油採掘向けの機器は、これと接触する原油中の砂礫などによる摩耗を受ける。そこで、耐摩耗性評価として土砂摩耗試験を実施した。試験方法は原則としてASTM規格G65に準拠したが、鋳造成形体から作製した試験片単体では規定幅25mmを満足しないため、前記の試験片を3個並列に並べて固定して試験を実施した。各組成の試験片は試験前重量を測定した後、回転するゴムディスクを試験片に所定の荷重で押し当てた状態で、両者の接触面間に試験用の珪砂を10分間連続供給した。その後、試験片重量を測定して試験前後の質量変化を求め、試験に伴うゴムディスクの損耗による直径の変化を加味した摩耗体積AVL(単位:mm)を算出した。
摩耗体積の測定結果は「AVL<180」をAグレード、「180≦AVL<360」をBグレード、「360≦AVL」をCグレードとそれぞれ評価した。耐土砂摩耗性評価の結果は表8に記した。
また、耐食性の評価も行った。
耐食性評価用の試験片は、前記の耐摩耗性評価用試験片と同様に、円柱形状の鋳造成形体から一辺が約10mmの四角柱形状の試験片を作製して表面を研磨して評価した。
なお、耐食性試験については、本発明の適用分野として想定している原油採掘向けの機器は、原油中に含まれる硫化水素や、無機塩化物が分解して発生した塩酸などの影響によって強い酸腐食環境に曝される。そこで、耐食性評価として沸騰硫酸浸漬試験を実施した。試験方法はJIS規格G0591:ステンレス鋼の硫酸腐食試験方法に準拠し、試験溶液にはpH1の硫酸を濃度5質量%になるよう純水で希釈したものを用いた。各組成の試験片は試験前重量を測定した後、沸騰状態の試験溶液中に6時間浸漬した。その後、試験片質量を測定して試験前後の質量変化を求め、これを試験前の試験片表面積および試験時間で除した値を腐食速度m(単位:g/(m・h))として算出した。
腐食速度の測定結果は「m<3×10」をAグレード、「3×10≦m<10」をBグレード、「10≦m」をCグレードとそれぞれ評価した。耐食性評価の結果は表8に記した。
Figure 2019189532
図32は本発明の被覆層の表層領域を模擬した各試験片および比較例(表4で示したもの)の肉盛材における腐食速度mおよび摩耗体積AVLの試験結果を示す。各プロットの横に記した括弧付き数字は、表6で示した各組成のNo.に対応している。また比較例は表4のNoを丸付き数字で付した。
まず本発明の耐摩耗性部品の耐摩耗性については、全ての組成でAグレードと判定され、いずれも良好な耐摩耗性であった。先に表7で示した塊状Cr硼化物視野面積率との明確な相関は見えないが、視野面積率5%以上で良好な耐摩耗性が得られた。また、本発明の耐摩耗性部品の耐食性については、塊状Cr硼化物の視野面積率が高いほど腐食速度が大きい傾向にあると考えられる。
一方、比較した肉盛材料No.31〜36では、耐食性と耐土砂摩耗性の両方でAグレードを達成した材料は無く、これに対して本発明の合金が耐食性と耐摩耗性の両立を実現しており、耐摩耗部品として優れたものであるといえる。
次に、Nb系炭化物を有する金属組織とした実施例について説明する。
本実施例では、表9に示す組成の合金粉末を、PTA肉盛溶接装置でSUS304基材上に肉盛施工した被覆層を想定して、その耐食性、耐摩耗性を評価することとした。そこで、混合した原料を高周波溶解法(溶解温度1500℃以上、減圧Ar雰囲気中)により溶解した後、溶湯を鋳造して、被覆層を模擬したCr−Ni系合金の鋳造成形体を作製した。このとき、肉盛材料では肉盛施工時の冷却速度が速いことから、使用する鋳型は直径約20mmの細長い円柱形状を選択し、鋳造成形体の組織が肉盛溶接ビードに近い急冷組織となるようにした。
Figure 2019189532
