本発明のABAトリブロックポリマーは、炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(b)、及び必要に応じて(a)、(b)以外のその他の重合性不飽和モノマー(c)を構成単位とするポリマーであるAブロックと、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(d)及びその他の重合性不飽和モノマー(e)を構成単位とするポリマーであるBブロックからなる。
炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)
前記炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数4〜24のアルキル基を有する1価アルコールのモノエステル化物を使用することができる。具体的には、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらは、それぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味し、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を意味する。
上記炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)としては、得られる塗膜の鮮映性の観点から、炭素数6〜18のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーが好ましく、炭素数8〜13のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーがさらに好ましい。なかでも、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレートが好ましく、2−エチルヘキシルメタクリレートが特に好ましい。
水酸基含有重合性不飽和モノマー(b)
水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ルが挙げられ、これらは、それぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。
その他の重合性不飽和モノマー(c)
上記(a)、(b)以外のその他の重合性不飽和モノマー(c)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナト基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられる。これらの重合性不飽和モノマーはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(b)及び(a)、(b)以外のその他の重合性不飽和モノマー(c)を構成単位とするAブロックは、これらモノマーの合計質量を基準にして、(a)を50〜99質量%、好ましくは70〜94質量%、(b)を1〜30質量%、好ましくは5〜20質量%、(c)を0〜30質量%、好ましくは1〜10質量%とすることが粘性制御の観点から適当である。
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(d)
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(d)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、特にアクリル酸及びメタクリル酸より選ばれる少なくとも1種であることが好適である。
その他の重合性不飽和モノマー(e)
上記(d)以外の重合性不飽和モノマー(e)としては、Bブロックの親水性を損なわないモノマーを選択することが望ましく、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜3のアルキル基を有する1価アルコールのモノエステル化物や、上記(d)以外のその他の親水基を有する重合性不飽和モノマーを含むことが好適である。
(メタ)アクリル酸と炭素数1〜3のアルキル基を有する1価アルコールのモノエステル化物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記(d)以外のその他の親水基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、N−置換(メタ)アクリルアミド、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー、リン酸基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、その他の親水基を有する重合性不飽和モノマーとしては、N−置換(メタ)アクリルアミド、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和モノマーを好適に使用することができる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記N−置換(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドブチルエーテル、N−メチロールメタクリルアミドブチルエーテル、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−メチル,N−エチルアクリルアミド、N−メチル,N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドメチルエーテル、N−メチロールメタクリルアミドメチルエーテル、N−メチロールアクリルアミドエチルエーテル、N−メチロールメタクリルアミドエチルエーテル、N−メチロールアクリルアミドプロピルエーテル、N−メチロールメタクリルアミドプロピルエーテル、アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、形成される塗膜の鮮映性の観点から、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミドが好ましく、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドがさらに好ましい。
前記ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーは、1分子中にポリオキシアルキレン鎖と重合性不飽和基を含有するモノマーである。
上記ポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシエチレンブロックとポリオキシプロピレンブロックとからなる鎖、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとがランダムに結合してなる鎖等を挙げることができ、これらのポリオキシアルキレン鎖は一般に100〜5,000程度、好ましくは200〜4,000程度、さらに好ましくは300〜3,000程度の範囲内の分子量を有することが好適である。
上記ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーの代表例としては、例えば、下記一般式(1)
[式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基、さらに好ましくは水素原子又はメチル基を表し、R3は炭素数2〜4、好ましくは炭素数2又は3、さらに好ましくは炭素数2のアルキレン基を表し、mは3〜150、好ましくは5〜80、さらに好ましくは8〜50の整数を表し、m個のオキシアルキレン単位(O−R3)は互いに同じであっても又は互いに異なっていてもよい]
で示される重合性不飽和モノマーを挙げることができる。
上記一般式(1)で示される重合性不飽和モノマーの具体例としては、例えば、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラピロプレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレン(プロピレン)グリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレン(プロピレン)グリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレン(プロピレン)グリコール(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、本明細書において、「ポリエチレン(プロピレン)グリコール」は、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体を意味し、ブロック共重合体とランダム共重合体のいずれも含むものとする。
なかでも、形成される塗膜の鮮映性の観点から、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレン(プロピレン)グリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレン(プロピレン)グリコール(メタ)アクリレートが好ましく、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
また、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーは、一般に300〜6,000程度、好ましくは400〜5,000程度、さらに好ましくは450〜3,500程度の範囲内の分子量を有することが好適である。
前記スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記リン酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
その他の重合性不飽和モノマー(e)として、Bブロックの親水性を損なわない範囲で、さらに上記例示以外の重合性不飽和モトマーを使用することができる。
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(d)及びその他の重合性不飽和モノマー(e)を構成単位とするBブロックは、これらモノマーの合計質量を基準にして、(d)を5〜60質量%、好ましくは10〜50質量%、(e)を40〜95質量%、好ましくは50〜90質量%とすることが粘性制御の観点から適当である。
ABAトリブロックポリマーの製造方法
本発明のABAトリブロックポリマーは、好適には線状ブロックポリマーであり、該ポリマーは、当業者に知られているリビングラジカル重合方法等により調製でき、特に分子量分布等制御の観点からは、可逆的付加脱離連鎖移動重合(Reversible Addition−Fragmentation Chain Transfer Polymerization、以下RAFT重合と略記する)により好適に得ることができる。 RAFT重合の方法は、C−Sタイプの結合の形態で、成長する遊離基種を阻止することからなる。RAFT重合では、通常のラジカル重合の反応系中にRAFT重合連鎖移動剤を添加することにより実施され、通常、ジチオエステル基、トリチオカーボネート基等を含むRAFT重合連鎖移動剤が使用でき、特にトリチオカーボネート系連鎖移動剤が好適に使用される。トリチオカーボネート系連鎖移動剤は、下記一般式(2)
(式(2)中、R1及びR2はそれぞれ独立した炭素数1〜50の飽和及び/又は不飽和炭化水素骨格からなる部位であり、かかる骨格は直鎖構造、分岐鎖構造、環状構造を含んでもよく、また、骨格中の任意の炭素原子とそれに直接結合する任意の水素原子が、窒素原子、酸素原子で置換されていてもよく、さらに窒素原子に直接結合する水素原子を有さない複素環、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合を骨格中に含んでもよく、また、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、シアノ基、アゾ基、アジド基、ニトロ基、ニトロソ基、N−ヒドロキシ−ジアルキルアミノ基、N−ニトロソ−ジアルキルアミノ基、イソシアネート基を有してもよく、但し、かかる骨格中にアミン性水素及びメルカプト基を有さず、また、R1及びR2の任意の水素原子がハロゲン原子によって置換されていてもよく、R1及びR2が同一であってもよい。)で示される。本発明では、式(2)中のR1及びR2が同一である化合物(「化合物I」と言うことがある)として、特に特開2007-230947、特開2011-52057等に開示されるような両末端に水酸基を有するトリチオカーボネート系連鎖移動剤が挙げられ、また式(2)中のR1及びR2が同一でない化合物(「化合物II」と言うことがある)として、例えば、BORON MOLECULAR社製の「BM1429」、「BM1430」、「BM1432」、「BM1433」、「BM1442」、「BM1448」等が挙げられ、分子量分布制御の観点から好適に使用できる。
上記の両末端に水酸基を有するトリチオカーボネート系連鎖移動剤としては、具体的には、例えば下記式
で表されるジベンジルトリチオカーボネート誘導体などが挙げられる。
上記の式(2)中のR1及びR2が同一でない化合物として、例えば「BM1430」は下記式で示される。
上記RAFT重合連鎖移動剤の配合量は、特に限定されるものではないが、使用される前記(a)〜(e)の全モノマー成分の合計質量100質量部に基いて、通常、0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜3質量部の範囲内であることが好適である。
上記ラジカル重合時に使用されるラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−アミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4'−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの重合開始剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて用いることができる。該ラジカル重合開始剤の配合量は、特に限定されるものではないが、第1の重合あるいは第2の重合時にそれぞれ使用されるモノマー成分の合計質量100質量部に基いて、通常、それぞれ0.01〜10質量部、好ましくは0.03〜1質量部、さらに好ましくは0.04〜0.5質量部の範囲内であることが好適である。
上記ラジカル重合は、例えば、有機溶剤中での溶液重合法、水中での乳化重合法等により行なうことができる。なかでも、比較的容易な操作で行なうことができる溶液重合法が好適である。溶液重合法における溶媒としては、溶剤への連鎖移動が起こりにくく、かつ水溶性である有機溶剤が好ましい。このような溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明のABAトリブロックポリマーは、トリチオカーボネート系連鎖移動剤として化合物Iを用いた場合、炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(b)及び必要に応じて(a)、(b)以外のその他の重合性不飽和モノマー(c)を、ラジカル重合開始剤及びRAFT重合連鎖移動剤の存在下で重合(第1の重合)し、次いで第1の重合体、及びラジカル重合開始剤の存在下で、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(d)及びその他の重合性不飽和モノマー(e)を重合(第2の重合)することによって好適に得られるものである。
上記方法による第1の重合体は、Aブロックの約2倍の分子量を有するポリマーとなるものであり、通常、2,000〜30,000、好ましくは3,000〜20,000の範囲内の重量平均分子量を有することから、Aブロックのポリマーは1,000〜15,000、好ましくは1,500〜10,000の範囲内の重量平均分子量を有し、第2の重合後に得られるABAトリブロックポリマーは50,000〜500,000、好ましくは100,000〜300,000の範囲内の重量平均分子量を有するのが粘性制御の観点から適当であり、各ブロックのポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は、通常、1.2〜4.0の範囲内となる。得られるABAトリブロックポリマーは、疎水性−親水性−疎水性の各ブロックからなる直鎖状の構造を有するものであり、特に両末端に水酸基を有するトリチオカーボネート系連鎖移動剤を用いた場合には、得られるABAトリブロックポリマーも両末端に水酸基を有するものとなる。
また両末端に水酸基を有するトリチオカーボネート系連鎖移動剤を用いた場合、ブロックポリマーとしてABABAのようなブロックポリマーを製造し、その主鎖中に残る連鎖移動剤残基を、例えば水酸化ナトリウム等を用いて加水分解する等して、ABAトリブロックポリマーとすることも可能である。
