次に、図面を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
更に、以下に示す第1の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための両振り子型電磁リレーを例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質や、それらの形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
また、本明細書において、「上側」「下側」等の「上」「下」の定義は、図示した断面図上の単なる表現上の問題であって、例えば、図1に例示した両振り子型電磁リレーの方位を90°変えて観察すれば「上」「下」の称呼は、「左」「右」になり、180°変えて観察すれば「上」「下」の称呼の関係は逆になることは勿論である。又、図1の説明等において部材の右側を「上」と称している箇所があるが、これも単なる表現上の問題である。
(第1の実施形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーは単安定リレーであり、合成樹脂等の絶縁体からなる絶縁基台17上に断面図で逆L字形になるように設けられたヨーク(継鉄)12と、このヨーク12の底部側(図1において左側の垂直部分)の中心の取付孔を貫通し、ヨーク12の取付孔にカシメ固定される鉄心11を備える。絶縁基台17は、絶縁材料である合成樹脂等によって形成されている。
図1では水平方向を長手として示した鉄心11は、中央の胴部と、胴部の頭部に配置された鍔状の吸着片(図1のコイルボビン13から飛び出した部分)を一体として備えている。鉄心11の胴部をコイルボビン13の貫通孔に通した状態で、ヨーク12の底板の取付孔に固定されている。コイル14は絶縁基台17を貫通するように埋め込まれたコイル端子(図示省略)に接続される。すなわち、コイル14をコイルボビン13に巻装することでコイルブロック(13,14)を形成している。このようにして、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーでは、ヨーク12、コイルブロック(13,14)および鉄心11で操作電磁石(11,12,13,14)を構成している。
図1に示すように、逆L字の上棒の端部の上側エッジ(ヨーク12の端部の一方のエッジ)を支点とするようにして、ヨーク12はアーマチュア(接極子)15を両振り子型に揺動可能なように支持している。アーマチュア15のヨーク12側の面の一部には、ヨーク12の端部の下側エッジ(他方のエッジ)を見込むように、切欠き凹部55aが設けられている。この切欠き凹部55aの周辺部(切欠き凹部55aの外周位置又は外周に隣接する位置)の平坦箇所を、ヨーク12の右端の上側のエッジに接して、アーマチュア15は揺動する。図3に示すように、ヨーク12の端部は中央近傍の2箇所に直方体状の突出部が設けられた複雑な凹凸形状であり、図3に示した2箇所の内、右側の突出部が、図1においてヨークの右端として図示されている。図3の2箇所の突出部に対応して、アーマチュア15の主面(腹面)には2つのV字型の切欠き凹部55a,55bが設けられている。アーマチュア15は図3に示したヨーク12の端部の両側に設けられた抱え込みフックによって背面(他の主面)を支えられ、ヨーク12の端部から突出する箇所(図1においてヨークの右端)の上側のエッジを支点とするように、アーマチュア15の腹面(主面)を接して支持されている。
第1の実施形態では、アーマチュア15は、図1ではほぼ垂直方向に延在する断面が図示されているが、アーマチュア15は、図4に示すような下辺側の2角が面取り(平面取り)された長方形であり、正確には6角形の板状である。板状に形成されたアーマチュア15の鉄心11に対向する側には、例えば円形の突起27pが設けられ、揺動した際にアーマチュア15が過剰に鉄心11に吸着することを防止している。
図1から分かるようにアーマチュア15に設けられる突起27pは、鉄心11の吸着片に対向する位置に配置されている。なお、図5に示すように、図4の突起27pの外径相当の間隔を隔てて、V字型若しくはU字型の細長い第1吸着防止溝27a及び第2吸着防止溝27bの2本の溝を1直線上に並ぶように掘っても、アーマチュア15が過剰に鉄心11に吸着することを防止できる。
また、導電性を有する細長い長方形の板状(ストリップ状)のメーク側接点端子31a及びブレーク側接点端子31bが絶縁基台17を貫通し、メーク側接点端子31a及びブレーク側接点端子31bのそれぞれの中間部分が絶縁基台17に埋め込まれて固定されている。図1の断面図に表現したように、メーク側接点端子31aの上部は右側に傾き、ブレーク側接点端子31bの上部は左側に傾いており、それぞれ傾斜部を構成している。
すなわち、板状のメーク側接点端子31a及びブレーク側接点端子31bの上部は互いに内側に向かって傾いているので、メーク側接点端子31aとブレーク側接点端子31bのそれぞれの上側で測った間隔は、下側の間隔より狭い。メーク側接点端子31aの傾斜部のブレーク側接点端子31bに対向する面にはメーク側固定接点32aが設けられ、ブレーク側接点端子31bの傾斜部のメーク側固定接点32aに対向する側の面にはブレーク側固定接点32bが設けられている。
アーマチュア15の上(図1においてアーマチュア15の右側、図4においてはアーマチュア15の下側)には絶縁板22が設けられている。この絶縁板22の上に設けられた支持片サポート21によって、弾性及び導電性を有する細長いストリップ状の可動接点支持片34が、アーマチュア15に一体化して連動するようにアーマチュア15に固定されている。
支持片サポート21は支持台本体21bと支持台固定具21aとから構成されている。可動接点支持片34は支持片サポート21の支持台本体21bを貫通し、可動接点支持片34の上部側の一部が支持台本体21bに固定されている。支持台固定具21aが、支持台本体21bと絶縁板22をアーマチュア15に固定している。なお、図2から分かるように、支持台固定具21aは可動接点支持片34を切る断面には存在しないので、図1の断面図は支持台固定具21aを切る位置を通る階段断面上の表現である。
可動接点支持片34の下端の両側には、ブレーク側可動接点33bとメーク側可動接点33aが備えられている。ブレーク側可動接点33bはブレーク側固定接点32bに対向し、メーク側可動接点33aはメーク側固定接点32aに対向している。
図2に示すように、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーは箱形ケース19を備え、この箱形ケース19の内部に上述した絶縁基台17、操作電磁石(11,12,13,14)、アーマチュア15等を収納している。可動接点支持片34の上端に設けられた接続端子38は、リード線39を通して、絶縁基台17を貫通する可動接点端子37に接続される。図2において、ヨーク12の上面の右側端部近傍に爪部18が設けられている。この爪部18と図1に示したアーマチュア15の間に復帰ばね16が設けられて単安定リレーの動作が可能なように構成されている。
図1に示すように、操作電磁石(11,12,13,14)のコイルを励磁するとアーマチュア15が鉄心11に吸引され、これに従動して可動接点支持片34が反転してメーク側可動接点33aがメーク側固定接点32aに接触する。図1に示すように、メーク側可動接点33aがメーク側固定接点32aに接触した状態においては、ヨーク12の端部の他方のエッジ(支点になっている上側のエッジに対向する下側のエッジ)は、アーマチュア15の主面に設けられた切欠き凹部55aの内部に挿入される。
また、コイル14の励磁を解くと復帰ばね16の弾性力でアーマチュア15が復帰し、図6の中間状態を経て、図7に示すように、ブレーク側可動接点33bがブレーク側固定接点32bに接触するので単安定リレーの動作ができる。図6及び図7に示した状態においては、ヨーク12の端部の他方のエッジは、アーマチュア15の主面に設けられた切欠き凹部55aの内部からは外れた位置に移動している。図1、図6及び図7を比較すれば理解できるように、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーは、図6の中間状態を中心として、図1のメーク側可動接点33aがメーク側固定接点32aに接触した状態と、図7のブレーク側可動接点33bがブレーク側固定接点32bに接触した状態の間を両振り子型の動作をする。両振り子型の動作に伴い、ヨーク12の端部の他方のエッジは、アーマチュア15の切欠き凹部55aの内部と外部の間を往復運動する。
