JPWO2017200039A1 - 細胞培養方法、培地及び培地キット - Google Patents

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Abstract

本発明の課題は、簡便な工程による細胞増殖能に優れた細胞培養方法、及び上記した細胞培養方法において使用される培地及び培地キットを提供することである。本発明によれば、ヒト型リコンビナント蛋白質が溶解している培地において細胞を培養することを含む、細胞培養方法であって、ヒト型リコンビナント蛋白質が、ラミニン、コラーゲン、ゼラチン又はこれらの改変体であり、培地におけるヒト型リコンビナント蛋白質の含有量が0.01ng/mL〜500μg/mLである、細胞培養方法が提供される。

Description

本発明は、ヒト型リコンビナント蛋白質が溶解している培地を用いた細胞培養方法に関する。本発明はさらに、ヒト型リコンビナント蛋白質を含む培地及び培地キットに関する。
接着して増殖する細胞を培養する際には、フィブロネクチン又はコラーゲン等の細胞外マトリックスをコートした培養基材上において細胞を培養することが一般的である。例えば、特許文献1には、歯肉上皮細胞の培養において、細胞外マトリックスがコートされた培養器を用いる歯肉上皮細胞の培養方法が記載されており、細胞外マトリックスとしては、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチンなどが記載されている。
また、リコンビナント蛋白質を含む培地を用いて細胞を培養することが知られている。特許文献2には、生体親和性を有する高分子ブロックと細胞含有培養液との混合物をインキュベートすることによって、生体親和性を有する高分子ブロックと細胞とを含み、複数個の細胞間の隙間に複数個の高分子ブロックが配置されている細胞構造体を製造することが記載されている。特許文献3には、リコンビナントヒトアルブミンが0.1〜2質量%の量で添加されているヒト胚の体外受精及び培養用培養液が記載されている。特許文献4には、以下の(a)〜(c)ステップを、(a)ステップの後、(b)及び(c)ステップを順次繰り返すことを特徴とする未分化状態を維持したままヒト多能性幹細胞を培養する方法が記載されている。(a)アクチビンを含む多能性幹細胞用培地である第一の培地でヒト多能性幹細胞を培養するステップ;(b)第一の培地を、アクチビンを含まない多能性幹細胞用培地である第二の培地に交換してヒト多能性幹細胞を培養するステップ;(c)第一の培地でヒト多能性幹細胞を継代培養するステップ。
特開2011−78326号公報 国際公開WO2011/108517号公報 国際公開WO2009/122541号公報 特開2012−175962号公報
細胞外マトリックスをコートした培養基材を使用して細胞を培養する場合、実験者自身が細胞外マトリックスを培養基材にコートするか、又は細胞外マトリックスがコートされた培養基材を市販品として購入して使用する必要があった。しかし、実験者自身が細胞外マトリックスを培養基材にコートする場合は、作業工程が増えるという問題があり、市販品を購入する場合には入手できる基材の種類が限定されるという問題があり、細胞の大量培養においては工程面及びコスト面からの制約があった。
本発明は、簡便な工程による細胞増殖能に優れた細胞培養方法を提供することを解決すべき課題とする。さらに本発明は、上記した本発明の細胞培養方法において使用される培地及び培地キットを提供することを解決すべき課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ヒト型リコンビナント蛋白質が溶解している培地を用いた細胞培養方法において、ヒト型リコンビナント蛋白質としてラミニン、コラーゲン、ゼラチン又はこれらの改変体を使用し、培地におけるヒト型リコンビナント蛋白質の含有量を0.01ng/mL〜500μg/mLとすることによって、簡便な工程による細胞増殖能に優れた細胞培養方法を提供できることを見出した。本発明は上記知見に基づいて完成したものである。本発明によれば以下の発明が提供される。
[1] ヒト型リコンビナント蛋白質が溶解している培地において細胞を培養することを含む、細胞培養方法であって、ヒト型リコンビナント蛋白質が、ラミニン、コラーゲン、ゼラチン又はこれらの改変体であり、培地におけるヒト型リコンビナント蛋白質の含有量が0.01ng/mL〜500μg/mLである、細胞培養方法。
[2] 培地におけるヒト型リコンビナント蛋白質の含有量が0.01ng/mL〜300μg/mLである、[1]に記載の細胞培養方法。
[3] ヒト型リコンビナント蛋白質が、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有するリコンビナントゼラチンを含む、[1]又は[2]に記載の細胞培養方法。
[4] ヒト型リコンビナント蛋白質が、コラーゲンに特徴的なGly−X−Yで示される配列の繰り返しを有し、X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、複数個のGly−X−Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、ヒト型リコンビナント蛋白質の分子量が2kDa以上100kDa以下である、[1]から[3]の何れか一に記載の細胞培養方法。
[5] ヒト型リコンビナント蛋白質が、コラーゲンに特徴的なGly−X−Yで示される配列の繰り返しを有し、X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、複数個のGly−X−Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、ヒト型リコンビナント蛋白質の分子量が10kDa以上90kDa以下である、[1]から[4]の何れか一に記載の細胞培養方法。
[6] ヒト型リコンビナント蛋白質が、コラーゲンに特徴的なGly−X−Yで示される配列の繰り返しを有し、X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、複数個のGly−X−Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、ヒト型リコンビナント蛋白質が細胞接着シグナルを一分子中に2配列以上含む、[1]から[5]の何れか一に記載の細胞培養方法。
[7] 細胞接着シグナルがArg−Gly−Aspで示されるアミノ酸配列である、[6]に記載の細胞培養方法。
[8] ヒト型リコンビナント蛋白質のアミノ酸配列が、下記式で示される、[1]から[7]の何れか一に記載の細胞培養方法。
A−[(Gly−X−Y)nm−B
式中、Aは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、Bは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、n個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、n個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、nは3〜100の整数を示し、mは2〜10の整数を示す。なお、n個のGly−X−Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
[9] ヒト型リコンビナント蛋白質のアミノ酸配列が、下記式で示される、[1]から[8]の何れか一に記載の細胞培養方法。
Gly−Ala−Pro−[(Gly−X−Y)633−Gly
