JPWO2016104456A1 - ポリウレタン樹脂組成物及びポリウレタン樹脂成形体 - Google Patents

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Abstract

熱可塑性ポリウレタンと、式(1)で表されるイミノエーテル化合物及びその多量体から選ばれる少なくとも1種の鎖状イミノエーテル基含有化合物とを含有するポリウレタン樹脂組成物及びその成形体。Rはアルキル基、アリール基又はアルコキシ基を表し、Rは式(2)又は(3)で表されるアルキル基又はアリール基を表し、R11〜R13はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。R31〜R33はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、互いに連結して環を形成してもよい。R41は置換基を表し、nは0〜5の整数を表し、R41が複数存在する場合、複数のR41は互いに同じであっても異なっていてもよい。*は窒素原子と結合する位置を表す。

Description

本開示は、ポリウレタン樹脂組成物及びポリウレタン樹脂成形体に関する。
ポリウレタンは、機械的特性、耐摩耗性、弾性回復率、耐屈曲性などの諸特性に優れ、溶融成型が可能であるため、合成ゴム及びプラスチックの代替素材として様々な用途に用いられている。
更に、ポリウレタンは、シーリング材及び断熱材などのウレタンフォーム、靴製品、バンパー及びヘッドレストなどの自動車部品用途等、昨今の使用用途の拡大により、材料としての耐熱性、耐加水分解安定性及び耐摩耗性の更なる向上が求められている。
例えば、特開2011−246550号公報では、ポリウレタンの合成時に環状カルボジイミドを添加することで耐加水分解性及び耐熱性が向上したポリウレタンを製造することが提案されている。
しかし、特開2011−246550号公報に開示されているようにポリウレタンの合成時に環状カルボジイミドを添加する方法では、市販品のポリウレタンの改良にはつながらず、汎用的な方法ではい。
また、ポリウレタンは熱分解するため、高温での成形は難がある。例えばポリウレタン樹脂を用いて射出成形する場合、高温の場合でもスクリュー部は220℃以下で行われ、一部先端(ノズル)では230℃程度である。そのため、仮に市販品のポリウレタンを用いて成形する際に環状カルボジイミドを添加した場合、ポリウレタンの成形温度は通常は220℃未満であるのに対し、環状カルボジイミドの融点は、通常230〜250℃と高温であるため、反応し難く、耐熱性等の向上効果は小さい。
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、汎用のポリウレタンを用いても、耐加水分解性及び成形性に優れたポリウレタン樹脂成形体を製造することができるポリウレタン樹脂組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、汎用のポリウレタンを用いても、耐加水分解性及び成形性に優れたポリウレタン樹脂成形体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、以下の発明が提供される。
<1> 熱可塑性ポリウレタンと、下記一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物及び一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物の多量体から選ばれる少なくとも1種の鎖状イミノエーテル基含有化合物と、を含むポリウレタン樹脂組成物。

一般式(1)中、Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアルコキシ基を表し、Rは下記一般式(2)で表されるアルキル基又は下記一般式(3)で表されるアリール基を表し、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。

一般式(2)中、R31、R32及びR33はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R31、R32及びR33は互いに連結して環を形成してもよい。一般式(3)中、R41は置換基を表し、nは0〜5の整数を表す。R41が複数存在する場合、複数のR41は互いに同じであっても、異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよい。一般式(2)及び(3)において*は、窒素原子と結合する位置を表す。
<2> 一般式(1)におけるRが一般式(3)で表されるアリール基である<1>に記載のポリウレタン樹脂組成物。
<3> 一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物が、下記一般式(5)で表される鎖状イミノエーテル基含有化合物である<1>又は<2>に記載のポリウレタン樹脂組成物。

一般式(5)中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。R21は置換基を表し、mは0〜5の整数を表し、R21が複数存在する場合、複数のR21は互いに同じであっても、異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよい。R41は置換基を表し、nは0〜5の整数を表し、R41が複数存在する場合、複数のR41は互いに同じであっても、異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよい。
<4> 一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物の多量体が、下記一般式(6)で表される鎖状イミノエーテル基含有化合物である<1>〜<3>のいずれか1つに記載のポリウレタン樹脂組成物。

一般式(6)中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。R41は置換基を表し、nは0〜5の整数を表す。R41が複数存在する場合、複数のR41は互いに同じであっても、異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよい。pは2〜4の整数を表し、Lは、炭素原子との結合末端が、置換基を有してもよいアルキレン部、置換基を有してもよいアリーレン部又は置換基を有してもよいアルコキシレン部であるp価の基を表す。
<5> 一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物の多量体が、下記一般式(7)で表される鎖状イミノエーテル基含有化合物である<1>〜<3>のいずれか1つに記載のポリウレタン樹脂組成物。

一般式(7)中、Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアルコキシ基を表し、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。pは2〜4の整数を表し、Lは、窒素原子との結合末端が、置換基を有してもよいアリーレン部又は置換基を有してもよいシクロアルキレン部であるp価の基を表す。
<6> 一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物の多量体が、下記一般式(8)で表される鎖状イミノエーテル基含有化合物である<1>〜<3>のいずれか1つに記載のポリウレタン樹脂組成物。

一般式(8)中、Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアルコキシ基を表し、R41は置換基を表し、nは0〜5の整数を表す。R41が複数存在する場合、複数のR41は互いに同じであっても、異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよい。pは2〜4の整数を表し、Lは、酸素原子との結合末端が、アルキレン部であるp価の基を表す。Lのアルキレン部は、水素原子の一部又は全部が、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基で置換されていてもよい。
<7> 熱可塑性ポリウレタン100質量部に対して、鎖状イミノエーテル基含有化合物を0.1〜2.0質量部含む<1>〜<6>のいずれか1つに記載のポリウレタン樹脂組成物。
<8> 熱可塑性ポリウレタンが、ポリエステル系ポリウレタンである<1>〜<7>のいずれか1つに記載のポリウレタン樹脂組成物。
<9> <1>〜<8>のいずれか1つに記載のポリウレタン樹脂組成物を用いて成形されたポリウレタン樹脂成形体。
本開示によれば、汎用のポリウレタンを用いても、耐加水分解性及び成形性に優れたポリウレタン樹脂成形体を製造することができるポリウレタン樹脂組成物が提供される。
また、本開示によれば、汎用のポリウレタンを用いても、耐加水分解性及び成形性に優れたポリウレタン樹脂成形体が提供される。
以下、本開示のポリウレタン樹脂組成物及びポリウレタン樹脂成形体について具体的に説明する。なお、以下の説明において数値範囲を表す「〜」は下限値及び上限値として記載されている数値を含む範囲を意味する。
<ポリウレタン樹脂組成物>
本開示のポリウレタン樹脂組成物は、熱可塑性ポリウレタン(以下、単に「ポリウレタン」と記す場合がある。)と、下記一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物及び一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物の多量体から選ばれる少なくとも1種の鎖状イミノエーテル基含有化合物(以下、単に「鎖状イミノエーテル基含有化合物」と称する場合がある。)と、を含む。

