JPWO2016104367A1 - 機能性ディスペプシア治療薬 - Google Patents

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Abstract

新規の機能性ディスペシアの治療薬を提供することを課題とする。(i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ/又は(ii)アルミニウムを含有する化合物を有効成分とする、機能性ディスペプシアの治療薬。

Description

本発明は、主に機能性ディスペプシアの治療薬に関する。
機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia:FD)は、器質的病変が見られないにも関わらず、早期膨満感や食後のもたれ感などの症状が慢性的に続く機能性胃腸障害である(非特許文献1)。これらの症状は、胃運動能低下による胃内容物の排出遅延が原因で起こると考えられているため、FDの治療には消化管運動を改善する薬剤が使用されている。現在、臨床では消化管運動賦活薬として、5-HT4(セロトニン)受容体作動薬のモサプリドやシサプリド、ドパミン受容体拮抗薬のイトプリドなどの薬剤が用いられている。一方で、臨床で広く用いられている抗胃潰瘍薬は、器質的病変(潰瘍)が見られない病態であるFDにはあまり使用されていない。
上述のように、現在のFD治療では胃排出遅延を改善することを目的に、5-HT4受容体作動薬(モサプリド、シサプリド)、ドパミン受容体拮抗薬(イトプリドなど)が主に使用されている。しかし、これらの薬剤はFD患者において有効性が十分に確認できていない(非特許文献2、3)。さらに、5-HT4受容体作動薬に関しては、心血管系の副作用を誘発することが懸念されている。実際、5-HT4受容体作動薬のシサプリドはQT延長(心毒性)を誘発することが報告されたため、すでに市場から撤退している(非特許文献4)。これらのことから、従来の消化管運動改善薬は有効性が乏しく副作用を起こしうる点が問題となっている。
Tack J, et al. (2006) Functional gastroduodenal disorders. Gastroenterology 130(5):1466-1479 . Brun R & Kuo B (2010) Functional dyspepsia. Therap Adv Gastroenterol 3(3):145-164. Tonini M, et al. (2004) Review article: clinical implications of enteric and central D2 receptor blockade by antidopaminergic gastrointestinal prokinetics. Aliment Pharmacol Ther 19(4):379-390. Bran S, Murray WA, Hirsch IB, & Palmer JP (1995) Long QT syndrome during high-dose cisapride. Arch Intern Med 155(7):765-768.
本発明は、有効性と安全性が高い新規な機能性ディスペプシアの治療剤を提供することを主な目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、驚くべきことに、(i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ/又は(ii)アルミニウムを含有する化合物を有効成分とすることで、機能性ディスペプシアの治療薬が得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいてさらに改良を重ねることによって完成したものである。
すなわち、本発明は下記態様の発明を包含する。
〔1〕(i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ/又は
(ii)アルミニウムを含有する
化合物を有効成分とする、機能性ディスペプシアの治療薬。
〔2〕(i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ
(ii)アルミニウムを含有する
化合物を有効成分とする、〔1〕に記載の機能性ディスペプシアの治療薬。
〔3〕アルジオキサを有効成分とする、〔1〕又は〔2〕に記載の機能性ディスペプシアの治療薬。
〔4〕機能性ディスペプシアの治療に用いるための医薬を製造するための、
(i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ/又は
(ii)アルミニウムを含有する
化合物の使用。
〔5〕前記化合物が、
(i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ
(ii)アルミニウムを含有する
化合物である〔4〕に記載の使用。
〔6〕前記化合物が、アルジオキサである、〔4〕又は〔5〕に記載の使用。
〔7〕機能性ディスペプシアの治療に使用するための、
(i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ/又は
