JPWO2019093340A1 - ナイーブ型多能性幹細胞からの原始内胚葉誘導方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、ヒトのES細胞やiPS細胞はマウスの多能性幹細胞に比べ、発生が進んだプライム型に分類され、エピブラストや原始内胚葉への分化は困難であった。
そこで、本発明者の一人である高島は、ヒト多能性幹細胞にNANOGとKLF2の2つの遺伝子を発現させることで、基底状態と同じ状態までヒト多能性幹細胞をリセットした、ナイーブ型多能性幹細胞を得ることに成功し(非特許文献1)、これを用いた原始内胚葉の誘導及び初期発生の解析を行っている(非特許文献2)。
[1]原始内胚葉をインビトロで多能性幹細胞から調製する方法であって、
ナイーブ型多能性幹細胞を、BMPおよびFGF4を含む培地で培養して原始内胚葉分化を誘導する工程を含む方法。
[2]前記培地はさらにPDGF(Platelet-Derived Growth Factor)、IL-6(Interleukine-6)、TGF(Transforming Growth Factor)β阻害剤、Wntシグナル阻害剤およびレチノイン酸から選択される1種類以上を含む、[1]に記載の原始内胚葉の調製方法。
[3]前記培地は、BMP、FGF4、TGFβ阻害剤およびWntシグナル阻害剤を含む、[1]に記載の原始内胚葉の調製方法。
[4]BMPがBMP4、BMP2またはBMP6であり、PDGFがPDGF-AAであり、TGFβ阻害剤がA83-01であり、Wntシグナル阻害剤がXAV939である、[1]〜[3]のいずれかに記載の原始内胚葉の調製方法。
[5]さらに、原始内胚葉細胞をCEACAM1またはANPEPを用いて純化する工程を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の原始内胚葉の調製方法。
[6]多能性幹細胞が人工多能性幹細胞である、[1]〜[5]のいずれかに記載の原始内胚葉の調製方法。
[7]多能性幹細胞がヒト多能性幹細胞である、[1]〜[6]のいずれかに記載の原始内胚葉の調製方法。
[8][1]〜[7]のいずれかに記載の方法で原始内胚葉を調製する工程、および、得られた原始内胚葉をプライム型多能性幹細胞と共培養してプライム型多能性幹細胞を中内胚葉まで分化させる工程を含む、中内胚葉の調製方法。
[9][8]に記載の方法で中内胚葉を調製する工程、および、さらに、得られた中内胚葉を培養して心筋前駆細胞および/または膵前駆細胞まで分化させる工程を含む、心筋前駆細胞および/または膵前駆細胞の調製方法。
[10]原始内胚葉を提供する工程、および、当該原始内胚葉をプライム型多能性幹細胞と共培養してプライム型多能性幹細胞を中内胚葉まで分化させる工程を含む、中内胚葉の調製方法。
[11][1]〜[7]のいずれかに記載の方法で調製された原始内胚葉細胞。
[12]原始内胚葉細胞を含む細胞集団から原始内胚葉細胞を分離する方法であって、CEACAM1またはANPEPを用いて原始内胚葉細胞を選別する工程を含む、方法。
[13]原始内胚葉細胞を含む細胞集団において原始内胚葉細胞を検出する方法であって、CEACAM1またはANPEPを用いて原始内胚葉細胞を検出する工程を含む、方法。
[14]CEACAM1またはANPEPに特異的に結合する分子を含む、原始内胚葉細胞検出用試薬。
[15]BMPおよびFGF4を含むナイーブ型多能性幹細胞用培地。
[16]さらに、PDGF、IL-6、TGFβ阻害剤、Wntシグナル阻害剤およびレチノイン酸から選択される1種類以上を含む、[15]に記載のナイーブ型多能性幹細胞用培地。
[17]BMP、FGF4、TGFβ阻害剤およびWntシグナル阻害剤を含む、[15]に記載のナイーブ型多能性幹細胞用培地。
[18]BMPがBMP4、BMP2またはBMP6であり、PDGFがPDGF-AAであり、TGFβ阻害剤がA83-01であり、Wntシグナル阻害剤がXAV939である、[15]〜[17]のいずれかに記載のナイーブ型多能性幹細胞用培地。
本発明の原始内胚葉をインビトロで多能性幹細胞から調製する方法は、
ナイーブ型多能性幹細胞を、
BMP(Bone morphogenetic protein)およびFGF4(Fibroblast growth factor 4)
を含む培地で培養して原始内胚葉分化を誘導する工程、を含む。
培地は、BMPとFGF4に加えて、PDGF、IL-6、TGFβ阻害剤、Wntシグナル阻害剤およびレチノイン酸から選択される1種類以上(好ましくは2種類以上、より好ましくは3種類以上、さらに好ましくは4種類以上、特に好ましくは5種類全て)を含むことが好ましい。
より好ましい態様において、培地は、BMPとFGF4に加えて、TGFβ阻害剤およびWntシグナル阻害剤を含む。
本発明において多能性幹細胞とは、生体に存在する多くの細胞に分化可能である多能性を有し、かつ、増殖能をも併せもつ幹細胞であり、原始内胚葉に誘導される任意の細胞が包含される。多能性幹細胞には、特に限定されないが、例えば、胚性幹(ES)細胞、人工多能性幹(iPS)細胞、核移植により得られるクローン胚由来の胚性幹(ntES)細胞、精子幹細胞(「GS細胞」)、胚性生殖細胞(「EG細胞」)、培養線維芽細胞や骨髄幹細胞由来の多能性細胞(Muse細胞)などが含まれる。好ましい多能性幹細胞は、iPS細胞およびES細胞である。多能性幹細胞の由来は哺乳動物由来であることが好ましく、霊長類由来であることがより好ましく、ヒト由来であることがさらに好ましい。