一般式(1)中、Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアルコキシ基を表し、Rは下記一般式(2)で表されるアルキル基又は下記一般式(3)で表されるアリール基を表し、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。

一般式(2)中、R31、R32及びR33はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R31、R32及びR33は互いに連結して環を形成してもよい。一般式(3)中、R41は置換基を表し、nは0〜5の整数を表す。R41が複数存在する場合、複数のR41は互いに同じであっても、異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよい。一般式(2)及び(3)において*は、窒素原子と結合する位置を表す。
なお、本開示における「鎖状イミノエーテル基含有化合物」とは、イミノエーテル化合物に含まれるイミノエーテル基(−N=C−O−、「イミノエーテル部」という場合がある。)全体が環状構造に取り込まれず、少なくとも一部がイミノエーテル化合物の鎖状部分を構成しているイミノエーテル化合物を意味する。また、一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物の多量体とは、一般式(1)において鎖状イミノエーテル基(−N=C−O−)に連結する少なくとも1つの部分構造が連結基となり、連結基以外の部分構造を2つ以上有する鎖状イミノエーテル基含有化合物を意味し、一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物を経て合成される鎖状イミノエーテル基含有化合物のほか、一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物を経ずに合成される鎖状イミノエーテル基含有化合物も含まれる。
本開示のポリウレタン樹脂組成物は、汎用のポリウレタンを用いても、耐加水分解性及び成形性に優れたポリウレタン樹脂成形体を製造することができる。その理由は、以下のように推察される。
ポリウレタンは、主に、ポリエステル系ポリオールを原料とするポリエステル系ポリウレタンと、ポリエーテル系ポリオールを原料とするポリエーテル系ポリウレタンに大別される。
例えば、ポリエステル系ポリウレタンは、原料のポリエステルポリオールに微量のカルボン酸が含まれており、また、溶融成形時にポリエステル部分が熱分解してカルボキシ基を生じる。カルボキシ基は加水分解を促進させるが、本開示のポリウレタン樹脂組成物に含まれる鎖状イミノエーテル基含有化合物は環状イミノエーテル化合物に比べて反応性が高く、ポリウレタンの成形温度で反応してカルボキシ基を封止するため、耐加水分解性が向上すると考えられる。
鎖状イミノエーテル基含有化合物とポリウレタンとを含む樹脂組成物を加熱溶融して成形する場合、例えば、下記反応スキームのように鎖状のイミノエーテル部とポリウレタンの末端カルボキシ基(波線はポリウレタンの末端カルボキシ基以外の部分との連結部位を示す)とが反応し、イミノエーテル基に連結するアルキル部が切断してポリウレタン末端のカルボキシ基にエステル化して付加することで、アミド化合物とカルボン酸エステルが生成する。

従って、鎖状イミノエーテル基含有化合物とポリウレタンとを含む樹脂組成物を用いて成形する場合は、ポリウレタンの分子量が増大することが抑制され、成形時における増粘が抑制されると考えられる。
一方、イミノエーテル基を含むイミノエーテル部が環状である環状イミノエーテル化合物は、鎖状イミノエーテル基含有化合物に比べ反応性が低く、高温で成形した場合は、イミノエーテル部にポリウレタンが付加した状態となり、ポリマーの分子量が増大することにより大きく増粘すると考えられる。特に、環状のイミノエーテル部が2官能以上(2量体以上)である場合は多数のポリウレタンが付加して顕著に増粘すると考えられる。
(イミノエーテル化合物の合成方法)
一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物の合成方法としては、アミド化合物をイミドイルクロライド化し、アルコキシドと反応させる方法、及びアニリン化合物とオルトエステル化合物を反応させる方法が知られている。一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物の合成方法としては、どちらの方法を用いてもよいが、アニリン化合物とオルトエステル化合物を反応させる方法を用いることが好ましい。アニリン化合物とオルトエステル化合物を反応させる方法で合成したイミノエーテル化合物を添加したポリウレタン樹脂組成物は、耐加水分解性と色味がより良好となるため好ましい。これは、アニリン化合物とオルトエステル化合物を反応させる方法では、着色物、並びに、耐加水分解性を悪化させる試薬及び反応生成物がないことが寄与していると考えられる。また、アニリン化合物とオルトエステル化合物を反応させる方法は、イミノエーテル化合物を短工程で合成できる点からも好ましい。
一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物の合成に用いられるオルトエステル化合物は、下記一般式(9)で表される化合物であることが好ましい。

