以下、本実施形態にかかる濾過器について図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、濾過器として、被処理水中の鉄成分の除去を行うことが可能な水浄化システムの塩素除去手段として用いられるものを例示する。また、本明細書において、水浄化システムで水質が改善される、井戸、河川若しくは池等の水源から汲み出した水または雨水を「原水」という。そして、水質が改善されて浄化された原水を「浄水」という。
本実施形態にかかる水浄化システム10は、図1(a)に示すように、被処理水である原水(井水)を浄化する水浄化装置20と、水浄化装置20によって浄化された水を貯留する貯水タンク11と、を備えている。
また、水浄化システム10は、一端(上流端)から流入させた原水を他端(下流端)から流出させる第一配管12を備えており、この第一配管12の途中に水浄化装置20が接続されている。本実施形態では、第一配管12の一端を原水に浸かった状態とすることで、一端から原水を第一配管12内に導入されるようにしている。また、第一配管12の他端を貯水タンク11の上部に接続することで、水浄化装置20によって浄化された水を貯水タンク11内に導出させるようにしている。
貯水タンク11は、図1(a)に示すように、建物1の屋根2に設置されている。この貯水タンク11は、水浄化装置20によって浄化された水を貯留できる構成をしていればよく、その構造や材質は特に限定されるものではない。また、貯水タンク11の容量も特に限定されるものではなく、例えば、300L〜2000Lとすることができる。
また、第一配管12の途中(水浄化装置20よりも上流側)には、原水を汲み上げるための汲水ポンプ13が設置されている。この汲水ポンプ13は、原水を汲み上げ、水浄化装置20を通じて貯水タンク11まで送水することができるものであればよく、種類等も特に限定されるものではない。例えば、圧力スイッチを内蔵した自動ポンプを汲水ポンプ13として用いることができる。具体的には、汲水ポンプ13を、後述する開閉弁12cおよび開閉弁21cの少なくとも一方が開いたときに作動するような構成とすることができる。なお、汲水ポンプ13は、貯水タンク11の天井面に貯留水の水位を検知するための水位センサを設け、水位センサの出力に応じて作動するような構成とすることも可能である。
水浄化装置20は、図1(b)に示すように、第一配管12の汲水ポンプ13よりも下流に配置されて、原水を酸化処理する固形薬剤溶解器21と、固形薬剤溶解器21によって酸化処理された一次処理水を濾過する濾過手段22と、を備えている。
固形薬剤溶解器21は、固体の塩素系薬剤(図示せず)と、塩素系薬剤を内部に保持する固形薬剤保持具21aと、固形薬剤保持具21aを第一配管12に接続するバイパス配管21bと、を備えている。そして、固形薬剤保持具21aの上流側におけるバイパス配管21bには、汲水ポンプ13により汲み上げられた原水の流量を調整する流量調整機構としての開閉弁21cが設けられている。さらに、第一配管12とバイパス配管21bとの接続部12a,12bの間における第一配管12にも、原水の流量を調整する開閉弁12cが設けられている。
固体の塩素系薬剤は、原水中の鉄イオンに対し酸化作用を生じさせるものである。具体的には、塩素系薬剤によって、二価の鉄イオンは三価の鉄イオンに酸化され、さらに不溶性の水酸化鉄(Fe(OH)3)となる。このような塩素系薬剤は特に限定されず、例えば次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウムおよび塩素化イソシアヌル酸からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。次亜塩素酸カルシウムとしては、さらし粉(有効塩素30%)および高度さらし粉(有効塩素70%)の少なくとも一つを用いることができる。塩素化イソシアヌル酸としては、トリクロロイソシアヌル酸ナトリウム、トリクロロイソシアヌル酸カリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、及びジクロロイソシアヌル酸カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。なお、固形薬剤溶解器21において、塩素系薬剤は、徐々に原水に溶解するように錠剤状に固めたもの用いることが好ましい。固形薬剤溶解器21としては、例えば特表平6−501418号公報に記載の薬品供給装置を用いることができる。
