JPWO2016079922A1 - 油井用高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法 - Google Patents

油井用高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法 Download PDF

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Abstract

優れた耐食性と低温靭性とを有する油井用高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法を提供する。質量%で、C:0.005〜0.05%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.2〜1.8%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、Cr:15.5〜18.0%、Ni:1.5〜5%、Mo:1.0〜3.5%、V:0.02〜0.2%、Al:0.001〜0.050%、N :0.001〜0.15%、O:0.006%以下を、特定な関係を満足するように調整して含む組成の鋼素材とし、鋼管素材加工工程および熱間加工工程における加熱を、該加熱時のオーステナイト相が少なくとも体積率で10%以上となる温度条件で加熱し、継目無鋼管としたのち、700℃以下の温度に加熱する焼戻処理を施す。

Description

本発明は、炭酸ガス(CO2)、塩素イオン(Cl)等を含み、極めて厳しい腐食環境下の油井およびガス井用として好適な、油井用継目無鋼管に係り、とくに、高強度でかつ、優れた耐食性と優れた低温靭性とを兼備する、油井用高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法に関する。
近年、世界的なエネルギー消費量の増大による、原油等のエネルギー価格の高騰や、石油資源の枯渇という観点から、従来、省みられなかったような高深度の油田(深層油田)、硫化水素等を含む、いわゆるサワー環境下にある厳しい腐食環境の油田、ガス田や、さらには極北におけるような厳しい気象環境下の油田やガス田、の開発が盛んに行われている。このような環境下で使用される鋼管として、高強度で、かつ優れた耐食性(耐サワー性)、さらには優れた低温靭性を兼ね備えた鋼管が要求されている。また、鋼管の肉厚も、薄肉から厚肉まで様々なものが要求されている。
従来、炭酸ガスCO2、塩素イオンCl等を含む環境下の油田、ガス田では、採掘に使用する鋼材として、13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼が多く使用されてきた。しかし、13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼は、サワー環境において十分な耐食性を保持していないため、高強度化および耐食性(耐サワー性)の向上が要望されてきた。このような要望に対して、例えば、特許文献1には、耐食性に優れた油井用高強度ステンレス鋼管およびその製造方法が記載されている。特許文献1に記載された技術では、質量%で、C:0.005〜0.05%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.2〜1.8%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、Cr:15.5〜18%、Ni:1.5〜5%、Mo:1〜3.5%、V:0.02〜0.20%、N:0.01〜0.15%、O:0.006%以下を含有し、かつCr+0.65Ni+0.6Mo+0.55Cu−20C≧19.5およびCr+Mo+0.3Si−43.5C−0.4Mn−Ni−0.3Cu−9N≧11.5を満足する組成を有する鋼管素材を加熱し、熱間加工により造管して、造管後、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却して所定寸法の継目無鋼管とし、ついで継目無鋼管に、850℃以上の温度に再加熱したのち空冷以上の冷却速度で100℃以下まで冷却し、ついで700℃以下の温度に加熱する焼入れ−焼戻処理を施すことを特徴としている。
この高強度ステンレス継目無鋼管は、体積率で10〜60%のフェライト相を含み残部がマルテンサイト相である組織を有し、降伏強さ:654MPa以上の高強度で、CO2やClを含む、230℃までの高温の厳しい腐食環境下においても充分な耐食性を有し、しかもシャルピー衝撃試験の−40℃での吸収エネルギーが50J以上の高靭性を有するとしている。
特許第5109222号公報(特開2005-336595号公報)
特許文献1に記載された技術では、ほとんどの熱間加工が、フェライト相とオーステナイト相の二相温度域で行なわれている。フェライト相とオーステナイト相の分率は、加熱保持温度や加熱時間によって異なるが、一般に、高温になるほど、フェライト相の分率が高くなる。フェライトは、粒成長が速いため、高温に保持されると、初期粒が微細であっても粗粒化しやすい。
一般的には、熱間加工を施すことにより、フェライト粒の分断および細粒化は可能である。しかし、厚肉材では、熱間加工を施しても、とくに肉厚中心部に十分な歪を付与しにくいため、肉厚中心部ではフェライト粒の分断ができず、短時間の高温保持や熱間圧延後の放冷によっても、フェライト粒の粗大化が生じることがある。粗大なフェライト粒、とくに連結した粗大フェライト粒は、脆性き裂の伝播経路となりやすい。このため、例えば、フェライト相の分率の高い、高温で圧延された鋼管では、とくに、肉厚中央部で粗大フェライト粒を含む組織が形成され、靭性が低下している場合が多い。また、フェライト粒が粗大化すると、強度にも影響し、とくに降伏強さが低下する場合がある。
