本発明は、情報入力ペンに関し、特に、静電容量方式のタッチパネルに情報を入力するための情報入力ペンに関するものである。
近年、タッチパネルの検出面に接触または近接する指示体(たとえば、ユーザの指やタッチペンなど)の位置を検出することによって、ユーザの指示を受け付けるタッチパネルシステムが、携帯電話および表示装置などの各種の電子情報機器に搭載されることが多くなっている。特に、マルチタッチが可能な投影型の静電容量方式のタッチパネルが、電子情報機器に搭載されることが多くなっている。
投影型の静電容量方式のタッチパネルシステムは、検出面に沿って互いに平行に設けられる複数のドライブラインと、検出面に沿って互いに平行に設けられるとともに複数のドライブラインと交差する複数のセンスラインと、を有するタッチパネルを備える。このタッチパネルは、ドライブラインとセンスラインとの間に形成される静電容量の値が、タッチパネルの検出面に接触または近接した指示体を通じて変化することを利用することによって、検出面における指示体の位置を検出する。したがって、指示体の少なくとも先端部分は導体である必要があり、特に指示体がタッチペンである場合、少なくともペン先が導体である必要がある。
従来のタッチパネルシステムでは、各ドライブラインに所定の電気信号(ドライブ信号)を出力することによって、各ドライブラインと各センサラインとが成す容量の値に応じた所定の信号(センス信号)を各センサラインから取得する。そして、得られたセンス信号に基づきタッチパネルの検出面における静電容量の値の変化の面内分布を算出する。
タッチパネルにタッチペンを接触させる際、その押圧力を変化させることによって、検出面におけるペン先の接触面積を自在に変化させることができる。これによりユーザは、タッチパネルに自由に文字および図形を表示されることができる(特開2014−102788号の段落0044参照)。
上述した従来のタッチパネルシステムは、ペン先の接触面積に応じた静電容量の面内分布を検出し、その検出結果に応じた「線の太さ」を算出することができる。従来、こうして算出された線の太さにしたがって、タッチパネルに対して筆記入力されたデータを表示するソフトウェアが、筆圧検知アプリケーションとして一般に提供されている。このアプリケーションの実行時にユーザがタッチパネルを用いてタッチパネルの検出面に入力した際に得られる筆跡の例を、図24に示す。
図24は、筆圧検知アプリケーションの実行時にユーザが従来のタッチパネルを用いてタッチパネルの検出面に入力した際に得られる筆跡の例を示す図である。この図には、(a)押圧力が弱い場合の筆跡、(b)押圧力が強い場合の筆跡、および(c)押圧力がさらに強い場合の筆跡を、それぞれ示す。タッチペンを用いる際の筆圧(押圧力)の違いが、タッチパネルに描かれる線の太さの違いとして表されることが、この図から分かる。
タッチペンのペン先の接触面積を押圧力に応じて変化させることができる従来技術の例として、特許文献1〜5に以下の各発明が開示されている。
特許文献1:筆管体と、筆管体の先端のすげ込み部に設けた模擬筆鋒体において、模擬筆鋒体は、複数段の円筒体から構成され、径の小さい円筒体が、径の大きい円筒体の内部に収納され、且つ軸方向に摺動可能で、各円筒体を同軸に保ちつつ抜け落ち防止構造を有する入れ子構造とし、少なくとも模擬筆鋒体の腰を構成する円筒体以外の円筒体は、外方に向けて付勢手段により付勢されており、付勢されている各円筒体のそれぞれに対する付勢力は穂先側から順に強くなってxいることを特徴とする筆型入力装置。
特許文献2:多孔質の基材と、少なくとも前記基材の表面に一部が露出し、かつ、前記基材の内部で前記基材に結合するゴム質を有する材料と、を有するペン先部材が、ペン本体の端部に取り付け固定されている、ことを特徴とする入力ペン。
特許文献3:使用者に使用されるペン本体を備え、このペン本体の先端部に、導電性のペン先を支持させた静電容量型入力ペンであって、ペン先を、複数本の導電性繊維により筆形に形成したことを特徴とする静電容量型入力ペン。
特許文献4:使用者の手に把持される導電性のペン本体と、該ペン本体と電気的に導通された導電性のペン先とを備えて、静電容量型座標入力パッドに座標情報を入力可能とする静電容量型座標入力パッド用入力ペンに於いて、ペン先が、導電性ゴムにより構成されたことを特徴とする静電容量型座標入力パッド用入力ペン。
特許文献5:導電性材料によりペン軸状に形成され、タッチパネルとの間の静電容量を変化させて当該タッチパネル上の3次元座標を指定する導電部と、前記導電部の一端に非導電性材料により前記導電部よりも細く形成され、前記導電部が3次元座標を指定する際に前記タッチパネルに接触する先端部と、を備える入力装置。
日本国公開特許公報「特開2009-251704号(2009年10月29日公開)」
日本国公開特許公報「特開2013-186803号(2013年9月19日公開)」
日本国公開特許公報「特開2010-39610号(2010年2月18日公開)」
日本国公開特許公報「特開平10-161795号(1998年6月19日公開)」
日本国公開特許公報「特開2014-142676号(2014年8月7日公開)」
上述した特許文献1〜5には、以下の課題がある。
特許文献1:押圧力に応じたペン先の太さの変化が、高々数段階程度しかない。さらには、押圧力に応じたペン先の太さの変化が単調増加にならない。
特許文献2:繊維材料とゴム材質とを有する材料を混練させるための手間およびコストが大きくなる。また、この文献では、繊維材料はペン先部材の剛性を高めるために用いられるものであるため、このような繊維材料を有するペン先部材の太さを、押圧力に応じて十分に変化させることはできない。
特許文献3:この技術は、音楽機器アプリケーションに対応したタッチパネルに対するタッチパネルの「タッチして押す」操作のみを想定している。したがって、タッチパネルのペン先の太さを変化させることによって、軌跡の幅を制御することはできない。さらには、タッチペンのペン先が導電性繊維のみによって形成されているので、押圧力に応じてペン先の太さを十分に大きく変化させることができない。
特許文献4:タッチペンのペン先が導電性ゴムのみによって形成されているので、押圧力に応じたペン先の太さの変化が不十分である。さらに、導電性ゴムの摩擦係数が高いことからペン先の滑りが悪く、これによりタッチペンの使用時にユーザにストレスを与えてしまう。
特許文献5:タッチペンのペン先が非導電性材料のみによって形成されているので、押圧力に応じたペン先の太さの変化が不十分である。
これらの文献に開示された各タッチパネルを用いてタッチペンに入力された線の軌跡の例を、図25に示す。図25は、従来技術に係る各タッチパネルを用いてタッチペンに入力された線の軌跡の例を示す図である。この図の(a)および(b)に示すように、ユーザが、従来技術のタッチペンを用いた線の入力中に筆圧(押圧力)を急激に変化させると、タッチパネルに入力される線の太さが急激に変化する。その結果、描かれた線の軌跡(筆跡)から滑らかさが失われる。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものである。そしてその目的は、自然な筆書き動作に正確に対応した線をタッチパネルに描くことができる情報入力ペン、および、当該情報入力ペンを備えた情報入力システムを提供することにある。
本発明の一態様に係る情報入力ペンは、上記の課題を解決するために、静電容量方式のタッチパネルに情報を入力するための情報入力ペンであって、ペン本体と、導電性ゴムおよび当該導電性ゴムに巻き付けられる導電性繊維布によって構成される導電性のペン先とを備えていることを特徴としている。
本発明の一態様によれば、自然な筆書き動作に正確に対応した線をタッチパネルに描くことができるという効果を奏する。
本発明の実施形態1に係るタッチ入力システム(情報入力システム)の要部構成を示す斜視図である。
本発明の実施形態1に係るタッチパネルの要部構成を示すブロックである。
本発明の実施形態1に係るスタイラスペンの要部構成を示す図である。
本発明の実施形態1におけるペン先の接触面の径(大きさ)と、タッチパネルにおける静電容量の変化の大きさの分布とを示す図である。
本発明の実施形態1における、ペン先の押し込み長とペン先の接触面の径との関係を示す図である。
本発明の実施形態1における、押圧によりユーザがスタイラスペンに与えた荷重と、ペン先の太さの変化量との関係を示す図である。
(a)は、従来技術に係る、固いペン先を有するスタイラスペンを用いて書いた文字を示す図であり、(b)は、弾力性および伸縮性を兼ね備えた本発明の実施形態1に係るペン先を有するスタイラスペンを用いて書いた文字を示す図である。
本発明の実施形態2に係るタッチ入力システムの要部構成を示す斜視図である。
本発明の実施形態2に係る情報入力システムを構成するタッチパネルの要部構成を示すブロックである。
本発明の実施形態2に係る情報入力システムを構成するスタイラスペンの要部構成を示す図である。
本発明の実施形態2において、タッチパネルの入力面に対するペン本体の傾斜角度と導電部の傾斜角度との関係の例を示す図である。
従来のスタイラスペンをタッチパネルの入力面に対して30°傾けた場合の問題を説明する図である。
従来のスタイラスペンをタッチパネルの入力面に対して45°傾けた場合の問題を説明する図である。
本発明の実施形態2に係るスタイラスペンをタッチパネルの入力面に対して30°傾けた場合の問題を説明する図である。
本発明の実施形態2に係るスタイラスペンの実装例(写真)を示す図である。
従来のスタイラスペンの傾斜と、タッチパネルのメッシュ間隔に対する重心位置の位置ずれとの関係を示す図である。
本発明の実施形態3に係るタッチ入力システムの要部構成を示す斜視図である。
本発明の実施形態3に係るタッチ入力システムを構成するスタイラスペンおよびタッチパネルの要部構成を示す図である。
本発明の実施形態2においてタッチパネルによって検知される前のスタイラスペンの状態を示す図である。
本発明の実施形態3においてタッチパネルによって検知された後のスタイラスペンの状態を示す図である。
本発明の実施形態4に係るタッチ入力システムの要部構成を示す斜視図である。
本発明の実施形態4に係るタッチ入力システムを構成するスタイラスペンおよびタッチパネルの要部構成を示す図である。
本発明の実施形態4に係るスタイラスペンにおいて、導電部の傾斜を静電容量の変化の大きさの分布の偏りに応じて調整する様子を示す図である。
筆圧検知アプリケーションの実行時にユーザが従来のタッチパネルを用いてタッチパネルの検出面に入力した際に得られる筆跡の例を示す図である。
従来技術に係る各タッチパネルを用いてタッチペンに入力された線の軌跡の例を示す図である。
本発明に係る第1実施形態を図1〜図7に基づき以下に説明する。
(タッチ入力システム100の構成)
図1は、本実施形態に係るタッチ入力システム100(情報入力システム)の要部構成を示す斜視図である。この図に示すように、タッチ入力システム100は、スタイラスペン1(情報入力ペン)および静電容量方式のタッチパネル2によって構成されている。ユーザは、タッチパネル2の入力面に対してスタイラスペン1を接触または近接させることによって、タッチパネル2に対するタッチ入力(タッチ操作)を行う。タッチパネル2は表示装置(不図示)と一体化されており、表示装置の表示面上にタッチパネル2の入力面が重ねて配置されている。
タッチパネル2と表示装置とが一体化された情報入力装置では、ユーザは、表示装置の表示面における操作ボタンなどのオブジェクトが表示された領域をタッチすることによって、情報を入力することができる。また、ユーザは、タッチパネル2に入力面に対してスタイラスペン1をなぞることによって、線および文字を入力することができる。
図2は、本実施形態に係るタッチパネル2の要部構成を示すブロックである。この図に示すように、タッチパネル2は、複数のドライブライン22および複数のセンスライン23を有するパネル本体21と、パネル本体21のドライブライン22に駆動信号Dsを印加するドライブライン駆動部24と、この駆動信号Dsの印加によって生じたセンス信号Ssをセンスライン23から受信し、センス信号Ssに対するタッチ情報ISpを生成する信号処理部30とを備えている。特に図示はしないが、パネル本体2の入力面には透明なカバーガラスが設けられており、スタイラスペン1の使用時にそのペン先11がこのカバーガラスに触れることになる。
信号処理部30は、増幅回路31、信号選択部32、A/D変換部33、復号処理部34、およびタッチ位置検出部35を備えている。増幅回路31は、複数のセンスライン23からのセンス信号Ssを増幅する。信号選択部32は、増幅されたセンス信号ASsを順次選択し、選択した増幅されたセンス信号ASsを出力する。A/D変換部33は、出力された増幅後のセンス信号ASsをデジタル信号DSsに変換する。復号処理部34は、得られたデジタル信号DSsを、駆動信号Dsの生成に用いられた系列信号に基づく復号のための変換信号を用いて復号して、パネル本体21においてドライブライン22とセンスライン23との交点部における静電容量の変化の大きさに相当する信号強度Cdを取得する。タッチ位置検出部35は、この信号強度Cdに基づいて、パネル本体21における静電容量の変化の大きさの分布を算出し、当該分布における重心位置および分布の拡がりに基づいて、パネル本体21でのユーザによるタッチ位置およびタッチ範囲を示すタッチ情報ISpを生成することによって、入力面におけるタッチ位置およびタッチ範囲を検出する。
タッチパネル2では、互いに平行に配置された複数のドライブライン22と、互いに平行に配置されたセンスラインとが立体交差するように配置されている。複数のドライブライン22および複数のセンスライン23とによって、升目上の電極パターンが形成される。少なくとも各ドライブライン22と各センスライン23との交点は絶縁されている。各交点にはドライブライン22とセンスライン23との間の静電容量が発生する。接地された導電性の指示体(指またはスタイラスペン1)がタッチパネル2の入力面に接触または近接すると、指示体付近におけるドライブライン22とセンスライン23との間の電荷が指示体を通じて接地方向へ移動する。これにより、指示体付近における静電容量が減少する。タッチパネル2は、この静電容量の変化の大きさを測定するによって、入力面における指示体のタッチ位置(接触位置)または近接位置を検出する。本実施形態では、タッチパネル2は、静電容量の変化の大きさの分布を測定し、当該分布の重心位置および分布の拡がりを算出することによって、交点以外の地点におけるタッチ位置または近接位置ならびにその範囲をも検出することができる。
(スタイラスペン1の構成)
図3は、本実施形態に係るスタイラスペン1の要部構成を示す図である。図3の(a)に示すように、スタイラスペン1は、ペン本体10およびペン先11を備えている。ペン本体10およびペン先11は、導電性の材料によって構成されている。図3の(b)に示すように、ペン先11は、弾力性を有する導電性ゴム12と、伸縮性を有する導電性繊維布13とによって構成されている。
ペン先11の内部には導電性ゴム12があり、導電性ゴム12の周囲に導電性繊維布13が巻き付けられている。このように、ペン先11は、導電性ゴム12および導電性繊維布13の二重構造を有する。導電性ゴム12の弾力性と導電性繊維布13の伸縮性とが相伴って、押圧によるペン先11の形状変化(径の広がり)をより大きくすることができる。