ナイーブ(naive)型多能性幹細胞は、着床前胚に類似した性質を持つ多能性幹細胞であるが、具体的には、以下のような特徴を有する(Cytometry Research 27(1):19 〜 24,2017)。
ドーム型のコロニー形態を示し、コロニーの大きさはプライム型より小さい。
マーカーとして、CD75、KLF4およびTFCP2L1の1つ以上を発現する。
ゲノムが脱メチル化されている。
NANOGとKLF2の過剰発現を用いる方法(Takashima et al., Cell 158 : 1254-1269, 2014)
5iLFAコンディションを用いる方法(Theunissen et al., Cell Stem Cell. 2016 Oct 6; 19(4):502-515.)
HDAC(ヒストンデアセチラーゼ)阻害剤を用いる方法(Guo, G. et al. (2017). Development 144(15): 2748-2763.)
また、t2iLGo(Ndiff227[Takara Bio, Cat. Y40002]など、市販のナイーブ型多能性幹細胞調製用培地を用いて、プライム型多能性幹細胞を培養することにより得ることもできる。
プライム(primed)型多能性幹細胞は着床後胚のエピブラストに類似した性質を持つ多能性幹細胞であるが、体細胞に初期化因子を導入して得られる一般的な人工多能性幹細胞やヒトES細胞がこれに該当し、上記のようなナイーブ化処理をされていないものである。
プライム型多能性幹細胞は以下のような特徴を有する。
平坦なコロニー形態を示し、コロニーの大きさはナイーブ型より大きい。
マーカーとして、CD75、KLF4およびTFCP2L1は陰性である。
ゲノムがメチル化されている。
TGFβ阻害剤とは、TGFβの受容体への結合からSMADへと続くシグナル伝達を阻害する物質であり、受容体であるALK(アクチビン受容体様キナーゼ)ファミリーへの結合を阻害する物質、またはALKファミリーによるSMADのリン酸化を阻害する物質が挙げられ、例えば、Lefty-1(NCBI Accession No.として、マウス:NM_010094、ヒト:NM_020997が例示される)、SB431542、SB202190(以上、R.K.Lindemann et al., Mol. Cancer, 2003, 2:20)、SB505124 (GlaxoSmithKline)、SB-525334、GW6604、NPC30345、SD093、SD908、SD208 (Scios)、LY2109761、LY364947、 LY580276 (Lilly Research Laboratories)、A83-01(WO 2009146408) およびこれらの誘導体などが例示される。
本発明で使用されるTGFβ阻害剤は、好ましくは、A83-01である。
培養液に含まれるTGFβ阻害剤の濃度としては、TGFβ阻害剤の種類に応じてTGFβ阻害効果を発揮する濃度を適宜選択することができ、例えば、A83-01を用いる場合、通常0.025〜100μMの範囲内であり、好ましくは0.075〜50μM、より好ましくは0.25〜10μMである。
Wntシグナル阻害剤としては、遺伝子発現や細胞骨格の制御に関与するWntシグナル経路を抑制できるものであれば特に限定されず、具体的には、XAV939(tankyrase阻害剤)、IWP−1、IWP−2、IWP−3、IWP−4、IWR−1、53AH(以上porcupine阻害剤)、KY02111などの低分子化合物及びそれらの誘導体や、IGFBP4、DKK1、Wnt−C59などのタンパク質や、Wnt及びWntシグナル経路を構成する蛋白質の発現又は機能を抑制するアンチセンス核酸、RNA干渉誘導性核酸(例えばsiRNA)、競合ペプチド、アンタゴニストペプチド、阻害抗体、抗体−ScFV断片、ドミナントネガティブ変異体、及びそれらの発現ベクターを挙げることができ、低分子化合物であるWntシグナル阻害剤が好ましく、XAV939やIWP−4を好適に例示することができる。
培養液に含まれるWntシグナル阻害剤の濃度としては、Wntシグナル阻害剤の種類に応じてWntシグナル阻害効果を発揮する濃度を適宜選択することができ、例えばXAV939を用いる場合、通常0.025〜100μMの範囲内であり、好ましくは0.075〜50μM、より好ましくは0.25〜10μMである。
工程(i)で使用されるPDGFは二量体構造を取るタンパク質であることが好ましく、A型モノマーによる二量体(PDGF-AA)、B型モノマーによる二量体(PDGF-BB)、A型モノマーとB型モノマーによる二量体(PDGF-AB)などが例示されるが、PDGF-AAが好ましい。
PDGFは哺乳動物由来であることが好ましく、ヒト由来であることが好ましい。ヒトPDGF-Aとしては、例えば、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のアクセッション番号:NM_002607のアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。PDGFは所望の分化誘導活性を有する限りその断片及び機能的改変体が包含される。PDGFは市販されているものを使用してもよいし、細胞から精製されたタンパク質や遺伝子組み換えで生産されたタンパク質を使用してもよい。培養液に含まれるPDGF二量体の濃度は、0.1ng/mlから100ng/ml、好ましくは、0.5ng/mlから50ng/ml、より好ましくは、5ng/mlから20ng/mlである。