このようなことから、ステンレス継目無鋼管において、所望の強度および靭性を確保するためには、熱間圧延条件やその後の熱処理における温度管理を、適切に行なう必要がある。しかしながら、特許文献1には、素材の高温加熱時や熱間加工時の温度管理についての言及は無く、素材の高温加熱時や熱間加工時の温度が、ステンレス継目無鋼管の低温靭性に及ぼす影響についての言及もされていない。しかも、特許文献1に記載された技術が対象としている継目無鋼管は、高々、肉厚12.7mmまでの鋼管であり、そのため、特許文献1には、肉厚13mmを超えるような厚肉鋼管についてまでの言及はない。
本発明は、かかる従来技術の状況に鑑み、高強度で、優れた耐食性を有し、しかも低温靭性にも優れた、油井用高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法を提供することを目的とする。
なお、ここでいう「高強度」とは、降伏強さYS:654MPa(95ksi)以上を保持する場合をいい、「優れた低温靭性」とは、JIS Z 2242の規定に準拠したシャルピー衝撃試験における試験温度:−40℃での吸収エネルギーvE−40が50J以上である場合をいうものとする。
また、ここで言う「優れた耐食性」とは、オートクレーブ中に保持された試験液:20質量%NaCl水溶液(液温:230℃、100気圧のCO2ガス雰囲気)中に、腐食試験片を浸漬し、浸漬時間を7日間(168時間)として実施した場合の腐食速度が0.12mm/y未満の場合をいうものとする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、フェライト−マルテンサイトの二相組織を有する高強度ステンレス継目無鋼管の低温靭性におよぼす各種要因について鋭意研究した。その結果、上記したような二相組織を呈するステンレス継目無鋼管では、フェライト相の微細化が、低温靭性向上に最も有効な手段であることに、思い至った。
上記したようなフェライト−マルテンサイトの二相組織を有する高強度ステンレス継目無鋼管の製造に際して、通常、所定の組成に調整された鋼管素材を、所定の加熱温度域まで加熱し、穿孔圧延等の熱間加工を行う。所定の加熱温度域では、鋼管素材は、フェライトとオーステナイトの二相からなる組織を呈するが、加熱温度が上昇するにしたがい、フェライト相の分率が高くなる。しかも、フェライト粒は、高温でかつ長時間保持することにより、急激に粒成長して、粗大フェライト粒となりやすい。粗大フェライト粒が形成されると、低温靭性が低下する。
そこで、本発明者らは、この粗大フェライト粒の形成を防止する方策についてさらに研究した。その結果、オーステナイト相分率が、体積率で10%未満となる温度域に加熱されると、フェライト粒の成長速度が急激に増加し始めることを知見した。この知見に基づき、本発明者らは、継目無鋼管の製造における加熱工程で、オーステナイト相分率が、体積率で10%以上存在する温度域で加熱すれば、加熱中のフェライト粒の粒成長を抑制できることを見出した。
継目無鋼管の製造におけるすべての加熱工程で上記した加熱を適用し、加熱中のフェライト粒の成長が抑制できれば、引き続く熱間圧延工程において、フェライト粒を分断および細粒化でき、組織の微細化を容易に達成できることを知見した。
本発明は、かかる知見に基づき、更なる検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎの通りである。
(1)鋼素材に、加熱し熱間加工して鋼管素材とする鋼管素材加工工程と、前記鋼管素材に、加熱し、造管、成形し、継目無鋼管とする熱間加工工程と、前記継目無鋼管に熱処理を行なう熱処理工程と、を含む継目無鋼管の製造方法であって、
前記鋼素材は、質量%で、C :0.005〜0.05%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.2〜1.8%、P :0.03%以下、S :0.005%以下、Cr:15.5〜18.0%、Ni:1.5〜5.0%、Mo:1.0〜3.5%、V :0.02〜0.2%、Al:0.001〜0.050%、N :0.001〜0.15%、O :0.006%以下を、次(1)式および次(2)式
Cr+0.65Ni+0.6Mo+0.55Cu−20C ≧ 19.5 ………(1)
Cr+Mo+0.3Si−43.5C−0.4Mn−Ni−0.3Cu−9N ≧ 11.5 ………(2)
(ここで、Cr、Ni、Mo、Cu、C、Si、Mn、N:各元素の含有量(質量%))
を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、前記鋼管素材加工工程および前記熱間加工工程における加熱を、該加熱時のオーステナイト相が、少なくとも体積分率で10%以上となる温度条件で行い、
前記熱処理工程における熱処理では、700℃以下の温度に加熱する焼戻処理を施す降伏強さYS:654MPa以上である油井用高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法。
