JPWO2018158802A1 - スタッドピン、およびスタッドタイヤ - Google Patents
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Abstract
Description
一般に、スタッドピンは、トレッド部に設けられたピン埋め込み用孔(以降、単に孔ともいう)に埋め込まれる。孔にスタッドピンを埋め込むとき、孔径を拡張した状態の孔にスタッドピンを挿入することで、スタッドピンが孔及びトレッド部にきつく締め付けられてトレッド部に装着される。これにより、スタッドタイヤの転動中に路面から受ける制駆動力や横力によるスタッドピンの孔からの抜け落ちを防いでいる。スタッドピンが抜け落ちないことによって、氷上路面における制駆動性あるいは操縦性が確保される。
例えば、スタッドピンの下部フランジが、互いに反対方向に円弧状に突出した凸部と、凸部の突出方向に対して直交する直交方向に円弧状に凹んだ湾曲部と、を備えた輪郭形状であって、凸部の突出方向に沿った輪郭形状の長さが、上記直交方向に沿った輪郭形状の長さに比べて長い異方性を有するスタッドピンが知られている(特許文献1)。
路面と接触するための先端面を有するチップと、
前記チップを一方の側の端面から突出させるように前記チップを保持するボディ部と、
前記ボディ部の前記端面と反対側の端に接続した下部フランジ部と、を備え、
前記チップ、前記ボディ部、及び前記下部フランジ部の配列方向から見た前記下部フランジ部のフランジ輪郭形状は、前記輪郭形状に外接する仮想の矩形のうち、四辺の中で長さの最も短い辺が最小となる第1最小矩形、及び、四辺の中で長さの最も長い辺が最小となる第2最小矩形のうち、少なくともいずれか一方の最小矩形が、長さの異なる短辺及び長辺を備える、異方性形状であり、
前記フランジ輪郭形状は、前記長辺に平行な長手方向に向かって突出する4つ以上の第1フランジ凸部F1と、前記短辺に平行な短手方向に向かって突出する2つの第2フランジ凸部F2と、を備え、
前記配列方向から見た前記ボディ部のボディ輪郭形状は、直線状に延びる複数のボディ直線部を含む形状であり、
前記ボディ直線部は、前記第1フランジ凸部F1および前記第2フランジ凸部F2のうちの前記フランジ輪郭形状の外周に沿って隣り合う2つの凸部の間の前記フランジ輪郭形状の部分と対向するように設けられている、ことを特徴とする。
前記ボディ輪郭形状は、前記ボディ直線部として、前記対それぞれの第1フランジ凸部F1の間の前記フランジ輪郭形状の部分と対向するように設けられた2つのボディ直線部B1を備え、前記第2フランジ凸部F2それぞれと前記第1フランジ凸部F1の1つとの間に挟まれる前記フランジ輪郭形状の部分と対向するように設けられた4つのボディ直線部B2を備えることが好ましい。
前記ボディ直線部B1は、前記第1フランジ凹部F3と対向するように設けられ、前記ボディ直線部B2は、前記第2フランジ凹部F4と対向するように設けられていることが好ましい。
前記ボディ輪郭形状は、前記第2フランジ凸部F2に向かって突出する2つのボディ凸部B4を備え、前記ボディ凸部B4は、互いに接続された2つの前記ボディ直線部B2からなることが好ましい。
前記ボディ輪郭形状は、前記最小矩形の短辺に向かって突出する2つのボディ凸部B3を備え、
前記ボディ凸部B3は、前記ボディ直線部B1を含み、前記ボディ直線部B1は、前記最小矩形の長辺に平行な長手方向に最も突出した部分であることが好ましい。
前記スタッドピンを、前記長手方向または短手方向がタイヤ周方向に向くように装着したトレッド部を備える、ことを特徴とする。
以下、本実施形態のスタッドタイヤについて説明する。図1は、本実施形態のスタッドタイヤ(以降、タイヤという)10の断面の一例を示すタイヤ断面図である。図2は、タイヤ10の外観斜視図である。
タイヤ10は、トレッド部にスタッドピンが埋め込まれたタイヤである(図1,2では、スタッドピンは図示されていない)。
