JPWO2018180118A1 - ブローチ工具 - Google Patents

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公二 玉木
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智啓 古川
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Abstract

本発明のブローチ工具の一つの態様は、上下方向に延びる中心軸に沿って並ぶ複数の加工刃部と、中心軸に沿って配置されるシャフトと、を備える。加工刃部のそれぞれは、径方向外側に突出する複数の歯部を有する。複数の歯部は、加工刃部ごとに周方向に沿って並んで配置され、かつ、それぞれ他の加工刃部の歯部と軸方向に沿って並んで配置される。加工刃部のそれぞれは、加工刃部を軸方向に貫通する第1貫通孔を有する。複数の加工刃部は、互いに別部材であり、かつ、第1貫通孔にシャフトが通されて連結される。加工刃部同士の相対回転を抑制する回転止め部をさらに備える。

Description

本発明は、ブローチ工具に関する。
軸方向および周方向に沿って複数の刃部を有し、スプライン・内歯歯車などを加工するブローチ工具が知られる。例えば、特許文献1には、複数の切れ刃を超硬合金としたブローチ工具が記載される。
特開2004−345050号公報
上記のようなブローチ工具において、刃部の逃げ面は、砥石によって刃部の表面が加工されて作られる。しかし、比較的小型のブローチ工具においては、刃部同士の周方向の間隔が小さい等により、砥石が軸方向に並ぶ他の刃部に干渉する場合がある。そのため、刃部の周方向側面の一部において、逃げ面の逃げ角を好適に設けることができず、ブローチ工具によって加工される内歯歯車等の成形精度が低下する場合があった。
本発明は、上記事情に鑑みて、比較的小型であっても、加工刃部における歯部の周方向側面の全周に亘って逃げ角を好適に設けることが可能な構造を有するブローチ工具を提供することを目的の一つとする。
本発明のブローチ工具の一つの態様は、上下方向に延びる中心軸に沿って並ぶ複数の加工刃部と、前記中心軸に沿って配置されるシャフトと、を備え、前記加工刃部のそれぞれは、径方向外側に突出する複数の歯部を有し、前記複数の歯部は、前記加工刃部ごとに周方向に沿って並んで配置され、かつ、それぞれ他の前記加工刃部の前記歯部と軸方向に沿って並んで配置され、前記加工刃部のそれぞれは、前記加工刃部を軸方向に貫通する第1貫通孔を有し、前記複数の加工刃部は、互いに別部材であり、かつ、前記第1貫通孔に前記シャフトが通されて連結され、前記加工刃部同士の相対回転を抑制する回転止め部をさらに備える。
本発明の一つの態様によれば、比較的小型であっても、加工刃部における歯部の周方向側面の全周に亘って逃げ角を好適に設けることが可能な構造を有するブローチ工具が提供される。
図1は、第1実施形態のブローチ工具を示す側面図である。 図2は、第1実施形態の加工刃部およびすくい部を示す側面図である。 図3は、第1実施形態の加工刃部およびすくい部を示す斜視図である。 図4は、第1実施形態の加工刃部を下側から視た図である。 図5は、第1実施形態の加工刃部の一部を下側から視た図である。 図6は、第1実施形態の加工刃部を模式的に示す部分断面側面図である。 図7は、第1実施形態のブローチ工具の一部を下側から視た図である。 図8は、第1実施形態のブローチ工具による切削加工手順の一部を示す図である。 図9は、第2実施形態の加工刃部を下側から視た図である。 図10は、第3実施形態のブローチ工具の一部を下側から視た図である。 図11は、第3実施形態の加工刃部を示す斜視図である。 図12は、第3実施形態の加工刃部を下側から視た図である。 図13は、第1実施形態および第2実施形態のブローチ工具を用いて製造される内歯歯車を有する減速機の一例を示す断面図である。
各図に適宜示すZ軸方向は、上下方向と平行な方向である。Z軸方向の正の側を「上側」とし、Z軸方向の負の側を「下側」とする。また、各図に適宜示す中心軸Jは、Z軸方向、すなわち上下方向に延びる。以下の説明においては、中心軸Jの軸方向、すなわちZ軸方向と平行な上下方向を単に「軸方向」と呼ぶ。また、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。なお、上下方向、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
<第1実施形態> 図1に示すブローチ工具10は、内歯歯車の歯部を加工する工具である。ブローチ工具10は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる棒状である。ブローチ工具10は、下側から上側に向かって順に、下側案内部11と、加工部12と、上側案内部13と、柄部14と、を備える。
加工部12は、加工対象OPを切削加工する部分である。加工部12は、複数の加工刃部30と、複数のすくい部40と、を有する。すなわち、ブローチ工具10は、複数の加工刃部30と、すくい部40と、を備える。複数の加工刃部30は、上下方向に延びる中心軸Jに沿って並ぶ。本実施形態において加工刃部30は、例えば、加工刃部30A〜加工刃部30Hの8つ設けられる。加工刃部30A〜加工刃部30Hは、下側から上側に向かって順に並んで配置される。
加工刃部30A〜加工刃部30Hは、一部の寸法は互いに異なるものの同様の形状を有する。以下の説明において、加工刃部30A〜加工刃部30Hを特に区別しない場合においては、単に加工刃部30と呼ぶ。
図2および図3に示すように、加工刃部30は、テーパ部31と、本体部32と、を有する。テーパ部31は、中心軸Jを中心として、上側から下側に向かって外径が大きくなる円錐台状である。本体部32は、中心軸Jを中心とする外歯歯車状である。本体部32は、テーパ部31の下側においてテーパ部31の下端に繋がる。本体部32の外周面には、径方向外側に突出する複数の歯部33が設けられる。すなわち、加工刃部30のそれぞれは、径方向外側に突出する複数の歯部33を有する。
