JPWO2016114205A1 - 銀微粒子分散物、インク組成物、銀電極、及び薄膜トランジスタ - Google Patents
銀微粒子分散物、インク組成物、銀電極、及び薄膜トランジスタ Download PDFInfo
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Abstract
Description
上記銀微粒子分散物を基材上に塗布する方法として、各種印刷方法による塗布、スピンコートによる塗布、ディスペンサーによる塗布等が知られている。銀微粒子分散物を印刷により塗布する場合には、銀微粒子分散物をインクとして用い、このインクが各種印刷方法により基板等に塗布される。なかでも、微細なパターンを精度良く形成することができ、工程が簡素でインクを無駄なく使用できることから、インクジェット印刷の利用が広がっている。
例えば特許文献1には、フェノール化合物の酸化重合物及び/又はその酸化体を表面に少なくとも有した銀微粒子が溶媒に分散した銀コロイド溶液が記載され、この銀コロイド溶液が銀微粒子の分散性ないし分散安定性に優れ、インクジェット印刷による電極や回路配線パターンの形成に使用できることが記載されている。
本発明は、水性媒体中に銀微粒子が分散してなる銀微粒子分散物であって、銀微粒子の分散性及び分散安定性に優れ、さらにこの分散物を用いて形成した導体配線等の導電性にも優れ、且つこの分散物を用いて形成した導体配線等のマイグレーションをも効果的に抑えることができる銀微粒子分散物を提供することを課題とする。また本発明は、この銀微粒子分散物を用いたインク組成物、このインク組成物を用いた銀電極、及びこの銀電極を有する薄膜トランジスタを提供することを課題とする。
本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ね、完成されるに至ったものである。
〔1〕
銀微粒子を水性媒体中に分散してなる銀微粒子分散物であって、
SP値が30以下の酸化防止剤と疎水性有機溶剤との混合溶液がノニオン性界面活性剤により上記水性媒体中に乳化分散してなる、銀微粒子分散物。
〔2〕
上記酸化防止剤が芳香族環を有する化合物である、〔1〕に記載の銀微粒子分散物。
〔3〕
上記酸化防止剤が分子量200〜3000の化合物である、〔1〕又は〔2〕に記載の銀微粒子分散物。
〔4〕
上記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、サリチル酸化合物、及びベンゾオキサゾール化合物から選ばれる、〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載の銀微粒子分散物。
〔5〕
上記ノニオン性界面活性剤が、親水性部位中に−(C2H4O)n−を有する、〔1〕〜〔4〕のいずれか1つに記載の銀微粒子分散物。
但し、nは3以上の整数である。
〔6〕
上記ノニオン性界面活性剤が芳香族環を有する、〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の銀微粒子分散物。
〔7〕
〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の銀微粒子分散物を用いたインク組成物。
〔8〕
インクジェット印刷に用いる、〔7〕に記載のインク組成物。
〔9〕
銀電極の形成に用いる、〔7〕又は〔8〕に記載のインク組成物。
〔10〕
〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の銀微粒子分散物又は〔7〕〜〔9〕のいずれか1つに記載のインク組成物を用いて形成した銀電極。
〔11〕
〔10〕に記載の銀電極を有する薄膜トランジスタ。
本発明の銀電極は、マイグレーションの発生が効果的に抑えられ、例えばTFTの電極として好適に用いることができる。さらに本発明の薄膜トランジスタは本発明の電極を有してなり、電極のマイグレーションが抑えられて電極間の絶縁信頼性に優れると共に優れたキャリア移動度を示す。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
本発明の銀微粒子分散物の好ましい実施形態について説明する。
本発明の銀微粒子分散物は、銀微粒子が水性媒体中に分散してなり、且つ、この水性媒体中にはさらに、SP値が30以下の酸化防止剤と疎水性有機溶剤との混合溶液がノニオン性界面活性剤により乳化分散している。すなわち、上記酸化防止剤は銀微粒子分散物中において、水性媒体中に分散してなる油滴中に存在する。本明細書において、水性媒体中に「分散」しているとは、微粒子状となって水性媒体中に一様に(均質に)散在している状態をいう。
