JPWO2018147419A1 - 鋳型材料組成物及びこれを用いた鋳型の製造方法 - Google Patents

鋳型材料組成物及びこれを用いた鋳型の製造方法 Download PDF

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Abstract

最終的に得られる鋳型が、優れた強度を発揮すると共に、崩壊性においても優れたものとなる、鋳型材料組成物を提供すること。耐火性骨材と、水ガラスを必須成分とする粘結材と、硝酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群より選ばれた少なくとも一つの硝酸塩とを少なくとも含むようにして、鋳型材料組成物を構成した。

Description

本発明は、鋳型材料組成物及びこれを用いた鋳型の製造方法に係り、特に、最終的に得られる鋳型が、優れた強度を発揮すると共に、崩壊性においても優れたものとなる、鋳型材料組成物と、そのような鋳型材料組成物を用いて鋳型を有利に製造する方法に関するものである。
従来より、金属溶湯の鋳造に用いられる鋳型の一つとして、耐火性骨材からなる鋳型砂を所定の粘結材にて被覆してなる鋳型材料組成物を用いて、目的とする形状に造型して得られたものが、用いられている。具体的には、日本鋳造工学会編の「鋳造工学便覧」第78〜90頁には、そのような鋳型材料組成物における粘結材として、水ガラスの如き無機系粘結材の他、フェノール樹脂やフラン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を用いた有機系粘結材が明らかにされており、また、それら粘結材を用いて自硬性鋳型を造型する手法も、明らかにされている。
また、特開2012−076115号公報(特許文献1)においては、粘結材として水ガラスを用いた粘結材コーテッド耐火物として、水ガラスを含有する固形のコーティング層にて耐火性骨材の表面を被覆してなる、流動性が良好な粘結材コーテッド耐火物(鋳型材料組成物)が、明らかにされている。そこにおいて、そのような流動性が良好な粘結材コーテッド耐火物(鋳型材料組成物)は、鋳型造型のための成形型の成形キャビティ内に充填せしめられた後、水蒸気が通気せしめられることにより、かかる粘結材コーテッド耐火物(鋳型材料組成物)の固化が進行し、目的とする鋳型を与え得ることが、明らかにされているのである。
ところで、流動性が良好な乾態の鋳型材料組成物を用いて鋳型を造型する場合にあっては、そのような鋳型材料組成物を水蒸気等の水分で濡らした後、それを乾燥することによって固化せしめることにより、目的とする鋳型の造型が行われることとなる。そしてその後、その得られた鋳型に対して、アルミ合金等の溶湯を流し込んで、鋳物が形成されることとなるのであるが、その鋳物の鋳型からの取出しには、溶湯の熱により、かかる鋳型を崩壊させる必要がある。しかしながら、水ガラスを用いた粘結材にて造型された鋳型では、例えばフェノール樹脂等の有機粘結材を用いた場合の様に、溶湯の熱によって、有機粘結材を燃焼又は炭化させることで、粘結力をなくし、崩壊を促すということが出来ない。また、有機粘結材の場合、熱により酸素を発生させて燃焼を促進させる崩壊性向上剤等を用いることがあるが、水ガラスは溶湯の熱によって燃焼又は炭化は起こらないため、有機粘結材の場合と同じように考えることは出来ない。そのために、鋳造後においても、粘結力が残った状態になることから、崩壊性が悪いという問題を内在するものであった。
特開2012−76115号公報
「鋳造工学便覧」第78〜90頁
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景として為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、最終的に得られる鋳型が、優れた強度を発揮すると共に、崩壊性においても優れ、且つ良好な鋳肌を有する鋳物を与え得るものとなる、鋳型材料組成物を提供することにある。また、本発明は、そのような優れた鋳型材料組成物を用いた鋳型の製造方法を提供することをも、その解決課題とするものである。
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいて採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載から把握され得る発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
(1) (a)耐火性骨材と、
(b)水ガラスを必須成分とする粘結材と、
(c)硝酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群よ
り選ばれた少なくとも一つの硝酸塩と
を少なくとも含むことを特徴とする鋳型材料組成物。
(2) 前記硝酸塩が、鋳型材料組成物における水ガラスの固形分の100
質量部に対して、0.5〜30質量部の割合において含有せしめられ
ていることを特徴とする前記態様(1)に記載の鋳型材料組成物。
(3) 前記硝酸塩が、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム及
び硝酸マグネシウムからなる群から選択されることを特徴とする前記
態様(1)又は前記態様(2)に記載の鋳型材料組成物。
(4) 炭化水素含有化合物が、更に含有せしめられていることを特徴とす
る前記態様(1)乃至前記態様(3)の何れか1つに記載の鋳型材料
組成物。
(5) 前記炭化水素含有化合物が、界面活性剤であることを特徴とする前
記態様(4)に記載の鋳型材料組成物。
(6) 前記界面活性剤が、鋳型材料組成物における水ガラスの固形分の1
00質量部に対して、0.1〜20質量部の割合において含有せしめ
られていることを特徴とする前記態様(5)に記載の鋳型材料組成物

(7) 前記炭化水素含有化合物が、滑剤であることを特徴とする前記態様
(4)に記載の鋳型材料組成物。
(8) 前記滑剤が、鋳型材料組成物における水ガラスの固形分の100質
量部に対して、0.1〜10質量部の割合において含有せしめられて
いることを特徴とする前記態様(7)に記載の鋳型材料組成物。
(9) 炭酸塩及び/又はホウ酸塩が、更に含有せしめられていることを特
徴とする前記態様(1)乃至前記態様(8)の何れか1つに記載の鋳
型材料組成物。
(10) 前記炭酸塩及び/又はホウ酸塩が、鋳型材料組成物における水ガ
ラスの固形分の100質量部に対して、0.5〜50質量部の割合に
おいて含有せしめられていることを特徴とする前記態様(9)に記載
の鋳型材料組成物。
(11) 前記耐火性骨材が、球状である前記態様(1)乃至前記態様(1
0)の何れか1つに記載の鋳型材料組成物。
(12) 前記鋳型材料組成物が、前記耐火性骨材の表面を前記水ガラスを
含む被覆層にて覆ってなる、常温流動性を有する乾態の混合物であり
、且つ該混合物における含水分量が、前記水ガラスの固形分量の5〜
55質量%であることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(1
1)の何れか1つに記載の鋳型材料組成物。
(13) 予め加熱された耐火性骨材に対して、水ガラスを必須成分とする
粘結材と、硝酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群
より選ばれた少なくとも一つの硝酸塩とを混和せしめ、水分を蒸発さ
せることにより、かかる耐火性骨材の表面に該粘結材の被覆層を形成
すると共に、その含水分量が水ガラスの固形分量の5〜55質量%と
なる、常温流動性を有する乾態の混合物として、取り出すようにした
ことを特徴とする鋳型材料組成物の製造方法。
(14) 前記態様(13)に記載の製造方法で得られた乾態の鋳型材料組
成物を用い、これを、成形型内に充填した後、水蒸気を通気させて、
かかる成形型内で保持し、固化乃至は硬化せしめることにより、目的
とする鋳型を得ることを特徴とする鋳型の製造方法。
(15) 前記成形型が、80℃〜200℃の温度に加熱されていることを
特徴とする前記態様(14)に記載の鋳型の製造方法。
(16) 前記態様(13)に記載の製造方法で得られた乾態の鋳型材料組
成物を用い、これに水を添加して湿態化させ、その湿態状のコーテッ
ドサンドを成形型内に充填した後、かかる成形型内で保持し、固化乃
至は硬化せしめることにより、目的とする鋳型を得ることを特徴とす
る鋳型の製造方法。
(17) 前記成形型が、80℃〜300℃の温度に加熱されていることを
特徴とする前記態様(16)に記載の鋳型の製造方法。
(18) 前記鋳型材料組成物の前記成形型での保持中に、かかる成形型内
に、熱風または過熱水蒸気が通気せしめられることを特徴とする前記
態様(14)乃至前記態様(17)の何れか1つに記載の鋳型の製造
方法。
(19) (a)耐火性骨材と、(b)水ガラスを必須成分とする粘結材と
、(c)硝酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群よ
り選ばれた少なくとも一つの硝酸塩とを、混和せしめることにより、
湿態の混合物として取り出すようにしたことを特徴とする鋳型材料組
成物の製造方法。
(20) 前記態様(19)に記載の製造方法で形成されてなる湿態の鋳型
材料組成物を用い、これを、加熱された成形型内に充填した後、かか
る成形型内で保持し、固化乃至は硬化せしめることにより、目的とす
る鋳型を得ることを特徴とする鋳型の製造方法。
(21) 前記成形型が、80℃〜300℃の温度に加熱されていることを
特徴とする前記態様(20)に記載の鋳型の製造方法。
(22) 前記態様(1)乃至前記態様(12)の何れか1つに記載の鋳型
材料組成物を用いて積層造形して、目的とする鋳型を形成することを
特徴とする鋳型の製造方法。
このように、本発明に従う鋳型材料組成物にあっては、粘結材としての水ガラスと共に、所定の硝酸塩が含有せしめられているところから、そのような鋳型材料組成物を用いて造型された鋳型によって、所定の金属溶湯を鋳造するに際して、かかる水ガラスにて形成される耐火性骨材表面の粘結膜に分散された硝酸塩が溶湯の熱によって分解して、酸素や二酸化窒素ガス等を発生することにより、この水ガラスの粘結膜中に発生したガスによって亀裂を生じさせ、水ガラスの粘結膜が破壊されるようになることで、かかる鋳型を崩壊し易くすることが出来ることとなるのである。また、そのような二酸化窒素ガスは、水ガラス中に残留している水分と結び付き、硝酸を発生させて、水ガラスの珪酸ナトリウムを中和し、ガラス化することによって、水ガラスを脆くする効果が得られ、以て打撃等で鋳型を崩壊し易くすることが出来るのである。しかも、そのような発生するガスによるフィルム効果によって、鋳型と溶湯の間にガス膜が形成されることにより、鋳型面の平滑性が有利に高められ、以て得られる鋳物の鋳肌が有利に向上する特徴も発揮されることとなる。更に、硝酸塩に、炭酸塩及び/又はホウ酸塩を組み合わせることにより、鋳型の崩壊性が更に向上させられ得ると共に、鋳型の耐湿性を向上させて、吸湿による強度劣化を抑制することが可能となる。
