ところで、上記特許文献1の前記検出手段は、投光素子及び受光素子からなる光センサである位置検出センサを複数備えた構成となっている。この位置検出センサが、糸監視装置からパッケージへと走行される糸の走行経路の途中(トラバース領域中)に配置されていて、糸の通る瞬間を光が遮られる瞬間として検出することにより、糸がトラバース折返し位置の近傍にあるタイミングを直接的に検出することとしている。そのため、糸切断のタイミングを適宜に制御するためには、この位置検出センサを正確な位置に取り付けることが不可欠となる。
しかしながら、前記位置検出センサを支持ブラケットに取り付けるときに生じる組付け誤差や、当該支持ブラケットを自動ワインダの適宜の場所に取り付けるときに生じる取付け誤差等の影響により、位置検出センサをトラバース領域中の正確な位置に取り付けることが困難な場合があった。また、いったん位置検出センサを所定の位置に取り付けたら、通常は、当該検出センサの位置を変更することはないので、糸切断を禁止するトラバース位置(範囲)を糸の物性等に応じて柔軟に変更することが難しかった。更に、上記の構成で糸を切断するタイミングを制御するためには、前記検出手段で検出した検出信号を自動ワインダ全体の作動を制御する制御手段に入力する必要があり、またスラブキャッチャー(糸監視装置)で検出した糸欠陥検出信号も前記制御手段に入力する必要がある。そのため、各構成間での信号のやり取りが複雑となり、制御のための構成を簡素化することが困難であった。上記のような点において、上記特許文献1の構成には改善の余地があった。
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、糸のトラバース位置に応じて切断装置で糸を切断する切断位置を調整することが可能な糸切断制御装置において、構成を簡素化することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の糸切断制御装置が提供される。即ち、この糸切断制御装置は、トラバースされながらパッケージに巻き取られる糸を切断する切断装置の作動を制御する。この糸切断制御装置は、糸速度検知部と、トラバース位置推定部と、切断位置調整部と、を備える。前記糸速度検知部は、前記糸が走行する糸速度を検知する。前記トラバース位置推定部は、前記糸速度検知部で検知した前記糸速度に基づいて、前記糸のトラバース位置を推定する。前記切断位置調整部は、前記トラバース位置推定部で推定した前記糸のトラバース位置に応じて、前記切断装置が糸を切断する切断位置を調整する。
これにより、切断装置を作動させて糸を切断する切断位置を糸のトラバース位置に応じて調整することで、例えば糸の端面落ちが生じるおそれがある位置では糸を切断しないこととすることにより、糸の端面落ちを防止することができる。また、糸速度検知部によって検知された糸速度に基づいてトラバース位置推定部が糸のトラバース位置を推定するので、糸のトラバース位置を直接検出するセンサを備える場合と比較して、簡素な構成を実現することができる。
前記の糸切断制御装置においては、前記切断位置調整部は、前記糸のトラバース位置が前記パッケージのトラバース領域の端部にある場合に、トラバース領域の中央側に当該トラバース位置が移動した後に前記切断装置が作動するように、前記切断装置を作動させるときの糸の走行距離を調整することが好ましい。なお、ここで言う「パッケージのトラバース領域の端部」とは、パッケージのトラバース領域のうちのパッケージの端面に近い領域を指す。
これにより、切断装置を作動させるときの糸の走行距離を長くする簡単な制御で、糸の端面落ちを防止することができる。
前記の糸切断制御装置においては、前記トラバース位置推定部は、前記糸速度検知部で検知した前記糸速度の特徴に基づいて、前記トラバース位置を推定することを特徴とする糸切断制御装置。
これにより、トラバース領域に配置される位置センサ等により直接的にトラバース位置を検知する場合に比べて、簡素な構成で、糸を切断する切断位置を適切な位置に調整することができる。
前記の糸切断制御装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記パッケージは、軸方向一端から他端に向かうにつれて径が大きくなるコーン形状である。前記トラバース位置推定部は、前記糸速度検知部で検知した前記糸速度が周期的に増減する過程で極値が現れたときの糸の走行距離に基づいて、前記トラバース位置を推定する。
これにより、糸を巻き取ってコーン形状のパッケージを形成する場合に糸速度が周期的に増減することを利用して、トラバース位置を適切に推定することができる。
前記の糸切断制御装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記トラバース位置推定部は、前記糸速度検知部で検知した前記糸速度の周期的な変化を示すデータを平滑化する糸速度平滑化部を備える。前記トラバース位置推定部は、前記糸速度平滑化部による平滑化後の糸速度が周期的に増減する過程で極値が現れたときの糸の走行距離に基づいて、前記トラバース位置を推定する。
これにより、糸速度に生じている細かい不規則的な変動による誤りを抑えることができるので、トラバース位置を精度良く推定することができる。
前記の糸切断制御装置においては、前記糸速度平滑化部は、前記糸速度の周期的な変化を示すデータを移動平均法により平滑化することが好ましい。
これにより、移動平均の点数を適切に定めることにより、糸速度に生じている細かい不規則的な変動による誤りを抑えつつ、トラバース位置に応じて現れる糸速度の増減傾向を良好に捉えることができる。この結果、トラバース位置を精度良く推定することができる。また、簡単な計算により糸速度を平滑化することができる。
前記の糸切断制御装置においては、前記トラバース位置推定部は、前記糸速度の極大値が現れた少なくとも直近の2回の糸の走行位置の間の走行距離、又は、前記糸速度の極小値が現れた少なくとも直近の2回の糸の走行位置の間の走行距離に基づいて、前記糸のトラバース位置を推定することが好ましい。
これにより、糸の走行距離に基づいて、糸のトラバース位置を適切に推定することができる。また、糸速度に極大値又は極小値が現れるときの糸の走行距離を基準にすることで、糸速度の増減の周期を容易かつ明確に捉えて、糸速度の増減の1周期分(トラバース1回分)に相当する糸の走行距離を正確に取得することができる。更に、トラバース1回分に相当する糸の走行距離はパッケージの直径が大きくなるにつれて変化することがあるが、本構成では、例えば直近の糸速度の増減の1周期における糸の走行距離に基づいて糸のトラバース位置を推定するので、トラバース位置の推定精度を安定させることができる。
前記の糸切断制御装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この糸切断制御装置は、前記トラバース位置推定部により推定された前記糸のトラバース位置に基づいて前記切断装置の作動の可否を判断して切断装置作動指令部に前記切断装置の作動又は非作動を指令する指令信号を出力する禁止判断部を備える。前記禁止判断部は、前記糸速度が増減する直近の1周期の間に検知された糸の走行距離であるトラバース走行距離と、前記糸速度の極大値又は極小値が現れるときの糸の走行距離と、を基準にして、トラバースの1周期分の中で糸切断が禁止される範囲を表す禁止範囲と、前記糸速度の極大値又は極小値が現れた直近の糸の走行位置から現在までの間に検知された糸の走行距離と、に基づいて、前記切断装置の作動の可否を判断する。
