JPWO2019054287A1 - 細胞培養装置および細胞培養方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本願は、2017年9月13日に日本に出願された特願2017−176138号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
一般的に医薬品や化成品の薬効や毒性の評価のためには多数の候補化合物の影響を広い濃度範囲で検討する必要があるため、同時に評価可能なアッセイ条件数(アッセイスループット)が多い事が好ましい。このため、一般的な二次元培養においては96ウェルプレートや384ウェルプレートが使用される事が多い。従って特許文献1に記載の細胞培養装置においても、多くの隔膜を同時に駆動し、多数のアッセイ条件を同時に評価することが好ましいが、特許文献1ではそれを実現できていない。
前記第1排出用培養液貯留室に貯留された前記第1培養液を前記第1導入用培養液貯留室に送る第1培養液返送流路をさらに有していてもよい。
前記第1導入用培養液貯留室から前記内面側空間および前記第1排出用培養液貯留室を経て前記第1導入用培養液貯留室に戻る循環流れとは逆の方向の前記第1培養液の流れを規制する逆流防止機構をさらに備えていてもよい。
前記逆流防止機構は、前記循環流れとは逆の方向の気体の流れを阻止するラプラス弁であってもよい。
前記第2培養液貯留室に貯留された前記第2培養液を前記外面側空間に導く第2培養液導入流路と、前記外面側空間に貯留された前記第2培養液を排出する第2培養液排出流路と、前記第2培養液排出流路を経た前記第2培養液が導入される第2排出用培養液貯留室と、を有していてもよい。
前記第1導入用培養液貯留室と、前記第1排出用培養液貯留室と、前記第2培養液貯留室である第2導入用培養液貯留室と、前記第2排出用培養液貯留室とのうち少なくともいずれか1つに、播種された細胞が保持される細胞保持部を有していてもよい。
前記複数の前記細胞培養ユニットを有し、前記複数の前記細胞培養ユニットにおける前記培養室のうち少なくとも2つ、または、前記複数の前記細胞培養ユニットにおける前記第2培養液貯留室のうち少なくとも2つは、気体が流通可能となるように互いに接続されていてもよい。
前記隔膜は、親水性を有する高分子を主成分とし、2価以上の架橋点を有する架橋剤で架橋されたハイドロゲルで構成されていてもよい。
前記架橋剤は、ポリエチレングリコールを主鎖としてもよい。
前記隔膜における前記細胞が接着可能な前記第1面は、細胞接着性を有するタンパク質によってコーティングされていてもよい。
前記高分子は、ゼラチンであってもよい。
前記ハイドロゲルは、ジベンゾシクロオクチンとアジド基との反応によって得られるゲルであってもよい。
前記隔膜は、保管時には乾燥状態であり、培養時には前記第1培養液および前記第2培養液に触れることで膨潤してもよい。
前記隔膜の厚みは、0.1〜100μmであってもよい。
前記内面側空間と前記外面側空間のうち少なくともいずれか一方の圧力を調整する圧力調整部をさらに備えていてもよい。
本発明の上記態様によれば、隔膜を伸縮動作させるための流路等の構造が簡略であるため、装置構造を簡略化して装置を小型化するとともに、装置の設定等の操作を容易にすることができる。
[細胞培養装置]
本発明の第一実施形態に係る細胞培養装置は、1または複数の細胞培養ユニットを有する貯留槽を備え、前記細胞培養ユニットは、第1培養液が貯留される内面側空間を有する培養室と、細胞が接着可能な第1面と前記第1面とは反対の第2面とを有し、かつ、前記第1面が前記内面側空間に面する透過性の隔膜と、第2培養液が貯留される第2培養液貯留室と、を有し、前記培養室は、前記隔膜の前記第2面が面する空間であって前記第2培養液貯留室に貯留される前記第2培養液が導入される外面側空間を有し、前記隔膜は伸縮性を有し、前記内面側空間と前記外面側空間との圧力差に応じて、伸縮により少なくとも一部が厚さ方向に変位可能である。
第1実施形態に係る細胞培養装置10について、図面を参照して説明する。
図1は、細胞培養装置10を模式的に示す概略図である。図2(A)は、細胞培養装置10の一部を拡大して示す概略図である。図2(B)および図2(C)は、隔膜の動作を示す説明図である。図3は、細胞培養装置10の一部を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、細胞培養装置10は、貯留槽11を備えている。貯留槽11は、容器状の槽本体12と、蓋部13とによって構成されており、1つの細胞培養ユニット9を形成する。
培養室1および培養液貯留室3は、貯留槽11の槽本体12に形成された凹部によって確保された空間であり、培養液(液体)を貯留可能である。
隔膜2を構成するハイドロゲルは、2価以上の架橋点を有する架橋剤によって架橋されていることが好ましい。前記架橋剤は、例えば、ポリエチレングリコールを主鎖とする。
ポリエチレングリコールを主鎖とする架橋剤の使用により、生体適合性、親水性、吸水性、伸縮性に優れた隔膜2が得られる。
親水的な高分子であるポリエチレングリコールを主鎖とする架橋剤を用いてハイドロゲルを形成することで、乾燥させたハイドロゲルに培養液を添加した際に容易に膨潤させることができる。
図22に示したDBCO−4armPEGは以下の性質を有する。
(1)基本骨格として多官能型ポリエチレングリコール(4armPEG;分子量10,000前後)を有している。これにより、比較的水になじみやすい。
(2)分子末端にアジド基とクリック反応が可能なジベンゾシクロオクチン(DBCO)基を4つ有している。
前記DBCO−4armPEGをアジド基で修飾された高分子と混合すると、DBCO基とアジド基がクリック架橋反応することで、複数の高分子がDBCO−4armPEGを介して架橋し、ゲル化する(図23)。
したがって、「クリック架橋型架橋剤の水溶液」と「アジド基を有する高分子の水溶液」とを混ぜるだけでゲルを形成することができる。
本実施形態に係るクリック架橋型架橋剤は、上述の(1)水溶性の基本骨格、(2)複数の「アジド基とクリック架橋反応する基」という2つの特性を有していてもよい。
ここで、(1)基本骨格の水溶性とは、常温から0度の温度において水又は中性近傍の緩衝液に10質量%以上溶解し得ることを指す。
具体的な水溶性は、基本骨格となる化合物又は基本骨格を含む化合物Aを1−100mg/mL程度の濃度でHEPESバッファー等の緩衝液(pH7.0−7.6)中に分散させ、溶解し得るかを目視で検討する等で判断することができる。