タイヤ10は、例えば、乗用車用タイヤである。乗用車用タイヤは、JATMA YEAR BOOK 2012(日本自動車タイヤ協会規格)のA章に定められるタイヤをいう。この他、B章に定められる小型トラック用タイヤおよびC章に定められるトラック及びバス用タイヤに適用することもできる。
以降で具体的に説明する各パターン要素の寸法の数値は、乗用車用タイヤにおける数値例であり、スタッドタイヤはこれらの数値例に限定されない。
タイヤ10は、骨格材として、カーカスプライ12と、ベルト14と、ビードコア16とを有する。タイヤ10は、これらの骨格材の周りに、トレッドゴム18と、サイドゴム20と、ビードフィラーゴム22と、リムクッションゴム24と、インナーライナゴム26と、を主に有する。
この他に、タイヤ10は、ベルト14のタイヤ径方向外側からベルト14を覆う、有機繊維をゴムで被覆したベルトカバー層28を備える。
図3は、タイヤ10の、一例であるトレッドパターン30を平面上に展開したトレッドパターンの一部の平面展開図である。図3では、トレッド部に装着されるスタッドピンの図示は省略されている。タイヤ10は図3に示されるように、タイヤ周方向Cの一方の向きを示すタイヤ回転方向Xが指定されている。タイヤ回転方向Xの向きの情報は、タイヤ10のサイドウォール表面に設けられた数字、記号(例えば、矢印の記号)等の情報表示部に示されている。スタッドピン(図4(a)参照)は、図3に示される複数のピン埋め込み用孔29に装着される。
傾斜溝32は、タイヤ周方向(図3の上下方向)に所定の間隔で複数形成されている。
傾斜溝32は、タイヤ回転方向X(図3では、下方向)と逆方向(図3では、上方向)に、かつタイヤ幅方向外側に延びている。傾斜溝32は、タイヤ赤道線CLの、タイヤ幅方向Wの一方の側の、タイヤ赤道線CLの近傍の位置を始端として、タイヤ赤道線CLを横切って、タイヤ幅方向Wの他方の側に向かって進み、パターンエンドPEに至る。
傾斜溝32の溝幅は、タイヤ赤道線CLの近傍の始端から徐々に大きくなっている。傾斜溝32のタイヤ幅方向Wに対する傾斜は、始端を含むタイヤ赤道線CL近傍で最も小さく、タイヤ赤道線CLを横切った後、タイヤ幅方向Wに対する傾斜角度が大きくなるように屈曲してタイヤ幅方向外側で、タイヤ回転方向Xと逆方向に進む。さらに、タイヤ幅方向外側に進むに連れて上記傾斜角度は、徐々に小さくなっている。このような傾斜溝32は、タイヤ赤道線CLの両側に設けられる。
トレッド部のタイヤ赤道線CLを挟んだ一方の側に設けられる傾斜溝32は、他方の側に設けられる傾斜溝32に対してタイヤ周方向Cに対して位置ずれしており、一方の側に設けられる傾斜溝32の始端は、他方の側に設けられる傾斜溝32と接続されない構成となっている。
傾斜溝32、周方向連絡溝34、及び突出溝36の溝深さは、例えば8.5〜10.5mmであり、溝幅の最大幅は12mmである。図3に示すトレッドパターンは一例であり、本実施形態のスタッドピンを装着するタイヤのトレッドパターンは、図3に示す形態に限定されない。
図4(a),(b)は、本実施形態のスタッドピン50の外観斜視図と平面図である。
スタッドピン50は、チップ52と、ボディ部54と、下部フランジ56と、を備える。ボディ部54は、上部フランジ58と、シャンク部60と、を備える。ボディ部54及び下部フランジ56は、タイヤ10のピン埋め込み用孔29に装着されるとき、トレッドゴム18(図1)に埋設されてトレッドゴム18と接触する。
ボディ部54の上部フランジ58は、タイヤ10のトレッド部に埋め込まれる時、トレッド表面からチップ52が突出するように構成されている。チップ52は、ボディ部54の上端面54aで固定される。
下部フランジ56は、タイヤ10のトレッド部に埋め込まれる時、ピン埋め込み用孔29の底に接触するように構成されている。下部フランジ56は、ボディ部54の上端面54aと反対側のシャンク部60の端に接続されている。
