JPWO2019009310A1 - アモルファス合金リボン及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
コアとしては、例えばFe基アモルファス合金又はFe基ナノ結晶合金を用いて作製されたトロイダル磁心(巻コア)が知られている(例えば、特許文献1〜2参照)。
特許文献2:国際公開第2015/046140号
特許文献3:特開昭61−226909号公報
しかしながら、アモルファス合金リボンに用いられる材料は、ビッカース硬度が高いため、機械的な矯正が困難である。つまり、アモルファス合金リボンの平坦度の改善は困難である。特許文献3では、非晶質合金薄帯の平坦度を考慮した技術の開示はされているものの、薄帯自体の平坦度の改善についての開示はない。
アモルファス合金リボンを巻回して巻磁心を作製する場合、巻数が増えるにしたがってアモルファス合金リボンの幅方向端部に波形状が次第に蓄積され、皺が発生しやすい。そのため、再現性良く磁心形状を作製することは困難であった。
本開示の実施形態は、平坦性に優れたアモルファス合金リボン及びその製造方法を提供することを課題とする。
本開示は、上記知見に基づくものであり、具体的手段には以下の態様が含まれる。
下記組成式(A)で表される組成を有するアモルファス合金リボンを製造する、アモルファス合金リボンの製造方法である。
組成式(A)中、a及びbは、組成中の原子比を表し、それぞれ下記範囲を満たす。cは、Fe、Si及びBの合計量100.0原子%に対するCの原子比を表し、下記範囲を満たす。
13.0原子%≦a≦16.0原子%
2.5原子%≦b≦5.0原子%
0.20原子%≦c≦0.35原子%
79.0原子%≦100−a−b≦83.0原子%
<3> 前記引張応力が、40MPa〜70MPaである<1>又は<2>に記載のアモルファス合金リボンの製造方法である。
<4> 前記100−a−bが、下記範囲を満たす<1>〜<3>のいずれか1つに記載のアモルファス合金リボンの製造方法である。
80.5原子%≦100−a−b≦83.0原子%
<5> 前記昇温させる工程での昇温及び前記降温させる工程での降温は、前記アモルファス合金リボンを張架した状態で走行させ、走行する前記アモルファス合金リボンを伝熱媒体に接触させることにより行われる<1>〜<4>のいずれか1つに記載のアモルファス合金リボンの製造方法である。
0.1≦100×h/w≦1.5 式1
また、本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、「アモルファス合金リボン」とは、長尺の合金リボンを意味する。
組成式(A)において、a及びbは、組成中の原子比を表し、それぞれ下記範囲を満たす。cは、Fe、Si及びBの合計量100.0原子%に対するCの原子比を表し、下記範囲を満たす。
13.0原子%≦a≦16.0原子%
2.5原子%≦b≦5.0原子%
0.20原子%≦c≦0.35原子%
79.0原子%≦100−a−b≦83.0原子%
組成式(A)で表される組成を有するアモルファス合金リボンの詳細については、以下において詳述する。
本開示のアモルファス合金リボンの製造方法は、Fe、Si、B、C、及び不可避的不純物からなる組成を有するアモルファス合金リボンを準備する工程を有する。
アモルファス合金リボンは、軸回転する冷却ロールに合金溶湯を噴出する液体急冷法等の公知の方法によって製造することができる。但し、アモルファス合金リボンを準備する工程は、必ずしもアモルファス合金リボンを製造する工程である必要はなく、予め製造されたアモルファス合金リボンを単に準備する工程であってもよい。
本開示のアモルファス合金リボンの製造方法は、アモルファス合金リボンを20MPa〜80MPaの引張応力で張架した状態で、平均昇温速度を50℃/秒以上800℃/秒未満として410℃〜480℃の範囲の最高到達温度まで昇温させる工程を有する。
「張架した状態で走行」とは、アモルファス合金リボンが、引張応力が加えられた状態で連続走行することをいう。降温工程においても同様である。
