JPWO2016063848A1 - 抗マラリア剤 - Google Patents
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Abstract
Description
1.以下の一般式(I)で表されるペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩を有効成分として含む、クロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性マラリア原虫に有効な抗マラリア剤。
[式中、Cは置換しても良い脂環式炭化水素環基、nは1〜6の整数を示し、Rは水素原子又はヒドロキシアルキル基である。]
2.クロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性マラリア原虫が、クロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性のPlasmodium falciparumである、前項1に記載の抗マラリア剤。
3.以下の一般式(I)で表されるペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩を有効成分として含み、当該有効成分が経皮的に有効量投与される経皮吸収型製剤からなる抗マラリア剤。
[式中、Cは置換しても良い脂環式炭化水素環基、nは1〜6の整数を示し、Rは水素原子又はヒドロキシアルキル基である。]
4.ペルオキシド誘導体が、一般式(I)中、Cが置換基として低級アルキル基を有しても良い脂環式炭化水素環基である、前項1〜3のいずれかに記載の抗マラリア剤。
5.ペルオキシド誘導体が、一般式(I)中、Cが4-tert-ブチルシクロヘキシリデン、シクロドデシリデン又はアダマンチリデン基であり、nが1〜4である、前項4に記載に記載の抗.
6.ペルオキシド誘導体が、以下の式(II)又は式(III)で示される化合物である、前項4に記載の抗マラリア剤。
7.有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩の有効量が、血漿中濃度が3〜15 ng/mLを少なくとも12時間維持しうる量である、前項3〜6のいずれかに記載の抗マラリア剤。
8.有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩の1回あたりの投与量が10〜150 mg/kgである、前項3〜7のいずれかに記載の抗マラリア剤。
9.有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩の1回あたりの投与量として10〜150 mg/kgを1日1回又は2回投与することによる、前項7又は8に記載の抗マラリア剤。
10.軟膏剤、液剤、乳剤、懸濁剤、クリーム剤、テープ剤、貼付剤、マイクロニードル剤、スプレー剤及びゲル剤からなる群から選択される少なくとも1種の経皮投与形態を有するものである、前項1〜9のいずれかに記載の抗マラリア剤。
11.前項3〜6のいずれかに記載の抗マラリア剤を、有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩の血漿中濃度が3〜15 ng/mLを少なくとも12時間維持しうる量を、経皮的に投与することを特徴とする、マラリア原虫の感染に起因するマラリアの予防及び/又は治療方法。
12.有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩を、10〜150 mg/kgを1日1回又は2回投与することを特徴とする、前項11に記載のマラリアの予防及び/又は治療方法。
13.マラリア原虫が、クロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性マラリア原虫である、前項11又は12に記載のマラリアの予防及び/又は治療方法。
本明細書において「マラリア原虫」とは、マラリアの症状を引き起こすマラリア原虫であればよく特に限定されないが、例えば、プラスモジウム(Plasmodium)属原虫のP. vivax(三日熱マラリア原虫)、P. falciparum(熱帯熱マラリア原虫)、P. malariae(四日熱マラリア原虫)、P. ovale(卵形マラリア原虫)等が挙げられる。近年では、三日熱マラリア、卵形マラリア、四日熱マラリアでの急性期治療に用いられるクロロキンに耐性のマラリア原虫も出現している。本発明の抗マラリア剤は、特にクロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性マラリア原虫に有効である。かかるクロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性マラリア原虫は、どのようなマラリア原虫由来であってもよく、限定されない。例えば、三日熱マラリア、卵形マラリア、四日熱マラリア由来の耐性マラリア原虫が挙げられる。
具体的には、以下の方法による。