シャンク部60は、上部フランジ58と下部フランジ56を接続する部分で、シャンク部60の、方向Hに直交する断面は、上部フランジ58及び下部フランジ56それぞれの断面に比べて細い。
ボディ部54の材料は特に制限されないが、チップ52の材料と異なっていることが好ましい。一実施形態によれば、ボディ部54は、スタッドピン50の軽量化のためにアルミニウム合金等で構成される。
一例によれば、上部フランジ58の輪郭形状は、図4(b)に示す例のように、複数のボディ直線部のみで構成されることが好ましい。しかし、一実施形態によれば、上部フランジ58の輪郭形状は、円形状、楕円形状、複数の円弧形状を組み合わせた曲線形状、の一部を直線形状に変更した形状であることも好ましく、凸多角形形状、凹多角形形状の一部を、凸部を成した円弧形状、凹部を成した円弧形状、あるいは凹凸を成した波線形状に変更した形状であることも好ましい。
一例によれば、ボディ輪郭形状は、図4(b)に示すように、長手方向Lのボディ輪郭形状の長さと短手方向Sのボディ輪郭形状の長さが異なる異方性形状であることが好ましい。
ここで、第1フランジ凸部F1とは、第1最小矩形100の中心(2つの対角線の交点)を通る短手方向Sに平行な直線から短辺100aまでの距離の半分以上、上記平行な直線から長手方向Lに離れた領域内にあって、長手方向Lに対して凸形状を成した部分を意味する。凸形状とは、フランジ輪郭形状62のある点からフランジ輪郭形状62の外周に沿って両側に進むほど上記平行な直線(第1最小矩形100の中心を通る短手方向Sに平行な直線)に近づく部分の形状をいう。
第2フランジ凸部F2とは、第1最小矩形100の中心(2つの対角線の交点)を通る長手方向Lに平行な直線から長辺100bまでの距離の半分以上、上記平行な直線から短手方向Sに離れた領域内にあって、短手方向Sに対して凸形状を成した部分である。凸形状とは、フランジ輪郭形状62のある点からフランジ輪郭形状62の外周に沿って両側に進むほど上記平行な直線(第1最小矩形100の中心を通る長手方向Lに平行な直線)に近づく部分の形状をいう。
また、一実施形態によれば、下部フランジ56のフランジ輪郭形状62は、5つ、6つ、あるいは7つの第1フランジ凸部F1と、2つの第2フランジ凸部F2と、を備えることも好ましい。この場合、長手方向Lの第1の方向に向く第1フランジ凸部F1の数と、第2の方向に向く第1フランジ凸部F1の数は、同じであってもよく、あるいは異なってもよい。
図6に、スタッドピン50を、スタッドピン装着装置の装着フィンガーで把持した状態の例を示す。
装着フィンガー70が下部フランジ56を把持した状態では、スタッドピン50の中心軸(下部フランジ56またはボディ部54の図心を通ってボディ部54の延在方向に延びる軸線)Zが傾く場合がある。下部フランジ56は、装着フィンガー70の先端部70aで把持されるため、スタッドピン50が傾くと、装着フィンガー70の先端部70aから離れた部分(装着フィンガーの腹とも呼ばれる。図6において楕円で囲んだ部分)70bに上部フランジ58が接触する。装着フィンガー70の腹70bに接触した上部フランジ58の部位が凹部又は凸部になっていると、装着フィンガー70の腹70bに沿って上部フランジ58が滑るように容易に動くため、スタッドピン50は姿勢を崩しやすい。スタッドピン50が姿勢を崩すと、スタッドピン50を目標とする向き(中心軸Zの周りの方位)に揃え難くなり、スタッドピン50がタイヤに対して正しい向きで装着されない可能性が高くなる。
本実施形態では、装着フィンガーによって把持されやすい下部フランジ56の凸部間部分と対向するようボディ直線部が設けられている。このため、スタッドピン50が傾いて上部フランジ58が装着フィンガーの腹に接触しても、装着フィンガーの腹に沿って上部フランジ58が滑るように動くことが抑制され、スタッドピン50を安定して把持することができる。そのため、スタッドピン50を目標とする向きに揃えやすく、スタッドピン50がタイヤに対して正しい向きで装着され易くなる。