これにより、糸速度の極大値/極小値が現れた直近の糸の走行位置から現在までに糸が走行した走行距離を検知し、この走行距離が、禁止範囲において糸切断が禁止されている走行距離の範囲内に入るか否かを調べることにより、切断装置の作動の可否を適切かつ簡単に判断して、糸の端面落ちを防止することができる。更に、トラバース1周期分に相当する糸の走行距離はパッケージの直径が大きくなるにつれて変化するが、本構成では糸速度が増減する直近の1周期における糸の走行距離に基づいて判断されるので、パッケージの径の増大の影響を受けずに糸の端面落ちを安定して防止することができる。なお、切断装置作動指令部は、切断装置に作動指令信号を出力し、切断装置を作動させるように構成されていると好ましい。
前記の糸切断制御装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この糸切断制御装置は、前記パッケージのトラバース領域の端部において糸切断を禁止する範囲である切断禁止トラバース範囲の長さを変更可能に構成されている。前記切断位置調整部は、糸の切断を要求する糸切断信号が前記糸切断制御装置に入力されたときに、前記トラバース位置推定部で推定したトラバース位置が前記切断禁止トラバース範囲内にある場合には、前記糸のトラバース位置が移動して当該切断禁止トラバース範囲から外れた後に前記切断装置が作動するように、前記切断装置が作動するときの糸の走行距離を調整する。
これにより、糸が切断禁止トラバース範囲から外れた位置に来るまで遅延させてから切断装置を作動させて糸を切断するので、糸の端面落ちを確実に防止することができる。また、切断禁止トラバース範囲の長さをソフトウェア的に変更することができるので、オペレータが糸の物性等を考慮して切断禁止トラバース範囲の長さを柔軟に変更できるようになり、利便性を向上させることができる。
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の糸監視装置が提供される。即ち、この糸監視装置は、前記の糸切断制御装置を備えるとともに、前記糸の欠陥を検知する糸欠陥検知部を更に備える。前記糸欠陥検知部は、前記糸の欠陥を検知すると、糸の切断を要求する糸切断信号としての糸欠陥検知信号を前記糸切断制御装置に出力する。
これにより、糸欠陥検知部が糸の欠陥を検知した場合に、糸の端面落ちが発生しないように調整された糸の走行距離のところでカッタにより糸を切断することができる。
前記の糸監視装置においては、前記切断装置を備えることが好ましい。
これにより、糸の欠陥の検出から切断装置を作動させるまでの制御信号のやり取りを糸監視装置の中で完結させることが容易になるので、構成を簡素化することができる。
前記の糸監視装置においては、前記切断装置はカッタであることが好ましい。
これにより、簡素な構成で糸を切断することができる。
前記の糸巻取装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この糸巻取装置は、給糸部と、パッケージ形成部と、を備える。前記給糸部には、給糸ボビンが支持される。前記パッケージ形成部は、前記給糸部の前記給糸ボビンの糸を巻き取って前記パッケージを形成する。前記糸監視装置は、前記給糸部と前記パッケージ形成部との間に配置される。
これにより、糸の端面落ちが生じにくい簡素な構成の糸巻取装置を提供することができる。
前記の糸巻取装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この糸巻取装置は、巻取ドラムと、糸継装置と、制御部と、を備える。前記巻取ドラムは、前記給糸部からの糸を前記パッケージに巻き取るために前記パッケージに接触して前記パッケージを回転駆動する。前記糸継装置は、前記切断装置が作動して前記糸が切断された場合に、前記給糸部からの糸と、前記パッケージ形成部からの糸と、を繋ぎ合わせる糸継動作を行う。前記制御部は、前記糸巻取装置を制御する。前記制御部は、前記糸欠陥検知部で前記糸の欠陥が検知されたときの糸の位置から前記切断装置を作動させて切断する位置までの糸の走行距離以上の長さにわたって前記糸を前記パッケージから引き出すまで、前記パッケージを逆転させるように前記巻取ドラムを制御し、その後に前記糸継装置に前記糸継動作を行わせる。
即ち、上記の糸監視装置を備える糸巻取装置では、糸監視装置が糸の欠陥を検知しても、端面落ちを防止するために切断装置の作動のタイミングが遅れる場合が生じる。この点、本構成によれば、切断装置の作動が遅れた分だけパッケージに糸が追加的に巻き取られた場合でも、その追加分も含めた十分な長さの糸をパッケージから引き出してから糸継装置が糸継動作を行うので、糸監視装置によって検知された糸の欠陥を確実に除去することができる。
次に、図面を参照して、本発明の実施の一形態に係る糸切断制御装置を備える糸監視装置、及びそれを備える自動ワインダの構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るワインダユニット10の側面図である。図2は、ワインダユニット10の正面図である。
図1及び図2に示す糸巻取装置としてのワインダユニット10は、給糸ボビン21から解舒される紡績糸20(以下、「糸」と称する場合がある。)をトラバース(綾振り)させながら巻取ボビン22に巻き付けて、所定長で所定形状(本実施形態では、一端から他端へ向かうにつれて径が大きくなるコーン形状)のパッケージ30とするものである。本実施形態の自動ワインダは、並べて配置された複数のワインダユニット10と、その並べられた方向の一端に配置される図略の機台制御装置と、を備えている。
それぞれのワインダユニット10は、図1に示すように、正面視で左右一側に設けられたユニットフレーム11と、このユニットフレーム11の側方に設けられた巻取ユニット本体16と、を備えている。この巻取ユニット本体16は、パッケージ形成部31と、給糸部28と、を主として備えている。パッケージ形成部31は巻取部ともいう。
給糸部28は、糸20が巻かれた給糸ボビン21を略直立姿勢で支持するものである。本実施形態の給糸ボビン21は、例えば図1に示すマガジン式供給装置9により給糸部28の支持部に供給される。なお、給糸ボビン21の供給方式はこれに限定されず、例えばトレー式供給装置により給糸ボビン21を供給しても良い。
パッケージ形成部31は、給糸部28の給糸ボビン21の糸を巻取ボビン22に巻き取ってパッケージ30を形成するものである。具体的には、パッケージ形成部31は、巻取ボビン22を回転可能に支持するクレードル23と、糸20をトラバースさせるとともに巻取ボビン22を駆動するための巻取ドラム24と、を備えている。クレードル23は、巻取ドラム24に対して近接又は離間する方向に揺動可能に構成されている。これにより、パッケージ30に糸20が巻き取られることに伴って当該パッケージ30の直径が増大しても、巻取ドラム24により安定してパッケージ30を回転駆動することができる。図2に示すように、巻取ドラム24の外周面には螺旋状(蔓巻線状)の綾振溝27が形成されており、この綾振溝27内に糸20が入った状態で巻取ドラム24が回転することによって、当該糸20をトラバースさせるように構成されている。
