JPWO2016143876A1 - 配位子化合物、並びにそれを用いた単孔性若しくは多孔性配位高分子 - Google Patents
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Abstract
当該MOPを製造可能な配位子化合物を用いた物質分離膜(特にガス分離膜)も提供する。2価以上の金属イオンと、一般式(3):[式中、mは1〜3の整数を示す。X1は硫黄原子、酸素原子、窒素原子、炭素原子、置換されていてもよい芳香族炭化水素基又は置換されていてもよい複素芳香族基を示す。X2は単結合又は2価の連結基を示す。R1は、水素原子、又は置換されていてもよいアルキル基を示す。mが2以上の場合、R1は同一でも異なっていてもよい。R2はで表される基を示す。Yは芳香族炭化水素環又は複素芳香環を示す。Zは同一又は異なって、置換されていてもよいエチレン鎖を示す。nは5〜20000の整数を示す。]で表される有機配位子とを含有し、且つ、該金属イオンと該有機配位子とが交互に配位結合されている、単孔性又は多孔性配位高分子は、高分子マトリクスを使用せずともフィルム化ができ、溶媒可溶性及び成形加工性を付与することができる。
Description
本発明は、配位子化合物、並びに単孔性若しくは多孔性配位高分子に関する。
有機配位子と金属イオンとが錯形成し、自己組織化的に構築される有機金属多面体(Metal-Organic Polyhedra: MOP)は、内部に数Å〜数nm程度の空隙を有するケージ状化合物である(例えば、非特許文献1)。MOPは、ケージ構造内部に様々な小分子を取り込むことが可能であり、超分子ホストとしてだけでなく、近年ではその細孔を利用したガス等の物質の吸着及び/又は分離材料としての利用も広く検討されている(例えば、非特許文献2)。しかしながら、MOP単体は通常結晶又は粉末状固体として得られ、各種溶剤に溶けにくく、また加熱によっても融解しないため、汎用材料として普及するために不可欠な溶液塗布、熱成形といった成形加工性に乏しい。
このように、MOPは成形加工性に乏しいものの、その特異な構造を活用するため、フィルム化する手法は種々試みられている(例えば、非特許文献3)。しかしながら、その手法はいずれも、MOPを高分子マトリクス中に分散させてフィルム化する手法であり、高分子マトリクスを使用せずにMOPをフィルム化する手法は存在しない。
Hiroyasu Furukawa, Jaheon Kim, Katherine E Plass, and Omar M Yaghi, J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 8398.
Jian-Rong Li and Hong-Cai Zhou, Nat. Chem. 2010, 2, 893.
Edson V Perez, Kenneth J Balkus, John P Ferraris, and Inga H Musselman, Journal of Membrane Science 2014, 463, 82.
上記のとおり、MOPはその特異な構造を有することから、種々の用途への適用が試みられるものの、物質の吸着及び/又は分離材料といった目的では粉末状微結晶固体としてしか扱うことができず、また、溶媒可溶性及び成形加工性に乏しく、そのため、高分子マトリクス中に分散させる手法でしかフィルム化することはできなかった。一方、MOPを汎用材料として普及させるためには、汎用のプロセスである熱成形、塗布等の手法で加工できる素材であることが好ましい。また、MOPを高分子マトリクス中に分散させるフィルム化手法においては、フィルム中のMOP含有量を40〜50 %質量程度まで上げることができるが、MOPと高分子マトリクスの間に結合がないため、フィルムの強度が著しく低下するという問題点がある。そこで、本発明は、MOPと高分子とを化学的に結合させた化合物を設計し、高分子マトリクスを使用せずともフィルム化が可能な、溶媒可溶性及び熱成形加工性を付与したMOP、並びに当該MOPを製造可能な配位子化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、このようにしてMOPと高分子とを化学的に結合させることで溶媒可溶性及び熱成形加工性を付与したMOPを用いた物質分離膜(特にガス分離膜)を提供することも目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、MOP外表面から所望の高分子化合物を可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT重合)することにより、MOPが有する特性は維持しつつ、MOPに高分子化合物由来の高い溶媒可溶性、成形加工性等を付与することができることを見出した。このような溶媒可溶性及び成形加工性が付与されたMOPは、特定の金属イオンと、特定の有機配位子とが交互に配位結合されて形成されている。本発明者らは、このような知見に基づき、さらに研究を重ね、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下の構成を包含する。
項1.一般式(1):
[式中、mは1〜3の整数を示す。X1は硫黄原子、酸素原子、窒素原子、炭素原子、置換されていてもよい芳香族炭化水素基又は置換されていてもよい複素芳香族基を示す。X2は単結合又は2価の連結基を示す。R1は、水素原子、又は置換されていてもよいアルキル基を示す。mが2以上の場合、R1は同一でも異なっていてもよい。R2は
で表される基を示す。Yは芳香族炭化水素環又は複素芳香環を示す。]
で表される配位子化合物。
で表される配位子化合物。
項2.前記R2が、
で表される基である、項1に記載の配位子化合物。
項3.前記X2が、一般式(2):
[式中、R3は水素原子又は置換されていてもよいアルキル基を示す。R4は水素原子、置換されていてもよいアルキル基又はシアノ基を示す。X3は単結合、置換されていてもよいアルキレン基、又は−R5−COO−(R5は置換されていてもよいアルキレン基を示す)で表される基を示す。]
で表される基である、項1又は2に記載の配位子化合物。
で表される基である、項1又は2に記載の配位子化合物。
項4.前記一般式(3)におけるYが、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピロール環、若しくはチオフェン環からなる単環、又は前記単環に1個又は2個以上のベンゼン環が縮合した縮合環であり、
前記単環又は縮合環とCOO−基との結合中に、一般式(6):
前記単環又は縮合環とCOO−基との結合中に、一般式(6):
[式中、R8は同一又は異なって、炭素原子又は窒素原子を示す。R9は置換されていてもよい2価の芳香族炭化水素基を示す。kは0〜2の整数を示す。]
で表される基が含まれていてもよい、項1〜3のいずれかに記載の配位子化合物。
で表される基が含まれていてもよい、項1〜3のいずれかに記載の配位子化合物。
項5.2価以上の金属イオンと、一般式(3):
[式中、mは1〜3の整数を示す。X1は硫黄原子、酸素原子、窒素原子、炭素原子、置換されていてもよい芳香族炭化水素基又は置換されていてもよい複素芳香族基を示す。X2は単結合又は2価の連結基を示す。R1は、水素原子、又は置換されていてもよいアルキル基を示す。mが2以上の場合、R1は同一でも異なっていてもよい。R2は
で表される基を示す。Yは芳香族炭化水素環又は複素芳香環を示す。Zは同一又は異なって、置換されていてもよいエチレン鎖を示す。nは5〜20000の整数を示す。]
で表される有機配位子とを含有し、且つ、該金属イオンと該有機配位子とが交互に配位結合されている、単孔性又は多孔性配位高分子。
で表される有機配位子とを含有し、且つ、該金属イオンと該有機配位子とが交互に配位結合されている、単孔性又は多孔性配位高分子。
項6.前記R2が、
で表される基である、項5に記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
項7.前記X2が、一般式(2):
[式中、R3は水素原子又は置換されていてもよいアルキル基を示す。R4は水素原子、置換されていてもよいアルキル基又はシアノ基を示す。X3は単結合、置換されていてもよいアルキレン基、又は−R5−COO−(R5は置換されていてもよいアルキレン基を示す)で表される基を示す。]
で表される基である、項5又は6に記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
で表される基である、項5又は6に記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
項8.前記Zが、一般式(4):
[式中、R6は水素原子又は置換されていてもよいアルキル基を示す。R7は水酸基、置換されていてもよいカルボキシ基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基を示す。]
で表される鎖である、項5〜7のいずれかに記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
で表される鎖である、項5〜7のいずれかに記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
項9.前記金属イオンと、前記有機配位子とからなる、項5〜8のいずれかに記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
項10.前記金属イオンを4個以上含有し、且つ、前記有機配位子を4個以上含有する、項5〜9のいずれかに記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
項11.記金属イオンが2価の金属イオンである、項5〜10のいずれかに記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
項12.前記金属イオンが遷移金属イオンである、項5〜11のいずれかに記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
項13.前記金属イオンが、銅イオン、亜鉛イオン、コバルトイオン、カドミウムイオン、ロジウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、パラジウムイオン、ランタンイオン、及びジルコニウムイオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項5〜12のいずれかに記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
項14.前記一般式(3)におけるYが、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピロール環、若しくはチオフェン環からなる単環、又は前記単環に1個又は2個以上のベンゼン環が縮合した縮合環であり、
前記単環又は縮合環とCOO−基との結合中に、一般式(6):
前記単環又は縮合環とCOO−基との結合中に、一般式(6):
[式中、R8は同一又は異なって、炭素原子又は窒素原子を示す。R9は置換されていてもよい2価の芳香族炭化水素基を示す。kは0〜2の整数を示す。]
で表される基が含まれていてもよい、項5〜13のいずれかに記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
で表される基が含まれていてもよい、項5〜13のいずれかに記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
項15.有機金属多面体である、項5〜14のいずれかに記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
項16.平均直径が2 nm〜100 nmである、項15に記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
項17.内部に平均直径が2 nm以下の孔を1個有する、項15又は16に記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
項18.ポリマー鎖が導入された有機金属多面体の製造方法であって、
有機金属多面体と、モノマー化合物とを用いて、可逆的付加開裂連鎖移動重合を施す工程
を備え、
前記有機金属多面体は、2価以上の金属イオンと、一般式(5):
有機金属多面体と、モノマー化合物とを用いて、可逆的付加開裂連鎖移動重合を施す工程
を備え、
前記有機金属多面体は、2価以上の金属イオンと、一般式(5):
[式中、mは1〜3の整数を示す。X1は硫黄原子、酸素原子、窒素原子、炭素原子、置換されていてもよい芳香族炭化水素基又は置換されていてもよい複素芳香族基を示す。X2は単結合又は2価の連結基を示す。R1は、水素原子、又は置換されていてもよいアルキル基を示す。mが2以上の場合、R1は同一でも異なっていてもよい。R2は
で表される基を示す。Yは芳香族炭化水素環又は複素芳香環を示す。]
で表される有機配位子とを含有し、且つ、該金属イオンと該有機配位子とが交互に配位結合されている、製造方法。
で表される有機配位子とを含有し、且つ、該金属イオンと該有機配位子とが交互に配位結合されている、製造方法。
項19.項5〜17のいずれかに記載の単孔性又は多孔性配位高分子からなる物質の吸着及び/又は分離材料。
項20.ガス及び/又はイオンの吸着材料、並びにガス及び/又はイオンの分離材料よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項19に記載の物質の吸着及び/又は分離材料。
項21.項5〜17のいずれかに記載の単孔性又は多孔性配位高分子、又は項19若しくは20に記載の物質の吸着及び/又は分離材料を含有する、物質分離膜。
項22.ガス及び/又はイオン分離膜である、項21に記載の物質分離膜。
本発明の配位子化合物を使用することで、単孔性又は多孔性配位高分子中に高分子鎖を容易に導入することができる。この配位子化合物は、文献未記載の新規化合物である。
このようにして製造した本発明の単孔性又は多孔性配位高分子は、元々の単孔性又は多孔性配位化合物が有する特性は維持しつつ、高分子由来の高い溶媒可溶性及び成形加工性(特に熱成形加工性)が付与されているため、既存の量産型成形プロセスへの適用可能性を広げることが可能である。
1.配位子化合物
本発明の配位子化合物は、一般式(1):
本発明の配位子化合物は、一般式(1):
[式中、mは1〜3の整数を示す。X1は硫黄原子、酸素原子、窒素原子、炭素原子、置換されていてもよい芳香族炭化水素基又は置換されていてもよい複素芳香族基を示す。X2は単結合又は2価の連結基を示す。R1は、水素原子、又は置換されていてもよいアルキル基を示す。mが2以上の場合、R1は同一でも異なっていてもよい。R2は
で表される基を示す。Yは芳香族炭化水素環又は複素芳香環を示す。]
で表される化合物(以下、「配位子化合物(1)」と言うこともある)である。
で表される化合物(以下、「配位子化合物(1)」と言うこともある)である。
配位子化合物(1)は、後述の製造方法により、金属イオン及びそのクラスターを連結して三次元的なフレームワーク構造をもった単孔性又は多孔性配位高分子が得られる観点から、金属イオンと配位結合し得るカルボキシ基を複数(2個)有している。カルボキシ基が1個のみの場合は、三次元フレームワーク構造を構築し得ないため、単孔性又は多孔性配位高分子が得られない。
また、配位子化合物(1)は、後述の製造方法で採用する可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT重合)の開始点となり得るジチオエステル構造を有する。このような配位子化合物(1)を用いて単孔性又は多孔性配位高分子を製造した場合、高分子化合物由来のポリマー鎖(置換されていてもよいエチレン鎖)をMOP等の単孔性又は多孔性配位化合物を構成する有機配位子中に導入することが可能となり、高分子化合物が有する溶媒可溶性、成形加工性等をMOP等の単孔性又は多孔性配位化合物に付与することができる。
一般式(1)において、X1で示される芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環、ペンタレン環、インデン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、ペリレン環、トリフェニレン環、アズレン環、ヘプタレン環、ビフェニレン環、インダセン環、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環等の芳香族炭化水素環由来の基が挙げられる。これらの芳香族炭化水素環由来の基には、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基等)等の置換基を0〜4個(特に1〜3個)程度有することもできる。
一般式(1)において、X1で示される複素芳香族基としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、シロール環、ボロール環、ホスホール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、チエノチオフェン環、キノリン環等の複素芳香環由来の基が挙げられる。これらの複素芳香環由来の基には、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基等)等の置換基を0〜4個(特に1〜3個)程度有することもできる。
