JPWO2016194627A1 - 長尺部材の焼き入れ装置及び長尺部材の焼き入れ方法 - Google Patents

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Abstract

本発明に係る焼き入れ装置100は、曲がり管120の軸線形状と同一の軸線形状を有し且つ曲がり管と同一の姿勢にて保持された部材である倣いゲージ150と、曲がり管及び倣いゲージの長手方向に移動可能であり且つ上記長手方向に直交する方向においても移動可能な部材である倣い手段160と、を備える。倣い手段の一端には倣いゲージに沿って摺動可能に係合するガイド部190が保持され、他端には焼き入れ手段110が保持されている。運搬手段130は、倣い手段を移動させることにより焼き入れ手段を上記長手方向に移動させる。これにより、曲がり管と加熱手段111との位置関係を厳密に制御することが可能であり、段替えに伴う作業負荷が低く、低コスト及び省スペースを達成可能な曲がり管の焼き入れ装置を提供する。

Description

本発明は、例えば、曲がりを有する管状部材(例えば、鋼管等)及び異形断面(例えば、ハット状断面)を有する長尺部材等、長尺部材の少なくとも一部に焼き入れ処理を施すための装置に関する。更に、本発明は、当該焼き入れ装置を用いる焼き入れ処理方法にも関する。
例えばドアインパクトビーム及びアンチロールバー等の自動車用部品に用いられる「曲がりを有する管状部材」(以降、「曲がり管」と称呼される場合がある。)の機械的強度等を高めることを目的とした所謂「焼き入れ」と称呼される処理が知られている。焼き入れ処理とは、その処理対象となる部材を所定の温度以上に加熱した後に急冷する処理である。焼き入れ処理は、その処理対象となる部材の全体に施される場合もあり、或いは、その処理対象となる部材の一部において局所的に施される場合もある。
前者の具体例としては、例えば、予め曲げ加工が施された管(曲がり管)の全体を所定の焼き入れ温度以上の温度まで加熱した後に(冷却水に接触させる等して)急冷することが知られている。但し、この方法によれば、曲がり管の全体に焼き入れ処理が施されるので、例えば曲がり管の一部に焼き入れ処理を施さない場合は、この方法を適用することはできない。
一方、後者の場合、加熱手段及び冷却手段を含む焼き入れ手段を曲がり管の長手方向に沿って少しずつ移動させ、当該管の焼き入れが必要な部分において加熱及び冷却を行うことにより、曲がり管の一部において焼き入れ処理を施すことが一般的である。この場合、上記とは逆に、焼き入れ手段を固定しておき、曲がり管を移動させてもよい。即ち、曲がり管及び焼き入れ手段の何れが移動してもよく、これらが相対的に移動していればよい。
何れにせよ、曲がり管と加熱手段とが相対的に移動する際に、曲がり管と加熱手段との位置関係が偏ったり、ましてや曲がり管と加熱手段とが干渉したりすると、曲がり管の焼き入れ処理が不均一となったり、加熱手段が破損したりする虞がある。従って、曲がり管と加熱手段との位置関係は厳密に制御される必要がある。
このような焼き入れ処理の具体例としては、例えば、複数の産業用ロボットを協調制御して、管状部材(以降、単に「管」と称呼される場合がある。)の曲げ加工と焼き入れ処理とを同時に行う装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。この装置は、管の送り機構と、管を送りながら支持する第1の支持機構と、加熱機構と、冷却機構と、管の加熱された部分に曲げモーメントを与えて管を曲げ加工する第2の支持機構と、鋼の変形防止機構とを備える。
上記装置において精度良く曲げ加工を施して管を所望の形状とするためには、上記送り機構、第2の支持機構及び鋼の変形防止機構の三者の動作を厳密に協調制御する必要がある。そのため、生産銘柄を変更する「段替え」を行う際には上記機構のそれぞれについて多くの制御項目の設定、動作確認及び微調整等の複雑な作業が必要となる。従って、上記装置は多品種の生産には適していない。
更に、上記のように、上記装置は複数の産業用ロボット及びこれらを協調制御するための制御機構等を必要とするため、多大な設備費用、広大な稼働スペース及び消費電力を必要とする。
加えて、上記装置においては、焼き入れ処理における加熱に伴う管の軟化を利用して曲げ加工を行うため、管の曲がっている部分(以降、「曲がり部」と称呼される場合がある。)には焼き入れ処理が必ず施される。従って、管の曲がり部において焼き入れが必要とされない場合、上記装置を使用することはできない。
一方、当該技術分野においては、予め曲げ加工が施された管(曲がり管)に焼き入れ処理を施す焼き入れ装置も知られている(例えば、特許文献2を参照。)。この装置は、誘導加熱コイルと、当該誘導加熱コイル内に管を通過させる運搬手段としての多軸ロボット(多関節型産業用ロボット)と、上記誘導加熱コイルの下流に配置された冷却手段と、を備えている。
上記装置においては、上記ロボットのアームの先端に取り付けられた複数のクランプによって曲がり管を保持し、誘導加熱コイルのほぼ中心を当該曲がり管が通過するように上記ロボットが作動する。この際、これら複数のクランプを順次開閉することにより、誘導加熱コイル及び冷却手段に対して当該曲がり管がその長手方向に順次移動され、焼き入れ処理が施される。
上記のような装置によれば、曲がり管の曲がり部の位置とは無関係に焼き入れ処理を施すことができるので、上述した装置のように曲げ加工と焼き入れ処理とを同時に行うことに起因する問題は解消される。
しかしながら、上記装置においては、焼き入れ処理を施す対象(ワーク)となる曲がり管の形状に応じて産業用ロボットの動作を教示及び調整する必要がある。加えて、段替えの際には、曲がり管の形状に応じて上記複数のクランプの配置を変更する必要がある。従って、上記装置においてもまた、段替えを行う際には複雑な作業が必要となる。
ところで、上述したように、例えば自動車の車体を構成する構造部材においては、異形断面を有する長尺部材が用いられることが知られている。具体的には、例えば車両のセンターピラー及びクロスメンバ等において、鋼板にプレス加工を施すことによって成形されるハット状断面を有する長尺部材が使用される。
尚、「長尺部材」とは、特定の方向における当該部材の寸法が他の方向における当該部材の寸法に比べて相対的に長い形状を有する部材を意味し、当該部材における上記特定の方向は「長手方向」と称され、当該「長手方向」に直交する方向は「幅方向」又は「厚み方向」と称される。
上記のような長尺部材の機械的強度を高めるための方法としては、例えば、高い機械的強度を有する補強部材と当該長尺部材と組み合わせる方法が知られている。しかしながら、補強部材の追加は、例えば部材の重量の増大、製造コストの増大及び製造工程の複雑化等の問題に繋がる虞がある。
或いは、ハット状断面を有する長尺部材を所謂「ホットプレス加工」によって製造することにより、当該長尺部材の全体を成形と同時に焼き入れ処理する技術も知られている。当該技術によれば、ハット状断面を有する長尺部材の全ての領域における機械的強度を高めて、例えば車両の衝突安全性等を高めることができる。しかしながら、(加熱を伴わない)通常のプレス加工に比べて、ホットプレス加工には大掛かりな設備が必要である。その結果、例えば、製造コストの増大のみならず、段替えに伴うコストの増大等の問題を招く虞がある。
そこで、当該技術分野においては、ハット状断面を有する長尺部材において、ハット状断面の角部(鋼板の折り曲げ線(稜線)部分)近傍の領域(以降、単に「角部領域」と称される場合がある。)のみに対して焼き入れ処理を部分的に施すことにより、当該長尺部材の機械的強度を高める技術が知られている。
上記焼き入れ処理においては、加熱手段としての高周波加熱コイル及びその下流に配置された冷却手段としての冷却ジャケットを備える焼き入れ手段が、上記角部領域に対向するように配置される。そして、当該焼き入れ手段と当該長尺部材とを当該長尺部材の長手方向に沿って相対的に移動させることにより、当該角部領域のみに対して焼き入れ処理を施すことができる(例えば、特許文献3を参照。)。
しかしながら、上記を始めとする従来技術に係るハット状断面を有する長尺部材の焼き入れ方法においては、焼き入れ処理後のワークの長手方向の軸が反る場合がある。具体的には、ワークの裏側(即ち、ハット状断面の天板とは反対側(「凹部側」及び「フランジ側」とも称される。))が凸状になるように、長手方向の軸が歪む場合がある。
特開2011−000641号公報 特開2004−270025号公報 特許第3408985号公報
前述したように、当該技術分野においては、曲がり管と加熱手段との位置関係を厳密に制御することが可能であり、段替えに伴う作業負荷が低く、低コスト及び省スペースを達成可能な曲がり管の焼き入れ装置に対する要求が存在する。そこで、本発明は、曲がり管と加熱手段との位置関係を厳密に制御することが可能であり、段替えに伴う作業負荷が低く、低コスト及び省スペースを達成可能な曲がり管の焼き入れ装置を提供することを1つの目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、ワークとしての曲がり管と実質的に同一の形状を有する倣いゲージの形状に沿って移動可能な倣い手段に焼き入れ手段を保持することにより、上記目的を達成することができることを見出した。
上記のような点に鑑み、本発明に係る曲がり管の焼き入れ装置(以降、「第1本発明装置」と称される場合がある。)は、焼き入れ手段と、運搬手段と、制御手段と、を備える曲がり管の焼き入れ装置である。
焼き入れ手段は、加熱手段及び冷却手段を含み、ワークとしての曲がり管を加熱した後に急冷することにより、曲がり管を構成する材料の組織を変化させて、例えば、当該材料の機械的強度等を向上させる。例えば、曲がり管を構成する材料が鋼である場合、鋼の金属組織がオーステナイト組織になる温度(例えば、900℃以上)まで加熱手段が曲がり管を加熱した後、冷却手段が曲がり管を急冷して鋼の金属組織をマルテンサイト組織とする。これにより、鋼の硬度、耐摩耗性、引っ張り強さ及び疲労強度等が向上する。
加熱手段は、上記のような当該材料の組織変化を生じさせるのに必要な温度にまで曲がり管を加熱することが可能である限り特に限定されないが、典型的には金属からなる曲がり管を誘導加熱によって加熱する誘導加熱コイル(例えば高周波加熱コイル等)を含む。冷却手段は、加熱手段によって加熱された曲がり管を上記のような当該材料の組織変化を生じさせるのに必要な速度にて急冷することが可能である限り特に限定されないが、典型的には曲がり管に対して冷媒を噴出する冷却ジャケットである。冷却ジャケットの具体例としては、例えば、曲がり管に対向する面に複数の孔が穿設され且つ当該複数の孔から曲がり管に向かって冷却水が噴出されるシャワー式の冷却ジャケットを挙げることができる。
尚、加熱手段及び冷却手段は曲がり管の焼き入れ処理を施す部分の全周に亘って均一に加熱及び冷却を行うことが望ましい。従って、典型的には、加熱手段及び冷却手段は、その中に曲がり管を通すことが可能な中空の形状(例えば、ドーナツ状等)を有することが望ましい。ここにおいて、曲がり管と加熱手段及び冷却手段との間の全周に亘る隙間(クリアランス)を、曲がり管と焼き入れ手段との相対的な移動中も一定に保つことが重要である。従って、曲がり管と加熱手段及び冷却手段との位置関係を厳密に制御する必要が生ずる。
運搬手段は、ワークとしての曲がり管と上記焼き入れ手段とを相対的に移動させる。「相対的に移動させる」とは、曲がり管及び焼き入れ手段の何れか一方又は両方を移動させることにより、曲がり管と焼き入れ手段との位置関係を変化させることを意味する。具体的には、例えば、曲がり管を所定の位置に保持した状態において、焼き入れ手段を曲がり管の長手方向に沿って移動させてもよい。この場合、焼き入れ手段は、例えば、「曲がり管の長手方向に平行なガイドレール上に当該ガイドレールに係合するように配設され且つ当該ガイドレールに沿って移動可能に構成された台座」と連結されることにより、曲がり管の長手方向に沿って移動可能に構成され得る。更に、この台座は、例えば、当該台座に取り付けられたナットと係合するボールネジをサーボモータ等の駆動装置によって回転させることにより移動させることができる。
逆に、焼き入れ手段を所定の位置に保持した状態において曲がり管を移動させて、焼き入れ手段によって加熱及び冷却が行われる領域に曲がり管が通るようにしてもよい。何れの場合においても、詳しくは後述するように、第1本発明装置においては、曲がり管と焼き入れ手段との位置関係は、曲がり管の長手方向に平行な方向のみならず、曲がり管の長手方向に直交する方向にも移動可能に構成される必要がある。
制御手段は、運搬手段によって相対的に移動された曲がり管と焼き入れ手段とが所定の位置関係となったときに、加熱手段によって曲がり管を加熱し、その後、冷却手段によって曲がり管を冷却する。これにより、曲がり管の少なくとも一部に焼き入れ処理を施す。上記「所定の位置関係」とは、曲がり管の焼き入れ処理を施すべき部分が焼き入れ手段による焼き入れを施されるのに好適な位置にある状態を指す。曲がり管と焼き入れ手段とが所定の位置関係にあるか否かは、例えば、曲がり管と焼き入れ手段との相対的な位置関係(例えば、曲がり管及び/又は焼き入れ手段の位置)を検出するセンサによって検知することができる。或いは、上述したようにサーボモータによって回転されるボールネジによって曲がり管と焼き入れ手段とを相対的に移動させる場合は、ボールネジの回転数に基づいて曲がり管と焼き入れ手段との相対的な位置関係を検出することもできる。
曲がり管と焼き入れ手段とが所定の位置関係にあるとき、制御手段は、加熱手段を稼働させる。例えば、加熱手段として誘導加熱コイルを使用する場合、制御手段は、曲がり管と焼き入れ手段とが所定の位置関係にあるときに誘導加熱コイルに通電する。一方、冷却手段は、曲がり管に対する焼き入れ手段の移動方向において加熱手段の後ろ側に隣接して設けられる。これにより、冷却手段は、曲がり管と焼き入れ手段とが相対的に移動するにつれて、加熱手段によって加熱された曲がり管を急冷することができる。尚、冷却手段として冷却ジャケットを使用する場合、曲がり管を冷却するための冷媒(例えば、水)は、加熱手段が稼働している期間においてのみ噴出されるようにしてもよく、或いは、第1本発明装置の稼働中は継続的に噴出されるようにしてもよい。
加えて、第1本発明装置は、倣いゲージと、倣い手段と、を更に備える。
倣いゲージは、曲がり管の軸線形状と同一の軸線形状を有する部材である。即ち、倣いゲージは、曲がり管と略同一の形状を有する。典型的には、倣いゲージは、曲がり管と同一の形状を有する部材である。しかしながら、倣いゲージは、後述するガイド部(「倣い治具」とも称される)によってトレースされる形状が曲がり管の形状に合致している限り、必ずしも曲がり管と完全に同一の形状を有する必要は無い。例えば、曲がり管の屈曲が二次元的である場合、その屈曲に対応する二次元平面における倣いゲージの形状と曲がり管の形状とが同一であればよい。この場合、例えば、倣いゲージは上記二次元平面内による曲がり管の断面に対応する板状の部材であってもよい。このような倣いゲージは、例えば、ワークとしての曲がり管そのものであってもよく、或いは、切削加工等によって曲がり管とは別個に作製された部材であってもよい。
尚、前述したように、曲がり管と加熱手段とが相対的に移動する際に、曲がり管と加熱手段との位置関係が偏ったり曲がり管と加熱手段とが干渉したりすると、曲がり管の焼き入れ処理が不均一となったり加熱手段が破損したりする虞があるので、曲がり管と加熱手段との位置関係は厳密に制御される必要がある。従って、倣いゲージは、ワークとしての曲がり管と同一の姿勢にて保持される必要がある。倣いゲージと曲がり管とを同一の姿勢にて保持するための手法は特に限定されない。
例えば、第1本発明装置による焼き入れ処理の直前に曲がり管の曲げ加工が施される1つの製造ラインにおいて、曲げ加工が施された曲がり管を産業用ロボットによって曲げ加工装置から取り出し、第1本発明装置に取り付ける場合、上記産業用ロボットによって第1本発明装置に取り付けられる曲がり管の姿勢は常に同じである。従って、上記姿勢と同じ姿勢にて倣いゲージを保持することにより、ワークとしての曲がり管と同一の姿勢にて倣いゲージを保持することができる。一方、例えば、予め曲げ加工を施された曲がり管を手作業によって第1本発明装置に取り付ける場合は、上記のように産業ロボットを用いる場合と比べて、第1本発明装置に取り付けられる曲がり管の姿勢を常に同じにすることは困難である。このような場合は、例えば、第1本発明装置において曲がり管を保持する機構(例えば、チャック)に設けられた凸部が嵌合する凹部(例えば、切り欠き等)を曲がり管の被保持部(例えば、端部)に形成しておけばよい。これにより、第1本発明装置に曲がり管を取り付ける際に曲がり管の姿勢を常に同じにすることができる。
倣い手段は、後述するガイド部によってトレースされる倣いゲージの形状を焼き入れ手段に伝達する部材である。これにより、焼き入れ手段は、ガイド部によってトレースされる倣いゲージの形状に沿って移動することにより、曲がり管の形状に沿って移動することができる。その結果、曲がり管と加熱手段との位置関係が偏ったり曲がり管と加熱手段とが干渉したりすることが回避される。そのため、倣い手段は、曲がり管及び倣いゲージの長手方向のみならず同長手方向に直交する方向においても曲がり管及び倣いゲージに対して相対的に移動可能に構成される。
更に、倣い手段は、運搬手段により曲がり管に対して相対的に移動するように構成される。具体的には、例えば、倣い手段は、上述した台座に連結されることにより、運搬手段が台座を移動させるのに伴って、曲がり管に対して相対的に移動する。この場合、倣い手段は、例えば、曲がり管の長手方向に直交するガイドレールを台座上に設け、当該ガイドレールに係合するように配設され且つ当該ガイドレールに沿って移動可能に構成された第2の台座に倣い手段が連結される。これにより、倣い手段は、曲がり管及び倣いゲージの長手方向のみならず同長手方向に直交する水平方向においても曲がり管及び倣いゲージに対して相対的に移動可能に構成され得る。曲がり管の屈曲が三次元的である場合、倣い手段は、鉛直方向の動きは許容するものの水平方向の動きは許容しない機構(例えば、パンタグラフ及びスライダからなる機構)を介して第2の台座に連結される。これにより、倣い手段は、曲がり管及び倣いゲージの長手方向のみならず同長手方向に直交する水平方向及び同長手方向に直交する鉛直方向においても曲がり管及び倣いゲージに対して相対的に移動可能に構成され得るので、三次元的な屈曲を有する曲がり管にも対応可能となる。
倣い手段の一端には、倣いゲージに沿って摺動可能に係合するガイド部が保持されている。ガイド部は、倣いゲージに沿って摺動可能に係合することが可能である限り、特に限定されない。例えば、ガイド部は、2つ以上のガイドローラを備え、これらのガイドローラによって倣いゲージを嵌装する。これにより、運搬手段が曲がり管と倣い手段とを相対的に移動させるのに伴って、倣いゲージの形状をガイド部がトレースすることができる。
一方、倣い手段の他端には、焼き入れ手段が保持されている。従って、ガイド部によってトレースされる倣いゲージの形状は、倣い手段を介して焼き入れ手段に伝達される。その結果、焼き入れ手段は、ガイド部によってトレースされる倣いゲージの形状に沿って移動するので、曲がり管の形状に沿って移動することができる。
上記によれば、ガイド部が倣いゲージに沿って曲がり管及び倣いゲージの長手方向に直交する方向にも移動することにより、焼き入れ手段が曲がり管に精度良く沿って移動する。即ち、第1本発明装置によれば、簡便な機械的手段によって曲がり管と加熱手段との位置関係を厳密に制御することが可能である。更に、段替えに際しては、倣いゲージを新たなワークに対応したものに交換することにより容易に対応可能である。加えて、このように簡便な機械的手段を用いるので、第1本発明装置は、産業用ロボットを使用する場合と比較して、低コスト及び省スペースを同時に達成可能である。
ところで、制御手段は、焼き入れ手段を制御して、加熱手段によって曲がり管を加熱した後に冷却手段によって曲がり管を冷却することによって、曲がり管の少なくとも一部に焼き入れ処理を施す。即ち、制御手段は、例えば加熱手段への電力の供給及び冷却手段への冷媒の供給等を制御する。従って、制御手段と焼き入れ手段とが離れていると、例えば電力及び冷媒等の供給経路が長くなり、電力の伝達損失及び冷媒の圧力損失等を招き、第1本発明装置のエネルギー効率を低下させる要因となる虞がある。更に、例えば電力及び冷媒等を焼き入れ手段に供給するための配線及び配管が長くなり、例えば、それらの配線及び配管を配設するためのスペースが必要となり、第1本発明装置の大型化を招く虞がある。加えて、運搬手段によって焼き入れ装置が移動する場合、焼き入れ装置の移動に従って上記配線及び配管を引き回すための機構が必要となり、第1本発明装置の複雑化を招く虞がある。
そこで、第1本発明装置において、制御手段は、倣い手段に保持されているように構成され得る。この場合、制御手段は、倣い手段の一部を構成していてもよい。具体的には、例えば、制御手段に設けられたアームにガイド部及び焼き入れ手段がそれぞれ保持されていてもよい。この場合、制御手段及びアームが倣い手段を構成している。
上記によれば、焼き入れ手段は倣い手段の一端に保持されているので、制御手段を焼き入れ手段の近傍に配設することができ、結果として上記のような問題を回避することができる。
ところで、制御手段は、上記のように、例えば加熱手段への電力の供給及び冷却手段への冷媒の供給等を制御するので、例えば加熱手段に供給される電力の変圧器及び冷却手段に冷媒を供給するためのポンプ等を備える場合がある。従って、制御手段の質量は一般的に大きく、ガイド部による倣いゲージの形状の円滑なトレースの妨げとなる虞がある。特に、曲がり管の屈曲が三次元的である場合には倣い手段が鉛直方向にも動く必要があるので、制御手段の質量がガイド部によるトレースに与える影響は大きい。従って、第1本発明装置は、制御手段の質量に起因して倣い手段にかかる荷重を軽減する機構を備えることが望ましい。
上記機構としては、制御手段の質量に起因して倣い手段にかかる荷重を軽減することが可能である限り特に限定されないが、低コスト及び省スペースを達成するという本発明の目的に照らせば、例えば、制御手段の重さと釣り合う重りを用いることが望ましい。
そこで、上述したように制御手段が倣い手段に保持されている場合、第1本発明装置は、制御手段と連結されて同制御手段の重さと少なくとも部分的に釣り合うように配設された重りを更に備え得る。
上記において、制御手段の質量に起因して倣い手段にかかる荷重を上記重りによって軽減するための具体的な機構は特に限定されない。例えば、上記重りは、第1本発明装置の上部に設けられた台座に載置された滑車(プーリ)を経て制御手段(又は制御手段が載置されている台座等)に締結されたワイヤ等によって制御手段と連結され、吊り下げられる。これにより、上記重りは、制御手段の重さに起因して倣い手段にかかる荷重を少なくとも部分的には相殺することができる。当然のことながら、ガイド部による倣いゲージの形状の円滑なトレースを達成するためには、上記重りの質量と制御手段の質量とは等しいことが望ましい。
尚、上述したように、制御手段は曲がり管及び倣いゲージの長手方向及び同長手方向に直交する方向に移動するので、上記重りは、制御手段の移動に追従しつつ、鉛直方向上向きの力を制御手段に作用することが可能であるように配設されることが望ましい。そこで、制御手段の移動方向(即ち、曲がり管及び倣いゲージの長手方向)に平行なガイドレールを第1本発明装置の上部に設け、当該ガイドレールに沿って移動可能な台車を当該ガイドレールに係合させ、配設する。更に、制御手段の移動方向に直交するガイドレールを当該台車の上に設け、当該ガイドレールに沿って移動可能な別の台車を当該ガイドレールに係合させ、配設する。この「別の台車」に上記滑車を載置することにより、制御手段が移動しても鉛直方向上向きの力を制御手段に作用させ続けることができる。この場合、制御手段の移動方向の側方に上記重りを吊り下げることが望ましい。これにより、制御手段、滑車が載置される台座及び重りが、曲がり管及び倣いゲージの長手方向に移動することができる。
