JPWO2017056860A1 - インクセット及び画像形成方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、全てのインクが良好な硬化性を有し、かつ、全てのインクを同一の硬化条件で均一に硬化させることが可能なインクセット、及びこれを用いた画像形成方法を提供する。
光重合性化合物、光重合開始剤、ゲル化剤、及び色材を含有し、かつ活性光線の照射によって硬化する、インクA及びインクBを少なくとも含むインクセットであって、前記インクAは、前記色材がフタロシアニン構造またはキナクリドン構造を有し、かつ前記光重合開始剤が水素引き抜き型光重合開始剤を含む組成物であり、前記インクBは、前記色材がフタロシアニン構造及びキナクリドン構造をいずれも有さず、かつ前記インクBの総質量に対する、水素引き抜き型光重合開始剤の量が0.1質量%未満である組成物である、インクセットとする。

Description

本発明は、インクセット及び画像形成方法に関する。
インクジェット記録方式は、簡易且つ安価に画像を形成できることから、各種印刷分野で用いられている。インクジェット記録方式の一つに、活性光線硬化型インクの液滴を記録媒体に着弾させた後、活性光線を照射して硬化させる方式(活性光線硬化型インクジェット方式)がある。活性光線硬化型インクジェット方式は、インク吸収性のない記録媒体にも、耐擦過性と記録媒体に対する密着性とを兼ね備えた画像を形成できることから、近年注目されつつある。
活性光線硬化型インクジェットインクのピニング性を高める方法の一つに、インクにゲル化剤を添加し、液滴をゾルゲル相転移させる方法がある(例えば、特許文献1)。当該方法では、高温で液体状のインク液滴を吐出し、記録媒体に着弾させると同時にインク液滴を冷却し、ゲル化させて、ドットの合一を抑制する。
ここで、活性光線硬化型インクジェットインクで多色印刷を行う場合、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等、複数色のインクを含むインクセットにて印刷を行うことが一般的である。
特開2014−91830号公報
しかしながら、従来のインクセットでは、各色インクの硬化性を揃えることが難しく、例えば各色インクを同一の条件で光硬化させると、色毎に硬化状態がばらつくとの課題があった。そして例えば、硬化しやすいインクに合わせて照射光量を設定すると、一部のインクが十分に硬化せず、画像(硬化膜)の一部にベタつきが生じたり、光沢が不均一になりやすかった。また、画像(硬化膜)内部の硬化が不十分であると、画像の一部が記録媒体から剥がれることもあった。一方で、硬化し難いインクに合わせて照射光量を設定すると、輻射熱等により硬化膜表面のゲル結晶が溶けて、得られる画像の光沢が不十分となることがあった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、全てのインクが良好な硬化性を有し、さらに、全てのインクを同一の硬化条件で均一に硬化させることが可能なインクセット、及びこれを用いた画像形成方法の提供を目的とする。
[1]光重合性化合物、光重合開始剤、ゲル化剤、及び色材を含有し、かつ活性光線の照射によって硬化する、インクA及びインクBを少なくとも含むインクセットであって、前記インクAは、前記色材がフタロシアニン構造またはキナクリドン構造を有し、かつ前記光重合開始剤が水素引き抜き型光重合開始剤を含む組成物であり、前記インクBは、前記色材がフタロシアニン構造及びキナクリドン構造をいずれも有さず、かつ前記インクBの総質量に対する、水素引き抜き型光重合開始剤の量が0.1質量%未満である組成物であることを特徴とする、インクセット。
[2]前記光重合開始剤の分子量が400以上であることを特徴とする、[1]に記載のインクセット。
[3]前記水素引き抜き型光重合開始剤が、チオキサントン系化合物であることを特徴とする、[1]または[2]に記載のインクセット。
[4]前記インクA及び/または前記インクBが、アミン系化合物をさらに含むことを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載のインクセット。
[5]前記インクAが、シアンインクまたはマゼンタインクであることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載のインクセット。
[6]前記インクBが、イエローインク、ブラックインク、またはホワイトインクであることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載のインクセット。
[7]前記[1]〜[6]のいずれかに記載のインクセットが含むインクA及びインクBをインクジェットのノズルから吐出して記録媒体に着弾させる工程と、前記記録媒体上に着弾した前記インクA及び前記インクBに、活性光線を照射して、前記インクA及び前記インクBを硬化させる工程と、を含むことを特徴とする、画像形成方法。
[8]前記活性光線は、365nm以上405nm以下にピーク波長を有することを特徴とする、[7]に記載の画像形成方法。
本発明のインクセットでは、全てのインクが良好な硬化性を有し、かつ全てのインクを同一の光源及び同一の活性光線量にて均一に硬化させることができる。したがって、当該インクセットによれば、光沢性が均一であり、さらにベタつきや剥離等のない画像を形成することができる。
[インクセット]
本発明のインクセットは、インクジェット装置を用いて塗布され、かつ活性光線の照射によって硬化されるインクのセットである。当該インクセットには、少なくとも2種類(2色)のインクが含まれる。具体的には、フタロシアニン構造またはキナクリドン構造を有する色材を含むインクAと、フタロシアニン構造及びキナクリドン構造をいずれも有さない色材を含むインクBと、が少なくとも含まれる。なお、インクセットには、インクA及びインクBがそれぞれ複数種類ずつ含まれてもよい。ここで、各色インク(インクA及びインクB)には、色材以外に、光重合性化合物、光重合開始剤、及びゲル化剤がそれぞれ含まれる。
前述の通り、従来のインクセットでは、各色インクの硬化性にばらつきが生じやすく、全てのインク液滴を、同一の硬化条件で均一に硬化させることが難しかった。そして、形成される画像(硬化膜)において、一部のインクの硬化が不十分であると、光沢にばらつきが生じたり、画像の一部にベタつきが生じたりしやすかった。また、画像内部の硬化性が不十分であると、画像と記録媒体との密着性が不十分となり、剥離が生じやすかった。一方で、インクに過剰に活性光線が照射されると、輻射熱等により硬化膜表面のゲル結晶が溶けて、表面の光沢性が低くなりやすかった。
当該課題について本発明者らが鋭意検討したところ、フタロシアニン構造もしくはキナクリドン構造を有する色材を含むインクでは、他の構造を有する色材を含むインクと比較して、酸素による硬化阻害が生じやすく、塗膜の表面硬化性が低くなりやすいことを見出した。フタロシアニン構造及びキナクリドン構造によって、酸素による硬化阻害が生じる理由は、以下のように推察される。インクがフタロシアニン構造またはキナクリドン構造のいずれかの構造を有する色材を含むと、ゲル化剤の析出の際に、色材とゲル化材とが相互作用しやすくなり、ゲル化剤の析出によって生じる結晶が小さくなる。その結果、塗膜表面を酸素が透過しやすくなり、酸素阻害が生じやすくなる。
一方で、フタロシアニン構造及びキナクリドン構造をいずれも有さない色材を含むインクでは、酸素による硬化阻害が生じ難いものの、水素引き抜き型光重合開始剤が多量に含まれると、内部硬化性が不十分になりやすいことを見出した。水素引き抜き型光重合開始剤では、ラジカル発生後も骨格が変化せず、活性光線を吸収しやすい構造が維持される。そのため、インクに水素引き抜き型光重合開始剤が多く含まれると、照射された活性光線を水素引き抜き型光重合開始剤が吸収してしまい、塗膜内部まで活性光線が十分に届き難くなる。その結果、インク液滴内部の光重合開始剤が十分に活性化されず、得られる硬化膜の内部硬化性が不十分になりやすいと考えられる。また特に、イエロー、ブラック、及びホワイトのインクでは、色材が、光重合開始剤の吸収波長域と同様の領域に吸収波長域を有する。そのため、これらのインクでは特に、少ない活性光線量で内部まで十分に硬化させることが難しかったと推察される。