なお、固形薬剤溶解器21に替えて、次亜塩素酸ナトリウム水溶液などの塩素系薬剤を投入する液体薬剤供給器を用いることも可能である。
また、濾過手段22は、図1(b)に示すように、第一配管12の固形薬剤溶解器21よりも下流に配置されている。この濾過手段22は、固形薬剤溶解器21によって原水中の鉄イオンを水酸化鉄として析出させた一次処理水から、水酸化鉄を除去するものである。このような濾過手段22は、通常、容器内部に水酸化鉄を除去するための濾材を備えている。水酸化鉄を除去するための濾材としては、比較的安価な濾過砂を使用することができる。また、濾過手段22の濾材として、水和二酸化マンガンをコートしたマンガン砂を用いることもできる。このように、水酸化鉄を除去するための濾材としてマンガン砂を用いるようにすれば、一次処理水中に存在する水酸化鉄だけでなく、マンガンも除去することが可能となる。
本実施形態では、この濾過手段22により濾過された二次処理水が貯水タンク11内に貯留されている。
さらに、水浄化システム10は、一端(上流端)が貯水タンク11の下部に接続され、他端(下流端)が建物1の内部の蛇口などに接続される第二配管14を備えている。このように、本実施形態にかかる水浄化システム10では、第二配管14を介して、貯水タンク11内に貯水された二次処理水が第二配管14を介して蛇口などから供給されるようにしている。
ところで、被処理水中の鉄成分の除去を十分に行うためには、鉄の量に対して塩素系薬剤を過剰に添加する必要がある。そのため、被処理水中の鉄成分を除去する水浄化システム10においては、貯水タンク11内に貯留される二次処理水に遊離塩素が含まれてしまう。そして、二次処理水中に含まれる遊離塩素の濃度が高い場合、この二次処理水は飲用には適さない水となる。なお、飲用に適するか否かの判断は、例えば、WHOの飲料水基準を用いて行うことができる。WHOの飲料水基準では、水中の塩素濃度は5ppm以下と定められており、塩素濃度が5ppmよりも大きな水は、飲用には適さない水であるといえる。したがって、蛇口などから供給される水は、塩素濃度が5ppm以下となるようにするのが好ましい。
そこで、本実施形態にかかる水浄化システム10では、図1(a)および図2に示すように、貯水タンク11の下流側に設けられ、被処理水(二次処理水;被濾過水)に含まれる過剰な塩素を除去する塩素除去手段(濾過器)30をさらに備えるようにしている。具体的には、第二配管14の途中(貯水タンク11よりも下流かつ蛇口などよりも上流)に塩素除去手段(濾過器)30を接続している。この塩素除去手段30としては、例えば、容器の内部に粒状の活性炭(濾材)321を堆積させたものを使用することができる。
なお、貯水タンク11は、汲水ポンプ13、水浄化装置20(固形薬剤溶解器21および濾過手段22)、および塩素除去手段(濾過器)30よりも高所に設置されていることが好ましい。例えば、貯水タンク11は建物1の屋根2や屋上に設置されていることが好ましい。一方、汲水ポンプ13、水浄化装置20(固形薬剤溶解器21および濾過手段22)、および塩素除去手段(濾過器)30は、地面近傍、建物1の一階またはベランダなど、容易に保守作業を行うことが可能な場所(低所)に設置されていることが好ましい。汲水ポンプ13、水浄化装置20(固形薬剤溶解器21および濾過手段22)、および塩素除去手段(濾過器)30をこのような場所に設置すれば、これらの点検や塩素系薬剤等の補充を容易に行うことが可能となる。
また、鉄が除去された二次処理水が貯留される貯水タンク11よりも低所に塩素除去手段(濾過器)30を設置すれば、貯留水を、位置エネルギーによる水圧のみで塩素除去手段(濾過器)30を通過させて、建物1の蛇口等に到達させることができる。このような水浄化システム10とすれば、第二配管14に送水ポンプを設置する必要がなくなり、システムの簡素化を図ることができる。なお、第二配管14に送水ポンプを設置し、送水ポンプによって貯留水が塩素除去手段(濾過器)30を通過するようにしてもよい。また、塩素除去手段(濾過器)30に流入させる貯留水(被濾過水)の流量は、5〜50L/分程度となるように設定するのが好ましい。
