JPWO2017154675A1 - ファブリー病処置剤、外用鎮痛剤、および発汗増進剤 - Google Patents

ファブリー病処置剤、外用鎮痛剤、および発汗増進剤 Download PDF

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Abstract

本発明の一実施形態に係るファブリー病処置剤、外用鎮痛剤、および発汗増進剤は、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体を含む。

Description

本発明は、ファブリー病処置剤、外用鎮痛剤、および発汗増進剤に関する。
ファブリー病は、リソソーム酵素であるα−ガラクトシダーゼ(α−Gal)の先天的な欠損により、その基質であるグロボトリアオシルセラミド(GL−3)やガラビオシルセラミド(GL−2)、血液型B型糖脂質など非還元末端にガラクトースを持つ糖脂質が、リソソーム内、ひいては、血管内皮細胞、心筋細胞、神経節細胞をはじめとする様々な細胞に蓄積し、全身の臓器に関連する様々な臨床症状を呈する遺伝性の疾患である。
GL−3等の蓄積による障害を受けた臓器により、心機能障害、腎機能障害、疼痛を含む神経症状、被角血管腫、角膜混濁(かくまくこんだく)などの様々な症状が出現する。
したがって、皮膚や汗腺などの附属器の異常によると思われるファブリー病の症状も発生する。一例として、発汗の異常がある。特に子供の患者の場合には、発汗低下は鬱熱や熱性けいれんを引き起こし、脳症に至るなど重篤となる傾向がある。
ファブリー病の疼痛は、通常の鎮痛剤の効果は小さい。
被角血管腫(アンギオケラトーマ)は本症の代表的な皮膚病変の一つであり、全身に多発し、ひどくなると微細な刺激で出血し、止血が困難なことが多い。さらに、出血部が細菌などの感染経路となる例もある。
ファブリー病に対する処置としては、欠損している酵素を外部から補充する酵素補充療法(ERT)が従来用いられてきた(非特許文献1)。
特許文献1では、TFEBリン酸化阻害剤のリソソーム蓄積症に対する効果が指摘されている。一般的な培養細胞を用いて、ラパマイシンを含む様々な化合物がリソソームまたはリソソームに関与する分子に及ぼす影響が考察されているが、ラパマイシンはTorin 1などの他の化合物に比較して、蓄積物の除去という点では効果が低いと記載されている。
特許文献2には、シロリムス(ラパマイシン)を含む外用薬を使用することによる、結節性硬化症の治療について記載されている。特許文献3には、ラパマイシンが発汗を抑制することが記載されている。
また、非特許文献2には、ラパマイシン(シロリムス)を神経線維腫の患者に経口投与したところ、鎮痛効果については明確ではなく今後の検討を要することが記載されている。
日本国公表特許公報「特表2014−511391号(2014年5月15日公表)」 国際公開第2012/105521号パンフレット(2012年8月9日公開) 国際公開第2015/199248号パンフレット(2015年12月30日公開)
Genetics and Molecular Biology, 35, 4 (suppl), 947-954 (2012) Neuro Oncol. 2015 Apr;17(4):596-603
従来ファブリー病の処置に用いられてきたERTでは、ファブリー病患者に見られる症状、中でも皮膚病変に対しては、十分な効果が得られなかった。
本発明の一態様は、前記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、従来の処置に抵抗性の皮膚病変や神経症状を含む、ファブリー病の症状を処置するのに有効なファブリー病処置剤を提供することにある。
本発明の他の態様の目的は、疼痛の処置に有効な外用鎮痛剤を提供することにある。
本発明のさらに他の態様の目的は、発汗低下の処置に有効な(発汗を増加させる)処置剤を提供することにある。
本発明者らは、前記課題に鑑み鋭意検討した結果、ファブリー病処置剤としてラパマイシンおよびラパマイシン誘導体が有効であること、ラパマイシンおよびラパマイシン誘導体を含有する外用薬に鎮痛剤としての効果があること、並びに、ラパマイシンおよびラパマイシン誘導体が発汗増進剤としての効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
<1>ラパマイシンおよびラパマイシン誘導体からなる群より選択される少なくとも1つを有効成分として含有する、ファブリー病処置剤。
<2>前記ラパマイシン誘導体が、エベロリムス、テムシロリムス、リダフォロリムスおよびゾタロリムスからなる群より選択される少なくとも1つである、<1>に記載のファブリー病処置剤。
<3>外用薬である、<1>または<2>に記載のファブリー病処置剤。
<4>ファブリー病の皮膚病変の処置に用いられる、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のファブリー病処置剤。
<5>ラパマイシンおよびラパマイシン誘導体からなる群より選択される少なくとも1つを有効成分として含有する、外用鎮痛剤。
<6>前記ラパマイシン誘導体が、エベロリムス、テムシロリムス、リダフォロリムスおよびゾタロリムスからなる群より選択される少なくとも1つである、<5>に記載の外用鎮痛剤。
<7>ラパマイシンおよびラパマイシン誘導体からなる群より選択される少なくとも1つを有効成分として含有する、発汗増進剤。
<8>前記ラパマイシン誘導体が、エベロリムス、テムシロリムス、リダフォロリムスおよびゾタロリムスからなる群より選択される少なくとも1つである、<7>に記載の発汗増進剤。
<9>無汗症または低汗症の処置用である、<7>または<8>に記載の発汗増進剤。
本発明の一態様はファブリー病の種々の症状を処置する効果、疼痛を緩和、軽減する効果、および低発汗症もしくは無発汗症において発汗を増進する効果を奏する。
本発明の一実施形態に係るファブリー病処置剤は、ファブリー病患者の全身の臓器、組織に発症する病変を処置することができる。特に皮膚病変(例えば四肢疼痛、発汗低下、被角血管腫)を含むファブリー病の症状の処置剤として有効である。本発明の一実施形態に係るファブリー病処置剤を外用薬として使用すれば、局所の病変(例えば皮膚病変)の処置に特に有効である。
本発明の一実施形態に係るファブリー病処置剤、外用鎮痛剤および発汗増進剤は、病変部に直接塗布できるため、ERTのように頻回な通院が不必要で、使用が簡便であり、かつ、病変部における有効成分の濃度を高く保持することができる。
本発明の一実施形態に係るファブリー病処置剤および外用鎮痛剤は、局所製剤の形態でありうるので、病変部に有効成分が高濃度に存在しても、血中の有効成分濃度は比較的低く保たれ、生体への悪影響(例えば副作用)が少なく安全な処置を可能とする。
(a)は、野生型マウスにおけるラパマイシンの鎮痛効果を示すグラフである。それぞれ(a−1)は熱刺激に対する、(a−2)は圧刺激に対する鎮痛効果を表している。(b)は、野生型マウスにおけるラパマイシンの発汗抑制効果を示すグラフである。 (a)は、野生型マウスの汗腺における、ラパマイシンの活性型mTOR(p−mTOR)発現に対する抑制効果を示す蛍光染色像である。(b)は、野生型マウスの汗腺における、ラパマイシンの活性型mTOR(p−mTOR)発現に対する抑制効果を示すウエスタンブロットの結果である。 (a)は、ファブリー病モデルマウスは疼痛の閾値が野生型より低い(逃避までの時間が野生型よりも短い)ことを示す棒グラフである。(b)は、ファブリー病モデルマウスにおける発汗減少の症状を示す棒グラフである。(c)は、ファブリー病モデルマウスの汗腺において、活性型mTOR(p−mTOR)の発現が促進されていることを示す蛍光染色像である。 (a)は、ファブリー病モデルマウスに対してラパマイシンを投与することにより、疼痛閾値が増加した(逃避までの時間が延長した)ことを示す棒グラフである。(b)は、ファブリー病モデルマウスに対してラパマイシンを投与することにより、発汗が増加したことを示す棒グラフである。(c)は、ファブリー病モデルマウスの汗腺において、ラパマイシンの投与によってp−mTORの発現が抑制されていることを示す蛍光染色像である。 (a)は、ファブリー病患者の被角血管腫を、ヘマトキシリン・エオジン染色した染色像である。(b−1)は、ERTを施す前の被角血管腫患部における、p−mTORの発現を示す蛍光染色像である。(b−2)は、ERTを施した後の被角血管腫患部における、p−mTORの発現を示す蛍光染色像である。ERT処置前後のいずれにおいても、p−mTORの発現が示されている。(c)は、8年間にわたりERTを施した被角血管腫患部の、経時変化を示す像である。 (a)は、野生型マウスにラパマイシン外用薬を塗布した際の鎮痛効果を示す棒グラフである。(b)〜(d)は、健常人に対してラパマイシン外用薬を塗布した際の鎮痛効果を表す折れ線グラフである。実線は0.4%ラパマイシンを塗布した結果を示しており、破線は基剤のみを塗布した結果を示している。 (a)は、野生型マウスの肉球において、ニューロンを染色した染色像である。(b)は、ファブリー病モデルマウスの肉球において、ニューロンを染色した染色像である。(c)は、野生型マウスおよびファブリー病モデルマウスにラパマイシンを塗布した後(24時間後)における、BDNF(脳由来神経栄養因子)の血中濃度を示すグラフである。