JP6384037B2 - 標的素材結合ペプチドおよびそのスクリーニング方法 - Google Patents

標的素材結合ペプチドおよびそのスクリーニング方法 Download PDF

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Description

本発明は、チタン結合ペプチド、融合タンパク質およびその多量体、複合体、ならびに標的素材に結合し得るペプチドのスクリーニング方法などに関する。
生体素材および無機素材または有機素材の複合体を作製し、その複合体を半導体メモリや太陽電池などの高性能な電子デバイスやインプラントやバイオセンサーなどの医療素材へと応用することを目的として、無機素材または有機素材に対して結合し得るペプチドが、ファージを用いたスクリーニングにより開発されている(特許文献1および2)。すなわち、標的となる素材に結合する能力を有するペプチドを得るために、様々な配列のアミノ酸配列からなるペプチドを提示した109から1010種類のファージライブラリを、標的となる素材でコーティングされた試験管表面や粒子などと緩衝液中で混合することで結合させる。その試験管や粒子を、低濃度の界面活性剤を含む緩衝液で洗浄することで、標的への結合力の弱いペプチドを提示したファージを洗い流す。その後、酸や高濃度の界面活性剤を含む緩衝液で標的素材を洗浄することで、標的素材へ結合していたファージを剥離、回収する。そのファージが提示しているペプチド配列を特定することで、標的素材への結合力を持つペプチドを得る。このような手法を用いて無機物や炭素素材に結合する能力を有するペプチドとして、例えば、酸化チタン(特許文献3、ならびに非特許文献1〜5)、カーボンナノチューブ(CNT)およびカーボンナノホン(CNH)(特許文献4および5、ならびに非特許文献6)、金(非特許文献7)、酸化亜鉛(非特許文献8)、酸化ゲルマニウム(非特許文献9)、ならびに硫化亜鉛および硫化カドミウム(非特許文献10)などを認識するペプチドが取得されている。
ところで、酸化チタンは、光を受けることで、光エネルギーによりその表面に還元力を有する電子と酸化力を有する正孔を発生する。その酸化力や還元力を利用することで、抗菌素材や脱臭素材、大気浄化素材、防汚性素材、水素発生触媒、太陽電池などへの応用が試みられている(非特許文献11)。例えば、光によって酸化チタン表面に発生した酸化力を使って水酸化物イオンを酸化すれば、強い酸化力を有するラジカルを発生させることができ、そのラジカルは、その酸化力により殺菌効果やアセトアルデヒドやアンモニアなどの臭い物質の分解効果、空気中のNOxやホルムアルデヒドなど有害物質の分解効果、そして埃などを分解する効果を高めることができる。また、発生した酸化還元力を用いて水を電気分解し、酸素と水素を発生させ、水素をクリーンなエネルギーとして利用することも試みられている。さらに、光によって酸化チタン内に発生した電子を取り出すことで、太陽電池としても利用することができる。
現在までに、酸化チタン認識ペプチドと融合された金属内包性タンパク質フェリチンを利用して、シリコン基板上にナノ粒子を配置し、そのナノ粒子の上に酸化チタン膜または酸化シリコン膜を形成させ、その酸化膜の上にナノ粒子を配置することによる、酸化膜とナノ粒子とを積層する技術が知られている(特許文献6)。さらに、酸化チタンと融合された金属内包性タンパク質フェリチンを利用して、コバルトや酸化鉄の金属ナノ粒子を内包するタンパク質をチタンで描かれたパターンの上に配向させた例も報告されている(非特許文献12)。
また、炭素結晶構造であるCNTやCNHなどのナノ黒鉛構造物は、その電気特性や構造から他のナノ素材との複合体を構築することで電子素材や触媒、光素材および医療技術などへの応用が期待されており、ナノ黒鉛構造物と金属ナノ粒子を結合させナノ複合体を構築する技術としてCNH結合ペプチドと融合したフェリチンを用いた加工方法が報告されている(非特許文献6、および特許文献5)。
さらに、CNT結合ペプチドおよび酸化チタン結合ペプチドが融合した35個のアミノ酸残基からなるポリペプチドを用いることで、CNT表面を酸化チタンで被膜し、CNTの電気特性を変化させる技術も報告されている(非特許文献13)。あるいは、CNT結合ペプチドと酸化チタン結合ペプチドが融合したタンパク質やウイルスを用いてカーボンナノチューブを酸化チタンでコーティングし、ナノ複合素材を合成する技術(非特許文献11および14)報告されている。
米国特許第5866363号明細書 米国特許第5403484号明細書 国際公開第2005/010031号 国際公開第2006/068250号 特開2004−121154号公報 国際公開第2006/126595号
K.Sano et al.,Langmuir,2005,vol.21.p.3090. M.B.Dickerson et al.,Chem.Mater.,2008,vol.20.p.1578. Y.Liu et al.,J. Mater. Sci. Mater. Med.,2010,vol.21.p.1103. C.Vreuls et al.,J.Inorg.Biochem.,2010,vol.104.p.1013 Y.Fang et al.,J.Mater.Chem.,2008,vol.18.p.3871 S.Wang et al.,Nat.Mater.,2003,vol.2,p.196. S.Brown,Nat.Biotechnol.,1997,vol.15.p.269. K.Kjaergaard et al.,Appl.Enbiron.Microbiol.,2000,vol.66.p.10. M.B.Dickerson et al.,Chem.Commun.,2004,vol.15.p.1776. C.E.Flynn et al.,J.Mater.Chem.,2003,vol.13.p.2414. M.A.Fox and M.T.Dulay,Chem.Rev.,1993,vol.93,p.341. K.Sano et al.,Nano Lett.,2007,vol.7.p.3200. M.J.Pender et al.,Nano Lett.,2006,vol.6,No.1,p.40. I.Inoue et al.,Chem.Commun.,2011,vol.47.p.12649
生体分子素材の持つ自己組織化能力と無機物析出能力の両方を活用することで、機能性を持つ構造や無機素材と有機素材を組み合わせた複合素材を構築できる。しかしながら、そのような機能性素材の合成に利用できるペプチドの種類は少ない。上述したような、ファージを用いたペプチドのスクリーニング手法は、標的素材でコーティングされた固相に結合したファージを剥離して回収しているため、標的素材への結合活性が高いペプチドを提示し、変性剤で容易に剥離させることのできない程度に標的素材に強固に結合したファージを回収することは難しかった。それ故、上述した従来のスクリーニング手法により得られるペプチドの標的素材への結合力は充分に強くはなく、任意の標的素材(例、有機素材、酸化チタン等の無機素材)と強固に結合する能力を有するペプチドを作製することは難しかった。
本発明者は、鋭意検討した結果、標的素材に強固に結合する能力を有するペプチドをスクリーニングする技術を開発すること、およびそのようなペプチドを実際に取得することに成功し、もって本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕AXPQKXXXXXXS(配列番号1)のアミノ酸配列〔Xは各々独立してアミノ酸残基を表す〕を含み、かつ標的素材に対する結合活性を有するペプチド。
〔2〕Xが、各々独立して、式:−NH−C(R)(H)−CO−〔式中、Rは、水素原子または置換されていてもよいC〜Cアルキル基を表す〕により表されるアミノ酸残基である、〔1〕のペプチド。
〔3〕Xが各々独立してグリシン残基またはアラニン残基を表す、〔1〕または〔2〕のペプチド。
〔4〕配列番号1のアミノ酸配列が、AYPQKFXXXFMS(配列番号2)のアミノ酸配列〔Xは各々独立してアミノ酸残基を表す〕である、〔1〕〜〔3〕のいずれかのペプチド。
〔5〕以下からなる群より選ばれるペプチド:
1)AYPQKFNNNFMS(配列番号3)のアミノ酸配列を含むペプチド;
2)AAPQKFNNNFMS(配列番号4)のアミノ酸配列を含むペプチド;
3)AYPQKANNNFMS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むペプチド;
4)AYPQKFANNFMS(配列番号6)のアミノ酸配列を含むペプチド;
5)AYPQKFNGNFMS(配列番号7)のアミノ酸配列を含むペプチド;
6)AYPQKFNNAFMS(配列番号8)のアミノ酸配列を含むペプチド;
7)AYPQKFNNNAMS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むペプチド;
8)AYPQKFNNNFAS(配列番号10)のアミノ酸配列を含むペプチド;
9)ATGSRMDHNRYI(配列番号11)のアミノ酸配列を含むペプチド;
10)DLLAMHWNTSRQ(配列番号12)のアミノ酸配列を含むペプチド;
11)IQAATVPHVTES(配列番号13)のアミノ酸配列を含むペプチド;
12)KVKHPSSWAYYA(配列番号14)のアミノ酸配列を含むペプチド;
13)SNSIDKVNRPIN(配列番号15)のアミノ酸配列を含むペプチド;
14)配列番号3〜15のアミノ酸配列のいずれか一つのアミノ酸配列において1個または2個のアミノ酸残基が欠失、置換、付加または挿入されたアミノ酸配列を含み、かつ、標的素材に対する結合活性を有する、ペプチド;ならびに
15)配列番号3〜15のアミノ酸配列のいずれか一つのアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、標的素材に対する結合活性を有する、ペプチド。
〔6〕標的素材が無機素材である、〔1〕〜〔5〕のいずれかのペプチド。
〔7〕無機素材がチタン金属またはチタン化合物である、〔6〕のペプチド。
〔8〕〔1〕〜〔7〕のいずれかのペプチドとタンパク質との融合タンパク質。
〔9〕内腔を有する多量体を形成し得るポリペプチド部分、ならびに標的物質に結合し得るペプチド部分および〔1〕〜〔7〕のいずれかのペプチドの部分を含む、融合タンパク質。
〔10〕内腔を有する多量体を形成し得るポリペプチド部分がDpsである、〔9〕の融合タンパク質。
〔11〕標的物質が、金属素材、シリコン素材または炭素素材である、〔9〕または〔10〕の融合タンパク質。
〔12〕炭素素材がカーボンナノ素材である、〔11〕の融合タンパク質。
〔13〕融合タンパク質の多量体であって、
内腔を有し、
融合タンパク質が、内腔を有する多量体を形成し得るポリペプチド部分、ならびに標的物質に結合し得るペプチド部分および〔1〕〜〔7〕のいずれかのペプチドの部分を含む、多量体。
〔14〕複合体であって、
〔13〕の多量体、ならびに標的物質およびチタンを含み、
標的物質が、前記融合タンパク質中の標的物質に結合し得るペプチド部分に結合し、かつチタンが、前記融合タンパク質中のチタン結合ペプチドの部分に結合している、複合体。
〔15〕〔8〕〜〔12〕のいずれかの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
〔16〕〔15〕のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
〔17〕〔16〕の発現ベクターを含む形質転換体。
〔18〕形質転換体がエシェリヒア・コリである、〔17〕の形質転換体。
〔19〕以下を含む、標的素材に結合し得るペプチドのスクリーニング方法:
1)標的素材をファージライブラリに接触させて、ファージ結合標的素材を得ること;
2)ファージ結合標的素材を回収すること;
3)ファージ結合標的素材および宿主を用いて、ファージ導入宿主を調製すること;
4)ファージ導入宿主において、ファージを増幅させること;および
5)増幅したファージが発現する、標的素材に結合し得るペプチドを同定すること。
〔20〕回収したファージ結合標的素材の洗浄後に、ファージ結合標的素材を宿主に導入する、〔19〕の方法。
〔21〕前記1)〜4)のサイクルを複数回繰り返した後に、前記5)の工程を行う、〔19〕または〔20〕の方法。
〔22〕標的素材がナノ素材である、〔19〕〜〔21〕のいずれかの方法。
本発明のペプチドは、例えば、チタン結合剤または析出剤として、タンパク質の精製用タグとして、または本発明の融合タンパク質、多量体または複合体の作製に有用である。
本発明の融合タンパク質、多量体または複合体は、例えば、電気特性および/または光触媒活性の向上した新規デバイスの作製、ならびに医療、バイオ研究分野等の分野に有用である。例えば、酸化チタンに結合し得るペプチド部分およびカーボンナノチューブに結合し得るペプチド部分を含む融合タンパク質の使用により、抗菌素材、脱臭素材、大気浄化素材、防汚性素材、水素発生装置、太陽電池、半導体などの提供が可能になる。
本発明のスクリーニング方法は、例えば、標的素材に強固に結合する能力を有するペプチドの効率的な同定に有用である。
図1は、化学合成されたST1ペプチドとminTBP1ペプチドの見かけ上の結合定数(kbos)とペプチド濃度の関係を示す図である。 図2は、各チタン結合ペプチドを提示した変異タンパク質が析出させたチタン化合物量の比較を示す図である。 図3は、各チタン結合ペプチドが提示された変異タンパク質によるチタン化合物析出の経時変化を示す図である。 図4は、各チタン結合ペプチドが提示された変異タンパク質のチタン化合物析出活性を示す図である。 図5は、各チタン結合ペプチドが提示された変異タンパク質のQCMチタンセンサーへの結合を示す図である。 図6は、各チタン結合ペプチドが提示された変異タンパク質のチタン結合定数を示す図である。 図7は、CDTS1とCNTの複合体のTEM像を示す図である。 図8は、チタン化合物で被膜されたCNT/CDTS1複合体のTEM像を示す図である。 図9は、EELSマッピングによるCNT/CDTS1/Ti複合体の組成分析を示す図である。TEMは通常の電子顕微鏡像を示す。「Carbon」は炭素原子、「Titanium」はチタン原子、「Iron」は鉄原子、がそれぞれ確認された位置を示す。 図10は、各変異ペプチドを提示したDpsのチタンセンサーへの結合量比較を示す図である。ST1:Dps−ST1、Dps:Dps、A1G:Dps−ST1−1G、Y2A:Dps−ST1−2A、P3A:Dps−ST1−3A、Q4A:Dps−ST1−4A、K5A:Dps−ST1−5A、F6A:Dps−ST1−6A、N7A:Dps−ST1−7A、N8G:Dps−ST1−8G、N9A:Dps−ST1−9A、F10A:Dps−ST1−10A、M11A:Dps−ST1−11A、S12A:Dps−ST1−12A、をそれぞれ示す。