ところで、上述したように、焼き入れ処理においては、加熱手段が曲がり管を構成する材料の組織変化を生じさせるのに必要な温度にまで曲がり管を加熱する。従って、曲がり管の構成(例えば、構成材料及び構造等)によっては、その自重により加熱時に曲がり管が変形する場合がある。このような変形を防止するためには、曲がり管をその両端部のみにおいて保持するより、曲がり管の長手方向に沿って間隔を空けた複数の位置においても支承する方が望ましい。
そこで、上記の場合、第1本発明装置は、曲がり管を下方から支承可能であると共に下方へ退避可能な複数の支承部材を更に備え得る。そして、これらの複数の支承部材は、曲がり管の長手方向に沿って間隔を空けて配置されている。これによれば、焼き入れ処理において加熱手段によって加熱された曲がり管が軟化して、その自重により撓む等して変形することを抑制することができる。
但し、複数の支承部材が常に曲がり管を支承している状態では、焼き入れ処理において焼き入れ手段が支承部材と干渉し、支承されている箇所を通過することができないので、上記のように、それぞれの支承部材は下方へ退避可能に構成されている。このような支承部材は、例えば空圧シリンダ及び油圧シリンダ等のアクチュエータの端部に曲がり管を支承するための受け部を設けることによって構成され得る。これにより、支承部材は、上記アクチュエータの作動によって、受け部の位置を上昇させたり、下降させたりすることができる。尚、ハンドリングの容易さ及び応答の速さ等の観点から、上記アクチュエータとしては、空圧シリンダが好ましい。
また、焼き入れ処理における曲がり管の変形を低減する観点からは、例えば焼き入れ処理における加熱温度が高いほど及び焼き入れ処理における加熱時における曲がり管の軟化の程度が大きいほど、複数の支承部材の配置間隔を狭くすることが望ましい。一方、焼き入れ処理における焼き入れ手段の移動を妨げない観点からは、焼き入れ処理における焼き入れ手段の移動速度が高いほど、複数の支承部材の配置間隔を広くすることが望ましい。従って、複数の支承部材の配置間隔は、これらの要因を考慮して適宜定められる。
更に、複数の支承部材を配置する位置については、当然のことながら、支承されるべき曲がり管の形状に合わせて定められる。尚、曲がり管の屈曲の程度及び支承部材の受け部の大きさによっては、曲がり管の長手方向に略直線状に複数の支承部材を配置してもよい場合がある。
加えて、個々の支承部材の受け部の上限位置もまた、当然のことながら、支承されるべき曲がり管の形状に合わせて定められる。個々の支承部材の受け部の下限位置は、アクチュエータの作動によって下方へ退避したときに、曲がり管と支承部材(の受け部)との間に焼き入れ手段が通過するのに十分な間隔が確保されるように定められる。
尚、例えば、極めて高い寸法精度が求められる場合等、上記のように支承部材によって曲がり管を下方から支承するのみでは焼き入れ処理時における曲がり管の保持及び固定が不十分である場合がある。このような場合は、例えば、焼き入れ手段の近傍において曲がり管を上方から下方に向かって押圧する押圧手段を更に設けてもよい。この押圧手段は、焼き入れ手段と共に曲がり管の長手方向に移動する必要があるので、倣い手段に連結されることが望ましい。
更に、押圧手段は、焼き入れ手段とは曲がり管の長手方向において若干離れた位置において曲がり管を押圧することになるので、曲がり管の屈曲により、曲がり管の長手方向に直交する方向においても焼き入れ手段から若干ずれた位置において曲がり管を押圧することになる。このため、押圧手段は、曲がり管の長手方向に直交する方向に移動可能な状態で倣い手段に連結される。加えて、押圧手段の曲がり管に当接する部分には、曲がり管を押し下げつつ円滑に長手方向に移動することが可能であるように、例えばローラ等の機構が設けられていることが望ましい。
ところで、焼き入れ処理において加熱された曲がり管が変形することを抑制する観点からは、支承部材が下方へ退避している期間をできる限り短くすることが望ましい。従って、上記のような支承部材を備える第1本発明装置においては、焼き入れ処理において焼き入れ手段が通過するときのみ支承部材が下方へ退避するように構成することが望ましい。
上記の場合、前記複数の支承部材のそれぞれが、前記焼き入れ手段が所定の距離以内に接近しているときには下方へ退避し、前記焼き入れ手段が所定の距離以内に接近していないときには前記曲がり管を下方から支承するように構成され得る。これによれば、焼き入れ処理において焼き入れ手段が支承部材から所定の距離以内に接近したときのみ支承部材が下方へ退避する。従って、支承部材が下方へ退避している期間を短くすることができるので、焼き入れ処理において、曲がり管に沿った焼き入れ手段の移動を妨げること無く、加熱された曲がり管が変形することを抑制することができる。
更に、上記「所定の距離」は、例えば、焼き入れ処理において焼き入れ手段が支承部材に近付いてくる場合に、支承部材の退避を開始しても焼き入れ手段と支承部材とが干渉すること無く、当該支承部材が支承していた箇所を焼き入れ手段が通過することが可能な焼き入れ手段と支承部材との最短距離に応じて適宜定めることができる。従って、上記「所定の距離」は、例えば、焼き入れ処理における焼き入れ手段の移動速度、アクチュエータによる支承部材の退避速度、焼き入れ手段及び支承部材の受け部の大きさ及び形状等の種々の要因によって影響され得る。
加えて、焼き入れ手段と支承部材とが上記「所定の距離」以内に接近したか否かは、例えば、焼き入れ手段と支承部材との間の距離(例えば、焼き入れ手段及び/又は支承部材の位置)を検出するセンサによって検知することができる。或いは、上述したようにサーボモータによって回転されるボールネジによって曲がり管と焼き入れ手段とを相対的に移動させる場合は、ボールネジの回転数に基づいて焼き入れ手段と支承部材との間の距離を検出することもできる。
ところで、前述したように、冷却手段は、曲がり管に対する焼き入れ手段の移動方向において加熱手段の後ろ側に隣接して設けられる。これにより、冷却手段は、曲がり管と焼き入れ手段とが相対的に移動するにつれて、加熱手段によって加熱された曲がり管を急冷することができる。
しかしながら、焼き入れ手段は、曲がり管の長手方向における加熱手段の両側に冷却手段をそれぞれ備え得る。これによれば、曲がり管の長手方向において焼き入れ手段を一方向に移動させるときのみならず、その逆方向に焼き入れ手段を移動させるときにも、焼き入れ処理を行うことができる。その結果、第1本発明装置による曲がり管の焼き入れ処理の効率を大幅に高めることができる。
更に、曲がり管に所謂「焼き戻し」を行う必要がある場合は、焼き入れ手段を曲がり管の長手方向において一方向に移動させるとき(往路)には焼き入れ処理を行い、その逆方向に移動させるとき(復路)には焼き戻し処理を行うこともできる。これによれば、1つの工程により焼き入れ処理及び焼き戻し処理を連続して行うことができるので、この場合もまた、第1本発明装置による曲がり管の処理効率を大幅に高めることができる。
焼き戻し処理は、焼き入れ処理と比較して、加熱温度がより低い(例えば、200℃)。第1本発明装置においては、例えば、上記「往路」に比べて、加熱手段に供給する電力を弱めたり、上記「復路」における焼き入れ手段の移動速度をより大きくしたり、アクチュエータの制御により曲がり管を支承する支承部材の数を減らしたり、冷却手段が噴出する冷媒の量を減らしたりすることにより、焼き戻し処理を行うことができる。
尚、当然のことながら、曲がり管の長手方向において焼き入れ手段を一方向に移動させるときも、その逆方向に移動させるときにも、焼き入れ手段の移動方向において加熱手段の後ろ側の冷却手段のみが稼働される。従って、何れの場合においても、焼き入れ手段の移動方向において加熱手段の前側の冷却手段は稼働されない。
ところで、前述したように、従来技術に係るハット状断面を有する長尺部材の焼き入れ方法においては、ワーク(長尺部材)の表側のみに加熱手段が設けられるため、焼き入れ処理後のワークの長手方向の軸が、ワークの裏側が凸状になるように歪む(反る)場合がある。このようなワークの歪み(反り)が大きい場合、例えば車両の構成部材として当該ワークを使用することが困難となる場合がある。
そこで、本発明は、ハット状断面を有する長尺部材の角部領域のみに対して焼き入れ処理を部分的に施す場合において、焼き入れ処理後のワークの長手方向の軸の歪み(反り)を低減することができる長尺部材の焼き入れ装置及び当該焼き入れ装置を用いる焼き入れ処理方法を提供することをもう1つの目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、ワーク(長尺部材)の表側(即ち、ハット状断面の天板側(「凸部側」及び「頂面側」とも称される。))の角部領域のみならず、ワークの裏側の角部領域に対しても焼き入れ処理を施すことにより、焼き入れ処理後のワークの長手方向の軸の歪み(反り)を低減することができることを見出した。
上記のような点に鑑み、本発明に係るハット状断面を有する長尺部材の焼き入れ装置(以降、「第2本発明装置」と称される場合がある。)は、焼き入れ手段と、運搬手段と、制御手段と、を備える。
焼き入れ手段は、加熱手段及び冷却手段を含み、ワークとしての長尺部材を加熱した後に急冷することにより、長尺部材を構成する材料の組織を変化させて、例えば、当該材料の機械的強度等を向上させる。第2本発明装置が備える焼き入れ手段、加熱手段及び冷却手段は、上述した第1本発明装置が備える焼き入れ手段、加熱手段及び冷却手段と基本的に同様の構成を有するので、ここでは説明を繰り返さない。
但し、上述したように、第2本発明装置は、ハット状断面を有する長尺部材の角部領域のみに対して焼き入れ処理を部分的に施す場合において、焼き入れ処理後のワークの長手方向の軸の歪み(反り)を低減することができる長尺部材の焼き入れ装置である。従って、第2本発明装置が備える加熱手段及び冷却手段は、上述した第1本発明装置が備える加熱手段及び冷却手段とは異なり、その中にワークとしての長尺部材を通すことが可能な中空の形状(例えば、ドーナツ状等)を有する必要は無い。
運搬手段は、長尺部材と前記焼き入れ手段とを前記長尺部材の長手方向において相対的に移動させる。第2本発明装置が備える運搬手段は、上述した第1本発明装置が備える運搬手段と基本的に同様の構成を有するので、ここでは説明を繰り返さない。
制御手段は、前記加熱手段によって前記長尺部材を加熱し、その後、前記冷却手段によって前記長尺部材を冷却することにより、前記長尺部材の少なくとも一部に焼き入れ処理を施す。例えば、加熱手段として誘導加熱コイルを使用する場合、制御手段は、誘導加熱コイルに通電することにより長尺部材を加熱する。一方、冷却手段は、長尺部材に対する焼き入れ手段の移動方向において加熱手段の後ろ側に隣接して設けられる。これにより、冷却手段は、長尺部材と焼き入れ手段とが相対的に移動するにつれて、加熱手段によって加熱された長尺部材を急冷することができる。尚、長尺部材を冷却するための冷媒(例えば、水)は、加熱手段が稼働している期間においてのみ噴出されるようにしてもよく、或いは、第2本発明装置の稼働中は継続的に噴出されるようにしてもよい。
但し、前記焼き入れ手段は、前記フランジ部と前記側壁部とが交わる2つの角部である2つの第1角部及び前記側壁部と前記天板部とが交わる2つの角部である2つの第2角部のうちの少なくとも何れか1つの角部である対象角部に所定の間隔を空けて対向するように配置されている。即ち、第2本発明装置が備える焼き入れ手段は、2つの第1角部及び2つの第2角部のうち、焼き入れ処理を施す対象となる角部(対象角部)に所定の間隔を空けて対向するように配置されている。これにより、第2本発明装置においては、対象角部近傍の領域(即ち、対象角部及びその近傍の領域。以降、単に「対象角部領域」と称される場合がある。)のみに対して焼き入れ処理を部分的に施すことができる。
加えて、第2本発明装置は、倣いゲージと、倣い手段と、を更に備える。
倣いゲージは、前記長尺部材の前記対象角部からなる稜線形状に対応する形状を有し且つ前記長尺部材と同一の姿勢にて保持された部材である。典型的には、倣いゲージは、ワークとしての長尺部材と同一の形状を有する部材である。しかしながら、倣いゲージは、所定の姿勢にて保持された状態において、後述するガイド部(「倣い治具」とも称される)によってトレースされることにより、対象角部の位置を特定することができる限り、必ずしも長尺部材と完全に同一の形状を有する必要は無い。このような倣いゲージは、例えば、ワークとしての長尺部材そのものであってもよく、或いは、切削加工等によって長尺部材とは別個に作製された部材であってもよい。
尚、長尺部材と加熱手段とが相対的に移動する際に、長尺部材と加熱手段との位置関係が偏ったり長尺部材と加熱手段とが干渉したりすると、長尺部材の焼き入れ処理が不均一となったり加熱手段が破損したりする虞があるので、長尺部材と加熱手段との位置関係は厳密に制御される必要がある。従って、倣いゲージは、ワークとしての長尺部材と同一の姿勢にて保持される必要がある。倣いゲージと長尺部材とを同一の姿勢にて保持するための手法は特に限定されない。
例えば、第2本発明装置による焼き入れ処理の直前に長尺部材が製造される製造装置から産業用ロボットによって長尺部材を取り出し、第2本発明装置に取り付ける場合、上記産業用ロボットによって第2本発明装置に取り付けられる長尺部材の姿勢は常に同じである。従って、上記姿勢と同じ姿勢にて倣いゲージを保持することにより、ワークとしての長尺部材と同一の姿勢にて倣いゲージを保持することができる。一方、例えば、長尺部材を手作業によって第2本発明装置に取り付ける場合は、上記のように産業ロボットを用いる場合と比べて、第2本発明装置に取り付けられる長尺部材の姿勢を常に同じにすることは困難である。このような場合は、例えば、第2本発明装置において長尺部材を保持する機構(例えば、チャック)に設けられた凸部が嵌合する凹部(例えば、切り欠き等)を長尺部材の被保持部(例えば、端部)に形成しておけばよい。これにより、第2本発明装置に長尺部材を取り付ける際に長尺部材の姿勢を常に同じにすることができる。
倣い手段は、ガイド部によってトレースされる倣いゲージの形状を焼き入れ手段に伝達する部材である。これにより、焼き入れ手段は、ガイド部によってトレースされる倣いゲージの形状に沿って移動することにより、長尺部材の形状に沿って移動することができる。その結果、長尺部材と加熱手段との位置関係が偏ったり長尺部材と加熱手段とが干渉したりすることが回避される。そのため、倣い手段は、長尺部材及び倣いゲージの長手方向のみならず同長手方向に直交する方向においても長尺部材及び倣いゲージに対して相対的に移動可能に構成される。
更に、倣い手段は、運搬手段により長尺部材に対して相対的に移動するように構成される。具体的には、例えば、倣い手段は、第1本発明装置について上述した台座と同様の台座に連結されることにより、運搬手段が台座を移動させるのに伴って、長尺部材に対して相対的に移動する。運搬手段により長尺部材に対して相対的に移動するように倣い手段を構成するための具体的な機構としては、例えば、第1本発明装置について上述した機構と同様の機構を採用することができる(当該機構についての詳細な説明は割愛する)。これにより、長尺部材の屈曲が二次元的である場合、倣い手段は、長尺部材及び倣いゲージの長手方向のみならず同長手方向に直交する水平方向においても長尺部材及び倣いゲージに対して相対的に移動可能に構成され得る。更に、長尺部材の屈曲が三次元的である場合、倣い手段は、長尺部材及び倣いゲージの長手方向のみならず同長手方向に直交する水平方向及び同長手方向に直交する鉛直方向においても長尺部材及び倣いゲージに対して相対的に移動可能に構成され得る。
倣い手段の一端には、倣いゲージに沿って摺動可能に係合するガイド部が保持されている。ガイド部は、倣いゲージに沿って摺動可能に係合することが可能である限り、特に限定されない。例えば、ガイド部は、2つ以上のガイドローラを備え、これらのガイドローラによって倣いゲージを嵌装する。これにより、運搬手段が長尺部材と倣い手段とを相対的に移動させるのに伴って、倣いゲージの形状をガイド部がトレースすることができる。
一方、倣い手段の他端には、焼き入れ手段が保持されている。従って、ガイド部によってトレースされる倣いゲージの形状は、倣い手段を介して焼き入れ手段に伝達される。その結果、焼き入れ手段は、ガイド部によってトレースされる倣いゲージの形状に沿って移動するので、長尺部材の対象角部からなる稜線形状に沿って移動することができる。
上記によれば、ガイド部が倣いゲージに沿って長尺部材及び倣いゲージの長手方向に直交する方向にも移動することにより、焼き入れ手段が長尺部材の対象角部からなる稜線形状に精度良く沿って移動する。即ち、第2本発明装置によれば、簡便な機械的手段によって長尺部材の対象角部と加熱手段との位置関係を厳密に制御することが可能である。更に、段替えに際しては、倣いゲージを新たなワークに対応したものに交換することにより容易に対応可能である。加えて、このように簡便な機械的手段を用いるので、第2本発明装置は、産業用ロボットを使用する場合と比較して、低コスト及び省スペースを同時に達成可能である。
ところで、第2本発明装置における加熱手段による対象角部の加熱及び冷却手段による対象角部の冷却をより効率的に行う観点からは、加熱手段及び冷却手段の対象角部に対向する面である焼き入れ面が、対象角部の加熱手段及び冷却手段に対向する面である被焼き入れ面に沿った形状を有することが望ましい。従って、第2本発明装置において、前記加熱手段及び前記冷却手段の前記対象角部に対向する面である焼き入れ面は、前記対象角部の前記加熱手段及び前記冷却手段に対向する面である被焼き入れ面に沿った形状を有するように構成され得る。これによれば、第2本発明装置における加熱手段による対象角部の加熱及び冷却手段による対象角部の冷却をより効率的に行うことができる。
好ましくは、上記被焼き入れ面は、対象角部の外側の面である。「対象角部の外側」とは、対象角部を構成する2つの部材(天板部と側壁部との組み合わせ及び/又は側壁部とフランジ部との組み合わせ)のそれぞれの主面の法線が交差し得る側(これら2つの部材がなす角度が180°よりも小さい側)ではなく、これらの法線が交差し得ない側(これら2つの部材がなす角度が180°よりも大きい側)を指す。この場合、上記焼き入れ面は、対象角部を外側から挟み込むような形状となる。
上記により、加熱手段から対象角部に与えられる熱量及び冷却手段によって対象角部から奪われる熱量をより大きくすることができる。具体的には、例えば、加熱手段として誘導加熱コイルを使用し且つ冷却手段として冷却ジャケットを使用する場合、誘導加熱コイルから発生される電磁波及び冷却ジャケットから噴射される冷媒(例えば、水)を対象角部に集中させることができる。その結果、第2本発明装置における加熱手段による対象角部の加熱及び冷却手段による対象角部の冷却をより一層効率的に行うことができる。尚、典型的には、対象角部を構成する2つの部材は実質的に直交する。この場合、上記「焼き入れ面」(及び上記「被焼き入れ面」)は略L字状の屈曲面となる。
尚、上述した第1本発明装置と同様に、第2本発明装置においてもまた、前記制御手段が前記倣い手段に保持され得る。また、第2本発明装置もまた、前記制御手段と連結されて前記制御手段の重さと少なくとも部分的に釣り合うように配設された重りを更に備え得る。更に、第2本発明装置もまた、前記長尺部材を下方から支承可能であると共に下方へ退避可能な複数の支承部材が、前記長尺部材の前記長手方向に沿って間隔を空けて配置され得る。この場合、前記複数の支承部材のそれぞれが、前記焼き入れ手段が所定の距離以内に接近しているときには下方へ退避し、前記焼き入れ手段が所定の距離以内に接近していないときには前記長尺部材を下方から支承するように構成され得る。加えて、第2本発明装置においてもまた、前記焼き入れ手段が、前記長手方向において前記加熱手段の両側に冷却手段をそれぞれ備え得る。
ところで、冒頭で述べたように、本発明は、本発明に係る焼き入れ装置を用いる長尺部材の焼き入れ処理方法にも関する。それらの長尺部材の焼き入れ処理方法のうち、上述した種々の第2本発明装置を用いる焼き入れ処理方法(以降、「第2本発明方法」と称される場合がある。)は、前記運搬手段により前記長尺部材と前記倣い手段とを相対的に移動させることにより前記長尺部材と前記焼き入れ手段とを前記長手方向において相対的に移動させながら前記加熱手段によって前記対象角部を加熱した後に前記冷却手段によって前記対象角部を冷却することにより前記対象角部に焼き入れ処理を施す焼き入れ工程を含む、焼き入れ方法である。
第2本発明方法においては、上記のように、上述した種々の第2本発明装置の何れかを用いて、ハット状断面を有する長尺部材の角部領域に対して焼き入れ処理が施される。第2本発明装置においては、上述したように、ガイド部が倣いゲージに沿って長尺部材及び倣いゲージの長手方向に直交する方向にも移動することにより、焼き入れ手段が長尺部材の対象角部からなる稜線形状に精度良く沿って移動する。
従って、第2本発明方法によれば、簡便な機械的手段によって長尺部材の対象角部と加熱手段との位置関係を厳密に制御することが可能である。更に、段替えに際しては、倣いゲージを新たなワークに対応したものに交換することにより容易に対応可能である。加えて、このように簡便な機械的手段を用いるので、第2本発明方法は、産業用ロボットを使用する従来技術に係る焼き入れ方法と比較して、低コスト及び省スペースを同時に達成可能である。
好ましくは、第2本発明方法において、前記対象角部は、前記2つの第1角部及び前記2つの第2角部の両方を含むことが望ましい。換言すれば、第2本発明方法において、ハット状断面の全ての角部に対して焼き入れ処理を施すことが望ましい。この場合、前記焼き入れ工程は、以下に示す第1工程及び第2工程を含む。
第1工程:前記運搬手段により前記長尺部材と前記倣い手段とを相対的に移動させることにより前記長尺部材と前記焼き入れ手段とを前記長手方向において相対的に移動させながら前記加熱手段によって前記2つの第1角部を加熱した後に前記冷却手段によって前記2つの第1角部を冷却することにより前記2つの第1角部に焼き入れ処理を施す。
第2工程:前記運搬手段により前記長尺部材と前記倣い手段とを相対的に移動させることにより前記長尺部材と前記焼き入れ手段とを前記長手方向において相対的に移動させながら前記加熱手段によって前記2つの第2角部を加熱した後に前記冷却手段によって前記2つの第2角部を冷却することにより前記2つの第2角部に焼き入れ処理を施す。
上記によれば、運搬手段により長尺部材と倣い手段とを相対的に移動させることにより長尺部材と焼き入れ手段とを長手方向において相対的に移動させながらハット状断面の4つの角部(2つの第1角部及び2つの第2角部)の全てに焼き入れ処理を施すことができる。その結果、ハット状断面を有する長尺部材の焼き入れ処理後の長手方向の軸の歪み(反り)を低減しつつ、当該長尺部材の機械的強度を効果的に高めることができる。
尚、焼き入れ工程における第1工程及び第2工程は同時に実行されても或いは逐次的に実行されてもよい。第1工程及び第2工程を逐次的に実行する場合は、前記焼き入れ工程において、前記第1工程を実行した後に前記第2工程を実行することが望ましい。即ち、ハット状断面を有する長尺部材(ワーク)の裏側の角部(第1角部)の後に表側の角部(第2角部)に焼き入れ処理を施すことが望ましい。
上記によれば、第1工程における(フランジ部と側壁部とが交わる2つの角部である)2つの第1角部に対する焼き入れ処理により表側(即ち、ハット状断面の天板側)が凸状になるように長尺部材(ワーク)の長手方向の軸に歪み(反り)が発生しても、次の第2工程の実行により(側壁部と天板部とが交わる2つの角部である)2つの第2角部に対する焼き入れ処理により第1工程とは反対方向の歪み(反り)が発生する。その結果、第1工程において発生した歪み(反り)が第2工程において発生した歪み(反り)によって少なくとも部分的に相殺されて、長尺部材(ワーク)の長手方向の軸の歪み(反り)が低減される。