また本発明のABAトリブロックポリマーは、トリチオカーボネート系連鎖移動剤として化合物IIを用いた場合、炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(b)及び必要に応じて(a)、(b)以外のその他の重合性不飽和モノマー(c)を、ラジカル重合開始剤及びRAFT重合連鎖移動剤の存在下で重合(第1の重合)し、次いで第1の重合体、及びラジカル重合開始剤の存在下で、アクリル酸及びメタクリル酸より選ばれる少なくとも1種(d)、及びその他の重合性不飽和モノマー(e)の重合(第2の重合)を行い、次いで第2の重合体、及びラジカル重合開始剤の存在下で、重合性不飽和モノマー(a)、重合性不飽和モノマー(b)、及び必要に応じて(a)、(b)以外のその他の重合性不飽和モノマー(c)を重合(第3の重合)することによって好適に得られる。
この方法による第1の重合体は、Aブロックのポリマーとなり、第2の重合後に得られるポリマーはABジブロックポリマーとなる。更に第3の重合を行うことによりABAトリブロックポリマーを得ることが可能である。この方法による第1の重合体であるAブロックのポリマーは1,000〜15,000、好ましくは1,500〜10,000の範囲内の重量平均分子量を有し、第3の重合後に得られるABAトリブロックポリマーは50,000〜500,000、好ましくは100,000〜300,000の範囲内の重量平均分子量を有するのが粘性制御の観点から適当であり、各ブロックのポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は、通常、1.2〜4.0の範囲内となる。得られるABAトリブロックポリマーは、疎水性−親水性−疎水性の各ブロックからなる直鎖状の構造を有するものである。
本明細書において数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G3000HXL」、「TSKgel G2500HXL」及び「TSKgel G2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
水性塗料組成物
本発明のABAトリブロックポリマーは、粘度の発現性が高く、かつせん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有するため、水性塗料用の粘性調整剤として好適に使用することができる。
本発明の水性塗料組成物は、上記ABAトリブロックポリマーを含有するものであり、通常、さらに被膜形成性樹脂(A)を含有するものである。
被膜形成性樹脂(A)としては、従来から水性塗料のバインダー成分として使用されているそれ自体既知の水溶性又は水分散性の被膜形成性樹脂を使用することができる。該被膜形成性樹脂(A)の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
なかでも、鮮映性及びフリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された優れた外観を有し、かつ優れた耐水性を有する塗膜を形成できる観点から、被膜形成性樹脂(A)が、水分散性の被膜形成性樹脂であることが好ましい。水分散性の被膜形成性樹脂は、一般に、比較的疎水性の被膜形成性樹脂を水性媒体中に分散することにより得られるため、高い親水性が付与された水溶性の被膜形成性樹脂に比べ、耐水性に優れた塗膜が形成される。また、本発明のABAトリブロックポリマーは疎水性のブロックを有するため、上記のような比較的疎水性の被膜形成性樹脂と網状構造を形成し、粘度を発現するため、鮮映性及びフリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された優れた外観を有する塗膜を形成することができる。
上記水分散性の被膜形成性樹脂は、得られる塗料の貯蔵安定性の観点から、界面活性剤によって水分散性が付与された被膜形成性樹脂であることが好ましい。本発明のABAトリブロックポリマーは、界面活性剤を含有する水性塗料中においても、粘度を発現し、せん断速度の増加と共に粘度が低下する粘度特性を有するため、本発明のABAトリブロックポリマーと界面活性剤によって水分散性が付与された被膜形成性樹脂とを含有する水性塗料組成物は、貯蔵安定性に優れ、かつ鮮映性及びフリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された優れた外観を有し、かつ優れた耐水性を有する塗膜を形成することができる。
上記界面活性剤によって水分散性が付与された被膜形成性樹脂としては、例えば、界面活性剤を用いた乳化重合法によって製造されたアクリル樹脂を好適に使用することができる。
被膜形成性樹脂(A)は、形成される塗膜の鮮映性、フリップフロップ性及びメタリックムラ抑制の観点から、エステル結合を有する樹脂であることが好ましい。エステル結合を有する樹脂としては、例えば、エステル結合を有する重合性不飽和モノマーを含むモノマー混合物を重合することにより得られる共重合体、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等を好適に使用することができ、なかでもアクリル樹脂が好ましい。本発明のABAトリブロクポリマーと、エステル結合を有する被膜形成性樹脂とを含有する水性塗料組成物が、鮮映性及びフリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された優れた外観を有する塗膜を形成できる理由としては、本発明のABAトリブロックポリマーに存在する炭素数4〜24のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(a)中のエステル結合と、被膜形成性樹脂(A)中のエステル結合との親和性が高く、より強固に結合した網状構造が形成されるため、高い粘度が発現することが推察される。
また、被膜形成性樹脂(A)は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の架橋性官能基を有していることが好ましい。
本発明の水性塗料組成物は、さらに、後記の硬化剤(B)を含有することが好ましい。本発明の水性塗料組成物が硬化剤(B)を含有する場合、上記被膜形成性樹脂(A)としては、通常、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の架橋性官能基を有し、該硬化剤(B)と反応することにより、硬化被膜を形成することができる樹脂(基体樹脂)が用いられる。
上記基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。なかでも、上記基体樹脂は、水酸基含有樹脂であることが好ましく、水酸基含有アクリル樹脂(A1)及び/又は水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)であることがさらに好ましい。また、水酸基含有アクリル樹脂(A1)と水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)とを、併用することが、形成される塗膜の鮮映性及び光輝性の向上の観点から、より好ましい。また、併用する場合の割合としては、水酸基含有アクリル樹脂(A1)と水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)との合計量に基づいて、前者が20〜80質量%程度、特に30〜70質量%程度で、後者が80〜20質量%程度、特に70〜30質量%程度であるのが好ましい。
また、被膜形成性樹脂(A)は、カルボキシル基等の酸基を有する場合、酸価が5〜150mgKOH/g程度であるのが好ましく、10〜100mgKOH/g程度であるのがより好ましく、15〜80mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。また、該樹脂(A)は、水酸基を有する場合、水酸基価が1〜200mgKOH/g程度であるのが好ましく、2〜180mgKOH/g程度であるのがより好ましく、5〜170mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂(A1)
水酸基含有アクリル樹脂(A1)としては、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中での乳化重合法、水中でのミニエマルション重合法等の方法により、共重合せしめることによって製造することができる。なかでも、水性塗料用の被膜形成性樹脂として使用する場合に、該樹脂の製造に必要な工数が少ないことから、水中での乳化重合法が好ましい。
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。該水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のポリオキシアルキレングリコール変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは、それぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、形成される塗膜の鮮映性、光輝性、フリップフロップ性等の向上及びメタリックムラ抑制の観点から、上記水酸基含有重合性不飽和モノマーが、エステル結合を有する水酸基含有重合性不飽和モノマーであることが好ましい。該エステル結合を有する水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のポリオキシアルキレングリコール変性体等を挙げることができる。なかでも、(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物が好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、前記ABAトリブロックポリマーの説明において、(a)成分及び(c)〜(e)成分として例示した重合性不飽和モノマー等を使用することができる。これらの重合性不飽和モノマーはそれぞれ単独でもしくは2種以上で組み合わせて使用することができる。
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、アミド基を有することが好ましい。前記のアミド基を有する水酸基含有アクリル樹脂は、例えば、上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーの1種として、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有重合性不飽和モノマーを用いることにより、製造することができる。
上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)を製造する際の前記水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、モノマー成分の合計量を基準として、1〜50質量%程度が好ましく、2〜40質量%程度がより好ましく、3〜30質量%程度がさらに好ましい。
上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、塗料の貯蔵安定性、得られる塗膜の耐水性等の観点から、酸価が、0.1〜200mgKOH/g程度であることが好ましく、2〜150mgKOH/g程度であることがより好ましく、5〜100mgKOH/g程度であることがさらに好ましい。
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、得られる塗膜の耐水性等の観点から、水酸基価が、0.1〜200mgKOH/g程度であることが好ましく、2〜150mgKOH/g程度であることがより好ましく、5〜100mgKOH/g程度であることがさらに好ましい。
本発明の好ましい1つの実施形態において、水酸基含有アクリル樹脂(A1)としては、(i−1)疎水性重合性不飽和モノマー5〜70質量%、(i−2)水酸基含有重合性不飽和モノマー0.1〜25質量%、(i−3)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー0.1〜20質量%及び(i−4)上記重合性不飽和モノマー(i−1)〜(i−3)以外の重合性不飽和モノマー0〜94.8質量%からなるモノマー成分(i)を共重合することにより得られる酸価1〜100mgKOH/g、水酸基価1〜100mgKOH/gの水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)を挙げることができる。水酸基含有アクリル樹脂(A1)として、上記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)を使用する場合、平滑性、鮮映性及び耐水性に優れた塗膜を形成することができ、さらに光輝性顔料を含有する場合に、フリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された光輝性に優れた塗膜を形成することができる。
疎水性重合性不飽和モノマー(i−1)
疎水性重合性不飽和モノマー(i−1)は、炭素数が4以上、好ましくは6〜18の、直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーであり、水酸基含有重合性不飽和モノマー等の親水性基を有するモノマーは除外される。該モノマーとしては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和化合物;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマーを挙げることができる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水感を向上させる観点から、上記疎水性重合性不飽和モノマー(i−1)が、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和モノマーであることが好ましい。
水酸基含有重合性不飽和モノマー(i−2)
水酸基含有重合性不飽和モノマー(i−2)は、得られる水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)の水性媒体中における安定性を向上せしめることができる。また、後記の硬化剤(B)として水酸基との反応性を有する化合物を使用する場合に、該水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)と硬化剤(B)が架橋した、耐水性に優れた塗膜を形成することができる。水酸基含有重合性不飽和モノマー(i−2)としては、前述のものを使用することができる。
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(i−3)
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(i−3)は、得られる水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)の水性媒体中における安定性を向上せしめることができる。また、後記の硬化剤(B)としてカルボキシル基との反応性を有する化合物を使用する場合に、該水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)と硬化剤(B)が架橋した、耐水性に優れた塗膜を形成することができる。
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(i−3)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
なかでも、得られる水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)の水性媒体中における安定性の観点から、上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(i−3)が、アクリル酸及び/又はメタクリル酸であることが好ましい。
重合性不飽和モノマー(i−1)〜(i−3)以外の重合性不飽和モノマー(i−4)
モノマー成分(i)は、前記疎水性重合性不飽和モノマー(i−1)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(i−2)及びカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(i−3)に加え、さらに必要に応じて、該重合性不飽和モノマー(i−1)〜(i−3)以外の重合性不飽和モノマー(i−4)を含有することができる。
上記重合性不飽和モノマー(i−4)は、水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)に望まれる特性に応じて適宜選択して使用することができる。該重合性不飽和モノマー(i−4)の具体例を以下に列挙する。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記重合性不飽和モノマー(i−4)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の炭素数3以下のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等、これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー等が挙げられる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
