次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、車両情報記憶システム100の概要について図1を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る車両情報記憶システム100の構成を示すブロック図である。
車両情報記憶システム100は、自動二輪車1に関する情報である車両情報を集約して活用するためのシステムである。車両情報記憶システム100は、鞍乗型車両である自動二輪車1と、搭乗者端末装置7と、車両情報記憶装置8と、を備える。なお、図1では、自動二輪車1及び搭乗者端末装置7を1つずつしか記載していないが、実際には、複数の自動二輪車1で得られた車両情報が車両情報記憶装置8に集められる。
自動二輪車1は、車両情報センサ30と、演算処理機(取得部)50と、通信機(送信部)60と、を備える。車両情報センサ30は、車両情報を検出して演算処理機50へ出力する。演算処理機50は、車両情報センサ30から取得した車両情報を記憶するとともに、車両情報に基づいて外力情報を得る。演算処理機50は、所定のタイミングで少なくとも外力情報を含む車両情報を通信機60へ出力する。通信機60が送信する情報は、予め送信すべき情報として設定された情報である。通信機60は、演算処理機50が取得した車両情報を、搭乗者端末装置7へ無線送信する。本実施形態では通信機60は自動二輪車1の内部(詳細には、後述のメータ装置19の内部)に配置されている。なお、演算処理機50と通信機60は、一体的に構成されていても良い。自動二輪車1の構成及び車両情報の詳細については後述する。
搭乗者端末装置7は、自動二輪車1の搭乗者(運転者又は同乗者)が所有し携帯している情報端末装置である。搭乗者端末装置7は、自動二輪車1とは独立して構成されている。搭乗者端末装置7は、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、又はノートパソコン等である。搭乗者端末装置7は、通信機60に比べて広範囲に情報を送信可能である。即ち、搭乗者端末装置7は、演算処理機50から車両情報記憶装置8への情報を中継する中継装置として機能する。つまり、搭乗者端末装置7は、電話及びインターネット接続等を実行する機能を有する通信端末装置に対して、予め定める車体情報記憶プログラムが実行されることで、車両情報記憶装置8への中継装置として機能する。搭乗者端末装置7は、公衆通信回線又は専用通信回線を介して、車両情報記憶装置8へ情報を送信可能に構成される。搭乗者端末装置7は、受信部71と、公衆送信部72と、を備える。
受信部71は、自動二輪車1の通信機60が送信した車両情報を受信する。搭乗者端末装置7は、公衆通信回線を介してインターネットに無線接続可能である。受信部71は、通信機60からの信号を受信する車体側アンテナ部分と、受信した信号を情報として復調する復調部分と、を有する。受信部71は、通信端末装置が予め有している構成を用いることができる。
公衆送信部72は、インターネットを介して車両情報を車両情報記憶装置8へ送信する。公衆送信部72は、車両情報を送信可能な信号に変調する変調部分と、変調した信号を公衆通信回線の基地局に向けて送信する回線側アンテナ部分と、を有する。公衆送信部72は、他の装置を介することなくインターネットに接続可能であるが、他の装置(例えば、携帯可能な無線ルータ)を介してインターネットに接続可能であっても良い。公衆送信部72は、既存の構成(搭乗者端末装置7が予め有している構成、搭乗者端末装置7が他の機能を実現するために有している構成)を用いることができる。
自動二輪車1と搭乗者は比較的近い距離にいるため、自動二輪車1と搭乗者端末装置7の通信には、例えば通信距離が5m以下又は10m以下(言い換えれば、公衆送信部72と通信基地局との通信可能範囲よりも狭い範囲)の近距離無線通信規格を用いることができる。通信規格の例としては、Bluetooth(登録商標)を挙げることができる。
車両情報記憶装置8は、自動二輪車1が送信した車両情報を蓄積する装置である。車両情報記憶装置8は、例えばサーバ等の装置であって、インターネット接続が可能な記憶装置である。車両情報記憶装置8は、公衆受信部81と、記憶部82と、を備える。公衆受信部81は、インターネットに接続することで、公衆送信部72が送信した車両情報を受信する。記憶部82は、公衆受信部81が受信した車両情報を記憶する。記憶部82は、所定の条件に合致する車両情報を抽出できるように、車両情報をデータベース化している。なお、車両情報の活用方法については後述する。
次に、自動二輪車1の構造について図2を参照して簡単に説明する。図2は、自動二輪車1の側面図である。
図2に示す本実施形態の自動二輪車1は、いわゆるマルチパーパスタイプ(デュアルパーパスタイプ)の自動二輪車であり、車体11と、前輪13と、後輪14と、を備える。本実施形態において、車体11とは、自動二輪車1の骨格としての各種フレームだけでなく、当該フレームに支持される部材や装置も含む概念である。
前輪13及び後輪14は、車体11に回転可能に支持されている。具体的には、車体11は、メインフレーム15と、フロントフォーク16と、スイングアーム17と、を備える。フロントフォーク16は、ヘッドパイプを介してフロントフォーク16に接続されている。前輪13は、このフロントフォーク16を介して支持されている。また、スイングアーム17は、ピボットフレームを介してメインフレーム15に接続されている。後輪14は、このスイングアーム17を介して支持されている。
また、車体11の前端には、前方に光を照射するヘッドランプ18が配置されている。ヘッドランプ18は、ロービームとハイビームを切替可能に構成されている。ヘッドランプ18の後方には、メータ装置19が配置されている。メータ装置19は、車速及びエンジン回転速度等を表示する。
メータ装置19の後方には、ステアリングハンドル20が配置されている。ステアリングハンドル20は、運転者が操舵を行うための操作子であり、ステアリングハンドル20を回転させることで前輪13の向きを変更して旋回を行うことができる。ステアリングハンドル20には、アクセル開度を変更する操作(スロットル操作)を行うためのスロットルグリップ(操作子)、ブレーキ操作を行うためのブレーキレバー(操作子)、及びクラッチ操作を行うためのクラッチレバー(操作子)が配置されている。更に、ステアリングハンドル20には複数のスイッチ(操作子)が設けられている。具体的には、ヘッドランプ18、方向指示器、ハザードを操作するためのスイッチ、及び、エンジンスタート、走行モードの切替え等を指示するスイッチ等が設けられている。