また、具体的に水溶性である基本骨格の構造としては、基本骨格の一部が水溶性基に置換されている等であってもよい。
(2)アジド基とクリック架橋反応するとは、アジド基と容易かつ特異的に架橋する反応を起こし得る基である。特にアジド基とアルキンの縮合が挙げられる。本実施形態では、具体的には、シクロアルキン又はアザシクロアルキン等がこのような性質を有し、本実施形態では、シクロオクチン環又はアザシクロオクチン環を有する構造が好ましく挙げられる。
主鎖の分岐数は、4分岐又は8分岐であってもよい。また、主鎖はネオペンチル骨格を有していてもよい。
このような化合物としては、具体的には、例えば、以下の一般式(1)の化合物が挙げられる。
複数のA1は、連結基を表し、それぞれ独立に単結合、又は炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を表し、前記アルキレン基中の1個又は非隣接の2個以上の−CH2−はそれぞれ独立して−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、又はシクロヘキシレン基によって置換されていてもよい。前記−CH2−の数は2〜50であってもよい。
pは0又は1以上の整数を表し、複数存在するR2及びR4は同一でも異なってもよい。pは0〜50であってもよい。
R1〜R4のうちの少なくとも2つ、好ましくは3つ以上のRが−L1−Z1基を含み、2つ以上のRが−O(CH2CH2O)n−L1−Z1基であることが好ましい。Rが−L1−Z1基を3つ以上含むことで、架橋剤と高分子化合物との間に形成される架橋剤1分子当たりの架橋点が十分に多くなり、形成したハイドロゲルの強度を高めることができる。
エチレングリコールの平均繰返し数nは、20から500の範囲にあってよく、30から250の範囲にあってよく、40から125の範囲にあってもよい。
エチレングリコールの上記平均繰り返し数は、ゲル濾過クロマトグラフィーや質量分析によって分子量を測定し、NMRによってR1〜R4基の数を推定することで推定することができる。
L1は、単結合又はエチレングリコール若しくはA1を結合させる反応形式に応じて導入されるリンカーを表す。L1の例としては、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、カルボニル基、チオエステル結合、またはカルバメート結合、アルキル基等、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
Z1は、シクロオクチン環若しくはアザシクロオクチン環を有する基を表す。シクロオクチン環およびアゾシクロオクチン環中のアルキン基はアジド基に対する反応性が高く、銅触媒等の触媒を用いることなく、アジド基とクリック反応することができる。このようなシクロオクチン環若しくはアザシクロオクチン環を有する基としては、下記一般式(4)〜(7)で表される基を用いてもよい。
L1は、Z1基とA1基を連結するリンカーである。例えば、本願実施例で用いられるDBCO−4armPEGにおいては、以下の式(8)で示される部分がL1に相当する。
例えば、式(8)のCO−側がZ1基の*に、O−側がA1基の*に結合してもよいが、又は、式(8)のCO−側がZ1基の*に、O−側がA1基の*に結合してもよい。
これらの原料化合物及び反応形式は、原料化合物の入手しやすさ、及び、反応の容易さの観点から選択されたものであり、L1の構造は、このような観点からZ1基とA1基を連結するのに適した構造であればよく、上記式(8)の構造に限られるものではない。 前記一般式(1)で表される化合物として、より具体的には、以下の一般式(9)〜(11)の化合物が、好ましい化合物として挙げられる。以下の一般式(9)〜(11)においては、各種パラメータは上述した一般式(1)の例と同様である。
具体的には、下記化合物Aのシクロオクチン環又はアザシクロオクチン環に含まれるアルキン基が下記化合物Bによって、前記化合物Bが有するアジド基を介して修飾されていてもよい。
アルキン基全体に対する修飾率は、10〜100%であってもよい。
このようなハイドロゲルは、例としては、クリック架橋型架橋剤の有する前記アルキン基と、下記アジド修飾タンパク質のアジド基とが縮合する反応によって得られる。
ハイドロゲル中のモル濃度として化合物Aは0.6〜2.5mMであってよく、化合物Bは12.5〜25.0mg/mLであってもよい。
このタンパク質は、細胞接着性を有するタンパク質であることが好ましい。
細胞接着性を有するとは、タンパク質が細胞外マトリックスとして細胞が付着しやすい性質、すなわち細胞接着活性部位であるアルギニンーグリシンーアスパラギン酸(RGD)を多く含むことをいう。
このようなタンパク質の具体例としては、ゼラチン、コラーゲン、ラミニン又はマトリゲル等が挙げられる。
本実施形態では、タンパク質としてゼラチンが好ましく挙げられる。
本実施形態に係るアジド修飾タンパク質は、ゼラチンがアジドで修飾されたアジド修飾ゼラチンが好ましい。
アジド修飾タンパク質の分子量は特に限定されず、適宜選択してよいが、目安として104〜105のものを用いることができる。
本実施形態に用い得るアジド修飾高分子は、上記Azide−gelatinに限られるものではなく、分子内にアジド基を導入する基を複数有する高分子であれば、本実施形態に係る隔膜2に使用可能である。このような高分子としては、ゼラチン、コラーゲン、ラミニンなどの細胞接着性のタンパク質およびこれらのタンパク質を主成分とするマトリゲルなどの細胞培養基材を用いてもよい。
細胞20は隔膜2を透過できない。
隔膜2は多孔質膜であってもよい。隔膜2の平均細孔径は例えば0.1μm〜10μmである。隔膜2の細孔の大きさは、液体は通過するが、細胞20が通過できない大きさである。
隔膜2は、内面側空間1aと外面側空間1bとの圧力差に応じて変形し、少なくとも一部が伸縮により隔膜2の厚さ方向に変位可能である。隔膜2は、周縁部が培養室1の底面1eまたは凹部1d内面に固定されている。
図2(A)で示すように、隔膜2が変形していないときの隔膜2の位置を通常位置P1という。図2(B)で示すように、中央部を含む部分が下方に変位したときの隔膜2の位置を下方変位位置P2という。図2(C)で示すように、中央部を含む部分が上方に変位したときの隔膜2の位置を上方変位位置P3という。
隔膜2の厚みは0.1〜100μmが好ましい。隔膜2は、乾燥後の厚みが0.1〜100μmであることが好ましい。
