JPWO2018043476A1 - 筋萎縮性側索硬化症治療剤及び治療用組成物 - Google Patents

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Abstract

下記式(1)[式(1)中、R1はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基又は4−ヒドロキシフェネチル基を表し、nは1〜3の整数を表す。]で表される化合物、その薬学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、筋萎縮性側索硬化症治療剤。[化1]

Description

本発明は、筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis、ALS)治療剤及びALS治療用組成物に関する。本願は、2016年9月2日に、日本に出願された特願2016−172255号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
ALSは、重篤な筋肉の萎縮と筋力低下をきたす神経変性疾患であり、運動ニューロン病の一種である。ALSでは、運動ニューロン特異的に病変がみられ、発症後の平均生存期間が数年という極めて急速な病態進行を示す。ALSには有効な治療法が存在せず、一刻も早い治療剤の開発が望まれている。ALSは、その大半が孤発性であるが、患者の1割が家族性であり、明確な遺伝要因を有している。
wobblerマウスという突然変異マウスは、成長するとともに前肢や顔面の筋萎縮を示し、やがて後肢の筋萎縮を示すことから、ALSモデルとして使用されてきた(例えば、非特許文献1を参照。)。しかしながら、ALS患者にはwobbler変異は見られないことが知られている。
また、家族性ALSの主たる原因遺伝子のひとつとしてSOD1が知られており、変異SOD1を導入したトランスジェニックマウス(非特許文献2)が創薬研究に使用されているが、臨床において明確な治療効果を示す薬剤はまだ開発されていない。むしろSOD1−ALSモデルで選別された薬剤が実際のALS患者では有用性を示さないケースが大半であり、現在ではSOD1−ALSモデルと実臨床のかい離から、SOD1−ALSモデルがモデルとして機能していないのではないかと懸念されている。
このように、従来は良好なALSモデルが存在しなかった。このことが、ALSの治療剤の開発が進んでいない一因であるといえる。
ALSに限らず、有効な病態モデルが存在しない難病が存在する。これらの難病に対し、疾患iPS細胞研究は近年病態モデルをもたらすものとして大いに期待されている。
Moser J. M., et al., The wobbler mouse, an ALS animal model., Mol. Genet. Genomics., 288 (5-6), 207-229, 2013. Julien J. P., Kriz J., Transgenic mouse models of amyotrophic lateral sclerosis, Biochimica et Biophysica Acta, 1762 (11-12),1013-1024, 2006.
本発明は、ALS治療剤及びALS治療用組成物を提供することを目的とする。
疾患特異的iPS細胞は、特に神経系においては、患者の生体内で起きていた現象を生体外で再現する唯一の手段であるといっても過言ではない。疾患特異的iPS細胞を用いることにより、既存の培養細胞や病態モデルマウスよりも正確な病態モデルの作製が可能である。特に、中枢神経疾患においては中枢神経疾患特異的iPS細胞から分化させたニューロンを用いることにより、病態メカニズムを明らかにするだけでなく、該ニューロンがより正確な病態モデル・薬効評価モデルとなり、有効な治療薬候補を高精度に選別することが可能となる。
実施例において後述するように、本発明者らは、ALS患者由来のiPS細胞から運動ニューロンを分化誘導し、ALSの病態を反映した運動ニューロンに、後述するALS治療剤を投与することにより、該運動ニューロンのALSの病態が改善することを明らかにした。したがって、後述するALS治療剤によりALSを治療することができる。
また、ALS患者の大部分は孤発性であるところ、実施例において後述するように、発明者らは、後述するALS治療剤が、家族性ALSの病態を反映する運動ニューロンだけでなく孤発性ALSの病態を反映する運動ニューロンの双方の病態を改善することを明らかにした。したがって、後述するALS治療剤は、家族性ALS及び孤発性ALSの双方に対する治療効果を有する。
後述するALS治療剤は、患者由来のiPS細胞を用いた病態モデルを用いた解析から見出した表現型を評価項目とし、細胞死に近い後期ではなく、病態表現型が観察されるようになる転換期に表出する病態を指標としてスクリーニングして得られた化合物であることから、ALSの治療効果が高い。
本発明は以下の態様を含む。
[1]下記式(1)で表される化合物、その薬学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、ALS治療剤。
[式(1)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基又は4−ヒドロキシフェネチル基を表し、nは1〜3の整数を表す。]
[2]上記式(1)中、nが2である、[1]に記載のALS治療剤。
[3]上記式(1)中、Rがn−プロピル基である、[1]又は[2]に記載のALS治療剤。