ステアリングハンドル20の後方には、燃料タンク21が配置されている。燃料タンク21は、前輪13の後方に配置されたエンジン22に供給する燃料を蓄える。エンジン22は、自動二輪車1の後輪14を駆動する、自動二輪車1の駆動源である。
燃料タンク21の後方には、運転者が着座するためのフロントシート(運転者シート)23が配置されている。運転者は、フロントシート23に着座し、フロントシート23の下方に配置された左右一対のフロントステップ(運転者ステップ)24に足を載せる。なお、フロントステップ24の近傍には、変速操作を行うためのシフトペダル(操作子)と、ブレーキ操作を行うためのブレーキペダル(操作子)と、が設けられている。運転者は、フロントシート23に跨って運転操作を行う。また、自動二輪車1は、旋回時に車体11を傾けて走行可能な乗物であり、運転者がステアリングハンドル20の向きを変えるよう外力を与えることで、車体11の向きが変わる。例えば、旋回時に運転者がコーナ中心に向けて体重移動することで、旋回走行に適した車両挙動を得るようにしたり、前後方向に体重を移動させることで、加減速走行に適した車両挙動を得るようにしたりする場合がある。
フロントシート23の後方には、同乗者が着座するためのリアシート(同乗者シート、タンデムシート)25が配置されている。同乗者は、リアシート25に着座し、リアシート25の下方に配置された左右一対のリアステップ(同乗者ステップ、タンデムステップ)26に足を載せる。
次に、上述の車両情報センサ30の具体的な構成、及び、車両情報の内容について、図3及び図4を参照して詳細に説明する。図3は、車両情報を送信するための構成を示す自動二輪車のブロック図である。図4は、車両情報を示す図である。なお、図4に示す車両情報は一例であり、自動二輪車1は、図4に示す車両情報の一部のみ又は全部を搭乗者端末装置7へ送信しても良いし、図4に示していない車両情報を更に含めて搭乗者端末装置7へ送信しても良い。
上述のように、車両情報は、自動二輪車1に関する情報であり、その内容は様々である。車両情報は、主として車両情報センサ30によって検出されて演算処理機50へ出力されるが、演算処理機50の動作状況又は設定内容に基づいて取得できる車両情報もある。
図4に示すように、車両情報には、外力情報、指令情報、車両挙動情報、環境情報、及び識別情報が含まれている。外力情報とは、自動二輪車1の走行中に、外部から自動二輪車1に与えられた外力を示す情報である。外力には、直線方向の力だけでなく、回転方向の力(モーメント)も含む。ここで、外部とは、路面及び搭乗者を含む概念である。外力情報は、例えば、搭乗者付与外力情報と、路面付与外力情報と、を含む。搭乗者付与外力情報は、搭乗者(運転者、同乗者)から自動二輪車1(詳細には車体11)に与えられた外力(運転者が車体11に与える操作を除く)を示す情報である。路面付与外力情報とは、路面から自動二輪車1(詳細には前輪13、後輪14)に与えられた外力を示す情報である。
図3に示すように、自動二輪車1は、搭乗者付与外力情報を検出する外力情報センサとして、ステアリングトルクセンサ31と、ハンドル荷重センサ32と、フロントシート荷重センサ33と、フロントステップ荷重センサ34と、リアシート荷重センサ35と、リアステップ荷重センサ36と、を備える。自動二輪車1は、路面付与外力情報を検出する外力情報センサとして、タイヤ力センサ37を備える。また、外力情報センサは、例えば歪みゲージを用いて構成することができるが、別の検出素子(例えば圧電素子)を用いて構成されていても良い。
ステアリングトルクセンサ31〜フロントステップ荷重センサ34は、運転者が付与した外力を検出するセンサである。ステアリングトルクセンサ31及びハンドル荷重センサ32は、運転者が上半身(特に手及び腕)を用いて付与した外力を検出するセンサである。フロントシート荷重センサ33及びフロントステップ荷重センサ34は、運転者が下半身を用いて付与した外力を検出するセンサである。
外力情報センサが検出した外力情報は、時間の経過に応じて変化する情報である。外力情報センサ又は演算処理機50は、どのタイミングで検出された外力情報かを識別するために、例えば外力情報を情報検出時刻と対応付けて記憶する。なお、外力情報センサ以外が検出した車両情報も同様に情報検出時刻と対応付けて演算処理機50に記憶される。これにより、複数のセンサが検出した車両情報を同期させることができる。
ステアリングトルクセンサ31は、ステアリングトルクを検出する。ステアリングトルクとは、運転者がステアリングハンドル20を回転させる力である。即ち、運転者が、ステアリングハンドル20の回転中心(操舵軸)に与える力(操舵軸回りの力)である。ステアリングトルクは、自動二輪車1の走行時において、ステアリングハンドル20を回転させる速度、及び、ステアリングハンドル20を回転させるタイミングに応じて変化する。ステアリングトルクは、自動二輪車1の旋回時だけでなく、路面から受ける力に抗して操舵位置又は速度を維持する時にも生じる。ステアリングトルクセンサ31は、検出したステアリングトルクを演算処理機50へ出力する。
なお、演算処理機50は、エンジン制御装置であっても良いし、メータ装置19に設けられたメータ制御装置であっても良い。また、複数の制御装置から構成されていても良い。
ハンドル荷重センサ32は、運転者がステアリングハンドル20に付与するハンドル荷重を検出する。フロントシート荷重センサ33は、運転者がフロントシート23に付与するフロントシート荷重を検出する。フロントステップ荷重センサ34は、運転者がフロントステップ24に付与するフロントステップ荷重を検出する。フロントステップ24は左右一対で設けられるので、フロントステップ荷重センサ34も左右一対で設けられる。