図8(a)は、図1に対応する図で、メーク側可動接点33aがメーク側固定接点32aに接触した状態を、可動接点支持片34の先端部分に着目した拡大図である。図8(a)に示すように、メーク側可動接点33aがメーク側固定接点32aに接触した状態においては、可動接点支持片34の長手方向の中心線の方向は、中間状態からΔθ=θ1だけメーク側固定接点32a側に傾いている。例えばθ1=1.5°程度に設定できる。
一方、図8(b)は、図6に対応する図で、中間状態における可動接点支持片34の先端部分に着目した拡大図である。図8(b)に示すように、中間状態においては、可動接点支持片34の長手方向の中心線の方向は、中間状態であるのでΔθ=0である。これに対し、図8(c)は、図7に対応する図で、ブレーク側可動接点33bがブレーク側固定接点32bに接触した状態を、可動接点支持片34の先端部分に着目した拡大図である。図8(c)に示すように、ブレーク側可動接点33bがブレーク側固定接点32bに接触した状態においては、可動接点支持片34の長手方向の中心線の方向は、中間状態からΔθ=θ2=θ1だけブレーク側固定接点32b側に傾いている。
図9(a),(b)は、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーの動作を説明する図8(a),(b),(c)と比較するための図である。すなわち、図9(a),(b)は、片振り子型の動作をする従来技術における可動接点支持片34の先端部分に着目した拡大断面図である。図9(a),(b)の拡大断面図に表現したように、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーのメーク側接点端子31aとは異なり、従来技術に係る片振り子型電磁リレーのメーク側接点端子71aは平坦である。同様に、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーのブレーク側接点端子31bとは異なり、従来技術に係る片振り子型電磁リレーのブレーク側接点端子71bは平坦である。すなわち、片振り子型電磁リレーにおいては、板状のメーク側接点端子71a及びブレーク側接点端子71bは互いに平行であり、メーク側接点端子71aとブレーク側接点端子71bの間隔は一様である。
図9(a)は、従来技術に係る片振り子型電磁リレーの全体構造の概要を説明する図21に対応する拡大断面図で、メーク側可動接点33aがメーク側固定接点32aに接触した状態を示す。図9(a)に示すように、メーク側可動接点33aがメーク側固定接点32aに接触した状態においては、可動接点支持片34の長手方向の中心線の方向がΔθ=0と定義される。よって、可動接点支持片34の長手方向の中心線の方向とメーク側接点端子71aの長手方向の中心線の方向は平行であり、可動接点支持片34の長手方向の中心線の方向とブレーク側接点端子71bの長手方向の中心線の方向も平行である。そして、ブレーク側可動接点33bとブレーク側固定接点32bとの間にはΔx分の平行なギャップが存在する。
一方、図9(b)は、従来技術に係る片振り子型電磁リレーの全体構造の概要を説明する図22に対応する拡大断面図で、ブレーク側可動接点33bがブレーク側固定接点32bに接触した状態を示す。図9(b)に示すように、ブレーク側可動接点33bがブレーク側固定接点32bに接触した状態においては、可動接点支持片34の長手方向の中心線の方向は、図9(a)のΔθ=0を基準とし、図8(c)に示したΔθをθ2として、Δθ=2θ2だけブレーク側固定接点32b側に傾いている。θ1=θ2=1.5°程度に設定した場合は、2θ2=3.0°になる。2θ2=3.0°の値は、従来技術に係る片振り子型電磁リレーの多くに慣用されている一般的な値である。
従来技術に係る片振り子型電磁リレーにおいては、図9(a)に示した状態を基準として、Δθ=2θ2だけブレーク側固定接点32b側に傾くことにより、図9(b)に示したように、メーク側可動接点33aがメーク側固定接点32aに接触した中心位置に対し、ブレーク側可動接点33bがブレーク側固定接点32bに接触した中心位置が:
Δh=lsin(2θ2)・tan(2θ2)=lsin2(2θ2)/ cos(2θ2) ……(1)
だけ、可動接点支持片34の支点位置逆方向にシフトしている。ここでlは可動接点支持片34の支点位置から長手方向に可動接点支持片34の先端まで測った距離である。従来の片振り子型電磁リレーでは、式(1)で決まるΔhだけの接点シフトが発生するので、2θ2=3.0°以上にブレーク側固定接点32b側への傾斜Δθを大きくするのは困難である。この2θ2=3.0°の制限から、従来の片振り子型電磁リレーでは、メーク側可動接点33aとメーク側固定接点32aとの間隔、及びブレーク側可動接点33bとブレーク側固定接点32bの間隔Δxの値が制限され、定格接点電圧に構造的な限界が発生する。
一方、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーは両振り子型の動作をするため、図8(c)に示したトポロジーと図8(a)に示したトポロジーは、図8(b)に示した中間状態に関して対称である。よって、図9(b)に示したようなメーク側可動接点33aとメーク側固定接点32aとの接触位置から、ブレーク側可動接点33bとブレーク側固定接点32bとの接触位置が式(1)で決まるΔhだけ接点シフトすることはない。このように第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーでは、式(1)で決まるΔhの接点シフトを考慮する必要はないので、傾きΔθ=θ1=θ2の値の選択に自由度がある。傾きΔθ=θ1=θ2の値を自由に選択できれば、メーク側可動接点33aとメーク側固定接点32aとの間隔、及びブレーク側可動接点33bとブレーク側固定接点32bの間隔を従来の片振り子型電磁リレーより大きくし、アーク放電を防止することができる。よって、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーによれば、従来の片振り子型電磁リレーよりも定格接点電圧を大きくすることが可能になる。
図10は、図8(c)に対応する図で、図8(c)に示したブレーク側可動接点33bよりも接触面の曲率半径の大きなブレーク側可動接点35bがブレーク側固定接点32bに接触した状態を示す(図10では、図8(c)のブレーク側可動接点33bを2点鎖線で示している。)図10でも、ブレーク側可動接点35bがブレーク側固定接点32bに接触した状態においては、可動接点支持片34の長手方向の中心線の方向は、中間状態からΔθ=θ2=θ1だけブレーク側固定接点32b側に傾いているが、ブレーク側可動接点35bの曲率半径が大きいので、ブレーク側可動接点35bとブレーク側固定接点32bとの接触面積が大きく大電流を流すことができる。
図10では、図8(c)のメーク側可動接点33aも2点鎖線で示しているが、図10のメーク側可動接点35aもメーク側可動接点33aよりも曲率半径が大きい。よって、図示を省略しているが、メーク側可動接点35aがメーク側固定接点32aに接触した状態においても、メーク側可動接点35aとメーク側固定接点32aの接触面積が大きく、アーク放電も発生しにくいので、大きな接点電流を流すことができる。又、図8に示した傾きΔθ=θ1=θ2の値を大きくすることにより、メーク側可動接点35aとメーク側固定接点32aとの間隔、及びブレーク側可動接点35bとブレーク側固定接点32bの間隔を従来の片振り子型電磁リレーより大きくし、アーク放電を防止して、大きな定格接点電圧を許容することができる。
冒頭で述べたとおり、従来の片振り子型電磁リレーにおいては、メーク側可動接点とメーク側固定接点との接触状態と、ブレーク側可動接点とブレーク側固定接点との接触状態とでは、動作時の接触圧力等が異なるので接点電流がメーク側とブレーク側で異なるため、大電流の動作が困難であった。本発明の第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーによれば、メーク側可動接点33aとメーク側固定接点32aの間の接触圧力と、ブレーク側可動接点33bとブレーク側固定接点32bの間の接触圧力とを対称にして均一にできることから、定格接点電流を大きく設定できる。このため、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーによれば、従来の片振り子型電磁リレーの同一定格接点電圧及び定格接点電流を有する構造及びボディの大きさで比較して、その定格接点電圧及び定格接点電流を30%以上向上させることができる。即ち、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーによれば、コンパクトなボディの構造において、定格接点電圧及び定格接点電流を増大させることができる。