(2)(1)において、前記熱処理工程における熱処理では、前記焼戻処理の前に、850℃以上の温度に再加熱したのち、空冷以上の冷却速度で100℃以下まで冷却する焼入れ処理を施す油井用高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、次A群〜C群のうちから選ばれた1群または2群以上を含有する油井用高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法。
A群:Cu:3.5%以下、
B群:Nb:0.2%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下、W:3.0%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、
C群:Ca:0.01%以下、REM:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種
本発明によれば、高強度で、優れた耐食性を有し、しかも低温靭性にも優れた、油井用高強度ステンレス継目無鋼管を、容易に製造でき、産業上格段の効果を奏する。本発明によれば、比較的少ない加工量でも、高強度ステンレス継目無鋼管の肉厚中心部まで、フェライト粒の微細化が可能となり、肉厚中心位置での加工量を大きくすることができない厚肉継目無鋼管においても、低温靭性の向上が図れるという効果がある。
継目無鋼管の製造プロセスの一例を模式的に示す説明図である。
本発明の油井用高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法は、鋼素材に、加熱し熱間加工して鋼管素材とする鋼管素材加工工程と、鋼管素材に、加熱し、造管、成形し、継目無鋼管とする熱間加工工程と、継目無鋼管に熱処理を行なう熱処理工程と、を含む継目無鋼管の製造方法であって、鋼素材は、質量%で、C :0.005〜0.05%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.2〜1.8%、P :0.03%以下、S :0.005%以下、Cr:15.5〜18.0%、Ni:1.5〜5.0%、Mo:1.0〜3.5%、V :0.02〜0.2%、Al:0.001〜0.050%、N :0.001〜0.15%、O :0.006%以下を、(1)式および下記(2)式を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、鋼管素材加工工程および熱間加工工程における加熱を、該加熱時のオーステナイト相が、少なくとも体積分率で10%以上となる温度条件で行い、熱処理工程における熱処理では、700℃以下の温度に加熱する焼戻処理を施す。この製造方法で得られる油井用高強度ステンレス継目無鋼管は、降伏強さYS:654MPa以上である。

Cr+0.65Ni+0.6Mo+0.55Cu−20C ≧ 19.5 ………(1)
Cr+Mo+0.3Si−43.5C−0.4Mn−Ni−0.3Cu−9N ≧ 11.5 ………(2)
ここで、Cr、Ni、Mo、Cu、C、Si、Mn、N:各元素の含有量(質量%)
本発明で好適に使用できる、継目無鋼管の製造プロセスの一例を図1に示す。
本発明では、まず、鋼管素材加工工程で、鋼素材に、加熱し熱間加工して鋼管素材とする。
なお、本発明で使用する鋼素材は、その製造方法をとくに限定する必要はない。転炉または電気炉等の常用の溶製炉を用いて所望の組成の溶鋼を溶製し、連続鋳造法等の常用の鋳造方法で製造された鋳片を鋼素材として用いることが好ましい。なお、造塊−分塊圧延法で製造された鋼片を、鋼素材としてもなんら問題はない。
本発明で使用する鋼素材は、質量%で、C:0.005〜0.05%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.2〜1.8%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、Cr:15.5〜18.0%、Ni:1.5〜5.0%、Mo:1.0〜3.5%、V:0.02〜0.2%、Al:0.001〜0.050%、N :0.001〜0.15%、O:0.006%以下を、次(1)式および次(2)式
Cr+0.65Ni+0.6Mo+0.55Cu−20C ≧ 19.5 ………(1)
Cr+Mo+0.3Si−43.5C−0.4Mn−Ni−0.3Cu−9N ≧ 11.5 ………(2)
(ここで、Cr、Ni、Mo、Cu、C、Si、Mn、N:各元素の含有量(質量%))
を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有するようにする。さらに、鋼素材は、上記の組成に加えて、次A群〜C群のうちから選ばれた1群または2群以上を含有していてもよい。
A群:Cu:3.5%以下、
B群:Nb:0.2%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下、W:3.0%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、
C群:Ca:0.01%以下、REM:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種
つぎに、使用する鋼素材の組成限定理由について説明する。以下、組成における質量%は、単に%で記す。
C:0.005〜0.05%
Cは、所望の強度を確保するために、0.005%以上の含有を必要とする。一方、0.05%を超えてCを含有すると、Ni含有による焼戻時の鋭敏化が増大する。このようなことから、C含有量は0.005〜0.05%の範囲に限定した。なお、好ましくは、C含有量は0.030〜0.040%である。
Si:0.05〜0.5%
