以下、図を参照しながら、この発明による電子ペンと位置形成システムの実施の形態について説明する。電子ペンと位置検出装置とからなる位置検出システムには、例えば、アクティブ静電結合方式(AES(Active Electrostatic)方式)のものや電磁誘導方式(EMR(Electro Magnetic Resonance technology)方式)のものなどがある。この発明はアクティブ静電結合方式(AES(Active Electrostatic)方式)のものに適用した場合を例にして説明する。
[電子ペン1の外観の一例]
図1は、この実施の形態の電子ペン1の外観と、電子ペン1が用いられて情報の入力が行われるタブレット型情報端末2の外観とを示す図である。電子ペン1の外観は、ペン型の筐体15から芯体11の先端部11aが突出した構成を有する。筐体15内には、詳しくは後述するが、芯体11と筆圧検出部12が配置されている。
芯体11は、筐体15から突出した先端部11aに加えられる筆圧に応じて、軸心方向に移動可能になっている。すなわち、芯体11は筆圧に応じて筐体15内に押し込まれたり、押し出されたりする構成を備えている。そして、芯体11が筆圧検出部12を押圧し、筆圧検出部12において、筆圧を検出する構成になっており、電子ペン1は、タブレット型情報端末2の表示画面2D上の位置を指示すると共に、検出した筆圧をも通知する信号を送出する構成を備える。
一方、タブレット型情報端末2は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスの比較的に大きな表示画面2Dが露呈する構成を有する。表示画面2Dの裏部には、表示画面2D上のどの位置を電子ペン1により指し示した場合にもその指示位置が検出できるように、表示画面2Dの全面に対応するセンサ部を有する位置検出装置200が搭載されている。
なお、位置検出装置200のセンサ部は、表示画面2Dの裏部(背面)に設けられる場合もあれば、表部(表面)に設けられる場合もある。この例では、センサ部は、透明な構成とされ表示画面2Dの上側(表部)に設けられているものとする。また、タブレット型情報端末2の筐体内部には、表示デバイス(LCD等)や位置検出装置200が接続され、種々の情報処理を行う情報処理装置部(図示せず。)が搭載されている。
このように、タブレット型情報端末2は、電子ペン1と位置検出装置200とからなる位置検出システムがメインの入力デバイスとなっている情報処理装置である。なお、表示画面2D上には例えば保護ガラスなどが設けられており、当該保護ガラスを介して表示画面2D上を操作面として電子ペン1により指示入力を行うことができるようになっている。
そして、タブレット型情報端末2において、表示画面2D上で、電子ペン1により位置指示操作がされたとする。この場合、表示画面2Dの表部に設けられた位置検出装置200のセンサ部からの検出出力に基づいて、位置検出装置200が備える処理部が、表示画面2Dでの指示位置を特定する。当該処理部で特定された指示位置を示す情報は、タブレット型情報端末2に搭載されている情報処理装置部に供給され、これに応じた処理を行うことができる。
[筆圧検出部12の構成例]
そして、この実施の形態の電子ペン1においては、筆圧検出部12の構成に特徴がある。上述もしたように、筆圧検出部12は、先端部11aに印加される筆圧に応じて軸心方向に移動する芯体11によって押圧された場合に、当該筆圧を適切に検出することができるものである。この実施の形態の筆圧検出部12は、筆圧検出素子と、当該筆圧検出素子に対して印加される筆圧を段階的に調整するようにするための弾性部材を備えて構成される。以下に説明する実施の形態においては、より具体的に、筆圧検出素子に対して印加される筆圧を2段階で調整するために、筆圧検出素子に対して2つの弾性部材を並列に配置して筆圧検出部12を構成する場合について説明する。
図2は筆圧検出部12の構成例を説明するための図である。図2においては、筆圧検出部12について代表的な3つの構成例12(1)、12(2)、12(3)を示している。いずれの構成例の場合にも、芯体11により押圧される押圧部材12xと、筆圧を後端側に逃がさないようにするためのストッパ12yとの間に、筆圧検出素子12aと、2つの弾性部材とを並列に設けて構成したものである。
筆圧検出素子12aには、圧電素子、ゲージ式圧力センサ素子、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いた可変容量コンデンサチップ(素子)など、種々のものがある。圧電素子は、最も簡単な構成のものは例えば水晶やセラミックなどの圧電体を2枚の電極で挟んだものとして実現でき、圧電体に加えられた圧力に応じた電圧を発生させることができるものである。
ゲージ式圧力センサ素子には、歪ゲージ式、金属ゲージ式、半導体ゲージ式などがあるが、いずれもダイヤフラムの表面に例えば4個のゲージ抵抗を配置し、圧力によってゲージ抵抗の抵抗値が変化することを利用して圧力を測定するものである。MEMS技術を用いた可変容量コンデンサ素子は、筆圧に応じて静電容量が変化する可変容量コンデンサを、ミクロンレベルの構造を持つ半導体デバイスからなるMEMSチップとして構成したものである。
また、上述した各素子に用いられている技術を複合的に用いて筆圧(圧力)を検出することができる素子を構成することもできる。このように、筆圧検出素子には種々のものがあるが、この明細書において筆圧検出素子12aは、筆圧に応じた電気信号を出力することができる最小単位の部材を意味している。そして、以下の説明において、筆圧検出素子12aは、圧電素子である場合を例にして説明する。
そして、図2(A)に示す筆圧検出部12(1)は、2つの弾性部材として2つのコイルバネ12b1、12c1を用いる場合の例である。図2(A)に示すように、第1のコイルバネ12b1は、第2のコイルバネ12c1に対して直径が小さいものである。また、第1のコイルバネ12b1は、第2のコイルバネ12c1に対して力が掛かっていない状態での全長が長いものである。そして、第2のコイルバネ12c1の内側に第1のコイルバネ12b1を配置することにより、第1のコイルバネ12b1と第2のコイルバネ12c1とを並列に配置する構成としている。
