JPWO2016143808A1 - スフェロイドの作製方法及び該方法に用いる培地 - Google Patents
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Abstract
Description
ハンギングドロップ培養法は、表面張力を利用した培養液の液滴の中に細胞懸濁液をスポットして培養する方法である(非特許文献1)。この方法により、大きさが均一なスフェロイドが形成されるが、培地交換ができないため、長期培養が困難となる問題があり、また大量のスフェロイド生成に向かない、という問題がある。
本発明は加えて、インビトロにおいてスフェロイドを評価等の目的に用いる場合は、良質なスフェロイドを大量に作製できる方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下を含むものである。
(1)グルコース含有培地であってグルコースが実質的にL−グルコースから構成される培地を用いて細胞を培養することを特徴とするスフェロイドの作製方法。
(2)L−グルコースの割合が、D−グルコースおよびL−グルコースからなる全グルコースの90%以上である上記(1)に記載の方法。
(3)前記細胞が、がん細胞由来の細胞である上記(1)または(2)に記載の方法。
(4)前記培地での培養が3日以上である上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載に記載の方法。
(5)前記培地が、成長因子および/または接着因子を添加しない培地である、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の方法。
(6)前記培地が、細胞間マトリックスを添加しない培地である、上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の方法。
(7)前記培養が立体的な構造を有する細胞支持体を用いない培養である上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の方法。
(8)以下の工程:
(a)D−グルコースを含有する培地にて細胞を培養する工程、
(b)培地中のD−グルコースをL−グルコースに置き換える工程、
(c)グルコース含有培地であってグルコースが実質的にL−グルコースから構成される培地を用いて細胞を培養する工程、
を含む、スフェロイドの作製方法。
(9)前記工程(b)が、培地中のD−グルコース濃度を段階的に下げるとともに、L−グルコース濃度を段階的に上げて細胞を培養する工程である、上記(8)に記載の方法。
(10)工程(c)におけるグルコース含有培地中のL−グルコースの割合が、D−グルコースおよびL−グルコースからなる全グルコースの90%以上である上記(8)または(9)に記載の方法。
(11)前記工程(c)における培養が3日以上である、上記(8)〜(10)のいずれか一つに記載の方法。
(12)前記細胞が、がん細胞由来の細胞である上記(8)〜(11)のいずれか一つに記載の方法。
(13)前記工程(c)の培地が、成長因子および/または接着因子を添加しない培地である、上記(8)〜(12)のいずれか一つに記載の方法。
(14)前記工程(c)の培地が、細胞間マトリックスを添加しない培地である、上記(8)〜(13)のいずれか一つに記載の方法。
(15)前記工程(a)〜(c)の培地が、成長因子、接着因子、細胞間マトリックスのいずれも添加しない培地である、上記(8)〜(14)のいずれか一つに記載の方法。
(16)前記培養が立体的な構造を有する細胞支持体を用いない培養である上記(8)〜(15)のいずれか一つに記載の方法。
(17)上記(1)〜(16)のいずれか一つに記載の方法により作製されたスフェロイド。
(18)前記スフェロイドが細胞間が緻密な状態なスフェロイドである上記(17)に記載のスフェロイド。
(19)グルコース含有培地であってグルコースが実質的にL−グルコースから構成されるスフェロイド培養培地。
(20)L−グルコースの割合が、D−グルコースおよびL−グルコースからなる全グルコースの90%以上である上記(19)に記載の培地。
(21)前記培地が成長因子および/または接着因子を添加していない培地である、上記(19)または(20)に記載の培地。
