JPWO2019163871A1 - 融合タンパク質 - Google Patents

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Abstract

本発明は、新規薬物送達系(DDS)、電子デバイスの作製等の用途に有望な手段を提供する。より具体的には、本発明は、(a)フェリチン単量体、および(b)フェリチン単量体におけるB領域およびC領域のα−ヘリックスの間のフレキシブルリンカー領域中に挿入された機能性ペプチドを含む、融合タンパク質、ならびに(a)フェリチン単量体、および(b)フェリチン単量体におけるB領域およびC領域のα−ヘリックスの間のフレキシブルリンカー領域中に挿入された機能性ペプチドを含む融合タンパク質から構成されており、かつ内腔を有する、多量体などを提供する。

Description

本発明は、融合タンパク質などに関する。
フェリチンは、動植物から微生物まで普遍的に存在する、複数の単量体から構成される内腔を有する球状タンパク質である。ヒト等の動物では、フェリチンとしてH鎖およびL鎖の2種の単量体が存在すること、およびフェリチンは24個の単量体から構成される多量体(多くの場合、H鎖およびL鎖の混合物)であることが知られている。一方、微生物では、フェリチンは、Dps(DNA−binding protein from starved cells)とも呼ばれており、12個の単量体から構成される多量体であることが知られている。フェリチンは、生体あるいは細胞中の鉄元素のホメオスタシスに深く関わっており、その内腔中に鉄を保持できるため、鉄の輸送・貯蔵等の生理学的機能の役割を担うことが知られている。フェリチンは、鉄以外にも、ベリリウム、ガリウム、マンガン、リン、ウラン、鉛、コバルト、ニッケル、クロムなどの金属の酸化物、また、セレン化カドミウム、硫化亜鉛、硫化鉄、硫化カドミウムなどの半導体・磁性体などのナノ粒子を人工的に貯蔵できることが示されており、半導体材料工学分野や医療分野での応用研究が盛んに行われている(非特許文献1)。
現在までに、フェリチン単量体とペプチドとの融合タンパク質として、(1)フェリチン単量体の末端領域にペプチドを付加した融合タンパク質、および(2)フェリチン単量体の内部領域(末端領域以外の領域)にペプチドを挿入した融合タンパク質が幾つか報告されている。
例えば、上記(1)の融合タンパク質として、以下の報告がある。
特許文献1および非特許文献1は、フェリチン単量体の一方の末端領域に酸化チタンを付加した融合タンパク質を調製したこと、ならびに調製した融合タンパク質が電子デバイス(例、半導体)の作製に有用であることを開示している。
特許文献2は、Dpsの両方の末端領域に所定のペプチドを付加した融合タンパク質を調製したこと、ならびに調製した融合タンパク質が特殊な多孔質構造を有する電子デバイスの作製に有用であることを開示している。
上記(2)の融合タンパク質としては、ヒトフェリチンL鎖のD領域およびE領域のα−ヘリックスの間のフレキシブルリンカー領域(フェリチン単量体のN末端から数えて5番目および6番目のα−ヘリックスの間の領域)に所定のペプチドを挿入した融合タンパク質の報告がある。
例えば、非特許文献2および3、ならびに特許文献3は、ヒトフェリチンL鎖におけるD領域およびE領域のα−ヘリックスの間のフレキシブルリンカー領域中に所定のペプチド(例、インターロイキン−4受容体(IL−4R)標的ペプチド)を挿入した融合タンパク質の多量体(例、AP1−PBNC)を調製したこと、ならびに当該多量体が癌等の疾患の治療に有用であることを開示している。
非特許文献4は、ヒトフェリチンL鎖におけるD領域およびE領域のα−ヘリックスの間のフレキシブルリンカー領域中にプロテアーゼ分解性ペプチドを挿入した融合タンパク質の多量体を調製したこと、ならびに当該多量体がプロテアーゼ応答性送達系として有用であることを開示している。
国際公開第2006/126595号 国際公開第2012/086647号 米国特許出願公開第2016/0060307号明細書
K.Sano et al.,Nano Lett.,2007,vol.7.p.3200. Jae Og Jeon et al.,ACS Nano(2013),7(9),7462−7471. Sooji Kim et al.,Biomacromolecules(2016),17(3),1150−1159. Young Ji Kang et al.,Biomacromolecules(2012),13(12),4057−4064.
本発明の目的は、新規薬物送達系(DDS)、電子デバイスの作製等の用途に有望な手段を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、各種生物のフェリチン単量体で高度に保存されているB領域およびC領域のα−ヘリックスの間のフレキシブルリンカー領域中に機能性ペプチドを挿入した融合タンパク質から構成される多量体が標的と強く相互作用できることを見出した。例えば、このような多量体は、各種生物のフェリチン単量体で高度に保存されているD領域以降の領域〔例、先行技術で報告されている、D領域とE領域のα−ヘリックスの間のフレキシブルリンカー領域〕中に機能性ペプチドを挿入した融合タンパク質から構成される多量体に比し、標的とより強く相互作用できる。したがって、このような多量体は、新規薬物送達系(DDS)、電子デバイスの作製等の用途に有望であることを見出し、本願発明を完成するに至った。
すなわち、本願発明は、以下のとおりである。
〔1〕(a)フェリチン単量体、および(b)フェリチン単量体におけるB領域およびC領域のα−ヘリックスの間のフレキシブルリンカー領域中に挿入された機能性ペプチドを含む、融合タンパク質。
〔2〕フェリチン単量体がヒトフェリチン単量体である、〔1〕の融合タンパク質。
〔3〕ヒトフェリチン単量体がヒトフェリチンH鎖である、〔1〕または〔2〕の融合タンパク質。
〔4〕ヒトフェリチン単量体がヒトフェリチンL鎖である、〔1〕または〔2〕の融合タンパク質。
〔5〕フェリチン単量体がDps単量体である、〔1〕の融合タンパク質。
〔6〕機能性ペプチドが、標的材料に対する結合能を有するペプチドである、〔1〕〜〔5〕のいずれかの融合タンパク質。
〔7〕標的材料が無機物である、〔6〕の融合タンパク質。
〔8〕標的材料が金属材料である、〔7〕の融合タンパク質。
〔9〕標的材料が有機物である、〔6〕の融合タンパク質。
〔10〕有機物が生体有機分子である、〔9〕の融合タンパク質。
〔11〕生体有機分子がタンパク質である、〔10〕の融合タンパク質。
〔12〕システイン残基、またはシステイン残基含有ペプチドが、融合タンパク質のC末端に付加されている、〔1〕〜〔11〕のいずれかの融合タンパク質。
〔13〕(a)フェリチン単量体、および(b)フェリチン単量体におけるB領域およびC領域のα−ヘリックスの間のフレキシブルリンカー領域中に挿入された機能性ペプチドを含む融合タンパク質から構成されており、かつ
内腔を有する、多量体。
〔14〕(1)〔13〕の多量体、および(2)標的材料を含み、
標的材料が、前記融合タンパク質中の機能性ペプチドに結合している、複合体。
〔15〕〔1〕〜〔12〕のいずれかの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
〔16〕〔15〕のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
〔17〕〔15〕のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
フェリチン単量体におけるB領域およびC領域のα−ヘリックスの間のフレキシブルリンカー領域中に機能性ペプチドを挿入した、フェリチン単量体および機能性ペプチドの融合タンパク質を含む多量体は、標的と非常に強く相互作用することができる。本発明により、このような相互作用能力に優れた多量体のみならず、このような多量体の調製に用いることができる単量体である融合タンパク質、およびこのような多量体を用いて提供することができる複合体が提供される。また、本発明により、このような融合タンパク質、多量体および複合体の調製に有用であるポリヌクレオチド、発現ベクターおよび宿主細胞も提供される。
図1−1は、動的光散乱法(DLS)によるFTH−BC−TBPの粒径および溶液分散性の評価を示す図である。FTH−BC−TBPは、フェリチン単量体を構成する6つのα−ヘリックスのうちのN末端から数えて2番目と3番目の間のフレキシブルリンカー領域にチタン認識ペプチド(minTBP1)が挿入融合されたヒト由来フェリチンH鎖である。 図1−2は、動的光散乱法(DLS)によるFTH−D−TBPの粒径および溶液分散性の評価を示す図である。FTH−D−TBPは、フェリチン単量体を構成する6つのα−ヘリックスのうちのN末端から数えて4番目と5番目の間のフレキシブルリンカー領域に金認識ペプチド(GBP1)が挿入融合されたヒト由来フェリチンH鎖である。 図2は、水晶振動子マイクロバランス(QCM)法による、チタン成膜に対するFTH−BC−TBPおよびFTH−D−TBPの吸着性の評価を示す図である。 図3は、水晶振動子マイクロバランス(QCM)法により測定された、FTH−BC−TBPおよびFTH−D−TBP濃度に対する周波数の変化を示す図である。各濃度に対する周波数の変化を測定し、次いで、各濃度の逆数と周波数変化の逆数との相関関係をプロットし、その傾きから解離平衡定数KD値を求めた。 図4は、FHBcについて、3%りんタングステン酸染色による透過型電子顕微鏡(TEM)像(カゴ状形状)を示す図である。FHBcは、フェリチン単量体を構成する6つのα−ヘリックスのうちのN末端から数えて2番目と3番目の間のフレキシブルリンカー領域に癌認識RGDペプチドが挿入融合され、C末端にシステインが追加されたヒト由来フェリチンH鎖である。 図5は、動的光散乱法(DLS)による、酸化鉄ナノ粒子を封入したFHBcの粒径および溶液分散性の評価を示す図である。 図6−1は、動的光散乱法(DLS)によるFTH−BC−GBPの粒径および溶液分散性の評価を示す図である。FTH−BC−GBPは、フェリチン単量体を構成する6つのα−ヘリックスのうちのN末端から数えて2番目と3番目の間のフレキシブルリンカー領域に金認識ペプチド(GBP1)が挿入融合されたヒト由来フェリチンH鎖である。 図6−2は、動的光散乱法(DLS)によるFTH−D−GBPの粒径および溶液分散性の評価を示す図である。FTH−D−GBPは、フェリチン単量体を構成する6つのα−ヘリックスのうちのN末端から数えて4番目と5番目の間のフレキシブルリンカー領域に金認識ペプチド(GBP1)が挿入融合されたヒト由来フェリチンH鎖である。 図7は、水晶振動子マイクロバランス(QCM)法による、金薄膜に対するFTH−BC−GBPおよびFTH−D−GBPの吸着性の評価を示す図である。各濃度に対する周波数の変化を測定し、次いで、各濃度の逆数と周波数変化の逆数との相関関係をプロットし、その傾きから解離平衡定数KD値を求めた。 図8は、FTL−BC−GBPの模式的立体構造を示す図である。FTL−BC−GBPは、フェリチン単量体を構成する6つのα−ヘリックスのうちのN末端から数えて2番目と3番目の間のフレキシブルリンカー領域に金認識ペプチド(GBP1)が挿入融合されたヒト由来フェリチンL鎖である。 図9は、FTL−DE−GBPの模式的立体構造を示す図である。FTL−DE−GBPは、フェリチン単量体を構成する6つのα−ヘリックスのうちのN末端から数えて5番目と6番目の間のフレキシブルリンカー領域に金認識ペプチド(GBP1)が挿入融合されたヒト由来フェリチンL鎖である。 図10は、水晶振動子マイクロバランス(QCM)法による、金薄膜に対するFTL−BC−GBPおよびFTL−DE−GBPの吸着性の評価を示す図である。FTL−BC−GBPおよびFTL−DE−GBP濃度に対する周波数の変化を測定し、次いで、各濃度の逆数と周波数変化の逆数との相関関係をプロットし、その傾きから解離平衡定数KD値を求めた。 図11は、BCDps−CS4について、3%りんタングステン酸染色による透過型電子顕微鏡(TEM)像(カゴ状形状)を示す図である。BCDps−CS4は、フェリチンの対応領域とC末端に異種ペプチドが挿入されたListeria innocua由来のDpsである。 図12は、水晶振動子マイクロバランス(QCM)法による、金薄膜に対するFTH−BC−GBPおよびFTH−DE−GBPの吸着性の評価を示す図である。FTH−BC−GBPおよびFTH−DE−GBP濃度に対する周波数の変化を測定し、次いで、各濃度の逆数と周波数変化の逆数との相関関係をプロットし、その傾きから解離平衡定数KD値を求めた。
本発明は、(a)フェリチン単量体、および(b)フェリチン単量体におけるB領域およびC領域のα−ヘリックスの間のフレキシブルリンカー領域中に挿入された機能性ペプチドを含む、融合タンパク質を提供する。
フェリチン(多量体タンパク質)は、種々の生物に普遍的に存在する。したがって、本発明では、フェリチンを構成するフェリチン単量体として、種々の生物のフェリチン単量体を使用することができる。フェリチン単量体が由来する生物としては、例えば、動物、昆虫、魚類、植物等の高等生物、および微生物が挙げられる。動物としては、哺乳動物または鳥類(例、ニワトリ)が好ましく、哺乳動物がより好ましい。哺乳動物としては、例えば、霊長類(例、ヒト、サル、チンパンジー)、齧歯類(例、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ)、家畜および使役用の哺乳動物(例、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ)が挙げられる。フェリチン単量体としては、H鎖またはL鎖のいずれも使用することができる。フェリチン単量体としては、天然に生じるフェチリン単量体、またはその変異体のいずれも使用することができる。
一実施形態では、フェリチン単量体は、ヒトフェリチン単量体である。ヒトへの臨床応用の観点より、フェリチン単量体としてヒトフェリチン単量体を用いることが好ましい。ヒト由来フェリチン単量体として、ヒトフェリチンH鎖、またはヒトフェリチンL鎖のいずれも使用することができる。
好ましくは、ヒトフェリチンH鎖は、以下であってもよい:
(A1)配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(B1)配列番号2のアミノ酸配列において、アミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および付加からなる群より選ばれる、1もしくは数個のアミノ酸残基の修飾を含むアミノ酸配列を含み、かつ、多量体(例、24量体)形成能を有するタンパク質;または
(C1)配列番号2のアミノ酸配列に対して90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、多量体(例、24量体)形成能を有するタンパク質。
好ましくは、ヒトフェリチンL鎖は、以下であってもよい:
(A2)配列番号4のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(B2)配列番号4のアミノ酸配列において、アミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および付加からなる群より選ばれる、1もしくは数個のアミノ酸残基の修飾を含むアミノ酸配列を含み、かつ、多量体(例、24量体)形成能を有するタンパク質;または