図2(A)に示す筆圧検出部12(1)の場合には、芯体11に筆圧が印加されると、まず、第1のコイルバネ12b1を介して筆圧検出素子12aに対して筆圧が印加される。この後、芯体11への筆圧が徐々に大きくなっていき、第1のコイルバネ12b1の全長が第2のコイルバネ12c1の全長より短くなるまで縮み、更に筆圧が徐々に大きくなっていったとする。この場合には、芯体11により押圧される押圧部材12xによって第2のコイルバネ12c1も押圧される。
すなわち、芯体11に加わる筆圧が所定値に至るまでは、第1のコイルバネ12b1が筆圧検出素子12aに作用して、筆圧検出素子12aに対して筆圧が加わる。この後、筆圧が増加し所定値以上になると、第1のコイルバネ12b1が筆圧検出素子12aに作用すると共に、第2のコイルバネ12c1が押圧部材12xに作用する。この場合、第2のコイルバネ12c1により、筆圧検出素子12aに加わる筆圧が減じるようにされる。このように、第1のコイルバネ12b1に加えて、第2のコイルバネ12c1も並列に作用することになり、第1のコイルバネ12b1と第2のコイルバネ12c1との両方を介して筆圧検出素子12aに対して筆圧が印加されることになる。
図2(B)に示す筆圧検出部12(2)は、2つの弾性部材として、例えばそれぞれ柱状に形成された第1の弾性部材12b2と第2の弾性部材12c2を用いる場合の例である。図2(B)に示すように、第1の弾性部材12b2は、第2の弾性部材12c2に対して力が掛かっていない状態での全長が長いものである。その他の例えば両端面の形状、大きさは、第1の弾性部材12b2と第2の弾性部材12c2とは同じものである。そして、図2(B)に示したように、第1の弾性部材12b2と第2の弾性部材12c2とを並べて配置することにより、第1の弾性部材12b2と第2の弾性部材12c2とを並列に配置する構成としている。
図2(B)に示す筆圧検出部12(2)の場合には、芯体11に筆圧が印加されると、まず、第1の弾性部材12b2を介して筆圧検出素子12aに対して筆圧が印加される。この後、芯体11への筆圧が徐々に大きくなっていき、第1の弾性部材12b2の全長が第2の弾性部材12c2の全長より短くなるまで縮み、更に筆圧が徐々に大きくなっていったとする。この場合には、芯体11により押圧される押圧部材12xによって第2の弾性部材12c2も押圧される。
すなわち、芯体11に加わる筆圧が所定値に至るまでは、第1の弾性部材12b2が筆圧検出素子12aに作用して、筆圧検出素子12aに対して筆圧が加わる。この後、筆圧が増加し所定値以上になると、第1の弾性部材12b2が筆圧検出素子12aに作用すると共に、第2の弾性部材12c2が押圧部材12xに作用する。この場合、第2の弾性部材12c2により、筆圧検出素子12aに加わる筆圧が減じるようにされる。このように、第1の弾性部材12b2に加えて、第2の弾性部材12c2も作用することになり、第1の弾性部材12b2と第2の弾性部材12c2との両方を介して筆圧検出素子12aに対して筆圧が印加されることになる。
図2(C)に示す筆圧検出部12(3)は、2つの弾性部材として、柱状に形成された第1の弾性部材12b3と筒状に形成された第2の弾性部材12c3を用いる場合の例である。図2(C)に示すように、第1の弾性部材12b3は、第2の弾性部材12c3に対して力が掛かっていない状態での全長が長いものである。第2の弾性部材12c3は、軸心方向に2つに切断し、その前側部分を取り除いて示したように、中心部分が中空となっており、その中空部分に第1の弾性部材12b3が挿入されて配置される。これにより、第1の弾性部材12b3と第2の弾性部材12c3とを並列に配置する構成としている。
図2(C)に示す筆圧検出部12(3)の場合には、芯体11に筆圧が印加されると、まず、第1の弾性部材12b3を介して筆圧検出素子12aに対して筆圧が印加される。この後、芯体11への筆圧が徐々に大きくなっていき、第1の弾性部材12b3の全長が第2の弾性部材12c3の全長より短くなるまで縮み、更に筆圧が徐々に大きくなっていったとする。この場合には、芯体11により押圧される押圧部材12xによって第2の弾性部材12c3も押圧される。
すなわち、芯体11に加わる筆圧が所定値に至るまでは、第1の弾性部材12b3が筆圧検出素子12aに作用して、筆圧検出素子12aに対して筆圧が加わる。この後、筆圧が増加し所定値以上になると、第1の弾性部材12b3が筆圧検出素子12aに作用すると共に、第2の弾性部材12c3が押圧部材12xに作用する。この場合、第2の弾性部材12c3により、筆圧検出素子12aに加わる筆圧が減じるようにされる。このように、第1の弾性部材12b3に加えて、第2の弾性部材12c3も作用することになり、第1の弾性部材12b3と第2の弾性部材12c3との両方を介して筆圧検出素子12aに対して筆圧が印加されることになる。
なお、図2に示した構成例において、第1の弾性部材12b2、12b3と第2の弾性部材12c2は、円柱であってもよいし、多角柱であってもよい。また、第2の弾性部材12c3は、円筒であってもよいし、角筒であってもよい。また、第1、第2のコイルバネ12b1、12c1、第1の弾性部材12b2、12b3、第2の弾性部材12c2、12c3のそれぞれの長さや底面の広さなどは適宜の調整が可能である。また、図2(B)示した筆圧検出部12(2)の場合には、第1の弾性部材12b2と第2の弾性部材12c2とを接触させずに離して並列配置してもよい。
