JPWO2018105649A1 - ポリアミド - Google Patents

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Abstract

本発明は、耐熱性、耐薬品性、機械的特性およびガスバリア性に優れたバイオプラスチックのポリアミドを提供する。本発明は、ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなる数平均分子量5000以上のポリアミドであって、ジアミン成分が2,5−ビス(アミノメチル)フランおよび/または2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン(A)をジアミン成分全量に対して15〜85モル%含有することを特徴とするポリアミドに関する。

Description

本発明は、耐熱性、耐薬品性、機械的特性、ガスバリア性に優れたバイオプラスチックのポリアミドに関するものである。
地球温暖化および石油資源枯渇の問題が深刻化しつつあり、地球環境保全の見地から、バイオプラスチックの利用が注目されている。近年、バイオプラスチックを食品包装フィルムおよびボトル容器に用いることが検討されている。食品包装フィルムに用いるためには、酸素に対するガスバリア性が高く、レトルト処理等に耐えるため、耐熱性ならびに衝撃耐性および引張強度等の機械的特性に優れていることが要求される。ボトル容器に用いるためには衝撃耐性および耐薬品性に優れていることが要求される。
バイオプラスチックを用いた包装フィルムとしては、例えば、特許文献1には、ポリ乳酸系樹脂67〜96質量%と可塑剤4〜33質量%からなるポリ乳酸系フィルムが開示されている。特許文献2には、乳酸系樹脂と脂肪族系ポリエステルを50〜85:50〜15(質量比)からなるフィルムが開示されている。特許文献3には、微生物由来のポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエートからなるフィルムが開示されている。特許文献4には、植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンを20〜70質量%含有するポリエチレンフィルムが開示されている。
バイオプラスチックを用いたボトル容器としては、例えば、特許文献5には、ポリ乳酸とポリオレフィンの積層構造からなるプラスチック容器が開示されている。
特開2004−90522号公報 特開2004−82512号公報 特開2006−45365号公報 特表2013−155343号公報 特開2009−214405号公報
しかしながら、特許文献1〜4のフィルムは、いずれも、融点が180℃未満で耐熱性に劣るものであった。また、特許文献5のボトル容器に十分な耐薬品性を付与するために容器を積層させなくてはならなかった。
そこで、本発明者らは、バイオマスから得られる2,5−ビス(アミノメチル)フランおよび/または2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを用いてフィルムを製造することを試みた。しかしながら、前記フラン系のモノマーは重合時に分解しやすく、従来から知られるポリアミドの重合方法では、分子量が高いポリアミドを得ることができず、フィルムおよびボトル容器が製造しにくいという問題があった。
本発明は、耐熱性、耐薬品性、機械的特性およびガスバリア性に優れたバイオプラスチックのポリアミドを提供することを目的とする。本明細書中、バイオプラスチックとは、生物(特に植物)由来の原料をモノマー成分として含有するポリマー、特に主鎖中にフラン環および/またはテトラヒドロフラン環を含有するポリマーのことである。
本発明者らは、このような課題を解決するため鋭意検討の結果、ジアミン成分として、2,5−ビス(アミノメチル)フランおよび/または2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン特定量用いることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1) ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなる数平均分子量5000以上のポリアミドであって、ジアミン成分が2,5−ビス(アミノメチル)フランおよび/または2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン(A)をジアミン成分全量に対して15〜85モル%含有することを特徴とするポリアミド。
(2) ジアミン成分が、さらにキシリレンジアミン(B)を含有することを特徴とする(1)に記載のポリアミド。
(3) ジアミン成分中のキシリレンジアミン(B)の含有量がジアミン成分全量に対して15〜85モル%であることを特徴とする(2)に記載のポリアミド。
(4) キシリレンジアミン(B)がメタキシリレンジアミンであることを特徴とする(2)または(3)に記載のポリアミド。
(5) ジカルボン酸成分が脂肪族ジカルボン酸を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のポリアミド。
(6) ジカルボン酸成分中の脂肪族ジカルボン酸の含有量がジカルボン酸成分全量に対して50モル%以上であることを特徴とする(5)に記載のポリアミド。
(7) (1)〜(6)のいずれかに記載のポリアミドからなるフィルム。
(8) (1)〜(6)のいずれかに記載のポリアミドからなるボトル容器。
(9) ジカルボン酸成分およびジアミン成分の塩を作製し、溶媒中、該塩の融点以上、「得られるポリアミドの融点−20℃」以下の温度で重合する数平均分子量5000以上のポリアミドの製造方法であって、ジアミン成分が2,5−ビス(アミノメチル)フランおよび/または2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン(A)をジアミン成分全量に対して15〜85モル%含有することを特徴とするポリアミドの製造方法。
(10) 「得られるポリアミドの融点」が150〜245℃であることを特徴とする(9)に記載のポリアミドの製造方法。
(11) 溶媒が前記温度以上の沸点を有することを特徴とする(9)または(10)に記載のポリアミドの製造方法。