式中、63個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、63個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す。なお、63個のGly−X−Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
[10] ヒト型リコンビナント蛋白質が、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列、又は(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有し、細胞接着性を有するアミノ酸配列を有する、[1]から[9]の何れか一に記載の細胞培養方法。
[11] 細胞が、接着細胞である、[1]から[10]の何れか一に記載の細胞培養方法。
[12] 基礎培地成分と、溶解したヒト型リコンビナント蛋白質とを含む培地であって、ヒト型リコンビナント蛋白質が、ラミニン、コラーゲン、ゼラチン又はこれらの改変体であり、培地におけるヒト型リコンビナント蛋白質の含有量が0.01ng/mL〜500μg/mLである、培地。
[13] 5容量%以下の血清をさらに含む、[12]に記載の培地。
[14] 基礎培地成分とヒト型リコンビナント蛋白質とを別々に含む培地キットであって、ヒト型リコンビナント蛋白質が、ラミニン、コラーゲン、ゼラチン又はこれらの改変体であり、基礎培地成分とヒト型リコンビナント蛋白質とを混合して製造される培地におけるヒト型リコンビナント蛋白質の含有量が0.01ng/mL〜500μg/mLである、培地キット。
本発明の細胞培養方法は、簡便な工程であり、細胞増殖能に優れている。本発明の培地及び培地キットによれば、簡便な工程により細胞増殖能に優れた細胞培養を行うことができる。
図1は、軟骨由来細胞Yub2478を用いた5継代での細胞増殖曲線を示す。 図2は、軟骨由来細胞Yub2478を用いた短期培養時の細胞増殖率を示す。 図3は、培養容器を示す。 図4は、骨髄由来細胞BMSCを用いた培養バッグ表面への細胞接着能を調べる試験における細胞の画像を示す。 図5は、骨髄由来細胞BMSCを用いた培養バッグ表面への細胞接着率を示す。 図6は、CBE3添加時の細胞数の濃度依存性を示す。 図7は、骨髄由来細胞UDE BMを用いた5継代での細胞増殖曲線を示す。 図8は、軟骨由来細胞Yub2478を用いた短期培養時の細胞増殖を示す。 図9は、細胞外マトリクス及び細胞接着関連遺伝子群の遺伝子発現プロファイルを示す。 図10は、細胞外マトリクス及び細胞接着関連遺伝子群の遺伝子発現プロファイルを示す。 図11は、細胞周期関連遺伝子群の遺伝子発現プロファイルを示す。 図12は、細胞周期関連遺伝子群の遺伝子発現プロファイルを示す。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の細胞培養方法は、ヒト型リコンビナント蛋白質が溶解している培地において細胞を培養することを含む細胞培養方法であって、ヒト型リコンビナント蛋白質が、ラミニン、コラーゲン、ゼラチン又はこれらの改変体であり、培地におけるヒト型リコンビナント蛋白質の含有量が0.01ng/mL〜500μg/mLである方法である。
リコンビナント蛋白質を含む培地を用いて細胞を培養することは、特許文献2〜4に記載されている。しかし、特許文献2に記載の方法は、生体親和性を有する高分子ブロックと細胞含有培養液との混合物をインキュベートすることによって高分子ブロックと細胞との細胞構造体を製造する方法であり、リコンビナント蛋白質を培地に溶解させる本発明の方法とは全く異なる。特許文献3には、リコンビナントヒトアルブミンを含むヒト胚の体外受精及び培養用培養液が記載されているが、本発明で使用するヒト型リコンビナント蛋白質についての記載はなく、またリコンビナントヒトアルブミンの添加量も、本発明におけるヒト型リコンビナント蛋白質の含有量とは異なる。特許文献4には、アクチビンを含む多能性幹細胞用培地が記載されているが、本発明で使用するヒト型リコンビナント蛋白質についての記載はない。
後記の実施例に示す通り、間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell:MSC)及びそれに類する接着増殖系の細胞に対して、培地中へヒト型リコンビナント蛋白質を添加するだけで(培養基材にヒト型リコンビナント蛋白質をコートすることなしに)、培養器材(6ウエル細胞培養プレート、培養バッグ)への細胞の接着能が改善され、さらに細胞の増殖能が改善された。さらに、培養器材にヒト型リコンビナント蛋白質をコートする場合と比べて、少量のヒト型リコンビナント蛋白質によって細胞の接着及び増殖能を改善することができる。上記の通り、ラミニン、コラーゲン、ゼラチン又はこれらの改変体から選ばれるヒト型リコンビナント蛋白質を0.01ng/mL〜500μg/mLという含有量で溶解させた培地を使用することによって優れた細胞増殖能を達成できることは、予想外なことであった。
本発明によりヒト型リコンビナント蛋白質がコートされた培養器材を使用することなく、培地中にヒト型リコンビナント蛋白質を直接添加するだけで、細胞の接着及び増殖能を改善できることが示された。本発明によれば、細胞の大量培養が可能になり、治療用細胞の供給という観点からの利点は大きく、再生医療の実用化への貢献が期待される。
また再生医療の実用化のもう1つの課題として、血清不使用(Serum free)及び動物由来成分不使用(Xeno free)があるが、本発明においてはヒト型リコンビナント蛋白質を使用することから、この点においても有利である。
本発明の細胞培養方法、培地及び培地キットは、例えば、再生医療における治療用細胞の製造に利用することができる。
[1]細胞培養方法
本発明の細胞培養方法は、添加したヒト型リコンビナント蛋白質が溶解している培地において細胞を培養することを含む。
ヒト型リコンビナント蛋白質が溶解しているとは、培地が液体であり、この液体培地にヒト型リコンビナント蛋白質の60質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくはヒト型リコンビナント蛋白質の100質量%が溶解していることを意味する。
本発明で使用するヒト型リコンビナント蛋白質は、ラミニン、コラーゲン、ゼラチン又はこれらの改変体である。
ヒト型とは、ヒトにおける蛋白質のアミノ酸配列に由来することを意味する。
リコンビナント蛋白質とは、遺伝子組み換え技術により製造される蛋白質であり、具体的には、目的蛋白質をコードする遺伝子を有する宿主細胞において発現された蛋白質を意味する。
改変体とは、ラミニン、コラーゲン又はゼラチンのアミノ酸配列の一部を改変したアミノ酸配列を有する蛋白質であって、改変を有さない元のラミニン、コラーゲン又はゼラチンと同等の生理活性を有する蛋白質と意味する。改変とは、1〜数個(好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個)のアミノ酸残基の欠失、置換、付加、及び/又は挿入を意味する。
培地におけるヒト型リコンビナント蛋白質の含有量は0.01ng/mL〜500μg/mLであり、好ましくは0.01ng/mL〜300μg/mLであり、より好ましくは0.01ng/mL〜100μg/mLであり、さらに好ましくは0.01ng/mL〜10μg/mLである。培地におけるヒト型リコンビナント蛋白質の含有量は、0.02ng/mL以上、0.03ng/mL以上、0.04ng/mL以上、0.05ng/mL以上、0.06ng/mL以上、0.07ng/mL以上、0.08ng/mL以上、または0.09ng/mL以上でもよい。培地におけるヒト型リコンビナント蛋白質の含有量は、1μg/mL以下、0.5μg/mL以下、0.4μg/mL以下、0.3g/mL以下、0.2μg/mL以下、0.1μg/mL以下、0.05μg/mL以下、0.04μg/mL以下、または0.03μg/mL以下でもよい。