運転者は、フロントシート23に着座し、ステアリングハンドル20を手で握り、フロントステップ24に足を載せる。従って、運転者の体重は、原則として、これらの3つの部材に掛かる。従って、上記の3つの荷重を検出することで、運転者の体重の掛け方(荷重バランス)を推定することができる。また、ハンドル荷重センサ32、フロントシート荷重センサ33、及びフロントステップ荷重センサ34は、荷重の大きさのみを検出する構成であっても良いし、荷重が掛かる方向(左右方向、前後方向)を更に検出する構成であっても良いし、荷重が掛かる位置(左右位置、前後位置)を更に検出する構成であっても良い。このように、荷重が掛かる方向及び荷重が掛かる位置を検出することで、運転者の姿勢や重心の位置等を推定できる。また、荷重の時間変化を用いることで、運転者の姿勢変化等を推定できる。これにより、旋回時に運転者の重心によってどのように外力を与えているかを推定することができる。
リアシート荷重センサ35は、同乗者がリアシート25に付与するリアシート荷重を検出する。リアステップ荷重センサ36は、同乗者がリアステップ26に付与するリアステップ荷重を検出する。フロントステップ24と同様に、リアステップ26は左右一対で設けられるので、リアステップ荷重センサ36も左右一対で設けられる。リアシート荷重センサ35及びリアステップ荷重センサ36は、同乗者の荷重を検出する。これらのセンサは、運転者の荷重を検出するセンサと同様である。この構成により、同乗者の姿勢及び姿勢変化、重心の位置、重心によってどのように外力を与えているか等を推定できる。
自動二輪車1は、四輪車と比較して軽量であり、車体11を傾けて旋回するため、搭乗者が姿勢及び重心をどのように変化させるかが、車体11の挙動に大きく影響する。従って、四輪車と比較して、これらの値を有効に活用することができる。
タイヤ力センサ37は、路面接地部分である、前輪13及び後輪14の少なくとも一方が路面から受ける力であるタイヤ力を検出する。タイヤ力とは、前後方向の力(駆動力、制動力の反力)、左右方向の力(横滑りに対する摩擦力)、鉛直上向きの力(荷重に応じた垂直抗力、路面の凹凸によって車体11を上下移動させる力)、及び回転方向の力(回転軸は、前後方向、左右方向、上下方向の何れであっても良い)を含む概念である。タイヤ力センサ37は、上述の複数の力のうち、少なくとも1つを検出する構成であれば良い。タイヤ力を用いることで、走行時に前輪13及び後輪14に掛かっている摩擦力を推定できる。特に、自動二輪車1の旋回時の摩擦力を推定することで、運転者が前輪13及び後輪14の摩擦力をどの程度活用しているか(スリップするまでにどの程度余裕があるか)等を推定できる。例えば旋回時における、ステアリングトルク、運転者の荷重、及びタイヤ力を用いることで、旋回時に運転者が付与した力によって、自動二輪車1が路面からどのような力を受けるかについて推定することができる。
図4に示す指令情報とは、自動二輪車1に設けられた操作子を用いて指令した内容を示す情報である。指令情報は、運転指令情報と、運転補助指令情報と、に分類される。運転指令情報は、自動二輪車1の操舵、走行に関する指令情報である。運転補助指令情報は、運転指令情報以外の指令情報である。また、運転指令情報の少なくとも一部は、図3に示す運転指令センサ38によって検出される。運転補助指令情報の少なくとも一部は、図3に示す運転補助指令センサ39によって検出される。運転指令センサ38及び運転補助指令センサ39の具体的な構成は以下で説明する。
図4に示すように、運転指令情報としては、操舵角、アクセル開度、ブレーキ操作量、変速段、及びクラッチ操作量が含まれる。操舵角は、運転者がステアリングハンドル20を回転させた角度である。アクセル開度は、運転者がスロットルグリップを回転させた角度である。ブレーキ操作量とは、運転者がブレーキレバー及びブレーキペダルを操作した操作量である。ギアポジションとは、変速装置の現在の変速段(シフトポジション)である。クラッチ操作量とは、運転者がクラッチレバーを操作した操作量である。これらの運転指令情報は、操作子又は操作子に連結される部材に設けたセンサ(回転センサ、位置センサ)等によって検出される。
上述の搭乗者付与外力(特に運転者付与外力)を用いることで、運転者の操舵内容を推定できる。この運転者付与外力に加えて更に運転指令情報を用いることで、運転者の操舵内容を更に詳細に推定することができる。
図4に示すように、運転補助指令情報としては、灯火部品等の動作状況が含まれる。灯火部品の動作状況としては、例えばヘッドランプ18がハイビームかロービームか、方向指示器が点灯しているか否かを示す点灯状況、ハザードランプが点灯しているか否かを示す点灯状況等がある。灯火部品の動作状況は、運転者が操作するスイッチ等の動作状況を検出するセンサによって検出できる。灯火部品の動作状況を用いることで、自動二輪車1の走行環境を推定することができる。
図4に示す車両挙動情報とは、自動二輪車1の挙動を示す情報である。車両挙動情報は、エンジン22の挙動を示すエンジン情報と、車体11の挙動を示す車体動作情報と、に分類される。
図4に示すように、エンジン情報としては、走行モードと、エンジン回転速度と、エンジン制御状態と、が含まれる。エンジン情報の少なくとも一部は、図3に示すエンジン情報センサ40によって検出される。走行モードとは、運転者の操作に応じた自動二輪車1の挙動を切り替えるためのものである。走行モードを変化させることで、例えば最高出力が変化したり、アクセル開度に対するレスポンスが変化したりする。走行モードは、運転者が所定のスイッチ等を操作することで切り替えられる。走行モードは、運転者が操作するスイッチ等の動作状況を検出するセンサによって検出される。走行モードに応じて自動二輪車1の挙動は変化するため、走行モードを用いることで、運転者の操舵内容に応じた自動二輪車1の挙動を更に詳細に把握することができる。
エンジン回転速度は、エンジン22のクランクシャフトの回転速度であり、エンジン22等に取り付けられた回転センサ等により検出される。エンジン制御状態は、様々なエンジン制御の実行の有無又は程度を示す情報である。エンジン制御としては、例えば、駆動輪(後輪14)の空転を防止するトラクションコントロール、前輪13又は後輪14のロックを防止するABS(アンチロック・ブレーキ・システム)、前輪13が路面から浮くことを防止するウイリー防止制御がある。エンジン制御状態は、演算処理機50の動作状況に基づいて入手できる。エンジン22は、自動二輪車1を駆動する基本的な部材であるため、エンジン情報は、自動二輪車1の挙動を推定するうえで重要となる。