本発明はこのような知見を鑑みてなされたものである。本発明のインクセットが含む、フタロシアニン構造またはキナクリドン構造を有する色材を含むインクAは、水素引き抜き型光重合開始剤を含む。一方で、フタロシアニン構造及びキナクリドン構造をいずれも有さない色材を含むインクBは、水素引き抜き型光重合開始剤を含まない、もしくは含んだとしてもインクBの総質量に対して0.1質量%未満である。
つまり、フタロシアニン構造またはキナクリドン構造を含む色材を含むインクAでは、水素引き抜き型光重合開始剤によって、酸素による硬化阻害が抑制されるため、インクAの塗膜表面が十分に硬化される。一方、フタロシアニン構造及びキナクリドン構造をいずれも有さない色材を含むインクBでは、水素引き抜き型光重合開始剤の量が非常に少ないため、インクBの塗膜内部まで活性光線が到達しやすい。その結果、塗膜内部の光重合開始剤が十分に活性化されて、塗膜内部まで十分に硬化される。
すなわち、本発明のインクセットによれば、インクA及びインクBがそれぞれ良好な硬化性を有するため、同一の硬化条件によって、両方を十分に硬化させることができる。そして、当該インクセットから形成される画像では、画像全体の光沢が均一になりやすく、さらに画像と記録媒体との密着性も高い。さらに、本発明のインクセットでは、比較的少ない活性光線量でも、各色インクを十分に硬化させることができる、との利点も有する。
ここで、本発明のインクセットに含まれる各インクを硬化させるための活性光線の例には、紫外線、電子線、α線、γ線およびX線が含まれるが、後述の光重合開始剤の吸収波長や、安全性等の観点から、活性光線は、紫外線であることが好ましく、より好ましくは365nm以上405nm以下にピーク波長を有する光であることが好ましい。
以下、本発明のインクセットに含まれるインクA及びインクBの具体的な組成について、説明する。
1.インクA
インクAには、フタロシアニン構造またはキナクリドン構造を有する色材と、光重合開始剤と、光重合性化合物と、ゲル化剤と、が含まれる。インクAには、必要に応じて、アミン系化合物が含まれてもよく、さらに他の成分が含まれてもよい。以下、インクAに含まれる各成分について説明する。
1−1.色材
前述のように、インクAには、フタロシアニン構造またはキナクリドン構造を有する色材が含まれる。フタロシアニン構造またはキナクリドン構造を有する色材は、顔料であってもよく、染料であってもよいが、インクAの他の成分に対して良好な分散性を有し、かつ耐候性に優れるとの観点から、顔料であることが好ましい。また、インクAには、これらの色材が一種のみ含まれてもよく、二種以上含まれてもよい。フタロシアニン構造を有する色材は、通常、青色または緑色のインクに用いられる。一方、キナクリドン構造を有する色材は、通常、マゼンタのインクに用いられる。つまり、インクAは、シアンインク、マゼンタインク、またはグリーンインク等でありうるが、インクAの色はこれらに限定されない。
なお、インクAには、フタロシアニン構造またはキナクリドン構造を有さない色材が、一部含まれてもよい。ただし、本発明では、一つ(特定色)のインクに含まれる色材の総質量に対して、フタロシアニン構造及びキナクリドン構造を有する色材の総質量が、70質量%以上であるインクをインクAとし、フタロシアニン構造及びキナクリドン構造を有する色材の総質量が30質量%未満であるインクを、インクBとする。
ここで、インクAに含まれるフタロシアニン構造を有する色材の例には、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、16、17、17:1、75、76、79等の青色系顔料;C.I.ピグメントグリーン7、36、42、58等の緑色系の顔料が含まれる。
一方、キナクリドン構造を有する色材の例には、C.I.ピグメントオレンジ48、49等のオレンジ系顔料;C.I.ピグメントレッド122、202、206、207、209等のレッド系顔料;C.I.ピグメントバイオレット19、42等のバイオレッド系顔料が含まれる。
さらに、キナクリドン構造を有する色材の他の例には、C.I.ピグメントレッド122、202、及び/または209と、C.I.ピグメントバイオレット19との混晶顔料等が含まれる。
ここで、インクAには、インクAの総質量に対して、色材が0.5質量%以上15質量%以下含まれることが好ましく、1質量%以上12質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。色材の量が0.5質量%以上であると、インクAが十分に着色されやすくなる。一方で、色材の量が15質量%以下であれば、インクAの粘度が過度に高まらず、インクAをインクジェット装置から、安定して吐出しやすくなる。
1−2.光重合開始剤
インクAには、光重合開始剤として、少なくとも水素引き抜き型光重合開始剤が含まれるが、α−開裂型光重合開始剤がさらに含まれることが好ましい。前述のように、水素引き抜き型光重合開始剤によって、インクAの表面硬化性を高めることができるが、α−開裂型光重合開始剤を組み合わせることによって、インクAの硬化性をさらに高めることができる。
インクAに含まれる水素引き抜き型光重合開始剤の例には、チオキサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アントラキノン系化合物、アクリジン系化合物等が含まれる。チオキサントン系化合物の具体例には、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、イソプロポキシクロロチオキサントン等が含まれる。
ベンゾフェノン系化合物の具体例には、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、N,N-ジエチルベンゾフェノン等が含まれる。
アントラキノン系化合物の具体例には、エチルアントラキノン、ベンズアントラキノン、アミノアントラキノン、クロロアントラキノン等が含まれる。アクリジン系化合物の具体例には、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9−アクリジニル)ヘプタン等が含まれる。
水素引き抜き型光重合開始剤は、特にチオキサントン系化合物であることが好ましい。チオキサントン系化合物は、比較的長波長側にも吸収波長を有する。したがって、インクAにチオキサントン系化合物が光重合開始剤として含まれると、LED光源によってもインクAを硬化させることが可能となる。
インクAに含まれる水素引き抜き型光重合開始剤の量は、インクAの総質量に対して0.1質量%以上6質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上4質量%以下であることがさらに好ましい。水素引き抜き型光重合開始剤の量が、0.1質量%以上であると、インクAを硬化させる際に、酸素による硬化阻害が生じ難く、得られる硬化膜の表面硬化性が良好になる。一方で、水素引き抜き型光重合開始剤の量が過剰であると、インクAを硬化させる際に、水素引き抜き型光重合開始剤が活性光線を吸収してしまい、塗膜内部まで十分に硬化させ難くなることがあるが、当該量が6質量%以下であれば、インクAの塗膜内部まで十分に硬化させることができる。
一方、α−開裂型光重合開始剤の例には、アセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物等が含まれる。アセトフェノン系化合物の具体例には、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシー1−{4−[4−(2−ヒドロキシー2−メチループロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチループロパンー1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシー2−メチルー1−プロパンー1−オン、2,2−ジメトキシー1,2−ジフェニルエタンー1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等が含まれる。