一般式(9)において、Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアルコキシ基を表し、R51、R52及びR53はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。
一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物の合成に用いられるオルトエステル化合物としては、例えば、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、オルト酢酸トリプロピル、オルト酢酸トリブチル、オルト酢酸トリベンジル、オルト蟻酸トリメチル、オルト蟻酸トリエチル、オルト蟻酸トリプロピル、オルト蟻酸トリブチル、オルト蟻酸トリベンジル、オルトプロピオン酸トリメチル、オルトプロピオン酸トリエチル、オルトプロピオン酸トリプロピル、オルトプロピオン酸トリブチル、オルトプロピオン酸トリベンジル、オルト安息香酸トリメチル、オルト安息香酸トリエチル、オルト安息香酸トリプロピル、オルト安息香酸トリブチル及びオルト安息香酸トリベンジルなどが挙げられる。
オルトエステル化合物は、市販品を用いてもよいが、合成してもよい。合成する場合は、シアン化水素、アセトニトリル、プロピオニトリル、n−ブチロニトリル、ベンゾニトリルなどニトリル化合物をイミダート化し、アルコールと反応させる方法、又は、トリクロロベンゼンとアルコキシドを反応させる方法によって合成することができる。
(熱可塑性ポリウレタン)
本開示で用いる熱可塑性ポリウレタンは、分子構造中にウレタン基(−NHCOO−)を有するゴム状弾性体であり、ウレタンゴム、又はウレタン樹脂とも呼ばれる。
熱可塑性ポリウレタンは、一般的に、長鎖グリコール(ポリオール)とポリイソシアネートと短鎖グリコール(鎖延長剤)との重付加反応によって構成される。
本開示で用いるポリウレタンのタイプは特に限定されず、ポリエステル系ポリウレタンでもよいし、ポリエーテル系ポリウレタンでもよい。
特にポリエステル系ポリウレタンは、原料のポリエステルポリオールに微量のカルボン酸が含まれており、また、成形中又は湿熱中にポリエステル部が熱分解し、カルボン酸が生成する。カルボン酸は加水分解の触媒として作用するため、ポリエステル系ポリウレタンは加水分解性し易いが、鎖状イミノエーテル基含有化合物がカルボン酸を成形中及び湿熱中に封止すると考えられる。そのため、本開示のポリウレタン樹脂組成物は、ポリウレタンとしてポリエステル系ポリウレタンを含む場合に耐加水分解性を顕著に向上させることができる。
本開示では、市販の熱可塑性ポリウレタンを好適に用いることができる。市販の熱可塑性ポリウレタンとしては、例えば、ミラクトラン(登録商標)E580(ポリエステル系ポリウレタン、日本ポリウレタン社製)、ミラクトラン(登録商標)E180(ポリエステル系ポリウレタン、日本ポリウレタン社製)、ミラクトラン(登録商標)E380(ポリエーテル系ポリウレタン、日本ポリウレタン社製)等が挙げられる。
また、本開示で用いる熱可塑性ポリウレタンは合成して得てもよい。本開示で用いる熱可塑性ポリウレタンの製造方法は特に限定されず、公知の方法が好適に適用される。例えば、ポリオール成分、鎖延長剤成分及びポリイソシアネート成分を同時に混合攪拌する方法(ワンショット法)、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とから形成されたプレポリマーに鎖延長剤を添加し、混合攪拌する方法(プレポリマー法)等が例示される。
末端活性水素を有する長鎖グリコールであるポリオール成分としては、特に限定無く、公知のポリオール成分が例示される。すなわち分子量が500〜6000、好ましくは1000〜3000のポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系、アクリル系、シリコーン系、1,4−ポリブタジエン系、1,2−ポリブタジエン系、フェノーリック系、ひまし油系等の各種ポリオール、難燃性ポリオール等が例示される。
ポリエステル系ポリオールとしては、一般にカプロラクトン系、アジペート系、コポリエステル系のポリオール等が好んで用いられる。具体的には例えば、ポリカプロラクトン、ポリカーボネートポリオール、あるいは、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール等のポリオールとの縮合反応生成物等が例示される。
ポリエーテル系ポリオールとしては、ポリプロピレングリコール系ポリオール、ポリエチレングリコール系グリコール又はそれらのエチレンオキサイド変性物、アミン変性物、あるいはポリオキシテトラメチレングリコール等が例示される。これらは単独で使用することもできるが、所望により複数種を組合せて使用することもできる。
これらのポリオール成分は、ポリオール成分と、鎖延長剤と、ポリイソシアネート成分との合計を基準にして、好ましくは30〜90質量%、より好ましくは40〜70質量%の割合で用いられる。ポリオール成分が30質量%以上用いられると成形性の低下が抑制される傾向にあり、一方、90質量%以下の割合で用いられると耐加水分解性の低下が抑制される傾向にある。
本開示で使用することができるイソシアネート成分としては、特に限定無く、公知のポリイソシアネート類が例示できる。
具体的には例えば1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族系ジイソシアネート又はキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネートが例示できる。これらは単独で使用してもよいし、複数種を組合せて使用してもよい。
ポリイソシアネート成分は、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分と、鎖延長剤との合計量を基準にして、好ましくは5〜70質量%、より好ましくは15〜40質量%の割合で用いられる。上記合計量に対するイソシアネート成分の配合量を70質量%以下とすることで成形性の低下が抑制される傾向にあり、一方、5質量%以上とすることで、耐加水分解安定性、耐圧縮永久歪特性の低下が抑制される傾向にある。
鎖延長剤としては、特に限定無く、公知の鎖延長剤が例示される。具体的には例えば1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,3−ブタンジオール、p−フェニレンジ(β−ヒドロキシエチル)エーテル、p−キシリレングリコール、グリセリンモノアリルエーテル、ジメチロールジヒドロピラン等のグリコール、エチレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ジエチルトルイレンジアミン等のジアミン又は水等の少なくとも一種が用いられる。
ポリウレタンの製造に触媒を用いることもできる。ポリウレタンの製造に用いる触媒としては、特に限定無く、公知の触媒系を好適に使用することができる。具体的には例えば、錫系、鉛系、鉄系、チタン系等の有機金属化合物及びアミン系化合物が例示される。さらに具体的には、例えば、オクチル酸スズ(II)、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンマーカプチド、オクテン酸鉛などが、アミン系触媒としては、たとえばトリエチルアミン、N,N‐ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’‐ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルグアニジン、ジフェニルアミン、ジナフチルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N−メチルモルホリン、1,2−ジメチルイミダゾール、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル等の非特許文献:「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治編(日刊工業新聞社)昭和62年9月25日)に記載された化合物等が例示される。
これらの触媒は、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分及び鎖延長剤よりなるポリウレタン原料の合計量100質量部当り0.5〜10質量部、好ましくは1〜3質量部の割合で用いられる。触媒の添加量が0.5質量部以上であれば、耐熱性、耐摩耗性、及び耐加水分解性の改善効果が見られ、一方、10質量部以下であれば、発泡したりあるいは強度、伸び等の機械的特性が低下することが抑制される。
以上の各成分を用いてのポリウレタン化反応は、例えば、ワンショット法又はプレポリマー法で行われる。ワンショット法では各成分と同時に、またプレポリマー法ではプレポリマー生成段階で、それぞれウレタン化触媒が添加され、プレポリマー法ではその後鎖延長剤を添加して反応させる。
各成分が混合攪拌されてポリウレタン化反応が進行し、反応生成物は加熱熟成、粉砕、造粒されることで、本開示で用い得る熱可塑性ポリウレタンのペレットが得られる。
(鎖状イミノエーテル基含有化合物)
本開示で用いる鎖状イミノエーテル基含有化合物は、下記一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物又は一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物の多量体である。

一般式(1)中、Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアルコキシ基を表し、Rは下記一般式(2)で表されるアルキル基又は下記一般式(3)で表されるアリール基を表し、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。

