JPWO2018016471A1 - 人工衛星の自律運用計画システムおよび人工衛星の運用計画装置 - Google Patents

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Abstract

衛星側に衛星側運用パラメータ記憶部22、運用計画部23を備え、地上側に地上側運用パラメータ設定部11、衛星側の運用パラメータ記憶部と同じ運用パラメータを記憶する地上側運用パラメータ記憶部12、衛星側の運用計画部と同一の機能を有する運用計画推定部14を備え、地上側運用パラメータ設定部11において運用計画に用いる運用パラメータを決定し、地上側運用パラメータ記憶部12と衛星側運用パラメータ記憶部22に随時アップロードし、地上側の運用計画推測部14と衛星側の運用計画部23が同一の運用パラメータに基づいてそれぞれ運用計画を作成する。

Description

この発明は、人工衛星の軌道上運用を行うための運用計画システムに関するものである。
地球周回軌道上にある人工衛星の運用は、通常、地上にて運用計画を作成し、人工衛星が地上局やデータ中継衛星と通信可能な時間帯に、運用計画に基づくコマンドを送信する。衛星においては、それらコマンドに基づき搭載機器等の制御を行い、通信、観測等の運用を実施する。近年、地上における運用負荷を軽減するため、軌道上にて自律的に運用計画を行うことが期待されている。例えば、下記特許文献1では、自律運用のためのシステム構成が提案されている。このような運用計画システムでは、人工衛星に搭載するコンピュータに運用計画を行う機能を有し(特許文献1では「Autonomous Tasking Engine (ATE)」と称している。)、軌道上にて自律的に運用計画を行い、実行する構成となっている。
US7856294B2(38頁右32〜40行、FIG.1)
地上における運用負荷を軽減するために、このような自律運用計画システムを用いて軌道上にて自律的に運用計画を行おうとした場合、軌道上にて作成される運用計画が地上側にて事前に予測できないといった問題があった。また、事前に予測できないということは、人工衛星の運用計画に応じた地上局の運用計画を作成することが困難となるという問題があった。さらには、コマンドによる計画変更の必要性判断、将来の運用要求の決定といったことが軌道上運用計画のダウンリンク後、あるいは運用計画に基づく運用の実施後にしか行えず、タイムラグが発生し、運用の効率が落ちるといった問題があった。
この発明に係る人工衛星の自律運用計画システムは、人工衛星を運用する運用パラメータを設定する運用パラメータ設定部と、運用パラメータを記憶する衛星側運用パラメータ記憶部と、衛星側運用パラメータ記憶部の衛星側運用パラメータを用いて人工衛星の衛星側運用計画を算出する運用計画部と、衛星側運用パラメータ及び衛星側運用計画を用いて人工衛星の運用を制御する運用制御部と、衛星側運用パラメータの情報と同一な運用パラメータの情報を記憶する地上側運用パラメータ記憶部と、地上側運用パラメータを用いて衛星側運用計画を地上側運用計画として推定する運用計画推定部と、運用制御部で制御される人工衛星の運用を地上側運用パラメータ及び地上側運用計画を用いて推定する運用制御推定部とを備えたことを特徴としている。
この発明によれば、運用の不確定性を排除でき、人工衛星を効率的に運用できる。
図1は本発明の実施の形態1による人工衛星の自律運用計画システムの構成を示すブロック図である。 図2は本発明の実施の形態1による運用計画の例を示す図である。 図3は本発明の実施の形態1による運用計画の例を示す図である。 図4は本発明の実施の形態1における運用計画部の処理の流れを示すフローチャートである。 図5は本発明の実施の形態1における運用計画部の観測時刻の設定方法を説明するための模式図である。 図6は本発明の実施の形態1における地上側運用計画装置を実現するためのコンピュータのハードウェア構成の例を示す図である。 図7は本発明の実施の形態2における運用計画部の構成を示すブロック図である。 図8は本発明の実施の形態2における運用計画推定部の構成を示すブロック図である。 図9は本発明の実施の形態2における誤差予測値を考慮した運用計画作成を説明するための模式図である。 図10は本発明の実施の形態2における運用計画部の処理の流れを示すフローチャートである。 図11は本発明の実施の形態3における運用計画部の構成を示すブロック図である。 図12は本発明の実施の形態3における運用計画推定部の構成を示すブロック図である。 図13は本発明の実施の形態3における誤差予測値に応じたマージン設定の例を示す模式図である。 図14は本発明の実施の形態3における運用計画部の処理の流れを示すフローチャートである。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による人工衛星の自律運用計画システムの構成を示すブロック図である。図1に示す自律運用計画システムは、大きく分けて、人工衛星を運用するための地上設備に設置される地上側運用計画装置10と、運用対象である人工衛星に搭載される衛星側運用計画装置20からなる。
地上側運用計画装置10は、運用パラメータ設定部11、地上側運用パラメータ記憶部12、運用計画推定部13、運用制御推定部14、および運用パラメータ送信部15を備え、衛星側運用計画装置20は、衛星側運用パラメータ記憶部22、運用計画部23、および運用制御部24を備える。
以下の説明の中で、地上側のことと衛星側のこととを明確に区別するために、地上側、衛星側との表現を頻繁に用いている。また、衛星側で実行されていることを地上側で推定していることを強調する意味で、地上側では「推定」と云う表現を用いている。また、図において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、このことは明細書の全文、図面の全図において共通することである。また、明細書全文に表れている構成要素の形態は、あくまで例示であってこれらの記載に限定されるものではない。
従来は、運用計画は、人為的に行い、計画結果をコマンド送信していた。地上側から人工衛星へコマンドを送信する機会は限られているため、運用計画を送信するのに不便であった。また、人工衛星側で自律的に運用計画を策定するようにしたとしても、人工衛星側で策定した運用計画が分からないので、地上のアンテナの動作など人工衛星の運用計画に基づく地上局の運用計画を策定することは困難であった。本実施の形態は、人工衛星側で運用計画を策定し、同じ運用計画を地上側でも策定するように構成したから、制限のある地上局からコマンド送信が不要になるとともに、人工衛星側で実行される運用計画・運用制御に基づき地上側の設備等の運用計画を策定できる。