ラパマイシンが投与されることにより、ファブリー病モデルマウスの血中BDNFが増加している。(d)は、野生型マウスの後根神経節のニューロンが、BDNFによって伸長したことを示す顕微鏡像である。 (a)は、ヒト神経芽細胞種由来細胞(SK−N−MC)内へのカルシウムイオンの流入を示す画像である。それぞれ、野生型細胞(左上)、ラパマイシンを投与した野生型細胞(右上)、α−galAノックアウト細胞(左下)およびラパマイシンを投与したα−galAノックアウト細胞(右下)の結果である。(b)は、無処理の細胞、α−galAノックアウト細胞およびコントロール細胞に対する、カルシウムイオンの流入の経時変化を表すグラフである。(c)は、ラパマイシンを投与した無処理の細胞、ラパマイシンを投与したα−galAノックアウト細胞、およびラパマイシンを投与したコントロール細胞に対する、カルシウムイオンの流入の経時変化を表すグラフである。 野生型マウスおよびファブリー病モデルマウスに熱刺激を与えた際の、脳の活性を示すMRI画像である。それぞれ未処置のマウス(左側)およびラパマイシンを投与したマウス(右側)の結果である。 (a)は、中枢神経の神経細胞の正常状態を表すモデル図である。(b)は、ファブリー病患者において、中枢神経の神経細胞へのカルシウムイオンの流入が過剰になる推定作用機序を表すモデル図である。(c)は、本発明の一態様に関して、ラパマイシン(シロリムス)の推定作用機序を表すモデル図である。
本発明は以下に説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲において種々の変更が可能である。異なる実施形態や実施例に、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
本明細書においては、特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は「A以上B以下」を意図する。
本発明の一実施形態に係るファブリー病処置剤、外用鎮痛剤、および発汗増進剤は、ファブリー病の処置効果、鎮痛効果、または発汗増進効果をもたらすための薬剤であって、ラパマイシンおよびラパマイシン誘導体からなる群より選択される少なくとも1つを有効成分として含有する。
ラパマイシンおよびラパマイシン誘導体は、従来他の疾患の処置にも用いられており、臨床における安全性が確認されている。それ故に、本実施形態のファブリー病処置剤および外用鎮痛剤は、安全性が高いものである。
前記ラパマイシン誘導体は、特に限定されないが、例えばエベロリムス、テムシロリムス、リダフォロリムスおよびゾタロリムスを挙げることができる。これらは、ラパマイシンの基本骨格とほぼ同じ基本骨格を有しており、ラパマイシンと同等の生理活性を有することが知られている。したがって、これらのラパマイシン誘導体も、ラパマイシンと同様に、本発明の一実施形態に係る有効成分として用いることができる。
外用薬を調製するという観点から言うと、上述した中では、分子量が大きく水溶性であるため経皮吸収が困難と通常考えられるエベロリムスなどよりも、経皮吸収が確認されているラパマイシンを用いることが好ましい。
本発明の一実施形態に係るファブリー病処置剤、外用鎮痛剤および発汗増進剤は、ヒトはもちろんのこと、非ヒト哺乳動物に対しても用いることができる。非ヒト哺乳動物としては、例えば、ヒトを除く哺乳類が挙げられる。ヒトを除く哺乳類としては、例えば、ウシ、イノシシ、ブタ、ヒツジ、ヤギなどの偶蹄類、ウマなどの奇蹄類、マウス、ラット、ハムスター、リスなどのげっ歯類、ウサギなどのウサギ目、イヌ、ネコ、フェレットなどの食肉類などが挙げられる。また、これらの非ヒト動物は、家畜またはコンパニオンアニマル(愛玩動物)であることに限定されるものではなく、野生動物でありうる。
〔(I)ファブリー病処置剤〕
本発明の一実施形態に係るファブリー病処置剤は、ファブリー病患者に発症する様々な症状の処置に用いることができる。ファブリー病の症状としては、例えば、皮膚病変、神経症状、腎機能の低下、心機能の低下、眼症状(角膜病変など)、耳症状(難聴など)、および消化器症状(下痢および腹痛など)が挙げられる。
本明細書において「処置」とは、処置効果をもたらす行為を意味する。処置効果とは、予防効果および治療効果を包含する概念で、例えば、以下の類型に含まれる効果を奏するものである。
(1)処置剤を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の発症を防止する、またはリスクを低減する。
(2)処置剤を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の再発を防止する、またはリスクを低減する。
(3)処置剤を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の徴候が生じることを防止する、またはリスクを低減する。
(4)処置剤を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の重症度を低減する(症状を緩和させる)、または症状を消失させる。
(5)処置剤を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の重症度の増加、または進行を防止する(症状の増悪を防止する)。
(6)処置剤を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の重症度の増加速度、または進行速度を低減する(症状の増悪を緩和する)。
本発明の一実施形態に係るファブリー病処置剤は、ファブリー病の皮膚病変の処置(例えば、治療、または、予防)に好適に用いることができる。それ故に、本発明の一実施形態に係るファブリー病処置剤は、ファブリー病治療剤、または、ファブリー病予防剤であり得る。
本明細書において、用語「ファブリー病の皮膚病変」には、一般的な皮膚病変に加えて、皮膚およびその周辺組織の疼痛(例えば四肢疼痛、肢端感覚異常)、発汗低下、無汗および被角血管腫などの症状も含まれる。
本発明の一実施形態に係るファブリー病処置剤は、ファブリー病の皮膚病変の中でも、皮膚およびその周辺組織の疼痛、発汗低下、無汗、被角血管腫の処置に好適に用いることができる。
従前、ラパマイシンが発汗抑制効果を有することを発明者らは見出していた(特許文献3を参照)。しかし驚くべきことに、ファブリー病においては逆に、ラパマイシンが発汗を促進する効果を有していた。
本発明の一実施形態に係るファブリー病処置剤の投与経路は、限定されるものではなく、経口、経皮、経腸、経静脈、経粘膜などのいずれの投与経路であってもよい。したがって、本発明の一実施形態に係るファブリー病処置剤は、内服薬、外用薬、注射剤、坐剤、吸入剤等の形態でありうる。本発明の一実施形態に係るファブリー病処置剤は、外用薬または内服薬の形態が好ましく、外用薬の形態がより好ましい。
いずれの形態であっても効果的にファブリー病を処置できる。外用薬の形態であれば、生体の局所のファブリー病の病変(例えば皮膚病変)の処置が容易である。一方、内服薬の形態であれば、生体の全身のファブリー病の症状(例えば内臓疾患や皮膚病変)の処置が容易である。外用薬を局所投与すれば、病変部における有効成分の濃度を高く保ち所望の効果を得ることができ、更に血中への移行が少なく副作用が少ない。このため、安全性の観点からは、外用薬が好ましい。
以下に、まず外用薬の形態であるファブリー病処置剤を具体的に説明し、次に内服薬の形態であるファブリー病処置剤を具体的に説明する。
(I−A)外用薬
以下に、外用薬の形態であるファブリー病処置剤について説明する。
外用薬としては、ゲル剤、軟膏剤、貼付剤、パップ剤、リニメント剤、ローション剤、および、クリーム剤などが挙げられる。ゲル剤は、軟膏剤などと比較して、皮膚組織に有効成分が吸収され易く、より好ましい剤形であるといえる。
本発明の一実施形態に係る外用薬に含有される有効成分の量は、特に限定されない。有効成分の血液中への移行を抑え、かつ、皮膚組織中の有効成分の濃度を処置有効濃度にまで高めることによって、全身性の副作用を抑え、かつ、処置効果を得るという観点から、以下の濃度が好適である。
前記有効成分の濃度の下限は、外用薬の総重量を基準として、0.01重量%以上、0.02重量%以上、0.03重量%以上、0.04重量%以上、0.05重量%以上、0.06重量%以上、0.07重量%以上、0.08重量%以上、0.09重量%以上、0.1重量%以上でありうる。
前記有効成分の濃度の上限は、外用薬の総重量を基準として、1.0重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.6重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.25重量%以下、0.2重量%以下でありうる。
前記有効成分の濃度は、例えば、外用薬の総重量を基準として、0.01〜1.0重量%が好ましく、0.02〜0.9重量%がより好ましく、0.03〜0.8重量%がより好ましく、0.04〜0.7重量%がより好ましく、0.05〜0.6重量%がより好ましく、0.06〜0.5重量%がより好ましく、0.07〜0.4重量%がより好ましく、0.08〜0.3重量%がより好ましく、0.09〜0.25重量%がより好ましく、0.1〜0.2重量%が最も好ましい。なお、これらの範囲の下限値は、0.05重量%でありうる。また、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の量は、0.4〜0.8重量%でありうる。
