JP7409260B2 - 質量分析方法及び質量分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は質量分析方法及び質量分析装置に関し、さらに詳しくは、飛行時間型質量分離器を用いた質量分析方法及び質量分析装置に関する。
イオントラップ飛行時間型質量分析装置は、特許文献1等に開示されているように、イオントラップと飛行時間型質量分離器と、を備える。イオントラップ飛行時間型質量分析装置では、試料から生成された各種イオンを一旦イオントラップの内部に捕捉したあと、その各種イオンを一斉に加速して該イオントラップから射出し、飛行時間型質量分離器に導入する。加速された各イオンはその質量電荷比(厳密には斜字体のm/zであるが、本明細書中では慣用的に「質量電荷比」と記す)に応じた速度を有するため、飛行時間型質量分離器の飛行空間をイオンが飛行する間に該イオンは質量電荷比に応じて分離され、検出器に到達して検出される。
飛行時間型質量分析装置(以下、慣用に従って「TOFMS」と称すことがある)では、イオンが飛行する距離が長いほど質量分解能が向上する。そのため、一般に、直線状にイオンを飛行させるリニア型よりも、特許文献1に開示されているような、イオンを往復飛行させるリフレクトロン型のほうが高い質量分解能が得られ易い。
また、特許文献2、3には、イオンを2回以上反射させるリフレクトロンを搭載することにより、飛行長をさらに延長することができるTOFMSが開示されている。このように、2回以上の反射によってイオンの飛行長を延長するTOFMSは、マルチリフレクトロン型TOFMSと呼ばれている。
また、特許文献4には、ほぼ同じ軌道に沿ってイオンを多数回周回させることでイオンの飛行長をさらに延長することができるTOFMSが開示されている。さらにまた、特許文献5には、1周の軌道が略円形状、略楕円形状、或いは略8の字状等の形状であり、イオンがその軌道を1周する毎に少しずつ軌道がずれるようにすることで、イオンが同じ軌道に沿って飛行することを避けながら周回数を増やし、飛行長を延長することができるTOFMSが開示されている。このように、多数回の周回軌道によってイオンの飛行長を延長するTOFMSは、マルチターン型TOFMSと呼ばれている。特に、このマルチターン型TOFMSでは、装置を大形化することなく飛行長を大幅に延ばすことが可能であり、小形でありながら高い質量分解能を達成することができる。
一方、イオントラップとしては、特許文献1に開示されている、1個のリング状電極と2個一対のエンドキャップとを含む3次元四重極型のイオントラップのほかに、中心軸を囲むように該中心軸に平行に配置された4本のロッド状電極と、それらロッド状電極を挟むように配置された一対のエンドキャップ電極を含むリニア型のイオントラップも知られている。
例えば特許文献6に開示されているイオントラップ装置では、軸方向に分割された複数の電極から成るリニア型イオントラップの内部にクーリングガスを導入し、イオンを効率的に該イオントラップの内部に捕捉すると共に、クーリングによってエネルギーを十分に低減したイオンを飛行時間型質量分離器に向けて射出する構成が開示されている。
国際公開第2008/072377号 米国特許第9281175号明細書 米国特許第6570152号明細書 国際公開第2010/049972号 国際公開第2013/057505号 米国特許第10600631号明細書
上述したように、飛行時間型質量分離器を用いた質量分析装置では、イオンの飛行距離を延ばしたほうが質量分解能を高めることができるものの、その反面、飛行距離を延ばすほど飛行途中でのイオンの損失が増え、検出器に到達するイオンの量が減少して検出感度が低くなる、という問題がある。飛行途中でのイオンの損失の一因として考えられるのは、飛行経路中に残留しているガスとの衝突によるイオンの散逸である。これをできるだけ抑えるために、通常、飛行時間型質量分離器が配置されるチャンバーの内部は高い真空度に維持されるようになっている。
近年、生体試料等の試料にごく微量に含まれる化合物の検出に質量分析が頻用されており、検出感度の向上には強い要望がある。また、衝突誘起解離(Collision-Induced Dissociation:CID)等の手法により試料由来のイオンを解離させて分析するMSn分析を行う場合には、質量分析の対象となるイオンの量が元の化合物の量に比べて格段に少なくなることがしばしばあるため、より高い検出感度が要求される。こうしたことから、TOFMSでは従来にも増して、分析対象であるイオンの損失を軽減することにより検出感度を向上させることが重要となっている。
本発明はこうした課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、イオン加速部で加速されたイオンが検出器に到達するまでの経路におけるイオンの損失を軽減して、検出感度を向上させることができる質量分析方法及び質量分析装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された本発明に係る質量分析方法の一態様は、分析対象であるイオンをクーリングガスに接触させてクーリングしたあとに、該イオンに運動エネルギーを付与し、イオンを質量電荷比に応じて分離するための飛行空間に導入して質量分析する質量分析方法であって、
分析対象であるイオンの既知である又は推定される価数が高いときに、該価数が低いときよりも、イオンに対してクーリングを行うクーリング部に供給するクーリングガスの供給量を減らすようにしたものである。