(ii)アルミニウムを含有する
化合物。
〔8〕(i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ
(ii)アルミニウムを含有する
化合物である〔7〕に記載の化合物。
〔9〕アルジオキサである、〔7〕又は〔8〕に記載の化合物。
〔10〕(i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ/又は
(ii)アルミニウムを含有する
化合物の有効量を投与することを特徴とする機能性ディスペプシアの治療方法。
〔11〕(i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ
(ii)アルミニウムを含有する
化合物を投与するものである〔10〕に記載の治療方法。
〔12〕アルジオキサを投与するものである〔10〕又は〔11〕に記載の治療方法。
本発明により、効果的な機能性ディスペプシアの治療薬が提供される。機能性ディスペプシアの潜在的な患者は多く、QOL(Quality of Life)の向上が期待できる。また、本発明の治療薬は、既存医薬品の新しい効能を探し出すドラッグ・リポジショニングにより提供される治療薬であるため、市場投入までの研究開発費の抑制と、高い開発成功確率が期待できる。
また、発明の治療薬は、機能性ディスペプシアの発症メカニズムや治療方法の研究のためのツールとして用いることができ、さらなる医療技術の向上に貢献することも期待される。
クロニジン誘発の胃排出遅延に対するアルジオキサの効果を示す。 クロニジン誘発の胃排出遅延に対するその他の胃保護作用を有する化合物の効果を示す。 クロニジン誘発の胃排出遅延に対するアラントイン及び水酸化アルミニウムの効果を示す。 拘束ストレス誘発の胃排出遅延及び通常の胃排出に対するアルジオキサの効果を示す。 アルジオキサの胃排出に対する促進効果と、5-HT4受容体及びドパミン受容体との独立性を示す。 アルジオキサの胃排出に対する促進効果へのα2アドレナリン受容体の関与を示す。 クロニジン誘発の胃排出遅延に対するヨヒンビンの効果を示す。 ラットにおける胃受容性に対するアルジオキサの効果を示す。
図中、「*」はP < 0.05の有意差ありを、「**」はP < 0.01有意差ありを、及び「n.s.」は有意差なし(not significant)をそれぞれ示す。
本発明の機能性ディスペプシアの治療薬について、以下詳細に説明する。
(機能性ディスペプシア)
本発明の治療薬が対象とする疾患である機能性ディスペプシアとは、器質的病変が見られないにも関わらず、早期膨満感や食後のもたれ感などの症状が慢性的に続く機能性胃腸障害である。
機能性ディスペプシアの診断基準は、公知である。例えば、Rome III診断基準に従った診断、日本消化器病学会による診断基準に従った診断などが例示される。
Rome III診断基準(J Gastrointestin Liver Dis. September 2006 Vol.15 No.3, 237-241)によれば、機能性ディスペプシアは胃腸障害のうち、(i)「つらいと感じる食後のもたれ感」、(ii)「早期飽満感」、(iii)「心窩部痛」及び(iv)「心窩部灼熱感」の症状のうち1つ以上を必須要件として有し、かつ、上部内視鏡検査等で器質的疾患が確認されない疾患を指す。さらに、「6ヵ月以上前から症状があり、最近3ヵ月間が前記基準を満たしていること」と病悩期間も明記されている。
機能性ディスペプシアには、食後の症状を主体とする食後愁訴症候群(Postprandial Distress Syndrome:PDS)と心窩部痛などを主体とする心窩部痛症候群(Epigastric Pain Syndrome:EPS)との2つの下位分類があり、いずれも本発明の治療薬の対照である。
本発明の治療薬は、機能性ディスペプシアの症状のうち、特に、「つらいと感じる食後のもたれ感」及び/または「早期飽満感」が改善される治療薬として提供される。
(有効成分)
本発明の治療薬は、
(i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ/又は
(ii)アルミニウムを含有する
化合物を有効成分とする。
α2アンタゴニスト作用を有する化合物は、実施例で実証するように、食後のもたれ感の原因となる胃排出遅延を改善できるとの観点から、機能性ディスペプシアの治療薬の有効成分として好ましい。
「α2アンタゴニスト作用を有する」とは、アドレナリン受容体のα2サブタイプ(α2受容体)に対して、その機能を遮断できる作用を有することを意味する。「α2アンタゴニスト」は、「α2遮断薬」と換言することができる。
アドレナリン及び/又はノルアドレナリンを受容できるアドレナリン受容体のうち、イソプレテノールに対する感受性が低い一群がα受容体と呼ばれる。α受容体は、α1とα2のサブタイプにさらに分類される。α2サブタイプは、抑制性の三量体Gタンパク質(Gi)と共役して作動すると考えられている。
α2アンタゴニスト作用を有する化合物の具体例としては、アルジオキサ、ヨヒンビン、フェノキシベンザミン、イダゾキサン、エファロキサン、アチパメゾールなどが例示される。