実施例において中子の崩壊性を測定するために用いた鋳造試験用砂型の縦断面説明図である。 実施例において廃中子を内包したアルミニウム合金鋳物の縦断面説明図である。
ところで、本発明に従う鋳型材料組成物は、一般に、1)耐火性骨材に対して、水ガラスを必須成分とする粘結材と硝酸塩とを混和せしめ、そしてその混合物から水分を蒸発させることにより、換言すれば水溶液の状態にある水ガラスの水分を蒸発させることによって製造されるものであり、粘結材である水ガラスの固形分からなる乾燥した被覆層が、所定厚さにおいて、かかる耐火性骨材の表面に形成されてなる、乾態のものである場合と、2)耐火性骨材に対して、水ガラスを必須成分とする粘結材と硝酸塩とを混和せしめることにより製造されるものであり、具体的には水溶液の状態にある水ガラスと耐火性骨材とを混練させることによって形成されてなる湿態のものである場合とがあり、乾態では良好な常温流動性を有しているのに対して、湿態では、そのような常温流動性は有していないものである。なお、本発明に係る鋳型材料組成物は、乾態及び湿態の何れの場合でも、適用可能であるが、現場での取り扱いの容易さや崩壊性の良さ等の点から、乾態の方が望ましいと言うことが出来る。
ここで、本発明における「常温流動性を有する乾態の鋳型材料組成物」とは、含水分量に拘わらず、動的安息角を測定した際に、測定値が得られる鋳型材料組成物を意味するものである。この動的安息角とは、軸方向の一方の端部が透明な板材で閉塞されてなる円筒内に鋳型材料組成物を収容して(例えば、直径7.2cm×高さ10cmの容器に、その体積の半分まで、鋳型材料組成物を入れる)、軸心が水平方向となるように保持し、一定速度(例えば、25rpm)で水平な軸心回りに回転させることにより、円筒内で流動している鋳型材料組成物層の斜面が平坦面状となり、かかる斜面と水平面との間に形成される角度をいう。この動的安息角は80°以下が好ましく、45°以下がより好ましく、30°以下が更に好ましい。特に、耐火性骨材が球状である場合において、45°以下の動的安息角が容易に実現され得るのである。なお、鋳型材料組成物が湿った状態で、円筒内で流動せずに、鋳型材料組成物層の斜面が平坦面として形成されず、その結果、動的安息角を測定することが出来ないものは、湿態の鋳型材料組成物に分類することとする。
本発明に従う常温流動性を有する乾態の鋳型材料組成物は、その含水分量が、耐火性骨材の表面を覆う被覆層に含まれる粘結材を構成する水ガラスの固形分量に対して、5〜55質量%の割合に相当する量であることが望ましく、10〜50質量%であることがより望ましく、特に20〜50質量%であることが最も望ましい。この鋳型材料組成物における含水分量が、被覆層中の水ガラスの固形分量に対して5質量%に相当する量よりも少なくなると、水ガラスがガラス化して、鋳型造型の際に再び水を添加しても、溶液状に戻らない恐れがあり、一方55質量%に相当する量よりも多くなると、鋳型材料組成物が乾態状態とはならない恐れがある。なお、鋳型材料組成物における含水分量の測定方法としては、特に限定されるものではなく、水ガラスや硝酸塩等の種類に応じた、公知の手法が、適宜に採用可能である。具体的には、後掲の実施例の欄に記載の測定方法を、例示することが出来る。
一方、本発明に従う湿態の鋳型材料組成物にあっては、その含水分量が、粘結材としての水ガラスの固形分量に対して、70〜400質量%の割合に相当する量であることが望ましく、中でも80〜300質量%であることがより望ましく、90〜200質量%であることが最も望ましい。この鋳型材料組成物における含水分量が、水ガラスの固形分量に対して70質量%に相当する量よりも少なくなると、水ガラスの粘度が高くなり、混練の際に均一に混ざりにくくなって、均一な鋳型が得られなくなる。一方、400質量%に相当する量よりも多くなると、鋳型材料組成物がスラリー状になる可能性があり、その結果成形型内に充填出来なくなる可能性がある。また、充填出来たとしても、成形型内での乾燥に時間がかかる恐れがある。
ここにおいて、本発明の鋳型材料組成物を構成する耐火性骨材としては、鋳型の基材として機能する耐火性物質であって、従来から鋳型用として利用されている各種の耐火性粒状乃至は粉状材料が何れも用いられ得、具体的には、ケイ砂、再生ケイ砂を初めとして、アルミナサンド、オリビンサンド、ジルコンサンド、クロマイトサンド等の特殊砂や、フェロクロム系スラグ、フェロニッケル系スラグ、転炉スラグ等のスラグ系粒子;アルミナ系粒子、ムライト系粒子等の人工粒子及びこれらの再生粒子;アルミナボール、マグネシアクリンカー等を挙げることが出来る。なお、これらの耐火性骨材は、新砂であっても、或いは、鋳物砂として鋳型の造型に一回或いは複数回使用された再生砂または回収砂であっても、更には、そのような再生砂や回収砂に新砂を加えて混合せしめてなる混合砂であっても、何ら差支えない。そして、そのような耐火性骨材は、一般に、AFS指数で40〜200程度の粒度のものとして、好ましくは、50〜150程度の粒度のものとして、用いられることとなる。また、耐火性骨材は、球状のものであることが好ましく、具体的には粒形係数が1.2以下、より好ましくは1.0〜1.1であることが望ましい。この粒形係数が1.2以下である耐火性骨材を用いることにより、流動性や充填性が良くなって、骨材同士の接点数が多くなるところから、同じ強度を発現するために必要な粘結材の量や添加物量を少なくすることが出来る。なお、ここで用いられる骨材の粒形係数は、一般に、粒子の外形形状を示す一つの尺度として採用され、粒形指数とも称されるものであって、その値が1に近付く程、球形(真球)に近付くことを意味しているものである。そして、そのような粒形係数は、公知の各種の手法で測定された砂表面積を用いて算出された値にて表わされるものであって、例えば、砂表面積測定器(ジョージ・フィッシャー社製)を用いて、1gあたりの実際の砂粒の表面積を測定し、それを、理論的表面積で除した値を意味するものである。なお、理論的表面積とは、砂粒が全て球形であると仮定した場合の表面積である。
また、本発明に係る鋳型材料組成物においては、上述の如き耐火性骨材に配合せしめられる粘結材として、水ガラスを必須成分とするものが用いられることとなる。ここで、水ガラスとは、水溶性のケイ酸化合物であり、そのようなケイ酸化合物としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸アンモニウム等を挙げることが出来るが、それらの中でも、特にケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)が、本発明では有利に用いられることとなる。また、粘結材としては、水ガラスを必須成分として用いる限りにおいて、種々の水溶性バインダ、例えば、熱硬化性樹脂、糖類、タンパク質、合成高分子、塩類や無機高分子等を併用することが可能である。なお、他の水溶性バインダを水ガラスと併用する場合、粘結材全体における水ガラスの割合は、固形分基準において、60質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90%質量以上である。
さらに、上記のケイ酸ナトリウムは、通常、SiO2 /Na2O のモル比により、1号〜5号の種類に分類されて、用いられている。具体的には、ケイ酸ナトリウム1号は、SiO2 /Na2O のモル比が2.0〜2.3であるものであり、またケイ酸ナトリウム2号は、SiO2 /Na2O のモル比が2.4〜2.6であるものであり、更にケイ酸ナトリウム3号は、SiO2 /Na2O のモル比が2.8〜3.3であるものである。加えて、ケイ酸ナトリウム4号は、SiO2 /Na2O のモル比が3.3〜3.5であるものであり、またケイ酸ナトリウム5号は、SiO2 /Na2O のモル比が3.6〜3.8であるものである。これらの中で、ケイ酸ナトリウム1号〜3号は、JIS−K−1408にても規定されている。そして、これら各種のケイ酸ナトリウムは、本発明において、単独での使用の他、混合して用いられても良く、また混合することで、SiO2 /Na2O のモル比を調製することも可能である。
そして、本発明においては、目的とする鋳型材料組成物を有利に得るべく、粘結材として用いられる水ガラスを構成するケイ酸ナトリウムは、SiO2 /Na2O のモル比が、一般に1.9以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.1以上であることが望ましく、上記したケイ酸ナトリウムの分類において、1号及び2号に相当するケイ酸ナトリウムが、特に有利に用いられることとなる。かかるケイ酸ナトリウム1号及び2号は、それぞれ、水ガラス中のケイ酸ナトリウム濃度が広い範囲においても、安定して、特性の良好な鋳型材料組成物を与えるものである。また、そのようなケイ酸ナトリウムにおけるSiO2 /Na2O のモル比の上限は、水溶液の形態にある水ガラスの特性に応じて適宜に選定されることとなるが、一般に、3.5以下、好ましくは3.2以下、より好ましくは2.7以下とされることとなる。ここで、SiO2 /Na2O のモル比が1.9よりも小さくなると、特に乾態の場合に、水ガラスの粘性が低くなり、水分量をかなり低くしなければ、鋳型材料組成物を乾態とすることが困難となる恐れがあり、その一方、3.5よりも大きくなると、水への溶解度が低下して、接着面積が稼げず、最終的に得られる鋳型の強度が低下する恐れがある。
また、本発明において用いられる水ガラスは、水に溶けた状態のケイ酸化合物の溶液のことを意味し、市場において購入されたままの原液の状態において用いられる他、そのような原液に水を添加して、希釈した状態において用いられることとなる。そして、そのような水ガラスから、水や溶剤等の、揮発する物質を除いた不揮発分(水ガラス成分)を固形分と言い、これが、上記したケイ酸ナトリウム等の可溶性のケイ酸化合物に相当するものである。また、そのような固形分(不揮発分)の割合が高い程、水ガラス中のケイ酸化合物濃度は、高くなるものである。従って、本発明において用いられる水ガラスの固形分とは、それが原液のみにて構成される場合においては、かかる原液中の水分量を除いた量に相当することとなり、一方、原液を水にて希釈して得られる希釈液が用いられる場合にあっては、原液中の水分量と希釈に用いられた水の量とを除いた量が、使用される水ガラスの固形分に相当することとなる。