本発明の銀微粒子分散物は、上記酸化防止剤を1種含有しても2種以上含有してもよい。また、本発明の銀微粒子分散物は、上記ノニオン性界面活性剤を1種含有しても2種以上含有してもよい。また、本発明の銀微粒子分散物は、上記疎水性有機溶剤を1種含有しても2種以上含有してもよい。
本発明の銀微粒子分散物は、さらに、乾燥防止剤、浸透促進剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、pH調製剤、キレート剤、銀以外の金属粒子等を含有してもよい。
本発明の銀微粒子分散物は、イオン性の成分を含まないことが好ましい。イオン性の成分とは、銀微粒子分散物中において、イオン化して帯電した基を有する成分を意味する。
本発明の銀微粒子分散物がイオン性の成分を含まないことにより、銀微粒子分散物を用いて形成した導体配線等の導電性をより高めることができ、さらに、マイグレーションの発生もより抑えて絶縁信頼性を高めることができる。
本発明の銀微粒子分散物に用いる水性媒体(以下、水性媒体(a)ということもある)は、水、又は、水と水溶性有機溶媒との混合液である。銀微粒子分散物に含まれる水性媒体中、水の含有量は30質量%以上が好ましく、40〜100質量%がより好ましく、50〜100質量%がさらに好ましく、60〜100質量%がより好ましい。
水性媒体に含有されうる上記水溶性有機溶媒は、20℃において水に対する溶解度が10質量%以上であるものが好ましい。この水溶性有機溶媒として、例えば、アルコール、ケトン、エーテル化合物、アミド化合物、ニトリル化合物、スルホン化合物が挙げられる。
また、ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
エーテル化合物としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンが挙げられる。
アミド化合物としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミドが挙げられる。
ニトリル化合物としては、例えば、アセトニトリルが挙げられる。
スルホン化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランが挙げられる。
本発明の銀微粒子分散物に含有される銀微粒子は、常法により調製することができる。
例えば、硝酸銀(I)(AgNO3)やメタンスルホン酸銀(CH3SO3Ag)等の銀化合物と、分散剤とを水中に溶解し、還元剤を添加し、撹拌しながら一定時間、銀イオンを還元することにより、銀微粒子を分散物として得ることができる。
本発明に用いうるノニオン性分散剤が高分子化合物である場合、その重量平均分子量は、2000〜50000であることが好ましく、3000〜30000であることがより好ましい。
本明細書において、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)で測定される。GPCは、HLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgeL Super HZM−H、TSKgeL Super HZ4000、TSKgeL Super HZ2000(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)の3本を直列に接続し、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、条件としては、試料濃度を0.35質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、IR検出器を用いて行なう。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
本明細書における銀微粒子の平均粒径は、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(製品名、大塚電子(株)製)を用いて測定される。具体的には、上記装置(FPAR−1000)を用いて標準測定条件で測定し、キュムラント解析により平均粒径を求める。
また、銀微粒子分散物中の銀微粒子の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。
本発明において酸化防止剤は、共存する物質に対して酸化抑制作用を示す化合物である。本発明の銀微粒子分散物には1種又は2種以上の酸化防止剤を用いることができる。
本発明に用いる酸化防止剤は、そのSP値(溶解性パラメータ、単位:MPa1/2)が30以下である。マイグレーションをより効果的に抑える観点から、本発明に用いる酸化防止剤のSP値は好ましくは15〜22であり、より好ましくは15〜20である。