Siは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには0.05%以上のSiの含有を必要とする。一方、0.5%を超えるSiの含有は、耐食性および熱間加工性を低下させる。このため、Si含有量は0.05〜0.5%の範囲に限定した。なお、好ましくは、Si含有量は0.10〜0.30%である。
Mn:0.2〜1.8%
Mnは、強度を増加させる作用を有する。このような効果を得るためには0.2%以上のMnの含有を必要とする。一方、1.8%を超えてMnを含有すると、靭性を低下させる。このため、Mn含有量は0.2〜1.8%の範囲に限定した。なお、好ましくは、Mn含有量は0.20〜1.00%である。さらに好ましくは、Mn含有量は0.30〜0.50%である。
P:0.03%以下
Pは、不純物として粒界等に偏析し、耐食性、低温靭性等に悪影響をおよぼす元素で、本発明ではできるだけP含有量を低減することが望ましいが、過度の低減は精錬コストの高騰を招く。P含有量が0.03%以下であれば、耐食性、低温靭性等へ顕著な悪影響を及ぼさないため、許容できる。このため、P含有量は0.03%以下に限定した。なお、好ましくは、P含有量は0.02%以下である。
S:0.005%以下
Sは、熱間加工性を著しく低下させる元素であり、できるだけ低減することが望ましいが、過度の低減は精錬コストの高騰を招く。S含有量が0.005%以下であれば、通常の熱間加工を実施することが可能となる。このため、S含有量は0.005%以下に限定した。なお、好ましくは、S含有量は0.002%以下である。
Cr:15.5〜18.0%
Crは、保護皮膜を形成し耐食性を向上させる作用を有する。また、さらには、固溶して鋼の強度を増加させる。このような効果を得るためには、15.5%以上のCrの含有を必要とする。一方、18.0%を超えて多量にCrを含有すると、熱間加工性が低下し、さらに強度も低下する。このため、Cr含有量は15.5〜18.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは、Cr含有量は16.6〜17.5%である。
Ni:1.5〜5.0%
Niは、保護皮膜を強固にし、耐食性を高める作用を有する。また、さらには、固溶して鋼の強度を増加させ、さらに靭性を向上させる。このような効果は1.5%以上のNiの含有で認められる。一方、5.0%を超えてNiを含有すると、残留オーステナイト相が増加して、強度が低下する。このため、Ni含有量は1.5〜5.0%に限定した。なお、好ましくは、Ni含有量は2.5〜4.5%である。さらに好ましくは、Ni含有量は3.5〜4.0%である。
Mo:1.0〜3.5%
Moは、塩素イオン(Cl)によって生成する孔食に対する抵抗性を増加させて耐食性を向上させる。このような効果を得るためには、Moを1.0%以上含有する必要がある。一方、3.5%を超える多量のMoの含有は、強度が低下するとともに、材料コストが高騰する。このため、Mo含有量は1.0〜3.5%の範囲に限定した。なお、好ましくは、Mo含有量は2.0〜3.5%である。さらに好ましくは、Mo含有量は2.0〜3.0%である。
V:0.02〜0.2%
Vは、強度を増加させるとともに、耐食性を改善させる作用を有する。このような効果を得るためには、0.02%以上のVの含有を必要とする。一方、0.2%を超えてVを含有すると、靭性が低下する。このため、V含有量は0.02〜0.2%の範囲に限定した。なお、好ましくは、V含有量は0.02〜0.08%である。さらに好ましくは、V含有量は0.04〜0.07%である。
Al:0.001〜0.050%
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには、0.001%以上Alを含有することが必要である。一方、0.050%を超えるAlの含有は、靭性に悪影響を及ぼす。このため、Al含有量は0.001〜0.050%に限定する。さらに好ましくは、Al含有量は0.002〜0.030%である。
N:0.001〜0.15%
Nは、耐孔食性を著しく向上される元素である。このような効果を得るためには、0.001%以上のNの含有を必要とする。一方、0.15%を超えてNを含有すると、種々の窒化物を形成し靭性を低下させる。このため、N含有量は0.001〜0.15%の範囲に限定した。なお、好ましくは、N含有量は0.002〜0.008%である。
O:0.006%以下
O(酸素)は、鋼中では酸化物として存在し、各種特性に悪影響を及ぼす。このため、できるだけO含有量は低減することが望ましい。とくに、Oを0.006%を超えて多量に含有すると、熱間加工性、靭性、耐食性の低下が著しくなる。このため、O(酸素)含有量は0.006%以下に限定した。
本発明では、上記した成分を上記した範囲で、かつ次(1)式および次(2)式
Cr+0.65Ni+0.6Mo+0.55Cu−20C ≧ 19.5 ………(1)
Cr+Mo+0.3Si−43.5C−0.4Mn−Ni−0.3Cu−9N ≧ 11.5 ………(2)
を満足するように調整して含有する。ここで、Cr、Ni、Mo、Cu、C、Si、Mn、Nは、各元素の含有量(質量%)である。なお、(1)式、(2)式の左辺値を計算する際には、(1)式、(2)式に記載された元素のうち、含まれない元素は零%として計算するものとする。
Cr、Ni、Mo、Cu、C含有量を(1)式を満足するように調整することにより、230℃までの高温で、CO2、Clを含む高温腐食環境下での耐食性が顕著に向上する。なお、CO2、Clを含む高温腐食環境下での耐食性の観点からは、(1)式左辺値は20.0以上とすることが好ましい。