尚、焼き入れ工程において第2工程を実行した後に第1工程を実行した場合、第2工程における第2角部に対する焼き入れ処理により裏側(即ち、ハット状断面の天板側とは反対側)が凸状になるように長尺部材(ワーク)の長手方向の軸に過大な歪み(反り)が発生してしまい、この過大な歪み(反り)が次の第1工程において発生した歪み(反り)によって十分に相殺されず、長尺部材(ワーク)の長手方向の軸の歪み(反り)が十分に低減されない虞がある。
以上、本発明に係る長尺部材の焼き入れ装置及び焼き入れ方法の幾つかの実施態様について説明してきたが、本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
本発明の第1実施形態に係る焼き入れ装置(第1装置)を正面側から見た斜視図である。 焼き入れ処理の実行開始時における第1装置の左側面図(a)及びガイド部の拡大図(b)である。 焼き入れ処理の実行開始時における第1装置の平面図である。 焼き入れ処理の実行開始時における第1装置の正面図である。 焼き入れ処理の実行途中における第1装置の平面図である。 焼き入れ処理の実行途中における第1装置の正面図である。 焼き入れ処理の実行終了時における第1装置の平面図である。 焼き入れ処理の実行終了時における第1装置の正面図である。 本発明の第2実施形態に係る焼き入れ装置(第2装置)を正面側から見た斜視図である。 第2装置を背面側から見た斜視図である。 第2装置が備えるガイド部の拡大図である。 ハット状断面を有する長尺部材の構造を示す模式的な(a)斜視図及び(b)断面図である。 第2本発明装置の1つの実施形態に係る焼き入れ装置の一例(第3装置)が備える焼き入れ手段の構成を示す模式的な斜視図である。 第3装置が備え得る焼き入れ手段の他の構成を例示する模式的な斜視図である。 第4装置が備えるガイド部の拡大図である。 第2本発明方法の1つの実施形態に係る焼き入れ方法の一例(第2方法)の開始前の長尺部材及び焼き入れ手段の配置を示す模式的な(a)側面図及び(b)正面図である。 第2方法に含まれる第1工程の実行後の長尺部材及び焼き入れ手段の配置を示す模式的な(b)正面図及び(a)線A−Aによる断面図である。 第2方法に含まれる第2工程の実行後の長尺部材及び焼き入れ手段の配置を示す模式的な(b)正面図及び(a)線B−Bによる断面図である。
《第1実施形態》
以下、上述した第1本発明装置の1つの実施形態に係る焼き入れ装置の一例(以下、「第1装置」とも称呼される。)」につき、図面を参照しながら詳しく説明する。本例においては、曲がり管の屈曲が二次元的である場合について説明する。
尚、以下の説明においては、曲がり管及び倣いゲージの長手方向をX軸方向とし、水平面内においてX軸方向に直交する方向をY軸方向とし、これらX軸及びY軸に直交する鉛直方向をZ軸方向と称する。また、X軸方向については本発明装置を正面から見て右向きが正方向とし、Y軸方向については本発明装置を正面から見て手前向き(観察者に向かう方向)が正方向とし、Z軸方向については本発明装置を正面から見て上向き(鉛直方向上向き)が正方向とする。何れかの図面において符号が既に示されていることが明らかな構成要素については、他の図面において符号を繰り返し示さない場合がある。
<構成>
図1及び図2は、それぞれ第1装置100の全容を示す斜視図及び左側面図である。第1装置100は、焼き入れ手段110と、運搬手段130と、制御手段140と、を備える。尚、本例においては、サーボモータ131、ボールネジ132、ガイドレール133及び台座163によって運搬手段が構成されており、運搬手段としての番号「130」は図中に表示されていない。尚、第1装置100において、運搬手段130、制御手段140、倣いゲージ150及び倣い手段160は、ベース101の上に配置されている。
焼き入れ手段110は、加熱手段111及び冷却手段112を含む。焼き入れ手段110は、加熱手段111を挟んで反対側にも冷却手段113を更に含む。即ち、焼き入れ手段110は、曲がり管120の長手方向(X軸方向)における加熱手段111の両側に冷却手段112及び113をそれぞれ備える。これにより、第1装置100は焼き入れ手段110をX軸方向において往復させるときに、その往路及び復路の何れにおいても焼き入れ処理を行うことができる。但し、このように焼き入れ手段110が加熱手段111の両側に冷却手段112を備えることは本発明装置の必須の要件ではない。
運搬手段130は、ワークとしての曲がり管120と焼き入れ手段110とを相対的に移動させる。具体的には、運搬手段130は、サーボモータ131によってボールネジ132を回転させる。ボールネジ132は台座163に取り付けられたナット(図示せず)と係合しており、ボールネジ132の回転によりガイドレール133に沿って台座163がX軸方向に移動するように構成されている。ガイドレール133は、曲がり管120の長手方向(X軸方向)に平行である。一方、焼き入れ手段110を保持するアーム161は(制御手段140等を介して)台座163と連結されている。従って、運搬手段130は、ワークとしての曲がり管120と焼き入れ手段110とを相対的に移動させることができる。本例においては、曲がり管120はチャック121及び122によって固定されており、上記のように焼き入れ手段110が移動する。
制御手段140は、運搬手段130によって相対的に移動された曲がり管120と焼き入れ手段110とが所定の位置関係となったときに、加熱手段111によって曲がり管120を加熱し、その後、冷却手段112又は113によって曲がり管120を冷却する。これにより、制御手段140は、曲がり管120の所望の部分に焼き入れ処理を施す。
尚、本例においては、加熱手段111は誘導加熱コイルを備え、制御手段140が備える電源装置によって供給される電力を使用する誘導加熱によって曲がり管120を加熱する。一方、冷却手段112及び113は、曲がり管120に対向する面に複数の孔が穿設され且つ当該複数の孔から曲がり管120に向かって冷却水が噴出されるシャワー式の冷却ジャケットである。加熱手段111も、冷却手段112及び113も、その中に曲がり管120を通すことができるように、曲がり管120の同心円状のドーナツ型の形状を有する。
図1においては部分的にガイドレール133の陰となっているが、第1装置100においては、曲がり管120の軸線形状と同一の軸線形状を有する部材である倣いゲージ150が曲がり管120と同一の姿勢にて保持される。尚、本例においては、ワークとしての曲がり管120の一方の端部に切り欠き部を設け、当該端部を保持するチャック121又は122に突起を設けて、これらの切り欠き部と突起とを嵌合させることにより、倣いゲージ150の姿勢と曲がり管120の姿勢とを揃えた。
更に、第1装置は、曲がり管120及び倣いゲージ150の長手方向(X軸方向)のみならず同長手方向に直交する方向(Y軸方向)においても曲がり管120及び倣いゲージ150に対して相対的に移動可能に構成された部材である倣い手段160を更に備える。図2に示した側面図から判り易いように、倣い手段160は、ガイド部190によってトレースされた倣いゲージ150の形状を、アーム168、台座165’、制御手段140及びアーム161を経て、焼き入れ手段110に伝える。即ち、焼き入れ手段110及びガイド部190は、倣い手段160の両端にそれぞれ保持されている。
台座165’は別の台座165の上にY軸方向に配設されたガイドレール164’と係合してY軸方向に移動可能に載置されており、台座165もまた更に別の台座163の上にY軸方向に配設されたガイドレール164と係合してY軸方向に移動可能に載置されている。そして、台座163は、上述したように、運搬手段130によってX軸方向に移動する。このような構成により、倣い手段160は、曲がり管120及び倣いゲージ150の長手方向(X軸方向)のみならず同長手方向に直交する方向(Y軸方向)においても曲がり管120及び倣いゲージ150に対して相対的に移動することができる。
尚、倣い手段160をY軸方向に移動可能とする目的のみを達成するには、Y軸方向に移動可能に載置された台座は1つあればよい。本例においては、上記のように2つの台座165及び165’がY軸方向に移動可能に載置されているので、例えば、何れか一方の台座をY軸方向に所定量ずらした状態で固定することにより、焼き入れ手段110とガイド部190との位置合わせ(アジャスト)等の用途に活用することができる。
尚、上記ガイド部190は、図1においては制御手段140の陰に隠れているが、上述したように、倣い手段160の一端に保持されており、焼き入れ手段110が倣い手段160の他端に保持されている。
ガイド部190は、倣いゲージ150に沿って摺動可能に係合する。本例においては、図2の(b)に示したように、ガイド部190は、保持部材191に平行に設けられた2本の軸192a及び192bのそれぞれに回転可能に取り付けられたローラ193a及び193bによって構成されている。
尚、冒頭で述べたように、本例においては、曲がり管120の屈曲は二次元的である。具体的には、曲がり管120をX−Y平面においた場合、曲がり管120は同X−Y平面内では屈曲しているが、同X−Y平面に直交する方向(即ち、Z軸方向)には屈曲していない。従って、ガイド部190は、X−Y平面内における倣いゲージ150の形状(屈曲)をトレースできればよい。換言すれば、倣いゲージ150は、X−Y平面内における形状(屈曲)が曲がり管120と同じであれば、その他の形状は特に限定されない。
従って、本例における倣いゲージ150は、X−Y平面内による曲がり管120の断面に対応する板状の部材である。このため、図2の(b)に示したように、ガイド部190のローラ193a及び193bには、板状の倣いゲージ150から外れないように、つばが設けられている。
更に、第1装置100は、前述した押圧手段185を備える。押圧手段185は、台座165に取り付けられたアーム186によって保持されており、焼き入れ手段110の近傍において曲がり管120を上方から下方に向かって押圧する。押圧手段185は、焼き入れ手段110とは曲がり管120の長手方向において若干(前に)離れた位置にある。従って、曲がり管の屈曲により、焼き入れ手段110とはY軸方向における位置が若干ずれる場合がある。押圧手段185は、Y軸方向に移動可能な台座165に連結されているので、このような位置のずれが生じても台座165と台座165’とがずれることにより、焼き入れ手段110とは独立に曲がり管120の形状に追従することができる。但し、前述したように、押圧手段は本発明装置の必須の構成要件ではない。
<焼き入れ処理>
上記のような構成を有する第1装置100によって行われる焼き入れ処理につき、以下に詳しく説明する。
<準備>
先ず、図3の平面図及び図4の正面図に示したように、焼き入れ手段110をX軸の負方向の端に待機させた。そして、ワークとしての曲がり管120を加熱手段111並びに冷却手段112及び113の中に通し、その両端をチャック121及び122によって保持(把持)した。この際、曲がり管120の端部に形成された切り欠き部をチャック121に形成された凸部に嵌合させることにより曲がり管120の姿勢を規定した。
更に、焼き入れ処理における加熱により曲がり管120が撓むことを防止することを目的として、支承部材181乃至184をベース102の上部に配置した。更に、支承部材181乃至184の受け部をエアコンプレッサ(図示せず)から供給される空圧によって上昇させて、曲がり管120を支承させた。尚、図4においては、支承部材181の受け部は下降している。しかしながら、焼き入れ手段110の移動が開始した後に焼き入れ手段110と支承部材181との距離が所定の距離以下になる迄に時間的余裕がある場合は、支承部材181の受け部を上昇させておいてもよい。
一方、ガイド部190のローラ193a及び193bを(図2の(b)に示したように)倣いゲージ150に当接させた。倣いゲージ150については、その下面を複数のスタンド153によって支承した。
<作動>
次に、サーボモータ131を作動させてボールネジ132を回転させることにより、ガイドレール133に沿って台座163をX軸の正方向に向かって移動させた。この移動途中の状態を、図5の平面図及び図6の正面図に示した。図6に示したように、焼き入れ手段110の位置に応じて支承部材181乃至184のそれぞれが退避するので、前述したような焼き入れ手段110と支承部材との181乃至184との干渉が回避される。
上記のように焼き入れ手段110が移動している間、倣い手段160は、X軸の正方向に向かって移動しつつ、ガイド部190によってトレースされた倣いゲージ150の形状に従ってY軸方向にも移動する。これにより、焼き入れ手段110は、曲がり管120に精度良く沿って移動することができる。
この間、制御手段140は、曲がり管120の焼き入れ処理を施すべき箇所に焼き入れ手段110が位置しているときには加熱手段111に電力を供給し、そうでないときには電力を供給しない。これにより、第1装置100は、曲がり管120の所望の部分のみに焼き入れ処理を施すことができる。
上記により、第1装置100においては、曲がり管120と加熱手段111とが相対的に移動する際に、曲がり管120と加熱手段111との位置関係が偏ったり、ましてや曲がり管120と加熱手段111とが干渉したりすることが回避される。その結果、曲がり管120の焼き入れ処理が不均一となったり、加熱手段が破損したりする虞を低減することができる。
上記のように焼き入れ手段110をX軸の正方向に向かって移動させるときには、焼き入れ手段110移動方向において加熱手段111の後ろ側(X軸の負方向側)にある冷却手段112のみを作動させ、加熱手段111の前側(X軸の正方向側)にある冷却手段113は作動させない。
図7の平面図及び図8の正面図に示したように、焼き入れ手段110がX軸の正方向の端に到達すると、焼き入れ処理は終了する。その後、別の曲がり管120に焼き入れ処理を施す場合は、曲がり管120の両端をチャック121及び122から外し、焼き入れ処理済みの曲がり管120を第1装置100から取り出す。次の曲がり管120をチャック121及び122に保持させたら、サーボモータ131を上記と反対の方向に作動させて焼き入れ手段110をX軸の負方向に向かって移動させつつ、上記と同様の焼き入れ処理を行うことができる。
当該処理済みの曲がり管120に対して焼き戻し処理等を行う場合もまた、サーボモータ131を上記と反対の方向に作動させて焼き入れ手段110をX軸の負方向に向かって所定の速度にて移動させつつ、所定の加熱温度及び冷却効率にて、曲がり管120に熱処理を施すことができる。
何れにせよ、焼き入れ手段110をX軸の負方向に向かって移動させる場合は、焼き入れ手段110移動方向において加熱手段111の後ろ側(X軸の正方向側)にある冷却手段113のみを作動させ、加熱手段111の前側(X軸の負方向側)にある冷却手段112は作動させない。
尚、本例においては、上記のように曲がり管120及び倣いゲージ150を固定し、焼き入れ手段110及びガイド部190をX軸方向に移動させた。しかしながら、前述したように、焼き入れ手段110及びガイド部190を固定しておき、曲がり管120及び倣いゲージ150を移動させてもよい。
<効果>
上記のように、第1装置100によれば、簡便な機械的手段によって曲がり管120と加熱手段111との位置関係を厳密に制御することが可能である。更に、段替えに際しては、倣いゲージ150を新たなワークに対応したものに交換することにより容易に対応可能である。加えて、このように簡便な機械的手段を用いるので、第1装置100は、産業用ロボットを使用する場合と比較して、低コスト及び省スペースを同時に達成することが可能である。
《第2実施形態》
以下、上述した第1本発明装置のもう1つの実施形態に係る焼き入れ装置の一例(以下、「第2装置」とも称呼される。)」につき、図面を参照しながら詳しく説明する。本例においては、曲がり管の屈曲が三次元的である場合について説明する。
<構成>
図9及び図10は、それぞれ第2装置200の全容を示す正面側から見た斜視図及び背面側から見た斜視図である。第2装置200は、上記のように曲がり管の屈曲が三次元的であるためにZ軸方向における倣いを可能とする機構を有する点を除き、基本的には第1装置100と同様の構成を有する。従って、以下の説明においては、第1装置100とは異なる構成については詳しく説明し、第1装置100と同様の構成については説明を省略する場合がある。
先ず、第2装置200において用いる倣いゲージ150は三次元的な屈曲を有するので、第1装置100において用いた二次元的な屈曲に特化した板状の倣いゲージ150とは異なり、その両端部をホルダ151及び152によって支持・固定される。
第2装置200における倣い手段160はZ軸方向にも移動可能である必要があるので、第1装置100において言及した台座165’の上にスライダ166及びパンタグラフ167を配設し、その上に制御手段140を載置した。スライダ166及びパンタグラフ167は、鉛直方向(Z軸方向)の動きは許容するものの水平方向の動き(X−Y平面内の動き)は許容しないための機構であり、Z軸方向における駆動力を提供するものではない。これにより、第2装置200における倣い手段160は、X軸、Y軸及びZ軸の全ての方向において移動可能である。
更に、第2装置200は、制御手段140の質量に起因して倣い手段160にかかる荷重を軽減して倣い手段160のZ軸方向における動きをスムースにすることを目的として、重り(ウェイト)及びその吊り下げのための機構等を備える。
具体的には、第2装置200はフレーム170を備えており、このフレーム170の上部には、X軸方向に平行なガイドレール171が設けられている。更に、このガイドレール171と係合してX軸方向に移動可能な別のガイドレール172が載置される。このガイドレール172はY軸方向に平行なガイドレールである。加えて、このガイドレール172と係合してY軸方向に移動可能な台座173の四隅には4個の滑車(プーリ)174がそれぞれ配設されている。これらの滑車174にはワイヤ175が掛けられており、その一方の端には制御手段140(の下面の板)が、その他方の端には重り176が、それぞれ連結されている。
上記のような機構により、制御ユニット140の質量と重り176の質量とが釣り合うので、制御ユニット140が大きな質量を有するにも拘わらず、倣いゲージ150をトレースするガイド部190の動きによって、制御ユニット140を含む倣い手段160及び焼き入れ手段110をX軸、Y軸及びZ軸の全ての方向において円滑に動かすことができる。尚、制御ユニット140の動きに伴って重り176が揺動する場合は、例えば重り176の動きを鉛直方向に規制するためのレール等を更に設けてもよい。
ところで、第1装置100は二次元的な屈曲を有する曲がり管120の焼き入れ処理を想定したものであるが、第2装置200は三次元的な屈曲を有する曲がり管120の焼き入れ処理を想定したものである。そのため、第2装置200のガイド部190は、第1装置100のガイド部190とは異なり、上記のように三次元的な屈曲を有する倣いゲージ150を正確にトレースする必要がある。従って、第2装置200が用いる倣いゲージ150としては、一般的には、焼き入れ処理の対象となる曲がり管120と同一の形状を有するものが使用される。
従って、第2装置200のガイド部190もまた、三次元的な形状の変化を正確にトレースすることができるように構成されている必要がある。例えば、曲がり管120と同一の形状を有する管状の倣いゲージ150を使用する場合、ガイド部190は、図11に例示したように、少なくとも三方向から倣いゲージ150に当接するものであることが望ましい。具体的には、図11に例示したガイド部190は、保持部材191に取り付けられたステー194aに設けられた軸192aに回転可能に取り付けられたローラ193aと、保持部材191に取り付けられたステー194bに設けられた軸192b及び軸192cに回転可能にそれぞれ取り付けられたローラ193b及び193cによって構成されている。
加えて、第2装置200においては、曲がり管120を支承する支承部材の受け部の上限位置を曲がり管120の保持姿勢に応じて個々に制御可能であることが望ましい。
<作動>
焼き入れ処理における第2装置200の作動については、第1装置100の作動と基本的に同じであるので、ここでの説明は省略する。
<効果>
上記のように、第2装置200によれば、三次元的な屈曲を有する曲がり管120についても、簡便な機械的手段によって曲がり管120と加熱手段111との位置関係を厳密に制御することが可能である。更に、段替えに際しては、倣いゲージ150を新たなワークに対応したものに交換することにより容易に対応可能である。加えて、このように簡便な機械的手段を用いるので、第1装置100は、産業用ロボットを使用する場合と比較して、低コスト及び省スペースを同時に達成することが可能である。
<補足>
ところで、冒頭で述べたように、曲がり管と加熱手段とが相対的に移動する際に曲がり管と加熱手段との位置関係が偏ると曲がり管の焼き入れ処理が不均一となる虞がある。しかしながら、例えば、焼き入れ処理済みの曲がり管の形状が所望の形状に対して僅かにずれている場合等において、曲がり管と加熱手段との位置関係を意図的に偏らせることにより、上記形状のずれを補正することができる場合がある。
従って、本発明の変形例に係る焼き入れ装置は,上述してきた技術的特徴に加えて、ワークとしての曲がり管と加熱装置との位置関係(例えば、加熱装置としての誘導加熱コイルの中を通る曲がり管の軸と誘導加熱コイルの軸との偏差等)を変更するアジャスタ機構等を備えていてもよい。
《第3実施形態》
以下、上述した第2本発明装置の1つの実施形態に係る焼き入れ装置の一例(以下、「第3装置」とも称呼される。)」につき、図面を参照しながら詳しく説明する。
<ハット状断面を有する長尺部材>
先ず、第3装置による焼き入れ処理の対象であるワークとしてのハット状断面を有する長尺部材1の構造を図12に示す。(a)は長尺部材1の斜視図であり、(b)は長尺部材1の長手方向(X軸方向)に直交する平面(Y−Z平面に平行な平面)による断面図である。
長尺部材1は、1つの天板部2と、2つの側壁部3と、2つのフランジ部4と、を備える。2つの側壁部3は、天板部2の両端から天板部2の2つの主面のうちの同じ一方の主面側(本例においてはZ軸の負方向側)にそれぞれ延在する。2つのフランジ部4は、2つの側壁部3の天板部2とは反対側(Z軸の負方向側)の端部から側壁部3に対して天板部2とは反対側(Y軸の正方向側及び負方向側)にそれぞれ延在する。図12において斜線によって示すように、長尺部材1の長手方向に直交する断面はハット状の形状を有している。
長尺部材1は、フランジ部4と側壁部3とが交わる2つの角部である2つの第1角部5(太い実線及び黒い丸印)と、側壁部3と天板部2とが交わる2つの角部である2つの第2角部6(太い破線及び白抜きの丸印)と、を有する。このような構造を有する長尺部材1は、例えば、超高張力鋼板にプレス加工を施すことによって成形することができる。
尚、図12においては、天板部2と側壁部3とがなす角度及び側壁部3とフランジ部4とがなす角度が何れも直角である例を示した。しかしながら、これらの角度の全て又は一部は必ずしも直角でなくてもよい。例えば、天板部2から遠ざかるにつれて2つの側壁部3が互いに遠ざかったり、逆に近付いたりするような角度にて、天板部2と側壁部3とが交わっていてもよい。また、側壁部3から遠ざかるにつれてフランジ部4が天板部2から遠ざかったり、逆に近付いたりするような角度にて、側壁部3とフランジ部4とが交わっていてもよい。
更に、図12においては、ハット状断面を有する長尺部材1の構造についての理解を容易にすることを目的として、長尺部材1の長手方向(X軸方向)の軸が屈曲していない例を示した。しかしながら、長尺部材1の長手方向の軸は長尺部材1の用途等に応じて二次元的又は三次元的に屈曲し得る。本例においては、長尺部材1の長手方向の軸がX−Y平面内において二次元的に屈曲している場合について説明する。
<第3装置の構成>
第3装置は、焼き入れ処理を施す対象であるワークとしての長尺部材が曲がり管ではなくハット状断面を有する長尺部材である点を除き、基本的には第1装置100と同様の構成を有する。従って、以下の説明においては、第1装置100とは異なる構成については詳しく説明し、第1装置100と同様の構成については説明を省略する場合がある。