上記反応工程式中、Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくは臭素原子、ヨウ素原子である。
本反応工程は、J. Org. Chem., 62, 4949(1997)記載の方法に準じて行われる。すなわち、公知化合物(2)を、過酸化水素存在下、適当な溶媒中でオゾンと反応させることにより(3)で表されるビスヒドロペルオキシド化合物を得る。本工程で用いられる溶媒としては反応に関与しないものであれば特に制限はなく、エーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等を例示でき、好ましくはエーテルである。過酸化水素は30〜100 %のものが使用できる。反応に際しては、化合物(2)に対して、過酸化水素を1〜10倍モル量、好ましくは1〜3倍モル量使用し、オゾンを0.5〜5倍モル量、好ましくは1〜2倍モル量使用する。反応温度は-70〜20℃であり、反応時間は5〜30分である。得られた化合物(3)は、通常の分離手段、例えばカラムクロマトグラフィー、再結晶等により反応混合物から容易に単離精製することが出来る。上記反応工程(i)で得られた化合物(3)は単離又は単離することなく反応工程(ii)に使用できる。
上記反応工程(i)で得られた化合物(3)と(4)で表される化合物を、塩基存在下、適当な溶媒中で反応させることにより、一般式(I)で表される本発明化合物を得る。本工程で使用される塩基としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、またトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の第三級アミンが用いられ、好ましくは水酸化セシウムである。溶媒としては、非水溶媒であれば特に制限はないが、特にジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドの様な極性の高いものが好まれる。また18-クラウン-6の様なクラウンエーテル類を反応促進剤として添加することも可能である。反応に際しては、化合物(3)に対して化合物(4)及び塩基をそれぞれ1〜3倍モル使用する。反応促進剤を添加する場合には、化合物(3)に対して1〜10モル量を使用する。反応温度は0〜50℃、好ましくは10〜30℃であり、反応時間は1〜48時間である。得られた化合物(I)は、通常の分離手段、例えばカラムクロマトグラフィー、再結晶等により反応混合物から容易に単離精製することが出来る。
以下の実施例において、特許文献2(特許第4289911号公報)に記載の方法により合成して得たペルオキシド誘導体(6-(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7,11]ノナデシ-4-イル、「N-251」)又はペルオキシド誘導体(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7,11]ノナデカン、「N-89」)使用した。
「N-251」又は「N-89」各々を120 mgをオリーブオイル2 mLに溶解したものを「抗マラリア剤(N-251)」又は「抗マラリア剤(N-89)」として使用した。以下の実施例において、抗マラリア剤を経口的に与え、投与した。
(2)抗マラリア軟膏剤
経皮吸収型製剤として、「N-251」又は「N-89」各々を120 mgをオリーブオイルに溶解し、ワセリンと混合したものを調製し、「抗マラリア軟膏剤(N-251)」又は「抗マラリア軟膏剤(N-89)」として使用した。軟膏剤中のN-251又はN-89の濃度は1.3 % (w/w)である。以下の実施例において、抗マラリア軟膏剤を皮膚に塗布することにより、経皮的に投与した。
健康な5週齢のCrlj:CD1(ICR)マウス(日本チャールスリバー)一群5匹に、実施例1で作製した抗マラリア剤(N-251)を各N-251が68 mg/kgとなるように図1に示すスケジュールに従って、1日3回3日間経口投与し、連続投与時におけるN-251の血漿中濃度を測定した。血漿中のN-251濃度は、血液をサンプリングし、遠心後、上層の血漿のみ集め、除タンパク処理した後、LC-MS/MSを用いてN-251を定量し、算出した。その結果、投与期間中のN-251の血漿中濃度は10〜1,000 ng/mL であった(図1)。
P. berghei(NK 65)株を上記のマウスに静脈感染させ、マウスの血中原虫の感染率が1 %となったときに、実施例1で作製した抗マラリア剤(N-251)を、N-251が68 mg/kgとなるように図1に示すスケジュールに従って、1日3回3日間経口投与し、連続投与時におけるN-251の抗マラリア薬効を評価した。感染率は、マウスの赤血球を顕微鏡下、赤血球100,000個あたりの感染赤血球を目視的に観察し、算出した。実験開始から2ヶ月間感染率の推移を観察し、再燃有無やマウスの血中にマラリア原虫が検出されない事を確認した。その結果、マウスは再燃を起こすことなく2ヶ月後に完治した(結果は65日目までモニターした結果を示す)(図2)。本実施例より、有効成分であるN-251の血漿中濃度を一定以上に維持することで、マラリアに対して有効に作用することが確認された。