運用パラメータ設定部11は、既存の技術を利用して、将来にわたって運用計画にて用いる複数の運用パラメータの値を算出し設定する。運用パラメータには、運用計画で用いる様々なパラメータを含めることができる。例えば、衛星の将来の軌道を予測するためのモデル化軌道パラメータ、地上局の位置座標および状態を示すパラメータ、データ中継衛星の軌道位置に関するパラメータ、人工衛星が観測ミッションを行う場合には観測対象の位置等の情報を含めることができる。ここではモデル化軌道パラメータを例にして、その設定について詳しく説明する。
人工衛星の将来の軌道位置および速度は、既存の技術を用いても、ある程度の精度で地上にて予測し計算することができる。例えば、この予測軌道を1分間隔などの一定間隔での接触軌道要素として表すことができる。接触軌道要素は軌道長半径a、離心率e、軌道傾斜角i、昇交点赤経Ω、近地点引数ω、近点通過時刻tの6つのパラメータで表され、一般に知られている変換式を用いて接触軌道要素は軌道位置および軌道速度と相互に変換可能である。モデル化軌道パラメータの算出においては、これら接触軌道要素それぞれの時間履歴を少数のパラメータで表現した時間の関数で近似する。
この時間関数としては、様々な近似関数、例えばフーリエ級数展開、時間多項式等を用いることができる。さらに、軌道の時間変化に影響を与える要素として、地球重力の扁平性、太陽等の他天体の引力といったものが知られており、それぞれ物理モデルによる表現も知られている。モデル化軌道パラメータとしては、そのようなモデルを取り込んだ近似関数を構成することもできる。これらモデル化軌道パラメータを用いて任意の時点での軌道位置および軌道速度を求めるには、近似関数を用いて接触軌道要素を計算し、前記変換式を用いて軌道位置および軌道速度への変換を行えば良い。
このように、モデル化軌道パラメータは、将来に渡る軌道情報を少ないパラメータで近似表現するものであるため、運用パラメータ設定部11のコマンドにて地上設備から人工衛星へ随時アップロードすることが可能である。例えば、運用パラメータ設定部11は、人工衛星と地上設備とが通信可能な時間帯を利用して、運用パラメータ送信部15を介して衛星側運用パラメータ記憶部22および地上側運用パラメータ記憶部12に運用パラメータを同時にアップロードすればよい。これによって、常時、地上側の運用計画推定部13と衛星側の運用計画部23にて同一となる運用パラメータの情報を用いて、それぞれ地上側運用計画および衛星側運用計画を作成することができ、地上側運用計画と衛星側運用計画とは、同一のものとなる。ここで、同一となる運用パラメータの情報とは、モデル化軌道パラメータなどのパラメータの種類およびパラメータの具体的数値など内容が同一である運用パラメータであることを意味する。また、運用計画推定部13と運用計画部23とは、同一の機能を備え、同一の解法によりそれぞれの運用計画を算出するからである。ここでの解法とは、運用パラメータによって定まる制約条件を満たすように、運用計画を求める方法である。
その他の運用パラメータの例としては、地上局情報、すなわち、地球固定座標系における地上局の位置座標、地上局アンテナの駆動範囲等があり、これらも少数のパラメータとしてコマンドにて衛星に随時アップロード可能である。
運用パラメータ設定部11にて算出し設定した運用パラメータは、人工衛星と地上局等が通信可能な時間を利用して、運用パラメータ送信部15を介して人工衛星にアップロードして衛星側運用パラメータとして衛星側運用パラメータ記憶部22に格納するとともに、地上側運用パラメータ記憶部12にも同時に地上側運用パラメータとして格納する。その際、運用パラメータ全ての値を毎回アップロードする必要はなく、以前にアップロードされた運用パラメータに対して変更があった分のみをアップロードすればよい。ここで、運用パラメータ送信部15は、地上局から人工衛星に向けて、電波などによって運用パラメータを送信し、人工衛星はこの電波などを受信して、受信した運用パラメータを衛星側運用パラメータとして衛星側運用パラメータ記憶部22に記憶する。
このようにすることで、衛星側運用パラメータ記憶部22に記憶させた衛星側運用パラメータの情報と、地上側運用パラメータ記憶部12で記憶される地上側運用パラメータの情報とは同一の内容となる。地上側運用パラメータ記憶部12と衛星側運用パラメータ記憶部22とは、同一機能になっているからである。つまり、衛星側運用パラメータ記憶部22に記憶させた衛星側運用パラメータの情報と、地上側運用パラメータ記憶部12で記憶される地上側運用パラメータの情報とは、同じ種類の運用パラメータであり、各種類の運用パラメータについて同じ値である。
図2および図3は、運用計画部23にて作成される運用計画の例を示す図であり、図2および図3は、運用計画に含まれる情報の例を説明用に簡略化して表現したものである。
運用計画部23は、既存の技術を利用して、将来の運用計画を作成する。その際、衛星側運用パラメータ記憶部22に格納されている運用パラメータを用いる。
図2は、人工衛星が地上局上空を通過する際に、地上局からのコマンドを待ち受ける場合の運用計画の例を示している。本例では、人工衛星が地上局と通信可能範囲に到達する前に、人工衛星に搭載されているアンテナを駆動し、地上局を追尾可能な方向に向ける必要がある。また、地上局上空では、アンテナは常に地上局を追尾するとともに、通信機器の電源を入れ、待ち受け状態に設定する。また、人工衛星が地上局と通信可能範囲を通過した後は、通信機器をオフし、アンテナを元の状態に戻すための駆動を行う。
運用計画部23では、図2に示すようなこれら一連の動作のシーケンスを計画する。その際、図2に示す時刻t1および時刻t2を求めるには、人工衛星に搭載されているアンテナが地上局を追尾可能な軌道位置に人工衛星が来るタイミングを計算する必要がある。
その際、本実施の形態では衛星側運用パラメータ記憶部22に格納されている運用パラメータに含まれるモデル化軌道パラメータ、および地上局位置座標等を用いる。また、アンテナを駆動する時間T1およびT4については、アンテナの駆動モータ等の性能を考慮して、実際に駆動可能な時間を設定する必要がある。その際にも、運用パラメータに含まれるアンテナ駆動速度等のパラメータを用いることで、適切な時間T1やT4を設定することができる。あるいは、アンテナ駆動時間T1やT4としては、どのような駆動角度となった場合にも十分に駆動可能なほど長い時間を固定値として与えることもできる。その場合も、その駆動時間固定値を運用パラメータとして、運用パラメータ設定部11が衛星側運用パラメータ記憶部22に格納させることになる。
図2では、時刻(t1−T1)でアンテナA1の駆動を開始し、時刻t1でアンテナA1による地上局G1の追尾を開始し、時刻(t1+T2)で通信機C1をONし、時刻(t2−T3)で通信機C1をOFFし、時刻t2でアンテナA1による地上局G1の追尾を終了して、アンテナの駆動を開始し、時刻(t2+T4)でアンテナA1の駆動を終了している。
