JPWO2018186222A1 - 多孔質セルロースビーズおよび吸着体 - Google Patents
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Abstract
本発明は透過観察像が良好且つ高吸着量を発現する細孔特性を有した非特異的吸着の少ない多孔質セルロースビーズを毒性や腐食性が少なく簡便な方法で提供すること、さらにはこれを用いた架橋多孔質セルロースビーズ、およびこれらを用いた吸着体、これらを用いたカラム、およびこれらを用いた精製方法を提供することを課題とする。アルカリ水溶液と原料セルロース粉末とを混合して作製したセルロースドープを−12℃より低い温度に冷却する工程と、セルロースドープを15℃より高い温度に調整する工程を含むことを特徴とする、多孔質セルロースビーズの製造方法を発明することで、上記課題を解決することができた。
Description
本発明は、多孔質セルロースビーズおよび吸着体に関する。
医療用吸着体や抗体医薬品等の高分子医薬品精製用の吸着体の材質には、非特異吸着の少ないアガロースやセルロース等の多糖類が好まれている。多孔質セルロースビーズは、機械的強度が比較的大きいことから破砕され難く、また吸着すべき標的物質と相互作用するリガンドを導入するのに利用できる水酸基を多く含有する等の利点から、各種クロマトグラフィー用吸着体やアフィニティー吸着体などの各種吸着体用の基材として用いられている。特に、アフィニティー吸着体は、効率よく標的物質を精製、または不要物濃度を低減できることから、医療用吸着体や医薬品精製用吸着体として利用されてきている。特に、プロテインAをアフィニティーリガンドとして多孔質担体に固定化した吸着体がリウマチ、血友病、拡張型心筋症の治療用吸着体または抗体医薬品精製用吸着体として注目されている(例えば非特許文献1,2)。
多孔質セルロースビーズの製造は、セルロースを一般的な溶媒に溶解させることが困難であるため、一般的な合成高分子ビーズと比べて煩雑な工程を含むものが多い。その一つとして、60%もの高濃度のチオシアン酸カルシウム水溶液など、腐食性が高く、設備化の難易度を高くしてしまう溶媒に溶解してセルロース溶液を作製し、これを液滴化して凝固する方法が開示されている(例えば特許文献1)。この方法で用いられるセルロース溶液が特異な挙動を示し、また、この方法で得られる多孔質セルロースビーズは、かなり大きい細孔を有しており、また細孔径分布も広いことが知られている(例えば非特許文献3)。よって、当該方法で得られた多孔質セルロースビーズを抗体などの吸着体として用いる場合、比表面積が小さくなることが予想され、高い吸着性能を示すことは期待できない。一方、セルロースの溶解性を上げるためにセルロースの水酸基に置換基を付与し、汎用の溶媒に溶解させて造粒を行い、造粒後に置換基を脱離させて多孔質セルロース系担体を得る方法が例示されている(例えば特許文献2)が、工程が煩雑である。
安価、安全且つ簡便にセルロース溶液を作製する方法として、低温のアルカリ水溶液を溶媒とする方法が知られている。しかしながら、一般的にこの方法は完全にセルロースを溶解させることが難しく、特殊なセルロースを用いる場合が多い。例えば、特許文献3にはアルカリ溶液に溶解性を示すセルロースが開示されているが、当該セルロースには、ミクロフィブリルの繊維径が1μm以下、さらには500nm以下に、特殊な微細加工が施されている。
特許文献4に示されるように、微生物セルロースをアルカリ溶液に溶解してセルロース溶液を作製し、連続相溶媒を添加後にセルロース溶液を液滴化した後、微生物セルロース粒子を凍結させ、次に洗浄することによりセルロースビーズを得る方法が開示されているが、連続相溶媒ごとセルロース溶液を凍結するのに、エネルギーを要する。また、微生物セルロースは特殊な原料であり、これを安定的に大量に入手することは現時点では困難である。
ごく最近、特許文献5にて、水酸化ナトリウムと尿素を含有する水溶液を用いつつ、比較的高い温度でセルロースドープが作製できること、更にはこのセルロースドープから多孔質ビーズが得られることが報告されている。また特許文献6にて、汎用のセルロース原料をやや低温のアルカリ水溶液で処理したセルロース分散液に、ある種の添加剤を加えることで、高性能な多孔質セルロースビーズおよびそれを用いた吸着体が得られることが報告されている。
これら吸着体の評価方法としては、目的とする物質の吸着量を直接測定する方法が主流であったが、近年、例えば、非特許文献4では、蛍光標識化された目的吸着物質を用いた吸着挙動の解析方法が示されており、イオン強度によって、ある吸着体粒子内で吸着されやすい部位が異なることが報告されている。つまり、こういった透過観察を用いた予備検討により、最適なイオン強度を予め求めることが可能となっており、これは非常に意義がある。また、非特許文献5においては、吸着体粒子内への吸着挙動の経時変化を透過観察しており、約40分間でビーズの中央部まで吸着が進行することが示されている。つまり、こういった透過観察を用いた予備検討により、最適な吸着時間を求めることができる。また非特許文献6では、プロテインA固定化吸着体に蛍光標識化抗体を吸着させる実験を蛍光顕微鏡を使って解析し、物質移動特性を求める手法が報告されており、この結果から緻密な精製方法を構築できることが示唆される。
特許文献5,6で得られる多孔質ビーズは、光学顕微鏡で透過観察を行った場合、不均質な構造が観察される場合があり、吸着性能やビーズの機械的強度等の品質が安定しない懸念がある。また、透過観察像が良好でない場合、非特許文献4,5のような透過観察から得られる精製方法の最適化という点で懸念があり、精製工程の最適化に莫大な労力と資源を要する可能性がある。
Annals of the New York Academy of Sciences,2005,Vol.1051,p.635−646
American Heart Journal,Vol.152,Number 4,2006,p.712e1−712e6
Journal of Chromatography,195,1980,p.221−230
Dziennik,S.R.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100,2003,p.420
Stone,M.C.ら、J.Chromatogr.A,1160,2007,p.206.
勝田ら、化学工学会年会研究発表講演要旨集、Vol.81st,F207,2016
本発明は従来の技術が有する上記課題を鑑みてなされたものであり、腐食性や毒性の大きい副原料を用いず、工業的に不利である煩雑な工程を経ることなく、光学顕微鏡で透過観察を行った場合に均質な透過観察像となる高性能な多孔質セルロースビーズを安価に得るためのものである。
アルカリ水溶液と原料セルロース粉末とを混合して作製したセルロースドープを−12℃より低い温度に冷却する工程と、セルロースドープを15℃より高い温度に調整する工程を含むことを特徴とする多孔質セルロースビーズの製造方法を提供することにより、上記課題を解決できた。
本発明を以下に示す。
本発明を以下に示す。
[1] アルカリ水溶液と原料セルロース粉末とを混合して作製したセルロースドープを−12℃より低い温度に冷却する工程と、前記冷却する工程の後に、セルロースドープを15℃より高い温度に調整する工程を含むことを特徴とする多孔質セルロースビーズの製造方法。
[2] セルロースドープを冷却する温度が−20℃以上、−15℃以下であることを特徴とする、上記[1]に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
[3] セルロースドープを−12℃より低い温度で冷却する時間が30分間以上であることを特徴とする、上記[1]または[2]のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
[4] [造粒後の多孔質セルロースビーズの固形分含量]/[ドープ中の副原料以外の固形分含量]の値が1.35未満となることを特徴とする、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
[5] セルロースドープに助剤が含まれていることを特徴とする、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
[6] セルロースドープを15℃より高い温度に調整する工程の温度が60℃未満であることを特徴とする、上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
[7] セルロースドープを孔径が50μm以下の濾材で濾過する工程を含むことを特徴とする、上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
[8] 上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の製造方法により多孔質セルロースビーズを製造する工程、および、
架橋剤を用いて多孔質セルロースビーズを架橋する工程を含むことを特徴とする架橋多孔質セルロースビーズの製造方法。
架橋剤を用いて多孔質セルロースビーズを架橋する工程を含むことを特徴とする架橋多孔質セルロースビーズの製造方法。
[9] 上記[8]に記載の製造方法により架橋多孔質セルロースビーズを製造する工程、および、
架橋多孔質セルロースビーズにリガンドを固定化する工程を含むことを特徴とする吸着体の製造方法。
架橋多孔質セルロースビーズにリガンドを固定化する工程を含むことを特徴とする吸着体の製造方法。
[10] 標的化合物を精製する方法であって、
上記[9]に記載の製造方法により、標的物質に結合するリガンドを架橋多孔質セルロースビーズに固定化して吸着体を製造する工程、および、
標的物質を含む溶液と吸着体とを接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
上記[9]に記載の製造方法により、標的物質に結合するリガンドを架橋多孔質セルロースビーズに固定化して吸着体を製造する工程、および、
標的物質を含む溶液と吸着体とを接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
[11] 吸着体をカラムに充填し、標的物質を含む溶液を当該カラムに通液する上記請求項[10]に記載の方法。
本発明によれば、毒性、腐食性が高い副原料を使わず、工業的に不利である煩雑な工程を経ることなく、光学顕微鏡で透過観察を行った場合に均質な透過観察像となる高性能な多孔質セルロースビーズを安価、安全且つ簡便に得ることができる。