本発明は、ペプチドを提供する。本発明のペプチドは、例えば、生物学的手法により作製することができ、また、有機化学的方法により合成することができる。本発明のペプチドは、単離および/または精製されていてもよい。本発明のペプチドは、人工ペプチドであり得る。
一実施形態では、本発明のペプチドは、AXPQKXXXXXXS(配列番号1)のアミノ酸配列〔Xは各々独立してアミノ酸残基を表す〕を含み、かつチタン結合活性を有するペプチドである。
配列番号1のアミノ酸配列におけるXは、各々独立して、アミノ酸残基を表す。本発明において、Xにより表されるアミノ酸残基は、ペプチドがチタン結合活性を保持する限り、特に限定されない。アミノ酸残基は、例えば、式:R−CH(NH)COOHにより表すことができる。Rとしては、例えば、水素原子、置換されていてもよいC〜Cアルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシル;好ましくは置換されていてもよいC〜Cアルキル基)、置換されていてもよいC〜Cアルケニル基(例、エテニル、プロペニル)、置換されていてもよいC〜Cアルキニル基(例、エチニル、プロピニル)、置換されていてもよいC〜Cシクロアルキル基(例、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル)、置換されていてもよいC〜C10アリール基(例、フェニル、ナフチル)、置換されていてもよい複素環基(例、ピロリル、ピリジニル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピリダジニル、インドリル等の、少なくとも1個の窒素原子を環構成原子として含有する一員または二員の複素環基;フラニル、イソオキサゾリル、ベンゾフラニル等の、少なくとも1個の酸素原子を環構成原子として含有する一員または二員の複素環基;チオフェニル、イソチアゾリル、チアゾリル等の、少なくとも1個の硫黄原子を環構成原子として含有する一員または二員の複素環基)、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシル基、置換されていてもよいC〜Cアルキルオキシ基、オキソ基、チオール基、置換されていてもよいC〜Cアルキルチオール基、アミノ、置換されていてもよいC〜Cアルキルでモノまたはジ置換されたアミノ基、アミノカルボニル基、基、オキソ基、チオール基、置換されていてもよいC〜Cアルキルチオール基、アミノ、置換されていてもよいC〜Cアルキルでモノまたはジ置換されたアミノカルボニル基、ホルミル基、置換されていてもよいC〜Cアルキルカルボニル基、カルボキシル基、置換されていてもよいC〜Cアルキルオキシカルボニル基、ホルミルオキシ基、置換されていてもよいC〜Cアルキルカルボニルオキシ基、ヒドラジノ基が挙げられる。置換されていてもよい基(例、C〜Cアルキル基)とは、無置換の基、または置換基で置換された基を表す。このような置換基としては、例えば、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基、C〜Cアルキニル基、C〜Cシクロアルキル基、C〜C10アリール基、複素環基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、オキソ基、チオール基、アミノ基、アミノカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基、ヒドラジノ基が挙げられる。
一実施形態では、Xにより表されるアミノ酸残基は、天然タンパク質を構成する通常のL−α−アミノ酸の残基であってもよい。したがって、Xにより表されるアミノ酸残基は、L−アラニン(A)、L−アスパラギン(N)、L−システイン(C)、L−グルタミン(Q)、L−イソロイシン(I)、L−ロイシン(L)、L−メチオニン(M)、L−フェニルアラニン(F)、L−プロリン(P)、L−セリン(S)、L−スレオニン(T)、L−トリプトファン(W)、L−チロシン(Y)、L−バリン(V)、L−アスパラギン酸(D)、L−グルタミン酸(E)、L−アルギニン(R)、L−ヒスチジン(H)、またはL−リジン(K)、あるいはグリシン(G)の残基である。好ましくは、Xにより表されるアミノ酸残基は、中性アミノ酸の残基であってもよい。中性アミノ酸としては、例えば、非荷電性極性側鎖を有するアミノ酸(例、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、および非極性側鎖を有するアミノ酸(例、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)が挙げられる。
好ましい実施形態では、AXPQKXXXXXXS(配列番号1)のアミノ酸配列〔Xは各々独立してアミノ酸残基を表す〕は、AYPQKFXXXFMS(配列番号2)のアミノ酸配列〔Xは各々独立してアミノ酸残基を表す〕であってもよい。Xとしては、例えば、上述したアミノ酸残基が挙げられる。
別の好ましい実施形態では、Xにより表されるアミノ酸残基は、上記式においてRにより表される側鎖が水素原子であるアミノ酸残基、または上記式においてRにより表される側鎖が置換されていてもよいC〜Cアルキル基であるアミノ酸残基であってもよい。
本発明では、標的素材に対する結合活性とは、後述する標的素材に結合する能力をいう。標的素材は、好ましくは無機素材であり、より好ましくは金属であり、さらにより好ましくはチタンである。本発明では、用語「チタン」は、チタン金属(Ti)およびチタン化合物を包含する表現として用いられる。チタン化合物としては、例えば、チタンの酸化物、硫化物、炭酸化物、砒化物、塩化物、フッ化物およびヨウ化物、ならびにチタンの金属間化合物が挙げられるが、好ましくはチタンの酸化物である。チタンの酸化物としては、例えば、一酸化チタン(CAS番号12137−20−1)、二酸化チタン(CAS番号13463−67−7)、二酸化チタン(アナタース、アナターゼ:CAS番号1317−70−0)、二酸化チタン(ルチル:CAS番号1317−80−2)、三酸化二チタン(CAS番号1344−54−3)が挙げられる。チタン結合活性の程度は、チタンに結合する能力を保持する限り特に限定されないが、例えば、AYPQKFNNNFMS(配列番号3)のアミノ酸配列からなるペプチドのチタン結合活性の約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上または同等以上であってもよい。チタン結合活性の程度は、例えば、実施例に記載されるような水晶マイクロバランス振動法(QCM)により決定することができる。
金属および/または金属化合物に結合し得るペプチドは、金属化合物の析出(mineralization)活性を有し得ることが知られている(K.Sano et al.,Langmuir,2004,vol.21,p.3090.、M.Umetsu et al.,Adv.Mater.,2005,vol.17,p.2571.)。したがって、チタン等の金属に対する結合活性を有するペプチドは、チタン等の金属の化合物の析出活性を有していてもよい。金属に対する析出活性の程度は、金属を析出させる能力を保持する限り特に限定されないが、例えばチタンを例に挙げて説明すると、チタン化合物析出活性の程度は、AYPQKFNNNFMS(配列番号3)のアミノ酸配列からなるペプチドのチタン化合物析出活性の約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上または同等以上であってもよい。チタン化合物析出活性の程度は、例えば、実施例5に記載されるような経時的な吸光度(例、660nmの吸光度)の測定に基づき決定することができる。
別の実施形態では、本発明のペプチドは、以下からなる群より選ばれるペプチドであってもよい:
1)AYPQKFNNNFMS(配列番号3)のアミノ酸配列を含むペプチド;
2)AAPQKFNNNFMS(配列番号4)のアミノ酸配列を含むペプチド;
3)AYPQKANNNFMS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むペプチド;
4)AYPQKFANNFMS(配列番号6)のアミノ酸配列を含むペプチド;
5)AYPQKFNGNFMS(配列番号7)のアミノ酸配列を含むペプチド;
6)AYPQKFNNAFMS(配列番号8)のアミノ酸配列を含むペプチド;
7)AYPQKFNNNAMS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むペプチド;
8)AYPQKFNNNFAS(配列番号10)のアミノ酸配列を含むペプチド;
9)ATGSRMDHNRYI(配列番号11)のアミノ酸配列を含むペプチド;
10)DLLAMHWNTSRQ(配列番号12)のアミノ酸配列を含むペプチド;
11)IQAATVPHVTES(配列番号13)のアミノ酸配列を含むペプチド;
12)KVKHPSSWAYYA(配列番号14)のアミノ酸配列を含むペプチド;
13)SNSIDKVNRPIN(配列番号15)のアミノ酸配列を含むペプチド;
14)配列番号3〜15のアミノ酸配列のいずれか一つのアミノ酸配列において1個または2個のアミノ酸残基が欠失、置換、付加または挿入されたアミノ酸配列を含み、かつ、チタン結合活性を有する、ペプチド;ならびに
15)配列番号3〜15のアミノ酸配列のいずれか一つのアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、チタン結合活性を有する、ペプチド。
チタン結合活性は、上述したとおりである。
上述した14)のペプチドにおいて、置換、付加または挿入されるアミノ酸残基は、式:−NH−C(R)(H)−CO−により表される上述したアミノ酸残基であってもよいが、好ましくは、上述した通常のL−α−アミノ酸である。
アミノ酸残基が置換により変異される場合、アミノ酸残基の置換は、保存的置換であってもよい。本明細書中で用いられる場合、用語「保存的置換」とは、所定のアミノ酸残基を、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換することをいう。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野で周知である。例えば、このようなファミリーとしては、塩基性側鎖を有する塩基性アミノ酸(例、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有する酸性アミノ酸(例、アスパラギン酸、グルタミン酸)、中性側鎖を有する中性アミノ酸〔例、非荷電性極性側鎖を有するアミノ酸(例、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、および非極性側鎖を有するアミノ酸(例、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)〕、β位分岐側鎖を有するアミノ酸(例、スレオニン、バリン、イソロイシン)、芳香族側鎖を有するアミノ酸(例、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)、ヒドロキシル基(例、アルコール性、フェノール性)含有側鎖を有するアミノ酸(例、セリン、スレオニン、チロシン)、および硫黄含有側鎖を有するアミノ酸(例、システイン、メチオニン)が挙げられる。好ましくは、アミノ酸の保存的置換は、アスパラギン酸とグルタミン酸との間での置換、アルギニンとリジンとヒスチジンとの間での置換、トリプトファンとフェニルアラニンとの間での置換、フェニルアラニンとバリンとの間での置換、ロイシンとイソロイシンとアラニンとの間での置換、およびグリシンとアラニンとの間での置換であってもよい。
上述した15)のペプチドにおいて、配列番号3〜15のアミノ酸配列のいずれか一つのアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を示すアミノ酸配列は、配列番号3〜15のアミノ酸配列のいずれか一つのアミノ酸配列に対して、好ましくは75%以上、80%以上、85%以上または90%以上の同一性を示すアミノ酸配列であってもよい。
アミノ酸配列およびヌクレオチド配列の相同性(例、同一性または類似性)は、例えばKarlinおよびAltschulによるアルゴリズムBLAST(Pro.Natl.Acad.Sci.USA,90,5873(1993))、PearsonによるFASTA(MethodsEnzymol.,183,63(1990))を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTP、BLASTNとよばれるプログラムが開発されているので(http://www.ncbi.nlm.nih.gov参照)、これらのプログラムをデフォルト設定で用いて、アミノ酸配列およびヌクレオチド配列の相同性を計算してもよい。また、アミノ酸配列の相同性としては、例えば、Lipman−Pearson法を採用している株式会社ゼネティックスのソフトウェアGENETYX Ver7.0.9を使用し、ORFにコードされるポリペプチド部分全長を用いて、Unit Size to Compare=2の設定でSimilarityをpercentage計算させた際の数値を用いてもよい。アミノ酸配列およびヌクレオチド配列の相同性として、これらの計算で導き出される値のうち、最も低い値を採用してもよい。
本発明のペプチドは、例えば、チタン結合剤または析出剤として、タンパク質の精製用タグとして、または本発明の融合タンパク質、多量体または複合体の作製に有用である。