巻取ボビン22は、当該巻取ボビン22に対向して配置される巻取ドラム24が回転駆動することにより、従動回転する。糸20は、綾振溝27によってトラバースされつつ、回転する巻取ボビン22の周囲に巻き取られる。この巻取ドラム24は、ドラム駆動モータ53の出力軸に連結されており、このドラム駆動モータ53の作動はモータ制御部54により制御される。このモータ制御部54は、ユニット制御部50からの制御信号を受けてドラム駆動モータ53を駆動及び停止させる制御を行っている。
なお、巻取ドラム24には、当該巻取ドラム24の回転角度を検出するための回転センサ42が取り付けられている。この回転センサ42は、前記ユニット制御部50に電気的に接続されている。
また、巻取ユニット本体16は、給糸部28とパッケージ形成部31との間の糸走行経路中に、給糸部28側から順に、解舒補助装置12と、テンション付与装置13と、糸継装置14と、糸監視装置15と、を配置した構成となっている。
解舒補助装置12は、芯管に被さる規制部材40を給糸ボビン21からの糸20の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン21からの糸20の解舒を補助するものである。規制部材40は、給糸ボビン21から解舒された糸20が振り回されることにより給糸ボビン21の上方に形成されるバルーンに対して接触し、当該バルーンに適切なテンションを付与することによって糸の解舒を補助する。
テンション付与装置13は、走行する糸20に所定のテンションを付与するものである。テンション付与装置13としては、例えば、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものを用いることができる。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛合せ状態又は解放状態となるように、ロータリ式のソレノイドにより回動することができる。このテンション付与装置13によって、巻き取られる糸20に一定のテンションを付与し、パッケージ30の品質を高めることができる。
糸監視装置15は、走行する糸20を監視することにより糸20の欠陥(以下、「糸欠陥」と称する場合がある。)を検出し、糸欠陥が見つかったときには糸20を、端面落ちが生じない適宜のタイミングで切断するものである。図1から図3までに示すように、糸監視装置15は、2つの糸ムラセンサ43,44と、カッタ46と、制御部45と、を主として備える。2つの糸ムラセンサ43,44はそれぞれ、例えば投光素子及び受光素子により構成され、受光素子で受光された光の量(受光量)により、糸20の太さを検出する。これらの糸ムラセンサ43,44からの信号を制御部45で処理することで、糸欠陥を検知するとともに、糸監視装置15内を走行する糸20の速度(以下、「糸速度」と称する場合がある。)を検知することができる。更に、制御部45では、このようにして検知した糸速度に基づいて糸20のトラバース位置を推定し、当該糸20のトラバース位置に応じて、カッタ(切断装置)46を作動させるためのカッタ作動指令信号(切断装置作動指令信号)S3を出力して糸20を切断するときの糸20の走行距離を制御している。糸監視装置15の詳細な構成については後述する。
糸継装置14は、糸監視装置15が糸欠陥を検出したことにより行う糸切断時、又は給糸ボビン21からの解舒中の糸切れ時等に、給糸部28(給糸ボビン21)側の下糸と、パッケージ形成部31(パッケージ30)側の上糸と、を繋ぎ合わせるものである。糸継装置14としては、機械式のものや、圧縮空気等の流体を用いるもの等を使用することができる。
糸継装置14の下側及び上側には、給糸部28側の下糸を捕捉して案内する下糸案内パイプ(第1糸捕捉案内部材)25と、パッケージ形成部31側の上糸を捕捉して案内する上糸案内パイプ(第2糸捕捉案内部材)26と、が設けられている。下糸案内パイプ25の先端には吸引口32が形成され、上糸案内パイプ26の先端にはサクションマウス34が備えられている。本実施形態では、サクションマウス34の左右幅(長手方向の幅)は、パッケージ30の左右幅(外周面の幅)と同程度の長さに構成されている。下糸案内パイプ25及び上糸案内パイプ26には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、前記吸引口32及びサクションマウス34に吸引流を作用させることができる。
この構成で、糸切断時又は糸切れ時においては、下糸案内パイプ25の吸引口32が図1及び図2で示す位置で下糸を捕捉し、その後、軸33を中心にして上方へ回動することで糸継装置14に下糸を案内する。また、これと略同時に、上糸案内パイプ26が図示の位置から軸35を中心として上方へ回動し、ドラム駆動モータ53によって逆転されるパッケージ30から解舒される上糸をサクションマウス34によって捕捉する。続いて、上糸案内パイプ26が軸35を中心として下方へ回動することで、糸継装置14に上糸を案内するようになっている。こうして、下糸と上糸の繋ぎ合せ(糸継ぎ)が糸継装置14によって行われる。
次に、図2及び図3を参照して、糸監視装置15の構成について詳細に説明する。
図3等に示すように、糸監視装置15は、2つの糸ムラセンサ43,44と、カッタ46と、制御部45と、を備えている。制御部45は、CPU,RAM,ROM等のハードウェアを備えた小型のコンピュータとして構成されており、前記ROMには、制御プログラム等からなる各種のソフトウェアが記憶されている。そして、前記ハードウェアと前記ソフトウェアとが協働することにより、制御部45を、糸欠陥検知部47及び切断制御部(糸切断制御装置)49等として機能させることができる。
図2に示すように、第1糸ムラセンサ43と第2糸ムラセンサ44は、糸走行方向に適宜の間隔をあけて並べて配置される。本実施形態において糸ムラセンサ43,44は投光素子及び受光素子として構成されており、投光素子から投光した光を受光素子で受光し、その受光量を検出する。この構成で、走行する糸20の太さが変化すると、糸ムラセンサ43,44の受光量が変化するので、糸20の太さのムラ(糸ムラ)を検出することができる。この糸ムラセンサ43,44の出力信号(糸ムラ信号S1,S2)は、A/D変換された後、図3に示すように制御部45に入力される。より詳細には、糸ムラ信号S1,S2は、制御部45が備える切断制御部49の糸速度検知部48に入力される。また、第2糸ムラセンサ44よりも下流側に配置される第1糸ムラセンサ43からの糸ムラ信号S1は、制御部45が備える糸欠陥検知部47に入力される。ただし、これに代えて、第1糸ムラセンサ43よりも上流側に配置される第2糸ムラセンサ44からの糸ムラ信号S2が、制御部45が備える糸欠陥検知部47に入力されることとしてもよい。あるいはこれに代えて、第1糸ムラセンサ43からの糸ムラ信号S1と第2糸ムラセンサ44からの糸ムラ信号S2の両方が、制御部45が備える糸欠陥検知部47に入力されることとしてもよい。
カッタ46は、糸道に対して進入及び退避することができる位置に配置されており、図示しない駆動機構により駆動される。カッタ46を作動させるためのカッタ作動指令信号(切断装置作動指令信号)S3が図3に示す制御部45(切断制御部49)から前記駆動機構に入力されることにより、当該駆動機構が直ちに駆動され、退避位置にあったカッタ46が糸道に対して進入して糸20を切断することができるように構成されている。なお、上記の駆動機構は例えばソレノイド等により構成することができ、この場合、上記のカッタ作動指令信号S3はソレノイド駆動信号とすることができる。