本発明は、アルカリ水溶液と原料セルロース粉末とを混合して作製したセルロースドープを−12℃より低い温度に冷却する工程と、前記冷却する工程の後に、セルロースドープを15℃より高い温度に調整する工程を含むことを特徴とする多孔質セルロースビーズの製造方法である。低温の水酸化ナトリウム水溶液にセルロースを分散させてドープを作製し、これを多孔質化してセルロースビーズを得ることは、特許文献6などの例があるが、上記の特徴を有する具体例は未だ見出されていない。
本発明者は、低温のアルカリ水溶液を用いる方法において、光学顕微鏡による透過観察像が均質な多孔質セルロースビーズの開発に着手した。ここで、透過観察像が均質とは、適切な倍率で観察した場合に、長さ10μm以上の異物のように見える部分が、ビーズ内に平均2個以下であることを目安とする。まず、本発明者は、ドープを冷却する温度を、特許文献6の実施例より低くして多孔質セルロースビーズを作製した。その結果、ドープを冷却する温度を低下させるほど、光学顕微鏡によるドープの透過観察像が均質化する傾向を見出すことができた。特に−12℃よりドープを冷却する温度が低い場合において、この傾向が顕著であった。この−12℃より低い温度で冷却する工程を加えた以外は、特許文献6の実施例を参考に多孔質セルロースビーズを製造したが、特許文献6より吸着性能が低下した。その原因を調査した結果、理由は定かではないが、セルロースドープの冷却温度を−12℃より低くする工程を含む場合、得られる多孔質セルロースビーズの固形分含量が特許文献6より大きくなる傾向にあることが分かった。
そこで、本発明者は鋭意検討の結果、アルカリ水溶液と原料セルロース粉末とを混合して作製したセルロースドープを−12℃より低い温度に冷却する工程を含む多孔質セルロースビーズの製造方法において、ドープを冷却後、エマルション化や多孔質化の前にセルロースドープを15℃より高い温度に調整する工程を含むことで、上記の課題を解決できることを見出した。本発明に関わる製造方法では、セルロースを低温のアルカリ水溶液中に分散させてセルロースドープを得るが、その後、セルロースドープの温度を15℃超に調整することにより、高吸着性能を示す多孔質セルロースビーズが得られることも見出した。
本発明者は、[造粒後の多孔質セルロースビーズの固形分含量]/[ドープ中の副原料以外の固形分含量]の値が1.35未満の多孔質セルロースビーズであれば、光学顕微鏡による透過観察像が均質で、高吸着性能を示す多孔質セルロースビーズが得られやすいことを見出した。[造粒後の多孔質セルロースビーズの固形分含量]/[ドープ中の副原料以外の固形分含量]の値は、より好ましくは0.7以上1.35未満である。当該値が0.7以上であれば機械的強度に優れ、比表面積が大きい多孔質セルロースビーズが得られやすい。また当該値が1.35未満であれば、細孔径分布が狭い多孔質セルロースビーズを得られやすい傾向にあることを本発明者は見出した。当該値は、更に好ましくは0.8以上1.31未満、もっとも好ましくは0.9以上1.28未満である。
ここで、「造粒」とは、セルロースドープのエマルション化と、当該エマルション中のセルロースドープ液滴を凝固溶媒に接触させることにより多孔質なセルロースビーズを得ることを示し、「造粒後」とは、多孔質化される工程の後に、ビーズの固形分の質量変化が伴うような特別な操作が成されていない状況を指し、「固形分含量」とは、振動を与える等しながらビーズを完全に沈降させた体積当たりの乾燥重量を指す。「ドープ中の固形分」とは、ドープ作製前に常温且つ単独で固体である成分を指し、このうち「副原料」とは、ドープ作製後の多孔質化工程や洗浄工程、架橋工程、リガンド固定化工程、精製工程等で除去されるものを指す。例えば、水酸化ナトリウムは副原料と見なされる。
本発明に関するセルロースドープにおいては、−12℃に近い温度では、熱エネルギー的に相変化のような挙動が見られる場合があり、セルロースドープの温度が速やかに安定しない傾向にある。これらのことから、セルロースドープを冷却する温度は−15℃以下であることがより好ましい。また、セルロースドープを冷却する温度が−20℃以上であれば、冷却に要するエネルギーコストや、撹拌に要する設備コストの観点から好ましい。なお、本開示において「セルロースドープ」とは、微細なセルロース粒子またはセルロース繊維がアルカリ水溶液に分散した分散液をいうものとする。また、セルロースドープ中の微細なセルロース粒子またはセルロース繊維の長さは、理想的には10μm以下であることが好ましい。
また、セルロースドープを−12℃より低い温度で冷却する時間に特に限定は無いが、30分間以上であれば光学顕微鏡による透過観察像が更に均質な多孔質セルロースビーズを得られる傾向にあることから好ましい。また60分間以上であれば、より好ましい多孔質セルロースビーズを得ることができる。また、かなりの長時間冷却を続けると、セルロースドープが変色したり、粘度が上昇したり、ゲル化しやすくなったりする傾向にあることから、冷却時間は48時間以下であることが好ましく、16時間以下であれば更に好ましく、生産性の観点から5時間以下であることが好ましく、2時間未満であることが最も好ましい。また、当該冷却工程においては、撹拌を維持することも、品質安定性の面から好ましい。なお、上記時間は、セルロースドープの温度が−12℃以下の所定温度に達してからの時間とすることができる。
当該冷却工程より前のセルロースドープ温度は25℃以下であることが好ましい。当該温度が25℃以下であればセルロースドープの着色が少なくなり、またダマの発生等の不具合が起こり難い。また上記冷却工程前の温度が−12℃より高ければ、撹拌を維持しやすいため好ましい。冷却工程前の温度としては、−5℃以上がより好ましく、−2℃以上がさらに好ましく、−1℃以上が特に好ましく、セルロースドープに用いる水のハンドリング性や温度調整の簡便さから0℃以上であることが最も好ましい。中でも、15℃以下がより好ましく、10℃以下がさらに好ましい。
本発明で用いるアルカリは、水溶液となった際にアルカリ性を示すものであれば特に限定なく用いることができる。入手のしやすさから水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、製品安全性や価格の面から水酸化ナトリウムが最も好ましい。
前記アルカリ水溶液のアルカリ濃度に特に限定は無いが、3質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。アルカリの濃度がこの範囲であれば、セルロースのアルカリ水溶液への分散性・膨潤性が高くなるため好ましい。より好ましいアルカリの濃度は5質量%以上、15質量%以下であり、さらに好ましくは7質量%以上、10質量%以下である。
また本発明のセルロースドープには尿素やポリエチレングリコール等の助剤を用いることも好ましい。本開示において「助剤」とは、セルロースのアルカリ水溶液中への分散を促進したり、セルロースドープを安定化するものをいう。助剤のドープ中の濃度は3質量%以上、30重量%以下であることが好ましい。助剤の濃度がこの範囲であれば、ドープの均質性が高くなるため好ましい。より好ましい助剤の濃度は8質量%以上30質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上、20質量%以下であり、最も好ましくは12質量%以上、15質量%以下である。
前記セルロースの種類には特に限定は無い。本出願人は、特許文献6で示しているように、セルロースを完全に溶解させずとも多孔質セルロースビーズを得る方法を開発していることから、溶解性を上げるための置換基を導入したセルロースなど、置換セルロースを用いる必要はなく、通常の無置換セルロースを原料として用いている。但し、セルロースをアルカリ水溶液に効率的に分散させるために、セルロースとしてはセルロース粉末を用いることが好ましい。
用いるセルロース原料の分子量は特に制限されないが、重合度としては1000以下であることが好ましい。重合度が1000以下であれば、アルカリ水溶液への分散性・膨潤性が高くなり、好ましい。また重合度が10以上であれば、得られる多孔質セルロースビーズの機械的強度が大きくなるため好ましい。より好ましい重合度の範囲は50以上、500以下、さらに好ましくは100以上、400以下、特に好ましくは200以上、350以下、最も好ましくは250以上、350以下である。
セルロースドープにおけるセルロースの濃度は特に制限されず適宜調整すればよいが、例えば、1質量%以上、20質量%以下程度とすればよい。当該濃度としては、多孔質ビーズの機械的強度の観点から、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、3.8質量%以上が特に好ましく、最も好ましくは4.0質量%以上である。また吸着性能やドープの均質性の観点から、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がさらに好ましく、6質量%以下であることが特に好ましく、最も好ましくは5質量%以下である。
セルロースドープの調製方法は、常法に従えばよい。例えば、アルカリ水溶液とセルロースとの混合物を、低温に維持しつつ、攪拌すればよい。
本発明に関するセルロースドープを濾過すると、更にドープの均質性が向上し、より均質な透過観察像を示す多孔質セルロースビーズが得られる傾向にあることから好ましい。医療や医薬品分野における品質管理上の観点から、ドープを濾過する工程が必要とされる場合があるため、濾過を行うことが好ましい。特許文献6のセルロースドープは、濾過がかなり困難で、更に得られる多孔質セルロースビーズの状態が、濾過有無によって大きく異なっていた。これに対し、本発明に関するセルロースドープは、極めて簡便な器具で濾過を実施することができる。ドープ中のセルロース濃度が4重量%や5重量%のような、比較的高濃度であっても、簡便に濾過を実施できる。本発明で用いることのできる濾過方法や濾材には特に限定は無く、適切な方法・器具を用いれば良い。濾材の孔径については特に限定は無い。しかし、産業用途のアフィニティークロマトグラフィー用ビーズは50μm以上であることが多く、これより大きな異物が混入すると、造粒後の除去が困難となることから、濾材の孔径は50μm以下であることが好ましい。また、小スケール・ハイスピード精製においては、しばしば小さい粒径が用いられる場合があるので、その場合は孔径が40μm以下の濾材を用いることができる。粒度分布を広げたい場合は、より小さいビーズを含む場合があり、濾材の孔径は30μm以下であることが好ましい。また、濾過材の孔径は0.1μm以上であれば、送液がスムーズに行えることから好ましく、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは5μm以上、最も好ましくは10μm以上である。ここで濾過材の孔径とは平均孔径を指す。また、濾過材の材質や性質についても、特に限定無く用いることができる。なお、上記濾過は、前記冷却工程後のセルロースドープに対して行ってもよいし、後記の温度調整工程後のセルロースドープに対して行ってもよい。