(C2)配列番号4のアミノ酸配列に対して90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、多量体(例、24量体)形成能を有するタンパク質。
別の実施形態では、フェリチン単量体は、微生物フェリチン単量体である。微生物フェリチンは、Dpsとも呼ばれる。Dpsは、それが由来する細菌の種類によってはNapA、バクテリオフェリチン、DlpまたはMrgAと称呼される場合があり、また、Dpsには、DpsA、DpsB、Dps1、Dps2等のサブタイプが知られている(T.Haikarainen and A.C.Papageorgion, Cell.Mol.Life Sci.,2010 vol.67,p.341を参照)。したがって、本発明では、微生物フェリチン単量体として、Dpsまたは上記別称タンパク質の単量体を使用することができる。
微生物フェリチンとしては、種々の微生物のフェリチンが知られている(例、国際公開第2012/086647号)。このような微生物としては、例えば、リステリア(Listeria)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、バチルス(Bacillus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ビブリオ(Vibrio)属、エスケリシア(Escherichia)属、ブルセラ(Brucella)属、ボレリア(Borrelia)属、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、カンピロバクター(Campylobacter)属、サーモシネココッカス(Thermosynechococcus)属、およびデイノコッカス(Deinococcus)属、ならびにコリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する細菌が挙げられる。リステリア属に属する細菌としては、例えば、リステリア・イノキュア(Listeria innocua)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)が挙げられる。スタフィロコッカス属に属する細菌としては、例えば、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus Aureus)が挙げられる。バチルス属に属する細菌としては、例えば、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)が挙げられる。ストレプトコッカス属に属する細菌としては、例えば、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス スイス(Streptococcus suis)が挙げられる。ビブリオ属に属する細菌としては、例えば、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)が挙げられる。エスケリシア属に属する細菌としては、例えば、エスケリシア・コリ(Escherichia coli)が挙げられる。ブルセラ属に属する細菌としては、例えば、ブルセラ・メリテンシス(Brucella Melitensis)が挙げられる。ボレリア属に属する細菌としては、例えば、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia Burgdorferi)が挙げられる。マイコバクテリウム属に属する細菌としては、例えば、マイコバクテリウム・スメグマティス(Mycobacterium smegmatis)が挙げられる。カンピロバクター属に属する細菌としては、例えば、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)が挙げられる。サーモシネココッカス属に属する細菌としては、例えば、サーモシネココッカス・エロンガタス(Thermosynechococcus Elongatus)が挙げられる。デイノコッカス属に属する細菌としては、例えば、デイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus Radiodurans)が挙げられる。コリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する細菌としては、例えば、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)が挙げられる。したがって、本発明では、微生物フェリチン単量体として、このような微生物のフェリチン単量体を使用することができる。
好ましくは、微生物フェリチン単量体は、リステリア・イノキュア(Listeria innocua)フェリチン(Dps)単量体であってもよい。リステリア・イノキュア(Listeria innocua)フェリチン(Dps)単量体は、以下であってもよい:
(A3)配列番号6のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(B3)配列番号6のアミノ酸配列において、アミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および付加からなる群より選ばれる、1もしくは数個のアミノ酸残基の修飾を含むアミノ酸配列を含み、かつ、多量体(例、12量体)形成能を有するタンパク質;または
(C3)配列番号6のアミノ酸配列に対して90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、多量体(例、12量体)形成能を有するタンパク質。
タンパク質(B1)〜(B3)では、アミノ酸残基の欠失、置換、付加および挿入からなる群より選ばれる1、2、3または4種の修飾により、1個または数個のアミノ酸残基を改変することができる。アミノ酸残基の修飾は、アミノ酸配列中の1つの領域に導入されてもよいが、複数の異なる領域に導入されてもよい。用語「1または数個」は、タンパク質の活性を大きく損なわない個数を示す。用語「1または数個」が示す数は、例えば1〜50個、好ましくは1〜40個、より好ましくは1〜30個、さらにより好ましくは1〜20個、特に好ましくは1〜10個または1〜5個(例、1個、2個、3個、4個、または5個)である。
タンパク質(C1)〜(C3)では、対象のアミノ酸配列に対する相同性の程度は、好ましくは92%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらにより好ましくは97%以上であり、最も好ましくは98%以上または99%以上である。アミノ酸配列の相同性(即ち、同一性または類似性)は、例えばKarlinおよびAltschulによるアルゴリズムBLAST(Pro.Natl.Acad.Sci.USA,90,5873(1993))、PearsonによるFASTA(MethodsEnzymol.,183,63(1990))を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTP、BLASTNとよばれるプログラムが開発されているので(http://www.ncbi.nlm.nih.gov参照)、これらのプログラムをデフォルト設定で用いて、相同性を計算してもよい。また、相同性としては、例えば、Lipman−Pearson法を採用している株式会社ゼネティックスのソフトウェアGENETYX Ver7.0.9を使用し、ORFにコードされるポリペプチド部分全長を用いて、Unit Size to Compare=2の設定で類似性をpercentage計算させた際の数値を用いてもよい。あるいは、相同性は、NEEDLEプログラム(J Mol Biol 1970;48:443−453)検索において、デフォルト設定のパラメータ(Gap penalty=10、Extend penalty=0.5、Matrix=EBLOSUM62)を用いて得られた値(Identity)であってもよい。これらの計算で導き出される相同性%の値のうち、最も低い値を採用してもよい。相同性%としては、好ましくは同一性%が利用される。
アミノ酸配列において変異を導入すべきアミノ酸残基の位置は、当業者に明らかであるが、配列アライメントをさらに参考にして特定されてもよい。具体的には、当業者は、1)複数のアミノ酸配列を比較し、2)相対的に保存されている領域、および相対的に保存されていない領域を明らかにし、次いで、3)相対的に保存されている領域および相対的に保存されていない領域から、それぞれ、機能に重要な役割を果たし得る領域および機能に重要な役割を果たし得ない領域を予測できるので、構造・機能の相関性を認識できる。したがって、当業者は、配列アライメントを利用することによりアミノ酸配列において変異を導入すべき位置を特定でき、また、既知の二次および三次構造情報を併用して、アミノ酸配列において変異を導入すべきアミノ酸残基の位置を特定することもできる。
アミノ酸残基が置換により変異される場合、アミノ酸残基の置換は、保存的置換であってもよい。本明細書中で用いられる場合、用語「保存的置換」とは、所定のアミノ酸残基を、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換することをいう。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野で周知である。例えば、このようなファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電性極性側鎖を有するアミノ酸(例、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β位分岐側鎖を有するアミノ酸(例、スレオニン、バリン、イソロイシン)、芳香族側鎖を有するアミノ酸(例、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)、ヒドロキシル基(例、アルコール性、フェノール性)含有側鎖を有するアミノ酸(例、セリン、スレオニン、チロシン)、および硫黄含有側鎖を有するアミノ酸(例、システイン、メチオニン)が挙げられる。好ましくは、アミノ酸の保存的置換は、アスパラギン酸とグルタミン酸との間での置換、アルギニンとリジンとヒスチジンとの間での置換、トリプトファンとフェニルアラニンとの間での置換、フェニルアラニンとバリンとの間での置換、ロイシンとイソロイシンとアラニンとの間での置換、およびグリシンとアラニンとの間での置換であってもよい。
高等生物のフェリチン単量体は、種々の高等生物間で高度に保存された6つのα−ヘリックスを有すること、および高等生物のフェリチン単量体としてH鎖およびL鎖の2種の単量体が存在することが知られている。一方、微生物のフェリチン単量体(Dps単量体)は、種々の微生物間で高度に保存された5つのα−ヘリックスを有すること、および微生物のフェリチン単量体としては1種の単量体が存在することが知られている。高等生物および微生物のフェリチン単量体は、A領域、B領域、C領域、およびD領域中のα−ヘリックスが高度に保存されている。高等生物のフェリチン単量体では、微生物のフェリチン単量体に存在するB領域とC領域の境界中のα−ヘリックスの欠損が認められる。一方、微生物のフェリチン単量体では、高等生物のフェリチン単量体に存在するE領域中のα−ヘリックスの欠損が認められる。高等生物のフェリチン単量体としてヒトフェリチン単量体、微生物のフェリチン単量体としてリステリア・イノキュア(Listeria innocua)フェリチン単量体を例に挙げて、α−ヘリックスの位置を要約すると、以下の表1に示すとおりである。
各種生物のフェリチン単量体で高度に保存されているB領域およびC領域のα−ヘリックスの間のフレキシブルリンカー領域(ヒト等の高等生物では、フェリチン単量体のN末端から数えて2番目および3番目のα−ヘリックスの間の領域;および微生物では、フェリチン(Dps)単量体のN末端から数えて2番目および4番目のα−ヘリックスの間の領域)に機能性ペプチドを挿入した融合タンパク質から構成される多量体は、各種生物のフェリチン単量体で高度に保存されているD領域以降の領域〔例、先行技術で報告されている、D領域とE領域のα−ヘリックスの間のフレキシブルリンカー領域(例、フェリチン単量体のN末端から数えて5番目および6番目のα−ヘリックスの間の領域)〕に機能性ペプチドを挿入した融合タンパク質から構成される多量体に比し、標的とより強く相互作用することができる。
フェリチン単量体におけるB領域およびC領域のα−ヘリックスは、当該分野において周知であり、また、当業者であれば、各種生物由来のフェリチン単量体において、B領域およびC領域のα−ヘリックスの位置を適宜特定することができる。したがって、本発明において機能性ペプチドが挿入されるB領域およびC領域のα−ヘリックスの間のフレキシブルリンカー領域もまた、当該分野において周知であり、また、当業者であれば適宜特定することができる。例えば、ヒトフェリチンH鎖(配列番号2)等の高等等物フェリチンH鎖に対する機能性ペプチドのこのような挿入位置としては、78〜96位(好ましくは83〜91位)のアミノ酸残基からなる領域中の任意の位置を利用することができる。また、ヒトフェリチンL鎖(配列番号4)等の高等等物フェリチンL鎖に対する機能性ペプチドのこのような挿入位置としては、74〜92位(好ましくは79〜87位)のアミノ酸残基からなる領域中の任意の位置を利用することができる。さらに、リステリア・イノキュアDps(配列番号6)等の微生物フェリチン単量体Dpsに対する機能性ペプチドのこのような挿入位置としては、67〜94位(好ましくは82〜94位)のアミノ酸残基からなる領域中の任意の位置を利用することができる。実施例で構築された各種融合タンパク質では、種々の機能性ペプチド(例、チタン認識ペプチド、癌認識ペプチド、金認識ペプチド)が、以下の表2に示すとおり、所定のフェリチン単量体中の所望の部位に挿入されている。
機能性ペプチドとしては、目的タンパク質と融合された場合に任意の機能を目的タンパク質に付加することができるペプチドを用いることができる。このようなペプチドとしては、標的材料に対する結合能を有するペプチド、プロテアーゼ分解性ペプチド、細胞透過性ペプチド、安定化ペプチドが挙げられる。本発明では、標的材料に対する結合能を有するペプチドをフェリチンの第2および第3α−ヘリックスの間の領域に挿入した融合タンパク質から構成される多量体が、同ペプチドをフェリチンの第5および第6α−ヘリックスの間の領域に挿入した融合タンパク質から構成される多量体に比し、標的材料の結合能に優れることが見出されている。これは、第2および第3α−ヘリックスの間の領域に挿入されたペプチドが、第5および第6α−ヘリックスの間の領域に挿入されたペプチドに比し、標的とより強く相互作用できることを示す。したがって、機能性ペプチドとして、標的材料に対する結合能を有するペプチドを用いた場合のみならず、他のペプチド(例、プロテアーゼ分解性ペプチド)を用いた場合も、標的(例、プロテアーゼ)と強く相互作用し得ると考えられることから、本発明は、このような他のペプチドを機能性ペプチドとして用いる場合も有用である。