ヒト型リコンビナント蛋白質の含有量が0.01ng/mLより小さいと細胞増殖能が低下し、また500μg/mLより大きくすることは細胞増殖能の観点から不要であり、またコスト的にも不利である。
本発明においては、培地にヒト型リコンビナント蛋白質を添加すればよく、培養器材にヒト型リコンビナント蛋白質をコートすることは不要である。間葉系幹細胞のような接着増殖系の細胞を培養する場合、培地にヒト型リコンビナント蛋白質を添加することによって、培養器材への接着能が改善され、結果として細胞増殖能が改善する。
培地におけるヒト型リコンビナント蛋白質の含有量は、LC−MS(液体クロマトグラフ質量分析)等の質量分析により測定することができる。
<ヒト型リコンビナント蛋白質>
本発明においては、ヒト型リコンビナント蛋白質として、ラミニン、コラーゲン、ゼラチン又はこれらの改変体を使用するが、好ましくはゼラチンである。
ゼラチンとしては、遺伝子組み換え技術により作られたゼラチン類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドもしくは蛋白様物質を使用することができ、好ましくはコラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有するリコンビナントゼラチンを使用することができる。
リコンビナントゼラチンは、コラーゲンに特徴的なGly−X−Yで示される配列(X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す)の繰り返しを有するものが好ましい。ここで、複数個のGly−X−Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
リコンビナントゼラチンとしては、例えばEP1014176、米国特許6992172号、国際公開WO2004/85473、国際公開WO2008/103041等に記載のものを用いることができるが、これらに限定されるものではない。本発明で用いるリコンビナントゼラチンとして好ましいものは、以下の態様のリコンビナントゼラチンである。
リコンビナントゼラチンは、天然のゼラチン本来の性能から、生体親和性に優れ、且つ天然由来ではないことで牛海綿状脳症(BSE)などの懸念がなく、非感染性に優れている。また、リコンビナントゼラチンは天然ゼラチンと比べて均一であり、配列が決定されているので、強度及び分解性においても架橋等によってブレを少なく精密に設計することが可能である。
リコンビナントゼラチンの分子量は、特に限定されないが、好ましくは2000以上100000以下(2kDa(キロダルトン)以上100kDa以下)であり、より好ましくは2500以上95000以下(2.5kDa以上95kDa以下)であり、さらに好ましくは5000以上90000以下(5kDa以上90kDa以下)であり、最も好ましくは10000以上90000以下(10kDa以上90kDa以下)である。
リコンビナントゼラチンは、コラーゲンに特徴的なGly−X−Yで示される配列の繰り返しを有することが好ましい。ここで、複数個のGly−X−Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Gly−X−Y において、Glyはグリシンを表し、X及びYは、任意のアミノ酸(好ましくは、グリシン以外の任意のアミノ酸)を表す。コラーゲンに特徴的なGly−X−Yで示される配列とは、ゼラチン・コラーゲンのアミノ酸組成及び配列における、他の蛋白質と比較して非常に特異的な部分構造である。この部分においてはグリシンが全体の約3分の1を占め、アミノ酸配列では3個に1個の繰り返しとなっている。グリシンは最も簡単なアミノ酸であり、分子鎖の配置への束縛も少なく、ゲル化に際してのヘリックス構造の再生に大きく寄与している。X及びYで表されるアミノ酸はイミノ酸(プロリン、オキシプロリン)が多く含まれ、全体の10%〜45%を占めることが好ましい。より好ましくは、リコンビナントゼラチンの配列の80%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上のアミノ酸が、Gly−X−Yの繰り返し構造である。
一般的なゼラチンは、極性アミノ酸のうち電荷を持つものと無電荷のものが1:1で存在する。ここで、極性アミノ酸とは具体的にシステイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン及びアルギニンを指し、このうち極性無電荷アミノ酸とはシステイン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン及びチロシンを指す。本発明で用いるリコンビナントゼラチンにおいては、構成する全アミノ酸のうち、極性アミノ酸の割合が10〜40%であり、好ましくは20〜30%である。且つ上記極性アミノ酸中の無電荷アミノ酸の割合が好ましくは5%以上20%未満であり、より好ましくは5%以上10%未満である。さらに、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン及びシステインのうち好ましくはいずれか1アミノ酸、より好ましくは2以上のアミノ酸を配列上に含まない。本発明で用いるリコンビナントゼラチンは、好ましくは、セリン及びスレオニンを含まない。本発明で用いるリコンビナントゼラチンは、より好ましくは、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン及びシステインを含まない。
一般にポリペプチドにおいて、細胞接着シグナルとして働く最小アミノ酸配列が知られている(例えば、株式会社永井出版発行「病態生理」Vol.9、No.7(1990年)527頁)。本発明で用いるリコンビナントゼラチンは、これらの細胞接着シグナルを一分子中に2配列以上有するものでもよい。具体的な配列としては、接着する細胞の種類が多いという点で、アミノ酸一文字表記で表される、RGD配列、LDV配列、REDV配列、YIGSR配列、PDSGR配列、RYVVLPR配列、LGTIPG配列、RNIAEIIKDI配列、IKVAV配列、LRE配列、DGEA配列、及びHAV配列の配列が好ましい。さらに好ましくはRGD配列、YIGSR配列、PDSGR配列、LGTIPG配列、IKVAV配列及びHAV配列、特に好ましくはRGD配列である。RGD配列のうち、好ましくはERGD配列である。
本発明で用いるリコンビナントゼラチンにおけるRGD配列の配置としては、RGD間のアミノ酸数が0〜100の間、好ましくは25〜60の間で均一でないことが好ましい。
この最小アミノ酸配列の含有量は、蛋白質1分子中3〜50個が好ましく、さらに好ましくは4〜30個、特に好ましくは5〜20個である。最も好ましくは12個である。
本発明で用いるリコンビナントゼラチンにおいて、アミノ酸総数に対するRGD(Arg−Gly−Asp)モチーフの割合は少なくとも0.4%であることが好ましい。リコンビナントゼラチンが350以上のアミノ酸を含む場合、350のアミノ酸の各ストレッチが少なくとも1つのRGDモチーフを含むことが好ましい。アミノ酸総数に対するRGDモチーフの割合は、より好ましくは少なくとも0.6%であり、さらに好ましくは少なくとも0.8%であり、さらに一層好ましくは少なくとも1.0%であり、特に好ましくは少なくとも1.2%であり、最も好ましくは少なくとも1.5%である。リコンビナントペプチド内のRGDモチーフの数は、250のアミノ酸あたり、好ましくは少なくとも4、より好ましくは6、さらに好ましくは8、特に好ましくは12以上16以下である。RGDモチーフの0.4%という割合は、250のアミノ酸あたり、少なくとも1つのRGD配列に対応する。RGDモチーフの数は整数であるので、0.4%の特徴を満たすには、251のアミノ酸からなるゼラチンは、少なくとも2つのRGD配列を含まなければならない。好ましくは、本発明のリコンビナントゼラチンは、250のアミノ酸あたり、少なくとも2つのRGD配列を含み、より好ましくは250のアミノ酸あたり、少なくとも3つのRGD配列を含み、さらに好ましくは250のアミノ酸あたり、少なくとも4つのRGD配列を含む。本発明のリコンビナントゼラチンのさらなる態様としては、少なくとも4つのRGDモチーフ、好ましくは6つ、より好ましくは8つ、さらに好ましくは12以上16以下のRGDモチーフを含む。