このように、本実施形態のスタッドピン50は、ピン打ち込み性に優れている。
具体的に、氷上路面からスタッドピン50がせん断力を受けても、下記説明するように、スタッドピン50とピン埋め込み用孔29との間の隙間が形成され難いので、スタッドピン50はピン埋め込み用孔29内で位置の変動が生じ難い(ぐらぐらしない)。このため、スタッドピン50はピン埋め込み用孔29から抜け落ち難い他、氷上路面からスタッドピン50が受けたせん断力はベルト14に効率よく伝達され、さらに、スタッドタイヤ10全体、さらには、スタッドタイヤ10を装着した車両に伝達されるので、氷上路面での制駆動性あるいは操縦性が向上する。
具体的には、下部フランジ56のフランジ輪郭形状62は、長辺100bに沿って大きな第2フランジ凸部F2を備えるので、氷上路面からせん断力を受けたスタッドピン50が傾斜してピン埋め込み用孔から抜け出す動きを阻止する保持力が高くなる。このため、スタッドピン50は、ピン埋め込み用孔29から抜け難い。
一方、スタッドピン50は、スタッドタイヤから抜け落ちるとき、スタッドピン50が、孔に対して回転しながら抜け落ちる。すなわち、スタッドピン50がピン埋め込み用孔29から抜け落ちる前に、スタッドピン50はピン埋め込み用孔29内で回転する。一般に、スタッドピン50は、氷上路面からせん断力を受けると、スタッドピン50が装着されたピン埋め込み用孔29に対して転倒するように傾斜することで、この孔29によるスタッドピン50の締め付け力は低下する。これにより、ピン埋め込み用孔29内でスタッドピンがその中心軸Z周りに回転し易くなる。さらに、氷上路面から大きなせん断力を受けると、ピン埋め込み用孔29の締め付け力の低下によってスタッドピン50は、スタッドピン50が中心軸Z周りに回転する。この回転に伴って、氷上路面から受けるせん断力に対してピン埋め込み用孔29あるいはトレッドゴム18がスタッドピン50をピン埋め込み用孔29内に保持しようとする抗力は低下して、ピン埋め込み用孔29から抜け易くなる。しかし、スタッドピン50の下部フランジ56のフランジ輪郭形状62は第1フランジ凸部F1を4つ備え、凹凸が複数存在し、この凹凸に対応して変形したトレッドゴム18が変形した状態で下部フランジ56を締め付けてピン埋め込み用孔29に固定するので、氷上路面からせん断力を受けて転倒する方向にスタッドピン50が傾斜することによって生じるスタッドピン50とピン埋め込み用孔29との間の隙間が形成され難い。このため、トレッドゴム18(ピン埋め込み用孔の内壁面)による下部フランジ56の強い締め付けは維持され、スタッドピン50の抜け落ちの初期要因となるピン埋め込み用孔29内でのスタッドピン50の回転を抑制することができる。下部フランジの輪郭形状が上述した非円弧形状である従来のスタッドピンは、スタッドピンの抜け落ちを防止するために、スタッドピンが孔に対して回転しないよう機能するが、本実施形態のスタッドピン50は、そのような非円弧形状である従来のスタッドピンに比べてよりいっそうスタッドピン50の抜け落ちを抑制することができる。
一実施形態によれば、図5に示すように、第1フランジ凸部F1は、2対の第1フランジ凸部F1で構成される。すなわち、図5の紙面において、長手方向Lのうち上方向に突出した2つの第1フランジ凸部F1を1つの対とし、長手方向Lのうち下方向に突出した2つの第1フランジ凸部F1をもう1つの対とする。このとき、ボディ輪郭形状は、ボディ直線部として、対それぞれの第1フランジ凸部F1の間のフランジ輪郭形状の部分と対向するように設けられた2つのボディ直線部B1を備えることが好ましい。このとき、さらに、第2フランジ凸部F2それぞれと第1フランジ凸部F1の1つとの間に挟まれるフランジ輪郭形状の部分と対向するように設けられた4つのボディ直線部B2を備えることが好ましい。