具体的には、第3装置は、ハット状断面を有し且つその長手方向の軸が二次元的(即ち、X−Y平面内)においてのみ屈曲している長尺部材1において、焼き入れ処理後の当該長尺部材の長手方向の軸の歪み(反り)を低減しつつ、そのハット状断面の角部領域のみに対して焼き入れ処理を部分的に施す。尚、第3装置は、2つの第1角部5及び2つの第2角部6の合計4つの角部の近傍の領域(角部領域)の全てに対して焼き入れ処理を施す。即ち、第3装置においては、2つの第1角部5及び2つの第2角部6の合計4つの角部の全てが、焼き入れ処理を施す対象となる角部(対象角部)である。
(焼き入れ手段の構成)
そこで、図13に示すように、第3装置が備える焼き入れ手段110は、長尺部材1の2つの第1角部5に所定の間隔を空けて対向するようにそれぞれ配置された2つの焼き入れ手段110aと、長尺部材1の2つの第2角部6に所定の間隔を空けて対向するようにそれぞれ配置された2つの焼き入れ手段110bと、を備える。2つの焼き入れ手段110aは、2つの第1角部5のそれぞれに所定の間隔を空けて対向するように間隔を空けて、連結部材161aに固定されている。同様に、2つの焼き入れ手段110bは、2つの第2角部6のそれぞれに所定の間隔を空けて対向するように間隔を空けて、連結部材161bに固定されている。
更に、2つの連結部材161a及び161bは、第1角部5と第2角部6とのZ軸方向における位置の違いに応じて、2つの焼き入れ手段110a及び2つの焼き入れ手段110bがそれぞれ2つの第1角部5及び2つの第2角部6のそれぞれに所定の間隔を空けて対向するように、更なる連結部材161cによって互いに連結されている。尚、連結部材161cは、焼き入れ処理の実行時に長尺部材1と干渉しないように、Y−Z平面内において湾曲した形状を有する。
加えて、連結部材161cは、制御手段140等を介して台座163と連結されているアーム161に固定されている。従って、第1装置について前述したように、運搬手段130は、ワークとしての長尺部材1と焼き入れ手段110とを相対的に移動させることができる。即ち、第3装置においては、4つの対象角部の近傍の領域(対象角部領域)の全てに対して焼き入れ処理を施すことができる。尚、運搬手段130によって長尺部材1と焼き入れ手段110とを相対的に移動させるための構成及びその作動については、前述した第1装置と基本的に同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
本例においては、焼き入れ手段110a及び110bの何れにおいても、誘導加熱コイルを加熱手段として採用し、冷媒として水を使用する冷却ジャケットを冷却手段として採用した。また、個々の焼き入れ手段110aは、長尺部材1に対する焼き入れ手段110の進行方向(X軸の正方向)において、前側に加熱手段7を、後ろ側に冷却手段8を、それぞれ備える。同様に、個々の焼き入れ手段110bは、長尺部材1に対する焼き入れ手段110の進行方向において、前側に加熱手段9を、後ろ側に冷却手段10を、それぞれ備える。
更に、焼き入れ手段110a及び110bが備える加熱手段7及び9並びに冷却手段8及び10の対象角部(2つの第1角部5及び2つの第2角部6)に対向する面である焼き入れ面は、対象角部の形状に対応した(沿った)形状を有する。即ち、上記「焼き入れ面」は、対象角部の加熱手段7及び9並びに冷却手段8及び10に対向する面である被焼き入れ面に沿った形状を有する。具体的には、図13に示したように、第3装置の焼き入れ手段の焼き入れ面は、対象角部を外側から挟み込む略L字状の屈曲面となるように構成されている。
(倣いゲージ及び倣い手段の構成)
第3装置もまた、倣いゲージと、倣い手段と、を更に備える。倣いゲージは、長尺部材1の対象角部からなる稜線形状に対応する形状を有し且つ長尺部材1と同一の姿勢にて保持された部材である。倣い手段は、長尺部材1及び倣いゲージの長手方向(X軸方向)のみならず同長手方向に直交する方向(Y軸方向)においても長尺部材1及び倣いゲージに対して相対的に移動可能に構成された部材である。倣いゲージ及び倣い手段の構成及び作動については、前述した第1装置と基本的に同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
<効果>
上記によれば、ガイド部190が倣いゲージに沿って長尺部材1及び倣いゲージの長手方向に直交する方向にも移動することにより、焼き入れ手段110が長尺部材1の対象角部からなる稜線形状に精度良く沿って移動する。即ち、第3装置によれば、簡便な機械的手段によって長尺部材1と焼き入れ手段110との位置関係を厳密に制御しながら、ハット状断面の4つの対象角部の近傍の領域(対象角部領域)の全てに対して焼き入れ処理を施すことが可能である。更に、段替えに際しては、倣いゲージを新たなワークに対応したものに交換することにより容易に対応可能である。加えて、このように簡便な機械的手段を用いるので、第3装置は、産業用ロボットを使用する場合と比較して、低コスト及び省スペースを同時に達成することが可能である。
<補足>
ところで、上述したように、第3装置が備える個々の焼き入れ手段110a及び110bは、長尺部材1に対する焼き入れ手段110の進行方向(X軸の正方向)において、前側に加熱手段7及び9を、後ろ側に冷却手段8及び10を、それぞれ備える。しかしながら、焼き入れ手段110a及び110bは、加熱手段7及び9の後ろ側のみならず前側にも第2の冷却手段8及び10をそれぞれ備え得る。これによれば、長尺部材1の長手方向において焼き入れ手段110a及び110bを一方向に移動させるときのみならず、その逆方向に焼き入れ手段110a及び110bを移動させるときにも、焼き入れ処理(又は焼き戻し処理)を行うことができる。その結果、第3装置による長尺部材1の焼き入れ処理の効率を大幅に高めることができる。
また、上記説明においては、2つの第1角部5及び2つの第2角部6の合計4つの角部の全てを第3装置による焼き入れ処理の対象角部とした。しかしながら、2つの焼き入れ手段110a及び2つの焼き入れ手段110bのうちの一部のみを稼働させることにより、4つの角部の一部のみを対象角部とすることもできる。これによれば、4つの角部の全て又は一部を複数回に分けて、逐次的に焼き入れ処理に付すこともできる。
更に、例えば図14の(a)に示すように、2つの第1角部5に対して焼き入れ処理を施すことができる焼き入れ手段110aをアーム161に固定して、2つの第1角部5の何れか一方のみ又は両方に対してのみ焼き入れ処理を施すこともできる。同様に、例えば図14の(b)に示すように、2つの第2角部6に対して焼き入れ処理を施すことができる焼き入れ手段110bをアーム161に固定して、2つの第2角部6の何れか一方のみ又は両方に対してのみ焼き入れ処理を施すこともできる。また、これらの焼き入れ処理を組み合わせて、4つの角部の全て又は一部を複数回に分けて、逐次的に焼き入れ処理に付すこともできる。
加えて、図14に示した焼き入れ手段110においては、手前側(Y軸の正方向側)及び奥側(Y軸の負方向側)の両方に2つの焼き入れ手段110a及び110bがそれぞれ配設されている。しかしながら、これら2つの焼き入れ手段110a及び110bのうち何れか一方のみを配設して、4つの角部のうちの1つの角部のみに対して個別に焼き入れ処理を施すことができるように焼き入れ手段110を構成してもよい。これによれば、例えば、天板部2の幅(Y軸方向における寸法)が一定ではない場合においても、各角部に対して個別に焼き入れ処理を施すことができる。
更には、図14に示した焼き入れ手段110においては、2つの焼き入れ手段110a及び110bが連結部材161a及び161bに対してそれぞれ一定の間隔にて固定されている。しかしながら、2つの焼き入れ手段110a及び110bが連結部材161a及び161bに対してY軸方向においてそれぞれ独立に移動可能に取り付け、ガイド部190が備えるローラ193a及び193bが保持部材191に対してY軸方向においてそれぞれ独立に移動可能に取り付け、更に対応する焼き入れ手段と上記ローラとの対のそれぞれに個別の倣い手段160を設けることにより、天板部2の幅が一定ではない場合においても2つの第1角部5及び2つの第2角部6に対して同時に焼き入れ処理を施すことができるように構成することもできる。
《第4実施形態》
以下、上述した第2本発明装置のもう1つの実施形態に係る焼き入れ装置の一例(以下、「第4装置」とも称呼される。)」につき、図面を参照しながら詳しく説明する。本例においては、長尺部材1の屈曲が三次元的である場合について説明する。
<構成>
第4装置は、上記のように長尺部材1の屈曲が三次元的であるためにZ軸方向における倣いを可能とする機構を有する点を除き、基本的には第3装置と同様の構成を有する。従って、以下の説明においては、第3装置とは異なる構成については詳しく説明し、第3装置と同様の構成については説明を省略する場合がある。
先ず、第4装置による焼き入れ処理の対象となるワークである長尺部材1は三次元的な屈曲を有するので、第1装置(及び第3装置)において用いた二次元的な屈曲に特化した板状の倣いゲージ150とは異なり、長尺部材1そのものが倣いゲージとして採用され、その両端部をホルダ(151及び152)によって支持・固定される。
第4装置における倣い手段はZ軸方向にも移動可能である必要があり、前述した第2装置100における倣い手段160と同様の構成を有する。即ち、第4装置における倣い手段は、X軸、Y軸及びZ軸の全ての方向において移動可能である。
更に、第4装置のガイド部もまた、三次元的な形状の変化を正確にトレースすることができるように構成されている必要があり、少なくとも三方向から倣いゲージ150に当接するものであることが望ましい。具体的には、第4装置のガイド部190は、図15の(a)に示すように、保持部材191に取り付けられたステー194a、194b及び194cに設けられた軸192a、192b及び192cに回転可能に取り付けられたローラ193a、193b及び193cによって構成されている。更に、ガイド部190は、図示しない付勢手段によって下向き(Z軸の負方向)に付勢されている。これにより、長尺部材1のZ軸方向における屈曲に対しても、ガイド部190は正確にトレースすることができる。
尚、長尺部材1の裏側(即ち、ハット状断面の天板部2とは反対側)を上側(Z軸の正方向側)に向けた状態において焼き入れ処理を実行する場合は、例えば図15の(b)に示すように、上記ローラ193a、193b及び193cがハット状断面の裏側(内側)から倣いゲージ150に当接するようにガイド部190を構成してもよい。この場合も、ガイド部190は、図示しない付勢手段によって下向き(Z軸の負方向)に付勢されることにより、長尺部材1のZ軸方向における屈曲に対しても正確にトレースすることができる。
尚、図15の(a)及び(b)の何れの例示についても、上記のように付勢手段を設ける代わりに、例えば、ローラ193cに対向する第4のローラ等を追加することにより、長尺部材1のZ軸方向における屈曲を正確にトレースするように構成してもよい。
<作動>
焼き入れ処理における第4装置の作動については、第1装置100(及び第3装置)の作動と基本的に同じであるので、ここでの説明は省略する。
<効果>
上記のように、第4装置によれば、三次元的な屈曲を有する長尺部材1についても、簡便な機械的手段によって長尺部材1と加熱手段110との位置関係を厳密に制御することが可能である。更に、段替えに際しては、倣いゲージ150を新たなワークに対応したものに交換することにより容易に対応可能である。加えて、このように簡便な機械的手段を用いるので、第4装置は、産業用ロボットを使用する場合と比較して、低コスト及び省スペースを同時に達成することが可能である。
<補足>
図13に示した焼き入れ手段110においては、長尺部材1の裏側の焼き入れ手段110a及び表側の焼き入れ手段110bが連結部材161a及び161bを介して連結部材161cに対してそれぞれ一定の間隔にて固定されている。しかしながら、裏側の焼き入れ手段110a及び表側の焼き入れ手段110bが連結部材161cに対してZ軸方向においてそれぞれ独立に移動可能に取り付け、第1角部5及び第2角部6のZ軸方向における位置をトレースすることが可能なローラを保持部材191に対してZ軸方向においてそれぞれ独立に移動可能に取り付け、更に対応する焼き入れ手段と上記ローラとの対のそれぞれに個別の倣い手段160を設けることにより、側壁部3の高さ(Z軸方向における寸法)が一定ではない場合においても2つの第1角部5及び2つの第2角部6に対して同時に焼き入れ処理を施すことができるように構成することもできる。
《第5実施形態》
以下、上述した第2本発明方法の1つの実施形態に係る焼き入れ方法の一例(以下、「第2方法」とも称呼される。)」につき、図面を参照しながら詳しく説明する。
〈構成〉
第2方法は、上述した第3装置及び第4装置を始めとする本発明に係るハット状断面を有する長尺部材の焼き入れ装置(第2本発明装置)を用いて長尺部材1に焼き入れ処理を施す長尺部材の焼き入れ方法である。従って、第2方法は、第2本発明装置において、運搬手段により長尺部材1と倣い手段とを相対的に移動させることにより、長尺部材1と焼き入れ手段110とを長手方向において相対的に移動させながら、加熱手段によって対象角部を加熱した後に冷却手段によって対象角部を冷却することにより、対象角部に焼き入れ処理を施す焼き入れ工程を含む。
第2方法において、対象角部は2つの第1角部5及び2つの第2角部6の両方を含む。そして、上記焼き入れ工程は、2つの第1角部に焼き入れ処理を施す第1工程と、2つの第2角部に焼き入れ処理を施す第2工程と、を含む。第1工程及び第2工程における焼き入れ処理の詳細については、第2本発明装置に関して既に述べたので、ここでの説明は省略する。
尚、前述したように、焼き入れ工程における第1工程及び第2工程は同時に実行されても或いは逐次的に実行されてもよい。第1工程及び第2工程を逐次的に実行する場合は、焼き入れ工程において第1工程を実行した後に第2工程を実行することが望ましい。即ち、ハット状断面を有する長尺部材1の裏側の角部(第1角部5)の後に表側の角部(第2角部6)に焼き入れ処理を施すことが望ましい。従って、第2方法においては、焼き入れ工程において、第1工程を実行した後に第2工程を実行する。
尚、本例においては、長尺部材1を所定の姿勢にて固定し、焼き入れ手段110を移動させるものとする。また、本例においては、長尺部材1の裏側に位置する2つの第1角部5に対向する焼き入れ手段110aと、長尺部材1の表側に位置する2つの第2角部6に対向する焼き入れ手段110bと、をそれぞれ個別に移動させることができるように構成された焼き入れ装置を使用するものとする。
先ず、図16の(b)において、図示しない治具(例えば、チャック121及び122)によって長尺部材1を所定の姿勢にて固定すると共に、焼き入れ手段110a(加熱手段7及び冷却手段8)及び110b(加熱手段9及び冷却手段10)をX軸の負方向の端に待機させた。この後、各焼き入れ手段はX軸の正方向に移動するので、加熱手段7及び加熱手段9はそれぞれ冷却手段8及び冷却手段10の後ろ側(X軸の負方向側)に配置されている。
次に、図17の(b)に示すように、焼き入れ手段110a(加熱手段7及び冷却手段8)を作動させながらX軸の正方向に移動させることにより、長尺部材1の2つの第1角部5の全長に亘って焼き入れ処理を施した。即ち、第1工程を実行した。その結果、長尺部材1の表側(Z軸の正方向側)が凸状になるように長尺部材1の長手方向の軸に歪み(反り)が発生すると共に、フランジ部4の外端部(側壁部3とは反対側の端部)が下方(Z軸の負方向)へ傾斜した。
次に、図18の(b)に示すように、焼き入れ手段110b(加熱手段9及び冷却手段10)を作動させながらX軸の正方向に移動させることにより、長尺部材1の2つの第2角部6の全長に亘って焼き入れ処理を施した。即ち、第2工程を実行した。その結果、第1工程において発生した歪み(反り)とは反対方向の歪み(反り)が発生し、第1工程において発生した歪み(反り)が相殺されて、長尺部材1が歪み(反り)の無い元の形状に復元された。
〈効果〉
上記のように、第2方法によれば、第1工程における2つの第1角部5に対する焼き入れ処理により表側(即ち、ハット状断面の天板側)が凸状になるように長尺部材1の長手方向の軸に歪み(反り)が発生しても、次の第2工程の実行により2つの第2角部6に対する焼き入れ処理により第1工程とは反対方向の歪み(反り)が発生する。その結果、第1工程において発生した歪み(反り)が第2工程において発生した歪み(反り)によって少なくとも部分的に相殺され、長尺部材1の長手方向の軸の歪み(反り)が低減される。
〈補足〉
上記のように、第2方法においては、第1工程の実行が完了した後に第2工程の実行を開始した。しかしながら、長尺部材1の長手方向(X軸方向)における角部の個々の位置において第1工程の後に第2工程が実行される限り、第1工程の完了前に第2工程の実行を開始してもよい。この場合、焼き入れ方法全体としては、第1工程の実行中に第2工程が開始されることとなる。具体的には、例えば、上記第2方法において、焼き入れ手段110aよりも所定距離(所定時間)遅れて焼き入れ手段110bを移動させる。これにより、対象角部の個々の箇所においては第1工程の後に第2工程を実行しつつ、焼き入れ方法全体としては第1工程を実行している途中に第2工程の実行を開始することができる。
ところで、上述したように、第1工程における2つの第1角部5に対する焼き入れ処理により表側が凸状になるように長尺部材1の長手方向の軸に歪み(反り)が発生する場合がある。前述したように、このような歪み(反り)が大きい場合、例えば車両の構成部材として当該長尺部材1を使用することが困難となる場合がある。
しかしながら、第1工程において発生する歪み(反り)は一般的に小さく、上述したような倣いゲージを用いる焼き入れ装置における焼き入れ処理に支障を来す程には大きくない。具体的には、第1工程において発生する歪み(反り)の大きさは例えば±0.5mm程度であるのに対し、ワークとしての長尺部材1と焼き入れ手段110との間隔は例えば3〜5mm程度であり、比較的大きい。従って、上述したような歪み(反り)が第1工程において発生しても、焼き入れ処理の実行時に長尺部材1と焼き入れ手段110とが干渉する可能性は低い。
更に、例えば加熱手段としての誘導加熱コイルへの供給電力及び長尺部材1と焼き入れ手段110とを長手方向において相対的に移動させる速度等を調整することにより、上記歪み(反り)に起因する加熱斑等を低減することもできる。
《第6実施形態》
ところで、これまで説明してきた本発明の各種実施形態は何れも、ワークとしての長尺部材と実質的に同一の形状を有する倣いゲージの形状に沿って移動可能な倣い手段に焼き入れ手段を保持することによりワークと焼き入れ手段(特に加熱手段)との位置関係を厳密に制御することを前提としていた。
しかしながら、上述したようにハット状断面を有する長尺部材において表側(天板側)の角部のみならず裏側の角部に対しても焼き入れ処理を施すことにより焼き入れ処理後の長尺部材の長手方向の軸の歪み(反り)を低減する効果は、倣いゲージを用いる長尺部材と焼き入れ手段との位置関係の制御の有無に拘わらず、達成することができる。
例えば、多軸ロボット(多関節型産業用ロボット)等に、長尺部材及び焼き入れ手段の両方又は一方を保持させ、長尺部材と焼き入れ手段との位置関係を制御させながら、長尺部材の裏側に位置する2つの第1角部及び長尺部材の表側に位置する2つの第2角部に対して焼き入れ処理を施すことによって、焼き入れ処理後の長尺部材の長手方向の軸の歪み(反り)を低減することも可能である。
上記のように産業用ロボット等を用いてハット状断面を有する長尺部材に焼き入れ処理を施す場合、上述したように天板部の幅及び/又は側壁部の高さが一定ではない長尺部材についても柔軟に対応して、対象とする角部に正確に焼き入れ処理を施すことができる。
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び変形例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び変形例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。
100及び200…焼き入れ装置、101及び102…ベース、110、110a及び110b…焼き入れ手段、111…加熱手段、112及び113…冷却手段、120…曲がり管、121及び122…チャック、130…運搬手段、131…サーボモータ、132…ボールネジ、133…ガイドレール、140…制御手段、150…倣いゲージ、151及び152…ホルダ、153…スタンド、160…倣い手段、161及び168…アーム、161a、161b及び161c…連結部材、163、165及び165’…台座、164及び164’…ガイドレール、166…スライダ、167…パンタグラフ、170…フレーム、171及び172…ガイドレール、173…台座、174…滑車、175…ワイヤ、176…重り、181乃至184…支承部材、191…保持部材、192a、192b及び192c…軸、193a、193b及び193c…ローラ、並びに194a、194b及び194c…ステー、1…ハット状断面を有する長尺部材、2…天板部、3…側壁部、4…フランジ部、5…第1の角部、6…第2の角部、7及び9…加熱手段、並びに8及び10冷却手段。
本発明は、例えば、曲がりを有する管状部材(例えば、鋼管等)及び異形断面(例えば、ハット状断面)を有する長尺部材等、長尺部材の少なくとも一部に焼き入れ処理を施すための装置に関する。更に、本発明は、当該焼き入れ装置を用いる焼き入れ処理方法にも関する。
例えばドアインパクトビーム及びアンチロールバー等の自動車用部品に用いられる「曲がりを有する管状部材」(以降、「曲がり管」と称呼される場合がある。)の機械的強度等を高めることを目的とした所謂「焼き入れ」と称呼される処理が知られている。焼き入れ処理とは、その処理対象となる部材を所定の温度以上に加熱した後に急冷する処理である。焼き入れ処理は、その処理対象となる部材の全体に施される場合もあり、或いは、その処理対象となる部材の一部において局所的に施される場合もある。
前者の具体例としては、例えば、予め曲げ加工が施された管(曲がり管)の全体を所定の焼き入れ温度以上の温度まで加熱した後に(冷却水に接触させる等して)急冷することが知られている。但し、この方法によれば、曲がり管の全体に焼き入れ処理が施されるので、例えば曲がり管の一部に焼き入れ処理を施さない場合は、この方法を適用することはできない。
一方、後者の場合、加熱手段及び冷却手段を含む焼き入れ手段を曲がり管の長手方向に沿って少しずつ移動させ、当該管の焼き入れが必要な部分において加熱及び冷却を行うことにより、曲がり管の一部において焼き入れ処理を施すことが一般的である。この場合、上記とは逆に、焼き入れ手段を固定しておき、曲がり管を移動させてもよい。即ち、曲がり管及び焼き入れ手段の何れが移動してもよく、これらが相対的に移動していればよい。
何れにせよ、曲がり管と加熱手段とが相対的に移動する際に、曲がり管と加熱手段との位置関係が偏ったり、ましてや曲がり管と加熱手段とが干渉したりすると、曲がり管の焼き入れ処理が不均一となったり、加熱手段が破損したりする虞がある。従って、曲がり管と加熱手段との位置関係は厳密に制御される必要がある。
このような焼き入れ処理の具体例としては、例えば、複数の産業用ロボットを協調制御して、管状部材(以降、単に「管」と称呼される場合がある。)の曲げ加工と焼き入れ処理とを同時に行う装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。この装置は、管の送り機構と、管を送りながら支持する第1の支持機構と、加熱機構と、冷却機構と、管の加熱された部分に曲げモーメントを与えて管を曲げ加工する第2の支持機構と、鋼の変形防止機構とを備える。
上記装置において精度良く曲げ加工を施して管を所望の形状とするためには、上記送り機構、第2の支持機構及び鋼の変形防止機構の三者の動作を厳密に協調制御する必要がある。そのため、生産銘柄を変更する「段替え」を行う際には上記機構のそれぞれについて多くの制御項目の設定、動作確認及び微調整等の複雑な作業が必要となる。従って、上記装置は多品種の生産には適していない。