リコンビナントゼラチンは部分的に加水分解されていてもよい。
好ましくは、本発明で用いるリコンビナントゼラチンは、下記式で示される。
A−[(Gly−X−Y)nm−B
式中、Aは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、Bは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、n個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、n個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す。nは好ましくは3〜100の整数を示し、15〜70の整数がより好ましく、50〜65の整数がさらに好ましい。mは好ましくは2〜10の整数を示し、より好ましくは3〜5の整数を示す。なお、n個のGly−X−Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
より好ましくは、本発明で用いるリコンビナントゼラチンは、下記式で示される。
Gly−Ala−Pro−[(Gly−X−Y)633−Gly
式中、63個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、63個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す。なお、63個のGly−X−Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
繰り返し単位には天然に存在するコラーゲンの配列単位を複数結合することが好ましい。ここで言う天然に存在するコラーゲンとは天然に存在するものであればいずれでも構わないが、好ましくはI型、II型、III型、IV型、又はV型コラーゲンである。より好ましくは、I型、II型、又はIII型コラーゲンである。別の形態によると、上記コラーゲンの由来は好ましくは、ヒト、ウシ、ブタ、マウス又はラットであり、より好ましくはヒトである。
本発明で用いるリコンビナントゼラチンの等電点は、好ましくは5〜10であり、より好ましくは6〜10であり、さらに好ましくは7〜9.5である。リコンビナントゼラチンの等電点の測定は、等電点電気泳動法(Maxey,C.R.(1976;Phitogr.Gelatin 2,Editor Cox,P.J.Academic,London,Engl.参照)に記載されたように、1質量%ゼラチン溶液をカチオン及びアニオン交換樹脂の混晶カラムに通したあとのpHを測定することで実施することができる。
好ましくは、リコンビナントゼラチンは脱アミン化されていない。
好ましくは、リコンビナントゼラチンはテロペプタイドを有さない。
好ましくは、リコンビナントゼラチンは、アミノ酸配列をコードする核酸により調製された実質的に純粋なポリペプチドである。
リコンビナントゼラチンであるヒト型リコンビナント蛋白質は、特に好ましくは、
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列;又は
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上(好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上)の配列同一性を有し、細胞接着性を有するアミノ酸配列:
を有する。
リコンビナントゼラチンであるヒト型リコンビナント蛋白質は、最も好ましくは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する。
本発明における配列同一性は、以下の式で計算される値を指す。
%配列同一性=[(同一残基数)/(アラインメント長)]×100
2つのアミノ酸配列における配列同一性は当業者に公知の任意の方法で決定することができ、BLAST((Basic Local Alignment Search Tool))プログラム(J.Mol.Biol.215:403−410,1990)等を使用して決定することができる。
リコンビナントゼラチンは、配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ細胞接着性を有するアミノ酸配列を有するものでもよい。
「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」における「1若しくは数個」とは、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個を意味する。
リコンビナントゼラチンは、当業者に公知の遺伝子組み換え技術によって製造することができ、例えばEP1014176A2号公報、米国特許第6992172号公報、国際公開WO2004/85473号、国際公開WO2008/103041号等に記載の方法に準じて製造することができる。具体的には、所定のリコンビナントゼラチンのアミノ酸配列をコードする遺伝子を取得し、これを発現ベクターに組み込んで、組み換え発現ベクターを作製し、これを適当な宿主に導入して形質転換体を作製する。得られた形質転換体を適当な培地で培養することにより、リコンビナントゼラチンが産生されるので、培養物から産生されたリコンビナントゼラチンを回収することにより、リコンビナントゼラチンを調製することができる。
本発明で用いるヒト型リコンビナント蛋白質の親水性値「1/IOB」値は、好ましくは0から1.0であり、より好ましくは、0から0.6であり、さらに好ましくは0から0.4である。IOBとは、藤田穆により提案された有機化合物の極性/非極性を表す有機概念図に基づく、親疎水性の指標であり、その詳細は、例えば、"Pharmaceutical Bulletin", vol.2, 2, pp.163-173(1954)、「化学の領域」vol.11, 10, pp.719-725(1957)、「フレグランスジャーナル」, vol.50, pp.79-82(1981)等で説明されている。簡潔に言えば、全ての有機化合物の根源をメタン(CH4)とし、他の化合物はすべてメタンの誘導体とみなして、その炭素数、置換基、変態部、環等にそれぞれ一定の数値を設定し、そのスコアを加算して有機性値(OV)、無機性値(IV)を求め、この値を、有機性値をX軸、無機性値をY軸にとった図上にプロットしていくものである。有機概念図におけるIOBとは、有機概念図における有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比、すなわち「無機性値(IV)/有機性値(OV)」をいう。有機概念図の詳細については、「新版有機概念図−基礎と応用−」(甲田善生等著、三共出版、2008)を参照されたい。本明細書中では、IOBの逆数をとった「1/IOB」値で親疎水性を表している。「1/IOB」値が小さい(0に近づく)程、親水性であることを表す表記である。