また上記課題を解決するために成された本発明に係る質量分析装置の一態様は、
分析対象であるイオンをクーリングガスに接触させてクーリングするクーリング部と、 クーリングされたあとのイオンに運動エネルギーを付与するイオン加速部と、
質量電荷比に応じてイオンを分離するためのものであり、前記イオン加速部において運動エネルギーを付与されたイオンが導入される飛行空間、を含む飛行時間型質量分離部と、
前記飛行時間型質量分離部で分離されたイオンを検出する検出部と、
前記クーリング部に供給するクーリングガスの供給量を調整するものであって、分析対象であるイオンの、既知である又は推定される価数が高いときに、該価数が低いときよりも、前記供給量を減らすように変化させる供給量調整部と、
を備えるものである。
イオントラップ飛行時間型質量分析装置では、一般に、上述したようにイオントラップにイオンを一旦捕捉する際にクーリングガス(一般的にはAr、He、N2などの不活性ガス)を用いたクーリング(冷却)が行われる。また、イオントラップを使用しない直交加速方式の飛行時間型質量分析装置でも、直交加速部へ入射するイオンの速度を抑えるために又はイオンを軸近傍に収束させ易くするために、クーリングが行われる場合がある。例えばイオントラップ飛行時間型質量分析装置では、クーリングによってイオンの運動エネルギーが減じられることで、イオンがイオントラップの中心付近に集まり易くなり、加速によるイオン射出の際のイオンの位置のばらつき、速度のばらつき、射出角度(方向)のばらつきなどが軽減されて質量精度や質量分解能が向上する。
しかしながら、イオントラップなどのクーリング部に供給されたクーリングガスの一部は、射出されたイオンが飛行空間に入るまでのイオン導入経路や飛行空間内のイオンの飛行経路に流入し、残留ガスとしてイオンに衝突してイオン損失の一因となる可能性がある。このイオンと残留ガスとの衝突の可能性は、イオンの衝突断面積が大きいほど高い筈である。そこで、本発明者は、イオンの衝突断面積について種々の検討を行い、特に高分子化合物においてイオンの価数と衝突断面積とが高い相関性を有することを見出した。この知見によれば、価数の高いイオンは価数が低いイオンに比べて衝突断面積が大きく、そのために残留ガスとの衝突の可能性が相対的に高く、イオンの損失も増加すると推測される。
そこで、本発明に係る質量分析方法及び質量分析装置の一態様では、分析対象であるイオンの価数が予め分かっている或いは推測される場合に、その価数に応じてクーリングガス供給量を変化させる。具体的には、分析対象であるイオンの価数が高い又は高いと推測される場合には、分析対象であるイオンの価数が低い場合に比べて、クーリングガスの供給量を減少させる。それによって、クーリング部から上記イオン導入経路や飛行経路に流れ込むガス量自体を減少させ、それら経路における残留ガスの量を減らすことができる。その結果として、衝突断面積が大きな高価数のイオンも残留ガスに衝突しにくくなり、衝突によるイオンの損失を軽減することができる。
本発明に係る質量分析方法及び質量分析装置の一態様によれば、特に衝突断面積が大きいために残留ガスとの衝突による損失が生じ易い、分子量が大きく高価数であるイオンの損失を軽減することができる。これによって、分子量が大きく高価数であるイオンの検出感度を向上させることができる。
本発明に係る質量分析装置の一実施形態であるMT-TOFMSの概略ブロック構成図。 本実施形態のMT-TOFMSにおけるMT型質量分離部の縦断面図(A)及び上面図(B)。 図2に示したMT型質量分離部におけるイオンの軌道を示す上面図。 本発明に係る質量分析装置の基本的なブロック構成図。 イオンの価数と衝突断面積との関係を示すグラフ。 繰り返し測定時の測定シーケンスを示す図。
[本発明に係る質量分析方法の原理]
まず、本発明が解決しようとする課題が生じる要因とその解析手法の原理を説明する。
図4は、一般的な質量分析装置のごく概略的な構成図である。図4(A)はイオントラップTOFMSなどの、イオントラップを備える装置である。一方、図4(B)は、直交加速方式TOFMSなどの、イオントラップを備えない装置である。
図4(A)において、イオン源1は試料に含まれる化合物をイオン化する。生成された各種のイオンは、複数の電極から成るイオントラップ2に導入され、一旦捕捉される。このとき、イオントラップ2の内部にHeなどのクーリングガスが供給され、イオンをこのガスに衝突させることで該イオンが持つ運動エネルギーを減衰させる。即ち、イオンに対するクーリング操作が行われる。そのあと、イオントラップ2を構成する電極に所定の電圧が印加されることで、捕捉されていたイオンに一斉に運動エネルギーが付与され、イオンはイオントラップ2から射出されて飛行時間型質量分離器(TOF部)3に送り込まれる。イオンはTOF部3の飛行空間を飛行する間に質量電荷比に応じて分離され、イオン検出部4は分離されたイオンを順次検出して、イオン量に応じた強度の検出信号を出力する。TOF部3の飛行空間におけるイオンの飛行時間は、そのイオンの質量電荷比に依存する。したがって、イオン検出部4で得られた時間と信号強度との関係を示す飛行時間スペクトルから、質量電荷比と信号強度との関係を示すマススペクトルを求めることができる。
図4(A)に示した装置では、イオントラップ2においてクーリング操作とイオンの加速操作とが実行される。一方、図4(B)に示した装置では、イオンクーリング部2Aとイオン加速部2Bとが分離されている。イオンクーリング部2Aに導入されたイオンは、クーリングガスに接触して運動エネルギーを減じながら移動し、或る程度かたまりながらイオン加速部2Bに導入される。イオン加速部2Bは導入されたイオンを一斉に加速し、パケット状にTOF部3に送り込む。