[4]上記式(1)で表される化合物が4−(2−ジ−n−プロピルアミノエチル)−2(3H)−インドールである、[1]〜[3]のいずれかに記載のALS治療剤。
[5]上記式(1)で表される化合物の薬学的に許容される塩が4−(2−ジ−n−プロピルアミノエチル)−2(3H)−インドール塩酸塩である、[1]〜[4]のいずれかに記載のALS治療剤。
[6]家族性ALS及び孤発性ALSの双方に対する治療効果を有する、[1]〜[5]のいずれかに記載のALS治療剤。
[7][1]〜[5]のいずれかに記載のALS治療剤及び薬学的に許容される担体を含有する、ALS治療用組成物。
本発明によれば、ALS治療剤及びALS治療用組成物を提供することができる。
実験例I−2において、運動ニューロンの神経突起長の経時変化を測定した結果を示すグラフである。 実験例I−3において測定した、各運動ニューロンにおけるCVカスパーゼ3陽性ニューロンの割合を示すグラフである。 実験例I−4において測定した、各運動ニューロンにおけるLDH漏出率を示すグラフである。 実験例I−5において、FUSタンパク質の細胞質への局在が認められた運動ニューロンの割合を測定した結果を示すグラフである。 実験例I−6において、各運動ニューロン1個あたりのリン酸化TDP−43タンパク質の封入体の数を測定した結果を示すグラフである。 実験例I−7において測定した、各運動ニューロン1個あたりのストレス顆粒の数を示すグラフである。 実験例II−3において測定した、各運動ニューロンにおけるLDH漏出率の経時変化を示すグラフである。 実験例II−4において測定した、各運動ニューロンにおけるCVカスパーゼ3陽性ニューロンの割合の経時変化を示すグラフである。 実験例II−5において測定した、各運動ニューロン1個あたりのストレス顆粒の数の経時変化を示すグラフである。 実験例III−1において測定した、各運動ニューロンの神経突起長を示すグラフである。 実験例III−2において測定した、CVカスパーゼ3陽性ニューロンの割合を示すグラフである。 実験例III−3において測定した、各運動ニューロンのLDH漏出率を示すグラフである。 実験例III−4において測定した、各運動ニューロンのストレス顆粒の数を示すグラフである。 (a)は、実験例I−9において測定した、各運動ニューロンの神経突起長の経時変化を示すグラフである。(b)は、(a)のグラフの四角で囲んだ部分を拡大したグラフである。(c)は、実験例I−9において測定した、分化誘導開始から50日目及び62日目における各運動ニューロンの神経突起長を示すグラフである。 実験例III−5において測定した、各運動ニューロンにおけるCVカスパーゼ3陽性ニューロンの割合を示すグラフである。
[ALS治療剤]
1実施形態において、本発明は、下記式(1)で表される化合物、その薬学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、ALS治療剤を提供する。
[式(1)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基又は4−ヒドロキシフェネチル基を表し、nは1〜3の整数を表す。]
本実施形態のALS治療剤により治療することができる家族性ALSとしては、FUS遺伝子に変異を有するALS、TAR DNA−binding protein 43kDa(TDP−43)遺伝子に変異を有するALS等が挙げられる。また、実施例において後述するように、本実施形態のALS治療剤は、家族性ALS及び孤発性ALSの双方に対する治療効果を有する。
本実施形態のALS治療剤において、上記式(1)中、nは1であってもよく、2であってもよく、3であってもよい。
また、上記式(1)中、Rは、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基であってもよく、より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
本実施形態のALS治療剤において、上記式(1)で表される化合物は4−(2−ジ−n−プロピルアミノエチル)−2(3H)−インドールであってもよい。すなわち、上記式(1)で表される化合物はロピニロールであってもよい。ロピニロールの化学式を下記式(2)に示す。
ロピニロールは、ドーパミンニューロンへのドーパミンD2受容体アゴニスト活性を有することから、パーキンソン病治療薬として開発されたものである。このため、すでに治験が終了しており、生体に投与した場合の安全性が十分に確認されている。ロピニロールは薬効メカニズムが明らかな既存薬であることから、適応拡大により迅速にALS治療剤を開発することができる。
ALSは運動ニューロンの障害により生じる疾患である。D2受容体を有しない運動ニューロンの変性疾患にD2受容体アゴニストである化合物が治療効果を示すことは驚くべき結果であった。ロピニロールの薬効メカニズムの解析からALSの病態メカニズム及びALSの病態の全容解明への糸口が見出されることも期待できる。
本実施形態のALS治療剤は、上記式(1)で表わされる化合物の塩であってもよく、上記式(1)で表わされる化合物の溶媒和物であってもよく、上記式(1)で表わされる化合物の塩の溶媒和物であってもよい。
塩としては、薬学的に許容される塩であれば特に制限されず、例えば、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、メシル酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、亜鉛塩等の金属塩;アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等のアンモニウム塩;モルホリン、ピペリジン等の有機アミン付加塩;グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸付加塩等が挙げられる。