(22)前記培地が細胞間マトリックスを添加していない培地である、上記(19)〜(21)のいずれか一つに記載の培地。
なお、文中で特に断らない限り、本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味をもつ。また、本明細書に記載されたものと同等または同様の任意の材料および方法は、本発明の実施において同様に使用することができる。
また、本明細書に記載された発明に関連して本明細書中で引用されるすべての刊行物および特許は、例えば、本発明で使用できる方法や材料その他を示すものとして、本明細書の一部を構成するものである。
本発明で用いるL−グルコース培地中のグルコース濃度は、特に制限がないが、例えば、通常の培養においてグルコースとしてD−グルコースを用いた場合のグルコース濃度を用いることができる。これに限定されないが、例えば、0.5mM〜50mM、好ましくは1.0mM〜25mM、より好ましくは5mM〜25mMである。
本発明で用いられる培地はまた、血清代替物を含んでいてもよい。血清代替物としては、例えば、アルブミン、トランスフェリン、脂肪酸、コラーゲン前駆体、微量元素(例えば亜鉛、セレン)、B−27サプリメント、N2サプリメント、ノックアウトシーラムリプレースメント(KSR)、2−メルカプトエタノール、モノチオグリセロール、またはこれらの均等物が挙げられる。これらの血清代替物は、市販されている。
本発明で用いられる培地はまた、他の添加物、例えば、脂質、アミノ酸(例えば、非必須アミノ酸)、ビタミン、増殖因子、サイトカイン、抗酸化剤、2−メルカプトエタノール、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類、抗生物質(例えばペニシリンやストレプトマイシン)または抗菌剤(例えばアンホテリシンB)等を含有してもよい。
本発明で用いられる培地はまた、スフェロイドの形成に寄与する他の添加物、例えば、成長因子や接着因子を含んでもよく、また、細胞間マトリックスを含んでもよい。成長因子としては、例えば、NGF、FGF、EGF、TGF、BDNF、VEGF、G−CSF、PDGF、EPO等をあげることができる。接着因子としては、例えば、インテグリン、カドヘリン、ラミニン、免疫グロブリンスーパーファミリー等をあげることができる。細胞間マトリックスとしては、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、ネトリン、プロテオグリカン類等をあげることができる。また、成長因子や細胞間マトリックス等を複合的に含むCorning社のMatrigel(登録商標)や、Scivax社のNanoCulture Medium Supplement等をあげることができる。しかし、本発明においては、培地中にこれらのスフェロイド形成寄与物質を添加しなくても、良質なスフェロイドが形成できる。
本発明で用いられる培地は、特に好ましくは、無血清培地であり、かつ、化学的に定義された原材料のみを含む培地であり、成長因子や接着因子、あるいは細胞間マトリックスを添加しない培地である。これに限定されないが、例えば、添加されたグルコースが実質的にL−グルコースから構成されるDMEM培地をあげることができる。
また、本発明を用いて作成されたスフェロイドは、従来の方法で作成したスフェロイドに比べ、立体構造がより安定に維持され、長期間にわたり随時良質なスフェロイドを得ることができる。
さらに、本発明によると、形成されるスフェロイドの培養には特別な装置、特殊容器や高価な添加物を用いることが必要でなく一般的な容器例えばプラスチックディッシュやカバースリップ等を用いることができ、また使用する培地は一般的なDMEM培地を基本として実施できるうえ、培養操作においても特別な手技や熟練の技巧を必要としないため、誰もが簡便にスフェロイドを作成できる優位性を持っている。
しかしながら、本発明の方法を、特殊な装置や容器、成長因子や接着因子、細胞間マトリックス等の添加というスフェロイド作製のための技術のいずれかまたは複数と、あるいはそれらの全てと組み合わせて用いることもでき、そのような組合せにより、より効率良く、良質なスフェロイドを大量に作製することも期待できる。このような組合せは、本発明の教示に基づいて、当業者が適宜、選択できるものであり、それらも本発明の一部である。
