JPWO2018138838A1 - 質量分析方法及び質量分析装置 - Google Patents
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Abstract
分析時に制御部(7)は、適宜の量の不活性ガスが四重極マスフィルタ(4)の内部空間に導入されるようにガス導入部(11)を制御する。イオン源(2)で生成され四重極マスフィルタ(4)の内部空間を通過しようとするイオンは導入されたガスに接触しクーリングされる。四重極マスフィルタ(4)のロッド電極配置のずれ等によって、該フィルタ(4)で形成される四重極電場には多重極成分が重畳し、それによって非線形共鳴が生じる。四重極マスフィルタ(4)を通過するイオンがクーリングされることで、非線形共鳴による不所望のエネルギーの増加が抑制されるために、マススペクトル上でのピークの歪みが軽減される。
Description
本発明は、特定の質量電荷比m/zを有するイオンを選択する四重極マスフィルタを用いた質量分析装置、及び該質量分析装置における質量分析方法に関する。なお、ここでいう質量分析装置は、唯一の質量分離器として四重極マスフィルタを用いる一般的なシングル四重極型質量分析装置のみならず、MS/MS分析を行うために二段の四重極マスフィルタを備えた三連四重極型質量分析装置や四重極マスフィルタで選択したイオンを解離したあとに飛行時間型質量分離器で質量電荷比に応じて分離して検出するQ−TOF型質量分析装置を含むものとする。
一般的な四重極型質量分析装置では、試料から生成された各種イオンを四重極マスフィルタに導入して特定の質量電荷比m/zを有するイオンのみを選択的に通過させ、通過したイオンを検出器で検出してイオンの量に応じた強度信号を取得する。
四重極マスフィルタは一般に、直線状のイオン光軸を取り囲むように互いに平行に配置された4本のロッド電極から成り、その4本のロッド電極にそれぞれ直流電圧と高周波電圧を加算した電圧が印加される。その印加電圧によって四重極マスフィルタの内部空間には四重極電場が形成され、或る特定の質量電荷比を有する又は質量電荷比範囲に含まれるイオンのみが適当に振動しつつ四重極マスフィルタの内部空間を通過し、それ以外のイオンは途中で発散してしまう。イオンが安定的に四重極マスフィルタを通過し得る条件については、比較的古くから理論的に研究されている。
非特許文献1等に開示されているように、理想的な四重極電場におけるイオンの挙動はよく知られているものの、現実の四重極マスフィルタにおいて理想的な四重極電場を形成することは非常に難しい。例えば、理想的なロッド電極はイオン光軸に向いた断面形状が双曲線形状であるが、多くの場合、製造上の煩雑さを避けるため、ロッド電極としては断面円形状のものが用いられる。また、各ロッド電極の加工精度や複数のロッド電極の組立精度の限界により、四重極マスフィルタの構成は理想状態からずれることになる。そのために、四重極マスフィルタにより形成される四重極電場にはより高い次数の多重極電場成分が重畳することになり、そうした電場を通過するイオンの挙動は理想的な四重極電場を通過する場合とは異なるものとなる。その結果、所定の質量電荷比範囲に亘る質量走査を行いつつ所定の質量電荷比を有するイオンを観測した場合、得られるマススペクトルにおいて目的イオンに対応するピークの形状は多少なりとも歪むことになる。
具体的には、四重極マスフィルタにおいて理想的な四重極電場からのずれがあると非線形共鳴現象が生じ、それによって、本来は図4(a)に示すような形状であるべきピークが図4(b)に示すように頂部が割れた形状となることが知られている(非特許文献3、4等参照)。
こうした課題に対して、従来、例えば非特許文献2では、各ロッド電極の半径と複数のロッド電極の内接円半径との比、つまりはロッド電極の位置を調整することで、高次の多重極電場成分を軽減してマススペクトル上のピークの歪みを改善する試みがなされている。