本発明はまた、本発明のペプチドとタンパク質との融合タンパク質を提供する。本発明において、用語「タンパク質」は、ペプチド(例、オリゴペプチド、ポリペプチド)を包含する表現であり、用語「タンパク質」および「ペプチド」は交換可能に使用される。本発明のペプチドと融合されるタンパク質としては、任意のタンパク質を用いることができ、例えば、精製が意図されるタンパク質、多量体を形成し得るタンパク質(例、内腔を有する多量体を形成し得るタンパク質)が挙げられる。タンパク質に対する本発明のペプチドの融合は、タンパク質のN末端部またはC末端のいずれか一方または双方で行われる。本発明のペプチドは、改良されたファージディスプレイ法により得られたペプチドである。ファージディスプレイ法は、外来DNAをファージのコートタンパク質をコードする遺伝子中に挿入し、その外来DNAの産物をコートタンパク質との融合タンパク質としてファージ粒子表面に提示させる方法である。したがって、このような手法により取得された本発明のペプチドは、タンパク質と融合された状態において、その機能を発揮できることが実証されている。また、このようなペプチドは、タンパク質と融合していない状態でもその機能を発揮できる。
一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、内腔を有する多量体を形成し得るポリペプチド部分、ならびに標的物質に結合し得るペプチド部分および本発明のペプチドの部分を含んでいてもよい。
用語「内腔を有する多量体を形成し得るポリペプチド部分」とは、内部に空間を有する多量体を、ポリペプチド部分の会合によって、形成する能力を有するポリペプチド部分をいう。このようなポリペプチド部分としては、幾つかのタンパク質が知られている。例えば、このようなポリペプチド部分としては、内腔を有する24量体を形成し得るフェリチン、および内腔を有する多量体を形成し得るフェリチン様タンパク質が挙げられる。内腔を有する多量体を形成し得るフェリチン様タンパク質としては、例えば、内腔を有する12量体を形成し得るDps(DNA−binding protein from starved cells)が挙げられる。Dpsは、分子量約18kDaの単量体単位からなる12量体を形成することにより、約5nmの直径の内腔を有する外径9nmからなるかご状構造を形成し、この内腔中に、鉄分子を酸化鉄ナノ粒子として貯蔵できる。さらに、フェリチンでは、鉄以外にも、ベリリウム、ガリウム、マンガン、リン、ウラン、鉛、コバルト、ニッケル、クロムなどの金属の酸化物、また、セレン化カドミウム、硫化亜鉛、硫化鉄、硫化カドミウムなどの半導体・磁性体などのナノ粒子を人工的に貯蔵させられることが示されており、半導体素材工学分野や医療分野での応用研究が盛んにおこなわれている(I.Yamashita et al.,Biochem Biophys.Acta,2010,vol.1800,p.846.)。内腔を有する多量体を形成し得るポリペプチド部分は、微生物、植物および動物等の任意の生物に由来する、天然に生じるタンパク質であっても、または天然に生じるタンパク質の変異体であってもよい。以下、内腔を有する多量体を形成し得るポリペプチド部分を、単にポリペプチド部分と称する場合がある。
一実施形態では、内腔を有する多量体を形成し得るポリペプチド部分は、Dpsである。本発明で用いられる用語「Dps(DNA−binding protein from starved cells)」とは、上述したような、内腔を有する12量体を形成し得るタンパク質をいう。用語「Dps」には、天然に生じるDpsまたはその変異体が含まれる。天然に生じるDpsの変異体としては、天然に生じるDpsと同様に、12量体を形成したときに、そのN末端部およびC末端部が12量体の表面に露出し得るものが好ましい。なお、Dpsは、それが由来する細菌の種類によってはNapA、バクテリオフェリチン、DlpまたはMrgAと称呼される場合があり、また、Dpsには、DpsA、DpsB、Dps1、Dps2等のサブタイプが知られている(T.Haikarainen and A.C.Papageorgion, Cell.Mol.Life Sci.,2010 vol.67,p.341を参照)。したがって、本発明では、用語「Dps」は、これらの別名で称呼されるタンパク質も含むものとする。Dpsについてはまた、国際公開第2012/086647号公報を参照することができる。
Dpsが由来し得る微生物としては、Dpsを産生する微生物である限り特に限定されないが、例えば、リステリア(Listeria)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、バチルス(Bacillus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ビブリオ(Vibrio)属、エスケリシア(Escherichia)属、ブルセラ(Brucella)属、ボレリア(Borrelia)属、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、カンピロバクター(Campylobacter)属、サーモシネココッカス(Thermosynechococcus)属、およびデイノコッカス(Deinococcus)属、パイロコッカス(Pyrococcus)属、ならびにコリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する細菌が挙げられる。
リステリア属に属する細菌としては、例えば、リステリア・イノキュア(Listeria innocua)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)が挙げられる。スタフィロコッカス属に属する細菌としては、例えば、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus Aureus)が挙げられる。バチルス属に属する細菌としては、例えば、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)が挙げられる。ストレプトコッカス属に属する細菌としては、例えば、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス スイス(Streptococcus suis)が挙げられる。ビブリオ属に属する細菌としては、例えば、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)が挙げられる。エスケリシア属に属する細菌としては、例えば、エスケリシア・コリ(Escherichia coli)が挙げられる。ブルセラ属に属する細菌としては、例えば、ブルセラ・メリテンシス(Brucella Melitensis)が挙げられる。ボレリア属に属する細菌としては、例えば、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia Burgdorferi)が挙げられる。マイコバクテリウム属に属する細菌としては、例えば、マイコバクテリウム・スメグマティス(Mycobacterium smegmatis)が挙げられる。カンピロバクター属に属する細菌としては、例えば、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)が挙げられる。サーモシネココッカス属に属する細菌としては、例えば、サーモシネココッカス・エロンガタス(Thermosynechococcus Elongatus)が挙げられる。デイノコッカス属に属する細菌としては、例えば、デイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus Radiodurans)が挙げられる。パイロコッカス(Pyrococcus)属 に属する細菌としては、例えば、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)が挙げられる。コリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する細菌としては、例えば、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)が挙げられる。
好ましい実施形態では、Dpsは、リステリア・イノキュアまたはエスケリシア・コリ、あるいはコリネバクテリウム・グルタミカムに由来するDpsのアミノ酸配列に対して70%以上の類似性パーセントを示すアミノ酸配列からなるタンパク質であり得る。リステリア・イノキュアまたはエスケリシア・コリ、あるいはコリネバクテリウム・グルタミカムに由来するDpsのアミノ酸配列に対する、Dpsのアミノ酸配列の類似性パーセントは、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらにより好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上であり得る。Dpsは、二次構造として、5箇所のα−ヘリックス部分を有する(A.Ilari et al.,Nat.Struct.Biol.,2000,Vol.7,p.38.、R.A.Grant et al.Nat.Struct Biol.1998,Vol 5,p.294.、およびR.R.Crichton et al.,2010,Vol.1800,p.706.を参照)。Dpsの機能の保持の観点からは、上記二次構造の維持が重要である。したがって、例えば、リステリア・イノキュアまたはエスケリシア・コリ、あるいはコリネバクテリウム・グルタミカムに由来するDpsのアミノ酸配列に対して70%以上の類似性パーセントを示すアミノ酸配列からなるタンパク質を作製する場合、上記二次構造が維持されるように、部位特異的変異誘発法等の周知の変異導入法により所望の変異が導入され得る。リステリア・イノキュアに由来するDpsを例に挙げて、配列番号97のアミノ酸配列中のアミノ酸残基の位置と、上記二次構造等との間の関係を、N末端側から具体的に説明すると、以下のとおりである:(i)1〜8位のアミノ酸残基(12量体表面上に露出しているN末端領域);(ii)9〜33位のアミノ酸残基(α−ヘリックス);(iii)39〜66位のアミノ酸残基(α−ヘリックス);(iv)75〜81位のアミノ酸残基(α−ヘリックス);(v)95〜122位のアミノ酸残基(α−ヘリックス);(vi)126〜149位のアミノ酸残基(α−ヘリックス);(vii)150〜156位のアミノ酸残基(12量体表面上に露出しているC末端領域)。ここで、内腔を有する多量体を形成する能力の保持には、上記(i)〜(vii)のうち、(ii)〜(vi)が重要であり得る。DpsのN末端部の12量体表面上への露出には、DpsのN末端部に隣接するα−ヘリックスが12量体の外側に向いている必要があることから、(i)および(ii)、特に(ii)が重要であり得る。DpsのC末端部の12量体表面上への露出には、DpsのC末端部に隣接するα−ヘリックスが12量体の外側に向いている必要があることから、(vi)および(vii)、特に(vi)が重要であり得る。したがって、上述した重要な領域中に存在するアミノ酸残基を変異させる場合には、保存的アミノ酸置換が好ましい。一方、上述した重要な領域以外の領域中に存在するアミノ酸残基を変異させる場合には、任意の変異が導入され得る。当業者は、これらの指針に基づき、天然に生じるDpsに対して、その機能が保持されるような所望の変異を導入することにより、天然に生じるDpsの変異体を容易に作製できる。
アミノ酸配列において変異を導入すべきアミノ酸残基の位置は、上述したとおり当業者に明らかであるが、配列アライメントをさらに参考にして、天然に生じるDpsの変異体を作製してもよい。具体的には、当業者は、1)複数のDpsのアミノ酸配列を比較し、2)相対的に保存されている領域、および相対的に保存されていない領域を明らかにし、次いで、3)相対的に保存されている領域および相対的に保存されていない領域から、それぞれ、機能に重要な役割を果たし得る領域および機能に重要な役割を果たし得ない領域を予測できるので、構造・機能の相関性を認識できる。したがって、当業者は、上述した二次構造情報単独でも、Dpsのアミノ酸配列において変異を導入すべき位置を特定でき、また、二次構造情報および配列アライメント情報を併用して、Dpsのアミノ酸配列において変異を導入すべきアミノ酸残基の位置を特定できる。
一実施形態では、リステリア・イノキュアまたはエスケリシア・コリ、あるいはコリネバクテリウム・グルタミカムに由来するDpsのアミノ酸配列に対して70%以上の類似性パーセントを示すアミノ酸配列からなるタンパク質は、リステリア・イノキュアまたはエスケリシア・コリ、あるいはコリネバクテリウム・グルタミカムに由来するDpsのアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基の変異(例、欠失、置換、付加および挿入)を含むアミノ酸配列からなり、かつDpsの機能を保持するタンパク質であり得る。1または数個のアミノ酸残基の変異は、アミノ酸配列中の1つの領域に導入されてもよいが、複数の異なる領域に導入されてもよい。Dpsのアミノ酸残基の変異に関する用語「1または数個」が示す数は、例えば、1〜50個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜20個、さらにより好ましくは1〜10個、特に好ましくは1、2、3、4または5個である。アミノ酸残基が置換により変異される場合、アミノ酸残基の置換は、上述したような保存的置換であってもよい。
別の実施形態では、リステリア・イノキュアまたはエスケリシア・コリ、あるいはコリネバクテリウム・グルタミカムに由来するDpsのアミノ酸配列に対して70%以上の類似性パーセントを示すアミノ酸配列からなるタンパク質は、リステリア・イノキュアまたはエスケリシア・コリ、あるいはコリネバクテリウム・グルタミカムに由来するDpsをコードするヌクレオチド配列(例、配列番号96または配列番号98)に対して相補的なヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされ、かつDpsの機能を保持するタンパク質であってもよい。「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。このような条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性(例、同一性または類似性)が高いポリヌクレオチド同士、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%、特に好ましくは98%以上の相同性を有するポリヌクレオチド同士がハイブリダイズし、それより低い相同性を示すポリヌクレオチド同士がハイブリダイズしない条件である。具体的には、このような条件としては、6×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中、約45℃でのハイブリダイゼーション、続いて、0.2×SSC、0.1%SDS中、50〜65℃での1または2回以上の洗浄が挙げられる。
