JPWO2016063848A1 - 抗マラリア剤 - Google Patents

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Abstract

マラリア原虫の感染、特にクロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性マラリア原虫の感染に起因するマラリアに対して有効に作用する抗マラリア剤を提供する。さらには有効成分の薬効を効果的に持続可能な抗マラリア剤を提供する。一般式(I)で表されるペルオキシド誘導体又はその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む抗マラリア剤による。前記抗マラリア剤を経皮吸収型製剤とすることで、有効成分が緩やかに血中に移行し、有効血漿中濃度を12時間以上持続可能であり、マラリアに対して有効に作用する。[式中、Cは置換しても良い脂環式炭化水素環基、nは0〜6の整数を示す。]

Description

本発明は、クロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性マラリア原虫の感染に起因するマラリア対して有効に作用する抗マラリア剤に関する。さらには有効成分の薬効を効果的に持続可能な抗マラリア剤に関する。
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願特願2014−214605号及び2014−214606号優先権を請求する。
マラリアはプラスモジウム(Plasmodium)属原虫のP. vivax(三日熱マラリア原虫)、P. falciparum(熱帯熱マラリア原虫)、P. malariae(四日熱マラリア原虫)、P. ovale(卵形マラリア原虫)などの単独又は混合感染に起因する疾患であり、特有の熱発作、貧血及び脾腫を主徴とする。ハマダラ蚊を媒介として感染し、間欠的な熱発作、貧血、脾腫等の症状を示す。
マラリア原虫は、媒介動物であるハマダラカ(Anopheles)の唾液腺にスポロゾイト(sporozoite)として集積している。メスのハマダラカは産卵のために吸血を行うが、その際に唾液を宿主に注入するので、その中のスポロゾイトが血中に侵入する。宿主の血中に入ったスポロゾイトは45分程度で肝細胞内に取り込まれ、しばらくして分裂を開始し、分裂小体(メロゾイト: merozoite)が数千個になった段階で肝細胞を破壊して血中に放出される。メロゾイトは赤血球に侵入し、輪状体(早期栄養体)、栄養体(後期栄養体又はアメーバ体)、分裂体の経過をたどり、8〜32個に分裂した段階で赤血球膜を破壊して放出され、メロゾイトは新たな赤血球に侵入して上記のサイクルを繰り返す。これが無性生殖のサイクルである。三日熱マラリア原虫と卵形マラリア原虫の場合には、肝細胞内で長期間潜伏状態となる休眠原虫も形成され、これが後になって分裂を開始して血中に放出されると、再発を生ずることになる。
熱帯熱マラリア原虫が感染した赤血球は、表面に種々の原虫由来物質を表出する。そのなかでPlasmodium falciparum var genes and P. falciparum erythrocyte membrane protein 1 (PfEMP1) は、細小血管内皮細胞表面の接着分子であるICAM-1(特に脳)、CD36(特に脳以外)その他と結合する性質を有するが、これゆえに感染赤血球が脳血管などで分離症(sequestration)を生じ、脳症などを引き起こすものと考えられている。
マラリアは世界で100カ国以上にみられ、世界保健機関(WHO)の推計によると、年間3〜5億人の罹患者と60万人の死亡者があるとされる。この大部分はサハラ以南アフリカにおける5歳未満の小児である。サハラ以南アフリカ以外にもアジア、特に東南アジアや南アジア、パプアニューギニアやソロモンなどの南太平洋諸島、中南米などにおいても多くの発生がみられる。全世界で、旅行者が帰国してから発症する例も年間3万人程度あるとされる。
治療、予防剤として、三日熱マラリア、卵形マラリア、四日熱マラリアでの急性期治療としてはクロロキンが用いられる。しかしながら、クロロキン耐性のマラリア原虫も出現していることに注意を払う必要がある。他の薬剤としてはスルファドキシン/ピリメタミン合剤(ファンシダール)、メフロキン(メファキン「エスエス」)なども用いられる。三日熱マラリアと卵形マラリアの場合、急性期治療が成功した後、肝臓に潜む休眠原虫を殺滅する根治療法としてプリマキンを用いる。熱帯熱マラリアではマラリア原虫のクロロキン耐性が進行しているので、クロロキン以外の薬剤を用いるべきである。重症マラリアでは、薬剤の非経口的な投与が必要であり、キニーネ注射薬が標準的であるが、最近ではアーテミシニン(Artemisinin)及びその誘導体を基に合剤(Artemisinin-based Combination Therapy)が用いられる。
抗マラリア薬として、毒性の強いものが多いことが問題となっており、抗マラリア活性が高くかつ安全性の高い新薬の開発が望まれている。そこで、5-フルオロオロチン酸やスルファモノメトキシンを有効成分とする抗マラリア剤(特許文献1)やペルオキシド誘導体を有効成分とする抗マラリア剤(特許文献2、3)の開発がすすめられており、報告されている。しかしながら、従来の投与形態では、単剤では完治が困難であり、再燃しやすいことが問題となっている。より効果的な薬剤と投与方法の開発が望まれている。