図4(A)、(B)のいずれの構成においても、通常、TOF部3は特に高い真空度に維持されるチャンバー内に配置されている。しかしながら、その前段のイオントラップ2やイオンクーリング部2Aと完全に分離されている訳ではないため、クーリングガスの一部はTOF部3の飛行空間に流入する。また、飛行空間にまで流入しなくても、イオントラップ2やイオン加速部2Bにおけるイオン加速位置から飛行空間への入射位置までのイオン導入経路に、クーリングガスの一部が存在する。イオンがこうしたクーリングガスに由来する残留ガスと接触すると、散逸してしまってイオンの損失をもたらす。残留ガスを減らすためにクーリングガスの供給量自体を減らすことも考えられるものの、そうするとクーリング効果が低下し、クーリングによってもたらされる質量精度や質量分解能の改善効果が薄れる可能性がある。
そこで、本発明者は、イオンの衝突断面積に着目した。何故なら、イオンのクーリング効果も残留ガスとの接触によるイオンの損失も、イオンとガスとの接触によるものであり、その接触の確率はイオンの衝突断面積に依存する筈であるからである。
本発明者は、様々な高分子化合物について、イオンの価数と衝突断面積との関係を種々の文献値に基いて導出した。図5は、その結果を集約したグラフである。図5において、BSAはウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin)、MABはモノクローナル抗体(Monoclonal AntiBody)、AT2はアンジオテンシンII(Angiotensin II)である。また、括弧内のCIDはCollision-Induced Dissociation(衝突誘起解離)、DTはDriftTube(ドリフト管)、TwaveはTraveling wave(進行波)を意味し、それぞれCIDの際の値、一定電場中を飛行するときの値、進行波管中を移動するときの値である。
図5に記載されている化合物は、右方に位置するものほど分子量が大きく、分子量が大きくなるほど価数も高くなる。また、同じ化合物であっても、価数が高いほど衝突断面積が大きくなる傾向がある。これは、価数が高いほど、そのイオン自体の静電反発力によってイオンが拡がり、サイズが増大するためであると推測される。
衝突断面積が大きいイオンは衝突断面積が小さいイオンと比較してクーリングガスとの接触の確率が高いため、クーリング効果が相対的に高い反面、残留ガスとの接触も起こり易いために飛行途中で散逸してしまい感度の低下が生じ易い。従来の質量分析装置では、クーリングガスに起因する検出感度の低下は考慮されておらず、当然、それに対する改善策も試みられていない。これに対し、本発明に係る質量分析方法及び質量分析装置では、イオンの価数と衝突断面積とが相関性を有することを利用し、価数が高いイオンを分析する際には価数が低いイオンに比べてクーリングガスの供給量を減らし、それによってイオン導入経路や飛行経路に流入するクーリングガスの量を抑える。それにより、イオントラップ2やイオン加速部2Bからイオンが射出された時点から飛行空間に入るまでの期間、及び、TOF部3での飛行中の期間、に発生するイオンとクーリングガス由来の残留ガスとの衝突の頻度を低減させ、イオンの損失を抑制する。
一方、イオンの衝突断面積が大きいため、クーリングガスの供給量を減らしても、イオントラップ2内やイオンクーリング部2Aでのイオンとクーリングガスと接触の機会はそれほど減らず、十分なクーリング効果を得ることができる。もちろん、クーリングガス供給量を減らした状態でもクーリング効果をより確実に維持するために、クーリングガス供給量が多い場合に比べてクーリング時間を長くしてもよい。
なお、上述したように分析対象のイオンの価数によってクーリングガス供給量を変更するには、その分析対象のイオンの価数が事前に既知である又は推定可能である必要がある。また、分析対象のイオンが複数種類であってもよいが、化合物の種類が一つであるか複数であるかに拘わらず、その複数種類のイオンの価数が近い(つまりは高価数と低価数とが混在しない)ことが必要である。こうしたことから、全く未知である化合物を分析する際には本発明に係る手法は適用しにくい。試料に含まれる化合物が未知であったり、或いは化合物の種類は既知であっても価数が推定できなかったりする場合には、事前に予備的な質量分析を実施することで、分析対象であるイオンの価数を調べる又は推定するとよい。
もちろん、分析対象であるイオンの価数が不明であっても、価数が高いとみなしクーリングガス供給量を相対的に減らして分析を実行するとともに、価数が低いとみなしクーリングガス供給量を相対的に増やして分析を実行する、というように、異なるクーリングガス供給量の下での分析を複数回実行し、それらの結果を比較してもよい。
[一実施形態であるMT-TOFMSの構成及び動作]
次に、本発明に係る質量分析装置の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態のマルチターン型TOFMS(以下「MT-TOFMS」という)の概略構成図である。図2は、本実施形態のMT-TOFMSにおけるMT型質量分離部の縦断面図(A)及び上面図(B)である。図3は、図2に示したMT型質量分離部におけるイオンの軌道を示す上面図である。