上述した領域中に挿入される機能性ペプチドは、所望の機能を有する1個のペプチドのみであってもよいし、または所望の機能を有する同種もしくは異種の複数(例、2個、3個もしくは4個等の数個)のペプチドであってもよい。機能性ペプチドが上記のような複数のペプチドである場合、複数の機能性ペプチドは、任意の順序で挿入されて、フェリチン単量体と融合することができる。融合は、アミド結合を介して達成することができる。融合は、アミド結合により直接的に達成されてもよいし、あるいは1個のアミノ酸残基(例、メチオニン)または数個(例えば2〜20個、好ましくは2〜10個、より好ましくは2、3、4または5個)のアミノ酸残基からなるペプチド(ペプチドリンカー)が介在したアミド結合により間接的に達成されてもよい。種々のペプチドリンカーが知られているので、本発明でも、このようなペプチドリンカーを使用することができる。好ましくは、上述した領域中に挿入されるペプチド全体の長さは、20個のアミノ酸残基以下である。
機能性ペプチドとして、標的材料に対する結合能を有するペプチドを用いる場合、標的材料としては、例えば、有機物および無機物(例、導体、半導体および磁性体)が挙げられる。より具体的には、このような標的材料としては、生体有機分子、金属材料、シリコン材料、炭素材料、タンパク質精製用タグ(例、ヒスチジンタグ、マルトース結合タンパク質タグ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)と相互作用できる材料(例、ニッケル、マルトース、グルタチオン)、標識物質(例、放射性物質、蛍光物質、色素)、ポリマー(例、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエチレンオキシドまたはポリ(L−乳酸)等の疎水性有機ポリマーまたは伝導性ポリマー)が挙げられる。
生体有機分子としては、例えば、タンパク質(例、オリゴペプチドまたはポリペプチド)、核酸(例、DNAまたはRNA、あるいはヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド)、糖質(例、モノサッカリド、オリゴサッカリドまたはポリサッカリド)、脂質が挙げられる。生体有機分子はまた、細胞表面抗原(例、癌抗原、心疾患マーカー、糖尿病マーカー、神経疾患マーカー、免疫疾患マーカー、炎症マーカー、ホルモン、感染症マーカー)であってもよい。生体有機分子はまた、疾患抗原(例、癌抗原、心疾患マーカー、糖尿病マーカー、神経疾患マーカー、免疫疾患マーカー、炎症マーカー、ホルモン、感染症マーカー)であってもよい。このような生体有機分子に対する結合能を有するペプチドとしては、種々のペプチドが報告されている。例えば、タンパク質に対する結合能を有するペプチド(例、F.Danhier et al.,Mol. Pharmaceutics,2012,vol.9,No.11,p.2961.、C−H.Wu et al.,Sci.Transl.Med.,2015,vol.7,No.290,290ra91.L.Vannucci et.al.Int.J.Nanomedicine.2012,vol.7,p.1489、J.Cutrera et al.,Mol.Ther.2011,vol.19(8),p.1468、R.Liu et al.,Adv.Drug Deliv.Rev.2017,vol.110−111,p.13を参照)、核酸に対する結合能を有するペプチド(例、R.Tan et.al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1995、vol.92,p.5282、R.Tan et.al.Cell、1993、vol.73, p.1031、R.Talanian et.al.Biochemistry.1992,vol.31,p.6871を参照)、糖質に対する結合能を有するペプチド(例、K.Oldenburg et.al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1992,vol.89,No.12,p.5393−5397.,K.Yamamoto et.al.,J.Biochem.,1992,vol.111,p.436,A.Baimiev et.al.,Mol.Biol.(Moscow),2005,vol.39,No.1,p.90.を参照)、脂質に対する結合能を有するペプチド(例、O.Kruse et.al.,B Z. Naturforsch.,1995,vol.50c,p.380,O.Silva et.al., Sci.Rep.,2016,vol.6,27128., A.Filoteo et.al.,J.Biol.Chem.,1992,vol.267,No.17,p.11800を参照)等の種々のペプチドが報告されている。
好ましくは、生体有機分子に対する結合能を有するペプチドは、タンパク質に対する結合能を有するペプチドであってもよい。タンパク質に対する結合能を有するペプチドとしては、例えば、Danhier et al.,Mol. Pharmaceutics,2012,vol.9,No.11,p.2961に開示されるRGD含有ペプチドやその改変配列(例、RGD(配列番号37)、ACDCRGDCFCG(配列番号38)、CDCRGDCFC(配列番号39)、GRGDS(配列番号40)、およびASDRGDFSG(配列番号16))、ならびにその他のインテグリン認識配列(例、EILDV(配列番号41)、およびREDV(配列番号42))、L.Vannucci et.al.Int.J.Nanomedicine.2012,vol.7,p.1489に開示されるペプチド(例、SYSMEHFRWGKP(配列番号43))、J.Cutrera et al.,Mol.Ther.2011,vol.19,No.8,p.1468に開示されるペプチド(例、VNTANST(配列番号44))、R.Liu et al.,Adv.Drug Deliv.Rev.2017,vol.110−111,p.13に開示されるペプチド(例、DHLASLWWGTEL(配列番号45)、およびNYSKPTDRQYHF(配列番号46)、IPLPPPSRPFFK(配列番号47)、LMNPNNHPRTPR(配列番号48)、CHHNLTHAC(配列番号49)、CLHHYHGSC(配列番号50)、CHHALTHAC(配列番号51)、SPRPRHTLRLSL(配列番号52)、TMGFTAPRFPHY(配列番号53)、NGYEIEWYSWVTHGMY(配列番号54)、FRSFESCLAKSH(配列番号55)、YHWYGYTPQNVI(配列番号56)、QHYNIVNTQSRV(配列番号57)、QRHKPRE(配列番号58)、HSQAAVP(配列番号59)、AGNWTPI(配列番号60)、PLLQATL(配列番号61)、LSLITRL(配列番号62)、CRGDCL(配列番号63)、CRRETAWAC(配列番号64)、RTDLDSLRTYTL(配列番号65)、CTTHWGFTLC(配列番号66)、APSPMIW(配列番号67)、LQNAPRS(配列番号68)、SWTLYTPSGQSK(配列番号69)、SWELYYPLRANL(配列番号70)、WQPDTAHHWATL(配列番号71)、CSDSWHYWC(配列番号72)、WHWLPNLRHYAS(配列番号73)、WHTEILKSYPHE(配列番号74)、LPAFFVTNQTQD(配列番号75)、YNTNHVPLSPKY(配列番号76)、YSAYPDSVPMMS(配列番号77)、TNYLFSPNGPIA(配列番号78)、CLSYYPSYC(配列番号79)、CVGVLPSQDAIGIC(配列番号80)、CEWKFDPGLGQARC(配列番号81)、CDYMTDGRAASKIC(配列番号82)、KCCYSL(配列番号83)、MARSGL(配列番号84)、MARAKE(配列番号85)、MSRTMS(配列番号86)、WTGWCLNPEESTWGFCTGSF(配列番号87)、MCGVCLSAQRWT(配列番号88)、SGLWWLGVDILG(配列番号89)、NPGTCKDKWIECLLNG(配列番号90)、ANTPCGPYTHDCPVKR(配列番号91)、IVWHRWYAWSPASRI(配列番号92)、CGLIIQKNEC(配列番号93)、MQLPLAT(配列番号94)、CRALLRGAPFHLAEC(配列番号95)、IELLQAR(配列番号96)、TLTYTWS(配列番号97)、CVAYCIEHHCWTC(配列番号98)、THENWPA(配列番号99)、WHPWSYLWTQQA(配列番号100)、VLWLKNR(配列番号101)、CTVRTSADC(配列番号102)、AAAPLAQPHMWA(配列番号103)、SHSLLSS(配列番号104)、ALWPPNLHAWVP(配列番号105)、LTVSPWY(配列番号106)、SSMDIVLRAPLM(配列番号107)、FPMFNHWEQWPP(配列番号108)、SYPIPDT(配列番号109)、HTSDQTN(配列番号110)、CLFMRLAWC(配列番号111)、DMPGTVLP(配列番号112)、DWRGDSMDS(配列番号113)、VPTDTDYS(配列番号114)、VEEGGYIAA(配列番号115)、VTWTPQAWFQWV(配列番号116)、AQYLNPS(配列番号117)、CSSRTMHHC(配列番号118)、CPLDIDFYC(配列番号119)、CPIEDRPMC(配列番号120)、RGDLATLRQLAQEDGVVG(配列番号121)、SPRGDLAVLGHK(配列番号122)、SPRGDLAVLGHKY(配列番号123)、CQQSNRGDRKRC(配列番号124)、CMGNKCRSAKRP(配列番号125)、CGEMGWVRC(配列番号126)、GFRFGALHEYNS(配列番号127)、CTLPHLKMC(配列番号128)、ASGALSPSRLDT(配列番号129)、SWDIAWPPLKVP(配列番号130)、CTVALPGGYVRVC(配列番号131)、ETAPLSTMLSPY(配列番号132)、GIRLRG(配列番号133)、CPGPEGAGC(配列番号134)、CGRRAGGSC(配列番号135)、CRGRRST(配列番号136)、CNGRCVSGCAGRC(配列番号137)、CGNKRTRGC(配列番号138)、HVGGSSV(配列番号139)、RGDGSSV(配列番号140)、SWKLPPS(配列番号141)、CRGDKRGPDC(配列番号142)、GGKRPAR(配列番号143)、RIGRPLR(配列番号144)、CGFYWLRSC(配列番号145)、RPARPAR(配列番号146)、TLTYTWS(配列番号147)、SSQPFWS(配列番号148)、YRCTLNSPFFWEDMTHEC(配列番号149)、KTLLPTP(配列番号150)、KELCELDSLLRI(配列番号151)、IRELYSYDDDFG(配列番号152)、NVVRQ(配列番号153)、VECYLIRDNLCIY(配列番号154)、CGGRRLGGC(配列番号155)、WFCSWYGGDTCVQ(配列番号156)、NQQLIEEIIQILHKIFEIL(配列番号157)、KMVIYWKAG(配列番号158)、LNIVSVNGRH(配列番号159)、QMARIPKRLARH(配列番号160)、およびQDGRMGF(配列番号161))またはそれらの変異ペプチド(例、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基の保存的置換等の変異)、あるいはこのようなアミノ酸配列を1個または複数有するペプチドが挙げられる。
好ましくは、生体有機分子に対する結合能を有するペプチドは、核酸に対する結合能を有するペプチドであってもよい。核酸に対する結合能を有するペプチドとしては、例えば、R.Tan et.al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1995、vol.92,p.5282に開示されるペプチド(例、TRQARRN(配列番号162)、TRQARRNRRRRWRERQR(配列番号163)、TRRQRTRRARRNR(配列番号164)、NAKTRRHERRRKLAIER(配列番号165)、MDAQTRRRERRAEKQAQWKAA(配列番号166)、およびRKKRRQRRR)(配列番号167))、R.Tan et.al.Cell、1993、vol.73,p.1031に開示されるペプチド(例、TRQARRNRRRRWRERQR(配列番号168))、Talanian et.al.Biochemistry.1992,vol.31,p.6871に開示されるペプチド(例、KRARNTEAARRSRARK(配列番号169))、またはそれらの変異ペプチド(例、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基の保存的置換等の変異)、あるいはこのようなアミノ酸配列を1個または複数有するペプチドが挙げられる。
好ましくは、生体有機分子に対する結合能を有するペプチドは、糖質に対する結合能を有するペプチドであってもよい。糖質に対する結合能を有するペプチドとしては、例えば、K.Oldenburg et.al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1992,vol.89,No12,p.5393−5397.に開示されるペプチド(例、DVFYPYPYASGS(配列番号170)、およびRVWYPYGSYLTASGS(配列番号171))、K.Yamamoto et.al.,J.Biochem.,1992,vol.111,p.436に開示されるペプチド(例、DTWPNTEWS(配列番号172)、DSYHNIW(配列番号173)、DTYFGKAYNPW(配列番号174)、およびDTIGSPVNFW(配列番号175))、A.Baimiev et.al.,Mol.Biol.(Moscow),2005,vol.39,No.1,p.90に開示されるペプチド(TYCNPGWDPRDR(配列番号176)、およびTFYNEEWDLVIKDEH(配列番号177))またはそれらの変異ペプチド(例、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基の保存的置換等の変異)、あるいはこのようなアミノ酸配列を1個または複数有するペプチドが挙げられる。
好ましくは、生体有機分子に対する結合能を有するペプチドは、脂質に対する結合能を有するペプチドであってもよい。脂質に対する結合能を有するペプチドとしては、例えば、O.Kruse et.al.,Z.Naturforsch.,1995,vol.50c,p.380に開示されるペプチド(例、MTLILELVVI(配列番号178)、MTSILEREQR(配列番号179)、およびMTTILQQRES(配列番号180))、O.Silva et.al., Sci.Rep.,2016,vol.6,27128に開示されるペプチド(例、VFQFLGKIIHHVGNFVHGFSHVF(配列番号181))、A.Filoteo et.al.,J.Biol.Chem.,1992,vol.267(17),p.11800に開示されるペプチド(例、KKAVKVPKKEKSVLQGKLTRLAVQI(配列番号182))またはそれらの変異ペプチド(例、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基の保存的置換等の変異)、あるいはこのようなアミノ酸配列を1個または複数有するペプチドが挙げられる。