図3は、観測衛星において人工衛星搭載の観測センサの方向を観測対象に向けて観測を行う際の運用計画の例である。観測センサを観測対象に向ける方式としては、センサ部分のみを駆動する方式、センサ部分以外にミラー等も駆動する方式、観測センサが人工衛星に固定されており人工衛星の姿勢全体を駆動する方式等があるが、ここでは人工衛星の姿勢全体を駆動する方式の例を用いて説明する。
人工衛星の姿勢全体を駆動する方式の場合、人工衛星に搭載されたリアクションホイール等の姿勢制御用アクチュエータを駆動し、観測対象に姿勢を向ける姿勢マヌーバを行う。この姿勢マヌーバに必要な時間(図3に示す時間T5およびT6)は、衛星軌道、観測対象の位置座標、アクチュエータのトルク上限値等に依存するため、衛星側運用パラメータ記憶部22に格納されている衛星側運用パラメータを用いてこれらマヌーバ時間を運用計画部23で計算する。また、観測対象を観測可能な時刻t5およびt6についても、衛星軌道および観測対象の位置座標に依存して決まるが、これらについても運用パラメータを用いて運用計画部23で計算できる。
図3では、時刻(t5−T5)で衛星姿勢の駆動を開始し、時刻t5で衛星姿勢の駆動を終了し、観測機器をONし、時刻t6で観測機器をOFFし、衛星姿勢の駆動を開始し、時刻(t6+T6)で衛星姿勢の駆動を終了している。
次に、人工衛星が、地上を観測する場合の運用計画部23の処理フローの一例について、図4を用いて説明する。人工衛星の姿勢制御の性能、観測の制約条件は、運用パラメータとして、運用パラメータ設定部11によって設定され、衛星側運用パラメータ記憶部22に記憶されている。
運用計画部23に、運用パラメータとして、N個の観測単位が与えられたとする。以下、個々の観測単位を、観測時刻の順に符号iにより表す(i=1,…,N)。図4において、観測単位(i=1,…,N)の組み合わせが入力されると、ステップST301では、各観測単位iの観測時刻t(i)を設定する。その設定方法については後述する。
次に、ステップST302において、観測時刻順に、隣り合う観測単位間の観測時刻の差(観測時刻間隔)を計算し、観測単位iと観測単位i+1の間の観測時刻間隔をT(i)と表す。すなわち、T(i)=t(i+1)−t(i)(i=1,…,N−1)である。
次に、ステップST303において、観測単位iとi+1の間で必要な遷移時間の最小値(最短所要遷移時間)Tmin(i)(i=1、・・・、N−1)を計算する。
Tmin(i)としては、観測単位iの観測時間(1回の観測を開始してから終了するまでの所要時間)のうちの観測時刻t(i)以降の部分の時間と、観測単位i+1の観測時間のうちの観測時刻t(i+1)以前の部分の時間と、観測単位iの観測から観測単位i+1の観測の間に観測器の視線方向を変えるために、観測器OBの視線方向DOBおよび観測器OBを搭載した人工衛星SAの姿勢PSAを駆動しなければならない場合には、その駆動のための最短の所要時間、さらには、観測と観測の間で観測器等の電源を入れるあるいは切るといった手順が必要な場合はその所要時間等、観測単位iの観測時刻から観測単位i+1の観測時刻までの間に必要な様々な所要時間が含まれる。
例えば、人工衛星の姿勢を駆動するための時間は、観測単位iの観測時の姿勢と、観測単位i+1の観測時の姿勢、さらには人工衛星の姿勢駆動能力等から求めることができる。
各観測時の姿勢は、観測時刻および衛星側運用パラメータ記憶部22に記憶された衛星側運用パラメータの軌道パスと観測地点との幾何学的関係より求まる。人工衛星の姿勢駆動能力は、衛星側運用パラメータの人工衛星の性能として、姿勢遷移速度(例えば角速度(度/秒))を格納しておけばよい。さらに、衛星側運用パラメータの人工衛星の性能の中の搭載観測器の性能として、視線遷移速度(例えば角速度(度/秒))を衛星側運用パラメータ記憶部22に格納しておいてもよい。または、これらをまとめて人工衛星の性能として人工衛星観測視線遷移速度(例えば角速度(度/秒))として格納しておいてもよい。さらに、より詳細に、姿勢条件に応じた人工衛星の姿勢駆動方式アルゴリズムを衛星側運用パラメータとして衛星側運用パラメータ記憶部22に格納されるように構成し、当該アルゴリズムに従って姿勢駆動を行う場合の所要時間を求めても良い。観測器のオンオフ時間は、衛星側運用パラメータとして人工衛星の性能の中の搭載観測器の性能として、衛星側運用パラメータ記憶部22に格納するように構成しても良い。なお、衛星側運用パラメータ記憶部22に記憶される衛星側運用パラメータは、基本的には運用パラメータ設定部11で設定された運用パラメータである。
ステップST303において、全ての観測単位間での最短所要遷移時間Tmin(i)(i=1,…,N−1)が計算されると、ステップST304において、ステップST302において求めた観測時刻間隔T(i)と比較する。いずれかの観測単位間において、T(i)<Tmin(i)となっていた場合は、その観測時刻設定では最短所要遷移時間Tmin(i)が観測時刻間隔T(i)を満たせないということであるから、ステップST301に戻って観測時刻設定をやり直す。全ての観測単位間(i=1,…,N−1)でT(i)≧Tmin(i)が成り立っていた場合は、次のステップST305へ進む。
ステップST305では、観測時刻設定や最短所要遷移時間以外の様々な制約条件について、満たしているかどうかを確認する。そのような制約条件としては、例えば観測される画像の分解能が許容範囲であるかどうかや、観測データを蓄積する人工衛星搭載のデータレコーダの容量をオーバーしていないかどうか、等、人工衛星単独での運用計画が実行可能であることを確認するものであれば何でも良い。これらは、衛星側運用パラメータ記憶部22に人工衛星の性能・観測制約条件として格納されている。ステップST305において、設定しておいたいずれかの制約が満たされない場合には、運用計画部23は、観測不可能の判定結果を出力する。全ての制約を満たし、観測時刻が適切に設定された場合は、運用計画部23は、観測可能の判定とともに、各観測単位の観測時刻等を含んだ運用計画結果を出力する。
次に、ステップST301における観測時刻設定について、図5を用いて説明する。図では、2つの観測単位iとi+1についてのみ示している。まず、図5のa)に示すように、観測単位iについては前方視の要求があり、ノミナル観測時刻と観測時刻設定可能範囲が観測地点通過時刻よりも前に設定されている。観測単位i+1についてはノミナル観測時刻が観測地点通過時刻に設定されている。ここで、ノミナル観測時刻と観測時刻設定可能範囲については、運用パラメータに含まれる観測対象の位置座標、モデル化軌道パラメータ、ポインティング角の制約および前方視、後方視等の要求により計算する。
まず、初期設定として、各観測単位の観測時刻t(i)およびt(i+1)をそれぞれのノミナル観測時刻に設定したとする。そのときに、図5のa)に示すように、ステップST302において求められる観測時刻間隔T(i)が、ステップST303において求められる最短所要遷移時間Tmin(i)よりも小さかったとすると、ステップST304においてステップST301へ戻ることが選択され、観測時刻を再設定することになる。