培養液流路4は、第2培養液導入流路と第2培養液排出流路とを兼ねる流路である。
本実施形態に係る細胞培養方法は、1または複数の細胞培養ユニットを有する貯留槽を備え、前記細胞培養ユニットは、第1培養液が貯留される内面側空間を有する培養室と、細胞が接着可能な第1面と前記第1面とは反対の第2面とを有し、かつ、前記第1面が前記内面側空間に面する透過性の隔膜と、第2培養液が貯留される第2培養液貯留室と、を有し、前記培養室は、前記隔膜の前記第2面が面する空間であって前記第2培養液貯留室に貯留される前記第2培養液が導入される外面側空間を有し、前記隔膜は伸縮性を有し、前記内面側空間と前記外面側空間との圧力差に応じて、伸縮により少なくとも一部が厚さ方向に変位可能である細胞培養装置を準備し、前記内面側空間に面する前記隔膜の前記第1面に前記細胞を接着させた状態で、前記内面側空間と前記外面側空間とのうち少なくともいずれか一方の圧力を調整することによって、前記隔膜を伸縮により厚さ方向に変位させる。
次に、細胞培養装置10を用いて細胞を培養する方法の一例について説明する。
細胞20は、例えば、腸、腎臓、血液脳関門、肺などの膜型臓器の細胞である。
図1に示すように、第1圧力調整部14Aを稼働させ、培養室1の主室1cに第1培養液C1を供給することによって、内面側空間1aを加圧する。内面側空間1aの圧力が外面側空間1bの圧力より高くなると、隔膜2は、図2(A)に示す通常位置P1(平坦な形態)から、図2(B)に示す下方変位位置P2(下方に膨出した形態)に変位する。この際、隔膜2は弾性的に伸び変形する。
内面側空間1aの第1培養液C1の一部は隔膜2を透過して外面側空間1bに移行してもよい。細胞20は隔膜2を透過しない。
図1に示すように、第2圧力調整部14Bを稼働させ、培養液貯留室3に第2培養液C2を供給することによって、培養液貯留室3を加圧する。培養液貯留室3は培養液流路4を通して外面側空間1bと連通しているため、培養液貯留室3の圧力上昇によって外面側空間1bの圧力は上昇し、内面側空間1aの圧力より高くなる。そのため、隔膜2は、下方変位位置P2から通常位置P1(平坦な形態)を経て、図2(C)に示す上方変位位置P3(上方に膨出した形態)に変位する。
下方変位位置P2から通常位置P1に変位するとき、隔膜2は弾性的に縮み変形し、通常位置P1から上方変位位置P3に変位するとき、隔膜2は弾性的に伸び変形する。
外面側空間1bの第1培養液C1の一部は隔膜2を透過して内面側空間1aに移行してもよい。
被検体となる物質を系内(例えば培養室1の内面側空間1a)に添加することによって、被検体となる物質の、細胞20に対する影響を評価することができる。被検体となる物質としては医薬品候補物質、その他の化成品(食品添加物、化粧品原料、塗料、農薬など)に用いられる化学物質が挙げられる。
第1実施形態に係る細胞培養装置10の変形例について、図4を参照して説明する。図4は、細胞培養装置10の変形例である細胞培養装置10aを示す概略図である。なお、既出の構成と同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
図4に示すように、細胞培養装置10aは、貯留槽11を備えている。貯留槽11は、容器状の槽本体12と、蓋部13とによって構成されており、細胞培養ユニット9を形成する。
蓋部13は、培養室1、培養液貯留室3の上部開口1g,3gをそれぞれ気密に閉止可能である。蓋部13が上部開口1g,3gを気密に閉止する構造としては、例えば、蓋部13が、上部開口1g,3gのそれぞれを包囲するパッキン16,16を介して槽本体12の上面に当接する構造を例示できる。なお、図4では、蓋部13は、槽本体12から離間して示されている。
次に、細胞培養装置10aを用いて細胞を培養する方法の一例について説明する。
(1)工程1
通気孔1hを通して培養室1に気体(例えば空気)を供給して内面側空間1aを加圧する。この際、培養液貯留室3は通気孔3hを通して大気に開放しておくことが好ましい。
内面側空間1aの圧力が外面側空間1bの圧力より高くなると、隔膜2は、通常位置から下方変位位置に変位する。この際、隔膜2は弾性的に伸び変形する。
通気孔3hを通して培養液貯留室3に気体(例えば空気)を供給して培養液貯留室3を加圧する。この際、培養室1は通気孔1hを通して大気に開放しておくことが好ましい。
培養液貯留室3の圧力上昇によって外面側空間1bの圧力は上昇し、内面側空間1aの圧力より高くなる。そのため、隔膜2は、下方変位位置から通常位置を経て上方変位位置に変位する。下方変位位置から通常位置に変位するとき、隔膜2は弾性的に縮み変形し、通常位置から上方変位位置に変位するとき、隔膜2は弾性的に伸び変形する。
[細胞培養装置]
第2実施形態に係る細胞培養装置10Aについて、図5を参照して説明する。図5は、細胞培養装置10Aを模式的に示す概略図である。なお、既出の構成と同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
図5に示すように、細胞培養装置10Aは、貯留槽11Aを備えている。貯留槽11Aは、槽本体12Aと、蓋部13Aとによって構成されており、細胞培養ユニット9Aを形成する。
培養室21は、主室21cと、主室21cの底面に形成された凹部1dとを有する。主室21cの内部空間は内面側空間21aである。内面側空間21aは、第1培養液導入流路24を通して導入された第1培養液C1が流通可能である。
第1培養液導入流路24は、一端(第1端)が第1導入用培養液貯留室22に接続され、他端(第2端)が培養室21の一端部(図5において左端部、第1端部)に接続されている。第1培養液導入流路24は、第1導入用培養液貯留室22の第1培養液C1を培養室21に導くことができる。
第1培養液排出流路25は、一端(第1端)が培養室21に接続され、他端(第2端)が第1排出用培養液貯留室23に接続されている。第1培養液排出流路25の一端(第1端)は、培養室21の他端部(図5において右端部、第2端部)に接続されている。第1培養液排出流路25は、培養室21の第1培養液C1を第1排出用培養液貯留室23に導くことができる。
断面が矩形のマイクロ流路を流れる液体の流量(Q)と圧力損失(ΔP)には以下の関係がある(F. M. White, Viscous Fluid Flow, McGraw-Hill Companies, Inc, Boston, 2006を参照)。