特開平8-59471号公報 特許第4289911号公報 特許第4382898号公報
本発明は、マラリア原虫の感染、特にクロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性マラリア原虫の感染に起因するマラリアに対して有効に作用する抗マラリア剤を提供することを課題とする。さらには有効成分の薬効を効果的に持続可能な抗マラリア剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、一般式(I)で表されるペルオキシド誘導体又はその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む抗マラリア剤によれば、クロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性マラリア原虫の感染に起因するマラリアに対しても有効に作用することを見出した。さらに、マラリアの完治に必要な抗マラリア作用を発揮しうる薬剤の濃度を確認し、当該薬剤の濃度を長期間維持するための手段を各種検討した結果、ペルオキシド誘導体又はその薬学的に許容しうる塩を有効成分とする本発明の抗マラリア剤を経皮吸収型製剤とすることで、マラリアに対して有効に作用することを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.以下の一般式(I)で表されるペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩を有効成分として含む、クロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性マラリア原虫に有効な抗マラリア剤。

[式中、Cは置換しても良い脂環式炭化水素環基、nは1〜6の整数を示し、Rは水素原子又はヒドロキシアルキル基である。]
2.クロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性マラリア原虫が、クロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性のPlasmodium falciparumである、前項1に記載の抗マラリア剤。
3.以下の一般式(I)で表されるペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩を有効成分として含み、当該有効成分が経皮的に有効量投与される経皮吸収型製剤からなる抗マラリア剤。

[式中、Cは置換しても良い脂環式炭化水素環基、nは1〜6の整数を示し、Rは水素原子又はヒドロキシアルキル基である。]
4.ペルオキシド誘導体が、一般式(I)中、Cが置換基として低級アルキル基を有しても良い脂環式炭化水素環基である、前項1〜3のいずれかに記載の抗マラリア剤。
5.ペルオキシド誘導体が、一般式(I)中、Cが4-tert-ブチルシクロヘキシリデン、シクロドデシリデン又はアダマンチリデン基であり、nが1〜4である、前項4に記載に記載の抗.
6.ペルオキシド誘導体が、以下の式(II)又は式(III)で示される化合物である、前項4に記載の抗マラリア剤。

7.有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩の有効量が、血漿中濃度が3〜15 ng/mLを少なくとも12時間維持しうる量である、前項3〜6のいずれかに記載の抗マラリア剤。
8.有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩の1回あたりの投与量が10〜150 mg/kgである、前項3〜7のいずれかに記載の抗マラリア剤。
9.有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩の1回あたりの投与量として10〜150 mg/kgを1日1回又は2回投与することによる、前項7又は8に記載の抗マラリア剤。
10.軟膏剤、液剤、乳剤、懸濁剤、クリーム剤、テープ剤、貼付剤、マイクロニードル剤、スプレー剤及びゲル剤からなる群から選択される少なくとも1種の経皮投与形態を有するものである、前項1〜9のいずれかに記載の抗マラリア剤。
11.前項3〜6のいずれかに記載の抗マラリア剤を、有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩の血漿中濃度が3〜15 ng/mLを少なくとも12時間維持しうる量を、経皮的に投与することを特徴とする、マラリア原虫の感染に起因するマラリアの予防及び/又は治療方法。
12.有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩を、10〜150 mg/kgを1日1回又は2回投与することを特徴とする、前項11に記載のマラリアの予防及び/又は治療方法。
13.マラリア原虫が、クロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性マラリア原虫である、前項11又は12に記載のマラリアの予防及び/又は治療方法。
本発明の抗マラリア剤は、有効成分が緩やかに血中に移行し、有効血漿中濃度を12時間以上持続可能である。例えば、経皮吸収型製剤で、有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的に許容しうる塩を10〜150 mg/kgの12時間間隔で投与することで、薬効を示す十分な血漿中濃度(3〜15 ng/mL)の維持が可能である。有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的に許容しうる塩を1日当たり10〜150 mg/kg、1回又は2回で1〜3日間の投与で、感染率1.5 %のマラリア原虫に作用し、マラリアを治療することができる。