図4に示すように、車体動作情報としては、車速と、加減速度と、バンク角と、ピッチ角と、燃料残量と、異常発生状況と、サスペンション伸縮量と、その他アクチュエータ動作と、が含まれる車体動作情報の少なくとも一部は、図3に示す車体動作情報センサ41によって検出される。車速は、自動二輪車1の走行速度である。車速は、後輪14等に設けられる車速センサによって検出される。加減速度は、自動二輪車1の加速度及び減速度である。バンク角は、前後方向を回転軸とした車体11の傾斜角である。ピッチ角は、左右方向を回転軸とした車体11の傾斜角である。加減速度、バンク角、及びピッチ角は、加速度センサ等によって検出される。燃料残量は、燃料タンク21が貯留する燃料の残量である。燃料残量は、燃料タンク21内に設けられる燃料残量センサ等によって検出される。異常発生状況は、自動二輪車1の各部の異常発生の有無である。異常発生状況は、自動二輪車1の各部に設けられた異常検出センサによって検出される。サスペンション伸縮量は、自動二輪車1が備えるサスペンション(フロントサスペンション、リアサスペンション)の伸縮量である。サスペンション伸縮量は、サスペンションに設けられたストロークセンサ等によって検出される。
車速及び加減速度は、自動二輪車1の走行に関する基本的な値であるため、自動二輪車1の挙動を推定するうえで重要となる。バンク角を検出することで、旋回時に自動二輪車1をどれだけ傾斜させているかを把握できるため、バンク角に応じてタイヤ力がどのように変化しているかや、バンク角の変化と運転者の姿勢変化の関係等を把握できる。燃料残量は自動二輪車1の重量に影響するため、自動二輪車1の挙動を推定するうえで重要となる。また、燃料残量に応じて運転者の操舵が変化するか否かについても推定できる。サスペンション伸縮量を検出することで、路面の凹凸を推定できる。
図4に示すように、環境情報としては、走行位置、路面摩擦係数、路面勾配、走行路の種類、温度、天候、渋滞状況及び時間帯等がある。図3に示すように、環境情報の少なくとも一部は、図3に示す環境情報センサ42によって検出される。走行位置は、自動二輪車1の位置情報であり、GPS受信機等により検出できる。路面摩擦係数は、前輪13及び後輪14と、走行路と、の間の摩擦係数である。摩擦係数は、例えばタイヤ力センサ37の検出結果等に基づいて推定しても良い。この場合、タイヤ力センサ37は、外力情報センサであるとともに、環境情報センサ42に該当する。路面勾配は、走行路の傾斜角度(左右方向を軸とした傾斜角度)である。走行路の種類は、例えば、高速道路、市街地、山道等を示す。路面勾配及び走行路の種類は、自動二輪車1の位置情報と、地図情報と、に基づいて求めることができる。なお、自動二輪車1では、位置情報のみを出力し、搭乗者端末装置7又は車両情報記憶装置8で路面勾配及び走行路の種類を付加しても良い。温度、天候、渋滞状況は、自動二輪車1の位置情報及び時刻と、所定のデータベースと、に基づいて求めることができる。これらも同様に、自動二輪車1では、位置情報及び時刻のみを出力し、搭乗者端末装置7又は車両情報記憶装置8で温度、天候、渋滞状況を付加しても良い。時間帯は、自動二輪車1の演算処理機50等が有する時計から入手できる。
走行位置を用いることで、自動二輪車1がどのような地域を走行しているかを把握できる。また、路面摩擦係数及び路面勾配は、自動二輪車1の挙動に影響する。特に、自動二輪車1は、四輪車と比較して軽量であるため、路面摩擦係数の影響が四輪車よりも大きく、更に、路面勾配や路面の凹凸が車体のピッチングに与える影響も大きい。また、走行路の種類、温度、天候、渋滞状況、及び時間帯は、運転者の操舵に影響する可能性がある。
図4に示すように、識別情報としては、運転者ID及び車両IDが含まれる。運転者IDは、運転者を識別するための識別子であって運転者毎に個別に付与される。運転者IDは、例えば車両情報記憶システム100を利用する際にサービスの提供者から付与される。車両IDは、自動二輪車1を区別するための識別子であって自動二輪車1毎に個別に付与される。
車両情報に運転者IDを含めることで、運転者毎の操舵の傾向を推定できる。また、車両情報に車両IDを含めることで、車種毎、自動二輪車1毎の操舵の傾向を推定できる。
次に、車両情報記憶システム100で行われる処理について図3及び図5を参照して説明する。図5は、車両情報記憶システム100が行う処理の概要を示すフローチャートである。
初めに、通信機60は、上述のように取得した車両情報(外力情報を含む)を近距離無線通信規格等を用いて搭乗者端末装置7へ無線送信する(S101)。搭乗者端末装置7は、ステップS101で通信機60が送信した車両情報を受信する(S102)。次に、搭乗者端末装置7は、ステップS102で受信した車両情報を公衆通信回線を介して車両情報記憶装置8へ無線送信する(S103)。車両情報記憶装置8は、ステップS103で搭乗者端末装置7が送信した車両情報を受信する(S104)。車両情報記憶装置8は、ステップS104で受信した車両情報を記憶部82に記憶する(S105)。
図5のフローチャートは、車両情報記憶システム100を構成する各部が行う処理(車両情報の流れ)を順番に示したものであり、車両情報記憶システム100を構成する各部は独自に処理を行う。従って、ステップS101〜ステップS105の処理は、常にこの順番で行われるものではない。例えば、ステップS101の処理が複数回行われた後にステップS102の処理が行われることがある。
次に、通信機60が車両情報を送信する処理の詳細について、図6のフローチャートを参照して説明する。図6は、演算処理機50が車両情報を送信するために行う処理を示すフローチャートである。車両情報は、搭乗者端末装置7へ随時送信されても良いが、本実施形態では、所定のタイミングで搭乗者端末装置7へ送信される。これにより、通信機60の消費電力を抑えることができる。そのため、演算処理機50は、車両情報センサ30から取得した車両情報を一時的に記憶する。
演算処理機50は、加工処理する車両情報があるか否かを判定し(S201)、加工処理する車両情報がある場合は、車両情報の加工処理(S202)を行う。加工処理とは、演算処理機50に記憶する車両情報を加工する処理である。加工処理としては、通信量を抑えるためにデータ量を削減する処理がある。データ量の削減方法は様々であるが、例えば、不要な情報(停止中の外力情報等)を削除したり、所定の時間範囲で検出値を平均化したり、連続的に変化する検出値を所定の閾値以上か否かで2値化したり、外力が所定の閾値以上である部分を抽出したりする処理がある。
