JPWO2019058632A1 - 共振子及び共振装置 - Google Patents

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Abstract

共振子において、周波数温度特性を高精度で調整するができる。振動部であって、第1の電極及び第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に形成され、第1の電極に対向する第1の面を有する圧電膜と、第1の電極を介して圧電膜の第1の面と対向して形成された、少なくとも2つの温度特性調整膜と、を有する振動部と、振動部の少なくとも一部を囲むように設けられた保持部と、振動部と保持部とを接続する保持腕とを備え、振動部は、圧電膜の第1の面と対向する表面を有し、当該表面は、第1の領域と、振動部が振動したとき第1の領域より平均変位が大きい第2の領域とからなり、少なくとも2つの温度特性調整膜は、第1の領域のうち、それぞれ異なる領域において露出する、周波数温度係数が正である第1温度特性調整膜と、周波数温度係数が負である第2温度特性調整膜とを含む。

Description

本発明は、共振子及び共振装置に関する。
従来、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いた共振子が例えばタイミングデバイスとして用いられている。この共振子は、スマートフォンなどの電子機器内に組み込まれるプリント基板上に実装される。MEMS共振子において、周波数温度係数(TCF:Temperature Coefficients of Frequency)を改善するためのさまざまな試みがなされている。
例えば特許文献1には、主面が2種類の調整膜によって覆われた圧電MEMSの共振子が開示されている。特許文献1の共振子において、エッチングによる質量低減速度の小さい調整膜が共振子におけるバネの役割を果たす領域(バネ部)に形成されている。他方で、質量低減速度の大きい調整膜が、共振子における変位の大きい領域に形成されている。さらに、特許文献1には、バネ部に質量低減速度の小さい膜を形成することによって、エッチングによる温度特性の変化を抑制可能であることが開示されている。
国際公開第2015/108125号
しかし、例えば特許文献1のような従来の共振子では、周波数調整の影響により、温度特性が変化してしまう。したがって、高精度で周波数温度特性を調整するためには、さらなる改善が求められている。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、共振子において、周波数温度特性を高精度で調整することを目的とする。
本発明の一側面に係る共振子は、振動部であって、第1の電極及び第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に形成され、第1の電極に対向する第1の面を有する圧電膜と、第1の電極を介して圧電膜の第1の面と対向して形成された、少なくとも2つの温度特性調整膜と、を有する振動部と、振動部の少なくとも一部を囲むように設けられた保持部と、振動部と保持部とを接続する保持腕とを備え、振動部は、圧電膜の第1の面と対向する表面を有し、当該表面は、第1の領域と、振動部が振動したとき第1の領域より平均変位が大きい第2の領域とからなり、少なくとも2つの温度特性調整膜は、第1の領域のうち、それぞれ異なる領域において露出する、周波数温度係数が正である第1温度特性調整膜と、周波数温度係数が負である第2温度特性調整膜とを含む。
本発明によれば、共振子において、周波数温度特性を高精度で調整することができる。
本発明の第1実施形態に係る共振装置の外観を概略的に示す斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る共振装置の構造を概略的に示す分解斜視図である。 上側基板を取り外した本発明の第1実施形態に係る共振子の平面図である。 上側基板を取り外した本発明の第1実施形態に係る共振子の平面図の別の例である。 図3AのAA’線及びBB’線に沿った断面図である。 本発明の第2実施形態に係る共振子の平面図である。 本発明の第3実施形態に係る共振子の平面図である。 本発明の第4実施形態に係る共振子の平面図である。 図7のCC’線に沿った断面図である。
[第1実施形態]
以下、添付の図面を参照して本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る共振装置1の外観を概略的に示す斜視図である。また、図2は、本発明の第1実施形態に係る共振装置1の構造を概略的に示す分解斜視図である。
この共振装置1は、共振子10と、共振子10を挟んで設けられた上蓋30及び下蓋20と、を備えている。すなわち、共振装置1は、下蓋20と、共振子10と、上蓋30とがこの順で積層されて構成されている。
また、共振子10と下蓋20及び上蓋30とが接合され、これにより、共振子10が封止され、また、共振子10の振動空間が形成される。共振子10、下蓋20及び上蓋30は、それぞれSi基板を用いて形成されている。そして、共振子10、下蓋20及び上蓋30は、Si基板同士が互いに接合されて、互いに接合される。共振子10及び下蓋20は、SOI基板を用いて形成されてもよい。
共振子10は、MEMS技術を用いて製造されるMEMS共振子である。なお、本実施形態においては、共振子10はシリコン基板(Si基板)を用いて形成されるものを例として説明するが、ここで、シリコン基板とは、シリコン材料のみからなるものに限定されるものではなく、後述するようにP(燐)などのN型半導体材料がドーピングされたもの(例えば縮退半導体からなるもの)も含む。
以下、共振装置1の各構成について詳細に説明する。
(1.上蓋30)
上蓋30はXY平面に沿って平板状に広がっており、その裏面に例えば平たい直方体形状の凹部31が形成されている。凹部31は、側壁33に囲まれており、共振子10が振動する空間である振動空間の一部を形成する。
(2.下蓋20)