また、図2に示した例の他にも、例えば、図2(A)に示した筆圧検出部12(1)において、第1のコイルバネ12b1に替えて、シリコンゴムなどの個体の弾性部材を用いるようにすることもできる。また、図2(B)に示した筆圧検出部12(2)において、第1の弾性部材12b2の周囲に複数の第2の弾性部材12c2を配置するようにしてもよい。要は、筆圧検出部12は、例えば、2つ以上の弾性部材を用いて、あるいは、2つ以上の部分からなる1つの弾性部材を含むようにして、筆圧検出素子12aに掛かる筆圧を段階的に掛けるようにする種々の構成とすることができる。
[筆圧検出部12の偏倚特性]
次に、図2を用いて説明したように、2つの弾性部材を用いて構成される筆圧検出部12の偏倚特性について説明する。ここでは、説明を簡単にするため、図2(A)に示した構成の筆圧検出部12(1)の場合を例にして説明する。なお、図2(A)に示した構成例の場合において、第1のコイルバネ12b1の弾性係数(弾性率)が、第2のコイルバネ12c1よりも小さい場合を例にして考える。つまり、第1のコイルバネ12b1は比較的に小さな力で変形する柔らかなものであり、第2のコイルバネ12c1はより大きな力を掛けないと変形しない固いものであるとする。
図3は、図2(A)に示した筆圧検出部12(1)を構成する各構成部材の偏倚特性と筆圧検出部12(1)全体の偏倚特性につて説明するための図であり、横軸が掛けられる荷重(N)であり、縦軸が偏倚量(mm)である。図3(A)において、特性Dbは第1のコイルバネ12b1の偏倚特性の例を、特性Dcは第2のコイルバネ12c1の偏倚特性の例を、また、特性Daは筆圧検出素子12aの偏倚特性の例をそれぞれ示している。
なお、この明細書において「偏倚」との文言は、形状が偏ること、すなわち変形することを意味する。より具体的には、弾性部材がコイルバネなどの場合における「偏倚」は、力が掛けられた場合には縮み、掛けられた力が解除された場合に元に戻る(縮んだバネが伸びる)ことを意味している。また、弾性部材がゴムなどである場合における「偏倚」は、力が掛けられた場合には厚みが薄くなり(潰れ)、掛けられた力が解除された場合に厚みが元に戻る(薄くなった厚みが元に戻る)ことを意味している。また、弾性部材が弾性を有する皿状や板状のものである場合には、力が掛けられた場合には凹み(あるいは反り)、掛けられた力が解除された場合に元に戻る(凹んだり反ったりしたものが元に戻る)ことを意味している。
そして、上述もしたように、第1のコイルバネ12b1の弾性係数k1は、第2のコイルバネ12c1の弾性係数k2よりも小さい。すなわち、「k1<k2」という関係にある。まず、筆圧検出素子12a、第1のコイルバネ12b1、第2のコイルバネ12c1のそれぞれに荷重(圧力)か掛けられた場合について考える。まず、第1のコイルバネ12b1に荷重(圧力)が掛けられると、図3(A)の特性Dbに示すように比較的に小さな荷重が掛けられている段階から大きく偏倚し、所定以上の荷重が掛けられると偏倚量は低下し、なだらかに偏倚するようになる。
逆に、第2のコイルバネ12c1の弾性係数k2は、第1のコイルバネ12b1の弾性係数k1よりも大きい。このため、第2のコイルバネ12c1に荷重が掛けられると、図3(A)の特性Dcに示すように、同じ荷重が掛けられても第1のコイルバネ12b1の場合に比べれば偏倚量は小さくなる。そして、第2のコイルバネ12c1の場合にも、所定以上の荷重が掛けられると偏倚量は低下し、なだらかに偏倚するようになる。
また、筆圧検出素子12aは、圧電素子であり、筆圧が掛けられると歪を生じさせるが、その偏倚量は、図3(A)の特性Daに示すようにごく僅かなものである。筆圧検出素子12a、第1の弾性部材12b、第2の弾性部材12cのそれぞれは、図3(A)に示した偏倚特性を有するものである。そして、筆圧検出素子12aの偏倚量はごく僅かなものであるので、並列に配置する第1のコイルバネ12b1と第2のコイルバネ12c1とにより形成する筆圧検出部12(1)全体の偏倚特性が、図3(B)の特性Dに示すような所望の特性となるようにされる。
すなわち、図2(A)を用いて説明したように、第1のコイルバネ12b1の全長は第2のコイルバネ12c1の全長より長く、第1のコイルバネ12b1は第2のコイルバネ12c1の内側に配置している。このため、図3(B)の筆圧検出部12(1)全体の偏倚特性Dは、筆圧検出部12(1)に掛けられる荷重(筆圧)が比較的小さな段階では、弾性係数の小さな第1のコイルバネ12b1の偏倚特性が支配的となって偏倚する。
この後、筆圧検出部12(1)に掛けられる荷重(筆圧)がある程度大きくななると、上述もしたように、第1のコイルバネ12b1と第2のコイルバネ12c1とが並列に作用することになる。この場合、図3(B)に示すように、筆圧検出部12(1)全体の偏倚量は、第1のコイルバネ12b1の偏倚特性に第2の弾性部材12cの偏倚特性が加わって、カーブを描くようになだらかに変化するようになる。
この図3(B)に示す筆圧検出部12(1)の偏倚特性Dは、筆圧に応じた筆圧検出部12全体の偏倚(変形)の状態を示している。すなわち、筆圧検出部12に対して徐々に荷重(筆圧)を加えていった場合に、筆圧検出部12(1)は全体として図3(B)の特性Dに示したように偏倚する。なお、荷重(N)=弾性係数k×偏倚量(変位量)L(すなわち、荷重=kL)であるから、偏倚(変形)は、筆圧検出素子12aに加わる荷重に比例している。したがって、図3(B)に示した偏倚特性は、筆圧検出部12(1)に加わる荷重特性と考えることができる。したがって、筆圧検出部12(1)に掛かる荷重(筆圧)に応じた圧力が、筆圧検出素子12aに印加されることになる。
このため、図3(B)に示した偏倚特性を持つ筆圧検出部12(1)の筆圧検出素子12aは、自己に印加される図3(B)の非線形の特性Dに対応する圧力(筆圧)に応じた電圧を出力する。すなわち、図3(B)に示した非線形の偏倚特性Dが示すように、書き始めは十分に感度がよく、書いている最中は加える筆圧に応じて検出感度をなだらかにする。といった、この実施の形態の電子ペン1が目指すところの紙に鉛筆で文字などを書く場合の書き味を実現する出力特性(筆圧検出特性)を備えることができる。