下部フランジ56のフランジ輪郭形状62は第2フランジ凹部F4を4箇所に備えることにより、フランジ輪郭形状62の周に沿って4つの窪みができる。また、下部フランジ56のフランジ輪郭形状62は第1フランジ凹部F3を2箇所に備えることにより、フランジ輪郭形状62の周に沿って2つの窪みができる。このため、スタッドピン50をピン埋め込み用孔29に埋め込むときに用いるスタッドピン装着装置の装着フィンガーが、スタッドピン50の下部フランジ56を把持し易い。すなわち、装着フィンガーは、異方性形状の下部フランジ56を把持する時、異方性形状の向きが適切な向きになるように把持してスタッドピン50をピン埋め込み用孔29に埋め込むことができ、ピン打ち込み性が向上する。
また、下部フランジ56のフランジ輪郭形状62は第1フランジ凹部F3を備えることにより、下部フランジ56がピン埋め込み用孔29の内壁面と接触する、短手方向Sに沿った接触面の面積を大きくすることができ、スタッドピン50がピン埋め込み用孔29から抜け出す動きを阻止する保持力は向上する。このため、スタッドピン50のピン埋め込み用孔29からの抜け落ちは抑制される。
一実施形態によれば、第1フランジ凹部F3の湾曲形状及び第2フランジ凹部F4の湾曲形状は、曲率半径によって定まる円弧形状であることが好ましい。第1フランジ凹部F3の湾曲形状及び第2フランジ凹部F4の湾曲形状が単一の曲率半径で形成されている場合、第1フランジ凹部F3の曲率半径は、第2フランジ凹部F4の曲率半径以下であることが好ましい。例えば、第1フランジ凹部F3の曲率半径は、第2フランジ凹部F4の曲率半径の50%以下であることが上記保持力を向上させる点で好ましい。
図8(a)は、下部フランジ56の短手方向Sがタイヤ幅方向Wに向き、長手方向Lがタイヤ周方向Cに向くように配置方向を定めて、ピン埋め込み用孔29に埋め込む例である。図8(b)は、下部フランジ56の長手方向Lがタイヤ幅方向Wに向き、短手方向Sがタイヤ周方向Cに向くようにスタッドピン50の配置の向きを定めて、ピン埋め込み用孔29に埋め込む例である。ここで、下部フランジ56の長手方向Lまたは短手方向Sがタイヤ幅方向Wに向くとは、下部フランジ56の長手方向Lまたは短手方向Sが、タイヤ幅方向Wに対して所定の角度範囲(例えば、15度以内)で傾斜していることをいう。
また、一実施形態によれば、トレッド部のタイヤ赤道線CL側の内側領域に装着するスタッドピン50の向きを、図8(a),(b)に示すいずれか一方の向きに定め、この内側領域に対してタイヤ幅方向外側にある外側領域に装着するスタッドピン50の向きを、図8(a),(b)に示す残りの向きに定めることも好ましい。トレッド部のタイヤ幅方向の位置で、制駆動性及び操縦性に与える影響度が異なるため、効率よく制駆動性及び操縦性を向上させるには、スタッドピン50を装着するタイヤ幅方向の位置に応じて、図8(a),(b)に示すスタッドピン50のいずれか一方の向きを択一的に選択することが好ましい。
下部フランジのフランジ輪郭形状およびボディ部のボディ輪郭形状が異なるスタッドピンを種々作製し、作製したスタッドピンを図1〜3に示すタイヤ10に埋め込んでスタッドタイヤを作製し、スタッドタイヤを試験車である乗用車に装着して、スタッドピンを評価した。
作製したタイヤのタイヤサイズは、205/55R16とした。乗用車は、排気量2000ccの前輪駆動のセダン型乗用車を用いた。タイヤの内圧条件は、前輪、後輪ともに230(kPa)とした。各タイヤの荷重条件は、前輪荷重を450kg重、後輪荷重を300kg重とした。スタッドピンの評価項目は、以下の通りである。