図4に示すように、複数の歯部33は、加工刃部30ごとに周方向に沿って並んで配置される。複数の歯部33は、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。歯部33の歯形は、例えば、サイクロイド歯形である。これにより、下側から視た本体部32の外形は、サイクロイド曲線である。なお、歯部33の歯形は、トロコイド歯形であってもよいし、インボリュート歯形であってもよい。
歯部33のそれぞれは、下側に面するすくい面35を有する。本実施形態において、すくい面35は、加工刃部30の下面の一部であり、軸方向と直交する。加工刃部30の下面は、下側に面し、軸方向と直交する平坦面である。すなわち、加工刃部30ごとに、複数の歯部33のすくい面35は、軸方向と直交する同一平面上に配置される。本実施形態において各歯部33のすくい面35は、周方向に隣り合う歯部33のすくい面35と繋がる。これにより、すくい面35は、加工刃部30の下面の径方向外縁部に、周方向の一周に亘って設けられる。互いに連結された各歯部33のすくい面35は、周方向に延びる環状である。
図2に示すように、歯部33のそれぞれは、歯部33の周方向側面に、全周に亘って設けられる逃げ面36を有する。本実施形態において各歯部33の逃げ面36は、周方向に隣り合う歯部33の逃げ面36と繋がる。これにより、逃げ面36は、加工刃部30の周方向側面に、全周に亘って設けられる。互いに連結された各歯部33の逃げ面36は、周方向に延びる環状である。逃げ面36の下端は、すくい面35の径方向外縁と繋がる。すくい面35と逃げ面36との稜が、加工刃部30の切れ刃38である。なお、本明細書において「周方向側面」とは、周方向に沿った面であり、径方向外側に面する面である。
逃げ面36は、逃げ角θで軸方向に対して傾く。より詳細には、逃げ面36は、下側から上側に向かうに従って、上下方向に沿って視て、切れ刃38の内側に向かって傾く。逃げ角θは、周方向のいずれに位置においても同じ角度である。これにより、図5に破線で示すように、逃げ面36を通り、軸方向と直交する断面における逃げ面36の径方向外縁は、すくい面35の径方向外縁、すなわち切れ刃38よりも内側に等距離離れた位置に配置される。
本実施形態において逃げ面36の逃げ角θは、0°より大きく、図6に示すθmax以下である。図6に示すように、θmaxは、tan(θmax)=L1/L2で示される。図7に示すように、L1は、複数の加工刃部30のうち最も上側に配置される加工刃部30Hの周方向に隣り合う歯部33同士のそれぞれにおいて、下側から視て、他方の歯部33側の部分と接する接線のうち仮想線CLとの成す角度φが最小となる接線TL1,TL2が歯部33と接する接点TP1,TP2同士の距離である。仮想線CLは、周方向に隣り合う歯部33同士の周方向の中心と中心軸Jとを結ぶ線である。歯部33と接する接線とは、下側から視て、すくい面35の径方向外縁、すなわち切れ刃38と接する接線である。
図7に示す例では、接線TL1は、図7の左側の歯部33における他方の歯部33側、すなわち右側の部分と接する接線のうち角度φが最小となる接線である。接線TL2は、図7の右側の歯部33における他方の歯部33側、すなわち左側の部分と接する接線のうち角度φが最小となる接線である。
図6に示すように、L2は、加工刃部30Hの歯部33の下端と加工刃部30Hの下側に隣り合う加工刃部30Gの歯部33の下端との間の軸方向の距離である。言い換えれば、L2は、加工刃部30Hのすくい面35と加工刃部30Gのすくい面35との間の軸方向の距離である。逃げ角θは、一例として、2°以上、5°以下であり、好ましくは、3°である。逃げ角θをこのような値にすることで、逃げ面36を十分に逃がしつつ、歯部33の強度が低下することを抑制できる。
なお、本実施形態においては、加工刃部30Hが、第1加工刃部に相当し、加工刃部30Gが、第2加工刃部に相当する。第1加工刃部は、実質的に機能する加工刃部のうちで最も上側に配置される加工刃部であり、第2加工刃部は、実質的に機能する加工刃部のうちで第1加工刃部の下側に隣り合う第2加工刃部である。すなわち、例えば、最も上側に配置される加工刃部であっても、実質的に機能しなければ、第1加工刃部には相当しない。また、第1加工刃部の下側に隣り合った加工刃部であっても、実質的に機能しなければ、第2加工刃部に相当しない。本明細書において「実質的に機能する加工刃部」とは、ブローチ工具によって加工対象OPを加工する際に、加工対象OPの少なくとも一部を削り取ることが可能な加工刃部である。
複数の歯部33は、それぞれ他の加工刃部30の歯部33と軸方向に沿って並んで設けられる。すなわち、図7に示すように、加工刃部30Aの歯部33と、加工刃部30Bの歯部33と、加工刃部30Cの歯部33と、加工刃部30Dの歯部33と、加工刃部30Eの歯部33と、加工刃部30Fの歯部33と、加工刃部30Gの歯部33と、加工刃部30Hの歯部33とは、軸方向に重なる。
軸方向に隣り合う加工刃部30のうち、上側に配置される加工刃部30の歯部33は、下側から視て、下側に配置される加工刃部30の歯部33と重ならない部分を有する。ここで、図8に示すように、ブローチ工具10は、加工対象OPに設けられた貫通孔Hに上側から挿入されて下側に移動させられることで、切れ刃38によって貫通孔Hの内周面を削りとって切削加工を行う。このとき、複数の加工刃部30は、最も下側に配置される加工刃部30Aから最も上側に配置される加工刃部30Hまで順に貫通孔H内を上側から下側に通過して、貫通孔Hの内周面を切削加工する。
そのため、上側に配置される加工刃部30の歯部33が下側に配置される加工刃部30の歯部33と軸方向に重ならない部分を有することで、下側の加工刃部30によって貫通孔Hの内周面を削った後に、さらに上側の加工刃部30によって貫通孔Hの内周面を削ることができる。このようにして、軸方向に並ぶ複数の加工刃部30によって、貫通孔Hの内周面を徐々に削ることができ、各加工刃部30の加工負担
を低減できる。また、本実施形態の加工刃部30のそれぞれは、このようにして加工対象OPの少なくとも一部を削り取ることが可能であるため、上述した実質的に機能する加工刃部に相当する。