図3の(b)に示す例では、導電性ゴム12の形状は立方形である。しかし導電性ゴム12の形状はこれに限らず、たとえば球状であってもよく、あるいは、スタイラスペン1の先端側が半球状になる形状であってもよい。これらの場合、導電性繊維布13は、導電性ゴム12におけるスタイラスペン1の先端側の半球形状を保持するように、導電性ゴム12に巻き付けられる必要がある。
導電性ゴム12が導電性繊維布13によって覆われているので、スタイラスペン1の使用時、タッチパネル2の入力面には導電性ゴム12ではなく導電性繊維布13の方が接する。導電性繊維布13の摩擦係数は導電性ゴム12に比べて十分に低いので、ペン先11の内部に導電性ゴム12があっても、スタイラスペン1の使用時にペン先11は滑らかに入力面上を滑ることができる。したがってスタイラスペン1は、快適な操作性をユーザに与えることができる。
上述した特許文献3のように、導電性ゴムに導電性繊維を配合することによってペン先を製造する方法には、製造のための多大な手間およびコストが必要である。一方、本発明の実施形態1のように、導電性ゴム12に導電性繊維布13を巻き付けることによってペン先11を製造する方法は、製造のための手間およびコストを最小限に抑えることができる。
図3の(c)に示すように、スタイラスペン1は、使用時にタッチパネル2の入力面に対して一定の角度で傾斜する。ユーザが、スタイラスペン1に荷重を与えることによって、スタイラスペン1のペン先11をタッチパネル2の入力面に押下する(押し当てる)と、そのときペン先11に掛かる押圧力に応じて、ペン先11の形状が変化する。さらに、この形状変化に応じて、タッチパネル2における静電容量の変化の大きさの分布も変化する。これらの点について、図4を参照して以下に説明する。
(静電容量の分布例)
図4は、本実施形態におけるペン先11の接触面の径(大きさ)と、タッチパネル2における静電容量の変化の大きさの分布とを示す図である。図4の(a)および(b)は、押圧力の強弱によるペン先11の径の違いを示す。図4の(a)は、押圧力が弱い場合のペン先11の経を示し、図4の(b)は、押圧力が強い場合のペン先11の径を示す。これらの図に示すように、押圧力が大きいほど、ペン先11の径はより大きくなる。
図4の(a)および(b)の状態のペン先11がタッチパネル2に接触した場合のタッチパネル2における静電容量の分布を、図4の(c)および(d)にそれぞれ示す。これらの図から分かるように、ペン先11の接触面が大きいほど、静電容量の面内分布がより拡がりかつ静電容量の値がより大きい。タッチパネル2は、図4の(c)または(d)に示すような静電容量の面内分布を検出し、その検出結果に応じた線の太さを算出する。
(変化の分解能)
図5は、本実施形態における、ペン先11の押し込み長とペン先11の接触面の径との関係を示す図である。図5の(a)に、スタイラスペン1が押圧されない場合のペン先11の径Dを示す。本実施形態では、この場合のペン先11の径Dは3mmであるとする。また、ペン先11において導電性ゴム12の外側に巻き付けられている導電性繊維布13の厚さは0.25mmであるとする。
図5の(b)に、スタイラスペン1が押圧され、ペン先11が押し込み長Lnだけペン本体10側に押し込まれた場合のペン先11の径Dnを示す。Dn=D(1+α(Ln/LMax))である。ここで、LMaxは、ペン先11において可能な接触面の最大押し込み長である。αは所定の係数であり、本実施形態ではα=0.2である。図5の(b)に、Ln=LMax/2である場合を示す。この段階では、導電性ゴム12の外側にある導電性繊維布13が広がることによって、ペン先11の径が押圧力に応じて大きくなる。
図5の(c)に、スタイラスペン1が押圧され、ペン先11が最大押し込み長LMaxだけペン本体10側に押し込まれた場合のペン先11の経DMaxを示す。DMax=D(1+α)である。押し込み長が最大のLMaxであるとき、ペン先11の最大径DMaxが達成される。この段階では、導電性ゴム12の周囲の導電性繊維布13に加えて、導電性ゴム12の径も荷重に応じて変化することによって、最大径DMaxが達成される。
図6は、本実施形態における、押圧によりユーザがスタイラスペン1に与えた荷重と、ペン先11の太さの変化量との関係を示す図である。図6の(a)および(b)のいずれも、荷重の変化に対するペン先11の変化が単調に増加することを示している。図6の(a)に示すグラフ61は、荷重の変化に対するペン先11の太さの変化が線形関係になっている。一方、図6の(b)に示すグラフ62は、荷重の変化に対するペン先11の太さの変化が、曲線関係になっている。スタイラスペン1は、図6の(a)に示す理想的な線形関係を有するペン先11を備えていることが好ましい。
α=0.2であるため、最大荷重DMaxがスタイラスペン1に与えられた場合、ペン先11の太さは、元の(すなわち荷重がない場合の)太さよりも20%増加する。たとえば、200gの最大荷重DMaxがスタイラスペン1に与えられた場合、ペン先11の太さは最大で0.6mm(=3mm×0.20)増加する。
一般的に、人手による最大荷重DMaxは、300g〜400gであることが分かっている。本実施形態では、ペン先11の太さの変化量に対する分解能は、ドライブライン22とセンスライン23との交点に設けられるセンサのピッチの0.05%である。たとえばセンサピッチが4mmであれば、ペン先11の太さの変化の分解能は0.002mm/gである。この場合、タッチパネル2は、0.002mm単位の刻みでペン先11の太さ(すなわち線の太さ)の違いを正確に算出することができる。
(線の比較)
図7の(a)は、従来技術に係る、固いペン先を有するスタイラスペンを用いて書いた文字を示す図であり、図7の(b)は、本実施形態に係る、弾力性および伸縮性を兼ね備えたペン先11を有するスタイラスペン1を用いて書いた文字を示す図である。
従来技術に係るスタイラスペンのペン先は固いので、ユーザがスタイラスペンに荷重を与えてもペン先の太さが変化しない。したがって、従来技術に係るスタイラスペンを用いてユーザが荷重を変えながら書いた文字は、図7の(a)に示すように、線の太さが常に一定である。その結果、図7の(a)の矢印に示すように、書いた文字の「はらい」がまったく表現されない。
一方、本発明の実施形態1に係るスタイラスペン1のペン先11は、導電性ゴム12の柔軟性と導電性繊維布13の伸縮性とを兼ね備えており、また非常に柔らかい。したがって、ユーザが、本発明の実施形態1に係るスタイラスペン1を用いて、スタイラスペン1に与える荷重を変えながらタッチパネル2の入力面に文字を書くと、ペン先11への押し込みの強度(すなわち押圧力)の変化に応じて、ペン先11の接触面の径(太さ)が適宜変化する。この結果、図6の(b)の矢印に示すように、描かれた線の「はらい」が、ユーザの意図通りに正確にタッチパネル2上に表現される。すなわちユーザは、スタイラスペン1を用いることによって、本物の筆を用いた自然な筆書き動作に正確に対応した線をタッチパネル2に描くことができる。
〔実施形態2〕
本発明に係る第2実施形態を図8〜図16に基づき以下に説明する。
(タッチ入力システム100aの構成)
図8は、本実施形態に係るタッチ入力システム100a(情報入力システム)の要部構成を示す斜視図である。この図に示すように、タッチ入力システム100aは、スタイラスペン1a(情報入力ペン)および静電容量方式のタッチパネル2aによって構成されている。
図9は、本実施形態に係るタッチパネル2aの要部構成を示すブロックである。この図に示すように、本実施形態に係るタッチパネル2の構成および機能は、実施形態1に係るタッチパネル2と基本的に同じである。したがって、タッチパネル2に関する詳細な説明を省略する。
(スタイラスペン1aの構成)
図10は、スタイラスペン1aの要部構成を示す図である。図10の(a)に示すように、スタイラスペン1aは、ペン本体10、ペン先11、および導電部15を備えている。本実施形態のペン本体10は、非導電性の材料によって構成されている。一方、ペン先11および導電部15はいずれも導電性の材料によって構成されている。
特に図示しないが、本実施形態に係るペン先11は、本発明の実施形態1と同様に、導電性ゴム12と、導電性ゴム12の周囲に巻き付けられる導電性繊維布13とによって構成されている。これにより、ペン先11の太さは、使用時にスタイラスペン1bに与えられる荷重に応じて、少なくとも1024段階の分解能で変化する。したがって、ユーザがスタイラスペン1bを使用してタッチパネル2に文字を書くと、描かれる線の太さが荷重に応じて自在に変化する。
ペン本体10には、スタイラスペン1aの長さ方向に対して30°傾斜する傾斜面が形成されており、導電部15はこの傾斜面に形成されている。これにより導電部15は、ペン本体10の長さ方向に対して斜めに配置されており、より具体的にはペン本体10の長さ方向に対して30°傾斜している。言い換えると、スタイラスペン1aの長さ方向と導電部15の長さ方向とが成す角度は30°である。導電部15の一端はペン先11に電気的に接続されている。
ペン本体10におけるスタイラスペン1aを握る箇所には、複数の窪み14が形成されている。これらの窪み14は、ユーザがスタイラスペン1aを握ったときにユーザの指にフィットする形状を有している。ユーザが自身の指を複数の窪みにフィットさせるようにしてスタイラスペン1aを自然に握ると、導電部15がスタイラスペン1aの上側(表側)に来る。
スタイラスペン1aにおけるユーザが握る箇所の一部には、図示しない導体部分が設けられている。導電部15は、この導体部分とペン先11とを電気的に接続することによって、人体を介してスタイラスペン1aを接地させる共に、タッチパネル2a内の静電容量を接地方向へ移動させる導線の役割を果たしている。この導体部分は、窪み14に設けられることが望ましい。
本実施形態では、従来例と異なり、ペン先11を小さくしているため、タッチパネル2aに現れる静電容量の変化は、スタイラスペン1aの先端に存在する導体部分にほぼ起因する。本実施形態の場合、スタイラスペン1aの先端に存在する導体はペン先11および導電部15に相当する。導電部15の長さがペン先11よりも十分に大きいことから、測定される静電容量の変化の大きさの分布に与える影響の大部分を、入力面に対する導電部15の傾斜角度に基づく影響が占めている。
図10の(a)に示すように、スタイラスペン1aは、使用時にタッチパネル2aの入力面に対して一定の角度で傾斜する。導電部15はスタイラスペン1aの長さ方向に対して30°傾斜しているので、入力面に対するペン本体10の傾斜角度と導電部15の傾斜角度とは互いに異なる。
(傾斜角度間の関係)
図11は、入力面に対するペン本体10の傾斜角度と導電部15の傾斜角度との関係の例を示す図である。
図11の(a)では、スタイラスペン1aは、入力面に対するペン本体10の傾斜角度が30°になるように傾いている。このとき入力面に対する導電部15の傾斜角度は60°である。すなわち導電部15は、入力面と垂直な方向に対して30°傾いている。
図11の(b)では、スタイラスペン1aは、入力面に対するペン本体10の傾斜角度が60°になるように傾いている。このとき入力面に対する導電部15の傾斜角度は90°である。すなわち導電部15は、入力面と垂直な方向に対してまったく傾いておらず、言い換えると入力面に対して直立している。
図11の(c)では、スタイラスペン1aは、タッチペンに対するペン本体の傾斜角度が90°になるように直立している。このとき入力面に対する導電部15の傾斜角度は60°である。したがって導電部15は、入力面と垂直な方向に対して30°傾いている。
図11の(a)〜(c)に示すように、スタイラスペン1aでは、ペン先11がタッチパネル2bの入力面に接触するとき、入力面に対するペン本体10の傾斜角度が30°〜90°の範囲内において、入力面に対する導電部15の傾斜角度は60°〜90°(60°以上かつ90°以下)である。言い換えると、入力面と垂直な方向に対する導電部15の傾斜角度は0°〜30である。導電部15がこれらの範囲の角度で傾いている場合、詳しくは後述するが、入力面に対するペン先11の実際のタッチ位置(または近接位置)と、測定された静電容量の変化の大きさの分布における重心位置との差が、入力面の場所に関わらず一定になる。これにより、静電容量の変化の大きさの分布に対する導電部15の影響を抑えることができるので、検出されるタッチ位置(または近接位置)のばらつきを抑えることができる。
また、図11の(a)に示すように、入力面と垂直な方向に対するスタイラスペン1aの傾斜角度を大きくしても、入力面と垂直な方向に対する導電部15の傾斜角度は30°と小さい。したがって、入力面と垂直な方向に対してスタイラスペン1aを大きく傾けた場合であっても、検出されるタッチ位置のばらつきを抑えることができる。
さらには、スタイラスペン1aは、測定される静電容量の変化の大きさの分布に対する導電部15の影響が考慮されているので、特許文献1に開示されたスタイラスペンとは異なり、当該影響を低減するためにペン先11を大きくする必要がない。したがって、ペン先11が十分に小さくても、スタイラスペン1aを大きく傾けたときの、検出されるタッチ検出のばらつきを抑えることができる。
(軌跡の比較)
従来のスタイラスペンを入力面の垂直方向に対して大きく傾けると、タッチパネル2aにおけるペン先の軌跡はギザギザになる問題が生じる。一方、本実施形態に係るスタイラスペン1aではそのような問題は生じない。その理由について、図12〜14を参照して以下に説明する。なお、ここでいう従来のスタイラスペンとは、たとえば図16および図17に示すような、ペン全体が導体で構成されており、かつ、ペン先が固い導電性材料によって構成されているスタイラスペンのことである。
図12は、従来のスタイラスペンをタッチパネル2aの入力面に対して30°傾けた場合の問題を説明する図である。この図の例では、ユーザは、スタイラスペンをタッチパネル2aの入力面に対して30°傾けて、入力面をなぞる。このとき入力面と垂直な方向に対するスタイラスペンの傾斜角度は60°である。この場合、タッチパネル2aにおけるペン先のタッチ検出位置がばらつくので、ペン先が直線的に動いたとしても、図12の(b)のようにその軌跡はギザギザになる。
これは、図12の(c)に示すように、導体部分の検知範囲が大きくことによって、静電容量の変化が現れる範囲が広くなることが原因である。図12の(c)に示す範囲における静電容量の変化の大きさの分布を、図12の(d)に示す。図12の(c)および(d)に示すように、この分布の形状はx方向において大きく非対称である。この非対称性が原因となって、実際のタッチ位置と、算出された分布の重心位置との間に差(すなわち位置ずれ)が生じる。
タッチパネルの静電容量は、入力面内において一定ではなく、その場所によって微小な差異がある。このため、2つの場所における静電容量の変化が現れる範囲が同じ大きさであったとしても、それぞれの場所における変化の大きさの分布は必ずしも同じになるとは限らない。
従来のスタイラスペンを入力面の垂直方向に対して大きく傾けることによって、タッチパネル2aにおける静電容量の変化が現れる範囲が大きくなれば、算出される分布の重心位置は、入力面における実際のタッチ位置から大きく離れてしまう。入力面上をペン先が動いたとしても、実際のタッチ位置と算出される重心位置との差が一定であれば、算出された重心位置にタッチ入力の軌跡を表示したとしても、ペン先の動きを再現する表示を行うことができる。しかし、場所によるタッチパネルの静電容量差の影響によって、検出される分布の範囲が場所によって変化するので、ペン先の実際のタッチ位置と算出される重心位置と差も場所によって変化する。このためペン先の動きを忠実に表示できず、図12の(b)に示すようにその軌跡がギザギザになる.