スタッドピン装着装置の装着フィンガーでスタッドピンを把持してタイヤにスタッドピンを装着し、正常にスタッドピンをピン埋め込み用孔29に装着できた比率を求めた。スタッドピンの装着は、比較例3〜7、及び実施例1〜3に関しては、下部フランジの長手方向がタイヤ周方向を向くことを目標にして行った。従来例、及び比較例1、2に関しては、下部フランジにおいて予め定めた向きがタイヤ周方向を向くことを目標にして行った。スタッドピンがピン埋め込み用孔29に対して斜めに埋め込まれ(上記所定の角度範囲を超えて傾斜して埋め込まれ)、また、ピン埋め込み用孔29に埋め込めなかった回数をNG数とし、タイヤに装着したスタッドピンの全数に対するNG数の比率(%)を100%から差し引いた値を、ピン打ち安定性として求めた。ピン打ち安定性(%)は95%以上であれば、ピン打ち安定性に優れるといえる。
氷上路面上を試験車が走行し、速度30km/時から制動を開始し、5km/時になるまでの走行距離を制動距離として計測した。従来例の制動距離の逆数を基準(指数100)として、各例における制動距離の逆数を指数化した。指数が高いほど、制動距離は短く、氷上制動性が優れていることを意味する。
2名の評価ドライバーそれぞれが、整備されたクローズドコースの氷上路面上を試験車で走行し、操縦性の主観評価を行った。従来例の評価を基準(指数100)として、2名の評点を平均化して指数化した。指数が高いほど、氷上操縦性が優れていることを意味する。
表1,2に記載の“輪郭形状に外接する第1,2最小矩形の形状”とは、図4(b)に示す第1,2最小矩形の形状のいずれか一方の形状をいう。従来例における“円形状”は、第1,2最小矩形の形状ではなく、下部フランジ部のフランジ輪郭形状そのものをいう。比較例3、4及び各実施例における“長方形”の短辺の長さに対する長辺の長さの比は1:1.13とした。
表1,2に記載の“突出部数(第1フランジ凸部F1, 第2フランジ凸部F2)”において、第1フランジ凸部F1の数が偶数の場合は、長手方向の両側の方向に突出した数が同じになるようにした。第2フランジ凸部F2の数はいずれも偶数であり、短手方向Sの両側の方向に突出した数が同じになるようにした。第1フランジ凸部F1の数が3の場合は、長手方向の両側の方向に突出した数が2,1になるようにし、第1フランジ凸部F1の数が5の場合は、長手方向の両側の方向に突出した数が3,2になるようにした。
表2に記載の“ボディ直線部の配置”とは、ボディ輪郭形状に含まれるボディ直線部が、フランジ輪郭形状の凸部間部分と対向して配置されているか否かを意味する。“非対向”とは、全てのボディ直線部が凸部間部分と対向していないことを意味する。“一部対向”とは、比較例7において、4つのボディ直線部のうち、2つのボディ直線部が短手方向を向いていて、凸部間部分と対向しており、残る2つのボディ直線部が長手方向を向いていて、凸部間部分と対向していないことを意味する。“対向”とは、全てのボディ直線部が凸部間部分と対向していることを意味する。なお、第1フランジ凸部F1の数が5である実施例2において、突出した数が3である長手方向の側の2つの凸部間部分と対向するボディ直線部は、共通する1つの直線部とした。
実施例1,3の比較より、フランジ直線部F5を備えることにより、ピン打ち性がさらに優れていることがわかる。
12 カーカスプライ
14 ベルト
14a,14b ベルト材
16 ビードコア
18 トレッドゴム
18a 上層トレッドゴム
18b 下層トレッドゴム
20 サイドゴム
22 ビードフィラーゴム
24 リムクッションゴム
26 インナーライナゴム
28 ベルトカバー層
29 ピン埋め込み用孔
30 トレッドパターン
32 傾斜溝
34 周方向連絡溝
36 突出溝
50 スタッドピン
52 チップ
54 ボディ部
54a 上端面
56 下部フランジ部
58 上部フランジ部
60 シャンク部
62 フランジ輪郭形状
64 ボディ輪郭形状
100 第1最小矩形
100a 辺(短辺)
100b 辺(長辺)
Claims (7)
- スタッダブルタイヤに装着されるスタッドピンであって、
路面と接触するための先端面を有するチップと、
前記チップを一方の側の端面から突出させるように前記チップを保持するボディ部と、