図7に示すように、本実施形態では、軸方向に隣り合う加工刃部30のうち上側に配置される加工刃部30は、下側に配置される加工刃部30よりも、歯部33の周方向の寸法が大きい、および下側に配置される加工刃部30よりも、歯部33の径方向外端が径方向外側に位置する、の少なくとも一方である。これにより、径方向と周方向とに加工負担を分散させつつ、加工対象OPを削ることができる。
本実施形態では、軸方向に隣り合う少なくとも一組の加工刃部30において、上側に配置される加工刃部30における歯部33の周方向の寸法は、下側に配置される加工刃部30における歯部33の周方向の寸法よりも大きい。また、本実施形態では、軸方向に隣り合う少なくとも一組の加工刃部30において、上側に配置される加工刃部30における歯部33の径方向外端は、下側に配置される加工刃部30における歯部33の径方向外端よりも径方向外側に位置する。
歯部33の周方向の寸法は歯部33の径方向位置によって異なるため、歯部33の周方向の寸法の比較は、同じ径方向位置において行う。すなわち、本明細書において「歯部の周方向の寸法が大きい」とは、同じ径方向位置において歯部の周方向の寸法を比較した場合に、歯部におけるいずれかの径方向位置において、歯部の周方向の寸法が大きいことを含む。
加工刃部30Bは、下側に配置される加工刃部30Aよりも、歯部33の周方向の寸法が大きく、かつ、歯部33の径方向外端が径方向外側に位置する。加工刃部30Cは、下側に配置される加工刃部30Bよりも、歯部33の周方向の寸法が大きく、かつ、歯部33の径方向外端が径方向外側に位置する。加工刃部30Dは、下側に配置される加工刃部30Cよりも、歯部33の径方向外端が径方向外側に位置する。加工刃部30Dにおける歯部33の周方向の寸法は、加工刃部30Cにおける歯部33の周方向の寸法以下である。
加工刃部30Eは、下側に配置される加工刃部30Dよりも、歯部33の径方向外端が径方向外側に位置する。加工刃部30Eにおける歯部33の周方向の寸法は、加工刃部30Dにおける歯部33の周方向の寸法以下である。加工刃部30Fは、下側に配置される加工刃部30Eよりも、歯部33の径方向外端が径方向外側に位置する。加工刃部30Fにおける歯部33の周方向の寸法は、加工刃部30Eにおける歯部33の周方向の寸法以下である。
加工刃部30Gは、下側に配置される加工刃部30Fよりも、歯部33の径方向外端が径方向外側に位置する。加工刃部30Gにおける歯部33の周方向の寸法は、加工刃部30Fにおける歯部33の周方向の寸法以下である。加工刃部30Gにおける歯部33の径方向外端の位置は、複数の加工刃部30のうちで最も径方向外側に位置する。
加工刃部30Hは、下側に配置される加工刃部30Gよりも、歯部33の周方向の寸法が大きい。加工刃部30Hにおける歯部33の周方向の寸法は、複数の加工刃部30のうちで最も大きい。加工刃部30Hにおける歯部33の径方向外端は、加工刃部30Gにおける歯部33の径方向外端よりも径方向内側に位置する。すなわち、複数の加工刃部30のうち加工刃部30Hよりも下側に配置される加工刃部30の少なくとも一つは、歯部33の径方向外端が加工刃部30Hにおける歯部33の径方向外端よりも径方向外側に位置する。
そのため、径方向については、加工刃部30H以外の加工刃部30によって、仕上げの切削加工が行われる。これにより、加工対象OPを最後に削る加工刃部30Hの加工負担を低減できる。したがって、本実施形態によれば、加工対象OPを最後に削る加工刃部30Hの損耗を抑制することができる。これにより、加工刃部30Hを再研磨する頻度、およびブローチ工具10の交換頻度を低減することができ、ブローチ工具10によって加工して製造する製品の生産コストを低減できる。
一方、周方向については、加工刃部30Hによって、仕上げの切削加工が行われる。ブローチ工具10によって製造される内歯歯車の歯部は、周方向両側の側面が、内歯歯車に噛み合う外歯歯車の歯部と接触する。そのため、歯車同士の噛み合いにおいては、内歯歯車の歯部における周方向両側の側面の精度が重要となる。したがって、周方向における仕上げの切削加工を、加工刃部30Hによって最後に行うことで、内歯歯車の歯部における周方向両側の側面を精度よく加工しやすく、歯車同士の噛み合いを滑らかにすることができる。
また、本実施形態によれば、加工刃部30Hの下側に隣り合う加工刃部30Gにおける歯部33の径方向外端の位置は、複数の加工刃部30のうちで最も径方向外側に位置するため、径方向については、加工刃部30Gによって、仕上げの切削加工が行われる。これにより、最後に2つの加工刃部30Gと加工刃部30Hとによって、径方向の仕上げと周方向の仕上げとを行う。したがって、例えば、径方向の仕上げと周方向の仕上げとの間に、他の加工刃部による切削工程が含まれる場合に比べて、各方向についての仕上げ精度を向上させやすい。そのため、周方向および径方向の両方において、製造される内歯歯車の歯部の加工精度を向上しやすい。本実施形態において加工刃部30Hにおける歯部33の径方向外端は、加工刃部30Fにおける歯部33の径方向外端よりも径方向外側に位置する。
軸方向に隣り合う加工刃部30において、下側に配置される加工刃部30よりも上側に配置される加工刃部30における歯部33の周方向の寸法が大きくなる場合、歯部33の周方向の寸法の増加量は、歯部33の周方向の寸法公差よりも大きい。そのため、周方向の寸法に誤差が生じた歯部33を有する加工刃部30で加工対象OPを削った後に、その加工刃部30よりも歯部33の周方向の寸法が大きい加工刃部30で加工対象OPを削ることで、誤差による周方向のずれを解消できる。したがって、各加工刃部30による切削加工の周方向の誤差が累積していくことを抑制でき、周方向について、加工精度を向上することができる。