このことは、図2(B)に示した筆圧検出部12(2)、図2(C)に示した筆圧検出部12(3)についても同様に言えることである。圧電素子である筆圧検出素子12aの出力特性(筆圧検出特性)は、一般には上述もしたように急峻な線形変化となるものであり、このままでは、紙に対して鉛筆で文字等を書く場合と同様の書き味を電子ペンにより実現することはできない。そこで、図2を用いて説明したように、筆圧検出素子12aに対して、2つの弾性部材を並列に配置する構成を備えた筆圧検出部12(1)、12(2)、12(3)を構成する。これにより、目的とする出力特性となるように筆圧検出素子12aに対して筆圧を掛けることができるようにされる。
[電子ペン1の具体的な構成例]
次に、図2を用いて説明したように、2つの弾性部材を備え、筆圧検出素子12aに対して図3(B)に示した偏倚特性に対応して筆圧を印加できるようにした電子ペンのより具体的な構成について説明する。また、圧電素子である筆圧検出素子12aは、一般にある程度の圧力(例えば3g程度の圧力)が加えられないと印加された圧力に応じた電圧を出力しない特性を有する。つまり、筆圧検出素子12aは、例えば3g程度のオン荷重が必要なものである。このため、この実施の形態の電子ペン1は、筆圧検出素子12aのオン荷重も考慮した構成を有しているものである。
図4は、この実施の形態の電子ペン1の具体的な構成例を説明するための図である。そして、図4(A)は、電子ペン1の筐体15を軸心方向に2つに切断し、前側部分を取り除いてその内部を観視可能にした電子ペン1のペン先側の様子を示す図である。なお、図4(A)において、筆圧検出部12は斜線を付して示したように、その中央部分で軸心方向に切断した断面図として示している。また、図4(B)は、筆圧検出素子12aに掛かる圧力について説明するための図である。
図4(A)に示すように、円筒形でペン先が先細となっている筐体15の内部には、先細となった端部側に、先端部11aの一部を突出させるようにして、芯体11が配置される。芯体11は、先端部11a、軸心部11b、軸受部11cからなっている。芯体11の後端側には、芯体11に接するように、ケース12Csとベース12Bsとによって圧電素子である筆圧検出素子12aを挟んで構成した筆圧検出モジュールが配置される。
ケース12Csは、芯体11側に底面を有し、その反対側は開口となっている筒状のものである。ベース12Bsは、ケース12Cs内に収納可能な大きさの柱状のものである。ケース12Csとベース12Bsとは、硬度の高い非導電性の材料が用いられて形成されている。
なお、この実施の形態の電子ペン1において、芯体11の軸受部11cは、ケース12Csの外側底面に接している。この実施の形態において、芯体11の軸受部11cは、ケース12Csの外側底面に溶着、融着、接着などの種々の方法により固定されているものとする。そして、芯体11の先端部11a及び軸心部11bからなる部分が、ケース12Csに固定されている軸受部11cに対して、筐体15の先端側から着脱可能にされている。すなわち、芯体11の先端部11a及び軸心部11bからなる部分は交換可能なものである。
そして、筆圧検出モジュールのベース12Bsの後端側には、ベース12Bsに接するようにして第1の弾性部材12bが配置される。この例の第1の弾性部材12bは、シリコンゴム製のものであり、図4(A)に示すように半球状に形成されたものである。このように、第1の弾性部材12bが半球状に形成されていることにより、第1の弾性部材12bは、芯体11の先端部11aに印加される筆圧によって、当初は大きく偏倚するが、所定以上の筆圧が掛けられた場合には偏倚量は小さくなるようにされている。
第1の弾性部材12bの後端側には、第1の弾性部材12bの球面の一部に接するように、第2の弾性部材12cが配置される。第2の弾性部材12cは、弾性を有する樹脂などにより、側壁を有する皿状に形成されたものある。そして、この実施の形態の電子ペン1においても、芯体11の先端部11aに掛かる筆圧が小さい時には、第1の弾性部材12bが支配的に作用し、第1の弾性部材12bが筆圧検出素子12aに対して筆圧を印加する。
そして、芯体11の先端部11aに所定値以上の筆圧が掛かるようになったとする。この場合には、第1の弾性部材12bが第2の弾性部材12cの底面をさらに押圧するようになると共に、ケース12Csの側壁の端面Cfと第2の弾性部材の側壁の端面Dfとが接触し、ケース12Csの側壁の端面Dfが第2の弾性部材の側壁の端面Cfを押圧するようになる。
すなわち、芯体11に加わる筆圧が所定値に至るまでは、第1の弾性部材12bが筆圧検出素子12aに作用して、筆圧検出素子12aに対して筆圧を加える。この後、筆圧が増加し所定値以上になると、第1の弾性部材12bが筆圧検出素子12aに作用すると共に、第2の弾性部材12cがケース12Csに作用する。この場合、第2の弾性部材12cにより、筆圧検出素子12aに加わる筆圧が減じるようにされる。
このように、所定値以上の筆圧が芯体11の先端部11aに掛けられると、第1の弾性部材12bと第2の弾性部材12cとが共に作用するようになる。この場合、図4(B)を見ると分かるように、ケース12Csと筆圧検出素子12aとベース12Bsとを通じて第1の弾性部材12bと第2の弾性部材12cとが押圧される構成を有する。さらに、ケース12Csの側壁の端面Cfと第2の弾性部材12cの側壁の端面Dfとが接触し、ケース12Csの側壁によって第2の弾性部材12cの側壁が押圧される状態となる。
このような状態は、ケース12Csと筆圧検出素子12aとベースBsとからなる筆圧検出パッケージが、第1の弾性部材12bと第2の弾性部材12cとを別々に、かつ、同時に押圧する構成となる。すなわち、第1の弾性部材12bと第2の弾性部材12cとが並列に作用している状態となる。換言すれば、第1の弾性部材12bと第2の弾性部材12cの底面とは直列に位置している。しかし、ケース12Csの側壁によって第2の弾性部材12cの側壁を押圧する構成も有する。これにより、常に第1の弾性部材12bを介して第2の弾性部材12cを押圧するのではなく、第1の弾性部材12bを押圧するのと同時に、筆圧検出パーケージの別の箇所が第2の弾性部材12cの側壁を押圧する構成をも形成し、第1の弾性部材12bと第2の弾性部材12cとを並列に作用させることができるようにしている。