下蓋20は、XY平面に沿って設けられる矩形平板状の底板22と、底板22の周縁部からZ軸方向(すなわち、下蓋20と共振子10との積層方向)に延びる側壁23とを有する。下蓋20には、共振子10と対向する面において、底板22の表面と側壁23の内面とによって形成される凹部21が設けられる。凹部21は、共振子10の振動空間の一部を形成する。上述した上蓋30と下蓋20とによって、この振動空間は気密に封止され、真空状態が維持される。この振動空間には、例えば不活性ガス等の気体が充填されてもよい。
(3.共振子10)
図3Aは、本実施形態に係る、共振子10の構造を概略的に示す平面図である。図3Aを用いて本実施形態に係る共振子10の、各構成について説明する。共振子10は、振動部120と、保持部140と、保持腕110a、110b(以下、まとめて「保持腕110」とも呼ぶ。)とを備えている。
(a)振動部120
振動部120は、図3Aの直交座標系におけるXY平面に沿って広がる矩形の輪郭を有している。振動部120は、保持部140の内側に設けられており、振動部120と保持部140との間には、所定の間隔で空間が形成されている。図4を用いて後述するが、振動部120は、Si基板F2と、下部電極E1(第2の電極の一例である。)と、圧電薄膜F3(圧電膜の一例である。)と、上部電極E2(第1の電極の一例である。)とを有している。
振動部120は、その表面に長さ方向と幅方向とを有する矩形板状の1つの上部電極E2を有している。図3Aにおいて、振動部120は、X軸方向に長辺、Y軸方向に短辺を有し、上部電極E2は、X軸方向に長辺、Y軸方向に短辺を有している。
詳細については図4を用いて説明するが、振動部120は、上部電極E2(図4参照)に対応する振動領域121を有する。本実施形態では、振動部120は、Si基板F2(図4参照)の表面に対向する面を有する1つの上部電極E2(図4参照)を有し、当該1つの上部電極E2(図4参照)に対応して1つの振動領域121を有する。振動領域121は、振動部120において、後述する保持腕110との接続箇所をつなぐ領域を節とし、Y軸方向に輪郭振動するように構成されている。また、振動領域121は、振動部120の輪郭振動の節に平行な長辺と、輪郭振動の節に直交し、かつ輪郭振動の半波長に相当する短辺を有する。本実施形態では、振動領域121は振動部120の輪郭と略一致する。すなわち、本実施形態では、振動領域121の長さLは、振動の節に沿った方向における振動部120の距離に相当し、振動領域121の幅Wは、振動の節に直交する方向における振動部120の距離に相当する。本実施形態において、振動領域121の長さLは、58μm以上234μm以下程度であり、幅Wは、40μm以上160μm以下程度である。なお、本実施形態において、振動領域121は振動部120と一致する領域であるので、振動部120の長辺は長さLと同様に58μm以上234μm以下程度であり、短辺は幅Wと同様に40μm以上160μm程度である。
なお、振動部120は、複数の上部電極E2を有していてもよく、この場合、振動部120は、複数の上部電極E2の個数に応じて分割された複数の振動領域121を有する。このときの振動領域121の幅Wは、振動の節に直交する方向において、振動部120の距離を上部電極の数に分割した大きさに相当する(図3B参照)。
振動部120の表面(上蓋30に対向する面。第1の面に対向する表面の一例である。)は、第1の領域と第2の領域とから成る。第1の領域は、振動部120の振動の節(バネ部)を含む領域であり、第2の領域は、振動部120が振動した際の振動の平均変位が第1の領域より大きい領域である。本実施形態においては、第2の領域は振動部120の角部の領域であり、第1の領域は第2の領域以外の領域である。
振動部120の表面は、その略全面を覆うように温度特性調整膜235A(第2温度特性調整膜の一例である。)が形成されている。温度特性調整膜235Aは、負の周波数温度係数を有する絶縁体の層である。なお、負の周波数温度係数を有する膜は、温度上昇に対して周波数が低下する特性を有する膜である。
さらに、温度特性調整膜235Aの表面には、その一部を覆うように、温度特性調整膜235B(第1温度特性調整膜の一例である。)と周波数調整膜236とが形成されている。
周波数調整膜236は、振動部120における、他の領域よりも振動による平均変位の大きい領域(第2の領域)の少なくとも一部において、その表面が露出するように、温度特性調整膜235A上に形成されている。具体的には、周波数調整膜236は、振動部120の角部の領域に形成される。本実施形態では、周波数調整膜236は、振動部120の長辺に沿った両端の角部の領域に亘って、帯状に形成されている。
温度特性調整膜235Bは、振動部120において、振動の節(第1の領域)の一部において、その表面が露出するように形成されている。本実施形態では、温度特性調整膜235Bは、振動部120の長さ方向における端部それぞれにおいて、周波数調整膜236が露出する領域の間の領域で露出するように形成されている。なお、温度特性調整膜235Bは、正の周波数温度係数を有する絶縁体の層である。正の周波数温度係数を有する膜は、温度上昇に対して周波数が上昇する特性を有する膜である。
温度特性調整膜235Bは、所望の周波数において、共振子の温度特性が0となるように温度特性調整膜235Aと面積比を調整して成膜される。なお、温度特性調整膜235Aと温度特性調整膜235Bとが形成される位置は入れ替わってもよい。また、温度特性調整膜235Aと温度特性調整膜235Bとは第1の領域において、それぞれ露出していればよく、重なる領域を必ずしも有していなくてもよい。さらに、振動部120の表面において露出している温度特性調整膜の種類は2種類に限定されず、3種類以上の任意の数でもよい。また、振動部120の表面において露出している周波数調整膜の種類は1種類に限定されず、2種類以上の任意の数でもよい。
詳細については後述するが、本実施形態に係る共振子10は、電圧が印加されることにより幅方向に沿った振動を主振動とする輪郭振動を行う。このとき、幅方向の中央部を結ぶ領域に振動の節が発生する。
共振子10における周波数温度特性は、振動の節(バネ部)に形成された膜の膜厚の影響を受けやすい。一方で、共振周波数は、振動の変位が大きい領域(質量部。本実施形態では振動部120の四隅)に形成された膜の膜厚の影響を受けやすい。本実施形態に係る共振子10は、バネ部に周波数温度係数の異なる2種類の膜を有するため、周波数温度特性を高精度に調整することが可能である。また質量部に周波数調整用の膜を有することで、周波数についても高精度に調整することができる。