しかしながら、ロッド電極の組立誤差は装置毎に異なるため高次の多重極電場成分の大きさも装置毎に異なり、装置毎に個別にロッド電極の位置を調整しないと、高次の多重極電場成分を十分に軽減することは難しい。こうした作業は非常に手間が掛かるため、あまり実用的ではない。
しかしながら、ロッド電極の組立誤差は装置毎に異なるため高次の多重極電場成分の大きさも装置毎に異なり、装置毎に個別にロッド電極の位置を調整しないと、高次の多重極電場成分を十分に軽減することは難しい。こうした作業は非常に手間が掛かるため、あまり実用的ではない。
榮欧樹、ほか3名、「安定領域図による四重極質量分析計の特性評価」、島津評論、2009年、第66巻、第1・2号、pp.73-80
ドウグラス(D.J.Douglas)、「リニア・クァドルポールズ・イン・マス・スペクトロメトリー(Linear quadrupoles in mass spectrometry)」、Mass Spectrom Rev.、2009年、Vol.28、pp.937-960
ワン(Y. Wang)、「ノン-リニア・レゾナンス・コンディションズ・アンド・ゼア・リレイションシップス・トゥー・ハイアー・マルチポール・フィールズ・イン・イオン・トラップス・アンド・クァドルポール・マス・フィルタ(Non-linear resonance conditions and their relationships to higher multipole fields in ion traps and quadrupole mass filters)」、Rapid communication in mass spectrometry、1993年、Vol.7、pp.920-928
ワン(Y. Wang)、ほか2名、「ザ・ノン-リニア・レゾナンス・イオン・トラップ。パート2・ア・ジェネラル・セオリティカル・アナリシス(Non-linear resonance ion trap. Part 2. A general theoretical analysis)」、International Journal of Mass Spectrometry and Ion Processes、1993年、Vol.124、pp.125-144
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その主たる目的とするところは、四重極マスフィルタにより形成される四重極電場が理想的でないことに起因するマススペクトル上のピークの歪みを簡便に軽減することができる質量分析装置及び質量分析方法を提供することにある。
四重極型質量分析装置に限らず質量分析装置では、通常、イオンを質量電荷比に応じて分離する質量分離器はできるだけ高い真空度に維持されるチャンバ内に配置される。これは、例えば四重極型質量分析装置においては、四重極マスフィルタを通り抜け得る条件であるイオンが残留ガスに接触すると、その軌道が変化して通り抜けることができなくなるおそれがあるからである。即ち、質量分離器が比較的低い真空度の下に置かれると、イオンの透過率が低下して検出感度の低下に繋がるからである。これに対し本発明者は、各種条件の下でのシミュレーション計算と検討を繰り返す中で、四重極マスフィルタをイオンが通過する領域において該イオンと中性ガス粒子との接触の機会が多いと、イオンの透過率は下がるものの、マススペクトル上のピークの歪みは逆に軽減されるとの知見を得た。これは、高次の多重極電場成分のために非線形共鳴により増大したイオンのエネルギーが中性ガス粒子との接触によりクーリングされた効果であると推察される。本発明はこうした知見に基づいてなされたものである。
上記課題を解決するために成された本発明に係る質量分析方法は、所定の質量電荷比を有する又は所定の質量電荷比範囲に含まれるイオンを選択的に通過させる四重極マスフィルタを真空室の内部に具備する質量分析装置を用いた質量分析方法であって、