また、上記式(1)で表わされる化合物の溶媒和物、上記式(1)で表わされる化合物の塩の溶媒和物としては、薬学的に許容される溶媒和物であれば特に制限されず、例えば、水和物、有機溶媒和物等が挙げられる。
本実施形態のALS治療剤は、4−(2−ジ−n−プロピルアミノエチル)−2(3H)−インドール塩酸塩、すなわちロピニロール塩酸塩であってもよい。
[ALS治療用組成物]
1実施形態において、本発明は、上述したALS治療剤及び薬学的に許容される担体を含有する、ALS治療用組成物を提供する。
本実施形態のALS治療用組成物は、医薬組成物として製剤化されていてもよく、例えば、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤等の形態で経口的に、あるいは、注射剤、坐剤、皮膚外用剤等の形態で非経口的に投与することができる。皮膚外用剤としては、より具体的には、軟膏剤、貼付剤等の剤型が挙げられる。
薬学的に許容される担体としては、通常医薬組成物の製剤に用いられるものを特に制限なく用いることができる。より具体的には、例えば、ヒプロメロース、デキストリン、マクロゴール400、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴム等の結合剤;乳糖水和物、D−マンニトール、デンプン、結晶性セルロース、アルギン酸等の賦形剤;水、エタノール、グリセリン等の注射剤用溶剤;ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤等が挙げられる。
ALS治療用組成物は添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤;ショ糖、乳糖、サッカリン、マルチトール等の甘味剤;ペパーミント、アカモノ油等の香味剤;カルメロースナトリウム、硬化油、軽質無水ケイ酸、ポビドン、グリセリン脂肪酸エステル、ベンジルアルコール、フェノール等の安定剤;リン酸塩、酢酸ナトリウム等の緩衝剤;安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等の溶解補助剤;黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン等の着色剤等が挙げられる。
ALS治療用組成物は、上述したALS治療剤と、上述した薬学的に許容される担体及び添加剤を適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することができる。本実施形態のALS治療用組成物において、ALS治療剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
一般的には、ALS治療用組成物の適切な1日あたりの投与量は、治療効果を生む上で有効な最低投与量の有効成分(ALS治療剤)を含む量である。上記の有効な最低投与量は、ALS治療用組成物が含有する有効成分の活性、脂溶性・水溶性を規定する官能基修飾、投与経路、投与時間、使用される特定の有効成分の排出率、治療期間、併用される他の薬物、化合物及び/又は物質、年齢、性別、体重、病気、健康状態及び患者の既往症、及び医術において周知の他の要素を含む様々な要素に依存する。通常、患者に対するALS治療用組成物の投与量は、1日あたり約0.0001〜約100mg/kg体重の有効成分を含む量である。ALS治療用組成物は、1日1回又は2〜4回程度に分けて投与すればよい。
特に、ALS治療剤が式(2)で表される化合物である場合においては、ALS治療用組成物の投与量は、1日1回2mgの有効成分を経口投与し、1週間ごとに増量し、1日量16mgの有効成分を超えない範囲で経口投与する量であることが好ましい。
[その他の実施形態]
1実施形態において、本発明は、上記式(1)で表される化合物、その薬学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物の有効量を、治療を必要とする患者に投与する工程を含む、ALSの治療方法を提供する。本実施形態の治療方法において、上記式(1)で表される化合物、その薬学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物としては、上述したものと同様のものが挙げられる。
1実施形態において、本発明は、ALSの治療のための上記式(1)で表される化合物、その薬学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物を提供する。本実施形態の治療方法において、上記式(1)で表される化合物、その薬学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物としては、上述したものと同様のものが挙げられる。
1実施形態において、本発明は、ALS治療剤を製造するための上記式(1)で表される化合物、その薬学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物の使用を提供する。本実施形態の治療方法において、上記式(1)で表される化合物、その薬学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物としては、上述したものと同様のものが挙げられる。
次に実験例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