さらに、そのような水ガラス中の固形分は、水ガラス成分(可溶性ケイ酸化合物)の種類等に応じて適宜の割合とされることとなるが、有利には、20〜50質量%の割合において含有せしめられていることが望ましい。この固形分に相当する水ガラス成分を適度に水溶液中に存在せしめることによって、耐火性骨材との混合(混練)時に、かかる耐火性骨材に対して、乾態においてはムラなく、均一に、水ガラス成分の被覆を形成することが出来、また湿態においてはムラなく、均一に、骨材と水ガラスを混合することが出来、それによって、目的とする鋳型を有利に造型することが可能となる。なお、水ガラス中における水ガラス成分の濃度が低くなり過ぎて、固形分の合計量が20質量%未満となると、乾態においては、鋳型材料組成物の乾燥のために、加熱温度を高くしたり、加熱時間を長くしたりする必要があり、そのために、エネルギーロス等の問題が惹起されるようになる。湿態においては、成形型内での加熱による時間が長くなり、鋳型の造型サイクルの長期化の問題が惹起される。また、水ガラス中における固形分の割合が高くなり過ぎると、乾態においては耐火性骨材の表面を、水ガラス成分にて均一に被覆することが困難となり、湿態においては水ガラスの粘度が高くなり過ぎて、ムラなく、均一に骨材と水ガラスを混合することが困難となり、目的とする鋳型の特性の向上にも問題を惹起するところから、かかる固形分は50質量%以下、従って水分量が50質量%以上の割合となるように、水溶液の形態にある水ガラスを調製することが望ましい。
そして、かかる水ガラスは、耐火性骨材の100質量部に対して、不揮発分のみとして考えた場合の固形分換算で0.1〜5.0質量部の割合において用いられることが望ましく、中でも、0.3〜4.0質量部の割合が特に有利に採用される。ここで、固形分の測定は、以下のようにして実施される。即ち、アルミ箔製の試料皿(縦:9cm、横:9cm、高さ:1.5cm)内に、試料10gを収容して秤量し、180±1℃に保持した加熱板上に置き、20分間放置した後、かかる試料皿を反転させて、更に20分間、上記加熱板上に放置する。その後、試料皿を加熱板上から取り出して、デシケータ中で放冷した後、秤量を行って、次式により、固形分(質量%)が算出される。
固形分(質量%)=
{[乾燥後の試料皿の質量(g)−試料皿の質量(g)]
/[乾燥前の試料皿の質量(g)−試料皿の質量(g)]}×100
なお、本発明において、水ガラスの使用量が少なくなり過ぎると、乾態においては耐火性骨材の表面に被覆層が形成され難くなり、湿態においては骨材を水溶液状の水ガラスで覆うことが出来なくなり、鋳型造型時の鋳型材料組成物の固化乃至は硬化が充分に進行し難くなる恐れがある。また、水ガラスの使用量が多くなり過ぎても、乾態においては耐火性骨材の表面に、余分な量の水ガラスが付着して、均一な被覆層が形成され難くなると共に、鋳型材料組成物が相互に固着して団塊化(複合粒子化)する恐れもあり、湿態においては余分な量の水ガラスが鋳型造形時にムラとなって、鋳型の均一な物性を妨げる恐れもあり、そのために、最終的に得られる鋳型の物性に悪影響をもたらし、加えて、金属を鋳込んだ後の中子の砂落としを難しくする問題も惹起する恐れがある。
そして、本発明に従う鋳型材料組成物においては、その調整によって、耐火性骨材の表面を覆う水ガラス(被覆層)中に、所定の硝酸塩が存在せしめられているところに、大きな技術的特徴が存しているのである。即ち、水ガラス中に所定の硝酸塩が分散して存在せしめられていることにより、その水ガラス中の硝酸塩が溶湯の熱によって分解して、二酸化窒素ガス等の窒素酸化物のガスや酸素等を発生せしめ、そして、その発生したガスにて、耐火性骨材表面に存在する水ガラスからなる粘結膜に亀裂を発生せしめ、水ガラスの粘結膜を壊すことで、鋳型を崩壊し易くすることが出来る。更に、水ガラス中の水分との反応により発生する硝酸によって、水ガラスの珪酸ナトリウムを中和して、ガラス化することにより、脆くする効果が得られ、以て、打撃等で鋳型をより一層崩壊し易くすることが出来ることとなるのである。更にまた、発生するガスによるフィルム効果によって、鋳型と溶湯の間にガス膜を作ることにより、鋳型面の平滑性が有利に高められ、以て、得られる鋳物の鋳肌を効果的に向上せしめることも出来ることとなる。
ここにおいて、本発明において鋳型材料組成物に含有せしめられる、上述の如き所定の硝酸塩の量は、水ガラスの固形分量の100質量部に対して、0.5〜30質量部であることが望ましく、中でも1〜25質量部が好ましく、特に3〜20質量部であることが好ましい。この含有せしめられる硝酸塩の量が少な過ぎると、上記した効果を有利に享受することが出来ない恐れがあり、その一方、硝酸塩の量が多過ぎても、その使用量に応じた効果の向上が認められず、更には、費用対効果の観点より得策ではない。本発明においては、かかる所定の硝酸塩として、アルカリ金属硝酸塩である硝酸ナトリウム、硝酸カリウムやアルカリ土類金属硝酸塩である硝酸カルシウム、硝酸マグネシウムが好適なものとして挙げられ、これらを、単独で、又は2種類以上を混合して、用いることが可能である。特に、水ガラスへの溶解性が高い点から、硝酸ナトリウムや硝酸カリウムの採用が、推奨される。これらの硝酸塩は、水ガラスと混ざり易い性質を有しているため、鋳型の造形の際に、水ガラスの粘結膜中に硝酸塩を均一に分散することが出来る。
ところで、本発明の鋳型材料組成物においては、その鋳型材料組成物中に、上述した硝酸塩等の他にも、必要に応じて、公知の各種添加剤を適宜に含有せしめることも可能である。特に、硝酸塩に、炭化水素含有化合物を組み合わせて用いることが好ましく、かかる炭化水素含有化合物の有機分と硝酸塩とが反応することにより、当該鋳型材料組成物を用いて造型された鋳型の崩壊性は、更に向上させられ得るのである。なお、この炭化水素含有化合物としては、炭化水素基を含有した化合物であれば何れでも良いが、好ましいものとしては、具体的に、界面活性剤や滑剤等を挙げることが出来る。
そのような添加剤としての界面活性剤が、鋳型材料組成物に添加含有せしめられていることにより、硝酸塩から発生する酸素と反応し、燃焼することによって、より崩壊性が向上せしめられることとなるのである。また、界面活性剤の存在によって、水の浸透性、換言すれば水への濡れ性が、優れたものとなっているのである。このため、特に乾態の鋳型材料組成物に対して、鋳型造型時に水分が供給されると、その供給された水分と水ガラスとの間を界面活性剤が仲介することにより、少量の水分であっても、鋳型材料組成物全体が効果的に湿態化することとなるのであり、以て、1)鋳型材料組成物への水分の供給時間(例えば、水蒸気によって水分を供給する場合には、水蒸気の通気時間)を必要最低限に抑えることが可能ならしめられ、また2)成形型(成形キャビティ)への水分の供給量が少量に抑えられる結果、造型された鋳型にあっては、成形型からの離型性が優れていることに加えて、優れた強度も発揮する等の効果を、有利に享受することが可能となるのである。
なお、本発明において、鋳型材料組成物に含有せしめられる界面活性剤の量は、水ガラスの固形分量の100質量部に対して、0.1〜20.0質量部であることが望ましく、中でも0.5〜15.0質量部が好ましく、特に0.75〜12.5質量部であることが好ましい。この含有せしめられる界面活性剤の量が少な過ぎると、上記した効果を有利に享受することが出来ない恐れがあり、その一方、界面活性剤の量が多過ぎても、その使用量に応じた効果の向上が認められず、更には、費用対効果の観点より得策ではない。
そのような界面活性剤としては、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤の何れをも、用いることが出来る。具体的には、陽イオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。また、陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。更に、両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。加えて、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えば、エマルゲン911)、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(例えば、ニューポールPE−62)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。
また、種々の界面活性剤のうち、特に、非極性部位としてシロキサン構造を有するものが、シリコーン系界面活性剤と呼称され、更にパーフルオロアルキル基を有するものが、フッ素系界面活性剤と呼称されているが、その中で、シリコーン系界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコーン、アクリル末端ポリエステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アクリル末端ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、アミノプロピル変性シリコーン等が挙げられる。また、フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルフォン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー等が挙げられる。
本発明においては、上述の如き各種の界面活性剤を、単独で、又は2種類以上を混合して、用いることが可能である。尤も、界面活性剤によっては、水ガラスと反応し、時間の経過と共に、界面活性能が低下乃至は消失する恐れがあるものがあるため、水ガラスと反応しない陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤が、本発明の鋳型材料組成物においては、特に有利に使用されることとなる。
また、本発明にあっては、滑剤を添加剤として加えて、鋳型材料組成物の耐火性骨材表面に存在せしめることが、好ましい。かかる滑剤の存在によって、鋳型材料組成物の流動性が、有利に向上せしめられ得るのである。しかも、この滑剤と硝酸塩との組み合わせにより、かかる滑剤の有機分が硝酸塩より発生する酸素と反応し、燃焼することから、鋳型の崩壊性をより一層向上せしめ得るのである。