発明者は、D−グルコースの第二位に蛍光基NBDを導入した分子2−[N−(7−nitrobenz−2−oxa−1,3−diazol−4−yl)amino]−2−deoxy−D−glucose(2−NBDG)が、グルコーストランスポーターを介して哺乳動物細胞内に濃度、時間、温度依存的に、放射性標識グルコース誘導体に類似したキネティクスで取り込まれること、および、その対照分子であるL−グルコースの第二位に蛍光基NBDを導入した分子2−[N−(7−nitrobenz−2−oxa−1,3−diazol−4−yl)amino]−2−deoxy−L−glucose(2−NBDLG)が、グルコーストランスポーターを介して選択的に取り込まれないこと、を示した。
培地の置換はまた、以下のようにして行うこともできる。まず最初に、培地のD−グルコース濃度が当初濃度の25%(6.25mM)になるように培地交換を行う。そのために培地の半量交換を2回続けて行うことでD−グルコース25%濃度にすることができる。培地交換に用いる培地はL−グルコース含有培地(D−グルコース不含培地)を用いることができる。D−グルコース濃度を当初濃度の25%にするのは培養開始後2日目から10日目が適している。その後、D−グルコース濃度25%で2日間培養した後、さらに濃度を段階的に減少させていくために、培地の半量交換を行いD−グルコース濃度を12.5%(3.125mM)にして2日間培養した後、培地を全量捨ててL−グルコース含有培地で2回Washした後L−グルコース培地を加えることで、培地に加えているD−グルコース濃度を0%にできる。
培養中に、増殖を続けてきた細胞の中で、D−グルコース濃度12.5%(3.125mM)以降は浮遊する死細胞が目立つようになり、D−グルコース濃度が0%になってからは細胞の浮遊は顕著に見られ、そしてそれまで増え続けてきた細胞数は一旦減少する。
浮遊してくる死細胞からの代謝産物を取り除くために、培地添加のD−グルコース濃度が0%になった時点から6時間毎にL−グルコース含有培地で培地の半量交換を行う。これにより、代謝産物の影響を極力受けないようにすることができる。6時間毎の培地交換は少なくとも4回以上、浮遊する細胞が目立たなくなるまで行うことが好ましい。以降の培地交換については、Dish全体の細胞が少ない期間は1日おきに、十分に細胞が増え始める19日目以降は毎日、培地の半量交換を行うことが好ましい。
これらのスフェロイドに蛍光L−グルコース誘導体2−NBDLGおよび2−TRLGを投与すると、2−NBDLGの強い取込みが見られる。この取込みはガラス底のWillCo−Glass bottom Dishまたはガバースリップを使うことで、共焦点レーザー顕微鏡での観察が可能となるが、スフェロイド周辺部には2−NBDLGの緑色の強い蛍光が見られ、中心部には2−NBDLGと同時に投与した2−TRLGの赤色の取込みすなわち壊死した細胞が見られるHeterogenousなスフェロイドが形成される。
なお、以下に記載する実施例2では2−NBDLGの取込みを示すスフェロイドが70%を超え、一方実施例3では半数を超えるスフェロイドが取込みを示している。
凍結保存していたMIN6細胞(大阪大学の宮崎純一教授より供与を受けて5−8回継代した細胞)を常法に従って培養に移し、トータルで6−9回継代したものを実験に供した。
HT−29ヒト結腸腺がん細胞は、ATCC(American Type Culture Collection)から入手した(細胞番号:HTB−38)。
D−グルコース入り培地
DMEM−ハイグルコース培地(SIGMA:D5648、D−グルコース濃度25mM)13.4gを蒸溜水に溶かし、NaHCO3を3.7g、2−メルカプトエタノール5μlを加えた。pHを7.3に調製し全量を1000mlとした後、ろ過滅菌を行い、FBS(HyClone:SH30070)を10%になるように加え、ペニシリン・ストレプトマイシンを加えてD−グルコース入り培地(以下、「D−グルコース培地」という)とした。
グルコース不含DMEM培地(phenol red不含SIGMA:D5030)8.3gを蒸溜水に溶かし、NaHCO3を3.7g、2−メルカプトエタノール5μl、L−グルコース(東京化成)4.5g、およびPhenol redを加えた。pHを7.3に調製し全量を1000mlとした後、ろ過滅菌を行い、次いでL−グルタミン(SIGMA:G7513)20ml、さらにFBS(HyClone:SH30070)を10%になるように加え、ペニシリン・ストレプトマイシンを加えてL−グルコース入り培地(以下、「L−グルコース培地」という)とした。