アルミニウムを含有する化合物は、早期飽満感を改善できるとの観点から、機能性ディスペプシアの治療薬の有効成分として好ましい。本明細書において、「アルミニウムを含有する」とは、水酸化アルミニウム(Al2(OH)3)との縮合物若しくは水酸化アルミニウムの塩として表される化合物を指す。
アルミニウムを含有する化合物の具体例としては、アルジオキサ、スクラルファート、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが例示される。
本発明の好ましい態様においては、本発明の治療薬は、
(i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ
(ii)アルミニウムを含有する
化合物を有効成分とする。
このような化合物として、アルジオキサが例示される。アルジオキサは、下記式(1)で表される、アラントインと水酸化アルミニウムとが縮合した構造を有する化合物である。
アルジオキサは、胃粘膜において、アラントインと水酸化アルミニウムとに代謝されると考えられている。アルジオキサのアラントイン部分若しくはそのアラントイン代謝物は胃排出遅延の改善に寄与し、かつ、水酸化アルミニウム部分若しくはその水酸化アルミニウム代謝物は早期飽満感の改善に寄与するとの観点から、機能性ディスペプシアの治療薬の有効成分として特に好ましい。
(治療薬)
本発明の治療薬は、その形態(投与形態)は特に限定されるものではない。有効成分をそのまま用いてもよく、好適には医薬組成物として提供される。さらに本発明の治療薬は、公知の手法により製剤化することができる。上記製剤の具体例として、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤などの固形製剤、および液剤、懸濁剤、乳剤、注射剤などの液体製剤が挙げられるが、これらに限定されない。製剤の形態に応じて、適宜薬学的に許容される担体および添加剤を加えることができる。上記担体および添加剤の具体例として、賦形剤、充填剤、結合剤、付湿剤、香料、着色剤などが挙げられるが、これらに限定されない。製剤が液体製剤である場合は、公知の薬学的に許容される溶媒、例えば生理食塩水、緩衝作用を有する溶液などを用いることができる。本発明の治療薬が医薬組成物として提供される場合は、有効成分の含有量は特に限定されるものではないが、医薬組成物の重量全体に対して、1〜90重量%とすることができる。
本発明の治療薬の投与方法は、治療効果が得られることを限度として、当業者が適宜設定することができ、特に制限されるものではない。投与方法の好ましい態様として、注射投与(静脈注射、皮下注射、筋肉注射、腹腔注射、患部への注射など)、経口投与、座薬投与、経皮投与(塗布など)などが例示される。投与の簡便さや投与対象への負担が少ないとの観点から、投与方法として経口投与が特に好ましいが、これに限定されるものではない。
本発明の治療薬の投与対象は、機能性ディスペプシアの治療を必要とするヒト、非ヒト哺乳類(イヌ、ネコ、ネズミ、ラット、ハムスター、ウサギ、ウシ、類人猿など)、鳥類などとすることができる。投与対象がヒトである場合は、投与対象となるヒトは当業者が適宜選択することができる。好適なヒトとしては、機能性ディスペプシアの治療を必要としている患者が挙げられる。機能性ディスペプシアの治療を必要としている患者は、機能性ディスペプシアとして診断を受けた患者のみならず、潜在的な機能性ディスペプシアの患者をも包含する。
また、投与対象がヒトである場合、体重、年齢、性別等は特に限定されるものではない。
本発明の治療薬の1日当りの投与量は、特に限定されるものではない。投与対象がヒトである場合、投与量は当該被投与対象(患者)の症状、体重、年齢、性別等に応じて適宜設定することができるが、通常成人1日当り有効成分を約0.001mg〜10g程度、好ましくは約0.01mg〜2g程度の範囲から選ぶことができる。当該治療薬は1日1回投与に限らず、数回に分けて投与することができる。
(治療方法など)
本発明はまた、機能性ディスペプシアの治療方法をも提供する。本発明の治療方法は、前述の
(i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ/又は
(ii)アルミニウムを含有する
化合物である有効成分を、機能性ディスペプシアの治療を必要としている者へ投与する工程を含む。上記化合物を投与する工程の具体的な投与形態、投与方法、投与対象、投与量等は、好適に前述のものとすることができる。
本発明はまた、機能性ディスペプシアの治療に使用するための、前述の有効成分である(i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ/又は
(ii)アルミニウムを含有する
化合物をも提供する。前述の機能性ディスペプシアが進行し得るヒトを含む哺乳類、鳥類などの投与対象へ、例えば、前述の投与形態、投与方法、投与対象、投与量等にて使用することで、機能性ディスペプシアを抑制または予防することができる。
本発明はまた、機能性ディスペプシアの治療に用いるための医薬を製造するための、前述の有効成分である
(i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ/又は
(ii)アルミニウムを含有する