ここで、本発明に従う鋳型材料組成物に含有せしめられる滑剤の量としては、水ガラスの固形分量の100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが望ましく、中でも0.3〜8質量部が好ましく、特に0.5〜5質量部であることが好ましい。この含有せしめられる滑剤の量が少な過ぎると、上記した効果を有利に享受することが出来ない恐れがあり、その一方、滑剤の量が多過ぎても、鋳型強度が低下することや、更には、費用対効果の観点より得策ではない。
かかる本発明で用いられる滑剤としては、例えば、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックス、モンタン酸ワックス等のワックス類;ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド等の脂肪酸アマイド類;メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等のアルキレン脂肪酸アマイド類;ステアリン酸、ステアリルアルコール;ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;ステアリン酸モノグリセリド、ステアリルステアレート、硬化油等を使用することが可能である。これらの中でも、特に、ステアリン酸カルシウム等が有利に用いられる。なお、上記の含炭化水素含有化合物である滑剤に、炭化水素を含有していない黒鉛、タルク、雲母、二硫化モリブデン等の滑剤を併用しても、何等差支えない。
また、本発明の鋳型材料組成物においては、硝酸塩に、炭酸塩及びホウ酸塩のうちの少なくとも一つを組み合わせて用いることが好ましく、そのような炭酸塩及び/又はホウ酸塩と、硝酸塩とを併用することにより、更なる有用な効果が奏され得るのである。即ち、炭酸塩は、硝酸塩と同様に、造型・鋳造による熱により二酸化炭素を放出し、水ガラスの粘結膜中に亀裂を発生させ、水ガラスの粘結膜を壊すことで、鋳型を崩壊し易くすると共に、生じた二酸化炭素は水ガラス中の水分により弱酸の炭酸水となり、硝酸塩より効果は低いが、中和反応を促進させることが出来る。一方、ホウ酸塩は、造型・鋳造による熱により、水ガラス中のOHとホウ酸塩から生じた四ホウ酸イオン又はメタホウ酸イオンとが反応し、水ガラス中のOHを塞ぐことで、再溶解しにくくなり、以て、水ガラスの粘結膜の軟化を防ぎ、硝酸塩の効果をより促進させることが出来る。これらのことから、当該鋳型材料組成物を用いて造型された鋳型の崩壊性は、更に向上させられ得ると共に、鋳型の耐湿性を向上させ、吸湿による強度劣化を抑制することが出来ることとなる。
本発明において、鋳型材料組成物に含有せしめられる上述の如き炭酸塩及び/又はホウ酸塩の量は、水ガラスの固形分量の100質量部に対して、0.5〜50質量部であることが望ましく、中でも1〜20質量部が好ましく、特に2〜15質量部であることが好ましい。この含有せしめられる炭酸塩及び/又はホウ酸塩の量が少な過ぎると、上記した効果を有利に享受することが出来ない恐れがあり、その一方、炭酸塩及び/又はホウ酸塩の量が多過ぎても、その使用量に応じた効果の向上が認められず、更には費用対効果の観点より、得策ではない。なお、炭酸塩とホウ酸塩は併用して使用しても良い。
ここで、そのような炭酸塩としては、炭酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、炭酸鉄、炭酸マンガン、炭酸銅、炭酸アルミニウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。また、そのようなホウ酸塩としては、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸リチウム、四ホウ酸アンモニウム、四ホウ酸カルシウム、四ホウ酸ストロンチウム、四ホウ酸銀、メタホウ酸ナトリウム、メタホウ酸カリウム、メタホウ酸リチウム、メタホウ酸アンモニウム、メタホウ酸カルシウム、メタホウ酸銀 メタホウ酸銅、メタホウ酸鉛、メタホウ酸マグネシウム等が挙げられる。それらの中でも、特に塩基性炭酸亜鉛、四ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸カリウムは、硝酸塩との併用によって、より有利に崩壊性の向上と耐湿性を向上させることが可能である。
本発明においては、更にその他の添加剤として、耐湿性向上剤を含有せしめても良い。水ガラスに耐湿性向上剤を含有せしめることにより、最終的に得られる鋳型の耐湿性の向上を図ることが出来る。本発明において用いられる耐湿性向上剤としては、コーテッドサンドにおいて従来より用いられているものであれば、本発明の効果を阻害しないものである限り、如何なるものであっても、使用可能である。具体的には、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、硫酸チタン、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸銅等の硫酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸リチウム、リン酸水素リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸チタン、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛等の水酸化物、珪素、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、銅、鉄、ホウ素、ジルコニウム等の酸化物等を、例示することが出来る。それらの中でも、特に硫酸リチウム、水酸化リチウムは、より有利に耐湿性を向上させることが可能である。上記したものを始めとする耐湿性向上剤は、単独で用いられ得ることは勿論のこと、2種以上のものを併用することも可能である。
なお、そのような耐湿性向上剤の使用量としては、その総量において、水ガラスの固形分100質量部に対して、一般に、0.5〜50質量部程度であることが好ましく、中でも、1〜20質量部がより好ましく、特に、2〜15質量部が更に好ましい。耐湿性向上剤の添加効果を有利に享受するために、0.5質量部以上の使用量であることが望ましいのであり、一方、その添加量が多過ぎると、水ガラスによる骨材の結合を阻害し、最終的に得られる鋳型の強度が低下する等の問題を惹起する恐れがあるところから、50質量部以下とされることが望ましいのである。
加えて、その他の添加剤として、耐火性骨材と水ガラスとの結合を強化するカップリング剤を含有せしめることも有効であり、例えば、シランカップリング剤、ジルコンカップリング剤、チタンカップリング剤等を用いることが出来る。更に、離型剤として、パラフィン、ワックス、軽油、マシン油、スピンドル油、絶縁油、廃油、植物油、脂肪酸エステル、有機酸、黒鉛微粒子、雲母、蛭石、フッ素系離型剤、シリコーン系離型剤等も使用可能である。そして、これらその他の添加剤は、それぞれ、水ガラスの固形分に対して、一般に、5質量%以下、好ましくは3質量%以下の割合となるような量において、含有せしめられる。
ところで、本発明に従う常温流動性を有する乾態の鋳型材料組成物を製造するに際しては、一般に、耐火性骨材に対して、粘結材としての水ガラスと所定の硝酸塩とを、必要に応じて用いられる添加剤と共に、混練乃至は混合せしめて、均一に混和し、かかる耐火性骨材の表面を、硝酸塩等を含む水ガラス組成物にて被覆するようにすると共に、そのような水ガラス組成物の水分を蒸散せしめることによって、耐火性骨材の表面に、水ガラス組成物の被覆層を形成せしめる手法が、採用されることとなる。そのような手法において、被覆層の水分の蒸散は、水ガラスの固化乃至は硬化が進む前に迅速に行なわれる必要があるところから、耐火性骨材に対して、水溶液の形態にある水ガラスを投入(混合)してから、一般には5分以内に、より好ましくは3分以内に、含有水分を飛ばして、乾態の粉末状鋳型材料組成物とすることが望ましい。かかる蒸散の時間が長くなると、混和(混練)サイクルが長くなり、鋳型材料組成物の生産性が低下する他、水ガラスが空気中のCO2 に触れる時間が長くなって、失活する等の問題を生じる恐れが高くなるからである。
また、上述した鋳型材料組成物の製造工程において、水ガラス中の水分を迅速に蒸散せしめるための有効な手段の一つとして、耐火性骨材を予め加熱しておき、それに、水溶液の形態にある水ガラスや所定の硝酸塩等を混練乃至は混合して、混和せしめるようにする手法が、好適に採用される。この予め加熱された耐火性骨材に、水ガラスを混練乃至は混合せしめるようにすることによって、水ガラス中の水分は、そのような耐火性骨材の熱にて、極めて迅速に蒸散せしめられ得ることとなるのであり、以て、得られる鋳型材料組成物の水分量を効果的に低下せしめ得て、常温流動性を有する乾態の粉体が、有利に得られることとなるのである。ここで、耐火性骨材の予熱温度としては、水ガラスの含有水分量やその配合量等に応じて、適宜に選定されることとなるが、一般には100〜160℃程度の温度が、好ましくは100〜140℃程度の温度が、採用される。この予熱温度が低過ぎると、水分の蒸散を効果的に行うことが出来ず、乾燥に時間がかかるようになるところから、100℃以上の温度を採用することが望ましいのであり、また予熱温度が高過ぎると、得られる鋳型材料組成物の冷却時に、水ガラス成分の固化乃至硬化が進み、加えて複合粒子化が進行するようになるところから、鋳型材料組成物としての機能、特に、最終的に得られる鋳型の強度等の物性に問題を生じるようになる。
一方、本発明に従う湿態の鋳型材料組成物を製造するに際しては、一般に、耐火性骨材に対して、粘結材としての水ガラスと所定の硝酸塩とを、必要に応じて用いられる添加剤と共に、常温で混練乃至は混合せしめて、均一に混和せしめることによって、耐火性骨材の表面に水分量の高い水ガラス組成物の被膜層を形成せしめる手法が、採用されることとなる。
なお、本発明の鋳型材料組成物において、水ガラスや所定の硝酸塩等を含む水ガラス組成物の被覆層に含有せしめられる硝酸塩や、必要に応じて用いられる他の添加剤、例えば界面活性剤や滑剤等は、予め、水ガラスに混合した状態で耐火性骨材に添加し、混練しても良く、また、混練時に水ガラスとは別個に添加して、混練しても良く、更には混練時に、水ガラスの投入との間に時間差を設けて投入し、混練しても良い。そのため、本発明の乾態の鋳型材料組成物における被覆層は、例えば、水ガラスと硝酸塩等とが渾然一体となった状態において、或いは、耐火性骨材の表面から外方に向かって、水ガラスの固形分(不揮発分)の濃度が漸次減少又は増加する一方で、硝酸塩等の濃度は漸次増加又は減少するような状態において、構成されてなる形態となる。更に、粘結材としての水ガラスは、その粘度を調節するために、水で希釈しても良い。また、混練乃至は混合時に、水ガラスと水とを個別に添加しても、何等差支えない。