本発明では、前記冷却工程に続いて、セルロースドープの温度を15℃より高く調整する。以下、かかる工程を「温度調整工程」と略記する場合がある。当該温度は15℃より高ければ特に限定は無い。当該温度が15℃より高ければ、[造粒後の多孔質セルロースビーズの固形分含量]/[ドープ中の副原料以外の固形分含量]の値が、より小さくなる傾向にある。また当該温度が高くなると、[造粒後の多孔質セルロースビーズの固形分含量]/[ドープ中の副原料以外の固形分含量]の値が更に小さくなることから、20℃以上であることが好ましく、25℃以上であることが更に好ましい。またビーズの機械的強度や細孔径分布を調整する目的でドープ中のセルロース濃度を比較的大きくした場合において、当該温度を大きくすることは特に効果的である。ここで、ドープ中のセルロース濃度が比較的大きいとは、目安として4質量%より大きいことを意味する。この場合、セルロースドープを15℃より高い温度に調整する工程の温度は25℃より高いことが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、35℃以上であることが更に好ましく、40℃以上であることが特に好ましい。また当該温度が60℃未満であれば、多孔質セルロースの真球性を保ちやすくなったり、ビーズの機械的強度が低下し難いことから好ましい。また、50℃以下であることが更に好ましい。
当該温度については、多孔質化開始直前の温度で管理することが好ましい。例えば、本発明に関するセルロースドープは水系であるので、多孔質化にアルコール等を用いると、混合時に熱が発生して温度が数℃上昇するが、上記で説明した温度はこの上昇前の温度で管理することが簡便で好ましい。
温度調整工程の時間は特に制限されず、適宜調整すればよいが、例えば、セルロースドープの温度を15℃以上の所定温度に調整した後、1分間以上攪拌を継続すればよい。当該時間の上限は特に制限されないが、例えば60分以下とすることができる。セルロースドープの均質性と貯蔵安定性の観点から、当該時間は5分間以上が好ましく、10分間以上がより好ましく、15分間以上がより更に好ましく、また、45分間以下が好ましく、30分間以下がより好ましく、25分間以下がより更に好ましい。
本発明に関するセルロースドープから多孔質セルロースビーズを得る方法については特に限定は無く、従来公知の手法を用いることができる。なかでも、セルロースドープを連続相溶媒中に投入し、液滴化するエマルション化工程を含む製法が、設備の簡便さの点から好ましい。
エマルションを構成する連続相溶媒としては、例えば、動植物油脂、水素添加動植物油脂、脂肪酸グリセリド、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒を挙げることができる。また、非イオン界面活性剤などの界面活性剤を用いてもよい。動植物油脂としては、パーム油、シア脂、サル脂、イリッペ脂、豚脂、牛脂、ナタネ油、米油、落花生油、オリーブ油、コーン油、大豆油、シソ油、綿実油、ヒマワリ油、月見草油、ゴマ油、サフラワー油、ヤシ油、カカオ脂、パーム核油、魚油、ワカメ油、コンブ油などを挙げることができる。水素添加動植物油脂としては、パーム硬化油、パーム極度硬化油、ナタネ硬化油、ナタネ極度硬化油、大豆硬化油、豚脂硬化油、魚油硬化油などを挙げることができる。脂肪酸グリセリドとしては、トリ−、ジ−、モノ−グリセリドのいずれでもよく、ステアリングリセリド、パルミチングリセリド、ラウリングリセリドなどを挙げることができる。脂肪族炭化水素系溶媒としては、ミツロウ、キャンデリラロウ、米ぬかロウなどを挙げることができる。芳香族炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどを挙げることができる。
エマルション作製のために、さらに界面活性剤を適量添加してもよい。界面活性剤としては、ソルビタンラウレート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタントリオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
連続相溶媒の使用量は、前記セルロースドープの液滴を十分に分散できる量とすればよい。例えば、前記セルロースドープに対して1質量倍以上とすることができる。一方、連続相溶媒の量が多過ぎると廃液量が過剰に増えるおそれがあり得るので、当該割合としては10質量倍以下が好ましい。また、7質量倍以下がより好ましく、5質量倍以下がさらに好ましい。また、セルロースドープに対して連続相溶媒の量が少ないと、セルロースドープの液滴中に連続相溶媒が入るO/W/Oエマルションとなり、結果として均質な構造の多孔質ビーズが得られない場合があることから、当該割合としては、2質量倍以上が好ましく、3質量倍以上がより好ましく、4質量以上が特に好ましい。
エマルションは、常法により調製すればよい。例えば、前記セルロースドープ、連続相溶媒および界面活性剤を含む混合液を攪拌することにより調製することができる。
多孔質化の方法や種類には特に限定は無いが、エマルション工程や多孔質化工程における温度が先に述べた温度調整工程と同様の温度範囲を満たしていることが、[造粒後の多孔質セルロースビーズの固形分含量]/[ドープ中の副原料以外の固形分含量]の値が1.35未満である多孔質セルロースビーズを容易に得られる傾向にあるため好ましい。
上記エマルションに凝固溶媒を添加し、セルロースドープ液滴中の溶媒を抽出することにより、多孔質セルロースビーズが得られる。凝固溶媒は、セルロースドープの溶媒に親和性を示すものであれば特に制限されないが、例えば、アルコール系溶媒、および水とアルコール系溶媒との混合溶媒を挙げることができる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノールなどのC1-4アルコールを挙げることができる。アルコール水溶液における水とアルコール系溶媒の割合は、例えば、体積比で水:アルコール系溶媒=80:20〜5:95とすることができる。
凝固溶媒の使用量は特に制限されず適宜調整すればよいが、例えば、セルロースドープに対して20v/w%以上、150v/w%以下程度とすることができる。
凝固方法は特に制限されないが、エマルション化する工程を含む場合、液滴同士が結合しないよう適切に攪拌した状態で凝固溶媒を添加することが好ましい。
凝固溶媒を添加した後は、凝固した多孔質セルロースビーズを濾過や遠心分離などにより分離し、水やアルコールなどで洗浄すればよい。得られた多孔質セルロースビーズは、粒径を揃えるため、篩などを用いて分級してもよい。
また、本発明の多孔質セルロースビーズは架橋剤を作用させて得られる架橋多孔質セルロースビーズであることが、高速精製に適した吸着体を提供しやすいことから好ましい。架橋の条件や架橋剤に特に限定は無い。例えばWO2008/146906に記載の方法を用いることができる。例えば、上述した様に温度調整工程に続いてセルロースドープに架橋剤を添加して架橋化工程を行ってもよいし、多孔質セルロースビーズに架橋剤を作用させて架橋してもよい。
架橋剤としては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、ジクロロヒドリンなどのハロヒドリン;2官能性ビスエポキシド(ビスオキシラン);多官能性ポリエポキシド(ポリオキシラン)を挙げることができる。架橋剤は、一種のみを単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
多孔質セルロースビーズを架橋剤により架橋する反応の溶媒は適宜選択すればよいが、例えば、水の他、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒や、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒などの水混和性有機溶媒を挙げることができる。また、架橋反応溶媒は、2以上を混合して用いてもよい。
架橋反応は、複数回実施してもよく、各回で反応溶媒や架橋剤を変更してもよい。例えば、1回目の架橋反応を水混和性有機溶媒中で行い、最終回の架橋反応を水中で行ってもよい。この場合、途中の溶媒組成は、1回目と最終回のどちらかと同じであっても異なっていてもよく、それらの中間組成であってもよい。さらには全ての回を水溶媒中で実施してもよい。架橋剤についても同様である。なお、架橋反応を複数回繰り返す場合、各架橋反応の間では、架橋多孔質セルロースを水などで洗浄して架橋剤を除去することが好ましい。
架橋反応を促進するために、反応液には塩基を添加してもよい。かかる塩基としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸水素ナトリウムや炭酸水素カリウムなどアルカリ金属の炭酸水素塩;炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどアルカリ金属の炭酸塩;トリエチルアミンやピリジンなどの有機塩基を挙げることができる。
架橋反応後は、架橋多孔質セルロースビーズは不溶性であることから、水などの溶媒で洗浄すればよい。
本発明に係る多孔質セルロースビーズは、標的物質と相互作用するリガンドを固定化することにより、吸着体とすることができる。本発明で得ることができる吸着体は非特異吸着が少ないといった特性を有していることから、安全性が高い薬や治療の提供が可能で、さらには精製や治療時に中間洗浄工程等を省力化することが可能となる。また、本発明の多孔質セルロースビーズはアルカリ耐性が高いことから、アルカリ耐性リガンドを固定化することにより、アルカリ洗浄が可能な吸着体を得ることができる。
本発明における「リガンド」とは、吸着体に吸着させることにより精製すべき標的物質に対して特異的な親和力を有し、標的物質と相互作用するアフィニティーリガンドをいう。例えば、標的物質が抗体である場合、抗体に特異的に相互作用する抗原、タンパク質、ペプチド断片;標的化合物が酵素のリガンドである場合には、リガンドを基質とする酵素;標的化合物が抗原である場合には、標的抗原に対する抗体などを挙げることができる。本発明に係る吸着体のために用いることができるリガンドは、本発明に係る吸着体を用いて精製すべき標的物質に特異的な親和性を有するものであれば特に制限されない。