引張応力が20MPa未満であると、アモルファス合金リボンの平坦度の改善効果が顕在化しにくい。また、引張応力が80MPaより大きくなると、熱処理時にアモルファス合金リボンが破断するおそれが生じ、安定生産が困難となりやすい。
引張応力としては、アモルファス合金リボンの平坦度の改善効果をより高める観点から、40MPa以上が好ましく、45MPa以上がより好ましい。また、引張応力は、熱処理時のアモルファス合金リボンの破断のおそれをより低減する観点から、70MPa以下が好ましく、60MPa以下がより好ましい。
具体的には、例えば図4に示すインラインアニール装置の場合、アモルファス合金リボンの走行方向における、加熱室20の進入口より10mm上流の地点で放射温度計により測定されたリボン温度(加熱前のアモルファス合金リボンの温度、一般に室温(20℃〜30℃)である。)と、昇温伝熱媒体の温度(=最高到達温度、例えば460℃)と、の温度差を、昇温伝熱媒体に接触している時間(秒)で除して求められる。なお、前記加熱室入口より10mm上流の地点で放射温度計での測定が困難である場合、又は室温が不明の場合は、25℃と設定できる。
昇温工程では、アモルファス合金リボンを410℃〜480℃の最高到達温度まで昇温させる。張架により、アモルファス合金リボンの平坦度の改善に寄与する。
ここで、最高到達温度は、昇温工程での昇温伝熱媒体の温度と同一温度である。
「昇温伝熱媒体の温度」及び「最高到達温度」は、合金リボンが接触する昇温伝熱媒体の表面に熱電対を設置して測定される温度である。
伝熱媒体の温度としては、平坦度の改善効果を高める観点から、420℃以上がより好ましく、430℃以上が更に好ましく、440℃以上が特に好ましい。また、伝熱媒体の温度の上限値は、アモルファス合金リボンの脆化抑制の観点から、470℃以下がより好ましい。
次に、本開示のアモルファス合金リボンの製造方法は、上記の昇温工程で昇温されたアモルファス合金リボンを、平均降温速度を120℃/秒以上600℃/秒未満として上記の最高到達温度から降温伝熱媒体温度まで降温させる工程を有する。
降温処理は、アモルファス合金リボンを張架した状態で走行させながら伝熱媒体(本工程では降温伝熱媒体)に接触させることにより、アモルファス合金リボンを降温してもよい。
引張応力が20MPa未満であると、アモルファス合金リボンの平坦度の改善効果が顕在化しにくい。また、引張応力が80MPaより大きくなると、アモルファス合金リボンが破断するおそれが生じ、安定生産が困難となりやすい。
引張応力としては、アモルファス合金リボンの平坦度の改善効果をより高める観点から、40MPa以上が好ましく、45MPa以上がより好ましい。また、引張応力は、熱処理時のアモルファス合金リボンの破断のおそれをより低減する観点から、70MPa以下が好ましく、60MPa以下がより好ましい。
張架されたアモルファス合金リボンの引張応力は、上記の通り、合金リボンを連続走行させる装置(例えば、後述のインラインアニール装置)での走行制御機構で制御され、走行制御機構で制御される張力を合金リボンの断面積(幅×厚さ)で除した数値として求められる。
ここで、降温伝熱媒体温度とは、本工程で降温させた際の到達温度を指し、200℃、150℃、100℃、又は室温(例えば20℃)等の温度であってもよく、適宜設定することができる。
「降温伝熱媒体温度」は、合金リボンが接触する昇温伝熱媒体の表面に熱電対を設置して測定される温度である。
中でも、平均降温速度は、190℃/秒〜500℃/秒であることが好ましい。
ここでは、冷却室が1つであるが、複数の冷却室を連結して備えている場合(最上流の冷却室を第1の冷却室、第1の冷却室より下流の冷却室を第2の冷却室、等ということがある。)には、アモルファス合金リボンの走行方向最上流の(第1の)冷却室での平均降温速度(最高到達温度と第1の降温伝熱媒体温度との温度差を、アモルファス合金リボンが昇温伝熱媒体を離れた時点から第1の降温伝熱媒体を離れた時点までの時間(秒)で除した値)とする。
伝熱媒体の材質としては、銅、銅合金(青銅、真鍮、等)、アルミニウム、鉄、鉄合金(ステンレス等)、などが挙げられる。このうち、銅、銅合金、又はアルミニウムは熱電率(熱伝達率)が高く好ましい。