本実施形態のMT-TOFMSは、イオン源1、イオントラップ2、TOF部3、イオン検出部4、電圧発生部5、制御部6、ガス供給部7、流量調整部8、及び入力部9、を含む。イオントラップ2、TOF部3、及び、イオン検出部4は、図示しないものの、真空ポンプにより真空排気されるチャンバー内に配置される。また、イオン源1はイオン化法の種類によって、真空排気されるチャンバー内に配置される場合と略大気圧であるイオン化室内に配置される場合とがある。
イオントラップ2はリニア型イオントラップであり、直線状のイオン光軸20の周りに回転対称に配置された4本の主電極21、22、23、24と、それら主電極21~24を挟むようにその両端に配置されたエンドキャップ電極25、26と、を含む。ここでは、エンドキャップ電極25、26も主電極21~24と同様に、それぞれイオン光軸20の周りに回転対称に配置された4本の電極である。即ち、イオン光軸20と同じ方向に延伸する4本のロッド状の電極がその軸方向に分割されることで、主電極21~24と、エンドキャップ電極25、26とが形成されている。
TOF部3は、回転楕円体状である外側電極311と、該外側電極311の内側に設けられた略回転楕円体状である内側電極312と、を有する主電極31を含む。図2(A)は、外側電極311及び内側電極312の略回転楕円体における回転軸であるZ軸と、該Z軸に垂直な一方向の軸であるX軸と、を含む平面であるZ-X平面での主電極31の端面図(縦端面図)である。主電極31は、Z軸を含む面で切断したときに、その断面の方位角(Z軸の周りの角度)に依らず、図2(A)に示したものと略同一の形状を呈する。図2(B)は、Z軸の正の方向から主電極31を見た上面図である。Z軸及びX軸に垂直な軸をY軸とし、X軸とY軸を含む平面をX-Y平面とする。
外側電極311及び内側電極312は、Z-X平面において曲線状である一対の電極を向かい合わせた3組の部分電極対S1、S2、及びS3と、Z-X平面において直線状である一対の電極を向かい合わせた4組の部分電極対L1、L2、L3、及びL4と、を組み合わせたものである。部分電極対S2は、Z-X平面において、主電極21のX軸方向に関する両端に配置されており、X軸について線対称の形状を有する。部分電極対S1は、部分電極対S2よりもZ軸方向の正の側に配置されている。部分電極対S3は、部分電極対S2よりもZ軸方向の負の側に、X軸に関して部分電極対S1と線対称となるように配置されている。部分電極対L2は部分電極対S1とS2の間に配置されている。部分電極対L3は部分電極対S2とS3の間に配置され、X軸に関して部分電極対L2と線対称の形状を有する。部分電極対L1は、Z軸に垂直なドーナツ板状の形状を有し、Z軸方向の正の側であってX-Y平面において部分電極対S1の内側に配置されている。部分電極対L4は、Z軸方向の負の側に、X軸に関して部分電極対L1と線対称となるように配置されている。
これら複数の部分電極対の組み合わせにより、外側電極311及び内側電極312はそれぞれ、全体として略回転楕円体の形状を呈している。外側電極311の外形のサイズは、例えば、長軸方向(X軸方向及びY軸方向)が500mm、短軸方向(Z軸方向)が300mmである。また、外側電極311と内側電極312との間隔は例えば20mmである。外側電極311及び内側電極312のサイズを全体的に小さくすることによって、MT-TOFMS全体を小形化することができる。もちろん、これらサイズは一例でありこれに限らない。
Z-X平面において曲線状である部分電極対S1、S2、及びS3には、電圧発生部5から、外側電極311から内側電極312に向かう電場が形成されるような電圧が印加される。一方、Z-X平面において直線状である部分電極対L1、L2、L3、及びL4には、電圧発生部5から、外側電極311と内側電極312とが同電位となるような電圧が印加される。これにより、外側電極311と内側電極312との間の空間に、該空間内でイオンを周回させる周回電場が形成される。ここでは、この空間を周回空間319という。
部分電極対S1の外側電極311には、イオントラップ2から射出されるイオンを周回空間319内に導入するイオン導入口34が設けられている。イオン導入口34は、X-Y平面から僅かにY軸方向の正の側にずれた位置に設けられており、イオントラップ2からイオンがX軸に略平行に入射するように配置されている。イオンは、イオン導入口34から周回空間319に入射した直後の位置において、部分電極対S1による周回電場から向心力を受ける。また、上述したようにイオン導入口34がX-Y平面からY軸方向の正の側にずれていることにより、イオンはX-Y平面の方向に向かう力を受ける。これにより、イオンは、周回空間319中を略楕円形の周回軌道に沿って周回し、1周する毎に、周回軌道がY軸方向の正の側から見て反時計回りに移動するような軌道318(図3参照)で飛行する。図3では、イオンの軌道318をX-Y平面の上面図で示している。
一方、部分電極対S3の外側電極311には、周回空間319内を複数回(数十回)周回して来たイオンを周回空間319から導出するイオン導出口35が設けられている。イオン導出口35から導出されるイオンは直線状の軌道を飛行する。この直線状の軌道上にイオン検出部4が配置されている。
上記構成により、イオントラップ2から射出された種々の質量電荷比を有するイオンは、主電極31内の周回空間319中を飛行する。この飛行の間に各イオンは質量電荷比に応じて空間的に分離され、時間差を以てイオン検出部4に到達する。このTOF部3では、イオンの軌道318はそのイオンの質量電荷比に依らずに決まっているので、全てのイオンについて飛行距離は同じである。図3に示したように、イオンの周回軌道は1周毎に少しずつずれるので、同じ軌道を周回する場合に生じるようなイオンの追い越しの問題を避けることができる。