モノマー成分(i)において、前記疎水性重合性不飽和モノマー(i−1)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(i−2)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(i−3)及び重合性不飽和モノマー(i−1)〜(i−3)以外の重合性不飽和モノマー(i−4)の含有割合は、形成される塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性の観点から、モノマー成分(i)の合計質量を基準にして、下記の範囲内であることが好ましい。
疎水性重合性不飽和モノマー(i−1):5〜70質量%、好ましくは10〜65質量%、さらに好ましくは15〜60質量%、
水酸基含有重合性不飽和モノマー(i−2):0.1〜25質量%、好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%、
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(i−3):0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%、
重合性不飽和モノマー(i−1)〜(i−3)以外の重合性不飽和モノマー(i−4):0〜94.8質量%、好ましくは10〜89質量%、さらに好ましくは20〜83質量%。
水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)は、例えば、前記疎水性重合性不飽和モノマー(i−1)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(i−2)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(i−3)及び重合性不飽和モノマー(i−1)〜(i−3)以外の重合性不飽和モノマー(i−4)からなるモノマー成分(i)を、それ自体既知の方法により、共重合せしめることによって製造することができる。具体的には、例えば、乳化重合法;有機溶剤中で溶液重合を行った後、得られた共重合体を、界面活性剤を用いて水中に分散させる方法等を用いることができる。なかでも、得られる水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)の水性媒体中における安定性向上の観点から、乳化重合法が好ましい。上記乳化重合法は、通常、水に不溶又は難溶性の重合性不飽和モノマーを、界面活性剤を使って水に分散させた状態で重合させる方法である。
上記(i−1)〜(i−3)及び必要に応じて(i−4)を原料として調製される水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)は、酸価が1〜100mgKOH/gの範囲内であり、水酸基価が1〜100mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。なかでも、塗料の貯蔵安定性、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性の観点から、酸価が、2〜50mgKOH/gであることがより好ましく、5〜30mgKOH/gであることがさらに好ましい。また、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性の観点から、水酸基価が、2〜80mgKOH/gであることがより好ましく、5〜60mgKOH/gであることがさらに好ましい。
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂
また、水酸基含有アクリル樹脂(A1)としては、形成される塗膜の鮮映性及び光輝性が向上する観点から、水分散性水酸基含有アクリル樹脂を単独使用するか、又は水分散性水酸基含有アクリル樹脂と水溶性アクリル樹脂とを併用することが好ましい。なかでも、上記水分散性水酸基含有アクリル樹脂が、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂であることが好適である。
上記コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂としては、形成される塗膜の鮮映性及び光輝性が向上する観点から、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%程度及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー70〜99.9質量%程度を共重合成分とする共重合体(I)であるコア部と、水酸基含有重合性不飽和モノマー1〜40重量%程度、疎水性重合性不飽和モノマー5〜50質量%程度及びその他の重合性不飽和モノマー10〜94質量%程度を共重合成分とする共重合体(II)であるシェル部とからなるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)を好適に使用することができる。また、共重合体(I)/共重合体(II)の割合は、形成される塗膜の鮮映性及び光輝性を向上させる観点から、固形分質量比で5/95〜95/5程度が好ましく、10/90〜90/10程度がより好ましく、50/50〜85/15程度がより好ましく、65/35〜80/20程度がさらに好ましい。
コア部共重合体(I)用モノマーとして用いる重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーは、コア部共重合体(I)に架橋構造を付与する機能を有する。重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア部共重合体(I)の架橋の程度に応じて適宜決定し得るが、通常、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの合計量を基準として、0.1〜30質量%程度であるのが好ましく、0.5〜10質量%程度であるのがより好ましく、1〜7質量%程度であるのが更に好ましい。
また、上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーとしては、得られる塗膜のメタリックムラ抑制の観点から、例えば、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマーを使用することが好ましい。このアミド基含有モノマーを使用する場合の使用量としては、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの合計量を基準として、0.1〜25質量%程度であるのが好ましく、0.5〜8質量%程度であるのがより好ましく、1〜4質量%程度であるのが更に好ましい。
コア部共重合体(I)用モノマーとして用いる重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーは、上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーと共重合可能な重合性不飽和モノマーである。
重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの具体例としては、例えば、前記ABAトリブロックポリマーの説明において、(a)〜(e)成分として例示した重合性不飽和モノマー等が挙げられる。これらのモノマーは、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)に要求される性能に応じて、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いられる水酸基含有重合性不飽和モノマーは、得られる水分散性アクリル樹脂に、硬化剤(B)と架橋反応する水酸基を導入せしめることによって塗膜の耐水性等を向上させると共に、該水分散性アクリル樹脂の水性媒体中における安定性を向上せしめる機能を有する。水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を用いるのが好ましい。
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性に優れる観点から、シェル部共重合体(II)を構成するモノマー合計質量を基準として、1〜40質量%程度であるのが好ましく、4〜25質量%程度であるのがより好ましく、7〜19質量%程度であるのが更に好ましい。
シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いられる疎水性重合性不飽和モノマーは、炭素数が6以上、好ましくは6〜18の直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーであり、水酸基含有重合性不飽和モノマー等の親水性基を有するモノマーは除外される。該モノマーとしては、例えば、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和化合物;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマーを挙げることができる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、得られる塗膜の鮮映性を向上させる観点から、上記疎水性重合性不飽和モノマーとして、炭素数6〜18のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー及び/又は芳香環含有重合性不飽和モノマーを用いるのが好ましい。特に、スチレンを用いるのがより好ましい。
上記疎水性重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性に優れる観点から、シェル部共重合体(II)を構成するモノマー合計質量を基準として、5〜50質量%程度であるのが好ましく、7〜40質量%程度であるのがより好ましく、9〜30質量%程度であるのが更に好ましい。
シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いるその他の重合性不飽和モノマーは、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び疎水性重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマーである。当該モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー等を挙げることができる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの具体例は、前記コア部共重合体(I)用モノマーとして例示したものと同じである。カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、特に、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を用いることが好ましい。その他の重合性不飽和モノマーとして、上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含むことにより、得られるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)の水性媒体中における安定性を確保できる。
上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合の使用割合は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性に優れる観点から、シェル部共重合体(II)を構成するモノマー合計質量を基準として、1〜30質量%程度であるのが好ましく、5〜25質量%程度であるのがより好ましく、7〜19質量%程度であるのが更に好ましい。
また、シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いるその他の重合性不飽和モノマーとしては、得られる塗膜の光輝性向上の観点から、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーを使用せず、該共重合体(II)を未架橋型とすることが好ましい。
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)における共重合体(I)/共重合体(II)の割合は、塗膜の外観向上の観点から、固形分質量比で5/95〜95/5程度であるのが好ましく、10/90〜90/10程度であるのがより好ましく、50/50〜85/15程度であるのがより好ましく、65/35〜80/20程度であるのが更に好ましい。
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)は、得られる塗膜の耐水性等に優れる観点から、水酸基価が1〜70mgKOH/g程度であるのが好ましく、2〜50mgKOH/g程度であるのがより好ましく、5〜30mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。
また、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)は、塗料組成物の貯蔵安定性及び得られる塗膜の耐水性等に優れる観点から、酸価が5〜90mgKOH/g程度であるのが好ましく、8〜50mgKOH/g程度であるのがより好ましく、10〜35mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)は、例えば、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%程度、及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー70〜99.9質量%程度からなるモノマー混合物を乳化重合してコア部共重合体(I)のエマルションを得た後、このエマルション中に、水酸基含有重合性不飽和モノマー1〜40質量%程度、疎水性重合性不飽和モノマー5〜50質量%程度、及びその他の重合性不飽和モノマー10〜94質量%程度からなるモノマー混合物を添加し、さらに乳化重合させてシェル部共重合体(II)を調製することによって得ることができる。
コア部共重合体(I)のエマルションを調製する乳化重合は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、界面活性剤の存在下で、重合開始剤を使用してモノマー混合物を乳化重合することにより、行うことができる。
上記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好適である。該アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸等のナトリウム塩やアンモニウム塩が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。
また、1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基とを有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性界面活性剤;1分子中にアニオン性基とラジカル重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性界面活性剤を使用することもできる。これらのうち、反応性アニオン性界面活性剤を使用することが好ましい。
上記反応性アニオン性界面活性剤としては、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基、ブテニル基等のラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のナトリウム塩、該スルホン酸化合物のアンモニウム塩等を挙げることができる。これらのうち、ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩が、得られる塗膜の耐水性に優れるため、好ましい。該スルホン酸化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、「ラテムルS−180A」(商品名、花王社製)等を挙げることができる。
また、上記ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の中でも、ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩がより好ましい。上記ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、「アクアロンKH−10」(商品名、第一工業製薬社製)、「ラテムルPD−104」(商品名、花王社製)、「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA社製)等を挙げることができる。