本明細書においてSP値は、ハンセンの方法によって求めることができる。ハンセンの方法は当業界で周知のSP値を算出する方法の一つであり、分散項、極性項、水素結合項からなる多次元ベクトルでSP値を表記する。ハンセンのSP値は、Int.J.Thermophys,2008,29,568−585頁に記載の方法で予測でき、本明細書中に記載のSP値はこの文献の方法により予測した値である。
酸化防止剤が有する芳香族環に特に制限はなく、芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、上記芳香族環は単環でも縮合多環構造であってもよい。酸化防止剤の酸化電位の観点から上記芳香族環は芳香族炭化水素環が好ましく、なかでもベンゼン環が好ましい。酸化防止剤1分子中のベンゼン環の数は、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜2である。
なお、下記(B)〜(E)で表される骨格を有する化合物であっても、上記(A)で表される骨格を有する化合物は、本明細書においてはヒンダードフェノール化合物に含まれる(すなわちベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、サリチル酸化合物、又はベンゾオキサゾール化合物には含まれない)ものとする。ここで、「骨格を有する」とは、一般式(A)について説明したのと同様に、各構造式中の水素原子の一部又は全部が置換された構造を有するものも包含することを意味する。
本発明に用いる疎水性有機溶剤は、上述した酸化防止剤を溶解し、本発明の銀微粒子分散物中において油滴を構成する。
本発明に用いる疎水性有機溶剤は、20℃において、水(純水)100gに対する溶解度が10g以下である有機溶剤を意味し、20℃における水(純水)100gに対する溶解度が1g以下であることがより好ましい。本発明に用いる疎水性有機溶剤は、20℃における水(純水)100gに対する溶解度が、通常は0.001g以上である。
本発明の銀微粒子分散物は、界面活性剤としてノニオン性界面活性剤を含有する。
本発明に用いるノニオン性界面活性剤は、酸化防止剤を溶解してなる疎水性有機溶剤溶液を水性媒体中に乳化分散するための乳化剤として用いられる。
ノニオン性界面活性剤は、銀微粒子分散物ないしインク組成物を塗布し、焼結した際にノニオン性基が揮発しやすいため、その分、銀濃度が高まり、形成した導体配線等の体積抵抗値を抑えることができる。また、イオン性界面活性剤を使用した場合に比べ、マイグレーションも効果的に抑えられる。さらに、イオン性界面活性剤を使用した場合に比べて、分散物中の銀微粒子の分散安定性も向上しうる。
また、上記ノニオン性界面活性剤の分子量は500〜20000が好ましく、1000〜10000がより好ましい。
また、上記ノニオン性界面活性剤は、その構造中に芳香族環(好ましくはベンゼン環)を有することも好ましい。芳香族環を有することにより、分散安定性を向上させることができる。
上記ノニオン性界面活性剤の好ましい具体例として、例えば、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテルを挙げることができる。
本発明の銀微粒子分散物は、疎水性有機溶剤と酸化防止剤との混合溶液がノニオン性界面活性剤の作用で水性媒体中に乳化分散してなる水中油型乳化物と、上述したように銀化合物を還元して得られた銀微粒子の水性分散物とを混合して得ることができる。
上記水中油型乳化物の調製には、一般的な乳化分散方法を採用することができる。上記水中油型乳化物の調製の一例について以下に説明する。
この酸化防止剤溶液中の酸化防止剤濃度は、5〜50質量%とすることが好ましい。また、酸化防止剤溶液中のノニオン性界面活性剤濃度は5〜50質量%とすることが好ましい。
また、酸化防止剤溶液中の酸化防止剤とノニオン性界面活性剤の量比は、酸化防止剤/ノニオン性界面活性剤=1/9〜9/1(質量比)が好ましく、酸化防止剤/ノニオン性界面活性剤=2/8〜8/2(質量比)がより好ましい。
次いで、上記酸化防止剤溶液を水中に滴下し、超音波ホモジェナイザー等を用いて酸化防止剤溶液を水中に乳化分散することにより、上記水中油型乳化物を得ることができる。酸化防止剤溶液の量と、この溶液が滴下される水の量の比は、酸化防止剤溶液/水=1/100〜50/50(質量比)が好ましく、酸化防止剤溶液/水=10/100〜30/100(質量比)がより好ましい。