流路の一部に、流路断面積が1/10以下となっている抵抗流路部位が形成された場合には、抵抗流路の圧力損失のみを考慮して流路設計をすることで流路網の設計が容易になるという利点がある。
次に、細胞培養装置10Aを用いて細胞を培養する方法の一例について説明する。
(1)工程1
通気孔22hを通して第1導入用培養液貯留室22に気体(例えば空気)を供給する。
第1導入用培養液貯留室22の圧力上昇によって、第1導入用培養液貯留室22の第1培養液C1の一部は第1培養液導入流路24に流入する。第1培養液導入流路24の第1培養液C1の一部が培養室21(詳しくは内面側空間21a)に流入することによって、内面側空間21aは加圧される。この際、培養液貯留室3は通気孔3hを通して大気に開放しておくことが好ましい。第1排出用培養液貯留室23も通気孔23hを通して大気に開放しておくことが好ましい。
内面側空間21aの圧力が外面側空間1bの圧力より高くなると、隔膜2は、通常位置から下方変位位置に変位する。この際、隔膜2は弾性的に伸び変形する。
そのため、培養室21(詳しくは内面側空間21a)には、培養室21の一端部(第1端部)から他端部(第2端部)に向けた第1培養液C1の流れが生じる。その過程で、第1培養液C1は、隔膜2の内面2a(図2(A)参照)に対面して内面2aに沿って流れ、その過程で細胞20にせん断力を加える。
内面側空間21aの第1培養液C1は、第1培養液排出流路25を通って第1排出用培養液貯留室23に向かって流れる。
通気孔3hを通して培養液貯留室3に気体(例えば空気)を供給して培養液貯留室3を加圧する。培養液貯留室3の圧力上昇によって外面側空間1bの圧力は上昇し、内面側空間21aの圧力より高くなる。そのため、隔膜2は、下方変位位置から通常位置を経て上方変位位置に変位する。下方変位位置から通常位置に変位するとき、隔膜2は弾性的に縮み変形し、通常位置から上方変位位置に変位するとき、隔膜2は弾性的に伸び変形する。
工程2においては、第1導入用培養液貯留室22から培養室21(詳しくは内面側空間21a)を経て第1排出用培養液貯留室23に向かう第1培養液C1の流れを継続させてもよいし、停止させてもよい。
第3実施形態に係る細胞培養装置10Bについて、図6を参照して説明する。図6は、細胞培養装置10Bを模式的に示す概略図である。なお、既出の構成と同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
図6に示すように、細胞培養装置10Bでは、貯留槽11Bの細胞培養ユニット9Bは、培養室21と、隔膜2と、培養液貯留室3と、培養液流路4と、第1導入用培養液貯留室22と、第1排出用培養液貯留室23と、第1培養液導入流路24と、第1培養液排出流路25と、第1培養液返送流路26とを有する。貯留槽11Bは、容器状の槽本体12Bと、蓋部13Aとによって構成されている。
細胞培養ユニット9Bは、第1培養液返送流路26を有する点で、第2実施形態における細胞培養ユニット9A(図5参照)と異なる。
第1排出用培養液貯留室23には、第1培養液排出流路25の他端(第2端)に、逆止弁52が設けられている。逆止弁52は、第1培養液排出流路25から第1排出用培養液貯留室23へ向かう第1培養液C1の流れを許容し、かつその逆の方向の流れ(第1排出用培養液貯留室23から第1培養液排出流路25へ向かう第1培養液C1の流れ)を阻止する。
逆止弁51,52は、培養液の流れを規制する逆流防止機構の例である。逆止弁51,52は、第1培養液C1の循環流れ(第1導入用培養液貯留室22から、培養室21、第1排出用培養液貯留室23を経て第1導入用培養液貯留室22に戻る流れ)の方向とは逆の方向の流れを阻止できる。
次に、細胞培養装置10Bを用いて細胞を培養する方法の一例について説明する。
(1)工程1
(1−1)サブ工程1−1
通気孔22hを通して第1導入用培養液貯留室22に気体(例えば空気)を供給する。
第1導入用培養液貯留室22の圧力上昇によって、第1培養液導入流路24の第1培養液C1の一部が培養室21(詳しくは内面側空間21a)に流入し、内面側空間21aは加圧される。この際、培養液貯留室3は通気孔3hを通して大気に開放しておくことが好ましい。第1排出用培養液貯留室23も通気孔23hを通して大気に開放しておくことが好ましい。
内面側空間21aの圧力が外面側空間1bの圧力より高くなると、隔膜2は、通常位置から下方変位位置に変位する。この際、隔膜2は弾性的に伸び変形する。
なお、第1導入用培養液貯留室22は逆止弁51を有するため、第1導入用培養液貯留室22の第1培養液C1は第1培養液返送流路26には流入しない。
通気孔23hを通して第1排出用培養液貯留室23に気体(例えば空気)を供給する。
この際、第1導入用培養液貯留室22は通気孔22を通して大気に開放しておくことが好ましい。
第1排出用培養液貯留室23の圧力上昇によって、第1排出用培養液貯留室23の第1培養液C1は、第1培養液返送流路26を通って第1導入用培養液貯留室22に向かって流れる。
なお、第1排出用培養液貯留室23は逆止弁52を有するため、第1排出用培養液貯留室23の第1培養液C1は第1培養液排出流路25には流入しない。
第2実施形態における工程2と同様としてよい。
第4実施形態に係る細胞培養装置10Cについて、図7を参照して説明する。図7は、細胞培養装置10Cを模式的に示す概略図である。なお、既出の構成と同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
図7に示すように、細胞培養装置10Cでは、貯留槽11Cの細胞培養ユニット9Cは、培養室21と、隔膜2と、培養液貯留室3と、培養液流路4と、第1導入用培養液貯留室22と、第1排出用培養液貯留室23と、第1培養液導入流路24と、第1培養液排出流路25と、第1培養液返送流路26とを有する。貯留槽11Cは、容器状の槽本体12Cと、蓋部13Aとによって構成されている。
ラプラス弁53は、第1培養液C1の循環流れ(第1導入用培養液貯留室22から、培養室21、第1排出用培養液貯留室23を経て第1導入用培養液貯留室22に戻る流れ)の方向とは逆の方向の流れを阻止できる。
ラプラス弁54は、第1培養液C1の循環流れ(第1導入用培養液貯留室22から、培養室21、第1排出用培養液貯留室23を経て第1導入用培養液貯留室22に戻る流れ)の方向とは逆の方向の流れを阻止できる。
ラプラス弁に空気が流入してしまう圧力(ラプラス圧、限界圧力)(ΔPLap)は界面張力(γ)およびラプラス弁を構成するマイクロ流路の幅(wL)および深さ(hL)によって以下の式(3)で計算できる。