上記界面活性剤の使用量は、使用される全モノマーの合計量を基準にして、0.1〜15質量%程度が好ましく、0.5〜10質量%程度がより好ましく、1〜5質量%程度が更に好ましい。
前記重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−アミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4’−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの重合開始剤は、一種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、上記重合開始剤に、必要に応じて、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体等の還元剤を併用して、レドックス開始剤としてもよい。
上記重合開始剤の使用量は、一般に、使用される全モノマーの合計質量を基準にして、0.1〜5質量%程度が好ましく、0.2〜3質量%程度がより好ましい。該重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類及び量等に応じて適宜選択することができる。例えば、予めモノマー混合物又は水性媒体に含ませてもよく、或いは重合時に一括して添加してもよく又は滴下してもよい。
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)は、上記で得られるコア部共重合体(I)のエマルションに、水酸基含有重合性不飽和モノマー、疎水性重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物を添加し、さらに重合させてシェル部共重合体(II)を形成することによって、得ることができる。
上記シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物は、必要に応じて、前記重合開始剤、連鎖移動剤、還元剤、界面活性剤等の成分を適宜含有することができる。また、当該モノマー混合物は、そのまま滴下することもできるが、該モノマー混合物を水性媒体に分散して得られるモノマー乳化物として滴下することが望ましい。この場合におけるモノマー乳化物の粒子径は特に制限されるものではない。
シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物の重合方法としては、例えば、該モノマー混合物又はその乳化物を、一括で又は徐々に滴下して、上記コア部共重合体(I)のエマルションに、添加し、攪拌しながら適当な温度に加熱する方法が挙げられる。
かくして得られるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)は、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物の共重合体(I)をコア部とし、水酸基含有重合性不飽和モノマー、疎水性重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物の共重合体(II)をシェル部とする複層構造を有する。
かくして得られるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)は、一般に10〜1,000nm程度、特に20〜500nm程度の範囲内の平均粒子径を有することができる。
本明細書において、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)の平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。サブミクロン粒度分布測定装置としては、例えば、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)の粒子の機械的安定性を向上させるために、該水分散性アクリル樹脂が有するカルボキシル基等の酸基を中和剤により中和することが望ましい。該中和剤としては、酸基を中和できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水等が挙げられる。これらの中和剤は、中和後の該水分散性アクリル樹脂の水分散液のpHが6.5〜9.0程度となるような量で用いることが望ましい。
また、前記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)についても、得られる水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)の水性媒体中における安定性を向上させる観点から、コア・シェル型構造を有し、コア部が架橋していることが好ましい。
なかでも、形成される塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性を向上させる観点から、上記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)が、コア・シェル型構造を有し、コア部が、コア部を構成するモノマー成分の合計質量を基準として、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー70〜99.9質量%をモノマー成分とする共重合体(I)であり、かつコア部とシェル部とを構成するモノマー成分の合計量における各モノマーの含有割合が、コア部とシェル部とを構成するモノマー成分の合計質量を基準として、疎水性重合性不飽和モノマー(i−1)5〜70質量%、水酸基含有重合性不飽和モノマー(i−2)0.1〜25質量%、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(i−3)0.1〜20質量%、上記重合性不飽和モノマー(i−1)〜(i−3)以外の重合性不飽和モノマー(i−4)0〜94.8質量%のコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−1)であることが好ましい。
上記コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−1)において、コア部共重合体(I)用モノマーとして用いられる重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、前述のものを用いることができる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
該重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーの使用割合についても前述したのと同様の範囲で設定することができる。
前記コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−1)において、コア部共重合体(I)用モノマーとして用いられる重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーは、上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーと共重合可能な重合性不飽和モノマーである。
重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等のトリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、該モノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−1)に要求される性能に応じて、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、上記重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーとしては、少なくともその一部として、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーを使用することが好ましい。
炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレートを挙げることができる。これらのモノマーはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーが上記炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーを含有する場合、該炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーの使用割合は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性及び光輝性の観点から、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの合計量を基準として、20〜99.9質量%、好ましくは30〜99.5質量%、さらに好ましくは40〜99質量%の範囲内であることが好適である。
また、上記コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−1)は、一般に10〜1,000nm程度、特に20〜500nm程度の範囲内の平均粒子径を有することができる。
本明細書において、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−1)の平均粒子径は、動的光散乱法粒子径分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから、20℃で測定した値である。該動的光散乱法粒子径分布測定装置としては、例えば、「サブミクロン粒子アナライザー N5」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−1)の粒子の機械的安定性を向上させるために、該水分散性アクリル樹脂が有するカルボキシル基等の酸基を中和剤により中和することが望ましい。該中和剤としては、酸基を中和できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水等が挙げられる。これらの中和剤は、中和後の該水分散性アクリル樹脂の水分散液のpHが6.5〜9.0程度となるような量で用いることが望ましい。
また、上記コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−1)は、形成される塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性を向上させる観点から、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー70〜99.9質量%をモノマー成分とする共重合体(I)であるコア部と、疎水性重合性不飽和モノマー(i−1)5〜80質量%、水酸基含有重合性不飽和モノマー(i−2)0.1〜50質量%、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(i−3)0.1〜50質量%及び上記重合性不飽和モノマー(i−1)〜(i−3)以外の重合性不飽和モノマー(i−4)0〜94.8質量%をモノマー成分とする共重合体(II)であるシェル部とからなり、かつ該共重合体(I)と共重合体(II)との固形分質量比が、共重合体(I)/共重合体(II)=5/95〜95/5範囲内のコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−2)であることが好ましい。なかでも、共重合体(I)/共重合体(II)の割合は、形成される塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性を向上させる観点から、固形分質量比で50/50〜85/15程度が好ましく、65/35〜80/20程度がさらに好ましい。
上記コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−2)において、コア部における重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア部共重合体(I)の架橋の程度に応じて適宜決定し得るが、通常、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの合計量を基準として、0.1〜30質量%であるのが好ましく、0.5〜10質量%であるのがより好ましく、1〜7質量%であるのが更に好ましい。
上記コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−2)において、シェル部における疎水性重合性不飽和モノマー(i−1)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(i−2)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(i−3)及び上記重合性不飽和モノマー(i−1)〜(i−3)以外の重合性不飽和モノマー(i−4)の含有割合は、水性媒体中における安定性ならびに得られる塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性及び耐水性に優れる観点から、シェル部を構成するモノマー成分の合計質量を基準として、下記の範囲内であることが好適である。
疎水性重合性不飽和モノマー(i−1):5〜80質量%、好ましくは7〜70質量%、さらに好ましくは8〜65質量%、
水酸基含有重合性不飽和モノマー(i−2):0.1〜50質量%、好ましくは4〜25質量%、さらに好ましくは7〜19質量%、
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(i−3):0.1〜50質量%、好ましくは5〜25質量%、さらに好ましくは7〜19質量%、
重合性不飽和モノマー(i−1)〜(i−3)以外の重合性不飽和モノマー(i−4):0〜94.8質量%、好ましくは10〜84質量%、さらに好ましくは15〜78質量%。
また、シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いるその他の重合性不飽和モノマーとしては、得られる塗膜の平滑性、鮮映性及び光輝性向上の観点から、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーを使用せず、該共重合体(II)を未架橋型とすることが好ましい。
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−2)は、例えば、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%、及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー70〜99.9質量%からなるモノマー混合物を乳化重合してコア部共重合体(I)のエマルションを得た後、このエマルション中に、疎水性重合性不飽和モノマー(i−1)5〜80質量%、水酸基含有重合性不飽和モノマー(i−2)0.1〜50質量%、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(i−3)0.1〜50質量%及び上記重合性不飽和モノマー(i−1)〜(i−3)以外の重合性不飽和モノマー(i−4)0〜94.8質量%からなるモノマー混合物を添加し、さらに乳化重合させてシェル部共重合体(II)を調製することによって得ることができる。
コア部共重合体(I)のエマルションを調製する乳化重合は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、界面活性剤の存在下で、重合開始剤を使用してモノマー混合物を乳化重合することにより、行うことができる。
上記界面活性剤及び重合開始剤は、前述のものを用いることができ、その使用量も前述の範囲にて設定することができる。
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−2)は、上記で得られるコア部共重合体(I)のエマルションに、疎水性重合性不飽和モノマー(i−1)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(i−2)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(i−3)及び上記重合性不飽和モノマー(i−1)〜(i−3)以外の重合性不飽和モノマー(i−4)からなるモノマー混合物を添加し、さらに重合させてシェル部共重合体(II)を形成することによって、得ることができる。