分析時に、少なくとも前記四重極マスフィルタにおいてイオンが通過しようとする空間におけるガス圧が、前記真空室内を真空排気する真空ポンプを最大排気速度で作動させたときのガス圧よりも高くなるように、該真空ポンプの排気速度又は外部から該真空室内へのガスの導入量を調整することで、前記四重極マスフィルタにおける前記空間でのイオンとガスとの接触による該イオンのクーリングを行うようにしたことを特徴としている。
分析時に、少なくとも前記四重極マスフィルタにおいてイオンが通過しようとする空間におけるガス圧が、前記真空室内を真空排気する真空ポンプを最大排気速度で作動させたときのガス圧よりも高くなるように、該真空ポンプの排気速度又は外部から該真空室内へのガスの導入量を調整することで、前記四重極マスフィルタにおける前記空間でのイオンとガスとの接触による該イオンのクーリングを行うようにしたことを特徴としている。
また上記課題を解決するために成された本発明に係る質量分析装置の第1の態様は、所定の質量電荷比を有する又は所定の質量電荷比範囲に含まれるイオンを選択的に通過させる四重極マスフィルタを真空室の内部に具備する質量分析装置であって、
a)前記四重極マスフィルタにおいてイオンが通過しようとする空間に、クーリング用ガスを導入するガス導入部と、
b)前記ガス導入部によるガス導入量を制御する制御部と、
を備えることを特徴としている。
a)前記四重極マスフィルタにおいてイオンが通過しようとする空間に、クーリング用ガスを導入するガス導入部と、
b)前記ガス導入部によるガス導入量を制御する制御部と、
を備えることを特徴としている。
また上記課題を解決するために成された本発明に係る質量分析装置の第2の態様は、所定の質量電荷比を有する又は所定の質量電荷比範囲に含まれるイオンを選択的に通過させる四重極マスフィルタを真空室の内部に具備する質量分析装置であって、
a)前記真空室内を真空排気する真空ポンプと、
b)分析時に前記真空室内のガス圧が、前記真空ポンプを最大排気速度で作動させたときの前記真空室内のガス圧よりも高い所定のガス圧となるように、前記真空ポンプの排気速度を制御する制御部と、
を備えることを特徴としている。
a)前記真空室内を真空排気する真空ポンプと、
b)分析時に前記真空室内のガス圧が、前記真空ポンプを最大排気速度で作動させたときの前記真空室内のガス圧よりも高い所定のガス圧となるように、前記真空ポンプの排気速度を制御する制御部と、
を備えることを特徴としている。
即ち、従来一般的な質量分析装置では、四重極マスフィルタが配置された真空室内のガス圧をできるだけ低くするように真空ポンプを最大排気速度で作動させる。これに対し、本発明に係る質量分析方法及び質量分析装置では、分析時に、真空ポンプを最大排気速度よりも低い能力で作動させることで、或いは、ガス導入部により所定のガス(通常は不活性ガス)を四重極マスフィルタのロッド電極で囲まれる空間に意図的に導入することで、中性粒子が該空間に比較多く存在するようにする。それによって、四重極マスフィルタへの印加電圧に応じた通過条件に適合したイオンが四重極マスフィルタの内部空間を通過しようとする際に、該イオンは中性粒子に接触し易くなりクーリングが促進される。その結果、四重極マスフィルタにより形成される電場に高次の多重極成分が多く、非線形共鳴が生起される場合でも、それによる不所望のエネルギー増大が抑制され、マススペクトル上でのピークの歪みが軽減されることになる。
ただし、四重極マスフィルタの内部空間で分析目的であるイオンと中性粒子との接触の機会が増加すると、本来であれば四重極マスフィルタを通り抜ける筈である一部のイオンの軌道が変化してしまいイオンの透過効率が下がることになる。即ち、四重極マスフィルタの内部空間におけるガス圧を高くすると、マススペクトル上のピークの歪みが軽減されることでマススペクトルの精度は向上するものの、信号強度自体は下がって感度が低下するおそれがある。そのため、もともと分析目的であるイオンの量が少ないような場合、四重極マスフィルタの内部空間でのイオンのクーリングを促進すると十分な信号強度が観測されなくなる可能性がある。