仮に細胞の耐圧性を生体内の血圧の上限程度(30kPa=225mmHg)とすると、実施形態に係る細胞培養装置を駆動するために現実的な圧力範囲は1kPa〜30kPa程度となる。培養液の界面張力は60mN/m程度であり、ラプラス弁を構成するマイクロ流路の断面が正方形の場合、つまりwL=hLの場合、30kPaで空気が流入するマイクロ流路の寸法(長さ)は上記式(3)よりwL=hL=8μm程度、1kPaで空気が流入するマイクロ流路の寸法(長さ)はwL=hL=240μm程度と推算される。
ラプラス弁を構成するマイクロ流路の寸法(長さ)を上記寸法(30kPaのときのwL=hL=8μm、1kPaのときのwL=hL=240μm)よりも小さくすることで、想定する圧力で運用した際にラプラス弁に空気が流入してしまうことを防ぐことができる。
すなわち、ラプラス弁が機能するための限界の圧力であるラプラス圧ΔPLapが、実施形態に係る細胞培養装置で使用する圧力範囲よりも大きくなるように、ラプラス弁を構成するマイクロ流路を形成すれば、ラプラス弁に空気が流入してしまうことを防ぐことができる。
なお、wLとhLの比率が1:1でない場合も同様に式(3)に基づいて流路の寸法を設計することが可能である。
ラプラス弁53,54は、培養液の流れを規制する逆流防止機構の例である。
サブ工程1−2では、第1排出用培養液貯留室23の圧力上昇に伴って延長管路41および第1培養液排出流路25の第1培養液C1は培養室21に流入できるが、延長管路41および第1培養液排出流路25の第1培養液C1がなくなった時点で、ラプラス弁54によって培養室21への第1培養液C1の流入は停止する。そのため、第1培養液C1の循環流れ(第1導入用培養液貯留室22から、培養室21、第1排出用培養液貯留室23を経て第1導入用培養液貯留室22に戻る流れ)の方向とは逆の方向の流れを阻止できる。
サブ工程1−1では、第1培養液C1は、延長管路41の上端開口41aから第1排出用培養液貯留室23内に流れ込む。
サブ工程1−1では、第1導入用培養液貯留室22の圧力上昇に伴って延長管路42および第1培養液返送流路26の第1培養液C1は第1排出用培養液貯留室23に流入できるが、延長管路42および第1培養液返送流路26の第1培養液C1がなくなった時点で、ラプラス弁53によって第1排出用培養液貯留室23への第1培養液C1の流入は停止する。そのため、第1培養液C1の循環流れの方向とは逆の方向の流れを阻止できる。
サブ工程1−2では、第1培養液C1は、延長管路42の上端開口42aから第1導入用培養液貯留室22内に流れ込む。
[細胞培養装置]
第5実施形態に係る細胞培養装置10Dについて、図8を参照して説明する。図8は、細胞培養装置10Dを模式的に示す概略図である。なお、既出の構成と同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
図8に示すように、細胞培養装置10Dでは、貯留槽11Dの細胞培養ユニット9Dは、培養室21と、隔膜2と、第1導入用培養液貯留室22と、第1排出用培養液貯留室23と、第1培養液導入流路24と、第1培養液排出流路25と、第1培養液返送流路26と、第2導入用培養液貯留室27(第2培養液貯留室)と、第2排出用培養液貯留室28と、第2培養液導入流路29と、第2培養液排出流路30と、第2培養液返送流路31とを備えている。貯留槽11Dは、容器状の槽本体12Dと、蓋部13Dとによって構成されている。
第2培養液導入流路29は、一端(第1端)が第2導入用培養液貯留室27に接続され、他端(第2端)が培養室21の凹部1dの底部に接続されている。第2培養液導入流路29は、第2導入用培養液貯留室27の第2培養液C2を外面側空間1bに導くことができる。
第2培養液排出流路30は、一端(第1端)が培養室21の凹部1dの底部に接続され、他端(第2端)が第2排出用培養液貯留室28に接続されている。第2培養液排出流路30は、外面側空間1bの第2培養液C2を第2排出用培養液貯留室28に導くことができる。
第2培養液返送流路31は、一端(第1端)が第2排出用培養液貯留室28に接続され、他端(第2端)が第2導入用培養液貯留室27に接続されている。第2培養液返送流路31は、第2排出用培養液貯留室28の第2培養液C2を第2導入用培養液貯留室27に送ることができる。
第1培養液返送流路26には、抵抗流路部位26aが形成されている。
第2排出用培養液貯留室28内には、第2培養液排出流路30の他端(第2端)に連設された延長管路44が設けられている。延長管路44の上端開口は、延長管路44の基端より高い位置にある。
第2排出用培養液貯留室28には、第2培養液返送流路31の一端(第1端)に、第2排出用培養液貯留室28から第2培養液返送流路31への第2培養液C2の流れを許容し、かつ気体(例えば空気)の流入を阻止するラプラス弁56が設けられている。
次に、細胞培養装置10Dを用いて細胞を培養する方法の一例について説明する。
(1)工程1
第3実施形態における工程1と同様としてよい。
(2−1)サブ工程2−1
通気孔27hを通して第2導入用培養液貯留室27に気体(例えば空気)を供給して第2導入用培養液貯留室27を加圧する。この際、第2排出用培養液貯留室28は通気孔28hを通して大気に開放しておくことが好ましい。
第2導入用培養液貯留室27の圧力上昇によって外面側空間1bの圧力は上昇し、内面側空間21aの圧力より高くなる。そのため、隔膜2は、下方変位位置から通常位置を経て上方変位位置に変位する。下方変位位置から通常位置に変位するとき、隔膜2は弾性的に縮み変形し、通常位置から上方変位位置に変位するとき、隔膜2は弾性的に伸び変形する。
第2培養液返送流路31はラプラス弁56を有するため、第2培養液C2の逆流は規制される。
通気孔28hを通して第2排出用培養液貯留室28に気体(例えば空気)を供給して第2排出用培養液貯留室28を加圧する。この際、第2導入用培養液貯留室27は通気孔27hを通して大気に開放しておくことが好ましい。
第2排出用培養液貯留室28の圧力上昇によって、第2排出用培養液貯留室28の第2培養液C2は、第2培養液返送流路31を通って第2導入用培養液貯留室27に向かって流れる。
第2培養液導入流路29はラプラス弁55を有するため、第2培養液C2の逆流は規制される。
工程2においては、第1導入用培養液貯留室22から、培養室21(詳しくは内面側空間21a)を経て第1排出用培養液貯留室23に向かう第1培養液C1の流れを継続させてもよいし、停止させてもよい。