また、Cr、Mo、Si、C、Mn、Ni、Cu、N含有量を、(2)式を満足するように調整することにより、熱間加工性が向上する。本発明では、P、S、Oを著しく低減しているが、P、S、Oを低減するのみでは、マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管を造管するために必要十分な熱間加工性を確保することは難しく、マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管を造管するためには、P、S、Oを低減したうえで、(2)式を満足するように、Cr、Mo、Si、C、Mn、Ni、Cu、N含有量を調整することが肝要となる。なお、熱間加工性向上の観点から、(2)式の右辺値は12.0以上とすることが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、例えば、Co:0.1%以下が許容できる。
上記した基本成分に加えてさらに、選択元素として、A群〜C群のうちから選ばれた1群または2群以上を含有することができる。
A群:Cu:3.5%以下
B群:Cuは、保護皮膜を強固し、鋼中への水素の侵入を抑制し、耐硫化物応力腐食割れ性を高める。このような効果を得るためには、Cuを0.5%以上含有することが望ましい。一方、3.5%を超えるCuの含有は、CuSの粒界析出を招き、熱間加工性が低下する。このため、Cuを含有する場合には、Cu含有量は3.5%以下に限定することが好ましい。なお、Cu含有量は、より好ましくは0.6〜1.2%、さらに好ましくは0.8〜1.14%である。
B群:Nb:0.2%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下、W:3.0%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
B群:Nb、Ti、Zr、W、Bはいずれも、強度増加に寄与する元素であり、必要に応じて選択して含有できる。このような効果を得るためには、Nb:0.03%以上、Ti:0.03%以上、Zr:0.03%以上、W:0.2%以上、B:0.0002%以上、含有することが望ましい。一方、Nb:0.2%、Ti:0.3%、Zr:0.2%、W:3.0%、B:0.01%、をそれぞれ超える含有は、靭性を低下させる。このため、含有する場合は、Nb:0.2%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下、W:3.0%以下、B:0.01%以下に、それぞれ限定することが好ましい。
C群:Ca:0.01%以下、REM:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種
C群:Ca、REMは、硫化物系介在物の形状を球状化する作用を有し、介在物周囲のマトリックスの格子歪を小さくして、介在物の水素トラップ能を低下させる効果を有する元素であり、必要に応じて1種または2種を含有できる。このような効果を得るためには、Ca:0.0005%以上、REM:0.001%以上含有することが望ましいが、Ca:0.01%、REM:0.01%を超えて含有すると、耐食性が低下する。このため、含有する場合には、Ca:0.01%以下、REM:0.01%以下に限定することが好ましい。
本発明における鋼管素材加工工程では、上記した組成を有する鋼素材を、図1に示す加熱装置1で所定の温度に加熱し、熱間加工装置2で熱間加工を施して、鋼管素材である所定形状の丸ビレットとする。熱間加工装置2としては、通常、使用する鋼片圧延機(粗および仕上圧延機)等の熱間加工装置が適用できる。
ついで、得られた鋼管素材を、鋼管素材加熱装置3に装入し、所定の温度に加熱したのち、該加熱された鋼管素材に熱間加工装置4で熱間加工を施して製品管(継目無鋼管)とする熱間加工工程を施す。なお、熱間加工の途中で、例えば再加熱装置5で、再加熱を行って、さらに熱間加工を続けても良い。
なお、熱間加工工程で使用する熱間加工装置4は、通常、鋼管素材を所定寸法の継目無鋼管とする際に使用する熱間加工装置、例えば、マンネスマン−プラグミル方式、マンネスマン−マンドレルミル方式等の熱間加工装置がいずれも適用できる。熱間加工装置4としては、加熱された鋼管素材に穿孔圧延を施し中空素材とする穿孔圧延装置41がある。穿孔圧延装置41としては、例えば、バレル形ロール、コーン型ロール等を用いるマンネスマン傾斜式穿孔機が適用できる。これ以外にも、熱間押出式穿孔機等の、通常公知の穿孔圧延装置がいずれも適用できる。
また、熱間加工装置4としては、穿孔圧延装置41で得られた中空素材に、熱間加工を施し所定形状の継目無鋼管とする圧延装置42がある。圧延装置42には、縮径圧延や矯正圧延等を行なう通常公知の圧延装置がいずれも適用できる。例えば、圧延装置42としては、穿孔された中空素管を拡管するエロンゲータ421、拡管された中空素管を薄く長く延ばすプラグミル422、中空素管の内外表面を滑らかにするリーラ423、中空素管を所定寸法に整えるサイジングミル424を、その順に配置された構成とすることが好ましい。
なお、鋼管温度の低下を補償するための再加熱装置5を熱間圧延の途中工程に設置することができる。図1では、サイジングミル424の入側に設けた例を示している。また、図示はしていないが、目的に応じて、圧延装置42として、穿孔された中空素管を所定寸法の中空鋼管とするマンドレルミル、若干の圧下を行ない外径、肉厚を調整するレデューサを、順次、配置した構成としてもよい。