一般式(2)中、R31、R32及びR33はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R31、R32及びR33は互いに連結して環を形成してもよい。一般式(3)中、R41は置換基を表し、nは0〜5の整数を表す。R41が複数存在する場合、複数のR41は互いに同じであっても、異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよい。一般式(2)及び(3)において*は、窒素原子と結合する位置を表す。
一般式(1)において、Rで表されるアルキル基は、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜12のアルキル基であることがより好ましい。Rが表すアルキル基の炭素数は、置換基を含まない炭素数を示す。Rが表すアルキル基は直鎖であっても分枝鎖であってもよい。Rで表されるアルキル基は、シクロアルキル基であってもよい。Rが表すアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、iso−ペンチル基、n−ヘキシル基、sec−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、シクロヘキシル基、などを挙げることができる。Rが表すアルキル基は、中でもメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基、又はシクロヘキシル基とすることがより好ましい。
が表すアルキル基はさらに置換基を有していてもよい。置換基としては、上記のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
で表されるアリール基は、炭素数6〜20のアリール基であることが好ましく、炭素数6〜12のアリール基であることがより好ましい。Rが表すアリール基の炭素数は、置換基を含まない炭素数を示す。Rが表すアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などを挙げることができ、その中でもフェニル基が特に好ましい。
が表すアリール基はさらに置換基を有していてもよい。置換基としては、上記の置換基、すなわち、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などを同様に例示することができ、イミノエーテル基とカルボキシ基との反応を妨げない限り、置換基は特に制限されない。
で表されるアルコキシ基は、炭素数1〜20のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数2〜6のアルコキシ基であることが特に好ましい。Rが表すアルコキシ基の炭素数は、置換基を含まない炭素数を示す。Rが表すアルコキシ基は直鎖であっても分枝であっても環状であってもよい。Rが表すアルコキシ基の好ましい例としては、Rが表すアルキル基の末端に−O−が連結した基を挙げることができる。
が表すアルコキシ基はさらに置換基を有していてもよい。置換基としては、上記の置換基、すなわち、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などを同様に例示することができ、イミノエーテル基とカルボキシ基との反応を妨げない限り、置換基は特に制限されない。
は上記一般式(2)で表されるアルキル基又は上記一般式(3)で表されるアリール基を表す。一般式(2)中、R31、R32及びR33はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R31、R32及びR33が置換基である場合、R31、R32及びR33で表される置換基は互いに連結して環を形成してもよい。置換基としては、上記のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。R31、R32及びR33は全てが水素原子であるか又は同一の置換基であってもよく、互いに異なる置換基であってもよい。
一般式(2)で表されるアルキル基は、直鎖であっても分枝であってもよい。一般式(2)で表されるアルキル基は、シクロアルキル基であってもよい。
一般式(3)中、R41は置換基を表し、nは0〜5の整数を表す。nが2以上の場合、複数のR41は互いに同じであっても、異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよい。置換基としては、上記の置換基、すなわち、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などを同様に例示することができる。nは0〜3であることがより好ましく、0〜2であることがさらに好ましい。
11、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。アルキル基及びアリール基としては、Rが取り得るアルキル基及びアリール基を同様に例示することができる。R11、R12及びR13は互いに結合して環を形成してもよい。
本開示のポリウレタン樹脂組成物は、鎖状イミノエーテル基含有化合物として、一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物の多量体を含んでもよい。例えば、一般式(1)におけるR、R又はR11〜R13の少なくとも1つを除く構造を繰り返し単位として含む鎖状イミノエーテル基含有化合物が好ましい。
一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物は、合成の容易性から、下記一般式(4)で表されることが好ましい。

一般式(4)中、Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアルコキシ基を表し、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。R41は置換基を表し、nは0〜5の整数を表す。R41が複数存在する場合、複数のR41は互いに同じであっても、異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(4)中、R、R11、R12及びR13は、一般式(1)における各々と同義であり、好ましい範囲も同様である。一般式(4)中、R41は、一般式(3)におけるR41と同義であり、好ましい範囲も同様である。nは0〜3であることが好ましく、0〜2であることがより好ましい。
一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物は、合成の容易性から、一般式(1)におけるRが一般式(3)で表される鎖状イミノエーテル基含有化合物、すなわち、下記一般式(5)で表されることが好ましい。

一般式(5)中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。R21は置換基を表し、mは0〜5の整数を表し、R21が複数存在する場合、複数のR21は互いに同じであっても、異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよい。R41は置換基を表し、nは0〜5の整数を表し、R41が複数存在する場合、複数のR41は互いに同じであっても、異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(5)中、R11、R12及びR13は、一般式(1)における各々と同義であり、好ましい範囲も同様である。一般式(5)中、R41は一般式(3)におけるR41と同義であり、好ましい範囲も同様である。R21についても、一般式(3)におけるR41と同様の置換基を例示することができる。
一般式(5)中、nは0〜3であることが好ましく、0〜2であることがより好ましい。mは0〜3であることが好ましく、0〜2であることがより好ましい。
一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物の多量体としては、合成の容易性から、下記一般式(6)で表される鎖状イミノエーテル基含有化合物が好ましい。

一般式(6)中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。R41は置換基を表し、nは0〜5の整数を表す。R41が複数存在する場合、複数のR41は互いに同じであっても、異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよい。pは2〜4の整数を表し、Lは、炭素原子との結合末端が、置換基を有してもよいアルキレン部、置換基を有してもよいアリーレン部又は置換基を有してもよいアルコキシレン部であるp価の基を表す。置換基を有してもよいアルキレン部は、置換基を有してもよいシクロアルキレン部でもよい。
一般式(6)中、R11、R12及びR13は、一般式(1)における各々と同義であり、好ましい範囲も同様である。一般式(6)中、R41は、一般式(3)におけるR41と同義であり、好ましい範囲も同様である。nは0〜3であることが好ましく、0〜2であることがより好ましい。
一般式(6)中、Lは、炭素原子との結合末端が、置換基を有してもよいアルキレン部、置換基を有してもよいアリーレン部又は置換基を有してもよいアルコキシレン部であるp価の基を表す。pは2〜4の整数を表し、pは2又は3であることが好ましい。置換基を有してもよいアルキレン部は、置換基を有してもよいシクロアルキレン部でもよい。
二価の基の具体例としては、例えば、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアリーレン基、置換基を有してもよいアルコキシレン基が挙げられる。また、炭素原子との結合末端が、置換基を有してもよいアルキレン部、置換基を有してもよいアリーレン部又は置換基を有してもよいアルコキシレン部であり、部分構造として、−SO−、−CO−、置換もしくは無置換のアルキレン部、置換もしくは無置換のアルケニレン部、アルキニレン部、置換もしくは無置換のフェニレン部、置換もしくは無置換のビフェニレン部、置換もしくは無置換のナフチレン部、−O−、−S−及び−SO−から選ばれる少なくとも一つを含む基が挙げられる。置換基を有してもよいアルキレン部は、置換基を有してもよいシクロアルキレン部でもよい。
好ましくは、例えば、置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のビフェニレン基、置換もしくは無置換のナフチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、置換もしくは無置換のシクロヘキシレン基、置換もしくは無置換の−C10−C10−、置換もしくは無置換の−C10−CH−C10−、置換もしくは無置換の−C−C(CH−C−、置換もしくは無置換の−C−CH−C−、置換もしくは無置換の−C−C(O)−C−、置換もしくは無置換の−C−O−C−、置換もしくは無置換の−C−S−C−、置換もしくは無置換の−C−SO−C−、置換もしくは無置換の−C−C(CF−C−、置換もしくは無置換の−C−NHC(O)−C−、置換もしくは無置換の−C−O−C−C(CH−C−O−C−、置換もしくは無置換の−C−O−C−C(O)−C−O−C−、置換もしくは無置換の−C−O−C−SO−C−O−C−、置換もしくは無置換の−C−O−C−S−C−O−C−、置換もしくは無置換の−C−O−(C−O−C−、置換もしくは無置換の−C−O−C−C(CF−C−O−C−、などが挙げられる。
三価の基の具体例としては、例えば、二価の基の例として挙げた基のうち置換基を有する構造から1つの水素原子を取り除いた基が挙げられる。
四価の基の具体例としては、例えば、二価の基の例として挙げた基のうち置換基を有する構造から2つの水素原子を取り除いた基が挙げられる。
本開示では、一般式(6)におけるpを2〜4とすることにより、イミノエーテル部を1分子中に2以上有する化合物とすることができ、より優れた末端封止効果を発揮することができる。さらに、イミノエーテル部を1分子中に2以上有する化合物とすることにより、イミノエーテル価(全分子量/イミノエーテル基数)を低くすることができ、効率良くイミノエーテル化合物とカルボキシ基を反応させることができる。
一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物の多量体としては、合成の容易性から、下記一般式(7)で表される鎖状イミノエーテル基含有化合物も好ましい。