図11は、図10に対応する図で、図10に示したブレーク側固定接点32bが平坦な接触面を有していたのに対し、ブレーク側固定接点36bの接触面が凹面をなす場合を示す。図11に示すように、凹面からなるブレーク側固定接点36bに対し、曲率半径が大きいブレーク側可動接点35bが接触した状態においては、ブレーク側固定接点36bの接触面が凹面をなしているので、ブレーク側可動接点35bとブレーク側固定接点36bとの接触面積が、図10に示した状態よりも更に大きくなり、更に大きな接点電流を流すことができる。
図11では、メーク側固定接点36aも接触面が凹面をなしている。よって、図示を省略しているが、メーク側可動接点35aがメーク側固定接点36aに接触した状態においても、メーク側可動接点35aとメーク側固定接点36aの接触面積が更に大きくなるので、更に大きな接点電流を流すことができる。ただし、図11に示すように、ブレーク側固定接点36b及びメーク側固定接点36aの接触面が凹面をなす場合は、凹面の端部のエッジ効果でアーク放電によるスパークが発生し易くなるので、大きな接点電圧用には不適である。ただし、図10で説明したとおり、傾きΔθ=θ1=θ2の値を大きくすることにより、メーク側可動接点35aとメーク側固定接点36aとの間隔、及びブレーク側可動接点35bとブレーク側固定接点36bの間隔を従来の片振り子型電磁リレーより大きくできるので、アーク放電は多少抑制できる。
図12において、手前側の4つのブレーク側固定接点を左から順にB1,B2,B3,B4接点と呼び、奥側に位置するメーク側固定接点を左から順にA1,A2,A3,A4接点と呼ぶ。図12の固定接点の定義の下で、以下にメーク側可動接点33aがメーク側固定接点32aに接触した状態で、可動接点支持片34が中間状態からΔθ=θ1だけメーク側固定接点32a側に傾くトポロジーとなる両振り子型電磁リレーの効果を立証する。
図13(a)は、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーのうち、図4に示したようにアーマチュア15の主面に厚さ0.36mmの突起27pがある構造において、ブレーク側からメーク側への移動時間に関し、接点チャッタリング(chattering)を含まない条件で測定した結果である。図12の手前側のブレーク側固定接点32bであるB4接点から、可動接点支持片34が奥側に位置するメーク側固定接点32aであるA4接点まで移動したときの移動時間を、図13(a)では1番下のA4の行(レコード)に示している。
「接点チャッタリング」とは、可動接点支持片34がブレーク側固定接点32bであるB4接点から離れる際、及び可動接点支持片34がメーク側固定接点32aであるA4接点に接触状態になる際に、弾性衝突や片持ち梁構造に由来して、それぞれ微細且つ非常に速い機械的振動(バウンド)を起こして両振り子型電磁リレーがオン・オフを繰り返す現象のことであるが、図13(a)ではこの機械的振動の時間を除いた時間を示している。第1回目の測定(測定1)におけるB4接点からの可動接点支持片34のA4接点まで移動したときの、接点チャッタリングを除いた移動時間は18.74msであることが分かる。
同様に、図13(a)の表の1番下の行(レコード)によれば、第2回目の測定(測定2)におけるB4接点からA4接点まで移動したときの移動時間は18.72msで、第3回目の測定(測定3)におけるB4接点からA4接点まで移動したときの移動時間は18.71msで、第4回目の測定(測定4)におけるB4接点からA4接点まで移動したときの移動時間は18.70msであることが分かる。同様に、他の3つのブレーク側固定接点であるB1,B2,B3接点のそれぞれから対応するメーク側固定接点であるA1,A2,A3接点までの可動接点支持片の移動時間を、図13(a)の表の上から順にA1,A2,A3の行(レコード)に示している。
図13(a)の表には示していないが、第1回目の測定(測定1)の列(フィールド)における4つのB1,B2,B3,B4接点(以下において「B接点」と略記する。)のそれぞれから対応するA1,A2,A3、A4接点(以下において「A接点」と略記する。)までの4つの移動時間測定データの平均値は18,77msである。同様に図13(a)に示された表で、第2回目の測定(測定2)の列(フィールド)におけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は18,69msで、第3回目の測定(測定3)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は18,68msで、第4回目の測定(測定4)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は18,71msである。そして4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値は18,71msである。
図13(b)は、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーのうち、図5に示したようにアーマチュア15の主面に突起代用溝27a,27bがある場合において、弾性衝突や片持ち梁構造に由来する接点チャッタリングを含まない条件でブレーク側からメーク側への移動時間を測定した結果である。図13(a)と同様に、4つのB接点のそれぞれから対応するA接点までの可動接点支持片の移動時間を上から順にA1,A2,A3、A4の行(レコード)に示している。図13(a)場合と同様に、図13(b)の表から読める第1回目の測定(測定1)のフィールドにおける4つのB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は20.10msで、第2回目の測定(測定2)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は20.03msで、第3回目の測定(測定3)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は20.05msで、第4回目の測定(測定4)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は20.07msである。そして4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値は20.06msである。
図13(c)は、図21等に示したような従来技術に係る片振り子型電磁リレーのアーマチュア75の主面に厚さ0.36mmの突起77がある場合において、弾性衝突や片持ち梁構造に由来する接点チャッタリングを含まない条件でブレーク側からメーク側への移動時間を測定した結果である。図13(a)及び図13(b)と同様に、4つのB接点のそれぞれから対応するA接点までの可動接点支持片の移動時間を、上から順にA1,A2,A3、A4の行(レコード)に示している。図13(c)の表から読める第1回目の測定(測定1)のフィールドにおける4つのB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は18.43msで、第2回目の測定(測定2)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は18.40msで、第3回目の測定(測定3)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は18.39msで、第4回目の測定(測定4)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は18.40msである。そして4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値は18.40msである。
図13(a),図13(b),図13(c)を比較すると、B接点のそれぞれから対応するA接点までの、接点チャッタリングを含まない可動接点支持片の移動時間に関しては、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーと図21等に示したような従来技術に係る片振り子型電磁リレーとはほぼ同程度の動作速度であると判断できる。しかし、厚さ0.36mmの突起27pに変えて、突起代用溝27a,27bを設けた構造の第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーが、厚さ0.36mmの突起77を有する従来技術に係る片振り子型電磁リレーよりも若干遅い傾向である。