そして、ケース12Csの側壁の端面Dfによって第2の弾性部材12cの側壁の端面Cfが押圧されると、第2の弾性部材12cの側壁が潰れ、第1の弾性部材12bによって第2の弾性部材12cの底面がさらに押圧される。このため、図4(A)において、第2の弾性部材12cの後端側に点線で示したように、第2の弾性部材12cは、電子ペン1の後端側(ペン先とは反対側)に凹むように偏倚する構成を有している。このようにして、この実施の形態の電子ペン1では、筆圧に応じて、第1の弾性部材12bと第2の弾性部材12cとが並列に作用する構成を有している。
なお、の実施の形態において、筒状のケース12Csと皿状の第2の弾性部材12cとは、その外形及び外形の大きさが同じものであり、側壁もある程度の厚みがあるように構成されている。また、第2の弾性部材12cは、平板上(板状)のものであってもよい。
また、第2の弾性部材12cは、筐体15の内部に設けられた第1のストッパ(係止部材)SP1によって係止される。これにより、第2の弾性部材12cが後端側に凹む構成を備えていても、芯体11及び筆圧検出部12が、第1のストッパSP1よりも後端に移動することがないようにしている。また、芯体11の先端部11aに掛けられた筆圧が解除されれば、第1の弾性部材12bと第2の弾性部材12cとは元の状態に復帰し、芯体11をペン先側に押し返すようになっている。
さらに、図4(A)に示すように、筐体15のペン先側の内部には、第2のストッパ(係止部)SP2が設けられている。また、芯体11の軸受部11cのペン先側の端部は外側に張り出した芯体側ストッパ(係止部)11SPが設けられている。そして、図4(A)に示すように、筐体15に設けられた第2のストッパと軸受部11cに設けられた芯体側ストッパ11SPとの間に、オン荷重を付与するためのコイルバネ13が配置される。このコイルバネ13によって、芯体11は、常時、筆圧検出部12側に付勢される。
これにより、筆圧検出素子12aには、コイルバネ13と芯体11とによって、常時、所定の圧力が筆圧検出素子12aに掛けられることになる。そして、この実施の形態において、圧電素子である筆圧検出素子12aのオン荷重が例えば3gであったとする。すなわち、3g以上の圧力を掛けないと筆圧検出素子12aは印加された圧力に応じた電圧を出力しないものであるとする。この場合には、コイルバネ13を芯体11に対して3gの圧力で筆圧検出部12側に付勢するものとすればよい。
これにより、コイルバネ13の機能によって、筆圧検出素子12aには常時3gの圧力が掛けられことにより、芯体11の先端部11aに僅かな筆圧が加わっただけでも、筆圧検出素子12aは、この僅かに加わった筆圧に応じた電圧を発生させて出力する。これにより、鉛筆が僅かに紙に触れた場合に薄く黒鉛を残すような態様で位置検出装置200を通じてタブレット型情報端末2に筆記情報(描画情報)の入力ができる。つまり、コイルバネ13は、オン荷重付与用のバネであり、換言すればオフセット用弾性部材である。
そして、芯体11の先端部11aに印加された筆圧に応じて筆圧検出素子12aが発生させた電圧は、図4(A)に示すように例えばベースBsから第1の導電線L1を通じて筐体15に搭載されている回路基板14の筆圧値算出回路14aに供給される。筆圧値算出回路14aは、筆圧検出素子12aからの電圧値に基づいて、筆圧値を算出し、これを発振回路14bに供給する。発振回路14bは、筆圧値に応じると共に、位置を指示するための信号(位置指示信号)を生成して、これを第2の導電線L2を通じて芯体11に供給する。芯体11は導電材料により構成されており、芯体11の先端部11aから当該位置指示信号が位置検出装置200に向けて送出される。
このような構成を有するこの実施の形態の電子ペン1において、筆圧検出素子12aに作用する圧力について図4(B)を参照しながらまとめる。まず、芯体11の先端部11aに全く筆圧WPが加えられていない状態(非使用時)であっても、コイルバネ13の機能により、筆圧検出素子12aには、図4(B)において矢印f1が示すように、常時、オン荷重f1が掛けられている。これにより、芯体11の先端部11aに僅かな筆圧が加わっただけでも、筆圧検出素子12aは、そのわずかな筆圧に応じた電圧を発生させて出力できるようになっている。
そして、図4(B)に示すように、この実施の形態の電子ペン1の芯体11の先端部11aを押していない状態から、押し下げた状態までの芯体11の移動量であるストロークが例えば0.3mmであるとする。この場合に、芯体11の先端部11aに筆圧が印加されると、図4(B)に示すように、最初の区間a(最初の0.15mmの区間)においては、第1の弾性部材12bが支配的に作用する。これにより、筆圧検出素子12aに対して十分に筆圧が伝わるようにされるが、いきなり大きな筆圧が筆圧検出素子12aに伝わらないように筆圧をやや規制する。
この後、芯体11の先端部11aにさらに筆圧が加えられると、図4(B)に示すように、次の区間b(次の0.15mmの区間)においては、第1の弾性部材12bと共に第2の弾性部材12cが並列的に作用する。これにより、筆圧検出素子12aに伝わる筆圧を緩やかに規制する。これにより、筆圧検出部12においての筆圧の検出特性を、鉛筆で紙に文字や絵を書く場合に鉛筆に掛けられる筆圧と同様の特性とすることができる。
図5は、筆圧検出素子12aの出力特性(筆圧検出特性)(図5(A))と、筆圧検出素子12aと第1の弾性部材12bと第2の弾性部材12cとにより構成される図4(A)に示した筆圧検出部12の出力特性(筆圧検出特性)(図5(B))を示す図である。図5(A)に示すように、圧電素子である筆圧検出素子12aは、所定の圧力(例えば3g)以上の圧力を印加しないと、圧力に応じた電圧を出力しないものである。そして、所定の圧力以上の圧力が掛けられると、その出力電圧は急峻な線形変化となる。すなわち、筆圧検出素子12aは、ごく僅かな圧力でも大きな電圧が発生し出力する特性を有する。