本発明では、上記した鋼管素材加工工程における鋼素材の加熱、および上記した熱間加工工程における鋼管素材の加熱、あるいは再加熱を、オーステナイト相が少なくとも体積分率で10%以上となる温度条件で行う。
鋼管素材加工工程における鋼素材の加熱に使用する加熱装置1は、鋼素材を所定温度に加熱できる、常用の加熱炉であればよく、とくに限定する必要はないが、例えば、ウォーキングビーム式加熱炉が例示できる。なお、誘導加熱方式の加熱炉としてもよい。また、上記した熱間加工工程における鋼管素材の加熱に使用する鋼管素材加熱装置3は、鋼管素材を所定温度に加熱できる、常用の加熱炉であればよく、とくに限定する必要はないが、例えば、回転炉床式加熱炉が例示できる。なお、誘導加熱方式の加熱炉としてもよい。
本発明では、鋼管素材加工工程における加熱、および熱間加工工程における加熱、あるいは再加熱が、オーステナイト相分率が、体積分率で10%未満となるような温度条件では、フェライト粒が成長し、製品管の組織が粗大となり、所望の特性、とくに所望の低温靭性を確保できなくなる。このため、鋼管素材加工工程および熱間加工工程における加熱(再加熱を含む)は、オーステナイト相分率が体積分率で10%以上となる温度条件に限定した。加熱時のオーステナイト相分率が体積分率で10%未満では、フェライト粒の成長が著しくなり、所望の微細なフェライト粒を確保できなくなり、製品管の低温靭性が低下する。
なお、加熱時のオーステナイト相分率は、組成および加熱温度に依存するため、本発明では予め、対象とする鋼管の組成に応じて、平衡計算や加熱実験により、オーステナイト相分率と加熱温度の関係を詳しく把握しておく。これによりオーステナイト相の体積分率が10%未満となる下限温度を決めることができる。なお、ここでいう「加熱温度」は、加熱時のオーステナイト相分率という観点から、当該加熱の最高加熱温度である。なお、最高加熱温度での保持時間はとくに限定する必要はない。最高加熱温度での保持時間の影響は、加熱温度の影響に比べると小さく、生産性等の観点から短時間保持とすることが望ましいが、被加熱材が所定温度に均一に加熱される範囲に限定されることはいうまでもない。
本発明では、予め把握しておいた加熱時のオーステナイト相分率と加熱温度の関係から、オーステナイト相分率が体積分率で10%未満となる温度の下限温度を求め、最高加熱温度でもその温度未満となるように調整して、上記した加熱を実施する。そして、熱間加工性を良好に保つという観点からは、1000℃以上とすることが好ましい。なお、熱間加工として穿孔圧延を行う場合には、1100℃以上の範囲の温度域とすることがより好ましい。
上記した加熱条件で加熱された鋼管素材は、熱間加工工程を施され、製品管(継目無鋼管)とされる。熱間加工工程は、所定の寸法形状の継目無鋼管とすることができればよく、とくに限定する必要はなく、所定の寸法形状を確保できるように、常用の熱間加工装置を使用して、常用の穿孔圧延、延伸圧延、縮径圧延、矯正圧延等の熱間加工を施すことができる。これら熱間加工後は、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却し、所定の寸法形状の継目無鋼管(熱処理素管)とすることができる。空冷以上の適正な冷却速度で室温まで冷却されると、マルテンサイト相が主体の組織となり、所望の焼入れ組織を得ることができる。また、ここでいう、「空冷以上の冷却速度」とは、0.01℃/s以上のことを指す。
得られた熱処理素管(継目無鋼管)には、ついで熱処理工程で熱処理を行なう。
熱処理工程における熱処理では、700℃以下の温度に加熱する焼戻処理を施す。
700℃以下、好ましくは400℃以上の焼戻温度に加熱し、焼戻することにより、組織が焼戻マルテンサイト相を主体とし、微細フェライト相および残留オーステナイト相からなる組織を有する、所望の強度、および優れた低温靭性を有する高強度ステンレス継目無鋼管(製品管)とすることができる。
また、上記した焼戻処理の前には、焼入れ処理を施してもよい。焼入れ処理は、焼入れ温度:850℃以上の温度に再加熱したのち、空冷以上の冷却速度で100℃以下、好ましくは50℃以下まで冷却する処理とすることが好ましい。焼入れ温度が850℃未満では、焼入れが不十分となり、所望の強度を確保できなくなる場合がある。このため、焼入れ温度は850℃以上の温度に限定することが好ましい。また、この焼入れ温度を高温にし過ぎると、焼戻しマルテンサイト量が減少して所望の焼入れ特性が得られなくなる場合があるため、1050℃以下の温度とすることが好ましい。また、ここでいう、「空冷以上の冷却速度」とは、0.01℃/s以上のことを指す。
これらの熱処理により、焼戻マルテンサイト相を主体とし、微細なフェライト相と、残留オーステナイト相とを有する組織とすることができる。
なお、ここでいう「主体」とは、面積率で最も多い相をいうものとする。なお、「焼戻マルテンサイト相を主体とする組織」とは、当該相が体積率で50%以上を占有する場合をいう。また、残留オーステナイト相は、体積率で20%以下である。また、フェライト相は、体積率で10〜40%、好ましくは20〜35%である。フェライト相が10%未満では、所望の耐食性が得られない。一方、40%を超えて含有すると、強度が低下する。