図14(a)は、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーに厚さ0.36mmの突起27pがある構造において、メーク側からブレーク側への移動時間について接点チャッタリングを含まない条件で測定した結果である。図12の奥側に位置するメーク側固定接点32aであるA4接点から手前側のブレーク側固定接点32bであるB4接点まで可動接点支持片34が移動したときの移動時間を、図14(a)では1番下のB4の行に示している。可動接点支持片34がメーク側固定接点32aであるA4接点から離れる際、及び可動接点支持片34がブレーク側固定接点32bであるB4接点に接触状態になる際に、接点チャッタリングを起こすが、図14(a)では接点チャッタリングによる機械的振動の時間を除いて測定結果を示している。第1回目の測定(測定1)のフィールドにおけるA4接点からの可動接点支持片34のB4接点まで移動したときの移動時間は21.65msであることが分かる。同様に、第2回目の測定(測定2)のフィールドにおけるA4接点からB4接点まで移動したときの移動時間は21.65msで、第3回目の測定(測定3)のフィールドにおけるA4接点からB4接点まで移動したときの移動時間は21.63msで、第4回目の測定(測定4)のフィールドにおけるA4接点からB4接点まで移動したときの移動時間は21.63msであることが分かる。同様に、他の3つのメーク側固定接点であるA1,A2,A3接点のそれぞれから対応するブレーク側固定接点であるB1,B2,B3接点までの可動接点支持片の移動時間を上から順にB1,B2,B3の行(レコード)に示している。
図14(a)の表には示していないが、第1回目の測定(測定1)のフィールドにおける4つのA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は、21.62msである。同様に第2回目の測定(測定2)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は21.62msで、第3回目の測定(測定3)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は21.60msで、第4回目の測定(測定4)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は21.61msである。そして4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値は21.61msである。
図14(b)は、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーに突起代用溝27a,27bがある場合において、弾性衝突や片持ち梁構造に由来する接点チャッタリングを含まない条件でメーク側からブレーク側への移動時間を測定した結果である。図14(a)と同様に、第1回目の測定(測定1)のフィールドにおける4つのA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は29.34msである。同様に第2回目の測定(測定2)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は29.37msで、第3回目の測定(測定3)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は29.39msで、第4回目の測定(測定4)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は29.39msである。そして4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値は29.37msである。
図14(c)は図21等に示したような従来技術に係る片振り子型電磁リレーのアーマチュア75の主面に厚さ0.36mmの突起77がある場合において、弾性衝突や片持ち梁構造に由来する接点チャッタリングを含まない条件でメーク側からブレーク側への移動時間を測定した結果である。図14(a)及び図14(b)と同様に、第1回目の測定(測定1)のフィールドにおける4つのA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は23.67msである。同様に第2回目の測定(測定2)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は23.68msで、第3回目の測定(測定3)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は23.69msで、第4回目の測定(測定4)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は23.66msである。そして4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値は23.68msである。
図14(a),図14(b),図14(c)を比較すると、A接点のそれぞれから対応するB接点までの、接点チャッタリングを含まない可動接点支持片の移動時間に関しては、図14(a)に示した第1の実施形態に係る厚さ0.36mmの突起27pを有する両振り子型電磁リレーが、図14(c)に示した従来技術に係る片振り子型電磁リレーよりも動作速度が速くなっていることが分かる。4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値では、突起27pを有する構造では約2ms速くなっている。A接点からB接点までの移動時間が約2ms速くなった理由は、図8(a)に示すように、メーク側可動接点33aがメーク側固定接点32aに接触した状態で、可動接点支持片34の長手方向の中心線の方向が中間状態からΔθ=θ1だけメーク側固定接点32a側に傾いているため、メーク側可動接点33aをメーク側固定接点32aから引き離すのが容易になったためと考えられる。しかし、図14(b)に示したように、厚さ0.36mmの突起27pに変えて、突起代用溝27a,27bを設けた構造の第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーは、厚さ0.36mmの突起77を有する従来技術に係る片振り子型電磁リレーよりも遅い傾向である。4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値では、突起代用溝27a,27bを有する構造では約6ms遅くなっている。
特に図13と図14とを総合すると、B接点からA接点までとA接点からB接点までの往復運動における、接点チャッタリングを含まない可動接点支持片の移動時間に関しては、第1の実施形態に係る厚さ0.36mmの突起27pを有する両振り子型電磁リレーが、従来技術に係る片振り子型電磁リレーよりも動作速度が速くなっていることが分かる。4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値で比較すると、往復移動では約2ms速くなっている。
図15(a)は、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーに厚さ0.36mmの突起27pがある構造において、ブレーク側からメーク側への移動時間を弾性衝突や片持ち梁構造に由来する接点チャッタリングを含む条件で測定した結果である。図13と同様に、4つのB接点のそれぞれから対応するA接点までの可動接点支持片の移動時間を上から順にA1,A2,A3、A4の行に示している。図15(a)の表から読める第1回目の測定(測定1)のフィールドにおける4つのB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は24.62msで、第2回目の測定(測定2)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は24.68msで、第3回目の測定(測定3)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は24.44msで、第4回目の測定(測定4)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は24.54msである。そして4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値は24.57msである。