金属材料としては、例えば、金属および金属化合物が挙げられる。金属としては、例えば、チタン、金、クロム、亜鉛、鉛、マンガン、カルシウム、銅、カルシウム、ゲルマニウム、アルミニウム、ガリウム、カドミウム、鉄、コバルト、銀、プラチナ、パラジウム、ハフニウム、テルルが挙げられる。金属化合物としては、例えば、このような金属の酸化物、硫化物、炭酸化物、砒化物、塩化物、フッ化物およびヨウ化物、ならびに金属間化合物が挙げられる。このような金属材料に対する結合能を有するペプチドとしては、種々のペプチドが報告されている(例、国際公開第2005/010031号;国際公開第2012/086647号;K.Sano et al.,Langmuir,2004,vol.21,p.3090.;S.Brown,Nat.Biotechnol.,1997,vol.15.p.269.;K.Kjaergaard et al.,Appl.Environ.Microbiol.,2000,vol.66.p.10.;Umetsu et al.,Adv.Mater.,17,2571−2575(2005);M.B.Dickerson et al.,Chem.Commun.,2004,vol.15.p.1776.;C.E.Flynn et al.,J.Mater.Chem.,2003,vol.13.p.2414.)。したがって、本発明では、このような種々のペプチドを用いることができる。また、金属に対する結合能を有するペプチドは、金属の析出(mineralization)作用を有し得ること、および金属化合物に対する結合能を有するペプチドは、金属化合物の析出作用を有し得ることが知られている(例、K.Sano et al.,Langmuir,2004,vol.21,p.3090.、M.Umetsu et al.,Adv.Mater.,2005,vol.17,p.2571.)。したがって、標的材料に対する結合能を有するペプチドとして、金属材料に対する結合能を有するペプチドを用いる場合、金属材料に対する結合能を有するペプチドは、このような析出作用を有することができる。
好ましくは、金属材料に対する結合能を有するペプチドは、チタンまたはチタン化合物(例、酸化チタン)等のチタン材料に対する結合能を有するペプチド、および金または金化合物等の金材料に対する結合能を有するペプチドであってもよい。チタン材料に対する結合能を有するペプチドとしては、例えば、後述する実施例および国際公開第2006/126595号に開示されるペプチド(例、RKLPDA(配列番号7)、M.J.Pender et al.,Nano Lett.,2006,vol.6,No.1,p.40−44に開示されるペプチド(例、SSKKSGSYSGSKGSKRRIL(配列番号183))、I.Inoue et al.,J.Biosci.Bioeng.,2006,vol.122,No.5,p.528に開示されるペプチド(例、AYPQKFNNNFMS(配列番号184))、ならびに国際公開第2006/126595号に開示されるペプチド(例、RKLPDAPGMHTW(配列番号185)、およびRALPDA(配列番号186))、またはそれらの変異ペプチド(例、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基の保存的置換等の変異)、あるいはこのようなアミノ酸配列を1個または複数有するペプチドが挙げられる。金材料に対する結合能を有するペプチドとしては、例えば、後述する実施例およびS.Brown,Nat. Biotechnol. 1997,vol.15, p.269に開示されるペプチド(例、MHGKTQATSGTIQS(配列番号21))、J.Kim et.al.,Acta Biomater.,2010,Vol.6,No.7,p.2681に開示されるペプチド(例、TGTSVLIATPYV(配列番号187)、およびTGTSVLIATPGV(配列番号188))、ならびにK.Nam et.al.,Science,2006,vol.312,No.5775,p.885.に開示されるペプチド(例、LKAHLPPSRLPS(配列番号189))、またはそれらの変異ペプチド(例、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基の保存的置換等の変異)、あるいはこのようなアミノ酸配列を1個または複数有するペプチドが挙げられる。
シリコン材料としては、例えば、シリコンまたはシリコン化合物が挙げられる。シリコン化合物としては、例えば、シリコンの酸化物(例、一酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO2))、炭化ケイ素(SiC)、シラン(SiH)、シリコーンゴムが挙げられる。このようなシリコン材料に対する結合能を有するペプチドとしては、種々のペプチドが報告されている(例、国際公開第2006/126595号;国際公開第2006/126595号;M.J.Pender et al.,Nano Lett.,2006,vol.6,No.1,p.40−44)。したがって、本発明では、このような種々のペプチドを用いることができる。
好ましくは、シリコン材料に対する結合能を有するペプチドは、シリコンまたはシリコン化合物(例、シリコンの酸化物)に対する結合能を有するペプチドであってもよい。このようなペプチドとしては、例えば、国際公開第2006/126595号に開示されるペプチド(例、RKLPDA(配列番号7))、M.J.Pender et al.,Nano Lett.,2006,vol.6,No.1,p.40−44に開示されるペプチド(例、SSKKSGSYSGSKGSKRRIL(配列番号190))、ならびに国際公開第2006/126595号に開示されるペプチド(MSPHPHPRHHHT(配列番号191)、TGRRRRLSCRLL(配列番号192)、およびKPSHHHHHTGAN(配列番号193))、またはそれらの変異ペプチド(例、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基の保存的置換等の変異)、あるいはこのようなアミノ酸配列を1個または複数有するペプチドが挙げられる。
炭素材料としては、例えば、カーボンナノ材料(例、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノホン(CNH))、フラーレン(C60)、グラフェンシート、グラファイトが挙げられる。このような炭素材料に対する結合能を有するペプチドとしては、種々のペプチドが報告されている(例、特開2004−121154号公報;特開2004−121154号公報;M.J.Pender et al.,Nano Lett.,2006,vol.6,No.1,p.40−44)。したがって、本発明では、このような種々のペプチドを用いることができる。
好ましくは、炭素材料に対する結合能を有するペプチドは、カーボンナノチューブ(CNT)またはカーボンナノホン(CNH)等のカーボンナノ材料に対する結合能を有するペプチドであってもよい。このようなペプチドとしては、例えば、後述する実施例および特開2004−121154号公報に開示されるペプチド(例、DYFSSPYYEQLF(配列番号194))、M.J.Pender et al.,Nano Lett.,2006,vol.6,No.1,p.40−44に開示されるペプチド(HSSYWYAFNNKT(配列番号195))、ならびに特開2004−121154号公報に開示されるペプチド(例、YDPFHII(配列番号196))、またはそれらの変異ペプチド(例、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基の保存的置換等の変異)、あるいはこのようなアミノ酸配列を1個または複数有するペプチドが挙げられる。
機能性ペプチドとしてプロテアーゼ分解性ペプチドが用いられる場合、プロテアーゼとしては、例えば、カスパーゼやカテプシンなどのシステインプロテアーゼ(D. McIlwain1 et al.,Cold Spring Harb Perspect Biol.,2013,vol.5,a008656、V.Stoka et al.,IUBMB Life.2005,vol.57,No.4−5p.347)、コラゲナーゼ(G.Lee et al.,Eur J Pharm Biopharm.,2007,vol.67,No.3) ,p.646)、トロンビンやXa因子(R.Jenny et al.,Protein Expr.Purif.,2003,vol.31,p.1、H.Xu et al.,J.Virol., 2010,vol.84,No.2,p.1076)、ウイルス由来プロテアーゼ(C.Byrd et al., Drug Dev. Res.,2006,vol.67,p.501)が挙げられる。
プロテアーゼ分解性ペプチドとしては、例えば、E.Lee et al.,Adv.Funct.Mater.,2015,vol.25,p.1279に開示されるペプチド(例、GRRGKGG(配列番号197))、G.Lee et al.,Eur J Pharm Biopharm.,2007,vol.67,No.3),p.646に開示されるペプチド(例、GPLGV(配列番号198)、およびGPLGVRG(配列番号199))、Y.Kang et al.,Biomacromolecules,2012,vol.13,No.12,p.4057に開示されるペプチド(例、GGLVPRGSGAS(配列番号200))、R.Talanian et al.,J.Biol.Chem.,1997,vol.272,p.9677に開示されるペプチド(例、YEVDGW(配列番号201)、LEVDGW(配列番号202)、VDQMDGW(配列番号203)、VDVADGW(配列番号204)、VQVDGW(配列番号205)、およびVDQVDGW(配列番号206))、Jenny et al.,Protein Expr.Purif.,2003,vol.31,p.1に開示されるペプチド(例、ELSLSRLRDSA(配列番号207)、ELSLSRLR(配列番号208)、DNYTRLRK(配列番号209)、YTRLRKQM(配列番号210)、APSGRVSM(配列番号211)、VSMIKNLQ(配列番号212)、RIRPKLKW(配列番号213)、NFFWKTFT(配列番号214)、KMYPRGNH(配列番号215)、QTYPRTNT(配列番号216)、GVYARVTA(配列番号217)、SGLSRIVN(配列番号218)、NSRVA(配列番号219)、QVRLG(配列番号220)、MKSRNL(配列番号221)、RCKPVN(配列番号222)、およびSSKYPN(配列番号223))、H.Xu et al.,J.Virol.,2010,vol.84,No.2,p.1076に開示されるペプチド(例、LVPRGS(配列番号224))またはそれらの変異ペプチド(例、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基の保存的置換等の変異)、あるいはこのようなアミノ酸配列を1個または複数有するペプチドが挙げられる。
機能性ペプチドとして安定化ペプチドが用いられる場合、安定化ペプチドとしては、例えば、X.Meng et al.,Nanoscale,2011,vol.3,No.3,p.977に開示されるペプチド(例、CCALNN(配列番号225))、ならびにE.Falvo et al.,Biomacromolecules,2016,vol.17,No.2,p.514に開示されるペプチド(例、PAS(配列番号226))またはそれらの変異ペプチド(例、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基の保存的置換等の変異)、あるいはこのようなアミノ酸配列を1個または複数有するペプチドが挙げられる。
機能性ペプチドとして細胞透過性ペプチドが用いられる場合、細胞透過性ペプチドとしては、例えば、Z.Guo et al.Biomed.Rep.,2016,vol.4,No.5,p.528に開示されるペプチド(例、GRKKRRQRRRPPQ(配列番号227)、RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号228)、CGYGPKKKRKVGG(配列番号229)、RRRRRRRR(配列番号230)、KKKKKKKK(配列番号231)、GLAFLGFLGAAGSTM(配列番号232)、GAWSQPKKKRKV(配列番号233)、LLIILRRRIRKQAHAHSK(配列番号234)、MVRRFLVTL(配列番号235)、RIRRACGPPRVRV(配列番号236)、MVKSKIGSWILVLFV(配列番号237)、SDVGLCKKRP(配列番号238)、NAATATRGRSAASRPTQR(配列番号239)、PRAPARSASRPRRPVQ(配列番号240)、DPKGDPKGVTVT(配列番号241)、VTVTVTGKGDPKPD(配列番号242)、KLALKLALK(配列番号243)、ALKAALKLA(配列番号244)、GWTLNSAGYLLG(配列番号245)、KINLKALAALAKKIL(配列番号246)、RLSGMNEVLSFRW(配列番号247)、SDLWEMMMVSLACQY(配列番号248)、およびPIEVCMYREP(配列番号249))またはそれらの変異ペプチド(例、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基の保存的置換等の変異)、あるいはこのようなアミノ酸配列を1個または複数有するペプチドが挙げられる。
機能性ペプチドとしては、標的材料に対する結合能を有するペプチドが好ましい。標的材料に対する結合能を有するペプチドの好ましい例は、有機物に対する結合能を有するペプチドである。有機物に対する結合能を有するペプチドとしては、生体有機分子に対する結合能を有するペプチドが好ましく、タンパク質に対する結合能を有するペプチドがより好ましい。標的材料に対する結合能を有するペプチドの別の好ましい例は、無機物に対する結合能を有するペプチドである。無機物に対する結合能を有するペプチドとしては、金属材料に対する結合能を有するペプチドが好ましく、チタン材料または金材料に対する結合能を有するペプチドがより好ましい。
本発明の融合タンパク質は、そのN末端領域および/またはC末端領域において改変されていてもよい。ヒトフェリチン単量体等の動物フェリチン単量体のN末端は多量体の表面上に露出され、そのC末端は表面上に露出し得ない。したがって、動物フェリチン単量体のN末端に付加されるペプチド部分は多量体の表面に露出して、多量体の外部に存在する標的材料と相互作用できるものの、動物フェリチン単量体のC末端に付加されるペプチド部分は多量体の表面に露出せず、多量体の外部に存在する標的材料と相互作用することができない(例、国際公開第2006/126595号)。しかし、動物フェリチン単量体のC末端は、そのアミノ酸残基を改変することで、多量体の内腔中への薬剤の封入に利用できることが報告されている(例、Y.J.Kang,Biomacromolecules.2012,vol.13(12),4057を参照)。一方、微生物フェリチン単量体(すなわちDps)は、そのN末端およびC末端の双方が多量体の表面に露出し得る。したがって、微生物フェリチン単量体のN末端およびC末端の双方に付加されるペプチド部分はそれぞれ、多量体の表面に露出して、多量体の外部に存在する異なる標的材料と相互作用することができる(例、国際公開第2012/086647号)。