抗マラリア剤(N-251)をマウスに1日3回3日間経口投与したときのN-251の血漿中濃度を確認した結果を示す図である。(実施例2) 抗マラリア剤(N-251)をマウスに1日3回3日間経口投与したときの赤血球のマラリア感染率を確認した結果を示す図である。(実施例2) 抗マラリア軟膏剤(N-251)のマウスへの投与スケジュールを示す図である。(実施例3) 抗マラリア軟膏剤(N-251)又は抗マラリア剤(N-251)を経皮的又は経口で各々単回投与したときのN-251の体内動態解析結果を示す図である。(実施例4) 抗マラリア軟膏剤(N-251)を連続塗布した時の血漿中濃度推移を示す図である。(実施例5) 抗マラリア軟膏剤(N-251)を連続塗布した時の赤血球のマラリア感染率を確認した結果を示す図である。(実施例5) 抗マラリア軟膏剤(N-89)を経皮的に単回投与したときのN-89の体内動態解析結果を示す図である。(実施例9) 抗マラリア軟膏剤(N-89)を経皮的又は経口で各々単回投与したときのN-89の体内動態解析結果を示す図である。(実施例10) 抗マラリア軟膏剤(N-89)を連続塗布した時の赤血球のマラリア感染率を確認した結果を示す図である。(実施例11)
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本明細書において「マラリア原虫」とは、マラリアの症状を引き起こすマラリア原虫であればよく特に限定されないが、例えば、プラスモジウム(Plasmodium)属原虫のP. vivax(三日熱マラリア原虫)、P. falciparum(熱帯熱マラリア原虫)、P. malariae(四日熱マラリア原虫)、P. ovale(卵形マラリア原虫)等が挙げられる。近年では、三日熱マラリア、卵形マラリア、四日熱マラリアでの急性期治療に用いられるクロロキンに耐性のマラリア原虫も出現している。本発明の抗マラリア剤は、特にクロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性マラリア原虫に有効である。かかるクロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性マラリア原虫は、どのようなマラリア原虫由来であってもよく、限定されない。例えば、三日熱マラリア、卵形マラリア、四日熱マラリア由来の耐性マラリア原虫が挙げられる。
本発明の抗マラリア剤は、以下の一般式(I)で示されるペルオキシド誘導体又はその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む抗マラリア剤である。
[式中、Cは置換基を有しても良い脂環式炭化水素環基、nは1〜6の整数を示し、Rは水素原子又はヒドロキシアルキル基である。]
上記一般式(I)において、Cの置換基を有してもよい脂環式炭化水素環基としては、例えばシクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロへプチリデン、シクロオクチリデン、シクロノニリデン、シクロデシリデン、シクロウンデシリデン、シクロドデシリデン基等の炭素数3〜12の単環の脂環式炭化水素基;ビシクロブチリデン、ビシクロオクチリデン、ビシクロノニリデン、ノルボルニリデン、ノルボレニリデン、アダマンチリデン、ノルアダマンチリデン基等の架橋環又は多環の脂環式炭化水素基等が挙げられ、好ましくは炭素数6〜12の単環の脂環式炭化水素基又はアダマンチリデン基であり、より好ましくはシクロヘキシリデン、シクロドデシリデン又はアダマンチリデン基である。また、Cの脂環式炭化水素環基が有してもよい置換基としては、例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチルとして例示される直鎖又は各種分枝したペンチル基等の炭素数1〜6の直鎖状又は分枝状の低級アルキル基;メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシとして例示される直鎖又は各種分枝したペンチルオキシ基等の炭素数1〜6の直鎖状又は分枝状の低級アルコキシ基等が挙げられ、好ましくは低級アルキル基であり、より好ましくはtert-ブチル基である。本発明化合物のうち、好ましい化合物としては一般式(1)において、Cが置換基として低級アルキル基を有しても良い脂環式炭化水素環基である化合物であり、より好ましくはCが4-tert-ブチルシクロヘキシリデン、シクロドデシリデン又はアダマンチリデン基であり、nが1〜4の化合物である。
また上記一般式(I)におけるRは、水素原子又はヒドロキシアルキル基である。該ヒドロキシアルキル基としてはアルキル鎖の末端にヒドロキシ基が結合しているものが好ましい。また、そのアルキル鎖(アルキレン基)の炭素数が1〜10(好ましくは1〜6)の直鎖状のものが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、n−ノニレン基、n−デシレン基の炭素数1〜10のアルキレン基が例示される。