その場合、図5のb)に示すように、各観測時刻t(i)およびt(i+1)は、各々のノミナル観測時刻との差がなるべく小さくなるように、かつ、その観測時刻間隔T(i)がTmin(i)以上となるように、それぞれノミナル観測時刻よりも前後にずらした時刻に設定される。
ステップST303において求められる最短所要遷移時間Tmin(i)が、観測時刻t(i)およびt(i+1)に依存して決まる場合は、このように設定した観測時刻t(i)およびt(i+1)に対して最短所要遷移時間Tmin(i)を求めると、再度観測時刻間隔T(i)よりも大きくなり、再びステップST301へ戻る可能性がある。このような場合にも、上記手順によりステップST301からステップST304までを繰り返し計算することで、全ての観測時刻間隔が最短所要遷移時間よりも長くなるような観測時刻設定が得られる。
あるいは別の可能性として、ステップST301において観測時刻設定可能範囲での観測時刻設定が不可能となることもある。すなわち、ステップST303において、求められたTmin(i)が、観測単位iの観測時刻設定可能範囲下限から観測単位i+1の観測時刻設定可能範囲上限までの時間よりも大きい場合に起こる。このような場合には、ステップST301において計算ループを抜けて、運用計画部23は観測不可能という結果を出力する。
なお、図5を用いた上記説明においては、簡単のために2つの観測単位iとi+1のみがある場合について示したが、3つ以上の観測単位がある場合についても、上記と同様に、各観測時刻t(i)(i=1,…,N)は、各々のノミナル観測時刻との差がなるべく小さくなるように、かつ、観測時刻間隔T(i)(i=1,…,N−1)がTmin(i)以上となるように、設定すればよい。
以上のように、運用計画部23では、人工衛星の性能および観測制約条件を考慮した最短所要遷移時間に応じて、運用パラメータ設定部11において設定されたポインティング角制約等に基づいて、観測時刻を設定することで、人工衛星の性能や制約を考慮しつつ、最大限、観測要求を満たす運用計画が生成できる。
一方、地上側の運用計画推定部13は、衛星側の運用計画部23と同一の機能を有し、運用計画部23と同様に地上側でも運用計画を作成する。この際、地上側運用パラメータ記憶部12に格納されている運用パラメータの情報は衛星側運用パラメータ記憶部22に格納されている運用パラメータの情報と同一である。また、これら運用パラメータによって定まる制約条件を満たす運用計画を算出するための解法は、地上側の運用計画推定部13と衛星側の運用計画部23とで同一である。このため、運用計画推定部13で作成される地上側運用計画も運用計画部23で作成される衛星側運用計画と同一となる。これによって、衛星側の運用計画、すなわち、軌道上の運用計画、例えばアンテナを駆動するかどうか、アンテナが地上局追尾状態となる時刻、通信機器がオンされる時刻等といったことを、地上にて事前に予測できる。
ここで、運用パラメータによって定まる制約条件を満たす運用計画を算出する解法とは、上記運用計画部23の処理フローの例で示した処理内容を意味するものである。したがって、運用計画を算出する解法が同一とは、処理フローが同じである回路、プログラムされた計算機であることを意味する。したがって、同じ処理フローになれば、詳細が異なる回路、プログラム(サブルーチン)であっても良いし、全く同じ回路、プログラム(サブルーチン)であっても良い。
換言すれば、運用計画推定部13は、衛星側の運用計画部23が作成する衛星側運用計画を推定して、地上側でも同一の運用計画を地上側運用計画として算出するのである。運用計画部23と運用計画推定部13とは、同一機能のものが同一の運用パラメータ(衛星側運用パラメータおよび地上側運用パラメータ)の情報を用いて同一の解法により運用計画を作成するため、地上側運用計画と衛星側運用計画とで同一のものとなることは自明である。
次に、運用制御部24では、運用計画部23にて計画した運用計画に従い、計画されたタイミングで、実際に人工衛星の姿勢、アンテナ、通信機器のオンオフ等を制御する。この際、例えば図2の例において、時刻t1からt2の間、アンテナA1に地上局G1を追尾させるためのアンテナ角度の時々刻々の目標値を算出する必要がある。このアンテナ角度は衛星軌道の位置と姿勢、および地上局位置に依存して決まる。衛星の軌道としては、衛星側運用パラメータ記憶部22に格納されたモデル化軌道を用いればよい。
一方、地上側の運用制御推定部14も、衛星側の運用制御部24と同一の機能を有し、運用計画推定部13の作成した地上側運用計画に応じて上述の運用制御部24における運用制御の推定、すなわちシミュレーションを行う。例えば図2の例において、時刻t1からt2の間の時々刻々のアンテナ角度を求め、運用者が確認する目的で端末等に表示することができる。さらに、運用制御推定部14の運用制御の推定結果を受けて、運用計画変更要否を判断し、計画変更のためのコマンドを発行するといったことも可能である。例えば、運用制御の推定結果において、好ましくない姿勢挙動が確認された場合に、その運用が実際に行われる前のコマンド送信機会を利用して計画変更や実行中止のためのコマンドを人工衛星へ送ることもできる。
運用制御部24では、衛星軌道としてモデル化軌道を用いる方法以外に、通常行われるように衛星搭載のGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機等の情報を元にしたオンボードでの軌道予測値を用いることもできる。運用制御部24は、人工衛星に搭載しているGNSS受信機の情報を用いた軌道予測値を用いて人工衛星の運用を制御することになる。この方法によれば、通常、モデル化軌道よりも軌道位置の誤差が小さいと予想され、アンテナの指向誤差をより小さく抑えることができる。
上記のように、衛星側の運用制御部24において衛星軌道としてオンボードの軌道予測値を用いていた場合、その値を地上側にて事前に知ることはできない。このため、地上側で求められるアンテナ角度は実際に軌道上で求められるアンテナ角度とは軌道の誤差(微調整)分異なる値となる。このため、運用制御推定部14から予測される人工衛星の運用と実際の運用状況とで異なることになる。もっとも、地上局での運用制御の予測目的は、大まかなアンテナ角度等を知ることであり、運用を行う上でアンテナ角度等の微調整による差分が問題となることはない。
図6は、本実施の形態における地上側運用計画装置10を実現するためのコンピュータ1000のハードウェア構成を例示する図である。図6の地上側運用計画装置10を実現するためのコンピュータ1000のハードウェア構成は、例えば、プロセッサ1001、メモリ1002、記憶装置1003、入出力インターフェース1004、通信インターフェース1005を備える。なお、プロセッサ1001、メモリ1002、記憶装置1003、入出力インターフェース1004、通信インターフェース1005は、例えば、バス1006を介して互いに接続されている。