一般式(1)におけるX1としては、合成の容易さと、後述の製造方法において各種モノマーに対する良好なリビングラジカル重合反応性を与えるため、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子に様々な特性を与えることができる観点から、硫黄原子、酸素原子、窒素原子、炭素原子、置換されていてもよい芳香族炭化水素基等が好ましく、硫黄原子がより好ましい。
一般式(1)において、X2で示される2価の連結基としては、例えば、一般式(2):
[式中、R3は水素原子、置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基を示す。R4は水素原子、置換されていてもよいアルキル基、シアノ基、又は置換されていてもよいアリール基を示す。X3は単結合、置換されていてもよいアルキレン基、又は−R5−COO−(R5は置換されていてもよいアルキレン基を示す)で表される基を示す。]
で表される基等が挙げられる。
で表される基等が挙げられる。
一般式(2)において、R3で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基等の炭素数1〜6の非環式アルキル基等が挙げられる。これらアルキル基は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)等の置換基を0〜5個(特に1〜3個)程度有することもできる。
一般式(2)において、R3で示されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。これらアリール基は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、上記アルキル基等の置換基を0〜5個(特に1〜3個)程度有することもできる。
一般式(2)におけるR3としては、合成の容易さと、後述の製造方法において各種モノマーに対する良好なリビングラジカル重合反応性を与える観点から、置換されていてもよいアルキル基が好ましく、置換されていてもよいメチル基がより好ましく、メチル基(非置換)がさらに好ましい。
一般式(2)において、R4で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基等の炭素数1〜6の非環式アルキル基等が挙げられる。これらアルキル基は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)等の置換基を0〜5個(特に1〜3個)程度有することもできる。
一般式(2)において、R4で示されるアリール基としては、上記したものを採用できる。置換基の種類及び数も同様である。
一般式(2)におけるR4としては、合成の容易さと、後述の製造方法において各種モノマーに対する良好なリビングラジカル重合反応性を与える観点から、シアノ基又は置換されていてもよいアリール基が好ましく、シアノ基がより好ましい。
一般式(2)において、X3で示されるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピレン基、プロピリデン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、3−メチルトリメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基等の非環式アルキレン基(好ましくは炭素数1〜6、特に炭素数1〜4の非環式アルキレン基);シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等の環式アルキレン基(好ましくは炭素数3〜10、特に炭素数3〜8の環式アルキレン基)等が挙げられる。なお、非環式アルキレン基を採用する場合、直鎖非環式アルキレン基を採用することもでき、分岐鎖非環式アルキレン基を採用することもできる。これらアルキレン基は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)等の置換基を0〜5個(特に1〜3個)程度有することもできる。
また、一般式(2)におけるX3は、これらアルキレン基が連結したエステル基(上記−R5−COO−(R5は上記置換されていてもよいアルキレン基を示す)で表される基)とすることもでき、例えば、−CH2COO−基、−CH2CH2COO−基、−CH(CH3)COO−基、−CH2CH2CH2COO−基、−CH(CH3)CH2COO−基、−CH(CH2CH3)COO−基、−CH2CH2CH2CH2COO−基、−CH(CH3)CH2CH2COO−基、−CH2CH(CH3)CH2COO−基、−CH2 CH2CH(CH3)COO−基、−CH(CH3)2CH2COO−基、−CH(CH3)CH(CH3)CH2COO−基、−CH2CH2CH2CH2CH2COO−基等が挙げられる。
一般式(2)におけるX3としては、合成の容易さの観点から、アルキレン基が連結したエステル基(上記−R5−COO−(R5は上記置換されていてもよいアルキレン基を示す)で表される基)が好ましい。
一般式(1)において、R1で示されるアルキル基としては、特に制限はなく、直鎖アルキル基及び分岐鎖アルキル基のいずれも採用し得るが、MOP等の単孔性又は多孔性配位化合物に、主に非極性溶媒中への溶媒溶解性をさらに向上させる観点から直鎖アルキル基が好ましい。このようなアルキル基の炭素数は、MOP等の単孔性又は多孔性配位化合物に、主に非極性溶媒中への溶媒溶解性をさらに向上させる観点から、1〜100が好ましく、5〜20がより好ましく、8〜16がさらに好ましい。このようなアルキル基としては、具体的には、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基等が挙げられる。これらアルキル基は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)等の置換基を0〜10個(特に1〜5個)程度有することもできる。なお、一般式(1)において、R1の数であるmが2以上である場合、R1は同一でも異なっていてもよい。
一般式(1)におけるR1としては、合成の容易さと、後述の製造方法において各種モノマーに対する良好なリビングラジカル重合反応性を与える観点から、置換されていてもよいアルキル基が好ましく、非置換アルキル基がより好ましい。
一般式(1)において、R1の数であるmは、X1の種類、価数等によって決定される数であり、1〜3の整数、好ましくは1又は2である。
一般式(1)において、R2はジチオエステル構造を示し、
で表される基を示す。
このような構造を有することにより、後述の製造方法において、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT重合)の開始点となり得る。このようなR2としては、合成の容易さと、後述の製造方法において各種モノマーに対する良好なリビングラジカル重合反応性を与える観点から、
で表される基が好ましい。
本発明の配位子化合物を用いて、有機金属多面体(単孔性配位高分子)を製造する場合には、前記配位子化合物(1)と、後述の金属イオンとが交互に配位結合を構成することにより内部に微小孔を有する球状の高分子化合物を形成するために、2個のY−COO−結合同士のなす角度は180°未満であることが好ましい。なお、前記配位子化合物(1)において、2個のY−COO−結合同士のなす角度を180°未満とすれば、この2個のY−COO−結合同士のなす角度を利用して、球状の単孔性又は多孔性配位高分子を製造することができる。この球状の化合物として、内部に微小孔を有している有機金属多面体(単孔性配位高分子)を製造することができる。
このような条件を満たすYとしては、ヘテロ原子を有していてもよい芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピロール環、チオフェン環等、又はこれらの環に1個又は2個以上のベンゼン環が縮合した環等が挙げられ、これらの環とCOO−基との結合中に、一般式(6):
[式中、R8は同一又は異なって、炭素原子又は窒素原子を示す。R9は置換されていてもよい2価の芳香族炭化水素基を示す。kは0〜2の整数を示す。]
で表される基が含まれていてもよい。
で表される基が含まれていてもよい。
一般式(6)において、R9で示される2価の芳香族炭化水素基としては、上記したものを採用できる。置換基の種類及び数も同様である。一般式(6)において、kは0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましい。
なかでも、Yとしては、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピロール環、チオフェン環等、又はこれらの環に1個又は2個以上のベンゼン環が縮合した環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピロール環、チオフェン環等がより好ましく、ベンゼン環がさらに好ましい。
このようなYとしては、例えば、
等が挙げられる。
このような配位子化合物(1)は、後述の製造方法により、金属イオンと配位させる際の合成条件(温度、濃度、混合比等)を調整することで多孔性の配位高分子を与え得る。特に、ジャングルジム状の三次元フレームワーク構造を有する多孔性の配位高分子を製造することも可能であり、内部に多数の化合物を閉じ込めることも可能である。
このような条件を満たす配位子化合物(1)としては、例えば、
等が挙げられ、後述の製造方法において各種モノマーに対する良好なリビングラジカル重合反応性を与える観点から、
等が好ましい。
2.単孔性又は多孔性配位高分子
本発明の単孔性又は多孔性配位高分子は、2価以上の金属イオンと、一般式(3):
本発明の単孔性又は多孔性配位高分子は、2価以上の金属イオンと、一般式(3):
[式中、mは1〜3の整数を示す。X1は硫黄原子、酸素原子、窒素原子、炭素原子、置換されていてもよい芳香族炭化水素基又は置換されていてもよい複素芳香族基を示す。X2は単結合又は2価の連結基を示す。R1は、水素原子、又は置換されていてもよいアルキル基を示す。mが2以上の場合、R1は同一でも異なっていてもよい。R2は
で表される基を示す。Yは芳香族炭化水素環又は複素芳香環を示す。Zは同一又は異なって、置換されていてもよいエチレン鎖を示す。nは5〜20000の整数を示す。]
で表される有機配位子(以下、「有機配位子(3)」と言うこともある)とを含有し、且つ、該金属イオンと該有機配位子とが交互に配位結合されている。
で表される有機配位子(以下、「有機配位子(3)」と言うこともある)とを含有し、且つ、該金属イオンと該有機配位子とが交互に配位結合されている。
本発明の単孔性又は多孔性配位高分子を構成する2価以上の金属イオンとしては、遷移金属イオンを好ましく採用することができるが、有機配位子(3)と配位結合することにより単孔性又は多孔性配位高分子を構成しやすい観点から、2価の金属イオン(特に2価の遷移金属イオン)が好ましい。具体的には、銅イオン、亜鉛イオン、コバルトイオン、カドミウムイオン、ロジウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、パラジウムイオン、ランタンイオン、ジルコニウムイオン等が好ましく、銅イオン、亜鉛イオンがより好ましい。金属イオンは、有機配位子(3)と配位結合することにより単孔性又は多孔性配位高分子を構成しやすい観点から単独で用いることが好ましいが、2種以上を組合せて用いることもできる。
本発明の単孔性又は多孔性配位高分子は、有機配位子(3)を含有している。
有機配位子(3)は、金属イオン及びそのクラスターを連結して三次元的なフレームワーク構造をもった単孔性又は多孔性配位高分子が得られる観点から、金属イオンと配位結合し得るカルボキシ基を複数(2個)有している。カルボキシ基が1個のみの場合は、三次元フレームワーク構造を構築し得ないため、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子が得られない。
また、有機配位子(3)は、後述の製造方法で採用する可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT重合)の開始点となり得るジチオエステル構造を有する。このような有機配位子(3)を採用することで、高分子化合物由来のポリマー鎖(置換されていてもよいエチレン鎖)をMOP等の単孔性又は多孔性配位化合物を構成する有機配位子中に導入することが可能となり、高分子化合物が有する溶媒可溶性、成形加工性等をMOP等の単孔性又は多孔性配位化合物に付与することができる。
一般式(3)において、X1で示される芳香族炭化水素基及び複素芳香族基としては、上記したものを採用できる。置換基の種類及び数も同様である。本発明の単孔性又は多孔性配位高分子においては、有機配位子(3)を多数有しているが、各々の有機配位子(3)を揃えることも可能である。具体的には、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子が有する全ての有機配位子(3)におけるX1を同一とすることも可能である。
一般式(3)において、X2で示される2価の連結基としては、上記したものを採用できる。置換基の種類及び数も同様である。本発明の単孔性又は多孔性配位高分子においては、有機配位子(3)を多数有しているが、各々の有機配位子(3)を揃えることも可能である。具体的には、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子が有する全ての有機配位子(3)におけるX2を同一とすることも可能である。
一般式(3)において、R1で示されるアルキル基としては、上記したものを採用できる。置換基の種類及び数も同様である。本発明の単孔性又は多孔性配位高分子においては、有機配位子(3)を多数有しているが、各々の有機配位子(3)を揃えることも可能である。具体的には、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子が有する全ての有機配位子(3)におけるR1を同一とすることも可能である。
R2の好ましい例としては、上記したものを採用できる。本発明の単孔性又は多孔性配位高分子においては、有機配位子(3)を多数有しているが、各々の有機配位子(3)を揃えることも可能である。具体的には、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子が有する全ての有機配位子(3)におけるR2を同一とすることも可能である。
一般式(3)において、mとしては、上記したものを採用できる。本発明の単孔性又は多孔性配位高分子においては、有機配位子(3)を多数有しているが、各々の有機配位子(3)を揃えることも可能である。具体的には、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子が有する全ての有機配位子(3)におけるmを同一とすることも可能である。
一般式(3)において、Yで示される芳香族炭化水素基及び複素芳香族基としては、上記したものを採用できる。置換基の種類及び数も同様である。本発明の単孔性又は多孔性配位高分子においては、有機配位子(3)を多数有しているが、各々の有機配位子(3)を揃えることも可能である。具体的には、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子が有する全ての有機配位子(3)におけるYを同一とすることも可能である。
一般式(3)において、Zは置換されていてもよいエチレン鎖であり、重合高分子のモノマー単位を意味する。より詳細には、この置換されていてもよいエチレン鎖(重合高分子のモノマー単位)は、後述の製造方法において、ポリマー鎖をRAFT重合によってMOP等の単孔性又は多孔性配位化合物に導入する際に用いられるモノマー化合物に由来する構成単位である。つまり、Zの種類によっては、種々様々な特性をMOP等の単孔性又は多孔性配位化合物に付与することができる。このようなZとしては、一般式(4):
[式中、R6は水素原子又は置換されていてもよいアルキル基を示す。R7は水酸基、置換されていてもよいカルボキシ基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基を示す。]
で表される鎖が好ましい。
で表される鎖が好ましい。
一般式(4)において、R6で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基等の炭素数1〜6の非環式アルキル基等が挙げられる。これらアルキル基は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)等の置換基を0〜5個(特に1〜3個)程度有することもできる。
一般式(4)において、R6としては、MOP等の単孔性又は多孔性配位化合物の特性(内部に微小孔を有する、MOPの場合は二酸化炭素を選択的に吸収する等)を維持しつつ、溶剤可溶性及び成形加工性(特に熱成形加工性)をより向上させる観点から、置換されていてもよいアルキル基が好ましく、非置換アルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