化合物の使用をも提供する。医薬は医薬組成物であってもよく、好適には前述の投与形態のものである。製造される医薬は、前述の機能性ディスペプシアの治療を必要としている者へ、例えば、前述の投与形態、投与方法、投与対象、投与量等にて使用することで、機能性ディスペプシアを治療することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び図中、数値は平均値±標準偏差(mean ± S.E.M.)により表す。3以上の群間の差異はテューキー(Tukey)検定と二元配置分散分析(two-way ANOVA)とを併用して、及び2つの群間の差異はスチューデントのt検定(Student's t-test)により、それぞれ評価した。p<0.05の場合、有意差があると判定をした。
(実施例1:胃排出遅延を回復する化合物のスクリーニング)
臨床使用をされている209の医薬の中から、クロニジン(Clonidine)誘発の胃排出遅延を回復できる化合物をスクリーニングした。
<方法>
(フェノールレッド・マーカー法)
18時間絶食(水分は自由に給与される。)させたICRマウス(8週齢、雄)に、各試験化合物を臨床で使用される用量の30倍の用量で含む、1% メチルセルロース溶液を10 ml/kgの用量で腹腔内に投与した。
試験化合物の投与後1時間後、各マウスに、クロニジンを100 μg/kgの用量で皮下投与して、胃排出遅延を誘発した。文献:Kawachi M et al. Eur J Pharmacol 666:218-225 (2011).の記載に準じて、胃排出をフェノールレッド法により評価した。具体的には、クロニジン投与の5分後に、0.05 % フェノールレッドを含有する1.5 %カルボキシメチルセルロール・ナトリウム塩溶液をマウス1匹に0.5 ml胃内投与した。20 分後にマウスを殺処分した上で胃を採取し、胃内容物を回収した。胃内容物は、10 mlの0.1 M NaHCO3溶液で処理した後に、3,000 rpm で15分間遠心分離した。上清に含まれるフェノールレッドの量を、558 nmでの吸光度を測定することで定量した。吸光度の測定には、マイクロプレートリーダーMultiscan GO(Thermo Scientific社製)を使用した。
胃内投与直後に回収した胃内容物の試料を、標準試料として用いた。
Gastric emptying (%)(胃排出)は、次の式に基づいて求めた。
(1 − 試料中のフェノールレッドの量/標準試料中の試料中のフェノールレッドの量) × 100
<結果>
胃排出遅延の回復程度及び報告されている効能及び安全性についての臨床データに基づいて、アルジオキサを今後の試験対象化合物として選択した。
(実施例2:アルジオキサ投与による胃排出遅延の回復の評価(フェノールレッド・マーカー法))
アルジオキサ投与による、クロニジン誘発の胃排出遅延の回復を、フェノールレッド・マーカー法により評価した。
<方法>
(フェノールレッド・マーカー法)
アルジオキサを67 mg/kg及び200 mg/kgの用量で含む、1% メチルセルロース溶液(ビークル)を10 ml/kgの用量で経口投与したマウスについて、実施例1の方法に準じて、フェノールレッド法によりクロニジン誘発の胃排出遅延の回復を評価した。クロニジンを投与せず胃排出遅延を誘発しなかったマウス(Control)、ビークルのみを投与したマウス(Vehicle)及び5 mg/kgの用量でシサプリドを投与したマウス(Cisapride)をそれぞれ対照群とした。
<結果>
結果を、図1Aに示す。クロニジン投与により胃排出の遅延が誘発され、アルジオキサの事前の投与がクロニジン誘発の胃排出遅延を、投与量に依存して回復することが明らかとなった。シサプリドを事前投与したマウスについても、同様の回復の効果が観察されたが、その効果はアルジオキサよりも弱かった。
(実施例3:アルジオキサ投与による胃排出遅延の回復の評価(13C酢酸呼気試験法))
アルジオキサ投与による胃排出遅延の回復を、13C酢酸呼気試験法により評価した。
13C酢酸呼気試験法は、経口投与された[13C]標識酢酸は、胃ではなく十二指腸に急速に吸収され、13CO2に代謝されるため、呼気中の13CO2の量の経時プロファイルを観察することにより、胃排出能を推定することができることに基づく。
<方法>
13C酢酸呼気試験法)
18時間絶食(水分は自由に給与される。)させたICRマウス(8週齢、雄)に、アルジオキサを200 mg/kgの用量で含む、1% メチルセルロース溶液を10 ml/kgの用量で経口投与した。投与1時間後に、各マウスに、クロニジンを30 μg/kgの用量で皮下投与して、胃排出遅延を誘発した。
文献:Matsumoto K et al. Biol Pharm Bull 31:1917-1922 (2008).の記載に準じて、胃排出を13C酢酸呼気試験法により評価した。評価には、ボトルトップフィルターユニット(動物室)(Steritopフィルターユニット、ミリポア社製)、ペリスタポンプMasterflex(Cole-Palmer Instruments社製)及び呼気サンプリングバッグ(大塚製薬社製)から構成されている装置を用いた。動物室は、マウスが転回をするのに十分な幅があった。