ベンゾイン系化合物の具体例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が含まれる。
また、アシルホスフィンオキシド系化合物の具体例には、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2−メトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2−メトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4−ジメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジペンチルオキシフェニルホスフィンオキシドおよびビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4−ジペンチルオキシフェニルホスフィンオキシドが含まれる。これらの中でも好ましくはビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドである。
またインクAに含まれるα−開裂型光重合開始剤の量は、インクAの総質量に対して0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1以上8質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以上5質量%以下である。α−開裂型光重合開始剤の量が、上記範囲であると、インクAの硬化性が十分に高まりやすい。
ここで、インクAに含まれる光重合開始剤の分子量は400以上であることが好ましい。なお、上記水素引き抜き型光重合開始剤及びα−開裂型光重合開始剤を組み合わせる場合、水素引き抜き型光重合開始剤のみの分子量が400以上であってもよく、α−開裂型光重合開始剤のみの分子量が400以上であってもよい。またこれら両方の分子量が400以上であることがより好ましい。
各光重合開始剤の分子量は、400以上3000以下であることがより好ましく、400以上2000以下であることがさらに好ましい。インクAに含まれる光重合開始剤の分子量が400以上であると、得られる硬化膜の表面に光重合開始剤が移行し難く、硬化膜の光沢が維持されやすい。なお、「分子量」とは、分子を構成する元素の原子量の総和を示す。ただし、1つの分子が2つ以上の繰り返しユニットからなる分子の分子量は、重量平均分子量(ポリスチレン換算)を示す。分子量の測定方法は、公知の質量分析方法を用いることができる。また、重量平均分子(ポリスチレン換算)は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で下記の条件で測定することができる。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の測定条件
溶媒 : テトラヒドロフラン
カラム : 東ソー(株)製TSKgel G4000+2500+2000HXL
カラム温度: 40℃
注入量 : 10μl
検出器 : L2455(日立製作所(株)製)
ポンプ : L6000(日立製作所(株)製)
流量 : 1.0ml/min
校正曲線 : 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)重量平均分子量=1000000〜500迄の13のサンプルによる校正曲線を使用する。13のサンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
1−3.光重合性化合物
インクAに含まれる光重合性化合物は、上述の活性光線の照射により、架橋または重合するラジカル重合性の化合物であれば特に制限されない。光重合性化合物は、モノマー、重合性オリゴマー、プレポリマー、あるいはこれらの混合物のいずれであってもよい。光重合性化合物は、インクA中に、一種のみ含まれていてもよく、二種類以上含まれていてもよい。
光重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレートまたはそのオリゴマーであることがより好ましい。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタアクリレートを意味する。
光重合性化合物でありうる(メタ)アクリレートの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の単官能のアクリレート;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等の2官能の(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレート;
が含まれる。
また、これらのオリゴマーは、上記(メタ)アクリレートを一種のみ重合させたものであってもよく、二種以上重合させたものであってもよい。オリゴマーの例には、CN2303(Sartomer社製)が含まれる。
また、光重合性化合物の例には、上記(メタ)アクリレートがエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドで変性された化合物(以下、単に「変性(メタ)アクリレート」とも称する)も含まれ、インクAに、このような変性(メタ)アクリレートが含まれることが好ましい。変性(メタ)アクリレートは、感光性が非常に高い。また、変性(メタ)アクリレートは、インクがゲル化する際に、ゲル化剤が結晶構造を形成した場合、当該結晶構造中に内包されやすく、インクAの液滴が記録媒体上にピニングされやすい。一方で、変性(メタ)アクリレートは、高温下でもインクA中の他の成分と相溶しやすいため、インクA内で相分離が生じ難い。さらに、変性(メタ)アクリレートは、硬化収縮が少ないため、インクAの硬化時に、印刷物にカールが生じ難い。
変性(メタ)アクリレートの市販品の例には、CD561、SR454、SR499およびSR494(いずれもSartomer社製);NKエステルA−400、NKエステルA−600、NKエステル9G、NKエステル14G、NKエステルDOD−N、NKエステルA−DCPおよびNKエステルDCP(いずれも新中村化学工業社製);Photomer 6072(BASF社製);等が含まれる。
ここでインクAに含まれる光重合性化合物の量は、インクAの総質量に対して1質量%以上97質量%以下とすることができる。
1−4.ゲル化剤
インクAにゲル化剤が含まれると、記録媒体に着弾したインクの液滴をゲル状態にして仮固定(ピニング)することができる。インクがゲル状態でピニングされると、インクの濡れ広がりが抑えられて隣り合うドットが同一しにくくなるため、高精細な画像を形成することができる。また、インクがゲル状態になると、インク液滴中への環境中の酸素の入り込みが抑えられて酸素による硬化阻害が生じにくくなるため、高精細な画像をより高速で形成することができる。ゲル化剤は、インクA中に、一種のみ含まれていてもよく、二種類以上含まれていてもよい。
また、以下の観点から、ゲル化剤は、インクAのゲル化温度以下で、結晶化する化合物であることが好ましい。インクAのゲル化温度とは、加熱によりゾル化または液体化したインクAを冷却していったときに、ゲル化剤がゾルからゲルに相転移し、インクAの粘度が急変する温度をいう。具体的には、ゾル化または液体化したインクAを、粘弾性測定装置(たとえば、MCR300、Physica社製)で粘度を測定しながら冷却していき、粘度が急激に上昇した温度を、インクAのゲル化温度とすることができる。
ゲル化剤がインクA中で結晶化すると、板状に結晶化したゲル化剤によって形成された三次元空間に光重合性化合物が内包される構造が形成されることがある(このような構造を、以下「カードハウス構造」とも称する)。そして、カードハウス構造が形成されると、液体の光重合性化合物が前記空間内に保持されるため、インク液滴がより濡れ広がりにくくなり、インクAのピニング性が高まる。インクAのピニング性が高まると、記録媒体に着弾したインク液滴同士が合一しにくくなり、より高精細な画像を形成することができる。