糸欠陥検知部47は、下流側に配置される第1糸ムラセンサ43からの糸ムラ信号S1から、糸20を切断して除去する必要があるような糸20の欠陥(例えば、糸20の太さが閾値未満となっている等の欠陥)を検知し、糸欠陥を検知した旨の糸欠陥検知信号S4を切断制御部49に出力するものである。なお、糸欠陥検知部47が糸欠陥の有無を判定するにあたっては、後述する糸速度検知部48から入力される糸速度Vも考慮される。
ここで、糸監視装置15は、糸欠陥を検出すると、当該糸欠陥の部分を除去するためにカッタ46により糸20を切断するように構成されている。従って、糸欠陥検知部47が出力する糸欠陥検知信号S4は、糸20の切断を実質的に要求する信号(糸切断信号)であるということができる。
切断制御部49は、糸欠陥検知部47から入力される糸欠陥検知信号S4に基づき、カッタ46の作動を制御するものである。切断制御部49は、糸速度検知部48と、トラバース位置推定部60と、切断位置調整部70と、カッタ作動指令部(切断装置作動指令部)52と、を備える。
糸速度検知部48は、下流側に配置される第1糸ムラセンサ43からの糸ムラ信号S1と、上流側に配置される第2糸ムラセンサ44からの糸ムラ信号S2と、を比較して、時間的なズレ量を算出し、この時間的なズレ量と第1及び第2の糸ムラセンサ43,44の間隔とに基づいて糸速度Vを算出(検知)することができる。糸速度検知部48で検知された糸速度Vは、トラバース位置推定部60に出力される。同時に、糸速度検知部48は、検知された糸速度Vに基づいて、糸20が一定長(例えば、1mm)走行するのに相当する時間で変化するパルス信号S5を生成し、これをトラバース位置推定部60に出力する。
トラバース位置推定部60は、糸速度検知部48から入力される糸速度V及びパルス信号S5に基づいて、糸20の現在のトラバース位置を推定するものである。推定されたトラバース位置を示す信号(トラバース位置信号S6)は、切断位置調整部70に出力される。
切断位置調整部70は、トラバース位置推定部60から入力されたトラバース位置信号S6に基づいて、仮に現在の糸の位置でカッタ46による糸切断を行った場合に端面落ちが発生する可能性が高いか否かを判断する。そして、切断位置調整部70は、この判断結果に基づいて、糸20の切断を禁止する旨の切断禁止信号S7、又は、糸20の切断を許可する旨の切断許可信号S8を、カッタ作動指令部52に出力する。切断禁止信号S7及び切断許可信号S8は、切断位置調整部70の禁止判断部72がカッタ作動指令部52に出力する、カッタ46の作動又は非作動を指令する指令信号である。
カッタ作動指令部52は、糸欠陥検知部47から糸欠陥検知信号S4が入力されると、その時点で切断位置調整部70から入力されている信号の内容を調べ、カッタ作動指令部52に切断許可信号S8が入力されている場合は、直ちにカッタ46にカッタ作動指令信号S3を出力する。一方、糸欠陥検知信号S4が入力された時点でカッタ作動指令部52に切断禁止信号S7が入力されている場合は、カッタ作動指令部52は、入力される信号が切断禁止信号S7から切断許可信号S8に切り替わるまで待機して(遅らせて)、カッタ46にカッタ作動指令信号S3を出力する。このような構成により、糸監視装置15の制御部45(切断制御部49)は、糸欠陥が見つかった場合に、糸20を、端面落ちが生じないように適宜に調整した切断位置で切断することができる。
次に、図4から図8までを参照して、トラバース位置推定部60及び切断位置調整部70の構成について、より詳細に説明する。図4は、トラバース位置推定部60及び切断位置調整部70の構成を示すブロック図である。図5は、糸速度Vの周期的な変化を示すデータ、及びそれを平滑化したデータを説明するグラフである。図6は、糸速度Vの周期的な変化を示すデータを用いて、糸がパッケージ30のトラバース領域の端部に位置すると推定される基準位置PSと、直近のトラバース走行距離Lを計算するための距離区間と、を求める処理を説明するグラフである。図7は、パッケージ30のトラバース領域の端部に設定される切断禁止トラバース範囲を説明する図である。図8は、切断禁止トラバース範囲に基づいて計算される禁止トラバース比を説明する図である。
図4に示すように、トラバース位置推定部60は、データ平滑化部(糸速度平滑化部)61、折返し位置推定部62、基準位置検出部63、直近トラバース走行距離算出部64、及び現在トラバース比算出部65等を備える。
データ平滑化部61は、糸速度検知部48から受信した糸速度Vの移動平均を算出することにより、糸速度Vの周期的な変化を示すデータを平滑化するものである。即ち、糸速度検知部48から受信した糸速度Vの周期的な変化を示すデータ(生のデータ)は、図5(a)に示すように細かい不規則的な変化が激しく、糸速度Vの変化の全体的な特徴を捉えにくい。この理由は様々であるが、その1つは、巻取ドラム24の綾振溝27に入ってトラバースされる糸20が、綾振溝27の形状等に応じて複雑な挙動を示すためである。そのため、トラバース位置推定部60のデータ平滑化部61では、糸速度Vの周期的な変化を示すデータを移動平均法により平滑化して、図5(b)に示すように、糸速度Vの周期的な増減傾向を捉え易くしている。なお、移動平均を取る点数は、上記した糸速度Vの不規則的な変化を抑えつつ、糸速度Vの周期的な増減傾向を適切に捉えることができるように適宜定められる。
図4に示す折返し位置推定部62は、糸速度Vの周期的な変化を示すデータに基づいて、糸20のトラバース位置がパッケージ30のトラバース領域の端部で折り返す位置である折返し位置を推定するものである。具体的には、本実施形態のようにパッケージ30の形状がコーン形状である場合、糸20のトラバース位置がパッケージ30の大径側の端にあるときに糸速度Vが極大値を示すことが知られている。本実施形態ではこれを利用して、図6に示すように糸速度Vのデータの中で糸速度Vが極大となった走行位置を、糸20のトラバース位置がパッケージ30の大径側の端(前記の他端)にあった位置、即ち、折返し位置であると推定する。
図4に示す基準位置検出部63は、糸速度Vの周期的な変化を示すデータに基づいて、直近で糸速度Vが極大となったときの糸20の走行位置(言い換えれば、直近のパッケージ大径側での折返し位置)を、基準位置PSとして検出するものである。この基準位置PSは、次に現れるトラバース位置までの糸20の走行距離を推定するときの基準となる位置として用いられる。
直近トラバース走行距離算出部64は、糸速度Vの周期的な変化を示すデータに基づいて、基準位置PSよりも前の位置で直近で糸速度Vが極大となった糸20の位置を検出し、この位置から基準位置PSまでの間に糸20が走行した距離を、直近に行われた1回のトラバースあたりの糸20の走行距離として算出する。なお、以下の説明では、1回のトラバースあたりの糸20の走行距離を「トラバース走行距離」と称する場合がある。このトラバース走行距離は、言い換えれば、糸速度Vが増減する1周期分に相当する走行距離ということもできる。直近のトラバース走行距離Lは、図6に示す糸速度Vの周期的な変化を示すデータにおいて極大値が現れた直近の少なくとも2回の糸20の走行位置の間に糸速度検知部48から入力されたパルス信号S5をカウントすることにより、精度良く算出することができる。