上記一般式(I)におけるRがヒドロキシアルキル基である場合、ヒドロキシアルキル基はオキソ環中のペルオキシ基に対して、α位又はβ位、即ち、1,2,4,5−テトロキサン環の6位又は7位に結合するのが好ましい。この位置にヒドロキシアルキル基が結合した一般式(I)で表される化合物は、オキソ環の員環数が大きいものであっても溶媒に対する溶解性が向上される。
上記一般式(I)で表されるペルオキシド誘導体は、特許文献2又は3に記載の方法により製造することができる。
具体的には、以下の方法による。
[式中、C及びnは上記に同じ。Xはハロゲン原子を示す。]
上記反応工程式中、Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくは臭素原子、ヨウ素原子である。
<反応工程(i)>
本反応工程は、J. Org. Chem., 62, 4949(1997)記載の方法に準じて行われる。すなわち、公知化合物(2)を、過酸化水素存在下、適当な溶媒中でオゾンと反応させることにより(3)で表されるビスヒドロペルオキシド化合物を得る。本工程で用いられる溶媒としては反応に関与しないものであれば特に制限はなく、エーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等を例示でき、好ましくはエーテルである。過酸化水素は30〜100 %のものが使用できる。反応に際しては、化合物(2)に対して、過酸化水素を1〜10倍モル量、好ましくは1〜3倍モル量使用し、オゾンを0.5〜5倍モル量、好ましくは1〜2倍モル量使用する。反応温度は-70〜20℃であり、反応時間は5〜30分である。得られた化合物(3)は、通常の分離手段、例えばカラムクロマトグラフィー、再結晶等により反応混合物から容易に単離精製することが出来る。上記反応工程(i)で得られた化合物(3)は単離又は単離することなく反応工程(ii)に使用できる。
<反応工程(ii)>
上記反応工程(i)で得られた化合物(3)と(4)で表される化合物を、塩基存在下、適当な溶媒中で反応させることにより、一般式(I)で表される本発明化合物を得る。本工程で使用される塩基としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、またトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の第三級アミンが用いられ、好ましくは水酸化セシウムである。溶媒としては、非水溶媒であれば特に制限はないが、特にジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドの様な極性の高いものが好まれる。また18-クラウン-6の様なクラウンエーテル類を反応促進剤として添加することも可能である。反応に際しては、化合物(3)に対して化合物(4)及び塩基をそれぞれ1〜3倍モル使用する。反応促進剤を添加する場合には、化合物(3)に対して1〜10モル量を使用する。反応温度は0〜50℃、好ましくは10〜30℃であり、反応時間は1〜48時間である。得られた化合物(I)は、通常の分離手段、例えばカラムクロマトグラフィー、再結晶等により反応混合物から容易に単離精製することが出来る。
本発明の抗マラリア剤に含まれるペルオキシド誘導体は、具体的には表1に示す化合物が挙げられる。これらの化合物は、特許文献3の各実施例に記載の方法により製造することができる。本発明の抗マラリア剤に含まれるペルオキシド誘導体は、最も好ましくは、以下の式(II)で表される化合物(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7,11]ノナデカン)(本明細書において「N-89」と称することもある)又は式(III)で表される化合物(6-(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7,11]ノナデシ-4-イル)(本明細書において「N-251」と称することもある)である。
前記ペルオキシド誘導体の薬理学的に許容できる塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩、及びカルシウム塩やマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩を例示することができる。なお、これら以外の塩であっても薬理学的に許容できる塩であればいずれのものであっても本発明の目的のため適宜に用いることができる。
本発明の前記ペルオキシド誘導体又はその薬理学的に許容できる塩を、マラリア原虫の感染に起因するマラリアの予防及び治療に使用する場合、投与経路としては、経皮、経口、皮下注射、静脈注射、局所投与等のいずれでもよいが特に好適には経皮投与である。また、製剤としては、通常、製薬的に許容される担体や賦形剤、その他添加剤を用いて製造した経皮吸収型製剤、散剤、錠剤、細粒剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤等の経口剤、点眼剤、注射剤、坐剤等の非経口剤が挙げられる。製薬的に許容される担体や賦形剤、その他添加剤としては、グルコース、ラクトース、ゼラチン、マンニトール、でんぷんペースト、トリケイ酸マグネシウム、コーンスターチ、ケラチン、コロイド状シリカ等があり、さらには、安定剤、増量剤、着色剤及び芳香剤の様な補助剤を含有してもよい。これらの製剤は、各々当業者に公知慣用の製造方法により製造できる。