(b)保持部140
保持部140は、XY平面に沿って矩形の枠状に形成される。保持部140は、平面視において、XY平面に沿って振動部120の外側を囲むように設けられる。なお、保持部140は、振動部120の周囲の少なくとも一部に設けられていればよく、枠状の形状に限定されない。例えば、保持部140は、振動部120を保持し、また、上蓋30及び下蓋20と接合できる程度に、振動部120の周囲に設けられていればよい。
本実施形態においては、保持部140は枠体140a、140b、140c、140dからなる。なお、図2に示すように、枠体140a〜140cは、一体形成される角柱形状を有している。枠体140a、140bは、図3Aに示すようにX軸方向に平行に、振動部120の長辺に対向して延びている。また、枠体140c、140dは、振動部120の短辺に対向してY軸方向に平行に延び、その両端で枠体140a、140bの両端にそれぞれ接続される。
枠体140c、140dは、その中央付近において、保持腕110によって接続されている。さらに枠体140c、140dは、保持腕110との接続箇所近傍において、それぞれ端子V1、V2を備えている。端子V1は上部電極E2(図4参照)を外部に接続させるための端子である。また、端子V2は、後述する下部電極E1(図4参照)を外部に接続させるための端子である。なお、高次モード等で上部電極E2を分割する場合は、端子V1は一方の上部電極と接続され、端子V2は、他方の上部電極と接続される。
(c)保持腕110
保持腕110a、110b(以下、まとめて「保持腕110」とも呼ぶ。)は、角柱形状の腕であり、保持部140の内側であって、振動部120の短辺と枠体140c、140dとの間の空間に設けられる。保持腕110a、110bは、振動部120の短辺をそれぞれ枠体140c、140dに接続する。
保持腕110aの表面には、上部電極E2が、振動部120から枠体140cに亘って形成されている。
(4.積層構造)
図4を用いて共振子10の積層構造について説明する。図4(A)は、図3AのAA´断面図であり、図4(B)は、図1のBB´断面図である。
本実施形態に係る共振子10では、保持部140、振動部120、保持腕110は、同一プロセスで一体的に形成される。図4(A)、(B)に示すように、共振子10では、まず、Si(シリコン)基板F2(基板の一例である。)の上に、下部電極E1(第2の電極の一例である。)が積層されている。そして、下部電極E1の上には、下部電極E1を覆うように圧電薄膜F3(圧電膜の一例である。)が積層されており、さらに、圧電薄膜F3の上には、上部電極E2(第1の電極の一例である。)が積層されている。圧電薄膜F3と上部電極E2とは互いに対向する面(第1の面の一例である。)を有している。
Si基板F2は、例えば、厚さ10μm程度の縮退したn型Si半導体から形成されており、n型ドーパントとしてP(リン)やAs(ヒ素)、Sb(アンチモン)などを含むことができる。Si基板F2に用いられる縮退Siの抵抗値は例えば、0.53mΩ・cm以上0.56mΩ・cm以下程度である。これにより、縮退Si層が下部電極E2を兼ねる事が可能となる。また、Si基板F2の厚さTは例えば、20μm以上30μm以下程度である。
さらにSi基板F2の下面には酸化ケイ素(例えばSiO2)から成る温度特性補正層F1が形成されている。これにより、温度特性を向上させることが可能になる。
本実施形態において、温度特性補正層F1とは、当該温度特性補正層F1をSi基板F2に形成しない場合と比べて、Si基板F2に温度補正層F1を形成した時の振動部120における周波数の温度係数(すなわち、温度当たりの変化率)を、少なくとも常温近傍において低減する機能を持つ層をいう。振動部120が温度特性補正層F1を有することにより、例えば、Si基板F2と下部電極E1、上部電極E2と圧電薄膜F3及び温度補正層F1による積層構造体の共振周波数の、温度に伴う変化を低減することができる。本実施形態において、温度特性補正層F1の厚さは0.2μm以上1.0μm以下程度である。
共振子10においては、温度特性補正層F1は、均一の厚みで形成されることが望ましい。なお、均一の厚みとは、温度特性補正層F1の厚みのばらつきが、厚みの平均値から±20%以内であることをいう。
なお、温度特性補正層F1は、Si基板F2の上面に形成されてもよいし、Si基板F2の上面と下面の双方に形成されてもよい。また、本実施形態において、少なくとも振動部120、保持腕110は、同一のSi基板F2及び同一の温度特性補正層F1によって一体に形成される。なお、保持部140においては、Si基板F2の下面に温度特性補正層F1が形成されなくてもよい。
また、上部電極E2及び下部電極E1は、Mo(モリブデン)やアルミニウム(Al)等を用いて形成される。なお、Si基板F2として、縮退したSiを用いることで、Si基板F2が下部電極E1を兼ねることができる。すなわち、Si基板F2が下部電極としての機能を備える場合、下部電極E1の構成を省略することができる。本実施形態において、下部電極E1の厚さは、例えば0.1μm程度であり、上部電極E2の厚さは例えば0.2μm程度である。
上部電極E2、及び下部電極E1は、エッチング等により、所望の形状に形成される。下部電極E1は、例えば振動部120上においては、下部の電極として機能するように形成される。また、下部電極E1は、保持腕110や保持部140上においては、端子V2を介して、共振子10の外部に設けられた交流電源に下部電極を接続するための配線として機能するように形成される。
他方で、上部電極E2は、振動部120上においては、上部の電極として機能するように形成される。また、上部電極E2は、保持腕110や保持部140上においては、端子V1を介して、共振子10の外部に設けられた交流電源に上部電極を接続するための配線として機能するように形成される。
端子V2は、後述する圧電薄膜F3に形成されたビアを介して下部電極E1と接続するように形成される。また、端子V1は上部電極E2上に形成される。端子V1、V2は例えばMo(モリブデン)やAl(アルミニウム)等を用いて形成される。