本発明に係る多孔質セルロースビーズにリガンドを固定化する方法は特に制限されず、常法を用いることができる。例えば、笠井献一ら著,「アフィニティークロマトグラフィー」東京化学同人,1991年の表8・1、表8・2、図8・15に示されるような、臭化シアン法、トリクロロトリアジン法、エポキシ法、トレシルクロリド法、過ヨウ素酸酸化法、ジビニルスルホン酸法、ベンゾキノン法、カルボニルジイミダゾール法、アシルアジド法等を用いてアミノ基含有リガンドを固定化する方法;エポキシ法、ジアゾカップリング法等を用いて水酸基含有リガンドを固定化する方法;エポキシ法、トレシルクロリド法、ジビニルスルホン酸法等を用いて、チオール基含有リガンドを固定化する方法;アミノ化担体にカルボン酸含有リガンドやホルミル基含有リガンドを固定化する方法等の様々な固定化方法を挙げることができる。当該文献の全内容が、本願に参考のため援用される。
本発明に係る吸着体は、精製用吸着体として用いることが可能であるが、近年注目されている抗体医薬品精製用吸着体や医療用吸着体としても用いることが可能である。抗体医薬品精製用吸着体などに用いられる場合のリガンドとしては、特に限定は無いが、例えば、抗体に特異性の高い抗原やタンパク質や、プロテインA、プロテインG、プロテインLやそれらの変異体、抗体結合活性を有するペプチド等のアミノ基含有リガンドを挙げることができる。
特に、免疫グロブリン(IgG)を特異的に吸着できる吸着体として、プロテインA、プロテインG、またはそれらの変異体をリガンドとして多孔質担体に固定化した吸着体が注目されている。本発明に用いることができる上記プロテインA等には特に限定は無く、天然物や遺伝子組み換え物等を制限なく使用することができる。また、抗体結合ドメイン、その変異体、それらのオリゴマーを含むもの、融合タンパク質等であってもよい。かかるオリゴマーの重合数としては、2以上、10以下とすることができる。また、菌体抽出物もしくは培養上清より、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィー及び膜分離技術を用いた分子量分画、分画沈殿法等の手法から選択される精製法を組合せ、および/または繰り返すことにより製造された、プロテインA等を用いることもできる。特に、国際公開特許公報WO2006/004067や米国特許公報US5151350、WO2003/080655、特開2006−304633、WO2010/110288、WO2012/133349に記載されている方法で得られたプロテインAであることが好ましい。これら公報の全内容が、本願に参考のため援用される。プロテインAを固定化した本発明の吸着体は、拡張性心筋症などの治療に使用できる治療用吸着体として利用することもできる。また、デキストラン硫酸などを固定化した本発明の吸着体は、高コレステロール血症治療用吸着体として利用することができる。
リガンドを多孔質セルロースビーズに導入する方法としては、前述の様々な固定化方法から選択することができるが、より好ましいのは多孔質粒子が含有するホルミル基と、リガンドのアミノ基との反応を利用して固定化を行う方法である。例えば、WO2010/064437に記載の方法がある。当該公報の全内容が、本願に参考のため援用される。
本発明の吸着体のリガンドの固定化量は特に制限されないが、例えば、多孔質セルロースビーズ1mL当り、1mg以上、300mg以下とすることができる。当該割合が1mg以上であれば、標的物質に対する吸着量が大きくなるため好ましく、300mg以下であれば、製造コストを抑制できるため好ましい。リガンドの固定量としては、多孔質セルロースビーズ1mL当り、2mg以上がより好ましく、4mg以上がさらに好ましく、5mg以上が特に好ましく、また、100mg以下がより好ましく、50mg以下がさらに好ましく、30mg以下が特に好ましく、20mg以下が最も好ましい。
本発明の吸着体の用途に特に限定は無いが、医療用吸着体、中でも表面開孔度を向上できることから、サイズの大きい病因物質(LDLコレステロール等)を吸着除去する治療用吸着体に好適に用いることができる。また、各種クロマト担体、なかでも大径カラムに充填される産業用クロマト担体として用いることができる。特に近年需要が旺盛な抗体医薬品精製用吸着体として用いる場合に、その効果を発揮することができる。このような観点から、本発明の多孔質ビーズにプロテインAやプロテインG、プロテインLを導入した吸着体として好適に用いることができる。
また、近年、連続クロマトシステム用として、メディアン粒径が36μm以上、64μm以下の比較的小さい多孔質ビーズと、これらを充填した比較的カラム高が低いカラムが望まれている。本発明は、容易に粒径を調製でき、真玉性が良好で、適切な圧縮応力を示す多孔質セルロースビーズを提供できることから、比較的作製の難易度が高いカラム作製へのニーズに的確に応えることができる。ここで、適切な圧縮応力とは、その用途に応じて適切に充填・使用が可能であれば、特に限定は無いが、沈降したビーズを20%圧縮した時の応力が0.01MPa以上であれば、圧密化に伴うカラム閉塞が生じ難いため好ましく、1.0MPa未満であれば良好な吸着性能を付与できることから好ましい。より好ましくは0.04MPa以上、0.5MPa以下、更に好ましくは0.06MPa以上、0.25MPa以下、特に好ましくは0.09MPa以上、0.2MPa以下、最も好ましくは0.10MPa以上、0.16MPa以下である。圧縮応力を調製する方法としては、セルロースドープ中のセルロース濃度や、架橋度により調整する手法が挙げられる。
本発明に係る吸着体を用いて、標的物質を精製することができる。具体的には、本発明の吸着体と、標的物質を含む溶液とを接触させればよい。接触方法は特に制限されず、標的物質を含む溶液中に本発明に係る吸着体を添加してもよいし、上記のようにカラムに本発明の吸着体を充填し、標的物質を含む溶液を通液することにより、本発明の吸着体に標的物質を選択的に吸着させればよい。本発明に係る吸着体は強度が高いため、特にカラムに充填する場合、高速度での通液が可能になり、標的物質を効率的に精製することができる。
次に、標的物質が選択的に吸着した本発明の吸着体を、濾過や遠心分離などにより溶液から分離する。カラムを用いる場合には、吸着体と溶液との分離は容易である。この工程により、標的物質とその他の物質を分離することができる。さらに、溶出液を用い、標的物質を本発明吸着体から分離する。溶出液としては、例えば、pHが2.5以上、4.5以下程度の酸性緩衝液を用いることができる。また、非特異的吸着が大きい吸着体においては、溶出の前段階として、長大な中間洗浄工程が必要な場合があるが、本発明の多孔質セルロースビーズはこのような中間洗浄工程を必ずしも必要としない。また、本発明の多孔質セルロースビーズはアルカリ耐性が高いため、安価・簡便に調製可能なアルカリ性の洗浄液で洗浄することができる。水酸化ナトリウムを用いる場合、その濃度が0.1Nであっても問題なく洗浄することができるし、リガンドのアルカリ耐性が高ければ0.5N以上であっても用いることができる。
本願は、2017年4月3日に出願された日本国特許出願第2017−74034号に基づく優先権の利益を主張するものである。2017年4月3日に出願された日本国特許出願第2017−74034号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。先ず、製造された多孔質セルロースビーズの物性の試験方法につき説明する。
試験例1: 動的吸着量の測定
(1) 溶液調製
下記A〜E液及び中和液を調製し、使用前に脱泡した。
A液: シグマ社製「Phosphate buffered saline」と蒸留水を用いてpH7.4のPBS緩衝液を調製した。
B液: 酢酸、酢酸ナトリウム、および蒸留水を用いてpH3.5の35mM酢酸ナトリウム水溶液を調製した。
C液: 酢酸と蒸留水を用いて1M酢酸水溶液を調製した。
D液: ポリクロナール抗体(「ガンマガード」バクスター社製)と前記A液を用いて濃度3mg/mLのIgG水溶液を調製した。
E液: 和光純薬社製の水酸化ナトリウムと塩化ナトリウムの濃度が、それぞれ0.1N水酸化ナトリウムと1M塩化ナトリウムとなる水溶液を作製し、アルカリ洗浄液とした。
中和液: トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと超純水で2Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン水溶液を調製した。
(1) 溶液調製
下記A〜E液及び中和液を調製し、使用前に脱泡した。
A液: シグマ社製「Phosphate buffered saline」と蒸留水を用いてpH7.4のPBS緩衝液を調製した。
B液: 酢酸、酢酸ナトリウム、および蒸留水を用いてpH3.5の35mM酢酸ナトリウム水溶液を調製した。
C液: 酢酸と蒸留水を用いて1M酢酸水溶液を調製した。
D液: ポリクロナール抗体(「ガンマガード」バクスター社製)と前記A液を用いて濃度3mg/mLのIgG水溶液を調製した。
E液: 和光純薬社製の水酸化ナトリウムと塩化ナトリウムの濃度が、それぞれ0.1N水酸化ナトリウムと1M塩化ナトリウムとなる水溶液を作製し、アルカリ洗浄液とした。
中和液: トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと超純水で2Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン水溶液を調製した。
(2) 充填、準備
カラムクロマトグラフィー用装置としてAKTA Pure 150(GEヘルスケア社製)を用い、内径0.5cmのカラムに吸着体試料を3mL入れ、吸着体層高さを15cmとした。塩化ナトリウムと蒸留水から調製した0.2MのNaCl水溶液を流速3mL/分で10分間通液して吸着体をカラムに充填した。フラクションコレクターに15mLの採取用チューブをセットし、溶出液の採取用チューブにはあらかじめ中和液を入れておいた。
カラムクロマトグラフィー用装置としてAKTA Pure 150(GEヘルスケア社製)を用い、内径0.5cmのカラムに吸着体試料を3mL入れ、吸着体層高さを15cmとした。塩化ナトリウムと蒸留水から調製した0.2MのNaCl水溶液を流速3mL/分で10分間通液して吸着体をカラムに充填した。フラクションコレクターに15mLの採取用チューブをセットし、溶出液の採取用チューブにはあらかじめ中和液を入れておいた。
(3) IgG精製
前記カラムにA液を15mL通液し、次いでD液を必要量通液した。次いで、A液を12mL通液後、B液を12mL通液してIgGを溶出させた。次にC液を9mL、A液を15mL、E液を9mL、A液を15mL通液した。なお流速はD液以外は1mL/minとし、D液の流速は所定の滞留時間(RT)に合わせた。例えばRT6分の流速は0.5mL/minに調整した。