具体的には、加工刃部30Aから加工刃部30Bへの歯部33の周方向の寸法の増加量DC1、加工刃部30Bから加工刃部30Cへの歯部33の周方向の寸法の増加量DC2、および加工刃部30Gから加工刃部30Hへの歯部33の周方向の寸法の増加量DC3は、歯部33の周方向の寸法公差よりも大きい。図7では、増加量DC1,DC2,DC3は、互いにほぼ同じである。増加量DC1,DC2,DC3は、一例として、0.01mm以上、0.1mm以下程度である。歯部33の周方向の寸法公差は、一例として、±0.005mm以上、±0.01mm以下程度である。
軸方向に隣り合う加工刃部30において、下側に配置される加工刃部30よりも上側に配置される加工刃部30における歯部33の径方向外端が径方向外側に位置する場合、上側に配置される加工刃部30における歯部33の径方向外端と下側に配置される加工刃部30における歯部33の径方向外端との径方向の距離は、歯部33の径方向の寸法公差よりも大きい。そのため、径方向の寸法に誤差が生じた歯部33を有する加工刃部30で加工対象OPを削った後に、その加工刃部30よりも歯部33の径方向外端が径方向外側に位置する加工刃部30で加工対象OPを削ることで、誤差による径方向のずれを解消できる。したがって、各加工刃部30による切削加工の径方向の誤差が累積していくことを抑制でき、径方向について、加工精度を向上することができる。
具体的には、軸方向に隣り合う各加工刃部30における歯部33の径方向外端同士の距離DR1〜DR6は、歯部33の径方向の寸法公差よりも大きい。距離DR1は、加工刃部30Aにおける歯部33の径方向外端と加工刃部30Bにおける歯部33の径方向外端との径方向の距離である。距離DR2は、加工刃部30Bにおける歯部33の径方向外端と加工刃部30Cにおける歯部33の径方向外端との径方向の距離である。距離DR3は、加工刃部30Cにおける歯部33の径方向外端と加工刃部30Dにおける歯部33の径方向外端との径方向の距離である。距離DR4は、加工刃部30Dにおける歯部33の径方向外端と加工刃部30Eにおける歯部33の径方向外端との径方向の距離である。距離DR5は、加工刃部30Eにおける歯部33の径方向外端と加工刃部30Fにおける歯部33の径方向外端との径方向の距離である。距離DR6は、加工刃部30Fにおける歯部33の径方向外端と加工刃部30Gにおける歯部33の径方向外端との径方向の距離である。
本実施形態においては、距離DR2と距離DR3と距離DR5とは、同じである。距離DR1は、距離DR2、距離DR3および距離DR5よりも小さい。距離DR4は、距離DR3および距離DR5よりも大きい。距離DR6は、距離DR1よりも小さい。すなわち、軸方向に隣り合う加工刃部30同士の間における歯部33の径方向外端の径方向位置の変化量は、加工刃部30Aから加工刃部30Eまでの間においては同じ、あるいは増加し、加工刃部30Eから加工刃部30Gまでの間においては減少する。
図4に示すように、加工刃部30の外径Dは、中心軸Jを中心とし、歯部33の径方向外端を通る円形の直径である。加工刃部30の外径Dは、加工刃部30A、加工刃部30B、加工刃部30C、加工刃部30D、加工刃部30E、加工刃部30F、加工刃部30Gの順に大きくなる。加工刃部30Hの外径Dは、加工刃部30Gよりも小さく、加工刃部30Fよりも大きい。各加工刃部30の外径Dは、一例として、20mm以下である。軸方向に隣り合う加工刃部30同士の間における外径Dの変化量は、上述した歯部33の径方向外端の径方向位置の変化量と同様に変化する。
本実施形態において複数の加工刃部30は、互いに別部材である。そのため、複数の加工刃部30を別々に製造した後に、複数の加工刃部30を軸方向に沿って連結してブローチ工具10を組み立てることができる。これにより、例えば、砥石を使って逃げ面36を加工する場合には、加工刃部30を組み立てる前に加工を行うことで、他の加工刃部30に砥石が干渉することがなく、好適な逃げ角θを有する逃げ面36が得られる。また、そもそも、加工刃部30が互いに別部材であるため、砥石を使って逃げ面36を加工する必要もない。例えば、ワイヤー放電加工によって、逃げ面36ごと板部材からくり抜いて、加工刃部30を製造できる。したがって、本実施形態によれば、ブローチ工具10が比較的小型であっても、加工刃部30における歯部33の周方向側面の全周に亘って逃げ角θを好適に設けることが可能である。本実施形態において複数の加工刃部30は、それぞれ単一の部材である。
本明細書において「比較的小型のブローチ工具」とは、加工刃部の外径が20mm以下のブローチ工具、上述した距離L1が2mm以下のブローチ工具、上述した距離L2が10mm以下のブローチ工具等を含む。
また、従来のブローチ工具においては、特に、上述した角度φが小さい接線との歯部33の接点ほど、逃げ角θを設けにくい問題があった。これに対して、本実施形態によれば、角度φが最小となる接点TP1,TP2においても好適に逃げ角θを設けることができるため、歯部33の周方向側面の全周に亘って逃げ角θを好適に設けることができる。
また、複数の加工刃部30が互いに別部材であるため、複数の加工刃部30のうちの一部の加工刃部30が損耗した場合に、一部の加工刃部30だけを交換できる。そのため、一部の加工刃部30が損耗した場合にブローチ工具10全体を交換する必要がなく、ブローチ工具10によって加工して製造する製品の生産コストを低減できる。
また、例えば、互いに噛み合う内歯歯車と外歯歯車とにおいて、歯部の歯形がサイクロイド歯形あるいはトロコイド歯形である場合、歯形がインボリュート歯形である場合に比べて、内歯歯車の歯部と外歯歯車の歯部との接触する周方向側面の範囲が大きい。そのため、歯形がサイクロイド歯形あるいはトロコイド歯形である場合には、歯部の周方向側面の全周において加工精度が高いことが重要となる。
これに対して、本実施形態のように、歯部33の周方向側面の全周に逃げ角θが好適に設けられたブローチ工具10を用いることで、内歯歯車の歯部の周方向側面を全周に亘って精度よく加工できる。したがって、上述した歯部33の周方向側面の全周に逃げ角θを好適に設けることができる効果は、加工対象OPの歯部の歯形がサイクロイド歯形あるいはトロコイド歯形である場合に、特に有用である。