一般式(4)において、R7で示されるカルボキシ基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基等のアルキル基;イソボルニル基;ポリエチレングリコール(PEG)残基等の置換基を0〜5個(特に1〜3個)程度有することもできる。
一般式(4)において、R7で示されるアシルオキシ基としては、アセトキシ基、エタノイルオキシ基、プロピオニルオキシ基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基等のアルキル基;イソボルニル基;ポリエチレングリコール(PEG)残基等の置換基を0〜5個(特に1〜3個)程度有することもできる。
一般式(4)において、R7で示されるカルバモイル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基等のアルキル基;イソボルニル基;ポリエチレングリコール(PEG)残基等の置換基を0〜5個(特に1〜3個)程度有することもできる。
一般式(4)において、R7で示されるヘテロアリール基としては、ピリジル基、ピロリル基、チエニル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基等のアルキル基;イソボルニル基;ポリエチレングリコール(PEG)残基等の置換基を0〜5個(特に1〜3個)程度有することもできる。
一般式(4)において、R7で示されるアリール基としては、上記したものを採用できる。置換基の種類及び数も同様である。
一般式(4)において、R7としては、MOP等の単孔性又は多孔性配位化合物の特性(内部に微小孔を有する、MOPの場合は二酸化炭素を選択的に吸収する等)を維持しつつ、溶剤可溶性及び成形加工性(特に熱成形加工性)をより向上させる観点から、置換されていてもよいカルボキシ基又は置換されていてもよいアリール基が好ましく、アルキル基で置換されたカルボキシ基又は非置換アリール基がより好ましく、カルボニルメトキシ基又はフェニル基がさらに好ましい。
このような条件を満たすZとしては、例えば、メタクリル酸若しくはその誘導体残基(メタクリル酸メチル残基、メタクリル酸n−ブチル残基、メタクリル酸tert−ブチル残基、メタクリル酸ヘキシル残基、メタクリル酸イソボルニル残基、メタクリル酸残基、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(PEG)残基)、アクリル酸若しくはその誘導体残基(アクリル酸メチル残基、アクリル酸n−ブチル残基、アクリル酸tert−ブチル残基、アクリル酸ヘキシル残基、アクリル酸イソボルニル残基、アクリル酸残基、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール(PEG)残基、アクリルアミド残基、N−イソプロピルアクリルアミド残基)、スチレン若しくはその誘導体残基(スチレン残基、ペンタフルオロスチレン残基)、4−ビニルピリジン残基、酢酸ビニル残基、ビニルアルコール残基等のように、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の高分子化合物由来の基を導入すれば、MOP等の単孔性又は多孔性配位化合物の特性(内部に微小孔を有する、MOPの場合は二酸化炭素を選択的に吸収する等)を維持しつつ、溶剤可溶性及び成形加工性(特に熱成形加工性)を向上させることができる。この際、溶剤可溶性を向上させることができる溶剤としては、例えば、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、ベンゼン、1,4−ジオキサン、四塩化炭素、アセトン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。特に、トルエン、クロロホルム、ベンゼン等の極性の低い溶剤に溶解させることも可能である点で有用である。
また、メタクリル酸残基、アクリル酸残基、ビニルアルコール残基、アクリル酸メトキシPEG残基、4−ビニルピリジン残基等のように、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸メトキシPEG、ポリ(4−ビニルピリジン)等の水溶性高分子化合物由来の基を導入すれば、MOP等の単孔性又は多孔性配位化合物の特性(内部に微小孔を有する、MOPの場合は二酸化炭素を選択的に吸収する等)を維持しつつ、水溶性を向上させることも可能である。
これらのなかでも、合成の容易さと、MOP等の単孔性又は多孔性配位化合物に溶媒溶解性、溶液加工性、熱加工性をさらに向上させる観点から、Zとしては、メタクリル酸メチル残基又はスチレン残基として、
を採用することが好ましい。
このようなZとしては、単独の基を採用してもよいし、2種以上の基を採用してもよい。例えば、2種以上のZを有する有機配位子(3)を採用すれば、異なる2種以上の高分子化合物が有する特性をMOP等の単孔性又は多孔性配位化合物に付与することも可能である。
一般式(3)において、Zの繰り返し数であるnは、特に制限されず、MOP等の単孔性又は多孔性配位化合物が有する特性(内部に微小孔を有する、MOPの場合は二酸化炭素を選択的に吸収する等)を維持しつつ、イオン交換能を付与するとともに、溶媒溶解性をさらに向上させ、成形加工性(特に熱成形加工性)をさらに向上させる観点から、5〜20000の整数が好ましく、10〜500の整数がより好ましい。本発明の単孔性又は多孔性配位高分子においては、有機配位子(3)を多数有しているが、各々の有機配位子(3)の長さを揃えることも可能である。具体的には、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子が有する全ての有機配位子(3)におけるnの分散を狭くすることが可能である。
一方、このような有機配位子(3)は、金属イオンと配位させる際の合成条件(温度、濃度、混合比等)を調整することで多孔性の配位高分子を与え得る。特に、ジャングルジム状の三次元フレームワーク構造を有する多孔性の配位高分子とすることも可能であり、内部に多数の化合物を閉じ込めることも可能である。
このような有機配位子(3)としては、特に制限されず、具体的には、一般式:
[式中、nは前記に同じである。]
で表される有機配位子等が好ましく、各種モノマーに対する良好なリビングラジカル重合反応性を与える観点から、
で表される有機配位子等が好ましく、各種モノマーに対する良好なリビングラジカル重合反応性を与える観点から、
等がより好ましい。
本発明の単孔性又は多孔性配位高分子が有する金属イオンの数は、金属イオンの種類、2個のY−COO−結合同士のなす角度、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子の平均直径等によっても異なるが、4〜128個が好ましく、12〜48個がより好ましく、24個が特に好ましい。また、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子が有する有機配位子(3)の数は、金属イオンの種類、2個のY−COO−結合同士のなす角度、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子の平均直径等によっても異なるが、4〜128個が好ましく、12〜48個がより好ましく、24個が特に好ましい。なお、金属イオンとして銅イオン(Cu2+)を採用し、有機配位子(3)としてYがベンゼン環である有機配位子を採用する場合には、銅イオン(Cu2+)及び有機配位子をそれぞれ24個ずつ有する有機金属多面体(単孔性配位高分子)が生成されやすい。
本発明の単孔性又は多孔性配位高分子においては、Y(芳香族炭化水素環又は複素芳香環)に結合した2個のCOO−基は、2価以上の金属イオンに対して配位する基である。つまり、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子は、前記2価以上の金属イオンと、前記有機配位子(3)とが、交互に配位結合された構成を有している。この際、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子は、前記2価以上の金属イオン及び前記有機配位子(3)以外のイオン又は配位子を含有していてもよいが、合成及び解析の容易さと、MOP等の単孔性又は多孔性配位化合物を安定に存在させる観点から、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子は、前記2価以上の金属イオン及び前記有機配位子(3)のみからなることが好ましい。
なお、前記有機配位子(3)において、2個のY−COO−結合同士のなす角度を180°未満とすれば、この2個のY−COO−結合同士のなす角度を利用して、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子を球状の化合物とすることができる。この球状の化合物は、内部に微小孔を有している有機金属多面体(単孔性配位高分子)とすることができる。
本発明の単孔性又は多孔性配位高分子が有機金属多面体(単孔性配位高分子)である場合、その平均直径は、特に制限されないが、MOP等の単孔性又は多孔性配位化合物が有する特性(内部に微小孔を有する、MOPの場合は二酸化炭素を選択的に吸収する等)を維持しつつ、イオン交換能を付与するとともに、溶媒溶解性をさらに向上させる観点から、3〜100 nmが好ましく、5〜50 nmがより好ましい。
本発明の単孔性又は多孔性配位高分子が有機金属多面体(単孔性配位高分子)である場合、その内部に存在する孔の平均直径は、特に制限されないが、MOP等の単孔性又は多孔性配位化合物が有する特性(内部に微小孔を有する、MOPの場合は二酸化炭素を選択的に吸収する等)を維持する観点から、2 nm以下が好ましく、0.1〜1.5 nmがより好ましい。
本発明の単孔性又は多孔性配位高分子が有機金属多面体(単孔性配位高分子)である場合、その平均分子量は、特に制限されないが、MOP等の単孔性又は多孔性配位化合物が有する特性(内部に微小孔を有する、MOPの場合は二酸化炭素を選択的に吸収する等)を維持しつつ、イオン交換能を付与するとともに、溶媒溶解性をさらに向上させる観点から、数平均分子量を5000〜2000000とすることが好ましく、7000〜200000とすることがより好ましい。
一方、前記有機配位子(3)において、金属イオンと配位させる際の合成条件(温度、濃度、混合比など)を調整することで多孔性の配位高分子を与え得る。特に、ジャングルジム状の三次元フレームワーク構造を有する多孔性の配位高分子とすることも可能であり、内部に多数の化合物を閉じ込めることも可能である。
3.単孔性又は多孔性配位高分子の製造方法 本発明の単孔性又は多孔性配位高分子の製造方法は、特に制限されず、種々様々な方法で合成することができる。例えば、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子として、有機金属多面体(単孔性配位高分子)を合成する場合は、例えば、反応式1:
[式中、X1、X2、R1、R2、Y及びmは前記に同じである。]
にしたがって合成することができる。
にしたがって合成することができる。
(2−1)配位子化合物(1)
上記反応式1における配位子化合物(1)は、上記した本発明の配位子化合物である。
上記反応式1における配位子化合物(1)は、上記した本発明の配位子化合物である。
配位子化合物(1)は、例えば、X2が2価の連結基として上記一般式(2)で表される基であり、X3が−R5−COO−(R5は置換されていてもよいアルキレン基を示す)で表される基である場合には、有機溶媒中で、一般式(7):
[式中、X1、X3、R1、R2、R3、R4及びmは前記に同じである。]
で表される化合物(以下、「化合物(7)」と言うこともある)と、一般式(8):
で表される化合物(以下、「化合物(7)」と言うこともある)と、一般式(8):
[式中、Yは前記に同じである。]
で表される化合物(以下、「化合物(8)」と言うこともある)とを反応させることにより得ることができる。
で表される化合物(以下、「化合物(8)」と言うこともある)とを反応させることにより得ることができる。
この場合、化合物(7)は加水分解しやすく、酸や塩基に対して非常に弱いため、カルボキシ基を、シリル基(t−ブチルジメチルシリル基等)等の保護基で保護し、化合物(8)を加えた後、公知の方法(例えば、塩化オキサリルと触媒量のN,N’−ジメチルホルムアミドを添加し反応系中で酸クロリドを生成させる方法)により、好ましくは中性条件でエステル化を行うことが好ましい。
上記化合物(7)の使用量は、特に制限はないが、収率等の観点から、化合物(8)1モルに対して、0.2〜1モル(特に0.5〜0.9モル)使用することが好ましい。
また、化合物(7)の保護及び脱保護を行う場合は、反応を促進させるために、ピリジン、アミン類(トリメチルアミン、N,N’−ジイソプロピルエチルアミン等)等の塩基を添加することもできる。
本工程において使用され得る有機溶媒としては、公知のものを採用すればよく、本工程では、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン溶媒等が好ましい。これらの溶媒は厳密に脱水されていることが好ましい。また、反応条件は、反応が十分に進行する程度であればよく、例えば、−20〜100℃、特に0〜50℃において1〜48時間、特に2〜24時間とすることができる。反応終了後、必要に応じて通常の単離及び精製工程を施すこともできる。
また、配位子化合物(1)は、例えば、R2が
で表される配位子化合物である場合には、有機溶媒中で、一般式(9):
[式中、X1、R1及びmは前記に同じである。Mはカチオンを示す。]
で表される化合物(以下、「化合物(9)」と言うこともある)と、一般式(10):
で表される化合物(以下、「化合物(9)」と言うこともある)と、一般式(10):
[式中、X2及びYは前記に同じである。X4はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物(以下、「化合物(10)」と言うこともある)とを反応させることにより得ることができる。
で表される化合物(以下、「化合物(10)」と言うこともある)とを反応させることにより得ることができる。
一般式(9)において、Mで示されるカチオンとしては、アルカリ金属カチオンが好ましく、例えば、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン等が挙げられる。
一般式(9)において、X4で示されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
この場合、化合物(10)は加水分解しやすく、酸や塩基に対して非常に弱いため、カルボキシ基を、シリル基(t−ブチルジメチルシリル基等)、tert−ブチル基等の保護基で保護し、化合物(9)を加えた後、公知の方法(例えば、トリフルオロ酢酸を添加し反応系中でエステルを生成させる方法)により、好ましくは中性条件で反応させることが好ましい。
上記化合物(9)の使用量は、特に制限はないが、収率等の観点から、化合物(10)1モルに対して、0.2〜2モル(特に0.5〜1.5モル)使用することが好ましい。
本工程において使用され得る有機溶媒としては、公知のものを採用すればよく、本工程では、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン等が好ましい。また、反応条件は、反応が十分に進行する程度であればよく、例えば、−20〜100℃、特に0〜50℃において1〜48時間、特に2〜24時間とすることができる。反応終了後、必要に応じて通常の単離及び精製工程を施すこともできる。
なお、R2が
で表される基である配位子化合物についても、上記の方法に準じて(原料等を所望のものに変えること等により)、製造することが可能である。
また、配位子化合物(1)は、例えば、X1−R2が
で表される配位子化合物である場合には、有機溶媒中で、一般式(11):
[式中、R1及びmは前記に同じである。]
で表される化合物(以下、「化合物(11)」と言うこともある)と、CS2と、上記化合物(10)とを反応させることにより得ることができる。
で表される化合物(以下、「化合物(11)」と言うこともある)と、CS2と、上記化合物(10)とを反応させることにより得ることができる。
この場合、化合物(10)は加水分解しやすく、酸や塩基に対して非常に弱いため、カルボキシ基を、シリル基(t−ブチルジメチルシリル基等)、tert−ブチル基等の保護基で保護し、化合物(11)及びCS2を加えた後、公知の方法(例えば、トリフルオロ酢酸を添加し反応系中でエステルを生成させる方法)により、好ましくは中性条件で反応させることが好ましい。
上記化合物(11)及びCS2の使用量は、特に制限はないが、収率をより向上させ、副生成物の生成をより抑制する等の観点から、化合物(10)1モルに対して、化合物(11)を0.2〜2モル(特に0.5〜1.5モル)使用することが好ましく、CS2を0.2〜2モル(特に0.5〜1.5モル)使用することが好ましい。