伝熱媒体は、Niめっき、Agめっき等のめっき処理が施されていてもよい。
これにより、昇温工程において平坦度を改善したアモルファス合金リボンの平坦度を、降温工程において維持するのに効果的である。
より好ましくは、合金リボンと昇温伝熱媒体(例えば加熱プレート)及び降温伝熱媒体(例えば冷却プレート)の接触面は、同一平面内に配置される。これにより、昇温工程からの降温がより一層連続的に行いやすくなるため、効果的に合金リボンの平坦度向上及びその維持が可能となる。
巻き出しローラー12が矢印Uの方向に軸回転することにより、合金リボンの巻回体11から合金リボン10が巻き出される。
この一例では、巻き出しローラー12自体が回転機構(例えばモーター)を備えていてもよいし、巻き出しローラー12自体は回転機構を備えていなくてもよい。
巻き出しローラー12自体は回転機構を備えていない場合でも、後述の巻き取りローラー14による合金リボン10の巻き取り動作に連動し、巻き出しローラー12にセットされた合金リボンの巻回体11から合金リボン10が巻き出される。
加熱プレート22の材質としては、ステンレス、Cu、Cu合金、Al合金、等が挙げられる。
加熱室20は、加熱プレート22に対する熱源とは別に、加熱室の温度を制御するための熱源を備えていてもよい。
加熱室20は、合金リボン10の走行方向(矢印R)の上流側及び下流側のそれぞれに、合金リボンが進入又は退出する開口部(不図示)を有している。合金リボン10は、上流側の開口部である進入口を通って加熱室20内に進入し、下流側の開口部である退出口を通って加熱室20内から退出する。
冷却プレート32の材質としては、ステンレス、Cu、Cu合金、Al合金、等が挙げられる。
冷却室30は、冷却機構(例えば水冷機構)を有していてもよいが、特段の冷却機構を有していなくてもよい。即ち、冷却室30による冷却の態様は、水冷であってもよいし、空冷であってもよい。
冷却室30は、合金リボン10の走行方向(矢印R)の上流側及び下流側のそれぞれに、合金リボンが進入又は退出する開口部(不図示)を有している。合金リボン10は、上流側の開口部である進入口を通って冷却室30内に進入し、下流側の開口部である退出口を通って冷却室30内から退出する。
ダンサーローラー60は、鉛直方向(図7中の両側矢印の方向)に移動可能に設けられている。このダンサーローラー60の鉛直方向の位置を調整することにより、合金リボン10の引張応力を調整できる。ダンサーローラー62についても同様である。
巻き出しローラー12から巻き出された合金リボン10は、これらのガイドローラー及びダンサーローラーを経由して、加熱室20内に導かれる。
加熱室20から退出した合金リボン10は、これらのガイドローラーを経由して冷却室30内に導かれる。
ダンサーローラー62は、鉛直方向(図7中の両側矢印の方向)に移動可能に設けられている。このダンサーローラー62の鉛直方向の位置を調節することにより、合金リボン10の引張応力を調整できる。
冷却室30から退出した合金リボン10は、これらのガイドローラー及びダンサーローラーを経由して、巻き取りローラー14に導かれる。
インラインアニール装置100において、冷却室30の上流側及び下流側に配置されたガイドローラーは、合金リボン10と冷却プレート32の第2平面とを全面的に接触させるために、合金リボン10の位置を調整する機能を有する。
図5及び図6に示すように、加熱プレート22の第1平面(即ち、合金リボン10との接触面)には、複数の開口部24(吸引構造)が設けられている。各開口部24は、それぞれ、加熱プレート22を貫通する貫通孔25の一端を構成している。
複数の開口部24の具体的な配置は、図5に示される配置には限定されない。複数の開口部24は、図5に示されるように、合金リボン10との接触領域全体に渡り、二次元状に配置されていることが好ましい。
また、開口部24の形状は、平行部(平行な2辺)を有する長尺形状となっている。開口部24の長さ方向は、合金リボン10の進行方向に対して直角な方向となっている。