本実施形態のMT-TOFMSにおける典型的な測定動作の一例を説明する。
イオン源1は導入された試料に含まれる化合物をイオン化する。生成されたイオンはイオン入射開口251を経てイオントラップ2の内部空間に導入される。このとき、制御部6の制御の下で電圧発生部5は、4本の主電極21~24にそれぞれ所定の高周波電圧を印加するとともに、エンドキャップ電極25、26にそれぞれ所定の直流電圧を印加する。それにより形成される電場によって、イオンはイオントラップ2の内部空間に捕捉される。また、流量調整部8はガス供給部7から供給されるクーリングガス(例えばHe)を所定の流量でイオントラップ2に供給する。イオントラップ2の内部空間に導入されたイオンがクーリングガスに接触することで、イオンが持つ運動エネルギーは減じられる。そのため、イオンは高周波電場に捕捉され易くなり、またイオン光軸20付近に収束し易くなる。
イオンのクーリングが所定時間、実施されることでイオンが十分にイオン光軸20付近に収束したあと、電圧発生部5から主電極21~24に所定の射出電圧が印加される。これにより、イオンはイオン光軸20に直交する方向に運動エネルギーを付与され、つまり加速され、主電極21に形成されている射出口211を通してイオントラップ2から一斉に射出される。射出されたイオンはイオン導入経路を経て、イオン導入口34を通してTOF部3の周回空間319に導入される。
周回空間319中を上述したように周回しながら飛行したイオンは、イオン導出口35を通して周回空間319から取り出されイオン検出部4に入射する。イオントラップ2から射出される際に各イオンはその質量電荷比に依存する速度を有するため、周回空間319中を飛行する間に質量電荷比が相違するイオン種は分離され、時間差を有してイオン検出部4に入射する。イオン検出部4は、入射したイオンの量に応じた検出信号を出力する。図1には記載していないが、イオン検出部4による検出信号はデータ処理部に入力され、データ処理部は、イオン射出時点を起点とする飛行時間を質量電荷比に換算し、質量電荷比とイオン強度との関係を示すマススペクトルを作成する。
なお、イオン源1とイオントラップ2との間に、四重極マスフィルターなどの他の質量分離器とCID等の手法によりイオンを解離させるコリジョンセルとを設け、特定の質量電荷比を有するプリカーサーイオンを解離させることで生成したプロダクトイオンをイオントラップ2に導入し、上述したように質量分析を行ってもよい。また、イオントラップ2の内部空間にイオンを捕捉したあとに、イオントラップ2の質量分離機能を利用して特定のプリカーサーイオンを選択し、そのプリカーサーイオンをCID等により解離させることで生成したプロダクトイオンを質量分析することもできる。このようにすることでMS/MS分析又はMSn分析を行うことができる。
TOF部3における軌道の形状、或いはこれを形成するための電極の構成や構造は、図1及び図2に記載のものに限らず、周知の種々のものを採用することができる。
図1に示したMT-TOFMSの前段に液体クロマトグラフ(LC)を接続し、該液体クロマトグラフのカラムで分離された各種化合物を含む試料をイオン源1に導入して質量分析する場合、或いは、カラムを用いずにフローインジェクション分析法により導入された試料に対し質量分析を行う場合には、MT-TOFMSにおいてイオン源1に連続的に導入される試料に対する測定を繰り返し行う必要がある。図6は、その場合の測定シーケンスを示す図である。
図6(A)において、「蓄積」期間にイオンをイオントラップ2に導入し、次の「クーリング」期間に、その直前に導入されたイオンをクーリングする。そのあとのごく短い「射出」期間にイオンをイオントラップ2から射出し、「周回・検出」期間に、イオンをTOF部3の周回空間319中を飛行させて検出する。イオントラップ2に導入したイオンをクーリングしている間にはさらなるイオンの導入は禁止し、クーリングされたイオンをイオントラップ2から射出した直後に、次の分析対象のイオンをイオントラップ2に導入して蓄積する。図6(A)の例では、イオントラップ2における「クーリング」の時間はt1である。
本実施形態のMT-TOFMSでは、制御部6は入力部9から与えられたユーザーによる指示に基いて、又は組み込まれたプログラムに従った自動的な判断により、イオントラップ2に供給するクーリングガスの流量を適宜に調整するよう流量調整部8の動作を制御する。
一例として、分析対象である化合物の分子量やイオンの価数をユーザーが事前情報として知っている場合、或いは、後述するような手法でそれらの情報を推定することが可能である場合、ユーザーはその分子量や価数の情報を入力部9から入力する。制御部6は入力された分子量と価数の情報、又は価数の情報のみを用い、それらから推算されるイオンの衝突断面積が所定の閾値以上であるか否かを判断し、イオンの衝突断面積が所定の閾値以上である場合には「高感度モード」、そうでない場合には「高分解能モード」を選択する。「高感度モード」では「高分解能モード」に比べて、クーリングガスの供給量を少なくする。即ち、分析対象のイオンが高価数で衝突断面積が大きい場合には、クーリングガスの供給量を減らしてTOF部3へと流入するガスの量を抑える。これにより、上述したように、イオントラップ2から射出されたイオンがイオン導入経路や周回軌道を通過する際に残留ガスに接触しにくくなり、イオンの損失を抑えて検出感度を向上させることができる。