本発明の抗マラリア剤中に含まれる有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩の配合量としては、0.1〜100 % (w/w)が好ましく、さらに好ましくは0.1〜80 % (w/w)であり、0.1〜50 % (w/w)が好適である。また、1日当たりの投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり一概に決定できないが、通常成人1日当り本発明化合物を1〜150 mg/kg、好ましくは5〜110 mg/kg、より好ましくは5〜50 mg/kgとすることができる。投与は、1日1回又は2回で1〜3日間の投与が好適である。
本発明の抗マラリア剤は、自体公知の抗マラリア剤、例えば、メフロキン、クロロキン、アモディアキン、キニーネ/キニディーネ、アーテミシニン/アーテスネート/アーテメター、アトバコン、ファンシダール、ハロファントリン、又は5-フルオロオロチン酸やスルファモノメトキシンを有効成分とする抗マラリア剤(特許文献1)と共に使用してもよい。本発明の抗マラリア剤を自体公知の薬剤と併用することにより、従来効能が優れていても毒性が問題となっていた薬剤等の使用量を軽減化させることができる。また、熱帯熱マラリアではクロロキン耐性が進行しているので、クロロキン以外の薬剤を用いるべきであるところ、本発明の抗マラリア剤はクロロキンやアーテミシニンに対して耐性を示すPlasmodium属原虫株、例えばクロロキン耐性株としてK1や、アーテミシニン耐性株としてArt-R lab(国立大学法人岡山大学作製)に対しても、効果的に作用することが示されており、有用である。
本発明の抗マラリア剤は、有効量を経皮的に投与するのが特に好適である。本発明の抗マラリア剤に含まれるペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩は、分子量が500以下であり、適度な脂溶性を有することより、経皮投与に適していると考えられる。本発明は、経皮投与有効量を経皮的に投与されることを特徴とする、ペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩を有効成分として含む経皮吸収型製剤の抗マラリア剤にも及ぶ。経皮吸収型製剤とは、皮膚に適用したとき、有効成分が皮膚を通して全身循環血流に送達すべく設計された外用組成物の形態であり、例えば、軟膏剤、液剤(ローション)、乳剤、懸濁剤、クリーム剤、テープ剤、貼付剤、マイクロニードル剤、スプレー剤及びゲル剤等から選択される経皮投与形態が挙げられる。
本明細書において「経皮投与有効量」とは、有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩が、血漿中濃度3〜15 ng/mL、好ましくは3〜10 ng/mLを少なくとも12時間維持好ましくは36時間、より好ましくは72時間維持されていることが望ましい。そのような経皮投与有効量として、成人1日当り本発明化合物を1〜150 mg/kg、好ましくは5〜110 mg/kg、より好ましくは5〜50 mg/kgとすることができる。1日当たり1回又は2回で1〜3日間の投与が好適である。
本発明の抗マラリア剤が「経皮吸収型製剤」の場合には、本発明の効果を妨げない限り、通常の皮膚外用剤に配合され得る一般的な基剤成分を組成物の剤型や形態に応じて、適宜配合することができる。基剤として例えば、油脂性基剤(鉱物性:ワセリン、流動パラフィン、パラフィン、シリコン、プラスチベース、動植物性:植物油、ろう類等)、水溶性基剤(マクロゴール類)、o/w型(親水クリーム)、w/o型(精製ラノリン、加水ラノリン、親水ワセリン、吸水クリーム等)、ヒドロゲル(親水性高分子、ベントナイト、ビーガム等)、リオゲル(FAPG)等が挙げられる。さらには水、エタノールやイソプロピルアルコールなどの低級アルコール、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール、各種界面活性剤(アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤)、高級アルコール、油分、増粘剤、保湿剤、ビタミン類、アミノ酸類、酸化防止剤、殺菌剤、清涼剤、動植物抽出エキス、香料等を配合することができる。また本発明の有効性を高めるために、本発明の効果を妨げない範囲で、浸透促進剤を配合することもできる。浸透促進剤としては、アミンオキシド、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(40モル)硬化ヒマシ油などが知られている。また毛包細胞活性化成分としては、ヒノキチオール、ニコチン酸アミド、ビタミンB6類、セファランチン、ビオチン、パントテン酸等が知られている。
本発明は、本明細書で特定される抗マラリア剤を投与することによる、マラリア原虫の感染に起因するマラリアの予防及び/又は治療方法に及ぶ。前記マラリアの予防及び/又は治療方法は、有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩が、血漿中濃度3〜15 ng/mL、好ましくは3〜10 ng/mLを少なくとも12時間維持好ましくは36時間、より好ましくは72時間維持されるように投与することによる。そのような経皮投与有効量として、成人1日当り本発明化合物を1〜150 mg/kg、好ましくは5〜110 mg/kg、より好ましくは5〜50 mg/kgとすることができる。1日当たり1回又は2回で1〜3日間の投与が好適である。