開口部24の形状は、図5に示される形状には限定されず、図5に示される形状以外の長尺形状、楕円形状(円形状を含む)、多角形状(例えば長方形)、等のあらゆる形状を適用できる。
また、前述のとおり、開口部に代えて、又は、開口部に加えて、吸引構造としての溝が設けられていてもよい。
なお、この一例では、貫通孔25が、加熱プレート22の、第1平面22Sから第1平面22Sとは反対側の平面までを貫通している。貫通孔は、第1平面22Sから加熱プレート22の側面までを貫通していてもよい。
図7に示されるように、この変形例では、加熱プレート122が、合金リボン10の走行方向(矢印R)について、3つの領域(領域122A〜122C)に分割されている。
領域122A〜122Cには、図5に示す加熱プレート22と同様に、それぞれ複数の開口部124A、124B、124Cが、合金リボン10との接触領域全体に渡り、二次元状に配置されている。開口部124A、124B、124Cの各々は、加熱プレート122を貫通する貫通孔の一端を構成し、各領域における複数の貫通孔には、それぞれ複数の貫通孔と連通する排気管126A、126B及び126Cが取り付けられている。そして、排気管126A、126B及び126Cを通じて不図示の吸引装置(例えば、真空ポンプ)によって貫通孔の内部空間を排気することにより(矢印S参照)、走行中の合金リボン10を加熱プレート122の開口部124A、124B及び124Cが設けられた第1平面に吸引することができる。
昇温工程及び降温工程の好ましい一態様として、伝熱媒体を備えたインラインアニール装置を用い、合金リボンを、合金リボンとの接触面が互いに同一平面内に位置する昇温伝熱媒体及び降温伝熱媒体に接触させて張力を加えながら熱処理することにより、アモルファス合金リボンを作製する態様(以下、「態様X」という。)が挙げられる。
Fe100−a−bBaSibCc … 組成式(A)
組成式(A)において、a及びbは、組成中の原子比を表し、それぞれ下記範囲を満たす。cは、Fe、Si及びBの合計量100.0原子%に対するCの原子比を表し、下記範囲を満たす。
13.0原子%≦a≦16.0原子%
2.5原子%≦b≦5.0原子%
0.20原子%≦c≦0.35原子%
79.0原子%≦100−a−b≦83.0原子%
組成式(A)中のFeの原子比(原子%)は、「100−a−b」で求められる。Feは、アモルファス合金リボンの主成分であり、磁気特性を決定する主元素である。
なお、Feの含有比を表す「100−a−b」には、例えば、Nb、Mo、V、W、Mn、Cr、Cu、P、及びSからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む不可避不純物も含まれてもよい。この不可避不純物の含有量としては、1原子%以下の範囲であることが好ましい。
上記の「100−a−b」は、79.0以上であり、80.5以上がより好ましく、81.0以上が更に好ましい。
「100−a−b」(原子%)の上限は、a、bに応じて決定され、83.0以下である。
上記のうち、「100−a−b」は、特に下記範囲を満たすことが好ましい。
80.5原子%≦100−a−b≦83.0原子%
本開示では、aが13.0原子%以上であることで、Bの上記機能が効果的に発現する。また、aが16.0原子%以下であることで、Feの含有量が確保されるので、アモルファス合金リボン及びアモルファス合金リボン片の飽和磁束密度Bsが向上し、B80を高くすることができる。
中でも、Bの原子比aは、下記範囲を満たすことが好ましい。
14.0原子%≦a≦16.0原子%
Siは、アモルファス合金リボンの結晶化温度を上昇させ、かつ、表面酸化膜を形成させる機能を有する。
本開示では、bが2.5原子%以上であることで、Siの上記機能が効果的に発現する。したがって、より高温での熱処理が可能となる。また、bが5.0原子%以下であることで、Feの含有量が確保されるので、アモルファス合金リボンの飽和磁束密度Bsが向上する。
Siの原子比bとしては、下記範囲を満たすことが好ましい。
3.0原子%≦b≦4.5原子%