また、高分子量・高価数のイオンの分析に適した「高感度モード」と、それ以外の一般的な化合物イオンの分析に適した「高分解能モード」とを入力部9での操作により選択可能としておき、ユーザーがいずれかのモードを選択するようにしてもよい。もちろん、モードの名称はこれに限らず、クーリングガス供給量が異なる複数のモードのいずれかを選択できるようにすればよい。
分析対象である化合物の分子量やそのイオンの価数の事前情報がない場合、例えば本装置を用いて又は別の質量分析装置を用いて予備的な測定を実行し、分析対象であるイオンのピークが観測されるマススペクトルを取得する。図5に示しているような主として生体に由来する化合物では、モノアイソトピックピークだけでなく複数の同位体ピークが観測され、モノアイソトピックピークと同位体ピークとの間隔や同位体ピーク同士の間隔はイオンの価数に依存する。そこで、一つの同位体ピーク群におけるピーク間隔からイオンの価数を概ね推定することができる。また、モノアイソトピックピークの質量電荷比とイオンの価数とから、その分子量を概ね推定することができる。
また、ユーザーの指示や設定に基いてクーリングガス供給量を調整するのではなく、例えば上述したような予備的な測定を実行して分析対象の化合物の分子量と価数とを推定したのに引き続いて、その結果に基いてクーリングガス供給量を調整した状態で本測定を実行するようにしてもよい。或いは、同じ目的の化合物についてクーリングガス供給量を2段階に変化させてそれぞれ2回の測定を実行してもよい。その場合、同じ目的化合物について二つのマススペクトルが得られるから、その両方を表示(出力)してもよいし、両マススペクトルをマージして一つのマススペクトルを作成してもよい。マージする際には、二つのマススペクトルにおいて対応するピーク毎に所定の基準でいずれか一方を選択すればよい。
上述したようにイオンの価数が高いためにクーリングガス供給量を減らす場合でも、イオンの衝突断面積が相対的に大きいので、イオントラップ2内で十分なクーリング効果を得ることができる。但し、より確実にクーリング効果を得るために、クーリングガス供給量が少ない場合には多い場合に比べてクーリング時間を延ばしてもよい。
通常、価数が20~30を超えるような高価数のイオンは価数が20程度以下である低価数のイオンに比べて分子量が著しく大きい。そのため、価数が高くても質量電荷比は比較的大きい。こうした高分子量・高価数のイオンの飛行速度は遅く、同じ飛行距離だけ飛行させるときの飛行時間は長い。したがって、繰り返し測定を行う場合、図6(B)に示すように、低分子量・低価数のイオンよりも「周回・検出」期間を長くする必要がある。このように「周回・検出」期間が長くなるので、その分をクーリング時間に割り当ててクーリング時間を延ばす(図6の例ではt1→t2=t1+Δt)ことができる。
上述したように、本実施形態のMT-TOFMSでは、分析対象のイオンの衝突断面積が大きい場合にクーリングガスの供給量を相対的に減らすことで、クーリング効果を確保しつつ、TOF部3側に流れ込むガスの量を抑えている。これによって、TOF部3が配置されているチャンバー内を真空排気する真空ポンプの性能を必要以上に上げずに、該チャンバー内を高真空に保ち、残留ガスとの衝突に起因するイオンの損失を軽減している。これにより、真空ポンプのコスト削減を図るとともに、より小形・軽量の真空ポンプを使用することができる。
なお、上記実施形態のMT-TOFMSでは、イオントラップ2の内部空間に直接的にクーリングガスを導入しているが、例えばイオントラップ2が配置されているチャンバー又はイオントラップを囲んだセルの内部であってイオントラップの外側の空間にクーリングガスを導入する構成とすることもできる。もちろん、イオントラップの内部とイオントラップの外側空間との両方にクーリングガスを導入する構成とし、いずれか一方又は両方の供給量を調整できるようにしてもよい。
また、上述したようなクーリングガスの供給量の調整によって、イオントラップ2等のクーリング部からTOF部3等へのクーリングガスの漏れ込みを極力抑えるのみならず、それ以外の対策も併用して、TOF部3(又はそれ以外の飛行時間型質量分離器)が配置されているチャンバー内の真空度を高めることも有効である。
具体的には例えば、以下のような対策を併用することができる。
(1)TOF部3が配置されているチャンバー内を真空排気するターボ分子ポンプを増設する。また、複数台のターボ分子ポンプでチャンバー内を真空排気する場合、TOF部3において周回空間319を形成する主電極31の中で、その表面積が相対的に広い電極の外側(図1の例では上方と下方)から真空排気を行うようにターボ分子ポンプを設置する。何故なら、金属製である主電極31の表面からはガスが放出され易いからである。これにより、チャンバー内の真空度を向上させ、イオンの損失を一層低減することができる。
(2)イオンを射出するイオントラップ2やイオン加速部2Bと、射出されたイオンを収束させるイオン光学系と、TOF部3と、をそれぞれ別のチャンバー内に収納し、隣接するチャンバーの間のイオン通過部のコンダクタンスを小さくする。そして、各チャンバーを個別の真空ポンプで真空排気することによって多段差動排気を行う。これにより、イオントラップやイオンクーリング部において使用されたクーリングガスが後段のイオン光学系やTOF部3に漏れ込みにくくなり、それら部位における真空度を向上させ、イオンの損失を一層低減することができる。