以下に本発明の抗マラリア剤を投与した場合の効果について、実施例により説明するが、本発明はこれら実施例の記載のみに限定されるものでないことはいうまでもない。
(実施例1)抗マラリア剤及び抗マラリア軟膏剤の調製
以下の実施例において、特許文献2(特許第4289911号公報)に記載の方法により合成して得たペルオキシド誘導体(6-(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7,11]ノナデシ-4-イル、「N-251」)又はペルオキシド誘導体(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7,11]ノナデカン、「N-89」)使用した。
(1)抗マラリア剤
「N-251」又は「N-89」各々を120 mgをオリーブオイル2 mLに溶解したものを「抗マラリア剤(N-251)」又は「抗マラリア剤(N-89)」として使用した。以下の実施例において、抗マラリア剤を経口的に与え、投与した。
(2)抗マラリア軟膏剤
経皮吸収型製剤として、「N-251」又は「N-89」各々を120 mgをオリーブオイルに溶解し、ワセリンと混合したものを調製し、「抗マラリア軟膏剤(N-251)」又は「抗マラリア軟膏剤(N-89)」として使用した。軟膏剤中のN-251又はN-89の濃度は1.3 % (w/w)である。以下の実施例において、抗マラリア軟膏剤を皮膚に塗布することにより、経皮的に投与した。
(実施例2)N-251の血漿中濃度及び赤血球のマラリア感染率
健康な5週齢のCrlj:CD1(ICR)マウス(日本チャールスリバー)一群5匹に、実施例1で作製した抗マラリア剤(N-251)を各N-251が68 mg/kgとなるように図1に示すスケジュールに従って、1日3回3日間経口投与し、連続投与時におけるN-251の血漿中濃度を測定した。血漿中のN-251濃度は、血液をサンプリングし、遠心後、上層の血漿のみ集め、除タンパク処理した後、LC-MS/MSを用いてN-251を定量し、算出した。その結果、投与期間中のN-251の血漿中濃度は10〜1,000 ng/mL であった(図1)。
抗マラリア薬効は下記のように評価した。
P. berghei(NK 65)株を上記のマウスに静脈感染させ、マウスの血中原虫の感染率が1 %となったときに、実施例1で作製した抗マラリア剤(N-251)を、N-251が68 mg/kgとなるように図1に示すスケジュールに従って、1日3回3日間経口投与し、連続投与時におけるN-251の抗マラリア薬効を評価した。感染率は、マウスの赤血球を顕微鏡下、赤血球100,000個あたりの感染赤血球を目視的に観察し、算出した。実験開始から2ヶ月間感染率の推移を観察し、再燃有無やマウスの血中にマラリア原虫が検出されない事を確認した。その結果、マウスは再燃を起こすことなく2ヶ月後に完治した(結果は65日目までモニターした結果を示す)(図2)。本実施例より、有効成分であるN-251の血漿中濃度を一定以上に維持することで、マラリアに対して有効に作用することが確認された。
(実施例3)N-251の抗マラリア薬効
本実施例では、実施例1で作製した抗マラリア軟膏剤(N-251)又は抗マラリア剤(N-251)をマウスに投与したときの原虫の増殖を50 %抑制する濃度(Effective dose 50: ED50)としてN-251の抗マラリア薬効を評価した。
背部を12cm2 剃毛した5週齢のCrlj:CD1(ICR)マウス(日本チャールスリバー)一群5匹に、P. berghei(NK 65)株を静脈感染させた。感染2時間目より、図3に示すスケジュールに従いマウスの剃毛した部位に抗マラリア軟膏剤(N-251)を各々塗布し、N-251(30〜150 mg/kg)を経皮的に1日1回、4日間処理した。
比較例として、抗マラリア剤(N-251)を図3の投与スケジュールに従い、経口にて5〜50 mg/kg投与した。上記、各々最終投与から24時間後の感染率よりED50を求めた結果を表2に示した。
(実施例4)N-251単回投与時の体内動態解析
実施例3と同様に、背部を12cm2 剃毛した健康な5週齢のCrlj:CD1(ICR)マウス(日本チャールスリバー)一群5匹に実施例1で作製した抗マラリア軟膏剤(N-251)を塗布した。塗布したN-251量は150 mg/kgで、単回投与した。比較例として、抗マラリア剤(N-251)を経口にて68 mg/kg単回投与した。各々について血漿中濃度及び体内動態解析を行った。
その結果、経皮的にN-251を投与した場合は、経口投与に比べて、AUC(血漿中濃度-時間曲線下面積)及びCmax(最高血漿中濃度)が低下した。そして、T1/2(消失半減期)及びTmax(最高血漿中濃度到達時間)及びMRT(平均滞留時間)が増加した。経皮投与により、N-251は緩やかに血中に移行し、投与12時間後でも36 ng/mL の血漿中濃度を示した。この値はマラリア完治効果を示す血漿中濃度(4.5 ng/mL)より8倍高い濃度であった(図4、表3)。
(実施例5)抗マラリア軟膏剤(N-251)の連続塗布時の血漿中濃度推移の検討
実施例3と同様に、背部を12cm2 剃毛した5週齢の健康なCrlj:CD1(ICR)マウス(日本チャールスリバー)一群5匹に、実施例1で作製した抗マラリア軟膏剤(N-251)を塗布した。塗布は1日2回、2日半(計5回)行い、各々N-251(150 mg/kg)を経皮的に投与し、反復投与後のN-251の血漿中濃度推移を測定した。その結果、12時間間隔でN-251を投与すると、抗マラリア効果を示す十分な血漿中濃度を維持することが確認された(図5)。