外用薬に含まれるラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の量の上限値は特に限定されないが、例えば、0.8重量%を上限値とすることが好ましく、0.4重量%を上限値とすることがより好ましい。
生体における単位表面積あたりの、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の1日あたりの投与量は特に限定されない。
前記投与量の下限は、1日あたり0.0001mg/cm以上、0.0002mg/cm以上、0.0005mg/cm以上、0.001mg/cm以上、0.002mg/cm以上、0.003mg/cm以上でありうる。
前記投与量の上限は、1日あたり2mg/cm以下、1mg/cm以下、0.5mg/cm以下、0.05mg/cm以下、0.04mg/cm以下、0.03mg/cm以下でありうる。
前記投与量は、例えば、0.0001〜2mg/cm、好ましくは0.0002〜1mg/cm、より好ましくは0.0005〜0.5mg/cm、より好ましくは0.001〜0.05mg/cm、より好ましくは0.002〜0.04mg/cm、さらに好ましくは0.003〜0.03mg/cmである。上述した量のラパマイシンまたはラパマイシン誘導体を、1日に1回投与(塗布などにより)、または複数回に分けて投与すればよい。換言すれば、本発明の一実施形態に係る外用薬は、上述した投与量を実現できるものであることが好ましい。
外用薬の調製方法として、以下のものが挙げられる。(i)ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体を含有している溶液をゲル化することにより、ゲル剤を調製しうる。(ii)軟膏基剤とラパマイシンまたはラパマイシン誘導体とを混合することにより、軟膏剤を調製しうる。(iii)貼付剤、パップ剤、リニメント剤、ローション剤およびクリーム剤は、周知の方法に従って調製しうる。
以下に、ゲル剤および軟膏剤について具体的に説明する。
(I−A−1)ゲル剤
上述したように、本発明の一実施形態に係るファブリー病処置剤は、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体を含有している溶液をゲル化して得られる、ゲル剤でありうる。
ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体を含有している溶液をゲル化する場合には、当該溶液を、ゲル化誘導剤を用いてゲル化すればよい。ゲル化誘導剤として、例えば、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、水酸化アルミニウム、ベントナイトなどが挙げられる。
カルボキシビニルポリマーの具体的な構成は、特に限定されず、カーボポール(登録商標)、ハイビスワコー(登録商標)、アクペック(登録商標)を用いることができる。外用薬として塗布した場合の質感の良さの観点から、これらの中では、カーボポール(登録商標)934P NFまたはカーボポール(登録商標)980が好ましい。
例えば、カーボポール(登録商標)を用いる場合、まず、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体を含有している溶液にカーボポール(登録商標)を添加する。さらに、pH調整剤(例えばトリスヒドロキシメチルアミノメタン、トリエタノールアミン)を添加することによって、前記溶液のpHを中性に調整する。これによって、前記溶液のゲル化を誘導できる。
本発明の一実施形態に係るゲル剤は、好適にはアルコールを含有する。アルコールを含有するにより、ゲル剤に含まれる有効成分を効率よく皮膚組織に吸収させ、患部へ到達させることができる。アルコールの例としては、エタノールおよびイソプロパノールを挙げることができる。有効成分をより効率よく皮膚組織に吸収させるという観点から、エタノールが好ましい。
前記アルコールの量は、特に限定されず、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体を十分に溶解することができる量であればよい。例えば、前記アルコールの重量はラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の重量の100〜300倍でありうるし、120〜250倍でもありうる。外用薬の総重量を基準とした場合は、アルコール量は20重量%以上が好ましい。より好ましくは、30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上が好ましい。アルコール量が60重量%以下ならば、製剤からアルコールが過度に蒸発することがなく、安定した有効成分濃度の製剤を保存(保管)する事ができる。よって、アルコール量は、より好ましくは、50重量%前後(45〜55%)である。
有効成分が十分に溶解するアルコール量を含有することにより、有効成分をより効率よく皮膚組織に吸収させることができる。50重量%以下である限りは、アルコールの量が多いほど有効成分が十分に溶解するため、より効率よく皮膚組織に吸収させることができる。
ゲル剤に含まれる前記ゲル化誘導剤の量は、特に限定されず、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体を含有している溶液がゲル化するために十分な量であればよい。
ゲル剤に含まれるゲル化剤の量は、特に限定されず、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体を含有している溶液がゲル化するために十分な量であればよい。ゲル剤に含まれるゲル化剤の量は、例えば、ゲル剤の総重量を基準として、1.5重量%以上でありうる。より具体的には、ゲル剤の総重量を基準として、1.5〜20重量%、1.5〜15重量%、1.5〜10重量%、1.5〜5重量%、または、1.5〜2.5重量%でありうる。
ゲル剤に含まれるpH調整剤(中和剤)の量は、特に限定されず、溶媒およびゲル化剤の量に応じて適宜設定しうる。ゲル剤に含まれるpH調整剤の量は、例えば、ゲル剤の総重量を基準として、0.5〜5.0重量%、0.5〜2.5重量%、または、0.5〜1.0重量%でありうる。
例えば、ゲル化を誘導する成分として、ゲル化誘導剤(カーボポール(登録商標)など)と、pH調整剤(トリスヒドロキシメチルアミノメタンなど)とを用いる場合、ゲル化誘導剤の量は、外用薬の総重量を基準として、例えば1.6重量%であり、pH調整剤の量は、外用薬の総重量を基準として、例えば0.4重量%、0.6重量%または0.8重量%でありうる。もちろん、本発明は前記の比率に限定されない。
ゲル剤には、上述した有効成分、溶媒(アルコール)、ゲル化剤およびpH調整剤(中和剤)以外の他の成分が含まれていてもよい。前記他の成分としては、例えば、水溶性高分子、水、およびラパマイシンまたはラパマイシン誘導体以外の薬効成分が挙げられる。
前記水溶性高分子としては、例えばポリエチレングリコール、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、および、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
ゲル剤にヒドロキシプロピルセルロースが含まれていれば、当該ゲル剤の粘着性を向上させることができる。つまり、ゲル剤が皮膚から剥がれ難くすることができる。
ゲル剤に含まれる前記他の成分の量は、特に限定されないが、例えば、ゲル剤の総重量を基準として、50重量%以下でありうるし、40重量%以下でもありうるし、30重量%以下でもありうるし、20重量%以下でもありうるし、10重量%以下でもありうる。
ゲル剤に含まれるラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の量は特に限定されない。しかし、有効成分の血液中への移行を抑制することによって全身性の副作用を防ぐことと、皮膚組織中の有効成分の濃度を処置有効濃度にまで高めることによって処置効果を得ることとを両立させる観点から、次の濃度が好適である。
ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の量の下限は、ゲル剤の総重量を基準として、0.01重量%以上、0.02重量%以上、0.03重量%以上、0.04重量%以上、0.05重量%以上、0.06重量%以上、0.07重量%以上、0.08重量%以上、0.09重量%以上、0.1重量%以上でありうる。
ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の量の上限は、ゲル剤の総重量を基準として、1.0重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.6重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.25重量%以下、0.2重量%以下でありうる。
ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の量は、例えば、ゲル剤の総重量を基準として、0.01〜1.0重量%が好ましく、0.02〜0.9重量%がより好ましく、0.03〜0.8重量%がより好ましく、0.04〜0.7重量%がより好ましく、0.05〜0.6重量%がより好ましく、0.06〜0.5重量%がより好ましく、0.07〜0.4重量%がより好ましく、0.08〜0.3重量%がより好ましく、0.09〜0.25重量%がより好ましく、0.1〜0.2重量%が最も好ましい。なお、これらの範囲の下限値は、0.05重量%でありうる。また、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の量は、0.4〜0.8重量%でありうる。
ゲル剤に含まれるラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の量の上限値は特に限定されないが、例えば、0.8重量%を上限値とすることが好ましく、0.4重量%を上限値とすることがより好ましい。
上述した量であれば、効果的に前記ファブリー病の症状を処置できるとともに、ファブリー病処置剤の安全性においても優れている。
生体の単位表面積あたりのゲル剤の塗布量の下限は、0.001g/cm以上、0.002g/cm以上、0.003g/cm以上、0.004g/cm以上、0.005g/cm以上でありうる。
生体の単位表面積あたりのゲル剤の塗布量の上限は、0.01g/cm以下、0.009g/cm以下、0.008g/cm以下、0.007g/cm以下、0.006g/cm以下でありうる。
生体の単位表面積あたりのゲル剤の塗布量は、特に限定されないが、0.001〜0.01g/cm、0.002〜0.009g/cm、0.003〜0.008g/cm、0.004〜0.007g/cm、0.005〜0.006g/cmでありうる。
当該塗布量でゲル剤を、毎日、または、2〜3日に1回塗布すればよい。毎日塗布することが好ましい。毎日塗布する場合は、1日に1〜3回の塗布が好ましく、さらに好ましくは1日に2〜3回の塗布、最も好ましくは1日に2回の塗布である。
また、年齢、投与部位、皮膚の厚さ等により、好適な製剤中の濃度および投与回数を調整することが好ましい。例えば、小さい子供の薄い皮膚や腋下等には、0.05〜0.2%の濃度のゲル剤を1日に1〜3回塗布できる。また、掌、足の裏等には、0.2〜0.8%のゲル剤を1日に1〜2回塗布できる。
以下にゲル剤のさらに具体的な組成の一例を示すが、本発明は当該組成に限定されない。なお、下記構成であれば、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体によるファブリー病処置効果をより高めることができる。また、下記構成であれば、より少ない量のラパマイシンまたはラパマイシン誘導体によって所望の効果を得られるので、生体への悪影響を軽減できる。
ゲル剤は、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の他に、カーボポール(登録商標)934P NF、水、アルコール(例えばエタノールまたはイソプロパノールなどであり、好ましくはエタノールである)、およびトリスヒドロキシメチルアミノメタンを含みうる。
このとき、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、カーボポール(登録商標)934P NF、水、アルコール、およびトリスヒドロキシメチルアミノメタンの重量の比は、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体:カーボポール(登録商標)934P NF:水:アルコール:トリスヒドロキシメチルアミノメタン=(0.5〜2):16:490:(450〜500):6でありうる。
前記比は、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体:カーボポール(登録商標)934P NF:水:アルコール:トリスヒドロキシメチルアミノメタン=(0.5〜2):16:490:(480〜490):6でありうるし、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体:カーボポール(登録商標)934P NF:水:アルコール:トリスヒドロキシメチルアミノメタン=2:16:490:486:6でもありうる。
(I−A−2)軟膏剤
上述したように、本発明の一実施形態に係るファブリー病処置剤は、軟膏中にラパマイシンまたはラパマイシン誘導体を含有させて得られる、軟膏剤でありうる。
基剤としては、例えばロウ類(例えばサラシミツロウ、ラノリン、カルナバロウ、鯨ロウなどの天然ロウ、モンタンロウなどの鉱物ロウ、合成ロウなど)、パラフィン類(例えば流動パラフィン、固形パラフィンなど)、ワセリン(例えば白色ワセリン、黄色ワセリンなど)などが挙げられる。
基剤の量は特に限定されないが、例えば、軟膏剤の総重量を基準として、10重量%以上でありうるし、20重量%以上でもありうるし、30重量%以上でもありうるし、40重量%以上でもありうるし、50重量%以上でもありうるし、60重量%以上でもありうるし、70重量%以上でもありうるし、80重量%以上でもありうるし、90重量%以上でもありうる。
軟膏剤には、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体以外の他の成分が含まれうる。当該他の成分としては、例えば、上述した(I−A−1)に記載の成分が挙げられる。
軟膏剤は、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の他に、炭酸プロピレン、固形パラフィンおよび白色ワセリンを含みうる。また、軟膏剤は、炭酸プロピレン、固形パラフィンおよび白色ワセリンに加えて、さらに流動パラフィンをも含みうる。また、軟膏剤は、炭酸プロピレン、固形パラフィン、白色ワセリンおよび流動パラフィンに加えて、さらにサラシミツロウをも含みうる。
このとき、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、炭酸プロピレン、固形パラフィン、白色ワセリン、流動パラフィンおよびサラシミツロウの重量の比は、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体:炭酸プロピレン:固形パラフィン:白色ワセリン:流動パラフィン:サラシミツロウ=(0.3〜10):(50〜59.4):(30〜45):(895):(0〜10):(0〜5)でありうる。ただし、前記比において、有効成分、炭酸プロピレン、固形パラフィンおよび流動パラフィンの合計は、105となる。
さらに具体的には、前記比は、下記の比率1、2、3でありうる。
(比率1)ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体:炭酸プロピレン:固形パラフィン:白色ワセリン:流動パラフィン:サラシミツロウ=2:58:30:895:10:5
(比率2)ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体:炭酸プロピレン:固形パラフィン:白色ワセリン:流動パラフィン:サラシミツロウ=2:58:45:895:0:0
(比率3)ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体:炭酸プロピレン:固形パラフィン:白色ワセリン:流動パラフィン:サラシミツロウ=2:58:35:895:10:0。
上述した比率1と比率2とを比較した場合、比率1にて作製された外用薬の方が、比率2にて作製された外用薬よりも、透明度が高いとともに、外用薬の表面に存在する水の量を少なくすることができる。
上述した比率1と比率3とを比較した場合、比率1にて作製された外用薬の方が、比率3にて作製された外用薬よりも、滑らかであるとともに、外用薬の表面に存在する水の量を少なくすることができる。
軟膏剤に含まれるラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の量は特に限定されない。しかし、有効成分の血液中への移行を抑制することによって全身性の副作用を防ぐことと、皮膚組織中の有効成分の濃度を処置有効濃度にまで高めることによって処置効果を得ることとを両立させる観点から、次の濃度が好適である。
ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の量の下限は、軟膏剤の総重量を基準として、0.01重量%以上、0.02重量%以上、0.03重量%以上、0.04重量%以上、0.05重量%以上、0.06重量%以上、0.07重量%以上、0.08重量%以上、0.09重量%以上、0.1重量%以上でありうる。
ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の量の上限は、軟膏剤の総重量を基準として、1.0重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.6重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.25重量%以下、0.2重量%以下でありうる。
ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の量は、例えば、軟膏剤の総重量を基準として、0.01〜1.0重量%が好ましく、0.02〜0.9重量%がより好ましく、0.03〜0.8重量%がより好ましく、0.04〜0.7重量%がより好ましく、0.05〜0.6重量%がより好ましく、0.06〜0.5重量%がより好ましく、0.07〜0.4重量%がより好ましく、0.08〜0.3重量%がより好ましく、0.09〜0.25重量%がより好ましく、0.1〜0.2重量%が最も好ましい。なお、これらの範囲の下限値は、0.05重量%でありうる。また、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の量は、0.4〜0.8重量%でありうる。
軟膏剤に含まれるラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の量の上限値は特に限定されないが、例えば0.8重量%を上限値とすることが好ましく、0.4重量%を上限値とすることがより好ましい。
上述した量であれば、効果的に前記ファブリー病の症状を処置できるとともに、ファブリー病処置剤の安全性においても優れている。
生体の単位表面積あたりの軟膏剤の塗布量の下限は、0.001g/cm以上、0.002g/cm以上、0.003g/cm以上、0.004g/cm以上、0.005g/cm以上でありうる。
生体の単位表面積あたりの軟膏剤の塗布量の上限は、0.01g/cm以下、0.009g/cm以下、0.008g/cm以下、0.007g/cm以下、0.006g/cm以下でありうる。
生体の単位表面積あたりの軟膏剤の塗布量は、特に限定されないが、0.001〜0.01g/cm、0.002〜0.009g/cm、0.003〜0.008g/cm、0.004〜0.007g/cm、0.005〜0.006g/cmでありうる。
当該塗布量で軟膏剤を、毎日、または、2〜3日に1回塗布すればよい。毎日塗布することが好ましい。毎日塗布する場合は、1日に1〜3回の塗布が好ましく、さらに好ましくは1日に2〜3回の塗布、最も好ましくは1日に2回の塗布である。
また、年齢、投与部位、皮膚の厚さ等により、好適な製剤中の濃度および投与回数を調整することが好ましい。例えば小さい子供の薄い皮膚や腋下等には、0.05〜0.2%の濃度の軟膏剤を1日に1〜3回塗布できる。また、掌、足の裏等には、0.2〜0.8%の軟膏剤を1日に1〜2回塗布できる。
軟膏剤は、周知の方法に従って製造しうる。以下に、製造方法の一例を説明する。
例えば、ホモミキサー(例えば、プライミクス株式会社製)や万能ミキサー(例えば株式会社ダルトン製)を用いて調製することができる。基剤が室温において固体である場合、基剤を液体になるまで加熱し、液体状の基剤と、有効成分が溶解した溶液とを混合すればよい。より具体的には、室温において固体である各種成分(例えば、ロウ類、パラフィン類、ワセリンなど)を融点以上(例えば70℃)に加熱して溶解し、当該溶解物へ、有効成分が溶解した溶液を添加し、撹拌する。その後、撹拌しながらこの混合物を室温付近にまで(例えば40℃)冷却し、軟膏剤を製造することができる。
別の方法として、基剤を全て70℃〜80℃で溶解し、自転公転ミキサー(株式会社シンキー製)を用い、攪拌モードで、800rpmにて30分間、次いで1000rpmにて5分間、次いで2000rpmにて1分間(15℃)攪拌する。その後、前記基剤に、有効成分を溶解した溶液を加え、更に1000rpmにて1分間、次いで2000rpmにて1分間(冷却なし)で攪拌することで、有効成分を含む非常に微細な粒子が分散した、より良質な軟膏剤を調製することができる。
上述した他の成分を軟膏剤に含有させる場合、有効成分と他の成分とを所望の溶媒に溶解させた溶液を調製し、当該溶液に基剤を添加し、添加以後の工程は上述した方法にしたがって軟膏剤を調製すればよい。
(I−B)内服薬
以下に、内服薬の形態であるファブリー病処置剤について説明する。
内服薬の形態であるファブリー病処置剤の場合、周知の内服薬に用いられる成分と、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体とを混合することによって、ファブリー病処置剤を作製しうる。
1服の内服薬に含まれるラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の量は特に限定されず、投与対象に応じて適宜設定できる。
ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の成人への1日あたりの投与量の下限は、0.1mg以上、0.2mg以上、0.4mg以上、0.8mg以上、1mg以上、2mg以上でありうる。
ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の成人への1日あたりの投与量の上限は、010mg以下、9mg以下、8mg以下、7mg以下、6mg以下、5mg以下、4mg以下でありうる。
例えばラパマイシンまたはラパマイシン誘導体の成人への1日あたりの投与量は、0.1〜10mgであることが好ましく、0.1〜9mgであることが好ましく、0.2〜8mgであることが好ましく、0.4〜7mgであることが好ましく、0.8〜6mgであることが好ましく、1〜5mgであることがより好ましく、2〜4mgであることがより好ましい。
上述した量であれば、効果的にファブリー病を処置できる。
内服薬としての剤型は限定されるものではなく、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、分散剤、シロップ剤等が挙げられる。
〔(II)外用鎮痛剤〕
本発明の一実施形態に係る外用鎮痛剤が処置の対象とする疼痛は、特に限定されないが、神経性の疼痛、ファブリー病に起因する疼痛、腰痛、炎症性、がん性、およびその他原因の疼痛が挙げられる。ここで、外用鎮痛剤とは、外用薬の形態である鎮痛剤を言う。
本発明の一実施形態に係る外用鎮痛剤が効果を奏する、疼痛を伴う疾患としては、例えば神経線維腫、帯状疱疹、三叉神経痛、腰痛が挙げられる。その他、公知の外用鎮痛剤では鎮痛効果が得られない疼痛に効果を奏し、生体への負担を軽減することができる。
例えば、神経線維腫が坐骨神経など主要な神経を巻き込んで成長した場合、外科的手段による摘出は生体への負担が大きく現実的ではない。換言すれば、外科的手段では神経線維腫の疼痛を処置できない場合がある。一方で、外用薬ならば生体への負担を軽減できる。
本発明の一実施形態に係る外用鎮痛剤の実施形態としては、上述したファブリー病処置剤の外用薬としての実施形態を挙げることができる。すなわち、上述した「(I)ファブリー病処置剤」の欄(より具体的に、「(I−A)外用薬」、「(I−A−1)ゲル剤」および「(I−A−2)軟膏剤」の欄)に記載の実施形態を挙げることができる。
〔(III)発汗増進剤〕
本発明の一実施形態に係る発汗増進剤が処置の対象とするのは、発汗が低下している患者や無発汗の患者などである。例えば、無汗症や低汗症が挙げられる。他の例としては、ファブリー病が挙げられる。汗が出ないもしくは汗の量が少ない部位が限られている限局性無汗症、低汗症も含まれる。皮膚の広い範囲にわたり汗が出ない、または汗の量が少ない無汗症もしくは低汗症では、体温調節ができなくなり、夏場には体温が上昇やすく、冬場には低体温になりやすい。乳児期では、熱に伴う痙攣やてんかんが高頻度で見られ、急性脳症を発症する場合がある。
従前、ラパマイシンが発汗抑制効果を有することを本発明者らは見出していた。しかし驚くべきことに、発汗が低下している状態においては逆に、ラパマイシンが発汗を促進する効果を有していた。
本発明の一実施形態に係る発汗増進剤の実施形態としては、上述したファブリー病処置剤の実施形態を挙げることができる。すなわち、上述した「(I)ファブリー病処置剤」、「(I−A)外用薬」、「(I−A−1)ゲル剤」、「(I−A−2)軟膏剤」「(I−B)内服薬」に記載の実施形態を用いることができる。
〔推定される作用機序〕
以下、図10に基づいて、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体が、上述の効果を奏する推定作用機序を説明する。なお、ここで説明されている推定作用機序は、本発明の理解を助けるための例示であり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
正常の状態では、中枢神経の神経細胞においては、mTORC1はAMPARをダイレクトに活性化してカルシウムの取り込みを促進させると同時に、結果的にはAMPARの活性化に引き続いておこるNMDARの活性化も促進させ、神経細胞内へのカルシウムイオンの流入を促進させる。一方、カルシウムカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼII(CaMKII)も、NMDARの平均開口時間を増加させることにより、神経細胞内へのカルシウムイオンの流入を促進させる。同時にmTORC1はCaMKIIのリン酸化を抑制することにより、神経細胞の活性化を調節している(図10(a))。