(12) 溶媒が脂環族炭化水素化合物であることを特徴とする(9)〜(11)のいずれかに記載のポリアミドの製造方法。
(13) 溶媒の量が前記塩100質量部に対して30〜300質量部であることを特徴とする(9)〜(12)のいずれかに記載のポリアミドの製造方法。
(14) ポリアミドがジカルボン酸成分またはジアミン成分の少なくとも一方の成分として構造の異なる2種以上のモノマーを含有する場合、前記塩を、ジカルボン酸成分とジアミン成分との組み合わせが異なる2種以上で作製し、該塩のうち最も低い融点を有する塩の融点以上、「得られるポリアミドの融点−20℃」以下の温度で重合することを特徴とする請求項(9)〜(13)のいずれかに記載のポリアミドの製造方法。
本発明によれば、耐熱性、耐薬品性、機械的特性およびガスバリア性に優れたポリアミドを提供することができる。本発明のポリアミドから得られる成形品は、食品包装フィルムおよび/またはボトル容器として好適に用いることができる。
本発明のポリアミドは、ジカルボン酸成分とジアミン成分から構成される。
ジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシブタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,3’−ジカルボン酸、ジフェノキシエーテル−3,3’−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−3,3’−ジカルボン酸が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、水添ダイマー酸等の脂肪族飽和ジカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ダイマー酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸が挙げられる。
ジカルボン酸成分の中でも、得られるポリアミドが機械的特性、ガスバリア性いずれにも優れていることから、脂肪族ジカルボン酸、特に脂肪族飽和ジカルボン酸が好ましく、アジピン酸が最も好ましい。この場合、ジカルボン酸成分中の脂肪族ジカルボン酸(好ましくは脂肪族飽和ジカルボン酸、特にアジピン酸)の含有量は50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、100モル%であることがさらに好ましい。当該含有量はジカルボン酸成分全量に対する割合である。ジカルボン酸成分は、上記のジカルボン酸を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ジカルボン酸成分が2種以上の脂肪族ジカルボン酸を含有する場合、これらの合計含有量が上記した範囲内であればよい。本明細書中、機械的特性は少なくとも引張強度および衝撃耐性に関する特性のことである。
ジアミン成分としては、2,5−ビス(アミノメチル)フランおよび/または2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン(以下、「成分(A)」ということがある)を含有する必要がある。成分(A)を用いることにより、バイオプラスチックでありながらも、耐熱性、耐薬品性、機械的特性およびガスバリア性の全ての特性が高いものとすることができる。成分(A)の含有量は、ジアミン成分において、15〜85モル%とすることが必要で、耐熱性、耐薬品性(特にアンモニアに対する耐薬品性)、機械的特性およびガスバリア性のさらなる向上の観点から、好ましくは20〜80モル%、より好ましくは50〜80モル%、さらに好ましくは60〜80モル%である。成分(A)の含有量はジアミン成分全量に対する割合であり、2,5−ビス(アミノメチル)フランおよび2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランの両方が含有される場合はこれらの合計量のことである。成分(A)の含有量が少なすぎる場合、ガスバリア性および耐薬品性(特にアンモニアに対する耐薬品性)が低くなるので好ましくない。一方、成分(A)のモル比率が多すぎる場合、得られるポリアミドの機械的特性、耐熱性および成形性が低下するので好ましくない。
ポリアミドは、成分(A)として、2,5−ビス(アミノメチル)フランのみを含有することが、耐熱性、耐薬品性(特にアンモニアに対する耐薬品性)、機械的特性およびガスバリア性のさらなる向上の観点から好ましい。
2,5−ビス(アミノメチル)フランは、例えば、5−(ヒドロキシメチル)フルフラール(HMF)を還元してフラン−2,5−ジメタノールを得たのち、塩素化、アジド化、還元することにより得ることができる。2,5−ビス(アミノメチル)フランは市販品として入手することもできる。また、2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランは、例えば、HMFを還元してテトラヒドロフラン−2,5−ジメタノールを得たのち、スルホン化、アジド化、還元することにより得ることができる。2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランは2,5−ビス(アミノメチル)フランの還元(水素化)によって得ることもできるし、または市販品として入手することもできる。
ジアミン成分としては、キシリレンジアミン(以下、「成分(B)」ということがある)を含有することが好ましい。成分(B)の含有量は、耐熱性、耐薬品性、機械的特性およびガスバリア性のさらなる向上の観点から、ジアミン成分において、15〜85モル%とすることが好ましく、より好ましくは20〜80モル%、さらに好ましくは20〜50モル%、最も好ましくは20〜40モル%である。成分(B)としては、例えば、パラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、オルトキシリレンジアミンが挙げられ、中でも、ガスバリア性に優れていることから、メタキシリレンジアミンが好ましい。成分(B)の含有量はジアミン成分全量に対する割合であり、2種以上のキシリレンジアミンが含有される場合はこれらの合計量のことである。