この実験はヒトマラリア患者を想定したモデル系において、N-251の経皮的投与でマウスが完治するかどうかを評価する為に行った。上記と同様のマウスに、P. berghei(NK 65)株を静脈感染させ、マウスの原虫感染率が1.5 %のときに実施例1で作製した抗マラリア軟膏剤(N-251)を塗布した。塗布は1日2回、3日間(計6回)行い、各々N-251(150 mg/kg)を経皮的に投与し、治療効果と完治有無を確認した。治療効果は実施例2に記載の感染率を測定することにより確認した。その結果、N-251投与開始の感染率1.5 %からN-251投与72時間後にはマウスの血中からマラリア原虫が消失した。60日経過観察でも再燃がなく、マウスはマラリアから完治した(図6)。
(実施例6)抗マラリア剤(N-89)及び抗マラリア軟膏剤(N-89)の治療効果
N-89を有効成分とする抗マラリア剤(N-89)では、マラリアを完治可能な血漿中濃度は3.1 ng/mL以上であった。実施例3と同様に背部を12cm2 剃毛した5週齢のCrlj:CD1(ICR)マウス(日本チャールスリバー)一群5匹に、P. berghei(NK 65)株を静脈感染させ、感染直後より実施例1で作製した抗マラリア軟膏剤(N-89)を塗布した。N-89(110 mg/kg)を経皮的に投与したときの12時間後の血漿中濃度は25 ng/mL以上であった。これにより、N-89についても110 mg/kg、1日2回、3日間(計6回)を経皮的に投与することで、72時間後には原虫が消失して完治しうるものと考えられた。
(実施例7)抗マラリア剤(N-251)及び抗マラリア剤(N-89)の治療効果
N-251又はN-89を有効成分とする抗マラリア剤の効果をin vitroにて確認した。P. falciparum(FCR-3株)に低濃度のアルテミシニンを培地に加え、マラリア原虫の成長がコントロールのFCR-3株と傾きが同じになった時点で、アルテミシニン濃度を少し増量し、最終的にFCR-3株と比較して10倍薬剤感受性が低下したアーテミシニン耐性株(Art-R lab)を得た。また、クロロキン耐性株であるK1を加え、これらFCR-3株、K1株、及びArt-R labの3種類のP. falciparum 原虫株に対するN-251及びN-89の抗マラリア剤の効果を、EC50値を基準としてインデックスに換算し、確認した。その結果、クロロキン感受性株(FCR-3)に対するEC50値を1としたときの各々株に対する抗マラリア薬効を表4に示した。その結果、N-251及びN-89は、アーテミシニン耐性株やクロロキン耐性株に対しても、薬剤感受性がかわることなく抗マラリア効果を示すことが確認された。
(実施例8)抗マラリア剤(N-89)及び抗マラリア軟膏剤(N-89)の調製
以下の実施例において、特許文献2(特許第4289911号公報)に記載の方法により合成して得たペルオキシド誘導体(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7,11]ノナデカン、「N-89」)使用した。
(1)抗マラリア剤(N-89)
「N-89」各々を120 mgをオリーブオイル2 mLに溶解したものを「抗マラリア剤(N-89)」として使用した。以下の実施例において、抗マラリア剤を経口的に与え、投与した。
(2)抗マラリア軟膏剤(ワセリン)(N-89)
経皮吸収型製剤として、「N-89」120 mgをオリーブオイルに溶解した後、ワセリンと混合したものを調製し、「抗マラリア軟膏剤(ワセリン)(N-89)」として使用した。軟膏剤中のN-89の濃度は1.3 % (w/w)である。以下の実施例において、抗マラリア軟膏剤を皮膚に塗布することにより、経皮的に投与した。
(3)抗マラリア軟膏剤(マクロゴール剤)(N-89)
別の経皮吸収型製剤として、「N-89」120 mgをマクロゴールに溶解したものを調製し、「抗マラリア軟膏剤(マクロゴール剤)(N-89)」として使用した。軟膏剤中のN-89の濃度は1.3 % (w/w)である。以下の実施例において、抗マラリア軟膏剤を皮膚に塗布することにより、経皮的に投与した。
(実施例9)抗マラリア軟膏剤(N-89)単回投与時の体内動態解析
実施例3と同様に、背部を12cm2 剃毛した健康な5週齢のCrlj:CD1(ICR)マウス(日本チャールスリバー)一群5匹に実施例8で作製した「抗マラリア軟膏剤(ワセリン)(N-89)」又は「抗マラリア軟膏剤(マクロゴール剤)(N-89)」を、各々塗布した。塗布したN-89量は110 mg/kgで、単回投与した。各々について血漿中濃度及び体内動態解析を行い、その結果を図7及び表5に示した。
(実施例10)抗マラリア軟膏剤(N-89)単回投与時の血漿中濃度
実施例9と同様に、背部を12cm2 剃毛した健康な5週齢のCrlj:CD1(ICR)マウス(日本チャールスリバー)一群5匹に実施例8で作製した「抗マラリア軟膏剤(ワセリン)(N-89)」又は「抗マラリア軟膏剤(マクロゴール剤)(N-89)」を、各々塗布した。塗布したN-89量は110 mg/kgで、単回投与した。比較例として、抗マラリア剤(N-89)を経口にて75 mg/kg単回投与した。各々について血漿中濃度を確認した。
その結果を図8に示した。N-89の血中持続性は、抗マラリア軟膏剤(マクロゴール剤)(N-89)>抗マラリア軟膏剤(ワセリン)(N-89)>抗マラリア剤(N-89)の順で持続しており、経皮吸収型製剤の方が経口製剤よりも血中濃度が高く維持できることが確認された。