特定の実施形態では、Dpsは、リステリア・イノキュアまたはエスケリシア・コリ、あるいはコリネバクテリウム・グルタミカムに由来するDpsのアミノ酸配列(例、配列番号97または配列番号99のアミノ酸配列)に対して70%以上の同一性パーセントを示すアミノ酸配列からなるタンパク質であってもよい。Dpsのアミノ酸配列の同一性パーセントは、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらにより好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上であってもよい。アミノ酸配列の同一性は、上述のとおり決定することができる。
用語「標的物質に結合し得るペプチド部分」とは、任意の標的物質に対して親和性を有するペプチドを有し、かつ当該標的物質に対して結合できる部分をいう。標的物質に対して親和性を有する種々のペプチドが知られているので、本発明では、このようなペプチドを有する部分を、上記ペプチド部分として用いることができる。標的物質に結合し得るペプチド部分は、任意の標的物質に対して親和性を有する1個のペプチドのみを有していてもよいし、あるいは任意の標的物質に対して親和性を有する同種または異種の複数(例、2個、3個、4個、5個または6個等の数個)のペプチドを有していてもよい。例えば、標的物質に結合し得るペプチド部分が、任意の標的物質に対して親和性を有する異種の複数のペプチドを有する場合、当該ペプチド部分としては、カーボンナノ素材と結合し得るP1ペプチド(配列番号100)と、チタン素材またはシリコン素材に結合し得るR5ペプチド(配列番号101)との融合ペプチドであるP1R5ペプチド(SSKKSGSYSGSKGSKRRILGGGGHSSYWYAFNNKT(配列番号102)を用いることができる(例、M.J.Pender et al.,Nano Lett.,2006,vol.6,No.1,p.40−44を参照)。標的物質に結合し得るペプチド部分が上記のような複数のペプチドを有する場合、複数のペプチドは、当該ペプチド部分中に任意の順序で融合され得る。融合は、アミド結合を介して達成され得る。融合は、直接的なアミド結合、あるいは1個のアミノ酸残基(例、メチオニン)または数個(例えば2〜50個、好ましくは2〜30個、より好ましくは2〜20個、さらにより好ましくは2〜15個または2〜10個、最も好ましくは2、3、4または5個)のアミノ酸残基からなるペプチド(ペプチドリンカー)が介在したアミド結合により達成され得る。種々のペプチドリンカーが知られているので、本発明でも、このようなペプチドリンカーを使用することができる。
標的物質としては、例えば、無機素材および有機素材、あるいは導体素材、半導体素材および磁性体素材が挙げられる。具体的には、このような標的物質としては、金属素材、シリコン素材、炭素素材、低分子化合物(例、ポルフィリン等の生体物質、放射性物質、蛍光物質、色素、薬物)、ポリマー(例、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエチレンオキシドまたはポリ(L−乳酸)等の疎水性有機ポリマーまたは伝導性ポリマー)、タンパク質(例、オリゴペプチドまたはポリペプチド)、核酸(例、DNAまたはRNA、あるいはヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド)、糖質(例、モノサッカリド、オリゴサッカリドまたはポリサッカリド)、脂質が挙げられる。
金属素材としては、例えば、金属および金属化合物が挙げられる。金属としては、例えば、チタン、クロム、亜鉛、鉛、マンガン、カルシウム、銅、カルシウム、ゲルマニウム、アルミニウム、ガリウム、カドミウム、鉄、コバルト、金、銀、プラチナ、パラジウム、ハフニウム、テルルが挙げられる。金属化合物としては、例えば、金属の酸化物、硫化物、炭酸化物、砒化物、塩化物、フッ化物およびヨウ化物、ならびに金属間化合物が挙げられる。金属の酸化物としては、種々の酸化物が挙げられる。より具体的には、金属化合物としては、上述したようなチタンの酸化物、酸化クロム、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化マンガン、ゼオライト、炭酸カルシウム、酸化銅、酸化マンガンカルシウム、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、チタンジルコン酸鉛、砒化ガリウム、硫化亜鉛、硫化鉛、硫化カドミウム、白金鉄、白金コバルト、カドミウムテルルが挙げられる。
シリコン素材としては、例えば、シリコンまたはシリコン化合物が挙げられる。シリコン化合物としては、例えば、シリコンの酸化物(例、一酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO2))、炭化ケイ素(SiC)、シラン(SiH)、シリコーンゴムが挙げられる。
炭素素材としては、例えば、カーボンナノ素材(例、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノホン(CNH))、フラーレン(C60)、グラフェンシート、グラファイトが挙げられる。
標的物質に結合し得るペプチド部分は、上述したような標的物質に対して親和性を有する限り特に限定されない。標的物質に対して親和性を有する種々のペプチドが知られており、また、開発されている。例えば、生体素材および無機素材または有機素材の複合体を作製することを目的として、無機素材または有機素材に対して結合し得るペプチドが、ファージを用いたスクリーニング等の手法により開発されている。このような手法により開発されたペプチドとしては、例えば、チタン(例、チタンの酸化物)ならびに銀(K.Sano et al.,Langmuir,2004,vol.21,p.3090.、国際公開第2005/010031号)、金(S.Brown,Nat.Biotechnol.,1997,vol.15.p.269.)、酸化亜鉛(K.Kjaergaard et al.,Appl.Environ.Microbiol.,2000,vol.66.p.10.、Umetsu et al.,Adv.Mater.,17,2571−2575(2005))、酸化ゲルマニウム(M.B.Dickerson et al.,Chem.Commun.,2004,vol.15.p.1776.)、硫化亜鉛および硫化カドミウム(C.E.Flynn et al.,J.Mater.Chem.,2003,vol.13.p.2414.)等の金属素材に結合し得るペプチド;シリコンおよびシリコンの酸化物(H.Chen et al.,Anal. Chem.,2006,vol.78,,p.4872、M.J.Pender et al.,Nano Lett.,2006,vol.6,No.1,p.40−44、K.Sano et al.,Langmuir,2004,vol.21,p.3090.、国際公開第2005/010031号)等のシリコン素材に結合し得るペプチド;カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノホン(CNH)等の炭素素材に結合し得るペプチド(S.Wang et al.,Nat.Mater.,2003,vol.2,p.196.および特開2004−121154号公報);ならびに疎水性有機ポリマー等のポリマーに結合し得るペプチド(特開2008−133194号公報)が挙げられる。したがって、本発明でも、標的物質に結合し得るペプチド部分として、このようなペプチドを使用することができる。
なお、金属に結合し得るペプチドは、金属の析出(mineralization)作用を有し得ること、および金属化合物に結合し得るペプチドは、金属化合物の析出活性を有し得ることが知られている(K.Sano et al.,Langmuir,2004,vol.21,p.3090.、M.Umetsu et al.,Adv.Mater.,2005,vol.17,p.2571.)。したがって、標的物質に結合し得るペプチド部分として、金属素材(金属または金属化合物)に結合し得るペプチドを用いる場合、金属素材に結合し得るペプチドは、このような析出活性を有し得る。
ポリペプチド部分およびペプチド部分の融合は、アミド結合を介して達成され得る。融合は、直接的なアミド結合、あるいは1個のアミノ酸残基(例、メチオニン)または数個(例えば2〜50個、好ましくは2〜30個、より好ましくは2〜20個、さらにより好ましくは2〜15個または2〜10個、最も好ましくは2、3、4または5個)のアミノ酸残基からなるペプチド(ペプチドリンカー)が介在したアミド結合により達成され得る。種々のペプチドリンカーが知られているので、本発明でも、このようなペプチドリンカーを使用することができる。
本発明の融合タンパク質において、ポリペプチド部分、ならびに標的物質に結合し得るペプチド部分、および本発明のペプチドの部分が融合する順序は、特に限定されず、1)ポリペプチド部分のN末端部およびC末端部がそれぞれ標的物質に結合し得るペプチド部分、および本発明のペプチドの部分のC末端部およびN末端部またはN末端部およびC末端部と融合していてもよいし、あるいは2)ポリペプチド部分のN末端部が標的物質に結合し得るペプチド部分のC末端部と融合し、かつ当該標的物質に結合し得るペプチド部分のN末端部が本発明のペプチドの部分のC末端部とさらに融合していてもよく、または3)ポリペプチド部分のC末端部が標的物質に結合し得るペプチド部分のN末端部と融合し、かつ当該標的物質に結合し得るペプチド部分のC末端部が本発明のペプチドの部分のN末端部とさらに融合していてもよい。例えば、ポリペプチド部分としてフェリチンを用いる場合、フェリチンはそのN末端部が多量体の表面上に露出され、そのC末端部は表面上に露出しないことから、好ましくは、フェリチンは、上記2)の順序で融合される。一方、ポリペプチド部分としてDpsを用いる場合、DpsはN末端部およびC末端部の両方が多量体の表面上に露出し得ることから、Dpsは、上記1)〜3)のいずれかの順序で融合され得る。
好ましい実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ポリペプチド部分のN末端側およびC末端側またはC末端側およびN末端側にそれぞれ標的物質に結合し得るペプチド部分、および本発明のペプチドの部分(それぞれ、1個または複数)を有し得る。
ポリペプチド部分のN末端側に融合されたペプチド部分は、翻訳開始コドンによりコードされるメチオニン、またはメチオニンをN末端に含む部分を、そのN末端側に有するように設計され得る。このような設計により、本発明の融合タンパク質の翻訳が促進され得る。メチオニンをN末端に含むペプチド部分は、数個(例えば2〜50個、好ましくは2〜30個、より好ましくは2〜20個、さらにより好ましくは2〜15個または2〜10個、最も好ましくは2、3、4または5個)のアミノ酸残基からなるペプチドであり得る。
好ましい実施形態では、本発明の融合タンパク質は、標的物質に結合し得るペプチド部分、および本発明のペプチドの部分が異なる標的物質に結合し得る。標的物質に結合し得るペプチド部分が結合する標的物質としては、例えば、無機素材および有機素材が挙げられる。より具体的には、このような標的物質としては、例えば、金属素材、シリコン素材、炭素素材が挙げられる。好ましくは、標的物質は、炭素素材またはシリコン素材である。
炭素素材に結合し得るペプチド部分としては、カーボンナノチューブ(CNT)またはカーボンナノホン(CNH)等のカーボンナノ素材に結合し得るペプチド部分が好ましい。このようなペプチド部分としては、例えば、後述する実施例および特開2004−121154号公報に開示されるDYFSSPYYEQLF(配列番号103)、M.J.Pender et al.,Nano Lett.,2006,vol.6,No.1,p.40−44に開示されるHSSYWYAFNNKT(配列番号104)、ならびに特開2004−121154号公報に開示されるYDPFHII(配列番号105)、またはそれらの変異ペプチド(例、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基の保存的置換等の変異)、あるいはこのようなアミノ酸配列を1個または複数有するペプチドが挙げられる。
金属素材に結合し得るペプチド部分としては、例えば、亜鉛または亜鉛化合物(例、酸化亜鉛)等の亜鉛素材に結合し得るペプチド部分が挙げられる。亜鉛素材に結合し得るペプチド部分としては、例えば、後述する実施例およびUmetsu et al.,Adv.Mater.,17,2571−2575(2005)に開示されるEAHVMHKVAPRPGGGSC(配列番号106)、またはそれらの変異ペプチド(例、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基の保存的置換等の変異)、あるいはこのようなアミノ酸配列を1個または複数有するペプチドが挙げられる。
シリコン素材に結合し得るペプチド部分としては、シリコンまたはシリコン化合物(例、シリコンの酸化物)に結合し得るペプチド部分が好ましい。このようなペプチド部分としては、例えば、後述する実施例および国際公開第2006/126595号に開示されるRKLPDA(配列番号77)、M.J.Pender et al.,Nano Lett.,2006,vol.6,No.1,p.40−44に開示されるSSKKSGSYSGSKGSKRRIL(配列番号107)、ならびに国際公開第2006/126595号に開示されるMSPHPHPRHHHT(配列番号108)、TGRRRRLSCRLL(配列番号109)、およびKPSHHHHHTGAN(配列番号110)、またはそれらの変異ペプチド(例、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基の保存的置換等の変異)、あるいはこのようなアミノ酸配列を1個または複数有するペプチドが挙げられる。