前記カラムにA液を15mL通液し、次いでD液を必要量通液した。次いで、A液を12mL通液後、B液を12mL通液してIgGを溶出させた。次にC液を9mL、A液を15mL、E液を9mL、A液を15mL通液した。なお流速はD液以外は1mL/minとし、D液の流速は所定の滞留時間(RT)に合わせた。例えばRT6分の流速は0.5mL/minに調整した。
(4) 動的吸着量
IgGが5%破過するまでに吸着体に吸着したIgG量と吸着体体積からIgGの動的吸着量を求めた。当該動的吸着量を5%DBCという。
IgGが5%破過するまでに吸着体に吸着したIgG量と吸着体体積からIgGの動的吸着量を求めた。当該動的吸着量を5%DBCという。
(5) 静的吸着量
RT3minとRT6minのそれぞれのIgGの破過曲線が交わった時のIgG負荷量と吸着体体積からIgGの静的吸着量を求めた。当該静的吸着量をSBCという。
RT3minとRT6minのそれぞれのIgGの破過曲線が交わった時のIgG負荷量と吸着体体積からIgGの静的吸着量を求めた。当該静的吸着量をSBCという。
試験例2: 20%圧縮応力の測定
(1) 試料調製
試料ビーズに純水を加え、濃度約50体積%のスラリーを調製した。このスラリーの攪拌による均質化と、それに続く30分以上の減圧による脱泡とからなる均質・脱泡操作を3回繰り返して実施し、脱泡スラリーを得た。この操作とは別に、処理対象を純水に変えて、前記均質・脱法操作を90分以上実施し、脱泡水を得た。
(1) 試料調製
試料ビーズに純水を加え、濃度約50体積%のスラリーを調製した。このスラリーの攪拌による均質化と、それに続く30分以上の減圧による脱泡とからなる均質・脱泡操作を3回繰り返して実施し、脱泡スラリーを得た。この操作とは別に、処理対象を純水に変えて、前記均質・脱法操作を90分以上実施し、脱泡水を得た。
(2) ビーズ充填シリンジ調製
2.5mLのディスポーザブルシリンジ(商標名「NORM−JECT」HANKE SASS WOLF社製)の先端に親水性ディスポーザブルフィルター(孔径5.0μm)を取り付けた。シリンジのピストンを外し、シリンジ後端側から脱泡水を約2mL投入し、この脱泡水が0mLの標線を下回らないうちに、脱泡スラリーを投入した。ディスポーザブルフィルターの2次側にアスピレーターを接続し、液面がビーズ面を下まわらない様に注意しながら、前記脱泡スラリーを吸引した。ビーズ面の約0.5mL上まで液面が下がったところで吸引を停止した。以降の作業は、液面がビーズ面を下回らないよう、前記脱泡水を適宜追加しながら実施した。振動を与えながら前記脱泡スラリーを追加またはビーズを除去し、ビーズ面を1.5mLの標線に合わせ、振動を与えてもビーズ面が低下しないことを確認した。ビーズが舞わないようゆっくりと脱泡水をシリンジから溢れるまで追加し、気泡が入らないように注意しながらピストンを挿入した。以下、このシリンジを「ビーズ充填シリンジ」という。
2.5mLのディスポーザブルシリンジ(商標名「NORM−JECT」HANKE SASS WOLF社製)の先端に親水性ディスポーザブルフィルター(孔径5.0μm)を取り付けた。シリンジのピストンを外し、シリンジ後端側から脱泡水を約2mL投入し、この脱泡水が0mLの標線を下回らないうちに、脱泡スラリーを投入した。ディスポーザブルフィルターの2次側にアスピレーターを接続し、液面がビーズ面を下まわらない様に注意しながら、前記脱泡スラリーを吸引した。ビーズ面の約0.5mL上まで液面が下がったところで吸引を停止した。以降の作業は、液面がビーズ面を下回らないよう、前記脱泡水を適宜追加しながら実施した。振動を与えながら前記脱泡スラリーを追加またはビーズを除去し、ビーズ面を1.5mLの標線に合わせ、振動を与えてもビーズ面が低下しないことを確認した。ビーズが舞わないようゆっくりと脱泡水をシリンジから溢れるまで追加し、気泡が入らないように注意しながらピストンを挿入した。以下、このシリンジを「ビーズ充填シリンジ」という。
(3) 測定
レオテック社のFUDOH RHEO METERに10Kのロードセルを取り付け、変位速度のダイヤルを2cm/minに合わせ、前記ビーズ充填シリンジをセットし、ピストンの変位を開始した。変位と応力との関係を記録し、下記式に基づき、20%圧縮応力を求めた。
20%圧縮応力=[充填ビーズが20%圧縮された時の応力]−[ピストンがビーズを押す前に水を通液している時の応力]
レオテック社のFUDOH RHEO METERに10Kのロードセルを取り付け、変位速度のダイヤルを2cm/minに合わせ、前記ビーズ充填シリンジをセットし、ピストンの変位を開始した。変位と応力との関係を記録し、下記式に基づき、20%圧縮応力を求めた。
20%圧縮応力=[充填ビーズが20%圧縮された時の応力]−[ピストンがビーズを押す前に水を通液している時の応力]
試験例3: Kav:ゲル相分配係数の測定
多孔質セルロースビーズ22.8mLを蒸留水に分散させ、30分間脱気した。脱気した多孔質セルロースビーズをカラム(GEヘルスケア・ジャパン社製「Tricorn 10/300」)に充填した。島津製作所社製のサイズ排除クロマトグラフィーシステム(「DGU−20A3」、「RID−10A」、「LC−20AD」、「SIL−20AC」、「CTO−20AC」を含み、ソフトウェアとしては「LCSolution」を使用)を用いて測定を行った。
多孔質セルロースビーズ22.8mLを蒸留水に分散させ、30分間脱気した。脱気した多孔質セルロースビーズをカラム(GEヘルスケア・ジャパン社製「Tricorn 10/300」)に充填した。島津製作所社製のサイズ排除クロマトグラフィーシステム(「DGU−20A3」、「RID−10A」、「LC−20AD」、「SIL−20AC」、「CTO−20AC」を含み、ソフトウェアとしては「LCSolution」を使用)を用いて測定を行った。
マーカーとしては、以下のデキストランまたはグルコースを、1M NaClを含む50mMリン酸バッファ(pH7.5)に溶解して用いた。
カラムに1M NaClを含む50mMリン酸バッファ(pH7.5)を流速0.6mL/minで通液しながら、先ず、カラム中のビーズ部分以外の体積を求めるために、分子量4×107のデキストランの溶液を注入し、注入からRIモニターでピークが観測されるまでの通液量を求めた。分子量4×107のデキストランの溶液の濃度は10mg/mL、注入量は40μLとした。次いで、各マーカーの溶液でも同様に通液量を求めた。測定値を下記式に代入し、Kavの値を算出した。
Kav=(VR−V0)/(Vt−V0)
[式中、VRは各マーカー溶液を注入してからピークが観測されるまでの通液量(mL)を示し、V0は分子量4×107のデキストラン溶液を注入してからピークが観測されるまでの通液量(mL)を示し、Vtはカラム内のビーズの体積(mL)を示す]
Kav=(VR−V0)/(Vt−V0)
[式中、VRは各マーカー溶液を注入してからピークが観測されるまでの通液量(mL)を示し、V0は分子量4×107のデキストラン溶液を注入してからピークが観測されるまでの通液量(mL)を示し、Vtはカラム内のビーズの体積(mL)を示す]
試験例4: 固形分含量の測定
試料ビーズ約5mLを15mLの遠沈管内に入れ、試料ビーズ体積がそれ以上低減されなくなるまで振動を付与し、その際の体積を正確に測定した。以下、かかる体積を「沈降体積」という。次に遠沈管内のビーズを3Gガラスフィルターに移し、濾過した。なお、3Gガラフィルターの重量は、事前に122℃のオーブン内で一晩乾燥させ、測定しておいた。次いで122℃のオーブン内で一晩乾燥させ、重量を測定した。ビーズ試料の固形分含量は、上記重量を上記体積で除することで算出した。
試料ビーズ約5mLを15mLの遠沈管内に入れ、試料ビーズ体積がそれ以上低減されなくなるまで振動を付与し、その際の体積を正確に測定した。以下、かかる体積を「沈降体積」という。次に遠沈管内のビーズを3Gガラスフィルターに移し、濾過した。なお、3Gガラフィルターの重量は、事前に122℃のオーブン内で一晩乾燥させ、測定しておいた。次いで122℃のオーブン内で一晩乾燥させ、重量を測定した。ビーズ試料の固形分含量は、上記重量を上記体積で除することで算出した。
試験例5: 圧流速特性の測定
所定のカラムボリュームと沈降体積が同量のビーズを用意し、これに水を加えて50%スラリーを作製した。この50%スラリーをカラムに投入し、2時間以上静置した。次いで、上部から水を通液し、ビーズ面が所定のカラムボリュームになるまで流速を上げた。測定はGEヘルスケア社のAKTA Pure 150またはAKTA Pilotを使用し、線速度とカラム差圧の関係を調べた。
所定のカラムボリュームと沈降体積が同量のビーズを用意し、これに水を加えて50%スラリーを作製した。この50%スラリーをカラムに投入し、2時間以上静置した。次いで、上部から水を通液し、ビーズ面が所定のカラムボリュームになるまで流速を上げた。測定はGEヘルスケア社のAKTA Pure 150またはAKTA Pilotを使用し、線速度とカラム差圧の関係を調べた。
試験例6: メディアン粒径の測定
レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(「Partica LA950」堀場製作所製)を用いて、ビーズおよび吸着体のメディアン粒径を求めた。
レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(「Partica LA950」堀場製作所製)を用いて、ビーズおよび吸着体のメディアン粒径を求めた。
実施例1: 多孔質セルロースビーズの製造
(1)用いる化合物
セルロースは旭化成ケミカルズ社製結晶セルロース「PH−F20JP」を用いた。尿素は和光純薬社製を用いた。アルカリ水溶液は和光純薬社製水酸化ナトリウムと蒸留水を用いて作製した。分散媒には和光純薬社製o−ジクロロベンゼンを用いた。界面活性剤として和光純薬社製ソルビタンモノオレエート(span80相当品)を用いた。ドープに添加する水溶性架橋剤としてナガセケムテックス社製のデナコールEX321を用いた。造粒後の架橋剤は和光純薬社製のエピクロロヒドリンを用いた。その他の試薬は特に記載が無い限り和光純薬社製を精製することなく使用した。
(1)用いる化合物