次に、演算処理機50は、車両情報の送信タイミングか否かを判定する(S203)。車両情報の送信タイミングは予め設定され、一定の時間間隔で送信しても良いし、演算処理機50に記憶する車両情報のデータ量に応じて定めても良いし、搭乗者からの指示があった時に送信しても良い。また、自動二輪車1の走行中に車両情報を送信しても良いし、停止中に車両情報を送信しても良い。停止中に送信する車両情報は、走行前後で変化がない情報(識別情報等)であることが好ましい。演算処理機50は、車両情報の送信タイミングと判定した場合、搭乗者端末装置7と通信可能か否かを判定する(S204)。
演算処理機50は、搭乗者端末装置7と通信可能であると判定した場合、通信機60を用いて車両情報を搭乗者端末装置7へ送信する(S205)。演算処理機50は、搭乗者端末装置7と通信可能でないと判定した場合、車両情報を送信せずに、例えばステップS201の処理に戻る。そして、演算処理機50は、再びステップS204の処理を行い、搭乗者端末装置7と通信可能と判定した場合、通信機60を用いて車両情報を搭乗者端末装置7へ送信する(S205)。
その後、演算処理機50は、車両情報の送信タイミングになる毎に車両情報を送信する。演算処理機50は、記憶されている車両情報を削除する。削除するタイミングとしては、例えば、搭乗者端末装置7へ送信した直後、一定期間後、又は演算処理機50の記憶容量が少なくなった後である。このように、自動二輪車1が無線通信を行うことで、頻繁に車両情報を送信できるので、演算処理機50の記憶容量を抑えることができる。
また、車両情報の種類毎に送信頻度を異ならせても良い。例えば、走行中の変化が小さい車両情報は、走行中の変化が大きい車両情報と比較して、送信頻度を低くしても良い。走行中の変化が小さい車両情報としては、例えば、環境情報及び走行モードが設定され、走行中の変化が大きい車両情報としては、例えば、外力情報、運転指令情報、及び車体動作情報が設定される。また、旋回状態や加減速状態では、直進状態や定速状態と比べて、走行中の変化が大きい車両情報の送信頻度を高くしても良い。また旋回状態では、非旋回状態と比べて、送信する車両情報の種類を多くしたり送信頻度を高くしたりしても良い。これによって運転者の使用具合に変化が生じ易い旋回状態での推定を精度良く行うことができる。また、車速が所定速度を超えた場合に、送信する車両情報の種類を多くしたり送信頻度を高くしたりしても良い。例えば、交差点に進入する場合や徐行中の場合において、送信する車両情報の種類を少なくしたり送信頻度を低くしたりすることで、車両情報の送信量を抑えて、利便性を向上することができる。また、所定速度よりも速い場合に、送信する車両情報の種類を多くしたり送信頻度を高くしたりしても良い。これによって運転者のフィーリングに影響する可能性が高い速度領域において、運転者の使用具合を精度良く推定できる。このように、予め定める条件を満たした場合に、送信する車両情報の種類を多くしたり送信頻度を高くしたりしても良い。また、運転者の操作によって通信する車両情報の種類又は送信頻度を変更しても良い。なお、車両情報の種類を変化させつつ、更に、送信頻度を変化させても良い。
次に、搭乗者端末装置7が車両情報を送信する処理の詳細について、図7のフローチャートを参照して説明する。図7は、搭乗者端末装置7が車両情報を送信するために行う処理を示すフローチャートである。
搭乗者端末装置7は、近距離無線通信規格等により通信機60が無線送信した車両情報を受信する(S301)。搭乗者端末装置7は、通信機60から受信した車両情報を(一時的に)記憶する(S302)。次に、搭乗者端末装置7は、車両情報記憶装置8と通信可能であるか否かを判定する(S303)。この判定は、例えば、搭乗者端末装置7が用いる公衆通信回線の電波の強さ等に基づいて行われる。
搭乗者端末装置7は、車両情報記憶装置8と通信可能であると判定した場合、ステップS302で記憶した車両情報を公衆通信回線を介して車両情報記憶装置8へ無線送信する(S304)。搭乗者端末装置7は、車両情報記憶装置8への送信後に、記憶している車両情報を削除しても良い。搭乗者端末装置7は、車両情報記憶装置8と通信可能でないと判定した場合、車両情報を送信せずに、例えばステップS301の処理に戻る。そして、搭乗者端末装置7は、再びステップS303の処理を行い、車両情報記憶装置8と通信可能と判定した場合、車両情報を車両情報記憶装置8へ送信する(S304)。
車両情報記憶装置8は、ステップS304で搭乗者端末装置7が送信した車両情報を受信するとともに、識別ID毎に記憶部82に記憶する。
なお、ステップS303において、公衆通信回線の電波の強さに応じて、車両情報の送信頻度を異ならせても良い。例えば、公衆通信回線の電波が所定の閾値より強い場合、車両情報の送信頻度を高くすることで、効率的に車両情報を送信できる。
本実施形態のように、搭乗者が所有する搭乗者端末装置7を用いて車両情報記憶装置8に車両情報を送信することで、自動二輪車1側に公衆通信回線を利用するための通信機能を設ける必要がない。言い換えれば、搭乗者端末装置7が通信機60と車両情報記憶装置8を中継するため、自動二輪車1に搭載される通信機60に要求される通信距離を小さくすることができる。これにより、自動二輪車1のコストを低減できる。また、汎用装置である搭乗者端末装置7に、予め定める車体情報記憶プログラムを実行させているため、専用の端末装置を省略することができ、様々な車両に追加可能であったり、コストを削減したりすることができる。
また、通信機60が車両情報を無線送信することによって、物理的な接続(有線接続)を不要として車両情報を送信することができる。これによって物理的な接続にくらべて頻繁に車両情報を送信することができる。例えば、走行中においても車両情報を送信することができる。このように車両情報を頻繁に送信することによって送信後の車両情報の削除も頻繁に行うことができる。これによって、物理的な接続までの長期間にわたって、車両情報を蓄積する場合に比べて、自動二輪車1に設けられる記憶装置の記憶容量を低減することができる。また、無線送信によって車両情報を送信することで、運転者や整備者による情報を送信する作業を不要とすることができ、利便性を向上させることができる。