本発明の融合タンパク質は、本発明の融合タンパク質を発現する形質転換体から得ることができる。この形質転換体は、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、本発明の融合タンパク質の発現ベクターを作製し、次いで、この発現ベクターを宿主に導入することにより作製することができる。本発明の融合タンパク質を発現させるための宿主としては、例えば、エスケリシア・コリ(Escherichia coli)等のエスケリシア属細菌、コリネバクテリウム属細菌、およびバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)をはじめとする種々の原核細胞、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピヒア・スティピティス(Pichia stipitis)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)をはじめとする種々の真核細胞が挙げられる。
形質転換される宿主としてE.coliについて詳述すると、E.coliとしては、例えば、E.coli K12株亜種のE.coli JM109株、DH5α株、HB101株、BL21(DE3)株が挙げられる。形質転換方法、および形質転換体を選別する方法は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbor press (2001/01/15)などにも記載されている。以下、形質転換されたE.coliを作製し、これを用いて本発明の融合タンパク質を製造する方法を、一例としてより具体的に説明する。
本発明の融合タンパク質をコードするDNAを発現させるプロモータとしては、通常E.coliにおける異種タンパク質生産に用いられるプロモータを使用することができ、例えば、T7プロモータ、lacプロモータ、trpプロモータ、trcプロモータ、tacプロモータ、ラムダファージのPRプロモータ、PLプロモータ、T5プロモータ等の強力なプロモータが挙げられる。ベクターとしては、例えば、pUC19、pUC18、pBR322、pHSG299、pHSG298、pHSG399、pHSG398、RSF1010、pACYC177、pACYC184、pMW119、pMW118、pMW219、pMW218、pQE30およびその誘導体が挙げられる。
また、本発明の融合タンパク質をコードする遺伝子の下流に、転写終結配列であるターミネータを連結してもよい。このようなターミネータとしては、例えば、T7ターミネータ、fdファージターミネータ、T4ターミネータ、テトラサイクリン耐性遺伝子のターミネータ、大腸菌trpA遺伝子のターミネータが挙げられる。
本発明の融合タンパク質をコードする遺伝子をE.coliに導入するためのベクターとしては、いわゆるマルチコピー型のものが好ましく、ColE1由来の複製開始点を有するプラスミド、例えばpUC系のプラスミドやpBR322系のプラスミドあるいはその誘導体が挙げられる。ここで、「誘導体」とは、塩基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位などによってプラスミドに改変を施したものを意味する。なお、ここでいう「改変」とは、変異剤やUV照射などによる変異処理、あるいは自然変異などによる改変をも含む。
ベクターは、形質転換体の選別のため、アンピシリン耐性遺伝子等のマーカーを有することが好ましい。このようなプラスミドとして、強力なプロモータを持つ発現ベクターが市販されている(例、pUC系(タカラバイオ社製)、pPROK系(タカラバイオ社製)、pKK233−2(タカラバイオ社製)、pET系(アジレント・テクノロジー社製)。
得られた発現ベクターを用いてE.coliを形質転換し、得られたE.coliを培養すると、本発明の融合タンパク質が発現される。
培地としては、例えば、M9−カザミノ酸培地、LB培地など、大腸菌を培養するために通常用いる培地が挙げられる。培養および生産誘導等の条件は、用いたベクターのマーカー、プロモータ、宿主菌等の種類に応じて適宜選択することができる。
本発明の融合タンパク質を回収するには、以下の方法などがある。本発明の融合タンパク質は、本発明の融合タンパク質を産生する形質転換体を回収した後、形質転換体を破砕(例、ソニケーション、ホモジナイゼーション)あるいは溶解(例、リゾチーム処理)することにより、破砕物および溶解物として得ることができる。このような破砕物および溶解物を、抽出、沈澱、濾過、カラムクロマトグラフィー等の手法に供することにより、精製タンパク質、粗精製タンパク質、または本発明の融合タンパク質含有画分を得ることができる。融合タンパク質についてはまた、国際公開第2012/086647号を参照することができる。
本発明はまた、本発明の融合タンパク質の作製に用いることができる、上述したような、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、および当該ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、ならびに当該発現ベクターを含む形質転換体を提供する。本発明のポリヌクレオチドは、本発明の融合タンパク質をコードするので、本発明の融合タンパク質に関する上述した説明に基づいて、種々の観点から特定することができる。
本発明はまた、融合タンパク質の多量体を提供する。本発明の多量体は、内腔を有し得る。本発明の多量体を構成する融合タンパク質は、上述したとおりである。本発明の多量体は、本発明の融合タンパク質を発現させることで、自律的に形成され得る。本発明の多量体を構成する単量体単位の数は、本発明の融合タンパク質におけるポリペプチド部分の種類により決定され得る。好ましくは、本発明の多量体は、内腔を有する多量体を形成し得るポリペプチド部分としてDpsを有し得ることから、12量体であり得る。
本発明の多量体は、単量体単位として、単一の融合タンパク質から構成されるホモ多量体であってもよいが、異なる複数の種類(例、2種、3種、4種、5種または6種)の融合タンパク質から構成されるヘテロ多量体であってもよい。本発明の多量体では、多量体形成の観点から、多量体を構成する融合タンパク質中のポリペプチド部分は単一のポリペプチド部分であることが好ましいが、標的物質に結合し得るペプチド部分、および本発明のペプチドの部分は、多量体を構成する融合タンパク質間で異なるものであってもよい。異なる複数の種類の融合タンパク質から構成される多量体は、例えば、異なる種類の融合タンパク質を発現する複数のベクター、または異なる種類の融合タンパク質を発現する単一のベクター(例、ポリシストロニックmRNAを発現し得るベクター)を、単一の宿主細胞に導入し、次いで、異なる種類の融合タンパク質を単一の宿主細胞中で発現させることにより、得ることができる。このような多量体はまた、単一の融合タンパク質から構成される第1の単量体と、単一の融合タンパク質(第1の多量体を構成する融合タンパク質とは異なる)から構成される第2の単量体とを、同一の媒体(例、緩衝液)中で共存させ、放置することにより、得ることができる。融合タンパク質の単量体は、例えば、本発明の多量体を、低pHの緩衝液下に放置することにより調製することができる。詳細については、例えば、B.Zheng et al.,Nanotechnology,2010,vol.21,p.445602を参照のこと。
本発明の多量体は、内腔中に物質を含んでいてもよい。物質は、錯体または粒子(例、ナノ粒子、磁性粒子)のような形態で、本発明の多量体中に内包されていてもよい。当業者は、本発明の多量体の内腔のサイズ、および本発明の多量体における物質の取り込みに関与し得る領域(例、C末端の領域:R.M.Kramer et al.,2004,J.Am.Chem.Soc.,vol.126,p.13282を参照)中のアミノ酸残基の電荷特性等を考慮することにより、本発明の多量体に内包され得る物質を適切に選択できる。例えば、ポリペプチド部分としてDpsを有する本発明の多量体の場合、Dpsは、40〜60nm(直径 約5nm)の程度の内腔を有する。したがって、このような多量体に内包され得る物質のサイズは、例えば60nm以下、好ましくは40nm以下、より好ましくは20nm以下、さらにより好ましくは10nm以下、最も好ましくは5nm以下であり得る。また、多量体における物質の取り込みに関与し得る領域中の電荷特性(例、正または負に荷電し得る側鎖を有するアミノ酸残基の種類および数)を変化させることにより、多量体の内腔中への物質の取り込みをより促進できることが報告されているので(例、R.M.Kramer et al.,2004,J.Am.Chem.Soc.,vol.126,p.13282を参照)、本発明においても、電荷特性が変化された領域を有する融合タンパク質の多量体を用いることができる。本発明の多量体に内包され得る物質としては、例えば、上述した標的物質と同様の無機素材が挙げられる。具体的には、本発明の多量体に内包され得る物質としては、上述したような金属素材やシリコン素材が挙げられる。より具体的には、このような物質としては、酸化鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、リン、ウラン、ベリリウム、アルミニウム、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、パラジウム、クロム、銅、銀、ガドリウム錯体、白金コバルト、酸化シリコン、酸化コバルト、酸化インジウム、白金、金、硫化金、セレン化亜鉛、カドミウムセレンが挙げられる。
本発明の多量体の内腔中への物質の内包は、周知の方法により行うことができ、例えば、フェリチンまたはDps等のフェリチン様タンパク質の多量体の内腔中への物質の内包方法(例、I.Yamashita et al.,Chem.,lett.,2005.vol.33,p.1158を参照)と同様にして行うことができる。具体的には、HEPES緩衝液等の緩衝液中に、本発明の多量体(または本発明の融合タンパク質)および内包されるべき物質を共存させ、次いで適切な温度(例、0〜37℃)で放置することにより、本発明の多量体の内腔中に物質を内包させることができる(実施例3もまた参照のこと)。
本発明の多量体は、内腔中に物質を含む場合、異なる複数の種類(例、2種、3種、4種、5種または6種)の物質を含む、異なる複数の種類の多量体のセットとして提供されてもよい。例えば、本発明の多量体が2種の物質を含む2種の多量体のセットとして提供される場合、このようなセットは、各々別々に調製された、第1の物質を内包する第1の多量体と、第2の物質(第1の物質とは異なる)を内包する第2の多量体とを、組み合せることにより、得ることができる。上述したような融合タンパク質の多様なパターンと、内包物質の多様なパターンとを適宜組み合せることにより、非常に多様性に富む本発明の多量体を得ることができる。多量体についてはまた、国際公開第2012/086647号を参照することができる。
本発明はまた、複合体を提供する。本発明の複合体は、本発明の多量体、ならびに標的物質およびチタンを含み得る。本発明の複合体では、標的物質が、融合タンパク質中の標的物質に結合し得るペプチド部分に結合し得、かつチタンが、融合タンパク質中の本発明のペプチドの部分に結合し得る。標的物質は、上述したとおりである。標的物質は、好ましくは、チタン以外の標的物質(例、有機素材、または炭素素材もしくはシリコン素材等の無機素材)である。標的物質は、他の物質または物体と結合していてもよい。例えば、標的物質は、固相(例、ウェルプレート等のプレート、支持体、基板、素子、デバイス)上に固定されていてもよい。したがって、本発明の複合体は、本発明の多量体、ならびに標的物質および/またはチタンを含み得る限り、他の物質または物体をさらに含んでいてもよい。複合体についてはまた、国際公開第2012/086647号を参照することができる。
本発明の複合体を焼成して、本発明の複合体を構成する本発明の多量体(本発明の融合タンパク質)を除去することにより、多孔質構造体を作製することができる。このように作製された多孔質構造体は、光触媒活性または電気特性等に優れたデバイスおよび素材等の開発に有用である。例えば、多孔質構造体は、光電変換素子(例、色素増感太陽電池等の太陽電池)、水素発生素子、水浄化素材、抗菌素材、半導体メモリ素子の作製における材料または構成要素として、有用である。このような多孔質構造体については、例えば、国際公開第2013/022051号、国際公開第2012/086647号を参照することができる。
本発明はまた、標的素材に結合し得るペプチドのスクリーニング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法は、以下を含む:
1)標的素材をファージライブラリに接触させて、ファージ結合標的素材を得ること;
2)ファージ結合標的素材を回収すること;
3)ファージ結合標的素材および宿主を用いて、ファージ導入宿主を調製すること;
4)ファージ導入宿主において、ファージを増幅させること;および
5)増幅したファージが発現する、標的素材に結合し得るペプチドを同定すること。
工程1)において用いられる標的素材は、ファージライブラリ中に存在し得る、標的素材に結合し得るペプチドを提示するファージが結合できる素材である。このような標的素材としては、例えば、上述した標的素材を、必要に応じて宿主に導入可能なサイズに調製した上で、工程1)に用いることができる。好ましくは、標的素材は、ナノ素材である。本発明において、ナノ素材とは、1〜1000nmの長径を有する固形状物質を意味する。ナノ素材の長径の下限値は、好ましくは1nm以上、より好ましくは10nm以上であってもよい。ナノ素材の長径の上限値は、好ましくは1000nm以下、より好ましくは100nm以下であってもよい。ナノ素材としては、例えば、無機ナノ素材および有機ナノ素材が挙げられる。より具体的には、ナノ素材としては、例えば、金属ナノ素材(例、金属粒子、磁性粒子)、シリコンナノ素材、カーボンナノ素材(例、CNT、CNH)が挙げられる。ファージライブラリとの接触の際の標的素材の濃度は、標的物質とファージとの結合が可能である限り特に限定されないが、例えば10〜1013個、好ましくは10〜1012個、より好ましくは5×10〜5×1011個である。あるいは、ファージライブラリとの接触の際の標的素材の濃度は、例えば0.1μg/ml〜10mg/ml、好ましくは1.0μg/ml〜1.0mg/ml、より好ましくは2.0〜100μg/mlである。
工程1)において用いられるファージライブラリは、種々のペプチドを提示するファージの集団である。ファージとしては、例えば、繊維状ファージ(例、M13、fd、f1)、ラムダファージ、T4ファージ、T7ファージが挙げられる。ファージライブラリは、ファージディスプレイ用のライブラリを好適に用いることができ、例えば、市販のものを用いてもよく、または種々の特定のペプチドを提示するように特異的に作製されたファージの集団を用いてもよい。標的素材との接触の際のファージ濃度は、標的素材とファージとの結合が可能である限り特に限定されないが、例えば10〜1013個、好ましくは1010〜1012個、より好ましくは5×1010〜5×1011個である。