クロニジン投与の15分後に、[13C]標識した酢酸を16 mg/kgの用量で含む、ラコールを5 ml/kgの用量で、マウスに胃内投与した。[13C]標識した酢酸を含むラコールを投与後5、10、15、20、25、30、40、50、60及び90分後に、13CO2を含む呼気を回収した。換気量は、50ml /分であった。
集めた呼気中の13CO2の含有量は、POC Oneアナライザ(大塚電子社製)を用いて測定した。値は、13CO2/12CO2(Δ13CO2(‰))の比について、各サンプルと標準大気(5% CO 2及び95 %O2)との間の差として示す。胃排出を評価するために、gastric half emptying time (T1/2)(Δ13CO2(‰)についてAUC90 minの半分が得られた時間)をも求めた。
<結果>
結果を、図1B及びCに示す。図1Cに示すように、クロニジンの投与はT1/2の値を延長し、これはアルジオキサの事前投与によって部分的に回復した。
(実施例4:アルジオキサの胃保護作用と胃排出促進効果との相関(1))
アルジオキサが胃保護作用を介して胃排出の促進の効果を発揮しているかを検証するために、胃保護作用を発揮するために必要なアルジオキサの用量を試験した。
<方法>
(胃損傷アッセイ)
文献:Takeuchi K et al. Dig Dis Sci 31:1114-1122 (1986).及び文献:Tomisato W et al. Biochem Pharmacol 67:575-585 (2004).に記載の方法に準じて、胃潰瘍応答を評価した。18時間絶食(水分は自由に給与される。)させたICRマウス(8週齢、雄)に、アルジオキサを200, 400, 800及び1600 mg/kgの用量で含む、1% メチルセルロース溶液を10 ml/kgの用量で経口投与した。投与1時間後に、各マウスに、インドメタシン(Indomethacin)を20 mg/kgの用量で経口投与して、胃潰瘍を誘発した。8時間後にマウスを殺処分した上で胃を採取し、動物が受けた処置を知らない観察者により、胃粘膜病変の面積を測定した。すべての病変の面積を平方ミリメートル単位で測定し、病変の面積の合計値を求めることで、病変スコア(Lesion index(mm2))を計算した。
インドメタシンを投与せず胃潰瘍を誘発しなかったマウス(Control)、ビークルのみを投与したマウス(Vehicle)、50及び200 mg/kgの用量でGGA(ゲラニルゲラニルアセトン(テプレノン).)を投与したマウス(GGA)並びに1, 10及び55.9 mg/kgの用量でスクラルファートを投与したマウス(Sucralfate)それ対照群とした。
<結果>
結果を図2Aに示す。図1Aに示すとおり、200 mg/kgの用量でのアルジオキサの投与により、クロニジン誘発の胃排出遅延が回復した。一方、図2Aに示すとおり、インドメタシン誘発の胃潰瘍を抑制するためには、1600 mg/kgの用量でのアルジオキサの投与が必要であることが明らかとなった。
(実施例5:アルジオキサの胃保護作用と胃排出促進効果との相関(2))
アルジオキサが胃保護作用を介して胃排出の促進の効果を発揮しているかを検証するために、他の胃保護作用を有する化合物について、クロニジン誘発の胃排出遅延に対する効果を評価した。
<方法>
投与する化合物を50及び200 mg/kgの用量でのGGA、並びに、1,及び10 mg/kgの用量でのスクラルファートとした以外は、実施例2に記載の方法に準じて、フェノールレッド・マーカー法により、化合物投与による胃排出遅延の回復を評価した。
<結果>
結果を図2Bに示す。図2Aに示す胃潰瘍を抑圧可能な用量でのGGA又はスクラルファートの事前の投与では、クロニジン誘発の胃排出遅延を、投与量に依存して回復することができなかった。
(実施例6:胃排出に対するアラントイン投与及び水酸化アルミニウム投与の効果)
アルジオキサは、ジヒドロキシアルミニウムアラントイナート(dihydroxyaluminum allantoinate)であり、胃粘膜においてアラントインと水酸化アルミニウムへと代謝されることが報告されている。そこで、アラントイン及び水酸化アルミニウムの、クロニジン誘発の胃排出遅延に対する効果を評価した。
<方法>
投与する化合物を145 mg/kgの用量でのアラントイン、又は、71.5 mg/kgの用量での水酸化アルミニウムとした以外は、実施例2に記載の方法に準じて、フェノールレッド・マーカー法により、化合物投与による胃排出遅延の回復を評価した。
145 mg/kgのアラントイン、及び、71.5 mg/kgの水酸化アルミニウムは、モル数換算で200 mg/kgのアルジオキサに相当する。
<結果>
結果を図3に示す。アルジオキサ投与群及びアラントイン投与群は、ビークルのみを投与した対照群と比較して有意差ある胃排出遅延の回復が観察された(P<0.05)。一方、水酸化アルミニウム投与群においては、有意差は観察されなかった(n.s.)。
<考察>
図2及び図3の結果は、アルジオキサはその胃保護効果とは独立に、アルジオキサのアラントイン代謝物若しくはアラントイン部分を介して、胃排出の促進を発揮することを示唆している。即ち、胃粘膜保護薬の内、胃排出を促進するのはアルジオキサに特徴的であることが分かった。
(実施例7:拘束ストレス誘発の胃排出遅延に対するアルジオキサ投与の効果)
拘束ストレス誘発の胃排出遅延(restraint stress-induced delayed gastric emptying)に対するアルジオキサの効果を評価した。