ファブリー病患者の中枢神経の神経細胞においては、蓄積した糖脂質の一種であるグロボトリアオシルセラミド(Gb3)またはグロボトリアオシルスフィンゴシン(Lyso−Gb3)が、神経細胞のNMDARの平均開口時間を増加させることにより、神経細胞内へのカルシウムイオンの流入を促進する。このため、ファブリー病患者においては、神経細胞内へのカルシウムイオンの流入が過剰になっている(図10(b))。
以上に説明した通り、ファブリー病患者においては、神経細胞内へのカルシウムイオンの流入が過剰になっているため、ラパマイシンを投与する事によりmTORC1の作用が抑制されカルシウムイオンの流入を阻害されるのと同時に、CaMKIIのリン酸化が促進され細胞質内に過剰に蓄積したカルシウムイオンの減少が促進される。またCaMKIIのリン酸化の促進の結果おこる、リン酸化されていないCaMKIIの存在量の減少は、NMDARを介したカルシウムイオンの流入を阻害し、細胞質内のカルシウムイオンの減少が助長される(図10(c))。したがってファブリー病患者にラパマイシンを投与することが有効であると考えられる。また、図10から理解できるように、他のmTORC1阻害剤によっても、同様の効果が期待できる。
〔製造例:ラパマイシン含有ゲル剤の調製〕
様々な濃度のラパマイシンを含有するゲル剤を調製した。具体的な方法としては、シロリムス(ラパマイシン)をエタノールに添加して溶解した後、さらに水(具体的には注射用水)を添加および混合して混合溶液を調製した。前記混合溶液にカーボポール(登録商標)(具体的にはカーボポール(登録商標)934P NF)を添加および混合して、均一な懸濁液を調製した。前記懸濁液に中和剤(具体的にはトリスヒドロキシメチルアミノメタン)を添加および混合して、ゲル剤を調製した。
なお、前記ゲル1gにおけるラパマイシン以外の成分は、カーボポール(登録商標)934P NF16mg、水490mg、エタノール480〜490mg、および、トリスヒドロキシメチルアミノメタン6mgであった。
より具体的には、以下の製造例1、2および比較製造例1の組成により、ゲル剤を調製した。
製造例1:0.4重量%のラパマイシンを含有するゲル(全量100g)
ラパマイシン 0.4g
エタノール 48.4g
注射用水 49g
カーボポール(登録商標)934P NF 1.6g
トリスヒドロキシメチルアミノメタン 0.6g。
製造例2:0.8重量%のラパマイシンを含有するゲル(全量100g)
ラパマイシン 0.8g
エタノール 48g
注射用水 49g
カーボポール(登録商標)934P NF 1.6g
トリスヒドロキシメチルアミノメタン 0.6g。
比較製造例1:ラパマイシンを含有しない基剤ゲル
エタノール 48.4g
注射用水 49g
カーボポール(登録商標)934P NF 1.6g
トリスヒドロキシメチルアミノメタン 0.6g。
以下、特記しない限り、本実施例において数値を用いた「X%ラパマイシンゲル」との記載は、「ラパマイシンをX重量%含有するゲル」を意図する。
〔実施例1:野生型マウスにラパマイシン外用薬が及ぼす効果の確認〕
ラパマイシンを投与した野生型マウスにおける、痛み刺激の知覚および発汗量に関する以下の実験を行った。
[試験方法1−1]
野生型マウス各3匹の後ろ足の足底部に、0.4%ラパマイシンゲル、または基剤ゲルを塗布した。
次に、各マウスを60℃に熱したホットプレートに載せ、マウスが痛みを回避するまでの時間を測定した。
また、野生型マウス各3匹に圧を加え、痛み回避時の圧を測定した。具体的には、各マウスの後ろ足の足底部にウゴ・バジレ社製のVonFrey式痛覚測定装置を用いて圧を加え、当該圧を徐々に大きくし、回避時の圧を測定した。
<試験結果1−1>
図1の(a)に、0.4%ラパマイシンゲルを塗布した野生型マウス(左)、および基剤ゲルを塗布した野生型マウス(右)の、痛み回避までの時間および回避時の圧を比較したグラフを示す。それぞれ、(a−1)は熱刺激に対する、(a−2)は圧刺激に対する反応を表す。ラパマイシンを含有するゲルの塗布により、野生型マウスの痛み(熱刺激)回避までの時間は有意に延長された。また、野生型マウスの痛み(圧刺激)回避時の圧は増加傾向を示した。
[試験方法1−2]
野生型マウスおける発汗量の測定および汗腺組織におけるmTOR活性の観察を行った。
[ヨウ素デンプン法による発汗量の測定]
野生型マウス各3匹に、0.4%ラパマイシンゲル、0.8%ラパマイシンゲル、または基剤ゲルを塗布した。60分後、ドミトール、ベトロファール、および、ドルミカムを各マウスの腹腔内へ注射することによって全身麻酔をかけた。更に、発汗刺激となるアセチルコリンを各マウスへ投与した。
次に、周知のヨウ素デンプン法(Iodine-starch method)にしたがって、発汗量の変化を測定した。まず、各マウスの後ろ足の足底部に、ヨウ素エタノール溶液と澱粉とを溶解したミネラルオイルを塗布した。その後、各マウスの後ろ足の足底部の皮下に、ピロカルピン塩酸塩(50μg/20μL/匹)を注射した。注射を行ってから5分後に、各マウスの後ろ足の足底部を観察し、後ろ足の足底部(更に具体的には、足底部の肉球に存在する汗腺)に出現した黒点の数を数えた。なお、当該黒点が、ヨウ素デンプン反応にて陽性を示す箇所である。
[抗体染色による活性型mTORの観察]
野生型マウス3匹ずつに、それぞれ0.4%ラパマイシンゲルまたは基剤ゲルを塗布した。各マウスにおける汗腺組織を、活性型mTORに対する抗体で染色し、mTORの活性化状態を確認した。
マウスの体重1kgあたり0.3mgのドミトール、5mgのベトロファール、および、4mgのドルミカムを、マウスの腹腔内へ注射することによって、マウスに全身麻酔をかけた。
次いで、リン酸緩衝液(Phosphate Buffered Saline)中に、発汗刺激として機能するアセチルコリン(pilocarpine hydrochloride' Junsei Chemical, Co., Ltd. Tokyo, Japan)を溶解して、刺激用溶液(アセチルコリンの濃度:50μg/μL)を作製した。
全身麻酔がかけられたマウスの後ろ足の皮下に、10μLの前記刺激用溶液を注射した。注射を行ってから2分後に、各マウスの後ろ足の皮膚サンプルを回収し、当該皮膚サンプルをOCTコンパウンド(Lab-Tek Products, Illinois, USA)内に包埋した。前記OCTコンパウンドから、5μm厚の切片を作製し、当該切片を、周知の蛍光染色法に従って染色した。
蛍光染色法に用いた一次抗体は、anti−phospho−mTOR(Ser2448)(1:50,Cell Signaling Technology, Tokyo, Japan)であった。なお、anti−phospho−mTORは、mTORタンパク質のアミノ末端から2448番目のセリンがリン酸化された状態を認識する抗体である。すなわち、活性化されたmTORタンパク質を認識する抗体である。また、蛍光染色法に用いた二次抗体は、Alexa Fluor 488が連結されている市販の二次抗体であった(Thermo Fisher)。同時に、上記切片をHoechst 33342にて染色し、切片内の細胞核を染色した。蛍光染色の像は、BZ−8000顕微鏡(Keyence)を用いて観察した。
[ウエスタンブロット法による活性型mTORの観察]
野生型マウス各3匹の後ろ足の足底部に、0.4%ラパマイシン含有ゲル、または基剤ゲルを塗布した。各マウスにおける汗腺組織を、ウエスタンブロット法に供し、汗腺組織に含まれる活性型mTORの量を確認した。
マウスの体重1kgあたり0.3mgのドミトール、5mgのベトロファール、および、4mgのドルミカムを、マウスの腹腔内へ注射することによって、マウスに全身麻酔をかけた。
次いで、リン酸緩衝液(Phosphate Buffered Saline)中に、発汗刺激として機能するアセチルコリン(pilocarpine hydrochloride’ Junsei Chemical, Co., Ltd. Tokyo, Japan)を溶解して、刺激用溶液(アセチルコリンの濃度:50μg/μL)を作製した。
全身麻酔がかけられたマウスの後ろ足の皮下に、10μLの前記刺激用溶液を注射した。注射を行ってから2分後に、各マウスの後ろ足の皮膚サンプルを回収し、当該皮膚サンプルをウエスタンブロット法に供した。
ウエスタンブロット法では、一次抗体としてCell Signaling Technology (CST)社のRabbit anti−pmTOR抗体を用い、二次抗体としてHRP−binding Anti−rabbit IgG antibody抗体を用いた。
<試験結果1−2>
図1の(b)に、[ヨウ素デンプン法による発汗量の測定]の試験結果を示す。
図1の(b)では、左から基剤ゲル、0.4%ラパマイシンゲル、0.8%ラパマイシンゲルを塗布したマウスにおける黒点数を示す。ラパマイシンを含有するゲルの塗布により、かつ、含有するラパマイシン濃度に依存して、野生型マウスの発汗量は有意に減少していた。
図2の(a)に、[抗体染色による活性型mTORの観察]の試験結果を示す。
図2の(a)から明らかなように、活性型mTORの染色像と、細胞核の染色像とは、重なって観察された(Merge参照)。この結果より、活性型mTORの染色像は、細胞外マトリックスなどが非特異的に染色されたバックグランドではなく、細胞内の活性型mTORが特異的に染色された像であることが確認された。更に、図2の(a)から明らかなように、ラパマイシンゲルを用いた場合には、基剤ゲルを用いた場合よりも、活性型mTORの染色強度が低かった。つまり、ラパマイシンゲルを用いた場合には、基剤ゲルを用いた場合よりも、活性型mTORの量が少ないことが明らかになった。