上記シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物は、必要に応じて、前記重合開始剤、連鎖移動剤、還元剤、界面活性剤等の成分を適宜含有することができる。また、当該モノマー混合物は、そのまま滴下することもできるが、該モノマー混合物を水性媒体に分散して得られるモノマー乳化物として滴下することが望ましい。この場合におけるモノマー乳化物の粒子径は特に制限されるものではない。
シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物の重合方法としては、例えば、該モノマー混合物又はその乳化物を、一括で又は徐々に滴下して、上記コア部共重合体(I)のエマルションに、添加し、攪拌しながら適当な温度に加熱する方法が挙げられる。
かくして得られるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’−2)は、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物の共重合体(I)をコア部とし、疎水性重合性不飽和モノマー(i−1)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(i−2)、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(i−3)及び上記重合性不飽和モノマー(i−1)〜(i−3)以外の重合性不飽和モノマー(i−4)からなるモノマー混合物の共重合体(II)をシェル部とする複層構造を有する。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)
本発明の水性塗料組成物において、被膜形成性樹脂(A)として、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)を使用することによって、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性等の塗膜性能を向上させることができる。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、通常、酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物を使用することができる。かかる酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を挙げることができる。
上記脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物である。脂肪族多塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;該脂肪族多価カルボン酸の無水物;該脂肪族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記脂肪族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性、鮮映性等の観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物を用いることが特に好ましい。
前記脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物である。脂環式構造は、主として4〜6員環構造である。脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂環族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記脂環族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性、鮮映性等の観点から、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を用いることが好ましく、なかでも、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物を用いることがより好ましい。
前記芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物のエステル化物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;該芳香族多価カルボン酸の無水物;該芳香族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記芳香族多塩基酸としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸を使用することが好ましい。
また、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分を使用することもできる。かかる酸成分としては、特に限定されず、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。これらの酸成分は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
前記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル化物等が挙げられる。
また、上記多価アルコール以外のアルコール成分を使用することもできる。かかるアルコール成分としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、150〜250℃程度で、5〜10時間程度加熱し、該酸成分とアルコール成分のエステル化反応又はエステル交換反応を行なう方法により、水酸基含有ポリエステル樹脂を製造することができる。
上記酸成分及びアルコール成分をエステル化反応又はエステル交換反応せしめる際には、反応容器中に、これらを一度に添加してもよいし、一方又は両者を、数回に分けて添加してもよい。また、まず、水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、得られた水酸基含有ポリエステル樹脂に酸無水物を反応させてハーフエステル化させてカルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。また、まず、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を付加させて水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるための触媒として、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の、それ自体既知の触媒を使用することができる。
また、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、該樹脂の調製中又は調製後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等が挙げられ、上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)を好適に用いることができる。
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネートそれ自体;これらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、水等との付加物;これらの各有機ポリイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独でもしくは2種以上混合して使用することができる。
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)としては、得られる塗膜の平滑性、鮮映性及び耐水性に優れる観点から、原料の酸成分中の脂環族多塩基酸の含有量が、該酸成分の合計量を基準として20〜100モル%程度であるものが好ましく、25〜95モル%程度であるものがより好ましく、30〜90モル%程度であるものが更に好ましい。特に、上記脂環族多塩基酸が、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物であることが、得られる塗膜の平滑性、鮮映性等に優れる観点から、好ましい。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、水酸基価が1〜200mgKOH/g程度であるのが好ましく、2〜180mgKOH/g程度であるのがより好ましく、5〜170mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)が、更にカルボキシル基を有する場合は、その酸価が5〜150mgKOH/g程度であるのが好ましく、10〜100mgKOH/g程度であるのがより好ましく、15〜80mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の数平均分子量は、500〜50,000程度であるのが好ましく、1,000〜30,000程度であるのがより好ましく、1,200〜10,000程度であるのが更に好ましい。
上記水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の中和は塩基性化合物を用いて行なうことができる。該塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、2,2−ジメチル−3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノプロパノール等の第1級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−プロパノールアミン、ジ−イソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等の第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール等の第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン等のポリアミン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。該塩基性化合物は水溶性であることが好ましい。
本発明の水性塗料組成物において、上記水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の配合量は、本塗料中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常2〜70質量部、好ましくは10〜50質量部、さらに好ましくは15〜40質量部の範囲内とすることができる。
前記ポリウレタン樹脂としては、例えば、脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネート、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール及びポリカーボネートジオールから選ばれる少なくとも1種のジオール、低分子量ポリヒドロキシ化合物及びジメチロールアルカン酸を反応させてウレタンプレポリマーを作製し、これを第3級アミンで中和し、水中に乳化分散させた後、必要に応じてポリアミン等の鎖伸長剤、架橋剤及び/又は停止剤を含む水性媒体と混合して、イソシアネート基が実質的に無くなるまで反応させてなるものを挙げることができる。上記方法により、通常、平均粒径が約0.001〜約3μmの自己乳化型のポリウレタン樹脂を得ることができる。
また、本発明の水性塗料組成物における上記ポリウレタン樹脂の配合量は、本塗料中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常2〜70質量部、好ましくは5〜50質量部、さらに好ましくは8〜30質量部の範囲内とすることができる。
硬化剤(B)
硬化剤(B)は、被膜形成性樹脂(A)中の水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の官能基と反応して、本発明の水性塗料組成物を硬化し得る化合物である。硬化剤(B)としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物等が挙げられる。これらのうち、水酸基と反応し得るアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物;カルボキシル基と反応し得るカルボジイミド基含有化合物が好ましい。なかでも、アミノ樹脂及びブロック化ポリイソシアネート化合物が好ましく、アミノ樹脂がさらに好ましい。硬化剤(B)は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記アミノ樹脂としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化アミノ樹脂又は完全メチロール化アミノ樹脂を使用することができる。アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
また、上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基を、適当なアルコールによって、部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂が好ましい。特に、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましく、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂がより好ましい。
また、上記メラミン樹脂は、重量平均分子量が400〜6,000程度であるのが好ましく、800〜5,000程度であるのがより好ましく、1,000〜4,000程度であるのが更に好ましく、1,200〜3,000程度であるのが最も好ましい。
なお、本明細書において、前記被膜形成性樹脂(A)及び硬化剤(B)の数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G3000HXL」、「TSKgel G2500HXL」及び「TSKgel G2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
また、硬化剤(B)としてメラミン樹脂を使用する場合は、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等のスルホン酸;モノブチルリン酸、ジブチルリン酸、モノ2−エチルヘキシルリン酸、ジ2−エチルヘキシルリン酸等のアルキルリン酸エステル;これらの酸とアミン化合物との塩等を触媒として使用することができる。
前記ブロック化ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、ブロック剤でブロックした化合物である。該ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系ブロック剤;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系ブロック剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系ブロック剤;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系ブロック剤;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系ブロック剤;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系ブロック剤;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等のアミン系ブロック剤;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系ブロック剤;N−フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系ブロック剤;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系ブロック剤;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系ブロック剤;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール又はイミダゾール誘導体;2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
上記1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトカプロエート、3−イソシアナトメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート(通称、トリアミノノナントリイソシアネート)等の3価以上の有機ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の2量体又は3量体;これらのポリイソシアネート化合物と多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂又は水とをイソシアネート基過剰の条件でウレタン化反応させてなるプレポリマー等が挙げられる。