<方法>
(拘束ストレス誘発の胃排出遅延)
18時間絶食(水分は自由に給与される。)させたICRマウス(8週齢、雄)に、200 mg/kgの用量のアレジオキサを含む、1% メチルセルロース溶液を10 ml/kgの用量で経口投与した。ビークルのみを投与したマウス(Vehicle)、7.7 mg/kgの用量のモサプリドを投与したマウス(Mosapride)及び5 mg/kgの用量のシサプリドを投与したマウス(Cisapride)をそれぞれ対照群とした。
試験化合物の投与後1時間後、各マウスを個別に50mlのファルコンチューブ(Becton Dickinson社製)中に1時間入れ、拘束ストレス(RS(Restraint Stress))を与えた。チューブは、マウスを呼吸は可能とするものの自由に移動はできない程度に拘束する程度に小さかった。対照マウス(Control)は、ケージ内を自由に移動させた。
その後、実施例2に記載の方法に準じてフェノールレッドを、又は、実施例4に記載の方法に準じて[13C]標識した酢酸を投与した。実施例2に記載の方法、又は、実施例4に記載の方法に準じて、胃排出を評価した。
<結果>
結果を図4A、B及びCに示す。拘束ストレス誘発の胃排出遅延においても、アルジオキサの投与によって部分的な回復が、フェノールレッド・マーカー法による評価(図4A)及び13C酢酸呼気試験法による評価(図4B、C)のいずれにおいても観察された。
(実施例8:胃排出遅延のないマウスに対するアルジオキサ投与の効果)
胃排出遅延を誘発していないマウスに対するアルジオキサの効果を評価した。
<方法>
18時間絶食(水分は自由に給与される。)させたICRマウスに、200 mg/kgの用量のアルジオキサを含む、1% メチルセルロース溶液を10 ml/kgの用量で経口投与した。ビークルのみを投与したマウス(Vehicle)、7.7 mg/kgの用量のモサプリドを投与したマウス(Mosapride)及び5 mg/kgの用量のシサプリドを投与したマウス(Cisapride)をそれぞれ対照群とした。
実施例2に記載の方法に準じて、フェノールレッド・マーカー法により胃排出を評価した。
<結果>
結果を図4Dに示す。シサプリド投与群及びモサプリド投与群は、ビークルのみを投与した対照群と比較して、有意差のある胃排出の促進が観察された(P<0.05)。一方、アルジオキサ投与群においては、有意差は観察されなかった(n.s.)。
(実施例9:胃排出に対するアルジオキサの促進効果の作用機序(1))
胃排出に対するアルジオキサの促進効果の作用機序を検証するために、5-HT4受容体アンタゴニストの投与条件下で、アルジオキサ投与による、クロニジン誘発の胃排出遅延の回復を評価した。
<方法>
5-HT4受容体の選択的アンタゴニストであるGR113808 を10 mg/kgの用量で、アルジオキサ投与の5分前に投与する以外は、実施例2に記載のに方法に準じて試験を行った。ビークルのみを投与したマウス(Vehicle)及び5 mg/kgの用量のシサプリドを投与したマウス(Cisapride)をそれぞれ対照群とした。GR113808を投与しないマウスについても、同様に試験をした。
<結果>
結果を図5Aに示す。GR113808投与群においても、アルジオキサの事前投与によりクロニジン誘発の胃排出遅延が回復した。一方、シサプリドの投与によっては、クロニジン誘発の胃排出遅延の回復は観察されなかった。
(実施例10:胃排出に対するアルジオキサの促進効果の作用機序(2))
胃排出に対するアルジオキサの促進効果の作用機序を検証するために、アルジオキサ投与による、ドパミン受容体アンタゴニスト誘発の胃排出に対する効果を評価した。
の投与条件下で試験を行った。
<方法>
クロニジンに替えてドパミン受容体のアゴニストであるアポモルヒネ(Apomorphine)を10 mg/kgの用量で、実施例2に記載のに方法に準じて試験を行った。ビークルのみを投与したマウス(Vehicle)及び200 mg/kgの用量のイトプリドを投与したマウス(Itopride)をそれぞれ対照群とした。
<結果>
結果を図5Bに示す。アルジオキサの事前投与によっては、アポモルヒネ誘発の胃排出遅延は回復しなかった。一方、ドパミン受容体阻害薬であるアポモルヒネの事前投与は、アポモルヒネ誘発の胃排出遅延を回復した。
<考察>
図4の結果は、アルジオキサは拘束ストレスによる胃排出遅延を改善することを示しており、FD治療薬としてのアルジオキサの有効性を示す結果である。一方、図4で明らかになった、アルジオキサが通常の胃排出には影響を与えないことは、FD治療薬としてのアルジオキサの安全性を示している。図5の結果は、アルジオキサによる胃排出の促進は、5-HT4受容体やドパミン受容体とは独立した作用機序によるものであることを示唆している。
(実施例11:胃排出に対するアルジオキサの促進効果の作用機序(3))
胃排出に対するアルジオキサの促進効果の作用機序を検証するために、アルジオキサ投与による細胞内のcAMP濃度(Intracellular cAMP levels)の変化を評価し、アドレナリン受容体のα2サブタイプの関与を検証した。
アドレナリン受容体のα2サブタイプの活性化は、細胞内のcAMP濃度の低下と連関していることが知られている。