現在トラバース比算出部65は、糸20の現在のトラバース位置をトラバース比で表した現在トラバース比を算出するものである。ここで、トラバース比とは、1回のトラバースあたりに糸20が走行する距離(トラバース走行距離)を基準として、ある位置(本実施形態では、糸20が大径側のトラバース端部にあると推定される位置である基準位置PS)から現在の位置までに糸20が走行した距離の割合を意味する。
現在トラバース比算出部65は、基準位置PSから現在の位置までに糸20が走行した距離を、糸速度検知部48から入力されたパルス信号S5をカウントすることにより求める。次に、現在トラバース比算出部65は、得られた走行距離を、直近トラバース走行距離算出部64が算出した直近のトラバース走行距離Lで除算することにより、現在トラバース比を求める。
現在トラバース比は、図8に示すように、通常0から1まで(百分率で0%から100%まで)の値をとり、糸20がトラバースされるのに応じて0から1へ近づくように増大し、1に到達すると(即ち、1回分のトラバースが完了すると)0に戻って、再び1へ近づくように増大する。現在トラバース比は、糸20が大径側のトラバース端部にあるときの糸20の位置(言い換えれば、糸速度Vが極大値を示すときの糸20の走行距離)を基準(0)として、糸20がトラバースにより1往復する過程において現在の糸20の位置がどの位置に相当するかを示すものである。従って、現在トラバース比は、糸20の現在のトラバース位置を実質的に表すものということができる。得られた現在トラバース比の値は、トラバース位置信号S6として、現在トラバース比算出部65から切断位置調整部70へ出力される。
切断位置調整部70は、禁止トラバース比算出部71及び禁止判断部72等を備える。
禁止トラバース比算出部71は、上記のトラバース走行距離の中で糸切断が禁止される走行距離の範囲をトラバース比で表した禁止トラバース比を算出するものである。上記の禁止トラバース比は、オペレータが図略の切断禁止トラバース範囲設定部により予め設定した、カッタ46による糸切断を禁止するトラバース位置の範囲(切断禁止トラバース範囲)に基づいて定められる。この切断禁止トラバース範囲設定部は、例えば上記の機台制御装置に備えられた図示しない入力キーとして構成することができる。
図7には、上記の切断禁止トラバース範囲の設定例が示されている。この例では、パッケージ30の両端面及びその近傍(パッケージ30のトラバース領域の端部)で糸切断が行われて端面落ちの原因となるのを回避するために、トラバース幅方向で、小径側の端面から5mmまでのトラバース位置、及び、大径側の端面から5mmまでのトラバース位置が、切断禁止トラバース範囲として設定されている。ただし、この切断禁止トラバース範囲の長さ(小径側から5mm、大径側から5mm)は一例であって、例えばオペレータが上記の切断禁止トラバース範囲設定部(入力キー)を操作することにより、例えば10mm、15mm、20mm、25mm、又は30mm等というように適宜変更することができる。
上記の切断禁止トラバース範囲の長さは、糸20の物性等を考慮して設定することが好ましい。例えば、端面落ちしにくい物性の糸20であれば切断禁止トラバース範囲の長さを短く設定し、端面落ちし易い物性の糸20であれば切断禁止トラバース範囲の長さを長く設定することが考えられる。また、切断禁止トラバース範囲の長さを長くすると、カッタ46の作動が大きく遅延することになるため、屑糸の発生量が多くなるので、屑糸の低減の観点も考慮して切断禁止トラバース範囲の長さを設定することが好ましい。
禁止トラバース比算出部71は、上記のように設定された切断禁止トラバース範囲の長さに対応して、禁止トラバース比を、巻取ドラム24の綾振溝27のワインド数等に基づいて算出する。禁止トラバース比は、糸20の切断が禁止されている走行距離の範囲(図8においてハッチングで示した範囲)を、1回のトラバース分の糸10の走行距離に対する比で表したものである。この禁止トラバース比は、トラバース位置推定部60によるトラバース位置の推定誤差を考慮し、適宜のマージンを見込んで定められる。更に、カッタ作動指令信号S3をカッタ46に出力してから実際に当該カッタ46が糸20を切断するまでにある程度のタイムラグが生じることを考慮し、禁止トラバース比において糸切断が禁止される走行距離の範囲は、切断禁止の開始及び終了が若干前倒しされるようにオフセットされる。
以後では、図8に示すように、百分率で表現して、切断禁止トラバース範囲の長さである「小径側の端面から5mm」に対応する禁止トラバース比が45%〜60%と算出され、切断禁止トラバース範囲の長さである「大径側の端面から5mm」に対応する禁止トラバース比が85%〜100%、0%〜3%と算出されたものとして説明する。
図4に示す禁止判断部72は、トラバース位置推定部60から入力されたトラバース位置信号S6に基づき、現在トラバース比が、上記の禁止トラバース比における禁止開始から禁止終了までの範囲(0%〜3%、45%〜60%、又は85%〜100%)に入っているか否かを判断する。禁止判断部72は、現在トラバース比が禁止トラバース比の範囲に入っている場合は、切断禁止信号S7をカッタ作動指令部52に出力し、そうでない場合は切断許可信号S8をカッタ作動指令部52に出力する。
次に、適切な走行距離のところで糸切断を行うために糸監視装置15のトラバース位置推定部60及び切断位置調整部70が行う処理について、図9を参照して説明する。図9は、糸切断の位置を調整するためにトラバース位置推定部60及び切断位置調整部70が行う処理を示すフローチャートである。
初めに、切断位置調整部70が備える禁止トラバース比算出部71は、図7で示すように予め設定された切断禁止トラバース範囲の長さに基づき、1回のトラバースの間に糸20が走行する距離(トラバース走行距離)を基準として、糸切断が禁止される走行距離の範囲をトラバース比で表した禁止トラバース比を計算する(図9のステップS101)。これにより、図8に示す禁止トラバース比(0%〜3%、45%〜60%、又は85%〜100%)を得ることができる。
次に、トラバース位置推定部60が備えるデータ平滑化部61は、糸速度検知部48から取得した糸速度Vの移動平均を算出して、図5(b)に示すような平滑化後の糸速度Vの周期的な変化を示すデータを作成する(図9のステップS102)。
続いて、折返し位置推定部62は、糸速度Vの周期的な変化を示すデータの中で図6に示すように糸速度Vが極大値を示す糸20の走行距離を、糸20のトラバース位置がパッケージ30の大径側の端(他端)にあったときの糸20の走行距離(折返し位置)として推定する。なお、図5(b)に示すように糸速度Vは折返し位置以外でも極大値を示す場合が考えられるが、糸20のトラバース位置が大径側にあるときの走行距離は、前回得られた折返し位置及びトラバース走行距離に基づいて予めある程度推測することができるので、その近傍に現れる極大値を用いれば良い。1回のストロークの間に複数の極大値が現れる場合であっても、折返し位置推定部62は、そのような複数の極大値のうち、予め設定された又は算出した閾値を超える極大値を用いるようにすれば良い。即ち、折返し位置推定部62は、所定の条件を満たす極大値(所定の極大値)を用いれば良い。そして、折返し位置推定部62が推定した折返し位置のうち、最も現在の糸20の位置に近い折返し位置が、基準位置PSとして検出される(図9のステップS103)。また、基準位置PSより1回前に現れる折返し位置は、基準位置PSとともに、直近トラバース走行距離算出部64が直近のトラバース走行距離Lを計算するための距離区間の境界として用いられる(ステップS104)。具体的には、ステップS103において基準位置検出部63は、現在に最も近い折返し位置を基準位置PSとして検出する。また、ステップS104において直近トラバース走行距離算出部64は、現在に最も近い2回の折返し位置の間で糸速度検知部48から入力されたパルス信号S5をカウントすることにより、直近のトラバース走行距離Lを計算する。