本発明で用いるヒト型リコンビナント蛋白質のGrand average of hydropathicity(GRAVY)値で表される親疎水性指標は、0.3以下、マイナス9.0以上であることが好ましく、0.0以下、マイナス7.0以上であることがさらに好ましい。Grand average of hydropathicity(GRAVY)値は、『Gasteiger E., Hoogland C., Gattiker A., Duvaud S., Wilkins M.R., Appel R.D., Bairoch A.;Protein Identification and Analysis Tools on the ExPASy Server;(In) John M. Walker (ed): The Proteomics Protocols Handbook, Humana Press (2005). pp. 571-607』及び『Gasteiger E., Gattiker A., Hoogland C., Ivanyi I., Appel R.D., Bairoch A.; ExPASy: the proteomics server for in-depth protein knowledge and analysis.; Nucleic Acids Res. 31:3784-3788(2003).』の方法により得ることができる。
<細胞及び細胞培養方法>
本発明の方法で培養する細胞は、培地で培養できる細胞であればその種類は特に限定されない。細胞としては、接着細胞でも浮遊細胞の何れでもよいが、好ましくは接着細胞である。接着細胞とは、培養器や基材に接着する性質を有する細胞をいう。
細胞は、好ましくは、動物細胞であり、より好ましくは脊椎動物由来細胞、特に好ましくはヒト由来細胞である。脊椎動物由来細胞(特に、ヒト由来細胞)の種類は、万能細胞、体性幹細胞、前駆細胞、又は成熟細胞の何れでもよい。
万能細胞としては、例えば、胚性幹(ES)細胞、生殖幹(GS)細胞、又は人工多能性幹(iPS)細胞を使用することができる。
体性幹細胞としては、例えば、間葉系幹細胞(MSC)、造血幹細胞、羊膜細胞、臍帯血細胞、骨髄由来細胞、心筋幹細胞、脂肪由来幹細胞、又は神経幹細胞を使用することができる。
前駆細胞及び成熟細胞としては、例えば、皮膚、真皮、表皮、筋肉、心筋、神経、骨、軟骨、内皮、脳、上皮、心臓、腎臓、肝臓、膵臓、脾臓、口腔内、角膜、骨髄、臍帯血、羊膜、又は毛に由来する細胞を使用することができる。
ヒト由来細胞としては、例えば、ES細胞、iPS細胞、MSC、軟骨細胞、骨芽細胞、骨芽前駆細胞、間充織細胞、筋芽細胞、心筋細胞、心筋芽細胞、神経細胞、肝細胞、ベータ細胞、線維芽細胞、角膜内皮細胞、血管内皮細胞、角膜上皮細胞、羊膜細胞、臍帯血細胞、骨髄由来細胞、又は造血幹細胞を使用することができる。
培養した細胞を移植に用いる場合、細胞の由来は、自家細胞又は他家細胞の何れでも構わない。
細胞の培養は、所望によりCO2インキュベータ(5%CO2インキュベータ)内で行うことができ、一般的には30〜45℃、好ましくは35℃〜40℃(例えば、37℃)で、1時間〜72時間、好ましくは1時間〜24時間、より好ましくは1時間〜12時間、さらに好ましくは2時間〜8時間行うことができる。細胞増殖の状況によっては、72時間を超えて培養することもできる。培養は静置培養でもよいし、振盪培養でもよい。
[2]培地及び培地キット
本発明はさらに、基礎培地成分と、溶解したヒト型リコンビナント蛋白質とを含む培地であって、ヒト型リコンビナント蛋白質が、ラミニン、コラーゲン、ゼラチン又はこれらの改変体であり、培地におけるヒト型リコンビナント蛋白質の含有量が0.01ng/mL〜500μg/mLである、培地を提供する。
本発明はさらに、基礎培地成分とヒト型リコンビナント蛋白質とを別々に含む培地キットであって、ヒト型リコンビナント蛋白質が、ラミニン、コラーゲン、ゼラチン又はこれらの改変体であり、基礎培地成分とヒト型リコンビナント蛋白質とを混合して製造される培地におけるヒト型リコンビナント蛋白質の含有量が0.01ng/mL〜500μg/mLである、培地キットを提供する。
ヒト型リコンビナント蛋白質とその好ましい態様は、本明細書中上記した通りである。
基礎培地としては、特に限定されないが、例えば、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、MEM(イーグル最小必須培地)、F12、Ham、RPMI1640、MCDB(MCDB102、104、107、131、153、199など)、L15、SkBM(登録商標)、RITC80−7、MesenPro(ライフテクノロジーズ)などを挙げることができる。これらの基礎培地の多くは市販されている。
基礎培地成分としては、上記の基礎培地を、標準的な組成のまま(例えば、市販されたままの状態で)用いてもよいし、細胞種や細胞条件に応じてその組成を適宜変更してもよい。従って、基礎培地成分は、公知の組成のものに限定されず、1又は2以上の成分が追加、除去、増量もしくは減量されたものでもよい。
基礎培地成分に含まれるアミノ酸としては、特に限定されず、例えば、L−アルギニン、L−シスチン、L−グルタミン、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリンなどが挙げられる。
基礎培地成分に含まれるビタミン類としては、特に限定されず、例えば、D−パントテン酸カルシウム、塩化コリン、葉酸、i−イノシトール、ナイアシンアミド、リボフラビン、チアミン、ピリドキシン、ビオチン、リポ酸、ビタミンB12、アデニン、チミジンなどが挙げられる。
基礎培地成分に含まれる電解質としては、特に限定されず、例えば、CaCl2、KCl、MgSO4、NaCl、NaH2PO4、NaHCO3、Fe(NO33、FeSO4、CuSO4、MnSO4、Na2SiO3、(NH4)6Mo724、NaVO3、NiCl2、ZnSO4などが挙げられる。
基礎培地成分には、これらの成分のほか、D−グルコースなどの糖類、ピルビン酸ナトリウム、フェノールレッドなどのpH指示薬、プトレシン、抗生物質などを含んでもよい。
本発明の培地は、血清を含む培地でもよいし、血清を含まない培地でもよい。本発明の培地における血清の含有量は、0容量%以上20容量%以下であることが好ましく、0容量%以上10容量%以下であることがより好ましく、0容量%以上5容量%以下であることがさらに好ましく、0容量%以上2容量%以下であることが特に好ましい。
なお、細胞のヒトへの適用を想定した場合においては、培地は、異種血清成分を実質的に含まないことが好ましい。ここで「異種血清成分」は、レシピエントとは異なる種の生物に由来する血清成分を意味する。例えば、レシピエントがヒトである場合、ウシやウマに由来する血清、例えば、ウシ胎児血清(FBS、FCS)、仔ウシ血清(CS)、ウマ血清(HS)などが異種血清成分に該当する。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
(1)リコンビナントゼラチン
リコンビナントゼラチンとして以下のCBE3を使用した(国際公開WO2008/103041号公報に記載)。
CBE3:
分子量:51.6kD
構造: GAP[(GXY)633
アミノ酸数:571個
RGD配列:12個
イミノ酸含量:33%
ほぼ100%のアミノ酸がGXYの繰り返し構造である。CBE3のアミノ酸配列には、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン及びシステインは含まれていない。CBE3はERGD配列を有している。
等電点:9.34
GRAVY値:−0.682
1/IOB値:0.323
アミノ酸配列(配列表の配列番号1)(国際公開WO2008/103041号公報の配列番号3と同じ。但し末尾のXは「P」に修正)
GAP(GAPGLQGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGPAGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPP)3G
(2)CBE3のコート量の測定
以下の実験において、CBE3のコート量はEP0138092A2に記載の方法に準じて測定した。なお、試料は、CBE3をコートしたプレートにNaOHを添加し、50℃で6時間以上処理して得られたアミノ酸を用いた。