第6実施形態に係る細胞培養装置10Eについて、図9を参照して説明する。図9は、細胞培養装置10Eを模式的に示す概略図である。なお、既出の構成と同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
図9に示すように、細胞培養装置10Eでは、貯留槽11Eの細胞培養ユニット9Eは、第1導入用培養液貯留室22、第1排出用培養液貯留室23、第2導入用培養液貯留室27および第2排出用培養液貯留室28の底面に、それぞれ、細胞保持凹部22d,23d,27d,28d(細胞保持部)が形成されている点で、第5実施形態に係る細胞培養ユニット9D(図8参照)と異なる。貯留槽11Eは、容器状の槽本体12Eと、蓋部13Dとによって構成されている。
被検体となる物質を系内(例えば第1導入用培養液貯留室22)に添加することによって、被検体となる物質の、腸における吸収と、他の臓器の細胞に対する作用を評価することが可能となる。
第7実施形態に係る細胞培養装置10Fについて、図10を参照して説明する。図10は、細胞培養装置10Fを模式的に示す概略図である。なお、既出の構成と同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
細胞培養装置10Fは、複数の細胞培養ユニット9(図1および図3参照)を有する。
複数の細胞培養ユニット9の培養室1のうち少なくとも2つは、例えば蓋部13(図4参照)に形成された気体流路18によって互いに接続されている。気体流路18は、培養室1の上部の気相空間に気体を流通させることができる。これによって、複数の培養室1は、気体流路18を通して気体が流通可能となる。
複数の細胞培養ユニット9の培養液貯留室3のうち少なくとも2つは、例えば蓋部13(図4参照)に形成された気体流路(図示略)によって互いに接続されていてもよい。前記気体流路は、培養液貯留室3の上部の気相空間に気体を流通させることができる。これによって、複数の培養液貯留室3は、気体流路を通して気体が流通可能となる。
換言すれば、例えば、特許文献1に記載の細胞培養装置と比較して、本実施形態によれば、スループットを向上する際にも多数の圧力ラインを必要とせず、装置構成を簡略化できる。
したがって、創薬スクリーニング等において効率の高い試験が可能である。
なお、本実施形態と同様に、他の実施形態における複数の培養液貯留室のうち少なくとも2つが気体流路によって互いに連通されていてもよい。
肺活量測定の際には、肺内のガス体積からとして5倍程度の体積収縮が起こり、通常の呼吸では、機能的残気量(2,400mL)のうちの500〜1,000mL程度が換気されていると言われている(標準生理学 第6版、医学書院、p633−634)。
肺胞の体積変化も肺内のガス体積の変化と同程度と考えられるため、肺胞表面積の拡張は体積変化の2/3乗程度と推算され、通常の呼吸時において、15〜30%程度の面積変化が起こっている。
原理的には、隔膜の膜面積に比較して動作チャネルを深く形成すれば隔膜の面積変化を大きくできるが、このためには面方向に比較して深さ方向に大きな構造を作製する必要がある。一般的な微細加工技術では面方向と深さ方向の比率、つまりアスペクト比の大きい構造の作製は困難となる傾向にあり、伸縮可能材料でアスペクト比の大きい構造を作製することは大変困難である。
そのため、動作チャネルを深く形成することは実現が難しい。
上記実施形態に係る細胞培養装置および細胞培養方法によれば、膜の非伸縮時と比較して膜の100%程度までの伸張(例えば、図21の伸縮率200%に該当)を行うことが可能であり、非特許文献1に示されたような手法と比較して、より大きな伸縮刺激を付与することが可能である。
例えば、血管の拡張や筋肉の伸縮においては異方的な伸縮が組織に付与される。
一方、肺の肺胞組織の拡張・伸縮においては等方的な伸縮刺激が組織に付与される。
一方、膜を形成するスリットの形状は任意であり、例えば、図3及び図10に記載されているように、膜を円形に形成すると等方的な伸縮刺激を付加することも可能である。
このような等方的な伸縮刺激を膜に付与することは、非特許文献1のように隔膜下の流路に隣接する動作チャネルへの加減圧によって隔膜を伸縮させる構成では実現不可能である。
[1]ゲル薄膜(隔膜)の作製
図12に示すゲル薄膜64(隔膜2)を次のように作製した。
滅菌したマイクロチューブの中に24.0mgのDBCO−4armPEG(MW:11755.4)を秤量し、滅菌水で255μLにメスアップした。この液をピペッティングによって混合した後、冷暗所に保存した。
滅菌したマイクロチューブの中に48.8mgのAzide−ゼラチン(アミノ基比25mol%のazide−PEG−NHSで合成)を秤量し、37℃の滅菌水で976μLにメスアップした。この液をピペッティングによって混合した後に、5000G、3minの遠心処理を行うことで不溶成分を沈降させ、上清のみを、滅菌したマイクロチューブに回収し、冷暗所に保存した。
図13に示すように、ルミラーフィルムを矩形(76mmx26mm)に切り出し、ゲル薄膜支持体61を得た。ゲル薄膜支持体61の中央に、長さ10mmx幅1.2mmのスリット62を形成した。
(1−4−1)薄膜の形成
図14に示すように、滅菌したマイクロチューブに、10μLのAzide−ゼラチン水溶液(50mg/mL)(前述)を入れた。マイクロチューブに、滅菌水で2.6mMに希釈したDBCO−4armPEG水溶液を10μL入れ、混合して原料液を得た。この原料液をゲル薄膜支持体61の表面であってスリット62に近い箇所に塗布した。
図15に示すように、200μL用のピペットチップを用いて、スリット62を覆うように原料液を引き延ばすことによって、スリット62に薄膜63を形成した。
(1−4−2)ゲル化
蓋を外した直径3.5cmのディッシュ中に1mLの滅菌水を入れ、このディッシュの縁の上に前述のゲル薄膜支持体61(図15参照)を置いた。これらを直径10cmのディッシュの中に置き、蓋をして4℃の条件で30分間、置くことによって、薄膜63をゲル化させてゲル薄膜64(図12参照)(隔膜2)とした。
(2−1)底面無しマイクロ流路器材(sticky Slide I 0.6Luer, ibidi GmbH, Munich, Germany)2つを、ゲル薄膜支持体61を上下から挟み込むように両面テープで貼り付けることによって、ゲル薄膜64(隔膜2)の両面にそれぞれ空間(マイクロ流路)を有する流路デバイスを得た。