なお、交流電源から端子V1、V2への接続にあたっては、上蓋30の外面に電極(外部電極の一例である。)を形成して、当該電極が外部電源である交流電源と下部配線または上部配線とを接続する構成や、上蓋30内にビアを形成し、当該ビアの内部に導電性材料を充填して配線を設け、当該配線が交流電源と下部配線または上部配線とを接続する構成が用いられてもよい。
圧電薄膜F3は、印加された電圧を振動に変換する圧電体の薄膜であり、例えば、AlN(窒化アルミニウム)等の窒化物や酸化物を主成分とすることができる。具体的には、圧電薄膜F3は、ScAlN(窒化スカンジウムアルミニウム)により形成することができる。ScAlNは、窒化アルミニウムにおけるアルミニウムの一部をスカンジウムに置換したものである。また、圧電薄膜F3は、例えば、0.8μm程度の厚さを有する。
温度特性調整膜235Aは、負の周波数温度係数を有する絶縁体の層であり、エッチングによる質量低減の速度が周波数調整膜236より遅い材料により形成される。具体的には、温度特性調整膜235Aは、AlNから形成される。なお、質量低減速度は、エッチング速度(単位時間あたりに除去される厚み)と密度との積により表される。
温度特性調整膜235Bは、正の周波数温度係数を有する絶縁体の層であり、エッチングによる質量低減の速度が周波数調整膜236より遅い材料により形成される。例えば温度特性調整膜235Bは、温度の上昇に伴い硬度が大きくなる性質(弾性率温度係数)を有する材質から形成されることが好ましい。具体的には、温度特性調整膜235Bは、SiO2等のケイ素酸化膜から形成される。
周波数調整膜236は、導電体の層であり、エッチングによる質量低減の速度が温度特性調整膜235A,235Bより速い材料により形成される。周波数調整膜236は、例えば、モリブデン(Mo)やタングステン(W)や金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)等の金属により形成される。
なお、温度特性調整膜235A、235Bと周波数調整膜236とは、質量低減速度の関係が上述のとおりであれば、エッチング速度の大小関係は任意である。
周波数調整膜236、及び温度特性調整膜235Bは、振動部120の略全面に形成された後、エッチング等の加工により所定の領域のみに形成される。
(5.共振子の機能)
次に、振動部120の機能について説明する。振動部120は、図4(A)に示すように振動領域121を有している。振動領域121において、圧電薄膜F3は、上部電極E2、下部電極E1によって圧電薄膜F3に印加される電界に応じて、XY平面の面内方向すなわちY軸方向に伸縮する。具体的には、圧電薄膜F3はc軸方向に配向しており、そのため、上部電極E2及び下部電極E1に所定の電界を印加して、上部電極Eと下部電極E1との間に所定の電位差を形成すると、この電位差に応じて圧電薄膜F3がXY面内方向において伸縮することにより、振動領域121が輪郭振動する。
(6.特性調整工程)
次に、温度特性調整膜235A、235B、及び周波数調整膜236の機能について説明する。本実施形態に係る共振装置1では、上述のような共振子10が形成されたあと、温特調整工程、及び周波数調整工程が行われる。なお、温特調整工程と周波数調整工程とが行われる順序はどちらが先でも構わない。
温特調整工程は、共振子10における周波数温度特性を調整する工程である。温特調整工程においては、ガスクラスタイオンビーム(GCIB)によって、温度特性調整膜235A、235Bの膜厚をエッチングによって調整する。このとき、正の弾性率温度係数を有する膜(本実施形態においては温度特性調整膜235B)の膜厚変化を、負の弾性率温度係数を有する膜(本実施形態においては温度特性調整膜235A)の膜厚変化よりも大きくなるように調整が行われる。
周波数調整工程では、まず共振子10の共振周波数を測定し、狙い周波数に対する偏差を算出する。次に、算出した周波数偏差に基づき、周波数調整膜236の膜厚を調整する。周波数調整膜236の膜厚の調整は、例えばアルゴン(Ar)イオンビームを共振装置1の全面に対して照射して、周波数調整膜236をエッチングすることによって行うことができる。さらに、周波数調整膜236の膜厚が調整されると、共振子10の洗浄を行い、飛び散った膜を除去することが望ましい。
なお、周波数調整工程においては、温度特性調整膜235A、235Bの膜厚も変化することになる。したがって、周波数調整工程の前に温特調整工程を行う場合には、周波数調整工程での周波数温度特性変化がほぼゼロとなるように、温度特性調整膜235A、235Bの面積比を設計する。
このように本実施形態に係る共振子10は、バネ部に周波数温度係数の異なる2種類の膜を有するため、周波数温度特性を高精度に調整することが可能である。また質量部に周波数調整用の膜を有することで、周波数についても高精度に調整することができる。
[第2実施形態]
第2実施形態以降では第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
図5を用いて第2実施形態に係る共振子10Aの構成、機能について説明する。図5は本実施形態に係る共振子10Aの平面図の一例を示す図である。共振子10Aは、第1実施形態における温度特性調整膜235Bに代えて温度特性調整膜235Cを有している。
温度特性調整膜235Cは、振動部120において、振動の節の一部を覆うように形成されている。本実施形態では、温度特性調整膜235Cは、振動部120の長さ方向における中央部において、周波数調整膜236が露出する領域の間の領域に形成されている。なお、温度特性調整膜235Cは、形成される位置以外は、温度特性調整膜235Bと同様の構成を有している。
その他の構成、機能は第1実施形態と同様である。
[第3実施形態]
図6を用いて、第3実施形態に係る共振子10Bの構成、機能について説明する。図6は、本実施形態に係る共振子10Bの平面図の一例を示す図である。共振子10Bは、第1実施形態における温度特性調整膜235Bに代えて温度特性調整膜235Dを有している。
温度特性調整膜235Aは、振動部120において、振動の節の一部を覆うように形成されている。本実施形態では、温度特性調整膜235Dは、周波数調整膜236が露出する領域の間の領域において、スポット状に形成されている。なお、温度特性調整膜235Dは、形成される位置以外は、温度特性調整膜235Bと同様の構成を有している。