本工程において使用され得る有機溶媒としては、公知のものを採用すればよく、本工程では、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン等が好ましい。また、反応条件は、反応が十分に進行する程度であればよく、例えば、−20〜100℃、特に0〜50℃において1〜48時間、特に2〜24時間とすることができる。反応終了後、必要に応じて通常の単離及び精製工程を施すこともできる。
(2−2)MOP化反応
本工程では、有機溶媒中で、上記反応式1における配位子化合物(1)と、金属化合物とを反応させることにより、有機金属多面体(MOP)を得ることができる。
本工程では、有機溶媒中で、上記反応式1における配位子化合物(1)と、金属化合物とを反応させることにより、有機金属多面体(MOP)を得ることができる。
金属化合物としては、特に制限されないが、MOPを構成しやすい観点から、2価の金属塩が好ましい。このような2価の金属塩を構成する金属種も特に制限されないが、有機配位子(3)と配位結合することにより単孔性又は多孔性配位高分子を構成しやすい観点から、銅、亜鉛、コバルト、カドミウム、ロジウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、ニッケル、パラジウム、ランタン、ジルコニウム等の遷移金属が好ましく、銅又は亜鉛がより好ましい。また、これらの金属塩としては、酢酸塩、ギ酸塩等の有機酸塩;硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩等の無機酸塩を使用することができる。
このような金属化合物としては、具体的には、酢酸銅(II)、硝酸銅(II)、塩化銅(II)、硝酸亜鉛、硝酸コバルト(II)、酢酸カドミウム、塩化ニッケル(II)等を好適に使用することができる。なお、金属化合物は、水和物、溶媒和物とすることもできる。また、金属化合物は、合成及び構造解析が容易である点並びに安定なMOPを構成しやすい観点から単独で用いることが好ましいが、2種以上を組合せて用いることもできる。
上記金属化合物の使用量は配位子化合物(1)1モルに対して0.5〜2.0モル使用することが好ましい。
本工程において使用され得る有機溶媒としては、公知のものを採用すればよく、本工程では、例えば、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒が好ましい。また、反応条件は、反応が十分に進行する程度であればよく、例えば、−50〜100℃、特に10〜40℃において10分〜24時間、特に30分〜12時間とすることができる。反応終了後、必要に応じてメタノール等のアルコール溶媒中で析出、沈殿させ精製してもよい。
このようにして得られるMOPは、2価以上の金属イオンと、一般式(12):
[式中、X1、X2、R1、R2、Y及びmは前記に同じである。]
で表される有機配位子(12)とを含有し、且つ、該金属イオンと該有機配位子とが交互に配位結合されているものである。つまり、ポリマー鎖が導入されていないMOPであり、それ以外の特性等については、上記「単孔性又は多孔性配位高分子」の記載を援用できる。
で表される有機配位子(12)とを含有し、且つ、該金属イオンと該有機配位子とが交互に配位結合されているものである。つまり、ポリマー鎖が導入されていないMOPであり、それ以外の特性等については、上記「単孔性又は多孔性配位高分子」の記載を援用できる。
(2−3)ポリマー化反応(RAFT重合)
本工程では、MOPに対して、要求特性に応じて所望のモノマー化合物を用いて、RAFT重合を引き起こすことにより、MOPに対してポリマー鎖を導入することができ、MOPが有する特性(内部に微小孔を有する、二酸化炭素を選択的に吸収する等)を維持しつつ、イオン交換能を付与するとともに、溶媒溶解性をさらに向上させ、成形加工性(特に熱成形加工性)をさらに向上させることができる。具体的には、有機溶媒中で、MOPと、モノマー化合物とを、ラジカル重合開始剤を用いてRAFT重合させることにより、本発明の化合物を得ることができる。
本工程では、MOPに対して、要求特性に応じて所望のモノマー化合物を用いて、RAFT重合を引き起こすことにより、MOPに対してポリマー鎖を導入することができ、MOPが有する特性(内部に微小孔を有する、二酸化炭素を選択的に吸収する等)を維持しつつ、イオン交換能を付与するとともに、溶媒溶解性をさらに向上させ、成形加工性(特に熱成形加工性)をさらに向上させることができる。具体的には、有機溶媒中で、MOPと、モノマー化合物とを、ラジカル重合開始剤を用いてRAFT重合させることにより、本発明の化合物を得ることができる。
モノマー化合物としては、特に制限されないが、MOPの特性(内部に微小孔を有する、二酸化炭素を選択的に吸収する等)を維持しつつ、溶剤可溶性及び成形加工性(特に熱成形加工性)をより向上させる観点からは、一般式(13):
[式中、R6及びR7は前記に同じである。]
で表されるモノマー化合物が好ましく、具体的には、メタクリル酸若しくはその誘導体(メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(PEG))、アクリル酸若しくはその誘導体(アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール(PEG)、アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド)、スチレン若しくはその誘導体(スチレン、ペンタフルオロスチレン)、4−ビニルピリジン、酢酸ビニル、ビニルアルコール等が挙げられ、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル等が好ましい。なお、溶剤可溶性を向上させることができる溶剤としては、例えば、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、ベンゼン、1,4−ジオキサン、四塩化炭素、アセトン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。特に、トルエン、クロロホルム、ベンゼン等の極性の低い溶剤に溶解させることも可能である点で有用である。
で表されるモノマー化合物が好ましく、具体的には、メタクリル酸若しくはその誘導体(メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(PEG))、アクリル酸若しくはその誘導体(アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール(PEG)、アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド)、スチレン若しくはその誘導体(スチレン、ペンタフルオロスチレン)、4−ビニルピリジン、酢酸ビニル、ビニルアルコール等が挙げられ、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル等が好ましい。なお、溶剤可溶性を向上させることができる溶剤としては、例えば、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、ベンゼン、1,4−ジオキサン、四塩化炭素、アセトン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。特に、トルエン、クロロホルム、ベンゼン等の極性の低い溶剤に溶解させることも可能である点で有用である。
また、メタクリル酸、アクリル酸、ビニルアルコール、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール(PEG)、4−ビニルピリジン等のように、水溶性モノマー化合物を使用すれば、MOPの特性(内部に微小孔を有する、二酸化炭素を選択的に吸収する等)を維持しつつ、水溶性を向上させることも可能である。
なかでも、合成の容易さと、MOPに溶媒溶解性及び熱成形加工性を付与する観点から、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
これらのモノマー化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。特に、複数のモノマー化合物を用いれば、共重合体ポリマー鎖を導入し、異なる複数のポリマー由来の特性を付与することも可能である。
ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ペルオキシ酢酸tert−ブチル、ペルオキシ安息香酸tert−ブチル、ペルオキシオクタン酸 tert−ブチル、ペルオキシネオデカン酸tert−ブチル、ペルオキシイソ酪酸tert−ブチル、過酸化ラウロイル、ペルオキシピバリン酸tert−アミル、ペルオキシピバリン酸tert−ブチル、過酸化ジクミル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化水素類;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−ブテノニトリル)、4,4’−アゾビス(4−ペンタン酸)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(tert−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(1,1)−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド、二塩化2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、二塩化2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミド)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(イソブチリルアミド)二水和物等のアゾ化合物等が挙げられる。
上記モノマー化合物及びラジカル重合開始剤の使用量は、特に制限はなく、収率及びRAFT重合して得られる高分子の分子量分散等の観点から、MOP中の配位子化合物(1)残基1モルに対して、モノマー化合物を20〜10000モル(特に50〜2000モル)、ラジカル重合開始剤を0.01〜2モル(特に0.5〜1モル)使用することが好ましい。
本工程において使用され得る有機溶媒としては、公知のものを採用すればよく、本工程では、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アニソール等の芳香族溶媒;1,4−ジオキサン等の環状エーテル類が好ましい。また、反応条件は、反応が十分に進行する程度であればよく、例えば、10〜150℃、特に50〜100℃において10分〜24時間、特に30分〜12時間とすることができる。反応終了後、必要に応じて通常の単離及び精製工程を施してもよい。
反応が終了したことはガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等により原料の残存量を定量することにより確認することができるが、これらに限定されるものではない。反応終了後、得られた混合液をポリマーの貧溶媒(特にメタノール等のアルコール系有機溶媒)中に投入し、吸引濾過に付して沈殿物を集め、同貧溶媒による洗浄後、必要に応じて有機金属多面体(単孔性配位高分子)が分解しない程度の温度(例えば25〜250℃)程度で数時間真空乾燥することにより、本発明の有機金属多面体(単孔性配位高分子)を得ることができる。有機溶媒による洗浄、真空乾燥操作は、超臨界二酸化炭素による洗浄によっても代えることができ、より効果的である。
この手法は異種モノマー同士のランダム共重合及びブロック共重合にも適用可能であり、共重合ポリマー鎖が導入された単孔性又は多孔性配位高分子も同様に得ることができる。また、上記では、RAFT重合によりポリマー鎖を導入する方法を示したが、他のリビング重合(原子移動ラジカル重合(ATRP)法、ニトロキシドを介したラジカル重合(NMP)法、アニオン重合法等)によってもポリマー鎖を導入することが可能である。なお、上記では、有機金属多面体(単孔性配位高分子)の合成方法のみを示したが、多孔性配位高分子も、上記方法に準じて、同様の方法で合成することができる。
4.物質吸着及び/又は分離材料、並びに物質分離膜
上記した本発明の単孔性又は多孔性配位高分子は、その特異な物質吸収特性を生かして、物質の吸着及び/又は分離材料として使用することができる。この際、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子は、物質をガスの状態で吸着及び/又は分離し得るし、物質をイオンの状態でも捕捉及び/又は分離し得る。このため、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子は、ガス及び/又はイオンの吸着材料や、ガス及び/又はイオンの分離材料として好ましく使用し得る。具体的には、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子が有機金属多面体である場合には、二酸化炭素を選択的に吸着する性質を利用して、二酸化炭素吸着材料や、二酸化炭素分離材料として好適に使用することができる。また、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子に適切なデザインを施せば、他のガス種及びイオン種についても同様に吸着及び/又は分離することができる。
上記した本発明の単孔性又は多孔性配位高分子は、その特異な物質吸収特性を生かして、物質の吸着及び/又は分離材料として使用することができる。この際、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子は、物質をガスの状態で吸着及び/又は分離し得るし、物質をイオンの状態でも捕捉及び/又は分離し得る。このため、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子は、ガス及び/又はイオンの吸着材料や、ガス及び/又はイオンの分離材料として好ましく使用し得る。具体的には、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子が有機金属多面体である場合には、二酸化炭素を選択的に吸着する性質を利用して、二酸化炭素吸着材料や、二酸化炭素分離材料として好適に使用することができる。また、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子に適切なデザインを施せば、他のガス種及びイオン種についても同様に吸着及び/又は分離することができる。
なお、単孔性又は多孔性配位高分子の細孔内にガス等を吸着させる前には、単孔性又は多孔性配位高分子に吸着された水分や溶媒を除去するため、真空で予備乾燥を行うことが好ましい。
また、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子を使用して、簡便にフィルムを作製することもできる。このようなフィルムは、物質分離膜として使用することができる。この際、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子は、物質をガスの状態で吸着及び/又は分離し得るし、物質をイオンの状態でも捕捉及び/又は分離し得る。このため、本発明の物質分離膜は、ガス及び/又はイオンの分離膜とし得る。具体的には、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子が有機金属多面体である場合には、二酸化炭素を選択的に吸着する性質を利用して、二酸化炭素分離膜として好適に使用することができる。また、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子に適切なデザインを施せば、他のガス種及びイオン種についても同様に吸着及び/又は分離することができる。
このような物質分離膜は、例えば、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子(物質の吸着及び/又は分離材料)を含有する塗料組成物を用いて作製することができる。塗料組成物として、例えば、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子を有機溶媒に溶解させたものを用いることができる。この際、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子(物質の吸着及び/又は分離材料)は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
使用できる有機溶媒としては、例えば、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ベンゼン、N,N’−ジメチルホルムアミド等を採用することができる。
この際、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子(物質の吸着及び/又は分離材料)の濃度は、より均質かつ自立するフィルムを形成しやすい観点から、1〜100 mg/mLが好ましく、5〜50 mg/mLがより好ましい。