前記カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応せしめたものを使用することができる。該カルボジイミド基含有化合物としては、1分子中に少なくとも2個のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミド化合物を使用することが好ましい。
上記ポリカルボジイミド化合物としては、得られる塗膜の平滑性、鮮映性等の観点から、水溶性又は水分散性のポリカルボジイミド化合物を使用することが好ましい。該水溶性又は水分散性のポリカルボジイミド化合物としては、水性媒体中に安定に溶解又は分散し得るポリカルボジイミド化合物であれば、特に制限なく使用することができる。
上記水溶性ポリカルボジイミド化合物としては、具体的には、例えば、「カルボジライトSV−02」、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」「カルボジライトV−04」(いずれも日清紡社製、商品名)等を使用することができる。また、上記水分散性ポリカルボジイミド化合物としては、例えば、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(いずれも日清紡社製、商品名)等を使用することができる。
上記ポリカルボジイミド化合物は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明に係る水性塗料組成物における前記被膜形成性樹脂(A)と上記硬化剤(B)との配合割合は、塗膜の平滑性、鮮映性及び耐水性向上の観点から、両者の合計量に基づいて、前者が30〜95質量%程度、好ましくは50〜90質量%程度、さらに好ましくは60〜80質量%程度で、後者が5〜70質量%程度、好ましくは10〜50質量%程度、さらに好ましくは20〜40質量%程度であることが好適である。
硬化剤(B)は、本塗料中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常5〜60質量部、好ましくは10〜50質量部、さらに好ましくは20〜40質量部の範囲内で本発明の水性塗料組成物に配合することができる。
本発明に係る水性塗料組成物が水酸基含有アクリル樹脂(A1)を含有する場合、水酸基含有アクリル樹脂(A1)の配合量は、上記被膜形成性樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計固形分を基準として、2〜70質量%程度であるのが好ましく、5〜55質量%程度であるのがより好ましく、10〜40質量%程度であるのが更に好ましい。
本発明に係る水性塗料組成物が水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)を含有する場合、該水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の配合量は、上記被膜形成性樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計固形分を基準として、2〜70質量%程度であるのが好ましく、5〜55質量%程度であるのがより好ましく、10〜40質量%程度であるのが更に好ましい。
水性塗料組成物の調整方法
本発明に係る水性塗料組成物は、例えば、上記被膜形成性樹脂(A)及び前記ABAトリブロックポリマー、さらに必要に応じて上記硬化剤(B)等を、公知の方法により、水性媒体中に混合し、溶解又は分散せしめることによって調整することができる。
上記水性媒体としては、水、又は水に親水性有機溶媒を溶解してなる水−有機溶媒混合溶液等を挙げることができる。上記親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル3−メトキシブタノール等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上混合して使用することができる。上記水−有機溶媒混合溶液において、水と有機溶媒との混合割合は特に制限はないが、有機溶媒の含有量が、混合溶液の1〜50質量%程度、好ましくは5〜35質量%程度であることが好適である。
なお、上記水性塗料とは、有機溶剤型塗料と対比される用語であって、一般に、水又は水を主成分とする媒体(水性媒体)に、被膜形成性樹脂、顔料等を分散及び/又は溶解させた塗料を意味する。本発明の塗料組成物が水性塗料である場合、該塗料組成物中における水の含有量は、10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは30〜70質量%の範囲内であることが好適である。
本発明に係る水性塗料組成物において、前記被膜形成性樹脂(A)及びABAトリブロックポリマーの配合割合は、水性塗料組成物の貯蔵安定性、形成される塗膜の外観、塗膜性能(耐水性等)等の観点から、被膜形成性樹脂(A)100質量部を基準として、ABAトリブロックポリマーの配合量が、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上であり、かつ好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、最も好ましくは5質量部以下の範囲内であることが好適である。
また、本発明に係る水性塗料組成物において、前記ABAトリブロックポリマーの配合量は、水性塗料組成物の貯蔵安定性、形成される塗膜の外観、塗膜性能(耐水性等)等の観点から、水性塗料組成物100質量部を基準として、0.01〜15質量部、好ましくは0.05〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜5質量部であることが好適である。
また、前記被膜形成性樹脂(A)として、(i−1)〜(i−3)成分及び必要に応じて(i−4)成分を共重合することにより得られる酸価1〜100mgKOH/g、水酸基価1〜100mgKOH/gの水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)を用いる場合、本発明の水性塗料組成物は、前記ABAトリブロックポリマー及び水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)を、該水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、以下に述べる範囲内の量で含有することができる。
ABAトリブロックポリマー:0.05〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部、さらに好ましくは0.2〜5質量部、
水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’):2〜70質量部、好ましくは5〜55質量部、さらに好ましくは10〜40質量部。
ここで、「水性塗料組成物中の樹脂固形分」は、通常、上記ABAトリブロックポリマー及び水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)の樹脂固形分と、必要に応じて本発明の水性塗料組成物に添加配合される、その他の樹脂及び硬化剤(B)の固形分との合計である。
本発明の水性塗料組成物は、必要に応じて、さらに、光輝性顔料、着色顔料、体質顔料、疎水性有機溶媒、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料分散剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等の塗料用添加剤等を含有することができる。
前記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母等を挙げることができる。これらの光輝性顔料は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの光輝性顔料はりん片状であることが好ましい。上記光輝性顔料としては、アルミニウム、雲母、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母が好ましく、アルミニウムがさらに好ましい。
本発明の水性塗料組成物は、上記光輝性顔料を含有する場合に、フリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された光輝性に優れた塗膜を形成できるという利点を有する。
本発明の水性塗料組成物が上記光輝性顔料を含有する場合、該光輝性顔料の配合量は、固形分として、被膜形成性樹脂(A)100質量部に対して、通常1〜100質量部程度であることが好ましく、2〜50質量部程度であることがより好ましく、3〜30質量部程度であることが更に好ましい。
また、本発明の水性塗料組成物は、被膜形成性樹脂(A)以外に、樹脂成分として、さらにリン酸基含有樹脂を含有することができる。特に、本発明の水性塗料組成物が、上記光輝性顔料、特にアルミニウム顔料を含有する場合、本発明の水性塗料組成物は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、メタリックムラ抑制、及び耐水性の観点から、リン酸基含有樹脂を含有することが好ましい。
上記リン酸基含有樹脂は、例えば、リン酸基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを、溶液重合法等の既知の方法で共重合することによって製造することができる。上記リン酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアルキルリン酸の反応生成物等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記リン酸基含有樹脂において、上記リン酸基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを共重合させる際の使用割合は、前者/後者の質量比で、1/99〜40/60程度が好ましく、5/95〜35/65程度がより好ましく、10/90〜30/70程度がさらに好ましい。
本発明の水性塗料組成物が上記リン酸基含有樹脂を含有する場合、該リン酸基含有樹脂の配合量は、被膜形成性樹脂(A)100質量部に対して、通常0.5〜15質量部程度が好ましく、0.75〜10質量部程度がより好ましく、1〜5質量部程度が更に好ましい。
前記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。これらの着色顔料は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明の水性塗料組成物が上記着色顔料を含有する場合、該着色顔料の配合量は、固形分として、被膜形成性樹脂(A)100質量部に対して、通常1〜200質量部程度であることが好ましく、2〜50質量部程度であることがより好ましく、3〜30質量部程度であることが更に好ましい。
前記体質顔料としては、例えば、タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられる。
本発明の水性塗料組成物が上記体質顔料を含有する場合、該体質顔料の配合量は、固形分として、被膜形成性樹脂(A)100質量部に対して、通常1〜200質量部程度であることが好ましく、2〜50質量部程度であることがより好ましく、3〜30質量部程度であることが更に好ましい。
前記疎水性有機溶媒としては、20℃において、100gの水に溶解する質量が10g以下、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下の有機溶媒を使用することができる。かかる有機溶媒としては、例えば、ゴム揮発油、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶媒;1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸メチルアミル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル等のエステル系溶媒;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルn−アミルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒を挙げることができる。これらは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記疎水性有機溶媒としては、得られる塗膜の光輝性に優れる観点から、アルコール系疎水性有機溶媒が好ましく、炭素数7〜14のアルコール系疎水性有機溶媒がより好ましい。なかでも、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルコール系疎水性有機溶媒が好ましく、2−エチル−1−ヘキサノール及び/又はエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルがより好ましい。
本発明に係る水性塗料組成物が上記疎水性有機溶媒を含有する場合、該疎水性有機溶媒の配合量は、水性塗料組成物中の固形分100質量部を基準として、10〜100質量部程度であるのが好ましく、15〜80質量部程度であるのがより好ましく、20〜60質量部程度であるのが更に好ましい。
本発明の水性塗料組成物の固形分は、通常、5〜70質量%程度であるのが好ましく、15〜45質量%程度であるのがより好ましく、20〜35質量%程度であるのが更に好ましい。
本発明の水性塗料組成物は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性に優れる観点から、測定温度20℃において、せん断速度を0.0001sec−1から10,000sec−1まで変化させたときの、1,000sec−1における粘度V1が、0.1Pa・sec以下、好ましくは0.01〜0.1Pa・secの範囲内であることが好適である。
また、本発明の水性塗料組成物は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、光輝性に優れる観点から、測定温度20℃において、せん断速度を0.0001sec−1から10,000sec−1まで変化させたときの、0.1sec−1における粘度V2が、30〜100Pa・sec、好ましくは35〜70Pa・secの範囲内であることが好適である。
上記粘度V1及び粘度V2は、粘弾性測定装置を用いて、測定することができる。該粘弾性測定装置としては、例えば、「HAAKE RheoStress RS150」 (商品名、HAAKE社製)等を使用することができる。
本発明の水性塗料組成物は、種々の被塗物に、塗装することにより、優れた外観の塗膜を形成することができる。
本発明の水性塗料組成物を適用する被塗物は、特に限定されない。該被塗物としては、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができる。これらのうち、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
これらの被塗物の材質としては、特に限定されるものではない。例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂、各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;紙、布等の繊維材料等を挙げることができる。これらのうち、金属材料及びプラスチック材料が好ましい。
上記被塗物は、上記金属材料やそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、さらに、その上に塗膜が形成されているものであってもよい。
塗膜形成を施した被塗物としては、基材に必要に応じて表面処理を施し、その上に下塗り塗膜を形成したもの、該下塗り塗膜の上に中塗り塗膜を形成したもの等を挙げることができる。上記下塗り塗膜は、電着塗料、好ましくはカチオン電着塗料によって形成される塗膜であることが好適である。
本発明の水性塗料組成物を被塗物に塗装することによりウェット塗膜(未硬化の塗膜)を形成した後、該ウェット塗膜を硬化させることにより、目的の塗膜を形成できる。
本発明の水性塗料組成物の塗装方法としては、特に限定されず、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等が挙げられ、これらの塗装方法でウェット塗膜を形成することができる。なかでも、得られる塗膜の平滑性、鮮映性及びフリップフロップ性の向上ならびにメタリックムラ抑制の観点から、エアスプレー塗装又は回転霧化塗装が好ましい。また、塗装に際して、必要に応じて、静電印加してもよい。