セルロースは旭化成ケミカルズ社製結晶セルロース「PH−F20JP」を用いた。尿素は和光純薬社製を用いた。アルカリ水溶液は和光純薬社製水酸化ナトリウムと蒸留水を用いて作製した。分散媒には和光純薬社製o−ジクロロベンゼンを用いた。界面活性剤として和光純薬社製ソルビタンモノオレエート(span80相当品)を用いた。ドープに添加する水溶性架橋剤としてナガセケムテックス社製のデナコールEX321を用いた。造粒後の架橋剤は和光純薬社製のエピクロロヒドリンを用いた。その他の試薬は特に記載が無い限り和光純薬社製を精製することなく使用した。
(2)アルカリ水溶液の作製
和光純薬社製の水酸化ナトリウムと純水12.7gを用いて、水酸化ナトリウム水溶液を作製し、その温度を4℃に調整した。尚、水酸化ナトリウム量は、仕上がりセルロースドープ中、[水酸化ナトリウム重量]/[水酸化ナトリウム重量+尿素重量+水重量]=0.07となるように調整した。
和光純薬社製の水酸化ナトリウムと純水12.7gを用いて、水酸化ナトリウム水溶液を作製し、その温度を4℃に調整した。尚、水酸化ナトリウム量は、仕上がりセルロースドープ中、[水酸化ナトリウム重量]/[水酸化ナトリウム重量+尿素重量+水重量]=0.07となるように調整した。
(3)セルロースドープの作製
セパラブルフラスコに所定量の蒸留水と所定量のセルロースと所定量の尿素を投入し、2段ディスクタービン(rushton turbine)翼を用いてスラリーの温度が4℃になるまで、150〜200rpmで30分間攪拌した。尚、尿素量は、仕上がりセルロースドープ中、[尿素重量]/[水酸化ナトリウム重量+尿素重量+水重量]=0.12となるように調整した。次いで、4℃に冷却した上記水酸化ナトリウム水溶液を添加し、300rpmの速度で攪拌しながら30分間保持した。その後、冷却工程として、表2に記載の温度に調整し、表2に記載の時間300rpmで攪拌を続けた。次いで、表2に記載の冷却後調整温度に調整した後、7.1gのデナコールEX321を添加し、300rpmの速度で15分間撹拌を行った。
セパラブルフラスコに所定量の蒸留水と所定量のセルロースと所定量の尿素を投入し、2段ディスクタービン(rushton turbine)翼を用いてスラリーの温度が4℃になるまで、150〜200rpmで30分間攪拌した。尚、尿素量は、仕上がりセルロースドープ中、[尿素重量]/[水酸化ナトリウム重量+尿素重量+水重量]=0.12となるように調整した。次いで、4℃に冷却した上記水酸化ナトリウム水溶液を添加し、300rpmの速度で攪拌しながら30分間保持した。その後、冷却工程として、表2に記載の温度に調整し、表2に記載の時間300rpmで攪拌を続けた。次いで、表2に記載の冷却後調整温度に調整した後、7.1gのデナコールEX321を添加し、300rpmの速度で15分間撹拌を行った。
(4)エマルション化と多孔質化
上記セルロースドープを、9.8gのソルビタンモノオレエートが溶解した979.8gのo−ジクロロベンゼン溶液に投入し、600rpm、15分間、表2に記載の冷却後調整温度で撹拌することでセルロース液滴を分散させた。凝固溶剤として表2に記載の冷却後調整温度と同じ温度に調整したメタノールを87mL添加し、600rpm、20分間攪拌した。その後、酢酸を14g投入し、600rpm、10分間攪拌し中和を行った。TOP社製ガラスフィルター「26G−3」で溶液を濾過し、次いでエタノールと水で洗浄を行い、多孔質セルロースビーズを回収した。
上記セルロースドープを、9.8gのソルビタンモノオレエートが溶解した979.8gのo−ジクロロベンゼン溶液に投入し、600rpm、15分間、表2に記載の冷却後調整温度で撹拌することでセルロース液滴を分散させた。凝固溶剤として表2に記載の冷却後調整温度と同じ温度に調整したメタノールを87mL添加し、600rpm、20分間攪拌した。その後、酢酸を14g投入し、600rpm、10分間攪拌し中和を行った。TOP社製ガラスフィルター「26G−3」で溶液を濾過し、次いでエタノールと水で洗浄を行い、多孔質セルロースビーズを回収した。
(5)セルロースビーズの分級
38μm〜212μmの篩を用いて湿式分級を60分間行った。
38μm〜212μmの篩を用いて湿式分級を60分間行った。
(6)セルロースビーズの架橋
(6−1)第1架橋工程
洗浄したセルロースビーズ96mLを用意した。ビーズが足りない場合は上記分級までの操作を繰り返した。用意したビーズをガラスフィルターの上に乗せ、エタノールでリパルプした後、このエタノールを吸引除去する溶媒置換操作を4回実施した。エタノール量は、溶媒置換操作1回目〜3回目:233mL、溶媒置換操作4回目:167mLとした。溶媒置換操作後、エタノールを加えて全体が97gになる様に調整しながら500mLのセパラブルフラスコに移した後、水を28g添加した。さらにエピクロロヒドリンを80mL加え、回転数200rpmで30分撹拌した。次いで17MのNaOH水溶液10mLと水86mLからなる混合液を添加し、温度を40℃に保ったまま回転数350rpmで1時間30分撹拌することでセルロース多孔質ビーズを架橋収縮させた。さらに17MのNaOH水溶液を9.6mL加えて回転数350rpmで1.5時間撹拌する追加処理を3回実施した後、濾過し、ついで水で洗浄することによって途中架橋ビーズを得た。
(6−1)第1架橋工程
洗浄したセルロースビーズ96mLを用意した。ビーズが足りない場合は上記分級までの操作を繰り返した。用意したビーズをガラスフィルターの上に乗せ、エタノールでリパルプした後、このエタノールを吸引除去する溶媒置換操作を4回実施した。エタノール量は、溶媒置換操作1回目〜3回目:233mL、溶媒置換操作4回目:167mLとした。溶媒置換操作後、エタノールを加えて全体が97gになる様に調整しながら500mLのセパラブルフラスコに移した後、水を28g添加した。さらにエピクロロヒドリンを80mL加え、回転数200rpmで30分撹拌した。次いで17MのNaOH水溶液10mLと水86mLからなる混合液を添加し、温度を40℃に保ったまま回転数350rpmで1時間30分撹拌することでセルロース多孔質ビーズを架橋収縮させた。さらに17MのNaOH水溶液を9.6mL加えて回転数350rpmで1.5時間撹拌する追加処理を3回実施した後、濾過し、ついで水で洗浄することによって途中架橋ビーズを得た。
(6−2)第2架橋工程
得られた途中架橋ビーズ全量に水を加えて全体の容量を117mLに調整し、温度40℃に加温した。硫酸ナトリウムを38g加え、回転数150rpmで10分間撹拌した後、エピクロロヒドリン33mLを加え、回転数250rpmで10分間撹拌した。次いで17MのNaOH水溶液を21mL加えて回転数300rpmで2.5時間撹拌し、最後に17MのNaOH水溶液5.1mLを追加してさらに2.5時間撹拌した。反応物を濾過し、濾過物を水洗することによって架橋ビーズを得た。
得られた途中架橋ビーズ全量に水を加えて全体の容量を117mLに調整し、温度40℃に加温した。硫酸ナトリウムを38g加え、回転数150rpmで10分間撹拌した後、エピクロロヒドリン33mLを加え、回転数250rpmで10分間撹拌した。次いで17MのNaOH水溶液を21mL加えて回転数300rpmで2.5時間撹拌し、最後に17MのNaOH水溶液5.1mLを追加してさらに2.5時間撹拌した。反応物を濾過し、濾過物を水洗することによって架橋ビーズを得た。
(7)エポキシ開環処理
得られた架橋ビーズと水の50%スラリーをオートクレーブにて121℃、60分間加熱することでエポキシ基を開環し、ジオール基とした。エポキシ基が無くなっていることは、フェノールフタレイン指示薬にて確認することができる。
得られた架橋ビーズと水の50%スラリーをオートクレーブにて121℃、60分間加熱することでエポキシ基を開環し、ジオール基とした。エポキシ基が無くなっていることは、フェノールフタレイン指示薬にて確認することができる。
(8)再分級
所定の篩を複数用いて湿式分級を90分間実施した。得られた各粒径のビーズを混合し所定の粒径の架橋セルロースビーズを得た。
所定の篩を複数用いて湿式分級を90分間実施した。得られた各粒径のビーズを混合し所定の粒径の架橋セルロースビーズを得た。
実施例2: リガンドが固定化された吸着体の調製
(1)アルデヒド化反応
(1−1)バッファー作製
クエン酸一水和物0.165gとクエン酸三ナトリウム二水和物0.0646gに水を加えて100mLとし、pH3.4のバッファーを作製した。
(1)アルデヒド化反応
(1−1)バッファー作製
クエン酸一水和物0.165gとクエン酸三ナトリウム二水和物0.0646gに水を加えて100mLとし、pH3.4のバッファーを作製した。
(1−2)反応
架橋後のセルロースビーズ3.5mLに対して上記バッファーを3倍量以上用いて液体部分を上記バッファーで置換し、更に上記バッファーを加えて総量を6.0mLとした。11.2mg/mLの過ヨウ素酸ナトリウム水溶液を2.01mL投入し、25℃で35分間攪拌した。その後、#3のグラスフィルターにて濾過を行ない、蒸留水で濾液の電気伝導度が1μS/cm以下となるまで洗浄し、アルデヒド基含有ビーズを得た。洗浄濾液の電気伝導度は、導電率計(「ECTester10 Pure+」EUTECH INSTRUMENTS社製)で測定した。本反応条件にて、架橋多孔質セルロースビーズ1mLあたり約30μmolのアルデヒド基が導入される。
架橋後のセルロースビーズ3.5mLに対して上記バッファーを3倍量以上用いて液体部分を上記バッファーで置換し、更に上記バッファーを加えて総量を6.0mLとした。11.2mg/mLの過ヨウ素酸ナトリウム水溶液を2.01mL投入し、25℃で35分間攪拌した。その後、#3のグラスフィルターにて濾過を行ない、蒸留水で濾液の電気伝導度が1μS/cm以下となるまで洗浄し、アルデヒド基含有ビーズを得た。洗浄濾液の電気伝導度は、導電率計(「ECTester10 Pure+」EUTECH INSTRUMENTS社製)で測定した。本反応条件にて、架橋多孔質セルロースビーズ1mLあたり約30μmolのアルデヒド基が導入される。
(2)プロテインA固定化反応
(2−1)配向制御型アルカリ耐性プロテインAの調製
WO2012/133349を参照して、配向制御型アルカリ耐性プロテインAとして、WO2012/133349に記載の改変Cドメイン5連結体を調製した。配向制御型アルカリ耐性プロテインAは、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有する。なお、このWO2012/133349の全内容が、本願に参考のため援用される。以下、「プロテインA」を「PA」と略記する。
(2−1)配向制御型アルカリ耐性プロテインAの調製
WO2012/133349を参照して、配向制御型アルカリ耐性プロテインAとして、WO2012/133349に記載の改変Cドメイン5連結体を調製した。配向制御型アルカリ耐性プロテインAは、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有する。なお、このWO2012/133349の全内容が、本願に参考のため援用される。以下、「プロテインA」を「PA」と略記する。