ジアミン成分にキシリレンジアミン(成分(B))を含有する場合、成分(A)と成分(B)のモル比率[(A)/(B)]は、耐熱性、耐薬品性、機械的特性、ガスバリア性いずれにもより一層、優れたものとするため、85/15〜15/85とすることが好ましく、80/20〜20/80とすることがより好ましく、80/20〜50/50とすることがさらに好ましく、80/20〜60/40とすることが最も好ましい。
ジアミン成分には、成分(A)と成分(B)以外の他のジアミンとして、2,5−ビス(アミノメチル)フランおよびキシリレンジアミンとは異なる芳香環含有ジアミン、2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランとは異なる脂環族ジアミン、ならびに脂肪族ジアミンを用いてもよい。芳香環とはいわゆる芳香族性を有する炭素環および複素環のことであり、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フラン環が挙げられる。芳香環含有ジアミンは1分子中にそのような芳香環を1つ以上含有するジアミンである。脂環族ジアミンは1分子中に、芳香環を含有せず、かつ芳香族性を有さない飽和または不飽和の炭素環または複素環を1つ以上含有するジアミンである。脂肪族ジアミンは、1分子中に、炭素環および複素環を含有しない直鎖状または分枝鎖状ジアミンである。
2,5−ビス(アミノメチル)フランおよびキシリレンジアミンとは異なる芳香環含有ジアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、4,4‘−ジアミノジフェニルエーテルが挙げられる。
2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランとは異なる脂環族ジアミンとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、ノルボルナンジアミンが挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンが挙げられる。
成分(A)と成分(B)以外の他のジアミンの中でも、炭素数5〜12の脂肪族ジアミンまたは炭素数が6以上の脂環族ジアミンを用いることにより、耐熱性および成形性を高くすることができる。炭素数が5、8、9、10の直鎖状脂肪族ジアミンを用いることにより、生物由来の原料の割合を増やすことができる。炭素数が5、8、9、10の直鎖状脂肪族ジアミンは、植物由来の原料から、バイオ発酵またはオゾン分解等により、対応するジカルボン酸を合成し、さらに、それをアミノ化することにより得ることができる。例えば、1,5−ペンタンジアミンであれば、廃糖蜜の発酵で得られるL−リジンをアミノ化することにより得ることができる。また例えば、1,8−オクタンジアミンおよび1,9−ノナンジアミンであれば、オリーブ油および米糠油から得られるオレイン酸をアミノ化することにより得ることができる。また例えば、1,10−デカンジアミンであれば、ひまし油から得られるリシノール酸をアミノ化することにより得ることができる。
本発明のポリアミドは、原料モノマーとしてのジカルボン酸成分およびジアミンから塩を作製した後、重合することにより製造することができる。詳しくは、本発明のポリアミドは、原料モノマーから1種の塩を作製し、塩の融点以上、「得られるポリアミドの融点−20℃」以下の温度で重合する(以下、「方法(X)」と称する)か、または、原料モノマーから2種以上の塩を作製し、前記塩のうち最も低い融点を有する塩の融点以上、「得られるポリアミドの融点−20℃」以下の温度で重合する(以下、「方法(Y)」と称する)かして、製造することが好ましい。ポリアミドの製造に際し、「得られるポリアミド」とは「製造予定のポリアミド」または「目的とするポリアミド」のことである。「得られるポリアミドの融点」は通常、150〜245℃であり、好ましくは200〜245℃である。
方法(X)において「原料モノマーから1種の塩を作製」するとは、以下の場合(1)および(2)において、ポリアミドの全モノマー成分を一括混合して塩を作製するという意味である:
(1)ポリアミドがジカルボン酸成分およびジアミン成分としてそれぞれ1種ずつのモノマーを含有する場合;および
(2)ポリアミドがジカルボン酸成分またはジアミン成分の少なくとも一方の成分として構造の異なる2種以上のモノマーを含有する場合。
方法(Y)において「原料モノマーから2種以上の塩を作製」するとは、上記(2)の場合において、ジカルボン酸成分とジアミン成分との組み合わせが異なる2種以上の塩を、当該種類ごとの個別の混合により作製するという意味である。上記(2)の場合においては、ポリアミドは、耐熱性および機械的特性のさらなる向上ならびにポリアミドのさらなる高分子量化の観点から、上記方法(Y)の方法により製造することが好ましい。具体的には、例えば、2,5−ビス(アミノメチル)フランとメタキシリレンジアミンとアジピン酸とからなるポリアミドを後者の方法(Y)により製造する場合、2,5−ビス(アミノメチル)フランとアジピン酸の塩(融点148℃)と、メタキシリレンジアミンとアジピン酸の塩(融点188℃)を個別の混合により作製し、これらを混合した後、148℃以上、201℃[=得られるポリアミドの融点(221℃)−20℃]以下の温度で重合することが好ましい。
なお、本発明において、前記温度範囲で重合するとは、全重合時間のうち、90%以上の時間、前記温度範囲で重合することをいう。塩の融点未満の温度で重合した場合、得られるポリアミドの数平均分子量が5000未満となるので好ましくない。一方、「得られるポリアミドの融点−20℃」を超える温度で重合した場合、得られるポリアミドの色調が悪くなったり、数平均分子量が5000未満となったりする場合がある。
重合温度は、重合中、常に一定としてもよいし、重合の進行に応じて、適宜変更してもよい。反応時間は通常、反応温度に達してから0.5〜18時間であり、ポリアミドの耐熱性および機械的特性のさらなる向上ならびにポリアミドのさらなる高分子量化の観点から、6〜18時間とすることが好ましい。圧力は、生成する水を系外に排出しつつ、ジアミン成分の揮発を抑制するため、大気圧以上10MPa以下とすることが好ましい。