また、本実施形態では、すくい面35が軸方向と直交する加工刃部30の下面の一部である。そのため、板部材をワイヤー放電加工等でくり抜いて加工刃部30を製造することで、板部材の板面をすくい面35として利用することができる。これにより、板面の平面精度が比較的高い板部材を用いることで、すくい面35を容易に精度よく作ることができる。これにより、切れ刃38を精度よく作ることができ、ブローチ工具10の切削性能を向上できる。また、平坦な加工刃部30の下面を研磨することですくい面35を研磨して、切れ刃38を研磨できるため、切れ刃38が損耗した場合に切れ刃38を再研磨することが容易である。
図3に示すように、加工刃部30のそれぞれは、加工刃部30を軸方向に貫通する第1貫通孔34aと、加工刃部30を軸方向に貫通する複数の第2貫通孔34bと、を有する。第1貫通孔34aの上側から視た形状は、中心軸Jを中心とする円形状である。第2貫通孔34bの上側から視た形状は、円形状である。第2貫通孔34bの内径は、第1貫通孔34aの内径よりも小さい。本実施形態において第2貫通孔34bは、加工刃部30のそれぞれにおいて2つずつ設けられる。2つの第2貫通孔34bは、第1貫通孔34aの径方向外側において、中心軸Jを挟んで互いに反対側に配置される。第1貫通孔34aおよび第2貫通孔34bは、テーパ部31の上面に開口する。
すくい部40は、中心軸Jを中心とする円柱状である。図1に示すように、複数のすくい部40は、それぞれ各加工刃部30の下側において各加工刃部30の下端に繋がる。すくい部40は、加工刃部30の数と同じ数設けられ、本実施形態では8つ設けられる。複数のすくい部40のうち最も下側に配置されるすくい部40以外のすくい部40は、軸方向に隣り合う加工刃部30同士の間において、軸方向に隣り合う加工刃部30同士を繋ぐ。
図2に示すように、すくい部40の外径は、軸方向に隣り合う加工刃部30のそれぞれにおける歯部33が設けられる部分、すなわち本体部32の外径よりも小さい。そのため、軸方向に隣り合う加工刃部30同士の間に径方向内側に窪む逃がし部37が設けられる。これにより、図8に示すように、すくい部40の上側に繋がる加工刃部30によって加工対象OPの貫通孔Hの内周面を削った際に生じる切屑MSを、逃がし部37内に逃がすことができる。したがって、ブローチ工具10によって加工対象OPを切削加工する際に、切屑MSがブローチ工具10と貫通孔Hの内周面との間に詰まることを抑制でき、ブローチ工具10によって切削加工を行いやすい。
逃がし部37は、周方向に延びる円環状である。逃がし部37の内側面は、すくい面35と、すくい部40の外周面と、テーパ部31の外周面と、によって構成される。本実施形態では、テーパ部31が上側から下側に向かって外径が大きくなる円錐台状であるため、すくい面35の下側において逃がし部37内を広くしやすく、切屑MSを逃がし部37内に逃がしやすい。また、逃がし部37が貫通孔Hから下側に抜け出た際に、切屑MSをテーパ部31に沿って逃がし部37内から取り除きやすい。
図2に示すように、すくい部40の外径は、すくい部40の上端部において上側に向かって大きくなる。これにより、すくい面35によってすくい取られて逃がし部37内に逃がされた切屑MSを図8に示すように、丸めて下側に誘導しやすい。したがって、切屑MSを逃がし部37内に逃がしやすく、ブローチ工具10による切削加工をより行いやすくできる。
すくい部40の下端の外径は、すくい部40の下側に繋がる加工刃部30の上端の外径、すなわちテーパ部31の上端の外径以上である。そのため、すくい部40の外周面に沿って下側に誘導された切屑MSが、すくい部40と下側の加工刃部30との境界部分に挟まることを抑制できる。これにより、逃がし部37内から切屑MSを取り除きやすい。
図3に示すように、すくい部40は、加工刃部30と別部材である。すなわち、複数の加工刃部30と複数のすくい部40とは、互いに別部材である。そのため、上述したように、板部材をくり抜いて加工刃部30を製造しつつ、同様にすくい部40も板部材をくり抜いて製造することができる。これにより、加工刃部30およびすくい部40を製造しやすく、かつ、すくい部40によって切屑MSを逃がしやすくできる。また、例えば、複数のすくい部40は、形状および寸法が同じでもよいため、同じ形状および同じ寸法ですくい部40を製造する場合には、すくい部40の製造を容易にできる。本実施形態においては、例えば、複数のすくい部40の形状および寸法は、互いに同じである。
また、加工刃部30とすくい部40とが互いに別部材であるため、加工刃部30の材質とすくい部40の材質とを互いに異ならせることができる。これにより、加工刃部30とすくい部40とをそれぞれ適した材料で製造できる。具体的には、加工を行う加工刃部30の材質を比較的硬質な材料とすることでブローチ工具10による切削加工を容易にできる。また、すくい部40の材質を比較的安価な材料とすることで、ブローチ工具10の製造コストを低減できる。
一例として、加工刃部30の材質としては、SKH51等の高速度工具鋼鋼材(JIS G 4403:2015)、および超硬合金が挙げられる。すくい部40の材質としては、S50C等の機械構造用炭素鋼鋼材(JIS G 4051:2009)、およびSUS420が挙げられる。
すくい部40のそれぞれは、すくい部40を軸方向に貫通する第3貫通孔41aと、すくい部40を軸方向に貫通する複数の第4貫通孔41bと、を有する。第3貫通孔41aの上側から視た形状は、中心軸Jを中心とする円形状である。第4貫通孔41bの上側から視た形状は、円形状である。第4貫通孔41bの内径は、第3貫通孔41aの内径よりも小さい。本実施形態において第4貫通孔41bは、すくい部40のそれぞれにおいて2つずつ設けられる。2つの第4貫通孔41bは、第3貫通孔41aの径方向外側において、中心軸Jを挟んで互いに反対側に配置される。第3貫通孔41aの内径は、第1貫通孔34aの内径と同じである。第4貫通孔41bの内径は、第2貫通孔34bの内径と同じである。
図1に示すように、ブローチ工具10は、中心軸Jに沿って配置されるシャフト21をさらに備える。シャフト21は、軸方向に延びる円柱状である。シャフト21は、下側案内部11と、加工部12と、上側案内部13と、柄部14と、を連結する。下側案内部11、加工部12、上側案内部13、および柄部14は、各部に設けられた軸方向に貫通する貫通孔にシャフト21が通されて互いに連結される。