ところで、肉盛溶接では肉盛時の入熱に伴って、肉盛したCr−Ni系合金には溶融した基材が混入し、Cr−Ni系合金の成分が基材によって希釈される。このとき、基材中のC成分が被覆層のCr−Ni系合金よりも少なければ、肉盛後のCr−Ni系合金の単位面積中に含まれる炭化物相の相率が減少し、耐摩耗性に効果があるNb系炭化物の大きさ、分布、数もしくは体積が期待しているものよりも少ない場合がある。このような場合、肉盛を複数回重ねて繰り返し、多層(積層構造)の肉盛による被覆層とすれば、後から施工した部分であるほど、母材による希釈の影響が軽減し、被覆層の最表面近傍に十分な大きさ、分布、数もしくは体積のNb系炭化物を得ることができる。一方、被覆層を形成する部品のサイズや形状などによっては、被覆層を十分に厚くすることができない場合もある。そこで、先に表9で示した合金粉末の組成に加えて、基材による希釈を想定した組成での鋳造成形体を作製、評価した。また、被覆層の組成は母材の材質や希釈の程度によっても当然変化する。そこで、前述した表9の合金粉末を出発材料として特に限定せず、最終的に被覆層の再表面近傍に現れることを想定した組成での鋳造成型体も作製、評価した。なお、鋳造体は鋳型と接する外表面から合金内部に行くほど冷却速度が遅くなる。これに対し、肉盛表面は冷却速度が速いため、本試験では、なるべく、鋳造成形体から試験片を取り出す際には冷却速度が速い鋳型と接する外表面から取得した。
表10は、円柱形状の鋳造成形体の円筒面を四方から平坦に研削、研磨して、鋳造成形体と中心軸を共有する、一辺が約10mmの四角柱形状の試験片を作製し、表面の組成をEPMAに設けられたWDXを用いて分析した結果を示す。ここでNo.81からNo.86は、表9のNo.71〜76の肉盛材料を複数回重ねて肉盛した際の最表面付近の組成を想定した組成であり、いずれも元の組成と同じである。これに対してNo.87は、No.76の肉盛材料がSUS304基材で10%希釈されたときの組成である。No.88はNo.71の肉盛材料がSUS304基材で約10%希釈された時の組成である。No.89〜91はCr量を50%に固定し、CやNbの量を変えたときの組成である。なお、No.92はFeが35.0%の組成である。またNo.93は、No.71の肉盛材料がSUS304基材で20%希釈されてCrが下限を下回った比較例の組成である。
金属組織についても、前記の組成分析と同じ四角柱形状の試験片を用いて、試験片表面を走査型電子顕微鏡(SEM)とEDXとを用いてNb系炭化物の有無、大きさを観察し、0.25mm中に見られたNb系炭化物の総面積が観察した領域の面積に占める割合を視野面積率として求めた。具体的には図17〜29のSEM写真を含む複数の視野で撮影した各合金のSEM写真に対して、白色に見えるNb系炭化物の部分とそれ以外の部分を画像解析ソフトにより二値化し、Nb系炭化物が視野全体に占める面積率を算出した。結果を表11に示す。
Figure 2019189532
Figure 2019189532
次に耐摩耗性試験を行った。耐摩耗性評価用の試験片は、前記の組成分析と同様に、円柱形状の鋳造成形体から一辺が約10mmの四角柱形状の試験片を作製し、研磨した面を試験面とした。
原油採掘向けの機器中において、例えば原油などの被搬送物が流れる搬送経路に用いる配管部材の表面は接触する被搬送物中に含まれる、例えば珪砂などの固形物や腐食成分による減肉もしくは摩耗を受ける。そこで、耐摩耗性評価として固形物を珪砂と想定し、土砂摩耗試験を実施した。試験方法はASTM規格G65に準拠した。被搬送物と接触する表面の合金を模擬した試験片は試験前重量を測定した後、回転するゴムディスクを試験片に所定の荷重(64.5N)で押し当てた状態で、両者の接触面間に固形物を模擬した珪砂を350g/分の条件で10分間連続供給した。その後、試験片重量を測定して試験前後の質量変化を求め、被搬送物との接触する表面の加味した試験片の摩耗体積AVL(単位:mm)を算出した。
摩耗体積の測定結果は「AVL<180」をAグレード、「180≦AVL<360」をBグレード、「360≦AVL」をCグレードとそれぞれ評価した。耐土砂摩耗性評価の結果は表12に記した。