カードハウス構造内に光重合性化合物が保持されるためには、インクA内で光重合性化合物とゲル化剤とが相溶していることが好ましい。インクA内で光重合性化合物とゲル化剤とが相分離していると、カードハウス構造内に光重合性化合物が保持されにくい場合がある。
結晶化によるカードハウス構造の形成に好適なゲル化剤の例には、ケトンワックス、エステルワックス、石油系ワックス、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、硬化ヒマシ油、変性ワックス、高級脂肪酸、高級アルコール、ヒドロキシステアリン酸、N−置換脂肪酸アミドおよび特殊脂肪酸アミドを含む脂肪酸アミド、高級アミン、ショ糖脂肪酸のエステル、合成ワックス、ジベンジリデンソルビトール、ダイマー酸ならびにダイマージオールが含まれる。
上記ケトンワックスの例には、ジリグノセリルケトン、ジベヘニルケトン、ジステアリルケトン、ジエイコシルケトン、ジパルミチルケトン、ジラウリルケトン、ジミリスチルケトン、ミリスチルパルミチルケトンおよびパルミチルステアリルケトンが含まれる。
上記エステルワックスの例には、ベヘニン酸ベヘニル、イコサン酸イコシル、ステアリン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸パルミチル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、セロチン酸ミリシル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸オレイル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレン脂肪酸エステルが含まれる。上記エステルワックスの市販品の例には、EMALEXシリーズ、日本エマルジョン社製(「EMALEX」は同社の登録商標)、リケマールシリーズおよびポエムシリーズ、理研ビタミン社製(「リケマール」および「ポエム」はいずれも同社の登録商標)が含まれる。
上記石油系ワックスの例には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスおよびペトロラクタムを含む石油系ワックスが含まれる。
上記植物系ワックスの例には、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、ホホバ固体ロウおよびホホバエステルが含まれる。
上記動物系ワックスの例には、ミツロウ、ラノリンおよび鯨ロウが含まれる。
上記鉱物系ワックスの例には、モンタンワックスおよび水素化ワックスが含まれる。
上記変性ワックスの例には、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体、12−ヒドロキシステアリン酸誘導体およびポリエチレンワックス誘導体が含まれる。
上記高級脂肪酸の例には、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、およびエルカ酸が含まれる。
上記高級アルコールの例には、ステアリルアルコールおよびベヘニルアルコールが含まれる。
上記ヒドロキシステアリン酸の例には、12−ヒドロキシステアリン酸が含まれる。
上記脂肪酸アミドの例には、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミドおよび12−ヒドロキシステアリン酸アミドが含まれる。
上記脂肪酸アミドの市販品の例には、ニッカアマイドシリーズ、日本化成社製(「ニッカアマイド」は同社の登録商標)、ITOWAXシリーズ、伊藤製油社製、およびFATTYAMIDシリーズ、花王社製が含まれる。
上記N−置換脂肪酸アミドの例には、N−ステアリルステアリン酸アミドおよびN−オレイルパルミチン酸アミドが含まれる。
上記特殊脂肪酸アミドの例には、N,N’−エチレンビスステアリルアミド、N,N’−エチレンビス−12−ヒドロキシステアリルアミドおよびN,N’−キシリレンビスステアリルアミドが含まれる。
上記高級アミンの例には、ドデシルアミン、テトラデシルアミンおよびオクタデシルアミンが含まれる。
上記ショ糖脂肪酸のエステルの例には、ショ糖ステアリン酸およびショ糖パルミチン酸が含まれる。上記ショ糖脂肪酸のエステルの市販品の例には、リョートーシュガーエステルシリーズ、三菱化学フーズ社製(「リョートー」は同社の登録商標)が含まれる。
上記合成ワックスの例には、ポリエチレンワックスおよびα−オレフィン無水マレイン酸共重合体ワックスが含まれる。上記合成ワックスの市販品の例には、UNILINシリーズ、Baker−Petrolite社製(「UNILIN」は同社の登録商標)が含まれる。
上記ジベンジリデンソルビトールの例には、1,3:2,4−ビス−O−ベンジリデン−D−グルシトールが含まれる。上記ジベンジリデンソルビトールの市販品の例には、ゲルオールD、新日本理化株式会社製(「ゲルオール」は同社の登録商標)が含まれる。
上記ダイマージオールの市販品の例には、PRIPORシリーズ、CRODA社製(「PRIPOR」は同社の登録商標)が含まれる。
インクAのピニング性を高める観点から、ゲル化剤はケトンワックス、エステルワックス、高級脂肪酸、高級アルコールおよび脂肪酸アミドであることが好ましく、下記一般式(G1)で表されるケトンワックスおよび下記一般式(G2)で表されるエステルワックスであることがさらに好ましい。下記一般式(G1)で表されるケトンワックスおよび下記一般式(G2)で表されるエステルワックスは、インクA中に、一種のみ含まれていてもよく、二種類以上含まれていてもよい。また、下記一般式(G1)で表されるケトンワックスおよび下記一般式(G2)で表されるエステルワックスは、インクA中に、いずれか一方のみ含まれていてもよく、両方含まれていてもよい。
一般式(G1):R1−CO−R2
一般式(G1)において、R1およびR2は、いずれも炭素数が9以上25以下である直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基である。
一般式(G2):R3−COO−R4
一般式(G2)において、R3およびR4は、いずれも炭素数が9以上25以下である直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基である。
上記一般式(G1)で表されるケトンワックスまたは上記一般式(G2)で表されるエステルワックスは、直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基の炭素数が9以上であるため、ゲル化剤の結晶性が高い。また上記カードハウス構造においてより十分な空間が生じる。そのため、光重合性化合物が上記空間内に十分に内包されやすくなり、インクAのピニング性が高くなる。また、直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基の炭素数が25以下であるため、ゲル化剤の融点が過度に高まらず、インクAをインクジェット装置から吐出するときにインクAを過度に加熱する必要がない。上記観点からは、R1およびR2は炭素原子数11以上23未満の直鎖状の炭化水素基であることが特に好ましい。
また、インクAのゲル化温度を高くして、着弾後により急速にインクをゲル化させる観点からは、R1もしくはR2のいずれか、またはR3もしくはR4のいずれかが、炭素原子数11以上23未満の飽和炭化水素基であることが好ましい。上記観点からは、R1およびR2の双方、またはR3およびR4の双方が炭素原子数11以上23未満の飽和炭化水素基であることがより好ましい。