その他の構成、機能は第1実施形態と同様である。
[第4実施形態]
図7及び図8を用いて、第4実施形態に係る共振子10Cの構成、機能について説明する。図7は、本実施形態に係る共振子10Cの平面図の一例を示す図である。図8は図7のCC’断面図である。図7に示すように共振子10Cは、第1実施形態における振動部120に代えて、振動部120Aを有し、保持腕110に代えて保持腕111,112を有している。
振動部120Aは、図7の直交座標系におけるXY平面に沿って広がる矩形の輪郭を有している。振動部120Aは、保持部140の内側に設けられており、振動部120Aと保持部140との間には、所定の間隔で空間が形成されている。図7の例では、振動部120Aは、基部130と4本の振動腕135A〜135D(まとめて「振動腕135」とも呼ぶ。)と、周波数調整膜236Aと、温度特性調整膜235E、235Fを有している。なお、振動腕の数は、4本に限定されず、例えば1本以上の任意の数に設定される。本実施形態において、各振動腕135と、基部130とは、一体に形成されている。
・基部130
基部130は、平面視において、X軸方向に長辺131a、131b、Y軸方向に短辺131c、131dを有している。長辺131aは、基部130の前端の面131A(以下、「前端131A」とも呼ぶ。)の一つの辺であり、長辺131bは基部130の後端の面131B(以下、「後端131B」とも呼ぶ。)の一つの辺である。基部130において、前端131Aと後端131Bとは、互いに対向するように設けられている。
基部130は、前端131Aにおいて、後述する振動腕135に接続され、後端131Bにおいて、後述する保持腕111、112に接続されている。なお、基部130は、図7の例では平面視において、略長方形の形状を有しているがこれに限定されず、長辺131aの垂直二等分線に沿って規定される仮想平面Pに対して略面対称に形成されていればよい。基部130は、例えば、長辺131bが131aより短い台形や、長辺131aを直径とする半円の形状であってもよい。また、基部130の各面は平面に限定されず、湾曲した面であってもよい。なお、仮想平面Pは、振動部120Aにおける、振動腕135が並ぶ方向の中心を通る中心軸を含む平面である。
基部130において、前端131Aから後端131Bに向かう方向における、前端131Aと後端131Bとの最長距離である基部長L(図7においては短辺131c、131dの長さ)は35μm程度である。また、基部長方向に直交する幅方向であって、基部130の側端同士の最長距離である基部幅W(図7においては長辺131a、131bの長さ)は265μm程度である。
・振動腕135
振動腕135は、Y軸方向に延び、それぞれ同一のサイズを有している。振動腕135は、それぞれが基部130と保持部140との間にY軸方向に平行に設けられ、一端は、基部130の前端131Aと接続されて固定端となっており、他端は開放端となっている。また、振動腕135は、それぞれ、X軸方向に所定の間隔で、並列して設けられている。なお、振動腕135は、例えばX軸方向の幅が50μm程度、Y軸方向の長さが465μm程度である。
振動腕135はそれぞれ開放端に、錘部Gを有している。錘部Gは、振動腕135の他の部位よりもX軸方向の幅が広い。錘部Gは、例えば、X軸方向の幅が70μm程度である。錘部Gは、振動腕135と同一プロセスによって一体形成される。錘部Gが形成されることで、振動腕135は、単位長さ当たりの重さが、固定端側よりも開放端側の方が重くなっている。従って、振動腕135が開放端側にそれぞれ錘部Gを有することで、各振動腕における上下方向の振動の振幅を大きくすることができる。
本実施形態の振動部120Aでは、X軸方向において、外側に2本の振動腕135A、135Dが配置されており、内側に2本の振動腕135B、135Cが配置されている。X軸方向における、振動腕135Bと135Cとの間隔W1は、X軸方向における、外側の振動腕135A(135D)と当該外側の振動腕135A(135D)に隣接する内側の振動腕135B(135C)との間の間隔W2よりも大きく設定される。間隔W1は例えば30μ程度、間隔W2は例えば25μm程度である。間隔W2は間隔W1より小さく設定することにより、振動特性が改善される。ただし、共振装置1について、小型化を図る場合には、間隔W1を間隔W2よりも小さく設定してもよいし、等間隔にしても良い。
・温度特性調整膜235E
振動部120Aの表面(上蓋30に対向する面)には、その全面を覆うように温度特性調整膜235Eが形成されている。なお、必ずしも温度特性調整膜235Eは振動部120の全面を覆う必要はないが、周波数調整における下地の電極膜(例えば図4の上部電極E2)及び圧電膜(例えば図4の圧電薄膜F3)へのダメージを保護する上で、振動部120Aの全面の方が望ましい。温度特性調整膜235Eのその他の構成は、温度特性調整膜235Aと同様である。
・周波数調整膜236A
振動腕135A〜135Dにおける温度特性調整膜235Eの表面の一部には、それぞれ、周波数調整膜236Aが形成されている。温度特性調整膜235E及び周波数調整膜236Aによって、振動部120Aの共振周波数を調整することができる。
周波数調整膜236Aは、振動部120Aにおける、他の領域よりも振動による変位の比較的大きい領域の少なくとも一部において、その表面が露出するように、温度特性調整膜235E上に形成されている。具体的には、周波数調整膜236Aは、振動腕135の先端、即ち錘部Gに形成される。この実施例では、振動腕135の先端まで周波数調整膜236Aが形成され、先端部では温度特性調整膜235Eは全く露出していないが、温度特性調整膜235Eの一部が露出する様に、周波数調整膜236Aを振動腕135の先端部には形成されない構成も可能である。周波数調整膜236Aのその他の構成は、第1実施形態における周波数調整膜236と同様である。
・温度特性調整膜235F