接触は、緩衝液等の水溶液中で行うことができる。緩衝液としては、Tris緩衝液(例、Tris−HCl)等の任意の緩衝液を用いることができる。水溶液は、1種または2種以上の変性剤を含有していてもよい。変性剤としては、例えば、界面活性剤(例、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン性界面活性剤)、カオトロピック剤、pH調整剤(例、酸性物質、アルカリ性物質)、有機溶媒(例、アセトン、メタノール、エタノール)が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ヘキシル硫酸、オクチル硫酸、デシル硫酸、ドデシル硫酸、テトラデシル硫酸、ヘキサデシル硫酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ラウロイルサルコシン、およびドデカノイルサルコシン酸、ならびにこれらの塩が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、4級アンモニウム化合物(例、セチルジメチルエチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム)および4級ホスホニウム化合物、ならびにこれらの塩が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、Zwittergent、ASB−14、および3−N(N,N−ジメチルオクチルアンモニオ)プロパンスルホン酸、ならびにこれらの塩が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、TritonX、Tween、NP40が挙げられる。カオトロピック剤としては、例えば、グアニジン、尿素、およびチオ硫酸、ならびにそれらの塩が挙げられる。変性剤の濃度は、例えば、標的素材またはファージの非特異的吸着を抑制しつつ、標的素材に対する親和性を有するペプチドを提示するファージと標的素材との結合を可能にする限り特に限定されないが、例えば0.01〜5.0容量%、好ましくは0.02〜2.0容量%、より好ましくは0.05〜1.0容量%である。緩衝液のpHは、例えば5.0〜9.0、好ましくは5.5〜8.5である。接触の際の温度は、例えば4〜40℃、好ましくは20〜37℃である。接触は、遮光条件下で行われてもよい。接触時間は、特に限定されないが、例えば5分〜24時間、好ましくは10分〜10時間、より好ましくは20分〜5時間である。
工程2)において、ファージ結合標的素材の回収は、標的素材を回収できる任意の方法により行うことができる。このような方法としては、例えば、遠心分離、磁力の利用(標的素材が磁性素材である場合)、親和性物質の利用(例、標的素材を予め親和性物質で標識しておき、当該親和性物質と親和性を有する別の親和性物質を利用して標的素材を回収する方法)、電気泳動(標的素材が荷電している場合)が挙げられる。親和性物質としては、例えば、ストレプトアビジン、ビオチン、ジゴキシゲニン、ジニトロフェノール、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネートが挙げられる。本発明のスクリーニング方法は、固相(本発明の場合、標的素材に相当)からファージを溶出させずに、標的素材の回収方法により標的素材ごとファージを回収する点で、従来法と異なる。
回収したファージ結合標的素材は、1回または複数回(例、2回、3回、4回、5回、6回、8回、または10回)洗浄されてもよい。洗浄液としては、例えば、緩衝液および水が挙げられる。洗浄液としては、例えば、上述した変性剤を、工程1)で採用した濃度よりも高濃度で含む水溶液を用いることができる。洗浄液中の変性剤の濃度は、洗浄回数に応じて漸増させてもよく、例えば、工程1)で採用した濃度の1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、8倍以上または10倍以上の濃度で使用してもよい。洗浄操作は、緩衝液および水を併用してもよく、例えば、緩衝液で1回または複数回、および水で1回または複数回行ってもよい。このような操作により、標的素材に未結合のファージ、または標的素材に対する結合が弱いファージを効率的に除去することができ、標的素材に強固に結合したファージを、結合標的素材の回収により取得することができる。
工程3)において、ファージ導入宿主の調製は、ファージ結合標的素材および宿主を用いて行うことができる。例えば、ファージ導入宿主の調製は、標的素材ごとファージを宿主に導入できる方法より調製することができる。標的素材ごとファージを宿主に導入できる方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、DEAEデキストラン法が挙げられる。また、ファージ導入宿主の調製は、ファージ結合標的素材を宿主と混合することにより行うことができる。ファージ結合標的素材を宿主と混合することにより、ファージ結合標的素材から乖離したファージが宿主に感染するためである。宿主としては、ファージディスプレイ法で利用できる宿主である限り特に限定されず、例えば、大腸菌(例、JM109株、ER2738株、BB4株、HB2151株、およびTG−1株などのF因子を持つ株)が挙げられる。
工程4)において、工程3)で得られたファージ導入宿主中で、ファージを増幅させることができる。具体的には、ファージ導入宿主を、寒天培地上で培養すると、ファージが増幅し、プラークが形成される。ファージをさらに効率よく増幅させるためには、培地中にファージを播種し、培養してもよい。
工程5)において、増幅したファージが発現する、標的素材に結合し得るペプチドが同定される。例えば、ファージ培養物からファージDNAを回収し、試験ペプチドが融合されているコートタンパク質をコードするヌクレオチド配列を利用して、試験ペプチドをコードするヌクレオチド配列を解析することにより、増幅したファージが発現する、標的素材に結合し得るペプチドを同定することができる。
本発明のスクリーニング方法では、工程1)〜4)のサイクルを複数回(例、2回、3回、4回、5回、6回、8回、または10回)繰り返した後に、工程5)を行ってもよい。これにより、標的素材に対して高い親和性を有するペプチドを発現するファージを得ることができる。このような場合、2サイクル以降の工程1)で用いられる水溶液中の変性剤の濃度は、前サイクルの工程1)で用いられる水溶液中の変性剤の濃度に比し、高濃度(例、1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、8倍以上または10倍以上の濃度)であってもよい。また、2サイクル以降の工程2)で回収したファージ結合標的素材は、1回または複数回(例、2回、3回、4回、5回、6回、8回、または10回)洗浄されてもよい。2サイクル以降で用いられる洗浄液中の変性剤の濃度は、前サイクルの洗浄液中の変性剤の濃度に比し、高濃度(例、1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、8倍以上または10倍以上の濃度)であってもよい。
本発明のスクリーニング方法は、ファージディスプレイ法において、ファージ結合標的素材を宿主に導入することにより、標的素材に強固に結合したファージを利用することができる。従来のファージディスプレイ法では、標的素材でコーティングされた固相に結合したファージを剥離して回収しているため、変性剤で容易に剥離させることのできない程度に標的素材に強固に結合する能力を有するペプチドをファージディスプレイ法で同定することは難しかった。一方、本発明によれば、このようなペプチドを効率的に同定することが可能になるため、本発明のスクリーニング方法は有用である。
以下の実施例により、本発明を詳細に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
実施例1:酸化チタンへの結合ペプチドのスクリーニング
(ファージパニング工程)
酸化チタン吸着ペプチドのスクリーニングは、Ph.D.TM−12 Phage Display Libraries(NEW ENGLAND BioLabs Inc.、米国)を用いた。すなわち、酸化チタンナノ粒子(Titanium(IV) oxide,anatase、直径25nm、Sigma Aldrich)を終濃度0.01mg/ml(4x1010個/ml)で含有するTBT01緩衝液(50mM TrisHCl,pH8.0,0.1容量% tween−20含有)1mlに、最終的なファージ濃度が1011個/mlとなるようにPh.D.TM−12 Phage Display Librariesのファージ溶液を添加し、室温で遮光しながら1時間回転放置した。反応後、酸化チタンナノ粒子を遠心回収し、TBT02緩衝液(50mM TrisHCl,pH8.0,0.2容量% tween−20含有)1mlに再度懸濁した。この酸化チタンナノ粒子を遠心回収し、新たな緩衝液1mlに懸濁する工程を、tween−20を0.3容量%、0.4容量%、そして0.6容量%の濃度でそれぞれ含むトリス緩衝液(50mM TrisHCl,pH8.0)を用いて実施した。最後に水で酸化チタンナノ粒子を2回洗浄し、水110μlに懸濁した。これらの工程により、サンプルに含まれる酸化チタンに結合していないファージが多くとも100個以下になるようにした。
続いて、このファージが強固に結合した酸化チタンナノ粒子を用いて、酸化チタンナノ粒子ごとファージをEscherichia coli JM109の細胞内にエレクトロポレーションにより導入しプラークを形成させた。すなわち、E.coli JM109 Electro−Cells(タカラバイオ)約80μlに酸化チタン溶液10μlあるいは100μlを加えた。その混合溶液をGene Pulser XcellTM Electroporation Systems用セル(0.2cmギャップ)に入れ、Gene Pulser XcellTM Electroporation Systemsを用いて2.5kVの電圧をかけた。その溶液に0.5ml SOC培地(2% Tryptone、0.5% Yeast extract、10mM NaCl、2.5mM KCl、10mM MgSO、10mM MgCl、20mM Glucose)を加えた。その溶液を溶解させたTOP Agar(Bacto−tryptone 1.0g/l、Bacto−yeast extract 0.5g/l、NaCl 0.5g/l、agarose 0.7g/l、0.3mg/ml X−Galおよび1mM IPTG)3mlに加え、LB寒天培地にまき37℃で一晩放置した。その後、形成された青色プラークに含まれるファージからDNAを回収し、配列を決定すると共に、1ml LB培地(Bacto−tryptone 1.0g/l、Bacto−yeast extract 0.5g/l、NaCl 0.5g/l)を加え、TOP Agarごと全プラークを削り取って15ml遠沈管に回収した。その懸濁液を5000rpmで15分間遠心分離することで、ファージが含まれる上清を回収した。
ファージDNAを回収するために、JM109が播種されたLB培地1mlに爪楊枝を用いてファージの青色プラークからファージを播種した。37℃で5時間培養した後、QIAprep Spin M13 Kitを用いてDNAを回収し、配列(5’−CCCTCATAGTTAGCGTAACG−3’)を用いてペプチドライブラリーをコードする塩基配列を解読した。
その全プラークから回収されたファージ液に含まれるファージを増幅するために、ファージ液をE.coli JM109が播種されたLB培地50mlに加え、37℃で5時間培養した。その後、50ml遠沈管に回収し、6000rpmで15分間遠心分離することで、E.coli JM109を沈殿させ、ファージが含まれる上清を回収した。さらに、その上清を6000rpmで15分間遠心分離し、上清に残った菌体を沈殿させ、ファージが含まれる上清40mlを50ml遠沈管に回収した。そのファージ溶液にPEG溶液(20容量% PEG8000、2.5M NaCl)6.7mlを加え、4℃で一晩静置した。その溶液を6000rpmで15分間遠心分離し、上清を捨てた。さらに、6000rpmで数秒間遠心分離し、遠沈管壁面にのこった溶液を回収し、廃棄した。得られた沈殿物をTBS(50mM TrisHCl,pH8.0,150mM NaCl)1mlに懸濁させ、1.5ml遠沈チューブに移した。その溶液にPEG溶液(20容量% PEG8000、2.5M NaCl)0.17mlを加え、4℃で1時間静置した。その後、15000rpmで10分間遠心分離し、上清を捨てた。さらに、15000rpmで数秒間遠心分離し、遠沈管壁面にのこった溶液を回収し、廃棄した。得られた沈殿物をTBS(50mM TrisHCl,pH8.0,150mM NaCl)50μlに懸濁させ、ファージ溶液とした。
この回収されたファージ溶液を用いて上記ファージパニング工程を行うことで、より強固に酸化チタンナノ粒子に結合できるファージをスクリーニングした。このとき酸化チタン結合工程でのファージの最終濃度は1011個/mlであり、酸化チタンナノ粒子の終濃度は0.01mg/mlであった。また、反応溶液としてTBT03緩衝液(50mM TrisHCl,pH8.0,0.3容量% tween−20含有)1mlを用いた。酸化チタンナノ粒子の洗浄は、TBT03緩衝液1mlで2回、TBT04緩衝液(50mM TrisHCl,pH8.0,0.4容量% tween−20含有)1mlで1回、TBT06緩衝液(50mM TrisHCl,pH8.0,0.6容量% tween−20含有)1mlで2回、水で2回行った。得られたファージが結合した酸化チタンナノ粒子を、上記と同様にE.coli JM109にエレクトロポレーションにより導入し、プラークを形成させ、回収した。そして、上記と同様にして、各プラーク内のファージが提示したペプチドをコードする塩基配列を解読すると共に、全ファージを増幅し、ファージ溶液を得た。