2−NBDLGおよび2−TRLGは、ペプチド研究所(大阪)に依頼して合成した。
2−NBDLGおよび2−TRLGのMIN6スフェロイドへの適用および蛍光の検出は、WO2010/016587号公報およびWO2012/133688号公報に記載の方法に従って行った。
一般的な細胞培養で用いられる培地であるD−グルコース培地にMIN6細胞(マウスインスリノーマ由来細胞)を30×104個/mlで懸濁し、この細胞懸濁液1mlをプラスチックディッシュ(Greiner、セルカルチャー用TCシャーレ100×20mm)に加え、さらに培地を添加して、合計の培地量を10mlとした。5%CO2インキュベーターで、37℃にて培養を開始し(培養開始後0日とする:100%D−グルコース)、培養開始後3日目までそのまま静置した。
次いで、培養開始後3日目にD−グルコース培地を用いて培地を半量(5ml)交換した(培養3日目:100%D−グルコース)。
引き続き培養を続け、培養6日目にL−グルコース培地を用いて、培地半量交換を2回続けて行うことにより、培地中のグルコースを、L−グルコース75%(18.8mM)に対してD−グルコースの割合を25%(6.3mM)とした(培養6日目:25%D−グルコース、75%L−グルコース)。
培養11〜12日目に、6時間おきにL−グルコース培地を用いて、培地半量交換を行い、浮かんでいる細胞を取り除くようにした(100%L−グルコース)。その後は毎日、培地の半量交換を行った。L−グルコース培養開始後、11日過ぎには中心部に壊死細胞を擁するスフェロイドが多数認められ、L−グルコース培養21日目においても同様のスフェロイドが多数形成され続けた。L−グルコース培養開始後13日目に細胞を観察した結果を図1に示す。
MIN6細胞(マウスインスリノーマ由来細胞)をD−グルコース培地に10×104個/mlで懸濁し、培養皿WillCo−Glass bottom Dish(WillCo Wells:170micron直径40mm)に細胞懸濁液1mlを加え、D−グルコース培地を加えて合計の培地量を3mlとして5%CO2、37℃にて培養を開始し(培養開始後0日とする:100%D−グルコース)、培養開始後3日目までそのまま静置した。
培養6日目に、L−グルコース培地を用いて、培地の半量交換を2回行いL−グルコース75%(18.75mM)に対してD−グルコースの割合を25%(6.25mM)にした(培養6日目:25%D−グルコース、75%L−グルコース)。
培養8日目に、L−グルコース培地を用いて培地の半量交換を行い、L−グルコース87.5%(21.875mM)に対してD−グルコースの割合を12.5%(3.125mM)とした(培養8日目:12.5%D−グルコース、87.5%L−グルコース)。この後、増殖をしていた細胞塊は縮小するものが多く観察された。
培養11〜12日目に、6時間おきに培地の半量交換を行い、浮かんだ細胞を取り除いた後、さらにその後、L−グルコース培地を用いて、毎日、培地の半量交換を行い、培養を続けた。L−グルコース培養開始後11日目には再現性良く多数のスフェロイドが形成されてきた。14日目には、一枚のディッシュ上に、中心部に壊死領域を有するスフェロイドが、合計62個観察された。11日目、14日目、および21日目に細胞を観察した結果を、それぞれ図2、3および4に示す。
6.5mm×2mm大にカットしたカバースリップ(MATSUNAMI MICROCOVER GLASS No.0 13x22mm)を35mmディッシュ(IWAKI Non−treated Dish 1000−035)に置き、D−グルコース培地で10×104個/mlに懸濁したMIN6細胞10μlをカバースリップ上に播種した。D−グルコース培地3mlをディッシュに加え、5%CO2、37℃にて培養を開始し(培養開始後0日:100%D−グルコース)、培養開始後3日目までそのまま静置した。
培養3日目に、D−グルコース培地を用いて培地半量1.5mlを交換した(培養3日目:100%D−グルコース)。
培養6日目に、L−グルコース培地を用いて、培地半量交換を2回行いL−グルコース75%(18.75mM)に対してD−グルコースの割合を25%(6.25mM)とした(培養6日目:25%D−グルコース、75%L−グルコース)。