温度特性調整膜235Fは、振動腕135において、振動の節(本実施形態においては、振動腕135と基部130との接続箇所近傍である)の一部を覆うように形成されている。具体的には、温度特性調整膜235Fは、振動腕135と基部130との接続箇所近傍から、錘部Gが形成される領域近傍に亘って、振動腕135における幅方向の中央付近に形成されている。なお、温度特性調整膜235Fは、振動腕135の幅方向における全面には形成されず、振動腕135における幅方向の端部においては温度特性調整膜235Eが露出している。温度特性調整膜235Fのその他の構成は、第1実施形態における温度特性調整膜235Bと同様である。
・保持腕111、112
保持腕111及び保持腕112は、保持部140の内側に設けられ、基部130の後端131Bと枠体140c、140dとを接続する。図3Aに示すように、保持腕111と保持腕112とは、基部130のX軸方向の中心線に沿ってYZ平面に平行に規定される仮想平面Pに対して略面対称に形成される。
保持腕111は、腕111a、111b、111c、111dを有している。保持腕111Aは、一端が基部130の後端131Bに接続しており、そこから枠体140bに向かって延びている。そして、保持腕111は、枠体140cに向かう方向(すなわち、X軸方向)に屈曲し、さらに枠体140aに向かう方向(すなわち、Y軸方向)に屈曲し、再度枠体140cに向かう方向(すなわち、X軸方向)に屈曲して、他端が枠体140cに接続している。
腕111aは、基部130と枠体140bとの間に、枠体140cに対向して、長手方向がY軸に平行になるように設けられている。腕111aは、一端が、後端131Bにおいて基部130と接続しており、そこから後端131Bに対して略垂直、すなわち、Y軸方向に延びている。腕111aのX軸方向の中心を通る軸は、振動腕135Aの中心線よりも内側に設けられることが望ましく、図3Aの例では、腕111aは、振動腕135Aと135Bとの間に設けられている。また腕111aの他端は、その側面において、腕111bの一端に接続されている。腕111aは、X軸方向に規定される幅が20μm程度であり、Y軸方向に規定される長さが25μm程度である。
腕111bは、基部130と枠体140bとの間に、枠体140bに対向して、長手方向がX軸方向に平行になるように設けられている。腕111bは、一端が、腕111aの他端であって枠体140cに対向する側の側面に接続し、そこから腕111aに対して略垂直、すなわち、X軸方向に延びている。また、腕111bの他端は、腕111cの一端であって振動部120と対向する側の側面に接続している。腕111bは、例えばY軸方向に規定される幅が20μm程度であり、X軸方向に規定される長さが92μm程度である。
腕111cは、基部130と枠体140cとの間に、枠体140cに対向して、長手方向がY軸方向に平行になるように設けられている。腕111cの一端は、その側面において、腕111bの他端に接続されており、他端は、腕111dの一端であって、枠体140c側の側面に接続されている。腕111cは、例えばX軸方向に規定される幅が20μm程度、Y軸方向に規定される長さが255μm程度である。
腕111dは、基部130と枠体140cとの間に、枠体140aに対向して、長手方向がX軸方向に平行になるように設けられている。腕111dの一端は、腕111cの他端であって枠体140cと対向する側の側面に接続している。また、腕111dは、他端が、振動腕135Aと基部130との接続箇所付近に対向する位置において、枠体140cと接続しており、そこから枠体140cに対して略垂直、すなわち、X軸方向に延びている。腕111dは、例えばY軸方向に規定される幅が50μm程度、X軸方向に規定される長さが5μm程度である。
このように、保持腕111は、腕111aにおいて基部130と接続し、腕111aと腕111bとの接続箇所、腕111bと111cとの接続箇所、及び腕111cと111dとの接続箇所で屈曲した後に、保持部140へと接続する構成となっている。
保持腕112は、腕112a、112b、112c、112dを有している。保持腕112は、一端が基部130の後端131Bに接続しており、そこから枠体140bに向かって延びている。そして、保持腕112は、枠体140dに向かう方向(すなわち、X軸方向)に屈曲し、さらに枠体140aに向かう方向(すなわち、Y軸方向)に屈曲して、再度枠体140dに向かう方向(すなわち、X軸方向)屈曲し、他端が枠体140dに接続している。
なお、腕112a、112b、112c、112dの構成は、それぞれ腕111a、111b、111c、111dと対称な構成であるため、詳細な説明については省略する。
図8を参照して共振子10Cの機能について説明する。本実施形態では、外側の振動腕135A、135Dに印加される電界の位相と、内側の振動腕135B、135Cに印加される電界の位相とが互いに逆位相になるように設定される。これにより、外側の振動腕135A、135Dと内側の振動腕135B、135Cとが互いに逆方向に変位する。例えば、外側の振動腕135A、135Dが上蓋30の内面に向かって自由端を変位すると、内側の振動腕135B、135Cは下蓋20の内面に向かって自由端を変位する。なお、共振子10Cにおいて下部電極E1はフロートである。ただし、周波数の安定化のため、下部電極を別の端子に引出し、外部のグランド電極に接続させてもよい。
これによって、本実施形態に係る共振子10では、逆位相の振動時、すなわち、図3Aに示す振動腕135Aと振動腕135Bとの間でY軸に平行に延びる第1中心軸回りに振動腕135Aと振動腕135Bとが上下逆方向に振動する。また、振動腕135Cと振動腕135Dとの間でY軸に平行に延びる第2中心軸回りに振動腕135Cと振動腕135Dとが上下逆方向に振動する。これによって、第1中心軸と第2中心軸とで互いに逆方向の捩れモーメントが生じ、基部130で屈曲振動が発生する。
その他の共振子10の構成、機能は第1実施形態と同様である。