また、車外に設けられた車両情報記憶装置8に車両情報(特に外力情報)を集約することで、自動二輪車毎に記憶装置が設けられる場合に比べて、多様な運転者及び車種によって得られる外力情報を集約し易くなる。
次に、車両情報記憶装置8に蓄積される車両情報の活用方法について説明する。
上述のように、外力情報を含む車両情報を車両情報記憶装置8に蓄積することで、運転者が走行中に自動二輪車に与えた外力(ステアリングトルク、搭乗者の荷重)及び運転指令(操舵角及びアクセル開度等)に基づいて、運転者がどのように自動二輪車を使用しているか(どのように操舵しているか)を推定することができる。特に、外力情報を用いることで、運転指令及び車両挙動情報からは得ることができない情報から、運転者による自動二輪車に与える外力の与え方(乗り方の傾向、運転者のクセ、好み)を推定することができる。また、同期して記憶される他の車両情報に基づいて、運転者が外力を変化させた状況を推定することができる。これにより、運転者に対して操舵方法(例えば、外力を変化させるタイミング及び大きさ)の改善案を提供できる。また、運転者の使用方法に合わせた自動二輪車のセッティングを提案したり、運転者の使用方法に合わせた部品を提案したり、別の自動二輪車を購入する場合に運転者に合わせた自動二輪車を提案したりすることができる。
また、自動二輪車に与えられる外力の影響によって、自動二輪車の挙動に変化が生じるため、自動二輪車に実際に与えられる外力と、自動二輪車の挙動と、の相関関係の傾向が推定し易い。例えば、得られた外力情報と、車両挙動情報との相関関係から、実際の車両挙動が相関関係からズレている場合には、自動二輪車が異常状態であるとを判断できることがある。このようにして、自動二輪車の故障診断を行うこともできる。また、自動二輪車の部品に応じたメンテナンスの適切なタイミングを推定することができる。
複数の運転者から得られた車両情報を用いることで、他の運転者と比較した自分の外力の与え方、例えば操舵の傾向等を把握することもできる。また、複数の運転者から得られた車両情報を用いることで、多数の利用者によって自動二輪車がどのように使用されているかを把握することができる。従って、自動二輪車のメーカーは、運転者の使用具合に合わせた自動二輪車を開発することができる。また、自動二輪車に運転者が付与した力や操作子を用いて指令した内容に応じて自動二輪車がどのように挙動するかについての情報を得ることができる。従って、この情報を用いて自動二輪車を開発することで、仕様又は要求に応じた自動二輪車を開発することができる。上述した活用例は一例であって、記憶した外力情報を他の目的で利用することも本発明の利用に含まれる。
また、車両情報のうち、外力情報を用いることで、以下に示すような利点がある。即ち、外力情報は、自動二輪車の車両挙動が生じる要因の1つである。例えば車両挙動(結果)が同じであったとしても、外力が大きく与えられた状態での車両挙動であるか、外力が与えられない状態での車両挙動であるかを把握することができる。このように車両挙動(結果)が、外力により生じているか否かを推定することができる。これにより、車両挙動のみを用いる場合と比べて、外力に起因した車両挙動の変化を精度良く推定することができる。
また、運転者が付与する外力情報は、操作子による運転指令とは別に、運転者による運転意図・趣向・クセを表す情報として捉えることができる。運転意図として外力情報を取得することで、車両挙動だけを取得する場合に比べて、運転者の使用具合を精度良く推定することができる。外力情報として、力の大きさ、向き、それらの時間変化等の詳細な情報を取得することで、更に運転者の運転意図を推定し易くすることができる。
また、ステアリングトルクを外力情報として取得することで、旋回状態の変化(結果)と、ステアリングトルク(要因)との相関関係を把握することができる。また、ステアリングトルクを外力情報として取得した場合には、旋回に対しての、運転者による運転意図・趣向・クセを表す情報として捉えることができる。自動二輪車は、旋回時に運転者が行う操作が複雑であるので、このようなステアリングトルクを収集することで、使用具合や、外力に起因した車両挙動の変化を精度良く推定することができる。また旋回初期及び旋回終了期等の旋回過渡状態にあたっては、運転者の与える外力としてのステアリングトルクと、運転者の車幅方向及び前後方向の体重移動と、を合わせて自動二輪車に与えられる外力が、旋回具合として現れる車両挙動に大きく影響を与える。本実施例では、これらの少なくとも一方、好ましくは両方を外力情報として取得することで、旋回過渡状態における運転者の運転意図等を推定し易くすることができる。
また、運転者の体重移動を外力情報として取得することで、自動二輪車の姿勢変化(結果)と、体重移動(要因)との相関関係を把握することができる。例えば自動二輪車にピッチング挙動が生じた場合に、運転者による前後方向の体重移動に起因するものか否かを判断することができる。同様に車体のロール挙動が生じた場合に、運転者による車幅方向の体重移動に起因するものか否かを判断することができる。
また、路面付与外力情報を取得することで、自動二輪車の姿勢変化(結果)と、路面から与えられた外力(要因)との相関関係を把握することができる。例えば、車体のピッチング挙動が生じた場合に、路面から与えられた外力に起因するものか否かを判断することができる。
また、運転者の体重移動と、路面から与えられた外力と、を同期して取得することで、路面から与えられる摩擦力を超えたか否かを把握し易くすることができ、旋回時の自動二輪車の横滑りを考慮した車両挙動を把握し易い。
また、これらの外力情報と走行環境の情報とを同期して取得することで、走行環境と、運転者が付与する外力としての運転意図・趣向・クセを表す情報との相関関係を把握し易くすることができる。これによって更に精度良く運転者の使用具合を把握することができる。例えば走行路、時間帯、天候等に応じて、運転意図に傾向や変化があるかどうかを推定することができる。
これらの外力情報と運転者を識別する識別情報とを同期して取得することで、運転者毎の運転意図・趣向・クセを表す情報を把握し易くすることができる。これによって更に精度良く運転者の使用具合を把握することができる。また外力情報と自動二輪車を識別する情報とを同期して取得することで、車種毎に運転者が与える外力の情報を得ることができ、車種毎の運転意図・趣向・クセを表す情報を把握し易くすることができる。