次に、本実施形態の水浄化システム10を用いて原水を浄化する方法について説明する。水浄化システム10では、まずバイパス配管21bに設けられた開閉弁21cを開状態とし、第一配管12に設けられた開閉弁12cを閉状態とする。そして、汲水ポンプ13により、原水である井水を汲み上げる。
汲み上げられた原水は、第一配管12、接続部12aおよびバイパス配管21bを通過して、固形薬剤保持具21aの内部に到達し、錠剤状の塩素系薬剤と接触する。それにより塩素系薬剤が原水に溶解し、反応式(1)に示すように、原水中の二価の鉄が不溶性の水酸化鉄(Fe(OH)3)に酸化される。なお、地下水の場合には、鉄が炭酸水素鉄(Fe(HCO3)2)の状態で溶解している場合があるが、反応式(2)に示すように、塩素系薬剤により酸化されて不溶性の水酸化鉄となる。
2Fe2++Cl2+6H2O
→2Fe(OH)3+6H++2Cl− (1)
2Fe(HCO3)2+Cl2+2H2O
→2Fe(OH)3+4CO2+2HCl (2)
固形薬剤溶解器21によって酸化処理された一次処理水は、接続部12bおよび第一配管12を通過して、濾過手段22に到達する。この際、一次処理水に存在する不溶性の水酸化鉄は、濾材22aの間を通過することによって濾過されて除去される。また、濾過手段22の濾材として、水和二酸化マンガン(MnO2・H2O)をコートしたマンガン砂を用いた場合には、一次処理水に溶存しているマンガンイオン(Mn2+)も除去される。つまり、一次処理水中のマンガンイオンは、反応式(3)に示すように、マンガン砂の表面に担持されている水和二酸化マンガンを触媒として塩素により速やかに酸化されて水和二酸化マンガンとなり、マンガン砂により除去される。
Mn2++MnO2・H2O+Cl2+3H2O
→2MnO2・H2O+4H++2Cl− (3)
濾過手段22によって濾過処理された二次処理水は、第一配管12を通じて貯水タンク11に貯留される。そして、貯留された二次処理水は、第二配管14を通過して塩素除去手段(濾過器)30に到達する。塩素除去手段(濾過器)30では、以下の反応式(4)に示すように、二次処理水に溶存する余剰の塩素を活性炭により除去する。
Cl2+H2O+C(活性炭)
→2H++2Cl−+O+C(活性炭) (4)
塩素除去手段(濾過器)30により脱塩素処理された三次処理水(浄水;濾過水)は第二配管14を通過して、蛇口等に到達する。このように、固形薬剤溶解器21および濾過手段22からなる水浄化装置20、並びに塩素除去手段(濾過器)30により浄化された水は、ユーザーによって生活用水として使用される。
次に、本実施形態の水浄化システム10で用いられる塩素除去手段(濾過器)30の具体的な構成について説明する。
塩素除去手段(濾過器)30は、図3に示すように、上下方向に延在した状態(上下に細長い状態)で配置される容器310を備えている。
容器310は、上下方向に貫通する略円筒状の側壁部312と、側壁部312の上端に連設される略円板状の天壁311と、側壁部312の下端に連設される略円板状の底壁313と、を備えている。
また、この容器310内には、被濾過水(上記水浄化システム10では二次処理水)を通過させることで濾過水(上記水浄化システム10では三次処理水)を生成する濾過部320が配置されている。濾過部320は、容器310の内部空間に粒状の活性炭(濾材)321を堆積させることで形成されており、被濾過水を活性炭(濾材)321に接触させながら濾過部320を通過させることで、被濾過水に溶存する余剰の塩素が除去されるようにしている。
さらに、容器310内の中央には、略円筒状(筒状)の通水管(通水部)330が配置されている。具体的には、天壁311の中央部に形成された略円形の開口311aに、通水管(通水部)330の下端を上から挿入することで、通水管(通水部)330を容器310内の中央に上下方向に延在するように配置している。このとき、通水管(通水部)330の下側が濾過部320内に埋め込まれた状態となる。
なお、通水管(通水部)330の容器310内への配置と、濾過部320の容器310内への配置は、いずれを先に行ってもよい。すなわち、容器310内に粒状の活性炭(濾材)321を堆積させることで濾過部320を形成した後に、通水管(通水部)330の下端を濾過部320内に挿入させることで、通水管(通水部)330を容器310内に配置させてもよい。また、通水管(通水部)330を容器310内に配置させた後に、通水管(通水部)330と容器310との間に形成される空間に粒状の活性炭(濾材)321を堆積させることで、濾過部320を形成してもよい。