図15(b)は、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーに突起代用溝27a,27bがある場合において、弾性衝突や片持ち梁構造に由来する接点チャッタリングを含む条件でブレーク側からメーク側への移動時間を測定した結果である。図15(a)と同様に、4つのB接点のそれぞれから対応するA接点までの可動接点支持片の移動時間を上から順にA1,A2,A3、A4の行に示している。図15(b)の表から読める第1回目の測定(測定1)のフィールドにおける4つのB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は21.79msで、第2回目の測定(測定2)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は21.79msで、第3回目の測定(測定3)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は21.76msで、第4回目の測定(測定4)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は21.78msである。そして4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値は21.78msである。
図15(c)は図21等に示したような従来技術に係る片振り子型電磁リレーのアーマチュア75の主面に厚さ0.36mmの突起77がある場合において、弾性衝突や片持ち梁構造に由来する接点チャッタリングを含む条件でブレーク側からメーク側への移動時間を測定した結果である。図15(a)及び図15(b)と同様に、4つのB接点のそれぞれから対応するA接点までの可動接点支持片の移動時間を上から順にA1,A2,A3、A4の行に示している。図15(c)の表から読める第1回目の測定(測定1)のフィールドにおける4つのB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は22.04msで、第2回目の測定(測定2)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は22.22msで、第3回目の測定(測定3)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は22.20msで、第4回目の測定(測定4)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は21.97msである。そして4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値は22.11msである。
図15(a),図15(b),図15(c)を比較すると、B接点のそれぞれから対応するA接点までの、接点チャッタリングを含む場合の可動接点支持片の移動時間に関しては、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーと図21等に示したような従来技術に係る片振り子型電磁リレーとはほぼ同程度の動作速度であると判断できる。しかし、図15(b)に示したように、厚さ0.36mmの突起27pに変えて、突起代用溝27a,27bを設けた構造の第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーが、図15(c)に示した厚さ0.36mmの突起77を有する従来技術に係る片振り子型電磁リレーよりも若干速い傾向である。
図16(a)は、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーに厚さ0.36mmの突起27pがある構造において、弾性衝突等に由来する接点チャッタリングを含む条件でメーク側からブレーク側への移動時間を測定した結果である。図14と同様に、第1回目の測定(測定1)のフィールドにおける4つのA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は34.05msである。同様に第2回目の測定(測定2)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は34.19msで、第3回目の測定(測定3)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は34.21msで、第4回目の測定(測定4)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は34.09msである。そして4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値は34.13msである。
図16(b)は、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーに突起代用溝27a,27bがある場合において、弾性衝突等に由来する接点チャッタリングを含む条件でメーク側からブレーク側への移動時間を測定した結果である。図16(a)と同様に、第1回目の測定(測定1)のフィールドにおける4つのA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は37.87msである。同様に第2回目の測定(測定2)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は38.35msで、第3回目の測定(測定3)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は37.28msで、第4回目の測定(測定4)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は38.24msである。そして4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値は37.93msである。
図16(c)は、図21等に示したような従来技術に係る片振り子型電磁リレーのアーマチュア75の主面に厚さ0.36mmの突起77がある場合において、弾性衝突等に由来する接点チャッタリングを含む条件でメーク側からブレーク側への移動時間を測定した結果である。図16(a)及び図16(b)と同様に、第1回目の測定(測定1)のフィールドにおける4つのA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は36.01msである。同様に第2回目の測定(測定2)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は36.85msで、第3回目の測定(測定3)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は35.94msで、第4回目の測定(測定4)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は36.97msである。そして4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値は36.44msである。
図16(a),図16(b),図16(c)を比較すると、A接点のそれぞれから対応するB接点までの、接点チャッタリングを含む条件での可動接点支持片の移動時間に関しては、図16(a)に示した第1の実施形態に係る厚さ0.36mmの突起27pを有する両振り子型電磁リレーが、平均値の比較として、図16(c)に示した従来技術に係る片振り子型電磁リレーよりも若干動作速度が速くなっていることが分かる。しかし、図16(b)に示したように、厚さ0.36mmの突起27pに変えて、突起代用溝27a,27bを設けた構造の第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーは、厚さ0.36mmの突起77を有する従来技術に係る片振り子型電磁リレーよりも若干遅い傾向である。
図15と図16とを総合して検討すると、B接点からA接点までとA接点からB接点までの往復運動における、接点チャッタリングを含む可動接点支持片の移動時間に関しては、第1の実施形態に係る厚さ0.36mmの突起27pを有する両振り子型電磁リレーの動作速度と従来技術に係る片振り子型電磁リレーよりも動作速度とは同程度と判断できる。