次に、図7を参照して、上記実施形態の変形例を説明する。図7は、変形例に係る車両外力情報記憶システムの構成を示すブロック図である。なお、変形例の説明においては、上記の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
上記実施形態では、自動二輪車1は、搭乗者端末装置7を介して、車両情報記憶装置8へ車両情報を出力していたが、本変形例では、通信機60が公衆通信回線を介してインターネットに無線接続することが可能である。この構成により、通信機60は、車両情報記憶装置8へ車両情報を送信する(送信工程)。
車両情報記憶装置8の受信部83は、自動二輪車1が送信した車両情報を受信する(受信工程)。車両情報記憶装置8の記憶部82は、受信部83が受信した車両情報を記憶する(記憶工程)。つまり、本変形例では、受信工程及び記憶工程を同一の処理装置で行う構成である。
本変形例の構成によれば、搭乗者端末装置7が不要であるため、自動二輪車1と搭乗者端末装置7を接続する作業も不要となる。これにより、利用者の手間が軽減されるので、利便性を向上できる。
以上に説明したように、自動二輪車1(鞍乗型車両)は、演算処理機(取得部)50と、通信機(送信部)60と、を備える。演算処理機50は、走行中に外部から自動二輪車1に与えられた外力を示す外力情報を取得する。通信機60は、演算処理機50が取得した外力情報を、車外に設けられる搭乗者端末装置7の受信部71に向けて無線送信する。
これにより、受信部71に送信された情報に基づいて、走行中に自動二輪車1に与えられた外力を得ることができる。また、走行中の外力情報を集約して分析することで、自動二輪車1の使用具合や使用具合と車両挙動との相関関係等を推定して活用することができる。更に、通信機60が外力情報を無線送信することで、有線送信する場合と比較して、走行中の送信が容易であり、外力情報が送信される頻度を高めることができる。従って、多くの外力情報を集約させることができるので、自動二輪車1の使用具合等を精度良く推定できる。
また、上記実施形態の自動二輪車1では、外力情報は、走行中に搭乗者から自動二輪車1の車体11に与えられた外力を示す搭乗者付与外力情報を含む。
これにより、受信部71に送信された情報に基づいて、走行中に搭乗者から自動二輪車1に与えられた外力(搭乗者付与外力)を得ることができる。また、走行中の搭乗者付与外力情報を集約して分析することで、搭乗者による外力の与え方としての使用具合を推定して活用することができる。
また、上記実施形態の自動二輪車1では、搭乗者付与外力情報は、走行中に運転者が操舵軸に与える力の情報が含まれる。
自動二輪車1等の鞍乗型車両では車体を傾けて旋回するため、運転者が与える操舵軸を回転させる力は、車体の挙動、特に旋回時の車体の挙動に大きな影響を与える。従って、このような力の情報を得ることで、旋回時の自動二輪車1の使用具合を詳細に推定することができる。
また、上記実施形態の自動二輪車1では、搭乗者付与外力情報は、搭乗者の自重により車体に与える力の情報が含まれる。
自動二輪車1等の鞍乗型車両は四輪車に比べて軽量かつ小型(前後輪のホイールベースが短い)であるため、搭乗者の姿勢に応じて搭乗者と鞍乗型車両を含む移動体としての重心位置が大きく変化するので、搭乗者の姿勢は車両挙動に大きく影響する。また、搭乗者の姿勢だけでなく、自重を掛ける位置又は方向も車両挙動に大きく影響する。従って、搭乗者の自重により車体11に与える力の情報を得ることで、自動二輪車1の使用具合を詳細に推定することができる。
また、上記実施形態の自動二輪車1では、外力情報は、走行中に路面から鞍乗型車両の前輪13及び後輪14(路面接地部分)に与えられた外力を示す路面付与外力情報を含む。
自動二輪車1等の鞍乗型車両は四輪車に比べて軽量かつ小型であるため、路面から与えられる外力は車両挙動に大きく影響する。従って、路面から与えられる外力の情報を得ることで、自動二輪車1の使用具合を詳細に推定することができる。
また、上記実施形態の自動二輪車1では、通信機60は、外力情報と同期させて、自動二輪車1に設けられる操作子を用いて指令した指令情報を送信する。
これにより、外力情報と同期した指令情報を得ることで、走行時の指令と、自動二輪車1の外力の与えられ方としての使用具合と、の関連性を把握することができる。
また、上記実施形態の自動二輪車1では、通信機60は、外力情報と同期させて、自動二輪車1の挙動を示す車両挙動情報を送信する。
これにより、外力情報と同期した車両挙動情報を得ることで、自動二輪車1の挙動と、自動二輪車1の外力の与えられ方としての使用具合と、の関連性を把握することができる。
また、上記実施形態の自動二輪車1では、通信機60は、外力情報と同期させて、自動二輪車1の走行環境を示す環境情報を送信する。
これにより、外力情報と同期した環境情報を得ることで、走行時の環境と、自動二輪車1の外力の与えられ方としての使用具合と、の関連性を把握することができる。
また、上記実施形態の自動二輪車1では、通信機60は、外力情報と同期させて、自動二輪車1及び運転者の少なくとも一方を識別するための識別情報を送信する。
これにより、外力情報と同期した識別情報を得ることで、車種又は運転者毎の自動二輪車1の外力の与えられ方としての使用具合を把握することができる。
また、上記実施形態の自動二輪車1では、搭乗者付与外力情報は、操舵軸に与える操舵軸回りの力及び運転者の姿勢移動によって車体11に与える前後軸回りの力の少なくとも何れか一方の情報を含んでいる。一般的に傾斜して旋回する自動二輪車1等の鞍乗型車両にあっては、運転者が与える操舵軸回りの力は、車両挙動、特に旋回挙動に大きく影響を与える。従って、上記の運転者が与える力の情報を得ることで、旋回時の運転者の使用具合及び車両挙動を把握することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記実施形態で説明した車両情報は一例であり、外力情報が含まれていれば一部の車両情報を省略しても良いし、他の車両情報が更に含まれていても良い。例えば、搭乗者付与外力情報として、運転者が足で燃料タンクを挟む力の情報を含めても良い。また、車体動作情報として、電子制御サスペンションの動作状況を含めても良い。詳細には、電子制御サスペンションは、他の車両情報に基づいてサスペンションの固さ(受けた力に対する変位量)を変化させる。このサスペンションの固さを車体動作情報として扱うことができる。