(2−2)イミノ化反応−PA仕込量が20mg/mLの場合
クエン酸三ナトリウム二水和物2.941gに水を加えて100mLとし、pH8のバッファーを作製した。#3のグラスフィルター上でアルデヒド基含有ビーズの全量(3.5mL)に対して3倍量の前記バッファーを通液して、ビーズ内の液体部分を上記バッファーで置換した。置換後のアルデヒド基含有ビーズを反応容器に入れ、総体積が7.5mLとなるようにPA固定化バッファーを添加した。プロテインAをビーズ1mLに対して20mg(正味量)添加した。6℃に温調後、0.08Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pHを12に調整した後、6℃にて一晩攪拌した。
クエン酸三ナトリウム二水和物2.941gに水を加えて100mLとし、pH8のバッファーを作製した。#3のグラスフィルター上でアルデヒド基含有ビーズの全量(3.5mL)に対して3倍量の前記バッファーを通液して、ビーズ内の液体部分を上記バッファーで置換した。置換後のアルデヒド基含有ビーズを反応容器に入れ、総体積が7.5mLとなるようにPA固定化バッファーを添加した。プロテインAをビーズ1mLに対して20mg(正味量)添加した。6℃に温調後、0.08Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pHを12に調整した後、6℃にて一晩攪拌した。
(2−3)中和および還元反応
一晩反応後のイミノ化反応液を濾過し、濾液をUV測定してPA固定化量を求めた。前記pH8.0のクエン酸Naバッファーに、0.1Mのクエン酸水溶液を加えて、pHを5.0に調整したバッファーを作製し、前記濾過ビーズに対して3倍量の当該バッファーを用い、ビーズ内の液体部分を置換した。p5.0のバッファーで総量を7.0mLに調整しながら反応器に移し、4時間6℃で中和を保持しながら攪拌した。
その後、5.5%ジメチルアミンボラン水溶液を1.93mL加えた後、反応温度を25℃に上昇させ、25℃で一晩攪拌した。反応後のビーズを#3のグラスフィルター上で、ビーズの3倍体積量の水で洗浄した。
一晩反応後のイミノ化反応液を濾過し、濾液をUV測定してPA固定化量を求めた。前記pH8.0のクエン酸Naバッファーに、0.1Mのクエン酸水溶液を加えて、pHを5.0に調整したバッファーを作製し、前記濾過ビーズに対して3倍量の当該バッファーを用い、ビーズ内の液体部分を置換した。p5.0のバッファーで総量を7.0mLに調整しながら反応器に移し、4時間6℃で中和を保持しながら攪拌した。
その後、5.5%ジメチルアミンボラン水溶液を1.93mL加えた後、反応温度を25℃に上昇させ、25℃で一晩攪拌した。反応後のビーズを#3のグラスフィルター上で、ビーズの3倍体積量の水で洗浄した。
(2−4)洗浄
#3のグラスフィルター上でPA固定化ビーズ1mLに対して3mLの0.1Mクエン酸(以下「酸バッファー」と略記する)を通液して、ビーズ内の液体部分を酸バッファーで置換した。置換後のPA固定化ビーズを容器に移し、酸バッファーを加えて全量を2mL以上とし、25℃で30分間攪拌し、酸洗浄とした。
次いで、上記酸バッファーの代わりに0.05N水酸化ナトリウム+1M硫酸ナトリウム水溶液を用いた以外は同様の方法でアルカリ洗浄を行なった。
次いで、上記酸バッファーの代わりに、0.1Mクエン酸と0.1Mクエン酸ナトリウムを混合してpHを5.9に調整した液を用いた以外は、同様の方法で中性洗浄を行なった。
中性洗浄後のビーズを蒸留水を用いて洗浄濾液の電導度が10μs/cm以下になるまで洗浄し、プロテインAが固定化された吸着体を得た。表2に各造粒例の条件と、造粒後の固形分含量の結果を示す。
#3のグラスフィルター上でPA固定化ビーズ1mLに対して3mLの0.1Mクエン酸(以下「酸バッファー」と略記する)を通液して、ビーズ内の液体部分を酸バッファーで置換した。置換後のPA固定化ビーズを容器に移し、酸バッファーを加えて全量を2mL以上とし、25℃で30分間攪拌し、酸洗浄とした。
次いで、上記酸バッファーの代わりに0.05N水酸化ナトリウム+1M硫酸ナトリウム水溶液を用いた以外は同様の方法でアルカリ洗浄を行なった。
次いで、上記酸バッファーの代わりに、0.1Mクエン酸と0.1Mクエン酸ナトリウムを混合してpHを5.9に調整した液を用いた以外は、同様の方法で中性洗浄を行なった。
中性洗浄後のビーズを蒸留水を用いて洗浄濾液の電導度が10μs/cm以下になるまで洗浄し、プロテインAが固定化された吸着体を得た。表2に各造粒例の条件と、造粒後の固形分含量の結果を示す。
図1に比較例4で得られたビーズの透過観察像を示す。本造粒例は吸着性能が高いとされる特許文献6の実施例と特に関連が深いものであるが、先に述べたとおり、均質な透過観察像が得られず、ビーズ内の長さ10μm以上の平均異物数も2を超えており、非特許文献6のような解析が困難となる可能性がある。また比較例1〜3,5〜6においても、透過観察像は同様の傾向であった。
図2に造粒例比較例14で得られたビーズの透過観察像を示す。平均異物数は少なくなったものの、ビーズ内に透過度の小さい構造体があるかのような像が得られた。またこの透過度の小さい構造体のせいで、異物数を計測することができなかった。また、比較例12,13,15〜19においても、同様の観察像が得られた。表2に示すとおり、比較例12〜15は異物数を減らすためにドープの冷却温度を−15℃にしたものであるが、何れも[造粒後の多孔質セルロースビーズの固形分含量]/[ドープ中の副原料以外の固形分含量]の値が大きかった。造粒時に何かしらの凝縮作用が働き、その作用が透過観察像と[造粒後の多孔質セルロースビーズの固形分含量]/[ドープ中の副原料以外の固形分含量]の値に顕れている可能性がある。比較例16,17では、更にドープの冷却温度を下げて−18℃とした例であるが、[造粒後の多孔質セルロースビーズの固形分含量]/[ドープ中の副原料以外の固形分含量]の値が大きくなる傾向が強くなっている。
本発明に関するセルロースドープの作製方法では、セルロースを低温のアルカリ水溶液中に分散させる。そこで、本発明者は冷却工程温度を低くすれば低くするほど、ビーズ内の異物等による不均質な観察像が解消され、非特許文献6のような解析が可能となると考えていたが、図2に示すとおり、異物等による不均質さとは別の好ましくない観察像が得られる結果となった。
図3に実施例2で得られたビーズの透過観察像を示す。実施例1〜3はドープ冷却温度を−15℃としつつ、その後、ドープ温度を25℃に上昇させた例であるが、図3に示すとおり、透過観察像が良好であった。また表2に示すとおり、[造粒後の多孔質セルロースビーズの固形分含量]/[ドープ中の副原料以外の固形分含量]の値が良好であった。前記の何かしらの凝縮作用が、緩和された可能性があると考えられる。また実施例2は、吸着性能が高いとされる特許文献6と関連が深い比較例4と[造粒後の多孔質セルロースビーズの固形分含量]/[ドープ中の副原料以外の固形分含量]の値が同じで、且つ造粒後の固形分含量の値も同等であった。このことから、吸着性能が高く、且つ非特許文献6のような解析にも適用可能なビーズが得られていることが期待できる。またその他の実施例1,3,4においても、透過観察像は実施例2と同様の傾向を示した。また表2に示すとおり、実施例4の[造粒後の多孔質セルロースビーズの固形分含量]/[ドープ中の副原料以外の固形分含量]の値は良好で且つ実施例2より小さいことが分かった。前記の何かしらの凝縮作用が更に緩和された可能性がある。
図4に各造粒例におけるドープ中のセルロース濃度と造粒後固形分含量の関係を示す。一連の本造粒例によって、[造粒後の多孔質セルロースビーズの固形分含量]/[ドープ中の副原料以外の固形分含量]の値を巧みに制御できる例を見出していることが証明された。
試験例7: ドープの観察
実施例2と同様に作製中のセルロースドープを冷却工程の途中で少量抜き取って顕微鏡観察を実施し、異物数を計測した。その結果を表3に示す。
実施例2と同様に作製中のセルロースドープを冷却工程の途中で少量抜き取って顕微鏡観察を実施し、異物数を計測した。その結果を表3に示す。
表3に示す結果の通り、冷却時間を長くするほど異物数が減り、実施例2の条件である60分では、異物数がかなり減っていることが明らかとなった。
比較例20
比較例4と同様にセルロースドープを作製し、4℃、2500rpmでドープの遠心濾過を実施した。このドープの上清を用いて、比較例4と同様にエマルション化と多孔質化を実施して、多孔質セルロースビーズを得た。得られた多孔質セルロースビーズの透過観察を行った結果、図1と同様の観察像が得られた。このビーズの固形分含量は3.8w/v%であった。
比較例4と同様にセルロースドープを作製し、4℃、2500rpmでドープの遠心濾過を実施した。このドープの上清を用いて、比較例4と同様にエマルション化と多孔質化を実施して、多孔質セルロースビーズを得た。得られた多孔質セルロースビーズの透過観察を行った結果、図1と同様の観察像が得られた。このビーズの固形分含量は3.8w/v%であった。
試験例8: セルロースドープの濾過例
実施例2と同様にセルロースドープを作製し、グラスフィルター(「26G−3」TOP社製,孔径:16〜40μm)とアスピレーター(「AS−01」アズワン社製)を用いて吸引濾過を25℃雰囲気下で実施した。濾過はスムーズに実施できた。
実施例2と同様にセルロースドープを作製し、グラスフィルター(「26G−3」TOP社製,孔径:16〜40μm)とアスピレーター(「AS−01」アズワン社製)を用いて吸引濾過を25℃雰囲気下で実施した。濾過はスムーズに実施できた。
実施例5
試験例8で濾過したセルロースドープを用いた以外は実施例2と同様に多孔質セルロースビーズを得た。得られた多孔質セルロースビーズの物性も実施例2と同等であった。医薬品精製用吸着体や医療用吸着体に求められる異物除去の観点で好ましい製法を介したビーズが得られたといえる。また非特許文献6のような解析に適用した場合、より精密な試験が実施可能となることが期待できる。
試験例8で濾過したセルロースドープを用いた以外は実施例2と同様に多孔質セルロースビーズを得た。得られた多孔質セルロースビーズの物性も実施例2と同等であった。医薬品精製用吸着体や医療用吸着体に求められる異物除去の観点で好ましい製法を介したビーズが得られたといえる。また非特許文献6のような解析に適用した場合、より精密な試験が実施可能となることが期待できる。