ゲル薄膜支持体61の上面側のマイクロ流路は、図1の細胞培養装置10における内面側空間1aに相当する。下面側のマイクロ流路は、図1の細胞培養装置10における外面側空間1bに相当する。
(3−1)ゲル薄膜支持体61の両面側のマイクロ流路器材に、それぞれ廃液用のシリコーンチューブの一端(第1端)を接続し、他端(第2端)を廃液容器に入れた。
ゲル薄膜支持体61の上面側のマイクロ流路器材に接続したシリンジにおける培養液の液面と、このマイクロ流路器材に接続した廃液容器の液面とを同じ高さとした。同様に、下面側のマイクロ流路器材に接続したシリンジにおける培養液の液面と、このマイクロ流路器材に接続した廃液容器の液面とを同じ高さとした。これによって、ゲル薄膜支持体61の上面側のマイクロ流路(内面側空間)の圧力と、下面側のマイクロ流路(外面側空間)の圧力とはほぼ等しくなる。
図16(A)に示すように、この状態で、ゲル薄膜64(隔膜)を顕微鏡で観察した。
ゲル薄膜支持体61の下面側のマイクロ流路器材に接続したシリンジにおける培養液の液面と、このマイクロ流路器材に接続した廃液容器の液面とを同じ高さとした。上面側のマイクロ流路器材に接続したシリンジにおける培養液の液面は、このマイクロ流路器材に接続した廃液容器の液面より15cm高くした。これによって、培養液を上面側のマイクロ流路に流通させるとともに、ゲル薄膜支持体61の上面側のマイクロ流路の圧力を下面側のマイクロ流路の圧力より高くした。
図16(B)は、焦点位置を下方に189.25μmずらせたときのゲル薄膜64の観察像である。
図16(B)に示すように、この状態で、ゲル薄膜64(隔膜)を顕微鏡で観察し、焦点位置を計測した。その結果、ゲル薄膜支持体61の上面側のマイクロ流路の圧力と下面側のマイクロ流路の圧力とがほぼ等しい場合(図16(A)参照)を基準として、本試験ではゲル薄膜64の中央部が下方に最大189.25μm変位したことが確認された。
逆に、上面側のマイクロ流路器材に接続したシリンジにおける培養液の液面と、このマイクロ流路器材に接続した廃液容器の液面とを同じ高さとし、下面側のマイクロ流路器材に接続したシリンジにおける培養液の液面を、このマイクロ流路器材に接続した廃液容器の液面より15cm高くした。これによって、培養液を下面側のマイクロ流路に流通させるとともに、下面側のマイクロ流路の圧力を上面側のマイクロ流路の圧力より高くした。
図16(C)は、焦点位置を上方に262.35μmずらせたときのゲル薄膜64の観察像である。
図16(C)に示すように、この状態で、ゲル薄膜64(隔膜)を顕微鏡で観察し、焦点位置を計測した。その結果、ゲル薄膜支持体61の上面側のマイクロ流路の圧力と下面側のマイクロ流路の圧力とがほぼ等しい場合(図16(A)参照)を基準として、本試験ではゲル薄膜64の中央部が上方に最大262.35μm変位したことが確認された。
ゲル薄膜支持体61の下面側のマイクロ流路器材に接続したシリンジにおける培養液の液面と、このマイクロ流路器材に接続した廃液容器の液面とを同じ高さとした。
上面側のマイクロ流路器材に接続したシリンジにおける培養液の液面の、このマイクロ流路器材に接続した廃液容器の液面に対する高さを、0〜15cmの範囲で変化させた。
これによって、ゲル薄膜支持体61の上面側のマイクロ流路の圧力を変動させた。
例えば、図17(1)ではゲル薄膜64が通常位置にあるため、ゲル薄膜64に焦点が合っている。これに対し、図17(4)および図17(5)では、上面側のマイクロ流路の圧力が高くなることによってゲル薄膜64の中央部が下方に変位したことから、焦点が合っていない。以後、焦点の合致と非合致が繰り返されている。このように、図17(1)〜図17(34)では、ゲル薄膜64の中央部の上下の変位が確認できる。
(試験5)
ゲル薄膜支持体61の上面側および下面側のマイクロ流路器材に接続した廃液側のシリコーンチューブをクリップで閉塞させることによって、マイクロ流路に培養液が流通しないようにした。それ以外は試験4と同様にして、ゲル薄膜支持体61の上面側のマイクロ流路の圧力を変動させた。
図18(1)〜図18(35)は、ゲル薄膜64(隔膜)の動作を示す連続写真である。図18(1)〜図18(35)に示すように、その結果、試験4と同様に、ゲル薄膜64の中央部の上下の変位が確認できた。
このことから、マイクロ流路における培養液の流れがない場合でも、圧力の変動によって、ゲル薄膜64の変位が可能であることがわかる。
試験4の終了後の細胞について、次のようにして生死を確認した。
ゲル薄膜支持体61の上面側のマイクロ流路器材に接続したシリンジにカルセイン−AM(終濃度2μM)とエチジウムホモダイマー(終濃度2μM)を溶解したDMEM/F12(10%FBS)を入れてマイクロ流路に導入し、15分間放置した。蛍光顕微鏡で細胞の生死を確認した。図19(A)は、細胞の位相差観察像である。図19(B)は生細胞を示し、図19(C)は死細胞を示す。図19(D)は、生細胞と死細胞とを合わせて示す写真である。
これらの結果より、ほぼ全ての細胞が生存し(図19(B)参照)、死細胞はごく少数であったことがわかる(図19(C)参照)。
下面側のマイクロ流路に接続するシリンジに加圧ポンプを取り付け、マイクロ流路に圧力をかけながら、ゲル薄膜の変位による焦点距離の変化と、ゲル薄膜の伸縮率を評価した。ゲル薄膜の伸縮率は2細胞間の距離から算出した。
図20(A)〜図20(F)は、各圧力におけるゲル薄膜および細胞の写真である。
図21は、焦点距離と圧力との関係、および、伸縮率と圧力との関係を示すグラフである。
例えば、図1に示す細胞培養装置10は、第1圧力調整部14Aおよび第2圧力調整部14Bを備えているが、細胞培養装置は、圧力調整部を備えていなくてもよい。図1に示す細胞培養装置10では、第1圧力調整部14Aが内面側空間1aの圧力を調整し、第2圧力調整部14Bが外面側空間1bの圧力を調整するが、圧力調整部は、内面側空間と外面側空間のうち一方のみを調整できる構成であってもよい。
図4に示す細胞培養装置10aの貯留槽11は、槽本体12と蓋部13とを有するが、これに限らず、槽本体と蓋部とが一体となった貯留槽を採用してもよい。
図13に示すスリット62の形状(平面視形状)は特に限定されず、例えば円形状、楕円形状、矩形状などであってもよい。
隔膜の伸び率(例えばJIS K 6251準拠)は、例えば、引張試験機を用い、例えば厚さ2mm、幅5mmの試験片を、つかみ具間距離20mm、引張り速度500mm/分、試験温度23℃で測定することができる。