なお、折返し位置推定部62は、上述したように、移動平均法による平滑化後の糸速度Vの周期的な変化を示すデータに基づいて折返し位置を推定している。従って、糸速度Vの細かい不規則的な変動の影響を受けにくくなるので、折返し位置を高い精度で推定することができる。
次に、現在トラバース比算出部65は、基準位置PSから現在の糸20の位置までの糸20の走行距離を、糸速度検知部48から入力されたパルス信号S5をカウントすることにより算出し、得られた走行距離を直近のトラバース走行距離Lで除算することにより、図8に示す現在トラバース比を取得する(図9のステップS105)。
続いて、切断位置調整部70が備える禁止判断部72は、ステップS105で得られた現在トラバース比が、禁止トラバース比算出部71がステップS101で求めた禁止トラバース比(0%〜3%、45%〜60%、又は85%〜100%)の範囲内にあるか否かを調べる(ステップS106)。そして、現在のトラバース比が禁止トラバース比の範囲内にある場合は、切断禁止信号S7をカッタ作動指令部52に出力し(ステップS107)、そうでない場合は切断許可信号S8をカッタ作動指令部52に出力する(ステップS108)。その後、何れの場合もステップS102に戻り、上記の処理を反復する。
なお、上述したように、現在トラバース比は現在のトラバース位置を実質的に示すものであり、また、禁止トラバース比算出部71は、図7の切断禁止トラバース範囲の長さをトラバース比に換算したものである。従って、上記のステップS106は、実質的には、推定された現在のトラバース位置が切断禁止トラバース範囲内にあるか否かを判定しているということができる。
図9に示すフローにより、切断位置調整部70は、トラバース位置推定部60において推定された現在のトラバース位置が変化するのに応じて、カッタ作動指令部52に出力する信号を切断禁止信号S7と切断許可信号S8との間で切り替える処理を、トラバースの1周期を単位として繰り返して行う。
ここで、図3に示すカッタ作動指令部52は、糸欠陥検知部47が糸欠陥を検知したことに伴う糸欠陥検知信号S4が入力された場合、切断位置調整部70から切断許可信号S8が入力されている場合はカッタ作動指令信号S3をカッタ46の駆動機構に直ちに出力する。一方、上記の糸欠陥検知信号S4が入力された場合でも、切断位置調整部70から切断禁止信号S7が入力されている場合は、切断位置調整部70から切断許可信号S8が入力されるまで待機してからカッタ作動指令信号S3をカッタ46の駆動機構に出力する。これにより、カッタ46による糸切断がされる糸の走行距離が必要に応じて調整(延長)されるので、端面落ちのおそれのない位置で糸20を切断することができる。
次に、ユニット制御部50が行う制御について、図10を参照して簡単に説明する。図10は、ユニット制御部50が行う処理を示すフローチャートである。
ユニット制御部50は、通常時はパッケージ30を正転させるように巻取ドラム24を駆動して、パッケージ30への糸20の巻取りを行う(ステップS201)。その間、ユニット制御部50は、糸20を切断した旨の信号が糸監視装置15の制御部45からユニット制御部50に入力されていないかを監視する(ステップS202)。
糸監視装置15が糸欠陥を検出したことに伴って糸20を切断した旨の信号が当該糸監視装置15から入力されると、ユニット制御部50は、パッケージ30に巻き取られた糸欠陥を含む領域を引き出すために、ドラム駆動モータ53を制御して巻取ドラム24を逆転させる(ステップS203)。ここで、糸監視装置15の制御部45は、糸欠陥検知部47で糸20の欠陥が検知されたときの糸20の位置からカッタ作動指令部52がカッタ46を作動させて糸20が切断されるときの糸20の位置までの当該糸20の走行距離を、例えば糸速度検知部48が出力するパルス信号S5をカウントすることにより算出し、ユニット制御部50に出力する。ユニット制御部50は、ステップS203において、上記のようにして算出された長さに適宜のマージンを加算した長さの糸20がパッケージ30から解舒されるまで、パッケージ30を逆転させる。このとき、ユニット制御部50は、巻取ドラム24の回転角度を回転センサ42から取得して糸20の長さを算出することにより、検知された糸欠陥の部分を含む十分な長さの糸20がパッケージ30から確実に解舒されるように、巻取ドラム24の逆転を監視している。
糸20が糸欠陥を除去できる長さ以上に引き出されたら、ユニット制御部50は、ドラム駆動モータ53を停止させるように制御するとともに、糸継装置14によって上糸と下糸とを繋ぎ合せる(ステップS204)。なお、引き出された上糸のうち上記の糸欠陥を含む領域は、糸継装置14による糸継ぎの過程で屑糸として除去される。その後、処理はステップS201に戻り、糸20の巻取りが再開される。
本実施形態のワインダユニット10では、糸監視装置15が糸欠陥を検出した場合であって、端面落ち防止のためにカッタ46の作動を遅延させたときは、糸20の切断が遅れる分だけ、パッケージ30に糸20が追加的に巻き取られることになる。この点、図10の制御によれば、そのように追加的に巻かれた部分を含めた十分な長さの糸20がパッケージ30の逆転により解舒された後、糸継装置14による糸継動作が行われる。従って、糸欠陥を確実に除去して糸継ぎすることができる。
以上に説明したように、本実施形態において糸監視装置15が備える切断制御部49は、トラバースされながらパッケージ30に巻き取られる糸20を切断するカッタ46の作動を制御する。この切断制御部49は、糸速度検知部48と、トラバース位置推定部60と、切断位置調整部70と、を備える。糸速度検知部48は、糸20が走行する糸速度Vを検知する。トラバース位置推定部60は、糸速度検知部48で検知した糸速度Vに基づいて、糸20のトラバース位置を推定する。切断位置調整部70は、トラバース位置推定部60で推定した糸20のトラバース位置に応じて、カッタ46が糸20を切断する切断位置を調整する。
これにより、カッタ46を作動させて糸20を切断する位置を糸20のトラバース位置に応じて調整することで、例えば糸20の端面落ちが生じるおそれがある位置では糸20を切断しないこととすることにより、糸20の端面落ちを防止することができる。また、糸速度検知部48によって検知された糸速度Vに基づいてトラバース位置推定部60が糸20のトラバース位置を推定するので、糸のトラバース位置を直接検出するセンサを備える場合と比較して、構成を簡素化することができる。
また、本実施形態の切断制御部49において、切断位置調整部70は、糸20のトラバース位置がパッケージ30のトラバース領域の端部にある場合に、トラバース領域の中央側に当該トラバース位置が移動した後にカッタ46が作動するように、カッタ46を作動させるときの糸20の走行距離を調整する。