図13は、従来のスタイラスペンをタッチパネル2aの入力面に対して45°傾けた場合の問題を説明する図である。この図の例では、入力面と垂直な方向に対するスタイラスペンの傾斜角度は45°である。この場合、図13の(b)に示すように、依然としてスタイラスペンの軌跡はギザギザになる。
これは、図13の(c)に示すように、導体部分の検知範囲が大きくなることによって静電容量の変化が現れる範囲が広くなることが原因である。図13の(c)に示す範囲における静電容量の変化の大きさの分布を、図13の(d)に示す。図13の(c)および(d)に示すように、この分布の形状はx方向において非対称である。この非対称性が原因となって、実際のタッチ位置と算出された分布の重心位置との位置ずれが生じ、その位置ずれが入力面の場所によって異なるので、図13の(b)に示すように軌跡がギザギザになる。図13の例では、入力面と垂直な方向に対するスタイラスペンの傾斜角度が図12の例よりも小さいので、ギザギザの度合いはより小さいが、それでも問題になることに変わりはない。
図14は、本実施形態に係るスタイラスペン1aをタッチパネル2aの入力面に対して30°傾けた場合の問題を説明する図である。この図の例では、ユーザは、スタイラスペン1aをタッチパネル2aの入力面に対して30°傾けて入力面をなぞる。このとき入力面と垂直な方向に対するスタイラスペンの傾斜角度は60°である。スタイラスペン1aにおいて、スタイラスペン1aの長さ方向に対する導電部15の傾斜角度は30°であるので、導電部15は入力面に対して60°傾斜する。すなわち、入力面と垂直な方向に対する導電部15の傾斜角度は30°である。
この場合、タッチパネル2aにおけるペン先の検知結果が一定になるので、図14の(b)のようにその軌跡がギザギザにならずに滑らかになる。これは、図14の(c)に示すように、入力面と垂直な方向に対して導電部15があまり傾いていないので、導電部15の検知範囲が大きくならず、静電容量の変化が現れる範囲が狭くなるからである。図14の(c)は、スタイラスペン1に対する荷重が小さいためにペン先11の接触面の径が小さい場合の静電容量を示す。図14の(c)に示す範囲における静電容量の変化の大きさの分布を、図14の(d)に示す。図14の(c)および(d)に示すように、分布の形状はx方向において対称的である。分布が対照的であるため、実際のタッチ位置と、検出された分布の重心位置との位置ずれが生じず、その結果、図14の(b)に示すように細い線の軌跡が滑らかになる。
図14の(d)は、スタイラスペン1に対する荷重が大きいためにペン先11の接触面の径が大きい場合の静電容量を示す。図14の(d)に示す範囲における静電容量の変化の大きさの分布を、図14の(e)に示す。図14の(d)および(e)に示すように、ペン先11の接触面の径が大きく、それによって静電容量の分布がより広い場合であっても、分布の形状はx方向において対称的である。分布が対照的であるため、実際のタッチ位置と、検出された分布の重心位置との位置ずれが生じず、その結果、特に図示はしないが、太い線の軌跡が滑らかになる。
図15は、本実施形態に係るスタイラスペン1の実装例(写真)を示す図である。図15の(a)に、与えられる荷重が小さい場合のスタイラスペン1の写真を示し、(b)に、与えられる荷重が大きい場合のスタイラスペン1の写真を示す。図15の(a)の楕円151内に示すように、スタイラスペン1に小さい荷重が与えられる場合、ペン先11が変形しないので、タッチパネル2に対するペン先11の接触面は小さくなる。これにより細い線がタッチパネル2上に描かれる。一方、図15の(b)の楕円152内に示すように、スタイラスペン1に大きい荷重が与えられる場合、ペン先11が変形するので、タッチパネル2に対するペン先11の接触面は大きくなる。これにより太い線がタッチパネル2上に描かれる。
上述したように、入力面と垂直な方向に対する導電部15の傾斜角度がより小さいと、タッチパネル2aにおいて静電容量の変化が現れる範囲がより狭くなる。これにより、算出される重心位置と実際のタッチ位置との差もより小さくなる。静電容量の変化が現れる範囲がより狭ければ、測定された静電容量の変化の大きさの分布が場所によるタッチパネルの静電容量差の影響によって変化しても、算出された重心位置と実際のタッチ位置との差の場所による変動はごくわずかである。このことは、その差が入力面の場所に関わらず一定であることと実質的に同じである。したがって、本実施形態に係るスタイラスペン1aをタッチパネル2aの入力面に対して図14の(a)に示すように60°傾けて用いたとしても、図14の(b)に示すように、表示されるタッチ位置の軌跡は、ペン先11の動きを忠実に再現した滑らかものになる。
本実施形態に係るタッチ入力システム100aにおいて、算出された重心位置とペン先11の実際のタッチ位置との差が入力面の場所に関わらず一定であることは、算出された重心位置と実際のタッチ位置との差が入力面の場所に応じて異なったとしても、ある場所における差と別の場所における差との間の差が、表示面における最小認識単位(最小表示単位)以下であることと同義である。
(メッシュ間隔と位置ずれとの関係)
上述したように、分布における重心位置のずれは、タッチパネルにおいて検知される傾斜したスタイラスペンの導体部分の面積が、タッチパネルにおける静電容量の変化の大きさの分布の形状に影響を与えて当該分布を非対称にすることによって発生する。この問題の程度は、タッチパネルにおける静電容量のメッシュ間隔に応じて異なる。
静電容量方式のタッチパネルでは、静電容量は、メッシュ間隔とよばれる一定の間隔で形成されている。タッチパネルは、静電容量の変化の大きさの分布を測定してその分布の重心位置を算出するとき、入力面内におけるある一定の領域内の分布の拡がりを算出に用いる。メッシュ間隔がより小さいタッチパネルでは、メッシュ間隔がより大きいタッチパネルに比べて、一定領域内に含まれるより多くの交点における静電容量が変化する。したがって、メッシュ間隔がより小さいタッチパネルでは、より多くのデータを用いて重心位置を算出するができるため、タッチパネルにおける場所ごとの静電容量差の影響を平均化できる。この結果、スタイラスペンの傾斜によって発生するペン先位置と重心位置との誤差は、タッチされる場所が変わっても大きく変動しない。
一方、メッシュ間隔がより大きいタッチパネルでは、より少ないデータを用いて重心位置を求める必要があるため、タッチパネルにおける場所ごとの静電容量差の影響を大きく受ける。これにより、スタイラスペンの傾斜によって発生するペン先位置と重心位置との差が、タッチ位置の場所が変わると大きく変動するという問題が発生する。
図16は、従来のスタイラスペンの傾斜と、タッチパネルのメッシュ間隔に対する重心位置の位置ずれとの関係を示す図である。図16において、横軸はスタイラスペンの傾斜であり、横軸はメッシュ間隔である。重心位置のずれの分布を、等高線として表す。縦軸は、ペンタッチ検出に対応したタッチパネルにおけるメッシュ間隔の一般的な範囲を、規格値として表している。言い換えると、ペンタッチ検出向けのタッチパネルにおけるメッシュ間隔は、図16の縦軸に示す範囲内にある。
この図に示すように、入力面と垂直な方向に対するスタイラスペン1aの傾斜角度がより大きい場合、重心位置のずれがより大きくなる。また、メッシュ間隔がより大きい場合も、重心位置のずれがより大きくなる。入力面と垂直な方向に対するスタイラスペンの傾斜角度が大きいと、スタイラスペン1aの傾斜によって発生する、タッチパネルにおいて検出される導体部分の面積が増加する。一方、メッシュ間隔が大きいと、タッチされたペン先の実際の位置と、検出された静電容量の変化の大きさの分布における重心位置との誤差が大きくなる。
図16の点線は、タッチパネルにおけるスタイラスペンの軌跡の再現を保証できる重心位置ずれの境界線を示している。図16の等高線において、点線よりも左側の条件下では、スタイラスペンの軌跡の再現を保証できる。一方、点線よりも右側条件下では、スタイラスペンの軌跡の再現を保証できない。メッシュ間隔が小さければ、入力面と垂直な方向に対するスタイラスペンの傾斜角度が0°〜約40°の範囲で、スタイラスペンの軌跡の再現を保証できる。逆に、メッシュ間隔が大きければ、入力面に対するスタイラスペンの傾斜角度が0°〜30°弱までの範囲で、スタイラスペンの軌跡の再現を保証できる。
メッシュ間隔が同じであっても、ドライブラインおよびセンスラインのパターン形状および材質、ならびにカバーガラスの厚さに応じて、検出される静電容量の変化の大きさに影響するノイズの大きさが異なる。図16は、これらノイズの影響を考慮し、ノイズが最悪になるパターン形状および材質ならびにカバーガラスの厚さを有するタッチパネルにおける境界線を示している。この過剰マージンを考慮すると、ペンタッチ検出向けのタッチパネルにおいて、入力面に垂直な方向に対するスタイラスペンの傾斜角度が30°以内であれば、メッシュ間隔に関わらずスタイラスペンの軌跡の再現を保証することができることが分かる。
図11の(a)〜(c)に示すように、本実施形態に係るスタイラスペン1aの通常使用範囲内では、入力面と垂直な方向に対する導電部15の傾斜角度は0°〜30°である。一方、図16に示すように、入力面に垂直な方向を基準にした、全体が導電材料でできたスタイラスペンの入力面に対する傾斜角度が30°以内であれば、メッシュ間隔に関わらずスタイラスペンの軌跡の再現を保証することができる。したがって、本実施形態に係るスタイラスペン1aは、通常の使用範囲内において、入力面におけるタッチ位置の軌跡の再現を保証することができる。
また、ユーザがスタイラスペン1aを持つときに、導電部15に接続された導体部分にユーザの手が触れるので、ペン先11および導電部15の双方が人間と同じ電位(接地)になる。これにより、ペン先11および導電部15が浮遊状態にならないので、静電容量の変化の大きさの分布がより安定する。その結果、タッチ位置をより高精度に検出することができる。
〔実施形態3〕
本発明に係る第3実施形態を図17〜図20に基づき以下に説明する。
図17は、本実施形態に係るタッチ入力システム100bの要部構成を示す斜視図である。この図に示すように、タッチ入力システム100bは、スタイラスペン1b(情報入力ペン)および静電容量方式のタッチパネル2bによって構成されている。
図18は、本実施形態に係るタッチ入力システム100bを構成するスタイラスペン1bおよびタッチパネル2bの要部構成を示す図である。スタイラスペン1bは、実施形態2のスタイラスペン1aが備える各部材に加えて、可動部16および固定部17をさらに備えている。タッチパネル2bは、実施形態2のタッチパネル2aが備える各部材に加えて、近接検知部40および固定指示部41をさらに備えている。
特に図示しないが、本実施形態に係るペン先11は、本発明の実施形態1と同様に、導電性ゴム12と、導電性ゴム12の周囲に巻き付けられる導電性繊維布13とによって構成されている。これにより、ペン先11の太さは、使用時にスタイラスペン1bに与えられる荷重に応じて、少なくとも1024段階の分解能で変化する。したがって、ユーザがスタイラスペン1bを使用してタッチパネル2に文字を書くと、描かれる線の太さが荷重に応じて自在に変化する。
図19は、タッチパネル2bによって検知される前のスタイラスペン1bの状態を示す図である。この図に示すように、可動部16は、スタイラスペン1bのペン先11がタッチパネル2bの入力面から一定距離以上離れているとき、ペン先11および導電部15を含む箇所を動かす。言い換えると、可動部16は、スタイラスペン1bの近接がタッチパネル2bによって検知されないとき、タッチパネル2bの入力面に対する導電部15の長さ方向の傾斜角度が、入力面におけるペン先11の接触位置とペン先11が入力面に接触することによって発生する静電容量の変化の大きさの分布における重心位置との差が、入力面の場所(ペン先11の接触位置)に関わらず一定になる所定の角度になるように、ペン先11および導電部15を含む導電部15を動かす。この条件を満たす所定の角度は、実施形態2において説明したように、たとえば60°〜90°である。
図19の(a)〜(c)の例では、ペン本体10がどのような角度で傾斜していても、ペン先11が自然と地面に向き、かつ導電部15が重力方向と平行になるように、ペン先11および導電部15を含む箇所が動く。このとき、導電部15は入力面に対して直立している。すなわち、導電部15の長さ方向と入力面とが成す角度は90°である。
図20は、タッチパネル2bによって検知された後のスタイラスペン1bの状態を示す図である。スタイラスペン1bのペン先11がタッチパネル2bの入力面に一定距離以内に近づくと、タッチパネル2b内の近接検知部40がそれを検知し、それを固定指示部41に通知する。スタイラスペン1bとタッチパネル2bとは無線通信可能であり、固定指示部41は近接検知部40からの通知を受けて、スタイラスペン1bに対し、ペン先11がタッチパネル2aによって検知した旨を通知すると共に、ペン先11を固定するように指示する。
スタイラスペン1bにおいて、この指示を固定部17が受信する。固定部17は、この指示を受けて、可動部16に対してペン先11および導電部15を含む箇所を固定するように指示する。これにより可動部16は、ペン先11および導電部15を含む箇所を固定する。
図19の(b)に示す状態のスタイラスペン1bのペン先11を、この傾斜角度を維持したままタッチパネル2bの入力面に接触させると、スタイラスペン1bの状態は、図20の(a)に示すものになる。このとき、ペン先11および導電部15を含む箇所は固定されているので、図20の(b)または(c)に示すように、スタイラスペン1bの全体を入力面に向けてさらに傾けたとしても、ペン先11および導電部15を含む箇所はペン本体10に対して相対的に動くことはない。
上述したように、スタイラスペン1bがタッチパネル2bによって検知される前では、導電部15の長さ方向は、タッチパネル2bの入力面に対して直立している。すなわち、入力面に対する導電部15の傾斜角度は90°である。これにより、スタイラスペン1bのペン先11がタッチパネル2bに接触する時点では、導電部15は、入力面に対する傾斜角度が90°の状態で固定される。この後、ユーザがタッチパネル2bを持ち続ける間に、スタイラスペン1bが入力面に対してより傾斜する可能性がある。しかし、タッチパネル2bの通常の使用範囲では、入力面と垂直な方向に対してスタイラスペン1bが60°を超えて大きく傾くことはないため、入力面に対する導電部15の傾斜角度は、スタイラスペン1bの使用時に60°〜90°の範囲内に保たれる。
したがって本実施形態に係るスタイラスペン1bでは、実施形態1のスタイラスペン1aと同様に、ペン先11によって発生する静電容量の変化の大きさの分布に対する導電部15の影響を小さく抑えることができる。これにより、ペン先11が十分に小さくても、スタイラスペン1bを傾けたときにタッチ検出位置のばらつきを抑えることができる。
〔実施形態4〕
本発明に係る第4実施形態を図21〜図23に基づき以下に説明する。
図21は、本実施形態に係るタッチ入力システム100cの要部構成を示す斜視図である。この図に示すように、タッチ入力システム100cは、スタイラスペン1c(情報入力ペン)および静電容量方式のタッチパネル2cによって構成されている。
図22は、本実施形態に係るタッチ入力システム100cを構成するスタイラスペン1cおよびタッチパネル2cの要部構成を示す図である。スタイラスペン1cは、実施形態2のスタイラスペン1aが備える各部材に加えて、可動部16および角度調整部16をさらに備えている。タッチパネル2cは、実施形態1のタッチパネル2aが備える各部材に加えて、分布偏向判定部42および角度調整指示部43をさらに備えている。