[実施例1]軟骨由来細胞Yub2478を用いた5継代での細胞増殖(5週間)
・水準
水準1:CBE3コート(コート量:5.7μg/well)
水準2:CBE3添加 (添加量:5.7μg/well、コート時と同一量の添加)
水準3:CBE3添加 (添加量:57ng/well、コート時の1/100量の添加)
水準4:CBE3無添加(対照)
・材料
使用細胞:Yub2478(国立成育医療研究センター(以降、成育研)で樹立された軟骨由来細胞)Yub2478は参考文献(Nasu, Takayama S, Umezawa A. Endochondral ossification model system: designed cell fate of human epiphyseal chondrocytes during long-term implantation.J. Cell Physiol. 2015 ; 230 : 1376-1388. )に記載の方法に準じて樹立した。
使用培地:MesenPro RS(2容量%ウシ胎児血清(FBS)含有、ライフテクノロジーズ)
培養容器:6well組織培養用(TC)プレート(Falcon)
・方法
CBE3コート法:
cellnest(登録商標)(0.1質量%CBE3水溶液、富士フイルム)をプレートの各wellに2mL滴下し、プレートを37℃のインキュベータ内で2時間放置した。cellnest(登録商標)を各wellから吸引除去し、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)を各wellに6mL滴下し、プレートを30分間放置した。PBSを各wellから吸引除去し、プレートを使用するまで冷蔵保管した。プレートの各wellに培地2mLを滴下し、細胞を播種して培養を開始した。細胞播種量は、0.2×106cell/wellである。
CBE3添加法:
培地を各wellに2mL滴下し、次いで、cellnest(登録商標)(0.1質量%CBE3水溶液、富士フイルム)を所定の濃度になるよう各wellに滴下した。対照(CBE3無添加)のwellには、cellnest(登録商標)と同量のPBSを滴下した。ピペッティングしてwell内の液を均一化した後、細胞を播種して培養を開始した。細胞播種量は、0.2×106cell/wellである。
細胞培養法:
上記プロトコルにて培養開始後、37℃/5%CO2濃度のインキュベータ内でプレートを保存した。1週間経過後、トリプシン溶液(和光純薬工業)を用いて細胞を剥離し、Vi−Cell(BD biosciences、以下「BD」とも表記する)を用いて細胞数を計測した。新たにプレートを準備して、細胞を再び播種(0.2×106cell/well)して継代し、37℃/5%CO2濃度のインキュベータ内でプレートを保存した。1週間後に上記のトリプシン溶液による細胞の剥離、細胞数の計測、細胞の継代、及び37℃/5%CO2濃度のインキュベータ内でのプレートの保存という操作を繰り返し、5継代まで実施した。
・計算方法
PD(細胞の分裂回数)を以下の式により計算することにより得た細胞増殖曲線を図1に示す。
PD(細胞の分裂回数)=前回継代時のPD値+log2(計測細胞数/播種細胞数)
・結果
水準4に比べ、水準1〜3では全て増殖が改善される。また水準1〜3では増殖にほとんど差がなく、CBE3コートに比べCBE3添加は1/100まで減量しても効果が変わらない。
[実施例2]軟骨由来細胞Yub2478を用いた短期培養時(培養1日後〜培養3日後)の細胞増殖率
・水準
水準1:CBE3コート(コート:5.7μg/well)
水準2:CBE3添加 (添加量:57ng/well、コート時の1/100量の添加)
水準3:CBE3無添加(Control)
・材料
使用細胞:Yub2478(成育研で樹立された軟骨由来細胞)
使用培地:MesenPro RS(2容量%ウシ胎児血清(FBS)含有、ライフテクノロジーズ)
培養容器:6well組織培養用(TC)プレート(Falcon)
・方法
CBE3コート法は、実施例1と同様に行った。
CBE3添加法は、実施例1と同様に行った。
細胞播種量は、0.2×106cell/wellである。
細胞培養法:
上記プロトコルにて培養開始後、37℃/5%CO2濃度のインキュベータ内でプレートを保存した。プレートは各水準2枚ずつ準備した。所定の期間経過後、トリプシン溶液(和光純薬工業)を用いて細胞を剥離し、1日後に1枚のプレート、3日後に残りの1枚のプレートについて、Vi−Cell(BD)を用いて細胞数を計測した。
・計算方法
以下の式により計算することにより得た細胞増殖率を図2に示す。
細胞増殖率 = 培養3日後の細胞数/培養1日後の細胞数
・結果
水準3に比べ、水準1及び水準2はともに増殖率が改善される。また水準1と水準2では細胞増殖率にほとんど差がなく、CBE3コートとCBE3添加(1/100量)では効果が変わらない。
[実施例3]骨髄由来細胞を用いた培養バッグ表面への細胞接着能
・水準
水準1:CBE3添加(添加量1:57ng/well)
水準2:CBE3無添加(Control)
・材料
使用細胞:骨髄由来幹細胞(Bone marrow derived stem cell: BMSC)(骨髄由来細胞、Lonza)(商品名HMSC、カタログ番号PT-2501)
使用培地:MesenPro RS(2容量%ウシ胎児血清(FBS)含有、ライフテクノロジーズ)
培養容器:6φ(直径6cm)のディッシュ(Falcon)上に、培養バッグ(ニプロ)を切り取ったシートをバッグ内部が上になるように置き、その上に穴の空いた(底がない)シリコン製well(SARSTEDT社)を密着させ、培養容器とした(図3)。
観察装置:蛍光顕微鏡BZ−X710(キーエンス)
・方法
CBE3添加法:
培地を各wellに0.5mL滴下した。cellnest(登録商標)(0.1質量%CBE3水溶液、富士フイルム)を所定の濃度になるよう各wellに滴下した。Control(CBE3無添加)のwellには、cellnest(登録商標)と同量のPBSバッファーを滴下した。ペッティングしてwell内の液を均一化した後、細胞を播種して培養を開始した。細胞播種量は、0.05×106cell/wellである。
細胞培養法:
上記プロトコルにて培養開始後、37℃/5%CO2濃度の環境にした蛍光顕微鏡チャンバー内に上記培養容器を置いて、チャンバー蓋を閉じた。視野内の細胞数がほぼ同数になるよう、観察する視野の位置決めをした。5分に1枚、wellの画像を撮影し、180分まで継続した。各時間における画像から、接着していない細胞数をカウントした(接着した細胞は黒く映り、カウントされない)。0分、120分及び180分後における細胞の画像を図4に示す。白い点が接着していない細胞を示し、全体的に黒く、周囲が若干白く残っているものが接着した細胞を示す。
・計算方法
以下の式により計算することにより得た接着率を図5に示す。
接着率[%]=(1−その時間における細胞数の計測値/細胞数の最大計測値)×100
・結果
水準2に比べ水準1の接着が良好で、CBE3を添加することにより細胞が早く培養バッグ表面に接着する。
[実施例4]CBE3添加時の濃度依存性
軟骨由来細胞Yub2505を用いた短期培養時(培養7日後)の細胞増殖
・水準
水準1:CBE3添加なし
水準2:CBE3添加量(0.0028μg/mL)
水準3:CBE3添加量(0.028μg/mL)
水準4:CBE3添加量(0.28μg/mL)
水準5:CBE3添加量(2.8μg/mL)
水準6:CBE3添加量(280μg/mL)
・材料
使用細胞:Yub2505(成育研で樹立された軟骨由来細胞)Yub2505は参考文献(Nasu, Takayama S, Umezawa A. Endochondral ossification model system: designed cell fate of human epiphyseal chondrocytes during long-term implantation. J. Cell Physiol. 2015 ; 230 : 1376-1388. )に記載の方法に準じて樹立した。