一般式(7)中、Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアルコキシ基を表し、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。pは2〜4の整数を表し、Lは、窒素原子との結合末端が、置換基を有してもよいアリーレン部又は置換基を有してもよいシクロアルキレン部であるp価の基を表す。
一般式(7)中、R、R11、R12及びR13は、一般式(1)における各々と同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(7)中、Lは、窒素原子との結合末端が、置換基を有してもよいアリーレン部又は置換基を有してもよいシクロアルキレン部であるp価の基を表す。Lは、窒素原子との結合末端が、置換基を有してもよいアリーレン部であるp価の基が好ましい。pは2〜4の整数を表し、pは2又は3であることが好ましい。
の具体例としては、置換基を有してもよいアリーレン基、置換基を有してもよいシクロアルキレン基が挙げられる。窒素原子との結合末端が、置換基を有してもよいアリーレン部又は置換基を有してもよいシクロアルキレン部であり、部分構造として、−SO−、−CO−、置換もしくは無置換のアルキレン部、置換もしくは無置換のアルケニレン部、アルキニレン部、置換もしくは無置換のフェニレン部、置換もしくは無置換のビフェニレン部、置換もしくは無置換のナフチレン部、−O−、−S−及び−SO−から選ばれる少なくとも一つを含む基が挙げられる。
好ましくは、例えば、置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のビフェニレン基、置換もしくは無置換のナフチレン基、置換もしくは無置換のシクロヘキシレン基、置換もしくは無置換の−C10−C10−、置換もしくは無置換の−C10−CH−C10−、置換もしくは無置換の−C−C(CH−C−、置換もしくは無置換の−C−CH−C−、置換もしくは無置換の−C−C(O)−C−、置換もしくは無置換の−C−O−C−、置換もしくは無置換の−C−SC−、置換もしくは無置換の−C−SO−C−、置換もしくは無置換の−C−C(CF−C−、置換もしくは無置換の−C−NHC(O)−C−、置換もしくは無置換の−C−O−C−C(CH−C−O−C−、置換もしくは無置換の−C−O−C−C(O)−C−O−C−、置換もしくは無置換の−C−O−C−SO−C−O−C−、置換もしくは無置換の−C−O−C−S−C−O−C−、置換もしくは無置換の−C−O−(C−O−C−、置換もしくは無置換の−C−O−C−C(CF−C−O−C−、などが挙げられる。
一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物の多量体としては、合成の容易性から、下記一般式(8)で表される鎖状イミノエーテル基含有化合物も好ましい。

一般式(8)中、Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアルコキシ基を表し、R41は置換基を表し、nは0〜5の整数を表す。R41が複数存在する場合、複数のR41は互いに同じであっても、異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよい。pは2〜4の整数を表し、Lは、酸素原子との結合末端が、アルキレン部であるp価の基を表す。Lのアルキレン部は、水素原子の一部又は全部が、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基で置換されていてもよい。
一般式(8)中、Rは、一般式(1)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同様である。一般式(8)中、R41は、一般式(3)におけるR41と同義であり、好ましい範囲も同様である。nは0〜3であることが好ましく、0〜2であることがより好ましい。Rは、R41と連結して環を形成してもよい。
一般式(8)中、Lは、酸素原子との結合末端が、アルキレン部であるp価の基を表す。Lのアルキレン部は、水素原子の一部又は全部が、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基で置換されていてもよい。pは2〜4の整数を表し、pは2又は3であることが好ましい。
の具体例としては、アルキレン基が挙げられる。酸素原子との結合末端が、アルキレン部であり、部分構造として、−SO−、−CO−、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルケニレン基、アルキニレン基、置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のビフェニレン基、置換もしくは無置換のナフチレン基、−O−、−S−及び−SO−から選ばれる少なくとも一つを含む基が挙げられる。
好ましくは、例えば、エチレン基、n−ブチレン基、置換もしくは無置換の−CH−C(CH−CH−、置換もしくは無置換の−CH−C−CH−、などが挙げられる。
本開示で用いる鎖状イミノエーテル基含有化合物のイミノエーテル基1つあたりの分子量(全分子量/イミノエーテル基数)は1000以下であることが好ましく、750以下であることがより好ましく、500以下であることがさらに好ましい。イミノエーテル基1つあたりの分子量を1000以下とすることで、低添加量にてポリウレタンの末端カルボキシ基を封止することが可能となる。
下記に一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物及びその多量体の好ましい具体例を示すが、本開示で用い得る鎖状イミノエーテル基含有化合物はこれらに限定されない。