ところで、本発明に従う乾態の鋳型材料組成物を用いて、鋳型を造型するに際しては、例えば、以下の二つの方法を採用することが出来る。そのうちの第一の方法は、鋳型の製造場所たる造型現場にて、乾態の鋳型材料組成物と水とを混練することにより、鋳型材料組成物を湿態化させて湿潤状態とし、その湿潤状態とされた鋳型材料組成物を、目的とする鋳型を与える成形型の成形キャビティ内に充填する一方、かかる成形型を80〜300℃の温度に加熱して、充填された鋳型材料組成物が成形型内で乾燥されるまで、保持されるようにする方法である。また、第二の方法は、目的とする鋳型を与える成形型の成形キャビティ内に、鋳型材料組成物を充填した後に、水蒸気を吹き込み、この水蒸気の通気によって、鋳型材料組成物の充填相が湿らされて湿潤状態となり、その後、80〜200℃に加熱された成形型内で乾燥するまで保持される方法である。
かかる造型に際して、常温流動性を有する乾態の鋳型材料組成物が充填せしめられる、金型や木型等の成形型は、予め加熱により保温されていることが望ましく、それによって、水との混練や水蒸気によって湿態化された鋳型材料組成物の乾燥が、有利に進行せしめられ得るのである。なお、その予熱による保温温度としては、一般に、第一の方法では80〜300℃、好ましくは90〜250℃、より好ましくは100〜200℃程度の温度が望ましく、第二の方法では80〜200℃、好ましくは90〜150℃、より好ましくは100〜140℃程度の温度が、望ましい。この保温温度が高過ぎると、成形型の表面にまで蒸気が通り難くなるのであり、一方、温度が低過ぎると、造型された鋳型の乾燥に時間を要するようになる。
加えて、かかる成形型内に充填せしめられる乾態の鋳型材料組成物も、有利には、予熱されていることが望ましい。一般に、30℃以上の温度に加温された鋳型材料組成物を、成形型に充填せしめるようにすることによって、得られる鋳型の抗折強度がより有利に高められ得ることとなるのである。このような鋳型材料組成物の加温温度としては、好ましくは30〜100℃程度とされ、特に、40〜80℃程度の温度に加温された鋳型材料組成物が、有利に用いられることとなる。
また、上記した第一の方法において、乾態の鋳型材料組成物に水を加えて湿態化する工程は、単に、乾態の鋳型材料組成物と所定量の水とを適当なミキサに投入して、混合せしめることにより、実施することが可能であるところから、極めて単純な作業にて実施され得て、作業環境の悪い造型現場においても、極めて簡単に且つ容易に行い得るという利点がある。なお、水の添加時には、他の添加剤を添加することも可能である。
一方、上記した第二の方法において、上記の如く加熱された成形型内に、具体的には、その成形キャビティ内に、本発明に従う乾態の鋳型材料組成物を充填せしめた後、そこに形成される充填相内に、成形型に設けられた通気口を通じて、水蒸気を加圧下に通気させて、かかる充填相を構成する鋳型材料組成物を湿態化させて(湿らせて)、鋳型材料組成物の被覆層に含まれる水ガラスによって鋳型材料組成物を相互に結合させて連結せしめ、一体的な鋳型形状の鋳型材料組成物集合体(結合物)が形成されるのである。なお、水ガラスは、通常、何の添加剤も加えられていなければ、水の蒸発乾固により固化し、また硬化剤としての酸化物や塩やエステル等が加えられている場合には、硬化することとなる。硬化剤が添加されると、充填相は硬化されたものとなるが、単に、固化されたものであっても、何等差支えない。
ここで、そのような成形型の通気口を通じて吹き込まれて、鋳型材料組成物の充填相内を通気せしめられる水蒸気の温度としては、一般に、80〜150℃程度、より望ましくは95〜120℃程度とされる。高温の水蒸気温度を採用すると、その生産のために多量のエネルギーが必要となるところから、特に100℃付近の水蒸気温度が有利に採用されることとなる。また、通気せしめられる水蒸気の圧力としては、ゲージ圧で、0.01〜0.3MPa程度、より好ましくは0.01〜0.1MPa程度の値が有利に採用されるのである。鋳型材料組成物の通気性が良い場合において、水蒸気を通気させるための圧力が、前記したゲージ圧程度であれば、成形型内に形成される鋳型に、満遍なく、水蒸気を通気させることが出来るのであり、しかも水蒸気の通気時間及び鋳型の乾燥時間が短時間で済み、造型速度を短縮することが出来る特徴がある。また、そのようなゲージ圧であれば、鋳型材料組成物の通気性が悪い場合においても、造型が可能となる利点がある。なお、ゲージ圧が高過ぎると、通気口付近でしみつきが発生する恐れがあり、一方、ゲージ圧が低過ぎると、鋳型材料組成物の充填相の全体に通気が行われず、鋳型材料組成物を充分に湿らせることが出来ない恐れがある。
また、かくの如く水蒸気を通気させる方法としては、成形型に設けた通気口から水蒸気を吹き込み、成形型の成形キャビティ内に充填された鋳型材料組成物(相)内を通気せしめる手法が採用され、更にその通気時間としては、かかる充填された鋳型材料組成物の表面に水蒸気を供給して、その表面の被覆層に含まれる粘結材たる水ガラスを充分に湿らせ、鋳型材料組成物を相互に結合(接合)し得るような時間が、成形型の大きさや通気口の数等によって、適宜に選定されることとなるが、一般に、2秒程度から60秒程度までの通気時間が、採用されることとなる。この水蒸気の通気時間が短過ぎると、鋳型材料組成物表面を充分に湿らせることが困難となるからであり、また通気時間が長過ぎると、鋳型材料組成物表面の粘結材(水ガラス)が溶解乃至流出する恐れ等が生じるからである。なお、前述したように、本発明の鋳型材料組成物は、水の濡れ性に優れていることから、水蒸気の通気時間が短時間であっても問題なく、鋳型材料組成物を十分に湿態化せしめることが可能である。また、この成形型内に充填された鋳型材料組成物内における水蒸気の通気性は、かかる成形型の排気口から型内の雰囲気を吸引しつつ、水蒸気の通気を行なうことによって、より向上させることが可能である。
さらに、本発明の鋳型材料組成物を用いて鋳型を製造するに際しては、上述した第一及び第二の方法の何れかによって形成された、湿った鋳型材料組成物の充填相を積極的に乾燥させるべく、乾燥空気、加熱乾燥空気、過熱水蒸気、又は窒素ガスを吹き込み、かかる充填相に通気せしめるようにする手法が、好適に採用される。このような乾燥空気、加熱乾燥空気、過熱水蒸気、又は窒素ガスの通気によって、鋳型材料組成物の充填相の内部に至るまで十分に且つ迅速に乾燥させて、かかる充填相の固化乃至は硬化をより一層有利に促進せしめ、以て、固化乃至硬化速度を有利に高めると共に、得られる鋳型の抗折強度等の特性をも有利に高め得ることとなる他、鋳型の造型時間の短縮にも、有利に寄与し得るのである。なお、このような乾燥を促進するための通気には、加熱乾燥空気等の熱風か、過熱水蒸気が、特に有利に用いられることとなる。
また、成形型での保持中に、水ガラスの硬化を促進させるための添加剤として、成形型内に硬化剤が添加されるようにしても良い。硬化剤で粘結材(水ガラス)を中和することで、その固化をより促進させることが可能である。なお、硬化剤の通気は、成形型での保持中であれば、いずれのタイミングで行っても良く、水蒸気の通気と同時に、又は乾燥空気等の通気と同時に行なっても、何等差支えない。
硬化剤としては、二酸化炭素(炭酸水)、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸;シュウ酸、カルボン酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸や、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、グリセリンジアセテート、トリアセチン、プロピレンカーボネート等のエステルや、メタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール等の一価のアルコール等を、例示することが出来る。これら硬化剤は、単独で用いられ得ることは勿論のこと、2種以上のものを混合して、使用することも可能である。なお、これらの硬化剤は、成形型の保持中にガス状又は霧状にしたものを、成形型内に通気すると良く、乾態のコーテッドサンドに水を加えて、湿態化する場合には、水と共に、硬化剤を加えても、何等差支えない。
一方、本発明に従う湿態の鋳型材料組成物を用いて鋳型を造型するに際しては、有利には、先ず、かかる鋳型材料組成物を、目的とする鋳型を与える加熱された成形型の成形キャビティ内に充填し、そして乾燥するまで成形型内で保持することにより、その充填された鋳型材料組成物の固化乃至は硬化が行なわれることとなる。
また、その際、湿態の鋳型材料組成物が充填せしめられる成形型は、予め加熱により保温されていることが望ましく、それによって、湿態の状態で充填された鋳型材料組成物の乾燥が、有利に進行せしめられ得るのである。なお、その予熱による保温温度としては、一般に、80〜300℃、好ましくは90〜250℃、より好ましくは100〜200℃程度の温度が、望ましい。この保温温度が高過ぎると、成形型への砂の充填が悪くなるのであり、一方、温度が低過ぎると、造型された鋳型の乾燥に時間を要するようになる。
さらに、本発明の鋳型材料組成物を用いて鋳型を製造するに際しては、上述した湿態の状態の鋳型材料組成物の充填相を積極的に乾燥させるべく、乾燥空気、加熱乾燥空気、過熱水蒸気又は窒素ガスを吹き込み、かかる充填相に通気せしめるようにする手法を採用しても良い。なお、乾燥空気等の通気の他、硬化剤として、二酸化炭素、有機酸、一価のアルコール等をガス状又は霧状にしたものを通気しても良い。
更にまた、本発明に従う鋳型材料組成物を用いて、目的とする鋳型を製造するに際しては、上述せるような、成形型内に鋳型材料組成物を充填して成形する手法の他、公知の各種の造型手法が適宜に採用され得ることは、言うまでもないところである。
また、鋳型の製造に際しては、上述の如く、成形型内に鋳型材料組成物を充填して、成形する手法の他、公知の各種の造型手法が適宜に採用され得るところであり、例えば、鋳型材料組成物の層を順次積層せしめる一方、目的とする鋳型に対応する部分を硬化せしめて、三次元の鋳型を直接に造型する積層造型の手法も、採用可能である。なお、そのような積層造型に用いられる鋳型材料組成物としては、乾態のものが好ましい。
