JPWO2019150784A1 - 金属構造物腐食評価システム - Google Patents

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Abstract

金属構造物腐食評価システムは、コンクリートの内部の金属構造物に電気的に接続された測定端子と、コンクリートの内部に埋設された参照電極と、測定端子と参照電極との間の電位差を測定して前記電位差を表す測定データを出力する電位差計と、測定データに関して加重移動平均を用いて演算処理を実施する補償部と、演算処理が実施された測定データを解析して金属構造物の腐食状況を評価する解析及び評価部と、を備える。

Description

本発明は、金属構造物腐食評価システムに関し、特に、迷走電流による金属構造物の腐食状況を評価する金属構造物腐食評価システムに適用して好適なものである。
直流電気鉄道では、電車を運行するために架線を介して電車へ電流を通電することにより動力を供給している。電車へ通電された電流は、その後レールを介して電力の供給元である変電所へと戻される。この時、変電所へ戻される電流がレールから大地に漏れ出して、近隣の地中に埋設されたコンクリート構造物中の鉄筋や金属管等の金属構造物を流れる現象が発生する。このレール以外の大地、鉄筋等を流れる電流は迷走電流と呼ばれる。この迷走電流が電蝕と呼ばれる金属の腐食を発生させることが知られており、これにより埋設済の金属管に穴が開いたり、鉄筋コンクリート等の構造物の強度を低下させたりするおそれがある。
迷走電流によるレール近傍の構造物への影響を評価するための方法としては、レール電位を測定し、そのレール電位から迷走電流の大きさに関してモデルを用いて算出することにより構造物の鉄筋の腐食状況を推定する方法や構造物の鉄筋の状態を直接観測して腐食状況を評価する方法が知られている。また、その他にも、迷走電流による腐食を防止するための対策を実施し、その効果を評価する場合もある(特許文献1参照)。
また、従来の手法では、コンクリート構造物中の鉄筋の電位を測定してその大小を評価することで、直流電気鉄道による迷走電流が構造物に対して腐食を発生させるおそれがあるか否かを判断している(非特許文献1参照)。
特開平04−095868号公報
IEC 62128・2:2013
上述した従来の手法では、コンクリート中の鉄筋の電位を測定する必要があるが、この電位は、mVオーダーと微弱なものである。大電流が流れる電車線路近傍では大きなノイズが発生するおそれがあり、外乱の影響を受けやすい。そのため、測定データはノイズの影響を受ける可能性があり、高い信頼性で評価を実施することが困難であった。
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、外乱の影響を軽減しつつ迷走電流による金属構造物の腐食状況を高い信頼性で評価可能な金属構造物腐食評価システムを提案しようとするものである。
かかる課題を解決するため、本発明においては、コンクリートの内部の金属構造物に電気的に接続された測定端子と、前記コンクリートの内部に埋設された参照電極と、前記測定端子と前記参照電極との間の電位差を測定して前記電位差を表す測定データを出力する電位差計と、前記測定データに関して加重移動平均を用いて演算処理を実施する補償部と、前記演算処理が実施された前記測定データを解析して前記金属構造物の腐食状況を評価する解析及び評価部と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、外乱の影響を軽減しつつ迷走電流による金属構造物の腐食状況を高い信頼性で評価することができる。
第1の実施の形態に係る金属構造物腐食評価システムの概略構成例を示すブロック図である。 第1の実施の形態における演算処理装置による加重移動平均を用いたノイズ補償を示すフローチャートである。 第2の実施の形態における金属構造物腐食評価システムの概略構成例を示すブロック図である。
以下、図面について、本発明の一実施の形態について詳述する。
(1)第1の実施の形態
図1は、第1の実施の形態に係る金属構造物腐食評価システム1の概要構成例を示すブロック図である。この金属構造物腐食評価システム1は、少なくとも1つの測定ユニット、データ通信部14及び演算処理装置11を備えている。
測定ユニットは、金属構造物の腐食について評価するための電位測定の対象の近辺に設置される。この測定ユニットは、1つの地点で、後述するように電位測定を実施することもあれば、複数の地点(例えば数百箇所)で電位測定を実施することもある。本実施の形態では、一例として3つの測定ユニット200A,200B,200Cを設けることを例示する。
3つの測定ユニット200A,200B,200Cは、それぞれ無線によってデータ通信を行うデータ通信部14を介して演算処理装置11に接続されている。なお、このデータ通信部14は、優先によってデータ通信を行っても良く、演算処理装置11は、いわゆるSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)で代用しても良い。これら3つの測定ユニット200A,200B,200Cは、3つのデータ通信部14と同様、互いにほぼ同様な構成であるため、以下では、主として測定ユニット200Aを例示して説明する。本実施の形態では、例えば、地中に埋設されているコンクリート101の内部に金属構造物として鉄筋102が存在しているものとする。
測定ユニット200Aは、測定端子21、参照電極22、電位差計23、電線24及びデータ送信器13を備えている。測定端子21は、鉄筋102に設けられている。参照電極22は、鉄筋102近傍のコンクリート101の内部に設けられている。
電位差計23は、コンクリート101中に埋設された参照電極22と、鉄筋102に接続された測定端子21との間の電位差を測定する。データ送信器13は、測定された電位差に関するデータをデータ通信部14を介して演算処理装置11に対して送信する。
演算処理装置11は、データ受信・保存部31、ノイズ補償部32及び解析及び評価部33を備えている。データ受信・保存部31は、各測定ユニット200A〜200Cから各々送信される電位差に関するデータ(以下「測定データ」という)を受信し、保存する。なお、以下の説明において電位シフトとは、ある同一地点における時間ごとに計測された電位差を示している。