(3)TOF部3に含まれる電極のみならず、チャンバー内に配置される様々な部材やチャンバー自体の構成部材の全てがガスの放出源となり得る。特にTOF部3に含まれる各電極に電力を供給するために設けられている抵抗素子などの電子部品やケーブル線などは、通電時に発熱して主要なガス放出源となる。そこで、こうした電子部品や配線部品、電極、碍子などは、装置の製造工程において事前にベーク炉等でベーキングすることによって、ガスの放出量を低減させておくとよい。また、組立て前ではなく組立て後にそれらユニット全体をベーキングするようにしてもよい。さらにまた、そうした電極の表面やチャンバーの内表面に対し電解研磨や化学研磨、或いはNiメッキを施すことによって、ガスの放出量自体を低減させるようにしてもよい。
なお、組立て後にベーキングを行う場合には、電極や碍子等から放出されたガスを円滑に外部に排出し再吸着を防止する必要がある。そこで、例えば主電極の内部から放出されるガスが円滑且つ速やかに排出されるように、主電極の適宜の位置にガス抜き開口を設けるとよい。但し、ガス抜き開口がイオンを飛行させるための電場に影響を与えないよう、該開口をメッシュ構造とするとよい。また、特に広い範囲に亘って電極に切欠きが形成される場合には、その切欠き部を二重メッシュ構造として電場の乱れを軽減するとよい。
また、上述したようなベーキングを行う際に、TOF部3を構成する電極は熱膨張する。そこで、電極や絶縁碍子の破損や変形を防ぐために位置決めピンを複数設ける場合には、そのうちの一つは位置を完全に固定し、他は熱膨張による位置のずれを吸収するように長穴に沿って位置決めピンがスライド移動可能とするとよい。この場合、長穴のサイズは、電極等に使用する素材の熱膨張率と実施するベーキングの温度とに基いて決定するとよい。
また、上述したように、上記実施形態のMT-TOFMSでは、全てのイオンに対して飛行距離が同一であるが、飛行距離が長いほど残留ガスとの衝突の機会が増す。そこで、周回する軌道の途中にイオンを検出可能な補助検出器を設け、高感度が要求されるイオンについては補助検出器でイオンを検出するモードを選択可能とすることもできる。これにより、分析対象であるイオンの飛行距離を短くすることができるので、残留ガスとの衝突の確率を下げ、イオンの損失を抑制することができる。感度よりも質量分解能を重視するイオンについては、飛行距離を長くし、本来のイオン検出部で検出すればよい。
さらにまた、上述したように装置の製造工程において各部材をベーキングしたとしても、装置の組立て時にそれら部材が大気に曝されると表面にガスや水分が吸着するおそれがある。そこで、装置の組立て作業、特にTOF部3の組立て作業は、ビニールシートなどでその外側とは区画され、窒素や乾燥空気などが連続的に供給されている略密閉された空間内で実施されるようにするとよい。これにより、装置の各部材の表面へのガスや水分の吸着を抑えることができ、無用な残留ガスの発生を防止することができる。また、装置の使用時に、所望の真空度に達するまでの時間を短縮することも可能となる。
また、装置を使用した後にチャンバー内の真空状態を大気圧状態に戻す際には、通常の大気をチャンバー内に導入する代わりに、水分量がppmオーダーである純ガスをチャンバー内に導入し純ガスでチャンバー内を満たすようにするとよい。これにより、チャンバー内に配置されている各部材に水分が再付着することを防止することができる。また、純ガスをチャンバー内に導入するためのリーク弁に除湿管を設置することで、純ガス中の水分量をさらに減少させ、水分の吸着を抑えることができる。これによって、次に真空排気を行う際に迅速に所望の状態まで真空度を高めることができ、また、イオンの損失をもたらす残留ガスも一層減らすことができる。
上記実施形態は、本発明をMT-TOFMSに適用したものであるが、リニア型やリフレクトロン型、マルチリフレクトロン型のTOFMSにも本発明を適用可能であることは明らかである。但し、飛行距離が長いほどイオンと残留ガスとの衝突に起因するイオンの損失の影響は大きいため、リニア型のように飛行距離が比較的短い場合には、クーリングガスを減らすことによる検出感度の向上の効果に比べて、クーリング効果が減じることによる質量精度や質量分解能の低下の不利益のほうが目立つ可能性がある。
また、上記実施形態や上述した変形例は本発明の一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜修正、変更、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
[種々の態様]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
(第1項)本発明に係る質量分析方法の一態様は、分析対象であるイオンをクーリングガスに接触させてクーリングしたあとに、該イオンに運動エネルギーを付与し、イオンを質量電荷比に応じて分離するための飛行空間に導入して質量分析する質量分析方法であって、
分析対象であるイオンの既知である又は推定される価数が高いときに、該価数が低いときよりも、イオンに対してクーリングを行うクーリング部に供給するクーリングガスの供給量を減らすようにしたものである。
クーリング部へのクーリングガスの供給量が減らされると、それだけ、クーリング部から後段の飛行空間や、その飛行空間にまでイオンを案内するイオン導入経路などに流れ込むガスの量を減らすことができる。したがって、第1項に記載の質量分析方法によれば、特に衝突断面積が大きいために残留ガスとの衝突による損失が生じ易い、分子量が大きく高価数であるイオンの損失を軽減することができる。これによって、分子量が大きく高価数であるイオンの検出感度を向上させることができる。