本実施例では、実施例1で作製した抗マラリア軟膏剤(N-251)又は抗マラリア剤(N-251)をマウスに投与したときの原虫の増殖を50 %抑制する濃度(Effective dose 50: ED50)としてN-251の抗マラリア薬効を評価した。
比較例として、抗マラリア剤(N-251)を図3の投与スケジュールに従い、経口にて5〜50 mg/kg投与した。上記、各々最終投与から24時間後の感染率よりED50を求めた結果を表2に示した。
実施例3と同様に、背部を12cm2 剃毛した健康な5週齢のCrlj:CD1(ICR)マウス(日本チャールスリバー)一群5匹に実施例1で作製した抗マラリア軟膏剤(N-251)を塗布した。塗布したN-251量は150 mg/kgで、単回投与した。比較例として、抗マラリア剤(N-251)を経口にて68 mg/kg単回投与した。各々について血漿中濃度及び体内動態解析を行った。
実施例3と同様に、背部を12cm2 剃毛した5週齢の健康なCrlj:CD1(ICR)マウス(日本チャールスリバー)一群5匹に、実施例1で作製した抗マラリア軟膏剤(N-251)を塗布した。塗布は1日2回、2日半(計5回)行い、各々N-251(150 mg/kg)を経皮的に投与し、反復投与後のN-251の血漿中濃度推移を測定した。その結果、12時間間隔でN-251を投与すると、抗マラリア効果を示す十分な血漿中濃度を維持することが確認された(図5)。
N-89を有効成分とする抗マラリア剤(N-89)では、マラリアを完治可能な血漿中濃度は3.1 ng/mL以上であった。実施例3と同様に背部を12cm2 剃毛した5週齢のCrlj:CD1(ICR)マウス(日本チャールスリバー)一群5匹に、P. berghei(NK 65)株を静脈感染させ、感染直後より実施例1で作製した抗マラリア軟膏剤(N-89)を塗布した。N-89(110 mg/kg)を経皮的に投与したときの12時間後の血漿中濃度は25 ng/mL以上であった。これにより、N-89についても110 mg/kg、1日2回、3日間(計6回)を経皮的に投与することで、72時間後には原虫が消失して完治しうるものと考えられた。
N-251又はN-89を有効成分とする抗マラリア剤の効果をin vitroにて確認した。P. falciparum(FCR-3株)に低濃度のアルテミシニンを培地に加え、マラリア原虫の成長がコントロールのFCR-3株と傾きが同じになった時点で、アルテミシニン濃度を少し増量し、最終的にFCR-3株と比較して10倍薬剤感受性が低下したアーテミシニン耐性株(Art-R lab)を得た。また、クロロキン耐性株であるK1を加え、これらFCR-3株、K1株、及びArt-R labの3種類のP. falciparum 原虫株に対するN-251及びN-89の抗マラリア剤の効果を、EC50値を基準としてインデックスに換算し、確認した。その結果、クロロキン感受性株(FCR-3)に対するEC50値を1としたときの各々株に対する抗マラリア薬効を表4に示した。その結果、N-251及びN-89は、アーテミシニン耐性株やクロロキン耐性株に対しても、薬剤感受性がかわることなく抗マラリア効果を示すことが確認された。
以下の実施例において、特許文献2(特許第4289911号公報)に記載の方法により合成して得たペルオキシド誘導体(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7,11]ノナデカン、「N-89」)使用した。
「N-89」各々を120 mgをオリーブオイル2 mLに溶解したものを「抗マラリア剤(N-89)」として使用した。以下の実施例において、抗マラリア剤を経口的に与え、投与した。
(2)抗マラリア軟膏剤(ワセリン)(N-89)
経皮吸収型製剤として、「N-89」120 mgをオリーブオイルに溶解した後、ワセリンと混合したものを調製し、「抗マラリア軟膏剤(ワセリン)(N-89)」として使用した。軟膏剤中のN-89の濃度は1.3 % (w/w)である。以下の実施例において、抗マラリア軟膏剤を皮膚に塗布することにより、経皮的に投与した。
(3)抗マラリア軟膏剤(マクロゴール剤)(N-89)
別の経皮吸収型製剤として、「N-89」120 mgをマクロゴールに溶解したものを調製し、「抗マラリア軟膏剤(マクロゴール剤)(N-89)」として使用した。軟膏剤中のN-89の濃度は1.3 % (w/w)である。以下の実施例において、抗マラリア軟膏剤を皮膚に塗布することにより、経皮的に投与した。
実施例3と同様に、背部を12cm2 剃毛した健康な5週齢のCrlj:CD1(ICR)マウス(日本チャールスリバー)一群5匹に実施例8で作製した「抗マラリア軟膏剤(ワセリン)(N-89)」又は「抗マラリア軟膏剤(マクロゴール剤)(N-89)」を、各々塗布した。塗布したN-89量は110 mg/kgで、単回投与した。各々について血漿中濃度及び体内動態解析を行い、その結果を図7及び表5に示した。