シャフト21の下端部の外周面とシャフト21の上端部の外周面とには、雄ネジ部が設けられる。シャフト21の下端部の雄ネジ部には、ナット15が締め込まれる。シャフト21の上端部の雄ネジ部には、ナット16が締め込まれる。これにより、下側案内部11、加工部12、上側案内部13、および柄部14は、ナット15とナット16とによって軸方向に挟持されて、シャフト21に対して固定される。
シャフト21は、加工部12を構成する複数の加工刃部30と複数のすくい部40とを連結する。より詳細には、複数の加工刃部30は、第1貫通孔34aにシャフト21が通されて連結される。これにより、各加工刃部30を軸精度よく軸方向に沿って配置できる。したがって、ブローチ工具10による加工精度を向上できる。
また、複数のすくい部40は、第3貫通孔41aにシャフト21が通されて連結される。このように、本実施形態では、複数の加工刃部30および複数のすくい部40は、第1貫通孔34aおよび第3貫通孔41aにシャフト21が通されて連結される。これにより、複数の加工刃部30と複数のすくい部40とを軸精度よく軸方向に沿って配置できる。
本実施形態では、加工刃部30の材質とシャフト21の材質とは、互いに異なる。これにより、加工刃部30とシャフト21とをそれぞれ適した材料で製造できる。具体的には、シャフト21の材質を粘り強さが大きい材料とすることで、複数の加工刃部30および複数のすくい部40を連結するシャフト21を折れにくくできる。シャフト21の材質としては、例えばすくい部40と同様に、S50C等の機械構造用炭素鋼鋼材(JIS G 4051:2009)、およびSUS420が挙げられる。シャフト21の材質は、すくい部40の材質と異なってもよい。
図3に示すように、ブローチ工具10は、加工刃部30同士の相対回転を抑制する回転止め部50をさらに備える。そのため、互いに別部材である加工刃部30同士が周方向にずれることを抑制でき、ブローチ工具10の加工精度が低下することを抑制できる。回転止め部50は、加工刃部30のそれぞれに複数ずつ設けられた第2貫通孔34bと、すくい部40のそれぞれに複数ずつ設けられた第4貫通孔41bと、複数のピン22と、を有する。すなわち、ブローチ工具10は、複数のピン22をさらに備える。
本実施形態においてピン22は、例えば、2つ設けられる。また、第2貫通孔34bは、加工刃部30ごとに、例えば2つずつ設けられる。また、第4貫通孔41bは、すくい部40ごとに、例えば2つずつ設けられる。
ピン22は、軸方向に延びる円柱状である。ピン22の外径は、シャフト21の外径よりも小さい。図1に示すように、ピン22の下端は、下側案内部11に固定される。ピン22は、複数の加工刃部30の第2貫通孔34bに跨って通される。これにより、回転止め部50は、複数の加工刃部30同士が周方向に相対回転することを抑制できる。本実施形態では、回転止め部50が第2貫通孔34bとピン22とを用いた構成であるため、回転止め部50を作る手間およびコストを低減でき、ブローチ工具10の製造コストを低減できる。
また、本実施形態では、ピン22の外径がシャフト21の外径よりも小さいため、ピン22が通される第2貫通孔34bを比較的小さくできる。これにより、加工刃部30の剛性が低下することを抑制できる。
また、ピン22は、複数のすくい部40の第4貫通孔41bに跨って通される。すなわち、本実施形態においてピン22は、複数の加工刃部30の第2貫通孔34bおよび複数のすくい部40の第4貫通孔41bに跨って通される。これにより、回転止め部50は、複数の加工刃部30と複数のすくい部40とが周方向に相対回転することを抑制できる。
また、例えば、第1貫通孔34aの内周面とシャフト21の外周面との間には、クリアランスが設けられる。これにより、例えば、クリアランスの分だけ加工刃部30がシャフト21に対して径方向に動く場合がある。これに対して、例えば、ピン22とシャフト21との径方向の位置、あるいは第1貫通孔34aと第2貫通孔34bとの径方向の位置が公差の範囲内でずれる場合、第1貫通孔34aとシャフト21との間のクリアラン
スによる加工刃部30の径方向の動きが、第2貫通孔34bの内周面とピン22の外周面とが接触することで抑制される。これにより、第1貫通孔34aとシャフト21との間のクリアランスによって加工刃部30がシャフト21に対して径方向に動くことを抑制できる。
また、例えば、第2貫通孔34bの第1貫通孔34aに対する径方向位置の公差が比較的小さく、かつ、ピン22のシャフト21に対する径方向位置が公差の範囲内でずれる場合、第1貫通孔34a内におけるクリアランスによるシャフト21の径方向のずれる向きが、一意に決まりやすい。そのため、複数の加工刃部30のシャフト21に対するずれを径方向に揃えることができ、各歯部33を軸方向に精度よく揃えることができる。
本実施形態では、ピン22は、複数設けられ、第2貫通孔34bも、加工刃部30ごとに複数ずつ設けられる。そのため、回転止め部50は、加工刃部30ごとに周方向の複数箇所において、加工刃部30の周方向の回転を抑制できる。
例えば、第2貫通孔34bの内周面とピン22の外周面との間には、クリアランスが設けられる。これにより、例えば、1つのピン22と1つの第2貫通孔34bとによって加工刃部30を回転止めする場合、クリアランスの分だけ、加工刃部30がシャフト21に対して周方向に動く場合がある。
これに対して、複数のピン22と複数の第2貫通孔34bとによって加工刃部30を回転止めする場合、例えば、各加工刃部30における複数の第2貫通孔34bの第1貫通孔34aに対する周方向位置は、それぞれ公差内でずれる場合がある。そのため、複数のピン22が複数の第2貫通孔34bにそれぞれ通されると、第2貫通孔34bとピン22との間のクリアランスによる加工刃部30の周方向の動きが、他のピン22の外周面と第2貫通孔34bの内周面とが接触することで抑制される。これにより、ピン22と第2貫通孔34bとの間のクリアランスによって加工刃部30がシャフト21に対して周方向に動くことを抑制できる。