上記一般式(G1)で表されるケトンワックスの例には、ジリグノセリルケトン(炭素数:23−24)、ジベヘニルケトン(炭素数:21−22)、ジステアリルケトン(炭素数:17−18)、ジエイコシルケトン(炭素数:19−20)、ジパルミチルケトン(炭素数:15−16)、ジミリスチルケトン(炭素数:13−14)、ジラウリルケトン(炭素数:11−12)、ラウリルミリスチルケトン(炭素数:11−14)、ラウリルパルミチルケトン(11−16)、ミリスチルパルミチルケトン(13−16)、ミリスチルステアリルケトン(13−18)、ミリスチルベヘニルケトン(13−22)、パルミチルステアリルケトン(15−18)、バルミチルベヘニルケトン(15−22)およびステアリルベヘニルケトン(17−22)が含まれる。なお、上記括弧内の炭素数は、カルボニル基で分断される2つの炭化水素基それぞれの炭素数を表す。
一般式(G1)で表されるケトンワックスの市販品の例には、18−Pentatriacontanon、Alfa Aeser社製、Hentriacontan−16−on、Alfa Aeser社製およびカオーワックスT1、花王社製が含まれる。
一般式(G2)で表される脂肪酸またはエステルワックスの例には、ベヘニン酸ベヘニル(炭素数:21−22)、イコサン酸イコシル(炭素数:19−20)、ステアリン酸ステアリル(炭素数:17−18)、ステアリン酸パルミチル(炭素数:17−16)、ステアリン酸ラウリル(炭素数:17−12)、パルミチン酸セチル(炭素数:15−16)、パルミチン酸ステアリル(炭素数:15−18)、ミリスチン酸ミリスチル(炭素数:13−14)、ミリスチン酸セチル(炭素数:13−16)、ミリスチン酸オクチルドデシル(炭素数:13−20)、オレイン酸ステアリル(炭素数:17−18)、エルカ酸ステアリル(炭素数:21−18)、リノール酸ステアリル(炭素数:17−18)、オレイン酸ベヘニル(炭素数:18−22)およびリノール酸アラキジル(炭素数:17−20)が含まれる。なお、上記括弧内の炭素数は、エステル基で分断される2つの炭化水素基それぞれの炭素数を表す。
一般式(G2)で表されるエステルワックスの市販品の例には、ユニスターM−2222SL、スパームアセチ、ニッサンエレクトールWEP3およびニッサンエレクトールWEP2、ニッサンエレクトールWE11、日油株式会社製(「ユニスター」および「ニッサンエレクトール」はいずれも同社の登録商標)、エキセパールSSおよびエキセパールMY−M、花王株式会社製(「エキセパール」は同社の登録商標)、EMALEX CC−18およびEMALEX CC−10、日本エマルジョン株式会社製(「EMALEX」は同社の登録商標)、ならびにアムレプスPC、高級アルコール工業株式会社製(「アムレプス」は同社の登録商標)が含まれる。これらの市販品は、二種類以上の混合物であることが多いため、必要に応じて分離・精製してインクAに含有させてもよい。
ゲル化剤の含有量は、インクAの総質量に対して1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。ゲル化剤の含有量を1.0質量%以上とすることで、インクAの液滴の記録媒体上での濡れ広がりを同程度に制御することができる。一方で、ゲル化剤の含有量を10.0質量%未満とすることで、形成される画像(硬化膜)の表面にゲル化剤が析出しにくくなり、画像内での光沢差が生じにくくなる。またさらに、硬化膜の強度が高まるため、画像の耐スクラッチ性が高まる。上記観点から、インクA中のゲル化剤の含有量は、2.0質量%以上5.0質量%未満であることがより好ましく、2.0質量%以上4.0質量%未満であることがさらに好ましい。
1−5.アミン系化合物
また、インクAには、必要に応じて、アミン系化合物が含まれてもよい。アミン系化合物は、重合開始助剤として、光重合性化合物の重合に寄与する化合物であり、インクAにアミン系化合物が含まれると、インクAを硬化させて得られる硬化膜の架橋密度が高まりやすい。その結果、得られる画像(硬化膜)の表面硬化性、光沢均一性が高まりやすく、硬化膜が記録媒体から剥がれ難くなる。
アミン系化合物は、例えば芳香族第3級アミン化合物でありうる。芳香族第3級アミン化合物の例には、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアミノ−p−安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ−p−安息香酸イソアミルエチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、トリエチルアミンおよびN,N−ジメチルヘキシルアミン、アミン変性アクリレートが含まれる。
ここで、インクAに含まれるアミン系化合物の分子量は300以上3000以下であることが好ましく、350以上2500以下であることがより好ましく、400以上2000以下であることがさらに好ましい。アミン系化合物の分子量が上記範囲であると、得られる硬化膜の架橋密度が十分に高まりやすい。また、アミン系化合物の分子量が上記範囲であると、硬化膜表面にブリードアウトし難く、光沢性の高い画像が得られやすい。なお、「分子量」とは、分子を構成する元素の原子量の総和を示す。ただし、1つの分子が2つ以上の繰り返しユニットからなる分子の分子量は、重量平均分子量(ポリスチレン換算)を示す。分子量の測定方法は、公知の質量分析方法を用いることができる。また、重量平均分子(ポリスチレン換算)は、前述の光重合開始剤と同様に、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。
また、インクAに含まれるアミン系化合物の量は、インクAの総質量に対して0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは4質量%以上10質量%以下である。アミン系化合物の量が、上記範囲であると、インクAの硬化性が十分に高まりやすい。
1−6.その他の成分
インクAには、インクAの硬化性や塗布性等を低下させない範囲において、分散剤、重合禁止剤および界面活性剤等、その他の成分がさらに含まれてもよい。これらの成分は、インクA中に、一種のみ含まれてもよく、二種類以上含まれてもよい。
分散剤の例には、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびステアリルアミンアセテートが含まれる。
分散剤は、前述の色材が顔料である場合に含まれることが好ましく、その量は、前述の色材(特に顔料)の含有量に対して20質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
重合禁止剤の例には、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、t−ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1−ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p−ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5−ジ−t−ブチル−p−ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ−p−ニトロフェニルメチル、N−(3−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o−イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシムおよびシクロヘキサノンオキシムが含まれる。
界面活性剤の例には、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類および脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類およびポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類および第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、ならびにシリコーン系やフッ素系の界面活性剤が含まれる。