そして、略円筒状(筒状)の通水管(通水部)330の内部空間に被濾過水を通水させている。すなわち、略円筒状(筒状)の通水管(通水部)330の内部空間が、被濾過水が流れる通水路333となっている。
この通水管(通水部)330の上側(容器310の外部に突出した部位)には、第二配管14の上流側が接続されており、貯水タンク11内に貯留された二次処理水(被濾過水)が供給されるようになっている。すなわち、本実施形態では、被濾過水が通水路333内を上から下に流れるようにしている。したがって、本実施形態では、通水路333の上下方向が、被濾過水が主として流れる主通水方向(通水方向)となっており、通水路333の上側が上流側、下側が下流側となっている。
この通水管(通水部)330は、略円筒状の側壁331と、側壁331の下端開口に連設される底壁332と、を備えており、この底壁332によって通水路333の下流側が塞がれている。したがって、本実施形態では、底壁332の上面332aが通水路333の下流端となっている。なお、底壁332を設けず、略円筒状の側壁331の下端を容器310の底壁313に連設させ、底壁313の上面が通水路333の下流端となるようにしてもよい。
そして、本実施形態では、通水管(通水部)330の側壁331に複数の連通孔334を形成し、この複数の連通孔334を介して通水路333内の被濾過水を濾過部320内に導入させるようにしている。したがって、複数の連通孔334は、側壁331の濾過部320と接触する領域に形成されることとなる。言い換えると、最上部に位置する連通孔334よりも上側まで濾過部320が形成されることとなる。
このように、本実施形態では、濾過部320は、通水部330における複数の連通孔334が形成されている部位を取り囲むように配置されている。そして、通水路333内に導入された被濾過水が、複数の連通孔334を通って濾過部320内に流入して濾過されるようにしている。
また、本実施形態では、濾過部320内に流入した被濾過水を濾材321によって濾過し、濾過された濾過水を濾過部320の上面320aから流出させるようにしている。
すなわち、通水路の下端よりも上方に位置する濾過部320の上面320aが、濾過部320を通って濾過された濾過水を濾過部320の外部に流出させる濾過水流出面となっている。このように、本実施形態では、濾過水流出面としての上面320aが、通水路333の通水方向(上下方向)において通水部330の下流端(下端)よりも上流側(上側)に位置している。
さらに、容器310内における濾過部320の上面320aよりも上側には上部空間310aが形成されており、濾過部320で生成された濾過水は、濾過部320の上面320aからこの上部空間310a内に流出されるようになっている。
また、容器310の天壁311の開口311aとは異なる部位には、開口311bが形成されており、略円筒状の流出管(流出部)340が、下端を上から開口311bに挿入させた状態で天壁311に取り付けられている。このとき、流出管340は、下端開口を上部空間310aに臨ませた状態で天壁311に取り付けられており、流出管340の下端開口から上部空間310a内に存在する濾過水が流出管340内に導入されるようにしている。具体的には、流出管340の上側(容器310の外部に突出した部位)には、第二配管14の下流側が接続されており、流出管340内に導入された濾過水(三次処理水)が、第二配管14を通って蛇口等から供給されるようになっている。
このように、本実施形態では、流出管340の下端開口が、濾過水を集水する集水口341となっており、流出管340の内部空間が、濾過水を容器310の外部に流出させる流出路342となっている。
このような構成とした塩素除去手段(濾過器)30では、水(被濾過水や濾過水)は、通水路333内では、主として上方から下方に向けて流れることとなる。また、略水平方向に貫通する複数の連通孔334を通過する際には、主として水平方向(略円筒状の側壁331の径方向外側)に流れることとなる。また、濾過部320内では、全体的に上面320aに向けて流れ、流出路342内では、主として下方から上方に向けて流れることとなる。