また、例えば、複数の第2貫通孔34bの第1貫通孔34aに対する周方向位置の公差が比較的小さく、かつ、複数のピン22のシャフト21に対する周方向位置が公差の範囲内でずれる場合、第2貫通孔34b内におけるクリアランスによるピン22の周方向のずれる向きが、一意に決まりやすい。そのため、複数の加工刃部30のシャフト21に対するずれを周方向一方側に揃えることができ、各歯部33を軸方向に精度よく揃えることができる。
上述したクリアランスによる加工刃部30の径方向への移動および周方向への移動を抑制できる効果は、すくい部40に対しても同様である。すなわち、本実施形態によれば、すくい部40が各クリアランスによって径方向および周方向に動くことを抑制できる。
本実施形態では、加工刃部30の材質とピン22の材質とは、互いに異なる。これにより、加工刃部30とピン22とをそれぞれ適した材料で製造できる。具体的には、ピン22の材質を粘り強さが大きい材料とすることで、複数の加工刃部30および複数のすくい部40の回転止めとして機能するピン22を折れにくくできる。ピン22の材質としては、例えばすくい部40およびシャフト21と同様に、S50C等の機械構造用炭素鋼鋼材(JIS G 4051:2009)、およびSUS420が挙げられる。ピン22の材質は、すくい部40の材質およびシャフト21の材質と異なってもよい。ピン22の材質は、例えば加工刃部30と同様に、SKH51等の高速度工具鋼鋼材(JIS G 4403:2015)であってもよいし、超硬合金であってもよい。
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成を採用することもできる。以下の説明においては、上記と同様の構成については、適宜同一の符号を付す等により説明を省略する場合がある。
加工刃部30とすくい部40とは、単一の部材であってもよい。すくい部40は設けられなくてもよい。回転止め部50は、シャフト21に対して加工刃部30が周方向に回転することを抑制できるならば特に限定されない。加工刃部30とすくい部40とシャフト21とピン22とは、互いに同じ材質であってもよい。加工刃部30の数は、複数であれば特に限定されない。
加工刃部30Hにおける歯部33の径方向外端の位置が、複数の加工刃部30のうちで最も径方向外側に位置してもよい。加工刃部30Hよりも下側に配置される加工刃部30の少なくとも一つが、歯部33の周方向の寸法が加工刃部30Hにおける歯部33の周方向の寸法より大きくてもよい。各歯部33の周方向側面の全周に逃げ角θが0°より大きい逃げ面36が設けられるならば、各歯部33の逃げ面36のそれぞれは互いに繋がらなくてもよい。また、逃げ角θは、逃げ面36の位置によって変化してもよい。また、歯部33には、逃げ角θが0°となるストレートランド(JIS B 0175−1996)が設けられてもよい。ストレートランドの径方向外側面は、径方向と直交する。ストレートランドは、逃げ面36とすくい面35との間において、逃げ面36とすくい面35とを繋ぐ。
また、歯部33の周方向の寸法が最も大きい加工刃部30Hが軸方向に連続して複数並んで設けられてもよい。この構成によれば、複数の加工刃部30Hのうち最も下側に配置される加工刃部30Hで加工対象OPの切削加工を仕上げきれない場合であっても、上側にさらに別の加工刃部30Hが設けられるため、加工対象OPの切削加工の仕上げの確実性を向上できる。また、例えば複数の加工刃部30Hのうち最も下側に配置される加工刃部30Hが摩耗した場合であっても、上側に配置される別の加工刃部30Hによって切削加工の仕上げを行うことができるため、加工刃部30Hの交換頻度を低減することができる。なお、この場合、複数設けられる加工刃部30Hは、歯部33の周方向の寸法が互いに同じで加工刃部30のうちで最も大きければよく、歯部33の径方向外端の位置は、加工刃部30Gの歯部33よりも径方向内側の範囲内で互いに異なってもよい。
<第2実施形態> 図9に示すように、第2実施形態のブローチ工具110の加工刃部130において、回転止め部150は、シャフト121の外周面と第1貫通孔134aの内周面とのうちの一方に設けられ、径方向に窪む凹部と、シャフト121の外周面と第1貫通孔134aの内周面とのうちの他方に設けられ、径方向に突出する凸部と、を有する。本実施形態では、凹部は、第1貫通孔134aの内周面から径方向外側に窪む凹部134cである。凸部は、シャフト121の外周面から径方向外側に突出する凸部121aである。
凸部121aは、凹部134cに嵌め合わされる。これにより、回転止め部150は、シャフト121に対して加工刃部130が周方向に回転することを抑制できる。シャフト121は、凸部121aを有する単一の部材である。そのため、部品点数を増やすことなく、回転止め部150を構成することができ、ブローチ工具110の製造コストを低減できる。
なお、例えば、シャフト121の外周面のうち凹部134cと径方向に対向する位置に、径方向内側に窪む第2凹部を設け、凹部134cと第2凹部とにキー部材を嵌め合わせる構成としてもよい。この場合、キー部材は、「シャフトの外周面と第1貫通孔の内周面とのうちの他方に設けられ、径方向に突出する凸部」に相当する。また、凹部は、シャフト121の外周面から径方向内側に窪む凹部であってもよく、凸部は、第1貫通孔134aの内周面から径方向内側に突出する凸部であってもよい。
<第3実施形態> 図10に示すように、本実施形態のブローチ工具210は、複数の加工刃部230として、9つの加工刃部230A〜加工刃部230Iを備える。加工刃部230A〜加工刃部230Iは、下側から上側に向かって順に並んで配置される。加工刃部230A〜加工刃部230Iは、一部の寸法は互いに異なるものの同様の形状を有する。以下の説明において、加工刃部230A〜加工刃部230Iを特に区別しない場合においては、単に加工刃部230と呼ぶ。