また、上記塗料組成物には、バインダー樹脂を使用してもよいが、本発明ではバインダー樹脂を使用せずとも本発明の単孔性又は多孔性配位高分子(物質の吸着及び/又は分離材料)をフィルム化できるうえに、本発明の単孔性又は多孔性配位高分子の特性(物質吸着特性、物質分離特性等)を発現しやすくするためには、バインダー樹脂を使用しないことが好ましい。
さらに、塗料組成物には、本発明の効果に悪影響を与えない範囲内で、レベリング剤、カップリング剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、凍結防止剤等を添加してもよいが、上記と同様の理由により、使用しないことが好ましい。
本発明の物質分離膜は、例えば、塗布又は吹き付けることにより基材にコーティングすることができる。コーティングする方法は特に限定されず、例えば、ドロップキャスティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、バーコーター法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の従来公知の塗布方法を使用することができる。密着性を向上させるために、基材に上記塗料組成物(物質の吸着及び/又は分離材料)をコーティングする前に、中間層をコーティングしてもよい。
コーティングして形成される塗膜(物質分離膜)の膜厚は、特に制限されず、物質分離特性の観点から、例えば、100 nm〜10μmが好ましく、200 nm〜1.5μmがより好ましい。
コーティングできる基材としては、特に制限されず、その材質として、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、これらの組合せ、これらの積層体、これらの塗装体等が挙げられる。
このようにして得られる本発明の物質分離膜は、平均直径が8〜100 nm程度(特に10〜50 nm程度)の単孔性又は多孔性配位高分子からなる膜である。このような本発明の物質分離膜は、物質(特にガス)吸着、物質(特にガス)分離、物質(特にガス)吸蔵等以外にも、分子センシング、ドラッグデリバリー等への応用も可能である。
以下に実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例における分析及び評価は、以下の方法によって実施した。
合成例1:配位子化合物1(有機配位子1)の合成
式中、TBDMS-Clはtert−ブチルジメチルシリルクロリドを示す。DMFはジメチルホルムアミドを示す。
市販の4−シアノ−4−[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸(CDPA;0.50 g, 1.2 mmol)、tert−ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMS-Cl;0.20 g, 1.4 mmol)、及びイミダゾール(0.17 g, 2.5 mmol)をジメチルホルムアミド(DMF;3 mL)に溶解させ、室温で12時間反応させた。その後、水(5 mL)を加えて反応を停止させ、有機相を酢酸エチルで抽出した(5 mL×3回)。さらに、抽出された有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムを加えて脱水した。溶液をろ過し、溶媒を減圧下で留去した後、クロロホルムを移動相としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、CDPAのTBDMS保護体(CDPA-TBDMS)を得た(0.58 g, 92%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, JEOL ECX-400を使用, 溶媒ピークを内部標準として使用): TM(ppm) 3.33 (tr, 2H), 2.63 (tr, 2H), 2.52-2.40 (m, 1H), 2.39-2.28 (m, 1H), 1.88 (s, 3H), 1.73-1.64 (m, 2H), 1.45-1.22 (m, 21H), 0.94 (s, 9H), 0.88 (tr, 3H), 0.27 (s, 6H)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, JEOL ECX-400を使用, 溶媒ピークを内部標準として使用): TM(ppm) 3.33 (tr, 2H), 2.63 (tr, 2H), 2.52-2.40 (m, 1H), 2.39-2.28 (m, 1H), 1.88 (s, 3H), 1.73-1.64 (m, 2H), 1.45-1.22 (m, 21H), 0.94 (s, 9H), 0.88 (tr, 3H), 0.27 (s, 6H)。
式中、DMFはジメチルホルムアミドを示す。THFはテトラヒドロフランを示す。
得られたCDPA-TBDMS(0.2 g, 0.39 mmol)をジクロロメタン(1 mL)へ溶解させ、氷水浴で溶液を0℃へ冷却し、DMFを1, 2滴加えた(触媒)。ここに、塩化オキサリル((COCl)2; 40.6μL, 0.47 mmol)を0.1 mLのジクロロメタンへ溶解させた溶液を少しずつ滴下して加えた(この際、副生成物として一酸化炭素ガスが発生する)。溶液を徐々に常温に戻しつつ3時間反応させ、その後溶媒を完全に留去した。
次に、ここに、5−ヒドロキシイソフタル酸(70 mg, 0.39 mmol)、及びピリジン(78μL)をテトラヒドロフラン(THF;1 mL)へ溶解させた溶液を加えた。溶液を45℃に保ったオイルバスで加熱しながら窒素雰囲気下で12時間反応させた。その後、反応溶液に水(3 mL)を加えて反応を停止させ、クロロホルム(3 mL)を加えて生成物を抽出し(3 mL×3回)、有機相を無水硫酸マグネシウムで脱水した。溶液をろ過し、溶媒を減圧下で留去した後、クロロホルムを移動相としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的物1を得た(50 mg, 23%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, JEOL ECX-400を使用, 溶媒ピークを内部標準として使用): TM(ppm) 8.67 (s, 1H), 8.03 (s, 2H), 3.39 (tr, 2H), 2.97 (tr, 2H), 2.79-2.64 (m, 1H), 2.58-2.48 (m, 1H), 1.97 (s, 3H), 1.80-1.68 (m, 2H), 1.48-1.20 (m, 21H), 0.89 (tr, 3H)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, JEOL ECX-400を使用, 溶媒ピークを内部標準として使用): TM(ppm) 8.67 (s, 1H), 8.03 (s, 2H), 3.39 (tr, 2H), 2.97 (tr, 2H), 2.79-2.64 (m, 1H), 2.58-2.48 (m, 1H), 1.97 (s, 3H), 1.80-1.68 (m, 2H), 1.48-1.20 (m, 21H), 0.89 (tr, 3H)。
合成例2:有機金属多面体MOP1の合成
式中、Cu(OAc)2・H2Oは酢酸銅一水和物を示す。DMFはジメチルホルムアミドを示す。
合成例1で得た有機配位子1(24 mg)及び酢酸銅一水和物(8.4 mg)をそれぞれDMF (1 mL)に溶解させた後、それらを混合し、室温で3時間撹拌した。その後、反応溶液中にメタノール(4 mL)を加え、固体を析出させた。析出した固体を遠心分離機を用いて沈殿させ、上澄み液を捨てた後、再度THF(1 mL)へ溶解させた。得られたTHF溶液に再度メタノール 4 mLを加えて固体を析出させた。この操作を3回繰り返して最終的に青色の粉体としてMOP1(19 mg)を得たことを確認した。得られたMOP1は、50℃で真空乾燥させた。
実施例1:ポリマー鎖導入有機金属多面体の合成
式中、AIBNはアゾビスイソブチロニトリルを示す。
合成例2で得たMOP1(5 mg)、メチルメタクリレートモノマー(0.16 g)をトルエン(1 mL)へ溶解させた。なお、MOP1はトルエンに不溶であるが、メチルメタクリレートと混合すれば少量ながら溶解させることができる。ここに、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の0.1 Mトルエン溶液(80μL)を加えた。溶液を凍結脱気(3回)して溶存酸素を取り除いた後、溶液をオイルバスで70℃へ加熱し、反応を開始させた。溶液を撹拌しながら4時間重合させた。その後、溶液を液体窒素で急冷して反応を停止させ、溶液をメタノール(20 mL)へ投入して重合物を沈殿させた。沈殿物をろ過して回収し、THFへ溶解させた後、再度メタノールへ投入して重合物を沈殿させた(再沈精製)。沈殿した固体を濾過して回収し、50℃で真空乾燥して高分子グラフトMOP(MOP1-graft-PMMA)を得たことを確認した(33 mg)。
実施例2
実施例1の反応溶液を反応開始後65分経過した時点で一部取り出し、高分子グラフトMOPを得た。
実施例1の反応溶液を反応開始後65分経過した時点で一部取り出し、高分子グラフトMOPを得た。
実施例3
実施例1の反応溶液を反応開始後130分経過した時点で一部取り出し、高分子グラフトMOPを得た。
実施例1の反応溶液を反応開始後130分経過した時点で一部取り出し、高分子グラフトMOPを得た。
実施例4
実施例1の反応溶液を反応開始後205分経過した時点で一部取り出し、高分子グラフトMOPを得た。
実施例1の反応溶液を反応開始後205分経過した時点で一部取り出し、高分子グラフトMOPを得た。
実施例5
実施例1の反応溶液を反応開始後265分経過した時点で一部取り出し、高分子グラフトMOPを得た。
実施例1の反応溶液を反応開始後265分経過した時点で一部取り出し、高分子グラフトMOPを得た。
合成例3:MOP1の分解
実施例1で得られた高分子グラフトMOPのTHF溶液(1mg / 1 mL)に、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)のTHF溶液(10μL / 1mL)を10μL程度加え、10分ほど静置することでMOP1部分のみを分解し、有機配位子1にメチルメタクリレートが重合した構造をもつ有機配位子を得たことを確認した。
実施例1で得られた高分子グラフトMOPのTHF溶液(1mg / 1 mL)に、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)のTHF溶液(10μL / 1mL)を10μL程度加え、10分ほど静置することでMOP1部分のみを分解し、有機配位子1にメチルメタクリレートが重合した構造をもつ有機配位子を得たことを確認した。
合成例4〜7:ポリマー鎖導入有機金属多面体の分解
実施例1で得られた高分子グラフトMOPの代わりに実施例2〜5で得られた高分子グラフトMOPを用いたこと以外は合成例3と同様の処理を行い、配位子化合物1にメチルメタクリレートが重合した構造をもつ有機配位子を得たことを確認した。
実施例1で得られた高分子グラフトMOPの代わりに実施例2〜5で得られた高分子グラフトMOPを用いたこと以外は合成例3と同様の処理を行い、配位子化合物1にメチルメタクリレートが重合した構造をもつ有機配位子を得たことを確認した。
実施例6:物質分離膜の製造(自立フィルムの作製)
実施例5で得た高分子グラフトMOPを、クロロホルムに濃度が10 mg/mLとなるように溶解させ、得られた溶液を塗料組成物として、ガラス基材上にドロップキャストし、室温で乾燥し、ガラス基材を剥離することで、物質分離膜を得た。その外観を図1に示す。
実施例5で得た高分子グラフトMOPを、クロロホルムに濃度が10 mg/mLとなるように溶解させ、得られた溶液を塗料組成物として、ガラス基材上にドロップキャストし、室温で乾燥し、ガラス基材を剥離することで、物質分離膜を得た。その外観を図1に示す。
実施例7:物質分離膜の製造(TEM観察用フィルムの作製)
実施例5で得た高分子グラフトMOPを、クロロホルムに濃度が5 mg/mLとなるように溶解させ、得られた溶液を塗料組成物として、銅グリッド上にドロップキャストし、室温で乾燥し、物質分離膜を得た。
実施例5で得た高分子グラフトMOPを、クロロホルムに濃度が5 mg/mLとなるように溶解させ、得られた溶液を塗料組成物として、銅グリッド上にドロップキャストし、室温で乾燥し、物質分離膜を得た。
実施例8:物質分離膜の製造(AFM観察用フィルムの作製)
実施例5で得た高分子グラフトMOPを、クロロホルムに濃度が5 mg/mLとなるように溶解させ、得られた溶液を塗料組成物として、ガラス基板上にドロップキャストし、室温で乾燥し、物質分離膜を得た。
実施例5で得た高分子グラフトMOPを、クロロホルムに濃度が5 mg/mLとなるように溶解させ、得られた溶液を塗料組成物として、ガラス基板上にドロップキャストし、室温で乾燥し、物質分離膜を得た。
実施例9:ポリマー鎖導入有機金属多面体の合成
合成例2で得たMOP1(5 mg)、n−ブチルメタクリレートモノマー(0.23 g)をトルエン(1 mL)へ溶解させた。ここに、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の0.1 Mトルエン溶液(80μL)を加えた。溶液を凍結脱気(3回)して溶存酸素を取り除いた後、溶液をオイルバスで70℃へ加熱し、反応を開始させた。溶液を撹拌しながら2時間重合させた。その後、溶液を液体窒素で急冷して反応を停止させ、溶液をメタノール(20 mL)へ投入して重合物を沈殿させた。沈殿物をろ過して回収し、THFへ溶解させた後、再度メタノールへ投入して重合物を沈殿させた(再沈精製)。沈殿した固体を濾過して回収し、50℃で真空乾燥して高分子グラフトMOP(MOP1-graft-PBMA)を得たことを確認した(41 mg)。
合成例2で得たMOP1(5 mg)、n−ブチルメタクリレートモノマー(0.23 g)をトルエン(1 mL)へ溶解させた。ここに、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の0.1 Mトルエン溶液(80μL)を加えた。溶液を凍結脱気(3回)して溶存酸素を取り除いた後、溶液をオイルバスで70℃へ加熱し、反応を開始させた。溶液を撹拌しながら2時間重合させた。その後、溶液を液体窒素で急冷して反応を停止させ、溶液をメタノール(20 mL)へ投入して重合物を沈殿させた。沈殿物をろ過して回収し、THFへ溶解させた後、再度メタノールへ投入して重合物を沈殿させた(再沈精製)。沈殿した固体を濾過して回収し、50℃で真空乾燥して高分子グラフトMOP(MOP1-graft-PBMA)を得たことを確認した(41 mg)。
実施例10:共重合ポリマー鎖導入有機金属多面体の合成
実施例9で得られたMOP1-graft-PBMA(10mg)、スチレンモノマー(0.2 g)をトルエン(1 mL)へ溶解させた。ここに、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の0.1 Mトルエン溶液(80μL)を加えた。溶液を凍結脱気(3回)して溶存酸素を取り除いた後、溶液をオイルバスで70℃へ加熱し、反応を開始させた。溶液を撹拌しながら2時間30分重合させた。その後、溶液を液体窒素で急冷して反応を停止させ、溶液をメタノール(20 mL)へ投入して重合物を沈殿させた。沈殿物をろ過して回収し、THFへ溶解させた後、再度メタノールへ投入して重合物を沈殿させた(再沈精製)。沈殿した固体を濾過して回収し、50℃で真空乾燥して高分子グラフトMOP(MOP1-graft-(PBMA-b-PSt))を得たことを確認した(17 mg)。
実施例9で得られたMOP1-graft-PBMA(10mg)、スチレンモノマー(0.2 g)をトルエン(1 mL)へ溶解させた。ここに、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の0.1 Mトルエン溶液(80μL)を加えた。溶液を凍結脱気(3回)して溶存酸素を取り除いた後、溶液をオイルバスで70℃へ加熱し、反応を開始させた。溶液を撹拌しながら2時間30分重合させた。その後、溶液を液体窒素で急冷して反応を停止させ、溶液をメタノール(20 mL)へ投入して重合物を沈殿させた。沈殿物をろ過して回収し、THFへ溶解させた後、再度メタノールへ投入して重合物を沈殿させた(再沈精製)。沈殿した固体を濾過して回収し、50℃で真空乾燥して高分子グラフトMOP(MOP1-graft-(PBMA-b-PSt))を得たことを確認した(17 mg)。
合成例8:ポリマー鎖導入有機金属多面体の分解
実施例9で得られた高分子グラフトMOPのTHF溶液(1mg / 1 mL)に、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)のTHF溶液 (10μL / 1mL)を10μL程度加え、10分ほど静置することでMOP1部分のみを分解し、配位子化合物1にブチルメタクリレートが重合した構造をもつ有機配位子を得た。
実施例9で得られた高分子グラフトMOPのTHF溶液(1mg / 1 mL)に、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)のTHF溶液 (10μL / 1mL)を10μL程度加え、10分ほど静置することでMOP1部分のみを分解し、配位子化合物1にブチルメタクリレートが重合した構造をもつ有機配位子を得た。