更に、上記のように、上記装置は複数の産業用ロボット及びこれらを協調制御するための制御機構等を必要とするため、多大な設備費用、広大な稼働スペース及び消費電力を必要とする。
加えて、上記装置においては、焼き入れ処理における加熱に伴う管の軟化を利用して曲げ加工を行うため、管の曲がっている部分(以降、「曲がり部」と称呼される場合がある。)には焼き入れ処理が必ず施される。従って、管の曲がり部において焼き入れが必要とされない場合、上記装置を使用することはできない。
一方、当該技術分野においては、予め曲げ加工が施された管(曲がり管)に焼き入れ処理を施す焼き入れ装置も知られている(例えば、特許文献2を参照。)。この装置は、誘導加熱コイルと、当該誘導加熱コイル内に管を通過させる運搬手段としての多軸ロボット(多関節型産業用ロボット)と、上記誘導加熱コイルの下流に配置された冷却手段と、を備えている。
上記装置においては、上記ロボットのアームの先端に取り付けられた複数のクランプによって曲がり管を保持し、誘導加熱コイルのほぼ中心を当該曲がり管が通過するように上記ロボットが作動する。この際、これら複数のクランプを順次開閉することにより、誘導加熱コイル及び冷却手段に対して当該曲がり管がその長手方向に順次移動され、焼き入れ処理が施される。
上記のような装置によれば、曲がり管の曲がり部の位置とは無関係に焼き入れ処理を施すことができるので、上述した装置のように曲げ加工と焼き入れ処理とを同時に行うことに起因する問題は解消される。
しかしながら、上記装置においては、焼き入れ処理を施す対象(ワーク)となる曲がり管の形状に応じて産業用ロボットの動作を教示及び調整する必要がある。加えて、段替えの際には、曲がり管の形状に応じて上記複数のクランプの配置を変更する必要がある。従って、上記装置においてもまた、段替えを行う際には複雑な作業が必要となる。
ところで、上述したように、例えば自動車の車体を構成する構造部材においては、異形断面を有する長尺部材が用いられることが知られている。具体的には、例えば車両のセンターピラー及びクロスメンバ等において、鋼板にプレス加工を施すことによって成形されるハット状断面を有する長尺部材が使用される。
尚、「長尺部材」とは、特定の方向における当該部材の寸法が他の方向における当該部材の寸法に比べて相対的に長い形状を有する部材を意味し、当該部材における上記特定の方向は「長手方向」と称され、当該「長手方向」に直交する方向は「幅方向」又は「厚み方向」と称される。
上記のような長尺部材の機械的強度を高めるための方法としては、例えば、高い機械的強度を有する補強部材と当該長尺部材と組み合わせる方法が知られている。しかしながら、補強部材の追加は、例えば部材の重量の増大、製造コストの増大及び製造工程の複雑化等の問題に繋がる虞がある。
或いは、ハット状断面を有する長尺部材を所謂「ホットプレス加工」によって製造することにより、当該長尺部材の全体を成形と同時に焼き入れ処理する技術も知られている。当該技術によれば、ハット状断面を有する長尺部材の全ての領域における機械的強度を高めて、例えば車両の衝突安全性等を高めることができる。しかしながら、(加熱を伴わない)通常のプレス加工に比べて、ホットプレス加工には大掛かりな設備が必要である。その結果、例えば、製造コストの増大のみならず、段替えに伴うコストの増大等の問題を招く虞がある。
そこで、当該技術分野においては、ハット状断面を有する長尺部材において、ハット状断面の角部(鋼板の折り曲げ線(稜線)部分)近傍の領域(以降、単に「角部領域」と称される場合がある。)のみに対して焼き入れ処理を部分的に施すことにより、当該長尺部材の機械的強度を高める技術が知られている。
上記焼き入れ処理においては、加熱手段としての高周波加熱コイル及びその下流に配置された冷却手段としての冷却ジャケットを備える焼き入れ手段が、上記角部領域に対向するように配置される。そして、当該焼き入れ手段と当該長尺部材とを当該長尺部材の長手方向に沿って相対的に移動させることにより、当該角部領域のみに対して焼き入れ処理を施すことができる(例えば、特許文献3を参照。)。
しかしながら、上記を始めとする従来技術に係るハット状断面を有する長尺部材の焼き入れ方法においては、焼き入れ処理後のワークの長手方向の軸が反る場合がある。具体的には、ワークの裏側(即ち、ハット状断面の天板とは反対側(「凹部側」及び「フランジ側」とも称される。))が凸状になるように、長手方向の軸が歪む場合がある。
特開2011−000641号公報 特開2004−270025号公報 特許第3408985号公報
前述したように、当該技術分野においては、曲がり管と加熱手段との位置関係を厳密に制御することが可能であり、段替えに伴う作業負荷が低く、低コスト及び省スペースを達成可能な曲がり管の焼き入れ装置に対する要求が存在する。そこで、本発明は、曲がり管と加熱手段との位置関係を厳密に制御することが可能であり、段替えに伴う作業負荷が低く、低コスト及び省スペースを達成可能な曲がり管の焼き入れ装置を提供することを1つの目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、ワークとしての曲がり管と実質的に同一の形状を有する倣いゲージの形状に沿って移動可能な倣い手段に焼き入れ手段を保持することにより、上記目的を達成することができることを見出した。
上記のような点に鑑み、本発明に係る曲がり管の焼き入れ装置(以降、「第1本発明装置」と称される場合がある。)は、焼き入れ手段と、運搬手段と、制御手段と、を備える曲がり管の焼き入れ装置である。
焼き入れ手段は、加熱手段及び冷却手段を含み、ワークとしての曲がり管を加熱した後に急冷することにより、曲がり管を構成する材料の組織を変化させて、例えば、当該材料の機械的強度等を向上させる。例えば、曲がり管を構成する材料が鋼である場合、鋼の金属組織がオーステナイト組織になる温度(例えば、900℃以上)まで加熱手段が曲がり管を加熱した後、冷却手段が曲がり管を急冷して鋼の金属組織をマルテンサイト組織とする。これにより、鋼の硬度、耐摩耗性、引っ張り強さ及び疲労強度等が向上する。
加熱手段は、上記のような当該材料の組織変化を生じさせるのに必要な温度にまで曲がり管を加熱することが可能である限り特に限定されないが、典型的には金属からなる曲がり管を誘導加熱によって加熱する誘導加熱コイル(例えば高周波加熱コイル等)を含む。冷却手段は、加熱手段によって加熱された曲がり管を上記のような当該材料の組織変化を生じさせるのに必要な速度にて急冷することが可能である限り特に限定されないが、典型的には曲がり管に対して冷媒を噴出する冷却ジャケットである。冷却ジャケットの具体例としては、例えば、曲がり管に対向する面に複数の孔が穿設され且つ当該複数の孔から曲がり管に向かって冷却水が噴出されるシャワー式の冷却ジャケットを挙げることができる。
尚、加熱手段及び冷却手段は曲がり管の焼き入れ処理を施す部分の全周に亘って均一に加熱及び冷却を行うことが望ましい。従って、典型的には、加熱手段及び冷却手段は、その中に曲がり管を通すことが可能な中空の形状(例えば、ドーナツ状等)を有することが望ましい。ここにおいて、曲がり管と加熱手段及び冷却手段との間の全周に亘る隙間(クリアランス)を、曲がり管と焼き入れ手段との相対的な移動中も一定に保つことが重要である。従って、曲がり管と加熱手段及び冷却手段との位置関係を厳密に制御する必要が生ずる。
運搬手段は、ワークとしての曲がり管と上記焼き入れ手段とを相対的に移動させる。「相対的に移動させる」とは、曲がり管及び焼き入れ手段の何れか一方又は両方を移動させることにより、曲がり管と焼き入れ手段との位置関係を変化させることを意味する。具体的には、例えば、曲がり管を所定の位置に保持した状態において、焼き入れ手段を曲がり管の長手方向に沿って移動させてもよい。この場合、焼き入れ手段は、例えば、「曲がり管の長手方向に平行なガイドレール上に当該ガイドレールに係合するように配設され且つ当該ガイドレールに沿って移動可能に構成された台座」と連結されることにより、曲がり管の長手方向に沿って移動可能に構成され得る。更に、この台座は、例えば、当該台座に取り付けられたナットと係合するボールネジをサーボモータ等の駆動装置によって回転させることにより移動させることができる。
逆に、焼き入れ手段を所定の位置に保持した状態において曲がり管を移動させて、焼き入れ手段によって加熱及び冷却が行われる領域に曲がり管が通るようにしてもよい。何れの場合においても、詳しくは後述するように、第1本発明装置においては、曲がり管と焼き入れ手段との位置関係は、曲がり管の長手方向に平行な方向のみならず、曲がり管の長手方向に直交する方向にも移動可能に構成される必要がある。
制御手段は、運搬手段によって相対的に移動された曲がり管と焼き入れ手段とが所定の位置関係となったときに、加熱手段によって曲がり管を加熱し、その後、冷却手段によって曲がり管を冷却する。これにより、曲がり管の少なくとも一部に焼き入れ処理を施す。上記「所定の位置関係」とは、曲がり管の焼き入れ処理を施すべき部分が焼き入れ手段による焼き入れを施されるのに好適な位置にある状態を指す。曲がり管と焼き入れ手段とが所定の位置関係にあるか否かは、例えば、曲がり管と焼き入れ手段との相対的な位置関係(例えば、曲がり管及び/又は焼き入れ手段の位置)を検出するセンサによって検知することができる。或いは、上述したようにサーボモータによって回転されるボールネジによって曲がり管と焼き入れ手段とを相対的に移動させる場合は、ボールネジの回転数に基づいて曲がり管と焼き入れ手段との相対的な位置関係を検出することもできる。
曲がり管と焼き入れ手段とが所定の位置関係にあるとき、制御手段は、加熱手段を稼働させる。例えば、加熱手段として誘導加熱コイルを使用する場合、制御手段は、曲がり管と焼き入れ手段とが所定の位置関係にあるときに誘導加熱コイルに通電する。一方、冷却手段は、曲がり管に対する焼き入れ手段の移動方向において加熱手段の後ろ側に隣接して設けられる。これにより、冷却手段は、曲がり管と焼き入れ手段とが相対的に移動するにつれて、加熱手段によって加熱された曲がり管を急冷することができる。尚、冷却手段として冷却ジャケットを使用する場合、曲がり管を冷却するための冷媒(例えば、水)は、加熱手段が稼働している期間においてのみ噴出されるようにしてもよく、或いは、第1本発明装置の稼働中は継続的に噴出されるようにしてもよい。
加えて、第1本発明装置は、倣いゲージと、倣い手段と、を更に備える。
倣いゲージは、曲がり管の軸線形状と同一の軸線形状を有する部材である。即ち、倣いゲージは、曲がり管と略同一の形状を有する。典型的には、倣いゲージは、曲がり管と同一の形状を有する部材である。しかしながら、倣いゲージは、後述するガイド部(「倣い治具」とも称される)によってトレースされる形状が曲がり管の形状に合致している限り、必ずしも曲がり管と完全に同一の形状を有する必要は無い。例えば、曲がり管の屈曲が二次元的である場合、その屈曲に対応する二次元平面における倣いゲージの形状と曲がり管の形状とが同一であればよい。この場合、例えば、倣いゲージは上記二次元平面内による曲がり管の断面に対応する板状の部材であってもよい。このような倣いゲージは、例えば、ワークとしての曲がり管そのものであってもよく、或いは、切削加工等によって曲がり管とは別個に作製された部材であってもよい。
尚、前述したように、曲がり管と加熱手段とが相対的に移動する際に、曲がり管と加熱手段との位置関係が偏ったり曲がり管と加熱手段とが干渉したりすると、曲がり管の焼き入れ処理が不均一となったり加熱手段が破損したりする虞があるので、曲がり管と加熱手段との位置関係は厳密に制御される必要がある。従って、倣いゲージは、ワークとしての曲がり管と同一の姿勢にて保持される必要がある。倣いゲージと曲がり管とを同一の姿勢にて保持するための手法は特に限定されない。
例えば、第1本発明装置による焼き入れ処理の直前に曲がり管の曲げ加工が施される1つの製造ラインにおいて、曲げ加工が施された曲がり管を産業用ロボットによって曲げ加工装置から取り出し、第1本発明装置に取り付ける場合、上記産業用ロボットによって第1本発明装置に取り付けられる曲がり管の姿勢は常に同じである。従って、上記姿勢と同じ姿勢にて倣いゲージを保持することにより、ワークとしての曲がり管と同一の姿勢にて倣いゲージを保持することができる。一方、例えば、予め曲げ加工を施された曲がり管を手作業によって第1本発明装置に取り付ける場合は、上記のように産業ロボットを用いる場合と比べて、第1本発明装置に取り付けられる曲がり管の姿勢を常に同じにすることは困難である。このような場合は、例えば、第1本発明装置において曲がり管を保持する機構(例えば、チャック)に設けられた凸部が嵌合する凹部(例えば、切り欠き等)を曲がり管の被保持部(例えば、端部)に形成しておけばよい。これにより、第1本発明装置に曲がり管を取り付ける際に曲がり管の姿勢を常に同じにすることができる。
倣い手段は、後述するガイド部によってトレースされる倣いゲージの形状を焼き入れ手段に伝達する部材である。これにより、焼き入れ手段は、ガイド部によってトレースされる倣いゲージの形状に沿って移動することにより、曲がり管の形状に沿って移動することができる。その結果、曲がり管と加熱手段との位置関係が偏ったり曲がり管と加熱手段とが干渉したりすることが回避される。そのため、倣い手段は、曲がり管及び倣いゲージの長手方向のみならず同長手方向に直交する方向においても曲がり管及び倣いゲージに対して相対的に移動可能に構成される。
更に、倣い手段は、運搬手段により曲がり管に対して相対的に移動するように構成される。具体的には、例えば、倣い手段は、上述した台座に連結されることにより、運搬手段が台座を移動させるのに伴って、曲がり管に対して相対的に移動する。この場合、倣い手段は、例えば、曲がり管の長手方向に直交するガイドレールを台座上に設け、当該ガイドレールに係合するように配設され且つ当該ガイドレールに沿って移動可能に構成された第2の台座に倣い手段が連結される。これにより、倣い手段は、曲がり管及び倣いゲージの長手方向のみならず同長手方向に直交する水平方向においても曲がり管及び倣いゲージに対して相対的に移動可能に構成され得る。曲がり管の屈曲が三次元的である場合、倣い手段は、鉛直方向の動きは許容するものの水平方向の動きは許容しない機構(例えば、パンタグラフ及びスライダからなる機構)を介して第2の台座に連結される。これにより、倣い手段は、曲がり管及び倣いゲージの長手方向のみならず同長手方向に直交する水平方向及び同長手方向に直交する鉛直方向においても曲がり管及び倣いゲージに対して相対的に移動可能に構成され得るので、三次元的な屈曲を有する曲がり管にも対応可能となる。
倣い手段の一端には、倣いゲージに沿って摺動可能に係合するガイド部が保持されている。ガイド部は、倣いゲージに沿って摺動可能に係合することが可能である限り、特に限定されない。例えば、ガイド部は、2つ以上のガイドローラを備え、これらのガイドローラによって倣いゲージを嵌装する。これにより、運搬手段が曲がり管と倣い手段とを相対的に移動させるのに伴って、倣いゲージの形状をガイド部がトレースすることができる。
一方、倣い手段の他端には、焼き入れ手段が保持されている。従って、ガイド部によってトレースされる倣いゲージの形状は、倣い手段を介して焼き入れ手段に伝達される。その結果、焼き入れ手段は、ガイド部によってトレースされる倣いゲージの形状に沿って移動するので、曲がり管の形状に沿って移動することができる。
上記によれば、ガイド部が倣いゲージに沿って曲がり管及び倣いゲージの長手方向に直交する方向にも移動することにより、焼き入れ手段が曲がり管に精度良く沿って移動する。即ち、第1本発明装置によれば、簡便な機械的手段によって曲がり管と加熱手段との位置関係を厳密に制御することが可能である。更に、段替えに際しては、倣いゲージを新たなワークに対応したものに交換することにより容易に対応可能である。加えて、このように簡便な機械的手段を用いるので、第1本発明装置は、産業用ロボットを使用する場合と比較して、低コスト及び省スペースを同時に達成可能である。
ところで、制御手段は、焼き入れ手段を制御して、加熱手段によって曲がり管を加熱した後に冷却手段によって曲がり管を冷却することによって、曲がり管の少なくとも一部に焼き入れ処理を施す。即ち、制御手段は、例えば加熱手段への電力の供給及び冷却手段への冷媒の供給等を制御する。従って、制御手段と焼き入れ手段とが離れていると、例えば電力及び冷媒等の供給経路が長くなり、電力の伝達損失及び冷媒の圧力損失等を招き、第1本発明装置のエネルギー効率を低下させる要因となる虞がある。更に、例えば電力及び冷媒等を焼き入れ手段に供給するための配線及び配管が長くなり、例えば、それらの配線及び配管を配設するためのスペースが必要となり、第1本発明装置の大型化を招く虞がある。加えて、運搬手段によって焼き入れ装置が移動する場合、焼き入れ装置の移動に従って上記配線及び配管を引き回すための機構が必要となり、第1本発明装置の複雑化を招く虞がある。
そこで、第1本発明装置において、制御手段は、倣い手段に保持されているように構成され得る。この場合、制御手段は、倣い手段の一部を構成していてもよい。具体的には、例えば、制御手段に設けられたアームにガイド部及び焼き入れ手段がそれぞれ保持されていてもよい。この場合、制御手段及びアームが倣い手段を構成している。
上記によれば、焼き入れ手段は倣い手段の一端に保持されているので、制御手段を焼き入れ手段の近傍に配設することができ、結果として上記のような問題を回避することができる。
ところで、制御手段は、上記のように、例えば加熱手段への電力の供給及び冷却手段への冷媒の供給等を制御するので、例えば加熱手段に供給される電力の変圧器及び冷却手段に冷媒を供給するためのポンプ等を備える場合がある。従って、制御手段の質量は一般的に大きく、ガイド部による倣いゲージの形状の円滑なトレースの妨げとなる虞がある。特に、曲がり管の屈曲が三次元的である場合には倣い手段が鉛直方向にも動く必要があるので、制御手段の質量がガイド部によるトレースに与える影響は大きい。従って、第1本発明装置は、制御手段の質量に起因して倣い手段にかかる荷重を軽減する機構を備えることが望ましい。
上記機構としては、制御手段の質量に起因して倣い手段にかかる荷重を軽減することが可能である限り特に限定されないが、低コスト及び省スペースを達成するという本発明の目的に照らせば、例えば、制御手段の重さと釣り合う重りを用いることが望ましい。
そこで、上述したように制御手段が倣い手段に保持されている場合、第1本発明装置は、制御手段と連結されて同制御手段の重さと少なくとも部分的に釣り合うように配設された重りを更に備え得る。
上記において、制御手段の質量に起因して倣い手段にかかる荷重を上記重りによって軽減するための具体的な機構は特に限定されない。例えば、上記重りは、第1本発明装置の上部に設けられた台座に載置された滑車(プーリ)を経て制御手段(又は制御手段が載置されている台座等)に締結されたワイヤ等によって制御手段と連結され、吊り下げられる。これにより、上記重りは、制御手段の重さに起因して倣い手段にかかる荷重を少なくとも部分的には相殺することができる。当然のことながら、ガイド部による倣いゲージの形状の円滑なトレースを達成するためには、上記重りの質量と制御手段の質量とは等しいことが望ましい。
尚、上述したように、制御手段は曲がり管及び倣いゲージの長手方向及び同長手方向に直交する方向に移動するので、上記重りは、制御手段の移動に追従しつつ、鉛直方向上向きの力を制御手段に作用することが可能であるように配設されることが望ましい。そこで、制御手段の移動方向(即ち、曲がり管及び倣いゲージの長手方向)に平行なガイドレールを第1本発明装置の上部に設け、当該ガイドレールに沿って移動可能な台車を当該ガイドレールに係合させ、配設する。更に、制御手段の移動方向に直交するガイドレールを当該台車の上に設け、当該ガイドレールに沿って移動可能な別の台車を当該ガイドレールに係合させ、配設する。この「別の台車」に上記滑車を載置することにより、制御手段が移動しても鉛直方向上向きの力を制御手段に作用させ続けることができる。この場合、制御手段の移動方向の側方に上記重りを吊り下げることが望ましい。これにより、制御手段、滑車が載置される台座及び重りが、曲がり管及び倣いゲージの長手方向に移動することができる。
ところで、上述したように、焼き入れ処理においては、加熱手段が曲がり管を構成する材料の組織変化を生じさせるのに必要な温度にまで曲がり管を加熱する。従って、曲がり管の構成(例えば、構成材料及び構造等)によっては、その自重により加熱時に曲がり管が変形する場合がある。このような変形を防止するためには、曲がり管をその両端部のみにおいて保持するより、曲がり管の長手方向に沿って間隔を空けた複数の位置においても支承する方が望ましい。
そこで、上記の場合、第1本発明装置は、曲がり管を下方から支承可能であると共に下方へ退避可能な複数の支承部材を更に備え得る。そして、これらの複数の支承部材は、曲がり管の長手方向に沿って間隔を空けて配置されている。これによれば、焼き入れ処理において加熱手段によって加熱された曲がり管が軟化して、その自重により撓む等して変形することを抑制することができる。
但し、複数の支承部材が常に曲がり管を支承している状態では、焼き入れ処理において焼き入れ手段が支承部材と干渉し、支承されている箇所を通過することができないので、上記のように、それぞれの支承部材は下方へ退避可能に構成されている。このような支承部材は、例えば空圧シリンダ及び油圧シリンダ等のアクチュエータの端部に曲がり管を支承するための受け部を設けることによって構成され得る。これにより、支承部材は、上記アクチュエータの作動によって、受け部の位置を上昇させたり、下降させたりすることができる。尚、ハンドリングの容易さ及び応答の速さ等の観点から、上記アクチュエータとしては、空圧シリンダが好ましい。
また、焼き入れ処理における曲がり管の変形を低減する観点からは、例えば焼き入れ処理における加熱温度が高いほど及び焼き入れ処理における加熱時における曲がり管の軟化の程度が大きいほど、複数の支承部材の配置間隔を狭くすることが望ましい。一方、焼き入れ処理における焼き入れ手段の移動を妨げない観点からは、焼き入れ処理における焼き入れ手段の移動速度が高いほど、複数の支承部材の配置間隔を広くすることが望ましい。従って、複数の支承部材の配置間隔は、これらの要因を考慮して適宜定められる。
更に、複数の支承部材を配置する位置については、当然のことながら、支承されるべき曲がり管の形状に合わせて定められる。尚、曲がり管の屈曲の程度及び支承部材の受け部の大きさによっては、曲がり管の長手方向に略直線状に複数の支承部材を配置してもよい場合がある。
加えて、個々の支承部材の受け部の上限位置もまた、当然のことながら、支承されるべき曲がり管の形状に合わせて定められる。個々の支承部材の受け部の下限位置は、アクチュエータの作動によって下方へ退避したときに、曲がり管と支承部材(の受け部)との間に焼き入れ手段が通過するのに十分な間隔が確保されるように定められる。
尚、例えば、極めて高い寸法精度が求められる場合等、上記のように支承部材によって曲がり管を下方から支承するのみでは焼き入れ処理時における曲がり管の保持及び固定が不十分である場合がある。このような場合は、例えば、焼き入れ手段の近傍において曲がり管を上方から下方に向かって押圧する押圧手段を更に設けてもよい。この押圧手段は、焼き入れ手段と共に曲がり管の長手方向に移動する必要があるので、倣い手段に連結されることが望ましい。
更に、押圧手段は、焼き入れ手段とは曲がり管の長手方向において若干離れた位置において曲がり管を押圧することになるので、曲がり管の屈曲により、曲がり管の長手方向に直交する方向においても焼き入れ手段から若干ずれた位置において曲がり管を押圧することになる。このため、押圧手段は、曲がり管の長手方向に直交する方向に移動可能な状態で倣い手段に連結される。加えて、押圧手段の曲がり管に当接する部分には、曲がり管を押し下げつつ円滑に長手方向に移動することが可能であるように、例えばローラ等の機構が設けられていることが望ましい。