シリコーン系の界面活性剤の市販品の例には、KF−351A、KF−352A、KF−642およびX−22−4272、信越化学工業製、BYK307、BYK345、BYK347およびBYK348、ビックケミー製(「BYK」は同社の登録商標)、ならびにTSF4452、東芝シリコーン社製が含まれる。
界面活性剤の含有量は、インクAの総質量に対して、0.001質量%以上1.0質量%未満であることが好ましい。
2.インクB
本発明のインクセットが含むインクBには、フタロシアニン構造及びキナクリドン構造をいずれも有さない色材と、光重合開始剤と、光重合性化合物と、ゲル化剤と、が含まれる。また、インクBには、必要に応じて、アミン系化合物が含まれてもよく、さらに他の成分が含まれてもよい。ここで、インクBに含まれる光重合性化合物やゲル化剤、アミン系化合物、その他の成分や、さらにこれらの含有量は、前述のインクAに含まれる各化合物及びその含有量等と同様の範囲で調整することができる。そこで、以下、インクBに含まれる色材及び光重合開始剤についてのみ説明する。
2−1.色材
前述のように、インクBには、フタロシアニン構造及びキナクリドン構造をいずれも有さない色材が含まれる。フタロシアニン構造及びキナクリドン構造をいずれも有さない色材は特に制限されず、インクBの色に応じて適宜選択される。色材は、染料または顔料のいずれでもあり得るが、インクBの他の成分に対して良好な分散性を有し、かつ耐候性に優れるとの観点から、顔料であることが好ましい。
インクBは、例えばイエローインク、ブラックインク、またはホワイトインクでありうる。インクBがイエローインクである場合、インクBに含まれる色材の例には、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193等の顔料が含まれる。
インクBがブラックインクである場合、インクBに含まれる色材の例には、C.I.ピグメントブラック7、28、26等の顔料が含まれる。
インクBがホワイトインクである場合、インクBに含まれる色材の例には、C.I.ピグメントホワイト6、18、21等の顔料が含まれる。また、特開平11−129613号公報に示される有機化合物塩や特開平11−140365号公報、特開2001−234093号公報に示されるアルキレンビスメラミン誘導体を用いることもできる。ホワイトインク用の色材の市販品としては、ShigenoxOWP、ShigenoxOWPL、ShigenoxFWP、ShigenoxFWG、ShigenoxUL、ShigenoxU(以上、ハッコールケミカル社(Hakkol Chemical Co., Ltd.)製)が挙げられる。
ただし、インクBの色は、イエロー、ブラック、ホワイトに限定されるものではなく、所望の色であり得る。したがって、インクBに含まれる色材は、上記に限定されるものではない。また、前述のように、インクBには、フタロシアニン構造及びキナクリドン構造を有する色材が、一部含まれていてもよいが、インクBに含まれる色材の総質量に対して、フタロシアニン構造及びキナクリドン構造を有する色材の総質量は、30質量%未満であり、10質量%未満がより好ましく、実質的に含まれない方がさらに好ましい。
ここで、インクBには、インクBの総質量に対して、色材が0.5質量%以上15質量%以下含まれることが好ましく、1質量%以上12質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。色材の量が0.5質量%以上であると、インクBが十分に着色されやすくなる。一方で、色材の量が15質量%以下であると、インクBの粘度が過度に高まらず、インクBをインクジェット装置から安定して吐出しやすくなる。
2−2.光重合開始剤
インクBには、光重合開始剤が含まれる。インクBに含まれる光重合開始剤の種類は、インクBを硬化させるための活性光線の波長等に応じて適宜選択されるが、α−開裂型光重合開始剤であることが好ましい。インクBに、α−開裂型光重合開始剤が含まれると、インクBの硬化性が高まりやすく、インクBの硬化膜と記録媒体との密着性も高まりやすい。ここで、インクBに含まれるα−開裂型光重合開始剤は、前述のインクAに含まれるα−開裂型光重合開始剤と同様でありうるが、好ましくはビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドである。
インクBに含まれるα−開裂型光重合開始剤の量は、インクBの総質量に対して0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以上8質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以上5質量%以下である。α−開裂型光重合開始剤の量が、上記範囲であると、インクBの硬化性が十分に高まりやすい。
また、インクBに含まれるα−開裂型光重合開始剤の分子量は400以上であることが好ましい。α−開裂型光重合開始剤の分子量は、400以上3000以下であることがより好ましく、400以上2000以下であることがさらに好ましい。インクBに含まれるα−開裂型光重合開始剤の分子量が400以上であると、得られる硬化膜の表面に光重合開始剤が移行し難く、硬化膜の光沢性が維持されやすい。なお、「分子量」とは、分子を構成する元素の原子量の総和を示す。ただし、1つの分子が2つ以上の繰り返しユニットからなる分子の分子量は、重量平均分子量(ポリスチレン換算)を示す。分子量の測定方法は、公知の質量分析方法を用いることができる。また、重量平均分子(ポリスチレン換算)は、前述のように、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。
一方で、インクBに含まれる水素引き抜き型光重合開始剤の量は、インクBの総質量に対して0.1質量%未満であり、含まれないことが特に好ましい。前述のように、インクBに水素引き抜き型光重合開始剤が多量に含まれると、水素引き抜き型光重合開始剤が活性光線を吸収してしまい、インクBの液滴内部まで十分に活性光線が照射されないことがある。これに対し、水素引き抜き型光重合開始剤の量が、インクBの総質量に対して0.1質量%未満であれば、インクBの液滴内部まで十分に活性光線を照射することが可能となり、インクBの硬化性が十分に高まる。
3.インクA及びインクBの物性
インクA及びインクBの粘度、ゲル化温度等は、それぞれ異なっていてもよいが、インクA及びインクBを同一のインクジェット装置のインクジェットノズルから吐出するとの観点から、これらは同等であることが好ましい。
各インクの粘度は、インクジェット装置の種類に応じて適宜選択されるが、インクジェットヘッドからの吐出性を高めるとの観点からは、各インクの80℃における粘度は3mPa・s以上20mPa・s以下であることが好ましい。また、着弾して常温に降温した際に、それぞれのインクを十分にゲル化させる観点から、各インクの25℃における粘度は1000mPa・s以上であることが好ましい。
各インクのゲル化温度は、40℃以上70℃以下であることが好ましい。各インクのゲル化温度が40℃以上であると、記録媒体に着弾後、各インクがそれぞれ速やかにゲル化するため、ピニング性がより高くなる。各インクのゲル化温度が70℃以下であると、インク温度が通常80℃程度であるインクジェットヘッドからのインク吐出時にインクがゲル化しにくいため、より安定してインクを吐出することができる。
各インクの80℃における粘度、25℃における粘度およびゲル化温度は、レオメータにより、インクの動的粘弾性の温度変化を測定することにより求めることができる。本発明においては、これらの粘度およびゲル化温度は、以下の方法によって得られた値である。各インクを100℃に加熱し、ストレス制御型レオメータPhysica MCR301(コーンプレートの直径:75mm、コーン角:1.0°)、AntonPaar社製によって粘度を測定しながら、剪断速度11.7(1/s)、降温速度0.1℃/sの条件で20℃まで冷却して、粘度の温度変化曲線を得る。80℃における粘度および25℃における粘度は、粘度の温度変化曲線において80℃、25℃における粘度をそれぞれ読み取ることにより求める。ゲル化温度は、粘度の温度変化曲線において、粘度が200mPa・sとなる温度として求める。