本発明の水性塗料組成物の塗布量は、硬化膜厚として、通常、1〜50μm程度、好ましくは3〜50μm程度、より好ましくは5〜35μm程度、さらに好ましくは8〜25μm程度となる量であることが好ましい。
ウェット塗膜の硬化は、被塗物に本発明の水性塗料組成物を塗装後、加熱することにより行うことができる。加熱は、公知の加熱手段により行うことができる。例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用することができる。加熱温度は、80〜180℃程度が好ましく、100〜170℃程度がより好ましく、120〜160℃程度が更に好ましい。加熱時間は、特に制限されるものではないが、通常、10〜60分間程度が好ましく、20〜40分間程度がより好ましい。
本発明の水性塗料組成物の塗装後は、上記加熱硬化を行なう前に、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートの温度は、40〜100℃程度が好ましく、50〜90℃程度がより好ましく、60〜80℃程度が更に好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜15分間程度が好ましく、1〜10分間程度がより好ましく、2〜5分間程度が更に好ましい。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は25℃〜80℃程度の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間程度吹き付けることにより行うことができる。
本発明の水性塗料組成物は、ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜からなる複層塗膜を、2コート1ベーク方式で自動車車体等の被塗物に形成する場合に、該ベースコート形成用として、好適に用いることができる。この場合の塗膜形成方法は、下記方法Iに従って、行うことが出来る。
方法I
(1)被塗物に、本発明の水性塗料組成物を塗装してベースコート塗膜を形成する工程、(2)上記の未硬化のベースコート塗膜上に、クリヤーコート塗料組成物を塗装してクリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに
(3)上記の未硬化のベースコート塗膜及び未硬化のクリヤーコート塗膜を、加熱して両塗膜を同時に硬化させる工程
を含む複層塗膜形成方法。
上記方法Iにおける被塗物は、下塗り塗膜が形成された自動車車体、下塗り塗膜及び中塗り塗膜が形成されている自動車車体等が好ましい。上記下塗り塗膜は電着塗料によって形成された塗膜であることが好ましく、カチオン電着塗料によって形成された塗膜であることがさらに好ましい。
本発明において、硬化塗膜とは、JIS K 5600−1−1(2004)に規定された硬化乾燥状態、すなわち、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態の塗膜である。一方、未硬化塗膜とは、塗膜が上記硬化乾燥状態に至っていない状態であって、JIS K 5600−1−1に規定された指触乾燥状態及び半硬化乾燥状態を含むものである。
本発明の水性塗料組成物を、上記方法Iの2コート1ベーク方式で塗装する場合、その塗装膜厚は、硬化膜厚として、3〜40μm程度が好ましく、5〜30μm程度がより好ましく、8〜25μm程度が更に好ましく、10〜18μm程度が更に特に好ましい。また、上記クリヤーコート塗料組成物の塗装膜厚は、硬化膜厚として、10〜80μm程度が好ましく、15〜60μm程度がより好ましく、20〜45μm程度が更に好ましい。
また、方法Iにおいて、上記水性塗料組成物の塗装後は、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件で前述のプレヒート、エアブロー等を行うことが好ましい。また、上記クリヤーコート塗料組成物の塗装後は、必要に応じて、室温で1〜60分間程度のインターバルをおいたり、40〜80℃程度で1〜60分間程度プレヒートすることができる。
上記水性塗料組成物及びクリヤーコート塗料組成物の硬化は、前述した公知の加熱手段により行うことができる。加熱温度は、80〜180℃程度が好ましく、100〜170℃程度がより好ましく、120〜160℃程度が更に好ましい。また、加熱時間は、10〜60分間程度が好ましく、20〜40分間程度がより好ましい。この加熱により、ベースコート及びクリヤーコートの両塗膜を同時に硬化させることができる。
また、本発明の水性塗料組成物は、自動車車体等の被塗物に、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤーコート塗膜からなる複層塗膜を、3コート1ベーク方式で形成する場合に、第2着色塗膜形成用として、好適に用いることができる。この場合の塗膜形成方法は、下記方法IIに従って、行うことが出来る。
方法II
(1)被塗物に、第1着色塗料組成物を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、
(2)上記の未硬化の第1着色塗膜上に、本発明の水性塗料組成物を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、
(3)上記の未硬化の第2着色塗膜上に、クリヤーコート塗料組成物を塗装してクリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに
(4)上記の未硬化の第1着色塗膜、未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤーコート塗膜を、同時に加熱硬化させる工程
を含む複層塗膜形成方法。
上記方法IIは、未硬化の第1着色塗膜上に、前記方法Iの塗膜形成方法を行うものである。方法IIにおける被塗物としては、下塗り塗膜を形成した自動車車体等が好ましい。上記下塗り塗膜は電着塗料によって形成されることが好ましく、カチオン電着塗料によって形成されることがさらに好ましい。
前記方法IIにおいて、第1着色塗料組成物の塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で3〜50μm程度が好ましく、5〜30μm程度がより好ましく、10〜25μm程度が更に好ましい。また、本発明の水性塗料組成物の塗装膜厚は、硬化膜厚として、1〜30μm程度が好ましく、3〜25μm程度がより好ましく、5〜20μm程度が更に好ましい。また、クリヤーコート塗料組成物の塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で10〜80μm程度が好ましく、15〜60μm程度とするのがより好ましく、20〜45μm程度が更に好ましい。
また、方法IIにおいて、本発明の水性塗料組成物の塗装後は、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件で前述のプレヒート、エアブロー等を行うことが好ましい。また、上記クリヤーコート塗料組成物の塗装後は、必要に応じて、室温で1〜60分間程度のインターバルをおいたり、40〜80℃程度で1〜60分間程度プレヒートすることができる。
上記未硬化の第1着色塗膜、未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤーコート塗膜の3層塗膜の加熱硬化は、前述した公知の加熱手段により行うことができる。加熱温度は、80〜180℃程度が好ましく、100〜170℃程度がより好ましく、120〜160℃程度が更に好ましい。また、加熱時間は、10〜60分間程度が好ましく、20〜40分間程度がより好ましい。この加熱により、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤーコート塗膜の三層塗膜を同時に硬化させることができる。
上記方法I及びIIで用いられるクリヤーコート塗料組成物としては、自動車車体等の塗装用として公知の熱硬化性クリヤーコート塗料組成物をいずれも使用できる。例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂及び架橋剤を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料組成物、水性熱硬化性塗料組成物、粉体熱硬化性塗料組成物等を挙げることができる。
上記基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、シラノール基等を挙げることができる。基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物等を挙げることができる。
クリヤーコート塗料組成物の基体樹脂/架橋剤の組み合わせとしては、カルボキシル基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂/ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/ブロック化ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/メラミン樹脂等が好ましい。
また、上記クリヤーコート塗料組成物としては、一液型塗料であってもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料等の多液型塗料であってもよい。
また、上記クリヤーコート塗料組成物には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有させることができ、さらに体質顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含有せしめることができる。
上記方法IIで用いられる第1着色塗料組成物としては、例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂、架橋剤、着色顔料及び体質顔料を含有する熱硬化性塗料組成物を、好適に使用できる。
上記基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基等を挙げることができる。基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができる。架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
第1着色塗料組成物としては、有機溶剤型塗料組成物、水性塗料組成物、粉体塗料組成物のいずれを用いてもよい。これらのうち、水性塗料組成物を用いるのが好ましい。
上記方法I及びIIにおいて、第1着色塗料組成物及びクリヤーコート塗料組成物の塗装は、公知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装等の方法によって塗装することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
ABAトリブロックポリマーのAブロックポリマーの製造
製造例1
トリチオカーボネート系連鎖移動剤であるビス{4−〔エチル−(2−ヒドロキシエチル)カルバモイル〕ベンジル}トリチオカーボネート(日本テルペン化学株式会社、商品名「CTANT−01」)5.35g及びアクリル酸ブチル80g、4−ヒドロキシブチルアクリレート15g、エチルアクリレート5g、トルエン25gを4つ口フラスコに投入し、フラスコ内を窒素ガスで置換し、撹拌しながら90℃に昇温した。続いて、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(和光純薬工業株式会社、商品名「V−59」)0.193gとトルエン2gの混合溶液を投入し、90℃で4時間撹拌した後、室温まで冷却して、固形分80%のポリマー溶液(X−1)を得た。得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)は11,200、数平均分子量(Mn)は9,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.2であった。このポリマーはAブロックの2倍の分子量を有するものである。
製造例2〜9、製造例11〜13及び比較製造例1〜2
製造例1において、使用するモノマー成分を表1のとおりとする以外は製造例1と同様にして固形分80%のポリマー溶液(X−2)〜(X−9)及び(X−11)〜(X−15)を得た。
製造例10
製造例1において、使用するトリチオカーボネート系連鎖移動剤として、ビス{4−〔(6−ヒドロキシヘキシル)オキシカルボニル〕ベンジル}トリチオカーボネート(日本テルペン化学株式会社、品名「RAFT−Hex」)を用いた以外は製造例1と同様にして固形分80%のポリマー溶液(X−10)を得た。
ABAトリブロックポリマーの製造
実施例1
上記で得た固形分80%のポリマー溶液(X−1)14.6g、メタクリル酸35.0g、N,N−ジメチルアクリルアミド10.0g、エチルアクリレート55.0g及びエチレングリコールモノブチルエーテル65gを別の4つ口フラスコに投入し、フラスコ内を窒素ガスで置換し、撹拌しながら85℃に昇温した。続いて、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(和光純薬工業株式会社、商品名「V−59」)0.045gとエチレングリコールモノブチルエーテル2gの混合溶液を投入し、85℃で8時間撹拌した。次いでエチレングリコールモノブチルエーテル97.6gで希釈して10分間撹拌した。室温まで冷却して、固形分40%のABAトリブロックポリマー溶液(Y−1)を得た。
実施例2〜21及び比較例1〜2
実施例1において、使用するポリマー溶液及びモノマー成分を表2のとおりとし、エチレングリコールモノブチルエーテル量を調整する以外は実施例1と同様にして固形分40%のABAトリブロックポリマー溶液(Y−2)〜(Y−23)を得た。
実施例22
トリチオカーボネート系連鎖移動剤(化合物II)である2−(((ドデシルチオ)カルボノチオイル)チオ)プロパン酸(BORON MOLECULAR PTY LTD、商品名「BM1430」)7.50g及びアクリル酸ブチル80g、4−ヒドロキシブチルアクリレート15g、エチルアクリレート5g、トルエン25gを4つ口フラスコに投入し、フラスコ内を窒素ガスで置換し、撹拌しながら90℃に昇温した。続いて、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(和光純薬工業株式会社、商品名「V−59」)0.40gとトルエン2gの混合溶液を投入し、90℃で4時間撹拌した後、室温まで冷却して、固形分80%のポリマー溶液(X−16)を得た。得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)は5,400、数平均分子量(Mn)は4,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.2であった。このポリマーはAブロックの一端である。
上記で得た固形分80%のポリマー溶液(X−16)6.9g、メタクリル酸35.0g、N,N−ジメチルアクリルアミド10.0g、エチルアクリレート55.0g及びエチレングリコールモノブチルエーテル65gを別の4つ口フラスコに投入し、フラスコ内を窒素ガスで置換し、撹拌しながら85℃に昇温した。続いて、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(和光純薬工業株式会社、商品名「V−59」)0.042gとエチレングリコールモノブチルエーテル2gの混合溶液を投入し、85℃で8時間撹拌した。次いでエチレングリコールモノブチルエーテル90gで希釈して10分間撹拌した。室温まで冷却して、固形分40%のABジブロックポリマー溶液を得た。得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)は225,000、数平均分子量(Mn)は90,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.5であった。このポリマーはABジブロックである。
上記で得た固形分40%のABジブロックポリマー溶液238g、アクリル酸ブチル4g、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.75g、エチルアクリレート0.25g及びエチレングリコールモノブチルエーテル5gを別の4つ口フラスコに投入し、フラスコ内を窒素ガスで置換し、撹拌しながら85℃に昇温した。続いて、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(和光純薬工業株式会社、商品名「V−59」)0.003gとエチレングリコールモノブチルエーテル2gの混合溶液を投入し、85℃で8時間撹拌した。室温まで冷却して、固形分40%のABAトリブロックポリマー溶液(Y−25)を得た。得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)は246,000、数平均分子量(Mn)は95,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.6であった。