BMPは、BMP2、BMP4およびBMP6から成る群より選択される少なくとも一つのBMPが挙げられるが、好ましくは、BMP4である。BMPは哺乳動物由来であることが好ましく、ヒト由来であることが好ましい。ヒトBMP4としては、例えば、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のアクセッション番号:AAH20546.1のアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。BMPは所望の分化誘導活性を有する限りその断片及び機能的改変体が包含される。BMPは市販されているものを使用してもよいし、細胞から精製されたタンパク質や遺伝子組み換えで生産されたタンパク質を使用してもよい。培養液に含まれるBMPの濃度は、0.1ng/mlから1000ng/ml、好ましくは、1ng/mlから500ng/ml、より好ましくは、10ng/mlから200ng/mlである。
レチノイン酸は、レチノイン酸そのものでもよいし、天然のレチノイン酸が有する分化誘導機能を保持するレチノイン酸誘導体でもよい。レチノイン酸誘導体として、例えば、3−デヒドロレチノイン酸、4−[[(5,6,7,8−tetrahydro−5,5,8,8−tetramethyl−2−naphthalenyl)carbonyl]amino]−Benzoic acid(AM580)(Tamura K,et al.,Cell Differ.Dev.32:17−26(1990))、4−[(1E)−2−(5,6,7,8−tetrahydro−5,5,8,8−tetramethyl−2−naphthalenyl)−1−propen−1−yl]−Benzoic acid(TTNPB)(Strickland S,et al.,Cancer Res.43:5268−5272(1983))、およびTanenaga,K.et al.,Cancer Res.40:914−919(1980)に記載されている化合物、パルミチン酸レチノール、レチノール、レチナール、3−デヒドロレチノール、3−デヒドロレチナール等が挙げられる。
培養液に含まれるレチノイン酸またはその誘導体の濃度は、例えば、1nMから1000nM、好ましくは、5nMから500nM、より好ましくは、10nMから250nMである。
FGF4は哺乳動物由来であることが好ましく、ヒト由来であることが好ましい。ヒトFGF4としては、例えば、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のアクセッション番号:NM_002007のアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。FGF4は所望の分化誘導活性を有する限りその断片及び機能的改変体が包含される。FGF4は市販されているものを使用してもよいし、細胞から精製されたタンパク質や遺伝子組み換えで生産されたタンパク質を使用してもよい。培養液に含まれるFGF4の濃度は、0.1ng/mlから1000ng/ml、好ましくは、1ng/mlから500ng/ml、より好ましくは、10ng/mlから100ng/mlである。
IL−6は哺乳動物由来であることが好ましく、ヒト由来であることが好ましい。ヒトIL−6としては、例えば、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のアクセッション番号:M18403のアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。IL−6は所望の分化誘導活性を有する限りその断片及び機能的改変体が包含される。IL−6は市販されているものを使用してもよいし、細胞から精製されたタンパク質や遺伝子組み換えで生産されたタンパク質を使用してもよい。培養液に含まれるIL−6の濃度は、0.1ng/mlから1000ng/ml、好ましくは、1ng/mlから500ng/ml、より好ましくは、10ng/mlから100ng/mlである。
・t2iLGo
N2B27 + PD0325901(1μM)+CHIR99021(1μM)+LIF+Go6983(2-3μM)
Takashima et al., Cell 158 : 1254-1269, 2014
・5iL/AF
N2B27 +PD0325901(1μM) +CHIR99021(1μM) +SB590885 (0.5μM) +WH-4-023 (1μM) +Y-27632(10μM) +LIF +Activin A
Theunissen, T. W., et al. (2014). Cell Stem Cell 15(4): 471-487.
・tt2iLGo
N2B27 +PD0325901(1μM) +LIF +Go6983(2μM) +XAV939(2μM)
Guo, G., et al. (2017). Development 144(15): 2748-2763.