<方法>
ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞を、10%FBS、100 U/ mlのペニシリン及び100 μg/ mlのストレプトマイシンを添加したDulbecco's modified Eagle's medium/Ham's F-12 medium中で、95%空気および5%CO 2の加湿雰囲気中、温度37℃の条件下で培養した。
2×105 cells/wellの細胞密度で24ウェルプレートに播種し、まずは48時間インキュベートし、その後試験化合物、並びに、10 μMクロニジン、5 μMフォルスコリン及び1 mMのIBMXの存在下で、37℃で15分間インキュベートした。インキュベーションは、培地を250 μlを氷冷0.1N HClと交換することによって停止させた。室温で振盪しながら20分間インキュベートした後、溶液の一部を各ウェルから回収し、遠心分離した。上清中のcAMPの量を、製造者の指示書に従い、cAMP用ELISAキット(ENZO Life Sciences社製)を用いて測定した(n=3)。
<結果>
結果を図6Aに示す。クロニジンの添加により、細胞内のcAMP濃度は低下するところ、アルジオキサの添加により、アルジオキサの濃度に依存して、cAMP濃度の低下は抑制される(左パネル)。α2アンタゴニストであるヨヒンビンの添加によっても、同様の効果が確認できた。このような効果には、アルジオキサのアラントイン部分が寄与することも明らかとなった(右パネル)。
(実施例12:胃排出に対するアルジオキサの促進効果の作用機序(4))
胃排出に対するアルジオキサの促進効果の作用機序を検証するために、ヒトアドレナリン受容体α2サブタイプとアルジオキサとの結合親和性を評価した。
<方法>
(フィルタ結合アッセイ)
フィルタ結合アッセイは、文献:Gavalda A et al. Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 331:740-751.に記載の方法に準じて行った。ヒトα2アドレナリン受容体を発現するCHO-K1細胞から膜画分を調製した。200μl中のPBS緩衝液中で、1ウェルあたりのタンパク質濃度を10 gとした前記膜画分、2 nMの[3H]標識クロニジン(85.5 Ci/mmol)及び試験化合物を室温で2時間インキュベートした。各試験化合物について、10-10から3×10 -5 Mの濃度の範囲で、3連で試験を行い、競合曲線を生成した。
非特異的な結合は、2.5 μMアトロピン(atropin)の存在下で測定した。
予めGF/ CフィルタFiltermat A(PerkinElmer Life and Analytical Sciences社製)を、1.0% polyethylenimineを添加した洗浄バッファー(50mMTris/HCl(pH7.4), 100mM NaCl)中で1時間プレインキュベートした、プレインキュベートしたフィルタに各試料を通過させ、氷令洗浄バッファーで4回洗浄した。フィルタを30分間乾燥させた後に、MeltiLex A(melt-on scintillation sheet)(PerkinElmer Life and Analytical Sciences社製)に装着した。フィルタ上に残存する放射能は、マイクロプレートシンチレーションカウンターMicroBeta Trilux(PerkinElmer Life and Analytical Sciences社製)を用いてモニタした。
平衡状態での親和度は、文献:Cheng Y and Prusoff WH. Biochem Pharmacol 22:3099-3108 (1973).に記載の方法に準じて、実験的に求められたIC50値を実験的に求められたNMSのヒトα2アドレナリン受容体のKd値とNMSの濃度とで補正をすることで、平衡アンタゴニスト解離定数(Ki)として求めた。Ki値は、3つの独立した曲線から求めた。すべての調整は、Prism(GraphPad Software社製)を用いて行った。
<結果>
結果を図6Bに示す。アルジオキサは、ヒトアドレナリン受容体α2サブタイプとクロニジンとの結合を、量依存的に阻害することが明らかとなった。
(実施例13:胃排出に対するアルジオキサの促進効果の作用機序(5))
胃排出に対するアルジオキサの促進効果の作用機序を検証するために、ヨヒンビン投与による、クロニジン誘発の胃排出遅延の回復を評価した。
<方法>
アルジオキサに替えて、1 mg/kg及び10 mg/kgの用量でヨヒンビン(Yohimbine)を投与する以外は、実施例2及び実施例7の記載に準じて試験をした。
<結果>
結果を図6C及びDに示す。ヨヒンビンの事前の投与が、拘束ストレス誘発の胃排出遅延(図6C)及びクロニジン誘発の胃排出遅延(図6D)を、投与量に依存して回復することが明らかとなった。
<考察>
図6A〜Dの結果は、アルジオキサは、アドレナリン受容体のα2サブタイプに対するアンタゴニスト活性を介して、胃排出の促進の効果を発揮していることを示唆している。
(実施例14:胃受容性に対するアルジオキサ投与の効果の評価)
胃受容性に対するアルジオキサ投与の効果を検証するために、ストレス条件下のラットの胃受容性に対するアルジオキサ投与の効果を評価した。