好ましい実施形態では、本発明の融合タンパク質は、そのN末端領域における改変として、N末端にペプチド部分が付加されていてもよい。付加されるべきペプチド部分としては、例えば、上述したような機能性ペプチドが挙げられる。あるいは、付加されるべきペプチド部分としてはまた、例えば、目的タンパク質の可溶性を向上させるペプチド成分(例、Nus−tag)、シャペロンとして働くペプチド成分(例、トリガーファクター)、他の機能を有するペプチド成分(例、全長タンパク質またはその一部)、ならびにリンカーが挙げられる。融合タンパク質のN末端に付加されるペプチド部分として、第2および第3α−ヘリックスの間の領域に挿入される機能性ペプチドと同じまたは異なるペプチドを利用することができるが、異なる標的材料への相互作用の実現等の観点から、異なるペプチドを利用することが好ましい。好ましくは、本発明の融合タンパク質のN末端に付加されるペプチド部分は、上述したような機能性ペプチドである。N末端に付加されるペプチド部分はまた、開始コドンに対応するアミノ酸残基(例、メチオニン残基)をN末端に含むように設計することが好ましい。このような設計により、本発明の融合タンパク質の翻訳を促進することができる。
別の好ましい実施形態では、本発明の融合タンパク質は、そのC末端領域における改変として、C末端領域におけるアミノ酸残基が反応性アミノ酸残基に置換されていてもよく、C末端領域において反応性アミノ酸残基が挿入されていてもよく、またはC末端に反応性アミノ酸残基またはその含有ペプチド(例えば2〜12個、好ましくは2〜5個のアミノ酸残基からなるペプチド)が付加されていてもよい。このようなC末端領域としては、例えば、ヒトフェリチンH鎖については175〜183番目(好ましくは179〜183番目)のアミノ酸残基からなる領域、およびヒトフェリチンL鎖については171〜175番目(好ましくは173〜175番目)のアミノ酸残基からなる領域が挙げられる。このような改変により、反応性アミノ酸残基および所定の物質(例、薬物、標識物質)を反応させることができ、それにより多量体の内腔中に所定の物質を共有結合を介して封入することができる。このような反応性アミノ酸残基としては、例えば、チオール基を有するシステイン残基、アミノ基を有するリジン残基、アルギニン残基、アスパラギン残基、グルタミン残基が挙げられるが、システイン残基が好ましい。好ましくは、本発明の融合タンパク質のC末端領域の改変は、反応性アミノ酸残基またはその含有ペプチドのC末端への付加である。
本発明の融合タンパク質は、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞(本発明の宿主細胞)を用いて、融合タンパク質を宿主細胞に産生させることで入手することができる。本発明の融合タンパク質を産生させるための宿主細胞としては、例えば、動物、昆虫、魚類、植物、または微生物に由来する細胞が挙げられる。動物としては、哺乳動物または鳥類(例、ニワトリ)が好ましく、哺乳動物がより好ましい。哺乳動物としては、例えば、霊長類(例、ヒト、サル、チンパンジー)、齧歯類(例、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ)、家畜および使役用の哺乳動物(例、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ)が挙げられる。
好ましい実施形態では、宿主細胞は、ヒト細胞、またはヒトタンパク質の産生に汎用されている細胞(例、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎由来HEK293細胞)である。融合タンパク質としてヒトフェリチン単量体および機能性ペプチドの融合タンパク質を用いる場合、ヒトへの臨床応用の観点より、このような宿主細胞を用いることが好ましい。
別の好ましい実施形態では、宿主細胞は、微生物である。融合タンパク質の大量生産等の観点より、このような宿主細胞を用いてもよい。微生物としては、例えば、細菌および真菌が挙げられる。細菌としては、宿主細胞として用いられている任意の細菌を使用することができ、例えば、バシラス(Bacillus)属細菌〔例、枯草菌(Bacillus subtilis)〕、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌〔(例、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)〕、エシェリヒア(Escherichia)属細菌〔例、シェリヒア・コリ(Escherichia coli)〕、パントエア(Pantoea)属細菌(例、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis))が挙げられる。真菌としては、宿主細胞として用いられている任意の真菌を使用することができ、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属真菌〔例、サッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces cerevisiae)〕、およびシゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属真菌〔例、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)〕が挙げられる。あるいは、微生物として、糸状菌を用いてもよい。糸状菌としては、例えば、アクレモニウム属(Acremonium)/タラロマイセス属(Talaromyces)、トリコデルマ属(Trichoderma)、アルペルギルス属(Aspergillus)、ニューロスポラ属(Neurospora)、フサリウム属(Fusarium)、クリソスポリウム属(Chrysosporium)、フミコーラ属(Humicola)、エメリセラ属(Emericella)、およびハイポクレア属(Hypocrea)に属する細菌が挙げられる。
本発明の宿主細胞は、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドに加えて、当該ポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む発現単位を含むことが好ましい。用語「発現単位」とは、タンパク質として発現されるべき所定のポリヌクレオチドおよびそれに作動可能に連結されたプロモーターを含む、当該ポリヌクレオチドの転写、ひいては当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質の産生を可能にする単位をいう。発現単位は、ターミネーター、リボゾーム結合部位、および薬剤耐性遺伝子等のエレメントをさらに含んでいてもよい。発現単位は、DNAであってもRNAであってもよいが、DNAであることが好ましい。発現単位は、微生物(宿主細胞)においてゲノム領域(例、上記タンパク質をコードするポリヌクレオチドが固有に存在する天然ローカスである天然ゲノム領域、もしくは当該天然ローカスではない非天然ゲノム領域)、または非ゲノム領域(例、細胞質内)に含まれることができる。発現単位は、1または2以上(例、1、2、3、4、または5)の異なる位置においてゲノム領域中に含まれていてもよい。非ゲノム領域に含まれる発現単位の具体的な形態としては、例えば、プラスミド、ウイルスベクター、ファージ、および人工染色体が挙げられる。
発現単位を構成するプロモーターは、その下流に連結されたポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質を宿主細胞で発現させることができるものであれば特に限定されない。例えば、プロモーターは、宿主細胞に対して同種であっても異種であってもよいが、好ましくは異種である。例えば、組換えタンパク質の産生に汎用される構成または誘導プロモーターを用いることができる。このようなプロモーターは、用いられる宿主細胞の種類(例、ヒト細胞等の哺乳動物細胞、微生物)に応じて、哺乳動物由来のプロモーター、微生物由来のプロモーター、ウイルス由来のプロモーター等のプロモーターを適宜選択することができる。
本発明の宿主細胞は、当該分野において公知の任意の方法により作製することができる。例えば、本発明の宿主細胞は、発現ベクターを用いる方法(例、コンピテント細胞法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム沈澱法)、またはゲノム改変技術により作製することができる。発現ベクターが宿主細胞のゲノムDNAと相同組換えを生じる組込み型(integrative)ベクターである場合、発現単位は、形質転換により、宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれることができる。一方、発現ベクターが宿主細胞のゲノムDNAと相同組換えを生じない非組込み型ベクターである場合、発現単位は、形質転換により、宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれず、宿主細胞内において、発現ベクターの状態のまま、ゲノムDNAから独立して存在できる。あるいは、ゲノム編集技術(例、CRISPR/Casシステム、Transcription Activator−Like Effector Nucleases(TALEN))によれば、発現単位を宿主細胞のゲノムDNAに組み込むこと、および宿主細胞が固有に備える発現単位を改変することが可能である。
発現ベクターは、発現単位として上述した最小単位に加えて、宿主細胞で機能するターミネーター、リボゾーム結合部位、および薬剤耐性遺伝子等のエレメントをさらに含んでいてもよい。薬剤耐性遺伝子としては、例えば、テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ホスフィノスリシン等の薬剤に対する耐性遺伝子が挙げられる。発現ベクターはまた、宿主細胞のゲノムDNAとの相同組換えのために、宿主細胞のゲノムとの相同組換えを可能にする領域をさらに含んでいてもよい。例えば、発現ベクターは、それに含まれる発現単位が一対の相同領域(例、宿主細胞のゲノム中の特定配列に対して相同なホモロジーアーム、loxP、FRT)間に位置するように設計されてもよい。発現単位が導入されるべき宿主細胞のゲノム領域(相同領域の標的)としては、特に限定されないが、宿主細胞において発現量が多い遺伝子のローカスであってもよい。
発現ベクターは、プラスミド、ウイルスベクター、ファージ、または人工染色体であってもよい。発現ベクターはまた、組込み型(integrative)ベクターであっても非組込み型ベクターであってもよい。組込み型ベクターは、その全体が宿主細胞のゲノムに組み込まれるタイプのベクターであってもよい。あるいは、組込み型ベクターは、その一部(例、発現単位)のみが宿主細胞のゲノムに組み込まれるタイプのベクターであってもよい。発現ベクターはさらに、DNAベクター、またはRNAベクター(例、レトロウイルス)であってもよい。このような発現ベクターは、用いられる宿主細胞の種類(例、ヒト細胞等の哺乳動物細胞、微生物)に応じて、適宜選択することができる。
宿主細胞を培養するための培地は公知であり、宿主細胞の種類に応じた適切な培地を用いることができる。このような培地には、所定の成分(例、炭素源、窒素源、ビタミン)が添加されてもよい。宿主細胞は、通常16〜42℃、好ましくは25〜37℃で、通常5〜168時間、好ましくは8〜72時間培養される。培養方法としては、例えば、バッチ培養法、流加培養法、連続培養法が挙げられる。あるいは、誘導剤を用いて、融合タンパク質の発現を誘導してもよい。
産生された目的タンパク質は、塩析、沈殿法(例、等電点沈殿法、溶媒沈殿法)、分子量差を利用する方法(例、透析、限外濾過、ゲル濾過)、特異的親和性を利用する方法(例、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー)、疎水度の差を利用する方法(例、疎水性クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー)、またはこれらの組み合わせにより、宿主細胞またはその含有培地から精製および単離することが可能である。本発明の融合タンパク質が宿主細胞内に蓄積される場合、本発明の融合タンパク質は、まず、宿主細胞を破砕(例、ソニケーション、ホモジナイゼーション)または溶解(例、リゾチーム処理)し、次いで、得られた破砕物および溶解物を、上述した方法で処理することにより、得ることができる。
本発明はまた、本発明の融合タンパク質の作製に用いることができる、上述したような、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、ならびにそれを含む発現ベクターおよび宿主細胞を提供する。
本発明はまた、多量体を提供する。本発明の多量体は、融合タンパク質から構成されており、かつ内腔を有することができる。本発明の多量体を構成する融合タンパク質の詳細は、上述したとおりである。本発明の多量体は、本発明の融合タンパク質を発現させることで、自律的に生成することができる。本発明の多量体を構成する単量体単位の数は、本発明の融合タンパク質に含まれるフェリチンの由来により決定することができる。例えば、フェリチンがヒト等の動物に由来する場合、本発明の多量体は、24量体である。一方、フェリチンが微生物に由来する場合(例、Dps)、本発明の多量体は、12量体である。
本発明の多量体は、単量体単位として、単一の融合タンパク質から構成されるホモ多量体であってもよいが、異なる複数の種類(例、2種)の融合タンパク質から構成されるヘテロ多量体であってもよい。例えば、ヒト等の動物では、フェリチンの多くは、2種類のサブユニット(H鎖およびL鎖)からなるヘテロ多量体として存在することが知られている。したがって、本発明の多量体としても、ヘテロ多量体を使用することができる。
異なる複数の種類の融合タンパク質から構成される多量体は、例えば、異なる種類の融合タンパク質をコードする複数のポリヌクレオチドを含む宿主細胞を用いて、異なる種類の融合タンパク質を産生させることにより、得ることができる。このような多量体はまた、単一の融合タンパク質から構成される第1の単量体と、単一の融合タンパク質(第1の多量体を構成する融合タンパク質とは異なる)から構成される第2の単量体とを、同一の媒体(例、緩衝液)中で共存させ、放置することにより、得ることができる。融合タンパク質の単量体は、例えば、本発明の多量体を、低pHの緩衝液下に放置することにより調製することができる(例、B.Zheng et al.,Nanotechnology,2010,vol.21,p.445602を参照)。
本発明の多量体を構成する単量体の調製(例、組換えタンパク質の入手)の負担軽減等の観点からは、本発明の多量体はホモ多量体であることが好ましい。本発明のホモ多量体を構成する融合タンパク質中のフェリチン単量体部分は、上述したとおりであるが、動物フェリチンH鎖もしくは動物フェリチンL鎖のいずれかである動物フェリチン単量体、または微生物フェリチン単量体(Dps単量体)であることが好ましく、ヒトフェリチンH鎖もしくはヒトフェリチンL鎖のいずれかであるヒトフェリチン単量体、またはリステリア・イノキュア・フェリチン単量体(Dps単量体)であることがより好ましく、上記(A1)〜(C1)もしくは上記(A2)〜(C2)のいずれか、または上記(A3)〜(C3)のいずれかであることがさらにより好ましい。本発明のホモ多量体を構成する融合タンパク質中の機能性ペプチドは、上述したとおりであるが、標的材料に対する結合能を有するペプチドが好ましい。標的材料に対する結合能を有するペプチドの好ましい例は、有機物に対する結合能を有するペプチドである。有機物に対する結合能を有するペプチドとしては、生体有機分子に対する結合能を有するペプチドが好ましく、タンパク質に対する結合能を有するペプチドがより好ましい。標的材料に対する結合能を有するペプチドの別の好ましい例は、無機物に対する結合能を有するペプチドである。無機物に対する結合能を有するペプチドとしては、金属材料に対する結合能を有するペプチドが好ましく、チタン材料または金材料に対する結合能を有するペプチドがより好ましい。