ところで、焼き入れ処理において加熱された曲がり管が変形することを抑制する観点からは、支承部材が下方へ退避している期間をできる限り短くすることが望ましい。従って、上記のような支承部材を備える第1本発明装置においては、焼き入れ処理において焼き入れ手段が通過するときのみ支承部材が下方へ退避するように構成することが望ましい。
上記の場合、前記複数の支承部材のそれぞれが、前記焼き入れ手段が所定の距離以内に接近しているときには下方へ退避し、前記焼き入れ手段が所定の距離以内に接近していないときには前記曲がり管を下方から支承するように構成され得る。これによれば、焼き入れ処理において焼き入れ手段が支承部材から所定の距離以内に接近したときのみ支承部材が下方へ退避する。従って、支承部材が下方へ退避している期間を短くすることができるので、焼き入れ処理において、曲がり管に沿った焼き入れ手段の移動を妨げること無く、加熱された曲がり管が変形することを抑制することができる。
更に、上記「所定の距離」は、例えば、焼き入れ処理において焼き入れ手段が支承部材に近付いてくる場合に、支承部材の退避を開始しても焼き入れ手段と支承部材とが干渉すること無く、当該支承部材が支承していた箇所を焼き入れ手段が通過することが可能な焼き入れ手段と支承部材との最短距離に応じて適宜定めることができる。従って、上記「所定の距離」は、例えば、焼き入れ処理における焼き入れ手段の移動速度、アクチュエータによる支承部材の退避速度、焼き入れ手段及び支承部材の受け部の大きさ及び形状等の種々の要因によって影響され得る。
加えて、焼き入れ手段と支承部材とが上記「所定の距離」以内に接近したか否かは、例えば、焼き入れ手段と支承部材との間の距離(例えば、焼き入れ手段及び/又は支承部材の位置)を検出するセンサによって検知することができる。或いは、上述したようにサーボモータによって回転されるボールネジによって曲がり管と焼き入れ手段とを相対的に移動させる場合は、ボールネジの回転数に基づいて焼き入れ手段と支承部材との間の距離を検出することもできる。
ところで、前述したように、冷却手段は、曲がり管に対する焼き入れ手段の移動方向において加熱手段の後ろ側に隣接して設けられる。これにより、冷却手段は、曲がり管と焼き入れ手段とが相対的に移動するにつれて、加熱手段によって加熱された曲がり管を急冷することができる。
しかしながら、焼き入れ手段は、曲がり管の長手方向における加熱手段の両側に冷却手段をそれぞれ備え得る。これによれば、曲がり管の長手方向において焼き入れ手段を一方向に移動させるときのみならず、その逆方向に焼き入れ手段を移動させるときにも、焼き入れ処理を行うことができる。その結果、第1本発明装置による曲がり管の焼き入れ処理の効率を大幅に高めることができる。
更に、曲がり管に所謂「焼き戻し」を行う必要がある場合は、焼き入れ手段を曲がり管の長手方向において一方向に移動させるとき(往路)には焼き入れ処理を行い、その逆方向に移動させるとき(復路)には焼き戻し処理を行うこともできる。これによれば、1つの工程により焼き入れ処理及び焼き戻し処理を連続して行うことができるので、この場合もまた、第1本発明装置による曲がり管の処理効率を大幅に高めることができる。
焼き戻し処理は、焼き入れ処理と比較して、加熱温度がより低い(例えば、200℃)。第1本発明装置においては、例えば、上記「往路」に比べて、加熱手段に供給する電力を弱めたり、上記「復路」における焼き入れ手段の移動速度をより大きくしたり、アクチュエータの制御により曲がり管を支承する支承部材の数を減らしたり、冷却手段が噴出する冷媒の量を減らしたりすることにより、焼き戻し処理を行うことができる。
尚、当然のことながら、曲がり管の長手方向において焼き入れ手段を一方向に移動させるときも、その逆方向に移動させるときにも、焼き入れ手段の移動方向において加熱手段の後ろ側の冷却手段のみが稼働される。従って、何れの場合においても、焼き入れ手段の移動方向において加熱手段の前側の冷却手段は稼働されない。
ところで、前述したように、従来技術に係るハット状断面を有する長尺部材の焼き入れ方法においては、ワーク(長尺部材)の表側のみに加熱手段が設けられるため、焼き入れ処理後のワークの長手方向の軸が、ワークの裏側が凸状になるように歪む(反る)場合がある。このようなワークの歪み(反り)が大きい場合、例えば車両の構成部材として当該ワークを使用することが困難となる場合がある。
そこで、本発明は、ハット状断面を有する長尺部材の角部領域のみに対して焼き入れ処理を部分的に施す場合において、焼き入れ処理後のワークの長手方向の軸の歪み(反り)を低減することができる長尺部材の焼き入れ装置及び当該焼き入れ装置を用いる焼き入れ処理方法を提供することをもう1つの目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、ワーク(長尺部材)の表側(即ち、ハット状断面の天板側(「凸部側」及び「頂面側」とも称される。))の角部領域のみならず、ワークの裏側の角部領域に対しても焼き入れ処理を施すことにより、焼き入れ処理後のワークの長手方向の軸の歪み(反り)を低減することができることを見出した。
上記のような点に鑑み、本発明に係るハット状断面を有する長尺部材の焼き入れ装置(以降、「第2本発明装置」と称される場合がある。)は、焼き入れ手段と、運搬手段と、制御手段と、を備える。
焼き入れ手段は、加熱手段及び冷却手段を含み、ワークとしての長尺部材を加熱した後に急冷することにより、長尺部材を構成する材料の組織を変化させて、例えば、当該材料の機械的強度等を向上させる。第2本発明装置が備える焼き入れ手段、加熱手段及び冷却手段は、上述した第1本発明装置が備える焼き入れ手段、加熱手段及び冷却手段と基本的に同様の構成を有するので、ここでは説明を繰り返さない。
但し、上述したように、第2本発明装置は、ハット状断面を有する長尺部材の角部領域のみに対して焼き入れ処理を部分的に施す場合において、焼き入れ処理後のワークの長手方向の軸の歪み(反り)を低減することができる長尺部材の焼き入れ装置である。従って、第2本発明装置が備える加熱手段及び冷却手段は、上述した第1本発明装置が備える加熱手段及び冷却手段とは異なり、その中にワークとしての長尺部材を通すことが可能な中空の形状(例えば、ドーナツ状等)を有する必要は無い。
運搬手段は、長尺部材と前記焼き入れ手段とを前記長尺部材の長手方向において相対的に移動させる。第2本発明装置が備える運搬手段は、上述した第1本発明装置が備える運搬手段と基本的に同様の構成を有するので、ここでは説明を繰り返さない。
制御手段は、前記加熱手段によって前記長尺部材を加熱し、その後、前記冷却手段によって前記長尺部材を冷却することにより、前記長尺部材の少なくとも一部に焼き入れ処理を施す。例えば、加熱手段として誘導加熱コイルを使用する場合、制御手段は、誘導加熱コイルに通電することにより長尺部材を加熱する。一方、冷却手段は、長尺部材に対する焼き入れ手段の移動方向において加熱手段の後ろ側に隣接して設けられる。これにより、冷却手段は、長尺部材と焼き入れ手段とが相対的に移動するにつれて、加熱手段によって加熱された長尺部材を急冷することができる。尚、長尺部材を冷却するための冷媒(例えば、水)は、加熱手段が稼働している期間においてのみ噴出されるようにしてもよく、或いは、第2本発明装置の稼働中は継続的に噴出されるようにしてもよい。
但し、前記焼き入れ手段は、(詳しくは後述される)フランジ部側壁部とが交わる2つの角部である2つの第1角部及び前記側壁部と前記天板部とが交わる2つの角部である2つの第2角部のうちの少なくとも何れか1つの角部である対象角部に所定の間隔を空けて対向するように配置されている。即ち、第2本発明装置が備える焼き入れ手段は、2つの第1角部及び2つの第2角部のうち、焼き入れ処理を施す対象となる角部(対象角部)に所定の間隔を空けて対向するように配置されている。これにより、第2本発明装置においては、対象角部近傍の領域(即ち、対象角部及びその近傍の領域。以降、単に「対象角部領域」と称される場合がある。)のみに対して焼き入れ処理を部分的に施すことができる。
加えて、第2本発明装置は、倣いゲージと、倣い手段と、を更に備える。
倣いゲージは、前記長尺部材の前記対象角部からなる稜線形状に対応する形状を有し且つ前記長尺部材と同一の姿勢にて保持された部材である。典型的には、倣いゲージは、ワークとしての長尺部材と同一の形状を有する部材である。しかしながら、倣いゲージは、所定の姿勢にて保持された状態において、後述するガイド部(「倣い治具」とも称される)によってトレースされることにより、対象角部の位置を特定することができる限り、必ずしも長尺部材と完全に同一の形状を有する必要は無い。このような倣いゲージは、例えば、ワークとしての長尺部材そのものであってもよく、或いは、切削加工等によって長尺部材とは別個に作製された部材であってもよい。
尚、長尺部材と加熱手段とが相対的に移動する際に、長尺部材と加熱手段との位置関係が偏ったり長尺部材と加熱手段とが干渉したりすると、長尺部材の焼き入れ処理が不均一となったり加熱手段が破損したりする虞があるので、長尺部材と加熱手段との位置関係は厳密に制御される必要がある。従って、倣いゲージは、ワークとしての長尺部材と同一の姿勢にて保持される必要がある。倣いゲージと長尺部材とを同一の姿勢にて保持するための手法は特に限定されない。
例えば、第2本発明装置による焼き入れ処理の直前に長尺部材が製造される製造装置から産業用ロボットによって長尺部材を取り出し、第2本発明装置に取り付ける場合、上記産業用ロボットによって第2本発明装置に取り付けられる長尺部材の姿勢は常に同じである。従って、上記姿勢と同じ姿勢にて倣いゲージを保持することにより、ワークとしての長尺部材と同一の姿勢にて倣いゲージを保持することができる。一方、例えば、長尺部材を手作業によって第2本発明装置に取り付ける場合は、上記のように産業ロボットを用いる場合と比べて、第2本発明装置に取り付けられる長尺部材の姿勢を常に同じにすることは困難である。このような場合は、例えば、第2本発明装置において長尺部材を保持する機構(例えば、チャック)に設けられた凸部が嵌合する凹部(例えば、切り欠き等)を長尺部材の被保持部(例えば、端部)に形成しておけばよい。これにより、第2本発明装置に長尺部材を取り付ける際に長尺部材の姿勢を常に同じにすることができる。
倣い手段は、ガイド部によってトレースされる倣いゲージの形状を焼き入れ手段に伝達する部材である。これにより、焼き入れ手段は、ガイド部によってトレースされる倣いゲージの形状に沿って移動することにより、長尺部材の形状に沿って移動することができる。その結果、長尺部材と加熱手段との位置関係が偏ったり長尺部材と加熱手段とが干渉したりすることが回避される。そのため、倣い手段は、長尺部材及び倣いゲージの長手方向のみならず同長手方向に直交する方向においても長尺部材及び倣いゲージに対して相対的に移動可能に構成される。
更に、倣い手段は、運搬手段により長尺部材に対して相対的に移動するように構成される。具体的には、例えば、倣い手段は、第1本発明装置について上述した台座と同様の台座に連結されることにより、運搬手段が台座を移動させるのに伴って、長尺部材に対して相対的に移動する。運搬手段により長尺部材に対して相対的に移動するように倣い手段を構成するための具体的な機構としては、例えば、第1本発明装置について上述した機構と同様の機構を採用することができる(当該機構についての詳細な説明は割愛する)。これにより、長尺部材の屈曲が二次元的である場合、倣い手段は、長尺部材及び倣いゲージの長手方向のみならず同長手方向に直交する水平方向においても長尺部材及び倣いゲージに対して相対的に移動可能に構成され得る。更に、長尺部材の屈曲が三次元的である場合、倣い手段は、長尺部材及び倣いゲージの長手方向のみならず同長手方向に直交する水平方向及び同長手方向に直交する鉛直方向においても長尺部材及び倣いゲージに対して相対的に移動可能に構成され得る。
倣い手段の一端には、倣いゲージに沿って摺動可能に係合するガイド部が保持されている。ガイド部は、倣いゲージに沿って摺動可能に係合することが可能である限り、特に限定されない。例えば、ガイド部は、2つ以上のガイドローラを備え、これらのガイドローラによって倣いゲージを嵌装する。これにより、運搬手段が長尺部材と倣い手段とを相対的に移動させるのに伴って、倣いゲージの形状をガイド部がトレースすることができる。
一方、倣い手段の他端には、焼き入れ手段が保持されている。従って、ガイド部によってトレースされる倣いゲージの形状は、倣い手段を介して焼き入れ手段に伝達される。その結果、焼き入れ手段は、ガイド部によってトレースされる倣いゲージの形状に沿って移動するので、長尺部材の対象角部からなる稜線形状に沿って移動することができる。
上記によれば、ガイド部が倣いゲージに沿って長尺部材及び倣いゲージの長手方向に直交する方向にも移動することにより、焼き入れ手段が長尺部材の対象角部からなる稜線形状に精度良く沿って移動する。即ち、第2本発明装置によれば、簡便な機械的手段によって長尺部材の対象角部と加熱手段との位置関係を厳密に制御することが可能である。更に、段替えに際しては、倣いゲージを新たなワークに対応したものに交換することにより容易に対応可能である。加えて、このように簡便な機械的手段を用いるので、第2本発明装置は、産業用ロボットを使用する場合と比較して、低コスト及び省スペースを同時に達成可能である。
ところで、第2本発明装置における加熱手段による対象角部の加熱及び冷却手段による対象角部の冷却をより効率的に行う観点からは、加熱手段及び冷却手段の対象角部に対向する面である焼き入れ面が、対象角部の加熱手段及び冷却手段に対向する面である被焼き入れ面に沿った形状を有することが望ましい。従って、第2本発明装置において、前記加熱手段及び前記冷却手段の前記対象角部に対向する面である焼き入れ面は、前記対象角部の前記加熱手段及び前記冷却手段に対向する面である被焼き入れ面に沿った形状を有するように構成され得る。これによれば、第2本発明装置における加熱手段による対象角部の加熱及び冷却手段による対象角部の冷却をより効率的に行うことができる。
好ましくは、上記被焼き入れ面は、対象角部の外側の面である。「対象角部の外側」とは、対象角部を構成する2つの部材(天板部と側壁部との組み合わせ及び/又は側壁部とフランジ部との組み合わせ)のそれぞれの主面の法線が交差し得る側(これら2つの部材がなす角度が180°よりも小さい側)ではなく、これらの法線が交差し得ない側(これら2つの部材がなす角度が180°よりも大きい側)を指す。この場合、上記焼き入れ面は、対象角部を外側から挟み込むような形状となる。
上記により、加熱手段から対象角部に与えられる熱量及び冷却手段によって対象角部から奪われる熱量をより大きくすることができる。具体的には、例えば、加熱手段として誘導加熱コイルを使用し且つ冷却手段として冷却ジャケットを使用する場合、誘導加熱コイルから発生される電磁波及び冷却ジャケットから噴射される冷媒(例えば、水)を対象角部に集中させることができる。その結果、第2本発明装置における加熱手段による対象角部の加熱及び冷却手段による対象角部の冷却をより一層効率的に行うことができる。尚、典型的には、対象角部を構成する2つの部材は実質的に直交する。この場合、上記「焼き入れ面」(及び上記「被焼き入れ面」)は略L字状の屈曲面となる。
尚、上述した第1本発明装置と同様に、第2本発明装置においてもまた、前記制御手段が前記倣い手段に保持され得る。また、第2本発明装置もまた、前記制御手段と連結されて前記制御手段の重さと少なくとも部分的に釣り合うように配設された重りを更に備え得る。更に、第2本発明装置もまた、前記長尺部材を下方から支承可能であると共に下方へ退避可能な複数の支承部材が、前記長尺部材の前記長手方向に沿って間隔を空けて配置され得る。この場合、前記複数の支承部材のそれぞれが、前記焼き入れ手段が所定の距離以内に接近しているときには下方へ退避し、前記焼き入れ手段が所定の距離以内に接近していないときには前記長尺部材を下方から支承するように構成され得る。加えて、第2本発明装置においてもまた、前記焼き入れ手段が、前記長手方向において前記加熱手段の両側に冷却手段をそれぞれ備え得る。
ところで、冒頭で述べたように、本発明は、本発明に係る焼き入れ装置を用いる長尺部材の焼き入れ処理方法にも関する。それらの長尺部材の焼き入れ処理方法のうち、上述した種々の第2本発明装置を用いる焼き入れ処理方法(以降、「第2本発明方法」と称される場合がある。)は、前記運搬手段により前記長尺部材と前記倣い手段とを相対的に移動させることにより前記長尺部材と前記焼き入れ手段とを前記長手方向において相対的に移動させながら前記加熱手段によって前記対象角部を加熱した後に前記冷却手段によって前記対象角部を冷却することにより前記対象角部に焼き入れ処理を施す焼き入れ工程を含む、焼き入れ方法である。
第2本発明方法においては、上記のように、上述した種々の第2本発明装置の何れかを用いて、ハット状断面を有する長尺部材の角部領域に対して焼き入れ処理が施される。第2本発明装置においては、上述したように、ガイド部が倣いゲージに沿って長尺部材及び倣いゲージの長手方向に直交する方向にも移動することにより、焼き入れ手段が長尺部材の対象角部からなる稜線形状に精度良く沿って移動する。
従って、第2本発明方法によれば、簡便な機械的手段によって長尺部材の対象角部と加熱手段との位置関係を厳密に制御することが可能である。更に、段替えに際しては、倣いゲージを新たなワークに対応したものに交換することにより容易に対応可能である。加えて、このように簡便な機械的手段を用いるので、第2本発明方法は、産業用ロボットを使用する従来技術に係る焼き入れ方法と比較して、低コスト及び省スペースを同時に達成可能である。
好ましくは、第2本発明方法において、前記対象角部は、前記2つの第1角部及び前記2つの第2角部の両方を含むことが望ましい。換言すれば、第2本発明方法において、ハット状断面の全ての角部に対して焼き入れ処理を施すことが望ましい。この場合、前記焼き入れ工程は、以下に示す第1工程及び第2工程を含む。
第1工程:前記運搬手段により前記長尺部材と前記倣い手段とを相対的に移動させることにより前記長尺部材と前記焼き入れ手段とを前記長手方向において相対的に移動させながら前記加熱手段によって前記2つの第1角部を加熱した後に前記冷却手段によって前記2つの第1角部を冷却することにより前記2つの第1角部に焼き入れ処理を施す。
第2工程:前記運搬手段により前記長尺部材と前記倣い手段とを相対的に移動させることにより前記長尺部材と前記焼き入れ手段とを前記長手方向において相対的に移動させながら前記加熱手段によって前記2つの第2角部を加熱した後に前記冷却手段によって前記2つの第2角部を冷却することにより前記2つの第2角部に焼き入れ処理を施す。
上記によれば、運搬手段により長尺部材と倣い手段とを相対的に移動させることにより長尺部材と焼き入れ手段とを長手方向において相対的に移動させながらハット状断面の4つの角部(2つの第1角部及び2つの第2角部)の全てに焼き入れ処理を施すことができる。その結果、ハット状断面を有する長尺部材の焼き入れ処理後の長手方向の軸の歪み(反り)を低減しつつ、当該長尺部材の機械的強度を効果的に高めることができる。
尚、焼き入れ工程における第1工程及び第2工程は同時に実行されても或いは逐次的に実行されてもよい。第1工程及び第2工程を逐次的に実行する場合は、前記焼き入れ工程において、前記第1工程を実行した後に前記第2工程を実行することが望ましい。即ち、ハット状断面を有する長尺部材(ワーク)の裏側の角部(第1角部)の後に表側の角部(第2角部)に焼き入れ処理を施すことが望ましい。
上記によれば、第1工程における(フランジ部と側壁部とが交わる2つの角部である)2つの第1角部に対する焼き入れ処理により表側(即ち、ハット状断面の天板側)が凸状になるように長尺部材(ワーク)の長手方向の軸に歪み(反り)が発生しても、次の第2工程の実行により(側壁部と天板部とが交わる2つの角部である)2つの第2角部に対する焼き入れ処理により第1工程とは反対方向の歪み(反り)が発生する。その結果、第1工程において発生した歪み(反り)が第2工程において発生した歪み(反り)によって少なくとも部分的に相殺されて、長尺部材(ワーク)の長手方向の軸の歪み(反り)が低減される。
尚、焼き入れ工程において第2工程を実行した後に第1工程を実行した場合、第2工程における第2角部に対する焼き入れ処理により裏側(即ち、ハット状断面の天板側とは反対側)が凸状になるように長尺部材(ワーク)の長手方向の軸に過大な歪み(反り)が発生してしまい、この過大な歪み(反り)が次の第1工程において発生した歪み(反り)によって十分に相殺されず、長尺部材(ワーク)の長手方向の軸の歪み(反り)が十分に低減されない虞がある。
以上、本発明に係る長尺部材の焼き入れ装置及び焼き入れ方法の幾つかの実施態様について説明してきたが、本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
本発明の第1実施形態に係る焼き入れ装置(第1装置)を正面側から見た斜視図である。 焼き入れ処理の実行開始時における第1装置の左側面図(a)及びガイド部の拡大図(b)である。 焼き入れ処理の実行開始時における第1装置の平面図である。 焼き入れ処理の実行開始時における第1装置の正面図である。 焼き入れ処理の実行途中における第1装置の平面図である。 焼き入れ処理の実行途中における第1装置の正面図である。 焼き入れ処理の実行終了時における第1装置の平面図である。 焼き入れ処理の実行終了時における第1装置の正面図である。 本発明の第2実施形態に係る焼き入れ装置(第2装置)を正面側から見た斜視図である。 第2装置を背面側から見た斜視図である。 第2装置が備えるガイド部の拡大図である。 ハット状断面を有する長尺部材の構造を示す模式的な(a)斜視図及び(b)断面図である。 第2本発明装置の1つの実施形態に係る焼き入れ装置の一例(第3装置)が備える焼き入れ手段の構成を示す模式的な斜視図である。 第3装置が備え得る焼き入れ手段の他の構成を例示する模式的な斜視図である。 第4装置が備えるガイド部の拡大図である。 第2本発明方法の1つの実施形態に係る焼き入れ方法の一例(第2方法)の開始前の長尺部材及び焼き入れ手段の配置を示す模式的な(a)側面図及び(b)正面図である。 第2方法に含まれる第1工程の実行後の長尺部材及び焼き入れ手段の配置を示す模式的な(b)正面図及び(a)線A−Aによる断面図である。 第2方法に含まれる第2工程の実行後の長尺部材及び焼き入れ手段の配置を示す模式的な(b)正面図及び(a)線B−Bによる断面図である。
《第1実施形態》
以下、上述した第1本発明装置の1つの実施形態に係る焼き入れ装置の一例(以下、「第1装置」とも称呼される。)」につき、図面を参照しながら詳しく説明する。本例においては、曲がり管の屈曲が二次元的である場合について説明する。
尚、以下の説明においては、曲がり管及び倣いゲージの長手方向をX軸方向とし、水平面内においてX軸方向に直交する方向をY軸方向とし、これらX軸及びY軸に直交する鉛直方向をZ軸方向と称する。また、X軸方向については本発明装置を正面から見て右向きが正方向とし、Y軸方向については本発明装置を正面から見て手前向き(観察者に向かう方向)が正方向とし、Z軸方向については本発明装置を正面から見て上向き(鉛直方向上向き)が正方向とする。何れかの図面において符号が既に示されていることが明らかな構成要素については、他の図面において符号を繰り返し示さない場合がある。
<構成>
図1及び図2は、それぞれ第1装置100の全容を示す斜視図及び左側面図である。第1装置100は、焼き入れ手段110と、運搬手段130と、制御手段140と、を備える。尚、本例においては、サーボモータ131、ボールネジ132、ガイドレール133及び台座163によって運搬手段が構成されており、運搬手段としての番号「130」は図中に表示されていない。尚、第1装置100において、運搬手段130、制御手段140、倣いゲージ150及び倣い手段160は、ベース101の上に配置されている。