本発明の銀微粒子分散物の粘度は、銀微粒子等の含有量にもよるが、通常は3〜1000mPa・sであり、5〜500mPa・sであることがより好ましく、5〜100mPa・sであることがさらに好ましく、5〜50mPa・sであることがさらに好ましく、5〜20mPa・sであることがさらに好ましい。銀微粒子分散物の粘度はTV−25型粘度計(東機産業(株)社製)を用い、25℃で測定したものである。
本発明のインク組成物は、本発明の銀微粒子分散物そのものでもよい。また、本発明の銀微粒子分散物を原料として用いて調製されるものであってもよい。より詳細には、少なくとも本発明の銀微粒子分散物と、水性媒体(以下、水性媒体(b)という。)とを混合することにより、本発明のインク組成物を調製してもよい。また、場合によっては本発明の銀微粒子分散物を濃縮して本発明のインク組成物とすることもできる。本発明のインク組成物には、必要に応じて、表面張力調整剤、乾燥防止剤(膨潤剤)、着色防止剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、粘土調整剤、pH調製剤、キレート剤等の添加剤を混合してもよい。混合方法に特に制限はなく、通常用いられる混合方法を適宜に選択し、本発明のインク組成物を得ることができる。
本発明のインク組成物中に分散している銀微粒子の平均粒径及び油滴の平均粒径の好ましい範囲は、上述した本発明の銀微粒子分散物における銀微粒子の平均粒径及び油滴の平均粒径と同じである。
表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学株式会社製)を用いて25℃の条件下で測定される。表面張力は界面活性剤の添加等により適宜に調整できる。
また、インクジェット方式で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。さらに上記インクジェット方式により記録を行う際に使用するインクノズル等についても特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
本発明の銀電極は、本発明の銀微粒子分散物ないしインク組成物を用いて形成される。より詳細には、上述した銀微粒子分散物ないしインク組成物を基板上に塗布して、必要に応じて、加熱処理を施す(焼結する)ことにより本発明の銀電極を形成することができる。上記加熱処理を施すことにより、銀微粒子同士が互いに融着してグレインを形成し、さらにグレイン同士が接着・融着して銀層を形成する。
上記加熱処理の温度は、100℃〜250℃が好ましく、120℃〜200℃がより好ましい。
上記加熱時間は、5分〜4時間が好ましく、15分〜2時間がより好ましい。
加熱処理の温度と時間を上記好ましい範囲内とすることにより、銀微粒子が十分に焼結され、所望の導電性(体積抵抗値)が得られやすい。
本発明の銀電極の体積抵抗値は、好ましくは2×10−6〜1×10−4Ωcm、より好ましくは2×10−6〜5×10−5Ωcmである。体積抵抗値は後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
本発明のTFTは、本発明の銀電極を有する。本発明のTFTにおいて、本発明の銀電極は、ゲート電極、ソース電極及び/又はドレイン電極として用いられ、少なくともソース電極及びドレイン電極として用いられることが好ましい。
本発明のTFTの好ましい実施形態を以下に説明するが、本発明のTFTはこれらの態様に限定されるものではなく、少なくとも1つの電極が、本発明の銀微粒子分散物ないしインク組成物を用いて形成されていれば特に制限はない。
図1(A)〜(D)は、各々、本発明のTFTの代表的な好ましい構造を模式的に表わす縦断面図である。図1(A)〜(D)において、1は半導体層、2はゲート絶縁層、3はソース電極、4はドレイン電極、5はゲート電極、6は基板を示す。
また、図1(A)は、ボトムゲート・ボトムコンタクト型、図1(B)は、ボトムゲート・トップコンタクト型、図1(C)はトップゲート・ボトムコンタクト型、図1(D)はトップゲート・トップコンタクト型のTFTを示している。本発明のTFTには上記4つの形態のすべてが包含される。図示を省略するが、各TFTの図面最上部(基板6に対して反対側)には、オーバーコート層が形成されている場合もある。
基板は、TFT及びその上に作製される表示パネル等を支持できるものであればよい。基板は、表面に絶縁性があり、シート状で、表面が平坦であれば特に限定されない。
基板がステンレスシート、アルミ箔、銅箔又はシリコンウェハ等の導電性あるいは半導体性の材料で形成されている場合、通常は、表面に絶縁性の高分子材料あるいは金属酸化物等を塗布又は積層して用いられる。
ゲート電極は、TFTのゲート電極として用いられている従来公知の電極を用いることができる。また本発明の銀微粒子分散物ないしインク組成物を用いて形成することもできる。