また、耐食性の評価も行った。
原油採掘向けの機器中において、例えば原油などの被搬送物が流れる搬送経路に用いる配管部材の表面は接触する被搬送物中に含まれる硫化水素や、無機塩化物が分解して発生した塩酸などの腐食成分の影響によって強い酸腐食環境に曝される。そこで、強酸性評価として腐食成分を硫酸と想定し、沸騰硫酸浸漬試験を実施した。試験方法はJIS規格G0591:ステンレス鋼の硫酸腐食試験方法に準拠し、腐食成分の模擬溶液としてはpH1の硫酸を濃度5質量%になるよう純水で希釈したものを用いた。配管部材の表面に相当する合金として、各組成の成形体を切断・研磨した試験片を用いた。本試験片の試験前重量を測定した後、沸騰状態の腐食成分模擬溶液中に6時間浸漬した。その後、配管部材の表面に相当する合金の各試験片質量を測定して試験前後の質量変化を求め、これを試験前の試験片表面積および試験時間で除した値を腐食速度m(単位:g/(m・h))として算出した。
腐食速度の測定結果は「m<3×10」をAグレード、「3×10≦m<1×10」をBグレード、「1×10≦m」をCグレードとそれぞれ評価した。耐食性評価の結果は表12に記した。
Figure 2019189532
図33は本発明の被覆層を模擬した各試験片および比較例(表4に示したもの)の肉盛材における腐食速度mおよび摩耗体積AVLの試験結果を示す。各プロットの横に記した括弧付き数字は、表10および表12で示した各組成のNo.に対応している。また比較例は表4のNoを丸付き数字で付した。
まず表9の合金粉末と同じ組成である、本発明例のNo.81〜86においては耐食性、耐摩耗性ともにAグレードと判定され、いずれも良好な特性であった。次にNo.86に対して10%の希釈を想定したNo.87は耐食性、耐摩耗性ともにほぼ同等水準であった。また、No.86とNo.87の組織は比較的似ており、Nb系炭化物の面積率も同等であった。
次にNo.81に対して10%の希釈を想定したNo.88と、20%の希釈を想定した比較材No.93とをそれぞれ比較すると、No.81とNo.88は特性が同等水準で組織も類似しているが、希釈率の大きなNo.93は耐摩耗性がBグレードと悪い結果であった。表11においてNo.93のNb系炭化物視野面積率は他の二つに比べて小さく、これが耐摩耗性の違いとなって現れたと思われる。
次にNo.89〜91はCrが50%の組成でNb、Cの量を変えた組成であるが、No.89に比べてNb、Cを増やしたNo.90、91では摩耗体積が減少し、耐摩耗性が向上した。このNo.90、91では他と比べて大きな塊状No系炭化物が見られ、特にNbに対するCの比率が大きいNo.90では母相中にCr系炭化物も晶出しており、これらが耐摩耗性に寄与したと思われる。
次に、Fe量が35%のNo.92は、図28のように組織中に共晶状のNb系炭化物が存在するが、No.81〜93のうちで最も耐摩耗性が悪い結果であった。ここでNb系炭化物視野面積率に着目すると、No.92の視野面積率は9.4%で、視野面積率が6.9%で最小のNo.85を上回るにも関わらず、耐摩耗性が悪い結果であった。これらのことから、本発明合金における耐摩耗性はNb系炭化物の量だけではなく、材料の凝固過程でのNb系炭化物の晶出形態や、母相自体の強さに影響するCr、Fe、Niの量を適正な範囲とすることが重要と言える。しかしながら、No.92は比較例No.31〜36と比べれば、劣るものではなく、同等以上のものである。
上述した実施形態や実施例は、本発明の理解を助けるために説明したものであり、本発明は、記載した具体的な構成のみに限定されるものではない。例えば、実施形態の構成の一部を当業者の技術常識の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に当業者の技術常識の構成を加えることも可能である。すなわち、本発明は、本明細書の実施形態や実施例の構成の一部について、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、削除・他の構成に置換・他の構成の追加をすることが可能である。