合成例9:共重合ポリマー鎖導入有機金属多面体の分解
実施例10で得られた高分子グラフトMOPのTHF溶液(1mg / 1 mL)に、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)のTHF溶液 (10μL / 1mL)を10μL程度加え、10分ほど静置することでMOP1部分のみを分解し、有機配位子1にブチルメタクリレートとスチレンがブロック共重合した構造をもつ有機配位子を得た。
実施例10で得られた高分子グラフトMOPのTHF溶液(1mg / 1 mL)に、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)のTHF溶液 (10μL / 1mL)を10μL程度加え、10分ほど静置することでMOP1部分のみを分解し、有機配位子1にブチルメタクリレートとスチレンがブロック共重合した構造をもつ有機配位子を得た。
試験例1:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定(その1)
測定機器として、
測定装置:島津製作所製 HPLC Prominence (送液ポンプ:LC-20AD、オートサンプラ:SIL-20A、カラムオーブン:CTO-20AC
検出器:RI(示差屈折)検出器(RID-10A)
使用カラム:Shodex社製 KF-804L 2本
カラム温度:40℃
移動相と流速:テトラヒドロフラン 1mL/min
を使用した。
測定機器として、
測定装置:島津製作所製 HPLC Prominence (送液ポンプ:LC-20AD、オートサンプラ:SIL-20A、カラムオーブン:CTO-20AC
検出器:RI(示差屈折)検出器(RID-10A)
使用カラム:Shodex社製 KF-804L 2本
カラム温度:40℃
移動相と流速:テトラヒドロフラン 1mL/min
を使用した。
合成例1〜3で得た化合物のGPC測定を行い、各化合物の分子量(数平均分子量)の測定を行った。結果を図2に示す。その結果、合成例1で得た配位子化合物1(有機配位子1)の数平均分子量は530であったが、銅イオンと配位させてMOP1とすることにより、数平均分子量は9500と増大した。一方、このMOP1に対してPMDETAを作用させると、再び数平均分子量が約530となった。このことから、有機金属多面体に対して、PMDETAを作用させると、有機配位子を1本ずつ分離することが理解できる。
次に、合成例2で得たMOP1、実施例2〜5で得た高分子グラフトMOP及び合成例4〜8で得た高分子グラフトMOPを分解した有機配位子のGPC測定を行い、各化合物の分子量(数平均分子量)の測定を行った。結果を図3〜4に示す。その結果、実施例2〜5で得た高分子グラフトMOPは、いずれも、合成例2で得たMOP1(数平均分子量9500)と比較し、ポリマー鎖が導入されていることにより、実施例2(数平均分子量32000)、実施例3(数平均分子量78200)、実施例4(数平均分子量121500)、実施例5(数平均分子量147500)と、いずれも分子量が増大していることが理解できる。また、上記のとおり、有機金属多面体に対してPMDETAを作用させると有機配位子1本ずつ分解できるところ、合成例4〜8で得た化合物は、高分子グラフトMOPの有機配位子を1本ずつ分解したものであり、当初の配位子化合物1(有機配位子1)にポリマー鎖が導入されたものであるため、配位子化合物1(有機配位子1)と比較すると、合成例4(数平均分子量3600)、合成例5(数平均分子量9400)、合成例6(数平均分子量13000)、合成例7(数平均分子量14900)と分子量が大きかった。また、ピーク幅が狭いことから、高分子グラフトMOPを構成する有機配位子には、いずれも同程度のポリマー鎖が導入されていることも理解できる。
試験例2:電子顕微鏡観察
実施例7及び8で得た物質分離膜の表面構造を電子顕微鏡で観察した(実施例7:透過型電子顕微鏡(TEM)、実施例8:原子間力顕微鏡(AFM))。結果を図5に示す。その結果、表面は10〜20 nm程度の粒子(高分子グラフトMOP)から構成されていることが理解できる。
実施例7及び8で得た物質分離膜の表面構造を電子顕微鏡で観察した(実施例7:透過型電子顕微鏡(TEM)、実施例8:原子間力顕微鏡(AFM))。結果を図5に示す。その結果、表面は10〜20 nm程度の粒子(高分子グラフトMOP)から構成されていることが理解できる。
試験例3:ガス吸脱着試験
合成例2で得たMOP1について、温度77 Kにおける窒素吸着量及び窒素脱着量、温度195 Kにおける二酸化炭素吸着量及び二酸化炭素脱着量の測定を行った。測定には日本ベル株式会社製のBelsorp Max体積吸着装置を用いた。測定は、Belsorp Maxクライオシステムを使用し、温度77 Kで行った。得られた結果を図6に示す。図6において、adsは吸着量、desは脱着量である。その結果、MOP1は窒素と比較して二酸化炭素を選択的に吸脱着することが理解できる。この二酸化炭素を選択的に吸脱着する特性は、MOPが有する特有の構造に由来するものであるため、ポリマー鎖を導入した本発明の化合物においても同様に二酸化炭素を選択的に吸脱着することができる。
合成例2で得たMOP1について、温度77 Kにおける窒素吸着量及び窒素脱着量、温度195 Kにおける二酸化炭素吸着量及び二酸化炭素脱着量の測定を行った。測定には日本ベル株式会社製のBelsorp Max体積吸着装置を用いた。測定は、Belsorp Maxクライオシステムを使用し、温度77 Kで行った。得られた結果を図6に示す。図6において、adsは吸着量、desは脱着量である。その結果、MOP1は窒素と比較して二酸化炭素を選択的に吸脱着することが理解できる。この二酸化炭素を選択的に吸脱着する特性は、MOPが有する特有の構造に由来するものであるため、ポリマー鎖を導入した本発明の化合物においても同様に二酸化炭素を選択的に吸脱着することができる。
試験例4:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定(その2)
測定機器として、
測定装置:島津製作所製 HPLC Prominence (送液ポンプ:LC-20AD、オートサンプラ:SIL-20A、カラムオーブン:CTO-20AC
検出器:RI(示差屈折)検出器(RID-10A)
使用カラム:Shodex社製 KF-804L 2本
カラム温度:40℃
移動相と流速:テトラヒドロフラン 1mL/min
を使用した。
測定機器として、
測定装置:島津製作所製 HPLC Prominence (送液ポンプ:LC-20AD、オートサンプラ:SIL-20A、カラムオーブン:CTO-20AC
検出器:RI(示差屈折)検出器(RID-10A)
使用カラム:Shodex社製 KF-804L 2本
カラム温度:40℃
移動相と流速:テトラヒドロフラン 1mL/min
を使用した。
実施例9〜10及び合成例8〜9で得た化合物のGPC測定を行い、各化合物の分子量(数平均分子量)の測定を行った。結果を図7に示す。実施例1に準ずる方法で、実施例9ではn−ブチルメタクリレートモノマーとMOP1を反応させ、GPC測定を行った。その結果、MOP1にポリマー鎖が導入されていることにより、分子量が増大(数平均分子量132300)していることが理解できる。実施例10では、実施例9で得た化合物(MOP1-graft-PBMA)とスチレンモノマーを続けて反応させ、GPC測定を行った。その結果、MOP1-graft-PBMAにスチレンモノマーが続けて導入されていることにより、分子量がさらに増大(数平均分子量269300)していることが理解できる。すなわち、実施例9及び10を通して、MOP1から2段階のRAFT重合を行うことにより、MOP1にブチルメタクリレートとスチレンのブロック共重合体を導入できたことがわかる。また、上記のとおり、有機金属多面体に対してPMDETAを作用させると有機配位子1本ずつ分解できるところ、合成例9で得た化合物(数平均分子量14500)は合成例8で得た化合物(数平均分子量13400)よりも確かに分子量が大きく、これはMOP1上でリビングブロック共重合が進行していることを意味している。
試験例5:直径
合成例2で得たMOP1、実施例1で得たポリマー鎖導入有機金属多面体、実施例8で得た共重合体ポリマー鎖導入有機金属多面体について、Malvern社製 Zetasizer Nano ZSPにより、直径を測定した。結果を図8に示す。その結果、THF溶液中においてMOP1は3〜7 nm程度、ポリマー鎖導入有機金属多面体は10〜30 nm程度、共重合体ポリマー鎖導入有機金属多面体は12〜50 nm程度の範囲に分布しており、平均直径は、MOP1は5 nm程度、ポリマー鎖導入有機金属多面体は18 nm程度、共重合体ポリマー鎖導入有機金属多面体は20 nm程度であった。
合成例2で得たMOP1、実施例1で得たポリマー鎖導入有機金属多面体、実施例8で得た共重合体ポリマー鎖導入有機金属多面体について、Malvern社製 Zetasizer Nano ZSPにより、直径を測定した。結果を図8に示す。その結果、THF溶液中においてMOP1は3〜7 nm程度、ポリマー鎖導入有機金属多面体は10〜30 nm程度、共重合体ポリマー鎖導入有機金属多面体は12〜50 nm程度の範囲に分布しており、平均直径は、MOP1は5 nm程度、ポリマー鎖導入有機金属多面体は18 nm程度、共重合体ポリマー鎖導入有機金属多面体は20 nm程度であった。
合成例10:化合物8の合成
[式中、t-Buはtert−ブチル基を示す。]
化合物8は文献(Davis, B. G.; Shang, X.; DeSantis, G.; Bott, R. R.; Jones, J. B. Bioorg. Med. Chem. 1999, 7, 2293-2301)に準ずる方法で得た。収率70%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm) 8.48 (t, J = 1.4 Hz, isophH, 1H), 8.13 (d, J = 1.4 Hz, isophH, 2H), 4.52 (s, benzyl, 2H), 1.59 (s, -C(CH3)3, 18H). 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 164.6, 138.4, 133.7, 133.3, 130.4, 82.0, 32.0, 28.2。
化合物8は文献(Davis, B. G.; Shang, X.; DeSantis, G.; Bott, R. R.; Jones, J. B. Bioorg. Med. Chem. 1999, 7, 2293-2301)に準ずる方法で得た。収率70%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm) 8.48 (t, J = 1.4 Hz, isophH, 1H), 8.13 (d, J = 1.4 Hz, isophH, 2H), 4.52 (s, benzyl, 2H), 1.59 (s, -C(CH3)3, 18H). 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 164.6, 138.4, 133.7, 133.3, 130.4, 82.0, 32.0, 28.2。
合成例11:化合物9の合成
化合物9は文献(Kato, S.; Yamada, S.; Goto, H.; Terashima, K.; Mizuta, M.; Katada, T. Z. Naturforsch. B 1980, 35, 458-462)に準ずる方法で得た。収率98%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm) 8.43-8.35 (m, 2H), 7.26-7.18 (m, 1H), 7.16-7.08 (m, 2H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ (ppm) 253.5, 153.7, 128.9, 127.7, 126.8。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm) 8.43-8.35 (m, 2H), 7.26-7.18 (m, 1H), 7.16-7.08 (m, 2H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ (ppm) 253.5, 153.7, 128.9, 127.7, 126.8。
合成例12:配位子化合物2(有機配位子2)の合成
式中、t-Buはtert−ブチル基を示す。
合成例10で得た化合物8(5.3 g, 14.4 mmol)のアセトン溶液(50 mL)に合成例11で得た化合物9(3.6 g, 18.7 mmol)を加え、窒素雰囲気下、室温で3時間撹拌した。反応溶液に20 mLの水を加え、ロータリーエバポレーターで15 mL程度まで濃縮した後、残渣を酢酸エチルで抽出した。抽出した有機相を硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレーターで溶媒を減圧留去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的化合物10を得た。収率94%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm) 8.48 (t, J = 1.4 Hz, isophH, 1H), 8.16 (d, J = 1.4 Hz, isophH, 2H), 8.01-7.99 (m, ArH, 2H), 7.56-7.52 (m, ArH, 1H), 7.41-7.37 (m, ArH, 2H), 4.66 (s, benzyl, 2H), 1.60 (s, -C(CH3)3, 18H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ (ppm) 226.8, 164.7, 144.5, 135.8, 133.9, 132.7, 132.6, 129.8, 128.4, 126.9, 81.8, 41.2, 28.1. ESI-MS (methanol with a trace amount of KI, positive mode): calcd. for [M + K]+, m/z = 483.11; found m/z = 483.13。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm) 8.48 (t, J = 1.4 Hz, isophH, 1H), 8.16 (d, J = 1.4 Hz, isophH, 2H), 8.01-7.99 (m, ArH, 2H), 7.56-7.52 (m, ArH, 1H), 7.41-7.37 (m, ArH, 2H), 4.66 (s, benzyl, 2H), 1.60 (s, -C(CH3)3, 18H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ (ppm) 226.8, 164.7, 144.5, 135.8, 133.9, 132.7, 132.6, 129.8, 128.4, 126.9, 81.8, 41.2, 28.1. ESI-MS (methanol with a trace amount of KI, positive mode): calcd. for [M + K]+, m/z = 483.11; found m/z = 483.13。
式中、t-Buはtert−ブチル基を示す。TFAはトリフルオロ酢酸を示す。
化合物10(6.67 g, 15 mmol)のジクロロメタン溶液(15 mL)にトリフルオロ酢酸(TFA; 18.4 mL, 240 mmol)のジクロロメタン溶液(15 mL)を加え、窒素雰囲気下、室温で1時間撹拌した。生成した沈殿物をろ取し、漏斗上でジクロロメタン及び水で洗浄した。得られた粉末状固体を減圧下80℃で24時間乾燥させ、配位子化合物2(有機配位子2)を得た。収率96%。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 8.38 (t, J = 1.8 Hz, isophH, 1H), 8.23 (d, J = 1.8 Hz, isophH, 2H), 7.99-7.94 (m, ArH, 2H), 7.67-7.60 (m, ArH, 1H), 7.51-7.42 (m, ArH, 2H), 4.84 (s, benzyl, 2H). 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 227.0, 166.3, 143.9, 137.0, 134.0, 133.2, 131.5, 129.1, 128.8, 126.6, (the benzyl carbon signal was overlapped with a solvent signal.). ESI-MS (methanol, negative mode): calcd. for [M - H]-, m/z = 331.01; found m/z = 331.03。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 8.38 (t, J = 1.8 Hz, isophH, 1H), 8.23 (d, J = 1.8 Hz, isophH, 2H), 7.99-7.94 (m, ArH, 2H), 7.67-7.60 (m, ArH, 1H), 7.51-7.42 (m, ArH, 2H), 4.84 (s, benzyl, 2H). 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 227.0, 166.3, 143.9, 137.0, 134.0, 133.2, 131.5, 129.1, 128.8, 126.6, (the benzyl carbon signal was overlapped with a solvent signal.). ESI-MS (methanol, negative mode): calcd. for [M - H]-, m/z = 331.01; found m/z = 331.03。