ノイズ補償部32は、この保存した測定データに対して加重移動平均を用いたノイズ補償に関する演算処理を実施し、例えばノイズのような外乱の影響を軽減した測定データを得ることができる。加重移動平均は、個々の測定データに対して異なる重みづけをして平均を算出する手法であり、新しい測定データに対しては過去の測定データよりも大きな重み付けを実施する。
このようにノイズ補償部32によってノイズ補償を実施するのは、例えば、測定ユニット200Aなどがほこりの多い場所に配置されているか否かに応じて、上記測定データに基づく迷走電流の流れやすさが変わったり、例えば、一部の測定ユニット200Bが海の近くに配置されており迷走電流の流れやすさが変わったり、昼夜で電車の通行量に応じて迷走電流の流れやすさが変わったり、季節に応じて雨期か乾期かに応じて迷走電流の流れやすさが変わったりすることに対応するためである。
解析及び評価部33は、このノイズ補償済の測定データを基にデータ解析を実施し、迷走電流による金属構造物としての鉄筋102の腐食について評価する。なお、IEC62128−2:2013では、最も交通量が多い時間帯における鉄筋102の電位シフトが+200mVを超えなければ、防食されていない金属構造物でも問題がないとされている。
図2は、加重移動平均を用いたノイズ補償演算処理の一例を示すフローチャートである。演算処理装置11では、データ受信・保存部31が、各測定ユニット200A、200B,200Cから受信した測定データを保存すると(ステップS1)、ノイズ補償部32が、その測定データから重みを算出する(ステップS2)。
このように算出された重みデータは蓄積・更新される(ステップS3)。ノイズ補償部32は、その重みデータを用いて、測定済の測定データに対して加重移動平均を実施し(ステップS4)、このように算出された加重移動平均が実施された測定データ(「加重移動平均データ」ともいう)を蓄積し、更新する(ステップS5)。
解析及び評価部33は、このように算出された加重移動平均が実施された測定データ(「加重移動平均データ」ともいう)を解析し、例えば昼夜のような時間ごとの電位差に関する測定データ同士の電位差である電位シフトを求め、金属構造物の一例として鉄筋102の腐食状況を評価し(ステップS6)、その評価結果を図示しない表示部に視覚的に出力する(ステップS7)。
以上のように本実施の形態によれば、測定ユニット200A〜200Cで測定された測定データが多くのノイズ成分を含んでいても、演算処理装置11の加重移動平均を用いてノイズ補償演算処理を実施した外乱の影響を軽減したデータを基にデータ解析・評価を実施できるため、より信頼性の高い金属構造物腐食評価システム1を提供することができる。
(2)第2の実施の形態
第2の実施の形態に係る金属構造物腐食評価システムは、第1の実施の形態に係る金属構造物腐食評価システム1とほぼ同様の構成であり同様の動作であるため、同様の構成及び動作については同一の符号を用いて説明を省略し、以下両者の相違点を中心として説明する。
図3は、第2の実施の形態に係る金属構造物腐食評価システム1Aの概要構成例を示すブロック図である。金属構造物腐食評価システム1Aは、測定端子21、参照電極22、電位差計23、電線24及びデータ送信器13を備えている点で、第1の実施の形態と同様であるが、各測定ユニット200A〜200Cに、ノイズ補償部32を含む分散型演算処理装置12が設けられている点が異なっている。
なお、ここで、第2の実施の形態において演算処理装置12を「分散型」と表現しているのは、第1の実施の形態においては、各測定ユニット200A〜200Cからの測定データを演算処理装置11において1つのノイズ補償部32が集中的に演算処理を実施するのに対して、第2の実施の形態では、各測定ユニット200A〜200Cにノイズ補償部32が分散して配置されているためである。
以上のような事情から、第2の実施の形態では、演算処理装置11にはノイズ補償部32を搭載しなくても良い。このようにすると、演算処理装置11の負担を軽減し、データ受信・保存部31及び解析及び評価部33における処理負担を軽減し、より多くの測位ユニットを用いて金属構造物の腐食状況を把握することができる。
この金属構造物腐食評価システム1Aでは、分散型演算処理装置12が、電位差計23にて測定された測定端子21の電位を表す電位データについて加重移動平均を用いたノイズ補償演算処理を実施し、外乱の影響を軽減した電位データに変換する。
データ送信器13は、このように変換後の電位データをデータ通信部14を介して演算処理装置11に送信する。なお、前述したように、この演算処理装置11はいわゆるSCADAで代用しても良いことは云うまでもない。
演算処理装置11は、各測定ユニット200A〜200Cから送信された変換後の電位データを受信、保存し、この変換後の電位データを解析することで、迷走電流による金属構造物の一例としての鉄筋102の腐食状況について評価する。
以上のような第2の実施の形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる一方、第1の実施形態と比較した場合、データの受信・保存、解析及び評価を実施する演算処理装置11(またはSCADA)の負荷を軽減することができるため、比較的低能力の安価な構成を採用可能である一方、小型化を実現することができるばかりでなく、より多数の測定ユニット(上記測定ユニット200Aなどに相当)を用いて詳細かつ正確に金属構造物の腐食状況について評価することができるようになる。
(3)その他の実施形態
上記実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。例えば、上記実施形態では、各種プログラムの処理をシーケンシャルに説明したが、特にこれにこだわるものではない。従って、処理結果に矛盾が生じない限り、処理の順序を入れ替え又は並行動作するように構成しても良い。
本発明は、迷走電流による金属構造物の腐食状況を評価する金属構造物腐食評価システムに広く適用することができる。
1,1A……金属構造物腐食評価システム、11……演算処理装置、12……分散型演算処理装置、13……データ送信器、14……データ通信部、21……測定端子、22……参照電極、23……電位差計、24……電線、101……コンクリート、102……鉄筋、200A〜200C……測定ユニット。