<I.家族性ALS患者由来のiPS細胞を用いた検討>
[実験例I−1]
(運動ニューロンへの分化)
家族性ALSには、FUS遺伝子の変異が原因であるものと、TDP−43遺伝子の変異が原因であるものが存在することが知られている。
そこで、健常者由来のiPS細胞、FUSに変異を有するALS患者由来のiPS細胞、及びTDP−43に変異を有するALS患者由来のiPS細胞を運動ニューロンに分化させた。使用したiPS細胞株は表1の通りであり、いずれも皮膚線維芽細胞に由来するものであった。
具体的には、まず、上記の各細胞株を、終濃度3μMのSB431542(CAS番号:301836−41−9)、終濃度3μMのCHIR99021(CAS番号:252917−06−9)、及び終濃度3μMのDorsomorphin(CAS番号:866405−64−3)を含有する培地で5日間培養し、分化促進型多能性幹細胞(DiSC)を誘導した。培地は毎日交換した。以下、分化誘導開始時とは、DiSC誘導の開始時を指すものとする。
続いて、得られたDiSCを細胞1個ずつに解離させ、低酸素インキュベーター中、表2に示す組成の培地で更に7日間培養した。酸素濃度は5%(v/v)に設定した。培地は2〜3日おきに交換した。
続いて、低酸素インキュベーター中、表3に示す組成の培地で更に4日間培養した。酸素濃度は5%(v/v)に設定した。培地は2〜3日おきに交換した。表3に示す組成の培地で培養4日目に、終濃度5μMとなるようにDAPT(CAS番号:208255−80−5)を培地に添加した。
表3に示す組成の培地で培養14日目に、再度細胞1個ずつに解離させ、表4に示す組成の神経分化誘導培地で更に5〜40日間培養した。これにより、運動ニューロンへの分化が誘導された。
分化誘導した運動ニューロンを用いて、Neurogenic differentiation 1 (NeuroD1)、SRY−Box 1(SOX1)、Oligodendrocyte Lineage Transcription Factor 2(OLIG2)、LIM Homeobox 3(LHX3)、ISLET1、HB9、Choline acetyltransferase(ChAT)の各遺伝子の発現レベルを検討した。陽性対照として脊髄組織を使用した。その結果、得られた運動ニューロンは、脊髄と近似した遺伝子発現パターンを示していることが確認された。この結果から、iPS細胞を運動ニューロンに分化誘導できたことが確認された。
また、分化誘導した運動ニューロンを免疫染色し、Glial Fibrillary Acidic Protein(GFAP)、βIII−チューブリン、HB9、ChATの発現を検討した。その結果、免疫染色の結果からも、iPS細胞を運動ニューロンに分化誘導できたことが確認された。
[実験例I−2]
(神経突起長の解析)
実験例I−1で分化誘導した各運動ニューロンについて、神経突起長の経時変化を測定した。神経突起長の経時測定にはバイオステーションCT(ニコン社)を使用した。図1は、神経突起長の経時変化の測定結果を示すグラフである。縦軸は神経突起長(相対値)を示し、横軸は分化誘導開始からの培養日数を示す。その結果、健常者由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンでは神経突起長が継続的に伸びたのに対し、ALS患者由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンでは、分化誘導開始から約40日目をピークとして神経突起長が短縮することが明らかとなった。この結果は、分化誘導した運動ニューロンがALSの病態を反映していることを示す。
[実験例I−3]
(切断型カスパーゼ3陽性率の解析)
実験例I−1で分化誘導した、分化誘導開始から40日目の各運動ニューロンを、切断型(Cleaved、CV)カスパーゼ3(以下、「CVカスパーゼ3」という場合がある。)に対する抗体を用いて免疫染色し、切断型(Cleaved、CV)カスパーゼ3(以下、「CVカスパーゼ3」という場合がある。)陽性ニューロンの割合を計測した。CVカスパーゼ3陽性ニューロンは、アポトーシスが誘導されたニューロンである。
図2は、各運動ニューロンにおけるCVカスパーゼ3陽性ニューロンの割合を示すグラフである。図中、「**」は、危険率1%未満で有意差が存在することを示す。その結果、健常者由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンと比較して、ALS患者由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンでは、CVカスパーゼ3陽性ニューロンの割合が有意に高いことが明らかとなった。この結果は、分化誘導した運動ニューロンがALSの病態を反映していることを更に支持するものである。
[実験例I−4]
(LDH漏出率の解析)
実験例I−1で分化誘導した、分化誘導開始から40日目の各運動ニューロンを用いて、細胞からの乳酸脱水素酵素(LDH)の漏出を測定した。培地へのLDHの漏出量は細胞傷害性の指標となる。LDH漏出率の測定には市販のキット(型式「LDH Cytotoxicity Detection Kit」、タカラバイオ社)を使用した。
図3は、各運動ニューロンにおけるLDH漏出率の測定結果(相対値)を示すグラフである。図中、「**」は、危険率1%未満で有意差が存在することを示す。その結果、健常者由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンと比較して、ALS患者由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンでは、LDH漏出率が有意に高いことが明らかとなった。この結果は、分化誘導した運動ニューロンがALSの病態を反映していることを更に支持するものである。