合成例13:配位子化合物3(有機配位子3)の合成
式中、t-Buはtert−ブチル基を示す。
リン酸カリウム(1.63 g, 7.7 mmol)をアセトン(10 mL)に懸濁させ撹拌した。そこへ1−ブタンチオール(CH3(CH2)2CH2SH; 0.83 mL, 7.7 mmol)を加えた後、撹拌しながら二硫化炭素(CS2; 0.47 mg, 7.7 mmol)を滴下し、窒素雰囲気下、室温で3時間撹拌した。この溶液に、合成例10で得た化合物8(2.60 g, 7.0 mmol)のアセトン溶液(8 mL)を加え、さらに室温で16時間撹拌した。水(20 mL)を加え、溶液をロータリーエバポレーターで濃縮後、残渣を酢酸エチルで抽出した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで溶媒を減圧留去後、得られる粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的化合物11を得た。収率88%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm) 8.46 (t, J = 1.8 Hz, isophH, 1H), 8.11 (d, J = 1.8 Hz, isophH, 2H), 4.67 (s, benzyl, 2H), 3.39 (t, J = 7.3 Hz, S=C-S-CH2-, 2H), 1.69 (quin., J = 7.3 Hz, S=C-S-CH2-CH2-, 2H), 1.60 (s, -C(CH3)3, 18H), 1.43 (sext., J = 7.3 Hz, -CH2-CH2-CH3, 2H), 0.94 (t, J = 7.3 Hz, -CH2-CH3, 3H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ (ppm) 223.1, 164.8, 136.2, 134.0, 132.8, 129.9, 81.9, 40.4, 37.1, 30.1, 28.1, 22.2, 13.7. ESI-MS (methanol with a trace amount of KI, positive mode): calcd. for [M + K]+, m/z = 495.11; found m/z = 495.15。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm) 8.46 (t, J = 1.8 Hz, isophH, 1H), 8.11 (d, J = 1.8 Hz, isophH, 2H), 4.67 (s, benzyl, 2H), 3.39 (t, J = 7.3 Hz, S=C-S-CH2-, 2H), 1.69 (quin., J = 7.3 Hz, S=C-S-CH2-CH2-, 2H), 1.60 (s, -C(CH3)3, 18H), 1.43 (sext., J = 7.3 Hz, -CH2-CH2-CH3, 2H), 0.94 (t, J = 7.3 Hz, -CH2-CH3, 3H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ (ppm) 223.1, 164.8, 136.2, 134.0, 132.8, 129.9, 81.9, 40.4, 37.1, 30.1, 28.1, 22.2, 13.7. ESI-MS (methanol with a trace amount of KI, positive mode): calcd. for [M + K]+, m/z = 495.11; found m/z = 495.15。
式中、t-Buはtert−ブチル基を示す。TFAはトリフルオロ酢酸を示す。
化合物11(3.54 g, 7.75 mmol)のジクロロメタン溶液(15 mL)にトリフルオロ酢酸(TFA; 1.4 mL, 18.3 mmol)のジクロロメタン溶液(15 mL)を加え、窒素雰囲気下、室温で1.5時間撹拌した。生成した沈殿物をろ取し、漏斗上でヘキサン及び水で洗浄した。得られた粉末状固体を減圧下30℃で24時間乾燥させ、配位子化合物3(有機配位子3)を得た。収率94%。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 13.6-13.0 (br, -COOH, 2H), 8.56 (d, J = 1.4 Hz, isophH, 1H), 8.17 (d, J = 1.4 Hz, isophH, 2H), 4.82 (s, benzyl, 2H), 3.38 (t, J = 7.3 Hz, S=C-S-CH2-, 2H), 1.61 (quin., J = 7.3 Hz, S=C-S-CH2-CH2-, 2H), 1.34 (sext., J = 7.3 Hz, -CH2-CH2-CH3, 2H), 0.86 (t, J = 7.3 Hz, -CH2-CH3, 3H). 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 223.3, 166.3, 137.4, 134.0, 131.5, 129.1, 39.0, 36.3, 29.6, 21.4, 13.4. ESI-MS (methanol, negative mode): calcd. for [M - H]-, m/z = 343.01; found m/z = 343.03。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 13.6-13.0 (br, -COOH, 2H), 8.56 (d, J = 1.4 Hz, isophH, 1H), 8.17 (d, J = 1.4 Hz, isophH, 2H), 4.82 (s, benzyl, 2H), 3.38 (t, J = 7.3 Hz, S=C-S-CH2-, 2H), 1.61 (quin., J = 7.3 Hz, S=C-S-CH2-CH2-, 2H), 1.34 (sext., J = 7.3 Hz, -CH2-CH2-CH3, 2H), 0.86 (t, J = 7.3 Hz, -CH2-CH3, 3H). 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 223.3, 166.3, 137.4, 134.0, 131.5, 129.1, 39.0, 36.3, 29.6, 21.4, 13.4. ESI-MS (methanol, negative mode): calcd. for [M - H]-, m/z = 343.01; found m/z = 343.03。
合成例14:配位子化合物4(有機配位子4)の合成
式中、t-Buはtert−ブチル基を示す。
まず、カリウムプロパンジチオエートを、 原料にエチルマグネシウムブロミドを用い、文献(Kato, S.; Yamada, S.; Goto, H.; Terashima, K.; Mizuta, M.; Katada, T. Z. Naturforsch. B 1980, 35, 458-462)に準ずる方法で得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 3.01 (q, J = 7.3 Hz, -CH2CH3, 2H), 1.25 (t, J = 7.3 Hz, -CH2CH3, 3H)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 3.01 (q, J = 7.3 Hz, -CH2CH3, 2H), 1.25 (t, J = 7.3 Hz, -CH2CH3, 3H)。
次に、合成例10で得た化合物8(150 mg, 0.40 mmol)のアセトン溶液(1.5 mL)にカリウムプロパンジチオエート(76 mg, 0.53 mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。ロータリーエバポレーターで反応溶液を濃縮し乾固させた後、生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、減圧下40℃で16時間乾燥させ、目的化合物12を得た(収量154 mg、黄褐色固体、収率96%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm) 8.46 (t, J = 1.4 Hz, isophH, 1H), 8.09 (d, J = 1.4 Hz, isophH, 2H), 4.52 (s, benzyl, 2H), 3.03 (q, J = 7.3 Hz, -CH2CH3, 2H), 1.60 (s, -C(CH3)3, 18H), 1.38 (t, J = 7.3 Hz, -CH2CH3, 3H)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm) 8.46 (t, J = 1.4 Hz, isophH, 1H), 8.09 (d, J = 1.4 Hz, isophH, 2H), 4.52 (s, benzyl, 2H), 3.03 (q, J = 7.3 Hz, -CH2CH3, 2H), 1.60 (s, -C(CH3)3, 18H), 1.38 (t, J = 7.3 Hz, -CH2CH3, 3H)。
式中、t-Buはtert−ブチル基を示す。TFAはトリフルオロ酢酸を示す。
化合物12(154 mg, 0.39 mmol)のジクロロメタン溶液(0.8 mL)にトリフルオロ酢酸(TFA; 0.39 mL, 5.0 mmol)のジクロロメタン溶液(0.8 mL)を加え、室温で1時間撹拌した。生成した沈殿物をろ取し、漏斗上で酢酸エチル/ヘキサン(1/50, v/v)の混合液で洗浄した。得られた粉末状固体を減圧下40℃で16時間乾燥させ、配位子化合物4(有機配位子4)を得た(収量87 mg、薄黄色固体、収率79%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 13.4-13.2 (br, -COOH, 2H), 8.36 (t, J = 1.8 Hz, isophH, 1H), 8.15 (d, J = 1.8 Hz, isophH, 2H), 4.69 (s, benzyl, 2H), 3.03 (q, J = 7.3 Hz, -CH2CH3, 2H), 1.28 (t, J = 7.3 Hz, -CH2CH3, 3H)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 13.4-13.2 (br, -COOH, 2H), 8.36 (t, J = 1.8 Hz, isophH, 1H), 8.15 (d, J = 1.8 Hz, isophH, 2H), 4.69 (s, benzyl, 2H), 3.03 (q, J = 7.3 Hz, -CH2CH3, 2H), 1.28 (t, J = 7.3 Hz, -CH2CH3, 3H)。
合成例15:配位子化合物5(有機配位子5)の合成
式中、t-Buはtert−ブチル基を示す。
合成例10で得た化合物8(4.0 g, 10.7 mmol)のアセトン溶液(80 mL)にジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物(3.13 g, 13.9 mmol)を加え、室温で16時間撹拌した。反応溶液に80 mLの水を加え、ロータリーエバポレーターでアセトンを留去した後、残渣をジクロロメタン(40 mL×2回)で抽出した。抽出した有機相を硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレーターで溶媒を減圧留去し、減圧下40℃で16時間乾燥させ、目的化合物13を得た(収量4.69 g、白色固体、収率99%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm) 8.46 (t, J = 1.6 Hz, isophH, 1H), 8.16 (d, J = 1.6 Hz, isophH, 2H), 4.61 (s, benzyl, 2H), 4.04 (q, J =7.3 Hz, -N(CH2CH3)2, 2H), 3.73 (q, J = 7.3 Hz, -N(CH2CH3)2, 2H), 1.60 (s, -C(CH3)3, 18H), 1.29 (t, J = 7.3 Hz, -N(CH2CH3)2, 6H)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm) 8.46 (t, J = 1.6 Hz, isophH, 1H), 8.16 (d, J = 1.6 Hz, isophH, 2H), 4.61 (s, benzyl, 2H), 4.04 (q, J =7.3 Hz, -N(CH2CH3)2, 2H), 3.73 (q, J = 7.3 Hz, -N(CH2CH3)2, 2H), 1.60 (s, -C(CH3)3, 18H), 1.29 (t, J = 7.3 Hz, -N(CH2CH3)2, 6H)。
式中、t-Buはtert−ブチル基を示す。TFAはトリフルオロ酢酸を示す。
化合物13(4.69 g, 10.7 mmol)のジクロロメタン溶液(22 mL)にトリフルオロ酢酸(TFA; 11 mL, 144 mmol)のジクロロメタン溶液(11 mL)を加え、室温で1時間撹拌した。生成した沈殿物をろ取し、漏斗上で水およびジクロロメタンで洗浄した。得られた粉末状固体を減圧下80℃で16時間乾燥させ、配位子化合物5(有機配位子5)を得た(収量3.16 g、白色固体、収率91%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 13.4-13.2 (br, -COOH, 2H), 8.35 (t, J = 1.8 Hz, isophH, 1H), 8.18 (d, J = 1.8 Hz, isophH, 2H), 4.71 (s, benzyl, 2H), 3.97 (q, J =7.3 Hz, -N(CH2CH3)2, 2H), 3.75 (q, J = 7.3 Hz, -N(CH2CH3)2, 2H), 1.21 (t, J = 7.3 Hz, -N(CH2CH3)2, 3H), 1.16 (t, J = 7.3 Hz, -N(CH2CH3)2, 3H)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 13.4-13.2 (br, -COOH, 2H), 8.35 (t, J = 1.8 Hz, isophH, 1H), 8.18 (d, J = 1.8 Hz, isophH, 2H), 4.71 (s, benzyl, 2H), 3.97 (q, J =7.3 Hz, -N(CH2CH3)2, 2H), 3.75 (q, J = 7.3 Hz, -N(CH2CH3)2, 2H), 1.21 (t, J = 7.3 Hz, -N(CH2CH3)2, 3H), 1.16 (t, J = 7.3 Hz, -N(CH2CH3)2, 3H)。
合成例16:配位子化合物6(有機配位子6)の合成
式中、t-Buはtert−ブチル基を示す。