運用パラメータ設定部11、運用計画推定部13、運用制御推定部14の各機能を記述したプログラムは、記憶装置1003にインストールされており、必要に応じてメモリ1002に呼び出されて、プロセッサ1001とともにそれら各部として機能する。記憶装置1003はまた、前記地上側運用パラメータ記憶部12として機能し、地上側運用パラメータを格納する。あるいは、地上側運用パラメータはコンピュータ1000とネットワークを介して接続されたサーバ1100に格納され、通信インターフェース1005を介して読み込む形としても良い。この場合は、サーバ1100が地上側運用パラメータ記憶部12として機能することになる。また、通信インターフェース1005は、運用パラメータ送信部15として機能する。
運用パラメータ設定部11を上述のように機能させる際には、入出力インターフェース1004を介してユーザからの指示を与えることもできる。また、運用計画推定部13により算出された運用計画や、運用制御推定部14により算出された衛星側運用制御の予測結果(アンテナ駆動角度や衛星姿勢の時間履歴等)は、入出力インターフェース1004を介してディスプレイやプリンタにより表示、出力させることができる。
なお、ここでは運用パラメータ設定部11、運用計画推定部13、運用制御推定部14を全て同一のコンピュータ上で機能させる例を示したが、これらのうち一部を別のコンピュータにおいて同様に機能させる構成としても良い。例えば、運用パラメータ設定部11を上記コンピュータ1000とは別のコンピュータ(図示省略)上で動作させた場合、設定した運用パラメータはサーバ1100に保存し、コンピュータ1000からは通信インターフェース1005を介してアクセスする構成とすれば良い。
また、本実施の形態における衛星側運用計画装置20を実現するためのコンピュータのハードウェア構成を図6と同様にすることもできる。この場合、運用計画部23、運用制御部24の各機能を記述したプログラムは、記憶装置1003にインストールされており、必要に応じてメモリ1002に呼び出されて、プロセッサ1001とともにそれら各部として機能する。記憶装置1003は、衛星側運用パラメータ記憶部22として機能し、衛星側運用パラメータを格納する。
なお、ここでは運用計画部23、運用制御部24を全て同一のコンピュータ上で機能させる例を示したが、これらのうち一部を別のコンピュータにおいて同様に機能させる構成としても良い。また、図6の通信インターフェース1005は、運用パラメータを受信する受信部として機能しても良い。
このように、地上側と衛星側にて同一の運用パラメータの情報を用いて運用計画を作成することで、衛星側にて作成される衛星側運用計画を地上側にて事前に予測でき、運用を自律化することによる不確実性を排除できる。そのため、自律化により運用負荷を軽減しつつ、人工衛星からのテレメトリの受信や、人工衛星へのコマンド送信のための地上局の運用を無駄なく計画し実行できる。また、軌道上にて作成される運用計画の一部を、必要に応じて地上からのコマンドにて変更するなど、人工衛星の柔軟かつ効率的な運用が可能となる。
人工衛星を運用する運用パラメータを設定する運用パラメータ設定部11と、運用パラメータを記憶する衛星側運用パラメータ記憶部22と、衛星側運用パラメータ記憶部22の衛星側運用パラメータを用いて人工衛星の衛星側運用計画を算出する運用計画部23と、衛星側運用パラメータ及び衛星側運用計画を用いて人工衛星の運用を制御する運用制御部24と、衛星側運用パラメータの情報と同一な運用パラメータの情報を記憶する地上側運用パラメータ記憶部12と、地上側運用パラメータを用いて衛星側運用計画を地上側運用計画として推定する運用計画推定部13と、運用制御部24で制御される人工衛星の運用を地上側運用パラメータ及び地上側運用計画を用いて推定する運用制御推定部14とがある人工衛星の自律運用計画システムなので、人工衛星の運用の不確定性を排除でき、人工衛星を効率的に運用できる。
また、地上側運用計画装置10からみると、人工衛星を運用する運用パラメータを設定する運用パラメータ設定部11と、衛星側運用パラメータ記憶部22に前記運用パラメータを記憶させる情報と同一な前記運用パラメータの情報を記憶する地上側運用パラメータ記憶部12と、前記地上側運用パラメータ記憶部12の地上側運用パラメータを用いて、前記衛星側運用パラメータ記憶部22の衛星側運用パラメータを用いて前記人工衛星側で算出される衛星側運用計画を推定する運用計画推定部13と、前記地上側運用パラメータ及び前記運用計画推定部13が推定した地上側運用計画を用いて、前記衛星側運用パラメータ及び前記衛星側運用計画を用いた前記人工衛星の運用制御を推定する運用制御推定部14があるので、人工衛星の運用の不確定性を排除でき、人工衛星を効率的に運用できる。
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2における運用計画部23の構成を示すブロック図である。また、図8は、本発明の実施の形態2における運用計画推定部13の構成を示すブロック図である。本実施の形態による自律運用計画システムのその他の構成である運用パラメータ設定部11、地上側運用パラメータ記憶部12、運用制御推定部14、運用パラメータ送信部15、衛星側運用パラメータ記憶部22、および運用制御部24については実施の形態1と同様である。実施の形態1とは、パラメータ誤差を予測して考慮し、運用計画を作成する点が主たる相違点である。本実施の形態2では、運用計画部23は衛星側に、運用計画算出部231、およびパラメータ誤差予測部232を備え、運用計画推定部13は地上側に、運用計画算出推定部131、およびパラメータ誤差推定部132を備えている。
パラメータ誤差予測部232とパラメータ誤差推定部132とでは、運用パラメータのアップロードからの経過時間に応じた運用パラメータの誤差の大きさをモデルに基づいて決定する。そのための誤差モデルとしては、最も単純には経過時間に対する誤差量を多項式等の単純な数式で表現したものを用いることができる。単純な数式以外にも、パラメータ毎の物理モデルを元に、より精密な誤差モデルとすることもできる。例えば、モデル化軌道パラメータに関しては、衛星軌道運動に働く摂動力の物理モデルを元に、より実際に近い軌道誤差モデルとすることもできる。
いずれにせよ、誤差モデルは、運用パラメータの誤差を数式、数値テーブル等で表したものであり、地上側のパラメータ誤差推定部132の出力する誤差推定値は、衛星側のパラメータ誤差予測部232の出力する誤差予測値と同一となるようにする。
運用計画算出部231では、パラメータ誤差予測部232にて算出した誤差予測値および運用パラメータを用いて衛星側運用計画を作成する。同様に、運用計画算出推定部131では、パラメータ誤差推定部132にて算出した誤差推定値および運用パラメータを用いて地上側運用計画を作成する。