[実験例I−5]
(FUSタンパク質の局在の解析)
FUSタンパク質は、核内に局在するRNA結合タンパク質である。これに対し、FUSに変異を有するALS患者では、FUSタンパク質の細胞質内への異所性局在が認められることが知られている。
そこで、実験例I−1で分化誘導した、分化誘導開始から40日目の各運動ニューロンを免疫染色し、FUSタンパク質の細胞質への局在を検討した。
図4は、各運動ニューロンにおいて、FUSタンパク質の細胞質への局在が認められたニューロンの割合を測定した結果を示すグラフである。図中、「**」は、危険率1%未満で有意差が存在することを示す。
その結果、健常者由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンと比較して、FUSに変異を有するALS患者(FUS−ALS)由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンでは、FUSタンパク質の細胞質への局在が認められたニューロンの割合が有意に高いことが明らかとなった。
一方、TDP−43に変異を有するALS患者(TDP−43−ALS)由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンでは、FUSタンパク質の細胞質への局在の有意な上昇は認められなかった。
この結果は、分化誘導した運動ニューロンが、FUSに変異を有するALSの病態を反映していることを更に支持するものである。
[実験例I−6]
(リン酸化されたTDP−43タンパク質の封入体の形成)
TDP−43タンパク質は、核内に局在するRNA結合タンパク質である。TDP−43に変異を有するALS患者では、異常にリン酸化されたTDP−43タンパク質の封入体の出現が見られることが知られている。
そこで、実験例I−1で分化誘導した、分化誘導開始から40日目の各運動ニューロンを免疫染色し、リン酸化されたTDP−43タンパク質封入体の形成を検討した。
図5は、各運動ニューロンにおいて、ニューロン1個あたりのリン酸化TDP−43タンパク質(pTDP−43)の封入体の数を測定した結果を示すグラフである。図中、「**」は、危険率1%未満で有意差が存在することを示す。
その結果、健常者由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンと比較して、TDP−43に変異を有するALS患者(TDP−43−ALS)由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンでは、ニューロン1個あたりのリン酸化TDP−43タンパク質の封入体の数が有意に増加していることが明らかとなった。
一方、FUSに変異を有するALS患者(FUS−ALS)由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンでは、リン酸化TDP−43タンパク質の封入体の数の有意な増加は認められなかった。
この結果は、分化誘導した運動ニューロンが、TDP−43に変異を有するALSの病態を反映していることを更に支持するものである。
[実験例I−7]
(ストレス顆粒の解析)
実験例I−1で分化誘導した、分化誘導開始から40日目の各運動ニューロンを用いて、ストレス顆粒の形成を検討した。ストレス顆粒の検出は、ストレス顆粒のマーカーであるG3BPの免疫染色により行った。
図6は、各運動ニューロンにおける、ニューロン1個あたりのストレス顆粒の数の測定結果を示すグラフである。図中、「**」は、危険率1%未満で有意差が存在することを示す。その結果、健常者由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンと比較して、ALS患者由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンでは、ニューロン1個あたりのストレス顆粒の数が有意に増加していることが明らかとなった。この結果は、分化誘導した運動ニューロンがALSの病態を反映していることを更に支持するものである。
[実験例I−8]
(ALS治療剤のスクリーニング)
実験例I−1で分化誘導した運動ニューロンを用いて、神経突起長、FUSタンパク質の異所性局在、ストレス顆粒の形成、LDH漏出率、CV−カスパーゼ3陽性率、リン酸化されたTDP−43タンパク質の封入体の形成等を指標として、ALSの表現型を回復させる薬物を、既存薬ライブラリーからスクリーニングした。
スクリーニングの結果、有望なALS治療剤として、ロピニロールが見出された。表5及び6に、ロピニロールの培地への添加による、ALSの表現型の改善率(%)示す。ここで、ロピニロールは、各iPS細胞の分化誘導開始から35〜40日目に培地に添加した。なお、分化誘導開始から35〜40日目はALSの病態初期の段階に相当すると想定される。
ALSの表現型の改善率(%)は次の計算式(1)によって算出した。
改善率(%)=(A−B)/(A−C)×100 …(1)
[式(1)中、Aはロピニロール非存在下における、ALS患者由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンの測定値を表し、Bはロピニロール存在下における、ALS患者由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンの測定値を表し、Cはロピニロール非存在下における、健常者由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンの測定値を表す。]