本開示のポリウレタン樹脂組成物は、ポリウレタンと、一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物及びその多量体から選ばれる少なくとも1種の鎖状イミノエーテル基含有化合物とを含むことによって、成形時の増粘を効果的に抑制し、且つ、耐加水分解性を有するポリウレタン樹脂成形体を製造することができる。
また、鎖状イミノエーテル基含有化合物の添加量を調整することで成形体の色味を制御することもできる。
本開示のポリウレタン樹脂組成物は、ポリウレタン100質量部に対して、鎖状イミノエーテル基含有化合物を0.05〜3質量部含むことが好ましい。ポリウレタン100質量部に対して、鎖状イミノエーテル基含有化合物の添加量を好ましくは0.05質量部以上とすることで、ポリウレタン樹脂成形体の耐加水分解性をより向上させることができ、3質量部以下とすることで、ポリウレタン樹脂成形体の耐熱性及び耐加水分解性をより向上させることができる。
ポリウレタン樹脂成形体の耐加水分解性の向上並びに成形時の増粘の抑制に加え、黄色味をより効果的に抑制する観点から、ポリウレタン100質量部に対して、鎖状イミノエーテル基含有化合物を0.1〜2.0質量部含むことがより好ましい。
なお、本開示のポリウレタン樹脂組成物は、鎖状イミノエーテル基含有化合物を1種単独で使用してもよいし、複数種を併用してもよいが、複数種の鎖状イミノエーテル基含有化合物を併用する場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
本開示のポリウレタン樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲内であれば、各種添加剤、例えば、相溶化剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料などを含んでもよい。
本開示のポリウレタン樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲内であれば、上述したイミノエーテル化合物以外の末端封止剤を含むことを拒まない。本開示のポリウレタン樹脂組成物は、上述したイミノエーテル化合物のほかに、例えば、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、及びオキサゾリン化合物から選ばれる末端封止剤を併用することもできる。
<ポリウレタン樹脂成形体>
本開示のポリウレタン樹脂組成物を用いてポリウレタン樹脂成形体を製造する方法は特に限定されず、用途に応じて公知の成形方法を適用すればよい。例えば、本開示のポリウレタン樹脂組成物を原料とし、射出成形機、押出機、注型機等を用いてシート状等の所望形状の成形品に成形し、好ましくは80〜150℃で5〜24時間程度二次架橋(アニール)する。これにより、耐加水分解性及び成形性に優れたポリウレタン樹脂成形体が得られる。
本開示のポリウレタン樹脂組成物の用途は特に限定されず、例えばシーリング材、断熱材などのウレタンフォーム、靴製品、バンパー及びヘッドレストなどの自動車部品用途等のポリウレタン樹脂成形体の製造に好適に用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例に限定されない。なお、特に断りの無い限り、「部」は質量基準である。
実施例では、まず、イミノエーテル化合物として下記の例示化合物を合成した。

[合成例1]
<イミノエーテル(1)の合成>

5L三口フラスコに、トリエトキシメチルベンゼン600g(2.80mol)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン498g(1.28mol)、トルエン480ml、メタンスルホン酸0.24g(2.5mmol)を仕込み、加熱還流下2時間攪拌した。反応系温度を100℃以下とし、還流されたエタノールはDean−Stark装置にて取り除いた。TLC(薄層クロマトグラフィー)にて反応終了を確認した後、室温まで冷却し、メタノールを加え晶析することで、イミノエーテル(1)777g(収率95%)を得た。得られた化合物はH−NMRにて同定した。
[合成例2]
<イミノエーテル(2)の合成>

5L三口フラスコに、トリメトキシメチルベンゼン512g(2.80mol)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン498g(1.28mol)、トルエン480ml、メタンスルホン酸0.24g(2.5mmol)を仕込み、加熱還流下2時間攪拌した。反応系温度を100℃以下とし、還流されたメタノールはDean−Stark装置にて取り除いた。TLCにて反応終了を確認した後、室温まで冷却し、メタノールを加え晶析することで、イミノエーテル(2)745g(収率95%)を得た。得られた化合物はH−NMRにて同定した。
[合成例3]
<イミノエーテル(3)の合成>

5L三口フラスコに、オルト酢酸トリメチル338g(2.80mol)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン498g(1.28mol)、トルエン480ml、メタンスルホン酸0.24g(2.5mmol)を仕込み、加熱還流下2時間攪拌した。反応系温度を100℃以下とし、還流されたメタノールはDean−Stark装置にて取り除いた。TLCにて反応終了を確認した後、室温まで冷却し、メタノールを加え晶析することで、イミノエーテル(3)615g(収率92%)を得た。得られた化合物はH−NMRにて同定した。
[合成例4]
<イミノエーテル(4)の合成>

5L三口フラスコに、トリメトキシメチルベンゼン512g(2.80mol)、4,4’−ジアミノベンズアニリド310g(1.28mol)、トルエン480ml、メタンスルホン酸0.24g(2.5mmol)を仕込み、加熱還流下2時間攪拌した。反応系温度を100℃以下とし、還流されたメタノールはDean−Stark装置にて取り除いた。TLCにて反応終了を確認した後、室温まで冷却し、メタノールを加え晶析することで、イミノエーテル(4)504g(収率85%)を得た。得られた化合物はH−NMRにて同定した。
[合成例5]
<イミノエーテル(5)の合成>

5L三口フラスコに、トリメトキシメチルベンゼン512g(2.80mol)、4−アミノアセトアニリド191.8g(1.28mol)、トルエン480ml、メタンスルホン酸0.24g(2.5mmol)を仕込み、加熱還流下2時間攪拌した。反応系温度を100℃以下とし、還流されたメタノールはDean−Stark装置にて取り除いた。TLCにて反応終了を確認した後、室温まで冷却し、メタノールを加え晶析することで、イミノエーテル(5)309g(収率90%)を得た。得られた化合物はH−NMRにて同定した。
[合成例6]
<イミノエーテル(6)の合成>

5L三口フラスコに、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)210g(1.0mol)、トリエチルアミン243g(2.4mol)、ジメチルアセトアミド1.0Lを仕込み、氷浴下でベンゾイルクロライド336g(2.4mol)を滴下した後、室温下で1時間攪拌した。1mol/Lの塩酸水2.0Lを加え、1時間攪拌し、ろ過することで中間生成物(6−1)397g(収率95%)を得た。得られた化合物はH−NMRにて同定した。
5L三口フラスコに、中間生成物(6−1)300g、塩化チオニル1.0Lを加え、65℃で2時間攪拌した後、過剰量の塩化チオニルを減圧下で除去した。室温まで冷却しTHF(テトラヒドロフラン)1.0mlを加え、氷浴下でナトリウムメチラート28質量%メタノール溶液(商品名:SM−28)を310g(1.6mol)滴下した後、室温下で1時間攪拌した。酢酸エチル1.5Lと純水1.0Lを加えて分液し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮することで固体が得られた。そこへメタノール2.0Lを加え、室温下で1時間攪拌し、ろ過することでイミノエーテル(6)288g(収率90%)を得た。得られた化合物はH−NMRにて同定した。
[合成例7]
<イミノエーテル(7)の合成>