使用培地:MesenPro RS(2容量%ウシ胎児血清(FBS)含有、ライフテクノロジーズ)
培養容器:6well組織培養用(TC)プレート(Falcon)
・方法
CBE3添加法は、実施例1と同様に行った。細胞播種量は、0.1×106cell/wellである。
細胞培養法:
上記プロトコルにて培養開始後、37℃/5%CO2濃度のインキュベータ内でプレートを保存した。7日後、トリプシン溶液(和光純薬工業)を用いて細胞を剥離し、Vi−Cell(BD)を用いて細胞数を計測した。
・結果
細胞数の計測結果を図6に示す。
水準1に比べ、水準2〜水準6で増殖が良好であった。CBE3添加量0.028μg/mLである水準3以降は増殖能改善効果にあまり差がなく、CBE3添加量280μg/mLである水準6では、水準3から5と比較して、増殖能改善効果が逆に低下した。但し、無添加である水準1と比べると、水準6は良好な増殖を維持していた。
[実施例5]CBE3添加時の濃度依存性
骨髄由来細胞BMSCを用いた短期培養時(培養7日後)の細胞増殖
・水準
水準1:CBE3添加なし
水準2:CBE3添加量(0.00009μg/mL=0.09ng/mL)
水準3:CBE3添加量(0.028μg/mL)
水準4:CBE3添加量(513μg/mL)
水準5:CBE3添加量(627μg/mL)
・材料
使用細胞:骨髄由来幹細胞(Bone marrow derived stem cell:BMSC) (骨髄由来細胞、Lonza) (商品名HMSC、カタログ番号PT−2501)
使用培地:MesenPro RS(2容量%ウシ胎児血清(FBS)含有、ライフテクノロジーズ)
培養容器:6φ(直径6cm)のディッシュ(住友ベークライト)
・方法
CBE3添加法は、実施例1と同様に行った。細胞播種量は、0.15×106cell/wellである。
・細胞培養法:
上記プロトコルにて培養開始後、37℃/5%CO2濃度のインキュベータ内でディッシュを保存した。7日後、トリプシン溶液(和光純薬工業)を用いて細胞を剥離し、Vi−Cell(BD)を用いて細胞数を計測した。
・結果
細胞数の計測結果を表1に示す。
判定は、A:細胞数0.33×106cells以上、B:細胞数0.30×106cells以上0.33×106cells未満、C:0.27×106cells以上0.30×106cells未満、D:0.27×106cells未満とした。
水準1に比べ、水準2および水準3で増殖が良好であった。水準4および水準5では増殖能改善効果が低下した。
[参考例1]:CBE3コートとフィブロネクチンコートの細胞増殖比較
骨髄由来細胞UDE BMを用いて5継代での細胞増殖(5週間)を比較した。
・水準
水準1:CBE3コート(コート量:5.7μg/well)
水準2:フィブロネクチン・コート(市販品:バイオコート、Falcon)
・材料
使用細胞:UDE BM(成育研で樹立された骨髄由来細胞)UDE BMは以下の方法で樹立した。
骨から骨髄液を取り出し、密度勾配遠心分離によって細胞を集めた。回収した細胞をPBSで洗浄し、DMEM(10%FBS含有)培地中に播種して培養した。培養容器に接着した細胞を回収した。
使用培地:MesenPro RS(2容量%ウシ胎児血清(FBS)含有、ライフテクノロジーズ)
培養容器:
水準1:6well組織培養用(TC)プレート(Falcon)
水準2:市販品:バイオコート(既にフィブロネクチンがコートされたものをそのまま使用、Falcon)
・方法
CBE3コート法:
cellnest(登録商標)(0.1質量%CBE3水溶液、富士フイルム)をプレートの各wellに2mL滴下し、プレートを37℃インキュベータ内で2時間放置した。cellnest(登録商標)を各wellから吸引除去し、PBSを各wellに6mL滴下し、プレートを30分間放置した。PBSを各wellから吸引除去し、プレートを使用するまで冷蔵保管した。プレートの各wellに培地2mLを滴下し、細胞を播種して培養を開始した。細胞播種量は、0.2×106cell/wellである。
細胞培養法:
上記プロトコルにて培養開始後、37℃/5%CO2濃度のインキュベータ内でプレートを保存した。1週間経過後、トリプシン溶液(和光純薬工業)を用いて細胞を剥離し、Vi−Cell(BD)を用いて細胞数を計測した。新たにプレートを準備して、細胞を再び播種(0.2×106cell/well)して継代し、37℃/5%CO2濃度のインキュベータ内でプレートを保存した。1週間後に上記のトリプシン溶液による細胞の剥離、細胞数の計測、細胞の継代、及び37℃/5%CO2濃度のインキュベータ内でのプレートの保存という操作を繰り返し、5継代まで実施した。
・計算方法
PD(細胞の分裂回数)を以下の式により計算することにより得た細胞増殖曲線を図7に示す。
PD(細胞の分裂回数)=前回継代時のPD値+log2(計測細胞数/播種細胞数)
・結果
水準2に比べ水準1の増殖が良好で、コート材として一般的に使用されているフィブロネクチンよりもCBE3のほうが良好な増殖を示す。
[参考例2]CBE3コートとフィブロネクチンコートの細胞増殖比較
軟骨由来細胞Yub2478を用いて短期培養時(培養1日後)の細胞増殖を比較した。
・水準
水準1:CBE3コート(コート量:5.7μg/well)
水準2:フィブロネクチン・コート(市販品:バイオコート、Falcon)
・材料
使用細胞:Yub2478(成育研で樹立された軟骨由来細胞)、
使用培地:DMEM/F12培地(10容量%ウシ胎児血清(FBS)添加)
培養容器:
水準1:6well組織培養用(TC)プレート(Falcon)
水準2:市販品:バイオコート(既にフィブロネクチンがコートされたものをそのまま使用、Falcon)
・方法
CBE3コート法:
cellnest(登録商標)(0.1質量%CBE3水溶液、富士フイルム)をプレートの各wellに2mL滴下し、プレートを37℃のインキュベータ内で2時間放置した。cellnest(登録商標)を各wellから吸引除去し、PBSを各wellに6mL滴下し、プレートを30分間放置した。PBSを各wellから吸引除去し、プレートを使用するまで冷蔵保管した。プレートの各wellに培地2mLを滴下し、細胞を播種して培養を開始した。細胞播種量は、0.2×106cell/wellである。
細胞培養法:
上記プロトコルにて培養開始後、37℃/5%CO2濃度のインキュベータ内でプレートを保存した。1日後、トリプシン溶液(和光純薬工業)を用いて細胞を剥離し、Vi−Cell(BD)を用いて細胞数を計測した。
・結果
細胞数の計測結果を図8に示す。
水準2に比べ、水準1は増殖が改善される。
[参考例3]CBE3添加有無における遺伝子発現の差
骨髄由来細胞BMSCを用いた短期培養時(培養8日後)の細胞増殖と遺伝子発現
・水準
水準1:CBE3添加なし
水準2:CBE3添加量(0.028μg/mL)
・材料
使用細胞:骨髄由来幹細胞(Bone marrow derived stem cell:BMSC) (骨髄由来細胞、Lonza) (商品名HMSC、カタログ番号PT−2501)
使用培地:MesenPro RS(2容量%ウシ胎児血清(FBS)含有、ライフテクノロジーズ)
培養容器:10φ(直径10cm)のディッシュ(住友ベークライト)
・方法
CBE3添加法は、実施例1と同様に行った。細胞播種量は、0.4×106cell/wellである。
・細胞培養法:
上記プロトコルにて培養開始後、37℃/5%CO2濃度のインキュベータ内でディッシュを保存した。8日後、トリプシン溶液(和光純薬工業)を用いて細胞を剥離し、Vi−Cell(BD)を用いて細胞数を計測した。