特に図示しないが、本実施形態に係るペン先11は、本発明の実施形態1と同様に、導電性ゴム12と、導電性ゴム12の周囲に巻き付けられる導電性繊維布13とによって構成されている。これにより、ペン先11の太さは、使用時にスタイラスペン1cに与えられる荷重に応じて、少なくとも1024段階の分解能で変化する。したがって、ユーザがスタイラスペン1cを使用してタッチパネル2に文字を書くと、描かれる線の太さが荷重に応じて自在に変化する。この結果、スタイラスペン1の押圧力の変化に応じた線の太さの変化を、実用レベルの高精度にすることができる。
本実施形態のスタイラスペン1cでは、実施形態3と同様に、可動部16は、ペン先11および導電部15を含む箇所を動かすことができる。本実施形態では、可動部16はステッピングモータおよび制御回路を備えており、これらの働きによって、ペン先11および導電部15を含む箇所のペン本体10に対する傾斜角度を調整する。
タッチパネル2cにおいて、タッチ位置検出部35は、測定した静電容量の変化の大きさの分布を示すデータを、分布偏向判定部42に出力する。分布偏向判定部42は、入力されたデータに基づき、当該分布の偏りが所定の基準値を超えるか否かを判定し、その結果を角度調整指示部43に通知する。スタイラスペン1cとタッチパネル2cとは無線通信可能であり、角度調整指示部43は、偏りが基準値を超える旨の通知を受けると、分布がx軸におけるどの方向に偏っているのかを示す情報をスタイラスペン1cに送信すると共に、スタイラスペン1cに対して、ペン先11の角度を分布の偏りをより低減する角度に調整するように指示する。
スタイラスペン1cにおいて、この情報および指示を角度調整部16が受信する。角度調整部16は、可動部16のステッピングモータおよび制御回路を制御することによって、ペン先11および導電部15の角度を、分布の偏りをより低減させる角度に変更する。
図23は、スタイラスペン1cにおいて、導電部15の傾斜を静電容量の変化の大きさの分布の偏りに応じて調整する様子を示す図である。図23の(a)〜(c)の上側にスタイラスペン1cを示し、下側に静電容量の変化の大きさの分布を示す。
スタイラスペン1cが、図23の(a)に示す状態で入力面に接触しているとき、導電部15の長さ方向は入力面に対して垂直であるので、測定される静電容量の変化の大きさの分布に偏りは存在しない。したがって分布偏向判定部42は、分布の偏りは所定の基準値を超えないと判定し、角度調整指示部43にその旨を通知する。これを受けて角度調整指示部43は角度調整をスタイラスペン1cに指示しないので、スタイラスペン1cは、導電部15の傾斜角度を調整しない。
一方、スタイラスペン1cが図23の(b)に示す状態で入力面に接触しているとき、導電部15の長さ方向は入力面に一定の角度で傾斜しているので、測定される静電容量の変化の大きさの分布に偏りが存在する。この図の例では、分布はx軸における+xに方向に偏っている。分布偏向判定部42は、この偏りが所定の基準値を超えていると判定し、角度調整指示部43にその旨を通知する。これを受けて角度調整指示部43は、分布が+x方向に偏っていることを通知すると共に、導電部15の角度調整をスタイラスペン1cに指示する。角度調整部16は、これを受けて、導電部15の傾斜角度を、分布の+x方向における偏向を低減させる角度に調整する。具体的には、入力面に対する導電部15の傾斜角度をより増加させるように、可動部16を制御する。
図23の(c)に示す例では、可動部16は、角度調整部16の制御を受けることによって、入力面と垂直な方向に対する導電部15の傾斜角度が0°になるように、導電部15を動かす。これにより分布に対する導電部15の影響を完全に抑制することができるので、分布の偏りを無くすることができる。この結果、分布の対称性が保持されるので、検出されるタッチ位置のばらつきを完全に無くすことができる。
実施形態2および3において説明したように、入力面に対する導電部15の傾斜角度が、ペン先11の接触位置と分布における重心位置との差が、入力面の場所(ペン先11の接触位置)に関わらず一定になる所定の角度(60°〜90°)であれば、検出されるタッチ位置のばらつきを抑えることができる。言い換えると、導電部15の傾斜角度がこの範囲内にある場合の分布の偏り(非対称性)は、タッチ位置のばらつきに影響を与えることのない、十分に許容されるものである。そこで角度調整部16は、測定された分布に一定以上の偏りがある旨の通知をタッチパネル2cから受けたとき、入力面に対する導電部15の傾斜角度が60°〜90°の範囲の角度に近づくように、可動部16を制御することによって、導電部15の傾斜角度を調整すればよい。
これを実現するためには、入力面に対する導電部15の傾斜角度と、そのとき測定される分布の偏りの程度との相対関係を示すデータを予め取得しておき、スタイラスペン1cに用意しておけばよい。角度調整部16は、入力面に対する導電部15の傾斜角度を、所望の角度に調整する場合、当該所望の角度に対応する偏りデータをタッチパネル2cから受信するまで、導電部15の傾斜角度の調整を繰り返せばよい。
以上のように、本実施形態に係るスタイラスペン1cでは、実施形態1のスタイラスペン1aと同様に、ペン先11によって発生する静電容量の変化の大きさの分布の偏りを小さく抑えることができる。これにより、ペン先11が十分に小さくても、スタイラスペン1cを傾けたときにタッチ検出位置のばらつきを抑えることができる。したがって、スタイラスペン1に与えられる荷重が小さい故にタッチパネル2に対するペン先11の接触面の径が小さい場合、タッチパネル2に描かれる細い線の軌跡がギザギザになることを防止できる。同様に、スタイラスペン1に与えられる荷重が大きい故にタッチパネル2に対するペン先11の接触面の径が大きい場合、タッチパネル2に描かれる太い線の軌跡がギザギザになることも防止できる。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る情報入力ペンは、静電容量方式のタッチパネルに情報を入力するための情報入力ペンであって、ペン本体と、導電性ゴムおよび当該導電性ゴムに巻き付けられる導電性繊維布によって構成される導電性のペン先とを備えていることを特徴としている。
上記の構成によれば、情報入力ペンのペン先は、導電性ゴムの柔軟性と導電性繊維布の伸縮性とを兼ね備えており、また非常に柔らかい。したがって、ユーザが、情報入力ペンを用いて、情報入力ペンに与える荷重を変えながらタッチパネルの入力面に線を描くと、ペン先への押し込みの強度(すなわち押圧力)の変化に応じて、ペン先の接触面の径(太さ)が適宜変化する。この結果、描かれた線の「はらい」が、ユーザの意図通りに正確にタッチパネル上に表現される。すなわちユーザは、情報入力ペンを用いることによって、自然な筆書き動作に正確に対応した線をタッチパネルに描くことができる。
本発明の態様2に係る情報入力ペンは、上記態様1において、上記タッチパネルが上記情報入力ペンによって押下される際の押圧力に応じた上記ペン先の太さの変化の分解能が、1024段階以上であることを特徴としている。
上記の構成によれば、情報入力ペンの押圧力の変化に応じた線の太さの変化を、実用レベルの高精度にすることができる。
本発明の態様3に係る情報入力ペンは、上記態様1または2において、上記ペン本体は非導電性であり、上記ペン先に電気的に接続されており、かつ、上記ペン本体の長さ方向に対して斜めに配置されている導電部をさらに備えており、上記ペン先が上記タッチパネルの入力面に接触または近接するとき、上記タッチパネルの入力面に対する上記導電部の長さ方向の傾斜角度が、上記入力面における上記ペン先の接触位置または近接位置と上記ペン先が上記入力面に接触または近接することによって発生する静電容量の変化の大きさの分布における重心位置との差が上記入力面の場所に関わらず一定になる所定の角度であることを特徴としている。
上記の構成によれば、ペン先がタッチパネルの入力面に接触または近接するとき、入力面に対するペン先の実際の接触位置または近接位置と、測定された静電容量の変化の大きさの分布における重心位置との差が、入力面の場所に関わらず一定になる。これにより、静電容量の変化の大きさの分布に対する導電部の影響を抑えることができるので、検出される接触位置または近接位置のばらつきを抑えることができる。
また、入力面と垂直な方向に対する情報入力ペンの傾斜角度を大きくしても、入力面と垂直な方向に対する導電部の傾斜角度は小さいままである。したがって、入力面と垂直な方向に対してスタイラスペンを大きく傾けた場合であっても、検出される接触位置または近接位置のばらつきを抑えることができる。
さらには、測定される静電容量の変化の大きさの分布に対する導電部の影響が小さいので、当該影響を低減するためにペン先を大きくする必要がない。したがって、ペン先が十分に小さくても、スタイラスペンを大きく傾けたときの、検出される接触位置または近接位置のばらつきを抑えることができる。
本発明の態様4に係る情報入力ペンは、上記態様1または2において、上記ペン本体は非導電性であり、上記ペン先に電気的に接続されている導電部と、上記情報入力ペンの接触または近接が上記タッチパネルによって検知されないとき、上記タッチパネルの入力面に対する上記導電部の長さ方向の傾斜角度が、上記入力面における上記ペン先の接触位置または近接位置と上記ペン先が上記入力面に接触または近接することによって発生する静電容量の変化の大きさの分布における重心位置との差が上記入力面の場所に関わらず一定になる所定の角度になるように、上記導電部を動かす可動部と、上記情報入力ペンの近接が上記タッチパネルによって検知されたとき、上記導電部を固定する固定部とをさらに備えていることを特徴としている。
上記の構成によれば、情報入力ペンがタッチパネルによって検知された後、入力面に対するペン先の実際の接触位置または近接位置と、測定された静電容量の変化の大きさの分布における重心位置との差が、入力面の場所に関わらず一定になる。これにより、静電容量の変化の大きさの分布に対する導電部の影響を抑えることができるので、検出される接触位置または近接位置のばらつきを抑えることができる。
また、入力面と垂直な方向に対する情報入力ペンの傾斜角度を大きくしても、入力面と垂直な方向に対する導電部の傾斜角度は小さいままである。したがって、入力面と垂直な方向に対してスタイラスペンを大きく傾けた場合であっても、検出される接触位置または近接位置のばらつきを抑えることができる。
さらには、測定される静電容量の変化の大きさの分布に対する導電部の影響が小さいので、当該影響を低減するためにペン先を大きくする必要がない。したがって、ペン先が十分に小さくても、スタイラスペンを大きく傾けたときの、検出される接触位置または近接位置のばらつきを抑えることができる。
本発明の態様5に係る情報入力ペンは、上記態様1または2において、上記ペン本体は非導電性であり、上記ペン先に電気的に接続されている導電部と、上記タッチパネルによって測定された上記静電容量の分布に一定以上の偏りがある旨の通知を上記タッチパネルから受けたとき、上記タッチパネルの入力面に対する上記導電部の長さ方向の傾斜角度を、上記入力面における上記ペン先の接触位置または近接位置と上記分布における重心位置との差が上記入力面の場所に関わらず一定になる所定の角度により近づけるように、上記導電部を動かす可動部とをさらに備えていることを特徴としている。
上記の構成によれば、測定された静電容量の変化の大きさの分布に偏りがあった場合、入力面に対するペン先の実際の接触位置または近接位置と、測定された静電容量の変化の大きさの分布における重心位置との差が、入力面の場所に関わらず一定になるように、導電部の角度が調整される。この調整が完了が完了すると、静電容量の変化の大きさの分布に対する導電部の影響を抑えることができるので、検出される接触位置または近接位置のばらつきを抑えることができる。
また、調整の完了後では、入力面と垂直な方向に対する情報入力ペンの傾斜角度を大きくしても、入力面と垂直な方向に対する導電部の傾斜角度は小さいままである。したがって、入力面と垂直な方向に対してスタイラスペンを大きく傾けた場合であっても、検出される接触位置または近接位置のばらつきを抑えることができる。
さらには、調整の完了後では、測定される静電容量の変化の大きさの分布に対する導電部の影響が小さいので、当該影響を低減するためにペン先を大きくする必要がない。したがって、ペン先が十分に小さくても、スタイラスペンを大きく傾けたときの、検出される接触位置または近接位置のばらつきを抑えることができる。
本発明の態様6に係る情報入力ペンは、上記態様3〜5のいずれかにおいて、上記所定の角度は、60°以上かつ90°以下であることを特徴としている。
上記の構成によれば、タッチパネルのメッシュ間隔に関わらず、検出される接触位置または近接位置のばらつきを抑えることができる。
本発明の態様7に係る情報入力システム は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の情報入力ペンと、静電容量方式のタッチパネルとを備えていることを特徴としている。
上記の構成によれば、自然な筆書き動作に正確に対応した線をタッチパネルに描くことができる情報入力システムを提供することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
本発明は、静電容量方式のタッチパネルに情報を入力するための情報入力ペン、ならびに当該情報入力ペンおよび静電容量タッチパネルを備えている情報入力システムとして利用することができる。
1,1a〜1c スタイラスペン(情報入力ペン)
2,2a〜1c タッチパネル
10 ペン本体
11 ペン先
12 導電性ゴム
13 導電性繊維布
14 窪み
15 導電部
16 可動部
17 固定部
40 近接検知部
41 固定指示部
42 分布偏向判定部
43 角度調整指示部
100,100a〜100c タッチ入力システム(情報入力システム)
本発明は、情報入力ペンに関し、特に、静電容量方式のタッチパネルに情報を入力するための情報入力ペンに関するものである。
近年、タッチパネルの検出面に接触または近接する指示体(たとえば、ユーザの指やタッチペンなど)の位置を検出することによって、ユーザの指示を受け付けるタッチパネルシステムが、携帯電話および表示装置などの各種の電子情報機器に搭載されることが多くなっている。特に、マルチタッチが可能な投影型の静電容量方式のタッチパネルが、電子情報機器に搭載されることが多くなっている。
投影型の静電容量方式のタッチパネルシステムは、検出面に沿って互いに平行に設けられる複数のドライブラインと、検出面に沿って互いに平行に設けられるとともに複数のドライブラインと交差する複数のセンスラインと、を有するタッチパネルを備える。このタッチパネルは、ドライブラインとセンスラインとの間に形成される静電容量の値が、タッチパネルの検出面に接触または近接した指示体を通じて変化することを利用することによって、検出面における指示体の位置を検出する。したがって、指示体の少なくとも先端部分は導体である必要があり、特に指示体がタッチペンである場合、少なくともペン先が導体である必要がある。
従来のタッチパネルシステムでは、各ドライブラインに所定の電気信号(ドライブ信号)を出力することによって、各ドライブラインと各センサラインとが成す容量の値に応じた所定の信号(センス信号)を各センサラインから取得する。そして、得られたセンス信号に基づきタッチパネルの検出面における静電容量の値の変化の面内分布を算出する。
タッチパネルにタッチペンを接触させる際、その押圧力を変化させることによって、検出面におけるペン先の接触面積を自在に変化させることができる。これによりユーザは、タッチパネルに自由に文字および図形を表示されることができる(特開2014−102788号の段落0044参照)。