(実施例11)抗マラリア軟膏剤(マクロゴール剤)(N-89)の治療効果
実施例9と同様に、背部を12cm2 剃毛した5週齢の健康なCrlj:CD1(ICR)マウス(日本チャールスリバー)一群5匹に、P. berghei(NK 65)株を静脈感染させ、マウスの原虫感染率が1.3 %のときに実施例8で作製した抗マラリア軟膏剤(マクロゴール剤)(N-89)を塗布した。その後、治療効果と完治有無を確認した。治療効果は感染率(実施例2参照)を測定することにより確認した。その結果、N-89投与開始時の感染率1.3 %からN-89投与50時間後には感染率が0.05 %程度に低下し、治療効果が確認された(図9)。
以上詳述したように、薬効を示す十分な有効成分の血漿中濃度(3〜15 ng/mL)を12時間維持好ましくは36時間、より好ましくは72時間維持されるような抗マラリア剤によれば、感染率1.5 %のマラリア原虫に作用し、マラリアを治療することができる。例えば経皮吸収型製剤によれば、1日当たり1回又は2回で1〜3日間の投与により、有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的に許容しうる塩が緩やかに血中に移行し、有効血漿中濃度を12時間以上持続可能である。このような抗マラリア剤により感染率1.5 %のマラリア原虫感染を完治することができる。
経皮吸収型製剤とすることで、長時間安定した薬効を維持することができる。また、経口投与が困難な患者にも適用が可能であり、患者や看護する者の負担を軽減化することができる。

Claims (13)

  1. 以下の一般式(I)で表されるペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩を有効成分として含む、クロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性マラリア原虫に有効な抗マラリア剤。

    [式中、Cは置換しても良い脂環式炭化水素環基、nは1〜6の整数を示し、Rは水素原子又はヒドロキシアルキル基である。]
  2. クロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性マラリア原虫が、クロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性のPlasmodium falciparumである、請求項1に記載の抗マラリア剤。
  3. 以下の一般式(I)で表されるペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩を有効成分として含み、当該有効成分が経皮的に有効量投与される経皮吸収型製剤からなる抗マラリア剤。

    [式中、Cは置換しても良い脂環式炭化水素環基、nは1〜6の整数を示し、Rは水素原子又はヒドロキシアルキル基である。]
  4. ペルオキシド誘導体が、一般式(I)中、Cが置換基として低級アルキル基を有しても良い脂環式炭化水素環基である、請求項1〜3のいずれかに記載の抗マラリア剤。
  5. ペルオキシド誘導体が、一般式(I)中、Cが4-tert-ブチルシクロヘキシリデン、シクロドデシリデン又はアダマンチリデン基であり、nが1〜4である、請求項に記載に記載の抗マラリア剤。
  6. ペルオキシド誘導体が、以下の式(II)又は式(III)で示される化合物である、請求項に記載の抗マラリア剤。
  7. 有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩の有効量が、血漿中濃度が3〜15 ng/mLを少なくとも12時間維持しうる量である、請求項3〜6のいずれかに記載の抗マラリア剤。
  8. 有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩の1回あたりの投与量が10〜150 mg/kgである、請求項3〜7のいずれかに記載の抗マラリア剤。
  9. 有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩の1回あたりの投与量として10〜150 mg/kgを1日1回又は2回投与することによる、請求項7又は8に記載の抗マラリア剤。
  10. 軟膏剤、液剤、乳剤、懸濁剤、クリーム剤、テープ剤、貼付剤、マイクロニードル剤、スプレー剤及びゲル剤からなる群から選択される少なくとも1種の経皮投与形態を有するものである、請求項1〜9のいずれかに記載の抗マラリア剤。
  11. 請求項3〜6のいずれかに記載の抗マラリア剤を、有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩の血漿中濃度が3〜15 ng/mLを少なくとも12時間維持しうる量を、経皮的に投与することを特徴とする、マラリア原虫の感染に起因するマラリアの予防及び/又は治療方法。
  12. 有効成分としてのペルオキシド誘導体又はその薬学的許容される塩を、10〜150 mg/kgを1日1回又は2回投与することを特徴とする、請求項11に記載のマラリアの予防及び/又は治療方法。
  13. マラリア原虫が、クロロキン及び/又はアーテミシニンに対する耐性マラリア原虫である、請求項11又は12に記載のマラリアの予防及び/又は治療方法。
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