培地には、血清が含有されていてもよいし、あるいは無血清を使用してもよい。必要に応じて、例えば、アルブミン、インスリン、トランスフェリン、セレン、脂肪酸、微量元素、2-メルカプトエタノール、チオールグリセロール、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類、サイトカインなどの1つ以上の物質も含有し得る。
上記のような培養工程を行うことにより原始内胚葉を得ることができる。
原始内胚葉は、GATA3、GATA4、GATA6、SOX17、FOXA2(Forkhead Box A2)、HNF4A(Hepatocyte Nuclear Factor 4 Alpha)、CER1(Cerberus 1)、OTX2(Orthodenticle Homeobox 2)、 PDGFRA(Platelet Derived Growth Factor Receptor Alpha)、COL4A1(alpha-1 subunit of collagen type IV)、SPARC(Secreted protein acidic and rich in cysteine)などの原始内胚葉マーカーの1種類以上の発現により特徴づけられる。また、これら1種類以上のマーカーに加えて後述のCEACAM1またはANPEPを発現する細胞であることがより好ましい。
選別は上記のような原始内胚葉特異的なマーカーの1種類以上の発現を指標として行うことができる。
原始内胚葉マーカーを用いて原始内胚葉細胞を抽出する際には、各マーカータンパク質が発現していることを指標にしてもよいし、上記各マーカータンパク質をコードする遺伝子が発現(mRNAが発現)していることを指標にしてもよい。
本発明者らによりCEACAM1またはANPEPがナイーブ型多能性幹細胞由来原始内胚葉のマーカーとして好適に使用できることが見出されたため、本発明は、原始内胚葉細胞を含む細胞集団から原始内胚葉細胞を選別(分離)又は検出する方法であって、CEACAM1またはANPEPを用いて原始内胚葉細胞を選別(分離)又は検出する工程を含む、方法を提供する。CEACAM1とANPEPの両方を使用してもよい。
本発明はまた、CEACAM1またはANPEPに特異的に結合する試薬を含む、原始内胚葉細胞の選別または検出のためのキットを提供する。本抽出キットに含まれる検出試薬は、上記したとおりであり、CEACAM1またはANPEPに対する抗体やCEACAM1遺伝子またはANPEP遺伝子にハイブリダイズするポリヌクレオチドなどが挙げられる。本発明における抽出キットは、CEACAM1またはANPEPに特異的に結合する試薬と共に、当該検出試薬の使用方法を記載した指示書を含むこともできる。
本発明はまた、原始内胚葉をプライム型多能性幹細胞と共培養してプライム型多能性幹細胞を中内胚葉まで分化させる工程を含む、中内胚葉の調製方法を提供する。さらには、得られた中内胚葉を培養して心筋前駆培養細胞および/または膵前駆細胞まで分化させる工程を含む、心筋前駆細胞および/または膵前駆細胞の調製方法を提供する。原始内胚葉は上記のような方法で得られたものでもよいし、他の方法、例えばナイーブ型多能性幹細胞にGATA6遺伝子などを強制発現することにより得られるものでもよい。
心筋前駆細胞はマーカー分子であるトロポニンT(TnT)の発現により同定されうる。また、膵前駆細胞マーカー分子であるPDX1の発現により同定されうる。
本発明はまた、BMPおよびFGF4を含む原始内胚葉への分化誘導のためのナイーブ型多能性幹細胞用培地、好ましくはBMPおよびFGF4並びにPDGF、IL-6、TGFβ阻害剤、Wntシグナル阻害剤およびレチノイン酸から選択される1種類以上(好ましくは2種類以上、より好ましくは3種類以上、さらに好ましくは4種類以上、特に好ましくは5種類全て)を含む、原始内胚葉への分化誘導のためのナイーブ型多能性幹細胞用培地を提供する。これらは、各成分が原始内胚葉への分化誘導のために有効な濃度で含まれるよう予め調製された培地でもよいし、使用直前に各成分を添加することで調製して使用されるものでもよい。なお、これらの因子は時期をずらして添加してもよい。例えば、IL-6は誘導開始から48時間後に添加することもできる。したがって、いくつかの因子は別に提供されてもよい。培地(キット)には使用法や調製法を記載した取扱説明書が添付されていてもよい。原始内胚葉への分化誘導のための培地は、ナイーブ型多能性幹細胞の培養に必要な他の成分をさらに含むことができる。
Cell culture
ヒトプライム型 多能性幹細胞(PSC)ライン(H9ES(胚性幹)細胞、H1ES細胞、AdiPS細胞)はConventional condition(F12/KSRと呼ぶ) (Dulbecco’s modified Eagle medium [DMEM/F12; ナカライテスク, Cat.08460-95]、20%[v/v] KSR [Thermo Fisher Scientific, Cat. 10828028]、nonessential amino acids [NEAA; Thermo Fisher Scientific, Cat. 11140-050], 4 ng/ml recombinant human bFGF [bFGF; オリエンタル酵母, Cat. NIB 47079000]、 0.1 mM 2-mercaptoethanol [Sigma-Aldrich, Cat.M3148] )を用い、γ線照射したMEF上で維持した。細胞は5〜7日毎にDissociation Buffer(DB; 0.025% Trypsin [Thermo Fisher Scientific, Cat. 15090-046]、1mg/ml Collagenase IV [Thermo Fisher Scientific, Cat. 17104-019]、20%KSR、1mM CaCl2)を用い、小さなクランプ様に剥離し継代した。