そこで、本発明に係る質量分析装置の上記第1の態様においては、前記制御部の制御の下でのガス導入量が相対的に多い高精度測定モードと、該ガス導入量が相対的に少ない高感度測定モードとを、ユーザーによる選択可能に有する構成とするとよい。
一方、本発明に係る質量分析装置の上記第2の態様においては、前記制御部の制御の下でのガス圧の目標値が相対的に高い高精度測定モードと、該ガス圧の目標値が相対的に低い高感度測定モードとを、ユーザーによる選択可能に有する構成とするとよい。
これら構成によれば、高精度測定モードでは四重極マスフィルタの内部空間においてイオンのクーリングが促進されるので上述したようにマススペクトル上でのピークの歪みが軽減され、良好な形状のピークを取得することができる。一方、高感度測定モードでは四重極マスフィルタの内部空間においてイオンのクーリングが相対的に生じにくいので、マススペクトル上でピークの歪みが目立ち易いもののイオン透過効率が高いので、高い信号強度のピークを得ることができる。それにより、分析の目的や分析目的である成分の量などに応じて精度を優先した測定と感度を優先した測定とをユーザーが自在に選択することができる。
本発明に係る質量分析装置及び質量分析方法によれば、四重極マスフィルタにより形成される四重極電場が理想的でなく多重極成分が重畳している場合でも、それに起因するマススペクトル上のピークの歪みを簡便に軽減することができる。特に本発明に係る質量分析装置及び質量分析方法によれば、ピークの歪みを軽減するためにロッド電極の形状や配置などの機械的な要素を変更する必要がなく、電気的な制御のみでピークの歪みを軽減することができるので、仮に装置個別に調整が必要な場合であっても手間が掛からず自動調整も容易である。
本発明に係る四重極型質量分析装置の一実施例について、添付図面を参照して説明する。
図1は本実施例の四重極型質量分析装置の概略構成図である。
図1は本実施例の四重極型質量分析装置の概略構成図である。
本実施例の四重極型質量分析装置は、真空ポンプ9により真空排気される略密閉された構造である真空室1の内部に、イオン源2、イオンレンズ3、四重極マスフィルタ4、及び検出器5、を備える。検出器5で得られた検出信号はデータ処理部6に入力される。真空室1内の真空度(ガス圧)はイオンゲージ等の真空計10により検出され、制御部7は検出される真空度に応じて、真空ポンプ9の動作と四重極マスフィルタ4の内部空間に所定のガスを導入するガス導入部11の動作を制御する。制御部7にはユーザーが操作する入力部8が接続されている。
イオン源2は例えば電子イオン化(EI)法により、外部から導入された試料ガス中の成分(化合物)をイオン化する。イオン源2で生成され図1中に白抜き矢印で示すように右方に引き出されたイオンは、イオンレンズ3による電場の作用で収束されて四重極マスフィルタ4に導入される。四重極マスフィルタ4はイオン光軸Cを中心にその周りに平行に配置された4本のロッド電極からなり、図示しない電源部から、4本のロッド電極にそれぞれ直流電圧に高周波電圧を重畳した電圧が印加される。
イオン光軸Cに沿って四重極マスフィルタ4の長軸方向の空間に導入されたイオンのうち、該四重極マスフィルタ4のロッド電極に印加されている直流電圧と高周波電圧により形成される電場の作用により、特定の質量電荷比を有する(又は質量電荷比範囲に含まれる)イオンのみがイオン光軸C付近を振動しながら通り抜け、他のイオンは途中で発散する。四重極マスフィルタ4を通り抜けたイオンは検出器5に到達し、検出器5は到達したイオンの量に応じた検出信号を生成してデータ処理部6へと送る。四重極マスフィルタ4のロッド電極に印加する直流電圧と高周波電圧とを所定の関係を保ちつつそれぞれ変化させると、四重極マスフィルタ4を通り抜け得るイオンの質量電荷比が変化する。そこで、その直流電圧と高周波電圧とをそれぞれ所定の範囲で走査することによって、検出器5に到達し得るイオンの質量電荷比を所定の範囲で変化させることができる。データ処理部6は、それにより得られた検出信号に基づいて、質量電荷比と信号強度との関係を示すマススペクトルを作成することができる。