培養8日目に、L−グルコース培地を用いて培地の半量交換を行い、L−グルコース87.5%(21.875mM)に対してD−グルコースの割合を12.5%(3.125mM)とした(培養8日目:12.5%D−グルコース、87.5%L−グルコース)。この後、増殖をしていた細胞塊は縮小するものが多くなった。
培養11〜12日目に、6時間おきに培地の半量交換を行い、浮かんでいる細胞を取り除き、その後は、毎日、培地の半量交換を行った(100%L−グルコース)。L−グルコース培養開始後10日過ぎから多数のスフェロイドが形成された。11日目の観察結果を図6に示す。形成したスフェロイドを用いて、L−グルコース誘導体2−NBDLGおよび2−TRLGの取込みを共焦点レーザー顕微鏡により観察した。結果を図7および図8に示す。
実施例3と同様にして、L−グルコース培地でMIN6細胞を培養してMIN6細胞スフェロイドを形成させ、その推移を観察した。結果を図9に示す。本発明の方法により作製したスフェロイドは、周辺部には増殖する細胞、中心部には壊死細胞が生じる典型的なHeterogeneous(不均一)な細胞集塊を形成していることが判る。また、本発明の方法により作製したスフェロイドは、長期間にわたり安定したスフェロイドが維持されているのが判る。
並行してナノインプリンティングディッシュ(Scivax社NanoCulturtePlate MSパターン、低接着、96ウェル)で以下のようにして培養し、スフェロイドを形成した。
D−グルコース培地で10×104個/mlに懸濁したMIN6細胞を、ナノインプリンティングディッシュのウェルに100μlずつ播種した。D−グルコース培地100μlをディッシュに加え、5%CO2、37℃インキュベーター条件下で培養を開始した。 十分な大きさのスフェロイドが形成される培養開始後11日目に、マイクロピペットを用いてスフェロイドをガラス底ディッシュに移し観察に供した。その結果を図10Aに示す。また培養14日目に、マイクロピペットを用いてカバースリップ上に播種し1日かけて定着をさせた後、培養15日目に観察に供した。結果を図10Bに示す。
(比較例2)D−グルコース培養で形成されたスフェロイドの安定性
D−グルコース培地で10×104個/mlに懸濁したMIN6細胞を、35mmディッシュに置いた6.5mm×2mm大のカバースリップに10μlずつ播種した。D−グルコース培地3mlをディッシュに加え、5%CO2、37℃にて培養を開始した。
十分な大きさのスフェロイドが形成される14日目に観察に供した。結果を図10Cに示す。
またカバースリップ上においてD−グルコース培地で形成したスフェロイドは14日目ではその形態が全く維持されていない。D−グルコース培地で形成したスフェロイドの形態が崩れる時期は個々のスフェロイドで異なるが、理想的なスフェロイドが形成されるとそれから数時間から1日のうちに形が崩れることも稀ではない。
一般的な細胞培養で用いられる培地であるD−グルコース培地にヒト結腸腺がん細胞HT−29を10×104個/mlの割合で懸濁し、この細胞懸濁液3mlを浮遊細胞用フィルタキャップフラスコ(住友ベークライトMS−2325R、250ml)に加え、さらに培地を添加して、合計の培地量を20mlとした。5%CO2インキュベーターで、37℃にて培養を開始し(培養開始後0日とする:100%D−グルコース)、培養開始後3日目までそのまま静置した。
培養開始後3日目に、遠心操作(50G、1分)を行い、培地をLーグルコース培地(2ーメルカプトエタノールを含まず)と全量交換した(培養3日目:100% Lーグルコース培地)。この時点をLーグルコース培養開始後0日とした。
L−グルコース培養開始後2日目(培養開始後通算5日目)から、1日おきに遠心操作(50G、1分)を行い、培地の半量(10ml)を新鮮なLーグルコース培地と交換した。
Lーグルコース培養開始後3日目(培養開始後通算6日目)には、中心部に壊死領域を示すスフェロイド形成を認めた(図11A)。
同様の方法で、ただしLーグルコース培地を用いず、D−グルコース含有培地のみを用いてHT−29ヒト結腸腺がん細胞を培養すると、疎に細胞が集合した3次元細胞集塊(Sparsely-packed three dimensional cell cluster)となり、良質ながん細胞スフェロイドが形成されなかった(図11B、培養開始後通算6日目の例)。