MEF上で培養しているナイーブ型PSCをAccutaseにより剥離させ回収した後に、ゼラチンコートディッシュに播種し、10μM Y-27632(ROCK阻害剤)を加えたt2iLGoで37℃、1〜2時間培養しMEFを取り除いた。その後、各々の誘導培地で再懸濁し、播種と同時に誘導を開始する。
原始内胚葉様細胞および、プライム型PSCはトリプシン/EDTAにより、ナイーブ型PSCはAccutaseにより単一な細胞へと剥離し回収した。その後、1%BSA(Sigma-Aldrich, Cat.A2153)を加えたHBSS(Thermo Fisher Scientific, Cat.14185052)を用いブロッキングを氷上にて30分行った。Biotinylated抗PDGFRA抗体(R&D, Cat.BAF322)、抗CEACAM1+5抗体(abcam, Cat.ab91213)、抗ANPEP抗体(Biolegend, Cat.301703)、Dylight650-抗CD75抗体(novusbio, Cat.NBP2-47890)、BV421-抗CD57抗体(BD, Cat.563896)を各々の組み合わせで加え、氷上にて30分間インキュベートした。洗浄後、Streptavidin-APC(Biolegend, Cat.405207)、Streptavidin-PE(eBioscience, Cat.12-4317-87)、Streptavidin-BV421(Biolegend, Cat.405226)を加え、氷上にて20分間インキュベートした。FACS解析にはBD LSR Fortessa(BD)、sortingにはFACS AriaII(BD)を用いた。また、データ解析にはFlow Jo V10.2 softwareを用いた。
原始内胚葉に誘導し3日目の細胞をPDGFRAあるいはCEACAM1抗体を用いて陽性細胞をフローサイトメトリーで純化した。その後、DMEM+10%FBS培地を用いて、MEF上で培養を継続した。13日目にRNAを抽出し、臓側内胚葉、卵黄嚢細胞に分化したことを確認した。
total RNAはRNeasy kit(Qiagen, Cat.74106)にて抽出し、1000ngのRNAからcDNAをSuperScriptIV(Thermo Fisher Scientific, Cat.18090050)とoligo-dT プライマーを用い合成した。Real-time PCRには、TaqMan Fast Universal Master Mix(Thermo Fisher Scientific, Cat.4364103)とTaqMan probe、または、PowerUP Sybr Green Master Mix(Thermo Fisher Scientific, Cat.A25743)を用い、PCR増幅にはQuantStudio3(Thermo Fisher Scientific)を用いた。Real-time RT-PCR反応後の解析はQuantStudio Design&Analysis Software v1.4.1を用いて行った。
細胞を室温で10分間4% paraformaldehyde(ナカライテスク, Cat.09154-85)により固定した後に、室温で1時間 PBS+0.5% Triton X-100により透過処理を行った。細胞をPBS+1%BSA+0.05% Tween-20(PBS-BT)にて2時間ブロッキングした。一次抗体はPBS-BTで希釈した後に加え、室温で2時間インキュベートした。洗浄後、二次抗体をPBS-BTで1:2000希釈し、室温で2時間インキュベートした。核はDAPI(Sigma-Aldrich, Cat.D9542)を用い染色した。
GATA6過剰発現または化合物により誘導した細胞からPDGFRA陽性細胞をFACS sortingにより回収した。回収した細胞を3×105個/cm2の密度でiMatrix511コートしたスライドガラスに再播種した。翌日、プライム型PSCをDB(コラゲナーゼとトリプシンを混合した細胞剥離液)により小さなクランプ様に剥離し、スライド上に再播種した細胞の上に播種した。プライム型ES細胞培地(AK03, mTeSR1, F12/KSR等)単独あるいは、プライム型ES細胞培地にマトリゲル(5%)を加えた培地で培養した。
ヒトナイーブ型PSCとプライム型PSC由来のPDGFRA陽性細胞は異なる集団である
ヒトナイーブ型PSCを作成するために、ヒトプライム型ES細胞(H9-primed細胞)およびヒトiPS細胞(AdiPS-primed細胞)にEOSベクターを導入したヒトプライム型多能性幹細胞(H9-EOS細胞, AiPS-EOS細胞)にHDAC阻害剤で処理し、t2iLGo培地でヒトナイーブ型PSCを誘導、維持し、リセット細胞を樹立した(H9-naive細胞, AiPS-naive細胞)。