表5に、FUSに変異を有するALS患者(FUS−ALS)由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンの培地に終濃度0.1、1、10μMのロピニロールを添加した結果を示し、表6に、TDP−43に変異を有するALS患者(TDP−43−ALS)由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンの培地に終濃度0.1、1、10μMのロピニロールを添加した結果を示す。
表5及び6に示すように、ロピニロールは、FUSに変異を有するALS及びTDP−43に変異を有するALSの双方に対する顕著な改善効果を示すことが明らかとなった。
続いて、上記と同様にして、より低濃度のロピニロールを投与した場合の薬効を評価した。表7に、FUSに変異を有するALS患者(FUS−ALS)由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンの培地に終濃度0.1、1、10nMのロピニロールを添加した結果を示し、表8に、TDP−43に変異を有するALS患者(TDP−43−ALS)由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンの培地に終濃度0.1、1、10nMのロピニロールを添加した結果を示す。
表7及び8に示すように、ロピニロールは、終濃度0.1〜10nMにおいてもFUSに変異を有するALS及びTDP−43に変異を有するALSの双方に対する改善効果を示し、特に1〜10nMにおいてはいずれの項目においても顕著な改善効果を示すことが明らかとなった。
また、下記表9及び10に、ロピニロールの代わりに既存のALS治療薬であるリルゾール及びエダラボン、以前にALSの臨床試験に用いられた薬剤であるセフトリアキソンを添加した以外は上記と同様の検討を行った結果を示す。各薬剤はそれぞれ終濃度10μMで培地に添加した。
表9は、FUSに変異を有するALS患者(FUS−ALS)由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンの培地に各薬剤を添加した結果である。また、表10は、TDP−43に変異を有するALS患者(TDP−43−ALS)由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンの培地に各薬剤を添加した結果である。
その結果、ロピニロールは、リルゾール、エダラボン及びセフトリアキソンと比較して、FUSに変異を有するALS及びTDP−43に変異を有するALSの双方に対するより顕著な改善効果を示すことが明らかとなった。
[実験例I−9]
(ALSの病態後期におけるロピニロールの薬効評価)
ロピニロールの添加時期を各iPS細胞の分化誘導開始から50〜62日目に変更した点以外は実験例I−8と同様にして、ロピニロールの薬効を評価した。分化誘導開始から50〜62日目はALSの病態後期の段階に相当すると想定される。
具体的には、FUSに変異を有するALS患者(FUS−ALS)由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロン、及びTDP−43に変異を有するALS患者(TDP−43−ALS)由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンの培地にロピニロールを添加し、神経突起長の経時変化を測定した。神経突起長の測定は実験例I−2と同様にして行った。ロピニロールは終濃度1μMで培地に添加した。
図14(a)は、各運動ニューロンの神経突起長の経時変化を測定した結果を示すグラフである。図14(a)中、縦軸は神経突起長(相対値)を示し、横軸は分化誘導開始からの培養日数を示し、「+ROPI」はロピニロールを培地に添加した結果であることを示す。また、図14(b)は、図14(a)のグラフの四角で囲んだ部分を拡大したグラフである。また、図14(c)は、分化誘導開始から50日目及び62日目における各運動ニューロンの神経突起長を示すグラフである。図14(c)中、「**」及び「††」は危険率1%未満で有意差が存在することを示し、「+ROPI」はロピニロールを培地に添加した結果であることを示す。
その結果、分化誘導開始から50〜62日目においても、ロピニロールを添加することにより、神経保護作用(神経突起長の維持)が認められた。この結果は、ALSの病態後期の段階においてもロピニロールがALSの病態の改善効果を有することを示す。
<II.孤発性ALS患者由来のiPS細胞を用いた検討>
[実験例II−1]
(運動ニューロンへの分化)
実験例I−1と同様にして、孤発性ALS(Sporadic−ALS、以下「SALS」という場合がある。)患者由来のiPS細胞を運動ニューロンに分化させた。使用したiPS細胞は、いずれも皮膚線維芽細胞に由来するものであった。使用したiPS細胞が由来する患者の臨床情報を表11に示す。以下、分化させた各運動ニューロンをそれが由来する患者番号で識別する。
[実験例II−2]
(神経突起長の解析)
実験例II−1で分化誘導した各運動ニューロンについて、実験例I−2と同様にして神経突起長の経時変化を解析した。その結果、分化誘導開始から40〜45日において、それまで伸長を続けていた神経突起長が短縮することが明らかとなった。この結果は、分化誘導した運動ニューロンがALSの病態を反映していることを示す。
[実験例II−3]
(LDH漏出率の解析)