5Lフラスコに、2−アミノベンジルアルコール296g(2.4mol)、トリエチルアミン243g(2.4mol)、ジメチルアセトアミド1.5Lを仕込み、氷浴下でテレフタル酸クロリド203g(1.0mol)を分割添加し、1時間攪拌した後、1mol/Lの塩酸水2.0Lを加えて1時間攪拌し、ろ過することで中間生成物(7−1)357g(収率95%)を得た。得られた化合物はH−NMRにて同定した。
5L三口フラスコに、中間生成物(7−1)300g(0.8mol)、塩化チオニル1.0Lを加え、65℃で2時間攪拌した後、過剰の塩化チオニルを濃縮除去した。メタノール1.0Lを加えた後、氷浴下でナトリウムメチラート28質量%メタノール溶液(商品名:SM−28) 386g(2.0mol)をゆっくり滴下し、室温で1時間、40℃で50時間攪拌した。沈殿物をろ過して減圧下でメタノールを除去し、酢酸エチルを1.5L加え、分液した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、メタノールを加えて晶析し、ろ過することでイミノエーテル(7)136g(収率50%)を得た。得られた化合物はH−NMRにて同定した。
[合成例8]
<イミノエーテル(8)の合成>

p−アニシジン92.4g(0.75mol)、ピリジン59g(0.75mol)のN、N−ジメチルアセトアミド500ml溶液に、氷冷下、トリメシン酸トリクロライド50g(0.19mol)のN、N−ジメチルアセトアミド100ml溶液を滴下した。室温まで昇温した後、3時間攪拌した。反応溶液を水5Lにゆっくりと添加し、固体を析出させた。ろ過にて固体を分離し、得られた固体をメタノールに分散させ、再びろ過を行った。この操作を2回繰り返し、得られた固体を乾燥させることで、中間生成物(8−1)96.8g(収率97%)を得た。
中間生成物(8−1)26.3g(50mmol)の塩化チオニル100ml懸濁溶液を加熱還流下3時間攪拌した。反応系が透明になったのを確認し、さらに2時間攪拌した。塩化チオニルを留去し、テトラヒドロフラン200mlを添加し、氷冷下、ナトリウムメチラート28質量%メタノール溶液(商品名:SM−28)21.2g(110mol)を滴下した。系の温度を室温まで昇温させ、10分間攪拌した後、酢酸エチル/水を加えて分液した。水にて有機相を洗浄し、有機相を硫酸マグネシウムにて乾燥させた。溶媒を留去した後、酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒を溶離液に用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製を行った。溶媒を留去することで、イミノエーテル(8)を25.0g(収率88%)得た。得られた化合物はH−NMRにて同定した。
<イミノエーテル(9)の合成>
[合成例9]

アニリン46.5g(0.5mol)、ピリジン44g(0.6mol)のN、N−ジメチルアセトアミド300ml溶液を氷冷下、ベンゾイルクロライド95g(0.5mol)をゆっくりと添加した。反応系の温度を室温まで昇温し、TLCにて反応の終了を確認した。メタノールを50ml添加した後、反応溶液を水5Lにゆっくりと添加し、固体を析出させた。ろ過にて固体を分離し、得られた固体をメタノールに分散させ、再びろ過を行った。この操作を2回繰り返し、得られた固体を乾燥させることで、中間生成物(9−1)89.7g(収率91%)を得た。
中間生成物(9−1)9.9g(50mmol)の塩化チオニル400ml、触媒量のN、N−ジメチルホルムアミドの懸濁溶液を加熱還流下、18時間攪拌した。反応系が完溶したことを確認し、さらに2時間攪拌した。その後、塩化チオニルを留去することで、中間生成物(9−2)10.8g(quant.)を得た。
水素化ナトリウム(60質量%)2.0g(50mmol)をヘキサンにて分散し、静置後上澄みのヘキサンをパスツールピペットにて取り除いた。この操作を2回繰り返し、テトラヒドロフラン溶液50mlを加えた。氷冷下、エチレングリコール1.6g(25mmol)を添加した。系内から泡の発生が終わったことを目視で確認し、エチレンジメトキシドのテトラヒドロフラン溶液を調製した。
中間生成物(9−2)10.8g(50mmol)のテトラヒドロフラン溶液150mlを−5℃まで冷却し、調製したエチレンジメトキシドのテトラヒドロフラン溶液を滴下した。系の温度を室温まで昇温させ、30時間攪拌した後、酢酸エチル/水を加えて分液した。水にて有機相を洗浄し、有機相を硫酸マグネシウムにて乾燥させた。溶媒を留去した後、酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒を溶離液に用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製を行った。溶媒を留去することで、イミノエーテル(9)を6.5g(収率62%)得た。得られた化合物はH−NMRにて同定した。
[実施例1]
ミラクトラン(登録商標)E580(ポリオール成分としてカプロラクトン系ポリオールを原料として合成したポリエステル系ポリウレタン、日本ポリウレタン社製)100質量部に対し、イミノエーテル(1)を1質量部添加して一緒に乾式混合し、射出成形機により、ノズル部温度190℃、シリンダ前部温度180℃、シリンダ中部温度170℃、シリンダ後部温度150℃、の成形条件下で成形し、シート状成形品(150×150×2mm)を得、これを85℃にて16時間オーブンで加熱して試験片を作製した。
−ポリウレタン樹脂成形体の性能評価−
(耐湿熱性:耐加水分解性)
得られた試験片について、温度90℃、相対湿度95%の雰囲気で、500時間、湿熱老化試験を行った。破断伸度保持率を求め、以下の基準で評価した。保存前の試験片が示す破断伸度に対し、上記条件下で保存後の試験片が示す破断伸度を破断伸度保持率(%)とし、下記基準により評価した。破断保持率が高いほど耐加水分解性が高いと言える。得られた結果を下記表1に記載した。
A: 90%以上
B: 70%以上90%未満
C: 70%未満
(成形性)
成形時の樹脂圧力を押出機の圧力計で確認し、下記の基準で評価した。
A: 比較例1と比較し、樹脂圧力の増加が0%以上50%未満
B: 比較例1と比較し、樹脂圧力の増加が50%以上100%未満
C: 比較例1と比較し、樹脂圧力の増加が100%以上
(色味)
得られた試験片に対して、下記の基準に従って目視評価した。
A: 黄色味が比較例1と同等であり、許容できるレベル。
B: 比較例1より黄色味が大きく、許容できないレベル。
[比較例1]
イミノエーテル(1)を添加しないこと以外は、実施例1と同様に試験片を作製し、評価した。
[実施例2〜8、比較例2〜3、6]
イミノエーテル(1)に代えて表1に記載の化合物を添加した以外は実施例1と同様にして試験片を作製し、評価した。
なお、比較例2、3で使用した環状カルボジイミド(1)、及び、環状カルボジイミド(2)は、特開2011−256337号公報を参考に合成した。
[実施例9〜12]
イミノエーテル(1)の添加量をそれぞれ表1に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして試験片を作製し、評価した。
[実施例13]
ミラクトラン(登録商標)E580(日本ポリウレタン社製)をミラクトラン(登録商標)E180(ポリオール成分としてアジペート系ポリオールを原料として合成したポリエステル系ポリウレタン、日本ポリウレタン社製)に変更した以外は実施例1と同様に試験片を作製し、評価した。
[実施例14]
ミラクトラン(登録商標)E580(日本ポリウレタン社製)をミラクトラン(登録商標)E380(ポリオール成分としてポリエーテル系ポリオールを原料として合成したポリエーテル系ポリウレタン、日本ポリウレタン社製)に変更した以外は実施例1と同様に試験片を作製し、評価した。
[比較例4]
イミノエーテル(1)に代えて下記合成例10で合成した下記構造を有するテトラメチレンビスオキサゾリン(TMBO)を添加した以外は実施例1と同様にして試験片を作製し、評価した。