マウスES細胞にGATA6, GATA4, SOX17を過剰発現させると、原始内胚葉(PrE)に誘導でき、XEN細胞を樹立することができる。マウスES細胞にGATA6, GATA4, SOX17を過剰発現すると、マウスPrEが誘導されることが知られている。そこで、H9-naiveとH9-primed細胞株にDOX誘導下にGATA6, GATA4あるいはSOX17を発現するプラスミドを導入した(図1A)。H9-naiveにDOXを加えて、血清中で分化させたところ、いずれの過剰発現でもナイーブ型のドーム状コロニーは平坦になり、分化していった(図1B)。遺伝子発現を確認したところ、GATA6を過剰発現させた細胞株では、ヒトナイーブ型からPrEのマーカーであるGATA4, GATA6, SOX17がday2から発現し、day4にかけ上昇することが分かった(図1C上)。primed型においてもGATA6を過剰発現させると、GATA4, 6, SOX17は発現が誘導された(図1C下)。GATA4を過剰発現した際もGATA6ほどではないが遺伝子の発現が誘導されることが分かった。一方、SOX17を過剰発現した細胞は、ナイーブ型では、GATA4, GATA6, SOX17(Endo)を発現できなかった。Primed型においても、ごくわずかに遺伝子の誘導が認められるだけでGATA6を過剰発現させたほど、発現を誘導できなかった。
分化のシグナルをより明らかに見るために、非血清培地であるSFO3培地あるいはN2B27培地を利用して、誘導を行った。H9-naive-GATA6において、GATA6を過剰発現させ、FGF4を加えて誘導したところ、Day1では約30%の細胞がPDGFRA陽性になり、Day3では80%の細胞がPDGFRA陽性であった(図2A)。PDGFRA陽性細胞をソートし、発現を確認したところ、血清コンディション(GMEM)と非血清コンディション(SFO3)でほぼ同程度にGATA4, SOX17, FOXA2, HNF4A, COL4A1,SPARCといったPrE関連遺伝子を発現していた(図2B)。免疫染色を実施したところ、GATA6の過剰発現によって、GATA4、SOX17が誘導されることが確認された(図2C)。PDGFRA細胞の性質をより深く解析するために、RNAシーケンスを用いた網羅的解析を行った。全遺伝子を用いてPCA解析を行ったところ、H9-naive型多能性幹細胞およびprimed型多能性幹細胞は、PC1で異なり、GATA6を過剰発現させて誘導したPDGFRA陽性細胞(Day1, Day3)はナイーブ型とprimed型で未分化な状態と同様にPC1は異なりPC2が同じ方向に変化した(図2D)。すなわち異なる細胞集団であることが示唆される。図1GからH9-primedから誘導される細胞は、中胚葉系細胞であることが示唆されたことから、中胚葉系遺伝子の発現を見たところ、D1において、初期のprimitive streakに関連する遺伝子が発現しており、中胚葉の細胞へと誘導されることが推測される(図2E)。一方、ナイーブでは、このような中胚葉系の遺伝子は誘導されなかった。H9-naiveより誘導された細胞とヒト胚におけるEpiblastとPrEに関するTop100遺伝子の発現を比較したところ、Day0はepiblastに近く、Day3はPrEに近いことが分かった(図2F)。以上から、ヒトナイーブ型多能性幹細胞から誘導されたPDGFRA陽性細胞はPrEに近い細胞であると考える。
GATA6の過剰発現の結果、ナイーブ型はPrEに分化し、一方primed型では中胚葉系の遺伝子を発現する異なる細胞を誘導したことから、GATA6の直接果たす役割を調べるために、H9-naive-GATA6およびH9-primed-GATA6を用いて、ChIP-seqを行った。GATA6は、実際GATA6、GATA4、SOX17、HNF4A等のPrEに重要とされる遺伝子にbindしていた(図3A)。同時にPDGFRAにもバインドすることが分かった。さらにBMP2, BMP6, IL6ST, FRZBという分泌因子あるいは受容体にバインドしていた(図3B)。これらはChIP-qPCRにおいても、バインドしていることが確認された。
これらのシグナル関連因子の遺伝子発現を誘導後に調べたところ, BMP2, BMP6, FRZBは確かに誘導後のPDGFRAで上昇していた(図3C)。一方、LEFTY, IL6STは、PSCから発現しており、分化誘導後も発現を続けた。またGATA6の過剰発現後、タンパクの活性化を調べたところ、SMAD1/5/8のリン酸化、MAPKのリン酸化、STAT3のリン酸化、SMAD2のリン酸化の抑制が認められた(図3D)。このことからGATA6はPrEの遺伝子群を誘導すると同時に、BMPやPDGFAの分泌を誘導し、一方、FRZBを誘導することでWntシグナルを抑制する可能性が考えられる。