ゲート電極を構成する導電性材料(電極材料ともいう)としては、特に限定されない。例えば、白金、金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、モリブデン、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム、パラジウム、鉄、マンガン等の金属;InO2、SnO2、インジウム・錫酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)等の導電性金属酸化物;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)等の導電性高分子;塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、PF6、AsF5、FeCl3等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウム、カリウム等の金属原子等のドーパントを添加した上記導電性高分子、並びに、カーボンブラック、グラファイト粉、金属微粒子等を分散した導電性の複合材料等が挙げられる。これらの材料は、1種のみを用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、ゲート電極を塗布法により形成することもできる。塗布法では、上記材料の溶液、ペースト又は分散液を調製、塗布し、乾燥、焼成、光硬化又はエージング等により、膜を形成し、又は直接電極を形成できる。
また、インクジェット印刷、スクリーン印刷、(反転)オフセット印刷、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、熱転写印刷、マイクロコンタクトプリンティング法等は、所望のパターニングが可能であり、工程の簡素化、コスト低減、高速化の点で好ましい。
スピンコート法、ダイコート法、マイクログラビアコート法、ディップコート法を採用する場合も、下記フォトリソグラフィー法等と組み合わせてパターニングすることができる。
ゲート絶縁層は、絶縁性の材料で形成されるのが好ましく、絶縁性の材料として、例えば、有機高分子、無機酸化物等が好ましく挙げられる。
有機高分子及び無機酸化物等は、絶縁性を有するものであれば特に限定されず、薄膜、例えば厚み1μm以下の薄膜を形成できるものが好ましい。
有機高分子及び無機酸化物は、ぞれぞれ、1種を用いても、2種以上を併用してもよく、また、有機高分子と無機酸化物を併用してもよい。
半導体層は、半導体性を示し、キャリアを蓄積可能な層である。半導体層には従来公知の有機又は無機の半導体化合物を広く用いることができる。
本発明において、低分子化合物は、有機ポリマー及びその誘導体以外の化合物を意味する。すなわち、繰り返し単位を有さない化合物をいう。低分子化合物は、このような化合物である限り、分子量は特に限定されるものではない。
酸化物半導体としては、金属酸化物からなるものであれば特に限定されない。酸化物半導体からなる半導体層は、酸化物半導体前駆体、すなわち熱酸化等の変換処理によって金属酸化物からなる半導体材料に変換される材料を用いて形成するのが好ましい。
酸化物半導体は特に限定されるものではないが、例えば、酸化インジウムガリウム亜鉛、酸化インジウムガリウム、酸化インジウムスズ亜鉛、酸化ガリウム亜鉛、酸化インジウムスズ、酸化インジウム亜鉛、酸化スズ亜鉛、酸化亜鉛、酸化スズ、例えば、InGaZnOx、InGaOx、InSnZnOx、GaZnOx、InSnOx、InZnOx、SnZnOx(いずれもx>0)、ZnO、SnO2が挙げられる。
酸化物半導体前駆体の具体例としては、例えば、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウム、硝酸スズ、硝酸アルミニウム、塩化インジウム、塩化亜鉛、塩化スズ(2価)、塩化スズ(4価)、塩化ガリウム、塩化アルミニウム、トリ−i−プロポキシインジウム、ジエトキシ亜鉛、ビス(ジピバロイルメタナト)亜鉛、テトラエトキシスズ、テトラ−i−プロポキシスズ、トリ−i−プロポキシガリウム、トリ−i−プロポキシアルミニウムが挙げられる。
本発明のTFTにおいて、ソース電極及びドレイン電極は、本発明の銀微粒子分散物ないしインク組成物を用いて形成されていることが好ましい。ソース電極及びドレイン電極が本発明の銀微粒子分散物ないしインク組成物を用いて形成されていない場合は、従来公知のソース電極、ドレイン電極を採用することできる。例えば、上記ゲート電極で説明した導電性材料等を用いることができる。