[合成例10]
<TMBOの合成>

5Lフラスコに、アジピン酸ジエチル500g(2.47mol)、エタノールアミン1500g(9.9mol)を仕込み、170℃で1時間攪拌しながら、生成するエタノールを留去した。室温に冷却後、ベンゼンとメタノールを加えて再結晶し、ろ過することで中間生成物TMBO−1 471g(収率82%)を得た。得られた化合物はH−NMRにて同定した。
5L三口フラスコに、TMBO−1 185.7g(0.8mol)、クロロホルム1.0Lを仕込み、氷浴下で塩化チオニル238g(2.0mol)を滴下し、室温下で2時間攪拌した。減圧下で過剰の塩化チオニルを留去した後、メタノール1.0Lを加え、ナトリウムメチラート28質量%メタノール溶液(商品名:SM−28) 771.7g(4.0mol)をゆっくり滴下し、室温下で2時間、40℃で30時間攪拌した。室温に冷却してろ過し、減圧下で溶媒を留去した後、酢酸エチル1.0Lを加え、ろ過した後、減圧下で酢酸エチルを留去した。得られたオイル状の化合物を128℃、133.3Pa(1Torr)で蒸留精製することで、TMBO 118g(収率75%)を得た。得られた化合物はH−NMRにて同定した。
[比較例5]
イミノエーテル(1)に代えてエポクロス(登録商標)RPS(オキサゾリン基含有反応性ポリスチレン、日本触媒社製)を添加した以外は実施例1と同様にして試験片を作製し、評価した。
実施例及び比較例で用いた樹脂、鎖状イミノエーテル基含有化合物及び比較化合物と評価結果を下記表1に示す。なお、表1において樹脂の記号は以下を意味する。
・PU−A: 日本ポリウレタン社製ミラクトランE580(ポリオール成分としてカプロラクトン系ポリオールを原料として合成したポリエステル系ポリウレタン)
・PU−B: 日本ポリウレタン社製ミラクトランE180(ポリオール成分としてアジペート系ポリオールを原料として合成したポリエステル系ポリウレタン)
・PU−C: 日本ポリウレタン社製ミラクトランE380(ポリオール成分としてエーテル系ポリオールを原料として合成したポリエーテル系ポリウレタン)

上記表1より、本開示に係る鎖状イミノエーテル基含有化合物を添加した各実施例のポリウレタン樹脂組成物は、耐加水分解性(耐湿熱性)及び成形性に優れていた。
比較例6では環状イミノエーテル(7)の反応性が低いため、成形体の耐加水分解性が劣り、一部は反応して高分子量化して増粘したことで成形性が低下したと考えられる。
2014年12月26日に出願された日本特許出願2014−265717の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (9)

  1. 熱可塑性ポリウレタンと、下記一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物及び一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物の多量体から選ばれる少なくとも1種の鎖状イミノエーテル基含有化合物と、を含むポリウレタン樹脂組成物。


    一般式(1)中、Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアルコキシ基を表し、Rは下記一般式(2)で表されるアルキル基又は下記一般式(3)で表されるアリール基を表し、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。


    一般式(2)中、R31、R32及びR33はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R31、R32及びR33は互いに連結して環を形成してもよい。一般式(3)中、R41は置換基を表し、nは0〜5の整数を表す。R41が複数存在する場合、複数のR41は互いに同じであっても、異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよい。一般式(2)及び(3)において*は、窒素原子と結合する位置を表す。
  2. 前記一般式(1)におけるRが前記一般式(3)で表されるアリール基である請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
  3. 前記一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物が、下記一般式(5)で表される鎖状イミノエーテル基含有化合物である請求項1又は請求項2に記載のポリウレタン樹脂組成物。


    一般式(5)中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。R21は置換基を表し、mは0〜5の整数を表し、R21が複数存在する場合、複数のR21は互いに同じであっても、異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよい。R41は置換基を表し、nは0〜5の整数を表し、R41が複数存在する場合、複数のR41は互いに同じであっても、異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよい。
  4. 前記一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物の多量体が、下記一般式(6)で表される鎖状イミノエーテル基含有化合物である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物。


    一般式(6)中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。R41は置換基を表し、nは0〜5の整数を表す。R41が複数存在する場合、複数のR41は互いに同じであっても、異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよい。pは2〜4の整数を表し、Lは、炭素原子との結合末端が、置換基を有してもよいアルキレン部、置換基を有してもよいアリーレン部又は置換基を有してもよいアルコキシレン部であるp価の基を表す。
  5. 前記一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物の多量体が、下記一般式(7)で表される鎖状イミノエーテル基含有化合物である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物。


    一般式(7)中、Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアルコキシ基を表し、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。pは2〜4の整数を表し、Lは、窒素原子との結合末端が、置換基を有してもよいアリーレン部又は置換基を有してもよいシクロアルキレン部であるp価の基を表す。
  6. 前記一般式(1)で表されるイミノエーテル化合物の多量体が、下記一般式(8)で表される鎖状イミノエーテル基含有化合物である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物。


    一般式(8)中、Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアルコキシ基を表し、R41は置換基を表し、nは0〜5の整数を表す。R41が複数存在する場合、複数のR41は互いに同じであっても、異なっていてもよく、互いに連結して環を形成してもよい。pは2〜4の整数を表し、Lは、酸素原子との結合末端が、アルキレン部であるp価の基を表す。Lのアルキレン部は、水素原子の一部又は全部が、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基で置換されていてもよい。
  7. 前記熱可塑性ポリウレタン100質量部に対して、前記鎖状イミノエーテル基含有化合物を0.1〜2.0質量部含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
  8. 前記熱可塑性ポリウレタンが、ポリエステル系ポリウレタンである請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
  9. 請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物を用いて成形されたポリウレタン樹脂成形体。
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