また、本発明における、焼戻マルテンサイト相を主体とし、微細なフェライト相と、残留オーステナイト相とを有する組織の測定方法としては、まず、継目無鋼管から、組織観察用試験片を採取し、管軸方向に直交する断面(C断面)が観察面となるように、研磨し、腐食(ビレラ液腐食(ピクリン酸、塩酸およびエタノールをそれぞれ2g、10mlおよび100mlの割合で混合))して、光学顕微鏡(倍率:100倍)を用いて、組織を観察し、撮像する。得られた組織写真を用い、画像解析して、組織分率を求める。なお、フェライト粒については、走査型電子顕微鏡を用い、EBSD法(Electron Backscatter Diffraction Method)で測定し、隣接する粒の方位が5°以上異なる領域を異なる結晶粒として平均結晶粒の面積を算出する。
また、残留オーステナイト相分率は、X線回折法を用いて測定する。X線回折では、オーステナイトγの(220)面、αの(211)面、の回折X線積分強度を測定し、次式
γ(体積率)=100/{1+(IαRγ/IγRα)}
(ここで、Iα:αの積分強度、Iγ:γの積分強度、Rα:αの結晶学的理論計算値、Rγ:γの結晶学的理論計算値)
を用いて計算する。また、焼戻マルテンサイト相の分率はこれらの相以外の残部として計算する。
また、本発明のこの組織は、特定の成分組成とすることや、特定温度での焼戻処理を行うことや、特定温度での焼入処理を行うこと等により制御することができる。
なお、焼入れ処理においては、焼入れ温度:850℃以上の温度に加熱するが、この場合でも、焼入れ加熱時に、オーステナイト相が体積率で10%以上となる温度条件を満足するように加熱温度を調整する必要がある。このような加熱の条件を満足させて加熱することにより、粒成長が抑制でき所望の優れた機械的特性が安定して得られる。
なお、上記の熱処理を行う温度は、鋼管外表面の温度とする。
このような組織を有する鋼管は、降伏強さ:654MPa以上の高強度と、肉厚中心位置でのシャルピー衝撃試験の試験温度:−40℃での吸収エネルギーが50J以上となる優れた低温靭性を有する継目無鋼管となる。また、本発明の製造方法で製造された鋼管は、肉厚13mm超えの厚肉鋼管とすることができる。
以下、実施例に基づき、さらに本発明について説明する。
表1に示す組成の溶鋼を、転炉で溶製し、連続鋳造法で鋳片(スラブ:肉厚260mm)とした。
まず、得られた鋳片から試験片(20mm×20mm×10mm)を採取し、熱処理実験を行なった。試験片を実験熱処理炉(小型熱処理炉)で、各温度に加熱し、30min間保持したのち、水中に浸漬し、急冷した。得られた試験片から、組織観察用試験片を採取し、研磨、腐食(腐食液:ビエラ液)して、光学顕微鏡(倍率:100倍)で組織を観察し、各9視野以上で撮像した。得られた組織写真を画像解析して、マルテンサイト相の面積率を算出した。なお、得られたマルテンサイト相の面積率は、当該加熱温度におけるオーステナイト相の体積分率と等価であるとした。そして、得られたオーステナイト相の体積分率から、各鋼ごとに、オーステナイト相分率と加熱温度および保持時間との関係を求め、オーステナイト相の体積分率が10%未満となる下限温度T(℃)を求めた。得られた結果を表1に併記して示す。
Figure 2016079922
表1から、組成が異なる各鋼で、オーステナイト相が10%未満となる下限温度T(℃)が異なることがわかる。
次に、得られた鋳片を、加熱装置に装入し、表2に示す条件(ビレット圧延:最高加熱温度、抽出温度)で加熱し、熱間加工(ビレット圧延)を施し、丸形状のビレット(外径:260mmφ)とし、鋼管素材とした。なお、熱間加工後は放冷した。
ついで、得られた鋼管素材を、鋼管素材加熱装置に装入し、表2に示す条件(穿孔圧延:最高加熱温度、抽出温度)で加熱し、ピアサ、エロンゲータ、プラグミル、リーラを順次設置した熱間加工装置で熱間加工し、さらに再加熱装置に装入してサイジングミルで熱間加工(矯正圧延)を施し、継目無鋼管(外径244.5mmφ×肉厚13.84mm)とした。なお、熱間加工後は空冷した。
なお、加熱条件は、パターンa〜パターンeの5種類のパターンとした。
そして、得られた継目無鋼管に、熱処理工程として、表3に示す条件で焼入れ処理および焼戻処理を施した。一部では、焼入れ処理を施さず、焼戻処理のみとした。なお、焼入れ処理は、鋼管を、焼入れ加熱炉に装入し表3に示す焼入れ加熱温度に加熱したのち、水槽に浸漬する処理とした。焼入れ処理後、あるいは焼入れ処理なしで、表3に示す条件で焼戻処理を行った。焼戻後は空冷とした。
得られた熱処理済み継目無鋼管から、試験片を採取し、組織観察、引張試験、衝撃試験および耐食性試験を実施した。試験方法はつぎの通りとした。
(1)組織観察
得られた継目無鋼管から、組織観察用試験片を採取し、管軸方向に直交する断面(C断面)が観察面となるように、研磨し、腐食(ビレラ液腐食)して、光学顕微鏡(倍率:100倍)を用いて、組織を観察し、撮像した。得られた組織写真を用い、画像解析して、組織分率を求めた。なお、フェライト粒については、走査型電子顕微鏡を用い、EBSD法で測定し、隣接する粒の方位が5°以上異なる領域を異なる結晶粒として平均結晶粒の面積を算出した。
なお、残留オーステナイト相分率は、X線回折法を用いて測定した。X線回折では、オーステナイトγの(220)面、αの(211)面、の回折X線積分強度を測定し、次式
γ(体積率)=100/{1+(IαRγ/IγRα)}
ここで、Iα:αの積分強度、Iγ:γの積分強度、Rα:αの結晶学的理論計算値、Rγ:γの結晶学的理論計算値を用いて、計算した。なお、焼戻マルテンサイト相の分率はこれらの相以外の残部として計算した。
(2)引張試験