ここで、胃受容性(gastric accommodation)(適応性弛緩(adaptive relaxation))は、膨満感の指標となる。
<方法>
文献:Uchida M and Shimizu K. J Smooth Muscle Res 48:97-104 (2012).に記載の方法に準じて、胃受容性(gastric accommodation)を評価した。18時間絶食させたSprague-Dawleyラット(12週齢、雄)に、試験化合物を2.5 ml/kgの用量で予め経口投与した。1時間後、1.5 g/kgの用量のウレタン(カルバミン酸エチル)で麻酔を施し、ポリエチレン袋(最大容量 5 ml, 最大直径 3 cm)を、口を経由して胃に導入した。ポリエチレン袋は、ポリビニル製の管を備えていた。最大量の空気をバルーンに送り込み、バルーンを胃の中に配置させ、直後に管の一方を大気に向けて開放した。10分間の回復期間を経た後、バルーンの管を圧調節器Barostat Distender IIR(Starmedical社製)に接続した。バルーン内の圧力(Balloon Pressure)を1分間隔で段階的に上昇させると、バルーンの体積は圧力変化に伴い徐々に増加し、やがてプラトーに達した。この段階で、増加した容積を、適応性弛緩(adaptive relaxation)(受容性(accomodation))と定義した。
ラップ拘束ストレス(wrap restraint stress(WRS))は、文献:Ait-Belgnaoui A et al. Gut 55:1090-1094 (2006).の記載に準じて、ラットに与えた。
<結果>
結果を図7に示す。
図7Aに示すとおり、ラップ拘束ストレスを与えない条件下では、アルジオキサ投与群において、胃受容性について対照と比べて有意差は観察されなかった。これに対して、アコチアミド(Acotiamide)投与群では、ラップ拘束ストレスを与えない条件下において、胃受容性の増大が観察された。
図7Bに示すとおり、ラップ拘束ストレス(WRS)を与えると、対照と比べて胃受容性が低減する。
図7Cに示すとおり、アルジオキサ又はアコチアミドを事前に投与した群は、ラップ拘束ストレスを与えた条件下において、胃受容性の回復が観察される。
図7Dに示すとおり、胃受容性に対する効果は、アルジオキサ投与群及び水酸化アルミニウム投与群において観察されたが、アラントイン投与群では観察されなかった。
<考察>
図7の結果は、アルジオキサはストレス条件下において胃受容性を回復させ、その効果は、胃排出を促進する効果とは独立して、水酸化アルミニウム部分又は水酸化アルミニウム代謝物を介して発揮されていることを示唆している。

Claims (12)

  1. (i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ/又は
    (ii)アルミニウムを含有する
    化合物を有効成分とする、機能性ディスペプシアの治療薬。
  2. (i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ
    (ii)アルミニウムを含有する
    化合物を有効成分とする、請求項1に記載の機能性ディスペプシアの治療薬。
  3. アルジオキサを有効成分とする、請求項1又は2に記載の機能性ディスペプシアの治療薬。
  4. 機能性ディスペプシアの治療に用いるための医薬を製造するための、
    (i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ/又は
    (ii)アルミニウムを含有する
    化合物の使用。
  5. 前記化合物が、
    (i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ
    (ii)アルミニウムを含有する
    化合物である請求項4に記載の使用。
  6. 前記化合物が、アルジオキサである、請求項4又は5に記載の使用。
  7. 機能性ディスペプシアの治療に使用するための、
    (i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ/又は
    (ii)アルミニウムを含有する
    化合物。
  8. (i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ
    (ii)アルミニウムを含有する
    化合物である請求項7に記載の化合物。
  9. アルジオキサである、請求項7又は8に記載の化合物。
  10. (i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ/又は
    (ii)アルミニウムを含有する
    化合物の有効量を投与することを特徴とする機能性ディスペプシアの治療方法。
  11. (i)α2アンタゴニスト作用を有し、かつ
    (ii)アルミニウムを含有する
    化合物を投与するものである請求項10に記載の治療方法。
  12. アルジオキサを投与するものである請求項10又は11に記載の治療方法。
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