4.インクA及びインクBの調製
上記インクA及びインクBは、例えば前述の色材、光重合開始剤、光重合性化合物、及びゲル化剤と、任意の各成分とを、加熱しながら混合して得られる。得られた混合液を所定のフィルターで濾過することが好ましい。また、色材が顔料である場合等には、顔料や分散剤が溶媒中に分散された顔料分散体をあらかじめ調製しておき、これに残りの成分を添加して加熱しながら混合してもよい。
顔料や分散剤の分散は、たとえば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、およびペイントシェーカーにより行うことができる。
[画像形成方法]
本発明の画像形成方法は、上述のインクジェットセットのインクA及びインクBをインクジェットヘッドのノズルから吐出して記録媒体に着弾させる第1の工程と、記録媒体に着弾したインクに活性光線を照射してインクを硬化させる第2の工程とを含む。インクA及びインクBは、同一の条件で、吐出や硬化させることが好ましい。
1.第1の工程
第1の工程では、インクA及びインクB(以下、これらを総称して単に「インク」とも称する)の液滴をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体の、形成すべき画像に応じた位置に着弾させる。
インクジェットヘッドからの吐出方式は、オンデマンド方式とコンティニュアス方式のいずれでもよい。オンデマンド方式のインクジェットヘッドは、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型及びシェアードウォール型等の電気−機械変換方式、並びにサーマルインクジェット型及びバブルジェット(バブルジェットはキヤノン社の登録商標)型等の電気−熱変換方式等のいずれでもよい。
インク液滴は、加熱した状態でインクジェットヘッドから吐出することで、吐出安定性を高めることができる。吐出される際のインクの温度は、35℃以上100℃以下であることが好ましく、吐出安定性をより高めるためには、35℃以上80℃以下であることがより好ましい。特には、インクの粘度が7mPa・s以上15mPa・s以下、より好ましくは8mPa・s以上13mPa・s以下となるようなインク温度において出射を行うことが好ましい。
インクジェットヘッドからのインクの吐出性を高めるために、インクジェットヘッドに充填されたときのインクの温度が、当該インクの(ゲル化温度+10)℃以上(ゲル化温度+30)℃以下に設定されることが好ましい。インクジェットヘッド内のインクの温度が、(ゲル化温度+10)℃未満であると、インクジェットヘッド内もしくはノズル表面でインクがゲル化して、インクの吐出性が低下しやすい。一方、インクジェットヘッド内のインクの温度が(ゲル化温度+30)℃を超えると、インクが高温になりすぎるため、インク成分が劣化することがある。
インクの加熱方法は、特に制限されない。例えば、ヘッドキャリッジを構成するインクタンク、供給パイプ及びヘッド直前の前室インクタンク等のインク供給系、フィルター付き配管並びにピエゾヘッド等の少なくともいずれかをパネルヒーター、リボンヒーター又は保温水等によって加熱することができる。
吐出される際のインクの液滴量は、記録速度及び画質の面から、2pL以上20pL以下であることが好ましい。
記録媒体は、特に制限されないが、例えばポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート及びポリブタジエンテレフタレート等のプラスチックで構成される非吸収性の記録媒体(プラスチック基材)、金属類及びガラス等の非吸収性の無機記録媒体、並びに吸収性の紙類(例えば印刷用コート紙及び印刷用コート紙B)とすることができる。
2.第2の工程
第2の工程では、第1の工程で記録媒体に着弾させたインクに活性光線を照射して、該インクが硬化してなる画像を形成する。
活性光線は、例えば電子線、紫外線、α線、γ線、及びエックス線等から選択することができるが、好ましくは紫外線であり、365nm以上405nm以下にピーク波長を有する光をLED光源から照射することが好ましい。LED光源の例として、Phoseon Technology社製の水冷LED(ピーク波長395nm)が挙げられる。LEDは従来の光源(例えばメタルハライドランプ等)と比較して、輻射熱が少ない。したがって、活性光線照射時に、インクが溶け難く、光沢ムラ等を生じさせ難い。
ここで、365nm以上405nm以下にピーク波長を有する光を照射する場合、記録媒体表面もしくはインク液滴表面におけるピーク照度を、0.5W/cm以上10W/cm以下とすることが好ましく、1W/cm以上5W/cm以下とすることが好ましい。また、輻射熱の照射を抑制するとの観点から、インク液滴に照射する光量は350mJ/cm未満であることが好ましい。
活性光線の照射は、インクが記録媒体に着弾してから0.001秒から1.0秒までの間に行うことが好ましく、高精細な画像を形成するためには、0.001秒から0.5秒までの間に行うことがより好ましい。
一方、活性光線の照射は、2段階に分けて行ってもよい。この場合、インクが記録媒体に着弾してから0.001秒から2.0秒までの間に活性光線を照射してインクを仮硬化させ、全印字終了後、さらに活性光線を照射してインクを本硬化させることができる。活性光線の照射を2段階に分けることで、インク硬化の際に起こる記録材料の収縮がより生じにくくなる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.インク材料
[色材(顔料)]
シアン(C.I.ピグメントブルー15:4(大日精化社製、クロモファインブルー6332JC(フタロシアニン系)))
マゼンタ(C.I.ピグメントバイオレット19(DIC社製、Super Red BRZ(キナクリドン系)))
イエロー(C.I.ピグメントイエロー180(大日精化社製、クロモファインイエロー6280JC(ベンズイミダゾロン系)))
ブラック(C.I.ピグメントブラック7(三菱化学社製、#52(カーボンブラック)))
[顔料分散液調製用の材料]
アジスパーPB824(味の素ファインテクノ社製)
APG−200(新中村化学社製)
[光重合性化合物]
NKエステルA−400(新中村化学社製)
NKエステルA−600(新中村化学社製)
SR499(Sartmer社製)
Photomer 4072(コグニス社製)
CN2303(Sartmer社製)
[ゲル化剤]
ジステアリルケトン(花王社製)
ステアリン酸ベヘニル(日油社製)
[界面活性剤]
BYK307(ビックケミー社製)
[重合禁止剤]
UV10(BASF社製)
[α−開裂型光重合開始剤]
IRGACURE 184(BASF社製、分子量:207)
IRGACURE 819(BASF社製、分子量:418)
[水素引き抜き型光重合開始剤]
・チオキサントン系
SPEEDCURE ITX(Lambson社製、分子量:254)
SPEEDCURE 7010−L(Lambson社製、重量平均分子量:1839)
GENOPOL TX−1(RAHN社製、重量平均分子量:824)
・その他
KAYACURE BMS(日本化薬社製、分子量:304)
Omnipol BP(RAHN社製、重量平均分子量:960)
[アミン系化合物]
SPEEDCURE EHA(Lambson社製、分子量:277)
CN371(Sartmer社製、重量平均分子量:513超3000以下)
2.インクの調製と評価
<顔料分散液の調製>
アジスパーPB824(味の素ファインテクノ社製)9質量部、APG−200(新中村化学社製)71質量部をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間加熱攪拌して溶解させた。その後、溶液を室温まで冷却し、色材(シアン、マゼンタ、イエロー、またはブラックのいずれか)を20質量部加えた。そして、当該溶液を直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れて密栓した。そして、ペイントシェーカーにて所定時間分散処理し、ジルコニアビーズを除去した。なお、分散時間は、シアン及びブラックはそれぞれ5時間、マゼンタ及びイエローはそれぞれ8時間とした。