すなわち、本実施形態の塩素除去手段(濾過器)30では、上下方向に延在する通水管330内(通水路333内)に上方から被濾過水を導入し、通水管330内に導入した被濾過水を通水管330の側部(側壁331)から濾過部320に導入させている。そして、本実施形態の塩素除去手段(濾過器)30は、濾過部320を通過させることで生成された濾過水を上方から外部に流出させている。
このように、本実施形態の塩素除去手段(濾過器)30では、流入口(通水路333の上部)および流出口(流出路342の上部)を容器310の一方向(本実施形態では上方)に形成している。こうすれば、他方側(本実施形態では下方)に配管を接続させる必要がなくなるため、その分だけ塩素除去手段(濾過器)30の高さ方向(上下方向)の小型化を図ることができる。
ところで、塩素除去手段(濾過器)30を小型化する際には、濾過性能を損なうことなく小型化させるようにするのが好ましい。
このように、濾過性能の低下を抑制しつつ小型化を図る方法の一つとして、濾過部320を流れる被濾過水の滞留時間を長くする方法がある。接触時間が長いほど、濾材321による物質吸着の確率や頻度が高くなり、吸着除去が促進されるためである。
そして、被濾過水の滞留時間を長くするためには、濾材321の粒径を小さくすることが考えられる。このように、濾材321の粒径を小さくすると、濾材321の表面積が大きくなるため、被濾過水と濾材321との接触時間を長くすることができる。
しかしながら、濾材321の粒径を小さくすると、濾材321の粒子間に形成される空隙が小さくなるため、通水抵抗が大きくなってしまい、被濾過水が通水路333から濾過部320へと流れる際の圧力損失が大きくなってしまう。
そのため、小型化を図る際には、圧力損失ができるだけ小さくなるようにするのが好ましい。
円管内を流体が流れるときの圧力損失は、以下の式(1)で表すことができる。
ΔP=8μLU/R2…式(1)
なお、式(1)中、ΔPは圧力損失、μは流体の粘度、Lは管の長さ、Uは流体の速度、Rは管の内径を示している。
この式(1)から分かるように、圧力損失を小さくするためには、流体の速度を遅くすればよい。
そこで、本実施形態では、通水路333から濾過部320に流れる被濾過水の流速を遅くできるようにした。
具体的には、上述したように、上下方向に延在する通水管330の側部(側壁331)から被濾過水を濾過部320に導入させるようにしている。すなわち、容器310内(通水路333内)を流れる向きと直交(交差)する方向に流すことで、被濾過水を濾過部320に導入させるようにしている。こうすれば、単位時間あたりに連通孔334を通過する水の速度を遅くすることができ、圧力損失を小さくすることができる。
しかしながら、本実施形態では、上述したように、さらなる小型化を図るために、被濾過水の容器310内への流入方向(上から下)と濾過水の容器310外への流出方向(下から上)とを逆方向としている。
そして、本実施形態のような構成とした場合、複数の連通孔334を通水管330の側壁331に均等に形成すると、通水路333の下部(下流側)のほうが上部(上流側)よりも通水抵抗が大きくなってしまう。したがって、通水路333を流れる被濾過水は、通水路333の上側(上流側)では濾過部320に導入されやすく、下側(下流側)では濾過部320に導入されにくくなる。したがって、被濾過水の多くが比較的抵抗の少ない通水管の上部に形成された連通孔334から供給されてしまうため、濾過部320に均一に被濾過水を流入させることができなくなる。
そこで、本実施形態では、塩素除去手段(濾過器)30の小型化を図りつつ、被濾過水を、より均一に濾過部320に流入させることができるようにした。
具体的には、通水路333の通水方向の上流側よりも下流側のほうが、複数の連通孔334を介して通水路333から濾過部320へと流れる被濾過水の通水抵抗が小さくなるようにした。
この通水抵抗を小さくするには、被濾過水が通水路333から濾過部320へと流れる際の圧力損失を小さくすればよい。
圧力損失を小さくする方法としては、上記式(1)に示すように、流体速度を遅くする方法以外に、管の内径を大きくする(開口面積を大きくする)方法がある。