本発明においては、重合する際、合成されるポリアミドの分子量の低下を抑制しつつ系内の粘度を低下させるため、塩の融点以上の沸点を有する溶媒(すなわち重合溶媒)を用いる。溶媒は通常、重合温度において液体であるので、融点が重合温度以下であり、かつ沸点が重合温度以上である。溶媒の沸点の上限値は特に限定されず、沸点は通常は250℃以下、特に230℃以下である。溶媒を用いない場合、仮に上記重合温度範囲内の温度で重合を行っても、または上記重合温度範囲を超える温度で重合を行っても、ポリアミドの分子量が低下し、耐熱性および機械的特性が低下する。前記溶媒としては、例えば、デカリン(沸点:185〜195℃)、シクロデカン(沸点:201℃)等の脂環族炭化水素化合物);およびウンデカン(沸点:196℃)、ドデカン(沸点:216℃)、トリデカン(沸点:234℃)等の脂肪族炭化水素化合物が挙げられる。溶媒は、ポリアミドの耐熱性および機械的特性のさらなる向上ならびにポリアミドのさらなる高分子量化の観点から、前記沸点を有する脂環族炭化水素化合物(特にデカリン)が好ましい。
重合溶媒の量は通常、塩100質量部に対して、30〜300質量部、であり、ポリアミドの耐熱性および機械的特性のさらなる向上ならびにポリアミドのさらなる高分子量化の観点から、好ましくは50〜200質量部、より好ましくは80〜150質量部である。2種以上の塩を作製して重合する場合において、上記「塩100質量部」は、当該2種以上の塩の合計100質量部のことである。
なお、塩の重合をおこなった後、さらに分子量を上げるため、常圧下、不活性ガス流通下で重合を継続しておこなってもよいし、また減圧下で重合を継続しておこなってもよい。不活性ガス流通下で重合を継続する場合、不活性ガスの流量は0.01〜10L/(kg・分)とすることが好ましい。また、減圧下で重合を継続する場合、減圧度は1000Pa以下とすることが好ましい。
対応する塩を得る方法は特に限定されないが、例えば、ジカルボン酸成分とジアミン成分を水中、有機溶媒中またはこれらの混合溶媒中で反応させて塩を得る方法が挙げられる。用いる水および/または有機溶媒の量は、全ジカルボン酸成分と全ジアミン成分の合計100質量部に対して、2質量部以上とすることが好ましく、10質量部以上とすることがより好ましく、100〜2000質量部とすることがさらに好ましく、500〜1000質量部とすることが最も好ましい。反応温度は、常圧下では20〜100℃とすることが好ましく、加圧条件下では100〜150℃で反応させることが好ましい。反応時間は、反応温度に達してから0.1〜5時間とすることが好ましく、1〜5時間とすることがより好ましく、2〜4時間とすることがさらに好ましい。
ポリアミドを重合する際、重合速度向上の点から、触媒を用いることが好ましい。触媒としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの塩が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。触媒の使用量は、全ジカルボン酸成分と全ジアミン成分の合計のモル数に対して、2モル%以下とすることが好ましい。
また、重合度調整、分解、および着色抑制等の目的で、末端封鎖剤を用いてもよい。末端封鎖剤としては、モノカルボン酸、モノアミンが挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、ラウリン酸、ステアリン酸、安息香酸が挙げられ、モノアミンとしては、例えば、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。末端封鎖剤の使用量は、全ジカルボン酸成分と全ジアミン成分の合計のモル数に対して、5モル%以下とすることが好ましい。
本発明のポリアミドの融点は、耐熱性、機械的特性、ガスバリア性および耐薬品性のさらなる向上、特にフィルムへのレトルト処理等による白化に関する耐熱性およびアンモニアに対する耐薬品性のさらなる向上の観点から、200℃以上であることが好ましく、205℃以上であることがより好ましく、215℃以上であることがさらに好ましく、220℃以上であることが特に好ましく、230℃以上であることが最も好ましい。ポリアミドの融点の上限値は特に限定されず、当該融点は通常は300℃以下、特に260℃以下である。
本発明のポリアミドの数平均分子量は5000以上であり、耐熱性、機械的特性、ガスバリア性および耐薬品性のさらなる向上の観点から、8000以上であることが好ましく、8500以上であることがより好ましい。数平均分子量が5000未満の場合、得られるポリアミドのフィルム化が困難になるほか、衝撃耐性および機械的特性が不十分となるので好ましくない。なお、数平均分子量は、重合時の温度と時間をコントロールすることにより制御することができる。ポリアミドの数平均分子量の上限値は特に限定されず、当該分子量は通常は20000以下、特に10000以下である。
本発明において、ポリアミドの吸水率は、長時間保管時の寸法変化の抑制の観点から、1質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。ポリアミドの吸水率の下限値は特に限定されず、当該吸水率は通常は0.1質量%以上、特に0.3質量%以上である。
また、本発明において、得られるポリアミドをフィルムとした場合の引張強度は、耐熱性および機械的特性のさらなる向上の観点から、50MPa以上であることが好ましく、60MPa以上であることがより好ましく、70MPa以上であることがさらに好ましい。引張強度の上限値は特に限定されず、当該引張強度は通常は200MPa以下、特に100MPa以下である。
また、23℃かつ相対湿度80%下での酸素透過係数は、5000μm・mL/(m・day・MPa)以下であることが好ましく、3000μm・mL/(m・day・MPa)以下であることがより好ましい。なお、ガスバリア性が高い場合、酸素透過係数は低くなる。酸素透過係数の下限値は特に限定されず、当該酸素透過係数は通常は100μm・mL/(m・day・MPa)以上、特に1000μm・mL/(m・day・MPa)以上である。
本発明のポリアミドには、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、熱安定剤、繊維状補強材、充填材、顔料等の添加剤を加えてもよい。繊維状補強材としては、例えば、ガラス繊維および/または炭素繊維が挙げられ、充填材としては、例えば、タルク、膨潤性粘土鉱物、シリカ、アルミナ、ガラスビーズ、グラファイト、フィラーが挙げられ、顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラックが挙げられる。添加剤は、全ジカルボン酸成分と全ジアミン成分の合計またはポリアミドに対して、20質量%以下とすることが好ましい。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