前記ボディ部の前記端面と反対側の端に接続した下部フランジ部と、を備え、
前記チップ、前記ボディ部、及び前記下部フランジ部の配列方向から見た前記下部フランジ部のフランジ輪郭形状は、前記輪郭形状に外接する仮想の矩形のうち、四辺の中で長さの最も短い辺が最小となる第1最小矩形、及び、四辺の中で長さの最も長い辺が最小となる第2最小矩形のうち、少なくともいずれか一方の最小矩形が、長さの異なる短辺及び長辺を備える、異方性形状であり、
前記フランジ輪郭形状は、前記長辺に平行な長手方向に向かって突出する4つ以上の第1フランジ凸部F1と、前記短辺に平行な短手方向に向かって突出する2つの第2フランジ凸部F2と、を備え、
前記配列方向から見た前記ボディ部のボディ輪郭形状は、直線状に延びる複数のボディ直線部を含む形状であり、
前記ボディ直線部は、前記第1フランジ凸部F1および前記第2フランジ凸部F2のうちの前記フランジ輪郭形状の外周に沿って隣り合う2つの凸部の間の前記フランジ輪郭形状の部分と対向するように設けられている、ことを特徴とするスタッドピン。 - 前記第1フランジ凸部F1は、2対の第1フランジ凸部F1で構成され、
前記ボディ輪郭形状は、前記ボディ直線部として、前記対それぞれの第1フランジ凸部F1の間の前記フランジ輪郭形状の部分と対向するように設けられた2つのボディ直線部B1を備え、前記第2フランジ凸部F2それぞれと前記第1フランジ凸部F1の1つとの間に挟まれる前記フランジ輪郭形状の部分と対向するように設けられた4つのボディ直線部B2を備える、請求項1に記載のスタッドピン。 - 前記フランジ輪郭形状は、前記対それぞれに対して、前記対それぞれの第1フランジ凸部F1の間に挟まれるように、前記フランジ輪郭形状の図心に向かって湾曲した第1フランジ凹部F3を2つ備え、前記第2フランジ凸部F2それぞれと前記第1フランジ凸部F1の1つとの間に挟まれるように、前記図心に向かって湾曲し、前記第1フランジ凸部F1の1つに滑らかに接続した第2フランジ凹部F4を4つ備え、
前記ボディ直線部B1は、前記第1フランジ凹部F3と対向するように設けられ、前記ボディ直線部B2は、前記第2フランジ凹部F4と対向するように設けられている、請求項2に記載のスタッドピン。 - 前記2つの第2フランジ凸部F2は、前記長手方向に平行な2つのフランジ直線部を含み、前記フランジ直線部は、前記短手方向に最も突出した部分である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスタッドピン。
- 前記ボディ部は、前記配列方向から見て、前記フランジ輪郭形状の輪郭内に含まれ、
前記ボディ輪郭形状は、前記第2フランジ凸部F2に向かって突出する2つのボディ凸部B4を備え、前記ボディ凸部B4は、互いに接続された2つの前記ボディ直線部B2からなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のスタッドピン。 - 前記ボディ部は、前記配列方向から見て、前記フランジ輪郭形状の輪郭内に含まれ、
前記ボディ輪郭形状は、前記最小矩形の短辺に向かって突出する2つのボディ凸部B3を備え、
前記ボディ凸部B3は、前記ボディ直線部B1を含み、前記ボディ直線部B1は、前記最小矩形の長辺に平行な長手方向に最も突出した部分である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のスタッドピン。 - スタッダブルタイヤに、スタッドピンを装着したスタッドタイヤであって、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のスタッドピンを、前記長手方向または短手方向がタイヤ周方向に向くように装着したトレッド部を備える、ことを特徴とするスタッドタイヤ。
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