この回収されたファージ溶液を用いて、再度上記ファージパニング工程を行った。このとき酸化チタン結合工程でのファージの最終濃度は1011個/mlであり、酸化チタンナノ粒子の終濃度は0.01mg/mlであった。また、反応溶液としてTBT06緩衝液1mlを用いた。酸化チタンナノ粒子の洗浄は、TBT06緩衝液1mlで1回、TBT10緩衝液(50mM TrisHCl,pH8.0,1.0容量% tween−20含有)1mlで2回、TBT15緩衝液(50mM TrisHCl,pH8.0,1.5容量% tween−20含有)1mlで2回、TBT20緩衝液(50mM TrisHCl,pH8.0,2.0容量% tween−20含有)1mlで1回、水で2回行った。得られたファージが結合した酸化チタンナノ粒子を、上記と同様にE.coli JM109にエレクトロポレーションにより導入し、プラークを形成させ、回収した。そして、上記と同様にして、各プラーク内のファージが提示したペプチドをコードする塩基配列を解読すると共に、全ファージを増幅し、ファージ溶液を得た。
この回収されたファージ溶液を用いて、再度上記ファージパニング工程を行った。このとき酸化チタン結合工程でのファージの最終濃度は1011個/mlであり、酸化チタンナノ粒子の終濃度は0.01mg/mlであった。また、反応溶液としてTBT06緩衝液1mlを用いた。酸化チタンナノ粒子の洗浄は、TBT06緩衝液1mlで2回、TBT10緩衝液1mlで2回、TBT15緩衝液1mlで2回、TBT20緩衝液1mlで2回、水で2回行った。得られたファージが結合した酸化チタンナノ粒子を、上記と同様にE.coli JM109にエレクトロポレーションにより導入し、プラークを形成させ、各プラークからファージDNAをした。
今回得られたTi結合ペプチドの候補配列を表1に示す。4回ファージパニング工程を行った後には、AYPQKFNNNFMS(配列番号3)のアミノ酸配列からなるペプチドを提示したファージは全体の76%(21サンプル中16サンプル)を占めていた。
実施例2:得られた結合ペプチドのTi結合能力の評価
今回のスクリーニングで得られたST1(AYPQKFNNNFMS(配列番号3))と従来知られていたチタン結合ペプチドminTBP1(RKLPDA(配列番号49)、国際公開第2005/010031号、Sano et al.(2005) Langmuir.21,p.3090)を化学合成(SigmaAldrich社カスタムペプチド合成サービス使用)した。そして、チタンセンサーを使った水晶マイクロバランス振動法(QCM)を用いて、各ペプチドのチタンへの結合能力を評価した。
はじめに、洗浄液(98%(w/v)硫酸と30%(w/v)過酸化水素水を3対1で混合した溶液)3μlを、測定用のチタンセンサー上に乗せ5分間放置した後、水で洗い流すことでセンサー表面を洗浄した。この洗浄工程を3回行った。センサーを乾燥させた後、チタンセンサーを本体(Affinix QNμ、Initium社)に取り付け、チタンセンサーにTBT緩衝液(50mM TrisHCl、0.0001容量% tween−20を含む。pH8.0)を適当量滴下し、30分から一時間室温で放置することで、センサーの周波数値を安定させた。周波数値が安定した後、反応溶液量が500μl、終濃度が20μMから42μMとなるように各ペプチドを添加し、周波数の変化を測定した。そして得られた周波数の変化が、以下の数式1の関係に則ると仮定して、解析ソフトAQUA (Initium社)を用いて各ペプチドとチタンの結合速度定数konと解離速度定数koffを求めた。ST1の分子量は1460、minTBP1の分子量は699として計算に用いた。
その結果、ST1とminTBP1のkbosとペプチド濃度の関係は、図1のとおりであった。各ペプチドのkonとkoff、Kd、Kaは、表2のとおりであった。
すなわち、ST1ペプチドはminTBP1よりも10倍以上のチタン結合能力を持つことが分かった。
実施例3:チタン結合ペプチドを提示したカゴ状タンパク質の構築
表3に示すチタン結合ペプチドがC末端に融合されたListeria innocuaの金属内包性タンパク質Dpsを下記の手順によりそれぞれ構築した。
はじめに、L.innocuaのDps遺伝子が搭載されたpET20(K.Iwahori et al.,Chem.lett.,2007,vol.19,p.3105を参照)を鋳型DNAとしてPCRを行った。以下の遺伝子を搭載するベクターを得るために、プライマーとして、以下の各ヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドを組み合わせてPCRを実施した。
Dps−ST1をコードする遺伝子が搭載されたベクター
5’−tttGGATCCGAATTCGAGCTCCGTCG−3’(配列番号50)
5’−tttGGATCCttaCGACATAAAATTATTATTAAACTTCTGAGGATAAGCttctaatggagcttttc−3’(配列番号51)
Dps−Ti1をコードする遺伝子が搭載されたベクター
5’−tttGGATCCGAATTCGAGCTCCGTCG−3’(配列番号52)
5’−tttGGATCCTTAccagccaccgcccagtttatgggtcgggtttttggtgcgctttttacgttctaatggagcttttc−3’ (配列番号53)
Dps−Ti2をコードする遺伝子が搭載されたベクター
5’−tttGGATCCGAATTCGAGCTCCGTCG−3’(配列番号54)
5’−tttGGATCCTTAccagccaccgcctttcaggctgctcggaaagcggcgaatcatgcgcatttctaatggagcttttc−3’(配列番号55)
Dps−Ti3をコードする遺伝子が搭載されたベクター
5’−tttGGATCCGAATTCGAGCTCCGTCG−3’(配列番号56)
5’−tttGGATCCTTAccagccAccgccatgGtgatgaatGtgatcatggcggctcaggcttttttctaatggagcttttc−3’(配列番号57)
Dps−Ti4をコードする遺伝子が搭載されたベクター
5’−tttGGATCCGAATTCGAGCTCCGTCG−3’(配列番号58)
5’−tttGGATCCTTAccagccAccgcctttggtcgcatagcgcggatggctcagatgctgggtttctaatggagcttttc−3’(配列番号59)
Dps−Ti5をコードする遺伝子が搭載されたベクター
5’−tttGGATCCGAATTCGAGCTCCGTCG−3’(配列番号60)
5’−tttGGATCCttaccagccgccgccggtcgggctcgcgctcggctggcggctcgggcggctttctaatggagcttttc−3’(配列番号61)
Dps−Ti731をコードする遺伝子が搭載されたベクター
5’−tttGGATCCGAATTCGAGCTCCGTCG−3’(配列番号62)
5’−tttGGATCCTTAatacgggctcacccaggtcgcttctaatggagcttttc−3’(配列番号63)
Dps−Ti(Si)をコードする遺伝子が搭載されたベクター
5’−tttGGATCCGAATTCGAGCTCCGTCG−3’(配列番号64)
5’−tttGGATCCttaGGTGTTGGTCAGCCACTGTGGCGGCGCGCTCGGATAttctaatggagcttttc−3’(配列番号65)
Dps−Vreulsをコードする遺伝子が搭載されたベクター
5’−tttGGATCCGAATTCGAGCTCCGTCG−3’(配列番号66)
5’−tttGGATCCTTAgctgcccgccatggtaaacggcacAGCcgcgttcagttctaatggagcttttc−3’(配列番号67)
また、N末端に炭素素材結合ペプチドNHBP−1が融合され、C末端にチタン結合ペプチドST1が融合されたDps(CDTS1と呼ぶ)を構築するために、CDT1遺伝子が搭載されたpET20(I.Inoue et al.,Chem Commun 2011,vol.47.p.12649を参照)を鋳型DNAとして以下のヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチドを組み合わせてPCRを実施した。
5’−tttGGATCCGAATTCGAGCTCCGTCG−3’(配列番号68)
5’−tttGGATCCttaCGACATAAAATTATTATTAAACTTCTGAGGATAAGCttctaatggagcttttc−3’(配列番号69)
得られた各PCR産物をWizard SV Gel and PCR Clean−Up System(Promega社、USA)で精製し、制限酵素DpnIとBamHIで消化した。制限酵素で消化されたPCR産物を、T4 DNAリガーゼ(Promega社、USA)を用いてセルフライゲーションさせた。セルフライゲーションされたPCR産物をECOSTM Competent E.coli BL21(DE3)(ニッポンジーン社、日本)に形質転換し、C末端に各チタン結合ペプチドが融合されたDpsをコードする遺伝子が搭載された発現プラスミド(pET20−Dps−ST1、pET20−Dps−Ti1、pET20−Dps−Ti2、pET20−Dps−Ti3、pET20−Dps−Ti4、pET20−Dps−Ti5、pET20−Dps−Ti731、pET20−Dps−Ti(Si)、pET20−Dps−Vreuls、pET20−CDTS1)を保持したBL21(DE3)を構築した。その形質転換株からWizard Plus Minipreps System(Promega社、USA)を使って各ベクターを精製し、搭載された変異Dps遺伝子配列を確認した。SDS−PAGE解析により、Dps−ST1、Dps−Ti2、Dps−Ti3、Dps−Ti4、Dps−Ti5、Dps−Ti731、Dps−Ti(Si)、Dps−Vreuls、CDTS1の発現を確認でき、タンパク質発現用株を得ることができた。一方、Dps−Ti1の発現は確認できなかった。
実施例4:チタン結合ペプチドを提示したカゴ状タンパク質の精製
発現プラスミド(pET20−Dps−ST1、pET20−Dps−Ti2、pET20−Dps−Ti3、pET20−Dps−Ti4、pET20−Dps−Ti5、pET20−Dps−Ti731、pET20−Dps−Ti(Si)、pET20−Dps−Vreuls、pET20−CDTS1)のいずれかを保持したBL21(DE3)を50mLのLB培地(100mg/L アンピシリンを含む)にて37℃で振とう培養した。培養開始24時間後、得られた菌体を遠心分離(6000rpm、5分間)により回収し、50mM TrisHCl緩衝液(pH8.0) 10mLで懸濁した。次に、その懸濁液にDigital Sonifier 450(Branson社、USA)を使い超音波パルス(200W、Duty 45%)を5分間与えることで、菌体を破砕した。その溶液を6000rpmで5分間、遠心分離し、上清画分を回収した。回収された溶液を60℃で20分間加熱し、加熱後は速やかに氷上で冷却した。冷却された溶液を6000rpmで5分間、遠心分離し、再度、上清を回収(約10mL)した。その溶液をディスクフィルター(Millex GP 0.22μm、Millipore社、USA)で粗い粒子を除去し、タンパク質粗抽出液を得た。
続いて、そのタンパク質粗抽出液をそのタンパク質溶液からゲルろ過クロマトグラフィーを用いて、目的タンパク質画分を精製した。すなわち、そのタンパク質粗抽出液を50mM TrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiLoard 26/10 Q−Sepharose High Performanceカラム(GE healthcare社、USA)に注入した。そして、流速4.0ml/分、0mMから500mM NaClを含む50mM TrisHCl緩衝液(pH8.0)で塩濃度勾配をかけることで、分離精製を行い、各蛋白質に相当する画分を回収した。その後、限外ろ過膜(VIVASPIN20、10,000 MWCO PES,Sartorius AG)を用いて濃縮し、タンパク質溶液の溶媒を水あるいは50mM TrisHCl緩衝液(pH8.0)に置換した。溶液中のタンパク質濃度はLowry法により決定した。
また、DpsやC末端にチタン結合ペプチドminTBP1が融合されたDps(Dps−minTBP1と呼ぶ)、N末端に炭素素材結合ペプチドNHBP−1が融合され、C末端にチタン結合ペプチドminTBP1が融合されたDps(CDT1と呼ぶ)やN末端にNHBP1が融合されたDps(NHBP−DpsあるいはCD1と呼ぶ)(I. Inoue et al.,Chem Commun 2011,vol.47.,p.12649を参照)の精製も同様にして行った。
実施例5:チタン析出能力の評価
続いて、各ペプチドのチタン析出能力を評価するために、各ペプチドと融合したDpsのチタン析出能力を評価した。すなわち、変異型Dps(Dps−ST1、Dps−Ti2、Dps−Ti3、Dps−Ti4、Dps−Ti5、Dps−Ti731、Dps−Ti(Si)、Dps−Vreuls、CDT1)を各々終濃度0.01mg/ml、Titanium(IV) bis(ammonium lactato)dihydroxide(SigmaAldrich社、388165)を終濃度が3.0重量%となるように加えた50mMリン酸緩衝液(pH6.0)に加え、室温で6時間放置した後、660nmの吸光を測定し、タンパク質のみを含まない溶液をバックグラウンドとした。反応容量は0.2mlとして実験を行った。
その結果、ST1が融合されたDpsにおいて最も高い吸光度を観察でき、最も多くのチタン化合物が析出していた。また、既知のペプチドでは、minTBP1、Ti4およびTi5が融合されたDpsにおいても顕著な吸光度の向上が確認でき、それらのペプチドにはチタン析出能力があることが示唆された(図2)。そして、ST1が融合されたDpsでのチタン析出は、既知のペプチドが融合されたDpsの最低でも1.5倍であることが示唆された。
続いて、変異型Dps(Dps−ST1、CDT1、Dps−Ti5)について、チタン析出の経時変化を測定し、各タンパク質のチタン析出能力を評価した。すなわち、変異Dpsを各々終濃度0.01mg/ml、Titanium(IV) bis(ammonium lactato)dihydroxide(SigmaAldrich社、388165)を終濃度3.0重量%となるように加えた50mMリン酸緩衝液(pH6.0)に加え、室温放置し、一時間ごとに660nmの吸光を測定した。そして得られた吸光度の変化から、数式2に則り、チタン析出活性を求めた。