<インク1〜28の調製>
顔料分散液、光重合性化合物、ゲル化剤、界面活性剤、重合禁止剤、光重合開始剤(α−開裂型光重合開始剤及び水素引き抜き型光重合開始剤)、及びアミン系化合物を、表1及び表2に示される質量比となるように混合した後、WACフィルター(0.3μm精度、ポール社製)でろ過して、インク1〜28を調製した。
Figure 2017056860
Figure 2017056860
<実施例1〜15、及び比較例1〜3>
表3に示すように、上記インク1〜28を適宜組み合わせて、インクセットとした。当該インクセットを用いて、下記評価方法に示すように画像形成を行い、当該インクセットに含まれるインクの表面硬化性や光沢均一性、耐折り割れ性を評価した。なお、インクを硬化させるための光源及び光源からの積算光量(各インク毎)は、表3に示す値とした。
ここで、LED光源(京セラ社製)は、ピーク波長:395nm、記録媒体上での照度:2W/cm、積算光量:250mJ/cm、300mJ/cmまたは500mJ/cmとした。また、メタルハライド光源(Intergation Technology社製、商品名:SUB ZEO 085)は、記録媒体上での照度:700mW/cm、積算光量:200mJ/cmとした。
<評価方法>
[表面硬化性]
紙器用キャスチコート紙(NEWマリエストW 米坪量315g/m 北越紀州製紙社製)に、9g/mの付き量でイエロー、ブラック、マゼンタ、シアンのベタ画像(4cm×4cm)を続けて1パス画像(16cm×4cm)を形成した。
得られたベタ画像(16cm×4cm)に対して試験片を一定速度で動かし、フォースゲージ(イマダ社製)の値の変化から各色における動摩擦係数(印刷物の表面ベタつき)を算出した。試験片には、印刷用紙であるNEWマリエストW、25mm×25mm、200gの荷重をかけた。評価は以下の手法で行った。
◎:動摩擦係数の色差が0.1未満である
○:動摩擦係数の色差が0.1以上0.2未満である
△:動摩擦係数の色差が0.2以上0.3未満である
×:動摩擦係数の色差が0.3以上である
[光沢均一性]
紙器用キャスチコート紙(NEWマリエストW 米坪量315g/m 北越紀州製紙社製)に、自然画(JIS X 9201:2001、高精細カラーデジタル標準画像データ「フルーツバスケット」、「カフェテリア」)を、A4サイズでプリントした。目視観察の結果から、以下の基準で画像を評価した。
◎:全ての印刷物で光沢は均質である
〇:1種類の印刷物の一部で光沢の低下が認められるが、全体の光沢は均質である
△:2種類の印刷物の一部で光沢の低下が認められるが、全体の光沢は均質である
×:2種類の印刷物の大部分で明らかな光沢低下が認められ、全体の光沢は不均質である
[耐折り割れ性]
紙器用板紙(OKボール 米坪量400g/m 王子マテリア社製)に、9g/mの付き量でイエロー、ブラック、マゼンタ、シアンのベタ画像(それぞれ、4cm×4cm)を続けて形成し、1パス画像(16cm×4cm)を形成した。
得られた画像をJIS K5400に基づき、テスター産業社製の塗膜屈曲試験機 PI−801を使用して、折り曲げ試験を行った。この際のマンドレル径はφ2mを使用した。
○:すべての画像の折り曲げ面に塗膜の剥離が見られない
△:ブラック画像の折り曲げ面に塗膜の剥がれがある
×:ブラック画像、イエロー画像の折り曲げ面に塗膜の剥がれがある
Figure 2017056860
表3に示されるように、色材がフタロシアニン構造またはキナクリドン構造を有するシアンインク、及びマゼンタインクでは、水素引き抜き型光重合開始剤を含み、かつ色材がフタロシアニン構造及びキナクリドン構造を有さないイエローインク及びブラックインクでは、水素引き抜き型光重合開始剤を含まないインクセット(実施例1〜15)では、硬化性、光沢均一性が良好であり、折り割れが発生し難かった。
これに対し、色材がフタロシアニン構造またはキナクリドン構造を有するシアンインク、及びマゼンタインクに水素引き抜き型光重合開始剤を含まない場合(比較例1)には、光沢均一性が低くなり、さらにシアンインク及びマゼンタインクの表面硬化性が低くなった。シアンインク及びマゼンタインクの硬化時に、酸素による硬化阻害が生じたものと推察される。
一方、色材がフタロシアニン構造及びキナクリドン構造を有さないイエローインク及びブラックインクに、水素引き抜き型光重合開始剤を含む場合には、イエローインク及びブラックインクの内部硬化性が低く、折り割れが発生しやすかった(特に比較例2)。そして、当該比較例2より活性光線量を高めると(比較例3)、イエローインク及びブラックインクの塗膜の折り割れ性が向上したものの、光沢均一性が低くなった。シアンインク及びマゼンタインクの塗膜に過度にエネルギーが照射されたため、表面のゲル結晶が溶けて、これらの塗膜の表面が荒れたと推察される。
なお、光重合開始剤の分子量がいずれも400以上であるインクA及びインクBを用いた場合(例えば実施例11〜15)では、特に光沢が良好になりやすかった。光重合開始剤が画像表面にブリードアウトし難く、画像の光沢性が維持されたと推察される。また、これらのインクA及びBは、アミン系硬化剤を含むことから、インクの硬化性が良好であり、さらに折り割れも生じ難かった。
本出願は、2015年9月30日出願の特願2015−193185号に基づく優先権を主張する。これらの出願明細書に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
本発明のインクセットによれば、全てのインクが良好な硬化性を有し、かつ、全てのインクを同一の硬化条件で均一に硬化させることが可能である。したがって、本発明のインクセット、及びこれを用いた画像形成方法は、種々の画像の形成に適用可能である。

Claims (8)

  1. 光重合性化合物、光重合開始剤、ゲル化剤、及び色材を含有し、かつ活性光線の照射によって硬化する、インクA及びインクBを少なくとも含むインクセットであって、
    前記インクAは、前記色材がフタロシアニン構造またはキナクリドン構造を有し、かつ前記光重合開始剤が水素引き抜き型光重合開始剤を含む組成物であり、
    前記インクBは、前記色材がフタロシアニン構造及びキナクリドン構造をいずれも有さず、かつ前記インクBの総質量に対する、水素引き抜き型光重合開始剤の量が0.1質量%未満である組成物であることを特徴とする、インクセット。
  2. 前記光重合開始剤の分子量が400以上であることを特徴とする、請求項1に記載のインクセット。
  3. 前記水素引き抜き型光重合開始剤が、チオキサントン系化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載のインクセット。
  4. 前記インクA及び/または前記インクBが、アミン系化合物をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクセット。
  5. 前記インクAが、シアンインクまたはマゼンタインクであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクセット。
  6. 前記インクBが、イエローインク、ブラックインク、またはホワイトインクであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクセット。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクセットが含むインクA及びインクBをインクジェットのノズルから吐出して記録媒体に着弾させる工程と、
    前記記録媒体上に着弾した前記インクA及び前記インクBに、活性光線を照射して、前記インクA及び前記インクBを硬化させる工程と、
    を含むことを特徴とする、画像形成方法。
  8. 前記活性光線は、365nm以上405nm以下にピーク波長を有することを特徴とする、請求項7に記載の画像形成方法。
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