図2の(b)に、[ウエスタンブロット法による活性型mTORの観察]の試験結果を示す。
図2の(b)からも、ラパマイシンゲルを用いた場合には、基剤ゲルを用いた場合よりも、活性型mTOR(p−mTOR)の量が少ないことが明らかになった。
〔実施例2:ファブリー病モデルマウスの症状の確認〕
ファブリー病モデルマウスにおける、痛み刺激の知覚および発汗量に関する以下の実験を行った。なお、ファブリー病モデルマウスとしては、ジャクソン研究所より購入したα−galのノックアウトマウス(B6;129-Gla tm1Kul/J)を使用した。
[試験方法2−1]
野生型マウスおよびファブリー病モデルマウス各3匹を用意した。
なお、以降の実験工程は、上述した[試験方法1−1]のうち、各マウスを60℃に熱したホットプレートに載せ、マウスが痛みを回避するまでの時間を測定する実験と同じ手順で行った。
<試験結果2−1>
図3の(a)に野生型マウス(左)およびファブリー病モデルマウス(右)における、痛み回避までの時間を比較したグラフを示す。ファブリー病モデルマウスでは、痛み回避までの時間が短縮される傾向が生じた。
[試験方法2−2]
野生型マウスおよびファブリー病モデルマウスにおける発汗量の測定、並びにそれぞれの汗腺組織における活性型mTORの観察を行った。
[ヨウ素デンプン法による発汗量の測定、および抗体染色による活性型mTORの観察]
野生型マウスおよびファブリー病モデルマウス各3匹を用意し、発汗量の測定を行った。また、野生型マウスおよびファブリー病モデルマウスにおける汗腺組織を、活性型mTORに対する抗体で染色し、mTORの活性化状態を確認した。
なお、本実験は、上述した[ヨウ素デンプン法による発汗量の測定]および[抗体染色による活性型mTORの観察]と同じ手順で行った。
<試験結果2−2>
図3の(b)に、野生型マウスにおける黒点数(左)とファブリー病モデルマウスにおける黒点数(右)とを比較したグラフを示す。ファブリー病モデルマウスは、野生型マウスと比較して、有意に発汗量が減少していた(p=0.0122)。
図3の(c)に野生型マウス、およびファブリー病モデルマウスにおける汗腺の蛍光染色像を示す。染色の濃い箇所は、活性型mTORが多く発現している箇所である。前記蛍光染色像から、ファブリー病モデルマウスの汗腺組織では、野生型マウスの汗腺組織と比較して活性型mTORが多く発現していることが判明した。
〔実施例3:ファブリー病モデルマウスにラパマイシン外用薬が及ぼす効果の確認〕
ラパマイシンを投与したファブリー病モデルマウスにおける、痛み刺激の知覚および発汗量に関する以下の実験を行った。
[試験方法3−1]
ファブリー病モデルマウス各3匹の後ろ足の足底部に、0.4%ラパマイシンゲルまたは基剤ゲルを塗布した。
なお、以降の実験工程は、上述した[試験方法1−1]のうち、各マウスを60℃に熱したホットプレートに載せ、マウスが痛みを回避するまでの時間を測定する実験と同じ手順で行った。
<試験結果3−1>
図4の(a)に、基剤ゲルを塗布したファブリー病モデルマウス(左)、および0.4%ラパマイシンゲルを塗布したファブリー病モデルマウス(右)における痛み回避までの時間を比較したグラフを掲げる。ラパマイシンを含有するゲルを塗布したファブリー病モデルマウスでは、ファブリー病により短くなっていた痛み回避までの時間が、延長される傾向を示した。
[試験方法3−2]
基剤ゲルまたはラパマイシンゲルを塗布したファブリー病モデルマウスにおける発汗量の測定、並びにそれぞれの汗腺組織におけるmTOR活性の観察を行った。
[ヨウ素デンプン法による発汗量の測定、および抗体染色による活性型mTORの観察]
ファブリー病モデルマウス各3匹の後ろ足の足底部に、基剤ゲルまたは0.4%ラパマイシンゲルを塗布し、発汗量の測定を行った。また、各マウスにおける汗腺組織を、活性型mTORに対する抗体で染色し、mTORの活性化状態を確認した。
なお、本実験は、上述した[ヨウ素デンプン法による発汗量の測定]および[抗体染色による活性型mTORの観察]と同じ手順で行った。
<試験結果3−2>
図4の(b)に、基剤ゲルを塗布したファブリー病モデルマウスにおける黒点数(左)と、0.4%ラパマイシンゲルを塗布したファブリー病モデルマウスにおける黒点数(右)とを比較したグラフを示す。ラパマイシンゲルを塗布したファブリー病モデルマウスは、ファブリー病によって減少していた発汗量が、増加する傾向を示した。
図4の(c)に基剤ゲルを塗布したファブリー病モデルマウス、および0.4%ラパマイシンゲルを塗布したファブリー病モデルマウスにおける汗腺の染色像を示す。染色の濃い箇所は、活性型mTORが多く発現している箇所である。図4の(c)に示すように、ラパマイシンゲルの塗布により、ファブリー病モデルマウスの汗腺組織では、mTORの活性化が抑制されることが判明した。
〔実施例4:ファブリー病患者の被角血管腫におけるmTORの発現の確認〕
ファブリー病患者の被角血管腫におけるmTORの活性化状態、およびファブリー病に対する従来の処置法であるERTの被角血管腫に及ぼす影響を観察した。なお、本試験におけるERTでは、酵素としてアガルシダーゼβを用い、具体的な処置方法は、通常の投与量に従った。
[試験方法]
ファブリー病患者の被角血管腫患部を含む皮膚の部分を、抗p−mTOR抗体で染色し、mTORの活性化状態を確認した。
<試験結果>
図5の(a)に、ファブリー病患者の被角血管腫の染色像を示す。ファブリー病患者の被角血管腫では、角層の軽度の肥厚と、真皮乳頭層における赤血球が充満した毛細血管の著しい拡張と、が認められた。
図5(b)に、ERTを施す前(b−1)およびERTを施した後(b−2)のファブリー病患者の被角血管腫におけるp−mTOR、および細胞核(Ho)の蛍光染色像を示す。図5の(b−1)より、ERTを施す前のファブリー病患者の被角血管腫では、mTORが活性化していることが明らかになった。図5の(b−2)より、ERTを施した後のファブリー病患者の被角血管腫でも、mTORが活性化していることが明らかになった。
図5の(c)はERTを施した後のファブリー病患者における、被角血管腫の病状の推移を示した一連の写真である。図5の(c)に示すように、ERTが被角血管腫の処置には効果を奏さないことが明らかになった。
なお、本実施例におけるファブリー病患者において、血中GL3値および蛋白尿は正常であり、かつ、心血管および脳血管などに障害は認められなかった。
〔実施例5:野生型マウスにラパマイシン外用薬が及ぼす鎮痛効果の確認〕
ラパマイシンを投与した野生型マウスにおける、痛み刺激の知覚に関する以下の実験を行った。
[試験方法]
後ろ足の足底部に0.8%ラパマイシンゲルまたは基剤ゲルを塗布した、もしくは何も塗布しない野生型マウス各3匹を用意した。
なお、以降の実験工程は、上述した[試験方法1−1]のうち、各マウスを60℃に熱したホットプレートに載せ、マウスが痛みを回避するまでの時間を測定する実験と同じ手順で行った。
<試験結果>
図6の(a)に左から0.8%ラパマイシンゲル塗布、基剤ゲル塗布、何も塗布しない野生型マウスにおける、痛み回避までの時間を比較したグラフを示す。ラパマイシンゲルの塗布により、痛み回避までの時間が延長された。
〔試験6:健常人に対するラパマイシン外用薬の鎮痛効果の確認〕
ラパマイシンを投与した健常人における、痛み刺激の知覚に関する以下の実験を行った。
[試験方法]
被検者の皮膚の一部(手掌の前腕境界部)に0.4%ラパマイシンゲルを塗布した後、ラパマイシンゲルを塗布した箇所に電流を流し、被検者が感じえた最小の電流の値を測定した。なお、具体的には、知覚・痛覚定量分析装置PainVision PS−2100(ニプロ株式会社)を用い、当該装置に添付のプロトコールにしたがって本試験を行った。
<試験結果>
図6の(b)〜(d)に痛みを感じる最小電流を測定した結果を示す。当該グラフより、ヒトにおいてもラパマイシン外用薬が痛み刺激の閾値を下降させることが判明した。
〔実施例6:ラパマイシン投与による末梢神経への効果〕
野生型マウスおよびファブリー病モデルマウスの脊髄後根神経節の神経細胞の皮膚(肉球)における分布を、免疫染色により観察した。また、ラパマイシンの投与による、ファブリー病モデルマウスの脊髄後根神経節の神経細胞への効果を確認した。
[試験方法6−1]
野生型マウスおよびファブリー病モデルマウスの肉球をサンプルとして切り出し、10%ホルムアルデヒド中で24時間固定した。次に、前記サンプルをパラフィンに包埋し、切片を作製した。
前記切片を、Protein Block, Serum Free(Dako製)に30分間浸漬し、前記切片に含まれる非特異的抗原をブロッキングした。次に、前記切片を、一次抗体と共に4℃にて一晩インキュベートした。その後、前記切片を、二次抗体と共に室温にて60分間インキュベートした。この際に使用した一次抗体と二次抗体との組み合わせは、(1)rabbit anti-pan-neuronal marker PGP9.5(Sigma製)とAlexa Fluor 554 Goat Anti-ribbit IgG (H+L)(Life technology製)、または、(2)anti-Beta III Tubulin in antibody diluent(Dako製)とFITC rabbit anti-chicken IgG(Life technology製)であった。それぞれ、(1)は神経細胞全般を、(2)は軸索を染色するために用いている。