Claims (11)

  1. 母材表面にCr−Ni系合金の被覆層を有する耐摩耗性部品であって、
    前記被覆層の最表面から深さ0.2mmの表層領域の組成が質量%で、
    40.0%超65.0%以下のCrと、
    0%以上35.0%以下のFeと、
    0%以上2.0%未満のMnと、
    次の(1)〜(3)の何れかと、を含み、
    (1)1.1%超4.0%以下のC
    (2)0.7%以上3.0%以下のB
    (3)0.5%以上2.5%以下のCと、0%超20%以下のNb
    残部がNiおよび不可避的不純物からなり、前記Niは15%以上であり、
    前記表層領域に、塊状Cr炭化物、塊状Cr硼化物、Nb系炭化物の少なくとも何れか一種を有する耐摩耗性部品。
  2. 質量%で、
    46.0%超65.0%以下のCrと、
    0%以上30.0%以下のFeと、
    0%以上2.0%未満のMnと、
    1.1%超4.0%以下のCと、を含み、
    残部がNiおよび不可避的不純物からなる、請求項1に記載の耐摩耗性部品。
  3. 質量%で、
    45.0%以上65.0%以下のCrと、
    0%以上35.0%以下のFeと、
    0%以上2.0%未満のMnと、
    0.7%以上3.0%以下のBと、を含み、
    残部がNiおよび不可避的不純物からなる、請求項1に記載の耐摩耗性部品。
  4. 質量%で、
    40.0%超65.0%以下のCrと、
    0%以上30.0%以下のFeと、
    0.5%以上2.5%以下のCと
    0%超20%以下のNbと、を含み、
    残部がNiおよび不可避的不純物からなる、請求項1に記載の耐摩耗性部品。
  5. 質量%で、
    0%以上1.0%以下のSi、
    0%以上0.05%以下のAl、
    0%以上0.3%以下のSn、
    0%以上5.0%以下のCu、
    の少なくとも一種類以上を含む請求項1乃至4の何れかに記載の耐摩耗性部品。
  6. 前記被覆層の厚さ方向の断面を見たとき、前記表層領域にある前記塊状Cr炭化物は、その内側に直径が5μm以上の円を描くことができる大きさを有する請求項1、2、5の何れかに記載の耐摩耗部品。
  7. 前記被覆層の厚さ方向の断面を見たとき、前記表層領域中に見られる前記塊状Cr炭化物の視野面積率が、0.25mm中に5〜45%である請求項1、2、5、6の何れかに記載の耐摩耗性部品。
  8. 前記被覆層の厚さ方向の断面を見たとき、前記表層領域にある前記塊状Cr硼化物は、その内側に直径が3μm以上の円を描くことができる大きさを有する請求項1、3、5の何れかに記載の耐摩耗部品。
  9. 前記被覆層の厚さ方向の断面を見たとき、前記表層領域中に見られる前記塊状Cr硼化物の視野面積率が、0.25mm中に5〜35%である請求項1、3、5、8の何れかに記載の耐摩耗性部品。
  10. 前記被覆層の表層領域は、炭化物を含み、母相がフェライト相および/またはオーステナイト相である請求項1、4、5の何れかに記載の耐摩耗性部品。
  11. 前記被覆層の厚さ方向の断面を見たとき、前記表層領域中にNb系炭化物を有し、前記Nb系炭化物は、塊状、棒状、点状、羽毛状および樹枝状の少なくとも一種の形態を有し、前記Nb系炭化物の視野面積率が、0.25mm中に5〜30%である請求項1、4、5、10の何れかに記載の耐摩耗性部品。

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