図2に示したように衛星搭載のアンテナを地上局方向に向ける運用を計画する場合に、モデル化軌道の誤差予測値を運用計画に反映する例について、図9を用いて説明する。図9は誤差予測値を考慮した運用計画作成を説明するための模式図であり、より具体的には地上局の通信可能範囲付近を人工衛星が通過する様子を示している図である。モデル化軌道O−0を用いて衛星軌道を計算した場合には、地上局の通信可能範囲の内側を衛星が通過しており、この時間帯において地上局との通信が可能であると判定される。図2に示す時刻t1やt2は、このように地上局通信可能範囲を衛星軌道が通過するタイミングを元に設定される。
一方、パラメータ誤差予測部232の出力するモデル化軌道の誤差予測値が例えば10kmである場合、モデル化軌道から地上局と反対方向に10kmずれた軌道O−1を通ることが所定の確率で予測され、図9に示すように人工衛星が地上局の通信可能範囲の外側を通過することになる。この場合、運用計画算出部231において地上局との通信を行うような運用計画を作成してしまうと、実際の軌道が10kmずれていた場合に実行不可能な運用計画となってしまう。
そこで、本実施の形態2における運用計画算出部231では、誤差予測値(この例では10km)を考慮して、このような実行不可能な運用となる可能性がある場合を除外した運用計画を作成することができる。実行不可能な運用となる可能性がある場合を除外するには、例えば、一旦誤差が無いものとして運用計画を作成した後、運用計画に対して求めた誤差予測値分振って各制約条件を満たすか判断することが考えられる。また、別の方法として運用計画を求める際に、運用パラメータに基づく制約条件を求めた誤差予測値分厳しくした制約条件にして運用計画を求めるようにしても良い。
地上側では、衛星側のパラメータ誤差予測部232の出力である誤差予測値をパラメータ誤差推定部132が誤差推定値として同一のものを出力することになる。さらに、運用計画算出部231では、誤差予測値を考慮することで実行不可能な運用となる可能性がある場合(実行不可能と見込まれる場合)を除外して衛星側運用計画を算出する。同様に、運用計画算出推定部131では、誤差推定値を考慮することで実行不可能な運用となる可能性がある場合(実行不可能と見込まれる場合)を運用計画算出部231と同じように除外して地上側運用計画を算出する。
図10は、実施の形態2における運用計画部23の処理の流れを示すフローチャートである。図10は、図7の運用計画部23の運用計画算出部231、およびパラメータ誤差予測部232の処理を含む処理の流れの一例を示す。
まず、ステップST401は、パラメータ誤差予測部232が、運用パラメータを衛星側運用パラメータとして衛星側にアップロードした時点からの経過時間を求める。次に、パラメータ誤差予測部232は、運用パラメータの中で、上述のように誤差モデルを有する運用パラメータについて、誤差を予測し、誤差予測値を考慮することで実行不可能な運用となる可能性がある場合(実行不可能と見込まれる場合)を除外する。以下、具体的な処理をステップごとに説明する。
ステップST402は、パラメータ誤差予測部232が、ST401で求めた経過時間と、対象とする運用パラメータの誤差モデルとから経過時間後の誤差予測値を求める。誤差モデルは、上述のように、経過時間に対する誤差量を多項式等の数式で表現したもの、パラメータ毎の物理モデルに基づくもの、モデル化軌道パラメータに関するものでは、衛星軌道運動に働く摂動力の物理モデルに基づくものである。また、具体的には、誤差を数式、数値テーブルで表現されるので、これを対象の運用パラメータ毎に読みだして経過時間での誤差予測値を求める。
次に、ステップST403は、パラメータ誤差予測部232が、対象の運用パラメータについて、ST402で求めた誤差予測値分変化させた誤差範囲を算出する。これは、例えば、上述の図9におけるモデル化軌道に対して誤差予測値分ずれた軌道を誤差範囲とすることである。
上述のステップST402からST403を誤差モデルが設定されている運用パラメータについて処理を行ったのち、ステップST404へ処理が移る。ステップST404は、パラメータ誤差予測部232が、運用計画部23で求める運用パラメータに基づく制約条件に対して、ステップST402,403で求めた誤差範囲分、条件が厳しくなるように制約条件を設定する。こうして設定された制約条件を誤差考慮制約条件とする。例えば、図9に示す地上局可視範囲の半径(あるいはそれと等価な角度パラメータ)を、軌道の誤差予測値10kmだけ内側に設定する。
次に、ステップST405は、運用計画部23が、ステップST404で求めた誤差考慮制約条件を満たす運用計画を求める。以上のフローにより、誤差予測値を考慮して実行不可能な運用となる可能性がある場合(実行不可能と見込まれる場合)を除外した運用計画を求める。
図6は、本実施の形態における地上側運用計画装置10を実現するためのコンピュータ1000のハードウェア構成を例示する図でもあり、プロセッサ1001、メモリ1002、記憶装置1003(メモリで構成も可)、入出力インターフェース1004、通信インターフェース1005によって構成することができる。
運用パラメータ設定部11、運用計画推定部13、運用制御推定部14および運用パラメータ送信部15の各機能を記述したプログラムは、記憶装置1003にインストールされている。また、プログラムは、必要に応じてメモリ1002に呼び出されて、プロセッサ1001によって、運用パラメータ設定部11、運用計画推定部13、運用制御推定部14、運用パラメータ送信部15として機能する。記憶装置1003は、地上側運用パラメータ記憶部12として機能し、地上側運用パラメータを格納する。
また、本実施の形態における衛星側運用計画装置20を実現するためのコンピュータのハードウェア構成を図6と同様にすることもできる。この場合、運用計画部23および運用制御部24の各機能を記述したプログラムは、記憶装置1003にインストールされており、必要に応じてメモリ1002に呼び出されて、プロセッサ1001によって運用計画部23および運用制御部24として機能する。記憶装置1003は、衛星側運用パラメータ記憶部22として機能し、衛星側運用パラメータを格納する。
以上のように、運用計画部23は、衛星側運用パラメータの誤差予測値を算出するパラメータ誤差予測部232を備え、誤差予測値を用いて衛星側運用計画を算出する。また、地上側の運用計画推定部13は、地上側運用パラメータの誤差推定値を算出するパラメータ誤差推定部132を備え、誤差推定値を用いて地上側運用計画を算出する。ここで、パラメータ誤差推定部132は、パラメータ誤差予測部232と、運用計画算出推定部131は、運用計画算出部231と同一の解法を有する。具体的には、運用計画推定部13は、上述の図10の処理フローと同様の処理を行う。したがって、衛星側、地上側ともに実行不可能な運用計画を作成してしまうといった人工衛星の運用の不確定性を排除でき、人工衛星を効率的に運用できる。
実施の形態3.