図9に示す細胞培養装置10Eでは、細胞は、細胞保持凹部22d,23d,27d,28dのうち少なくともいずれか1つに播種されていればよい。
本実施形態は、細胞工学分野、再生医療分野、バイオ関連工業分野、組織工学分野などにおいて有用である。特に、医薬品の開発、細胞生物学の基礎研究に有用である。
1a 内面側空間
1b 外面側空間
1h,3h,22h,23h,27h,28h 通気孔
2 隔膜
2a 内面(細胞が接着可能な一方の面、第1面)
3 培養液貯留室(第2培養液貯留室)
9,9A,9B,9D 細胞培養ユニット
10,10a,10A,10B,10C,10D,10E 細胞培養装置
11,11A,11B,11C,11D 貯留槽
12,12A,12B,12C,12D,12E 槽本体
13,13A,13D 蓋部
14A,14B,14C,14D 圧力調整部
21 主培養室
22 第1導入用培養液貯留室
22d,23d,27d,28d 細胞保持凹部(細胞保持部)
23 第1排出用培養液貯留室
24 第1培養液導入流路
25 第1培養液排出流路
26 第1培養液返送流路
27 第2導入用培養液貯留室
28 第2排出用培養液貯留室
51,52 逆止弁(逆流防止機構)
53,54,55,117 ラプラス弁(逆流防止機構)
C1 第1培養液
C2 第2培養液
Claims (17)
- 細胞培養装置であって、
1または複数の細胞培養ユニットを有する貯留槽を備え、
前記細胞培養ユニットは、第1培養液が貯留される内面側空間を有する培養室と、
細胞が接着可能な第1面と前記第1面とは反対の第2面とを有し、かつ、前記第1面が前記内面側空間に面する透過性の隔膜と、
第2培養液が貯留される第2培養液貯留室と、を有し、
前記培養室は、前記隔膜の前記第2面が面する空間であって前記第2培養液貯留室に貯留される前記第2培養液が導入される外面側空間を有し、
前記隔膜は伸縮性を有し、前記内面側空間と前記外面側空間との圧力差に応じて、伸縮により少なくとも一部が厚さ方向に変位可能である、
細胞培養装置。 - 前記第1培養液を貯留する第1導入用培養液貯留室と、前記第1導入用培養液貯留室に貯留された前記第1培養液を前記内面側空間に導く第1培養液導入流路と、前記内面側空間に貯留された前記第1培養液を排出する第1培養液排出流路と、前記第1培養液排出流路を経た前記第1培養液が導入される第1排出用培養液貯留室と、をさらに有し、
前記内面側空間は、前記第1培養液導入流路から導入された前記第1培養液が前記第1培養液排出流路に向けて流通可能である、請求項1に記載の細胞培養装置。 - 前記第1排出用培養液貯留室に貯留された前記第1培養液を前記第1導入用培養液貯留室に送る第1培養液返送流路をさらに有する、請求項2に記載の細胞培養装置。
- 前記第1導入用培養液貯留室から前記内面側空間および前記第1排出用培養液貯留室を経て前記第1導入用培養液貯留室に戻る循環流れとは逆の方向の前記第1培養液の流れを規制する逆流防止機構をさらに備えている、請求項3に記載の細胞培養装置。
- 前記逆流防止機構は、前記循環流れとは逆の方向の気体の流れを阻止するラプラス弁である、請求項4に記載の細胞培養装置。
- 前記第2培養液貯留室に貯留された前記第2培養液を前記外面側空間に導く第2培養液導入流路と、前記外面側空間に貯留された前記第2培養液を排出する第2培養液排出流路と、前記第2培養液排出流路を経た前記第2培養液が導入される第2排出用培養液貯留室と、を有する、請求項2〜5のうちいずれか1項に記載の細胞培養装置。
- 前記第1導入用培養液貯留室と、前記第1排出用培養液貯留室と、前記第2培養液貯留室である第2導入用培養液貯留室と、前記第2排出用培養液貯留室とのうち少なくともいずれか1つに、播種された細胞が保持される細胞保持部を有する、請求項6に記載の細胞培養装置。
- 前記複数の前記細胞培養ユニットを有し、
前記複数の前記細胞培養ユニットにおける前記培養室のうち少なくとも2つ、または、前記複数の前記細胞培養ユニットにおける前記第2培養液貯留室のうち少なくとも2つは、気体が流通可能となるように互いに接続されている、請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の細胞培養装置。 - 前記隔膜は、親水性を有する高分子を主成分とし、2価以上の架橋点を有する架橋剤で架橋されたハイドロゲルで構成されている、請求項1〜8のうちいずれか1項に記載の細胞培養装置。
- 前記架橋剤は、ポリエチレングリコールを主鎖とする、請求項9に記載の細胞培養装置。
- 前記隔膜における前記細胞が接着可能な前記第1面は、細胞接着性を有するタンパク質によってコーティングされている、請求項1〜10のうちいずれか1項に記載の細胞培養装置。
- 前記高分子は、ゼラチンである、請求項9または10に記載の細胞培養装置。
- 前記ハイドロゲルは、ジベンゾシクロオクチンとアジド基との反応によって得られるゲルである、請求項9または10に記載の細胞培養装置。
- 前記隔膜は、保管時には乾燥状態であり、培養時には前記第1培養液および前記第2培養液に触れることで膨潤する、請求項9または10に記載の細胞培養装置。
- 前記隔膜の厚みは、0.1〜100μmである、請求項14に記載の細胞培養装置。
- 前記内面側空間と前記外面側空間のうち少なくともいずれか一方の圧力を調整する圧力調整部をさらに備えている、請求項1〜15のうちいずれか1項に記載の細胞培養装置。
- 細胞培養方法であって、
1または複数の細胞培養ユニットを有する貯留槽を備え、前記細胞培養ユニットは、第1培養液が貯留される内面側空間を有する培養室と、細胞が接着可能な第1面と前記第1面とは反対の第2面とを有し、かつ、前記第1面が前記内面側空間に面する透過性の隔膜と、第2培養液が貯留される第2培養液貯留室と、を有し、前記培養室は、前記隔膜の前記第2面が面する空間であって前記第2培養液貯留室に貯留される前記第2培養液が導入される外面側空間を有し、前記隔膜は伸縮性を有し、前記内面側空間と前記外面側空間との圧力差に応じて、伸縮により少なくとも一部が厚さ方向に変位可能である細胞培養装置を準備し、
前記内面側空間に面する前記隔膜の前記第1面に前記細胞を接着させた状態で、前記内面側空間と前記外面側空間とのうち少なくともいずれか一方の圧力を調整することによって、前記隔膜を伸縮により厚さ方向に変位させる、
細胞培養方法。
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