得られた継目無鋼管の肉厚中心位置から、管軸方向が引張方向となるように、丸棒引張試験片(平行部6mmφ×GL20mm)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して、引張試験を実施した。なお、降伏強さは伸び:0.2%での強度とした。降伏強さYSが654MPa(95ksi)以上のものを合格とした。
(3)衝撃試験
得られた継目無鋼管の肉厚中心から、圧延方向と直交する方向(C方向)が試験片長手方向となるように、Vノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施した。試験温度は−40℃とし、吸収エネルギーを測定し、靭性を評価した。なお、試験片は各3本とし、それらの平均値を当該継目無鋼管の吸収エネルギー(J)とした。試験温度:−40℃での吸収エネルギーvE−40が50J以上である場合を、「低温靭性に優れる」として「○」(合格)と評価した。なお、平均の吸収エネルギー値が50J以上であっても、個別の値が50J未満のものがある場合には「△」と評価し、平均の吸収エネルギー値が50J未満である場合は「×」とし、いずれも不合格とした。
(4)耐食性試験
得られた継目無鋼管から、腐食試験片(大きさ:厚さ3mm×幅30mm×長さ40mm)を採取し、腐食試験を実施した。なお、本発明範囲を外れる鋼管については、耐食性試験を実施しなかった。
腐食試験は、オートクレーブ中に保持された試験液:20質量%NaCl水溶液(液温:230℃、100気圧のCO2ガス雰囲気)中に、腐食試験片を浸漬し、浸漬期間:7日間(168時間)として実施した。腐食試験後の試験片について、重量を測定し、腐食試験前後の重量減から計算した腐食速度を求めた。腐食速度が0.12mm/y未満の場合を合格とした。
得られた結果を表3に示す。
Figure 2016079922
Figure 2016079922
Figure 2016079922
本発明例はいずれも、組織の微細化ができ、所望の耐食性を保持し、降伏強さ:654MPa以上の高強度であるにもかかわらず、試験温度:−40℃における吸収エネルギーが50J以上と靭性が顕著に向上している。一方、本発明範囲を外れる比較例では、鋼管素材加工工程における加熱および熱間加工工程における加熱において、最高加熱温度が、オーステナイト相が体積分率で10%未満となる下限温度以上となっており、組織が微細化できず、所望の高靭性を確保できていない。
1 加熱装置
2 熱間加工装置
3 鋼管素材加熱装置
4 熱間加工装置
5 再加熱装置
41 穿孔圧延装置
42 圧延装置
421 エロンゲータ
422 プラグミル
423 リーラ
424 サイジングミル

Claims (3)

  1. 鋼素材に、加熱し熱間加工して鋼管素材とする鋼管素材加工工程と、
    前記鋼管素材に、加熱し、造管、成形し、継目無鋼管とする熱間加工工程と、
    前記継目無鋼管に熱処理を行なう熱処理工程と、を含む継目無鋼管の製造方法であって、
    前記鋼素材は、質量%で、
    C :0.005〜0.05%、 Si:0.05〜0.5%、
    Mn:0.2〜1.8%、 P :0.03%以下、
    S :0.005%以下、 Cr:15.5〜18.0%、
    Ni:1.5〜5.0%、 Mo:1.0〜3.5%、
    V :0.02〜0.2%、 Al:0.001〜0.050%、
    N :0.001〜0.15%、
    O :0.006%以下
    を、下記(1)式および下記(2)式を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、
    前記鋼管素材加工工程および前記熱間加工工程における加熱を、該加熱時のオーステナイト相が、少なくとも体積分率で10%以上となる温度条件で行い、
    前記熱処理工程における熱処理では、700℃以下の温度に加熱する焼戻処理を施す降伏強さYS:654MPa以上である油井用高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法。

    Cr+0.65Ni+0.6Mo+0.55Cu−20C ≧ 19.5 ………(1)
    Cr+Mo+0.3Si−43.5C−0.4Mn−Ni−0.3Cu−9N ≧ 11.5 ………(2)
    ここで、Cr、Ni、Mo、Cu、C、Si、Mn、N:各元素の含有量(質量%)
  2. 前記熱処理工程における熱処理では、前記焼戻処理の前に、850℃以上の温度に再加熱したのち、空冷以上の冷却速度で100℃以下まで冷却する焼入れ処理を施す請求項1に記載の油井用高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法。
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、次A群〜C群のうちから選ばれた1群または2群以上を含有する請求項1または2に記載の油井用高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法。
    A群:Cu:3.5%以下、
    B群:Nb:0.2%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下、W:3.0%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、
    C群:Ca:0.01%以下、REM:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種

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