(注1)「ブレンマーAME−600」:商品名、日油社製、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー、前記一般式(1)におけるR1が水素原子、R2がメチル基、R3がエチレン基、mが9であり、分子量が482。
比較例3
エチレングリコールモノブチルエーテル30gを4つ口フラスコに投入し、フラスコ内を窒素ガスで置換し、撹拌しながら100℃に昇温した。続いて、ブチルアクリレート5.5g、メタクリル酸20.5g、エチルアクリレート74g及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.5gとエチレングリコールモノブチルエーテル10gの混合溶液を2時間かけてフラスコ内に滴下した後、そのままの温度で1時間撹拌した。続いて、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.2gとエチレングリコールモノブチルエーテル60gの混合溶液を1時間かけてフラスコに滴下した後、そのままの温度で1時間撹拌した。続いて、エチレングリコールモノブチルエーテル50gを加えて10分間撹拌した後、室温まで冷却して、ランダム共重合ポリマー(Y−24)の固形分40%溶液を得た。得られたポリマーの重量平均分子量は173,000、数平均分子量は21,000であった。
水酸基含有アクリル樹脂(A1)の製造
製造例14
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水128部、「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA製、乳化剤、有効成分25%)3部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温させた。
次いで下記コア部用モノマー乳化物の全量のうちの1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部とを反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、コア部用モノマー乳化物の残部を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。次に、下記シェル部用モノマー乳化物を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径95nm、固形分30%の水分散性水酸基含有アクリル樹脂水分散液(A1−1)を得た。得られた水分散性水酸基含有アクリル樹脂は、酸価が33mgKOH/g、水酸基価が25mgKOH/gであった。
コア部用モノマー乳化物:脱イオン水40部、「アデカリアソープSR−1025」2.8部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn−ブチルアクリレート21部を混合攪拌することにより、コア部用モノマー乳化物を得た。
シェル部用モノマー乳化物:脱イオン水17部、「アデカリアソープSR−1025」1.2部、過硫酸アンモニウム0.03部、スチレン3部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、メタクリル酸5.1部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn−ブチルアクリレート9部を混合攪拌することにより、シェル部用モノマー乳化物を得た。
製造例15〜18
下記表3に示す配合とする以外、製造例14と同様にして合成し、水分散性水酸基含有アクリル樹脂水分散液(A1−2)〜(A1−5)を得た。
表3に、水分散性水酸基含有アクリル樹脂水分散液(A1−1)〜(A1−5)の原料組成(部)、固形分(%)、酸価(mgKOH/g)及び水酸基価(mgKOH/g)を示す。表3において、コア部用モノマー乳化物中のメチレンビスアクリルアミド及びアリルメタクリレートは、重合性不飽和基を1分子中に2個有する重合性不飽和モノマーである。また、シェル部用モノマー乳化物中のスチレン及び2−エチルヘキシルアクリレートは、疎水性重合性不飽和モノマーである。
また、表3において、水分散性水酸基含有アクリル樹脂水分散液(A1−1)〜(A1−5)のうち、(A1−1)〜(A1−3)は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’’)に該当する。
製造例19
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート30部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、n−ブチルアクリレート29部、2−ヒドロキシエチルアクリレート15部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部を加え、固形分55%の水酸基含有アクリル樹脂溶液(A1−6)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂は酸価が47mgKOH/g、水酸基価が72mgKOH/gであった。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の製造
製造例20
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール141部、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物に、カルボキシル基を導入するために、無水トリメリット酸38.3部を加えて、170℃で30分間反応させた後、2−エチル−1−ヘキサノール(20℃において100gの水に溶解する質量:0.1g)で希釈し、固形分70%の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A2−1)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、数平均分子量が1,400であった。原料組成において、酸成分中の脂環族多塩基酸の合計含有量は、該酸成分の合計量を基準として46モル%であった。
製造例21
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン113部、ネオペンチルグリコール131部、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物80部、イソフタル酸93部及びアジピン酸91部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を導入するために、さらに無水トリメリット酸33.5部を加え、170℃で30分間反応させた後、2−エチル−1−ヘキサノールで希釈し、固形分70%の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A2−2)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は,酸価が40mgKOH/g、水酸基価が161mgKOH/g、数平均分子量が1,300であった。原料組成において、酸成分中の脂環族多塩基酸の合計含有量は、該酸成分の合計量を基準として28モル%であった。
製造例22
希釈溶剤の2−エチル−1−ヘキサノールを、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル(20℃において100gの水に溶解する質量:無限)とする以外は、製造例17と同様にして、水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A2−3)を得た。
アルミニウム顔料分散液の製造
製造例23
攪拌混合容器内において、「GX−180A」(商品名、旭化成メタルズ社製、アルミニウム顔料ペースト、アルミニウム含有量74%)19部(固形分14部)、2−エチル−1−ヘキサノール35部、下記リン酸基含有樹脂溶液8部(固形分4部)及び2−(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、アルミニウム顔料分散液(P−1)を得た。
リン酸基含有樹脂溶液:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部、イソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製、分岐高級アルキルアクリレート)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、下記リン酸基含有重合性モノマー15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部、t−ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記混合溶剤に加え、さらにt−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部からなる混合物を1時間滴下した。
その後、1時間攪拌熟成して固形分濃度50%のリン酸基含有樹脂溶液を得た。本樹脂のリン酸基による酸価は83mgKOH/g、水酸基価は29mgKOH/g、重量平均分子量は10,000であった。
リン酸基含有重合性モノマー:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.5部、イソブタノール41部を入れ、90℃に昇温後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。その後、イソプロパノ−ル59部を加えて、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。得られたモノマーの酸価は285mgKOH/gであった。
製造例24
2−エチル−1−ヘキサノール35部を、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル35部に変更する以外は、製造例20と同様にして、アルミニウム顔料分散液(P−2)を得た。
水性塗料組成物の製造
実施例22
撹拌混合容器に、製造例14で得た水分散性水酸基含有アクリル樹脂水分散液(A1−1)100部(固形分30部)、製造例19で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(A1−6)18部(固形分10部)、製造例20で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A2−1)43部(固形分30部)、製造例23で得たアルミニウム顔料分散液(P−1)62部及びメラミン樹脂(B−1)(メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分60%、重量平均分子量2,000)50部(固形分30部)を入れ、均一に混合し、更に、実施例1で得たABAトリブロックポリマー溶液(Y−1)2部(固形分0.8部)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、固形分25%の水性塗料組成物(1)を得た。
また、得られた水性塗料組成物(1)について、測定温度20℃において、せん断速度を0.0001sec−1から10,000sec−1まで変化させたときの、1,000sec−1における粘度V1と0.1sec−1における粘度V2とを、粘弾性測定装置「HAAKE RheoStress RS150」 (商品名、HAAKE社製)を用いて測定した。
実施例23〜49及び比較例4〜7
配合組成を下記第4表に示す通りとする以外は、実施例22と同様にして、pH8.0、固形分25%の水性塗料組成物(2)〜(32)を得た。
実施例50
撹拌混合容器に、製造例14で得た水分散性水酸基含有アクリル樹脂水分散液(A1−1)100部(固形分30部)、製造例19で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(A1−6)18部(固形分10部)、製造例20で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A2−1)43部(固形分30部)、製造例23で得たアルミニウム顔料分散液(P−1)62部及びメラミン樹脂(B−1)(メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分60%、重量平均分子量2,000)50部(固形分30部)を入れ、均一に混合し、更に、実施例22で得たABAトリブロックポリマー溶液(Y−25)2部(固形分0.8部)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、固形分25%の水性塗料組成物(33)を得た。
また、得られた水性塗料組成物(33)について、測定温度20℃において、せん断速度を0.0001sec−1から10,000sec−1まで変化させたときの、1,000sec−1における粘度V1は、0.05Pa・secで、0.1sec−1における粘度V2は50Pa・secで、V2/V1は1000であった。
(注2)メラミン樹脂(B−2):メチルエーテル化メラミン樹脂、固形分80%、重量平均分子量800。
(注3)「バイヒジュールVPLS2310」:商品名、住化コベストロウレタン社製、ブロック化ポリイソシアネート化合物、固形分38%。
(注4)「ACRYSOL RM−825」:商品名、ダウケミカル社製、ウレタン会合型粘性調整剤、固形分25%。
被塗物の作製
30cm×45cmのリン酸亜鉛処理された冷延鋼板に、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料組成物(商品名「エレクロンGT−10」、関西ペイント社製)を膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で30分加熱して硬化させた。次いで、この電着塗膜上に中塗り塗料組成物(商品名「TP−65−2」、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂・アミノ樹脂系有機溶剤型塗料組成物)を膜厚35μmになるように塗装し、140℃で30分間加熱して硬化させた。かくして、鋼板上に電着塗膜及び中塗り塗膜を形成してなる被塗物を作製した。
試験塗板の作成
上記で得た被塗物に、実施例及び比較例で得た各水性塗料組成物(1)〜(32)を、回転霧化型のベル型塗装機を用いて、膜厚15μmとなるように塗装し、2分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。次いで、その未硬化塗面上にアクリル樹脂系有機溶剤型上塗りクリヤーコート塗料組成物(商品名「マジクロンKINO−1210」、関西ペイント社製)を膜厚40μmとなるように塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱してこの両塗膜を同時に硬化させた。かくして、被塗物上にベースコート及びクリヤーコートからなる複層塗膜が形成された各試験塗板を得た。
得られた各試験板について、鮮映性、フリップフロップ性、メタリックムラ及び耐水性の評価を行なった。試験方法は、下記の通りである。塗膜性能の試験結果を表4に併せて示す。
鮮映性:各試験板について、「Wave Scan」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるShort Wave(SW)値に基づいて、鮮映性を評価した。SW値が小さいほど塗面の鮮映性が高いことを示す。
フリップフロップ性:角度を変えて各試験板を目視し、下記基準でフリップフロップ性を評価した。
A:目視の角度による明度の変化が顕著である(極めて優れたフリップフロップ性を有する)。
B:目視の角度による明度の変化が大きい(フリップフロップ性に優れる)。
C:目視の角度による明度の変化がやや小さい(フリップフロップ性がやや劣る)。
D:目視の角度による明度の変化が小さい(フリップフロップ性が劣る)。
メタリックムラ:各試験板を目視にて観察し、メタリックムラの発生程度を下記基準で評価した。
A:メタリックムラがほとんど認められず、極めて優れた塗膜外観を有する。
B:メタリックムラがわずかに認められるが、優れた塗膜外観を有する。
C:メタリックムラが認められ、塗膜外観がやや劣る。
D:メタリックムラが多く認められ、塗膜外観が劣る。
耐水性:試験板を、40℃の温水に240時間浸漬後引き上げ、20℃で12時間乾燥した後、試験板上の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作る。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べた。耐水性の評価基準は、次の通りである。
A:ゴバン目塗膜が100個残存し、かつフチカケが生じていない、
B:ゴバン目塗膜が100個残存しているが、フチカケが生じている、
C:ゴバン目塗膜が90〜99個残存している、
D:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である。