そのため、上下方向(通水路333を流れる被濾過水の通水方向)のある一定の長さあたりに開口する連通孔334の総開口面積を異ならせるようにすることで、上流側と下流側とで通水抵抗を異ならせることが考えられる。すなわち、下流側の通水抵抗を上流側よりも小さくするためには、通水管330の下流側で開口する連通孔334の総開口面積を上流側で開口する連通孔334の総開口面積よりも大きくなるようにすればよい。
下流側の通水抵抗が上流側よりも小さい通水管330は、例えば、以下のようにして得ることができる。まず、通水管330の濾過部と接触している領域の高さ(底部332の上面332aから濾過部320の上面320aまでの高さ)を2等分し、上側を上流側とし、下側を下流側とする。そして、上側(上流側)に形成される連通孔334の総開口面積よりも下側(下流側)に形成される連通孔334の総開口面積となるように、複数の連通孔334を形成する。
なお、各連通孔334は、粒状の活性炭(濾材)321の通水路333への侵入を抑制しつつ粒状の活性炭(濾材)321によって目詰まりしてしまうのを抑制できる大きさとする必要がある。したがって、上下方向の一定の長さあたりの総開口面積は、上記のような連通孔334が形成されていることを前提とした上で、異ならせる必要がある。
また、通水管330の濾過部と接触している領域の高さを3つ以上に等分し、下側(下流側)ほど、総開口面積が大きくなるようにしてもよい。
この総開口面積は、孔径を同一にした状態で、連通孔334の数を多くすることで大きくすることができる。また、高さ位置によらず同じ数となるようにした状態で、連通孔334の孔径を大きくすることでも、下側(下流側)の総開口面積を大きくすることができる。さらに、連通孔334の数および孔径を異ならせることによっても、下側(下流側)の総開口面積を大きくすることができる。
このように、下流側に形成される連通孔334の数や孔径を適宜設定することで、下流側の通水抵抗を上流側よりも小さくすることができる。
なお、上下方向で隣り合う連通孔334の間隔を上側で広く、下側で狭くなるようにしてもよい。
こうすることでも、通水管330の下流側で開口する連通孔334の総開口面積を上流側で開口する連通孔334の総開口面積よりも大きくすることができる。
また、通水抵抗を多段階に異ならせる方法としては、例えば、通水路333の上側(上流側)から下側(下流側)に向かうにつれて連通孔334の数が多くなるようにする方法がある。
そして、通水路333の上側(上流側)から下側(下流側)に向かうにつれて連通孔334の孔径が大きくなるようにする方法がある。
図3〜図5には、通水路333の上側(上流側)から下側(下流側)に向かうにつれて連通孔334の孔径が大きくなるようにしたものを例示している。すなわち、図3〜図5に示す通水管330には、孔径が、上側(上流側)から順にd1,d2,d3,d4…dnとなる連通孔334が形成されている。そして、各連通孔の孔径は、d1<d2<d3<d4<…<dnとなっている。
なお、最上部の連通孔334から最下部の連通孔334まで徐々に大きくさせる必要はない。例えば、高さ位置が異なる2つの連通孔334が同径となるようにしてもよい。
さらに、図3〜図5に示す通水管330では、高さ位置が異なる場所に形成される連通孔334の数も、一部で異ならせている。
この連通孔334の数も、最上部の連通孔334から最下部の連通孔334まで徐々に数を多くしてもよいし、途中で同数となるところが存在していてもよい。
また、通水管330の側壁331をシート状のメッシュ部材350で形成し、下流側の通水抵抗が上流側よりも小さくなるようにしてもよい。
このようなメッシュ部材350を用い、下流側の通水抵抗を上流側よりも小さくする方法としては、通水路333の下側(下流側)に形成されるメッシュ孔351の孔径を、上側(上流側)に形成されるメッシュ孔351の孔径よりも大きくする方法がある。
図6には、メッシュ孔351の孔径が大、中、小となる3つのメッシュ部材350を用い、下側(下流側)に位置するメッシュ部材350ほどメッシュ孔の孔径が大きくなるようにしたものを例示している。
また、シート状のメッシュ部材350を複数枚重ね合わせることで通水部333の上側(上流側)を形成し、下側(下流側)を、上側(上流側)よりも少ない枚数のメッシュ部材350で形成する方法もある。このとき重ね合わせるメッシュ部材350のメッシュ孔351の孔径は同径であってもよいし異なっていてもよい。