ソース電極及びドレイン電極は、それぞれ、上記ゲート電極の形成方法と同様の方法により形成することができる。
分散剤としてポリビニルピロリドン(重量平均分子量3000、シグマアルドリッチ社製)(7.36g)を水(100mL)に溶解させた溶液aを調製した。また、硝酸銀50.00g(294.3mmol)を水(200mL)に溶解させた溶液bを調製した。溶液aと溶液bとを混合し、攪拌した。得られた混合液に、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン濃度が85質量%の水溶液(78.71g)(N,N−ジエチルヒドロキシルアミンとして750.5mmol)を室温でゆっくり滴下し、さらに、ポリビニルピロリドン(7.36g)を水(1000mL)に溶解させた溶液を室温でゆっくり滴下した。得られた懸濁液を限外濾過ユニット(ザルトリウス・ステディム社製ビバフロー50、分画分子量:10万、ユニット数:4個)に通し、限外濾過ユニットから約5Lの滲出液がでるまで精製水を通過させて精製した。精製水の供給を止め、濃縮し、30gの銀微粒子の分散液を得た。この分散液中の固形分の含有量は50質量%であった。また、固形分中の銀の含有量をTG−DTA(示差熱熱重量同時測定)(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、モデル:STA7000)にて測定したところ、96.0質量%であった。
下記表1に示す酸化防止剤5g、トルエン5g、下記表1に示すノニオン性界面活性剤5gあるいはイオン性界面活性剤5gを混合した溶液を調製し、水50g中に滴下した。超音波ホモジェナイザー(500W)により、20℃に冷却しながら、5分間分散し、油滴の平均粒径が50nm〜200nmの範囲内にある32種類の水中油型乳化物を得た。その後、トルエンを減圧留去により1%以下まで除き、純水を添加して固形分を20%に調整した。油滴の平均粒径は、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子社製、FPAR−1000)により測定した。また高速液体クロマトグラフィーにより、トルエンの含率を測定した結果、溶液中0.2%含まれていた。
上記参考例1で得られた銀微粒子の分散液1gと、上記参考例2で調製した水中油型乳化物0.3gと、1−メトキシ2−プロパノール0.2gを添加し、撹拌して銀微粒子分散物(インク組成物)を得た。この銀微粒子分散物の表面張力は36mN/m、25℃における粘度は8.0Pa・sであった。また、この銀微粒子分散物中、銀微粒子の含有量は32質量%、酸化防止剤の含有量は4質量%、ノニオン性界面活性剤の含有量は4質量%である。
上記調製例で調製した銀微粒子分散物を、イオン交換水を用いて20倍に希釈し、粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子)を用いて測定を行い、銀微粒子のキュムラント平均粒子径を求めた。
銀微粒子の分散性は、銀微粒子分散物(インク組成物)の調製直後における銀微粒子の平均粒径を測定し、下記評価基準により評価した。
A:平均粒径が50nm以上100nm未満
B:平均粒径が100nm以上200nm未満
C:平均粒径が200nm以上
銀微粒子の分散安定性は、銀微粒子分散物(インク組成物)の調製直後における銀微粒子の平均粒径d1と、銀微粒子分散物(インク組成物)の調製後、40℃で30日間保管した後のにおける銀微粒子の平均粒径d2から、下記式に基づき粒径変化率(%)を算出し、下記評価基準に基づき評価した。
粒径変化率(%)=100×(d2−d1)/d1
A:粒径変化率が5%未満
B:粒径変化率が5%以上10%未満
C:粒径変化率が10%以上
導電性の指標として、体積抵抗値を測定した。
清浄な50mm角のガラス基板に、上記調製例で調製した各銀微粒子分散物をスピンコート法により塗布し(500rpm、30秒)、オーブンにて200℃、2時間加熱した。得られた各塗布膜について、触針式膜厚計により求めた平均膜厚は320nmであった。放冷した後、ロレスタGP MCP−T610型(商品名、三菱マテリアル製)にて体積抵抗値を測定し、下記評価基準により評価した。
− 評価基準 −
A:2×10−5Ωcm未満
B:2×10−5Ωcm以上1×10−4Ωcm未満
C:1×10−4Ωcm以上1×10−3Ωcm未満
D:1×10−3Ωcm以上