上述した従来のタッチパネルシステムは、ペン先の接触面積に応じた静電容量の面内分布を検出し、その検出結果に応じた「線の太さ」を算出することができる。従来、こうして算出された線の太さにしたがって、タッチパネルに対して筆記入力されたデータを表示するソフトウェアが、筆圧検知アプリケーションとして一般に提供されている。このアプリケーションの実行時にユーザがタッチパネルを用いてタッチパネルの検出面に入力した際に得られる筆跡の例を、図24に示す。
図24は、筆圧検知アプリケーションの実行時にユーザが従来のタッチパネルを用いてタッチパネルの検出面に入力した際に得られる筆跡の例を示す図である。この図には、(a)押圧力が弱い場合の筆跡、(b)押圧力が強い場合の筆跡、および(c)押圧力がさらに強い場合の筆跡を、それぞれ示す。タッチペンを用いる際の筆圧(押圧力)の違いが、タッチパネルに描かれる線の太さの違いとして表されることが、この図から分かる。
タッチペンのペン先の接触面積を押圧力に応じて変化させることができる従来技術の例として、特許文献1〜5に以下の各発明が開示されている。
特許文献1:筆管体と、筆管体の先端のすげ込み部に設けた模擬筆鋒体において、模擬筆鋒体は、複数段の円筒体から構成され、径の小さい円筒体が、径の大きい円筒体の内部に収納され、且つ軸方向に摺動可能で、各円筒体を同軸に保ちつつ抜け落ち防止構造を有する入れ子構造とし、少なくとも模擬筆鋒体の腰を構成する円筒体以外の円筒体は、外方に向けて付勢手段により付勢されており、付勢されている各円筒体のそれぞれに対する付勢力は穂先側から順に強くなっていることを特徴とする筆型入力装置。
特許文献2:多孔質の基材と、少なくとも前記基材の表面に一部が露出し、かつ、前記基材の内部で前記基材に結合するゴム質を有する材料と、を有するペン先部材が、ペン本体の端部に取り付け固定されている、ことを特徴とする入力ペン。
特許文献3:使用者に使用されるペン本体を備え、このペン本体の先端部に、導電性のペン先を支持させた静電容量型入力ペンであって、ペン先を、複数本の導電性繊維により筆形に形成したことを特徴とする静電容量型入力ペン。
特許文献4:使用者の手に把持される導電性のペン本体と、該ペン本体と電気的に導通された導電性のペン先とを備えて、静電容量型座標入力パッドに座標情報を入力可能とする静電容量型座標入力パッド用入力ペンに於いて、ペン先が、導電性ゴムにより構成されたことを特徴とする静電容量型座標入力パッド用入力ペン。
特許文献5:導電性材料によりペン軸状に形成され、タッチパネルとの間の静電容量を変化させて当該タッチパネル上の3次元座標を指定する導電部と、前記導電部の一端に非導電性材料により前記導電部よりも細く形成され、前記導電部が3次元座標を指定する際に前記タッチパネルに接触する先端部と、を備える入力装置。
日本国公開特許公報「特開2009-251704号(2009年10月29日公開)」
日本国公開特許公報「特開2013-186803号(2013年9月19日公開)」
日本国公開特許公報「特開2010-39610号(2010年2月18日公開)」
日本国公開特許公報「特開平10-161795号(1998年6月19日公開)」
日本国公開特許公報「特開2014-142676号(2014年8月7日公開)」
上述した特許文献1〜5には、以下の課題がある。
特許文献1:押圧力に応じたペン先の太さの変化が、高々数段階程度しかない。さらには、押圧力に応じたペン先の太さの変化が単調増加にならない。
特許文献2:繊維材料とゴム材質とを有する材料を混練させるための手間およびコストが大きくなる。また、この文献では、繊維材料はペン先部材の剛性を高めるために用いられるものであるため、このような繊維材料を有するペン先部材の太さを、押圧力に応じて十分に変化させることはできない。
特許文献3:この技術は、音楽機器アプリケーションに対応したタッチパネルに対するタッチパネルの「タッチして押す」操作のみを想定している。したがって、タッチパネルのペン先の太さを変化させることによって、軌跡の幅を制御することはできない。さらには、タッチペンのペン先が導電性繊維のみによって形成されているので、押圧力に応じてペン先の太さを十分に大きく変化させることができない。
特許文献4:タッチペンのペン先が導電性ゴムのみによって形成されているので、押圧力に応じたペン先の太さの変化が不十分である。さらに、導電性ゴムの摩擦係数が高いことからペン先の滑りが悪く、これによりタッチペンの使用時にユーザにストレスを与えてしまう。
特許文献5:タッチペンのペン先が非導電性材料のみによって形成されているので、押圧力に応じたペン先の太さの変化が不十分である。
これらの文献に開示された各タッチパネルを用いてタッチペンに入力された線の軌跡の例を、図25に示す。図25は、従来技術に係る各タッチパネルを用いてタッチペンに入力された線の軌跡の例を示す図である。この図の(a)および(b)に示すように、ユーザが、従来技術のタッチペンを用いた線の入力中に筆圧(押圧力)を急激に変化させると、タッチパネルに入力される線の太さが急激に変化する。その結果、描かれた線の軌跡(筆跡)から滑らかさが失われる。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものである。そしてその目的は、自然な筆書き動作に正確に対応した線をタッチパネルに描くことができる情報入力ペン、および、当該情報入力ペンを備えた情報入力システムを提供することにある。
本発明の一態様に係る情報入力ペンは、上記の課題を解決するために、静電容量方式のタッチパネルに情報を入力するための情報入力ペンであって、ペン本体と、導電性ゴムおよび当該導電性ゴムに巻き付けられる導電性繊維布によって構成される導電性のペン先とを備え、上記ペン本体は非導電性であり、上記ペン先に電気的に接続されており、かつ、上記ペン本体の長さ方向に対して斜めに配置されている導電部をさらに備えており、上記ペン先が上記タッチパネルの入力面に接触または近接するとき、上記タッチパネルの入力面に対する上記導電部の長さ方向の傾斜角度が、上記入力面における上記ペン先の接触位置または近接位置と上記ペン先が上記入力面に接触または近接することによって発生する静電容量の変化の大きさの分布における重心位置との差が上記入力面の場所に関わらず一定になる所定の角度であることを特徴としている。
本発明の一態様に係る情報入力ペンは、上記の課題を解決するために、静電容量方式のタッチパネルに情報を入力するための情報入力ペンであって、ペン本体と、導電性ゴムおよび当該導電性ゴムに巻き付けられる導電性繊維布によって構成される導電性のペン先とを備え、上記ペン本体は非導電性であり、上記ペン先に電気的に接続されている導電部と、上記情報入力ペンの接触または近接が上記タッチパネルによって検知されないとき、上記タッチパネルの入力面に対する上記導電部の長さ方向の傾斜角度が、上記入力面における上記ペン先の接触位置または近接位置と上記ペン先が上記入力面に接触または近接することによって発生する静電容量の変化の大きさの分布における重心位置との差が上記入力面の場所に関わらず一定になる所定の角度になるように、上記導電部を動かす可動部と、上記情報入力ペンの近接が上記タッチパネルによって検知されたとき、上記導電部を固定する固定部とをさらに備えていることを特徴としている。
本発明の一態様に係る情報入力ペンは、上記の課題を解決するために、静電容量方式のタッチパネルに情報を入力するための情報入力ペンであって、ペン本体と、導電性ゴムおよび当該導電性ゴムに巻き付けられる導電性繊維布によって構成される導電性のペン先とを備え、上記ペン本体は非導電性であり、上記ペン先に電気的に接続されている導電部と、上記タッチパネルによって測定された上記静電容量の分布に一定以上の偏りがある旨の通知を上記タッチパネルから受けたとき、上記タッチパネルの入力面に対する上記導電部の長さ方向の傾斜角度を、上記入力面における上記ペン先の接触位置または近接位置と上記分布における重心位置との差が上記入力面の場所に関わらず一定になる所定の角度により近づけるように、上記導電部を動かす可動部とをさらに備えていることを特徴としている。
本発明の一態様によれば、自然な筆書き動作に正確に対応した線をタッチパネルに描くことができるという効果を奏する。
本発明の実施形態1に係るタッチ入力システム(情報入力システム)の要部構成を示す斜視図である。
本発明の実施形態1に係るタッチパネルの要部構成を示すブロックである。
本発明の実施形態1に係るスタイラスペンの要部構成を示す図である。
本発明の実施形態1におけるペン先の接触面の径(大きさ)と、タッチパネルにおける静電容量の変化の大きさの分布とを示す図である。
本発明の実施形態1における、ペン先の押し込み長とペン先の接触面の径との関係を示す図である。
本発明の実施形態1における、押圧によりユーザがスタイラスペンに与えた荷重と、ペン先の太さの変化量との関係を示す図である。
(a)は、従来技術に係る、固いペン先を有するスタイラスペンを用いて書いた文字を示す図であり、(b)は、弾力性および伸縮性を兼ね備えた本発明の実施形態1に係るペン先を有するスタイラスペンを用いて書いた文字を示す図である。
本発明の実施形態2に係るタッチ入力システムの要部構成を示す斜視図である。
本発明の実施形態2に係る情報入力システムを構成するタッチパネルの要部構成を示すブロックである。
本発明の実施形態2に係る情報入力システムを構成するスタイラスペンの要部構成を示す図である。
本発明の実施形態2において、タッチパネルの入力面に対するペン本体の傾斜角度と導電部の傾斜角度との関係の例を示す図である。
従来のスタイラスペンをタッチパネルの入力面に対して30°傾けた場合の問題を説明する図である。
従来のスタイラスペンをタッチパネルの入力面に対して45°傾けた場合の問題を説明する図である。
本発明の実施形態2に係るスタイラスペンをタッチパネルの入力面に対して30°傾けた場合の問題を説明する図である。
本発明の実施形態2に係るスタイラスペンの実装例(写真)を示す図である。
従来のスタイラスペンの傾斜と、タッチパネルのメッシュ間隔に対する重心位置の位置ずれとの関係を示す図である。
本発明の実施形態3に係るタッチ入力システムの要部構成を示す斜視図である。
本発明の実施形態3に係るタッチ入力システムを構成するスタイラスペンおよびタッチパネルの要部構成を示す図である。
本発明の実施形態3においてタッチパネルによって検知される前のスタイラスペンの状態を示す図である。
本発明の実施形態3においてタッチパネルによって検知された後のスタイラスペンの状態を示す図である。
本発明の実施形態4に係るタッチ入力システムの要部構成を示す斜視図である。
本発明の実施形態4に係るタッチ入力システムを構成するスタイラスペンおよびタッチパネルの要部構成を示す図である。
本発明の実施形態4に係るスタイラスペンにおいて、導電部の傾斜を静電容量の変化の大きさの分布の偏りに応じて調整する様子を示す図である。
筆圧検知アプリケーションの実行時にユーザが従来のタッチパネルを用いてタッチパネルの検出面に入力した際に得られる筆跡の例を示す図である。
従来技術に係る各タッチパネルを用いてタッチペンに入力された線の軌跡の例を示す図である。
本発明に係る第1実施形態を図1〜図7に基づき以下に説明する。
(タッチ入力システム100の構成)
図1は、本実施形態に係るタッチ入力システム100(情報入力システム)の要部構成を示す斜視図である。この図に示すように、タッチ入力システム100は、スタイラスペン1(情報入力ペン)および静電容量方式のタッチパネル2によって構成されている。ユーザは、タッチパネル2の入力面に対してスタイラスペン1を接触または近接させることによって、タッチパネル2に対するタッチ入力(タッチ操作)を行う。タッチパネル2は表示装置(不図示)と一体化されており、表示装置の表示面上にタッチパネル2の入力面が重ねて配置されている。
タッチパネル2と表示装置とが一体化された情報入力装置では、ユーザは、表示装置の表示面における操作ボタンなどのオブジェクトが表示された領域をタッチすることによって、情報を入力することができる。また、ユーザは、タッチパネル2に入力面に対してスタイラスペン1をなぞることによって、線および文字を入力することができる。
図2は、本実施形態に係るタッチパネル2の要部構成を示すブロックである。この図に示すように、タッチパネル2は、複数のドライブライン22および複数のセンスライン23を有するパネル本体21と、パネル本体21のドライブライン22に駆動信号Dsを印加するドライブライン駆動部24と、この駆動信号Dsの印加によって生じたセンス信号Ssをセンスライン23から受信し、センス信号Ssに対するタッチ情報ISpを生成する信号処理部30とを備えている。特に図示はしないが、パネル本体21の入力面には透明なカバーガラスが設けられており、スタイラスペン1の使用時にそのペン先11がこのカバーガラスに触れることになる。
信号処理部30は、増幅回路31、信号選択部32、A/D変換部33、復号処理部34、およびタッチ位置検出部35を備えている。増幅回路31は、複数のセンスライン23からのセンス信号Ssを増幅する。信号選択部32は、増幅されたセンス信号ASsを順次選択し、選択した増幅されたセンス信号ASsを出力する。A/D変換部33は、出力された増幅後のセンス信号ASsをデジタル信号DSsに変換する。復号処理部34は、得られたデジタル信号DSsを、駆動信号Dsの生成に用いられた系列信号に基づく復号のための変換信号を用いて復号して、パネル本体21においてドライブライン22とセンスライン23との交点部における静電容量の変化の大きさに相当する信号強度Cdを取得する。タッチ位置検出部35は、この信号強度Cdに基づいて、パネル本体21における静電容量の変化の大きさの分布を算出し、当該分布における重心位置および分布の拡がりに基づいて、パネル本体21でのユーザによるタッチ位置およびタッチ範囲を示すタッチ情報ISpを生成することによって、入力面におけるタッチ位置およびタッチ範囲を検出する。
タッチパネル2では、互いに平行に配置された複数のドライブライン22と、互いに平行に配置されたセンスライン23とが立体交差するように配置されている。複数のドライブライン22および複数のセンスライン23とによって、升目上の電極パターンが形成される。少なくとも各ドライブライン22と各センスライン23との交点は絶縁されている。各交点にはドライブライン22とセンスライン23との間の静電容量が発生する。接地された導電性の指示体(指またはスタイラスペン1)がタッチパネル2の入力面に接触または近接すると、指示体付近におけるドライブライン22とセンスライン23との間の電荷が指示体を通じて接地方向へ移動する。これにより、指示体付近における静電容量が減少する。タッチパネル2は、この静電容量の変化の大きさを測定するによって、入力面における指示体のタッチ位置(接触位置)または近接位置を検出する。本実施形態では、タッチパネル2は、静電容量の変化の大きさの分布を測定し、当該分布の重心位置および分布の拡がりを算出することによって、交点以外の地点におけるタッチ位置または近接位置ならびにその範囲をも検出することができる。
(スタイラスペン1の構成)
図3は、本実施形態に係るスタイラスペン1の要部構成を示す図である。図3の(a)に示すように、スタイラスペン1は、ペン本体10およびペン先11を備えている。ペン本体10およびペン先11は、導電性の材料によって構成されている。図3の(b)に示すように、ペン先11は、弾力性を有する導電性ゴム12と、伸縮性を有する導電性繊維布13とによって構成されている。
ペン先11の内部には導電性ゴム12があり、導電性ゴム12の周囲に導電性繊維布13が巻き付けられている。このように、ペン先11は、導電性ゴム12および導電性繊維布13の二重構造を有する。導電性ゴム12の弾力性と導電性繊維布13の伸縮性とが相伴って、押圧によるペン先11の形状変化(径の広がり)をより大きくすることができる。