本発明の多量体を構成する融合タンパク質は、そのN末端領域および/またはC末端領域において改変されていてもよい。好ましくは、本発明の多量体を構成する融合タンパク質は、上述したようなN末端領域における改変として、N末端にペプチド部分が付加されていてもよい。付加されるべきペプチド部分としては、例えば、上述したようなものが挙げられる。また、本発明の多量体を構成する融合タンパク質は、その上述したようなC末端領域における改変として、C末端領域におけるアミノ酸残基が上述したような反応性アミノ酸残基に置換されていてもよく、C末端領域において反応性アミノ酸残基が挿入されていてもよく、またはC末端に反応性アミノ酸残基またはその含有ペプチド(上述したものと同様)が付加されていてもよい。好ましくは、本発明の多量体を構成する融合タンパク質のC末端領域の改変は、反応性アミノ酸残基またはその含有ペプチドのC末端への付加である。
本発明の多量体は、共有結合または非共有結合の様式において、内腔中に物質を含んでいてもよい。例えば、共有結合の様式における本発明の多量体の内腔中への物質の封入は、反応性アミノ酸残基を利用して、本発明の融合タンパク質のC末端領域を上述したように改変することにより行うことができる。また、非共有結合の様式における本発明の多量体の内腔中への物質の封入は、物質(例、ナノ粒子)を取り込むことができるフェリチンの特性を利用することにより行うことができる。当業者は、本発明の多量体の内腔のサイズ、および本発明の多量体における物質の取り込みに関与し得る領域(例、C末端の領域:R.M.Kramer et al.,2004,J.Am.Chem.Soc.,vol.126,p.13282を参照)中のアミノ酸残基の電荷特性等を考慮することにより、本発明の多量体に封入され得る物質を適切に選択できる。例えば、ヒトフェリチンは、外径12nm(内径7nm)の程度の内腔を有するかご状構造を形成する。また、微生物フェリチン(Dps)は、外径9nm(内径4.5nm)の程度の内腔を有するかご状構造を形成する。したがって、このような多量体に封入され得る物質のサイズは、このような内腔中に封入されることを可能にするサイズであり得る。また、多量体における物質の取り込みに関与し得る領域中の電荷特性(例、正または負に荷電し得る側鎖を有するアミノ酸残基の種類および数)を変化させることにより、多量体の内腔中への物質の取り込みをより促進できることが報告されているので(例、R.M.Kramer et al.,2004,J.Am.Chem.Soc.,vol.126,p.13282を参照)、本発明においても、電荷特性が変化された領域を有する融合タンパク質の多量体を用いることができる。非共有結合の様式において本発明の多量体に封入され得る物質としては、例えば、上述した標的材料と同様の無機材料が挙げられる。具体的には、非共有結合の様式において本発明の多量体に封入され得る物質としては、酸化鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、リン、ウラン、ベリリウム、アルミニウム、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、パラジウム、クロム、銅、銀、ガドリウム錯体、白金コバルト、酸化シリコン、酸化コバルト、酸化インジウム、白金、金、硫化金、セレン化亜鉛、カドミウムセレンが挙げられる。非共有結合の様式における本発明の多量体の内腔中への物質の封入は、周知の方法により行うことができ、例えば、多量体の内腔中への物質の封入方法(例、I.Yamashita et al.,Chem.,lett.,2005.vol.33,p.1158を参照)と同様にして行うことができる。具体的には、HEPES緩衝液等の緩衝液中に、本発明の多量体(または本発明の融合タンパク質)および封入されるべき物質を共存させ、次いで適切な温度(例、0〜37℃)で放置することにより、本発明の多量体の内腔中に物質を封入させることができる。
本発明の多量体は、内腔中に物質を含む場合、異なる複数の種類(例、2種、3種または4種)の物質を含む、異なる複数の種類の多量体のセットとして提供されてもよい。例えば、本発明の多量体が2種の物質を含む2種の多量体のセットとして提供される場合、このようなセットは、各々別々に調製された、第1の物質を封入する第1の多量体と、第1の物質とは異なる第2の物質を封入する第2の多量体とを、組み合せることにより、得ることができる。上述したような融合タンパク質の多様なパターンと、封入物質の多様なパターンとを適宜組み合せることにより、非常に多様性に富む本発明の多量体を得ることができる。
好ましい実施形態では、本発明の多量体は、(a)ヒトフェリチン単量体、および(b)ヒトフェリチン単量体におけるB領域およびC領域のα−ヘリックスの間のフレキシブルリンカー領域中に挿入された機能性ペプチドを含む融合タンパク質から構成されており、かつ内腔を有しており、機能性ペプチドが生体有機分子に対する結合能を有する、多量体である。融合タンパク質中のフェリチン単量体としてヒトフェリチン単量体が利用される場合、多量体は24量体であり得る。本発明の多量体は、内腔中に薬物を有していてもよい。このような多量体は、上述したように薬物を内腔中に封入することができ、また、機能性ペプチドの標的である生体有機分子に結合することができるので、生体有機分子が存在する生体標的部位に対して薬物を特異的に送達することができる。したがって、本発明の多量体は、例えば、薬物送達系(DDS)として有用である。本発明の多量体はまた、それに含まれるヒトフェリチン単量体がヒトに対する抗原性および免疫原性を有しないことに照らすと、臨床応用において安全性に優れるという利点も有する。
別の好ましい実施形態では、本発明の多量体は、(a)フェリチン単量体、および(b)フェリチン単量体におけるB領域およびC領域のα−ヘリックスの間のフレキシブルリンカー領域中に挿入された機能性ペプチドを含む融合タンパク質から構成されており、かつ内腔を有しており、機能性ペプチドが金属材料、シリコン材料、または炭素材料に対する結合能を有する、多量体である。融合タンパク質は、金属材料、シリコン材料、または炭素材料に対する結合能(好ましくは、機能性ペプチドが結合する材料と異なるものに対する結合能)を有するペプチド部分をN末端および/またはC末端に有していてもよい。融合タンパク質中のフェリチン単量体として動物フェリチン単量体が利用される場合、多量体は24量体であり得、融合タンパク質中のフェリチン単量体として微生物フェリチン単量体が利用される場合、多量体は12量体であり得る。このような多量体は、例えば、電子デバイス(例、光電変換素子(例、色素増感太陽電池等の太陽電池)、水素発生素子、水浄化材料、抗菌材料、半導体メモリ素子)の作製等の用途に有用である(例、国際公開第2006/126595号;国際公開第2012/086647号;K.Sano et al.,Nano Lett.,2007,vol.7.p.3200.)。
本発明はまた、複合体を提供する。本発明の複合体は、本発明の多量体、および標的材料を含む。本発明の複合体では、標的材料が、本発明の多量体を構成する融合タンパク質中の機能性ペプチドに結合している。本発明の多量体、およびそれを構成する融合タンパク質、ならびに標的材料の例および好ましい例は、上述したとおりである。標的材料はまた、他の物体に含まれていてもよく、また、他の物体と結合した状態であってもよい。例えば、標的材料として、生体有機分子(例、細胞表面抗原分子)を含む細胞、またはこのような細胞を含む組織を利用することができる。また、標的材料として、固相(例、ウェルプレート等のプレート、支持体、基板、素子、デバイス)上に固定されたものを利用することができる。
好ましい実施形態では、本発明の複合体は、(1)(a)ヒトフェリチン単量体、および(b)ヒトフェリチン単量体におけるB領域およびC領域のα−ヘリックスの間のフレキシブルリンカー領域中に挿入された機能性ペプチドを含む融合タンパク質から構成されており、かつ内腔を有しており、機能性ペプチドが生体有機分子に対する結合能を有するものである本発明の多量体、ならびに(2)生体有機分子を含み、生体有機分子が機能性ペプチドに結合している、複合体である。このような複合体は、例えば、DDSの研究および開発(例、薬物送達機構の解析)に有用である。
別の実施形態では、本発明の複合体は、(1)(a)フェリチン単量体、および(b)フェリチン単量体におけるB領域およびC領域のα−ヘリックスの間のフレキシブルリンカー領域中に挿入された機能性ペプチドを含む融合タンパク質から構成されており、かつ内腔を有しており、機能性ペプチドが金属材料、シリコン材料、または炭素材料に対する結合能を有するものである本発明の多量体、ならびに(2)金属材料、シリコン材料、または炭素材料を含み、金属材料、シリコン材料、または炭素材料が機能性ペプチドに結合している、複合体である。このような複合体は、例えば、電子デバイス(例、光電変換素子(例、色素増感太陽電池等の太陽電池)、水素発生素子、水浄化材料、抗菌材料、半導体メモリ素子)の作製等の用途に有用である(例、国際公開第2006/126595号;国際公開第2012/086647号;K.Sano et al.,Nano Lett.,2007,vol.7.p.3200.)。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1:多機能性フェリチンの構築(1)>
フェリチン単量体を構成する6つのα−ヘリックスのうちのN末端から数えて2番目と3番目の間のフレキシブルリンカー領域にチタン認識ペプチド(minTBP1:RKLPDA(配列番号7))が挿入融合されたヒト由来フェリチンH鎖(FTH−BC−TBP(配列番号8および9))をコードするDNAを全合成した。全合成されたDNAを鋳型として、5’−GAAGGAGATATACATATGACGACCGCGTCCACCTCG−3’(配列番号10)および5’−CTCGAATTCGGATCCTTAGCTTTCATTATCACTGTC−3’(配列番号11)をプライマーとしてPCRを行った。また、pET20(メルク社)を鋳型として、5’−TTTCATATGTATATCTCCTTCTTAAAGTTAAAC−3’(配列番号12)および5’−TTTGGATCCGAATTCGAGCTCCGTCG−3’(配列番号13)をプライマーとしてPCRを行った。各々得られたPCR産物をWizard DNA Clean−Up System(プロメガ社)で精製した後、In−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社)で、50℃、15分間のIn−Fusion酵素処理することで、FTH−BC−TBPをコードする遺伝子が搭載された発現プラスミド(pET20−FTH−BC−TBP)を構築した。
また、フェリチン単量体を構成する6つのα−ヘリックスのうちのN末端から数えて4番目と5番目の間のフレキシブルリンカー領域にチタン認識ペプチド(minTBP1)が挿入融合されたヒト由来フェリチンH鎖(FTH−D−TBP、配列番号250および251)をコードする遺伝子が搭載された発現プラスミド(pET20−FTH−D−TBP)についても、全合成されたFTH−D−TBP遺伝子をコードするDNAを鋳型として、FTH−BC−TBPと同じプライマーと反応系を用いて構築した。
続いて、構築したpET20−FTH−BC−TBPを導入したEscherichia coli BL21(DE3)をLB培地(10g/lのBacto−typtone、5g/l Bacto−yeast extract、5g/lのNaCl、100mg/lのアンピシリンを含む)100ml、37℃で24時間フラスコ培養した。得られた菌体を超音波破砕した後、上清を60℃で20分間加熱した。加熱後得られた上清を、50mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiPerp Q HPカラム(GE healthcare社)に注入し、0mMから500mM NaClを含む50mM TrisHCl緩衝液(pH8.0)で塩濃度勾配をかけることで、目的タンパク質を分離精製した。そのタンパク質を含む溶液の溶媒をVivaspin 20−100K(GE healthcare社)を用いた遠心限外濾過にて10mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)に置換した。その溶液を、10mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiPrep 26/60 Sephacryl S−300 HRカラム(GE healthcare社)に注入し、サイズによってFTH−BC−TBPを分離精製した。FTH−D−TBPも同様にE.coliにて発現させ、精製した。
得られたフェリチンの粒径と溶液分散性は、ゼータサイザーナノZS(マルバーン社)を用いた動的光散乱法(DLS)によって評価した。図1−1および1−2に示すようにFTH−BC−TBPとFTH−D−TBPは、共に平均直径が12nm前後の単分散を示し、24量体の高次構造を形成し、その24量体同士は凝集していないことが分かった。
<実施例2:多機能性フェリチンの活性評価(1)>
2種類のフェリチン変異体FTH−BC−TBPとFTH−D−TBPのチタン成膜に対する吸着性を水晶振動子マイクロバランス(QCM)法により評価した。
はじめに、チタン成膜センサーセル(QCMSC−TI、イニシアム社)のチタン成膜表面にピラニア液(濃硫酸と過酸化水素水が3対1で混合した溶液)2μlを載せ、5分間放置した後、水500μlで5回洗浄した。その洗浄を計2回繰り返すことで、チタン成膜表面の有機物を除去した。続いて、そのチタン成膜センサーセルをAFFINIX QNμ(イニシアム社)にセットし、50mM TrisHCl緩衝液(pH8.0)を490μlあるいは495μlを載せた。その後、測定温度25℃、回転数1000rpmで撹拌しながら、30分程度放置し、センサーから出力される値を安定化させた。各測定は、液中のフェリチン濃度が終濃度1.9nMとなるようにチタン成膜センサーセル上の緩衝液に100mg/Lに調製された各フェリチン変異体溶液を各々投入した。評価に用いたフェリチン溶液の濃度はプロテインアッセイCBB溶液(ナカライテスク社)を用いて、ウシアルブミンを標準として決定した。測定は、フェリチン24量体の分子量として529kDa、反応温度25℃、撹拌回転数1000rpm、周波数27MHz、測定間隔5秒で行い、チタン成膜表面への吸着量をQCMの周波数変化で評価した。
その結果、FTH−BC−TBPあるいはFTH−D−TBPを含む緩衝液の投入によるQCMの周波数変化を確認することができ、これらのフェリチン変異体はチタン成膜への吸着性を発現していることが分かった(図2)。
続いて、同様の条件で液中のフェリチン濃度が終濃度0.2nMから5.6nMとなるようにチタン成膜センサーセル上の緩衝液に100mg/Lに調製された各フェリチン変異体溶液を各々投入し、周波数変化を測定した。そして、各濃度の逆数と周波数変化の逆数との相関関係をプロットし、その傾きから解離平衡定数KD値を求めた。