しかし、この実施の形態の電子ペン1の場合には、オン荷重用のコイルバネ13を備えると共に、筆圧検出素子12aと第1の弾性部材12bと第2の弾性部材12cとから筆圧検出部12が構成されている。このため、この実施の形態の電子ペン1に搭載され筆圧検出素子12aの筆圧検出特性は、図5(B)に示すように、書き始めは十分に感度がよく、書いている最中は加える筆圧に応じて検出感度をなだらかに変化するという、目的とする筆圧検出特性を実現できる。
換言すれば、図4(A)に示した電子ペン1の筆圧検出部12は、第1の弾性部材12bと第2の弾性部材12cとが筆圧検出素子12aに対して並列に作用する構成を有している。このため、筆圧検出部12全体の変位特性は、図3(B)に示したものと同様のものとなる。そして、上述もしたように、偏倚量は、筆圧検出素子に加わる荷重に比例しているから、筆圧検出部12の出力特性(筆圧検出特性)は、図5(B)に示したように、図3(B)の偏倚特性に対応したものとなる。
[静電結合方式の電子ペン1の構成例のまとめ]
図6は、この実施の形態の電子ペン1の概略構成を説明するためのブロック図である。図6において、図5に示した部分と同一部分には同じ参照符号を付して示している。図6に示すように、芯体11は、筆圧に応じて筆圧検出部12を押下可能な構成になっている。筆圧検出部12は、上述したように、筆圧検出素子12aを備えた筆圧検出パッケージと、第1の弾性部材12bと、第2の弾性部材12cとを備えて構成された部分である。
印加された筆圧に応じて筆圧検出部12において発生された電圧は、筆圧値算出回路14aに供給される。筆圧値算出回路14aは、筆圧検出部12からの出力電圧に応じて筆圧値を算出し、これを発振回路14bに供給する。発振回路14bは、筆圧値に応じて周波数を変化させた位置指示信号を形成し、これを芯体11に供給して、芯体11から位置検出装置200に向けて送出する構成になっている。
なお、図4には図示しなかったが、回路基板14上、あるいはその近傍には、電源回路14cが設けられており、筆圧値算出回路14a、発振回路14bなどの必要箇所に電源の供給ができるようになっている。なお、電源回路14cは、例えば、電池を備え、この電池から各部に電源を供給する構成を有する。
また、電源回路14cの別の構成として、充電用コイル、電気二重層キャパシタ、整流ダイオード、電圧変換回路を備える構成とすることもできる。この場合の電源回路は、外部からの磁界を充電用コイルが受けて電流を発生させ、電気二重層キャパシタに蓄電して、これから整流ダイオード及び電圧変換回路を通じて駆動電源を形成して、これを各部に供給するものとなる。
このように、この実施の形態の静電結合方式の電子ペン1は、発振回路14bからの発振信号を、芯体11を通じて送信することにより、位置検出装置200に対して位置を指示することができると共に、筆圧を通知することもできるものである。
[静電結合方式の位置検出装置200の構成例]
図7は、この実施の形態の電子ペン1からの信号を受け、センサ上の指示位置を検出すると共に、電子ペン1に掛けられている筆圧を検出する位置検出装置200の構成例を説明するためのブロック図である。タブレット型情報端末2には、この図7に示す静電結合方式の位置検出装置200が搭載されている。
この実施形態の静電結合方式の位置検出装置200は、図7に示すように、センサ210と、このセンサ210に接続されるペン検出回路220とからなる。センサ210は、第1の導体群211、第2の導体群212を積層して形成されたものである。第1の導体群211は、例えば、横方向(X軸方向)に延在した複数の第1の導体211Y1〜211Ymを互いに所定間隔離して並列に、Y軸方向に配置したものである。また、第2の導体群212は、第1の導体に対して交差する方向、この例では直交する縦方向(Y軸方向)に延在した複数の第2の導体212X1〜212Xnを互いに所定間隔離して並列に、X軸方向に配置したものである。このように、位置検出装置200のセンサ210では、第1の導体群211と第2の導体群212を交差させて形成したセンサパターンを用いて、静電方式の電子ペン1が指示する位置を検出する構成を備えている。
ペン検出回路220は、センサ210との入出力インターフェースとされる選択回路221と、増幅回路222と、バンドパスフィルタ223と、検波回路224と、サンプルホールド回路225と、AD(Analog to Digital)変換回路226と、制御回路227とからなる。
選択回路221は、制御回路227からの制御信号に基づいて、第1の導体群211および第2の導体群212の中から1本の導体211Yまたは212Xを選択する。選択回路221により選択された導体は増幅回路222に接続され、静電結合方式の電子ペン1からの信号が、選択された導体により検出されて増幅回路222により増幅される。この増幅回路222の出力はバンドパスフィルタ223に供給されて、静電結合方式の電子ペン1から送信される信号の周波数の成分のみが抽出される。
バンドパスフィルタ223の出力信号は検波回路224によって検波される。この検波回路224の出力信号はサンプルホールド回路225に供給されて、制御回路227からのサンプリング信号により、所定のタイミングでサンプルホールドされた後、AD変換回路226によってデジタル値に変換される。AD変換回路226からのデジタルデータは制御回路227によって読み取られ、処理される。