FR4FR−4グレードのガラスエポキシ基板NIKAPLEX(商品名、ニッカン工業社製)にABF−GX13(商品名、味の素ファインテクノ社製、層間絶縁材料)をラミネートした基板上に、上記調製例で調製した各銀微粒子分散物を、焼結後の膜厚が200nmになるようにSTS−200(商品名、ワイディーメカトロソリューションズ社製)を用いてスプレーコーティング法により塗布した。その後、オーブンを用いて焼結し(210℃、1時間)、基板上に銀膜を形成した。形成された銀膜をフォトリソグラフィー法によりL(ライン)/S(スペース)=50/50μmの櫛形にエッチングし、櫛形状の銀膜(銀配線)を形成した。この時ドライフィルムレジストにはフォテックH−7025(商品名、日立化成社製)、銀エッチング液にはアグリップ940(商品名、メルテックス社製)を用いた。さらに、銀配線上にCytop CTL107MK(商品名、AGC社製)を乾燥後の膜厚が1μmになる様にスピンコートし、その後オーブンで140℃、20分間乾燥させ、封止層を形成して、絶縁信頼性評価用の各配線基板を作製した。
A:時間TがT1の5倍以上
B:時間TがT1の2倍以上5倍未満
C:時間TがT1より長くT1の2倍未満
D:時間TがT1以下
結果を下記表1に示す。なお、下記表1に記載のノニオン性界面活性剤は下記の通りである。
エマルゲンA60:ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル 花王社製
エマルゲン104P:ポリオキシエチレンラウリルエーテル 花王社製
エマルゲン106P:ポリオキシエチレンラウリルエーテル 花王社製
エマルゲン109P:ポリオキシエチレンラウリルエーテル 花王社製
エマルゲンB−66:ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル 花王社製
ニューコール707:ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル 日本乳化剤社製
ニューコール3−85:ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート 日本乳化剤社製
ニューコールCMP−8:ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル 日本乳化剤社製
ニューコール719:ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル 日本乳化剤社製
図1(A)に示されるTFT(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)を製造し、移動度を評価した。
ガラス基板(イーグルXG:コーニング社製)6上に、ゲート電極となるアルミニウムを蒸着した(厚み:50nm)。その上にゲート絶縁膜形成用組成物(ポリビニルフェノール/メラミン=1質量部/1質量部(w/w)のPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)溶液(固形分濃度:2質量%))をスピンコートし、その後、150℃で60分間ベークし、膜厚400nmのゲート絶縁膜2を形成した。その上に、上記各調製例で調製した銀微粒子分散物(実施例1〜25で用いた銀微粒子分散物)を、インクジェット装置DMP−2831(富士フイルムダイマティクス社製)を用いてソース電極及びドレイン電極のパターン(チャネル長40μm、チャネル幅200μm)に描画した。その後オーブンにて180℃、30分ベークして焼結し、ソース電極3及びドレイン電極4を形成した。その上に2,8−ジフルオロ−5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラジチオフェン(ALDRICH社製)のトルエン溶液をスピンコートし、140℃で15分間ベークを行い、厚み100nmの有機半導体層1を形成した。その上にCytop CTL−107MK(AGC社製)をスピンコートし、140℃で20分間ベークし、厚み2μmの封止層(最上層、図1において図示していない。)を形成して、25種類のTFT(ボトムゲートボトムコンタクト型)を作製した。
粒子分散物を用いて薄膜トランジスタ(TFT)の電極を形成した際には良好なキャリア移動度を示し、TFTの電極として良好に機能することを見い出した。
本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ね、完成されるに至ったものである。
[0007]
本発明の上記課題は以下の手段により解決された。
〔1〕
銀微粒子を水性媒体中に分散してなる銀微粒子分散物であって、
SP値が30以下の酸化防止剤と疎水性有機溶剤との混合溶液がノニオン性界面活性剤により上記水性媒体中に乳化分散され、
上記酸化防止剤が上記水性媒体中に分散してなる油滴中に存在してなる、銀微粒子分散物。
〔2〕
上記酸化防止剤が芳香族環を有する化合物である、〔1〕に記載の銀微粒子分散物。
〔3〕