以上、本発明の例示的な実施形態について説明した。本実施形態に係る共振子10は、振動部120であって、上部電極E2及び下部電極E1と、上部電極E2と下部電極E1との間に形成され、上部電極E2に対向する第1の面を有する圧電薄膜F3と、上部電極E2を介して圧電薄膜F3の第1の面と対向して形成された、少なくとも2つの温度特性調整膜235A、235Bと、を有する振動部120と、振動部120の少なくとも一部を囲むように設けられた保持部140と、振動部120と保持部140とを接続する保持腕110と、を備え、振動部120は、圧電薄膜F3の第1の面と対向する表面を有し、当該表面は、第1の領域と、振動部120が振動したとき第1の領域より平均変位が大きい第2の領域とからなり、少なくとも2つの温度特性調整膜235A、235Bは、第1の領域のうち、それぞれ異なる領域において露出する、周波数温度係数が正である温度特性調整膜235Bと、周波数温度係数が負である温度特性調整膜235Aとを含む。これにより、共振子10は、バネ部に周波数温度係数の異なる2種類の膜を有するため、周波数温度特性を高精度に調整することが可能である。
また、振動部120は、第2の領域において露出する少なくとも1つの周波数調整膜236をさらに有することが好ましい。この好ましい態様によれば、質量部に周波数調整用の膜を有することで、周波数についても高精度に調整することができる。
振動部120は、圧電薄膜F3が当該圧電薄膜F3に印加された電圧に応じて輪郭振動を行い、圧電薄膜F3の輪郭振動の節に平行な長辺と、圧電薄膜F3の輪郭振動の節に直交し、かつ輪郭振動の半波長に相当する短辺とを有する、少なくとも1つの矩形状の振動領域121を有し、第2の領域は、振動領域121の角部の領域であることが好ましい。また、第1の領域は、振動領域121において、輪郭振動の節が形成される領域であることも好ましい。
また、振動部120は、固定端と開放端とを有し、屈曲振動する振動腕135、並びに、振動腕135の固定端に接続される前端及び当該前端に対向する後端を有する基部130を有し、第2の領域は、振動腕135における開放端側の先端の領域であることが好ましい。また、第1の領域は、振動腕135における、振動腕135と基部130とが接続される領域であることが好ましい。さらに、振動部120の振動モードは、面外屈曲振動、又は面内屈曲振動であることが好ましい。
また、温度特性調整膜235Bは、正の弾性率温度係数を有することも好ましい。この場合、温度特性調整膜235Bは温度に比例して硬度が高くなる。これによって、良好な共振周波数を得ることができる。
また、周波数調整膜は、温度特性調整膜235A、235Bよりも比重が大きいことが好ましい。これにより、良好な共振周波数を得ることができる。
本実施形態に係る共振装置1は、上述の共振子10を有する。これにより、周波数温度特性を構成度に調整することができる。
以上説明した各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
1 共振装置
10、10A〜10C 共振子
30 上蓋
20 下蓋
140 保持部
140a〜d 枠体
110、111、112 保持腕
120、120A 振動部
F2 Si基板
235A〜235E 温度特性調整膜
236、236A 周波数調整膜
本実施形態においては、保持部140は枠体140a、140b、140c、140dからなる。なお、図3Aに示すように、枠体140a〜140cは、一体形成される角柱形状を有している。枠体140a、140bは、図3Aに示すようにX軸方向に平行に、振動部120の長辺に対向して延びている。また、枠体140c、140dは、振動部120の短辺に対向してY軸方向に平行に延び、その両端で枠体140a、140bの両端にそれぞれ接続される。
(4.積層構造)
図4を用いて共振子10の積層構造について説明する。図4(A)は、図3AのAA´断面図であり、図4(B)は、図3AのBB´断面図である。
Si基板F2は、例えば、厚さ10μm程度の縮退したn型Si半導体から形成されており、n型ドーパントとしてP(リン)やAs(ヒ素)、Sb(アンチモン)などを含むことができる。Si基板F2に用いられる縮退Siの抵抗値は例えば、0.53mΩ・cm以上0.56mΩ・cm以下程度である。これにより、縮退Si層が下部電極E1を兼ねる事が可能となる。また、Si基板F2の厚さTは例えば、20μm以上30μm以下程度である。
(5.共振子の機能)
次に、振動部120の機能について説明する。振動部120は、図4(A)に示すように振動領域121を有している。振動領域121において、圧電薄膜F3は、上部電極E2、下部電極E1によって圧電薄膜F3に印加される電圧に応じて、XY平面の面内方向すなわちY軸方向に伸縮する。具体的には、圧電薄膜F3はc軸方向に配向しており、そのため、上部電極E2及び下部電極E1に所定の電圧を印加して、上部電極E2と下部電極E1との間に所定の電位差を形成すると、この電位差に応じて圧電薄膜F3がXY面内方向において伸縮することにより、振動領域121が輪郭振動する。
温度特性調整膜235は、振動部120において、振動の節の一部を覆うように形成されている。本実施形態では、温度特性調整膜235Dは、周波数調整膜236が露出する領域の間の領域において、スポット状に形成されている。なお、温度特性調整膜235Dは、形成される位置以外は、温度特性調整膜235Bと同様の構成を有している。
その他の構成、機能は第1実施形態と同様である。
・温度特性調整膜235E
振動部120Aの表面(上蓋30に対向する面)には、その全面を覆うように温度特性調整膜235Eが形成されている。なお、必ずしも温度特性調整膜235Eは振動部120の全面を覆う必要はないが、周波数調整における下地の電極膜(例えば図4の上部電極E2)及び圧電膜(例えば図4の圧電薄膜F3)へのダメージを保護する上で、振動部120Aの全面の方が望ましい。温度特性調整膜235Eのその他の構成は、温度特性調整膜235Aと同様である。
・保持腕111、112
保持腕111及び保持腕112は、保持部140の内側に設けられ、基部130の後端131Bと枠体140c、140dとを接続する。図に示すように、保持腕111と保持腕112とは、基部130のX軸方向の中心線に沿ってYZ平面に平行に規定される仮想平面Pに対して略面対称に形成される。
保持腕111は、腕111a、111b、111c、111dを有している。保持腕111は、一端が基部130の後端131Bに接続しており、そこから枠体140bに向かって延びている。そして、保持腕111は、枠体140cに向かう方向(すなわち、X軸方向)に屈曲し、さらに枠体140aに向かう方向(すなわち、Y軸方向)に屈曲し、再度枠体140cに向かう方向(すなわち、X軸方向)に屈曲して、他端が枠体140cに接続している。