Lーグルコース培地で培養を開始してから5日目(培養開始後通算8日目)には、直径が200μmを超えるスフェロイド形成も認められた(図11C)。
実施例5の培養法により形成したHT−29細胞のスフェロイドを共焦点顕微鏡で観察するために、Lーグルコース培養開始後10日目(培養開始後通算13日目)にカバースリップに移して、定着をさせた。その翌日、つまりLーグルコース培養開始後11日目(培養開始後通算14日目)に形成したスフェロイドを用いて、実施例3と同様にして、L−グルコース誘導体2−NBDLGおよび2−TRLGの取込みを共焦点レーザー顕微鏡により観察した。結果を図12に示す。
中心部の細胞には壊死を起し、2−TRLGを取り込んでいるがその周辺には2−NBDLGの強い取込みを示す細胞が認められる。
Claims (22)
- グルコース含有培地であってグルコースが実質的にL−グルコースから構成される培地を用いて細胞を培養することを特徴とするスフェロイドの作製方法。
- L−グルコースの割合が、D−グルコースおよびL−グルコースからなる全グルコースの90%以上である請求項1に記載の方法。
- 前記細胞が、がん細胞由来の細胞である請求項1または2に記載の方法。
- 前記培地での培養が3日以上である請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
- 前記培地が、成長因子および/または接着因子を添加しない培地である、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
- 前記培地が、細胞間マトリックスを添加しない培地である、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
- 前記培養が立体的な支持体を用いない培養である請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
- 以下の工程:
(a)D−グルコースを含有する培地にて細胞を培養する工程、
(b)培地中のD−グルコースをL−グルコースに置き換える工程、
(c)グルコース含有培地であってグルコースが実質的にL−グルコースから構成される培地を用いて細胞を培養する工程、
を含む、スフェロイドの作製方法。 - 前記工程(b)が、培地中のD−グルコース濃度を段階的に下げるとともに、L−グルコース濃度を段階的に上げて細胞を培養する工程である、請求項8に記載の方法。
- 工程(c)におけるグルコース含有培地中のL−グルコースの割合が、D−グルコースおよびL−グルコースからなる全グルコースの90%以上である請求項8または9に記載の方法。
- 前記工程(c)における培養が3日以上である、請求項8〜10のいずれか一つに記載の方法。
- 前記細胞が、がん細胞由来の細胞である請求項8〜11のいずれか一つに記載の方法。
- 前記工程(c)の培地が、成長因子および/または接着因子を添加しない培地である、請求項8〜12のいずれか一つに記載の方法。
- 前記工程(c)の培地が、細胞間マトリックスを添加しない培地である、請求項8〜13のいずれか一つに記載の方法。
- 前記工程(a)〜(c)の培地が、成長因子、接着因子、細胞間マトリックスのいずれも添加しない培地である、請求項8〜14のいずれか一つに記載の方法。
- 前記培養が立体的な支持体を用いない培養である請求項8〜15のいずれか一つに記載の方法。
- 請求項1〜16のいずれか一つに記載の方法により作製されたスフェロイド。
- 前記スフェロイドが細胞間が緻密な状態なスフェロイドである請求項17に記載のスフェロイド。
- グルコース含有培地であってグルコースが実質的にL−グルコースから構成されるスフェロイド培養培地。
- L−グルコースの割合が、D−グルコースおよびL−グルコースからなる全グルコースの90%以上である請求項19に記載の培地。
- 前記培地が成長因子および/または接着因子を添加しない培地である、請求項19または20に記載の培地。
- 前記培地が細胞間マトリックスを添加しない培地である、請求項19〜21のいずれか一つに記載の培地。
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