Cの原子比cの好ましい範囲は、0.23原子%以上0.30原子%以下である。
本開示のアモルファス合金リボンは、高い磁束密度(B80及びB800)を有する。なお、B80は、80A/mの磁場で磁化した際の磁束密度であり、B800は、800A/mの磁場で磁化した際の磁束密度である。
アモルファス合金リボンの磁束密度B80は、1.45T以上が好ましい。特に、B80が1.50T以上であると、アモルファス合金リボンから作製されるコアにおいて、様々な軟磁性応用部品を得ることができる。
保磁力は、1.0A/m以下が好ましく、0.8A/m以下がより好ましい。保磁力が1.0A/m以下であると、低いヒステリシス損失により、アモルファス合金リボンから作製されるコアにおいて、より低鉄損のコアが得られる。
B80は、直流磁化測定装置SK110を用いて磁場強度80A/mにて求められる値であり、B800は、直流磁化測定装置SK110を用いて磁場強度800A/mにて求められる値である。
保磁力(Hc)は、磁場強度800A/mで測定したヒステリシス曲線より求められる値である。
本開示のアモルファス合金リボンは、裁断性を有し、かつ、幅方向の一端側に存在する起伏の、幅方向の一端から面内方向に10mmの位置における起伏頂部の高さ、及び幅方向の他端側に存在する起伏部の、幅方向の他端から面内方向に10mmの位置における起伏頂部の高さを含む複数の高さの平均値である高さhと、前記起伏部の幅長の平均値である幅wと、が下記式1を満たすものである。
0.1≦100×h/w≦1.5 式1
裁断性は、アモルファス合金リボンの脆化の程度を表す第1の脆性指標となるものである。具体的には、合金リボンを二つの刃で挟んで裁断する裁断具(例えばハサミ)で裁断した際、ほぼ直線的に分割され、直線では無い破断部分が全裁断寸法の5%以下であることにより評価される。
0.1≦100×h/w≦1.5 式1
本開示のアモルファス合金リボンにおいて、平坦度(=100×h/w)が1.5を超えると、合金リボンの幅方向端部での波形状が大きくなりすぎ、占積率が低くなる点で支障を来たす。平坦度(=100×h/w)は、一様な平面になる点で0(ゼロ)に近いほどよい。現実的な範囲として、平坦度は0.1以上としてもよい。
コア作製時の形状再現性、及び占積率をより高める観点から、平坦度は、0.1〜1.2が好ましく、0.1〜1.0がより好ましい。
高さhは、アモルファス合金リボンの、幅方向の一端の側に存在する波形状(側波)の起伏部と幅方向の他端の側に存在する波形状の起伏部との双方に着目し、幅方向両端に存在する起伏部の頂部高さの平均値として求められる。
具体的には、高さhは、アモルファス合金リボンの幅方向の一端から面内方向に10mmの位置に、幅方向と直交する長手方向に存在する複数の波形状の起伏部の各起伏頂部の高さと、アモルファス合金リボンの幅方向の他端から面内方向に10mmの位置に、前記長手方向に存在する複数の波形状の起伏部の各起伏頂部の高さと、を含めた複数の高さの平均値で表される。
図2及び図3を参照して更に説明する。
図2に示すアモルファス合金リボン120は、合金リボンの長手方向Pに直交する幅方向Qにおける両端部には、平坦な台(平面)110の鉛直方向(合金リボン主面鉛直方向)に長手方向Pに沿って連続的に起伏する凹凸形状が形成されている。
本明細書において、連続する複数の凹凸形状を、複数の振幅(形状)、複数の波形状、又は複数の側波形状ということもある。
図2及び図3に示すように、合金リボンの幅方向Qにおける中央付近には、大きな起伏はみられず、幅方向端部の起伏の影響も少ない。したがって、合金リボンの幅方向における中央部と端部において、長手方向の合金リボンの長さは、幅方向における端部と中央部とで異なっており、合金リボンの端部における長さが中央部における長さより長いと考えられる。
高さh={(hC1+hC2+hC3+・・・hCm)+(hD1+hD2+hD3+・・・hDn)}/(m+n)
幅wは、例えば図3に示すように、起伏部122の起伏頂部の高さhを有する凸部(山部)を挟む凹部(底部)間の距離である。