GATA6の過剰発現後の遺伝子発現、ChIPシーケンスの結果から、H9-naive細胞において、BMPの分泌およびSTAT3シグナルの活性化、PDGFRAの誘導、アクチビンシグナルおよびWntシグナルの抑制が認められたことから、GATA6を過剰発現させずに、PDGF-AA、BMP2、IL-6、A83-01、XAV939を加え、PrEが誘導されるかを調べた。また、マウスにおいてPrEの誘導には、FGF4、RAがプラスに働くと報告があることから、上記の因子にFGF4およびRA(レチノイン酸)を加えた7因子を加えて誘導した(図4A)。その結果、ナイーブ型から約28.6%のPDGFRA陽性細胞が誘導された(図4 B, C)。BMP2と同じファミリーにあるBMP4, 6に替えても誘導がみられた(図4B, C)。BMP2, BMP6と比較し、BMP4が最もPDGFRA陽性細胞を誘導するため、BMP4を加え実験を行った。誘導したPDGFRA陽性細胞を純化し、遺伝子発現を確認したところ、GATA4, 6, SOX17, PDGFRA, HNF4A, FOXA2といったPrE関連遺伝子が発現しており、PrEに誘導できたことが確認できた(図4D)。また免疫染色にても、GATA6過剰発現同様にGATA6+GATA4+SOX17+細胞を誘導できることが分かった(図4E)。
H1ナイーブ型PSC, AdiPSにおいても7因子含有培地によって、PDGFRA陽性細胞が誘導され、同様にPrE関連遺伝子を発現しており、他の2株でも誘導できることが分かった。さらにRNAシークエンスを行い網羅的解析を行ったところ、GATA6過剰発現細胞同様に、PrEに関連する遺伝子が誘導されることが分かった。
ナイーブ型PSCをbFGF+ACTIVIN(TGFB)で培養すると約10日程度でプライム型へと移行していく。ナイーブ型PSCでは表面抗原CD75が発現し、プライム型では表面CD57が発現すると報告された。ナイーブ型からPrEへchemical(上記7因子)で誘導したところ、PDGFRA陽性細胞は、ナイーブマーカーであるCD75の発現は、PDGFRA陽性細胞において次第に減少し、プライムマーカーであるCD57は発現しなかった(図5A)。逆に、プライム型にGATA6を過剰発現させPDGFRA陽性細胞を誘導したところ、PDGFRA陽性細胞はCD57+CD75-であった(図5A)。以上から、ナイーブ由来PrEはPDGFRA+CD75+/-CD57-でありプライム由来細胞はPDGFRA+CD75-CD57+として、表面抗原によって分けることに成功した。
H9-naiveおよびH9-primedで誘導されたPDGFRA陽性細胞をソートし、再培養を続けたところ、H9-naiveからは臓側内胚葉(FOXA1, CER1)、卵黄嚢マーカー遺伝子(AFP, VIL1, PDPN, GPC3)を発現するが、H9-primedからはPDPNを除き発現しなかった(図6A)。同様に、7因子で誘導したPDGFRA陽性PrE細胞からも卵黄嚢マーカー遺伝子AFP, VIL1, GPC3, FOXA1, PDPN, DAB2の発現を認めた(なお、7因子で誘導したPDGFRA陽性PrE細胞は、当該7因子を含有する培地で10継代以上維持、培養することができ、維持した細胞は臓側内胚葉・卵黄嚢細胞に関連する遺伝子および胚体外間葉系細胞に関する遺伝子を発現した)。RNAシーケンスで遺伝子発現を確認したところ、ナイーブ型由来PDGFRA陽性PrE細胞は、実際に卵黄嚢マーカーを発現し、H9-naive型からは、PrEを経てVE/YEが誘導できるが、primedからは誘導できない。
ヒトの発生では、bilaminar epiblastの下層にPrEが存在し、bilaminar epiblastがprimitive streakを形成し、中胚葉細胞へと分化していく。この際、PrEが重要な役割を果たしていると考えられている。誘導したPrE細胞がこのような能力を示すかをPSCと共培養し、観察した。24時間後には、PSCはT陽性細胞になり、48時間後にはT陽性細胞が、PrEに向かって遊走した (図6B)。このことは、PrEがプライム型PSCを中内胚葉に誘導し、発生初期の原腸嵌入のプロセスを試験管内で再現することができたことを示す。
以上からナイーブ型由来PDGRA陽性細胞は、PrEとして類似の遺伝子を発現するのみではなく、機能的にもPrEと同等の能力を持つ可能性がある。
7因子でのPrE誘導における各シグナルの重要性を調べるため、上記7因子から1因子を各々subtractし、6因子で分化誘導した(図7A)。あるいは6因子にPD03(MEC阻害剤), LDN193189 (BMP阻害剤), JaK阻害剤(JaKi), Activin, CH(Wnt 活性化剤) の各々を加えた(図7A)。その結果、FGF4あるいはBMPを除いた時、ほとんどPDGFRA+細胞が発現しなくなり、FGFとBMPはPrE誘導に必須であることが分かった。一方、ACTIVIN阻害剤を除いた時は31.5%、Wntシグナル阻害剤を除いた時は33.2%、とややPDGFRA陽性細胞が減少するだけであったが、逆にACTIVIN、Wnt刺激を行うとprimitive endoderm細胞は消失することが分かった。以上から、activin, Wntはprimitive endoderm分化を阻害することが分かった(図7A下)。なお、データは示さないが、FGFのみあるいはBMP4のみの1因子ではPDGFRA、CEACAM1およびANPEP陽性細胞は誘導できないのに対し、2因子(FGF、BMP4)で誘導した際はPDGFRA、CEACAM1およびANPEP陽性細胞が9.1%得られた。また、4因子(FGF4、BMP4、XAV939、A83-01)で分化誘導した場合、PDGFRA、CEACAM1およびANPEP陽性細胞が22.3%得られた。これらの結果から、PrE誘導にはFGFとBMPが必須であり、これらに加え、TGFβ阻害剤とWntシグナル阻害剤を使用することが好ましいことが示唆された。