実験例II−1で分化誘導した各運動ニューロンを用いて、細胞からのLDHの漏出率を経時的に測定した。LDH漏出率の測定は実験例I−4と同様にして行った。
図7は、各運動ニューロンにおけるLDH漏出率(相対値)の経時変化を示すグラフである。横軸は分化誘導開始からの日数を示す。その結果、孤発性ALS患者由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンでは、LDH漏出率が経時的に上昇することが明らかとなった。この結果は、分化誘導した運動ニューロンがALSの病態を反映していることを更に支持するものである。
[実験例II−4]
(CVカスパーゼ3陽性率の解析)
実験例II−1で分化誘導した各運動ニューロンを用いて、実験例I−3と同様にして、CVカスパーゼ3陽性ニューロンの割合を経時的に測定した。
図8は、各運動ニューロンにおけるCVカスパーゼ3陽性ニューロンの割合の経時変化を示すグラフである。横軸は分化誘導開始からの日数を示す。その結果、孤発性ALS患者由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンでは、CVカスパーゼ3陽性ニューロンの割合が経時的に上昇することが明らかとなった。この結果は、分化誘導した運動ニューロンがALSの病態を反映していることを更に支持するものである。
[実験例II−5]
(ストレス顆粒の解析)
実験例II−1で分化誘導した各運動ニューロンを用いて、実験例I−7と同様にして、ストレス顆粒の形成を経時的に測定した。
図9は、各運動ニューロンにおける、ニューロン1個あたりのストレス顆粒の数の経時変化を示すグラフである。横軸は分化誘導開始からの日数を示す。その結果、孤発性ALS患者由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンでは、ストレス顆粒の数が経時的に増加することが明らかとなった。この結果は、分化誘導した運動ニューロンがALSの病態を反映していることを更に支持するものである。
<III.孤発性ALSモデルを用いたロピニロールの薬効評価>
[実験例III−1]
(神経突起長の解析)
実験例II−1と同様にして、孤発性ALS(SALS)患者由来のiPS細胞を運動ニューロンに分化させた後、培地に終濃度1μMのロピニロールを添加した。より詳細には、分化誘導開始から35〜40日目の期間、培地に終濃度1μMのロピニロールを添加した。また、対照として、ロピニロールを培地に添加しなかった群を用意した。また、比較のために、健常人由来のiPS細胞を、実験例I−1と同様にして運動ニューロンに分化させた。この運動ニューロンの培地にはロピニロールを添加しなかった。健常人由来のiPS細胞としては、実験例I−1で用いたものと同様のものを用いた。
続いて、分化誘導開始から40日目の各運動ニューロンについて、実験例I−2と同様にして神経突起長を測定した。
図10は、各運動ニューロンの神経突起長の測定結果を示すグラフである。図中、「**」及び「††」は、危険率1%未満で有意差が存在することを示す。その結果、ロピニロールの存在下では、SALS患者由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンにおける神経突起長減少が、有意に抑制されることが明らかとなった。
この結果は、ロピニロールが、家族性ALSだけでなく、孤発性ALSの治療にも有効であることを示す。
[実験例III−2]
(CVカスパーゼ3陽性率の解析)
実験例II−1と同様にして、孤発性ALS(SALS)患者由来のiPS細胞を運動ニューロンに分化させた後、培地に終濃度1μMのロピニロールを添加した。より詳細には、分化誘導開始から35〜40日目の期間、培地に終濃度1μMのロピニロールを添加した。また、対照として、ロピニロールを培地に添加しなかった群を用意した。また、比較のために、健常人由来のiPS細胞を、実験例I−1と同様にして運動ニューロンに分化させた。この運動ニューロンの培地にはロピニロールを添加しなかった。健常人由来のiPS細胞としては、実験例I−1で用いたものと同様のものを用いた。
続いて、分化誘導開始から40日目の各運動ニューロンについて、実験例I−3と同様にして、CVカスパーゼ3陽性ニューロンの割合を測定した。
図11は、CVカスパーゼ3陽性ニューロンの割合の測定結果を示すグラフである。図中、「**」及び「††」は、危険率1%未満で有意差が存在することを示す。その結果、ロピニロールの存在下では、SALS患者由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンにおけるCVカスパーゼ3陽性ニューロンの割合が有意に低下することが明らかとなった。
この結果は、ロピニロールが、家族性ALSだけでなく、孤発性ALSの治療にも有効であることを更に支持するものである。
[実験例III−3]
(LDH漏出率の解析)
実験例II−1と同様にして、孤発性ALS(SALS)患者由来のiPS細胞を運動ニューロンに分化させた後、培地に終濃度1μMのロピニロールを添加した。より詳細には、分化誘導開始から35〜40日目の期間、培地に終濃度1μMのロピニロールを添加した。また、対照として、ロピニロールを培地に添加しなかった群を用意した。また、比較のために、健常人由来のiPS細胞を、実験例I−1と同様にして運動ニューロンに分化させた。この運動ニューロンの培地にはロピニロールを添加しなかった。健常人由来のiPS細胞としては、実験例I−1で用いたものと同様のものを用いた。
続いて、分化誘導開始から40日目の各運動ニューロンについて、実験例I−4と同様にして、LDH漏出率を測定した。