その結果、FTH−BC−TBPのKD値は0.97nMであり、FTH−D−TBPのKD値3.77nMの1/4程度の低さであった(図3)。この差を共分散分析したところ、有意確率p値が1%以下での有意差を確認できた。すなわち、フェリチン単量体を構成する6つのα−ヘリックスのうちのN末端から数えて2番目と3番目の間のフレキシブルリンカー領域にチタン認識ペプチドを提示したフェリチンは、4番目と5番目の間にペプチドを提示したフェリチンよりも、標的材料に対する吸着性能が高いことが示された。
<実施例3:多機能性フェリチンの構築(2)>
フェリチン単量体を構成する6つのα−ヘリックスのうちのN末端から数えて2番目と3番目の間のフレキシブルリンカー部に癌認識RGDペプチド(ASDRGDFSG(配列番号14))が挿入融合され、C末端にシステインが追加されたヒト由来フェリチンH鎖(FHBc(配列番号15および16))の遺伝子を全合成した。全合成された遺伝子を鋳型として、5’−TTTCATATGACGACCGCGTCCACCTCG−3’(配列番号17)および5’−TTTGGATCCTTAACAGCTTTCATTATCACTG−3’(配列番号18)をプライマーとしてPCRを行った。また、pET20(メルク社)を鋳型として、5’−TTTCATATGTATATCTCCTTCTTAAAGTTAAAC−3’(配列番号12)および5’−TTTGGATCCGAATTCGAGCTCCGTCG−3’(配列番号13)をプライマーとしてPCRを行った。各々得られたPCR産物を、制限酵素DpnIとBamHI、NdeIで消化し、ライゲーションすることで、FHBcをコードする遺伝子が搭載された発現プラスミド(pET20−FHBc)を構築した。
続いて、構築したpET20−FHBcを導入したEscherichia coli BL21(DE3)をLB培地(10g/lのBacto−typtone、5g/l Bacto−yeast extract、5g/lのNaCl、100mg/lのアンピシリンを含む)100ml、37℃で24時間フラスコ培養した。得られた菌体を超音波破砕した後、上清を60℃で20分間加熱した。加熱後得られた上清を、50mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiPerp Q HPカラム(GE healthcare社)に注入し、0mMから500mM NaClを含む50mM TrisHCl緩衝液(pH8.0)で塩濃度勾配をかけることで、目的タンパク質を分離精製した。そのタンパク質を含む溶液の溶媒をVivaspin 20−100K(GE healthcare社)を用いた遠心限外濾過にて10mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)に置換した。その溶液を、10mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiPrep 26/60 Sephacryl S−300 HRカラム(GE healthcare社)に注入し、サイズによってFHBcを分離精製した。
<実施例4:多機能性フェリチンの高次構造確認(1)>
得られたFHBcが自己組織化によりカゴ状形状を示すことは、図4に示すように、3%りんタングステン酸染色による透過型電子顕微鏡(TEM)像によって確認した。この時のFTBcの直径は12nmであり、天然型ヒトフェリチンと同じサイズであり、2番目と3番目の間のフレキシブルリンカー領域にペプチドが挿入された場合でもカゴ状を形成でき、タンパク質の高次構造が大きく損なわれないこと分かった。
続いて、FHBcがフェリチンとしての機能を有し、内部に空孔を維持していることを示すために、各フェリチンの内腔での酸化鉄ナノ粒子の形成を試みた。
FTBcを含むTrisHCl緩衝液(50mM Tris−HCl(pH8.5)、0.5mg/mL FTBc、300mM NaClそして1mM 硫酸アンモニウム鉄を各々終濃度で含む)を10mL調製し、4℃で30分間放置すると溶液がオレンジ色に変化し、フェリチン内部に酸化鉄ナノ粒子が形成されたことが示唆された。冷蔵放置後、遠心分離(6,500rpm、15分間)し、上清を回収した後、溶媒をVivaspin 20−100K(GE healthcare社)を用いた遠心限外濾過にて10mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)に置換した。その溶液を、10mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiPrep 16/60 Sephacryl S−300 HRカラム(GE healthcare社)に注入し、酸化鉄ナノ粒子を封入したFHBcを分離精製した。
得られたナノ粒子封入フェリチンの粒径と溶液分散性を、ゼータサイザーナノZS(マルバーン社)を用いた動的光散乱法(DLS)によって評価した。図5に示すように酸化鉄ナノ粒子を封入したFHBcは、平均直径も16nm以下の単分散を示し、凝集していないことが分かった。
<実施例5:多機能性フェリチンの構築(3)>
フェリチン単量体を構成する6つのα−ヘリックスのうちのN末端から数えて2番目と3番目の間のフレキシブルリンカー領域に金認識ペプチド(GBP1:MHGKTQATSGTIQS(配列番号19))が挿入融合されたヒト由来フェリチンH鎖(FTH−BC−GBP(配列番号20および21))をコードするDNAを全合成した。全合成されたDNAを鋳型として、5’−GAAGGAGATATACATATGACGACCGCGTCCACCTCG−3’(配列番号10)および5’−CTCGAATTCGGATCCTTAGCTTTCATTATCACTGTC−3’(配列番号11)をプライマーとしてPCRを行った。また、pET20(メルク社)を鋳型として、5’−TTTCATATGTATATCTCCTTCTTAAAGTTAAAC−3’(配列番号12)および5’−TTTGGATCCGAATTCGAGCTCCGTCG−3’(配列番号13)をプライマーとしてPCRを行った。各々得られたPCR産物をWizard DNA Clean−Up System(プロメガ社)で精製した後、In−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社)で、50℃、15分間のIn−Fusion酵素処理することで、合成遺伝子が搭載された発現プラスミドを構築した。このプラスミドに搭載された合成遺伝子の核酸配列を確認したところ、金認識ペプチドGBP1のアミノ酸配列先頭のメチオニンが欠落していた。このメチオニンの欠落を修正するために、構築されたプラスミドを鋳型DNA、5’−ATGCATGGCAAAACCCAGGCGACCAG−3’(配列番号22)および5’−ACCCTTGATATCCTGAAGGA−3’(配列番号23)をプライマーとしてPCRを行った。続いて、得られたPCR産物をWizard DNA Clean−Up System(プロメガ社)で精製した後、T4 Polynucleotide Kinase(タカラバイオ社)で、37℃、30分間で放置し、PCR産物の5’末端をリン酸化した。そのDNAをセルフライゲーションすることで、FTH−BC−GBPが搭載された発現プラスミド(pET20−FTH−BC−GBP)を構築した。
また、フェリチン単量体を構成する6つのα−ヘリックスのうちのN末端から数えて4番目と5番目の間に金認識ペプチド(GBP1)が挿入融合されたヒト由来フェリチンH鎖(FTH−D−GBP(配列番号252および253))をコードする遺伝子が搭載された発現プラスミド(pET20−FTH−D−GBP)についても、全合成されたFTH−D−GBP遺伝子をコードするDNAを鋳型として、FTH−BC−GBPと同じプライマーと反応系を用いて構築した。この金認識ペプチドGBP1のアミノ酸配列先頭のメチオニンが欠落していたため、FTH−BC−GBPの場合と同様に、5’−ATGCATGGCAAAACCCAGGCGACCAG−3’(配列番号22)と5’−ATGTGTCTCAATGAAGTCACACAA−3’(配列番号254)をプライマーしたPCRとT4 Polynucleotide Kinase処理により、FTH−D−GBPが搭載された発現プラスミド(pET20−FTH−D−GBP)を構築した。
続いて、構築したpET20−FTH−BC−GBPを導入したEscherichia coli BL21(DE3)をLB培地(10g/lのBacto−typtone、5g/l Bacto−yeast extract、5g/lのNaCl、100mg/lのアンピシリンを含む)100ml、37℃で24時間フラスコ培養した。得られた菌体を超音波破砕した後、上清を60℃で20分間加熱した。加熱後得られた上清を、50mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiPerp Q HPカラム(GE healthcare社)に注入し、0mMから500mM NaClを含む50mM TrisHCl緩衝液(pH8.0)で塩濃度勾配をかけることで、目的タンパク質を分離精製した。そのタンパク質を含む溶液の溶媒をVivaspin 20−100K(GE healthcare社)を用いた遠心限外濾過にて10mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)に置換した。その溶液を、10mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiPrep 26/60 Sephacryl S−300 HRカラム(GE healthcare社)に注入し、サイズによってFTH−BC−GBPを分離精製した。FTH−D−GBPも同様にE.coliにて発現させ、精製した。
得られたフェリチンの粒径と溶液分散性は、ゼータサイザーナノZS(マルバーン社)を用いた動的光散乱法(DLS)によって評価した。図6−1および6−2に示すようにFTH−BC−GBPとFTH−D−GBPは、平均直径が12nm前後の単分散を示し、24量体の高次構造を形成し、その24量体同士は凝集していないことが分かった。
<実施例6:多機能性フェリチンの活性評価(2)>
2種類のフェリチン変異体FTH−BC−GBPとFTH−D−GBPの金薄膜に対する吸着性を水晶振動子マイクロバランス(QCM)法により評価した。
はじめに、金成膜センサーセル(QCMSC−AU、イニシアム社)の金成膜表面にピラニア液(濃硫酸と過酸化水素水が3対1で混合した溶液)2μlを載せ、5分間放置した後、水500μlで5回洗浄した。その洗浄を計2回繰り返すことで、金成膜表面の有機物を除去した。続いて、その金成膜センサーセルをAFFINIX QNμ(イニシアム社)にセットし、50mM リン酸緩衝液(pH6.0)を490μlあるいは495μlを載せた。その後、測定温度25℃、回転数1000rpmで撹拌しながら、30分程度放置し、センサーから出力される値を安定化させた。続いて、液中のフェリチン濃度が終濃度0.3nMから5.4nMとなるように金成膜センサーセル上の緩衝液に100mg/Lに調製された各フェリチン変異体溶液を各々投入し、周波数変化を測定した。評価に用いたフェリチン溶液の濃度はプロテインアッセイCBB溶液(ナカライテスク社)を用いて、ウシアルブミンを標準として決定した。測定は、フェリチン24量体の分子量として546kDa、QCMの周波数27MHz、測定間隔5秒で行い、金成膜表面への吸着量を周波数変化で評価した。そして、各濃度の逆数と周波数変化の逆数との相関関係をプロットし、その傾きから解離平衡定数KD値を求めた。
その結果、FTH−BC−GBPのKD値は0.42nMであり、FTH−D−GBPのKD値3.10nMの1/7程度の低さであった(図7)。この差を共分散分析したところ、有意確率p値が1%以下での有意差を確認できた。すなわち、H鎖フェリチン単量体を構成する6つのα−ヘリックスのうちのN末端から数えて2番目と3番目の間のフレキシブルリンカー領域に金認識ペプチドを提示したフェリチンは、4番目と5番目にペプチドを提示したフェリチンよりも、標的材料に対する吸着性能が高いことが示された。
<実施例7:多機能性フェリチンの構築(4)>
フェリチン単量体を構成する6つのα−ヘリックスのうちのN末端から数えて2番目と3番目の間のフレキシブルリンカー領域に金認識ペプチド(GBP1:MHGKTQATSGTIQS(配列番号19))が挿入融合されたヒト由来フェリチンL鎖(FTL−BC−GBP(配列番号24および25)、図8)をコードするDNAを全合成した。全合成されたDNAを鋳型として、5’−GAAGGAGATATACATATGAGCTCCCAGATTCGTCAG−3’(配列番号26)および5’−CTCGAATTCGGATCCTTAGTCGTGCTTGAGAGTGAG−3’(配列番号27)をプライマーとしてPCRを行った。また、pET20(メルク社)を鋳型として、5’−TTTCATATGTATATCTCCTTCTTAAAGTTAAAC−3’(配列番号12)および5’−TTTGGATCCGAATTCGAGCTCCGTCG−3’(配列番号13)をプライマーとしてPCRを行った。各々得られたPCR産物をWizard DNA Clean−Up System(プロメガ社)で精製した後、In−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社)で、50℃、15分間のIn−Fusion酵素処理することで、合成遺伝子が搭載された発現プラスミドを構築した。このプラスミドに搭載された合成遺伝子の核酸配列を確認したところ、金認識ペプチドGBP1のアミノ酸配列先頭のメチオニンが欠落していた。このメチオニンの欠落を修正するために、構築されたプラスミドを鋳型DNA、5’−ATGCATGGCAAAACCCAGGCGACCAG−3’(配列番号22)および5’−ACCCTTGATGTCCTGGAAGAGA−3’(配列番号28)をプライマーとしてPCRを行った。続いて、得られたPCR産物をWizard DNA Clean−Up System(プロメガ社)で精製した後、T4 Polynucleotide Kinase(タカラバイオ社)で、37℃、30分間で放置し、PCR産物の5’末端をリン酸化した。そのDNAをセルフライゲーションすることで、FTL−BC−GBPが搭載された発現プラスミド(pET20−FTL−BC−GBP)を構築した。
また、フェリチン単量体を構成する6つのα−ヘリックスのうちのN末端から数えて5番目と6番目の間のフレキシブルリンカー領域に金認識ペプチド(GBP1)が挿入融合されたヒト由来フェリチンL鎖(FTL−DE−GBP(配列番号29および30)、図9)をコードする遺伝子が搭載された発現プラスミド(pET20−FTL−DE−GBP)についても、全合成されたFTL−DE−GBP遺伝子をコードするDNAを鋳型として、FTL−BC−GBPと同じプライマーと反応系を用いて構築した。この金認識ペプチドGBP1のアミノ酸配列先頭のメチオニンが欠落していたため、FTL−BC−GBPの場合と同様に、5’−ATGCATGGCAAAACCCAGGCGACCAG−3’(配列番号22)と5’−CATACCCAGCCTGTGGAGGT−3’(配列番号31)をプライマーしたPCRとT4 Polynucleotide Kinase処理により、FTL−DE−GBPが搭載された発現プラスミド(pET20−FTL−DE−GBP)を構築した。