図11は、本発明の実施の形態3における運用計画部23の構成を示すブロック図である。また、図12は、本発明の実施の形態3における運用計画推定部13の構成を示すブロック図である。本実施の形態3による自律運用計画システムのその他の構成である運用パラメータ設定部11、運用パラメータ記憶部12、運用制御推定部14、運用パラメータ送信部15、衛星側運用パラメータ記憶部22、および運用制御部24については実施の形態2と同様である。本実施の形態3では、運用計画部23は衛星側に、運用計画算出部231、パラメータ誤差予測部232に加え、マージン設定部233を備える。マージン設定部233では、パラメータ誤差予測部232から出力される誤差予測値に基づいて、運用計画算出部231において用いる衛星側計画マージンの値を変更する。
同様に、運用計画推定部13は地上側に、運用計画算出推定部131、パラメータ誤差推定部132に加え、マージン設定推定部133を備える。マージン設定推定部133では、パラメータ誤差推定部132から出力される誤差推定値に基づいて、運用計画算出推定部131において用いる地上側計画マージンの値を変更する。パラメータ誤差予測部232とパラメータ誤差推定部132とは、同一機能であり、それぞれが算出する誤差予測値と誤差推定値とは同一の値となる。
また、この誤差予測値又は誤差推定値を基に同一機能であるマージン設定部233とマージン設定推定部133とからは、同一の計画マージンが算出されることになる。運用計画算出部231と運用計画算出推定部131とは同一機能のものであり、それぞれ運用パラメータ、誤差予測値又は誤差推定値、計画マージンを用いて同一となる運用計画を算出することになる。
ここで、計画マージンについて説明する。例えば、図2に示した運用計画の例では、運用計画部23において作成する運用計画はアンテナを地上局方向に向ける時刻t1等を規定する。これら時刻t1等は、アンテナの駆動範囲、駆動速度上限等の制約を考慮して計算する。そして、運用制御部24において、衛星搭載のGNSS受信機等の情報を元にしたオンボードでの軌道予測値を用いることによって、より実際に近い軌道情報を用いて、実際のアンテナ駆動角度の時々刻々の目標値を算出する。その際、図9に示すように人工衛星が地上局から遠ざかる方向に軌道がずれていたとすると、運用計画部23で計画した際のアンテナ駆動角よりも運用制御部24にて求められたアンテナ駆動角の方が大きくなることがある。よって、運用計画部23において考慮するアンテナ駆動範囲等の制約は、運用制御部24において考慮する実際の制約よりも小さい値にしておく必要がある。このように、運用計画時の制約値等に余裕を持たせることを計画マージンと定義する。運用計画部23は、実際の制約より計画マージン分小さい値(範囲)にした制約(計画マージンを考慮した制約)を満たすように、運用計画を求める。
計画マージンの他の例としては、図3の例において衛星の姿勢を変更する際に用いるリアクションホイール等の制御用アクチュエータのトルクや回転数等の上限値に対するマージンがある。これら上限値が小さいほど、運用計画部23で計画される姿勢マヌーバ時間T5およびT6は長くなり、運用制御部24にて実際には、より大きな姿勢変更が必要であった場合にも姿勢マヌーバが不可能となる可能性が低くなる。
どれほどの計画マージンを持たせるか、すなわち、運用計画部23と運用制御部24とで制約値にどれだけの差をつけるかは、運用パラメータの誤差としてどの程度の大きさを想定するかということに依存する。計画マージンとしては、十分な余裕を持って設定しておけば、運用計画が実行不可能となることは避けられるが、余裕を持たせ過ぎると運用計画が保守的となり、人工衛星の能力を活かすことができない。例えば、アンテナ駆動角度にマージンを持たせ過ぎると、駆動角度が十分小さくなる地上局の真上とその周辺でしか地上局との通信運用を計画できないといった不都合を生じる。
そこで、本実施の形態3では、マージン設定部233およびマージン設定推定部133において運用パラメータの誤差予測値に応じて衛星側の計画マージンを変更する。図13は誤差予測値に応じたマージン設定の例を示す模式図であり、より具体的にはモデル化軌道の誤差予測値に応じたアクチュエータトルク上限に対する計画マージン設定の例を示す模式図である。図13では、横軸に軌道誤差予測値の大きさを、縦軸にアクチュエータトルク上限値の比を示している。ここで、上限値の比とは、運用制御部24(地上側では運用制御推定部14)にて考慮する制約値に対する運用計画算出部231(地上側では運用計画算出推定部131)において考慮する制約値の割合を意味する。縦軸の値が100%の時は運用計画算出部231(地上側では運用計画算出推定部131)において考慮する制約値が運用制御部24(地上側では運用制御推定部14)にて考慮する制約値と同一、すなわちマージン無しであることに対応する。一方、縦軸の値が小さくなるほど計画マージンは大きくなる。
図13の場合、軌道誤差予測値が0kmの場合に計画マージン設定は100−75=25%、軌道誤差予測値が20kmの場合に計画マージン設定は100−50=50%となる。このように、マージン設定部233およびマージン設定推定部133においては、誤差予測値が大きいほど、計画マージンをより大きく確保するようなマージン設定を行う。これにより、運用パラメータの誤差が小さいと予測される時には無駄なマージンを設定することなく人工衛星の性能を活かした効率的な運用計画を作成でき、誤差が大きいと予測される時には十分なマージンを確保することで運用計画が実行不可能となるような不確実性を排除できる。
図13では、軌道誤差予測値に対してアクチュエータトルク上限値が線形に変化するものとしたが、マージン設定部233およびマージン設定推定部133におけるマージン設定としては、図13に限るものではなく、誤差予測値(地上側では誤差推定値)に応じてマージン設定を変更するものであれば良く、また、地上側の運用計画推定部13と衛星側の運用計画部23とで、同一のマージン設定となっていればよい。
地上側の運用計画推定部13と衛星側の運用計画部23とで同一の運用パラメータの情報を用いて運用計画を作成する場合に、計画マージンを固定値とすると、考えられる誤差の最大値に応じたマージンを設定しておくことになり、無駄が多くなる。本実施の形態のようにマージン設定を可変とすることで、その時々で必要最低限のマージンを設定することが可能となり、衛星の性能を活かした効率的な運用が可能となる。具体的には、誤差予測値(地上側では誤差推定値)に応じてマージン設定をすることで過大なマージンを設定することなく衛星側の運用計画を地上側で正確に推定することができる。
図14は、実施の形態3における運用計画部の処理の流れを示すフローチャートである。図14は、図11の運用計画部23の運用計画算出部231、パラメータ誤差予測部232、およびマージン設定部233の処理を含む処理の流れの一例を示す。なお、以下で図10と同じ符号を付したものは、基本的には同じ内容を示す。
まず、ステップST401は、パラメータ誤差予測部232が、運用パラメータを衛星側運用パラメータとして衛星側にアップロードした時点からの経過時間を求める。次に、パラメータ誤差予測部232は、運用パラメータの中で、上述のように誤差モデルを有する運用パラメータについて、誤差を予測し、誤差予測値に応じた計画マージンを設定、変更し、変更した計画マージンをとった運用パラメータに基づく制約条件を満たす運用計画を求める。以下、具体的な処理をステップごとに説明する。
ステップST402は、パラメータ誤差予測部232が、ST401で求めた経過時間と、対象とする運用パラメータの誤差モデルとから経過時間後の誤差予測値を求める。
次に、ステップST503は、マージン設定部233が、ST402で求めた誤差計算結果(誤差予測値)から上述のような計画マージン値を算出する。さらにステップST504は、マージン設定部233が、運用計画算出部231が算出する上で用いる運用パラメータの設計マージン値を設定または変更する。ステップST505は、運用計画算出部231が、設計マージンが設定された運用パラメータに基づく制約条件を満たす運用計画を求める。
図14では、誤差モデルがある運用パラメータについて、ST402からST504を実行する処理を記載したが、各ステップで誤差モデルがある運用パラメータについて処理を実行しても良い。
図6は、本実施の形態における地上側運用計画装置10を実現するためのコンピュータ1000のハードウェア構成を例示する図でもあり、プロセッサ1001、メモリ1002、記憶装置1003(メモリで構成することも可能)、入出力インターフェース1004、通信インターフェース1005によって構成することができる。