図12は、LDH漏出率の測定結果を示すグラフである。図中、「**」及び「††」は、危険率1%未満で有意差が存在することを示す。その結果、ロピニロールの存在下では、SALS患者由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンにおけるLDH漏出率が有意に低下することが明らかとなった。
この結果は、ロピニロールが、家族性ALSだけでなく、孤発性ALSの治療にも有効であることを更に支持するものである。
[実験例III−4]
(ストレス顆粒の解析)
実験例II−1と同様にして、孤発性ALS(SALS)患者由来のiPS細胞を運動ニューロンに分化させた後、培地に終濃度1μMのロピニロールを添加した。より詳細には、分化誘導開始から35〜40日目の期間、培地に終濃度1μMのロピニロールを添加した。また、対照として、ロピニロールを培地に添加しなかった群を用意した。また、比較のために、健常人由来のiPS細胞を、実験例I−1と同様にして運動ニューロンに分化させた。この運動ニューロンの培地にはロピニロールを添加しなかった。健常人由来のiPS細胞としては、実験例I−1で用いたものと同様のものを用いた。
続いて、分化誘導開始から40日目の各運動ニューロンについて、実験例I−7と同様にして、ストレス顆粒の数を測定した。
図13は、ストレス顆粒の数の測定結果を示すグラフである。図中、「**」及び「††」は、危険率1%未満で有意差が存在することを示す。その結果、ロピニロールの存在下では、SALS患者由来のiPS細胞から分化誘導した運動ニューロンにおけるストレス顆粒の数が有意に低下することが明らかとなった。
この結果は、ロピニロールが、家族性ALSだけでなく、孤発性ALSの治療にも有効であることを更に支持するものである。
[実験例III−5]
(孤発性ALSモデルを用いたロピニロールの薬効評価)
実験例II−1と同様にして、24症例の孤発性ALS(SALS)患者由来のiPS細胞を運動ニューロンに分化させた後、培地に終濃度1μMのロピニロールを添加した。また、比較のために、ロピニロールを培地に添加しなかった群を用意した。また、対照として、健常人由来のiPS細胞を、実験例I−1と同様にして運動ニューロンに分化させたものを使用した。この運動ニューロンの培地にはロピニロールを添加しなかった。健常人由来のiPS細胞としては、実験例I−1で用いたものと同様のものを用いた。
下記表12に、使用したiPS細胞が由来する患者の臨床情報を示す。以下、分化させた各運動ニューロンをそれが由来する患者番号で識別する。
いずれの運動ニューロンにおいても、ロピニロールの添加期間は5日間とした。ロピニロールの添加開始時期は症例により異なっており、各iPS細胞の分化誘導開始から30〜70日目のいずれかであった。
続いて、ロピニロールを添加してから5日目の各運動ニューロンについて、実験例I−3と同様にしてCVカスパーゼ3陽性ニューロンの割合を測定した。
図15は、CVカスパーゼ3陽性ニューロンの割合の測定結果を示すグラフである。図中、「**」及び「††」は、危険率1%未満で有意差が存在することを示し、「+ROPI」はロピニロールを培地に添加した結果であることを示す。その結果、24症例のSALSモデルのうち、CVカスパーゼ3陽性率の増加が確認された症例は22症例であった。また、これらの22症例のうち、ロピニロールの添加によりCVカスパーゼ3陽性率の増加が抑制された症例は16症例であった(SALS症例の72.73%)。
この結果は、ロピニロールが、家族性ALSだけでなく、孤発性ALSの治療にも有効であることを更に支持するものである。
本発明によれば、ALS治療剤及びALS治療用組成物を提供することができる。本発明のALS治療剤又はALS治療用組成物によって、家族性ALSだけでなく孤発性ALSも治療することができる。また、ALS患者由来iPS細胞から分化させた運動ニューロンに対する、本発明のALS治療剤の薬効メカニズムを解析することにより、ALSの病態メカニズムを解明することができる。

Claims (7)

  1. 下記式(1)で表される化合物、その薬学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療剤。
    [式(1)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基又は4−ヒドロキシフェネチル基を表し、nは1〜3の整数を表す。]
  2. 前記式(1)中、nが2である、請求項1に記載のALS治療剤。
  3. 前記式(1)中、Rがn−プロピル基である、請求項1又は2に記載のALS治療剤。
  4. 前記式(1)で表される化合物が4−(2−ジ−n−プロピルアミノエチル)−2(3H)−インドールである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のALS治療剤。
  5. 前記式(1)で表される化合物の薬学的に許容される塩が4−(2−ジ−n−プロピルアミノエチル)−2(3H)−インドール塩酸塩である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のALS治療剤。
  6. 家族性ALS及び孤発性ALSの双方に対する治療効果を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のALS治療剤。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のALS治療剤及び薬学的に許容される担体を含有する、ALS治療用組成物。
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