実施例9と同様に、背部を12cm2 剃毛した健康な5週齢のCrlj:CD1(ICR)マウス(日本チャールスリバー)一群5匹に実施例8で作製した「抗マラリア軟膏剤(ワセリン)(N-89)」又は「抗マラリア軟膏剤(マクロゴール剤)(N-89)」を、各々塗布した。塗布したN-89量は110 mg/kgで、単回投与した。比較例として、抗マラリア剤(N-89)を経口にて75 mg/kg単回投与した。各々について血漿中濃度を確認した。
実施例9と同様に、背部を12cm2 剃毛した5週齢の健康なCrlj:CD1(ICR)マウス(日本チャールスリバー)一群5匹に、P. berghei(NK 65)株を静脈感染させ、マウスの原虫感染率が1.3 %のときに実施例8で作製した抗マラリア軟膏剤(マクロゴール剤)(N-89)を塗布した。その後、治療効果と完治有無を確認した。治療効果は感染率(実施例2参照)を測定することにより確認した。その結果、N-89投与開始時の感染率1.3 %からN-89投与50時間後には感染率が0.05 %程度に低下し、治療効果が確認された(図9)。
Claims (13)
- 以下の一般式(I)で表されるペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩を有効成分として含む、クロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性マラリア原虫に有効な抗マラリア剤。
[式中、Cは置換しても良い脂環式炭化水素環基、nは1〜6の整数を示し、Rは水素原子又はヒドロキシアルキル基である。] - クロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性マラリア原虫が、クロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性のPlasmodium falciparumである、請求項1に記載の抗マラリア剤。
- 以下の一般式(I)で表されるペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩を有効成分として含み、当該有効成分が経皮的に有効量投与される経皮吸収型製剤からなる抗マラリア剤。
[式中、Cは置換しても良い脂環式炭化水素環基、nは1〜6の整数を示し、Rは水素原子又はヒドロキシアルキル基である。] - ペルオキシド誘導体が、一般式(I)中、Cが置換基として低級アルキル基を有しても良い脂環式炭化水素環基である、請求項1〜3のいずれかに記載の抗マラリア剤。
- ペルオキシド誘導体が、一般式(I)中、Cが4-tert-ブチルシクロヘキシリデン、シクロドデシリデン又はアダマンチリデン基であり、nが1〜4である、請求項4に記載に記載の抗マラリア剤。
- ペルオキシド誘導体が、以下の式(II)又は式(III)で示される化合物である、請求項4に記載の抗マラリア剤。
- 有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩の有効量が、血漿中濃度が3〜15 ng/mLを少なくとも12時間維持しうる量である、請求項3〜6のいずれかに記載の抗マラリア剤。
- 有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩の1回あたりの投与量が10〜150 mg/kgである、請求項3〜7のいずれかに記載の抗マラリア剤。
- 有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩の1回あたりの投与量として10〜150 mg/kgを1日1回又は2回投与することによる、請求項7又は8に記載の抗マラリア剤。
- 軟膏剤、液剤、乳剤、懸濁剤、クリーム剤、テープ剤、貼付剤、マイクロニードル剤、スプレー剤及びゲル剤からなる群から選択される少なくとも1種の経皮投与形態を有するものである、請求項1〜9のいずれかに記載の抗マラリア剤。
- 請求項3〜6のいずれかに記載の抗マラリア剤を、有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩の血漿中濃度が3〜15 ng/mLを少なくとも12時間維持しうる量を、経皮的に投与することを特徴とする、マラリア原虫の感染に起因するマラリアの予防及び/又は治療方法。
- 有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩を、10〜150 mg/kgを1日1回又は2回投与することを特徴とする、請求項11に記載のマラリアの予防及び/又は治療方法。
- マラリア原虫が、クロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性マラリア原虫である、請求項11又は12に記載のマラリアの予防及び/又は治療方法。
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