上記酸化防止剤が分子量200〜3000の化合物である、〔1〕又は〔2〕に記載の銀微粒子分散物。
〔4〕
上記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、サリチル酸化合物、及びベンゾオキサゾール化合物から選ばれる、〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載の銀微粒子分散物。
〔5〕
上記ノニオン性界面活性剤が、親水性部位中に−(C2H4O)n−を有する、〔1〕〜〔4〕のいずれか1つに記載の銀微粒子分散物。
但し、nは3以上の整数である。
〔6〕
上記ノニオン性界面活性剤が芳香族環を有する、〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の銀微粒子分散物。
〔1〕
銀微粒子を水性媒体中に分散してなる銀微粒子分散物であって、
SP値が30以下の酸化防止剤と疎水性有機溶剤との混合溶液がノニオン性界面活性剤により上記水性媒体中に乳化分散され、
上記酸化防止剤が上記水性媒体中に分散してなる油滴中に存在してなる、銀微粒子分散物。
〔2〕
上記酸化防止剤が芳香族環を有する化合物である、〔1〕に記載の銀微粒子分散物。
〔3〕
上記酸化防止剤が分子量200〜3000の化合物である、〔1〕又は〔2〕に記載の銀微粒子分散物。
〔4〕
上記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、サリチル酸化合物、及びベンゾオキサゾール化合物から選ばれる、〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載の銀微粒子分散物。
〔5〕
上記ノニオン性界面活性剤が、親水性部位中に−(C2H4O)n−を有する、〔1〕〜〔4〕のいずれか1つに記載の銀微粒子分散物。
但し、nは3以上の整数である。
〔6〕
上記ノニオン性界面活性剤が芳香族環を有する、〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の銀微粒子分散物。
〔7〕
〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の銀微粒子分散物を用いたインク組成物。
〔8〕
インクジェット印刷に用いる、〔7〕に記載のインク組成物。
〔9〕
銀電極の形成に用いる、〔7〕又は〔8〕に記載のインク組成物。
〔10〕
〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の銀微粒子分散物又は〔7〕〜〔9〕のいずれか1つに記載のインク組成物を用いて形成した銀電極。
〔11〕
〔10〕に記載の銀電極を有する薄膜トランジスタ。
Claims (11)
- 銀微粒子を水性媒体中に分散してなる銀微粒子分散物であって、
SP値が30以下の酸化防止剤と、疎水性有機溶剤との混合溶液が、ノニオン性界面活性剤により前記水性媒体中に乳化分散してなる、銀微粒子分散物。 - 前記酸化防止剤が芳香族環を有する化合物である、請求項1に記載の銀微粒子分散物。
- 前記酸化防止剤が分子量200〜3000の化合物である、請求項1又は2に記載の銀微粒子分散物。
- 前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、サリチル酸化合物、及びベンゾオキサゾール化合物から選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の銀微粒子分散物。
- 前記ノニオン性界面活性剤が、親水性部位中に−(C2H4O)n−を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の銀微粒子分散物。
但し、nは3以上の整数である。 - 前記ノニオン性界面活性剤が芳香族環を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の銀微粒子分散物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の銀微粒子分散物を用いたインク組成物。
- インクジェット印刷に用いる、請求項7に記載のインク組成物。
- 銀電極の形成に用いる、請求項7又は8に記載のインク組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の銀微粒子分散物又は請求項7〜9のいずれか1項に記載のインク組成物を用いて形成した銀電極。
- 請求項10に記載の銀電極を有する薄膜トランジスタ。
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