続いて、構築したpET20−FTL−BC−GBPを導入したEscherichia coli BL21(DE3)をLB培地(10g/lのBacto−typtone、5g/l Bacto−yeast extract、5g/lのNaCl、100mg/lのアンピシリンを含む)100ml、30℃で24時間フラスコ培養した。得られた菌体を超音波破砕した後、上清を60℃で20分間加熱した。加熱後得られた上清を、50mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiPerp Q HPカラム(GE healthcare社)に注入し、0mMから500mM NaClを含む50mM TrisHCl緩衝液(pH8.0)で塩濃度勾配をかけることで、目的タンパク質を分離精製した。そのタンパク質を含む溶液の溶媒をVivaspin 20−100K(GE healthcare社)を用いた遠心限外濾過にて10mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)に置換した。その溶液を、10mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiPrep 26/60 Sephacryl S−300 HRカラム(GE healthcare社)に注入し、サイズによってFTL−BC−GBPを分離精製した。FTL−DE−GBPも同様にE.coliにて発現させ、精製した。
<実施例8:多機能性フェリチンの活性評価(3)>
2種類のフェリチン変異体FTL−BC−GBPとFTL−DE−GBPの金薄膜に対する吸着性を水晶振動子マイクロバランス(QCM)法により各々評価した。
はじめに、金成膜センサーセル(QCMSC−AU、イニシアム社)の金成膜表面にピラニア液(濃硫酸と過酸化水素水が3対1で混合した溶液)2μlを載せ、5分間放置した後、水500μlで5回洗浄した。その洗浄を計2回繰り返すことで、金成膜表面の有機物を除去した。続いて、その金成膜センサーセルをAFFINIX QNμ(イニシアム社)にセットし、50mM リン酸緩衝液(pH6.0)を490μlあるいは495μlを載せた。その後、測定温度25℃、回転数1000rpmで撹拌しながら、30分程度放置し、センサーから出力される値を安定化させた。各測定は、液中のフェリチン濃度が終濃度0.2nMから4.9nMとなるように金成膜センサーセル上の緩衝液に100mg/Lに調製された各フェリチン変異体溶液を各々投入し、周波数変化を測定した。評価に用いたフェリチン溶液の濃度はプロテインアッセイCBB溶液(ナカライテスク社)を用いて、ウシアルブミンを標準として決定した。測定は、フェリチン24量体の分子量として518kDa、QCMの周波数27MHz、測定間隔5秒で行い、金成膜表面への吸着量を周波数変化で評価した。そして、各濃度の逆数と周波数変化の逆数との相関関係をプロットし、その傾きから解離平衡定数KD値を求めた。
その結果、FTL−BC−GBPのKD値は1.15nMであり、FTL−DE−GBPのKD値1.68nMの70%の低さであった(図10)。この差を共分散分析したところ、有意確率p値が5%以下での有意差を確認できた。すなわち、L鎖フェリチン単量体を構成する6つのα−ヘリックスのうちのN末端から数えて2番目と3番目の間のフレキシブルリンカー領域に金認識ペプチドを提示したフェリチンは、5番目と6番目の間のフレキシブルリンカー領域にペプチドを提示したフェリチンよりも、標的材料に対する吸着性能が高いことが示された。
以上の結果から、α−ヘリックスのうちのN末端から数えて2番目と3番目の間のフレキシブルリンカー領域に挿入されたペプチドはヒトフェリチンのH鎖とL鎖の両方で非常に効果的であることがわかった。
<実施例9:多機能性微生物由来フェリチン(Dps)の構築>
微生物の持つフェリチンのホモログタンパク質のDpsは、フェリチンと類似構造を持つ単量体が12個集まって、フェリチンよりも一回り小さい外径9nm、内径4.5nmのかご状を形成する。フェリチンとDpsの単量体の立体構造は非常によく似ているが、フェリチン単量体を構成する6つのα−ヘリックスのN末端から数えて2番目と3番目の間のフレキシブルリンカー領域にあたるDpsのフレキシブルリンカー領域には7アミノ酸からなる小さなα−ヘリックスが形成されていることが知られている(Int. J. Mol. Sci. 2011; 12(8): 5406−5421.)。そこで、フェリチンと同等の領域とC末端に異種ペプチド(QVNGLGERSQQM(配列番号32))が挿入されたListeria innocua由来のDps(BCDps−CS4、配列番号33および34)の構築を行った。
はじめに、BCDps−CS4の遺伝子の一部を全合成した。全合成された遺伝子を鋳型として、5’−TTTCATATGAAAACAATCAACTCAGTAG−3’(配列番号35)および5’−TTTGGATCCTTACATCTGCTGACTCCGCTCACCCAAACCATTCACCTGTTCTAATGGAGCTTTTCCAAG−3’(配列番号36)をプライマーとしてPCRを行った。また、pET20(メルク社)を鋳型として、5’−TTTCATATGTATATCTCCTTCTTAAAGTTAAAC−3’(配列番号12)および5’−TTTGGATCCGAATTCGAGCTCCGTCG−3’(配列番号13)をプライマーとしてPCRを行った。各々得られたPCR産物を、制限酵素DpnIとBamHI、NdeIで消化し、ライゲーションすることで、BCDps−CS4をコードする遺伝子が搭載された発現プラスミド(pET20−BCDps−CS4)を構築した。
続いて、構築したpET20−BCDps−CS4を導入したEscherichia coli BL21(DE3)をLB培地(10g/lのBacto−typtone、5g/l Bacto−yeast extract、5g/lのNaCl、100mg/lのアンピシリンを含む)100ml、37℃で24時間フラスコ培養した。得られた菌体を超音波破砕した後、上清を60℃で20分間加熱した。加熱後得られた上清を、50mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiPerp Q HPカラム(GE healthcare社)に注入し、0mMから500mM NaClを含む50mM TrisHCl緩衝液(pH8.0)で塩濃度勾配をかけることで、目的タンパク質を分離精製した。そのタンパク質を含む溶液の溶媒をVivaspin 20−100K(GE healthcare社)を用いた遠心限外濾過にて10mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)に置換した。その溶液を、10mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiPrep 26/60 Sephacryl S−300 HRカラム(GE healthcare社)に注入し、サイズによってBCDps−CS4を分離精製した。
<実施例10:多機能性Dpsの高次構造確認>
得られたBCDps−CS4が自己組織化によりカゴ状形状を示すことは、図11に示すように、3%りんタングステン酸染色による透過型電子顕微鏡(TEM)像によって確認した。この時のBCDps−CS4の直径は9nmであり、天然型Dpsと同じサイズであった。このことから、ヒトフェリチンの2番目と3番目の間のフレキシブルリンカー領域にあたる部位にペプチドが挿入された場合でもDpsは、天然と同等のカゴ状構造を形成でき、タンパク質の高次構造が大きく損なわれないこと分かった。
<実施例11:多機能性フェリチンの構築(5)>
フェリチン単量体を構成する6つのα−ヘリックスのうちのN末端から数えて5番目と6番目の間のフレキシブルリンカー領域に金認識ペプチド(GBP1:MHGKTQATSGTIQS(配列番号19))が挿入融合されたヒト由来フェリチンH鎖(FTH−DE−GBP(配列番号255および256))をコードするDNAを全合成した。全合成されたDNAを鋳型として、5’−GAAGGAGATATACATATGACGACCGCGTCCACCTCG−3’(配列番号10)および5’−CTCGAATTCGGATCCTTAGCTTTCATTATCACTGTC−3’(配列番号11)をプライマーとしてPCRを行った。また、pET20(メルク社)を鋳型として、5’−TTTCATATGTATATCTCCTTCTTAAAGTTAAAC−3’(配列番号12)および5’−TTTGGATCCGAATTCGAGCTCCGTCG−3’(配列番号13)をプライマーとしてPCRを行った。各々得られたPCR産物をWizard DNA Clean−Up System(プロメガ社)で精製した後、In−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社)で、50℃、15分間のIn−Fusion酵素処理することで、多機能性フェリチンの構築FTH−DE−GBPが搭載された発現プラスミド(pET20−FTH−DE−GBP)を構築した。
続いて、構築したpET20−FTH−DE−GBPを導入したEscherichia coli BL21(DE3)をLB培地(10g/lのBacto−typtone、5g/l Bacto−yeast extract、5g/lのNaCl、100mg/lのアンピシリンを含む)100ml、37℃で24時間フラスコ培養した。得られた菌体を超音波破砕した後、上清を60℃で20分間加熱した。加熱後得られた上清を、50mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiPerp Q HPカラム(GE healthcare社)に注入し、0mMから500mM NaClを含む50mM TrisHCl緩衝液(pH8.0)で塩濃度勾配をかけることで、目的タンパク質を分離精製した。そのタンパク質を含む溶液の溶媒をVivaspin 20−100K(GE healthcare社)を用いた遠心限外濾過にて10mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)に置換した。その溶液を、10mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiPrep 26/60 Sephacryl S−300 HRカラム(GE healthcare社)に注入し、サイズによってFTH−DE−GBPを分離精製した。
<実施例12:多機能性フェリチンの活性評価(4)>
2種類のフェリチン変異体FTH−BC−GBPとFTH−DE−GBPの金薄膜に対する吸着性を水晶振動子マイクロバランス(QCM)法により評価した。
はじめに、金成膜センサーセル(QCMSC−AU、イニシアム社)の金成膜表面にピラニア液(濃硫酸と過酸化水素水が3対1で混合した溶液)2μlを載せ、5分間放置した後、水500μlで5回洗浄した。その洗浄を計2回繰り返すことで、金成膜表面の有機物を除去した。続いて、その金成膜センサーセルをAFFINIX QNμ(イニシアム社)にセットし、50mM リン酸緩衝液(pH6.0)を490μlあるいは495μlを載せた。その後、測定温度25℃、回転数1000rpmで撹拌しながら、30分程度放置し、センサーから出力される値を安定化させた。続いて、液中のフェリチン濃度が終濃度0.2nMから2.6nMとなるように金成膜センサーセル上の緩衝液に100mg/Lに調製された各フェリチン変異体溶液を各々投入し、周波数変化を測定した。評価に用いたフェリチン溶液の濃度はプロテインアッセイCBB溶液(ナカライテスク社)を用いて、ウシアルブミンを標準として決定した。測定は、フェリチン24量体の分子量として546kDa、QCMの周波数27MHz、測定間隔5秒で行い、金成膜表面への吸着量を周波数変化で評価した。そして、各濃度の逆数と周波数変化の逆数との相関関係をプロットし、その傾きから解離平衡定数KD値を求めた。
その結果、FTH−DE−GBPのKD値は1.90nMであり、実施例6で測定されたFTH−BC−GBPのKD値の0.42nMの1/5程度の低さであった(図12)。この差を共分散分析したところ、有意確率p値が5%以下での有意差を確認できた。すなわち、H鎖フェリチン単量体を構成する6つのα−ヘリックスのうちのN末端から数えて2番目と3番目の間のフレキシブルリンカー領域に金認識ペプチドを提示したフェリチンは、5番目と6番目にペプチドを提示したフェリチンよりも、標的材料に対する吸着性能が高いことが示された。
本発明の多量体は、新規薬物送達系(DDS)、電子デバイスの作製等の用途に有望である。例えば、本発明の多量体を構成する融合タンパク質におけるフェリチン単量体がヒトフェリチン単量体である場合、本発明の多量体は、DDSとして有用である。また、ヒトフェリチン単量体がヒトに対する抗原性および免疫原性を有しないことに照らすと、本発明の多量体は、臨床応用において安全性に優れるという利点も有する。一方、このフェリチン単量体が微生物フェリチンである場合、本発明の多量体は、電子デバイスの作製に有用である。
本発明の融合タンパク質は、例えば、本発明の多量体の調製に有用である。
本発明の複合体は、例えば、新規薬物送達系(DDS)の研究および開発、電子デバイスの作製等の用途に有用である。
本発明のポリヌクレオチド、発現ベクターおよび宿主細胞は、本発明の融合タンパク質を容易に調製することを可能にする。したがって、本発明のポリヌクレオチド、発現ベクターおよび宿主細胞は、例えば、本発明の多量体の調製に有用である。

Claims (17)

  1. (a)フェリチン単量体、および(b)フェリチン単量体におけるB領域およびC領域のα−ヘリックスの間のフレキシブルリンカー領域中に挿入された機能性ペプチドを含む、融合タンパク質。
  2. フェリチン単量体がヒトフェリチン単量体である、請求項1記載の融合タンパク質。
  3. ヒトフェリチン単量体がヒトフェリチンH鎖である、請求項1または2記載の融合タンパク質。
  4. ヒトフェリチン単量体がヒトフェリチンL鎖である、請求項1または2記載の融合タンパク質。
  5. フェリチン単量体がDps単量体である、請求項1記載の融合タンパク質。
  6. 機能性ペプチドが、標的材料に対する結合能を有するペプチドである、請求項1〜5のいずれか一項記載の融合タンパク質。
  7. 標的材料が無機物である、請求項6記載の融合タンパク質。
  8. 無機物が金属材料である、請求項7記載の融合タンパク質。
  9. 標的材料が有機物である、請求項6記載の融合タンパク質。
  10. 有機物が生体有機分子である、請求項9記載の融合タンパク質。
  11. 生体有機分子がタンパク質である、請求項10記載の融合タンパク質。
  12. システイン残基、またはシステイン残基含有ペプチドが、融合タンパク質のC末端に付加されている、請求項1〜11のいずれか一項記載の融合タンパク質。
  13. (a)フェリチン単量体、および(b)フェリチン単量体におけるB領域およびC領域のα−ヘリックスの間のフレキシブルリンカー領域中に挿入された機能性ペプチドを含む融合タンパク質から構成されており、かつ
    内腔を有する、多量体。
  14. (1)請求項13記載の多量体、および(2)標的材料を含み、
    標的材料が、前記融合タンパク質中の機能性ペプチドに結合している、複合体。
  15. 請求項1〜12のいずれか一項記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  16. 請求項15記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
  17. 請求項15記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
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