(第5項)また本発明に係る質量分析装置の一態様は、第1項に記載の質量分析方法を実施するための質量分析装置であり、
分析対象であるイオンをクーリングガスに接触させてクーリングするクーリング部と、 クーリングされたあとのイオンに運動エネルギーを付与するイオン加速部と、
質量電荷比に応じてイオンを分離するためのものであり、前記イオン加速部において運動エネルギーを付与されたイオンが導入される飛行空間、を含む飛行時間型質量分離部と、
前記飛行時間型質量分離部で分離されたイオンを検出する検出部と、
前記クーリング部に供給するクーリングガスの供給量を調整するものであって、該供給量を、分析対象であるイオンの、既知である又は推定される価数に応じて変化させる供給量調整部と、
を備えるものである。
第5項に記載の質量分析装置では、分子量が大きく高価数であるイオンを分析する際に、クーリングガスの供給量を相対的に減らすことができる。それによって、特に衝突断面積が大きいために残留ガスとの衝突による損失が生じ易い、分子量が大きく高価数であるイオンの損失を軽減し、その検出感度を向上させることができる。
(第2項)第1項に記載の質量分析方法において、前記クーリング部はイオンを捕捉して蓄積するイオントラップであり、該イオントラップにおいてイオンをクーリングしたあとに該イオンに運動エネルギーを付与して射出するものとすることができる。
ここで、イオントラップは電場の作用によりイオンを捕捉するものとすることができ、例えば3次元四重極型やリニア型の構成とすることができる。
第2項に記載の質量分析方法によれば、イオントラップ内の空間に閉じ込めたイオンに対してクーリングガスを接触させてクーリングするので、高いクーリング効果を得ることができる。また、クーリングガスの供給量を減らしたときにクーリング時間を延ばす等のクーリング効果の調整も容易である。
(第3項)第1項又は第2項に記載の質量分析方法において、前記飛行空間はマルチターン方式飛行時間型質量分離器の飛行空間であるものとすることができる。
マルチターン方式ではイオンの飛行距離が長いので、イオンと残留ガスとの接触の機会が多くなりがちであり、残留ガスとの接触に起因するイオンの損失の影響が大きい。これに対し、第3項に記載の質量分析方法によれば、マルチターン方式飛行時間型質量分離器の飛行空間に流れ込むクーリングガスの量を減らすことができるので、イオンの損失を減らし、検出感度の改善効果を十分に得ることができる。
(第4項)第3項に記載の質量分析方法では、前記飛行空間においてイオンが周回する軌道の途中に設けた検出器によりイオンを検出するモードを実施可能であるものとすることができる。
第4項に記載の質量分析方法によれば、マルチターン方式飛行時間型質量分離器を用いた場合でも、分析対象であるイオンの飛行距離を短くすることができる。それにより、イオンと残留ガスとの衝突の確率を下げてイオンの損失を抑制することで、分析感度を高めることができる。なお、分析感度よりも質量分解能を重視する場合には、軌道途中でイオン検出を行わず、十分に長い距離だけイオンを飛行させたあとに本来の検出器でイオンを検出すればよい。
1…イオン源
2…イオントラップ
20…イオン光軸
21~24…主電極
211…射出口
25、26…エンドキャップ電極
251…イオン入射開口
2A…イオンクーリング部
2B…イオン加速部
3…TOF部
31…主電極
311…外側電極
312…内側電極
318…軌道
319…周回空間
34…イオン導入口
35…イオン導出口
4…イオン検出部
5…電圧発生部
6…制御部
7…ガス供給部
8…流量調整部
9…入力部

Claims (5)

  1. 分析対象であるイオンをクーリングガスに接触させてクーリングしたあとに、該イオンに運動エネルギーを付与し、イオンを質量電荷比に応じて分離するための飛行空間に導入して質量分析する質量分析方法であって、
    分析対象であるイオンの既知である又は推定される価数が高いときに、該価数が低いときよりも、イオンに対してクーリングを行うクーリング部に供給するクーリングガスの供給量を減らすようにした質量分析方法。
  2. 前記クーリング部はイオンを捕捉して蓄積するイオントラップであり、該イオントラップにおいてイオンをクーリングしたあとに該イオンに運動エネルギーを付与して射出する、請求項1に記載の質量分析方法。
  3. 前記飛行空間はマルチターン方式飛行時間型質量分離器の飛行空間である、請求項1又は2に記載の質量分析方法。
  4. 前記飛行空間においてイオンが周回する軌道の途中に設けた検出器によりイオンを検出するモードを実施可能である、請求項3に記載の質量分析方法。
  5. 分析対象であるイオンをクーリングガスに接触させてクーリングするクーリング部と、 クーリングされたあとのイオンに運動エネルギーを付与するイオン加速部と、
    質量電荷比に応じてイオンを分離するためのものであり、前記イオン加速部において運動エネルギーを付与されたイオンが導入される飛行空間、を含む飛行時間型質量分離部と、
    前記飛行時間型質量分離部で分離されたイオンを検出する検出部と、
    前記クーリング部に供給するクーリングガスの供給量を調整するものであって、分析対象であるイオンの、既知である又は推定される価数が高いときに、該価数が低いときよりも、前記供給量を減らすように変化させる供給量調整部と、
    を備える質量分析装置。
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