図3の(b)に示す例では、導電性ゴム12の形状は立方形である。しかし導電性ゴム12の形状はこれに限らず、たとえば球状であってもよく、あるいは、スタイラスペン1の先端側が半球状になる形状であってもよい。これらの場合、導電性繊維布13は、導電性ゴム12におけるスタイラスペン1の先端側の半球形状を保持するように、導電性ゴム12に巻き付けられる必要がある。
導電性ゴム12が導電性繊維布13によって覆われているので、スタイラスペン1の使用時、タッチパネル2の入力面には導電性ゴム12ではなく導電性繊維布13の方が接する。導電性繊維布13の摩擦係数は導電性ゴム12に比べて十分に低いので、ペン先11の内部に導電性ゴム12があっても、スタイラスペン1の使用時にペン先11は滑らかに入力面上を滑ることができる。したがってスタイラスペン1は、快適な操作性をユーザに与えることができる。
上述した特許文献3のように、導電性ゴムに導電性繊維を配合することによってペン先を製造する方法には、製造のための多大な手間およびコストが必要である。一方、本発明の実施形態1のように、導電性ゴム12に導電性繊維布13を巻き付けることによってペン先11を製造する方法は、製造のための手間およびコストを最小限に抑えることができる。
図3の(c)に示すように、スタイラスペン1は、使用時にタッチパネル2の入力面に対して一定の角度で傾斜する。ユーザが、スタイラスペン1に荷重を与えることによって、スタイラスペン1のペン先11をタッチパネル2の入力面に押下する(押し当てる)と、そのときペン先11に掛かる押圧力に応じて、ペン先11の形状が変化する。さらに、この形状変化に応じて、タッチパネル2における静電容量の変化の大きさの分布も変化する。これらの点について、図4を参照して以下に説明する。
(静電容量の分布例)
図4は、本実施形態におけるペン先11の接触面の径(大きさ)と、タッチパネル2における静電容量の変化の大きさの分布とを示す図である。図4の(a)および(b)は、押圧力の強弱によるペン先11の径の違いを示す。図4の(a)は、押圧力が弱い場合のペン先11の径を示し、図4の(b)は、押圧力が強い場合のペン先11の径を示す。これらの図に示すように、押圧力が大きいほど、ペン先11の径はより大きくなる。
図4の(a)および(b)の状態のペン先11がタッチパネル2に接触した場合のタッチパネル2における静電容量の分布を、図4の(c)および(d)にそれぞれ示す。これらの図から分かるように、ペン先11の接触面が大きいほど、静電容量の面内分布がより拡がりかつ静電容量の値がより大きい。タッチパネル2は、図4の(c)または(d)に示すような静電容量の面内分布を検出し、その検出結果に応じた線の太さを算出する。
(変化の分解能)
図5は、本実施形態における、ペン先11の押し込み長とペン先11の接触面の径との関係を示す図である。図5の(a)に、スタイラスペン1が押圧されない場合のペン先11の径Dを示す。本実施形態では、この場合のペン先11の径Dは3mmであるとする。また、ペン先11において導電性ゴム12の外側に巻き付けられている導電性繊維布13の厚さは0.25mmであるとする。
図5の(b)に、スタイラスペン1が押圧され、ペン先11が押し込み長Lnだけペン本体10側に押し込まれた場合のペン先11の径Dnを示す。Dn=D(1+α(Ln/LMax))である。ここで、LMaxは、ペン先11において可能な接触面の最大押し込み長である。αは所定の係数であり、本実施形態ではα=0.2である。図5の(b)に、Ln=LMax/2である場合を示す。この段階では、導電性ゴム12の外側にある導電性繊維布13が広がることによって、ペン先11の径が押圧力に応じて大きくなる。
図5の(c)に、スタイラスペン1が押圧され、ペン先11が最大押し込み長LMaxだけペン本体10側に押し込まれた場合のペン先11の径DMaxを示す。DMax=D(1+α)である。押し込み長が最大のLMaxであるとき、ペン先11の最大径DMaxが達成される。この段階では、導電性ゴム12の周囲の導電性繊維布13に加えて、導電性ゴム12の径も荷重に応じて変化することによって、最大径DMaxが達成される。
図6は、本実施形態における、押圧によりユーザがスタイラスペン1に与えた荷重と、ペン先11の太さの変化量との関係を示す図である。図6の(a)および(b)のいずれも、荷重の変化に対するペン先11の変化が単調に増加することを示している。図6の(a)に示すグラフ61は、荷重の変化に対するペン先11の太さの変化が線形関係になっている。一方、図6の(b)に示すグラフ62は、荷重の変化に対するペン先11の太さの変化が、曲線関係になっている。スタイラスペン1は、図6の(a)に示す理想的な線形関係を有するペン先11を備えていることが好ましい。
α=0.2であるため、最大荷重がスタイラスペン1に与えられた場合、ペン先11の太さは、元の(すなわち荷重がない場合の)太さよりも20%増加する。たとえば、200gの最大荷重がスタイラスペン1に与えられた場合、ペン先11の太さは最大で0.6mm(=3mm×0.20)増加する。
一般的に、人手による最大荷重は、300g〜400gであることが分かっている。本実施形態では、ペン先11の太さの変化量に対する分解能は、ドライブライン22とセンスライン23との交点に設けられるセンサのピッチの0.05%である。たとえばセンサピッチが4mmであれば、ペン先11の太さの変化の分解能は0.002mm/gである。この場合、タッチパネル2は、0.002mm単位の刻みでペン先11の太さ(すなわち線の太さ)の違いを正確に算出することができる。
(線の比較)
図7の(a)は、従来技術に係る、固いペン先を有するスタイラスペンを用いて書いた文字を示す図であり、図7の(b)は、本実施形態に係る、弾力性および伸縮性を兼ね備えたペン先11を有するスタイラスペン1を用いて書いた文字を示す図である。
従来技術に係るスタイラスペンのペン先は固いので、ユーザがスタイラスペンに荷重を与えてもペン先の太さが変化しない。したがって、従来技術に係るスタイラスペンを用いてユーザが荷重を変えながら書いた文字は、図7の(a)に示すように、線の太さが常に一定である。その結果、図7の(a)の矢印に示すように、書いた文字の「はらい」がまったく表現されない。
一方、本発明の実施形態1に係るスタイラスペン1のペン先11は、導電性ゴム12の柔軟性と導電性繊維布13の伸縮性とを兼ね備えており、また非常に柔らかい。したがって、ユーザが、本発明の実施形態1に係るスタイラスペン1を用いて、スタイラスペン1に与える荷重を変えながらタッチパネル2の入力面に文字を書くと、ペン先11への押し込みの強度(すなわち押圧力)の変化に応じて、ペン先11の接触面の径(太さ)が適宜変化する。この結果、図7の(b)の矢印に示すように、描かれた線の「はらい」が、ユーザの意図通りに正確にタッチパネル2上に表現される。すなわちユーザは、スタイラスペン1を用いることによって、本物の筆を用いた自然な筆書き動作に正確に対応した線をタッチパネル2に描くことができる。
〔実施形態2〕
本発明に係る第2実施形態を図8〜図16に基づき以下に説明する。
(タッチ入力システム100aの構成)
図8は、本実施形態に係るタッチ入力システム100a(情報入力システム)の要部構成を示す斜視図である。この図に示すように、タッチ入力システム100aは、スタイラスペン1a(情報入力ペン)および静電容量方式のタッチパネル2aによって構成されている。
図9は、本実施形態に係るタッチパネル2aの要部構成を示すブロックである。この図に示すように、本実施形態に係るタッチパネル2aの構成および機能は、実施形態1に係るタッチパネル2と基本的に同じである。したがって、タッチパネル2aに関する詳細な説明を省略する。
(スタイラスペン1aの構成)
図10は、スタイラスペン1aの要部構成を示す図である。図10の(a)に示すように、スタイラスペン1aは、ペン本体10、ペン先11、および導電部15を備えている。本実施形態のペン本体10は、非導電性の材料によって構成されている。一方、ペン先11および導電部15はいずれも導電性の材料によって構成されている。
特に図示しないが、本実施形態に係るペン先11は、本発明の実施形態1と同様に、導電性ゴム12と、導電性ゴム12の周囲に巻き付けられる導電性繊維布13とによって構成されている。これにより、ペン先11の太さは、使用時にスタイラスペン1bに与えられる荷重に応じて、少なくとも1024段階の分解能で変化する。したがって、ユーザがスタイラスペン1aを使用してタッチパネル2aに文字を書くと、描かれる線の太さが荷重に応じて自在に変化する。
ペン本体10には、スタイラスペン1aの長さ方向に対して30°傾斜する傾斜面が形成されており、導電部15はこの傾斜面に形成されている。これにより導電部15は、ペン本体10の長さ方向に対して斜めに配置されており、より具体的にはペン本体10の長さ方向に対して30°傾斜している。言い換えると、スタイラスペン1aの長さ方向と導電部15の長さ方向とが成す角度は30°である。導電部15の一端はペン先11に電気的に接続されている。
ペン本体10におけるスタイラスペン1aを握る箇所には、複数の窪み14が形成されている。これらの窪み14は、ユーザがスタイラスペン1aを握ったときにユーザの指にフィットする形状を有している。ユーザが自身の指を複数の窪み14にフィットさせるようにしてスタイラスペン1aを自然に握ると、導電部15がスタイラスペン1aの上側(表側)に来る。
スタイラスペン1aにおけるユーザが握る箇所の一部には、図示しない導体部分が設けられている。導電部15は、この導体部分とペン先11とを電気的に接続することによって、人体を介してスタイラスペン1aを接地させる共に、タッチパネル2a内の静電容量を接地方向へ移動させる導線の役割を果たしている。この導体部分は、窪み14に設けられることが望ましい。
本実施形態では、従来例と異なり、ペン先11を小さくしているため、タッチパネル2aに現れる静電容量の変化は、スタイラスペン1aの先端に存在する導体部分にほぼ起因する。本実施形態の場合、スタイラスペン1aの先端に存在する導体はペン先11および導電部15に相当する。導電部15の長さがペン先11よりも十分に大きいことから、測定される静電容量の変化の大きさの分布に与える影響の大部分を、入力面に対する導電部15の傾斜角度に基づく影響が占めている。
図10の(a)に示すように、スタイラスペン1aは、使用時にタッチパネル2aの入力面に対して一定の角度で傾斜する。導電部15はスタイラスペン1aの長さ方向に対して30°傾斜しているので、入力面に対するペン本体10の傾斜角度と導電部15の傾斜角度とは互いに異なる。
(傾斜角度間の関係)
図11は、入力面に対するペン本体10の傾斜角度と導電部15の傾斜角度との関係の例を示す図である。
図11の(a)では、スタイラスペン1aは、入力面に対するペン本体10の傾斜角度が30°になるように傾いている。このとき入力面に対する導電部15の傾斜角度は60°である。すなわち導電部15は、入力面と垂直な方向に対して30°傾いている。
図11の(b)では、スタイラスペン1aは、入力面に対するペン本体10の傾斜角度が60°になるように傾いている。このとき入力面に対する導電部15の傾斜角度は90°である。すなわち導電部15は、入力面と垂直な方向に対してまったく傾いておらず、言い換えると入力面に対して直立している。
図11の(c)では、スタイラスペン1aは、入力面に対するペン本体10の傾斜角度が90°になるように直立している。このとき入力面に対する導電部15の傾斜角度は60°である。したがって導電部15は、入力面と垂直な方向に対して30°傾いている。
図11の(a)〜(c)に示すように、スタイラスペン1aでは、ペン先11がタッチパネル2aの入力面に接触するとき、入力面に対するペン本体10の傾斜角度が30°〜90°の範囲内において、入力面に対する導電部15の傾斜角度は60°〜90°(60°以上かつ90°以下)である。言い換えると、入力面と垂直な方向に対する導電部15の傾斜角度は0°〜30である。導電部15がこれらの範囲の角度で傾いている場合、詳しくは後述するが、入力面に対するペン先11の実際のタッチ位置(または近接位置)と、測定された静電容量の変化の大きさの分布における重心位置との差が、入力面の場所に関わらず一定になる。これにより、静電容量の変化の大きさの分布に対する導電部15の影響を抑えることができるので、検出されるタッチ位置(または近接位置)のばらつきを抑えることができる。
また、図11の(a)に示すように、入力面と垂直な方向に対するスタイラスペン1aの傾斜角度を大きくしても、入力面と垂直な方向に対する導電部15の傾斜角度は30°と小さい。したがって、入力面と垂直な方向に対してスタイラスペン1aを大きく傾けた場合であっても、検出されるタッチ位置のばらつきを抑えることができる。
さらには、スタイラスペン1aは、測定される静電容量の変化の大きさの分布に対する導電部15の影響が考慮されているので、特許文献1に開示されたスタイラスペンとは異なり、当該影響を低減するためにペン先11を大きくする必要がない。したがって、ペン先11が十分に小さくても、スタイラスペン1aを大きく傾けたときの、検出されるタッチ検出のばらつきを抑えることができる。
(軌跡の比較)
従来のスタイラスペンを入力面の垂直方向に対して大きく傾けると、タッチパネル2aにおけるペン先の軌跡はギザギザになる問題が生じる。一方、本実施形態に係るスタイラスペン1aではそのような問題は生じない。その理由について、図12〜14を参照して以下に説明する。なお、ここでいう従来のスタイラスペンとは、たとえば図16および図17に示すような、ペン全体が導体で構成されており、かつ、ペン先が固い導電性材料によって構成されているスタイラスペンのことである。
図12は、従来のスタイラスペンをタッチパネル2aの入力面に対して30°傾けた場合の問題を説明する図である。この図の例では、ユーザは、スタイラスペンをタッチパネル2aの入力面に対して30°傾けて、入力面をなぞる。このとき入力面と垂直な方向に対するスタイラスペンの傾斜角度は60°である。この場合、タッチパネル2aにおけるペン先のタッチ検出位置がばらつくので、ペン先が直線的に動いたとしても、図12の(b)のようにその軌跡はギザギザになる。
これは、図12の(c)に示すように、導体部分の検知範囲が大きくなることによって、静電容量の変化が現れる範囲が広くなることが原因である。図12の(c)に示す範囲における静電容量の変化の大きさの分布を、図12の(d)に示す。図12の(c)および(d)に示すように、この分布の形状はx方向において大きく非対称である。この非対称性が原因となって、実際のタッチ位置と、算出された分布の重心位置との間に差(すなわち位置ずれ)が生じる。
タッチパネルの静電容量は、入力面内において一定ではなく、その場所によって微小な差異がある。このため、2つの場所における静電容量の変化が現れる範囲が同じ大きさであったとしても、それぞれの場所における変化の大きさの分布は必ずしも同じになるとは限らない。
従来のスタイラスペンを入力面の垂直方向に対して大きく傾けることによって、タッチパネル2aにおける静電容量の変化が現れる範囲が大きくなれば、算出される分布の重心位置は、入力面における実際のタッチ位置から大きく離れてしまう。入力面上をペン先が動いたとしても、実際のタッチ位置と算出される重心位置との差が一定であれば、算出された重心位置にタッチ入力の軌跡を表示したとしても、ペン先の動きを再現する表示を行うことができる。しかし、場所によるタッチパネルの静電容量差の影響によって、検出される分布の範囲が場所によって変化するので、ペン先の実際のタッチ位置と算出される重心位置と差も場所によって変化する。このためペン先の動きを忠実に表示できず、図12の(b)に示すようにその軌跡がギザギザになる.