なお、メッシュ部材350の材質は、特に限定されるものではないが、強度の観点からは金属で形成されているのが好ましい。
以上説明したように、本実施形態にかかる塩素除去手段(濾過器)30は、被濾過水を通水させる通水路333が形成され、複数の連通孔334を有する筒状の通水管(通水部)330を備えている。また、通水管(通水部)330における複数の連通孔334が形成されている部位を取り囲むように配置され、被濾過水を通過させることで濾過水を生成する濾過部320を備えている。また、濾過部320に形成され、上下方向(通水路333の通水方向)において通水管(通水部)330の下端(下流端)よりも上側(上流側)に位置する上面(濾過水流出面)320aを備えている。また、濾過部320が収容される容器310と、上面(濾過水流出面)320aから流出した濾過水を容器310の外部に流出させる流出路342と、を備えている。
そして、複数の連通孔334を介して通水路333から濾過部320へと流れる被濾過水の通水抵抗が、通水路333の通水方向の上側(上流側)よりも下側(下流側)のほうで小さくなるようにした。
こうすれば、塩素除去手段(濾過器)30の小型化を図った場合であっても、被濾過水が通水路333から濾過部320へと流れる際の圧力損失を小さくすることができる。その結果、濾過部320に均一に被濾過水を流入させることができるようになる。
このように、本実施形態によれば、小型化を図りつつ濾過部320により均一に被濾過水を流入させることが可能な塩素除去手段(濾過器)30を得ることができる。
また、下側(下流側)の通水抵抗を上側(上流側)の通水抵抗よりも小さくするために、通水路333の上流側よりも下流側のほうが連通孔334の数が多くなるようにしてもよい。
こうすれば、下側(下流側)の通水抵抗が上側(上流側)の通水抵抗よりも小さくなる通水管(通水部)330をより容易に得ることができる。
また、通水路333の上側(上流側)から下側(下流側)に向かうにつれて連通孔334の数が多くなるようにしてもよい。
こうすれば、通水路333の上側(上流側)から下側(下流側)にかけて段階的に通水抵抗を小さくすることができるため、より均一に被濾過水を濾過部320に流入させることができるようになる。
また、通水路333の下側(下流側)に形成される連通孔334の孔径を、上側(上流側)に形成される連通孔334の孔径よりも大きくしてもよい。
こうすることでも、下側(下流側)の通水抵抗が上側(上流側)の通水抵抗よりも小さくなる通水管(通水部)330をより容易に得ることができる。
また、通水路333の上側(上流側)から下側(下流側)に向かうにつれて連通孔334の孔径が大きくなるようにしてもよい。
こうすることでも、通水路333の上側(上流側)から下側(下流側)にかけて段階的に通水抵抗を小さくすることができるため、より均一に被濾過水を濾過部320に流入させることができるようになる。
また、通水管(通水部)330をメッシュ部材350で形成し、通水路333の下側(下流側)に形成されるメッシュ孔351の孔径を上側(上流側)に形成されるメッシュ孔351の孔径よりも大きくなるようにしてもよい。
このように、通水管(通水部)330をメッシュ部材350で形成すれば、被濾過水を、通水管(通水部)330のほぼ全面から濾過部320内に供給することができるため、通水抵抗をより小さくすることができる。また、濾材(粒状の活性炭)321が通水路333内に流出してしまうのをより確実に抑制することが可能となる。さらに、メッシュ孔351の孔径を変えるだけで、下側(下流側)の通水抵抗を上側(上流側)の通水抵抗よりも小さくすることができる。そのため、下側(下流側)の通水抵抗が上側(上流側)の通水抵抗よりも小さくなる通水管(通水部)330をより容易に製造することができる。
また、通水管(通水部)330の上側(上流側)をシート状のメッシュ部材350を複数枚重ね合わせることで形成し、下側(下流側)を、上側(上流側)よりも少ない枚数のメッシュ部材350で形成してもよい。