運用パラメータ設定部11、運用計画推定部13、運用制御推定部14および運用パラメータ送信部15の各機能を記述したプログラムは、記憶装置1003にインストールされている。また、プログラムは、必要に応じてメモリ1002に呼び出されて、プロセッサ1001によって、運用パラメータ設定部11、運用計画推定部13、運用制御推定部14、運用パラメータ送信部15として機能する。記憶装置1003は、地上側運用パラメータ記憶部12として機能し、地上側運用パラメータを格納する。
また、本実施の形態における衛星側運用計画装置20を実現するためのコンピュータのハードウェア構成を図6と同様にすることもできる。この場合、運用計画部23および運用制御部24の各機能を記述したプログラムは、記憶装置1003にインストールされており、必要に応じてメモリ1002に呼び出されて、プロセッサ1001によって運用計画部23および運用制御部24として機能する。記憶装置1003は、衛星側運用パラメータ記憶部22として機能し、衛星側運用パラメータを格納する。
このように、運用計画部23が、運用計画算出部231、パラメータ誤差予測部232に加えてさらにマージン設定部233を備え、運用パラメータの誤差予測値に応じて運用計画算出部231にて用いる衛星側計画マージンを変更する。その一方で、運用計画推定部13が、運用計画算出推定部131、パラメータ誤差推定部132に加えてさらにマージン設定推定部133を備え、運用パラメータの誤差推定値に応じて運用計画算出推定部131にて用いる地上側計画マージンを変更する。ここで、パラメータ誤差推定部132は、パラメータ誤差予測部232と、運用計画算出推定部131は、運用計画算出部231と、マージン設定推定部133は、マージン設定部233と同一の解法を有する。具体的には、運用計画推定部13は、上述の図14の処理フローと同様の処理を行う。これにより、衛星側、地上側ともに必要十分な計画マージンを設定でき、より効率的な運用計画を作成できる。すなわち、自律化による運用負荷軽減を実現しつつ、運用計画結果に応じて、必要に応じてコマンドを追加して計画変更する等、柔軟な運用も可能であり、人工衛星を効率的に運用できる。
10 地上側運用計画装置、20 衛星側運用計画装置、11 運用パラメータ設定部、12 地上側運用パラメータ記憶部、13 運用計画推定部、14 運用制御推定部、22 衛星側運用パラメータ記憶部、23 運用計画部、24 運用制御部、131 運用計画算出推定部、132 パラメータ誤差推定部、133 マージン設定推定部、231 運用計画算出部、232 パラメータ誤差予測部、233 マージン設定部。

Claims (12)

  1. 人工衛星を運用する際に用いる運用パラメータを設定する運用パラメータ設定部と、
    前記運用パラメータを記憶する衛星側運用パラメータ記憶部と、
    前記衛星側運用パラメータ記憶部に記憶された衛星側運用パラメータを用いて前記人工衛星の衛星側運用計画を算出する運用計画部と、
    前記衛星側運用パラメータの情報と同一な前記運用パラメータの情報を記憶する地上側運用パラメータ記憶部と、
    前記地上側運用パラメータ記憶部に記憶された地上側運用パラメータを用いて前記衛星側運用計画を地上側運用計画として推定する運用計画推定部と、
    を備えたことを特徴とする人工衛星の自律運用計画システム。
  2. 請求項1に記載の人工衛星の自律運用計画システムであって、
    前記運用パラメータ設定部は、前記人工衛星と地上設備とが通信可能な時間帯に前記衛星側運用パラメータ記憶部へ前記運用パラメータをアップロードすることを特徴とする人工衛星の自律運用計画システム。
  3. 請求項1または請求項2に記載の人工衛星の自律運用計画システムであって、
    前記運用計画部は、前記衛星側運用パラメータの誤差予測値を算出するパラメータ誤差予測部を備え、前記誤差予測値を用いて前記衛星側運用計画を算出し、
    前記運用計画推定部は、前記地上側運用パラメータの誤差推定値を算出するパラメータ誤差推定部を備え、前記誤差推定値を用いて前記地上側運用計画を算出することを特徴とする人工衛星の自律運用計画システム。
  4. 請求項3に記載の人工衛星の自律運用計画システムであって、
    前記運用計画部は、前記誤差予測値に応じた衛星側計画マージンを設定するマージン設定部を備え、前記衛星側計画マージンを用いて前記衛星側運用計画を算出し、
    前記運用計画推定部は、前記誤差推定値に応じた地上側計画マージンを設定する地上側マージン設定推定部を備え、前記地上側計画マージンを用いて前記地上側運用計画を推定することを特徴とする人工衛星の自律運用計画システム。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の人工衛星の自律運用計画システムであって、
    前記衛星側運用パラメータ及び前記衛星側運用計画を用いて前記人工衛星の運用を制御する運用制御部を備え、
    前記運用制御部は、前記人工衛星に搭載しているGNSS受信機の情報を用いて軌道予測値を算出し、前記軌道予測値を用いて前記人工衛星の運用を制御することを特徴とする人工衛星の自律運用計画システム。
  6. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の人工衛星の自律運用計画システムであって、
    前記衛星側運用パラメータ及び前記衛星側運用計画を用いて前記人工衛星の運用を制御する運用制御部と、
    前記運用制御部で制御される前記人工衛星の運用を前記地上側運用パラメータ及び前記地上側運用計画を用いて推定する運用制御推定部とを備えることを特徴とする人工衛星の自律運用計画システム。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の人工衛星の自律運用計画システムであって、
    前記運用パラメータ、前記衛星側運用パラメータおよび前記地上側運用パラメータは、衛星の将来の軌道を予測するためのモデル化軌道パラメータ、地上局の位置座標を示すパラメータ、データ中継衛星の軌道位置に関するパラメータまたは観測対象の位置を示すパラメータを含むことを特徴とする人工衛星の自律運用計画システム。
  8. 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の人工衛星の自律運用計画システムであって、
    前記衛星側運用計画および前記地上側運用計画は、前記人工衛星の姿勢駆動開始および終了、または前記人工衛星に搭載する機器の駆動および終了を含むことを特徴とする人工衛星の自律運用計画システム。
  9. 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の人工衛星の自律運用計画システムであって、
    前記運用計画推定部は、前記地上側運用パラメータによって定まる制約条件を満たす前記地上側運用計画を、前記運用計画部が前記衛星側運用計画を算出するのと同じ解法により算出することを特徴とする人工衛星の自律運用計画システム。
  10. 人工衛星を運用する際に用いる運用パラメータを設定する運用パラメータ設定部と、
    衛星側運用パラメータ記憶部に前記運用パラメータを記憶させる情報と同一な前記運用パラメータの情報を記憶する地上側運用パラメータ記憶部と、
    前記地上側運用パラメータ記憶部に記憶された地上側運用パラメータを用いて、前記人工衛星の側で算出される衛星側運用計画を地上側運用計画として推定する運用計画推定部とを備えたことを特徴とする人工衛星の運用計画装置。
  11. 請求項10に記載の人工衛星の運用計画装置であって、
    前記地上側運用パラメータ及び前記運用計画推定部が推定した地上側運用計画を用いて、前記衛星側運用パラメータ記憶部に記憶された前記運用パラメータ及び前記衛星側運用計画を用いた前記人工衛星の運用制御を推定する運用制御推定部を備えたことを特徴とする人工衛星の運用計画装置。
  12. 請求項10または11に記載の人工衛星の運用計画装置であって、
    前記人工衛星の衛星側運用パラメータとして前記運用パラメータ設定部で求めた前記運用パラメータを前記人工衛星へ伝送する伝送部を備えたことを特徴とする人工衛星の運用計画装置。
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