最後に、前記切片の細胞核を、Hoechst 33342(500倍希釈、Invitrogen製)により染色した。染色を終えた切片を、顕微鏡(BZ-X710、KEYENCE製)により観察し、染色像を撮影した。
<試験結果6−1>
図7の(a)に野生型マウスの、図7の(b)にファブリー病モデルマウスの肉球の皮膚組織の免疫染色像を示す。これらの図の脊髄後根神経節神経細胞の形態を比較することにより、ファブリー病マウスの脳組織においては、神経細胞の軸索が短くなっていることが判る。
[試験方法6−2]
野生型マウスおよびファブリー病モデルマウスを、それぞれ3グループに分けた。各グループに、基剤のみ、2%ラパマイシン含有ゲル、または1%ボルタレン含有ゲルを塗布して、24時間後に採血をした。血中のBDNF濃度を測定した。
<試験結果6−2>
ファブリー病モデルマウスは、血中のBDNF濃度が顕著に増加した(図7(c))。
[試験方法6−3]
野生型マウスの後根神経節細胞(DRG細胞)は20週齢のマウスより分離した。分離した後根神経節神経細胞を、まずHam’s 12 containing 30% Percollで抽出したあと、2mM GlutaMax1、2% B-27 w/o Vitamin A、5ng/mL recombinant BDNF carrier free、および10ng/mL recombinant human-beta NGF carrier freeを加えたGibco Neurobasal-A培地(Gibco製)を用いて、37℃にて2日間培養した。その後、2mM GlutaMax1、2% B-27 w/o Vitamin A、10μM Retinoic Acidn、および100ng/mL recombinant human-beta NGF carrier freeを添加した培地に変更した後、軸索の伸長を顕微鏡(BZ-X710、KEYENCE製)により比較観察し、顕微鏡像を撮影した。
<試験結果6−3>
図7の(d)に、BDNF投与後の顕微鏡像を示す。前記顕微鏡像に示されているように、BDNFを投与することより、野生型マウスのDRG細胞において、軸索の伸長が観察された。これにより、ラパマイシンの投与が、BDNFを介して、ファブリー病の処置に有効であることが示唆される。
〔実施例7:ラパマイシンの投与による細胞内へのカルシウムイオン流入の阻害〕
野生型のヒト神経芽細胞種由来細胞(SK−N−MC)およびα−galAをノックアウトしたSK−N−MCを用い、ラパマイシンの投与による細胞内へのカルシウムイオン流入の阻害効果を確認した。なお、α−galAをノックアウトしたSK−N−MCは、ファブリー病のモデル細胞と見做すことができる。
[試験方法]
細胞内のカルシウムレベルは、Calcium Kit-Fura2(同仁化学研究所製)を用いて測定した。
まず、α−galAをノックアウトしたSK−N−MCを35mmディッシュに移植した。24時間後、Fura2-AMが含まれているローディングバッファ(具体的な組成は、0.04% Pluronic F-127、1.25mM Probenecid、および5mg/L Fura2-AM)中で、37℃にて1時間インキュベートして、レコーディング媒体を取り込ませた。
細胞をリン酸緩衝液(PBS)で2回洗浄した後、ディッシュに1.25mM Probenecidが含まれているレコーディングバッファ(Calcium Kit-Fura2に同梱、同仁化学研究所製)を注いだ。その後、ディッシュを顕微鏡(DIAPHOT 300、ニコン製)のステージに載せた。
それぞれ1mM、5mMまたは10mMのグルタミン酸を含ませたレコーディングバッファを細胞に接触させ、AQUA COSMOS/RATIO(浜松ホトニクス製)を用いて510nmの蛍光強度を測定した。この際、励起波長は340nmおよび380nmとし、(励起波長340nmの時の蛍光強度/励起波長380nmの時の蛍光強度)を、細胞内のカルシウム濃度とした。
<試験結果>
図8の(a)に、細胞内へのカルシウムイオンの流入を示すイメージ画像を示す。それぞれ、野生型細胞(左上)、ラパマイシンを投与した野生型細胞(右上)、α−galAノックアウト細胞(左下)およびラパマイシンを投与したα−galAノックアウト細胞(右下)の結果である。いずれも、1mMのグルタミン酸と接触させた結果である。これらの図から、α−galAノックアウト細胞は、野生型細胞よりもカルシウムイオンの流入量が多いことが判る。さらに、ラパマイシンの投与により、野生型細胞ではカルシウムイオンの流入量が増加し、α−galAノックアウト細胞ではカルシウムイオンの流入量が低下することも判る。
図8の(b)および(c)に、細胞内へのカルシウムイオンの流入の経時変化を表すグラフを示す。(b)はラパマイシンを投与していない場合の、(c)はラパマイシンを投与した場合の結果である。このグラフにより、α−galAノックアウト細胞にラパマイシンを投与することによって、細胞内へのカルシウムイオンの流入が著しく低下することが示された。なお、両グラフにおいて、無処理のSK−N−MC、およびコントロールのプラスミドを用いてノックダウン操作をしたSK−N−MC(control)を、コントロールとして用いた。
〔実施例8:MRIによるラパマイシン投与の効果の確認〕
野生型マウスおよびファブリー病モデルマウスの脳における、熱および痛みを知覚する部位の活性を、マンガン造影MRIにより確認した。
[試験方法]
まず、野生型マウスおよびファブリー病モデルマウスに、塩化マンガン(MnCl)を腹腔内投与した。具体的には、塩化マンガンの50mM生理食塩水(塩化ナトリウムの0.9%水溶液)溶液を、30mg/kgの用量となるように、3日続けて腹腔内投与した。
4日目に、11.7T vertical-bore Bruker Avance II imaging system(Bruker Biospin製)およびcustom-made 15-mm diameter transmit/receive volume radio frequency (RF) coil(m2m imaging製)を用いて、MRIスキャニングを行った。この際、マウスにイソフルレン(Abbott Laboratories製)で麻酔をかけ、呼吸シグナルをphysiological monitoring system(SA Instruments, Inc.製)で監視した。また、ウォーミングパットに温水を流すことにより、体温を維持し続けた。
なお、4日間の実験期間における、塩化マンガンの投与、ラパマイシンの投与、熱刺激、MRIでの造影は、下記表の計画に従って行われた。体内のマンガンイオンは、カルシウムイオンに伴って移動し、その後2週間程度は残存するため、MRIでマンガンイオンの分布を調べることにより、カルシウムイオンの流入が判る。
得られたデータはOsiriX Liteにより解析した。
<試験結果>
図9に、MRIの結果を示す。同図によると、未処置のファブリー病モデルマウスでは、熱および痛みを知覚する部位の活性が上昇している。しかし、熱刺激の前にラパマイシンを経皮投与したファブリー病モデルマウスでは、前記部位の活性は低下し、未処置の野生型マウス程度となった。
本発明は、例えば、ファブリー病の処置に利用できる。

Claims (9)

  1. ラパマイシンおよびラパマイシン誘導体からなる群より選択される少なくとも1つを有効成分として含有する、ファブリー病処置剤。
  2. 前記ラパマイシン誘導体が、エベロリムス、テムシロリムス、リダフォロリムスおよびゾタロリムスからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載のファブリー病処置剤。
  3. 外用薬である、請求項1または2に記載のファブリー病処置剤。
  4. ファブリー病の皮膚病変の処置に用いられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のファブリー病処置剤。
  5. ラパマイシンおよびラパマイシン誘導体からなる群より選択される少なくとも1つを有効成分として含有する、外用鎮痛剤。
  6. 前記ラパマイシン誘導体が、エベロリムス、テムシロリムス、リダフォロリムスおよびゾタロリムスからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項5に記載の外用鎮痛剤。
  7. ラパマイシンおよびラパマイシン誘導体からなる群より選択される少なくとも1つを有効成分として含有する、発汗増進剤。
  8. 前記ラパマイシン誘導体が、エベロリムス、テムシロリムス、リダフォロリムスおよびゾタロリムスからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項7に記載の発汗増進剤。
  9. 無汗症または低汗症の処置用である、請求項7または8に記載の発汗増進剤。
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