真空室1内を高い真空度に維持するため、通常、真空ポンプ9はターボ分子ポンプとロータリポンプとの組み合わせが利用される。従来の質量分析装置においては、分析実行時に、真空ポンプ9は最大排気速度又はそれに近い速度で作動され、真空室1内は高い真空度に維持されるが、本実施例の質量分析装置では以下に述べるように特徴的な制御が行われる。
図2は、四重極マスフィルタの内部空間における、Arガスによるクーリングを考慮した場合とクーリングを考慮しない場合とのマススペクトル上のピーク波形のシミュレーション結果を示す図である。シミュレーションでは、クーリングありの場合にはイオンとArガスとの接触を考慮してイオンの平均自由行程を25cmに制限する一方、クーリングなしの場合には平均自由行程を制限せず、質量電荷比がm/z 500付近のイオンに対するイオン相対透過量を計算した。図2に示すように、クーリングなしの場合にはクーリングありの場合に比べて相対透過量は2.5倍程度高いものの、ピークの頂部に大きな割れが生じている。これが上述した非線形共鳴に起因する現象である。逆にクーリングありの場合には、相対透過量は低下するものの、ピーク頂部の割れはほぼ解消されている。このことから、四重極マスフィルタの内部空間において通過しようとするイオンをクーリングすることにより、非線形共鳴によるピークの歪みが軽減できることが分かる。
四重極マスフィルタ4の内部空間でイオンをクーリングするには、該空間における中性ガス粒子の密度を高めればよい。これは、従来、真空室1内の真空度をできるだけ高くしてイオンが残留ガス等に接触しないようにすることとは全く逆の作用である。本実施例の質量分析装置では、四重極マスフィルタ4の内部空間における中性ガス粒子の密度を高めるために二つの方法のいずれかを採ることができる。
[1]真空ポンプ9の動作制御
上記方法の一つは、真空ポンプ9の排気速度つまりは排気性能を抑えることで、真空室1内の真空度を意図的に低下させることである。この場合、ガス導入部11は使用しない。
制御部7にはクーリングによるピーク波形形状の改善効果が得られるような真空度目標値が予め(分析実行前に)設定されている。この真空度目標値は本装置の製造メーカーが実験的に求めてメモリに記憶させておくようにしてもよいし、装置を使用するユーザーが実験的に調べてメモリに記憶させるようにしてもよい。いずれにしても、分析に際して制御部7は、真空計10で検出される真空度が真空度目標値になるように真空ポンプ9の排気速度を制御する。このときの排気速度は真空ポンプ9の最大排気速度よりも小さく、真空室1内には、連続的に供給される試料ガスの多くを占める不活性ガス(例えば前段に接続されるガスクロマトグラフで使用されるHe、N2、Ar等のキャリアガス)が適度に残留する。イオン源2で生成され四重極マスフィルタ4の内部空間を通り抜けようとするイオンは、こうした残留ガスに接触しクーリングされる。それによって、非線形共鳴による不所望のエネルギーの増加が抑えられ、マススペクトル上でのピークの割れ等の歪みを軽減することができる。
上記方法の一つは、真空ポンプ9の排気速度つまりは排気性能を抑えることで、真空室1内の真空度を意図的に低下させることである。この場合、ガス導入部11は使用しない。
制御部7にはクーリングによるピーク波形形状の改善効果が得られるような真空度目標値が予め(分析実行前に)設定されている。この真空度目標値は本装置の製造メーカーが実験的に求めてメモリに記憶させておくようにしてもよいし、装置を使用するユーザーが実験的に調べてメモリに記憶させるようにしてもよい。いずれにしても、分析に際して制御部7は、真空計10で検出される真空度が真空度目標値になるように真空ポンプ9の排気速度を制御する。このときの排気速度は真空ポンプ9の最大排気速度よりも小さく、真空室1内には、連続的に供給される試料ガスの多くを占める不活性ガス(例えば前段に接続されるガスクロマトグラフで使用されるHe、N2、Ar等のキャリアガス)が適度に残留する。イオン源2で生成され四重極マスフィルタ4の内部空間を通り抜けようとするイオンは、こうした残留ガスに接触しクーリングされる。それによって、非線形共鳴による不所望のエネルギーの増加が抑えられ、マススペクトル上でのピークの割れ等の歪みを軽減することができる。