一方、比較例4と同様にセルロースドープを作製し、4℃雰囲気下とした以外は濾過実施例と同様に濾過を試みたが、極少量しか濾過することができなかった。
また、比較例7と同様に得たドープ上清を濾過比較例1と同様に濾過し、比較例20と同様の方法で多孔質セルロースビーズを得た。このビーズの固形分含量は3.1w/v%と比較例4や比較例20より小さかったが、図5に示すように、透過度が極めて低い観察像が得られた。
以上の濾過例及び造粒例から分かるとおり、従来より公知の方法で作製されたセルロースドープは濾過がし辛いこと分かる。また異物の遠心分離を試みても本発明の目的を達成するほどの効果は得られないことが分かる。さらに、従来のセルロースドープを遠心分離することで得られた上清を濾過すると、更に観察像が悪化することがわかった。
試験例9: 架橋多孔質セルロースビーズの圧流速特性
前記比較例4、架橋例、分級例からメディアン粒径が90μmの架橋多孔質セルロースビーズを得た。この架橋多孔質セルロースビーズの20%圧縮応力は0.11MPaであった。また参考例1として、大型カラム用の高吸着型アガロース系プロテインAレジンとしてよく知られているGEヘルスケア社製のMabSelect SuRe LXを用いた。両者の圧流速特性比較を図6に示した。使用したカラムの内径は5cm、充填層高さは5cm、充填されているビーズの量は沈降体積で98.1mLである。
図6に示すとおり、本造粒例、架橋例、分級例による架橋多孔質セルロースビーズは、メディアン粒径が90μm以上、20%圧縮応力が0.11MPa以上であれば、参考例1と同等以上の圧流速特性を示すことが分かる。
前記比較例4、架橋例、分級例からメディアン粒径が90μmの架橋多孔質セルロースビーズを得た。この架橋多孔質セルロースビーズの20%圧縮応力は0.11MPaであった。また参考例1として、大型カラム用の高吸着型アガロース系プロテインAレジンとしてよく知られているGEヘルスケア社製のMabSelect SuRe LXを用いた。両者の圧流速特性比較を図6に示した。使用したカラムの内径は5cm、充填層高さは5cm、充填されているビーズの量は沈降体積で98.1mLである。
図6に示すとおり、本造粒例、架橋例、分級例による架橋多孔質セルロースビーズは、メディアン粒径が90μm以上、20%圧縮応力が0.11MPa以上であれば、参考例1と同等以上の圧流速特性を示すことが分かる。
試験例10: 吸着体の吸着性能
粒径が90μmに調整された架橋多孔質セルロースビーズを用いた吸着体の吸着性能及び20%圧縮応力値を表4に示す。
粒径が90μmに調整された架橋多孔質セルロースビーズを用いた吸着体の吸着性能及び20%圧縮応力値を表4に示す。
表4の結果から、本発明に関する実施例2から得られたメディアン粒径90μmの吸着体は、20%圧縮応力が0.11MPaであることから、大型カラム用として知られる参考例1と同等の圧流速特性を示すことが示唆される。また、吸着性能も、高吸着型セルロース系プロテインAレジンとして報告されている比較例4と比べて遜色ない結果であった。また、アルカリ洗浄工程を含む本吸着試験を5回繰り返したが、吸着量変化は5%未満であった。さらには、カラム差圧も1回目と5回目でほとんど変化が無かった。更に表2に示すとおり、本発明の多孔質セルロースビーズは透過観察像が良好であることから、精製方法の最適化検討の省力化に寄与できる。また一連の造粒例から得られた吸着体の結果から、[造粒後の多孔質セルロースビーズの固形分含量]/[ドープ中の副原料以外の固形分含量]の値が大きすぎると、吸着性能、特にSBCが低い傾向にあることも分かった。
試験例11: 吸着体の吸着性能
表5に粒径が50μmに調整された架橋多孔質セルロースビーズを用いた吸着体の吸着性能を示す。参考例2には、連続クロマトシステム用の小粒径プロテインAレジンとして注目されている東ソー社製のTOYOPEARL AF−rProtein A HC−650Fの結果を示した。
表5に粒径が50μmに調整された架橋多孔質セルロースビーズを用いた吸着体の吸着性能を示す。参考例2には、連続クロマトシステム用の小粒径プロテインAレジンとして注目されている東ソー社製のTOYOPEARL AF−rProtein A HC−650Fの結果を示した。
表5の結果から、本発明に関する実施例2から得られたメディアン粒径50μmの吸着体は、連続クロマトシステム用として注目されている参考例2のプロテインAレジンと同等以上の吸着特性を有することが実証できた。よって本発明によれば、連続クロマト精製システム用の吸着体を提供できる優れた多孔質セルロースビーズを提供できる。
試験例12: Kavの測定
図7に各造粒例で得られた架橋多孔質ビーズを前記方法で架橋した架橋多孔質セルロースビーズと参考例1の吸着体のKav測定結果をプロットしたinverse size exclusion chromatography(ISEC)のカーブを示す。このKavの値が大きければ、そのマーカー分子における細孔容量が大きい。また、このカーブの傾きが急峻であれば、細孔径分布が比較的シャープであり、傾きがなだらかであれば細孔径分布はブロードである。一般的には前者の方が粒子内比表面積と飽和吸着量が大きい傾向にある。また充分に小さいマーカー分子のKavは、そのビーズの粒子内空孔率と見なすことができる。ただし、この空孔率が1.0に近い場合は、ビーズのマトリックス(固相)が存在しないという意味になるため、注意が必要である。これは低分子マーカーの流出が理論値より遅く、計算上、空孔率が1.0前後となったものと考えられ、すなわち、空孔率が不自然に大きい場合、その原因の一つとして、非特異的吸着が起こりやすい材質であるということが考えられる。
本発明に関する実施例2は、高吸着型の多孔質セルロースビーズの先行技術に関する比較例4とほぼ同等のISECカーブを示していることが分かった。また、粒子内空孔率も適度な値であることが分かった。一方、[造粒後の多孔質セルロースビーズの固形分含量]/[ドープ中の副原料以外の固形分含量]の値が大きい比較例13,14においては、空孔率が小さかったり、逆に大きいマーカーのKav値が比較的大きいことが分かり、細孔径分布がブロードであることが示唆される。表4に示す吸着性能の結果を裏付けるものと考えられる。アガロース系プロテインAレジンである参考例1は空孔率が不自然に大きいことが分かった。
図7に各造粒例で得られた架橋多孔質ビーズを前記方法で架橋した架橋多孔質セルロースビーズと参考例1の吸着体のKav測定結果をプロットしたinverse size exclusion chromatography(ISEC)のカーブを示す。このKavの値が大きければ、そのマーカー分子における細孔容量が大きい。また、このカーブの傾きが急峻であれば、細孔径分布が比較的シャープであり、傾きがなだらかであれば細孔径分布はブロードである。一般的には前者の方が粒子内比表面積と飽和吸着量が大きい傾向にある。また充分に小さいマーカー分子のKavは、そのビーズの粒子内空孔率と見なすことができる。ただし、この空孔率が1.0に近い場合は、ビーズのマトリックス(固相)が存在しないという意味になるため、注意が必要である。これは低分子マーカーの流出が理論値より遅く、計算上、空孔率が1.0前後となったものと考えられ、すなわち、空孔率が不自然に大きい場合、その原因の一つとして、非特異的吸着が起こりやすい材質であるということが考えられる。
本発明に関する実施例2は、高吸着型の多孔質セルロースビーズの先行技術に関する比較例4とほぼ同等のISECカーブを示していることが分かった。また、粒子内空孔率も適度な値であることが分かった。一方、[造粒後の多孔質セルロースビーズの固形分含量]/[ドープ中の副原料以外の固形分含量]の値が大きい比較例13,14においては、空孔率が小さかったり、逆に大きいマーカーのKav値が比較的大きいことが分かり、細孔径分布がブロードであることが示唆される。表4に示す吸着性能の結果を裏付けるものと考えられる。アガロース系プロテインAレジンである参考例1は空孔率が不自然に大きいことが分かった。
Claims (11)
- アルカリ水溶液と原料セルロース粉末とを混合して作製したセルロースドープを−12℃より低い温度に冷却する工程と、前記冷却する工程の後に、セルロースドープを15℃より高い温度に調整する工程を含むことを特徴とする多孔質セルロースビーズの製造方法。
- セルロースドープを冷却する温度が−20℃以上、−15℃以下であることを特徴とする、請求項1に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
- セルロースドープを−12℃より低い温度で冷却する時間が30分間以上であることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
- [造粒後の多孔質セルロースビーズの固形分含量]/[ドープ中の副原料以外の固形分含量]の値が1.35未満となることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
- セルロースドープに助剤が含まれていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
- セルロースドープを15℃より高い温度に調整する工程の温度が60℃未満であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
- セルロースドープを孔径が50μm以下の濾材で濾過する工程を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多孔質セルロースビーズの製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法により多孔質セルロースビーズを製造する工程、および、
架橋剤を用いて多孔質セルロースビーズを架橋する工程を含むことを特徴とする架橋多孔質セルロースビーズの製造方法。 - 請求項8に記載の製造方法により架橋多孔質セルロースビーズを製造する工程、および、
架橋多孔質セルロースビーズにリガンドを固定化する工程を含むことを特徴とする吸着体の製造方法。 - 標的化合物を精製する方法であって、
請求項9に記載の製造方法により、標的物質に結合するリガンドを架橋多孔質セルロースビーズに固定化して吸着体を製造する工程、および、
標的物質を含む溶液と吸着体とを接触させる工程を含むことを特徴とする方法。 - 吸着体をカラムに充填し、標的物質を含む溶液を当該カラムに通液する請求項10に記載の方法。
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-
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