こうすることでも、被濾過水を、通水管(通水部)330のほぼ全面から濾過部320内に供給することができるため、通水抵抗をより小さくすることができる。また、濾材(粒状の活性炭)321が通水路333内に流出してしまうのをより確実に抑制することが可能となる。さらに、メッシュ部材350の枚数を変えるだけで、下側(下流側)の通水抵抗を上側(上流側)の通水抵抗よりも小さくすることができる。そのため、下側(下流側)の通水抵抗が上側(上流側)の通水抵抗よりも小さくなる通水管(通水部)330をより容易に製造することができる。
次に、本発明を適用した実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
本発明にかかる濾過器の効果を確かめるために、以下の試験を行った。
まず、比較例にかかる濾過器30Aを用意した。
濾過器30Aは、図7に示すように、上下方向に延在した状態(上下に細長い状態)で配置される容器310を備えている。この容器310には、容器310内に被濾過水を供給する円筒状の流入管(通水部)330が設けられている。また、容器310内には、被濾過水を上から下に通過させることで濾過水を生成する濾過部320が配置されている。さらに、容器310には、円筒状の集水管(集水管)340が、濾過部320に埋め込まれるように配置されており、濾過部320に臨む集水口341から集水管340内に濾過水が集水されるようになっている。
また、本発明を適用した濾過器30を用意した。
濾過器30および濾過器30Aでは、内径が85mmで高さが240mmの容器310を用いている。また、濾過器30では内径が20mmの通水管330を用い、濾過器30Aでは、内径が20mmの集水管340を用いている。
また、濾過器30で用いられる通水管330の側部には、図8に示すように、複数の連通孔334を形成している。複数の連通孔334は全て孔径が4.8mmとなっている。また、最下部に設けられる連通孔334以外の連通孔は同じ高さ位置に4つ形成されており、最下部には8つの連通孔334が形成されている。また、同一高さにある連通孔334は周方向に等間隔に形成されている。そして、上下方向で隣り合う連通孔334の間隔は、基本的に上側で広く、下側で狭くなるようにしている。
こうすることで、通水管330の下流側で開口する連通孔334の総開口面積を上流側で開口する連通孔334の総開口面積よりも大きくなるようにし、下流側の通水抵抗が上流側よりも小さくなるようにしている。
なお、濾過部320は、20−50meshの活性炭を1L用いて形成した。
そして、これらの濾過器30,30Aを用いて、遊離塩素の長期除去試験を行った。
比較例にかかる濾過器30Aを用いた場合、初期圧力損失は0.15MPaであった。そして、処理時間の増加とともに圧力損失は0.17MPaまで増大した。これに対して、本発明を適用した濾過器30を用いた場合、初期圧力損失は0.04MPaであった。また、処理時間が増加しても、圧力損失は0.15MPaまで増大することはなかった。
以上より、本発明を適用した濾過器30のほうが、濾過部320により均一に被濾過水を流入できることが確認された。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、被処理水中の鉄成分の除去を行うことが可能な水浄化システムを例示したが、濾過器が用いられる水浄化システムは、これに限られるものではなく、浄化したい原水の水質に応じた水浄化システムで用いられる濾過器とすることができる。
また、上記実施形態では、濾過器として、塩素除去手段として用いられるものを例示したが、他の用途に用いられる濾過器に本発明を適用することも可能である。例えば、上記実施形態の水浄化システムで例示した、不溶性の水酸化鉄を除去する濾過手段に本発明を適用することも可能である。
また、上記実施形態では、1種類の濾材で形成された濾過部を例示したが、複数種類の濾材を用いて形成される濾過部とすることも可能である。
また、濾材の粒径を通水方向で変えることで下流側の通水抵抗を小さくすることも可能である。
また、上記実施形態では、通水部を流れる被濾過水の通水方向を上下方向とした濾過器を例示したが、通水方向が鉛直方向に対して傾斜している場合であっても本発明を適用することが可能である。
また、容器や通水部、その他細部のスペック(形状、大きさ、レイアウト等)も適宜に変更可能である。
本出願は、2017年8月28日に出願された日本国特許出願第2017−163420号に基づく優先権を主張しており、これらの出願の全内容が参照により本願明細書に組み込まれる。