図17(a)は第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーの測定結果に関し、アーマチュア15に突起27pがない構造において、ブレーク側からメーク側への移動時間について接点チャッタリングを含まない条件で測定した結果である。図13及び図15と同様に、図17(a)の表から読める第1回目の測定(測定1)のフィールドにおける4つのB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は19.13msで、第2回目の測定(測定2)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は19.09msで、第3回目の測定(測定3)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は19.09msで、第4回目の測定(測定4)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は19.12msである。そして4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値は19.11msである。
図17(b)は図21等に示したような従来技術に係る片振り子型電磁リレーの測定結果に関し、アーマチュア75の主面に突起77がない構造において、接点チャッタリングを含まない条件でブレーク側からメーク側への移動時間を測定した結果である。図17(a)と同様に、図17(b)の表から読める第1回目の測定(測定1)のフィールドにおける4つのB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は18.97msで、第2回目の測定(測定2)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は18.94msで、第3回目の測定(測定3)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は18.93msで、第4回目の測定(測定4)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は18.92msである。そして4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値は18.94msである。
図17(a)と図17(b)に示した突起がない構造での比較に関しては、以下のように判断できる。すなわち、B接点のそれぞれから対応するA接点までの、接点チャッタリングを含まない場合の可動接点支持片のブレーク側からメーク側への移動時間に関しては、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーと図21等に示したような従来技術に係る片振り子型電磁リレーとはほぼ同程度の動作速度と認めうる。ただし、厳密には、図17(a)に示した第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーの方が、図17(b)に示した従来技術に係る片振り子型電磁リレーよりも若干遅い傾向である。
図18(a)は第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーの測定結果に関し、アーマチュア15に突起27pがない構造において、メーク側からブレーク側への移動時間について接点チャッタリングを含まない条件で測定した結果である。図14及び図16と同様に、第1回目の測定(測定1)のフィールドにおける4つのA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は35.83msである。同様に第2回目の測定(測定2)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は36.45msで、第3回目の測定(測定3)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は36.72msで、第4回目の測定(測定4)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は36.88msである。そして4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値は36.47msである。
図18(b)は図21等に示したような従来技術に係る片振り子型電磁リレーの測定結果に関し、アーマチュア75の主面に突起77がない構造において、接点チャッタリングを含まない条件でメーク側からブレーク側への移動時間を測定した結果である。図18(a)と同様に、第1回目の測定(測定1)のフィールドにおける4つのA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は43.19msである。同様に第2回目の測定(測定2)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は43.19msで、第3回目の測定(測定3)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は43.18msで、第4回目の測定(測定4)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は43.20msである。そして4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値は43.19msである。
図18(a)と図18(b)に示した突起がない構造での比較に関しては、以下のように判断できる。すなわち、A接点のそれぞれから対応するB接点までの、接点チャッタリングを含まない条件での可動接点支持片のメーク側からブレーク側への移動時間に関しては、図18(a)に示した第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーが、平均値の比較として、図18(b)に示した従来技術に係る片振り子型電磁リレーよりも動作速度が明確に速くなっている。4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値では、約7ms速くなっている。A接点からB接点までの移動時間が約7ms速くなった理由は、図8(a)に示すように、メーク側可動接点33aがメーク側固定接点32aに接触した状態で、可動接点支持片34の長手方向の中心線の方向が中間状態からΔθ=θ1だけメーク側固定接点32a側に傾いているため、メーク側可動接点33aをメーク側固定接点32aから引き離すのが容易になったためであり、この引き離しの効果は突起がない構造でより顕著になっている。
特に図17と図18とを総合すると、突起を有さない構造においては、B接点からA接点までとA接点からB接点までの往復運動における、接点チャッタリングを含まない可動接点支持片の移動時間に関しては、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーが、従来技術に係る片振り子型電磁リレーよりも動作速度が速くなっていることが分かる。4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値で比較すると、往復移動では約7ms速くなっている。
図19(a)は第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーの測定結果に関し、アーマチュア15に突起27pがない構造において、ブレーク側からメーク側への移動時間について接点チャッタリングを含む条件で測定した結果である。図13,図15及び図17と同様に、図19(a)の表から読める第1回目の測定(測定1)のフィールドにおける4つのB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は20.80msで、第2回目の測定(測定2)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は21.67msで、第3回目の測定(測定3)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は21.50msで、第4回目の測定(測定4)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は21.72msである。そして4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値は21.42msである。