また、複数種類の車両情報を組み合わせて(同期させて)記憶しても良い。例えば、外力情報と識別情報と組み合わせて記憶されたり、外力情報と車体動作情報(特にバンク角、車速、加減速度)が組み合わせて記憶されたりすることが好ましい。また、外力情報と、車体動作情報(特にバンク角、車速、加減速度)と、外力情報と、が組み合わせて記憶されることが更に好ましい。また、外力情報と、識別情報と、運転指令情報(特にアクセル開度、ブレーキ操作量)と、が組み合わせて記憶されることが好ましい。また、外力情報と、識別情報と、運転指令情報(アクセル開度、ブレーキ操作量)と、エンジン回転速度と、変速段と、クラッチ操作量と、が組み合わせて記憶されることが更に好ましい。また、上記の組み合わせに加えて、位置情報が同期して記憶されることが更に好ましい。なお、使用具合に影響の小さい情報、例えば、運転補助指令情報、燃料残量、異常発生状況については記憶しない場合も本発明に含まれる。
上記実施形態では、搭乗者端末装置7は搭乗者が携帯することが想定されているが、自動二輪車1に設けられた端末収容部に収容されていても良い。また、搭乗者端末装置7は、ルータ装置等の、運転者に対して情報を通知する機能がない機器、運転者が情報を入力する入力機能がない機器であっても良い。
上記実施形態では、通信機60は自動二輪車1の内部に設けられているが、自動二輪車1の外部に設けられていても良い。また、通信機60と搭乗者端末装置7は、無線通信する構成であるが、有線通信する構成であっても良い。
自動二輪車1と搭乗者端末装置7との無線通信には、RFID(Radio Frequency Identifier)、無線LAN(Wi−Fi等)を用いることができる。また、自動二輪車1と搭乗者端末装置7とは、有線接続されていても良い。この場合、例えば自動二輪車1に設けられた収容部に、演算処理機50と搭乗者端末装置7を所定のケーブルで接続するコネクタが設けられる。この場合、コネクタを介して、自動二輪車1から搭乗者端末装置7へ車両情報が送信される。また、このコネクタを介して、搭乗者端末装置7に電力が供給可能であっても良い。この場合、搭乗者端末装置7のバッテリーの充電量の低下を抑えることができる。
演算処理機50は、エンジン制御装置とは別に設けられていても良い。特に、演算処理機50を既存の自動二輪車1に追加可能な構成にすることで、車両情報の送信機能を容易に追加することができる。
自動二輪車1は、外力情報センサとして、ステアリングトルクセンサ31〜タイヤ力センサ37の少なくとも1つを備えていれば良い。例えば、同乗者が付与する外力は、運転者が付与する外力と比較して影響が小さいので、リアシート荷重センサ35及びリアステップ荷重センサ36を省略しても良い。また、荷重を推定するためのセンサである、ハンドル荷重センサ32〜フロントステップ荷重センサ34は、何れか1つのみを備えていても良い。また、搭乗者端末装置7に設けられる慣性センサを用いて、運転者の体重移動を推定しても良い。また、ヘルメットの位置を検出するセンサを用いて、ヘルメットの位置(即ち運転者の頭部の位置)に基づいて運転者の体重移動を推定しても良い。また、検出した車両挙動を用いて、車両挙動が生じる原因となった外力を演算して求めても良い。この場合、演算処理機50は、車両挙動を検出するセンサの検出値と、予め定める計算式と、に基づいて演算することで外力情報を取得する。なお、演算処理機50以外で外力を演算しても良い。例えば、車両情報記憶装置8で外力を演算して記憶しても良い。この場合、外力又は外力を演算するための情報(合わせて外力関連情報と称する)を車両情報記憶装置8に送信しても良い。このような構成も本発明に含まれる。また、走行中に自動二輪車に与えられる外力を蓄積して記憶できる構成であれば、小型の車両情報記憶装置8を用いて、搭乗者端末装置7と車両情報記憶装置8を有線接続する構成(又は自動二輪車1と車両情報記憶装置8を有線接続する構成)であっても良い。
上記実施形態では、外力情報として、搭乗者付与外力情報と路面付与外力情報を挙げて説明したが、他の外力情報を送信等する構成であっても良い。他の外力情報としては、例えば、自動二輪車1が走行時に受ける風圧(走行抵抗力)等の風による外力情報がある。
上記実施形態では、車両情報センサ30は自動二輪車1に設けられているが、少なくとも1つのセンサが別の箇所に設けられていても良い。例えば、車両情報センサ30を搭乗者端末装置7又は搭乗者の装備品(ヘルメット)に設けることができる。特に、上述したGPS受信機又は加速度センサは、搭乗者端末装置7又は搭乗者の装備品に設けられていても良い。
上記実施形態においてセンサで検出すると説明した外力情報について、センサの検出値と予め定められる計算式とに基づいて演算により算出しても良い。言い換えれば、外力情報を算出するために必要な情報(外力関連情報)をセンサが検出し、この検出情報に基づいて例えば演算処理機50が演算により外力情報を算出することで取得しても良い。なお、演算により外力情報を算出する演算装置は、自動二輪車1、搭乗者端末装置7、又は車両情報記憶装置8の何れに設けられていても良い。
上記実施形態では、1台の処理装置(具体的にはサーバ)により車両情報記憶装置8が構成されているが、複数台の処理装置によって車両情報記憶装置8が構成されていても良い。この場合、複数台の処理装置は、LAN(Local Area Network)又はWAN(Wide Area Network)で互いに接続されることで、物理的に離れた位置に配置されていても良い。
上記実施形態では、マルチパーパスタイプの自動二輪車1を説明したが、他のタイプ(例えばネイキッドタイプ、フルカウルタイプ)の自動二輪車にも本発明を適用できる。
本発明は、自動二輪車に限られず、旋回時に傾斜する乗物である鞍乗型乗物(運転者が跨って乗る乗物)に適用することができる。鞍乗型乗物としては、主としてオフロードを走行するための全地形対応車(ATV、All Terrain Vehicle)、スノーモービル、水上オートバイ(PWC、Personal Water Craft)等を挙げることができる。従って、路面接地部分は前輪13及び後輪14等の車輪に限られず、例えばクローラであっても良い。従って、路面付与外力情報は、クローラが路面から受ける力であっても良い。