1.原料
(1)2,5−ビス(アミノメチル)フラン
エタノール中に、HMF(225質量部)と、水素化ホウ素ナトリウム(90.0質量部)を連続して添加し、20℃で16時間撹拌した。反応終了後、10%塩酸水溶液をゆっくりと添加してpHを7とした。その後、40℃で、減圧蒸留により溶剤を蒸発させ、エタノールから白色固体を再結晶化させ、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランを得た。
得られた2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フラン(215質量部)を、ピリジン(347質量部)に溶解し、それを、−20〜0℃の塩化チオニル(580質量部)の酢酸エチル溶液に1時間かけて滴下した。その後、室温に昇温し、石油エーテルを添加し、さらに氷冷水を加えた。有機相を、10%炭酸カリウム水溶液を用いて洗浄し、乾燥させ、その後、減圧蒸留により溶剤を蒸発させ、2,5−ビス(クロロメチル)フランを得た。
得られた2,5−ビス(クロロメチル)フラン(162質量部)と、アジ化ナトリウム(192質量部)を、ジメチルスルホキシドに添加し、50℃で16時間撹拌した。反応終了後、氷冷水と石油エーテルを用いて有機相を抽出し、乾燥させ、減圧濃縮し、2,5−ビス(アジドメチル)フランを得た。
得られた2,5−ビス(アジドメチル)フラン(158質量部)と、Raneyニッケル(68.0質量部)を、メタノールに添加し、1気圧の水素下、室温で40時間撹拌した。反応終了後、反応物を濾過し、濾液を濃縮し、2,5−ビス(アミノメチル)フランを得た。
(2)2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン
メタノール中に、HMFと、Raneyニッケル(HMFに対して1.5当量)を添加し、5.76気圧の水素圧力下、60℃で20時間攪拌した。反応終了後、濾過と蒸留を繰り返すことにより精製し、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフランを得た。
得られた2,5−ビス(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン(119質量部)と、トリエチルアミン(455質量部)を、0℃のジクロロメタンに添加し、さらに、メタンスルホニルクロリド(308質量部)を滴下し、0℃で1時間攪拌した。その後、氷冷水を添加し、有機相を分離した。有機相を、1mol/L塩酸で洗浄した後、さらに飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、(テトラヒドロフラン−2,5−ジイル)ビス(メチレン)ジメタンスルホネートを得た。
得られた(テトラヒドロフラン−2,5−ジイル)ビス(メチレン)ジメタンスルホネート(237質量部)と、アジ化ナトリウム(270質量部)を、ジメチルスルホキシドに添加し、95℃で一晩撹拌した。反応終了後、氷冷水に添加し、酢酸エチルで3回抽出した。有機相を、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を用いて洗浄した。その後、濃縮して2,5−ビス(アジドメチル)テトラヒドロフランを得た。
得られた2,5−ビス(アジドメチル)テトラヒドロフラン(167質量部)と、10質量%炭素担持パラジウム(10.8質量部)を、メタノールに添加し、1気圧の水素圧力下、室温で一晩撹拌した。反応終了後、反応物を濾過し、濾液を真空下で濃縮し、2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを得た。
得られた2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを、NMRにより、重水素化メタノールを用いて分析したところ、シス/トランス異性体比は90/10であった。
2.分析方法
(1)樹脂組成
高分解能核磁気共鳴装置(日本電子社製ECA500 NMR)を用いて、H−NMR分析することにより、それぞれの共重合成分のピーク強度から樹脂組成を求めた(分解能:500MHz、溶媒:トリフルオロ酢酸−d/重水=99/1(体積比)、温度:25℃)。
(2)数平均分子量
ポリアミド7〜8mgをヘキサフルオロイソプロパノール5mLに溶解後、0.45μmフィルターで濾過したサンプルを、東ソー社製ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用いて、以下の条件で測定した。
検出器:東ソー社製 示差屈折率検出器RI−8020
カラム:東ソー社製 TSKgel GMHHR−H
溶離液:トリフルオロ酢酸ナトリウムを10mM含有するヘキサフルオロイソプロパノール
流速:0.4mL/分
測定温度:40℃
標準試料:Agilent Technologies社製 ポリメチルメタクリレート Easi Vial PM(登録商標)
(3)融点
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−7を用いて、常温から300℃まで20℃/分で昇温した後、5分間保持後、500℃/分で25℃まで降温し、5分間保持後、300℃まで20℃/分で昇温した。2回目の昇温時に得られた曲線の融解に由来するピークの頂点を融点とした。
(4)吸水率
ポリアミドを十分に乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製EC−100型)を用いて成形し、長さ125mm×幅12mm×厚み0.8mmの試験片を作製した。なお、シリンダ温度は「ポリアミドの融点+20」℃、金型温度は100℃とした。
得られた試験片を、25℃の水中に24時間静置し、静置前の試験片の質量の値を基準として、下記式により吸水率を算出した。
Figure 2018105649
(5)引張強度