これにより、カッタ46を作動させるときの糸20の走行距離を長くする簡単な制御で、糸20の端面落ちを防止することができる。
また、本実施形態の切断制御部49においては、トラバース位置推定部60は、糸速度検知部48で検知した糸速度Vの特徴に基づいて、トラバース位置を推定する。
これにより、トラバース領域に配置される位置センサ等により直接的にトラバース位置を検知する場合に比べて、簡素な構成で、糸20を切断する切断位置を適切な位置に調整することができる。
また、本実施形態において、ワインダユニット10が糸20を巻き取って形成するパッケージ30は、軸方向一端から他端に向かうにつれて径が大きくなるコーン形状である。そして、切断制御部49が備えるトラバース位置推定部60は、糸速度検知部48で検知した糸速度Vが周期的に増減する過程で極値(極大値)が現れたときの糸20の走行距離に基づいて、前記トラバース位置を推定する。
これにより、糸20を巻き取ってコーン形状のパッケージ30を形成する場合に糸速度Vが周期的に増減することを利用して、トラバース位置を適切に推定することができる。
また、本実施形態の切断制御部49において、トラバース位置推定部60は、糸速度検知部48で検知した糸速度Vの周期的な変化を示すデータを平滑化するデータ平滑化部61を備える。トラバース位置推定部60は、データ平滑化部61による平滑化後の糸速度Vが周期的に増減する過程で極値(極大値)が現れたときの糸20の走行距離に基づいて、前記トラバース位置を推定する。
これにより、糸速度Vに生じている細かい不規則的な変動による誤りを抑えることができるので、トラバース位置を精度良く推定することができる。
また、本実施形態の切断制御部49において、データ平滑化部61は、糸速度Vの周期的な変化を示すデータを移動平均法により平滑化する。
これにより、移動平均点数を適切に定めることにより、糸速度Vに生じている細かい不規則的な変動による誤りを抑えつつ、トラバース位置に応じて現れる糸速度Vの増減傾向を適切に捉えることができる。この結果、トラバース位置を精度良く推定することができる。また、簡単な計算により糸速度Vを平滑化することができる。
また、本実施形態の切断制御部49において、トラバース位置推定部60は、糸速度Vの極大値が現れた少なくとも直近の2回のタイミングの間の走行距離(直近のトラバース走行距離L)に基づいて、糸20のトラバース位置を推定する。
これにより、糸20の走行距離に基づいて、糸20のトラバース位置を適切に推定することができる。また、糸速度Vに極大値が現れるときの糸20の走行距離を基準にすることで、糸速度Vの増減の周期を容易かつ明確に捉えて、糸速度Vの増減の1周期分(トラバース1回分)に相当する糸の走行距離を正確に取得することができる。更に、トラバース1回分に相当する糸20の走行距離はパッケージ30の直径が大きくなるにつれて変化することがあるが、本実施形態によれば、例えば直近の糸速度Vの増減の1周期における糸20の走行距離(直近のトラバース走行距離L)に基づいて糸20のトラバース位置を推定するので、トラバース位置の推定精度を安定させることができる。
また、本実施形態の切断制御部49は、トラバース位置推定部60により推定された糸20のトラバース位置に基づいてカッタ46の作動の可否を判断してカッタ作動指令部52にカッタ46の作動又は非作動を指令する指令信号を出力する禁止判断部72を備える。禁止判断部72は、糸速度Vが増減する直近の1周期の間に検知された糸20の走行距離(直近のトラバース走行距離L)と、糸速度Vの極大値が現れるときの糸20の走行距離と、を基準にして、トラバースの1周期分の中で糸切断が禁止される範囲を表す禁止範囲(0%〜3%、45%〜60%、85%〜100%)と、糸速度Vの極大値が現れた直近の糸の走行位置(基準位置)から現在までの間に検知される糸20の走行距離と、に基づいて、カッタ46の作動の可否を判断する。
これにより、糸速度Vの極大値が現れた直近の糸20の走行位置から現在までに糸20が走行した走行距離を検知し、この走行距離が、禁止範囲において糸切断が禁止されている走行距離の範囲内に入るか否かを調べることにより、カッタ46の作動の可否を適切かつ簡単に判断して、糸20の端面落ちを防止することができる。更に、トラバース1回分に相当する糸20の走行距離はパッケージ30の直径が大きくなるにつれて変化するが、本実施形態では、糸速度Vが増減する直近の1周期における糸20の走行距離(直近のトラバース走行距離L)に基づいてカッタ46の作動の可否が判断されるので、パッケージ30の径の増大の影響を受けずに糸20の端面落ちを安定して防止することができる。
また、本実施形態の切断制御部49は、パッケージ30のトラバース領域の端部において糸切断を禁止する範囲である切断禁止トラバース範囲の長さ(図7を参照)を変更可能に構成されている。切断位置調整部70は、糸欠陥検知信号S4が入力されたときに、トラバース位置推定部60で推定したトラバース位置が切断禁止トラバース範囲内にある場合には、糸20のトラバース位置が移動して当該切断禁止トラバース範囲から外れた後にカッタ46が作動するように、カッタ46が作動するときの糸20の走行距離を調整する。
これにより、糸20のトラバース位置が切断禁止トラバース範囲から外れた位置に移動するまで遅延(糸20を走行)させてからカッタ46を作動させて糸20を切断するので、糸20の端面落ちを確実に防止することができる。また、切断禁止トラバース範囲の長さをソフトウェア的に変更することができるので、オペレータが糸20の物性等を考慮して切断禁止トラバース範囲の長さを適宜に変更できるようになり、利便性を向上させることができる。
また、本実施形態の糸監視装置15は、上記の切断制御部49を備えるとともに、糸20の欠陥を検知する糸欠陥検知部47を更に備える。糸欠陥検知部47は、糸20の欠陥を検知すると、カッタ46の作動信号としての糸欠陥検知信号S4を切断制御部49に出力する。
これにより、糸欠陥検知部47が糸20の欠陥を検知した場合に、糸20の端面落ちが発生しないように調整された糸20の走行距離のところでカッタ46により糸20を切断することができる。
また、本実施形態の糸監視装置15は、切断装置(本実施形態では、カッタ46)を備える。
これにより、糸20の欠陥の検出からカッタ46を作動させるまでの制御信号のやり取りを糸監視装置15の中で完結させることが容易になるので、構成を簡素化することができる。
また、本実施形態の糸監視装置15においては、前記切断装置はカッタ46である。
これにより、簡素な構成で糸20を切断することができる。
また、本実施形態のワインダユニット10は、上記の糸監視装置15を備えるとともに、給糸部28と、パッケージ形成部31と、を備える。給糸部28には、給糸ボビン21が支持される。パッケージ形成部31は、給糸部28の給糸ボビン21の糸20を巻き取ってパッケージ30を形成する。糸監視装置15は、給糸部28とパッケージ形成部31との間に配置される。
これにより、糸20の端面落ちが生じにくい簡素な構成のワインダユニット10を提供することができる。