以下に、幾つかの実施例を用いて、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等限定的に解釈されるものでないことが理解されるべきである。なお、以下の実施例や比較例において、「%」及び「部」は、特に断りのない限りにおいて、何れも、質量基準にて示されている。また、実施例や比較例で得られた鋳型材料組成物(CS)の水分量、崩壊性、鋳肌の評価は、それぞれ、以下のようにして行った。
−水ガラスの固形分に対する水分量の測定−
空焼して秤量したるつぼに、各CSを10g秤量して収容し、900℃の温度にて1時間曝熱した後の質量減少量(%)を用いて、CS中の水分量と硝酸塩熱分解分量と有機分量の合計量(以下、「(水分+硝酸塩分解分+有機分)量」として示し、「W1」とする)を、下記の式(1)より算出する。ここで、硝酸塩熱分解分量とは、硝酸塩が分解して重量減少した量であり、有機分量とは、界面活性剤及びその他の有機添加剤(以下、有機分という)の合計量である。なお、秤量は、小数点以下第4位まで計測する。次に、CSにおける水ガラスの固形分量(B1)を、下記の式(2)を用いて算出する。そして、CS中の(水分+硝酸塩分解分量+有機分)量(W1)と、CSにおける水ガラスの固形分量(B1)と、水ガラス固形分の100部に対する硝酸塩の添加量(A)と、後述する手法に従って測定される硝酸塩分解時の重量減少率(C)と、水ガラスの固形分の100部に対する有機分の添加量(D)と、乾態CSの場合に必要な後述する手法に従って測定される有機分における固形分率(E)より、水ガラスの固形分量に対する水分量(被覆層における水ガラスの固形分量に対するCSの水分量:W2)を、下記の式(3a)又は(3b)を用いて算出する。以上の如くして算出されたW2を、下記表1及び表2において「含水分量(質量%)」として示す。
W1=[(M1−M2)/M3]×100 ・・・(1)
[W1:CS中の(水分+硝酸塩分解分+有機分)量(%)、M1:焼
成前のるつぼとCSの合計質量(g)、M2:焼成後のるつぼとCS
の合計質量(g)、M3:焼成前のCSの質量(g)]
B1=[B2/(100+B2)]×(100−W1) ・・・(2)
[B1:CSにおける水ガラスの固形分量(%)、B2:砂の100部
に対して添加した水ガラスの固形分量(部)、W1:CS中の(水分
+硝酸塩分解分+有機分)量(%)]
乾態の場合:
W2=[(W1/B1)×100]−(A×C)/100
−(D×E)/100 ・・・(3a)
[W2:被覆層における水ガラスの固形分量に対するCSの水分量(%
)、W1:CS中の(水分+有機分)量(%)、B1:CSにおける
水ガラスの固形分量(%)、A:水ガラスの固形分の100部に対す
る硝酸塩の添加量(部)、C:硝酸塩分解重量減少率(混練温度〜9
00℃)(%)、D:水ガラスの固形分の100部に対する有機分の
添加量(部)、E:CS中の有機分における固形分率(%)]
湿態の場合:
W2=[(W1/B1)×100]−(A×F)/100−D
・・・(3b)
[W2:被覆層における水ガラスの固形分量に対するCSの水分量(%
)、W1:CS中の(水分+有機分)量(%)、B1:CSにおける
水ガラスの固形分量(%)、A:水ガラスの固形分の100部に対す
る硝酸塩の添加量(部)、F:硝酸塩分解重量減少率(常温〜900
℃)(%)、D:水ガラスの固形分の100部に対する有機分の添加
量(部)]
−硝酸塩の熱分解重量減少率の測定−
差動型示差熱天秤(株式会社リガク製TG−DTA Thermoplus2 TG8120;air流量:500ml/min、昇温速度:10℃/min、Ptパン:φ5mm×5mm使用)を用いて、硝酸塩サンプルを室温から930℃まで加熱昇温を行う。この時の混練温度〜900℃までの重量減少率を求めて、硝酸塩の熱分解重量減少率(混練温度〜900℃)(C)が算出される一方、室温〜900℃までの重量減少率を求めて、硝酸塩の熱分解重量減少率(常温〜900℃)(F)が算出される。
−有機分における固形分率の測定−
先ず、界面活性剤及びその他の有機添加剤からなり、それらの配合割合が、砂(耐火性骨材)に対する添加割合と同様である試料を調製する。次いで、アルミ箔製皿(縦:9cm、横:9cm、高さ:1.5cm)内に、先に調製した試料の10gを収容して秤量し、100±1℃に保持した加熱板上にアルミ箔製皿を載置し、20分間放置した後、デシケータ中で放冷する。そして、かかる放冷後のアルミ箔製皿の秤量を行ない、下記の式(4)より、有機分における固形分率(E)を算出する。
E=[{乾燥後のアルミ箔製皿の質量(g)−アルミ箔製皿の質量(g
)}/{乾燥前のアルミ箔製皿の質量(g)−アルミ箔製皿の質量(g)}
]×100 ・・・(4)
−中子鋳造試験−
先ず、図1に示されるように、予め常温自硬性砂で作製された、上部に溶湯注入口2と下部に中子の幅木固定部4(この部分は鋳物からの廃中子の排出口となる)を有する半割れ中空主型6(キャビティ直径:6cm、高さ:6cm)内に、各々のCSを用いて作製した幅木部8を有する円形無空中子10(直径:5cm、高さ:5cm)を、幅木固定部4で接着固定した後、更に半割れ中空主型6を相互に接着固定して、鋳造試験用砂型12を作製する。次に、この鋳造試験用砂型12の溶湯注入口2からアルミニウム合金溶湯(温度:710±5℃)を注湯し、凝固せしめた後、主型6を壊して、図2に示す円形の廃中子排出口14(直径:1.6cm)を有する鋳物16を取り出す。そして、所定の温度となったところで、かかる得られた鋳物16に対して、圧力:0.2MPaにて、エアーハンマーにより1回に3秒間の衝撃を与え、排出口14から排出する。中子が100%排砂された場合は回数を記載し、10回までに排出されない場合は排砂率を求める。10回までに排出された砂質量を測定し、更にエアーハンマー等で中子砂を完全に排出させて中子砂の総質量を測定する。排砂率は排出された中子砂質量を排出中子砂の総質量で除した質量%で表示し、その数値が大きくなる程、中子の崩壊性は良いと判断する。
−鋳肌の評価−
上記中子鋳造試験において得られた鋳物を切断して、その中子側表面の鋳肌の状態を、目視評価した。評価基準は、以下の通りである。
◎:良好
○:若干の鋳肌の荒れはあるが使用には問題なし
△:後加工による修正の必要あり
×:鋳肌不良
−乾態CSの製造例1a−
耐火性骨材として、市販の鋳造用人工砂であるルナモス#60(商品名:花王クエーカー株式会社製)を準備すると共に、粘結材たる水ガラスとして、市販品:2号ケイ酸ナトリウム(商品名:富士化学株式会社製、SiO2 /Na2O のモル比:2.5、固形成分:41.3%)を準備した。そして、上記のルナモス#60を約120℃の温度に加熱した後、ワールミキサー(遠州鉄工株式会社製)に投入し、更に、前記水ガラスを、ルナモス#60の100部に対して2.4部(固形成分:1.0部)の割合で、また硝酸カリウムを、ルナモス#60の100部に対して0.03部(水ガラスの固形分100部に対して3部)の割合でそれぞれ添加して、3分間の混練を行ない、水分を蒸発せしめる一方、砂粒塊が崩壊するまで攪拌混合せしめ、更にステアリン酸カルシウムをルナモス#60の100部に対して0.01部(水ガラスの固形分100部に対して1部)の割合で加えて、攪拌混合せしめた後に取り出すことにより、常温流動性を有する乾態の鋳型材料組成物:CS1aを得た。かかる混練後のCS1aの含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の30質量%に相当する量であった。
−乾態CSの製造例2a−
硝酸カリウムの添加量を0.1部(水ガラスの固形分100部に対して10部の割合)としたこと以外は、上記製造例1aと同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS2aを得た。この得られたCS2aの含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の30質量%に相当する量であった。
−乾態CSの製造例3a−
硝酸カリウムの添加量を0.3部(水ガラスの固形分100部に対して30部の割合)としたこと以外は、上記製造例1aと同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS3aを得た。この得られたCS3aの含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の30質量%に相当する量であった。
−乾態CSの製造例4a−
硝酸カリウムを、硝酸ナトリウムの0.1部(水ガラスの固形分100部に対して10部の割合)に代えたこと以外は、上記製造例1aと同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS4aを得た。この得られたCS4aの含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の30質量%に相当する量であった。
−乾態CSの製造例5a−
硝酸カリウムを、硝酸カルシウムの0.03部(水ガラスの固形分100部に対して3部の割合)に代えたこと以外は、上記製造例1aと同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS5aを得た。この得られたCS5aの含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の30質量%に相当する量であった。
−乾態CSの製造例6a−
硝酸カリウムを、硝酸マグネシウムの0.03部(水ガラスの固形分100部に対して3部の割合)に代えたこと以外は、上記製造例1aと同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS6aを得た。この得られたCS6aの含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の30質量%に相当する量であった。
−乾態CSの製造例7a−
粘結材の水ガラスとして、市販品:1号ケイ酸ナトリウム(商品名:富士化学株式会社製、SiO2 /Na2O のモル比:2.1、固形成分:48.5%)を用い、また、その添加量を、耐火性骨材(ルナモス#60)の100部に対して2.1部(固形成分:1.0部)としたこと以外は、上記製造例2aと同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS7aを得た。この得られたCS7aの含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の30質量%に相当する量であった。
−乾態CSの製造例8a−