図11および図12に示すように、加工刃部230のそれぞれは、径方向外側に突出する複数の歯部233を有する。複数の歯部233は、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。本実施形態において歯部233の歯形は、上述した各実施形態と異なり、インボリュート歯形である。図10に示すように、上側に位置する加工刃部230ほど、歯部233の径方向外端が径方向外側に位置する。すなわち、歯部233の径方向外端は、加工刃部230A、加工刃部230B、加工刃部230C、加工刃部230D、加工刃部230E、加工刃部230F、加工刃部230G、加工刃部230H、加工刃部230Iの順に径方向外側に位置する。
加工刃部230Aから加工刃部230Gにおいては、歯部233の周方向の寸法は同じである。加工刃部230Hにおける歯部233の周方向の寸法は、加工刃部230Aから加工刃部230Gにおける歯部233の周方向の寸法よりも大きい。加工刃部230Iにおける歯部233の周方向の寸法は、加工刃部230Hにおける歯部233の周方向の寸法よりも大きい。加工刃部230Iにおける歯部233の周方向の寸法は、複数の加工刃部230のうちで最も大きい。
<製造される内歯歯車を有する減速機の一例> 図13に示す減速機GRの内歯歯車G1は、上述した各実施形態のブローチ工具のうち第1実施形態および第2実施形態のブローチ工具を用いて製造される内歯歯車の一例である。減速機GRは、内歯歯車G1と、外歯歯車G2と、出力部材OMと、を有する。内歯歯車G1は、モータシャフトSの回転軸O1を中心とする円環状である。内歯歯車G1の内周面には、回転軸O1の周方向に沿って並ぶ複数の歯部T1が設けられる。内歯歯車G1は、減速機GRの筐体に固定される。
外歯歯車G2は、モータシャフトSの偏心部Seの外周面に嵌め合わされる円環状である。偏心部Seの偏心軸O2は、モータシャフトSの回転軸O1に対して偏心する。外歯歯車G2の内周面は、すべり軸受けとして機能し、偏心部Seに対して相対的に回転可能である。外歯歯車G2の外周面には、偏心軸O2の周方向に沿って並ぶ複数の歯部T2が設けられる。歯部T2は、歯部T1と外歯歯車G2の外周の一部において噛み合う。歯部T1の歯形および歯部T2の歯形は、例えば、サイクロイド歯形である。
外歯歯車G2は、外歯歯車G2を偏心軸O2の軸方向に貫通する複数の孔PHを有する。複数の孔PHは、偏心軸O2の周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。出力部材OMは、孔PHに挿入される複数の支持ピンPを有する。支持ピンPの外径は、孔PHの内径よりも小さい。
モータシャフトSが回転軸O1周りに回転されると、偏心部Seは、回転軸O1を中心として公転する。これにより、外歯歯車G2は、孔PHの内周面と支持ピンPの外周面との内接する位置が変化しつつ揺動し、歯部T1と歯部T2との噛み合う位置が、回転軸O1の周方向に変化する。したがって、内歯歯車G1と外歯歯車G2とが相対回転する。図13では、内歯歯車G1は減速機GRの筐体に固定されるため、外歯歯車G2が回転する。外歯歯車G2が回転すると、孔PHと支持ピンPとを介して、出力部材OMが回転する。出力部材OMの回転は、モータシャフトSの回転に対して減速される。
上述した第1実施形態および第2実施形態のブローチ工具によれば、このような減速機GRの内歯歯車G1を製造することができる。より詳細には、上述した第1実施形態および第2実施形態のブローチ工具を用いて、切削加工によって複数の歯部T1を作ることで、内歯歯車G1を製造することができる。
なお、上述した各実施形態のブローチ工具の用途は、特に限定されない。また、上述した各構成は、相互に矛盾
しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
10,110,210…ブローチ工具、21,121…シャフト、22…ピン、30,30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,30H,130,230,230A,230B,230C,230D,230E,230F,230G,230H,230I…加工刃部、33,233…歯部、34a,134a…第1貫通孔、34b…第2貫通孔、40…すくい部、50,150…回転止め部、121a…凸部、134c…凹部、J…中心軸

Claims (7)

  1. 上下方向に延びる中心軸に沿って並ぶ複数の加工刃部と、 前記中心軸に沿って配置されるシャフトと、 を備え、 前記加工刃部のそれぞれは、径方向外側に突出する複数の歯部を有し、 前記複数の歯部は、前記加工刃部ごとに周方向に沿って並んで配置され、かつ、それぞれ他の前記加工刃部の前記歯部と軸方向に沿って並んで配置され、 前記加工刃部のそれぞれは、前記加工刃部を軸方向に貫通する第1貫通孔を有し、 前記複数の加工刃部は、互いに別部材であり、かつ、前記第1貫通孔に前記シャフトが通されて連結され、 前記加工刃部同士の相対回転を抑制する回転止め部をさらに備える、ブローチ工具。
  2. 前記回転止め部は、 軸方向に延びるピンと、 前記加工刃部のそれぞれに設けられた前記加工刃部を軸方向に貫通する第2貫通孔と、 を有し、 前記ピンは、前記複数の加工刃部の前記第2貫通孔に跨って通される、請求項1に記載のブローチ工具。
  3. 前記ピンの外径は、前記シャフトの外径よりも小さい、請求項2に記載のブローチ工具。
  4. 前記ピンは、複数設けられ、 前記第2貫通孔は、前記加工刃部のそれぞれに複数ずつ設けられる、請求項2または3に記載のブローチ工具。
  5. 前記加工刃部の材質と前記ピンの材質とは、互いに異なる、請求項2から4のいずれか一項に記載のブローチ工具。
  6. 前記回転止め部は、 前記シャフトの外周面と前記第1貫通孔の内周面とのうちの一方に設けられ、径方向に窪む凹部と、 前記シャフトの外周面と前記第1貫通孔の内周面とのうちの他方に設けられ、径方向に突出する凸部と、 を有し、 前記凸部は、前記凹部に嵌め合わされる、請求項1に記載のブローチ工具。
  7. 前記加工刃部の材質と前記シャフトの材質とは、互いに異なる、請求項1から6のいずれか一項に記載のブローチ工具。
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