ポリアミドを十分に乾燥した後、熱プレス機(林機械製作所社製)を用いてプレスした。その後、冷却し、厚み150μmのフィルムを得た。なお、熱プレス機のプレス板温度は、「ポリアミドの融点+20」℃に設定した。
得られたフィルムから、長さ150mm×幅10mmの試験フィルムを切り抜き、その試験フィルムを用いて、JIS K−7127に準拠して、model−2020(INTESCO社製)で測定した。使用セルは1000N、試験速度は50mm/分、チャック間隔は100mmとした。
(6)酸素透過係数
(5)で得られたフィルムから、長さ100mm×幅100mmの試験フィルムを切り抜き、その試験フィルムを用いて、MOCON社製の酸素透過率測定装置OXTRAN2/21で、酸素透過量を測定した。測定は、23℃、相対湿度80%の条件下24時間以上おこない、一定値になったところの値を酸素透過量とした。
酸素透過係数は、次式により求めた。
Figure 2018105649
(7)衝撃耐性
ポリアミドを十分に乾燥した後、ブロー成形によりボトル(容量:300mL、ブロー比:3倍、胴部平均肉厚:0.7mm)を成形した。成形温度は、「ポリアミドの融点+20」℃に設定した。
得られたボトルを水で満たし、キャップにより密閉した後、1mの高さからコンクリートフロアに落下させてひび割れや凹み等の変化の有無を観察した。
〔評価基準〕
○:変化がなかった。
×:変化があった。
(8)耐薬品性
ポリアミドを十分に乾燥した後、射出成形により試験片(面積:60mm×60mm、厚さ:1.0mm)を成形した。成形温度は、「ポリアミドの融点+20」℃に設定した。
得られた試験片を20℃で試験液に7日間浸せきし、浸せき前後の引張強度の低下率を求めた。
〔評価基準〕
◎:0.5%未満
○:0.5%以上2%未満
□:2%以上5%未満
×:5%以上
実施例1
アジピン酸28.4質量部をエタノール400質量部に溶解した溶液中に、2,5−ビス(アミノメチル)フラン24.5質量部を滴下し、25℃、常圧下で3時間撹拌した。得られた析出物をろ別した後、減圧乾燥器にて乾燥し、対応するアンモニウム塩(F6塩)を得た。
アジピン酸28.4質量部をエタノール400質量部に溶解した溶液に、メタキシリレンジアミン26.4質量部を滴下し、25℃、常圧下で3時間撹拌した。得られた析出物をろ別した後、減圧乾燥器にて乾燥し、対応するアンモニウム塩(M6塩)を得た。
得られたF6塩19.6質量部、M6塩20.4質量部とデカリン40.0質量部を、撹拌羽根、ヒーター、窒素流入口、排出口が備わった重合装置に投入し、窒素流通下、180℃で12時間加熱撹拌した。
反応溶液の冷却後、固形分をろ別し、エタノールおよびヘキサンで洗浄した後、減圧下で乾燥し(50℃×12時間)、ポリアミドを得た。
実施例2
表1の記載の樹脂組成になるように、用いるF6塩とM6塩の比率を変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、ポリアミドを得た。F6塩とM6塩との合計量100質量部に対するデカリンの量は100質量部であった。
実施例3
表1の記載の樹脂組成になるように、用いるF6塩とM6塩の比率を変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、ポリアミドを得た。F6塩とM6塩との合計量100質量部に対するデカリンの量は100質量部であった。
実施例4
アジピン酸28.4質量部をエタノール400質量部に溶解した溶液中に、2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン24.9質量部を滴下し、25℃、常圧下で3時間撹拌した。得られた析出物をろ別した後、減圧乾燥器にて乾燥し、対応するアンモニウム塩(TF6塩)を得た。
アジピン酸28.4質量部をエタノール400質量部に溶解した溶液に、メタキシリレンジアミン26.4質量部を滴下し、25℃、常圧下で3時間撹拌した。得られた析出物をろ別した後、減圧乾燥器にて乾燥し、対応するアンモニウム塩(M6塩)を得た。
得られたTF6塩19.7質量部、M6塩20.3質量部とデカリン40.0質量部を、撹拌羽根、ヒーター、窒素流入口、排出口が備わった重合装置に投入し、窒素流通下、180℃で12時間加熱撹拌した。
反応溶液の冷却後、固形分をろ別し、エタノールおよびヘキサンで洗浄した後、減圧下で乾燥し(50℃×12時間)、ポリアミドを得た。
実施例5
表1の記載の樹脂組成になるように、用いるTF6塩とM6塩の比率を変更する以外は、実施例4と同様の操作をおこなって、ポリアミドを得た。TF6塩とM6塩との合計量100質量部に対するデカリンの量は100質量部であった。
実施例6
表1の記載の樹脂組成になるように、用いるTF6塩とM6塩の比率を変更する以外は、実施例4と同様の操作をおこなって、ポリアミドを得た。TF6塩とM6塩との合計量100質量部に対するデカリンの量は100質量部であった。
実施例7
アジピン酸28.4質量部をエタノール400質量部に溶解した溶液中に、2,5−ビス(アミノメチル)フラン19.6質量部とメタキシリレンジアミン5.31質量部を滴下し、25℃、常圧下で3時間撹拌した。得られた析出物をろ別した後、減圧乾燥器にて乾燥し、対応するアンモニウム塩を得た。
得られたアンモニウム塩39.5質量部とデカリン40.0質量部を、撹拌羽根、ヒーター、窒素流入口、排出口が備わった重合装置に投入し、窒素流通下、180℃で12時間加熱撹拌した。
反応溶液の冷却後、固形分をろ別し、エタノールおよびヘキサンで洗浄した後、減圧下で乾燥し(50℃×12時間)、ポリアミドを得た。
実施例8
アジピン酸28.4質量部をエタノール400質量部に溶解した溶液中に、2,5−ビス(アミノメチル)フラン24.5質量部を滴下し、25℃、常圧下で3時間撹拌した。得られた析出物をろ別した後、減圧乾燥器にて乾燥し、対応するアンモニウム塩(F6塩)を得た。
アジピン酸28.4質量部をエタノール400質量部に溶解した溶液に、1,4−シクロヘキサンジアミン22.2質量部を滴下し、25℃、常圧下で3時間撹拌した。得られた析出物をろ別した後、減圧乾燥器にて乾燥し、対応するアンモニウム塩(C6塩)を得た。
得られたF6塩31.3質量部、C6塩7.55質量部とデカリン40.0質量部を、撹拌羽根、ヒーター、窒素流入口、排出口が備わった重合装置に投入し、窒素流通下、180℃で12時間加熱撹拌した。