図13は、従来のスタイラスペンをタッチパネル2aの入力面に対して45°傾けた場合の問題を説明する図である。この図の例では、入力面と垂直な方向に対するスタイラスペンの傾斜角度は45°である。この場合、図13の(b)に示すように、依然としてスタイラスペンの軌跡はギザギザになる。
これは、図13の(c)に示すように、導体部分の検知範囲が大きくなることによって静電容量の変化が現れる範囲が広くなることが原因である。図13の(c)に示す範囲における静電容量の変化の大きさの分布を、図13の(d)に示す。図13の(c)および(d)に示すように、この分布の形状はx方向において非対称である。この非対称性が原因となって、実際のタッチ位置と算出された分布の重心位置との位置ずれが生じ、その位置ずれが入力面の場所によって異なるので、図13の(b)に示すように軌跡がギザギザになる。図13の例では、入力面と垂直な方向に対するスタイラスペンの傾斜角度が図12の例よりも小さいので、ギザギザの度合いはより小さいが、それでも問題になることに変わりはない。
図14は、本実施形態に係るスタイラスペン1aをタッチパネル2aの入力面に対して30°傾けた場合の問題を説明する図である。この図の例では、ユーザは、スタイラスペン1aをタッチパネル2aの入力面に対して30°傾けて入力面をなぞる。このとき入力面と垂直な方向に対するスタイラスペン1aの傾斜角度は60°である。スタイラスペン1aにおいて、スタイラスペン1aの長さ方向に対する導電部15の傾斜角度は30°であるので、導電部15は入力面に対して60°傾斜する。すなわち、入力面と垂直な方向に対する導電部15の傾斜角度は30°である。
この場合、タッチパネル2aにおけるペン先の検知結果が一定になるので、図14の(b)のようにその軌跡がギザギザにならずに滑らかになる。これは、図14の(c)に示すように、入力面と垂直な方向に対して導電部15があまり傾いていないので、導電部15の検知範囲が大きくならず、静電容量の変化が現れる範囲が狭くなるからである。図14の(c)は、スタイラスペン1aに対する荷重が小さいためにペン先11の接触面の径が小さい場合の静電容量を示す。図14の(c)に示す範囲における静電容量の変化の大きさの分布を、図14の(d)に示す。図14の(c)および(d)に示すように、分布の形状はx方向において対称的である。分布が対照的であるため、実際のタッチ位置と、検出された分布の重心位置との位置ずれが生じず、その結果、図14の(b)に示すように細い線の軌跡が滑らかになる。
図14の(d)は、スタイラスペン1aに対する荷重が大きいためにペン先11の接触面の径が大きい場合の静電容量を示す。図14の(d)に示す範囲における静電容量の変化の大きさの分布を、図14の(e)に示す。図14の(d)および(e)に示すように、ペン先11の接触面の径が大きく、それによって静電容量の分布がより広い場合であっても、分布の形状はx方向において対称的である。分布が対照的であるため、実際のタッチ位置と、検出された分布の重心位置との位置ずれが生じず、その結果、特に図示はしないが、太い線の軌跡が滑らかになる。
図15は、本実施形態に係るスタイラスペン1aの実装例(写真)を示す図である。図15の(a)に、与えられる荷重が小さい場合のスタイラスペン1aの写真を示し、(b)に、与えられる荷重が大きい場合のスタイラスペン1aの写真を示す。図15の(a)の楕円151内に示すように、スタイラスペン1aに小さい荷重が与えられる場合、ペン先11が変形しないので、タッチパネル2aに対するペン先11の接触面は小さくなる。これにより細い線がタッチパネル2a上に描かれる。一方、図15の(b)の楕円152内に示すように、スタイラスペン1aに大きい荷重が与えられる場合、ペン先11が変形するので、タッチパネル2aに対するペン先11の接触面は大きくなる。これにより太い線がタッチパネル2a上に描かれる。
上述したように、入力面と垂直な方向に対する導電部15の傾斜角度がより小さいと、タッチパネル2aにおいて静電容量の変化が現れる範囲がより狭くなる。これにより、算出される重心位置と実際のタッチ位置との差もより小さくなる。静電容量の変化が現れる範囲がより狭ければ、測定された静電容量の変化の大きさの分布が場所によるタッチパネルの静電容量差の影響によって変化しても、算出された重心位置と実際のタッチ位置との差の場所による変動はごくわずかである。このことは、その差が入力面の場所に関わらず一定であることと実質的に同じである。したがって、本実施形態に係るスタイラスペン1aをタッチパネル2aの入力面に対して図14の(a)に示すように60°傾けて用いたとしても、図14の(b)に示すように、表示されるタッチ位置の軌跡は、ペン先11の動きを忠実に再現した滑らかものになる。
本実施形態に係るタッチ入力システム100aにおいて、算出された重心位置とペン先11の実際のタッチ位置との差が入力面の場所に関わらず一定であることは、算出された重心位置と実際のタッチ位置との差が入力面の場所に応じて異なったとしても、ある場所における差と別の場所における差との間の差が、表示面における最小認識単位(最小表示単位)以下であることと同義である。
(メッシュ間隔と位置ずれとの関係)
上述したように、分布における重心位置のずれは、タッチパネルにおいて検知される傾斜したスタイラスペンの導体部分の面積が、タッチパネルにおける静電容量の変化の大きさの分布の形状に影響を与えて当該分布を非対称にすることによって発生する。この問題の程度は、タッチパネルにおける静電容量のメッシュ間隔に応じて異なる。
静電容量方式のタッチパネルでは、静電容量は、メッシュ間隔とよばれる一定の間隔で形成されている。タッチパネルは、静電容量の変化の大きさの分布を測定してその分布の重心位置を算出するとき、入力面内におけるある一定の領域内の分布の拡がりを算出に用いる。メッシュ間隔がより小さいタッチパネルでは、メッシュ間隔がより大きいタッチパネルに比べて、一定領域内に含まれるより多くの交点における静電容量が変化する。したがって、メッシュ間隔がより小さいタッチパネルでは、より多くのデータを用いて重心位置を算出するができるため、タッチパネルにおける場所ごとの静電容量差の影響を平均化できる。この結果、スタイラスペンの傾斜によって発生するペン先位置と重心位置との誤差は、タッチされる場所が変わっても大きく変動しない。
一方、メッシュ間隔がより大きいタッチパネルでは、より少ないデータを用いて重心位置を求める必要があるため、タッチパネルにおける場所ごとの静電容量差の影響を大きく受ける。これにより、スタイラスペンの傾斜によって発生するペン先位置と重心位置との差が、タッチ位置の場所が変わると大きく変動するという問題が発生する。
図16は、従来のスタイラスペンの傾斜と、タッチパネルのメッシュ間隔に対する重心位置の位置ずれとの関係を示す図である。図16において、横軸はスタイラスペンの傾斜であり、縦軸はメッシュ間隔である。重心位置のずれの分布を、等高線として表す。縦軸は、ペンタッチ検出に対応したタッチパネルにおけるメッシュ間隔の一般的な範囲を、規格値として表している。言い換えると、ペンタッチ検出向けのタッチパネルにおけるメッシュ間隔は、図16の縦軸に示す範囲内にある。
この図に示すように、入力面と垂直な方向に対するスタイラスペン1aの傾斜角度がより大きい場合、重心位置のずれがより大きくなる。また、メッシュ間隔がより大きい場合も、重心位置のずれがより大きくなる。入力面と垂直な方向に対するスタイラスペン1aの傾斜角度が大きいと、スタイラスペン1aの傾斜によって発生する、タッチパネルにおいて検出される導体部分の面積が増加する。一方、メッシュ間隔が大きいと、タッチされたペン先の実際の位置と、検出された静電容量の変化の大きさの分布における重心位置との誤差が大きくなる。
図16の点線は、タッチパネルにおけるスタイラスペンの軌跡の再現を保証できる重心位置ずれの境界線を示している。図16の等高線において、点線よりも左側の条件下では、スタイラスペンの軌跡の再現を保証できる。一方、点線よりも右側条件下では、スタイラスペンの軌跡の再現を保証できない。メッシュ間隔が小さければ、入力面と垂直な方向に対するスタイラスペンの傾斜角度が0°〜約40°の範囲で、スタイラスペンの軌跡の再現を保証できる。逆に、メッシュ間隔が大きければ、入力面に対するスタイラスペンの傾斜角度が0°〜30°弱までの範囲で、スタイラスペンの軌跡の再現を保証できる。
メッシュ間隔が同じであっても、ドライブラインおよびセンスラインのパターン形状および材質、ならびにカバーガラスの厚さに応じて、検出される静電容量の変化の大きさに影響するノイズの大きさが異なる。図16は、これらノイズの影響を考慮し、ノイズが最悪になるパターン形状および材質ならびにカバーガラスの厚さを有するタッチパネルにおける境界線を示している。この過剰マージンを考慮すると、ペンタッチ検出向けのタッチパネルにおいて、入力面に垂直な方向に対するスタイラスペンの傾斜角度が30°以内であれば、メッシュ間隔に関わらずスタイラスペンの軌跡の再現を保証することができることが分かる。
図11の(a)〜(c)に示すように、本実施形態に係るスタイラスペン1aの通常使用範囲内では、入力面と垂直な方向に対する導電部15の傾斜角度は0°〜30°である。一方、図16に示すように、入力面に垂直な方向を基準にした、全体が導電材料でできたスタイラスペンの入力面に対する傾斜角度が30°以内であれば、メッシュ間隔に関わらずスタイラスペンの軌跡の再現を保証することができる。したがって、本実施形態に係るスタイラスペン1aは、通常の使用範囲内において、入力面におけるタッチ位置の軌跡の再現を保証することができる。
また、ユーザがスタイラスペン1aを持つときに、導電部15に接続された導体部分にユーザの手が触れるので、ペン先11および導電部15の双方が人間と同じ電位(接地)になる。これにより、ペン先11および導電部15が浮遊状態にならないので、静電容量の変化の大きさの分布がより安定する。その結果、タッチ位置をより高精度に検出することができる。
〔実施形態3〕
本発明に係る第3実施形態を図17〜図20に基づき以下に説明する。
図17は、本実施形態に係るタッチ入力システム100bの要部構成を示す斜視図である。この図に示すように、タッチ入力システム100bは、スタイラスペン1b(情報入力ペン)および静電容量方式のタッチパネル2bによって構成されている。
図18は、本実施形態に係るタッチ入力システム100bを構成するスタイラスペン1bおよびタッチパネル2bの要部構成を示す図である。スタイラスペン1bは、実施形態2のスタイラスペン1aが備える各部材に加えて、可動部16および固定部17をさらに備えている。タッチパネル2bは、実施形態2のタッチパネル2aが備える各部材に加えて、近接検知部40および固定指示部41をさらに備えている。
特に図示しないが、本実施形態に係るペン先11は、本発明の実施形態1と同様に、導電性ゴム12と、導電性ゴム12の周囲に巻き付けられる導電性繊維布13とによって構成されている。これにより、ペン先11の太さは、使用時にスタイラスペン1bに与えられる荷重に応じて、少なくとも1024段階の分解能で変化する。したがって、ユーザがスタイラスペン1bを使用してタッチパネル2bに文字を書くと、描かれる線の太さが荷重に応じて自在に変化する。
図19は、タッチパネル2bによって検知される前のスタイラスペン1bの状態を示す図である。この図に示すように、可動部16は、スタイラスペン1bのペン先11がタッチパネル2bの入力面から一定距離以上離れているとき、ペン先11および導電部15を含む箇所を動かす。言い換えると、可動部16は、スタイラスペン1bの近接がタッチパネル2bによって検知されないとき、タッチパネル2bの入力面に対する導電部15の長さ方向の傾斜角度が、入力面におけるペン先11の接触位置とペン先11が入力面に接触することによって発生する静電容量の変化の大きさの分布における重心位置との差が、入力面の場所(ペン先11の接触位置)に関わらず一定になる所定の角度になるように、ペン先11および導電部15を含む箇所を動かす。この条件を満たす所定の角度は、実施形態2において説明したように、たとえば60°〜90°である。
図19の(a)〜(c)の例では、ペン本体10がどのような角度で傾斜していても、ペン先11が自然と地面に向き、かつ導電部15が重力方向と平行になるように、ペン先11および導電部15を含む箇所が動く。このとき、導電部15は入力面に対して直立している。すなわち、導電部15の長さ方向と入力面とが成す角度は90°である。
図20は、タッチパネル2bによって検知された後のスタイラスペン1bの状態を示す図である。スタイラスペン1bのペン先11がタッチパネル2bの入力面に一定距離以内に近づくと、タッチパネル2b内の近接検知部40がそれを検知し、それを固定指示部41に通知する。スタイラスペン1bとタッチパネル2bとは無線通信可能であり、固定指示部41は近接検知部40からの通知を受けて、スタイラスペン1bに対し、ペン先11がタッチパネル2bによって検知した旨を通知すると共に、ペン先11を固定するように指示する。
スタイラスペン1bにおいて、この指示を固定部17が受信する。固定部17は、この指示を受けて、可動部16に対してペン先11および導電部15を含む箇所を固定するように指示する。これにより可動部16は、ペン先11および導電部15を含む箇所を固定する。
図19の(b)に示す状態のスタイラスペン1bのペン先11を、この傾斜角度を維持したままタッチパネル2bの入力面に接触させると、スタイラスペン1bの状態は、図20の(a)に示すものになる。このとき、ペン先11および導電部15を含む箇所は固定されているので、図20の(b)または(c)に示すように、スタイラスペン1bの全体を入力面に向けてさらに傾けたとしても、ペン先11および導電部15を含む箇所はペン本体10に対して相対的に動くことはない。
上述したように、スタイラスペン1bがタッチパネル2bによって検知される前では、導電部15の長さ方向は、タッチパネル2bの入力面に対して直立している。すなわち、入力面に対する導電部15の傾斜角度は90°である。これにより、スタイラスペン1bのペン先11がタッチパネル2bに接触する時点では、導電部15は、入力面に対する傾斜角度が90°の状態で固定される。この後、ユーザがタッチパネル2bを持ち続ける間に、スタイラスペン1bが入力面に対してより傾斜する可能性がある。しかし、タッチパネル2bの通常の使用範囲では、入力面と垂直な方向に対してスタイラスペン1bが60°を超えて大きく傾くことはないため、入力面に対する導電部15の傾斜角度は、スタイラスペン1bの使用時に60°〜90°の範囲内に保たれる。
したがって本実施形態に係るスタイラスペン1bでは、実施形態1のスタイラスペン1aと同様に、ペン先11によって発生する静電容量の変化の大きさの分布に対する導電部15の影響を小さく抑えることができる。これにより、ペン先11が十分に小さくても、スタイラスペン1bを傾けたときにタッチ検出位置のばらつきを抑えることができる。