図19(b)は、図21等に示したような従来技術に係る片振り子型電磁リレーの測定結果に関し、アーマチュア75の主面に突起77がない構造において、弾性衝突等に由来する接点チャッタリングを含む条件でブレーク側からメーク側への移動時間を測定した結果である。図19(a)と同様に、図19(b)の表から読める第1回目の測定(測定1)のフィールドにおける4つのB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は20.81msで、第2回目の測定(測定2)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は20.80msで、第3回目の測定(測定3)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は20.70msで、第4回目の測定(測定4)のフィールドにおけるB接点のそれぞれから対応するA接点までの4つの移動時間測定データの平均値は20.84msである。そして4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値は20.79msである。
図19(a)と図19(b)との突起27pがない構造における接点チャッタリングを含む条件での比較においては、B接点のそれぞれから対応するA接点までの、接点チャッタリングを含まない場合の可動接点支持片のブレーク側からメーク側への移動時間に関しては、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーと図21等に示したような従来技術に係る片振り子型電磁リレーとはほぼ同程度の動作速度と認めうる。ただし、厳密には、図19(a)に示した第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーの方が、図19(b)に示した従来技術に係る片振り子型電磁リレーよりも若干遅い傾向である。
図20(a)は第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーの測定結果に関し、アーマチュア15に突起27pがない構造において、メーク側からブレーク側への移動時間について接点チャッタリングを含む条件で測定した結果である。図14,図16及び図18と同様に、第1回目の測定(測定1)のフィールドにおける4つのA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は46.35msである。同様に第2回目の測定(測定2)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は45.52msで、第3回目の測定(測定3)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は44.35msで、第4回目の測定(測定4)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は45.96msである。そして4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値は45.54msである。
図20(b)は、図21等に示したような従来技術に係る片振り子型電磁リレーの測定結果に関し、アーマチュア75の主面に突起77がない構造において、弾性衝突等に由来する接点チャッタリングを含む条件でメーク側からブレーク側への移動時間を測定した結果である。図20(a)と同様に、第1回目の測定(測定1)のフィールドにおける4つのA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は54.57msである。同様に第2回目の測定(測定2)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は54.09msで、第3回目の測定(測定3)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は53.99msで、第4回目の測定(測定4)のフィールドにおけるA接点のそれぞれから対応するB接点までの4つの移動時間測定データの平均値は53.54msである。そして4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値は54.05msである。
図20(a)と図20(b)に示した突起がない構造での比較に関しては、以下のように判断できる。すなわち、A接点のそれぞれから対応するB接点までの、接点チャッタリングを含む条件での可動接点支持片のメーク側からブレーク側への移動時間に関しては、図20(a)に示した第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーが、平均値の比較として、図20(b)に示した従来技術に係る片振り子型電磁リレーよりも動作速度が明確に速くなっている。4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値では、約8ms速くなっている。A接点からB接点までの移動時間が約8ms速くなった理由は、図8(a)に示すように、メーク側可動接点33aがメーク側固定接点32aに接触した状態で、可動接点支持片34の長手方向の中心線の方向が中間状態からΔθ=θ1だけメーク側固定接点32a側に傾いているため、メーク側可動接点33aをメーク側固定接点32aから引き離すのが容易になったためであり、この引き離しの効果は突起がない構造でより顕著になっている。更に、Δθ=θ1だけメーク側固定接点32a側に傾いていることによる効果は、接点チャッタリングを含む条件での測定で更に顕著になっている。
図19と図20とを総合して突起がない構造を検討すると、B接点からA接点までとA接点からB接点までの往復運動における、接点チャッタリングを含む可動接点支持片の移動時間に関しては、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーの動作速度は従来技術に係る片振り子型電磁リレーよりも速いと判断できる。4回の測定を総合した合計16個の移動時間測定データの平均値で比較すると、往復移動では約8ms速くなっている。
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る両振り子型電磁リレーは、図23及び図24に示すように、可動接点支持片34の上端に設けられた接続端子38とブレーク側可動接点33bとの間の可動接点支持片34に両端が接続された導電部材40を備える。導電部材40は、ばね性を有することが望ましい。導電部材40には、銅、銅合金、アルミニウムなどの導電線、あるいはリン青銅などの金属板が用いられる。第2の実施形態では、導電部材40が可動接点支持片34に設置される点が第1の実施形態と異なる。他の構成は、第1の実施形態と同様であるので、重複する記載は省略する。
単安定リレーでは、コイル14による励磁がない場合、ブレーク側可動接点33bは復帰バネ16の力でブレーク側固定接点32bに接触している(B接点)。図25に示すように、励磁スイッチSW1をオンにすると、操作電磁石(11,12、13、14)に強力な電磁力が発生し、アーマチュア15は操作電磁石(11,12、13、14)に吸い込まれ、メーク側可動接点33aがメーク側固定接点32aに接触し(A接点)、接点チャッタリングを発生しながら電流回路を構成する。このとき、メーク側固定接点32aと負荷抵抗Raの間で波形(波形A)を測定して、B接点からA接点までの移動時間、及びA接点のチャッタリング時間が得られる。
次に、図26に示すように、励磁スイッチSW1をオフにすると、操作電磁石(11,12、13、14)は電磁力を失くし、アーマチュア15は復帰バネ16の力でブレーク側可動接点33bがブレーク側固定接点32bに接触し、チャタリングを発生しながら電流回路を構成する。このとき、ブレーク側固定接点32bと負荷抵抗Rbの間で波形(波形B)を測定して、A接点からB接点までの移動時間、及びB接点のチャッタリング時間が得られる。