合成例10で得た化合物8(3.0 g, 8.1 mmol)のアセトン溶液(30 mL)にキサントゲン酸カリウム(1.68 g, 10.5 mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。ロータリーエバポレーターで反応溶液を濃縮し乾固させた後、再び酢酸エチル(50 mL)へ溶解させ水で有機相を洗浄した(30 mL×2回)。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレーターで溶媒を減圧留去し、生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。生成物を減圧下40℃で16時間乾燥させ、目的化合物14を得た(収量3.24 g、薄黄色固体、収率97%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm) 8.47 (t, J = 1.8 Hz, isophH, 1H), 8.12 (d, J = 1.8 Hz, isophH, 2H), 4.65 (q, J = 7.3 Hz, -OCH2CH3, 2H), 4.40 (s, benzyl, 2H), 1.60 (s, -C(CH3)3, 18H), 1.44 (t, J = 7.3 Hz, -OCH2CH3, 3H)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm) 8.47 (t, J = 1.8 Hz, isophH, 1H), 8.12 (d, J = 1.8 Hz, isophH, 2H), 4.65 (q, J = 7.3 Hz, -OCH2CH3, 2H), 4.40 (s, benzyl, 2H), 1.60 (s, -C(CH3)3, 18H), 1.44 (t, J = 7.3 Hz, -OCH2CH3, 3H)。
式中、t-Buはtert−ブチル基を示す。TFAはトリフルオロ酢酸を示す。
化合物14(158 mg, 0.38 mmol)のジクロロメタン溶液(0.77 mL)にトリフルオロ酢酸(TFA; 0.38 mL, 4.98 mmol)のジクロロメタン溶液(0.77 mL)を加え、室温で1時間撹拌した。生成した沈殿物をろ取し、漏斗上でヘキサン洗浄後、酢酸エチル/ヘキサン(1/30, v/v)の混合液で洗浄した。得られた粉末状固体を減圧下40℃で16時間乾燥させ、配位子化合物6(有機配位子6)を得た(収量98 mg、白色固体、収率85%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 13.4-13.2 (br, -COOH, 2H), 8.36 (t, J = 1.8 Hz, isophH, 1H), 8.19 (d, J = 1.8 Hz, isophH, 2H), 4.60 (q, J = 7.3 Hz, -OCH2CH3, 2H), 4.53 (s, benzyl, 2H), 1.36 (t, J = 7.3 Hz, -OCH2CH3, 3H)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 13.4-13.2 (br, -COOH, 2H), 8.36 (t, J = 1.8 Hz, isophH, 1H), 8.19 (d, J = 1.8 Hz, isophH, 2H), 4.60 (q, J = 7.3 Hz, -OCH2CH3, 2H), 4.53 (s, benzyl, 2H), 1.36 (t, J = 7.3 Hz, -OCH2CH3, 3H)。
合成例17:配位子化合物7(有機配位子7)の合成
式中、t-Buはtert−ブチル基を示す。
まず、カリウム2,5−ジメチルベンゼンカルボジチオエートを、 原料に2,5−ジメチルフェニルマグネシウムブロミドを用い、文献(Kato, S.; Yamada, S.; Goto, H.; Terashima, K.; Mizuta, M.; Katada, T. Z. Naturforsch. B 1980, 35, 458-462)に準ずる方法で得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 6.82-6.79 (m, ArH, 1H), 6.72-6.68 (s, ArH, 2H), 2.18 (s, Ar-CH3, 6H)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 6.82-6.79 (m, ArH, 1H), 6.72-6.68 (s, ArH, 2H), 2.18 (s, Ar-CH3, 6H)。
次に、合成例10で得た化合物8(2.25 g, 6.1 mmol)のアセトン溶液(40 mL)にカリウム2,5−ジメチルベンゼンカルボジチオエート(2.0 g, 9.1 mmol)を加え、室温で20時間撹拌した。ロータリーエバポレーターで反応溶液を濃縮し乾固させた後、再び酢酸エチル(50 mL)へ溶解させ水で有機相を洗浄した(30 mL×2回)。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレーターで溶媒を減圧留去し、生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。得られた黒褐色の生成物を冷ヘキサンへ懸濁させ洗浄後、ろ取して減圧下40℃で16時間乾燥させ、目的化合物15を得た(収量1.16 g、山吹色固体、収率40%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm) 8.48 (t, J = 1.4 Hz, isophH, 1H), 8.14 (d, J = 1.4 Hz, isophH, 2H), 7.10-7.08 (m, ArH, 2H), 7.07-7.05 (m, ArH, 1H), 4.64 (s, benzyl, 2H), 2.31 (s, Ar-CH3, 6H), 1.61 (s, -C(CH3)3, 18H)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm) 8.48 (t, J = 1.4 Hz, isophH, 1H), 8.14 (d, J = 1.4 Hz, isophH, 2H), 7.10-7.08 (m, ArH, 2H), 7.07-7.05 (m, ArH, 1H), 4.64 (s, benzyl, 2H), 2.31 (s, Ar-CH3, 6H), 1.61 (s, -C(CH3)3, 18H)。
式中、t-Buはtert−ブチル基を示す。TFAはトリフルオロ酢酸を示す。
化合物15(2.34 g, 4.95 mmol)のジクロロメタン溶液(13 mL)にトリフルオロ酢酸(TFA; 0.95 mL, 12.4 mmol)のジクロロメタン溶液(10 mL)を加え、室温で3時間撹拌した。生成した沈殿物をろ取し、漏斗上で水、及び酢酸エチル/ヘキサン(1/30, v/v)の混合液で洗浄した。得られた粉末状固体を減圧下40℃で16時間乾燥させ、配位子化合物7(有機配位子7)を得た(収量1.7 g、山吹色固体、収率96%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 13.0-13.6 (br, -COOH, 2H), 8.38 (t, J = 1.8 Hz, isophH, 1H), 8.22 (d, J = 1.8 Hz, isophH, 2H), 7.16-7.12 (m, ArH, 2H), 7.03-6.98 (m, ArH, 1H), 4.81 (s, benzyl, 2H), 2.27 (s, Ar-CH3, 3H), 2.20 (s, -CH3, 3H)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) 13.0-13.6 (br, -COOH, 2H), 8.38 (t, J = 1.8 Hz, isophH, 1H), 8.22 (d, J = 1.8 Hz, isophH, 2H), 7.16-7.12 (m, ArH, 2H), 7.03-6.98 (m, ArH, 1H), 4.81 (s, benzyl, 2H), 2.27 (s, Ar-CH3, 3H), 2.20 (s, -CH3, 3H)。
合成例18:有機金属多面体MOP2の合成
式中、Cu(OAc)2・H2Oは酢酸銅一水和物を示す。NMPはN−メチルピロリドンを示す。
原料として合成例13で得た配位子化合物3(有機配位子3)を用い、溶媒としてN−メチルピロリドンを用いたこと以外は合成例2と同様の手法で、有機金属多面体MOP2を得た。
実施例11:ポリマー鎖導入有機金属多面体の合成
原料として合成例18で得たMOP2を用い、モノマー化合物としてtert−ブチルアクリレートを用い、溶媒としてテトラヒドロフランを用い、反応時間を15分としたこと以外は実施例1と同様の手法で、高分子グラフトMOP(MOP2-graft-PtBA39)を得た。また、この高分子グラフトMOPも、溶剤可溶性が高いため、塗布及び乾燥によりフィルムを製造することができる。
実施例12
実施例11の反応時間を45分としたこと以外は同様に、高分子グラフトMOPを得た。
実施例11の反応時間を45分としたこと以外は同様に、高分子グラフトMOPを得た。
実施例13
実施例11の反応時間を75分としたこと以外は同様に、高分子グラフトMOPを得た。
実施例11の反応時間を75分としたこと以外は同様に、高分子グラフトMOPを得た。
実施例14
実施例11の反応時間を105分としたこと以外は同様に、高分子グラフトMOPを得た。
実施例11の反応時間を105分としたこと以外は同様に、高分子グラフトMOPを得た。
実施例15
実施例11の反応時間を135分としたこと以外は同様に、高分子グラフトMOPを得た。
実施例11の反応時間を135分としたこと以外は同様に、高分子グラフトMOPを得た。
合成例19〜23:ポリマー鎖導入有機金属多面体の分解
実施例1で得られた高分子グラフトMOPの代わりに実施例11〜15で得られた高分子グラフトMOPを用いたこと以外は合成例3と同様の処理を行い、配位子化合物2にアクリル酸tert−ブチルが重合した構造をもつ有機配位子を得たことを確認した。
実施例1で得られた高分子グラフトMOPの代わりに実施例11〜15で得られた高分子グラフトMOPを用いたこと以外は合成例3と同様の処理を行い、配位子化合物2にアクリル酸tert−ブチルが重合した構造をもつ有機配位子を得たことを確認した。
試験例6:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定(その3)
測定機器として、
測定装置:島津製作所製 HPLC Prominence (送液ポンプ:LC-20AD、オートサンプラ:SIL-20A、カラムオーブン:CTO-20AC
検出器:RI(示差屈折)検出器(RID-10A)
使用カラム:Shodex社製 KF-804L 2本
カラム温度:40℃
移動相と流速:テトラヒドロフラン 1mL/min
を使用した。
測定機器として、
測定装置:島津製作所製 HPLC Prominence (送液ポンプ:LC-20AD、オートサンプラ:SIL-20A、カラムオーブン:CTO-20AC
検出器:RI(示差屈折)検出器(RID-10A)
使用カラム:Shodex社製 KF-804L 2本
カラム温度:40℃
移動相と流速:テトラヒドロフラン 1mL/min
を使用した。
実施例11〜15及び合成例18〜23で得た化合物のGPC測定を行い、各化合物の分子量(数平均分子量)の測定を行った。結果を図9に示す。実施例1に準ずる方法で、実施例11〜15ではtert−ブチルアクリレートモノマーとMOP2を反応させ、GPC測定を行った。その結果、いずれも、合成例18で得たMOP2(数平均分子量5090 g/mol)と比較し、ポリマー鎖が導入されていることにより、実施例11(数平均分子量6500 g/mol)、実施例12(数平均分子量18000 g/mol)、実施例13(数平均分子量30700 g/mol)、実施例14(数平均分子量46800 g/mol)、実施例15(数平均分子量59200 g/mol)と、いずれも分子量が増大していることが理解できる。また、上記のとおり、有機金属多面体に対してPMDETAを作用させると有機配位子1本ずつ分解できるところ、合成例19〜23で得た化合物は、高分子グラフトMOPの有機配位子を1本ずつ分解したものであり、当初の配位子化合物3(有機配位子3)にポリマー鎖が導入されたものであるため、配位子化合物3(有機配位子3)と比較すると、合成例19(数平均分子量880 g/mol)、合成例20(数平均分子量2030 g/mol)、合成例21(数平均分子量3080 g/mol)、合成例22(数平均分子量4500 g/mol)、合成例23(数平均分子量5800 g/mol)と分子量が大きかった。また、ピーク幅が狭いことから、高分子グラフトMOPを構成する有機配位子には、いずれも同程度のポリマー鎖が導入されていることも理解できる。
また、これらの結果から、重合反応時間とモノマー転化率のプロットを図10(a)に、モノマー転化率とMOP数平均分子量のプロットを図10(b)(●:数平均分子量、■:分子量分散(Mw/Mn))に、モノマー転化率と分解した有機配位子の数平均分子量のプロットを図10(c)(●:数平均分子量、■:分子量分散(Mw/Mn))に、それぞれ示す。図10(b)からも理解できるように、モノマー転化率が増える(重合が進む)にしたがい、分子量が線形に大きくなり、且つ、分子量分散が常に1に近い状態であるため、反応がリビング機構で進行していることが示唆される。
実施例16
配位子化合物(有機配位子)として、配位子化合物1及び3(有機配位子1及び3)の代わりに、合成例12で得た配位子化合物2(有機配位子2)を用いたこと以外は実施例1と同様の処理を行い、高分子グラフトMOPを得た。また、この方法によっても高分子グラフトMOPが得られたことを確認した。また、この高分子グラフトMOPも、溶剤可溶性が高いため、塗布及び乾燥によりフィルムを製造することができる。
配位子化合物(有機配位子)として、配位子化合物1及び3(有機配位子1及び3)の代わりに、合成例12で得た配位子化合物2(有機配位子2)を用いたこと以外は実施例1と同様の処理を行い、高分子グラフトMOPを得た。また、この方法によっても高分子グラフトMOPが得られたことを確認した。また、この高分子グラフトMOPも、溶剤可溶性が高いため、塗布及び乾燥によりフィルムを製造することができる。
また、配位子化合物(有機配位子)として、配位子化合物1及び3(有機配位子1及び3)の代わりに、合成例14で得た配位子化合物4(有機配位子4)、合成例15で得た配位子化合物5(有機配位子4)、合成例16で得た配位子化合物6(有機配位子6)、合成例17で得た配位子化合物7(有機配位子7)等を使用した場合にも、同様の結果が得られることが期待される。
Claims (22)
- 2価以上の金属イオンと、一般式(3):
で表される有機配位子とを含有し、且つ、該金属イオンと該有機配位子とが交互に配位結合されている、単孔性又は多孔性配位高分子。 - 前記金属イオンと、前記有機配位子とからなる、請求項5〜8のいずれかに記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
- 前記金属イオンを4個以上含有し、且つ、前記有機配位子を4個以上含有する、請求項5〜9のいずれかに記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
- 記金属イオンが2価の金属イオンである、請求項5〜10のいずれかに記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
- 前記金属イオンが遷移金属イオンである、請求項5〜11のいずれかに記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
- 前記金属イオンが、銅イオン、亜鉛イオン、コバルトイオン、カドミウムイオン、ロジウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、パラジウムイオン、ランタンイオン、及びジルコニウムイオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項5〜12のいずれかに記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
- 有機金属多面体である、請求項5〜14のいずれかに記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
- 平均直径が2 nm〜100 nmである、請求項15に記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
- 内部に平均直径が2 nm以下の孔を1個有する、請求項15又は16に記載の単孔性又は多孔性配位高分子。
- ポリマー鎖が導入された有機金属多面体の製造方法であって、
有機金属多面体と、モノマー化合物とを用いて、可逆的付加開裂連鎖移動重合を施す工程
を備え、
前記有機金属多面体は、2価以上の金属イオンと、一般式(5):
で表される有機配位子とを含有し、且つ、該金属イオンと該有機配位子とが交互に配位結合されている、製造方法。 - 請求項5〜17のいずれかに記載の単孔性又は多孔性配位高分子からなる物質の吸着及び/又は分離材料。
- ガス及び/又はイオンの吸着材料、並びにガス及び/又はイオンの分離材料よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項19に記載の物質の吸着及び/又は分離材料。
- 請求項5〜17のいずれかに記載の単孔性又は多孔性配位高分子、又は請求項19若しくは20に記載の物質の吸着及び/又は分離材料を含有する、物質分離膜。
- ガス及び/又はイオン分離膜である、請求項21に記載の物質分離膜。
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