〔実施形態4〕
本発明に係る第4実施形態を図21〜図23に基づき以下に説明する。
図21は、本実施形態に係るタッチ入力システム100cの要部構成を示す斜視図である。この図に示すように、タッチ入力システム100cは、スタイラスペン1c(情報入力ペン)および静電容量方式のタッチパネル2cによって構成されている。
図22は、本実施形態に係るタッチ入力システム100cを構成するスタイラスペン1cおよびタッチパネル2cの要部構成を示す図である。スタイラスペン1cは、実施形態2のスタイラスペン1aが備える各部材に加えて、可動部16および角度調整部18をさらに備えている。タッチパネル2cは、実施形態2のタッチパネル2aが備える各部材に加えて、分布偏向判定部42および角度調整指示部43をさらに備えている。
特に図示しないが、本実施形態に係るペン先11は、本発明の実施形態1と同様に、導電性ゴム12と、導電性ゴム12の周囲に巻き付けられる導電性繊維布13とによって構成されている。これにより、ペン先11の太さは、使用時にスタイラスペン1cに与えられる荷重に応じて、少なくとも1024段階の分解能で変化する。したがって、ユーザがスタイラスペン1cを使用してタッチパネル2cに文字を書くと、描かれる線の太さが荷重に応じて自在に変化する。この結果、スタイラスペン1cの押圧力の変化に応じた線の太さの変化を、実用レベルの高精度にすることができる。
本実施形態のスタイラスペン1cでは、実施形態3と同様に、可動部16は、ペン先11および導電部15を含む箇所を動かすことができる。本実施形態では、可動部16はステッピングモータおよび制御回路を備えており、これらの働きによって、ペン先11および導電部15を含む箇所のペン本体10に対する傾斜角度を調整する。
タッチパネル2cにおいて、タッチ位置検出部35は、測定した静電容量の変化の大きさの分布を示すデータを、分布偏向判定部42に出力する。分布偏向判定部42は、入力されたデータに基づき、当該分布の偏りが所定の基準値を超えるか否かを判定し、その結果を角度調整指示部43に通知する。スタイラスペン1cとタッチパネル2cとは無線通信可能であり、角度調整指示部43は、偏りが基準値を超える旨の通知を受けると、分布がx軸におけるどの方向に偏っているのかを示す情報をスタイラスペン1cに送信すると共に、スタイラスペン1cに対して、ペン先11の角度を分布の偏りをより低減する角度に調整するように指示する。
スタイラスペン1cにおいて、この情報および指示を角度調整部18が受信する。角度調整部18は、可動部16のステッピングモータおよび制御回路を制御することによって、ペン先11および導電部15の角度を、分布の偏りをより低減させる角度に変更する。
図23は、スタイラスペン1cにおいて、導電部15の傾斜を静電容量の変化の大きさの分布の偏りに応じて調整する様子を示す図である。図23の(a)〜(c)の上側にスタイラスペン1cを示し、下側に静電容量の変化の大きさの分布を示す。
スタイラスペン1cが、図23の(a)に示す状態で入力面に接触しているとき、導電部15の長さ方向は入力面に対して垂直であるので、測定される静電容量の変化の大きさの分布に偏りは存在しない。したがって分布偏向判定部42は、分布の偏りは所定の基準値を超えないと判定し、角度調整指示部43にその旨を通知する。これを受けて角度調整指示部43は角度調整をスタイラスペン1cに指示しないので、スタイラスペン1cは、導電部15の傾斜角度を調整しない。
一方、スタイラスペン1cが図23の(b)に示す状態で入力面に接触しているとき、導電部15の長さ方向は入力面に一定の角度で傾斜しているので、測定される静電容量の変化の大きさの分布に偏りが存在する。この図の例では、分布はx軸における+xに方向に偏っている。分布偏向判定部42は、この偏りが所定の基準値を超えていると判定し、角度調整指示部43にその旨を通知する。これを受けて角度調整指示部43は、分布が+x方向に偏っていることを通知すると共に、導電部15の角度調整をスタイラスペン1cに指示する。角度調整部18は、これを受けて、導電部15の傾斜角度を、分布の+x方向における偏向を低減させる角度に調整する。具体的には、入力面に対する導電部15の傾斜角度をより増加させるように、可動部16を制御する。
図23の(c)に示す例では、可動部16は、角度調整部18の制御を受けることによって、入力面と垂直な方向に対する導電部15の傾斜角度が0°になるように、導電部15を動かす。これにより分布に対する導電部15の影響を完全に抑制することができるので、分布の偏りを無くすることができる。この結果、分布の対称性が保持されるので、検出されるタッチ位置のばらつきを完全に無くすことができる。
実施形態2および3において説明したように、入力面に対する導電部15の傾斜角度が、ペン先11の接触位置と分布における重心位置との差が、入力面の場所(ペン先11の接触位置)に関わらず一定になる所定の角度(60°〜90°)であれば、検出されるタッチ位置のばらつきを抑えることができる。言い換えると、導電部15の傾斜角度がこの範囲内にある場合の分布の偏り(非対称性)は、タッチ位置のばらつきに影響を与えることのない、十分に許容されるものである。そこで角度調整部18は、測定された分布に一定以上の偏りがある旨の通知をタッチパネル2cから受けたとき、入力面に対する導電部15の傾斜角度が60°〜90°の範囲の角度に近づくように、可動部16を制御することによって、導電部15の傾斜角度を調整すればよい。
これを実現するためには、入力面に対する導電部15の傾斜角度と、そのとき測定される分布の偏りの程度との相対関係を示すデータを予め取得しておき、スタイラスペン1cに用意しておけばよい。角度調整部18は、入力面に対する導電部15の傾斜角度を、所望の角度に調整する場合、当該所望の角度に対応する偏りデータをタッチパネル2cから受信するまで、導電部15の傾斜角度の調整を繰り返せばよい。
以上のように、本実施形態に係るスタイラスペン1cでは、実施形態1のスタイラスペン1aと同様に、ペン先11によって発生する静電容量の変化の大きさの分布の偏りを小さく抑えることができる。これにより、ペン先11が十分に小さくても、スタイラスペン1cを傾けたときにタッチ検出位置のばらつきを抑えることができる。したがって、スタイラスペン1cに与えられる荷重が小さい故にタッチパネル2cに対するペン先11の接触面の径が小さい場合、タッチパネル2cに描かれる細い線の軌跡がギザギザになることを防止できる。同様に、スタイラスペン1cに与えられる荷重が大きい故にタッチパネル2cに対するペン先11の接触面の径が大きい場合、タッチパネル2cに描かれる太い線の軌跡がギザギザになることも防止できる。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る情報入力ペンは、静電容量方式のタッチパネルに情報を入力するための情報入力ペンであって、ペン本体と、導電性ゴムおよび当該導電性ゴムに巻き付けられる導電性繊維布によって構成される導電性のペン先とを備えていることを特徴としている。
上記の構成によれば、情報入力ペンのペン先は、導電性ゴムの柔軟性と導電性繊維布の伸縮性とを兼ね備えており、また非常に柔らかい。したがって、ユーザが、情報入力ペンを用いて、情報入力ペンに与える荷重を変えながらタッチパネルの入力面に線を描くと、ペン先への押し込みの強度(すなわち押圧力)の変化に応じて、ペン先の接触面の径(太さ)が適宜変化する。この結果、描かれた線の「はらい」が、ユーザの意図通りに正確にタッチパネル上に表現される。すなわちユーザは、情報入力ペンを用いることによって、自然な筆書き動作に正確に対応した線をタッチパネルに描くことができる。
本発明の態様2に係る情報入力ペンは、上記態様1において、上記タッチパネルが上記情報入力ペンによって押下される際の押圧力に応じた上記ペン先の太さの変化の分解能が、1024段階以上であることを特徴としている。
上記の構成によれば、情報入力ペンの押圧力の変化に応じた線の太さの変化を、実用レベルの高精度にすることができる。
本発明の態様3に係る情報入力ペンは、上記態様1または2において、上記ペン本体は非導電性であり、上記ペン先に電気的に接続されており、かつ、上記ペン本体の長さ方向に対して斜めに配置されている導電部をさらに備えており、上記ペン先が上記タッチパネルの入力面に接触または近接するとき、上記タッチパネルの入力面に対する上記導電部の長さ方向の傾斜角度が、上記入力面における上記ペン先の接触位置または近接位置と上記ペン先が上記入力面に接触または近接することによって発生する静電容量の変化の大きさの分布における重心位置との差が上記入力面の場所に関わらず一定になる所定の角度であることを特徴としている。
上記の構成によれば、ペン先がタッチパネルの入力面に接触または近接するとき、入力面に対するペン先の実際の接触位置または近接位置と、測定された静電容量の変化の大きさの分布における重心位置との差が、入力面の場所に関わらず一定になる。これにより、静電容量の変化の大きさの分布に対する導電部の影響を抑えることができるので、検出される接触位置または近接位置のばらつきを抑えることができる。
また、入力面と垂直な方向に対する情報入力ペンの傾斜角度を大きくしても、入力面と垂直な方向に対する導電部の傾斜角度は小さいままである。したがって、入力面と垂直な方向に対してスタイラスペンを大きく傾けた場合であっても、検出される接触位置または近接位置のばらつきを抑えることができる。
さらには、測定される静電容量の変化の大きさの分布に対する導電部の影響が小さいので、当該影響を低減するためにペン先を大きくする必要がない。したがって、ペン先が十分に小さくても、スタイラスペンを大きく傾けたときの、検出される接触位置または近接位置のばらつきを抑えることができる。
本発明の態様4に係る情報入力ペンは、上記態様1または2において、上記ペン本体は非導電性であり、上記ペン先に電気的に接続されている導電部と、上記情報入力ペンの接触または近接が上記タッチパネルによって検知されないとき、上記タッチパネルの入力面に対する上記導電部の長さ方向の傾斜角度が、上記入力面における上記ペン先の接触位置または近接位置と上記ペン先が上記入力面に接触または近接することによって発生する静電容量の変化の大きさの分布における重心位置との差が上記入力面の場所に関わらず一定になる所定の角度になるように、上記導電部を動かす可動部と、上記情報入力ペンの近接が上記タッチパネルによって検知されたとき、上記導電部を固定する固定部とをさらに備えていることを特徴としている。
上記の構成によれば、情報入力ペンがタッチパネルによって検知された後、入力面に対するペン先の実際の接触位置または近接位置と、測定された静電容量の変化の大きさの分布における重心位置との差が、入力面の場所に関わらず一定になる。これにより、静電容量の変化の大きさの分布に対する導電部の影響を抑えることができるので、検出される接触位置または近接位置のばらつきを抑えることができる。
また、入力面と垂直な方向に対する情報入力ペンの傾斜角度を大きくしても、入力面と垂直な方向に対する導電部の傾斜角度は小さいままである。したがって、入力面と垂直な方向に対してスタイラスペンを大きく傾けた場合であっても、検出される接触位置または近接位置のばらつきを抑えることができる。
さらには、測定される静電容量の変化の大きさの分布に対する導電部の影響が小さいので、当該影響を低減するためにペン先を大きくする必要がない。したがって、ペン先が十分に小さくても、スタイラスペンを大きく傾けたときの、検出される接触位置または近接位置のばらつきを抑えることができる。
本発明の態様5に係る情報入力ペンは、上記態様1または2において、上記ペン本体は非導電性であり、上記ペン先に電気的に接続されている導電部と、上記タッチパネルによって測定された上記静電容量の分布に一定以上の偏りがある旨の通知を上記タッチパネルから受けたとき、上記タッチパネルの入力面に対する上記導電部の長さ方向の傾斜角度を、上記入力面における上記ペン先の接触位置または近接位置と上記分布における重心位置との差が上記入力面の場所に関わらず一定になる所定の角度により近づけるように、上記導電部を動かす可動部とをさらに備えていることを特徴としている。
上記の構成によれば、測定された静電容量の変化の大きさの分布に偏りがあった場合、入力面に対するペン先の実際の接触位置または近接位置と、測定された静電容量の変化の大きさの分布における重心位置との差が、入力面の場所に関わらず一定になるように、導電部の角度が調整される。この調整が完了すると、静電容量の変化の大きさの分布に対する導電部の影響を抑えることができるので、検出される接触位置または近接位置のばらつきを抑えることができる。
また、調整の完了後では、入力面と垂直な方向に対する情報入力ペンの傾斜角度を大きくしても、入力面と垂直な方向に対する導電部の傾斜角度は小さいままである。したがって、入力面と垂直な方向に対してスタイラスペンを大きく傾けた場合であっても、検出される接触位置または近接位置のばらつきを抑えることができる。
さらには、調整の完了後では、測定される静電容量の変化の大きさの分布に対する導電部の影響が小さいので、当該影響を低減するためにペン先を大きくする必要がない。したがって、ペン先が十分に小さくても、スタイラスペンを大きく傾けたときの、検出される接触位置または近接位置のばらつきを抑えることができる。
本発明の態様6に係る情報入力ペンは、上記態様3〜5のいずれかにおいて、上記所定の角度は、60°以上かつ90°以下であることを特徴としている。
上記の構成によれば、タッチパネルのメッシュ間隔に関わらず、検出される接触位置または近接位置のばらつきを抑えることができる。
本発明の態様7に係る情報入力システム は、上記態様1〜6のいずれかの情報入力ペンと、静電容量方式のタッチパネルとを備えていることを特徴としている。
上記の構成によれば、自然な筆書き動作に正確に対応した線をタッチパネルに描くことができる情報入力システムを提供することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
本発明は、静電容量方式のタッチパネルに情報を入力するための情報入力ペン、ならびに当該情報入力ペンおよび静電容量タッチパネルを備えている情報入力システムとして利用することができる。
1,1a〜1c スタイラスペン(情報入力ペン)
2,2a〜2c タッチパネル
10 ペン本体
11 ペン先
12 導電性ゴム
13 導電性繊維布
14 窪み
15 導電部
16 可動部
17 固定部
40 近接検知部
41 固定指示部
42 分布偏向判定部
43 角度調整指示部
100,100a〜100c タッチ入力システム(情報入力システム)