また、本実施形態のワインダユニット10は、巻取ドラム24と、糸継装置14と、ユニット制御部50と、を備える。巻取ドラム24は、給糸部28からの糸20をパッケージ30に巻き取るためにパッケージ30に接触してパッケージ30を回転駆動する。糸継装置14は、カッタ46が作動して糸20が切断された場合に、給糸部28からの糸20と、パッケージ形成部31からの糸20と、を繋ぎ合わせる糸継動作を行う。制御部45は、ワインダユニット10を制御する。制御部45は、糸欠陥検知部47で糸20の欠陥が検知されたときの糸20の位置からカッタ46を作動させて切断する位置までの糸20の走行距離以上の長さにわたって糸20をパッケージ30から引き出すまで、パッケージ30を逆転させるように巻取ドラム24を制御し、その後に糸継装置14に糸継動作を行わせる。
即ち、上記の糸監視装置15を備えるワインダユニット10では、糸欠陥検知部47が糸20の欠陥を検知しても、端面落ちを防止するためにカッタ46の作動のタイミングが遅れる場合が生じる。この点、本実施形態の構成によれば、カッタ46の作動が遅れた分だけパッケージ30に糸20が追加的に巻き取られた場合でも、その追加分も含めた十分な長さの糸20をパッケージ30から引き出した後に糸継装置14が糸継動作を行うので、糸欠陥検知部47で検知された糸20の欠陥を確実に除去することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記の実施形態では、折返し位置推定部62は、糸速度Vのデータの中で糸速度Vが極大値となるときの糸20の走行距離で、糸20のトラバース位置がパッケージ30の大径側の端(前記の他端)にあると推定している。しかしながら、これに代えて、折返し位置推定部62は、糸速度Vが極小値となるときの糸20の走行距離で、糸20のトラバース位置がパッケージ30の小径側の端(前記の一端)にあると推定してもよい。この場合、直近のトラバース走行距離Lは、糸速度Vの極小値が現れた少なくとも直近の2回の糸20の走行位置の間に糸速度検知部48から入力されたパルス信号S5をカウントすることにより求めることができる。なお、1回のトラバースストロークの間に複数の極小値が現れる場合があり得るが、そのような場合は、折返し位置推定部62は、そのような複数の極小値のうち、所定の条件を満たす極小値(所定の極小値)を用いれば良い。
上記の実施形態において、カッタ46による糸切断が禁止される切断禁止トラバース範囲は、切断禁止トラバース範囲設定部を用いてオペレータにより変更可能に構成されている。しかしながら、切断禁止トラバース範囲は変更不能であっても良い。あるいは、これに代えて、切断禁止トラバース範囲は、糸20の巻取条件、糸速度V、糸20の物性及び糸欠陥の種類等に応じて自動で変更可能に構成されていてもよい。
糸速度検知部48で検知される糸速度Vに生じる不規則的な変動が小さい場合、データ平滑化部61を省略することもできる。
上記の実施形態では、パッケージ30の形状はコーン形状であるものとした。しかしながら、パッケージの形状は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えばこれに代えてパッケージの形状をチーズ形状とすることもできる。その場合、トラバース位置推定部60は、例えば、チーズ形状のパッケージを駆動する巻取ドラムに形成される綾振溝の構成等により生じる1トラバースの中での糸速度の変化の傾向を検出することにより、トラバース位置を推定することができる。
上記の実施形態では、回転駆動される巻取ドラム24にパッケージ30が接触することにより、パッケージ30が従動回転されて糸20が巻き取られるものとした。しかしながら、パッケージ30に糸20を巻き取る態様はこれに限るものではなく、例えばこれに代えて、パッケージをモータにより直接駆動する構成としても良い。また、巻取ドラム24の綾振溝27によって糸20をトラバースすることに代えて、綾振ガイドを往復駆動することにより糸をトラバースしても良い。
カッタ46の作動位置の調整は、糸欠陥検知部47が糸欠陥を検出したことに伴う糸切断に限らず、例えばユニット制御部50から糸監視装置15に入力される強制切断指令信号により糸20をカッタ46で切断する場合等、様々な糸切断に適用することができる。
上記の実施形態では、図2に示すように、サクションマウス34の左右幅(長手方向の幅)は、パッケージ30の左右幅(外周面の幅)と同程度の長さに構成されている。しかしながら、これに代えて、サクションマウス(の吸引口)の長手方向の幅をパッケージの外周面の幅よりも狭く構成することもできる。その場合、トラバース幅のうち糸切断を許可する領域の幅がサクションマウスの長手方向の幅と略同じとなるように、前記切断禁止トラバース範囲を設定することが望ましい。具体的には、例えば、サクションマウスの長手方向の幅が3インチであって、パッケージ30の外周面の幅(トラバース幅)が6インチである場合は、両端のそれぞれから1.5インチ(約38mm)までの長さを切断禁止トラバース範囲として設定する。このように構成することにより、サクションマウス(の吸引口)の長手方向の幅が小さい場合にも、短いノッティング時間で糸端を吸引捕捉することができる。このようにサクションマウス(の吸引口)の長手方向の幅を狭く構成すると、サクションマウスで上糸を吸引捕捉するために必要なエネルギー(負圧)を低減させることができるという利点がある。
上記の実施形態では、カッタ46は糸監視装置15に備えられるものとした。しかしながら、これに限るものではなく、カッタが糸監視装置とは別に備えられているものとしても良い。
上記の実施形態では、切断装置はカッタ46であるものとした。しかしながら、これに限るものではなく、1本の糸20を2つに分離できるものであればよい。
上記の実施形態では、切断位置調整部70は、カッタ作動指令部52に切断許可信号S8と切断禁止信号S7との何れかを出力するものとしたが、必ずしもこれに限るものではなく、例えばこれに代えて、切断許可信号S8のみを出力するものとし、この切断許可信号S8が出力されていない間は切断が禁止されているものとカッタ作動指令部52の側で判断するものとしてもよい。
上記の実施形態では、巻取ドラム24が回転駆動されることにより糸20がトラバースされるものとしたが、これに限るものではなく、例えばこれに代えて、トラバースアームによって糸20がトラバースされるものとしてもよい。その場合、糸速度Vの不規則な変動が少なくなるため、データの平滑化を省略できる場合もある。
糸速度Vを、糸監視装置15以外の場所で検出する構成としてもよい。
上記の実施形態では、トラバース比を算出した上で、このトラバース比の中で糸20の切断を禁止する禁止範囲を設定するものとした。しかしながら、これに限るものではなく、トラバース比を求めずに、糸20の切断が禁止される糸20の走行距離を直接的に求めて禁止範囲としてもよい。
上記の実施形態では、糸20の走行距離に基づいて制御を行い、端面落ちが発生しにくい走行距離のところで糸20を切断するものとした。このような制御では、糸速度Vの変化を考慮しなくても良いという点でメリットがある。しかしながら、これに代えて、糸20の切断タイミングに基づいて制御を行い、端面落ちが発生しにくいタイミングで糸20を切断することとしてもよい。
トラバース走行距離は、糸速度Vの極大値が現れた直近の3回以上の糸20の走行位置のそれぞれの間の走行距離を求めて、これらの平均を取ることにより算出してもよい。あるいは、糸速度Vの極小値が現れた直近の3回以上の糸20の走行位置のそれぞれの間の走行距離を求めて、これらの平均を取ることにより算出してもよい。