幅wは、合金リボンの端部をレーザー変位計で測定し、その測定値から、長手方向に並ぶ起伏頂部の間に形成される凹部と凹部との間の距離(即ち、高さhが最も低い部分間の距離)を算出することで求められる値である。
ここで、幅wは、起伏頂部C1、C2、C3・・・及びD1、D2、D3・・・を含む図2の二点鎖線A又は二点鎖線Bの位置での起伏部の幅の長さを指す。
幅w={(wC1+wC2+wC3+・・・wCm)+(wD1+wD2+wD3+・・・wDn)}/(m+n)
厚さが20μm以上であると、アモルファス合金リボンの機械的強度が確保され、アモルファス合金リボン片の破断が抑制される。アモルファス合金リボンの厚さは、22μm以上であることがより好ましい。また、厚さが30μm以下であると、鋳造後のアモルファス合金リボンにおいて、安定したアモルファス状態が得られる。
アモルファス合金リボンの幅長が20mm以上であると、生産性良くコア作製が可能である。また、アモルファス合金リボンの幅長が220mm以下であると、幅方向の厚さや磁気特性のバラツキを抑制でき、安定生産性を確保し易い。
軸回転する冷却ロールに合金溶湯を噴出する液体急冷法により、Fe81.3Si4.0B14.7C0.25(原子%)の組成を有する、幅142mm、厚さ25μmのアモルファス合金リボンを製造した。
<製造条件>
昇温伝熱媒体及び降温伝熱媒体:ブロンズ製プレート
最高到達温度(昇温伝熱媒体の温度):350℃〜500℃(下記表1参照)
アモルファス合金リボンに加える引張応力:50MPa
アモルファス合金リボンと昇温伝熱媒体との接触距離:1.2m
アモルファス合金リボンと昇温伝熱媒体との接触時間:1.2秒
アモルファス合金リボンが昇温伝熱媒体を離れた時点から降温伝熱媒体を離れた時点までの時間:1.6秒
平均昇温速度及び平均降温速度:下記表1参照
平均昇温速度は、アモルファス合金リボンの走行方向における、加熱室20の進入口より10mm上流の地点で放射温度計により測定されたリボン温度(加熱前のアモルファス合金リボンの温度=通常は室温であり、本実施例では25℃である。)と、昇温伝熱媒体(図4中の加熱プレート22)の温度と、の温度差を、昇温伝熱媒体に接触している時間(秒)で除して求めた。
平均降温速度は、アモルファス合金リボンの走行方向における昇温伝熱媒体(図4中の加熱プレート22)の温度(=最高到達温度)と、25℃の降温伝熱媒体(図4中の冷却プレート32)の温度と、の温度差を、昇温伝熱媒体を離れた時点から降温伝熱媒体を離れた時点までの時間(秒)で除して求めた。
次に、アモルファス合金リボンの巻回体からアモルファス合金リボンを巻き出し、巻き出されたアモルファス合金リボンを裁断することにより、長手方向長さが1000mm(1m)であるアモルファス合金リボン片を切り出した。アモルファス合金リボンの裁断は、シャーリングにより行った。
−1.平坦度−
熱処理を行ったアモルファス合金リボンから長手方向の長さを1mとしてサンプリングし、長さ1m、幅142mmのアモルファス合金リボンを定盤上に置き、アモルファス合金リボンの幅方向において、一端から面内方向に10mmの位置及び他端から面内方向に10mmの位置(即ち、幅方向両端から面内方向にそれぞれ10mmの位置にある2つの直線上)の高さ(各起伏部における起伏頂部の高さ)を、レーザー式変位センサLB−300と多機能デジタルメータリレーRV3−55R(キーエンス社製)を用い、分解能0.1mmにて連続測定した。測定された値(起伏頂部の高さ)の平均値を算出し、高さhとした。なお、分解能は0.1mmのため、合金リボンの厚さバラツキは無視できる。
また、上記と同様の方法で、長手方向に並ぶ起伏部の起伏頂部間に形成される凹部と凹部との間の距離(即ち、高さhが最も低い部分間の距離)を算出し、幅wとした。
以上のように求めた高さh及び幅wを下記式に代入して平坦度として算出した。
平坦度=100×h/w
伝熱媒体の温度によって平均昇温速度もしくは平均降温速度及び最高到達温度を変えて作製された複数のアモルファス合金リボンを用い、アモルファス合金リボンをステンレス製ハサミ(Westcott社製、製品名:Westcott 8" All Purpose Preferred Stainless Steel Scissors)で裁断した。この際の裁断性の有無を以下の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