制御回路227は、内部のROMに格納されたプログラムによって、サンプルホールド回路225、AD変換回路226、および選択回路221に、それぞれ制御信号を送出するように動作する。そして、制御回路227は、AD変換回路226からのデジタルデータから、静電結合方式の電子ペン1によって指示されたセンサ210上の位置座標を算出すると共に、電子ペン1の筆圧検出部12で検出された筆圧を検出するようにする。このように、この実施の形態の電子ペン1と位置検出装置200とによって、位置検出システムが構成される。この場合の位置検出システムは、図5(B)に示しや筆圧検出特性を有する電子ペン1からの信号に基づいて、指示位置と筆圧とを検出することができるものである。
[実施の形態の効果]
上述した実施の形態の電子ペン1は、圧電素子である筆圧検出素子12aを用いている。この筆圧検出素子12aは、図5(A)を用いて説明したように、オン荷重が必要であると共に、筆圧検出特性(出力電圧の特性)が急峻な線形変化をするものである。しかし、コイルバネ13の機能によりオン荷重を付与しておくことにより、電子ペン1自体のオン荷重を0gとすることができる。また、筆圧検出部12は、筆圧検出素子12aに対して、第1の弾性部材12bと第2の弾性部材12cとが並列に作用する構成を有する。このため、筆圧検出部12の筆圧検出特性を、図5(B)に示したように、書き始めは十分感度がよく、書いている最中は加える筆圧に応じて検出感度をなだらかに変化するという、目的とする特性とすることができる。
これにより、電子ペン1と位置検出装置200とを用いることによって、鉛筆で紙に文字や絵を書く場合と同様の書き味を実現できる。すなわち、電子ペン1を用いることにより、この実施の形態のタブレット型情報端末2に対して、あたかも紙に文字や絵を書くのと同様の感覚で文字や絵を入力することができる。したがって、電子ペン1を用いてタブレット型情報端末2の表示画面2D上で文字や絵などを書くようにした場合には、紙に鉛筆で文字や絵を書く場合と同様の書き味を再現することができる。これにより、紙に鉛筆で文字や絵を書く場合と同様の表現を、電子ペン1とタブレット型情報端末2において行うことができる。
[変形例]
上述した実施の形態では、第1の弾性部材12bはシリコンゴムにより半球状に形成されたものとして説明したが、これに限るものではない。エラストマーなどと呼ばれるゴム弾性を有する種々の工業用材料により第1の弾性部材12bを形成してもよいし、弾性を有する合成樹脂や天然素材を用いるようにしてもよい。また、その形状も円錐形状や角錐形状などであってもよく、この場合には頂点に丸みを帯びさせるようにしてもよい。もちろん、所望の特性を得られれば、第1の弾性部材12bの形状は角柱状、円柱状などの種々の形状とすることができる。また、第1の弾性部材12bとしてコイルバネや板バネなどを用いるようにすることもできる。
また、上述した実施の形態では、第2の弾性部材12cは樹脂により皿状に形成したものとして説明したが、これに限るものではない。第1の弾性部材12bと同様に、エラストマーなどと呼ばれるゴム弾性を有する種々の工業用材料により第2の弾性部材12cを形成してもよいし、弾性を有する天然素材を用いるようにしてもよい。また形状も側壁の高さを適宜の高さとするように調整可能である。また、第2の弾性部材12cとしてコイルバネや板バネなどを用いるようにすることもできる。
このように、第1の弾性部材12b、第2の弾性部材12cは、筆圧検出部の出力特性として、例えば、図5(B)に示したような所望の特性を得ることができれば、種々の材料により、種々の形状のものとして形成したものを用いることができる。したがって、第1の弾性部材12bと第2の弾性部材12cとを、同じ材料で、あるいは別々の材料で一体形成するようにしてもよい。
また、上述した実施の形態では、オン荷重付加用に1つのコイルバネ13を用いるようにしたが、これに限るものではない。複数のコイルバネを芯体11の周囲に配列する構成としてもよいし、コイルバネに替えて板バネを用いる構成とするなど、オン荷重が付与できる種々の弾性部材を用いるようにすることができる。
また、上述した実施の形態では、芯体は、先端部11aと軸心部11bとからなる部分と、軸受部11cとからなる部分とから構成されるものとして説明したが、これに限るものではない。芯体11は、先端部11aと軸心部11bと軸受部11cとが一体に形成されたものであってもよい。この場合には、例えば、先端部11aが摩耗した場合などにおいては、芯体11の全体を交換可能な構成にすればよい。
また、芯体11の形状も上述した実施の形態のものに限るものではなく、同等の機能を実現することができれば、芯体11の形状についても種々の形状とすることができる。特に先端部11aや軸受部11cの芯体側ストッパ11SPの形状は種々の形状とすることが可能である。
また、図5(B)に示した筆圧検出部12の出力特性(筆圧検出特性)も一例であり、印加される圧力(荷重)に応じた変化の度合いをより急峻にしたり、逆になだらかにしたりするなどのことも可能である。この場合には、筆圧検出素子12aに直列に接続する弾性部材について、所望の特性を得られる弾性係数を有するものを用いるようにすればよい。弾性係数は、材質だけなく、形状によっても変えることができる。
また、筆圧検出部12の出力特性(筆圧検出特性)を所定のものにするのではなく、下限特性(下限カーブ)と上限特性(上限カーブ)を設けておくようにしてもよい。そして、この下限特性と上限特性との間に、筆圧検出部12の出力特性が入るように、第1の弾性部材12b、第2の弾性部材12c、コイルバネ13の特性を決め、当該特性に合致するように第1の弾性部材12b、第2の弾性部材12c、コイルバネ13を構成すればよい。
また、上述した実施の形態では、第1の弾性部材12b、12b1、12b2、12b3と、第2の弾性部材12c、12c1、12c2、12c3との2つの弾性部材を用いるものとして説明したが、これに限るものではない。3つ以上の弾性部材を並列に用いるようにすることによって、筆圧検出特性を段階的に変化する特性となるようにすることもできる。