反応溶液の冷却後、固形分をろ別し、エタノールおよびヘキサンで洗浄した後、減圧下で乾燥し(50℃×12時間)、ポリアミドを得た。
実施例9
アジピン酸28.4質量部をエタノール400質量部に溶解した溶液中に、2,5−ビス(アミノメチル)フラン24.5質量部を滴下し、25℃、常圧下で3時間撹拌した。得られた析出物をろ別した後、減圧乾燥器にて乾燥し、対応するアンモニウム塩(F6塩)を得た。
アジピン酸28.4質量部をエタノール400質量部に溶解した溶液に、1,10−デカンジアミン33.4質量部を添加し、25℃、常圧下で3時間撹拌した。得られた析出物をろ別した後、減圧乾燥器にて乾燥し、対応するアンモニウム塩(D6塩)を得た。
得られたF6塩31.3質量部、D6塩9.24質量部とデカリン40.0質量部を、撹拌羽根、ヒーター、窒素流入口、排出口が備わった重合装置に投入し、窒素流通下、180℃で12時間加熱撹拌した。
反応溶液の冷却後、固形分をろ別し、エタノールおよびヘキサンで洗浄した後、減圧下で乾燥し(50℃×12時間)、ポリアミドを得た。
実施例10
コハク酸22.9質量部をエタノール400質量部に溶解した溶液中に、2,5−ビス(アミノメチル)フラン24.5質量部を滴下し、25℃、常圧下で3時間撹拌した。得られた析出物をろ別した後、減圧乾燥器にて乾燥し、対応するアンモニウム塩(F4塩)を得た。
コハク酸22.9質量部をエタノール400質量部に溶解した溶液に、メタキシリレンジアミン26.4質量部を滴下し、25℃、常圧下で3時間撹拌した。得られた析出物をろ別した後、減圧乾燥器にて乾燥し、対応するアンモニウム塩(M4塩)を得た。
得られたF4塩28.1質量部、M4塩7.37質量部とデカリン40.0質量部を、撹拌羽根、ヒーター、窒素流入口、排出口が備わった重合装置に投入し、窒素流通下、180℃で12時間加熱撹拌した。
反応溶液の冷却後、固形分をろ別し、エタノールおよびヘキサンで洗浄した後、減圧下で乾燥し(50℃×12時間)、ポリアミドを得た。
実施例11
セバシン酸39.2質量部をエタノール400質量部に溶解した溶液中に、2,5−ビス(アミノメチル)フラン24.5質量部を滴下し、25℃、常圧下で3時間撹拌した。得られた析出物をろ別した後、減圧乾燥器にて乾燥し、対応するアンモニウム塩(F10塩)を得た。
セバシン酸39.2質量部をエタノール400質量部に溶解した溶液に、メタキシリレンジアミン26.4質量部を滴下し、25℃、常圧下で3時間撹拌した。得られた析出物をろ別した後、減圧乾燥器にて乾燥し、対応するアンモニウム塩(M10塩)を得た。
得られたF10塩37.8質量部、M10塩9.82質量部とデカリン40質量部を、撹拌羽根、ヒーター、窒素流入口、排出口が備わった重合装置に投入し、窒素流通下、180℃で12時間加熱撹拌した。
反応溶液の冷却後、固形分をろ別し、エタノールおよびヘキサンで洗浄した後、減圧下で乾燥し(50℃×12時間)、ポリアミドを得た。
比較例1
表1の記載の樹脂組成になるように、用いるF6塩とM6塩の比率を変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、ポリアミドを得た。F6塩とM6塩との合計量100質量部に対するデカリンの量は100質量部であった。
比較例2
重合温度を230℃に変更したこと、およびデカリンを用いなかったこと以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、ポリアミドを得た。
そして、得られたポリアミド樹脂をストランド状に押出し、切断し、ペレットを得た。
比較例3
表1の記載の樹脂組成になるように、用いるTF6塩とM6塩の比率を変更する以外は、実施例4と同様の操作をおこなって、ポリアミドを得た。TF6塩とM6塩との合計量100質量部に対するデカリンの量は100質量部であった。
比較例4
アジピン酸28.4質量部をエタノール400質量部に溶解した溶液中に、2,5−ビス(アミノメチル)フラン24.5質量部を滴下し、25℃、常圧下で3時間撹拌した。得られた析出物をろ別した後、減圧乾燥器にて乾燥し、対応するアンモニウム塩(F6塩)を得た。
得られたF6塩39.2質量部とデカリン40.0質量部を、撹拌羽根、ヒーター、窒素流入口、排出口が備わった重合装置に投入し、窒素流通下、180℃で12時間加熱撹拌した。
反応溶液の冷却後、固形分をろ別し、エタノールおよびヘキサンで洗浄した後、減圧下で乾燥し(50℃×12時間)、ポリアミドを得た。
比較例5
アジピン酸28.4質量部をエタノール400質量部に溶解した溶液中に、2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン24.9質量部を滴下し、25℃、常圧下で3時間撹拌した。得られた析出物をろ別した後、減圧乾燥器にて乾燥し、対応するアンモニウム塩(TF6塩)を得た。
得られたTF6塩39.4質量部とデカリン40.0質量部を、撹拌羽根、ヒーター、窒素流入口、排出口が備わった重合装置に投入し、窒素流通下、180℃で12時間加熱撹拌した。
反応溶液の冷却後、固形分をろ別し、エタノールおよびヘキサンで洗浄した後、減圧下で乾燥し(50℃×12時間)、ポリアミドを得た。
比較例6
アジピン酸28.4質量部をエタノール400質量部に溶解した溶液中にメタキシリレンジアミン26.4質量部を滴下し、25℃、常圧下で3時間撹拌した。得られた析出物をろ別した後、減圧乾燥器にて乾燥し、対応するアンモニウム塩(M6塩)を得た。
得られたM6塩40.7質量部とデカリン40.0質量部を撹拌羽根、ヒーター、窒素導入口、排出口が備わった重合装置に導入し、窒素流通下、200℃で12時間撹拌した。
反応溶液の冷却後、固形分をろ別し、エタノールおよびヘキサンで洗浄した後、減圧下で乾燥し(50℃×12時間)、ポリアミドを得た。
比較例7
アジピン酸28.4質量部をエタノール400質量部に溶解した溶液中に、2,5−ビス(アミノメチル)フラン12.2質量部とメタキシリレンジアミン13.2質量部を滴下し、25℃、常圧下で3時間撹拌した。得られた析出物をろ別した後、減圧乾燥器にて乾燥し、対応するアンモニウム塩を得た。
得られたアンモニウム塩39.9質量部を、撹拌羽根、ヒーター、窒素流入口、排出口が備わった重合装置に投入し、窒素流通下、230℃で12時間加熱撹拌した。