一方、IL-6を除いたところ33.2%へとPDGFRA陽性細胞の低下を認めたが、JAKiを加えたところ細胞は増殖せず、D3にはほぼ細胞は存在しなかった。そこで、100nMの低濃度のJAKiを加えたところ、PDGFRA陽性細胞はほぼ消失した(図7A下)。
GP130を活性化し、STAT3を活性化するGP130Y118F chimeric receptorをナイーブ型PSCに導入し、PrEを誘導した。D0からchimeric receptorを発現させると、PDGFRA陽性細胞の発現は低下するが、D2から発現させるとPDGFRA陽性細胞が効果的に誘導されることが分かった(図7B)。このことからJAK-STATシグナルはヒトにおいては、ナイーブ型多能性幹細胞の維持に重要であると同時に、PrEで重要な役割を果たすことが分かった(図7B)。
Claims (18)
- 原始内胚葉をインビトロで多能性幹細胞から調製する方法であって、
ナイーブ型多能性幹細胞を、BMP(Bone morphogenetic protein)およびFGF4(Fibroblast growth factor 4)を含む培地で培養して原始内胚葉分化を誘導する工程を含む方法。 - 前記培地はさらにPDGF(Platelet-Derived Growth Factor)、IL-6(Interleukine-6)、TGF(Transforming Growth Factor)β阻害剤、Wntシグナル阻害剤およびレチノイン酸から選択される1種類以上を含む、請求項1に記載の原始内胚葉の調製方法。
- 前記培地は、BMP、FGF4、TGFβ阻害剤およびWntシグナル阻害剤を含む、請求項1に記載の原始内胚葉の調製方法。
- BMPがBMP4、BMP2またはBMP6であり、PDGFがPDGF-AAであり、TGFβ阻害剤がA83-01であり、Wntシグナル阻害剤がXAV939である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の原始内胚葉の調製方法。
- さらに、原始内胚葉細胞をCEACAM1 (carcinoembryonic antigen related cell adhesion molecule 1)またはANPEP(alanyl aminopeptidase, membrane)を用いて純化する工程を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の原始内胚葉の調製方法。
- 多能性幹細胞が人工多能性幹細胞である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の原始内胚葉の調製方法。
- 多能性幹細胞がヒト多能性幹細胞である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の原始内胚葉の調製方法。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法で原始内胚葉を調製する工程、および、得られた原始内胚葉をプライム型多能性幹細胞と共培養してプライム型多能性幹細胞を中内胚葉まで分化させる工程を含む、中内胚葉の調製方法。
- 請求項8に記載の方法で中内胚葉を調製する工程、および、さらに、得られた中内胚葉を培養して心筋前駆細胞および/または膵前駆細胞まで分化させる工程を含む、心筋前駆細胞および/または膵前駆細胞の調製方法。
- 原始内胚葉を提供する工程、および、当該原始内胚葉をプライム型多能性幹細胞と共培養してプライム型多能性幹細胞を中内胚葉まで分化させる工程を含む、中内胚葉の調製方法。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法で調製された原始内胚葉細胞。
- 原始内胚葉細胞を含む細胞集団から原始内胚葉細胞を分離する方法であって、CEACAM1またはANPEPを用いて原始内胚葉細胞を選別する工程を含む、方法。
- 原始内胚葉細胞を含む細胞集団において原始内胚葉細胞を検出する方法であって、CEACAM1またはANPEPを用いて原始内胚葉細胞を検出する工程を含む、方法。
- CEACAM1またはANPEPに特異的に結合する分子を含む、原始内胚葉細胞検出用試薬。
- BMPおよびFGF4を含む、ナイーブ型多能性幹細胞用培地。
- さらに、PDGF、IL-6、TGFβ阻害剤、Wntシグナル阻害剤およびレチノイン酸から選択される1種類以上を含む、請求項15に記載のナイーブ型多能性幹細胞用培地。
- BMP、FGF4、TGFβ阻害剤およびWntシグナル阻害剤を含む、請求項15に記載のナイーブ型多能性幹細胞用培地。
- BMPがBMP4、BMP2またはBMP6であり、PDGFがPDGF-AAであり、TGFβ阻害剤がA83-01であり、Wntシグナル阻害剤がXAV939である、請求項15〜17のいずれか一項に記載のナイーブ型多能性幹細胞用培地。
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