また、弾性部材は2つ以上のものではなく、2以上の部分からなる1つの弾性部材を用いるように構成することもできる。図8は、2つの部分からなる1つの弾性部材を用いて構成する筆圧検出部の構成例について説明するための図である。なお、図8において筆圧検出部を構成する部分は、斜線を付して示したように、軸心方向に切断した場合の断面図として示している。そして、図8(A)は、芯体11により押圧される押圧部材21と、筆圧検出素子12aと、弾性部材22とから筆圧検出部を構成した場合の例である。図8(A)において、弾性部材22は、例えば円柱上のものであり、中心軸を同一とし、後端側(芯体11とは反対側)に位置する直径の長い円柱部分と、この直径の長い円柱部分から芯体11側に突き出すようにもうかられた直径の短い円柱部分との2つの部分が一体に形成されたものである。
弾性部材22がこのような2つの部分が一体に形成された構成を有することにより、図8(A)に示す筆圧検出部の場合には、芯体11の先端部に筆圧が印加されると、まず、弾性部材22の直径の短い円柱部分が主に作用して筆圧を筆圧検出素子12aに伝達する。そして、一定以上の筆圧が掛けられると、押圧部材21が直径の長い円柱部分をも押圧するようになる。これにより、中心軸を同一とする直径の短い円柱部分と直径の長い円柱部分との2つの部分が並列的に筆圧検出素子12aに作用することになり、図8(A)の筆圧検出特性を、図5(B)に示した筆圧検出特性とすることができる。
しかし、図8(A)に示した構成の場合、弾性部材22の弾性係数によっては、筆圧検出素子12aと直径の短い円柱部分とを、直径の長い円柱部分にめり込ませるように押圧することは難しい場合もある。そこで、図8(B)の弾性部材23に示すように、側壁を有する弾性部材を用いるようにする。つまり、図8(B)に示すように、中心軸を同一とする直径の短い円柱部分と直径の長い円柱部分とに加えて、後端側に位置する直径の長い円柱部分の外周に沿って芯体11側に張り出した側壁を設ける。この場合、中心軸を同一とする直径の短い円柱部分は、当該側壁よりも芯体11側に延びたものとする。
図8(B)に示す弾性部材23を用いることにより、芯体11の先端部に筆圧が印加されると、まず、弾性部材23の直径の短い円柱部分が主に作用して筆圧を筆圧検出素子12aに伝達する。そして、一定以上の筆圧が掛けられると、押圧部材21が直径の長い円柱部分の外周に沿って設けられた側壁をも押圧するようになる。これにより、中心軸を同一とする直径の短い円柱部分と、直径の長い円柱部分の外周に沿って設けられ芯体11側に張り出した側壁とが並列的に筆圧検出素子12aに作用して、図5(B)に示した筆圧検出特性を実現できる。
また、図8(C)に示すように、図8(A)に示した弾性部材22の構成は変更することなく、押圧部材24を、その外周に沿って側壁を設けた構成とする。図8(C)に示した筆圧検出部の場合には、芯体11の先端部に筆圧が印加されると、まず、直径の短い円柱部分が主に作用して筆圧を筆圧検出素子12aに伝達する。そして、一定以上の筆圧が掛けられると、押圧部材24の外周に沿って設けられた側壁が、弾性部材22の直径の長い円柱部分をも押圧するようになる。これにより、中心軸を同一とする直径の短い円柱部分と直径の長い円柱部分との2つの部分が並列的に筆圧検出素子12aに作用して、図5(B)に示した筆圧検出特性を実現できる。
また、図8(D)に示すように、押圧部材と弾性部材との両方を、側壁を有するものとしてもよい。つまり、図8(D)の弾性部材25は、中心軸を同一とする直径の短い円柱部分と直径の長い円柱部分とに加えて、直径の長い円柱部分の外周に沿って、芯体11側に張り出した側壁を設けたものである。この場合、中心軸を同一とする直径の短い円柱部分は、当該側壁よりも芯体11側に延びたものとする。
また、図8(D)の押圧部材24は、その外周に沿って側壁を設けた構成とする。図8(D)に示した筆圧検出部の場合には、芯体11の先端部に筆圧が印加されると、まず、弾性部材25の直径の短い円柱部分が主に作用して筆圧を筆圧検出素子12aに伝達する。そして、一定以上の筆圧が掛けられると、押圧部材24の側壁が、弾性部材25の側壁をも押圧するようになる。これにより、中心軸を同一とする直径の短い円柱部分と直径の長い円柱部分に外周に沿って設けられた側壁との2つの部分が並列的に筆圧検出素子12aに作用して、図5(B)に示した筆圧検出特性を実現できる。
また、図8を用いて説明したように、2つの部分からなる1つの弾性部材を用いるものに限ることなく、段階的に作用する3以上の部分からなる1つの弾性部材を用いて、筆圧検出部を構成することもできる。例えば、長さα<長さβ<長さθとする場合に、中心軸を同一とする直径αの円柱部分と直径βの円柱部分と直径θの円柱部分とが順番に一体に形成された弾性部材を用いるようにすることもできる。また、弾性部材23、25に設ける側壁の厚みを段階的に変えるようにしてもよい。
また、2つの部分からなる1つの弾性部材と、更に別の弾性部材とを組み合わせて筆圧検出部を構成してもよい。このように、複数の弾性部材を用いたり、複数の部分からなる弾性部材を用いたり、また、弾性部材や押圧部材の形状、材質、弾性係数などを調整して、段階的に筆圧検出特性を調整するようにした筆圧検出部が、この発明の電子ペンの重要な特徴である。
このため、筆圧が掛けられた初期段階では当該弾性部材の1つの部分が作用し、所定値以上の筆圧が加えられた場合には、当該弾性部材の2つ以上の部分が並列に作用するというように、筆圧検出素子に掛かる筆圧を段階的に調整される。これにより、筆圧検出素子からの筆圧に応じた出力特性(筆圧検出特性)を目的とする特性にすることができる。したがって、簡単な構成で、種々の調整を行う必要もなく、鉛筆で紙に書くのと同等の書き味を実現することも可能となる。また、オフセット用弾性部材によって、芯体は、常時、筆圧検出部側に付勢され、芯体の先端部に僅かな筆圧が加わっただけでも、筆圧検出部は、この僅かに加わった筆圧に応じた電圧を発生させて出力することができる。これにより、薄く黒鉛を残すような態様の筆記情報(描画情報)の入力が可能となる。