[2]外部からのガスの導入
他の一つの方法は、四重極マスフィルタ4の内部空間にガス導入部11から不活性ガスを連続的に又は間欠的に導入するものである。不活性ガスの供給量、供給時間などのパラメータはクーリングによるピーク波形形状の改善効果が得られるように予め定めておけばよい。イオン源2で生成され四重極マスフィルタ4の内部空間を通り抜けようとするイオンは、ガス導入部11から該空間に供給された不活性ガスに接触しクーリングされる。それによって、非線形共鳴による不所望のエネルギーの増加が抑えられ、マススペクトル上でのピークの割れ等の歪みを軽減することができる。
他の一つの方法は、四重極マスフィルタ4の内部空間にガス導入部11から不活性ガスを連続的に又は間欠的に導入するものである。不活性ガスの供給量、供給時間などのパラメータはクーリングによるピーク波形形状の改善効果が得られるように予め定めておけばよい。イオン源2で生成され四重極マスフィルタ4の内部空間を通り抜けようとするイオンは、ガス導入部11から該空間に供給された不活性ガスに接触しクーリングされる。それによって、非線形共鳴による不所望のエネルギーの増加が抑えられ、マススペクトル上でのピークの割れ等の歪みを軽減することができる。
なお、上述したような効果を得るのに適切な真空度やガス供給量は分析対象であるイオンの質量電荷比によっても相違する。そこで、例えば選択イオンモニタリング(SIM)測定のように分析対象であるイオンの質量電荷比が決まっている場合には、その質量電荷比に応じた真空度やガス供給量になるように真空ポンプ9やガス導入部11を制御してもよい。
図3は本発明の他の実施例の四重極型質量分析装置の概略構成図である。図1に示した実施例の装置と同じ構成要素には同じ符号を付している。
図2から分かるように、四重極マスフィルタの内部空間においてクーリングを行うとピーク歪みは改善されるもののイオンの相対透過量が減少しその分だけ感度が低下する。そのため、微量分析等、分析対象であるイオンの量が元々少ない場合には、クーリングを行うと目的イオンが十分な信号強度で観測できなくなるおそれがある。そこで、図3に示した質量分析装置では、ピーク歪みの軽減を優先した高精度測定モードと検出するイオン量の多さを優先した高感度測定モードとを有し、それら二つの測定モードの切替えを可能としている。
図2から分かるように、四重極マスフィルタの内部空間においてクーリングを行うとピーク歪みは改善されるもののイオンの相対透過量が減少しその分だけ感度が低下する。そのため、微量分析等、分析対象であるイオンの量が元々少ない場合には、クーリングを行うと目的イオンが十分な信号強度で観測できなくなるおそれがある。そこで、図3に示した質量分析装置では、ピーク歪みの軽減を優先した高精度測定モードと検出するイオン量の多さを優先した高感度測定モードとを有し、それら二つの測定モードの切替えを可能としている。
入力部8はモード選択部81を含み、制御部8は目標真空度切替部71を含む。分析実行に先立ってユーザーは、分析の目的、試料の種類などに応じて高精度測定モード又は高感度測定モードの一方をモード選択部81により選択する。この選択指示を受けると、制御部7において目標真空度切替部71は真空度目標値を高精度測定モードではP1、高感度測定モードではP1よりも高い(ガス圧は低い)P2に設定する。高感度測定モードでは真空度目標値を定めずに最大排気速度で真空ポンプ9を連続的に作動させるようにしてもよい。また、真空ポンプ9の制御ではなくガス導入部11からのガス供給量を各測定モードに応じて切り替えるようにしてもよい。いずれにしても、高感度測定モードが選択された場合には高精度測定モードが選択された場合に比べて、四重極マスフィルタ4の内部空間におけるガス圧が低くなり、イオンがガスに接触する可能性は低くなる。それにより、クーリングの効果は実質的に得られないためにピーク歪みは軽減されないものの、イオンの透過率が高まり検出感度の点で有利である。