そして、得られたポリアミド樹脂をストランド状に押出し、切断し、ペレットを得た。
比較例8
デカリンを用いなかったこと以外は、実施例2と同様の操作をおこなって、ポリアミドを得た。
そして、得られたポリアミド樹脂をストランド状に押出し、切断し、ペレットを得た。
表1に、実施例および比較例で得られたポリアミドの製造条件、樹脂組成および特性値を示す。
Figure 2018105649
Figure 2018105649
実施例1〜11のポリアミドは、ジアミン成分において、2,5−ビス(アミノメチル)フランおよび/または2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランを特定量用いたため、融点が200℃以上であった。また、得られるフィルムの引張強度が50MPa以上、酸素透過係数が5000μm・mL/(m・day・MPa以下であるとともに、当該ポリアミドは衝撃耐性及び耐薬品性に優れていた。
比較例1および3〜5のポリアミドは、ジアミン成分の2,5−ビス(アミノメチル)フランまたは2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランの含有量が多かったため、得られるフィルムの引張強度および衝撃耐性が低かった。また、酸素透過係数は、測定中にフィルムが破れ、測定することができなかった。
比較例2および7〜8のポリアミドは、分子量が低かったため、機械的特性が低く、溶融成形サンプルが得られなかった。
比較例6のポリアミドは、ジアミン成分の2,5−ビス(アミノメチル)フランまたは2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフランの含有量が少なかったため、得られるフィルムの酸素透過係数が5000μm・mL/(m・day・MPa)を超えていた。当該ポリアミドは耐薬品性が低かった。
本発明のポリアミドは、射出成形、押出成形、ブロー成形等公知の成形方法により、各種成形品に加工することができる。
本発明のポリアミド成形品は、自動車部品、電気・電子部品、日用品として好適に用いることができる。
自動車部品としては、例えば、シフトレバー、ギアボックス等の台座に用いるベースプレート、エンジンカバーが挙げられる。
電気・電子部品としては、例えば、コネクタ、LEDリフレクタ、スイッチ、センサー、ソケット、コンデンサー、ジャック、ヒューズホルダー、リレー、コイルボビン、抵抗器、ICやLEDのハウジングが挙げられる。
日用品としては、ボトル容器(特に飲料用ボトル容器)が挙げられる。
また、本発明のポリアミドは公知の製膜方法または紡糸方法により、フィルム、シート、繊維に加工することができる。
フィルムおよびシートは、例えば、スピーカー振動板、フィルムコンデンサ、絶縁フィルム、食品包装フィルムとして用いることができる。
繊維は、例えば、エアーバッグ基布、フィルターとして用いることができる。

Claims (14)

  1. ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなる数平均分子量5000以上のポリアミドであって、ジアミン成分が2,5−ビス(アミノメチル)フランおよび/または2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン(A)をジアミン成分全量に対して15〜85モル%含有することを特徴とするポリアミド。
  2. ジアミン成分が、さらにキシリレンジアミン(B)を含有することを特徴とする請求項1に記載のポリアミド。
  3. ジアミン成分中のキシリレンジアミン(B)の含有量がジアミン成分全量に対して15〜85モル%であることを特徴とする請求項2に記載のポリアミド。
  4. キシリレンジアミン(B)がメタキシリレンジアミンであることを特徴とする請求項2または3に記載のポリアミド。
  5. ジカルボン酸成分が脂肪族ジカルボン酸を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド。
  6. ジカルボン酸成分中の脂肪族ジカルボン酸の含有量がジカルボン酸成分全量に対して50モル%以上であることを特徴とする請求項5に記載のポリアミド。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミドからなるフィルム。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミドからなるボトル容器。
  9. ジカルボン酸成分およびジアミン成分の塩を作製し、溶媒中、該塩の融点以上、「得られるポリアミドの融点−20℃」以下の温度で重合する数平均分子量5000以上のポリアミドの製造方法であって、ジアミン成分が2,5−ビス(アミノメチル)フランおよび/または2,5−ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン(A)をジアミン成分全量に対して15〜85モル%含有することを特徴とするポリアミドの製造方法。
  10. 「得られるポリアミドの融点」が150〜245℃であることを特徴とする請求項9に記載のポリアミドの製造方法。
  11. 溶媒が前記温度以上の沸点を有することを特徴とする請求項9または10に記載のポリアミドの製造方法。
  12. 溶媒が脂環族炭化水素化合物であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載のポリアミドの製造方法。
  13. 溶媒の量が前記塩100質量部に対して30〜300質量部であることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載のポリアミドの製造方法。
  14. ポリアミドがジカルボン酸成分またはジアミン成分の少なくとも一方の成分として構造の異なる2種以上のモノマーを含有する場合、前記塩を、ジカルボン酸成分とジアミン成分との組み合わせが異なる2種以上で作製し、該塩のうち最も低い融点を有する塩の融点以上、「得られるポリアミドの融点−20℃」以下の温度で重合することを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載のポリアミドの製造方法。
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