粘結材の水ガラスとして、市販品:3号ケイ酸ナトリウム(商品名:富士化学株式会社製、SiO2 /Na2O のモル比:3.2、固形成分:38%)を用い、また、その添加量を、耐火性骨材(ルナモス#60)の100部に対して2.6部(固形成分:1.0部)としたこと以外は、上記製造例2aと同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS8aを得た。この得られたCS8aの含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の30質量%に相当する量であった。
−乾態CSの製造例9a−
界面活性剤である陰イオン性界面活性剤(アニオン性界面活性剤)市販品:オルフィンPD−301(商品名:日信化学工業株式会社製)を用い、それを、ルナモス#60の100部に対して0.12部(水ガラスの固形分100部に対して12部)の割合で更に添加したこと以外は、上記製造例2aと同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS9aを得た。この得られたCS9aの含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の30質量%に相当する量であった。
−乾態CSの製造例10a−
硝酸塩(硝酸カリウム)を添加しないこと以外は、上記製造例1aと同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS10aを得た。この得られたCS10aの含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の30質量%に相当する量であった。
−乾態CSの製造例11a−
硝酸塩を添加しないこと以外は、上記製造例7aと同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS11aを得た。その得られたCS11aの含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の30質量%に相当する量であった。
−乾態CSの製造例12a−
硝酸塩を添加しないこと以外は、上記製造例8aと同様の手順に従って、乾態のCS12aを得た。その得られたCS12aの含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の30質量%に相当する量であった。
−乾態CSの製造例13a−
炭酸塩として、塩基性炭酸亜鉛を用い、それを、ルナモス#60の100部に対して0.05部(水ガラスの固形分100部に対して5部)の割合において、更に添加したこと以外は、上記製造例2aと同様の手順に従って、乾態のCS13aを得た。その得られたCS13aの含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の30質量%に相当する量であった。
−乾態CSの製造例14a−
ホウ酸塩として、四ホウ酸ナトリウム十水和物を用い、それを、ルナモス#60の100部に対して0.05部(水ガラスの固形分100部に対して5部)の割合において、更に添加したこと以外は、上記製造例2aと同様の手順に従って、乾態のCS14aを得た。その得られたCS14aの含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の30質量%に相当する量であった。
−湿態CSの製造例1b−
耐火性骨材として、市販の鋳造用人工砂であるルナモス#80(商品名:花王クエーカー株式会社製)を準備すると共に、粘結材たる水ガラスとして、市販品:2号ケイ酸ナトリウム(商品名:富士化学株式会社製、SiO2 /Na2O のモル比:2.5、固形成分:41.3%)を準備した。そして、上記のルナモス#80を常温のまま品川式万能攪拌機(5DM−r型)(株式会社ダルトン製)に投入し、更に、前記水ガラスを、ルナモス#80の100部に対して2.4部(固形成分:1.0部)の割合で、硝酸カリウムを、ルナモス#80の100部に対して0.03部(水ガラスの固形分100部に対して3部)の割合で、それぞれ添加して、3分間の混練を行ない、均一になるまで攪拌混合せしめた後に取り出すことにより、湿態の鋳型材料組成物:CS1bを得た。かかる混練後のCS1bの含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
−湿態CSの製造例2b−
硝酸カリウムの添加量を、ルナモス#80の100部に対して0.1部(水ガラスの固形分100部に対して10部)の割合としたこと以外は、上記製造例1bと同様の手順に従って、湿態のCS2bを得た。その得られたCS2bの含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
−湿態CSの製造例3b−
硝酸カリウムの添加量を、ルナモス#80の100部に対して0.3部(水ガラスの固形分100部に対して30部)の割合としたこと以外は、上記製造例1bと同様の手順に従って、湿態のCS3bを得た。その得られたCS3bの含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
−湿態CSの製造例4b−
硝酸カリウムを、硝酸ナトリウムの0.1部(水ガラスの固形分100部に対して10部の割合)に代えたこと以外は、上記製造例1bと同様の手順に従って、湿態のCS4bを得た。その得られたCS4bの含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
−湿態CSの製造例5b−
硝酸カリウムを、硝酸カルシウムの0.03部(水ガラスの固形分100部に対して3部の割合)に代えたこと以外は、上記製造例1bと同様の手順に従って、湿態のCS5bを得た。その得られたCS5bの含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
−湿態CSの製造例6b−
硝酸カリウムを、硝酸マグネシウムの0.03部(水ガラスの固形分100部に対して3部の割合)に代えたこと以外は、上記製造例1bと同様の手順に従って、湿態のCS6bを得た。その得られたCS6bの含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
−湿態CSの製造例7b−
粘結材の水ガラスとして、市販品:1号ケイ酸ナトリウム(商品名:富士化学株式会社製、SiO2 /Na2O のモル比:2.1、固形成分:48.5%)を用い、また、その添加量を、耐火性骨材(ルナモス#80)の100部に対して2.1部(固形成分:1.0部)の割合としたこと以外は、上記製造例2bと同様の手順に従って、湿態のCS7bを得た。その得られたCS7bの含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の110質量%に相当する量であった。
−湿態CSの製造例8b−
粘結材の水ガラスとして、市販品:3号ケイ酸ナトリウム(商品名:富士化学株式会社製、SiO2 /Na2O のモル比:3.2、固形成分:38%)を用い、また、その添加量を、耐火性骨材(ルナモス#80)の100部に対して2.6部(固形成分:1.0部)の割合としたこと以外は、上記製造例2bと同様の手順に従って、湿態のCS8bを得た。その得られたCS8bの含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の160質量%に相当する量であった。
−湿態CSの製造例9b−
界面活性剤である陰イオン性界面活性剤(アニオン性界面活性剤)市販品:オルフィンPD−301(商品名:日信化学工業株式会社製)を用い、その添加量を、ルナモス#80の100部に対して0.12部(水ガラスの固形分100部に対して12部)の割合としたこと以外は、上記製造例2bと同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS9bを得た。その得られたCS9bの含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
−湿態CSの製造例10b−
硝酸塩を添加しないこと以外は、上記製造例1bと同様の手順に従って、湿態のCS10bを得た。その得られたCS10bの含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
−湿態CSの製造例11b−
硝酸塩を添加しないこと以外は、上記製造例7bと同様の手順に従って、湿態のCS11bを得た。その得られたCS11bの含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の110質量%に相当する量であった。
−湿態CSの製造例12b−
硝酸塩を添加しないこと以外は、上記製造例8bと同様の手順に従って、湿態のCS11bを得た。その得られたCS12bの含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の160質量%に相当する量であった。
−湿態CSの製造例13b−
炭酸塩として、塩基性炭酸亜鉛を用い、それを、ルナモス#80の100部に対して0.05部(水ガラスの固形分100部に対して5部)の割合において、更に添加したこと以外は、上記製造例2bと同様の手順に従って、乾態のCS13bを得た。その得られたCS13bの含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
−湿態CSの製造例14b−
ホウ酸塩として、四ホウ酸ナトリウム十水和物を用い、それを、ルナモス#80の100部に対して0.05部(水ガラスの固形分100部に対して5部)の割合において、更に添加したこと以外は、上記製造例2bと同様の手順に従って、乾態のCS14bを得た。その得られたCS14bの含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
−鋳型の造型例1(実施例1〜9、比較例1〜3)−
上記した各手順に従って製造されたCS1a〜12a(温度:20℃)を、それぞれ、110℃に加熱された成形金型内に、圧力:0.3MPaのゲージ圧にて吹き込んで、充填した後、更に0.05MPaのゲージ圧力の下で、温度:99℃の水蒸気を4秒間吹き込み、成形金型内に充填した鋳型材料組成物相に通気せしめた。次いで、そのような水蒸気の通気が終了した後、0.03MPaのゲージ圧力の下で、150℃の温度の熱風を2分間吹き込み、成形金型内に充填されたCSをそれぞれ固化乃至硬化させることにより、試験片[φ5cm×5cm]として用いられる鋳型を、それぞれ作製した。このような鋳型作製工程において、水蒸気通気開始から熱風通気終了に至るまでの成形時間は、何れも125秒とした。なお、実施例1〜9、比較例1〜3の各々に係る鋳型(試験片)を作製する際に使用したCSの構成及び成形条件は、下記表1に示す通りである。また、それら実施例1〜9や比較例1〜3の各々で用いたCSから製造された円形無空中子(10)について、先の中子鋳造試験を実施し、中子の崩壊性と得られた鋳物の鋳肌の評価を実施し、その結果を、下記表1に併せ示した。