その結果、今回測定されたすべての変異型Dps(Dps−ST1、CDT1、Dps−Ti5)において時間と共に吸光度が上昇する様子を確認できた(図3)。そして、Dps−ST1は、他のペプチドを提示したDpsと比較して、約2倍チタン析出活性が高いことが示唆された(図4)。
実施例6:チタン結合能力の評価
変異型Dps(Dps−ST1、Dps−minTBP1、Dps−Ti5、Dps、CDTS1、CDT1、CD1)を用いてST1のチタン結合能力を、チタンセンサーを使った水晶マイクロバランス振動法(QCM)により評価した。
はじめに、洗浄液(98%(w/v)硫酸と30%(w/v)過酸化水素水を3対1で混合した溶液)3μlを、測定用のチタンセンサー上に乗せ5分間放置した後、水で洗い流すことでセンサー表面を洗浄した。この洗浄工程を3回行った。センサーを乾燥させた後、チタンセンサーを本体(Affinix QNμ、Initium社)に取り付け、チタンセンサーにTBT緩衝液(50mM TrisHCl、0.001容量% tween−20を含む。pH8.0)を適当量滴下し、30分から一時間室温で放置することで、センサーの周波数値を安定させた。周波数値が安定した後、反応溶液量が500μl、終濃度が20nMから800nMとなるように各タンパク質を添加し、周波数の変化を測定した。そして得られた周波数の変化が、以下の関係に則ると仮定して、解析ソフトAQUA (Initium社)を用いて各タンパク質とチタンの結合速度定数konと解離速度定数koffを求めた。Dps−ST1の分子量は233kDa、Dps−minTBP1の分子量は226kDa、Dps−Ti5の分子量は235kDa、Dpsの分子量は212kDa、CDTS1の分子量は254kDa、CDT1の分子量は245kDa、CD1の分子量は234kDaとして計算した。
その結果、Dps−ST1とDps−minTBP1、Dpsのチタンセンサーに結合する様子は、図5のように経時的に検出できた。そして、各タンパク質の結合定数を図6に示す。
すなわち、ST1が融合されたDpsはチタン結合ペプチドを持たないDpsと比較して17倍から37倍、minTBP1が融合されたDpsと比較しても約5倍から7倍以上の強いチタン結合能力を持つことが分かった。
実施例7:CNTとCDTS1とのナノ複合体形成
CNTとCDTS1とのナノ複合体を形成するために、CNTとCDTS1とを含むリン酸カリウム緩衝液[50mM リン酸カリウム(pH6.0)、0.2mg/mLのCDTS1、及び0.1mg/mL CNT(Sigma社、519308, carbon nanotube, single walled)を各々終濃度で含む]を調製した。CDTS1を含むリン酸カリウム緩衝液に、Digital Sonifier 450(Branson社、USA)を用いて、氷上で、3秒間隔で1秒間の超音波パルス(200W、Duty 20%)を合計5分間加えた。超音波処理されたCDTS1−CNT混合溶液を遠心分離(15000rpm、5分間)し、沈殿を回収し、多数のCDTS1がCNTに結合したCNT/CDTS1複合体を得た。
結果を図7に示す。図7は、CNHBP−Dps−ST1(CDTS1)とCNTとの複合体の透過型電子顕微鏡像を示す図である。撮影は、透過型電子顕微鏡(JEM3100−FEF、300kV)にて、複合体を3%リンタングステン酸で染色して行った。結果として、CDTS1とCNTとが複合体を形成していることがわかった。
実施例8:CNT/CDTS1/Ti複合体の調製例
得られたCNT/CDTS1複合体溶液に、終濃度2.5wt%となるようにチタン前駆体Titanium(IV) bis(ammonium lactato)dihydroxide(SIGMA社、388165)を加え、室温(24℃)で放置した。そして、反応を開始して6時間後のサンプルを遠心分離(15000rpm、5分間)して、沈殿を回収した。得られた沈殿を水で3回洗浄し、最後に水に懸濁した。得られたサンプルを、3%リンタングステン酸で染色し、透過型電子顕微鏡(JEM3100−FEF、300kV)にて、電子顕微鏡解析した。
電子顕微鏡解析の結果を図8に示す。図8は、CNHBP−Dps−ST1(CDTS1)とCNTとの複合体にチタン前駆体を添加して得られた黒い析出物の透過型電子顕微鏡像を示す図である。すなわち、繊維状のCNTの周囲にカゴ状タンパク質CDTS1が吸着し、全体を黒いマトリックスが覆っているロット状の構造物を観察することができた。
この得られたロット状構造物を、透過型電子顕微鏡(JEM3100−FEF、300kV)を用いて、電子エネルギー損失分光法(EELS)マッピングによる組成分析を行った。サンプルは無染色で解析を行った。結果を図9に示す。図9において、TEMは通常の電子顕微鏡像を示す。「Carbon」は炭素原子、「Titanium」はチタン原子、「Iron」は鉄原子、がそれぞれ確認された位置を示す。「Carbon」および「Titanium」の像ではTEM像で観察されたロッド状の構造物の位置が白く観察され、各原子が存在することを確認できた。一方、「Iron」では、像の全面が均一に観察され、ロッド状構造物に鉄原子は含有されていないことが確認できた。
よって、チタン前駆体が添加されたCNT/CDTS1ナノ複合体溶液を観察したときに見られるロッド状の構造物には少なくとも、炭素原子とチタン原子が含まれていることが分かった。この結果は、CNTと結合したCDTS1のチタン析出活性を利用することで、CNT/CDTS1の複合体(ナノ複合体)の周囲をチタンで被膜し、CNT/CDTS1/Tiの複合体(ナノ複合体)が合成できることがわかった。
実施例9:変異型チタン結合ペプチドを提示したカゴ状タンパク質の構築
ST1(AYPQKFNNNFMS(配列番号3))のチタン結合能力に必要なアミノ酸を特定すべく、ST1ペプチド配列内のアミノ酸をそれぞれアラニン(A)あるいはグリシン(G)に置き換えられた配列を持つペプチドがC末端に融合されたListeria innocuaの金属内包性タンパク質Dpsを下記の手順によりそれぞれ構築した。各変異DpsがC末端に持つペプチド配列と構築に用いた特異的プライマーを表4に示す。
はじめに、Dps−ST1遺伝子が搭載されたpET20を鋳型DNAとして、5’−tttGGATCCGAATTCGAGCTCCGTCG−3’(配列番号78)と表4に示す各ヌクレオチド配列からなる特異的プライマーオリゴヌクレオチドを組み合わせてPCRを実施した。
得られたPCR産物をWizard SV Gel and PCR Clean−Up System(Promega社、USA)で精製し、制限酵素DpnIとBamHIで消化した。制限酵素で消化されたPCR産物を、T4 DNAリガーゼ(Promega社、USA)を用いてセルフライゲーションさせた。セルフライゲーションされたPCR産物をECOSTM Competent E.coli BL21(DE3)(ニッポンジーン社、日本)に形質転換し、C末端に各チタン結合ペプチドが融合されたDpsをコードする遺伝子が搭載された発現プラスミド(pET20−Dps−ST1−1G、pET20−Dps−ST1−2A、pET20−Dps−ST1−3A、pET20−Dps−ST1−4A、pET20−Dps−ST1−5A、pET20−Dps−ST1−6A、pET20−Dps−ST1−7A、pET20−Dps−ST1−8G、pET20−Dps−ST1−9A、pET20−Dps−ST1−10A、pET20−Dps−ST1−11A、pET20−Dps−ST1−12A)を保持したBL21(DE3)を構築した。その形質転換株からWizard Plus Minipreps System(Promega社、USA)を使って各ベクターを精製し、搭載された変異Dps遺伝子配列を確認した。SDS−PAGE解析により、Dps−ST1−1G、Dps−ST1−2A、Dps−ST1−3A、Dps−ST1−4A、Dps−ST1−5A、Dps−ST1−6A、Dps−ST1−7A、Dps−ST1−8G、Dps−ST1−9A、Dps−ST1−10A、Dps−ST1−11A、Dps−ST1−12Asの発現を確認でき、タンパク質発現用株を得ることができた。得られたタンパク質はDps−ST1やCDTS1と同様にして精製し、濃縮後、濃度決定された。
実施例10:チタン結合能力の評価
先に構築された変異型Dps−ST1(ST1:AYPQKFNNNFMS(配列番号3))ペプチド配列内のアミノ酸がそれぞれ1つずつ、アラニン(A)あるいはグリシン(G)に置き換えられた配列を持つペプチドがC末端に融合されたDps)のチタンへの結合能力を、チタンセンサーを使った水晶マイクロバランス振動法(QCM)により評価した。
はじめに、ピランハ液(濃硫酸と30%過酸化水素水を3対1で混合した溶液)で洗浄されたチタンセンサーを本体(Affinix QNμ、イニシアム社)に取り付け、チタンセンサーにトリス緩衝液(50mM TrisHCl,0.001vol% tween−20を含む。pH8.0)を適当量滴下し、30分から1時間室温で放置することで、センサーの周波数値を安定させた。周波数値が安定した後、反応溶液量が500 μl、終濃度が40−80nMとなるように各タンパク質を添加し、周波数の変化を測定した。そして各タンパク質を用いて得られた周波数の変化をチタン結合能力のないDpsの周波数変化を1として比較した。
その結果、ST1ペプチドのアミノ酸配列(AYPQKFNNNFMS(配列番号3))のうち、1番目のアラニン(A)、3番目のプロリン(P)、4番目のグルタミン(Q)、5番目のリジン(K)そして12番目のセリン(S)がそれぞれ別のアミノ酸に置き換えられたペプチドはチタンへの結合力をほぼ失うことが分かった(図10)。そして、2番目のチロシン(Y)、6番目のフェニルアラニン(F)、10番目のフェニルアラニン(F)、11番目のメチオニン(M)を別のアミノ酸に置き換えた場合では、チタンへの結合力が低下することが分かった。そして、7番目から9番目のアスパラギン(N)の置換はチタンへの結合力に影響しないことが分かった。
この結果は、ST1ペプチドの1番目のアラニン(A)、3番目のプロリン(P)、4番目のグルタミン(Q)、5番目のリジン(K)そして12番目のセリン(S)がチタン結合機能に特に重要であることを示唆する。7から9番目のアスパラギンの置き換えが変化しなかった理由は、アスパラギンが3つ並んでいたため、そのうちの一つが欠けたからといってペプチドの電荷や機能には大きな影響がなかったと考えられた。

Claims (16)

  1. 以下からなる群より選ばれるペプチド:
    1)AYPQKFNNNFMS(配列番号3)のアミノ酸配列を含むペプチド;
    2)AAPQKFNNNFMS(配列番号4)のアミノ酸配列を含むペプチド;
    3)AYPQKANNNFMS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むペプチド;
    4)AYPQKFANNFMS(配列番号6)のアミノ酸配列を含むペプチド;
    5)AYPQKFNGNFMS(配列番号7)のアミノ酸配列を含むペプチド;
    6)AYPQKFNNAFMS(配列番号8)のアミノ酸配列を含むペプチド;
    7)AYPQKFNNNAMS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むペプチド;
    8)AYPQKFNNNFAS(配列番号10)のアミノ酸配列を含むペプチド;
    9)ATGSRMDHNRYI(配列番号11)のアミノ酸配列を含むペプチド;
    10)DLLAMHWNTSRQ(配列番号12)のアミノ酸配列を含むペプチド;
    11)IQAATVPHVTES(配列番号13)のアミノ酸配列を含むペプチド;
    12)KVKHPSSWAYYA(配列番号14)のアミノ酸配列を含むペプチド;および
    13)SNSIDKVNRPIN(配列番号15)のアミノ酸配列を含むペプチド。
  2. 請求項1記載のペプチドとタンパク質との融合タンパク質。
  3. 内腔を有する多量体を形成し得るポリペプチド部分と、標的物質に結合し得るペプチド部分と、請求項1記載のペプチドの部分とを含む、融合タンパク質。
  4. 内腔を有する多量体を形成し得るポリペプチド部分がDpsである、請求項3記載の融合タンパク質。
  5. 標的物質が、金属素材、シリコン素材または炭素素材である、請求項3または4記載の融合タンパク質。
  6. 炭素素材がカーボンナノ素材である、請求項5記載の融合タンパク質。
  7. 融合タンパク質の多量体であって、
    内腔を有し、
    融合タンパク質が、内腔を有する多量体を形成し得るポリペプチド部分と、標的物質に結合し得るペプチド部分と、請求項1記載のペプチドの部分とを含む、多量体。
  8. 複合体であって、
    請求項7記載の多量体と、標的物質と、チタンとを含み、
    標的物質が、前記融合タンパク質中の標的物質に結合し得るペプチド部分に結合し、かつチタンが、前記融合タンパク質中のチタン金属またはチタン化合物に対する結合活性を有するペプチドの部分に結合している、複合体。
  9. 請求項2〜6のいずれか一項記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  10. 請求項9記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
  11. 請求項10記載の発現ベクターを含む形質転換体。
  12. 形質転換体がエシェリヒア・コリである、請求項11記載の形質転換体。
  13. 以下を含む、標的素材に結合し得るペプチドのスクリーニング方法:
    1)標的素材をファージライブラリに接触させて、ファージ結合標的素材を得ること;
    2)ファージ結合標的素材を回収すること;
    3)ファージ結合標的素材および宿主を用いて、エレクトロポレーション法により、ファージ導入宿主を調製すること;
    4)ファージ導入宿主において、ファージを増幅させること;および
    5)増幅したファージが発現する、標的素材に結合し得るペプチドを同定すること。
  14. 回収したファージ結合標的素材の洗浄後に、ファージ導入宿主を調製する、請求項13記載の方法。
  15. 前記1)〜4)のサイクルを複数回繰り返した後に、前記5)の工程を行う、請求項13または14記載の方法。
  16. 標的素材がナノ素材である、請求項13〜15のいずれか一項記載の方法。
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