図27に、波形A及び波形Bを測定して得られた移動時間及びチャッタリング時間を示す。試料1は、図24に示した第2の実施形態に係る両振り子型電磁リレーであり、導電部材40として、バネ性を有する導電線を用いている。試料2は、第1の実施形態に係る両振り子型電磁リレーであり、試料1の導電部材40を除去した構造を有する。試料3は、従来技術に係る片振り子型電磁リレーである。図27において、波形A及び波形Bの移動時間はそれぞれ、4つの接点においてそれぞれ5回の測定を行い、合計20個の測定データの平均値を示している。チャッタリング時間は、チャッタリング込みの移動時間の平均値とチャッタリングなしの移動時間の平均値との差から求めている。
図27に示すように、試料1において、チャッタリングなしの移動時間を比べると、B接点がA接点より若干大きいが、その差は小さい。チャッタリング込みの移動時間では、A接点とB接点との差が大きくなっている。即ち、チャッタリング時間が、A接点では0.9msであるのに対して、B接点では3.0msに増加している。
試料2においては、チャッタリングなしの移動時間を比べると、B接点がA接点より大きくなり、その差も試料1に比べて増加している。チャッタリング込みの移動時間では、A接点とB接点との差が大きくなり、チャッタリング時間が、A接点では2.8msであるのに対して、B接点では10.6msに増加している。
試料3においては、チャッタリングなしの移動時間を比べると、B接点がA接点より極めて大きい。チャッタリング込みの移動時間でも、A接点とB接点との差は極めて大きく、チャッタリング時間が、A接点では2.6msであるのに対して、B接点では15.0msに増加している。
第1の実施形態でも説明したように、電磁リレーの特徴として可動接点が固定接点と接触する際、接点チャッタリングが発生する。接点間に電流が流れる状態ではスパークの発生の原因となり、チャッタリング時間が長いと接点消耗が大きくなり、電磁リレーの寿命を縮めることに繋がる。上記のように、A接点に比べてB接点のチャッタリング時間が大きいのは、A接点が操作電磁石(11、12、13、14)の強力な電磁力による接触であるのに対し、B接点は復帰バネ16の、電磁力より弱い戻りの力による接触であるためである。したがって、B接点の接点チャッタリングを減少させることが望ましい。
第2の実施形態では、図23及び図24に示したように、可動接点支持片34にばね性を有する導電部材40を並列に取り付けている。可動接点支持片34がA接点からB接点に移動したとき、ばね性を有する導電部材40がチャッタリング振動を吸収する。そのため、B接点でのチャッタリング時間を短くすることが可能となる。
図28には、第2の実施形態に係る構造の試料1の波形Bを示す。また、図29及び図30にはそれぞれ、第1の実施形態に係る構造の試料2及び従来の構造の試料3の波形Bを示す。図28〜図30に示すように、試料1〜試料3のチャッタリング時間は、それぞれ3.0ms、10.6ms、及び15.0msである。このように、導電部材40を有する試料1において、チャッタリング時間の大きな減少を実現することができた。また、図27の表から明らかなように、試料1のB接点のチャッタリング時間は、試料2及び試料3のA接点のチャッタリング時間と同程度である。さらに、試料1のA接点のチャッタリング時間は0.9msと大幅に減少している。このように、第2の実施形態では、チャッタリング時間を減少させることができるため、接点間のスパーク発生の原因となる期間が短く、接点消耗を抑制して電磁リレーの寿命を大きく改善することが可能となる。
また、電磁リレーの接触抵抗には、支持片、接点、接点端子などの回路を構成する導体の抵抗も含まれる。特に、細長いストリップ状の可動接点支持片はリード線39に用いられる導電線に比べて高抵抗であり、大電流化が困難となる。第2の実施形態に係る電磁リレーでは、導電部材40が可動接点支持片34と並列に接続されているので、接触抵抗を低減させることができる。即ち、導電部材40には可動接点支持片34とは別に電流を流すことができるので、接点チャッタリングを減少させるだけでなく電磁リレーの電流増にも繋がる。
例えば、可動接点支持片34には、長さが約43mm、幅が約7mm、厚さが約0.35mmの細長いストリップ状のリン青銅板が用いられる。このリン青銅板の抵抗値は約1.5mΩである。導電部材40として、リード線39と同じ材料の電線を用いる。長さをリン青銅板と同じ約43mmとすると、この電線の抵抗値は約0.4mΩである。したがって、リン青銅板と電線の並列接続の合成抵抗値は約0.3mΩとなる。第2の実施形態では、可動接点支持片34が接触抵抗に寄与する抵抗値を約1/5に低減することができ、電磁リレーの大電流化が可能となる。
なお、導電部材40として、導電線を用いて説明したが、他の導体を用いてもよい。例えば、導体として、可動接点支持片34に用いるリン青銅板であってもよい。導電部材40に可動接点支持片34と同寸法のリン青銅板を用いた場合、合成抵抗値は、可動接点支持片34単独の抵抗値の約1/2の約0.7mΩとすることができる。また、図23及び図24に示したように、導電部材40は、可動接点支持片34の上端からブレーク側可動接点33bの近傍に延在しているが、可動接点支持片34の中間部に設けてもよい。
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1及び第2の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。例えば、図31及び図32に示すように、ヨーク12vの端部の中央近傍の2箇所に設けられた突出部にテーパ面を設けてもよい。テーパ面はアーマチュア15から離れる方向の下向きテーパである。図31に示すように、メーク側可動接点33aがメーク側固定接点32aに接触した状態においては、ヨーク12vの端部の下側のエッジとアーマチュア15の主面との距離が大きくなるのでアーク放電等によるヨーク12vの端部の損傷が有効に防止できる。図32に示した2箇所の内、右側の突出部が、図31ではヨークの右端のテーパ形状の端部として図示されている。
図32の2箇所の突出部に対応して、アーマチュア15の主面(腹面)には2つのV字型の切欠き凹部55a,55bが設けられるのは図4等に示した構造と同様である。アーマチュア15は図32に示したヨーク12vの端部の両側に設けられた抱え込みフックによって背面(他の主面)を支えられ、ヨーク12vの端部から突出するテーパ状の凸部の上側のエッジを支点とするように、アーマチュア15の腹面(主面)を接して支持されている。ヨーク12vの端部の突出部にテーパ面を設けることにより、アーマチュア15の揺動運動の信頼性が向上し、揺動運動の支点となるヨーク12vのエッジの損傷が防止できるので、その他の実施形態に係る両振り子型電磁リレーの動作寿命が向上する。
或いは図33に示したように、アーマチュア15の主面(腹面)に設けられる2つのV字型の切欠き凹部55a,55bの中央に、バランス用凹部55cを設けてもよい。バランス用凹部55cを設けることにより、図4に示したような2つのV字型の切欠き凹部55a,55bのみが設けられた構造に比し、アーマチュア15の主面の反りを防止し、機械的精度を向上させることができる。
図5に示した構造も、図34に示したように、アーマチュア15の主面(腹面)に設けられる2つのV字型の切欠き凹部55a,55bの中央に、バランス用凹部55cを設けるような変形をしてもよい。バランス用凹部55cを設けることにより、アーマチュア15の主面の反りを防止し、機械的精度を向上させることができる。更に、図13〜図16に示した測定結果を考慮すると、V字型若しくはU字型の細長い第1吸着防止溝27a及び第2吸着防止溝27bの2本の溝に加えて、図34に示したように突起27pを設けることにより、より効率的に、アーマチュア15の鉄心11への過剰な吸着を防止できる。
図3や図32では、ヨーク12,12vの端部の両側に設けられた抱え込みフックによってアーマチュア15の背面が支えられて揺動運動する構造を例示したが、ヨークの端部の凹凸形状等は図3や図32等に例示した構造に限定されるものではない。例えば、図3や図32に例示したヨーク12,12vの端部のフック形状をストレートな直方体状の凸部とし、アーマチュア15の両側にフックとなるL字型形状を設けてもよい。アーマチュア15に設けたL字型形状のフックにより、ヨークの端部の直方体状の凸部にアーマチュア15がぶら下がる構造も可能である。
すなわち、アーマチュア15にL字型形状のフックを設けても、ヨークの端部の中央側から突出する凸部の上側のエッジを支点とするように、アーマチュア15の腹面(主面)を接して、揺動運動することが可能である。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。