・mRNA抽出法
上記プロトコルにて細胞数計測後、その計測に使用した残りの細胞を用いて遠心(1000rpm、5分)して上清を除去した。PBS(リン酸緩衝生理食塩水)を加えて懸濁し、エッペンチューブ(エッペンドルフ)に移して再び遠心(2000rpm、5分)して上清を除去、細胞ペレットとして−80℃にて保存した。細胞ペレットからのmRNA抽出は、RNeasy Plus MiniKit(キアゲン、74134)及びQIA Shredder(キアゲン、79656)を用いて行った。抽出したmRNAの検定は、Nano Drop ND−1000(サーモフィッシャーサイエンティフィック)を使用して260nmと280nmの吸光度を測定することによって実施した。
・cDNA調製法
抽出したmRNA、プライマー、dNTP(サーモフィッシャーサイエンティフィック、18427−013)を混合してProFlexTMPCRシステム(ライフテクノロジーズ)を用いてアニーリングを行い、5×FSバッファー、0.1M DTT、RNase OUT、Super Script IV Reverse Transcriptase(何れもインビトロジェン)を用いてPCR反応を行い、cDNAを得た。上記プロトコルと同様にして調製したcDNAの検定を実施した。
・遺伝子発現プロファイル
上記水準1、2で培養した細胞から調製したcDNAを用いて遺伝子発現プロファイルの差を確認した。RT2 ProfilerTM PCR Arrays(キアゲン)のHuman Extracellular Matrix&Cell Adhesion Molecules(PAHS−013Z)及びHuman Cell Cycle(PAHS−020Z)を使用してRTPCRによる遺伝子発現の確認を行った。
・結果
細胞外マトリクス及び細胞接着関連遺伝子群の遺伝子発現プロファイルを図9および図10に示し、細胞周期関連遺伝子群の遺伝子発現プロファイルを図11および図12に示す。図9〜図12において、各遺伝子の欄の左側の棒グラフは、水準1(CBE3添加なし)を示し、各遺伝子の欄の右側の棒グラフは、水準2(CBE3添加)を示す。細胞外マトリクス及び細胞接着関連遺伝子群にはCBE3添加によって発現上昇する遺伝子が認められる一方で、細胞周期関連遺伝子群には発現変化がほとんど認められなかった。

Claims (14)

  1. ヒト型リコンビナント蛋白質が溶解している培地において細胞を培養することを含む、細胞培養方法であって、ヒト型リコンビナント蛋白質が、ラミニン、コラーゲン、ゼラチン又はこれらの改変体であり、培地におけるヒト型リコンビナント蛋白質の含有量が0.01ng/mL〜500μg/mLである、細胞培養方法。
  2. 培地におけるヒト型リコンビナント蛋白質の含有量が0.01ng/mL〜300μg/mLである、請求項1に記載の細胞培養方法。
  3. ヒト型リコンビナント蛋白質が、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有するリコンビナントゼラチンを含む、請求項1又は2に記載の細胞培養方法。
  4. ヒト型リコンビナント蛋白質が、コラーゲンに特徴的なGly−X−Yで示される配列の繰り返しを有し、X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、複数個のGly−X−Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、ヒト型リコンビナント蛋白質の分子量が2kDa以上100kDa以下である、請求項1から3の何れか一項に記載の細胞培養方法。
  5. ヒト型リコンビナント蛋白質が、コラーゲンに特徴的なGly−X−Yで示される配列の繰り返しを有し、X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、複数個のGly−X−Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、ヒト型リコンビナント蛋白質の分子量が10kDa以上90kDa以下である、請求項1から4の何れか一項に記載の細胞培養方法。
  6. ヒト型リコンビナント蛋白質が、コラーゲンに特徴的なGly−X−Yで示される配列の繰り返しを有し、X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、複数個のGly−X−Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、ヒト型リコンビナント蛋白質が細胞接着シグナルを一分子中に2配列以上含む、請求項1から5の何れか一項に記載の細胞培養方法。
  7. 細胞接着シグナルがArg−Gly−Aspで示されるアミノ酸配列である、請求項6に記載の細胞培養方法。
  8. ヒト型リコンビナント蛋白質のアミノ酸配列が、下記式で示される、請求項1から7の何れか一項に記載の細胞培養方法。
    A−[(Gly−X−Y)nm−B
    式中、Aは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、Bは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、n個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、n個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、nは3〜100の整数を示し、mは2〜10の整数を示す。なお、n個のGly−X−Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
  9. ヒト型リコンビナント蛋白質のアミノ酸配列が、下記式で示される、請求項1から8の何れか一項に記載の細胞培養方法。
    Gly−Ala−Pro−[(Gly−X−Y)633−Gly
    式中、63個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、63個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す。なお、63個のGly−X−Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
  10. ヒト型リコンビナント蛋白質が、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列、又は(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有し、細胞接着性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1から9の何れか一項に記載の細胞培養方法。
  11. 細胞が、接着細胞である、請求項1から10の何れか一項に記載の細胞培養方法。
  12. 基礎培地成分と、溶解したヒト型リコンビナント蛋白質とを含む培地であって、ヒト型リコンビナント蛋白質が、ラミニン、コラーゲン、ゼラチン又はこれらの改変体であり、培地におけるヒト型リコンビナント蛋白質の含有量が0.01ng/mL〜500μg/mLである、培地。
  13. 5容量%以下の血清をさらに含む、請求項12に記載の培地。
  14. 基礎培地成分とヒト型リコンビナント蛋白質とを別々に含む培地キットであって、ヒト型リコンビナント蛋白質が、ラミニン、コラーゲン、ゼラチン又はこれらの改変体であり、基礎培地成分とヒト型リコンビナント蛋白質とを混合して製造される培地におけるヒト型リコンビナント蛋白質の含有量が0.01ng/mL〜500μg/mLである、培地キット。
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