なお、図1、図3に示した実施例は本発明をシングル四重極型質量分析装置に適用したものであるが、本発明はそれ以外の四重極マスフィルタを利用した各種質量分析装置、具体的には、三連四重極型質量分析装置やQ−TOF型質量分析装置に適用することができることは明らかである。これら質量分析装置はイオンを衝突誘起解離させるためにコリジョンセルを有し、該コリジョンセル内には衝突ガスとしてAr等の不活性ガスが導入されるため、こうした不活性ガスを四重極マスフィルタの内部空間でのクーリングに利用することもできる。
また、上記実施例は本発明の一例に過ぎず、上記記載の変形例にとどまらず、本発明の趣旨の範囲で適宜、変更や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
1…真空室
2…イオン源
3…イオンレンズ
4…四重極マスフィルタ
5…検出器
6…データ処理部
7…制御部
71…目標真空度切替部
8…入力部
81…モード選択部
9…真空ポンプ
10…真空計
11…ガス導入部
C…イオン光軸
2…イオン源
3…イオンレンズ
4…四重極マスフィルタ
5…検出器
6…データ処理部
7…制御部
71…目標真空度切替部
8…入力部
81…モード選択部
9…真空ポンプ
10…真空計
11…ガス導入部
C…イオン光軸
Claims (5)
- 所定の質量電荷比を有する又は所定の質量電荷比範囲に含まれるイオンを選択的に通過させる四重極マスフィルタを真空室の内部に具備する質量分析装置を用いた質量分析方法であって、
分析時に、少なくとも前記四重極マスフィルタにおいてイオンが通過しようとする空間におけるガス圧が、前記真空室内を真空排気する真空ポンプを最大排気速度で作動させたときのガス圧よりも高くなるように、該真空ポンプの排気速度又は外部から該真空室内へのガスの導入量を調整することで、前記四重極マスフィルタにおける前記空間でのイオンとガスとの接触による該イオンのクーリングを行うようにしたことを特徴とする質量分析方法。 - 所定の質量電荷比を有する又は所定の質量電荷比範囲に含まれるイオンを選択的に通過させる四重極マスフィルタを真空室の内部に具備する質量分析装置であって、
a)前記四重極マスフィルタにおいてイオンが通過しようとする空間に、クーリング用ガスを導入するガス導入部と、
b)前記ガス導入部によるガス導入量を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする質量分析装置。 - 所定の質量電荷比を有する又は所定の質量電荷比範囲に含まれるイオンを選択的に通過させる四重極マスフィルタを真空室の内部に具備する質量分析装置であって、
a)前記真空室内を真空排気する真空ポンプと、
b)分析時に前記真空室内のガス圧が、前記真空ポンプを最大排気速度で作動させたときの前記真空室内のガス圧よりも高い所定のガス圧となるように、前記真空ポンプの排気速度を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする質量分析装置。 - 請求項2に記載の質量分析装置であって、
前記制御部の制御の下でのガス導入量が相対的に多い高精度測定モードと、該ガス導入量が相対的に少ない高感度測定モードとを、ユーザーによる選択可能に有することを特徴とする質量分析装置。 - 請求項3に記載の質量分析装置であって、
前記制御部の制御の下でのガス圧の目標値が相対的に高い高精度測定モードと、該ガス圧の目標値が相対的に低い高感度測定モードとを、ユーザーによる選択可能に有することを特徴とする質量分析装置。
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