焼き入れ手段110は、加熱手段111及び冷却手段112を含む。焼き入れ手段110は、加熱手段111を挟んで反対側にも冷却手段113を更に含む。即ち、焼き入れ手段110は、曲がり管120の長手方向(X軸方向)における加熱手段111の両側に冷却手段112及び113をそれぞれ備える。これにより、第1装置100は焼き入れ手段110をX軸方向において往復させるときに、その往路及び復路の何れにおいても焼き入れ処理を行うことができる。但し、このように焼き入れ手段110が加熱手段111の両側に冷却手段112及び113を備えることは本発明装置の必須の要件ではない。
運搬手段130は、ワークとしての曲がり管120と焼き入れ手段110とを相対的に移動させる。具体的には、運搬手段130は、サーボモータ131によってボールネジ132を回転させる。ボールネジ132は台座163に取り付けられたナット(図示せず)と係合しており、ボールネジ132の回転によりガイドレール133に沿って台座163がX軸方向に移動するように構成されている。ガイドレール133は、曲がり管120の長手方向(X軸方向)に平行である。一方、焼き入れ手段110を保持するアーム161は(制御手段140等を介して)台座163と連結されている。従って、運搬手段130は、ワークとしての曲がり管120と焼き入れ手段110とを相対的に移動させることができる。本例においては、曲がり管120はチャック121及び122によって固定されており、上記のように焼き入れ手段110が移動する。
制御手段140は、運搬手段130によって相対的に移動された曲がり管120と焼き入れ手段110とが所定の位置関係となったときに、加熱手段111によって曲がり管120を加熱し、その後、冷却手段112又は113によって曲がり管120を冷却する。これにより、制御手段140は、曲がり管120の所望の部分に焼き入れ処理を施す。
尚、本例においては、加熱手段111は誘導加熱コイルを備え、制御手段140が備える電源装置によって供給される電力を使用する誘導加熱によって曲がり管120を加熱する。一方、冷却手段112及び113は、曲がり管120に対向する面に複数の孔が穿設され且つ当該複数の孔から曲がり管120に向かって冷却水が噴出されるシャワー式の冷却ジャケットである。加熱手段111も、冷却手段112及び113も、その中に曲がり管120を通すことができるように、曲がり管120同心円状のドーナツ型の形状を有する。
図1においては部分的にガイドレール133の陰となっているが、第1装置100においては、曲がり管120の軸線形状と同一の軸線形状を有する部材である倣いゲージ150が曲がり管120と同一の姿勢にて保持される。尚、本例においては、ワークとしての曲がり管120の一方の端部に切り欠き部を設け、当該端部を保持するチャック121又は122に突起を設けて、これらの切り欠き部と突起とを嵌合させることにより、倣いゲージ150の姿勢と曲がり管120の姿勢とを揃えた。
更に、第1装置は、曲がり管120及び倣いゲージ150の長手方向(X軸方向)のみならず同長手方向に直交する方向(Y軸方向)においても曲がり管120及び倣いゲージ150に対して相対的に移動可能に構成された部材である倣い手段160を更に備える。図2に示した側面図から判り易いように、倣い手段160は、ガイド部190によってトレースされた倣いゲージ150の形状を、アーム168、台座165’、制御手段140及びアーム161を経て、焼き入れ手段110に伝える。即ち、焼き入れ手段110及びガイド部190は、倣い手段160の両端にそれぞれ保持されている。
台座165’は別の台座165の上にY軸方向に配設されたガイドレール164’と係合してY軸方向に移動可能に載置されており、台座165もまた更に別の台座163の上にY軸方向に配設されたガイドレール164と係合してY軸方向に移動可能に載置されている。そして、台座163は、上述したように、運搬手段130によってX軸方向に移動する。このような構成により、倣い手段160は、曲がり管120及び倣いゲージ150の長手方向(X軸方向)のみならず同長手方向に直交する方向(Y軸方向)においても曲がり管120及び倣いゲージ150に対して相対的に移動することができる。
尚、倣い手段160をY軸方向に移動可能とする目的のみを達成するには、Y軸方向に移動可能に載置された台座は1つあればよい。本例においては、上記のように2つの台座165及び165’がY軸方向に移動可能に載置されているので、例えば、何れか一方の台座をY軸方向に所定量ずらした状態で固定することにより、焼き入れ手段110とガイド部190との位置合わせ(アジャスト)等の用途に活用することができる。
尚、上記ガイド部190は、図1においては制御手段140の陰に隠れているが、上述したように、倣い手段160の一端に保持されており、焼き入れ手段110が倣い手段160の他端に保持されている。
ガイド部190は、倣いゲージ150に沿って摺動可能に係合する。本例においては、図2の(b)に示したように、ガイド部190は、保持部材191に平行に設けられた2本の軸192a及び192bのそれぞれに回転可能に取り付けられたローラ193a及び193bによって構成されている。
尚、冒頭で述べたように、本例においては、曲がり管120の屈曲は二次元的である。具体的には、曲がり管120をX−Y平面においた場合、曲がり管120は同X−Y平面内では屈曲しているが、同X−Y平面に直交する方向(即ち、Z軸方向)には屈曲していない。従って、ガイド部190は、X−Y平面内における倣いゲージ150の形状(屈曲)をトレースできればよい。換言すれば、倣いゲージ150は、X−Y平面内における形状(屈曲)が曲がり管120と同じであれば、その他の形状は特に限定されない。
従って、本例における倣いゲージ150は、X−Y平面内による曲がり管120の断面に対応する板状の部材である。このため、図2の(b)に示したように、ガイド部190のローラ193a及び193bには、板状の倣いゲージ150から外れないように、つばが設けられている。
更に、第1装置100は、前述した押圧手段185を備える。押圧手段185は、台座165に取り付けられたアーム186によって保持されており、焼き入れ手段110の近傍において曲がり管120を上方から下方に向かって押圧する。押圧手段185は、焼き入れ手段110とは曲がり管120の長手方向において若干(前に)離れた位置にある。従って、曲がり管の屈曲により、焼き入れ手段110とはY軸方向における位置が若干ずれる場合がある。押圧手段185は、Y軸方向に移動可能な台座165に連結されているので、このような位置のずれが生じても台座165と台座165’とがずれることにより、焼き入れ手段110とは独立に曲がり管120の形状に追従することができる。但し、前述したように、押圧手段は本発明装置の必須の構成要件ではない。
<焼き入れ処理>
上記のような構成を有する第1装置100によって行われる焼き入れ処理につき、以下に詳しく説明する。
<準備>
先ず、図3の平面図及び図4の正面図に示したように、焼き入れ手段110をX軸の負方向の端に待機させた。そして、ワークとしての曲がり管120を加熱手段111並びに冷却手段112及び113の中に通し、その両端をチャック121及び122によって保持(把持)した。この際、曲がり管120の端部に形成された切り欠き部をチャック121に形成された凸部に嵌合させることにより曲がり管120の姿勢を規定した。
更に、焼き入れ処理における加熱により曲がり管120が撓むことを防止することを目的として、支承部材181乃至184をベース102の上部に配置した。更に、支承部材181乃至184の受け部をエアコンプレッサ(図示せず)から供給される空圧によって上昇させて、曲がり管120を支承させた。尚、図4においては、支承部材181の受け部は下降している。しかしながら、焼き入れ手段110の移動が開始した後に焼き入れ手段110と支承部材181との距離が所定の距離以下になる迄に時間的余裕がある場合は、支承部材181の受け部を上昇させておいてもよい。
一方、ガイド部190のローラ193a及び193bを(図2の(b)に示したように)倣いゲージ150に当接させた。倣いゲージ150については、その下面を複数のスタンド153によって支承した。
<作動>
次に、サーボモータ131を作動させてボールネジ132を回転させることにより、ガイドレール133に沿って台座163をX軸の正方向に向かって移動させた。この移動途中の状態を、図5の平面図及び図6の正面図に示した。図6に示したように、焼き入れ手段110の位置に応じて支承部材181乃至184のそれぞれが退避するので、前述したような焼き入れ手段110と支承部材との181乃至184との干渉が回避される。
上記のように焼き入れ手段110が移動している間、倣い手段160は、X軸の正方向に向かって移動しつつ、ガイド部190によってトレースされた倣いゲージ150の形状に従ってY軸方向にも移動する。これにより、焼き入れ手段110は、曲がり管120に精度良く沿って移動することができる。
この間、制御手段140は、曲がり管120の焼き入れ処理を施すべき箇所に焼き入れ手段110が位置しているときには加熱手段111に電力を供給し、そうでないときには電力を供給しない。これにより、第1装置100は、曲がり管120の所望の部分のみに焼き入れ処理を施すことができる。
上記により、第1装置100においては、曲がり管120と加熱手段111とが相対的に移動する際に、曲がり管120と加熱手段111との位置関係が偏ったり、ましてや曲がり管120と加熱手段111とが干渉したりすることが回避される。その結果、曲がり管120の焼き入れ処理が不均一となったり、加熱手段が破損したりする虞を低減することができる。
上記のように焼き入れ手段110をX軸の正方向に向かって移動させるときには、焼き入れ手段110移動方向において加熱手段111の後ろ側(X軸の負方向側)にある冷却手段112のみを作動させ、加熱手段111の前側(X軸の正方向側)にある冷却手段113は作動させない。
図7の平面図及び図8の正面図に示したように、焼き入れ手段110がX軸の正方向の端に到達すると、焼き入れ処理は終了する。その後、別の曲がり管120に焼き入れ処理を施す場合は、曲がり管120の両端をチャック121及び122から外し、焼き入れ処理済みの曲がり管120を第1装置100から取り出す。次の曲がり管120をチャック121及び122に保持させたら、サーボモータ131を上記と反対の方向に作動させて焼き入れ手段110をX軸の負方向に向かって移動させつつ、上記と同様の焼き入れ処理を行うことができる。
当該処理済みの曲がり管120に対して焼き戻し処理等を行う場合もまた、サーボモータ131を上記と反対の方向に作動させて焼き入れ手段110をX軸の負方向に向かって所定の速度にて移動させつつ、所定の加熱温度及び冷却効率にて、曲がり管120に熱処理を施すことができる。
何れにせよ、焼き入れ手段110をX軸の負方向に向かって移動させる場合は、焼き入れ手段110移動方向において加熱手段111の後ろ側(X軸の正方向側)にある冷却手段113のみを作動させ、加熱手段111の前側(X軸の負方向側)にある冷却手段112は作動させない。
尚、本例においては、上記のように曲がり管120及び倣いゲージ150を固定し、焼き入れ手段110及びガイド部190をX軸方向に移動させた。しかしながら、前述したように、焼き入れ手段110及びガイド部190を固定しておき、曲がり管120及び倣いゲージ150を移動させてもよい。
<効果>
上記のように、第1装置100によれば、簡便な機械的手段によって曲がり管120と加熱手段111との位置関係を厳密に制御することが可能である。更に、段替えに際しては、倣いゲージ150を新たなワークに対応したものに交換することにより容易に対応可能である。加えて、このように簡便な機械的手段を用いるので、第1装置100は、産業用ロボットを使用する場合と比較して、低コスト及び省スペースを同時に達成することが可能である。
《第2実施形態》
以下、上述した第1本発明装置のもう1つの実施形態に係る焼き入れ装置の一例(以下、「第2装置」とも称呼される。)」につき、図面を参照しながら詳しく説明する。本例においては、曲がり管の屈曲が三次元的である場合について説明する。
<構成>
図9及び図10は、それぞれ第2装置200の全容を示す正面側から見た斜視図及び背面側から見た斜視図である。第2装置200は、上記のように曲がり管の屈曲が三次元的であるためにZ軸方向における倣いを可能とする機構を有する点を除き、基本的には第1装置100と同様の構成を有する。従って、以下の説明においては、第1装置100とは異なる構成については詳しく説明し、第1装置100と同様の構成については説明を省略する場合がある。
先ず、第2装置200において用いる倣いゲージ150は三次元的な屈曲を有するので、第1装置100において用いた二次元的な屈曲に特化した板状の倣いゲージ150とは異なり、その両端部をホルダ151及び152によって支持・固定される。
第2装置200における倣い手段160はZ軸方向にも移動可能である必要があるので、第1装置100において言及した台座165’の上にスライダ166及びパンタグラフ167を配設し、その上に制御手段140を載置した。スライダ166及びパンタグラフ167は、鉛直方向(Z軸方向)の動きは許容するものの水平方向の動き(X−Y平面内の動き)は許容しないための機構であり、Z軸方向における駆動力を提供するものではない。これにより、第2装置200における倣い手段160は、X軸、Y軸及びZ軸の全ての方向において移動可能である。
更に、第2装置200は、制御手段140の質量に起因して倣い手段160にかかる荷重を軽減して倣い手段160のZ軸方向における動きをスムースにすることを目的として、重り(ウェイト)及びその吊り下げのための機構等を備える。
具体的には、第2装置200はフレーム170を備えており、このフレーム170の上部には、X軸方向に平行なガイドレール171が設けられている。更に、このガイドレール171と係合してX軸方向に移動可能な別のガイドレール172が載置される。このガイドレール172はY軸方向に平行なガイドレールである。加えて、このガイドレール172と係合してY軸方向に移動可能な台座173の四隅には4個の滑車(プーリ)174がそれぞれ配設されている。これらの滑車174にはワイヤ175が掛けられており、その一方の端には制御手段140(の下面の板)が、その他方の端には重り176が、それぞれ連結されている。
上記のような機構により、制御ユニット140の質量と重り176の質量とが釣り合うので、制御ユニット140が大きな質量を有するにも拘わらず、倣いゲージ150をトレースするガイド部190の動きによって、制御ユニット140を含む倣い手段160及び焼き入れ手段110をX軸、Y軸及びZ軸の全ての方向において円滑に動かすことができる。尚、制御ユニット140の動きに伴って重り176が揺動する場合は、例えば重り176の動きを鉛直方向に規制するためのレール等を更に設けてもよい。
ところで、第1装置100は二次元的な屈曲を有する曲がり管120の焼き入れ処理を想定したものであるが、第2装置200は三次元的な屈曲を有する曲がり管120の焼き入れ処理を想定したものである。そのため、第2装置200のガイド部190は、第1装置100のガイド部190とは異なり、上記のように三次元的な屈曲を有する倣いゲージ150を正確にトレースする必要がある。従って、第2装置200が用いる倣いゲージ150としては、一般的には、焼き入れ処理の対象となる曲がり管120と同一の形状を有するものが使用される。
従って、第2装置200のガイド部190もまた、三次元的な形状の変化を正確にトレースすることができるように構成されている必要がある。例えば、曲がり管120と同一の形状を有する管状の倣いゲージ150を使用する場合、ガイド部190は、図11に例示したように、少なくとも三方向から倣いゲージ150に当接するものであることが望ましい。具体的には、図11に例示したガイド部190は、保持部材191に取り付けられたステー194aに設けられた軸192aに回転可能に取り付けられたローラ193aと、保持部材191に取り付けられたステー194bに設けられた軸192b及び軸192cに回転可能にそれぞれ取り付けられたローラ193b及び193cによって構成されている。
加えて、第2装置200においては、曲がり管120を支承する支承部材の受け部の上限位置を曲がり管120の保持姿勢に応じて個々に制御可能であることが望ましい。
<作動>
焼き入れ処理における第2装置200の作動については、第1装置100の作動と基本的に同じであるので、ここでの説明は省略する。
<効果>
上記のように、第2装置200によれば、三次元的な屈曲を有する曲がり管120についても、簡便な機械的手段によって曲がり管120と加熱手段111との位置関係を厳密に制御することが可能である。更に、段替えに際しては、倣いゲージ150を新たなワークに対応したものに交換することにより容易に対応可能である。加えて、このように簡便な機械的手段を用いるので、第装置200は、産業用ロボットを使用する場合と比較して、低コスト及び省スペースを同時に達成することが可能である。
<補足>
ところで、冒頭で述べたように、曲がり管と加熱手段とが相対的に移動する際に曲がり管と加熱手段との位置関係が偏ると曲がり管の焼き入れ処理が不均一となる虞がある。しかしながら、例えば、焼き入れ処理済みの曲がり管の形状が所望の形状に対して僅かにずれている場合等において、曲がり管と加熱手段との位置関係を意図的に偏らせることにより、上記形状のずれを補正することができる場合がある。
従って、本発明の変形例に係る焼き入れ装置は,上述してきた技術的特徴に加えて、ワークとしての曲がり管と加熱装置との位置関係(例えば、加熱装置としての誘導加熱コイルの中を通る曲がり管の軸と誘導加熱コイルの軸との偏差等)を変更するアジャスタ機構等を備えていてもよい。
《第3実施形態》
以下、上述した第2本発明装置の1つの実施形態に係る焼き入れ装置の一例(以下、「第3装置」とも称呼される。)」につき、図面を参照しながら詳しく説明する。
<ハット状断面を有する長尺部材>
先ず、第3装置による焼き入れ処理の対象であるワークとしてのハット状断面を有する長尺部材1の構造を図12に示す。(a)は長尺部材1の斜視図であり、(b)は長尺部材1の長手方向(X軸方向)に直交する平面(Y−Z平面に平行な平面)による断面図である。
長尺部材1は、1つの天板部2と、2つの側壁部3と、2つのフランジ部4と、を備える。2つの側壁部3は、天板部2の両端から天板部2の2つの主面のうちの同じ一方の主面側(本例においてはZ軸の負方向側)にそれぞれ延在する。2つのフランジ部4は、2つの側壁部3の天板部2とは反対側(Z軸の負方向側)の端部から側壁部3に対して天板部2とは反対側(Y軸の正方向側及び負方向側)にそれぞれ延在する。図12において斜線によって示すように、長尺部材1の長手方向に直交する断面はハット状の形状を有している。
長尺部材1は、フランジ部4と側壁部3とが交わる2つの角部である2つの第1角部5(太い実線及び黒い丸印)と、側壁部3と天板部2とが交わる2つの角部である2つの第2角部6(太い破線及び白抜きの丸印)と、を有する。このような構造を有する長尺部材1は、例えば、超高張力鋼板にプレス加工を施すことによって成形することができる。
尚、図12においては、天板部2と側壁部3とがなす角度及び側壁部3とフランジ部4とがなす角度が何れも直角である例を示した。しかしながら、これらの角度の全て又は一部は必ずしも直角でなくてもよい。例えば、天板部2から遠ざかるにつれて2つの側壁部3が互いに遠ざかったり、逆に近付いたりするような角度にて、天板部2と側壁部3とが交わっていてもよい。また、側壁部3から遠ざかるにつれてフランジ部4が天板部2から遠ざかったり、逆に近付いたりするような角度にて、側壁部3とフランジ部4とが交わっていてもよい。
更に、図12においては、ハット状断面を有する長尺部材1の構造についての理解を容易にすることを目的として、長尺部材1の長手方向(X軸方向)の軸が屈曲していない例を示した。しかしながら、長尺部材1の長手方向の軸は長尺部材1の用途等に応じて二次元的又は三次元的に屈曲し得る。本例においては、長尺部材1の長手方向の軸がX−Y平面内において二次元的に屈曲している場合について説明する。
<第3装置の構成>
第3装置は、焼き入れ処理を施す対象であるワークとしての長尺部材が曲がり管ではなくハット状断面を有する長尺部材である点を除き、基本的には第1装置100と同様の構成を有する。従って、以下の説明においては、第1装置100とは異なる構成については詳しく説明し、第1装置100と同様の構成については説明を省略する場合がある。
具体的には、第3装置は、ハット状断面を有し且つその長手方向の軸が二次元的(即ち、X−Y平面内)においてのみ屈曲している長尺部材1において、焼き入れ処理後の当該長尺部材の長手方向の軸の歪み(反り)を低減しつつ、そのハット状断面の角部領域のみに対して焼き入れ処理を部分的に施す。尚、第3装置は、2つの第1角部5及び2つの第2角部6の合計4つの角部の近傍の領域(角部領域)の全てに対して焼き入れ処理を施す。即ち、第3装置においては、2つの第1角部5及び2つの第2角部6の合計4つの角部の全てが、焼き入れ処理を施す対象となる角部(対象角部)である。
(焼き入れ手段の構成)
そこで、図13に示すように、第3装置が備える焼き入れ手段110は、長尺部材1の2つの第1角部5に所定の間隔を空けて対向するようにそれぞれ配置された2つの焼き入れ手段110aと、長尺部材1の2つの第2角部6に所定の間隔を空けて対向するようにそれぞれ配置された2つの焼き入れ手段110bと、を備える。2つの焼き入れ手段110aは、2つの第1角部5のそれぞれに所定の間隔を空けて対向するように間隔を空けて、連結部材161aに固定されている。同様に、2つの焼き入れ手段110bは、2つの第2角部6のそれぞれに所定の間隔を空けて対向するように間隔を空けて、連結部材161bに固定されている。
更に、2つの連結部材161a及び161bは、第1角部5と第2角部6とのZ軸方向における位置の違いに応じて、2つの焼き入れ手段110a及び2つの焼き入れ手段110bがそれぞれ2つの第1角部5及び2つの第2角部6のそれぞれに所定の間隔を空けて対向するように、更なる連結部材161cによって互いに連結されている。尚、連結部材161cは、焼き入れ処理の実行時に長尺部材1と干渉しないように、Y−Z平面内において湾曲した形状を有する。
加えて、連結部材161cは、制御手段140等を介して台座163と連結されているアーム161に固定されている。従って、第1装置について前述したように、運搬手段130は、ワークとしての長尺部材1と焼き入れ手段110とを相対的に移動させることができる。即ち、第3装置においては、4つの対象角部の近傍の領域(対象角部領域)の全てに対して焼き入れ処理を施すことができる。尚、運搬手段130によって長尺部材1と焼き入れ手段110とを相対的に移動させるための構成及びその作動については、前述した第1装置と基本的に同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
本例においては、焼き入れ手段110a及び110bの何れにおいても、誘導加熱コイルを加熱手段として採用し、冷媒として水を使用する冷却ジャケットを冷却手段として採用した。また、個々の焼き入れ手段110aは、長尺部材1に対する焼き入れ手段110の進行方向(X軸の正方向)において、前側に加熱手段7を、後ろ側に冷却手段8を、それぞれ備える。同様に、個々の焼き入れ手段110bは、長尺部材1に対する焼き入れ手段110の進行方向において、前側に加熱手段9を、後ろ側に冷却手段10を、それぞれ備える。
更に、焼き入れ手段110a及び110bが備える加熱手段7及び9並びに冷却手段8及び10の対象角部(2つの第1角部5及び2つの第2角部6)に対向する面である焼き入れ面は、対象角部の形状に対応した(沿った)形状を有する。即ち、上記「焼き入れ面」は、対象角部の加熱手段7及び9並びに冷却手段8及び10に対向する面である被焼き入れ面に沿った形状を有する。具体的には、図13に示したように、第3装置の焼き入れ手段の焼き入れ面は、対象角部を外側から挟み込む略L字状の屈曲面となるように構成されている。
(倣いゲージ及び倣い手段の構成)