腕111aは、基部130と枠体140bとの間に、枠体140cに対向して、長手方向がY軸に平行になるように設けられている。腕111aは、一端が、後端131Bにおいて基部130と接続しており、そこから後端131Bに対して略垂直、すなわち、Y軸方向に延びている。腕111aのX軸方向の中心を通る軸は、振動腕135Aの中心線よりも内側に設けられることが望ましく、図の例では、腕111aは、振動腕135Aと135Bとの間に設けられている。また腕111aの他端は、その側面において、腕111bの一端に接続されている。腕111aは、X軸方向に規定される幅が20μm程度であり、Y軸方向に規定される長さが25μm程度である。
腕111bは、基部130と枠体140bとの間に、枠体140bに対向して、長手方向がX軸方向に平行になるように設けられている。腕111bは、一端が、腕111aの他端であって枠体140cに対向する側の側面に接続し、そこから腕111aに対して略垂直、すなわち、X軸方向に延びている。また、腕111bの他端は、腕111cの一端であって振動部120と対向する側の側面に接続している。腕111bは、例えばY軸方向に規定される幅が20μm程度であり、X軸方向に規定される長さが92μm程度である。
腕111cは、基部130と枠体140cとの間に、枠体140cに対向して、長手方向がY軸方向に平行になるように設けられている。腕111cの一端は、その側面において、腕111bの他端に接続されており、他端は、腕111dの一端であって、枠体140cと反対側の側面に接続されている。腕111cは、例えばX軸方向に規定される幅が20μm程度、Y軸方向に規定される長さが255μm程度である。
図8を参照して共振子10Cの機能について説明する。本実施形態では、外側の振動腕135A、135Dに印加される電圧の位相と、内側の振動腕135B、135Cに印加される電圧の位相とが互いに逆位相になるように設定される。これにより、外側の振動腕135A、135Dと内側の振動腕135B、135Cとが互いに逆方向に変位する。例えば、外側の振動腕135A、135Dが上蓋30の内面に向かって自由端を変位すると、内側の振動腕135B、135Cは下蓋20の内面に向かって自由端を変位する。なお、共振子10Cにおいて下部電極E1はフロートである。ただし、周波数の安定化のため、下部電極を別の端子に引出し、外部のグランド電極に接続させてもよい。
これによって、本実施形態に係る共振子10では、逆位相の振動時、すなわち、図に示す振動腕135Aと振動腕135Bとの間でY軸に平行に延びる第1中心軸回りに振動腕135Aと振動腕135Bとが上下逆方向に振動する。また、振動腕135Cと振動腕135Dとの間でY軸に平行に延びる第2中心軸回りに振動腕135Cと振動腕135Dとが上下逆方向に振動する。これによって、第1中心軸と第2中心軸とで互いに逆方向の捩れモーメントが生じ、基部130で屈曲振動が発生する。
その他の共振子10の構成、機能は第1実施形態と同様である。
本実施形態に係る共振装置1は、上述の共振子10を有する。これにより、周波数温度特性を高精度に調整することができる。

Claims (11)

  1. 振動部であって、
    第1の電極及び第2の電極と、
    前記第1の電極と前記第2の電極との間に形成され、前記第1の電極に対向する第1の面を有する圧電膜と、
    前記第1の電極を介して前記圧電膜の前記第1の面と対向して形成された、少なくとも2つの温度特性調整膜と、
    を有する振動部と、
    前記振動部の少なくとも一部を囲むように設けられた保持部と、
    前記振動部と前記保持部とを接続する保持腕と
    を備え、
    前記振動部は、前記圧電膜の前記第1の面と対向する表面を有し、当該表面は、第1の領域と、前記振動部が振動したとき前記第1の領域より平均変位が大きい第2の領域とからなり、
    前記少なくとも2つの温度特性調整膜は、前記第1の領域のうち、それぞれ異なる領域において露出する、周波数温度係数が正である第1温度特性調整膜と、周波数温度係数が負である第2温度特性調整膜とを含む、
    共振子。
  2. 前記振動部は、
    前記第2の領域において露出する少なくとも1つの周波数調整膜をさらに有する、
    請求項1に記載の共振子。
  3. 前記周波数調整膜は、前記第1温度特性調整膜及び前記第2温度特性調整膜より比重が大きい、請求項2に記載の共振子。
  4. 前記第1温度特性調整膜は、正の弾性率温度係数を有する、
    請求項1乃至3の何れか一項に記載の共振子。
  5. 前記振動部は、
    前記圧電膜が当該圧電膜に印加された電圧に応じて輪郭振動を行い、
    前記圧電膜の輪郭振動の節に平行な長辺と、前記圧電膜の輪郭振動の節に直交し、かつ輪郭振動の半波長に相当する短辺とを有する、少なくとも1つの矩形状の振動領域を有し、
    前記第2の領域は、
    少なくとも前記振動領域の角部の領域の一部を含む、
    請求項1乃至4の何れか一項に記載の共振子。
  6. 前記第1の領域は、
    前記振動領域において、少なくとも前記輪郭振動の節が形成される領域の一部を含む、請求項5に記載の共振子。
  7. 前記振動部は、
    固定端と開放端とを有し、屈曲振動する振動腕、並びに、前記振動腕の固定端に接続される前端、及び当該前端に対向する後端を有する基部
    を有し、
    前記第2の領域は、
    少なくとも前記振動腕における開放端側の先端の領域の一部を含む、
    請求項1乃至4の何れか一項に記載の共振子。
  8. 前記第1の領域は、
    前記振動腕における、少なくとも前記振動腕と前記基部とが接続される領域の一部を含む、
    請求項7に記載の共振子。
  9. 前記振動部の振動モードは、面外屈曲振動である、請求項7又は8に記載の共振子。
  10. 前記振動部の振動モードは、面内屈曲振動である、請求項7又は8に記載の共振子。
  11. 請求項1乃至10の何れか一項に記載の共振子と、
    前記共振子を覆う蓋体と、
    外部電極と、
    を備える共振装置。
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