−鋳型の造型例2(実施例10〜20、比較例4〜6)−
上記した各手順に従って製造されたCS1a〜14a(温度:20℃)を、常温のまま、品川式万能撹拌機(5DM−r型、株式会社ダルトン製)に投入し、更に、水を、CSの100部に対して1.0部の割合にて、撹拌機内に添加し、撹拌することにより、それぞれ湿態化させたCS(鋳型材料)を準備した。次いで、撹拌機内より取り出した湿態状の各種CSを、150℃に加熱された成形金型内に、圧力:0.3MPaのゲージ圧にて吹き込んで、充填した後、成形金型内で保持しながら、0.03MPaのゲージ圧力の下で、150℃の温度の熱風を2分間吹き込み、成形金型内に充填されたCSをそれぞれ固化乃至硬化させることにより、試験片[φ5cm×5cm]として用いられる鋳型を、それぞれ作製した。ここで、成形金型内保持開始から熱風通気終了に至るまでの成形時間は、何れも、180秒とした。なお、実施例10〜20、比較例4〜6の各々に係る鋳型(試験体)を作製する際に使用したCSの構成及び成形条件は、下記表2に示す通りである。また、それら実施例10〜20や比較例4〜6の各々で用いたCSから製造された円形無空中子(10)について、先の中子鋳造試験を実施し、中子の崩壊性と得られた鋳物の鋳肌の評価を実施し、その結果を、下記表2に併せ示した。
−鋳型の造型例3(実施例21〜31、比較例7〜9)−
上記した各手順に従って製造されたCS1b〜14b(温度:20℃)を、それぞれ、150℃に加熱された成形金型内に、充填した後、かかる成形金型内でそのまま保持することにより、充填されたCSをそれぞれ固化乃至硬化させることによって、試験片[φ5cm×5cm]として用いられる鋳型を、それぞれ作製した。ここで、成形金型内での保持開始から終了に至るまでの成形時間は、何れも、180秒とした。なお、実施例21〜31、比較例7〜9の各々に係る鋳型(試験片)を作製する際に使用したCSの構成及び成形条件は、下記表3に示す通りである。また、それら実施例21〜31や比較例7〜9の各々で用いたCSから製造された円形無空中子(10)について、先の中子鋳造試験を実施し、中子の崩壊性と得られた鋳物の鋳肌の評価を実施し、その結果を、下記表3に併せ示した。
Figure 2018147419
Figure 2018147419
Figure 2018147419
上記表1〜表3より明らかな如く、本発明に係るCS1a〜9a、13a〜14a及びCS1b〜9b、13b〜14bを用いて得られた鋳型にあっては、その崩壊性の向上と鋳肌の向上が認められた。また、CSが乾態と湿態の何れの形態においても同様の効果が得られていることが認められる。なお、乾態のCSの方が、崩壊性における排砂率が良い点については、水蒸気を通気させることと、骨材の粒径が異なることに基因するものと考えられる。
さらに、CS2a、CS13a、CS14aの各々を用いて、鋳型の造型例2に従って得られた試験片と、CS2b、CS13b、CS14bの各々を用いて、鋳型の造型例3に従って得られた試験片について、以下に示す手順に従い、それぞれ吸湿強度保持率の測定を行なった(実施例32〜37)。その測定結果を、下記表4に示す。
−吸湿強度保持率の測定−
各CSを用いて得られた試験片について、その破壊荷重を、測定器(高千穂精機株式会社製、デジタル鋳物砂強度試験機)を用いて測定して、この測定された破壊荷重を用いて、抗折強度を、下記の式により算出した。なお、かかる破壊荷重の測定には、成形後1時間経過後の常温の試験片を用いた。
抗折強度(N/cm2 )=1.5×LW/ab2
[但し、L:支点間距離(cm)、W:破壊荷重(N)、a:試験片の
幅(cm)、b:試験片の厚み(cm)、である。]
次いで、容器に、水とグリセロールの混合溶液及び4点の下駄付き金網を入れ、各試験片を金網上に載置して、試験片が水及びグリセロール混合溶液(20%グリセロール濃度)に触れない状態として、かかる容器ごと温調器に入れて、40℃で24時間保持して、各試験片を吸湿劣化させた。その吸湿劣化後の各試験片について、その抗折強度を、上記と同様にして求めた。そして、吸湿前の抗折強度と、吸湿後の抗折強度から、下記式に基づいて、吸湿強度保持率を算出した。
吸湿強度保持率(%)=(吸湿後抗折強度/吸湿前抗折強度)×100
Figure 2018147419
かかる表4から明らかなように、粘結材に、硝酸塩と共に、併用して炭酸塩又はホウ酸塩を添加(併用)することにより、表2、表3に示される崩壊性の向上効果と共に、鋳型の吸湿強度保持率が大幅に向上することが認められる。
2 溶湯注入口 4 幅木固定部
6 主型 8 幅木部
10 円形無空中子 12 鋳造試験用砂型
14 廃中子排出口 16 鋳物

Claims (22)

  1. (a)耐火性骨材と、
    (b)水ガラスを必須成分とする粘結材と、
    (c)硝酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群より選ばれた少なくとも一つの硝酸塩と
    を少なくとも含むことを特徴とする鋳型材料組成物。
  2. 前記硝酸塩が、鋳型材料組成物における水ガラスの固形分の100質量部に対して、0.5〜30質量部の割合において含有せしめられていることを特徴とする請求項1に記載の鋳型材料組成物。
  3. 前記硝酸塩が、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム及び硝酸マグネシウムからなる群から選択されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鋳型材料組成物。
  4. 炭化水素含有化合物が、更に含有せしめられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の鋳型材料組成物。
  5. 前記炭化水素含有化合物が、界面活性剤であることを特徴とする請求項4に記載の鋳型材料組成物。
  6. 前記界面活性剤が、鋳型材料組成物における水ガラスの固形分の100質量部に対して、0.1〜20質量部の割合において含有せしめられていることを特徴とする請求項5に記載の鋳型材料組成物。
  7. 前記炭化水素含有化合物が、滑剤であることを特徴とする請求項4に記載の鋳型材料組成物。
  8. 前記滑剤が、鋳型材料組成物における水ガラスの固形分の100質量部に対して、0.1〜10質量部の割合において含有せしめられていることを特徴とする請求項7に記載の鋳型材料組成物。
  9. 炭酸塩及び/又はホウ酸塩が、更に含有せしめられていることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の鋳型材料組成物。
  10. 前記炭酸塩及び/又はホウ酸塩が、鋳型材料組成物における水ガラスの固形分の100質量部に対して、0.5〜50質量部の割合において含有せしめられていることを特徴とする請求項9に記載の鋳型材料組成物。
  11. 前記耐火性骨材が、球状である請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の鋳型材料組成物。
  12. 前記鋳型材料組成物が、前記耐火性骨材の表面を前記水ガラスを含む被覆層にて覆ってなる、常温流動性を有する乾態の混合物であり、且つ該混合物における含水分量が、前記水ガラスの固形分量の5〜55質量%であることを特徴とする請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の鋳型材料組成物。
  13. 予め加熱された耐火性骨材に対して、水ガラスを必須成分とする粘結材と、硝酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群より選ばれた少なくとも一つの硝酸塩とを混和せしめ、水分を蒸発させることにより、かかる耐火性骨材の表面に該粘結材の被覆層を形成すると共に、その含水分量が水ガラスの固形分量の5〜55質量%となる、常温流動性を有する乾態の混合物として、取り出すようにしたことを特徴とする鋳型材料組成物の製造方法。
  14. 請求項13に記載の製造方法で得られた乾態の鋳型材料組成物を用い、これを、成形型内に充填した後、水蒸気を通気させて、かかる成形型内で保持し、固化乃至は硬化せしめることにより、目的とする鋳型を得ることを特徴とする鋳型の製造方法。
  15. 前記成形型が、80℃〜200℃の温度に加熱されていることを特徴とする請求項14に記載の鋳型の製造方法。
  16. 請求項13に記載の製造方法で得られた乾態の鋳型材料組成物を用い、これに水を添加して湿態化させ、その湿態状のコーテッドサンドを成形型内に充填した後、かかる成形型内で保持し、固化乃至は硬化せしめることにより、目的とする鋳型を得ることを特徴とする鋳型の製造方法。
  17. 前記成形型が、80℃〜300℃の温度に加熱されていることを特徴とする請求項16に記載の鋳型の製造方法。
  18. 前記鋳型材料組成物の前記成形型での保持中に、かかる成形型内に、熱風または過熱水蒸気が通気せしめられることを特徴とする請求項14乃至請求項17の何れか1項に記載の鋳型の製造方法。
  19. (a)耐火性骨材と、(b)水ガラスを必須成分とする粘結材と、(c)硝酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群より選ばれた少なくとも一つの硝酸塩とを、混和せしめることにより、湿態の混合物として取り出すようにしたことを特徴とする鋳型材料組成物の製造方法。
  20. 請求項19に記載の製造方法で形成されてなる湿態の鋳型材料組成物を用い、これを、加熱された成形型内に充填した後、かかる成形型内で保持し、固化乃至は硬化せしめることにより、目的とする鋳型を得ることを特徴とする鋳型の製造方法。
  21. 前記成形型が、80℃〜300℃の温度に加熱されていることを特徴とする請求項20に記載の鋳型の製造方法。
  22. 請求項1乃至請求項12の何れか1項に記載の鋳型材料組成物を用いて積層造形して、目的とする鋳型を形成することを特徴とする鋳型の製造方法。
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