第3装置もまた、倣いゲージと、倣い手段と、を更に備える。倣いゲージは、長尺部材1の対象角部からなる稜線形状に対応する形状を有し且つ長尺部材1と同一の姿勢にて保持された部材である。倣い手段は、長尺部材1及び倣いゲージの長手方向(X軸方向)のみならず同長手方向に直交する方向(Y軸方向)においても長尺部材1及び倣いゲージに対して相対的に移動可能に構成された部材である。倣いゲージ及び倣い手段の構成及び作動については、前述した第1装置と基本的に同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
<効果>
上記によれば、ガイド部190が倣いゲージに沿って長尺部材1及び倣いゲージの長手方向に直交する方向にも移動することにより、焼き入れ手段110が長尺部材1の対象角部からなる稜線形状に精度良く沿って移動する。即ち、第3装置によれば、簡便な機械的手段によって長尺部材1と焼き入れ手段110との位置関係を厳密に制御しながら、ハット状断面の4つの対象角部の近傍の領域(対象角部領域)の全てに対して焼き入れ処理を施すことが可能である。更に、段替えに際しては、倣いゲージを新たなワークに対応したものに交換することにより容易に対応可能である。加えて、このように簡便な機械的手段を用いるので、第3装置は、産業用ロボットを使用する場合と比較して、低コスト及び省スペースを同時に達成することが可能である。
<補足>
ところで、上述したように、第3装置が備える個々の焼き入れ手段110a及び110bは、長尺部材1に対する焼き入れ手段110の進行方向(X軸の正方向)において、前側に加熱手段7及び9を、後ろ側に冷却手段8及び10を、それぞれ備える。しかしながら、焼き入れ手段110a及び110bは、加熱手段7及び9の後ろ側のみならず前側にも第2の冷却手段8及び10をそれぞれ備え得る。これによれば、長尺部材1の長手方向において焼き入れ手段110a及び110bを一方向に移動させるときのみならず、その逆方向に焼き入れ手段110a及び110bを移動させるときにも、焼き入れ処理(又は焼き戻し処理)を行うことができる。その結果、第3装置による長尺部材1の焼き入れ処理の効率を大幅に高めることができる。
また、上記説明においては、2つの第1角部5及び2つの第2角部6の合計4つの角部の全てを第3装置による焼き入れ処理の対象角部とした。しかしながら、2つの焼き入れ手段110a及び2つの焼き入れ手段110bのうちの一部のみを稼働させることにより、4つの角部の一部のみを対象角部とすることもできる。これによれば、4つの角部の全て又は一部を複数回に分けて、逐次的に焼き入れ処理に付すこともできる。
更に、例えば図14の(a)に示すように、2つの第1角部5に対して焼き入れ処理を施すことができる焼き入れ手段110aをアーム161に固定して、2つの第1角部5の何れか一方のみ又は両方に対してのみ焼き入れ処理を施すこともできる。同様に、例えば図14の(b)に示すように、2つの第2角部6に対して焼き入れ処理を施すことができる焼き入れ手段110bをアーム161に固定して、2つの第2角部6の何れか一方のみ又は両方に対してのみ焼き入れ処理を施すこともできる。また、これらの焼き入れ処理を組み合わせて、4つの角部の全て又は一部を複数回に分けて、逐次的に焼き入れ処理に付すこともできる。
加えて、図14に示した焼き入れ手段110においては、手前側(Y軸の正方向側)及び奥側(Y軸の負方向側)の両方に2つの焼き入れ手段110a及び110bがそれぞれ配設されている。しかしながら、これら2つの焼き入れ手段110a及び110bのうち何れか一方のみを配設して、4つの角部のうちの1つの角部のみに対して個別に焼き入れ処理を施すことができるように焼き入れ手段110を構成してもよい。これによれば、例えば、天板部2の幅(Y軸方向における寸法)が一定ではない場合においても、各角部に対して個別に焼き入れ処理を施すことができる。
更には、図14に示した焼き入れ手段110においては、2つの焼き入れ手段110a及び110bが連結部材161a及び161bに対してそれぞれ一定の間隔にて固定されている。しかしながら、2つの焼き入れ手段110a及び110bが連結部材161a及び161bに対してY軸方向においてそれぞれ独立に移動可能に取り付け、ガイド部190が備えるローラ193a及び193bが保持部材191に対してY軸方向においてそれぞれ独立に移動可能に取り付け、更に対応する焼き入れ手段と上記ローラとの対のそれぞれに個別の倣い手段160を設けることにより、天板部2の幅が一定ではない場合においても2つの第1角部5及び2つの第2角部6に対して同時に焼き入れ処理を施すことができるように構成することもできる。
《第4実施形態》
以下、上述した第2本発明装置のもう1つの実施形態に係る焼き入れ装置の一例(以下、「第4装置」とも称呼される。)」につき、図面を参照しながら詳しく説明する。本例においては、長尺部材1の屈曲が三次元的である場合について説明する。
<構成>
第4装置は、上記のように長尺部材1の屈曲が三次元的であるためにZ軸方向における倣いを可能とする機構を有する点を除き、基本的には第3装置と同様の構成を有する。従って、以下の説明においては、第3装置とは異なる構成については詳しく説明し、第3装置と同様の構成については説明を省略する場合がある。
先ず、第4装置による焼き入れ処理の対象となるワークである長尺部材1は三次元的な屈曲を有するので、第1装置(及び第3装置)において用いた二次元的な屈曲に特化した板状の倣いゲージ150とは異なり、長尺部材1そのものが倣いゲージとして採用され、その両端部をホルダ(151及び152)によって支持・固定される。
第4装置における倣い手段はZ軸方向にも移動可能である必要があり、前述した第2装置100における倣い手段160と同様の構成を有する。即ち、第4装置における倣い手段は、X軸、Y軸及びZ軸の全ての方向において移動可能である。
更に、第4装置のガイド部もまた、三次元的な形状の変化を正確にトレースすることができるように構成されている必要があり、少なくとも三方向から倣いゲージ150に当接するものであることが望ましい。具体的には、第4装置のガイド部190は、図15の(a)に示すように、保持部材191に取り付けられたステー194a、194b及び194cに設けられた軸192a、192b及び192cに回転可能に取り付けられたローラ193a、193b及び193cによって構成されている。更に、ガイド部190は、図示しない付勢手段によって下向き(Z軸の負方向)に付勢されている。これにより、長尺部材1のZ軸方向における屈曲に対しても、ガイド部190は正確にトレースすることができる。
尚、長尺部材1の裏側(即ち、ハット状断面の天板部2とは反対側)を上側(Z軸の正方向側)に向けた状態において焼き入れ処理を実行する場合は、例えば図15の(b)に示すように、上記ローラ193a、193b及び193cがハット状断面の裏側(内側)から倣いゲージ150に当接するようにガイド部190を構成してもよい。この場合も、ガイド部190は、図示しない付勢手段によって下向き(Z軸の負方向)に付勢されることにより、長尺部材1のZ軸方向における屈曲に対しても正確にトレースすることができる。
尚、図15の(a)及び(b)の何れの例示についても、上記のように付勢手段を設ける代わりに、例えば、ローラ193cに対向する第4のローラ等を追加することにより、長尺部材1のZ軸方向における屈曲を正確にトレースするように構成してもよい。
<作動>
焼き入れ処理における第4装置の作動については、第1装置100(及び第3装置)の作動と基本的に同じであるので、ここでの説明は省略する。
<効果>
上記のように、第4装置によれば、三次元的な屈曲を有する長尺部材1についても、簡便な機械的手段によって長尺部材1と加熱手段110との位置関係を厳密に制御することが可能である。更に、段替えに際しては、倣いゲージ150を新たなワークに対応したものに交換することにより容易に対応可能である。加えて、このように簡便な機械的手段を用いるので、第4装置は、産業用ロボットを使用する場合と比較して、低コスト及び省スペースを同時に達成することが可能である。
<補足>
図13に示した焼き入れ手段110においては、長尺部材1の裏側の焼き入れ手段110a及び表側の焼き入れ手段110bが連結部材161a及び161bを介して連結部材161cに対してそれぞれ一定の間隔にて固定されている。しかしながら、裏側の焼き入れ手段110a及び表側の焼き入れ手段110bが連結部材161cに対してZ軸方向においてそれぞれ独立に移動可能に取り付け、第1角部5及び第2角部6のZ軸方向における位置をトレースすることが可能なローラを保持部材191に対してZ軸方向においてそれぞれ独立に移動可能に取り付け、更に対応する焼き入れ手段と上記ローラとの対のそれぞれに個別の倣い手段160を設けることにより、側壁部3の高さ(Z軸方向における寸法)が一定ではない場合においても2つの第1角部5及び2つの第2角部6に対して同時に焼き入れ処理を施すことができるように構成することもできる。
《第5実施形態》
以下、上述した第2本発明方法の1つの実施形態に係る焼き入れ方法の一例(以下、「第2方法」とも称呼される。)」につき、図面を参照しながら詳しく説明する。
〈構成〉
第2方法は、上述した第3装置及び第4装置を始めとする本発明に係るハット状断面を有する長尺部材の焼き入れ装置(第2本発明装置)を用いて長尺部材1に焼き入れ処理を施す長尺部材の焼き入れ方法である。従って、第2方法は、第2本発明装置において、運搬手段により長尺部材1と倣い手段とを相対的に移動させることにより、長尺部材1と焼き入れ手段110とを長手方向において相対的に移動させながら、加熱手段によって対象角部を加熱した後に冷却手段によって対象角部を冷却することにより、対象角部に焼き入れ処理を施す焼き入れ工程を含む。
第2方法において、対象角部は2つの第1角部5及び2つの第2角部6の両方を含む。そして、上記焼き入れ工程は、2つの第1角部に焼き入れ処理を施す第1工程と、2つの第2角部に焼き入れ処理を施す第2工程と、を含む。第1工程及び第2工程における焼き入れ処理の詳細については、第2本発明装置に関して既に述べたので、ここでの説明は省略する。
尚、前述したように、焼き入れ工程における第1工程及び第2工程は同時に実行されても或いは逐次的に実行されてもよい。第1工程及び第2工程を逐次的に実行する場合は、焼き入れ工程において第1工程を実行した後に第2工程を実行することが望ましい。即ち、ハット状断面を有する長尺部材1の裏側の角部(第1角部5)の後に表側の角部(第2角部6)に焼き入れ処理を施すことが望ましい。従って、第2方法においては、焼き入れ工程において、第1工程を実行した後に第2工程を実行する。
尚、本例においては、長尺部材1を所定の姿勢にて固定し、焼き入れ手段110を移動させるものとする。また、本例においては、長尺部材1の裏側に位置する2つの第1角部5に対向する焼き入れ手段110aと、長尺部材1の表側に位置する2つの第2角部6に対向する焼き入れ手段110bと、をそれぞれ個別に移動させることができるように構成された焼き入れ装置を使用するものとする。
先ず、図16の(b)において、図示しない治具(例えば、チャック121及び122)によって長尺部材1を所定の姿勢にて固定すると共に、焼き入れ手段110a(加熱手段7及び冷却手段8)及び110b(加熱手段9及び冷却手段10)をX軸の負方向の端に待機させた。この後、各焼き入れ手段はX軸の正方向に移動するので、加熱手段7及び加熱手段9はそれぞれ冷却手段8及び冷却手段10の側(X軸の方向側)に配置されている。
次に、図17の(b)に示すように、焼き入れ手段110a(加熱手段7及び冷却手段8)を作動させながらX軸の正方向に移動させることにより、長尺部材1の2つの第1角部5の全長に亘って焼き入れ処理を施した。即ち、第1工程を実行した。その結果、長尺部材1の表側(Z軸の正方向側)が凸状になるように長尺部材1の長手方向の軸に歪み(反り)が発生すると共に、フランジ部4の外端部(側壁部3とは反対側の端部)が下方(Z軸の負方向)へ傾斜した。
次に、図18の(b)に示すように、焼き入れ手段110b(加熱手段9及び冷却手段10)を作動させながらX軸の正方向に移動させることにより、長尺部材1の2つの第2角部6の全長に亘って焼き入れ処理を施した。即ち、第2工程を実行した。その結果、第1工程において発生した歪み(反り)とは反対方向の歪み(反り)が発生し、第1工程において発生した歪み(反り)が相殺されて、長尺部材1が歪み(反り)の無い元の形状に復元された。
〈効果〉
上記のように、第2方法によれば、第1工程における2つの第1角部5に対する焼き入れ処理により表側(即ち、ハット状断面の天板側)が凸状になるように長尺部材1の長手方向の軸に歪み(反り)が発生しても、次の第2工程の実行により2つの第2角部6に対する焼き入れ処理により第1工程とは反対方向の歪み(反り)が発生する。その結果、第1工程において発生した歪み(反り)が第2工程において発生した歪み(反り)によって少なくとも部分的に相殺され、長尺部材1の長手方向の軸の歪み(反り)が低減される。
〈補足〉
上記のように、第2方法においては、第1工程の実行が完了した後に第2工程の実行を開始した。しかしながら、長尺部材1の長手方向(X軸方向)における角部の個々の位置において第1工程の後に第2工程が実行される限り、第1工程の完了前に第2工程の実行を開始してもよい。この場合、焼き入れ方法全体としては、第1工程の実行中に第2工程が開始されることとなる。具体的には、例えば、上記第2方法において、焼き入れ手段110aよりも所定距離(所定時間)遅れて焼き入れ手段110bを移動させる。これにより、対象角部の個々の箇所においては第1工程の後に第2工程を実行しつつ、焼き入れ方法全体としては第1工程を実行している途中に第2工程の実行を開始することができる。
ところで、上述したように、第1工程における2つの第1角部5に対する焼き入れ処理により表側が凸状になるように長尺部材1の長手方向の軸に歪み(反り)が発生する場合がある。前述したように、このような歪み(反り)が大きい場合、例えば車両の構成部材として当該長尺部材1を使用することが困難となる場合がある。
しかしながら、第1工程において発生する歪み(反り)は一般的に小さく、上述したような倣いゲージを用いる焼き入れ装置における焼き入れ処理に支障を来す程には大きくない。具体的には、第1工程において発生する歪み(反り)の大きさは例えば±0.5mm程度であるのに対し、ワークとしての長尺部材1と焼き入れ手段110との間隔は例えば3〜5mm程度であり、比較的大きい。従って、上述したような歪み(反り)が第1工程において発生しても、焼き入れ処理の実行時に長尺部材1と焼き入れ手段110とが干渉する可能性は低い。
更に、例えば加熱手段としての誘導加熱コイルへの供給電力及び長尺部材1と焼き入れ手段110とを長手方向において相対的に移動させる速度等を調整することにより、上記歪み(反り)に起因する加熱斑等を低減することもできる。
《第6実施形態》
ところで、これまで説明してきた本発明の各種実施形態は何れも、ワークとしての長尺部材と実質的に同一の形状を有する倣いゲージの形状に沿って移動可能な倣い手段に焼き入れ手段を保持することによりワークと焼き入れ手段(特に加熱手段)との位置関係を厳密に制御することを前提としていた。
しかしながら、上述したようにハット状断面を有する長尺部材において表側(天板側)の角部のみならず裏側の角部に対しても焼き入れ処理を施すことにより焼き入れ処理後の長尺部材の長手方向の軸の歪み(反り)を低減する効果は、倣いゲージを用いる長尺部材と焼き入れ手段との位置関係の制御の有無に拘わらず、達成することができる。
例えば、多軸ロボット(多関節型産業用ロボット)等に、長尺部材及び焼き入れ手段の両方又は一方を保持させ、長尺部材と焼き入れ手段との位置関係を制御させながら、長尺部材の裏側に位置する2つの第1角部及び長尺部材の表側に位置する2つの第2角部に対して焼き入れ処理を施すことによって、焼き入れ処理後の長尺部材の長手方向の軸の歪み(反り)を低減することも可能である。
上記のように産業用ロボット等を用いてハット状断面を有する長尺部材に焼き入れ処理を施す場合、上述したように天板部の幅及び/又は側壁部の高さが一定ではない長尺部材についても柔軟に対応して、対象とする角部に正確に焼き入れ処理を施すことができる。
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び変形例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び変形例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。
100及び200…焼き入れ装置、101及び102…ベース、110、110a及び110b…焼き入れ手段、111…加熱手段、112及び113…冷却手段、120…曲がり管、121及び122…チャック、130…運搬手段、131…サーボモータ、132…ボールネジ、133…ガイドレール、140…制御手段、150…倣いゲージ、151及び152…ホルダ、153…スタンド、160…倣い手段、161及び168…アーム、161a、161b及び161c…連結部材、163、165及び165’…台座、164及び164’…ガイドレール、166…スライダ、167…パンタグラフ、170…フレーム、171及び172…ガイドレール、173…台座、174…滑車、175…ワイヤ、176…重り、181乃至184…支承部材、191…保持部材、192a、192b及び192c…軸、193a、193b及び193c…ローラ、並びに194a、194b及び194c…ステー、1…ハット状断面を有する長尺部材、2…天板部、3…側壁部、4…フランジ部、5…第1の角部、6…第2の角部、7及び9…加熱手段、並びに8及び10冷却手段。

Claims (11)

  1. 加熱手段及び冷却手段を含む焼き入れ手段と、
    ワークとしての曲がり管と前記焼き入れ手段とを相対的に移動させる運搬手段と、
    前記運搬手段によって相対的に移動された前記曲がり管と前記焼き入れ手段とが所定の位置関係となったときに、前記加熱手段によって前記曲がり管を加熱し、その後、前記冷却手段によって前記曲がり管を冷却することにより、前記曲がり管の少なくとも一部に焼き入れ処理を施す制御手段と、
    を備える、曲がり管の焼き入れ装置であって、
    前記曲がり管の軸線形状と同一の軸線形状を有し且つ前記曲がり管と同一の姿勢にて保持された部材である倣いゲージと、
    前記曲がり管及び前記倣いゲージの長手方向のみならず前記長手方向に直交する方向においても前記曲がり管及び前記倣いゲージに対して相対的に移動可能に構成された部材である倣い手段と、
    を更に備え、
    前記倣いゲージに沿って摺動可能に係合するガイド部が前記倣い手段の一端に保持されており、
    前記焼き入れ手段が前記倣い手段の他端に保持されており、
    前記運搬手段が、前記曲がり管と前記倣い手段とを相対的に移動させることにより前記曲がり管と前記焼き入れ手段とを前記長手方向において相対的に移動させる、
    焼き入れ装置。
  2. 請求項1に記載の焼き入れ装置であって
    前記制御手段が前記倣い手段に保持されている、
    焼き入れ装置。
  3. 請求項2に記載の焼き入れ装置であって、
    前記制御手段と連結されて前記制御手段の重さと少なくとも部分的に釣り合うように配設された重りを更に備える、
    焼き入れ装置。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の焼き入れ装置であって、
    前記曲がり管を下方から支承可能であると共に下方へ退避可能な複数の支承部材を更に備え、
    前記複数の支承部材が、前記曲がり管の前記長手方向に沿って間隔を空けて配置されている、
    焼き入れ装置。
  5. 請求項4に記載の焼き入れ装置であって、
    前記複数の支承部材のそれぞれが、前記焼き入れ手段が所定の距離以内に接近しているときには下方へ退避し、前記焼き入れ手段が所定の距離以内に接近していないときには前記曲がり管を下方から支承する、
    焼き入れ装置。
  6. 請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の焼き入れ装置であって、
    前記焼き入れ手段が、前記長手方向において前記加熱手段の両側に冷却手段をそれぞれ備える、
    焼き入れ装置。
  7. 加熱手段及び冷却手段を含む焼き入れ手段と、
    天板部、前記天板部の両端から前記天板部の2つの主面のうちの同じ一方の主面側にそれぞれ延在する2つの側壁部、及び前記2つの側壁部の前記天板部とは反対側の端部から前記側壁部に対して前記天板部とは反対側にそれぞれ延在する2つのフランジ部からなるハット状断面を有する長尺部材と前記焼き入れ手段とを前記長尺部材の長手方向において相対的に移動させる運搬手段と、
    前記加熱手段によって前記長尺部材を加熱し、その後、前記冷却手段によって前記長尺部材を冷却することにより、前記長尺部材の少なくとも一部に焼き入れ処理を施す制御手段と、
    を備える、長尺部材の焼き入れ装置であって、
    前記焼き入れ手段は、前記フランジ部と前記側壁部とが交わる2つの角部である2つの第1角部及び前記側壁部と前記天板部とが交わる2つの角部である2つの第2角部のうちの少なくとも何れか1つの角部である対象角部に所定の間隔を空けて対向するように配置されており、
    前記長尺部材の前記対象角部からなる稜線形状に対応する形状を有し且つ前記長尺部材と同一の姿勢にて保持された部材である倣いゲージと、
    前記長尺部材及び前記倣いゲージの長手方向のみならず前記長手方向に直交する方向においても前記長尺部材及び前記倣いゲージに対して相対的に移動可能に構成された部材である倣い手段と、
    を更に備え、
    前記倣いゲージに沿って摺動可能に係合するガイド部が前記倣い手段の一端に保持されており、
    前記焼き入れ手段が前記倣い手段の他端に保持されており、
    前記運搬手段が、前記長尺部材と前記倣い手段とを相対的に移動させることにより前記長尺部材と前記焼き入れ手段とを前記長手方向において相対的に移動させる、
    焼き入れ装置。
  8. 請求項7に記載の焼き入れ装置であって、
    前記加熱手段及び前記冷却手段の前記対象角部に対向する面である焼き入れ面は、前記対象角部の前記加熱手段及び前記冷却手段に対向する面である被焼き入れ面に沿った形状を有する、
    焼き入れ装置。
  9. 請求項7又は請求項8に記載の焼き入れ装置を用いて前記長尺部材に焼き入れ処理を施す長尺部材の焼き入れ方法であって、
    前記運搬手段により前記長尺部材と前記倣い手段とを相対的に移動させることにより前記長尺部材と前記焼き入れ手段とを前記長手方向において相対的に移動させながら前記加熱手段によって前記対象角部を加熱した後に前記冷却手段によって前記対象角部を冷却することにより前記対象角部に焼き入れ処理を施す焼き入れ工程を含む、
    焼き入れ方法。
  10. 請求項9に記載の焼き入れ方法であって、
    前記対象角部は、前記2つの第1角部及び前記2つの第2角部の両方を含み、
    前記焼き入れ工程は、
    前記運搬手段により前記長尺部材と前記倣い手段とを相対的に移動させることにより前記長尺部材と前記焼き入れ手段とを前記長手方向において相対的に移動させながら前記加熱手段によって前記2つの第1角部を加熱した後に前記冷却手段によって前記2つの第1角部を冷却することにより前記2つの第1角部に焼き入れ処理を施す第1工程と、
    前記運搬手段により前記長尺部材と前記倣い手段とを相対的に移動させることにより前記長尺部材と前記焼き入れ手段とを前記長手方向において相対的に移動させながら前記加熱手段によって前記2つの第2角部を加熱した後に前記冷却手段によって前記2つの第2角部を冷却することにより前記2つの第2角部に焼き入れ処理を施す第2工程と、
    を含む、
    焼き入れ方法。
  11. 請求項10に記載の焼き入れ方法であって、
    前記焼き入れ工程において、前記第1工程を実行した後に前記第2工程を実行する、
    焼き入れ方法。
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