有り:ほぼ直線的に分割され、直線では無い破断部分が全裁断寸法の5%以下である。
無し:直線では無い破断部分が全裁断寸法の5%を超える。
なお、図1は、上記各アモルファス合金リボンの合金リボン主面鉛直方向から観た外観写真である。
具体的には、熱処理前の合金リボンは、平坦度が2.5と大きく、合金リボンの幅方向端部近傍における波形状が確認された。また、最高到達温度を350℃又は380℃とした比較例でも、平坦度がそれぞれ1.9、1.7と大きく、熱処理による形状に対する矯正効果は小さいことが分かる。
また、熱処理時の最高到達温度を500℃とした比較例では、平坦度が1.1と低いが、裁断時に割れ及び欠けが生じやすく、直線状に裁断できない部分が20%を超えており、裁断性に劣るものであった。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
Claims (7)
- Fe、Si、B、C、及び不可避的不純物からなる組成を有するアモルファス合金リボンを準備する工程と、
前記アモルファス合金リボンを引張応力20MPa〜80MPaで張架した状態で、平均昇温速度を50℃/秒以上800℃/秒未満として410℃〜480℃の範囲の最高到達温度までアモルファス合金リボンを昇温させる工程と、
前記アモルファス合金リボンを引張応力20MPa〜80MPaで張架した状態で、昇温された前記アモルファス合金リボンを、平均降温速度を120℃/秒以上600℃/秒未満として前記最高到達温度から降温伝熱媒体温度まで降温させる工程と、
を含み、
下記組成式(A)で表される組成を有するアモルファス合金リボンを製造する、アモルファス合金リボンの製造方法。
Fe100−a−bBaSibCc … 組成式(A)
組成式(A)中、a及びbは、組成中の原子比を表し、それぞれ下記範囲を満たす。cは、Fe、Si及びBの合計量100.0原子%に対するCの原子比を表し、下記範囲を満たす。
13.0原子%≦a≦16.0原子%
2.5原子%≦b≦5.0原子%
0.20原子%≦c≦0.35原子%
79.0原子%≦100−a−b≦83.0原子% - 前記平均昇温速度が、60℃/秒〜760℃/秒であり、前記平均降温速度が、190℃/秒〜500℃/秒である、請求項1に記載のアモルファス合金リボンの製造方法。
- 前記引張応力が、40MPa〜70MPaである、請求項1又は請求項2に記載のアモルファス合金リボンの製造方法。
- 前記100−a−bが、下記範囲を満たす請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のアモルファス合金リボンの製造方法。
80.5原子%≦100−a−b≦83.0原子% - 前記昇温させる工程での昇温及び前記降温させる工程での降温は、前記アモルファス合金リボンを張架した状態で走行させ、走行する前記アモルファス合金リボンを伝熱媒体に接触させることにより行われる請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のアモルファス合金リボンの製造方法。
- 走行する前記アモルファス合金リボンを昇温させる伝熱媒体の接触面、及び走行する前記アモルファス合金リボンを降温させる伝熱媒体の接触面は、平面内に配置されている請求項5に記載のアモルファス合金リボンの製造方法。
- 幅方向の一端側に存在する起伏の、幅方向の一端から面内方向に10mmの位置における起伏頂部の高さ、及び幅方向の他端側に存在する起伏の、幅方向の他端から面内方向に10mmの位置における起伏頂部の高さを含む複数の高さの平均値である高さhと、
前記起伏の幅長の平均値である幅wと、
が下記式1を満たす、アモルファス合金リボン。
0.1≦100×h/w≦1.5 式1
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