Claims (3)

  1. コンクリートの内部の金属構造物に電気的に接続された測定端子と、
    前記コンクリートの内部に埋設された参照電極と、
    前記測定端子と前記参照電極との間の電位差を測定して前記電位差を表す測定データを出力する電位差計と、
    前記測定データに関して加重移動平均を用いて演算処理を実施する補償部と、
    前記演算処理が実施された前記測定データを解析して前記金属構造物の腐食状況を評価する解析及び評価部と、
    を備えることを特徴とする金属構造物腐食評価システム。
  2. 前記測定端子と、前記参照電極と、前記電位差計と、前記測定データを送信するためのデータ通信部と、を含む少なくとも1つの測定ユニットと、
    前記データ通信部を介して受け取った前記測定データに関して加重移動平均を用いて演算処理を実施する前記補償部と、前記解析及び評価部と、を含む演算処理装置と、
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の金属構造物腐食評価システム。
  3. 前記測定端子と、前記参照電極と、前記電位差計と、前記測定データに関して加重移動平均を用いて演算処理を実施する前記補償部と、前記演算処理が実施済の前記測定データを送信するためのデータ通信部と、を含む少なくとも1つの測定ユニットと、
    前記データ通信部を介して受け取った前記演算処理が実施済の前記測定データを解析して前記金属構造物の腐食状況を評価する解析及び補償部手段と、を含む演算処理装置と、
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の金属構造物腐食評価システム。
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